機械化ベルリン王宮大乱戦、断片の王を狙え

 機械化ベルリン王宮強襲作戦の成功により、ベルリン王宮の地上部分への突入が可能になりました。
 機械化ベルリン王宮には、陸軍参謀総長『パウル・フォン・ヒンデンブルク』、さらには断片の王『ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世』がおり、断片の王と戦う千載一遇のチャンスとなります。
 機械化ベルリン王宮で暴れまわり、敵を撃破し、皇帝ヴィルヘルム2世の命を狙うべく派手に戦いを仕掛けてください。
 襲撃が大規模になれば、特別な作戦が実行可能になります。

●実行可能になる特別な作戦と条件

(1)陸軍参謀総長暗殺作戦
 シナリオが1本以上成功すると、ジェネラル級ゾルダート、陸軍参謀総長『パウル・フォン・ヒンデンブルク』との決戦シナリオが公開されます。
 さらに、条件を満たした時点でこの事件の8本以上のシナリオに参加者がいると、敵側を混乱させ、有利な条件で戦えます(選択肢が本来よりも有利なものになります)。
『パウル・フォン・ヒンデンブルク』は、両肩に装備した補助頭脳二基による並列演算により、機械化ドイツ帝国軍を手足のように操る、機械化ドイツ帝国の頭脳です。彼を撃破できれば、機械化ドイツ帝国軍は、その頭脳を失い大混乱に陥るのは間違いありません。

(2)ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世暗殺作戦
 シナリオが8本以上成功すると、断片の王『ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世』との決戦シナリオが公開されます。
 さらに、条件を満たした時点でこの事件の24本以上のシナリオに参加者がいると、敵側を混乱させ、有利な条件で戦えます(選択肢が本来よりも有利なものになります)。
 断片の王の戦闘能力は非常に高く、歴史の奪還戦ディアボロス・ウォーになっていない状況での撃破はほぼ不可能と予測されていすが、奇跡的な勝利の可能性は0ではありません。
 また、勝利が出来なくても、断片の王との戦闘により、重要な情報が得られるかもしれません。

※特別シナリオのスケジュールについて

 公開される特別シナリオの攻略期限は、オープニングの公開日時に関わりなく『4月12日』となり、攻略旅団の提案による【期限延長】も行えません。
 戦況によっては、特別な作戦が実行できなくなる場合もあります。ご了承ください。

NOBODY'S FAULT BUT MINE(作者 土師三良
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#機械化ドイツ帝国  #機械化ベルリン王宮大乱戦、断片の王を狙え  #ベルリン王宮 


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●機械化ドイツ帝国にて
「えーい! もたもたするな! 今っ! この瞬間にもっ! 敵が襲撃してくるかもっ! しれんのだぞぉーっ!」
 ディアボロスの侵入を許し、かつてほど強固ではなくなった機械化ベルリン王宮。
 その一角で、両肩に補助脳を備えたゾルダート――『パウル・フォン・ヒンデンブルク』が防衛態勢を整えるべく奮闘していた。
「各国境の主力部隊はまだ戻らんのか! いったい、なにをやっておるのだ! 優先すべきは、我らが皇帝をお守りすることだというのに!」
 陸軍参謀総長という肩書きを持つパウルではあるが、部下たちへの指揮振りは精彩を欠いていた。施設の防衛という小規模な作戦には慣れていないのか、あるいは『我らが皇帝』の膝元にまでディアボロスが迫ってきたことに焦っているのか。
「おお、そうだ! 中庭に対空部隊を展開しておけ! よもや敵が空から来るとは思えんが――」
 機械の顔を苛立ちと焦燥に歪めて、陸軍参謀総長は手にしていた葉巻を握り潰した。
「――いや、地下から来たとしても、奴らなら対処できるはず!」

●新宿駅グランドターミナルにて
「このパラドクストレインの行き先は『機械化ドイツ帝国』だ」
 パラドクストレインの車内に足を踏み入れたディアボロスたちにそう告げたのはインクセティアの精悍な青年。
 時先案内人の李・令震である。
「攻略旅団の提案によって始まった機械化ベルリン王宮強襲作戦のことは知っているな? その作戦が成功し、王宮の地上部分の攻略が可能となった。敵にとっては、ケツに火がついたようなもんだ。どうせなら、その火を頭んところまで回してやろうぜ」
 令震が言うところの『頭』とは、王宮内にいるであろう断片の王。
 そう、ヴィルヘルム2世だ。
「とはいえ、今すぐにヴィルヘルム2世と御対面ってわけにはいかない。まずは王宮を襲撃して暴れまわり、敵を混乱させろ。それを何度も繰り返せば、敵に隙が生じる。その隙を衝いて、ヴィルヘルム2世の喉に食らいつくんだ」
 当然のことながら、食らいつけたからといって勝てるとは限らない。むしろ、勝てない公算のほうが大きいだろう。
 しかし、可能性はゼロではない。
 それにディアボロスの怒りを断片の王に直接ぶつけることは決して無駄ではないはずだ。

「俺たちがヴィルヘルム2世の喉元に迫っていることに敵は気付いている。王宮内のゾルダートを総動員して守りを固めているし、いずれは王宮外の戦力や国境付近の精鋭部隊も呼び戻すだろう。だから、時間をかけることはできない。短期間にどれだけ多くの襲撃をおこなうことができるか――それが勝負の分かれ目だ」
 今回の作戦は『多くの襲撃』のうちの一回。
 襲撃する場所は王宮の中庭。
 令震の予知によると、そこには『フラックシュッツェ・トラバント』なる対空ゾルダート部隊が配備されているという。
「そいつらは対空部隊ではあるが、地上の敵とも普通に渡り合うことができる。親玉を守るという使命に燃えてやがるから、士気もかなり高い。ザコ扱いせずに全力でいけ」
 対空部隊を指揮するアヴァタール級もまた厄介な存在であるらしい。
「指揮官は『シュピーゲル・アノーニュムス』というゾルダートだ。液体金属とかいうもので体が構成されていて、自分の姿形をなんにでも変えることができる。そう、有機物か無機物かを問わず、なんにでも……」
 体の一部を武器に変えることもあれば、対峙している敵と同じ姿になることもあり、更には敵の記憶の中にいる人物の姿になることもあるという。

「対空部隊も変身野郎も難敵ではあるが……おまえたちなら、やれるはずだ。絶対にやれるはずだ」
 そう言い切った後、令震は力強い声で宣言した。
「では、行くぞ!」
 パラドクストレインが走り始めた。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【セルフクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が1mの「コンクリートの立方体」を最大「効果LV×1個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【壁歩き】
2
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【建造物分解】
2
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【使い魔使役】
1
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
1
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV4 / 【ダメージアップ】LV4 / 【ガードアップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV2 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。よろしくお願いします。

●このシナリオの概要
 機械ベルリン王宮強襲作戦で切り開いた地下ルートを利用して王宮の中庭に突入し、そこにいるトループス級ゾルダート『フラックシュッツェ・トラバント』たちを蹴散らし、アヴァタール級ゾルダート『シュピーゲル・アノーニュムス』を倒してください。

●👾トループス防衛ライン『フラックシュッツェ・トラバント』について
 戦場が屋外(中庭)ですから、空を飛んで立体的に戦うことができます。しかし、フラックシュッツェ・トラバントは対空部隊なので(そうでなくても、逆説連鎖戦は対空/対地の制限はありませんので)とくにメリットはありません。
 また、空を飛べるのは戦闘開始後です。中庭に突入するルートは地下であり、空から王宮に攻め込むことはできません。

●👿アヴァタール級との決戦『シュピーゲル・アノーニュムス』について
 WIZのパラドクスを使用して戦う場合、PCにとっての『再会を望む人物』をプレイングで指定してください。ただし、必ずしも希望通りに描写されるとは限りません。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


三苫・麻緒
大物のところに殴り込める機会は滅多にないからね
掴んだチャンスは意地でも手放さない
士気が高い難敵?上等!邪魔するならまとめて凍ってもらうよ!

他の人が攻撃しやすいように援護していく形で、協力して防衛ラインをぶち抜きたいね
攻撃圏内にはいったら速攻で思いっきり吹雪をぶつけるよ
銃口や煙幕噴射装置の噴出口あたりを凍らせるなり雪を詰め込むなりして、悪影響が出るように≪武器改造≫したいところ
援護は十分そうだったり私が撃破に動いた方が早い状況なら、≪臨機応変≫に撃破優先に切り替えて直接凍らせていっちゃおうね

煙幕は逆に利用しちゃえ
吹雪で相手のいる方向に煙幕を≪吹き飛ばし≫て、自分で自分の首を絞める状況を作るよ


ベアストリア・ヴァイゼンホルン
ふむ……なるほど?

急いで集めてきたんでしょうね……焦り過ぎだと思うけど……。
兎に角、僕は複数機のフライトドローンを囮及び戦況偵察に使用し、味方の援護を主軸に置いて戦うよ。
後方から戦況分析しつつ、敵の攻勢発起点を破壊する様にパラドクスを全力で撃ち込み、攻撃を頓挫させるようにし、味方に対してその地点を報告。
その後もパラドクスで味方の攻撃の援護を行うようにするね。

敵も相当……焦っているようね……まぁ……楽しいからいいけど……

ぽつりと呟きながら、援護に徹しようね……。


イルゼ・シュナイダー
ベルリン王宮、此処を強襲するのは恐れ多いとも感じますが
それ以上に『怒り』を、すべてを奪われた怒りを覚える場所ですね
私のような新兵には早い戦場かもしれません。ですが、此処に挑まずにはいられないのです

中庭に対空部隊ですか
しかし、その高射砲を地上目標に使用して王宮に被害は出ないのですか?
ともかく、皆さんの邪魔にならないように支援射撃だけでもやってみせます!
左手に持つカノーネシュヴェルトの刀身が中心から2つ割れてビーム砲になって、右手は手首が外れて腕部内蔵銃の銃口が露出します
王宮を背にすることで少しでも敵が攻撃を躊躇するようにして、一斉射撃で皆さんを援護します!


ライカ・ネイバー
アドリブや連携等歓迎
(戦闘中はダッシュ、ジャンプ、空中戦、地形の利用で常に走り回ります)

今日もお手伝いに来ましたよ〜
大騒ぎするだけとはわかりやすくて良いですねぇ
頑張って引っ掻き回します!

わたしはみんなが攻撃しやすいように【撹乱】しますね〜
鎖刃剣を起動、どでかいエンジン音(【大声】)で敵の気を引きーの
不死戦士さんを召喚!『戦技:屠殺場』でラン&ガンです!
狙い撃ちされない様に動き続けながら銃と鎖刃剣で片っ端から攻撃しましょ

他の人に気を取られている敵は狙い目ですねぇ
拳銃をショットガンに改変、至近距離からぶち抜いちゃいますか

わたしをなんとかしないと詰んじゃいますよ〜
その時にはもう遅いと思いますけどね!


●序幕
 ずっと放置されていたであろう廃線跡の地下道に、JR山手線の車両に似た真新しい列車が停まっていた。
 違和感のある光景だが、その列車がパラドクストレインとなれば、話は別だ。
「こういう機会を掴めたからには意地でも手放さないよ!」
 車両側面に並ぶ黄緑色の扉が一斉に開き、ミント色の翼を有したデーモンの少女――三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)が意気揚々と降り立った。
 続いて降りてきたのは、眼鏡にゴスロリドレスという取り合わせの娘。
 この機械化ドイツ帝国に生を受けたベアストリア・ヴァイゼンホルン(ジャンカー系眼鏡女子・g04239)である。
「……『こういう機会』とは?」
「大物のところに殴り込める機会に決まってるじゃない」
 無表情に尋ねたベアストリアに麻緒が元気よく答えている間に三人目が降りてきた。
 奇妙な形状の大剣を携えた娘――イルゼ・シュナイダー(サイボーグの殲滅機兵・g06741)。サイボーグである彼女もまたこのディヴィジョンの出身者だ。
 四人目も姿を現した。バスタードソードを思わせるチェーンソー剣を腰に吊るした少女。
 ワールドハッカーのライカ・ネイバー(隣人のように・g06433)である。
「今回の任務って、ようは王宮内で大騒ぎすればいいんですよね? 判りやすくていいですよねぇ」
 脳天気な調子で仲間たちに語りかけるライカ。
 一方、イルゼの表情は暗かった。
「判りやすいのは結構ですが……ベルリン王宮で狼藉を働くのは畏れ多いような気もしますね」
「だったら、無理せずに休んでてもいいんですよぉ?」
「いえ、無理はしてません。かの王宮によって喚起される感情は畏怖の念だけではありませんから……」
 その感情がなんであるかを尋ねる者はいなかった。
 尋ねるまでもないのだ。
 ディアボロスである彼女らは皆、同じ感情――怒りを抱いて生きているのだから。
「さあ……行きましょうか……」
 ベアストリアが仲間たちを静かに促し、歩き出した。

●ライカ・ネイバー(隣人のように・g06433)
 中庭で待ち構えていたのは、下半身が戦車みたいな形になってるゾルダートの部隊。
 わたしたちが地下道から躍り出た瞬間、彼らは――
「敵襲! 敵襲!」
 ――大声をあげて、隊列を組み直しました。
 大声といっても、慌てふためいている感じはしませんねぇ。よく訓練されているようです。とはいえ、感情を完全に抑え込んでいるわけでもなさそう。ものすごい殺意と戦意が伝わってきますぅ。
 それに比べて、ベアストリアさんとイルゼさんは落ち着いたもの。クールに言葉を交わしていますよ。
「警戒していただけあって……素早く対応できてるね……」
「令震さんが言っていたように士気も高いようです」
 もっとも、こっち側の全員がクールというわけではありません。
「士気が高い? 上等っ!」
 と、熱い叫びを発したのは麻緒さんです。
「邪魔するなら、まとめて凍ってもらうよ!」
 叫びは熱くとも、敵に放ったパラドクスは超低温。そう、アイスエイジブリザードですぅ。
 白い吹雪が何体かのゾルダートを包み込みました……が、白かったのは最初だけ。すぐに灰色に濁ってしまいましたぁ。ゾルダートたちが煙幕を噴射したようです。
 そして、煙幕の向こう側で連射音が響き、何十発もの弾丸が飛んできました。
 いやー、激しい銃撃ですねぇ。
 わたしも負けずに激しくやっちゃいましょう。
 こうやってチェーンソー剣『クリムゾン・ハウンド』を構えてぇ、スターターロープを引っ張るとぉー――
 グルルルルゥーッ!
 ――ほーら、獣の唸り声めいた駆動音が激しく響いてきましたよぉ。
 でも、これだけは物足りないですね。
 もっと激しくするためにお仲間を呼びましょうかぁ。

●ベアストリア・ヴァイゼンホルン(ジャンカー系眼鏡女子・g04239)
 吹雪と煙幕が混じり合った灰色の壁の向こうから襲い来る横殴りの弾雨。
 こんな状況で一箇所に固まっていることを選ぶのはよほどの馬鹿か自信家でしょうね。
 僕たちはそのどちらもでないので、四方八方に散開した。『僕たち』というのは僕と他の三人だけじゃない。いつの間にやら、骸骨の姿をした戦士が加わっている。ライカさんがパラドクスで召喚したみたい。
 それにフライトドローンの編隊もやってきた。こっちは僕が召喚したの。結構な数があるから、囮として活用できる……と、思ったんだけど、役に立ちそうにない。指示できるのは一度に一機だけだし、敵も無力なドローンを相手にするつもりはないようだから。
 でも、問題なし。囮役は他にもいる。
 それは誰あろう、ライカさん。
「ほらほら、こっちですよぉ!」
 大きな声とチェーンソー剣のエンジン音で敵の注意を引いてる。
 もちろん、注意を引くだけでなく、攻撃もしているよ。骸骨兵士と一緒にダッシュで間合いを詰めてチェーンソー剣で斬りつけ、飛び退ったかと思いきや、横に回り込み、また斬りつけて……。
 そして、敵が彼女に気を取られている間に――
「文字通りフリーズさせてやるんだから!」
 ――麻緒さんが吹雪をまた呼び起こした。
 更にイルゼさんも攻撃に参加。
「アナイアレイション、発動」
 左手に持っていた大剣の刃が真っ二つ割れて砲身へと変わり、右手の手首の辺りからは銃身が姿を現し、ビームと銃弾が続け様に飛んだ。
 ……と、味方の奮闘振りについてばかり語っていると、一方的に攻めているように思えるかもしれないけど、実際はそうじゃない。敵はチェーンソー剣で斬られる度に、吹雪を浴びる度に、ミサイルや銃弾を撃ち込まれる度にしっかり反撃している(逆説連鎖戦においては、攻撃してきたすべての相手に反撃できるから)し、標的にされてない敵たちもこちらに攻撃を仕掛けている。
 その『標的』の中には僕も含まれていた。やれやれ。援護役に徹したいのだけれど、そうもいかないみたいね。

●イルゼ・シュナイダー(サイボーグの殲滅機兵・g06741)
「さあ……行きなさい……」
 カーテシーでもするかのようにドレスのスカートの両端をつまんでみせるベアストリアさん。
 次の瞬間、スカートの裾から噴煙とともに二発のミサイルが飛び出しました。先端にシャークマウスが描かれたミサイルです。
 それらは地を這うように超低空を飛び進んだかと思うと、急角度で上昇し、そして、それ以上の急角度で降下しました。
 各々が一体のゾルダートに向かって。
 爆発する二発のミサイル。
 爆発に巻き込まれる二体のゾルダート。
 前者は短い生涯を終えましたが、後者はまだ健在。煙幕を噴射しつつ、ベアストリアさんめがけて機銃を連射しました。
「煙幕越しの銃撃というのは……うっとうしいね……」
 連射音に紛れてベアストリアさんの呟きが聞こえてきました。何発もの弾丸を撃ち込まれているにもかかわらず、その声は至って冷静。
「敵にもうっとうしい思いをしてもらおうか!」
 麻緒さんがまたもやアイスエイジブリザードを敵に浴びせました。同時に煙幕も浴びせました。そう、敵の張った煙幕を吹雪で押し返したのです。
 すかさず、ベアストリアさんがスカートの裾からミサイルを発射。
「どうですか? やっぱり、うっとうしいですかぁ?」
 手を振ってミサイルを見送りながら、ライカさんが煙幕の向こうに問いかけました。
 返事はありません。
 代わりに、爆発音が聞こえてきました。

●三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)
 自縄自縛ならぬ自煙自盲に陥ったゾルダートは撃破できたけど、その傍にいた別のゾルダートが煙幕の残滓の奥から機銃を撃ってきた。
「おっと!?」
 横倒しになったゾルダートの残骸というか死骸の後ろに私は滑り込んだ。その直後に始まったのは、二種類の音が混じり合ったパーカッション。残骸/死骸に銃弾が減り込む『ずぎゅーん!』という音と、銃弾が跳ね返る『ちゅいーん!』という音だよ。
 物騒なパーカッションが済んだところで顔を出すと、ライカちゃんの勇姿が見えた。
「ほら、わたしをなんとかしないと――」
 走り続けながら、ライカちゃんはチェーンソー剣を三連銃身のショットガンに持ち替え、『ズドーン!』とブッ放した。
「――詰んじゃいますよぉ」
 足を止めることなく、ショットガンを折って排莢し、散弾を装填して、再びズドォーンッ!
 だけど、ショットガンによる攻撃はパラドクスではなかったらしく(ライカちゃんが発動させてるパラドクスはたぶん『骸骨の兵隊と一緒に敵を斬る』みたいな感じのやつだしね)、ゾルダートにはまったく通用していない。
「バカめ! 詰むのは貴様のほうだ!」
 ゾルダートは上体を倒して、背中の大きな大砲をライカちゃんに向けたけど――
「ぐわっ!?」
 ――それを撃つ前に自分が吹き飛ばされた。
 ギザギザの歯を剥き出しにしたミサイル(いや、本物の歯じゃなくてイラストだけどね)が突っ込んできたから。言うまでもないとは思うけど、発射したのはベアストリアさんだよ。
 続いて動いたのはイルゼさん。王宮の壁に背中をくっつけるようにして、剣型のビーム砲や右手の機銃をゾルダートに突きつけた。
「その高射砲を私に向かって撃てば、背後にある王宮も無傷では済みませんよ?」
「それがどうした!」
 脅迫(?)に屈することなく、ゾルダートは体勢を直して大砲を構えた。
「我らが守るべきは陛下であり、王宮ではない!」
 そして、イルゼさんめがけて砲弾を次々と撃ち込んだ。
 当然、イルゼさんも黙ってない。ゾルダートめがけてビーム砲と機銃を連射。
 うわー、凄まじい撃ち合いだねー。でも、ゾルダートはイルゼさんに気を取られて、背中がお留守になってる。
「戦場で……我を忘れることは……死を意味するのよ……」
 ベアストリアさんがギザギザ歯のミサイルをまた発射した。
 私もおなじみのアイスエイジブリザードを発動! 凍りつけー!
 で、数秒も経たないうちにゾルダートは残骸/死骸に変わった。
「わたしをなんとかしなくても、詰んじゃいましたねぇ」
 そう言い残して、ライカちゃんが新たな敵に向かっていった。
 
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!

エリル・ウィスタリア
【SPD】※連携・アドリブはご自由に

ここを突破出来れば断片の王に近付く事が出来るのね。
…分かった。行くよ、弟。

地上にいる敵ならすごく楽なの。私、お空を飛べないから。
やることはシンプルかつスマートに。パラドクスでブン殴る。
≪地形の利用≫で少しでも有利な位置を確保しつつ、神蝕呪刃で手近な相手を切っていくわ。≪連撃≫も併用して斬って斬って斬りまくるの。
一斉射撃は動き回りながら盾に出来そうなものの陰に隠れるし、使えるものなら敵の懐に飛び込んでみたりする。同士討ちしてくれないかしらね。
それでもどうにもならないなら、弟人形にかばってもら…庇ってもらうわ。こいつら絶対許さない。≪呪詛≫も込めて切り刻むわよ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携、アドリブ歓迎
同戦場の方と協力、残留効果は相互活用

対空部隊か……飛翔で狙い撃たれるのは厄介だが
戦い方は一つではないしな
ここで、立ち止まってはいられない
……仇敵への道、拓かせてもらおう

戦況を偵察、観察し、仲間と情報共有
剣と盾を掲げる天使を描き出し
突撃する味方を盾とセルフクラフトで守護しつつ
標的を合わせて確実に打ち倒していく
セルフクラフトの防壁の陰から、援護役の味方が動きやすいように
相手の陣形を看破し、連携の要から撃ち崩していこう
味方と連携を取り、死角や隙を晒した相手へ攻撃

反撃は盾と魔力障壁で防御
味方を狙う敵を優先し攻撃


無堂・理央
ここに展開してるのは対空部隊?
地上で混乱を起こしてる内に大規模部隊空輸とか警戒してるのかな?


無双馬『クロフサ』に騎乗して突入!
今回の戦場はバリケードもない開けた空間。
なら、クロフサの脚の早さは存分に活かせるね!
中庭に着く前から全力疾走で勢いをつけておいて、中庭に到着したら最短最速で敵陣に斬り込むよ!
普通は待ち受ける敵射撃にはジグザグ機動とか織り交ぜた方が良いんだろうけど、今回は敵がこちらに狙いを絞り込む前に接近戦に持ち込む!

敵陣に斬り込んだら、馬上槍で突いたり薙いだり、クロフサの蹄で蹴飛ばしたり踏んづけたり、パラドクスの力で纏ってる雷を手当たり次第に放電したりと電撃的に徹底的に攻めまくるよ!


オリヴィエ・ルー
士気が高くて絶対に逃げない相手と、何度でも……か
いいね。そういうのは嫌いじゃないよ

とは言え、大勢を一度に相手取るのは得意ではないし、立ち回りには気をつけないと
普段なら『コッペリア』が壊れるまで盾にするけれど、武器として活用したいから機銃掃射は共に回避を
クレイドルの方は別に気にしないし、これを盾にするか避けるかは臨機応変に対応したいな

人形と一緒に攻撃を避けたり、土埃や射撃で地形の変わった場所があればそれに隠れつつ、距離を詰めて《ダンスマカブル》を叩き込んで離脱を繰り返すね
届く範囲の敵に一撃入れて、決して無理はせず
……ふふ。長持ちさせればさせた分だけ愉しめるから、こういう相手は嫌いじゃないんだよ?


●幕間
 機械ベルリン王宮の中庭は広かった。
 しかし、狭かった。
 ディアボロスと半人半車のクロノヴェーダが走り回り、吹雪が舞い、ミサイルが飛び、チェーンソー剣が唸り、レーザーが閃き、銃弾が跳ね、砲弾が炸裂する、混沌の坩堝のごとき戦場としては……。
 煮えたぎるその坩堝の中に新たな混沌の滴が落とされた。
「おい! 今の声を聞いたか?」
 ディアボロスたちに応戦しつつ、一体のゾルダートが別のゾルダートに尋ねた。
「声? なんのことだ?」
「あっちのほうから聞こえてきただろ!」
 と、ゾルダートが顎をしゃくってみせた方向に敵影はなかった。いや、あったとしても見えないだろう。ゾルダートが噴射した煙幕とキャタピラが巻き起こした砂塵によって、茶色がかった灰色のカーテンが形成されているのだから。
「あれはたぶんの馬の……」
 ゾルダートの言葉は遮られた。
 馬の嘶きによって。
 今度のそれは、尋ねられたほうのゾルダートの耳にも届いた。
 そして、目にも届いた。
 嘶きの主である青毛の無双馬がカーテンの奥から飛び出してきたのだ。
 その鞍の上で三つ編みを風にたなびかせている少女は無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)。
「バリケードの類が設けられてない開けた空間……脚の速さを存分に活かせそうだね、クロフサ!」
 戦場としては狭すぎる中庭ではあるが、彼女と愛馬のクロフサにとっては十二分に広いらしい。
 坩堝に投下された混沌の滴は理央たちだけではない。
 二つの人影が煙のカーテンから滲み出て、一組の男女の姿を取った。魔力で形成された青い翼を有したデーモンの男と、目隠しをしたドレス姿の女。
「士気が高く、退くことを知らない兵隊たちか」
 デーモンの男――オリヴィエ・ルー(青を宿す・g01610)は戦場に視線を巡らせた。翼と同じ色の瞳に凶悪な光を浮かべて。
「そういう手合いとやるのは嫌いじゃないよ」
 そんなオリヴィエに対して、目隠しをした女はなにも言わなかった。
 言えるわけがない。
 コッペリアという名を持つ彼女は(その名からも察しがつくように)人形に過ぎないのだから。
 続いて現れた銀髪の少女――エリル・ウィスタリア(雪を待つ花・g00912)もまた等身大の人形を伴っていた。その少年型の人形の顔立ちはエリルに似ており、二人が並んで立つ姿は姉弟か兄妹のように見える。
 更にもう一人のディアボロスがカーテンの奥から出てきた。
 オリヴィエと同じく青い翼を持った青年。ただし、その翼は魔力で形作られたものではない。
 天使の翼だ。
「対空部隊というのは厄介だな」
 と、その青年――エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は呟いた。
「この翼も今回は使いどころがなさそうだ」
「私にとっては、それほど厄介な敵じゃないわ。お空なんて最初から飛べないもの」
 エリルが軽く足踏みをした。
 そして――
「行くよ」
 ――走り出した。
『行くよ』と声をかけた相手はエトヴァでもなければ、オリヴィエでもない。
 あの人形だ。

●エリル・ウィスタリア(雪を待つ花・g00912)
 どかん! ……と、大砲が吠えてる。
 だだだだだっ! ……と、機銃が唸ってる。
 きゅらきゅらきゅら! ……と、キャタピラが鳴ってる。
 そんな騒がしい戦場を私は弟と一緒に走っては立ち止まり、また走り出し、すぐにまた立ち止まった(言うまでもないと思うけど、『弟』というのはこの人形のことだからね)。
 何度も立ち止まっているのは、銃弾を避けるために身を隠す必要があるから。遮蔽物として利用させてもらったのはゾルダートの死体。下半身が安定した体型なので、大半のゾルダートは左右のキャタピラを地面に着けた状態で死んでる。『擱座』とはよく言ったものね。
 一方、理央さんを乗せたクロフサはずっと走り続けていた。騒音だらけの戦場にあって、彼(それとも、彼女?)の蹄が立てる『ぱからっぱからっ♪』というリズミカルな音だけは耳に心地いい。
 耳だけじゃなくて目にも楽しみを提供するため、私は死体の陰から顔を覗かせ、理央さんの雄姿を見た。
 実際、それは『雄姿』と呼ぶに相応しいものだった。なんらかのパラドクスを使ったらしく、彼女とクロフサの体は雷を纏っていたんだもの。
「疾風迅雷とはこのことだよ!」
 理央さんはクロフサとともに敵陣に突っ込むと、馬上槍を振り回して雷光を撒き散らしながら、ゾルダートたちの間を駆け抜けた。
 ゾルダートたちは素早く機銃で応戦。もっとも、銃弾が撃ち出されると同時にどす黒い液体(改造される前は『血』と呼ばれていたであろうもの)も噴き出したけどね。
 理央の槍につけられた無数の傷口から。
「豪快な戦い振りだね。ボクにはとても真似できないよ」
 と、すぐ傍から声がしたので、私はそちらに目をやった。
 いつの間にか、そこにはオリヴィエさんがいた。

●無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)
 砲塔の代わりに人間の上半身をくっつけた戦車のごときゾルダートたちの間をボクとクロフサは駆け回った。槍を突いたり、払ったり、時にはクロフサの蹴りを食らわせたりしながら。
 もちろん、敵は無抵抗じゃない。その場で体をスピンさせて(『チョーシンチセンカイ』とか言うんだっけ?)ボクたちの動きを追い、機銃をガンガン撃ってきたよ。
 ボクもクロフサも何発かの銃弾を浴びたけど、決して止まらなかったし、攻撃の手も緩めなかった。
「削り合い、おおいに結構! そっちが十ほど削ってる間にこっちは最低でも百は削っちゃうよ!」
「どうせなら、二百といこうじゃないか」
 ボクの叫びに応じて、オリヴィエさんが敵陣に躍り込んできた。
 いえ、正確に言うと、躍り込んできたのは綺麗なお人形さんのほう。オリヴィエさんはその人形の後ろでオーケストラの指揮者さながらに腕を振ってる。
「その気になれば、三百でもいけるかもしれないけど――」
 オリヴィエさんの腕の動きに合わせて、お人形さんは二体のゾルダートに蹴りや手刀を次々と浴びせた。
「――すぐに仕留めてしまったら、つまらないよね。殺戮の饗膳は冷めてからが食べ頃なんだ」
「そう言わずに熱いうちに食らえよ!」
 咆哮と銃声を同時に響かせるゾルダート。
 でも、オリヴィエさんは咄嗟に身を隠した。ボクたちがここに来た時にはなかった遮蔽物――コンクリートのブロックの後ろにね。
「セルフクラフトの防壁が役に立ったな。敵の火力は相当なものだから、長くは保たないだろうが……」
 そう言いながら、ブロックの斜め後方にエトヴァさんがゆらりと現れた。
 ボクたちがここに来た時にはいなかった助っ人と一緒にね。

●オリヴィエ・ルー(青を宿す・g01610)
 セルフクラフトで生み出されたコンクリートブロックの陰で体を小さく縮めながら(なにせ一辺が一メートルくらいしかないんだ)、ボクはエトヴァのほうを見た。
 彼の隣には天使がいた。
 この場合の『天使』っていうのは比喩じゃない。本当に天使の姿をしているんだ。エトヴァがそうであるように……いや、エトヴァよりも天使っぽいかもしれない。全体的にキラキラしている上に、見るからに神聖な感じの装飾が施された長い槍と大きな盾を持っている。
 ちなみにエトヴァも得物を手にしているけれど、それは槍でも盾でもなく、青い水晶の柄の絵筆だ。
 もう判ったよね?
 そう、このキラキラな天使の正体はパラドクスの産物。リアライズペインターたるエトヴァが描き出して実体化させた存在なんだよ。
「渾身の作に『悪魔的』などというレッテルを貼られ、画壇から追いやられたこの俺が――」
 と、天使を描いた天使は静かに独白した。
「――よもや、天使を生み出すことになるとはな」
 本人は自嘲しているつもりなのかもしれないけど、その声音は淡々としていて、感情がちっとも伝わってこない。
 でも、次の言葉からは伝わってきた。
「仇敵への道、拓かせてもらおう」
 クロノヴェーダへの怒りがね。
 天使が盾を前面に構え、走り出した。
 同時にボクもブロックから飛び出した。傍らに待機させていたコッペリアを再び操りながら。ちなみに言っておくと、コッペリアは待機している間に銃弾を食らいまくって、穴だらけになってる。今回は荒っぽい使い方(盾の代わりとかね)はせず、なるべく一緒に攻撃を避けようと思っていたんだけど……そうはいかなかった。自分の身を守るので精一杯だよ。
 そのボロボロのコッペリアを天使と一緒に敵のほうに突っ込ませると、後ろのほうからエリルの声が聞こえてきた。
「オリヴィエさんって、人形の扱いがぞんざいよね」
 確かにぞんざいですが、それがなにか?

●エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)
 盾で身を守りつつ、俺の天使はゾルダートたちに槍を突き立てた。
 オリヴィエさんの人形も連続攻撃を仕掛けた。舞いを思わせるその動きは実に優雅ではあるが……エリルさんが指摘したとおり、ぞんざいに扱っているようにも見えるな。
「あ? べつに私はオリヴィエさんのことを責めてるわけじゃないからね」
 俺の心中を読み取ったのか、エリルさんがそう言った。
「人形遣いにとって、人形は武器に過ぎないんだから、手荒に扱うのは当然のことよ。むしろ、ただの人形を溺愛するほうがどうかしてるわ」
 エリルさんの口から『ただの人形』なんて言葉が出てくるとは……どういった心境の変化だ?
「もっとも、弟はただの人形なんかじゃないけれど」
 いや、なにも変化してなかったようだ。
『弟』と呼んだ少年型の人形とともに彼女は敵陣に飛び込んでいった。得物は刀剣だが、刃のない柄を握って腕を振り回しているように見える。刃がほぼ透明だから。
 見えない刃で鋼の体を斬り裂かれながらも、ゾルダートは機銃で反撃した。
 エリルさんは咄嗟に人形を操って盾にした……いや、彼女にとっては『弟が庇ってくれた』ということなのだろう。
 人形だけではすべてを防ぐことはできず、当人も少しばかり被弾したが、だからといって怯んだりはしなかった。
 むしろ――
「よくもやってくれたわね……」
 ――怒りに火がついたようだ。大切な弟を傷つけられたから。
「いや、やってくれたもなにも貴様が自分で盾にしたんだろうが!」
 一体のゾルダートが反論したが(敵とはいえ、同意せざるを得ない)、エリルさんは耳を貸さずに斬りかかった。
 今度は反撃はなかった。その一太刀がとどめとなったので。
 しかし、別のゾルダートが俺に向かって攻撃してきた。煙幕越しに高射砲を発射したんだ(高射砲といっても、俺たちが誰一人として飛んでいないものだから、ほぼ水平の角度で撃ってばかりなのだが)。
 セルフクラフトのブロックが直撃を受けて粉微塵になり、傍にいた俺もダメージを受けた。
「エトヴァさん、大丈夫?」
 薄れつつある煙幕の向こうから声をかけてきたのは理央だ。
「問題ない。俺に構わず、攻め続けろ」
 敵陣の一点――隊列に生じた間隙を俺は指し示した。
「りょーかい!」
 クロフサを駆って間隙に突進する理央。
 一体のゾルダートが素早く超信地旋回して、彼女の動きを追いかけようとした。もっとも、旋回したのは体だけ。頭のほうは体についていけず、地面に落ちた。理央の槍の一薙ぎで刎ねられたんだ。
 もちろん、俺の天使も槍を振るい続けている。
 宣言通り、拓かせてもらうぞ。
 すべてのディアボロスの仇敵――断片の王たるヴィルヘルム2世へと通じる道を。
 
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【腐食】LV1が発生!
【セルフクラフト】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【壁歩き】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV3になった!

●幕間
 すべてのトループス級ゾルダート『フラックシュッツェ・トラバント』が沈黙し、混沌の坩堝と化していた中庭に静寂が戻った。
 ただし、ほんの一時だ。
 坩堝は再び火にかけれた。
 ディアボロスたちの前に現れたアヴァタール級ゾルダートによって。
 ゾルダードでありながら、彼もしくは彼女の外見は機械的なものではなかった。
 かといって、有機的なものでもなかった。
 そして、硬質な印象を受けると同時に軟質にも見えた。
 大量の水銀が人の形を取り、軍服を纏っている――そんな姿をしているのだから。
 ディアボロスたちに向かって、アヴァタール級は足を踏み出した。
 その瞬間、彼もしくは彼女の顔はぐにゃりと変形して――
「アー、モウ! 参謀総長ニオ預カリシテイタ部隊ガ全滅ダァーッ!」
 ――理央の顔になった。
 声までもが理央と同じだ(少しばかり違和感があったが)。
 更に踏み出すと、今度はエリルに変わった。
「……ヨクモヤッテクレタワネ」
 そして、また一歩。
 顔と声が麻緒に変化した。
「絶対ニ許サナインダカラ!」
 次はオリヴィエ。
「覚悟ハデキテルカナ?」
 ベアトリス。
「覚悟ノ有無ニカカワラズ……死ンデモラウケド……」
 エトヴァ。
「オマエタチハ『仇敵ヘノ道ヲ拓ク』ダノナンダノト嘯イテイタガ――」
 ライカ。
「――拓クドコロカ、ココデ閉ジチャウンデスヨォ」
 イルゼ。
「ソシテ、二度ト開カレルコトハナイデショウ」
 百面相の披露を終えると、アヴァタール級はのっぺらぼうに戻った。
 そして、首を掻き切るジェスチャーをしてみせた。
 変身していない時は喋れないのかもしれない。
 
十六夜・ブルーノ
変幻自在とはすごいな
本当に全部模倣できるのか試してみよう

ブズーキを華麗に格好良く演奏
ついてこれる?
初心者を導く熟練者みたいに
シュピーゲルくんの弦捌きの成長を楽しむ
中々さまになってきた

自分二人のセッションを堪能しよう
同じメロディの全く瓜二つの旋律は
衝撃波となってぶつかり合う
うん流石に成長してる

けれど【託されし願い】が
歴史を取り戻したいと願う皆の想いが
力を与えてくれる

敵の旋律を自身のそれに共鳴させて
増幅ブースターに

二倍の力となった旋律が
シュピーゲルくんを翻弄し錐揉みさせる

音楽はテクニックだけじゃない
込める想いが大切だ
歴史を取り戻す誓いが勝ったね

戦闘後は死出の旅路の餞に演奏を続ける
良い旅を


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

通信障害で連絡を遮断、パラドクス通信で連携を取る

相手が変じるならば
顔の霞んだままの人物
金髪の青年? 茶髪の癖毛の女性? それから……落ち着いた印象の紳士
……俺の精神を読むとそうなるよな
覚えているのに、思い出せない……

パラドクスで相手の最初の姿を描き出す
姿を返される気分は……?
――さあ、汝自身と踊れ

聴こえた気がする
彼の声で、
君の絵を見に行くよ、と

反撃には魔力障壁を展開し
精神攻撃に耐性もある、囚われずにセルフクラフトで防壁を築き、鈍器を防いだ隙に回避

……俺が顔を教えてほしいんだ
だからこそ、偽物とわかってしまう

味方が狙われていたら援護し、攻撃を続ける

……それでも
会いたい、と胸中に零す


伊狩・真琴 (サポート)
『人の歴史も命も!テメエらの好き勝手にしていい物じゃねえんだよ!』
『自分がどうするかは、人に言われたからではなく自分の意思で決めるべきです。』

武術等の心得は無いため戦闘は体の頑健さを頼りに突っ込んで力任せに殴るのが基本。
パラドクスにより異形化した腕を武器及び盾として使って戦います。
攻撃されそうな人がいれば率先してかばうように動きます。

困ってる人がいれば自分のできる範囲で助けになるよう力を尽くします。
その他、目的達成に必要と判断した事は何であれ積極的に取り組みます。

例え依頼の成功のためでも、他者に迷惑をかける行為及び公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


●エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)
「なめた真似しやがって……」
 ツナギを着た鬼人――真琴さんが吐き捨てるように言った。普段は穏やかな娘さんなのだが、口調が荒っぽいものになっている。怒りのせいだろう。
 で、その怒りを植えつけたゾルダートといえば――
「ハァ? フザケンジャネエ!」
 ――真琴さんの姿に変わっている。当人の意図はさておき、確かに『なめた真似』に見えるな。
「ナメタ真似シテルノハ、オマエラダロウガ! 陛下ノ宮殿デ好キ放題ニ暴レヤガッテヨォ!」
「こんなのは暴れたうちに入らねえよ! 本気で暴れるのはこれからだ!」
「オモシレエ! カカッテコイ!」
 売り言葉に買い言葉。怒声の応酬が物理的な戦闘に変わりかけた、その時――
「はははっ」
 ――ブズーキ型の魔楽器を携えた少年が笑った。
 サウンドソルジャーのブルーノさんだ。
「すごいね、その変幻自在ぶり。変身しているところを目の当たりにしなきゃ、どっちが本物か判らないかもしれない。ねえ、ドゥー?」
「めぇーっ」
 と、ブルーノさんに答えたのはメーラーデーモンのドゥー。
 真琴さんの姿をしたゾルダートはブルーノさんとドゥーをぎろりと睨みつけた……が、数秒も経たぬうちに『ぎろり』の要素が消え、涼しげな眼差しに変わった。
 いや、顔そのものが変わった。
 ブルーノさんへと。
「きみノ相棒ハ随分ト余裕ガアルネ、どぅー」
「め、めぇぇぇ!?」
 ドゥーは目をぱちくりとさせながら、二人のブルーノさんを交互に見た。
 しかし、ブルーノさん(もちろん、本物のほうだ)は落ち着いたもの。
「べつに余裕があるってわけでもないよ。でも、ちょっと試してみたいとは思ってる。キミがどこまで模倣できるのか……」
「俺ノぱらどくすハ『模倣』ナンテれべるジャナイヨ。本物ヲ超エルコトガデキルンダ」
「できるもんか」
 と、真琴さんが即座に否定した。
「おまえらがどんなにあがいたところで超えられやしないぞ」
 その通りだ。絶対に超えられない。
 それどころか、届きもしないだろう。
 俺たちをディアボロスたらしめている感情――怒りが心の中で激しく燃え続けている限り。

●伊狩・真琴(成鬼・g02897)
 クロノヴェーダは私たちから多くのものを奪い取りましたが……いえ、多くのものを奪い取ったからこそ、これだけは決して奪えません。
 そう、怒りだけは。
 とはいえ、搦め手を使ってくる敵を前にして、怒りに心身を委ねるのは危険ですね。少し落ち着きましょうか。そう、少しだけ……ほんの少し……。
 と、私が感情を抑えている間にブルーノさんが行動を起こしました。
「ついてこれる?」
 魔楽器を弾き始めたのです。
 聴く者の勇気を奮い起こす雄々しい旋律が流れ、いくつもの映像が私たちの周囲に浮かび上がりました。映し出されているのは、かつてディアボロスに助けられたであろう市井の人々。そう、これらはパラドクス効果の『託されし願い』による映像です。
「ツイテイケルサ」
 ゾルダートもまた演奏を始めました。腕を魔楽器に変えて。もっとも、『託されし願い』はありませんが。
「イヤ、ツイテイケルドコロカ、追イ抜イテミセルヨ」
「それは楽しみだ」
 ブルーノさんが演奏のスピードを速めました。
 敵も演奏のスピードを速めました。
 音を聴いてるだけなら、とても戦っているとは思えないでしょう。
 しかし、それは戦いでした。両者の弦の調べは不可視の銃弾とも弓矢とも白刃とも知れぬものとなって飛び交い、相手を傷つけているのですから。
「自分自身とセッションができるなんてねえ」
「実ニ貴重ナ体験ダナ」
 お互いの攻撃によって傷だらけになり、血塗れになっているにもかかわらず、ブルーノさんも敵も笑っています。
「素晴らしいセッションであることは認めるが――」
 エトヴァさんが青い絵筆を構えました。
「――聴客で終わるつもりはない。悪いが、邪魔をさせてもらうぞ」
「右に同じです」
 私は両腕に力を込めて、パラドクスを発動させました。

●十六夜・ブルーノ(希望の配達人・g03956)
 魔楽器による勝負を始めた時点ではゾルダートくんよりも俺のほうが演奏は上手かった。
 だけど、弾き続けているうちに彼はみるみる上達した。『追い抜いてみせる』という発言は思い上がりでもはったりでもなかったのかもしれない。
 もっとも、追い抜かれる前に――
「悪いが、邪魔をさせてもらうぞ」
「右に同じです」
 ――セッションは中断を余儀なくされたけどね。
 エトヴァさんと真琴さんの言葉を聞くと、ゾルダートくんは腕を魔楽器から銃火器に変えた。いや、腕だけじゃない。肩だの胸だの腹だの腰だの足だのから次々と銃口を突き出した。
 そして、一斉に発砲!
 弾雨に曝されたのは真琴さんだ。
「私はブルーノさんのように音楽を奏でることもできませんし、エトヴァさんのように絵を描くこともできません」
 盾で銃弾を防ぎながら、真琴さんはゾルダートくんに突き進んでいく。
「ですから、力押しでいかせてもらいます」
『盾』と言っても、普通の代物じゃない。
 それは腕だった。
 鬼神変のようなパラドクスで異形化させ、巨大化させて、前面に翳しているんだ。
 だけど、ゾルダートくんとの間合いが詰まると――
「ブッ壊れろ!」
 ――真琴さんは腕の役割を盾から武器に変えた。
「……!?」
 巌のような拳を顔面に受け、大きく体勢を崩すゾルダート。悲鳴や苦鳴をあげなかったのはさすが……と、言いたいところだけど、声を出したくても出せなかっただけかな? 殴られた瞬間に変身が解けて、元の姿に戻ってしまったんだから。
 真琴さんが二発目を繰り出すより先にゾルダートくんは飛び退り、またもや変身した。
 今度の姿は俺でも真琴さんでもエトヴァさんでもない。
 金髪の若い男だ。
 顔はよく見えないけど……たぶん、俺が知ってる人じゃないと思う。
「俺の心を読んだようだな」
 と、エトヴァさんが静かに言った。
「もっとも、当の俺もあなたのことをはっきりとは思い出せないのだが……」
「君ノ絵ヲ見ニ行クヨ」
『あなた』であるところの金髪ゾルダートが謎めいた言葉を発した。
 同時に銃弾も撃ち出した。またもや体の一部を銃火器に変えて。
 エトヴァさんはセルフクラフトでコンクリートの立方体を生み出し、うずくまるようにしてその陰に身を隠した。
「――」
 彼の口が動くのが見えた。なにか言ったみたいだけど、銃弾がコンクリートを削る音に邪魔されて聞こえない。
 手が動くのも見えた。青い筆を宙に走らせて、絵を描いている。
 それはすぐに完成した。
 そして、実体化した。

●幕間
 コンクリートの防壁の陰から一人の男が飛び出した。
 ゾルダート(が変身した姿)と同じ容貌の男。
 エトヴァの絵筆から生み出されたその男は銃弾を満身に浴びながらも怯むことなく、鏡像のごとき敵に襲いかかった。
「さあ、汝自身と――」
 そう呟きながら、エトヴァもまた防壁の陰から姿を現した。無防備だが、彼を攻撃する余裕はゾルダートにはない。絵の男を相手にするので手一杯だ。
「――踊るがいい」
 絵の男がゾルダートを殴りつけ、蹴りつけた。創造主の言葉どおり、踊るように。
 攻撃を受ける度にゾルダートの姿は変化した。
 茶髪の癖毛の女に。
 落ち着いた印象の紳士めいた男に。
 また、金髪の青年に……。
「……」
 虚無的な眼差しでそれを見つめるエトヴァ。
 その背後から音楽が聞こえてきた。
 ブルーノが演奏を再開したのだ。
 すると、ゾルダートもまたブルーノの姿に戻り、魔楽器(に変えた腕)を奏でた。
「どんどん上手くなってるね」
 敵にして協奏者でもあるゾルダートにブルーノは微笑みかけた。
「でも、音楽はテクニックだけじゃない。込める想いが大切なんだ」
「めぇーっ!」
 ブルーノの紡ぎ出す旋律(プラス、ドゥーの声)が敵/協奏者のそれを押し返していく。
 その進撃に真琴も加わった。
 異形化した拳に咆哮を添えて。
「おらぁーっ!」
 腹部に拳を打ち込まれ、ゾルダートはよろけた。外見が液体金属ののっぺらぼうに戻ったか思うと、真琴、ブルーノ、金髪の男、癖毛の女、落ち着いた紳士……と、めまぐるしく変化し、のっぺらぼうへと回帰した。
 その様子をあいかわらず虚無的な目で眺めつつ、エトヴァが口を開きかけたが――
「……」
 ――言葉を吐き出す寸前に思い留まった。
 
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
【建造物分解】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【反撃アップ】がLV2になった!

三苫・麻緒
へえ、真似以外にも意思を伝える手段持ってるんだー
だったら他人…それも敵の口を借りて意気込みを語っちゃ駄目だよね?
自分で言いたいことも言えない相手に負ける気はしない!

精神感応でこちらの行動は読まれるというのなら、もう物量戦で行っちゃった方がいいかな
≪連続魔法≫で鏡の数は破壊しきれないように大量に
≪誘導弾≫の効果も乗せて、精神攻撃から逃げ切れないようにしておこう
精神感応による学習や模倣がなくなれば、最早木偶人形もいいところなんじゃない?

回避はやっぱり銃口の向きから狙いを≪看破≫したいところ
ついでに情報のかさまし狙いで雑念でも送ってあげようか
ファ●チキください!他の食べ物もください!


エリル・ウィスタリア
あらあら、私に化けるのは良いのだけど何か足りなくないかしら?
なんてね。この人形は世界に一体しかいないのよ。だって、だって、本当に弟から作られたものなんだから。真似したら切り刻む。

私は距離を取って戦うとか器用な真似は苦手なのよ。
なので、ひたすらぶん殴る。
壁も使ってあちこちから攻撃を仕掛けるわよ。
《連撃》を仕掛けつつ《解体》出来る箇所を探すわ。

…動きについてこれるようになってきてるわね。
弟にも手伝って貰わないと辛いか。盾にするだけじゃないのよ?手を貸して貰えば高く飛ぶ事だって出来るんだから。
人形は大切にしてこそなのよ。

※ネメシス形態は純白のウェディングドレスを身に纏い狂った笑みを浮かべています。


イルゼ・シュナイダー
なんとも形容しがたいゾルダートですね
次から次へと姿を変えて、気味が悪いです
ですが、私だけならばともかく私達ならば、その先に進むことができますっ
アナタに私達を止められはしません!

私がまだ弱いのは私自身が知っていることです
それでも弱いなりに出来ることはあります
元から仲間の中で一番脅威度が低いだろう私の注目度を【モブオーラ】で更に下げて気配を消して、皆さんの攻撃に紛れて隙を突いて予想外のところから一撃を与えます!
それに私に変化して模倣したところで、アナタ一人だけでは紛れるもなにもないですし多少気配を消したところで意味は薄いですよ


●イルゼ・シュナイダー(サイボーグの殲滅機兵・g06741)
 元の姿に戻ったゾルダートは右手の指を奇妙な形に組み、私たちに誇示しました。見たことのない仕種ですが、挑発を意味するものだということは察しがつきます。
「あははー」
 と、その仕種を文字通り一笑に付したのは麻緒さんです。
「最初に見た時も思ったんだけどさー。そういう風に真似っこ以外にも意思を伝える手段を持ってるのに、他人の……しかも、敵の口を借りて自分の意見を語っちゃうのはダメでしょ」
「だからといって――」
 麻緒さんの横でエリルさんが言いました。
「――ジェスチャーだけで意思の疎通をはかられても困るけどね」
「もっともですね」
 と、私が同意した矢先にエリルさんは前言を撤回しました。
「あ? やっぱり、困らないわ。そもそも、クロノヴェーダなんかと意思疎通するつもりはないから」
「それももっともですね……」
「まあ、とにかく!」
 麻緒さんが大声で話の軌道を戻し、ゾルダートにびしりと指を突きつけました。
「自分で言いたいことも言えないような奴なんかには、ぜっんぜん負ける気はしない!」
 すると、ゾルダートは――
「負ケル気ガシナイノハ私ノホウヨ」
 ――そう言い返しました。
 もちろん、自分の言葉で語ったわけではありません。エリルさんに変身したのです。
「言ってるそばから真似っこしてるし……」
 さすがの麻緒さんも鼻白んでいますね。
 一方、真似されたエリルさんは首をかしげています。
「あらあら? 私に化けるのはいいけれど、なにか足りなくないかしら?」
 確かにゾルダートの変身は画竜点睛を欠いたものでした。
 そう、本物のエリルさんと違って、人形を伴っていないのです。
「なんてね」
 エリルさんは肩をすくめ、不完全な変身をせせら笑いました。
「べつに気にしなくていいのよ。あなたごときにこの子を複製できるわけがない。そう、世界でたった一体しかいないこの子を……本当に弟から作られたこの子を……」
 せせら笑いが呪詛めいた独白に変わり、エリルさんの姿もまた変わりました。
 純白のウエディングドレスを纏った姿に……。
 それが彼女のネメシス形態なのでしょう。

●三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)
「私ガ勝ッタラ、弟ハ返シテモラウワヨ」
 エリルちゃんに合わせて、真似っこゾルダートもウエディングドレス姿に変わった。クロノヴェーダがネメシス形態になったところで、戦闘能力が上がったりしないだろうけど……気分の問題なのかな?
「返してもらう? ふざけないで。これまでも、これからも――」
 およそ戦いには向いていない豪奢なドレスの裾をたなびかせて、エリルちゃんはゾルダートに突進した。もちろん、人形の弟くんも一緒。
「――この子は私だけのものよ!」
 エリルちゃんは弟くんを巧みに操り、ゾルダートに殴りかからせた。人形遣いの十八番のダンスマカブル。
 ゾルダートはその攻撃を躱したり、捌いたりしつつ、自分も手刀だの蹴りだのを弟くんに繰り出した。これって、レアな光景じゃない? 偽物とはいえ、エリルちゃんが弟くんと戦っているんだから。
「ナカナカ、ヤルワネ」
 弟くんとカンフー映画よろしく打ち合ったり蹴り合ったりしながら、ゾルダートはエリルちゃんに語りかけた。
「デモ、私ニハ勝テナイワヨ。コウヤッテ戦ッテイル間モ私ハアナタタチノ思念ヲ読ミ取リ、精神ニ感応シ、成長シテイルノダカラ……」
「『アナタタチ』と言ったけど、その中に――」
「――私は含まれていますか?」
 と、エリルちゃんの後を引き取ったのはイルゼちゃん。
 この瞬間まで、ゾルダートにはイルゼちゃんの姿が見えていなかったかもしれない。ちょっと前からイルゼちゃんは身を潜めていたんだもの。弟くんと一緒に激しく動き回るエリルちゃんの背後に。彼女に合わせて自分もまた激しく動きながら。
「含まれてないのではないでしょうか?」
 自分の問いに自分で答えながら、イルゼちゃんは動き続けた。
 だけど、それはもう身を潜めるための動きじゃない。
 攻撃を仕掛けるための動き。
「あなたからすれば、私の脅威度はさして高くないでしょうから」
 イルゼちゃんはゾルダートめがけて剣を突き出した。
『そんなもんを持ってる人の脅威度が低いわけないじゃーん!』とツッコみたくなっちゃうほどに厳つくて大きな剣を。

●エリル・ウィスタリア(雪を待つ花・g00912)
 イルゼさんが死角から飛び出し、大剣の切っ先をゾルダートに向けた。
 そして、一気に刺し貫く……かと思いきや、突き刺しもしなければ、斬り裂きもしなかった。
 その代わり、撃ち抜いた。
 大剣の刀身が中央の溝に沿って二つに割れて、そこから光線が飛び出したのよ。
「……ッ!?」
 お腹のところに光線を受けて、ゾルダートはよろめいた。
 自分と同じ外見をしている者が撃たれる(しかも、綺麗なドレスにまで焦げ穴が穿たれた)光景というのは、見ていて気持ちのいいもんじゃないけれど、それが私の視界にとどまっていた時間はたぶん一秒にも満たないと思う。
 撃たれた拍子にゾルダートはまた姿を変えたのだから。
 今度はイルゼさんにね。
「御自身ヲ過小評価サレテイルヨウデスネ」
 ゾルダートの左腕が変形して、イルゼさんの大剣と同フォルムになった。
「私ハアナタノ脅威度を低ク見積モッテナドイマセンシ、姿ヲ隠シテ攻撃ノちゃんすヲ窺ッテイルコトニモ気付イテイマシタ」
「でも、躱せまんでしたよね?」
「攻撃ヲ『予期デキルコト』ト『回避デキルコト』ハ同義デハアリマセン。ホラ――」
 剣の形をした左腕が二つに割れ、光線が発射された。さっきと同じような光景だけど、立場は逆転してる。撃ったのは敵で、撃たれたのはイルゼさん。
「――避ケラレナカッタデショウ?」
「なるほど」
 右手で傷口を押さえながら、イルゼさんは左手で大剣を構え直した。
「さすがですね。私だけなら、あなたに勝つことはできないかもしれません。しかし――」
「――私『たち』なら、話は別だよね!」
 と、イルゼさんの後を引き取ったのは麻緒。
 でも、ゾルダートには麻緒の姿はよく見えていないかもしれない。いつの間にか、彼女の周囲には無数の小さな鏡が浮かんでいたんだもの。淡いミント色のフレームに納まった鏡の群れ――なぜだか判らないけど、仲間である私は(たぶん、イルゼさんも)それらに遮られることなく、麻緒の姿を見ることができるけど。
「コ、コレハ……ぱらどくす!?」
 苦しみ悶えるゾルダート。なんらかの攻撃を鏡から受けているのでしょうね。
「ナントモ不可解ナ攻撃デス。シカシ、対処ハ可能」
 苦しげな表情はそのままに体のそこかしこを銃火器に変化させて、ゾルダートは何十何百もの弾丸を発射した。
 鏡が次々に割れていく。
 麻緒も無傷では済まなかった。
 だけど、そんなことで怯んだりするような娘じゃない。パラドクスを再び発動させて――
「物量戦でいっちゃうよ!」
 ――もっと沢山の鏡を呼び出した。

●終幕
「精神に感応するっていうのなら、雑念で情報をかさまししてあげる!」
 鏡のパラドクスで攻撃を続けながら、麻緒は雑念で頭を満たした。
 いや、満たすどころか、それは溢れ出た。
 叫びとなって。
「ファマチキ、くださぁーい!」
「……ふぁまちき?」
 全身の銃火器で攻撃を続けながら、イルゼの姿をしたゾルダートは首をかしげた。
「知らないの!? ファーマリーアートの看板商品よ! オーソンのMチキほど辛くもなければ、ヘヴンズレイヴンのなまチキほど淡泊でもない、絶妙な味わいのフライドチキン!」
 麻緒の雑念が敵の精神感応に影響を及ぼせたかどうかは判らないが、戸惑わせることができたのは間違いないだろう。
 その隙にエリルが高く跳躍した。人形が差し出した両手を踏み台にして。
 ゾルダートは咄嗟にエリルに変身して、相手の動きを目で押った。その視線が下に降りることはなかった。エリルは重力を無視して、中庭に面している王宮の壁に着地ならぬ着壁したのだから。パラドクス効果の『壁歩き』を用いたのである。
「どこを見てるの?」
 地面と平行になった姿勢でエリルは両手を動かした。
 それに合わせて、地上に残されていた人形が偽物の『姉』を殴りつける。
 間髪容れず、イルゼが追撃。
「あなたに私たちは止められません!」
 大剣のビームが再びゾルダートを撃ち抜いた。
 命中と同時に彼女(あるいは彼?)の姿が変わった。いや、『戻った』と言うべきか? エリルでも麻緒でもイルゼでもない、のっぺらぼうの液体金属に……。
「そう、止められない!」
 麻緒が叫び、すべての鏡でゾルダートを取り囲んだ。
 そして、魔力を一気に放射した。
『雑念』というレベルを超えた強い想いとともに。
「ファマチキ、もう一個くださぁーい!」
 ゾルダートの体がどろりと溶け崩れ、銀色の水溜まりに変わった。
 
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【完全視界】LV1が発生!
【壁歩き】がLV2になった!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【命中アップ】がLV4になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2022年03月23日