砂塵に舞うは忠誠の翼(作者 紅葉茉莉)
#獣神王朝エジプト
#巨大砂上船スフィンクス最終決戦
#巨大砂上船スフィンクス
#寵愛の少年ファラオ
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緊急停止し、砂塵の中にて鎮座するスフィンクス。
その中にあって一人、苛立ちを隠さぬ存在が声を荒げ平伏する臣下たちに当り散らしていた。
「ああもう、早く再起動させてよねっ! 責任問題だよこれはっ!」
動かぬスフィンクス、このままではクフ王の顔に泥を塗ってしまうと怒りを隠さぬ寵愛の少年ファラオ。
だがわめきちらしても事態が好転する事は無い、が。
それでも怒りの矛先を何処かに向けねば腹の虫が収まらないということだろう。
「あとあれだね、ディアボロスが攻撃をしかけてきたからどうしよう、なんて言ってたっけ? 迎え撃つに決まってるよ、このスフィンクスが破壊されるなんて失態は絶対あってはならないんだから、とにかく出撃してよっ!」
威厳を示す為だったか、はたまた苛立ちをぶつけただけか。
地面を激しく踏みつけての出撃命令、その音を聞きこれ幸い、叱責の場から逃れようと蜘蛛の子散らすが如く臣下たちが飛び出していく。
その後に残るのは臣下の不手際だと延々と文句を言う寵愛の少年ファラオだけであった。
「好機到来、といったところでしょうか。お集まりいただき感謝します」
ファナン・トゥレイス(人間の風塵魔術師・g01406)がターミナルに集まったディアボロス達を出迎え、説明を開始する。
今回は防衛拠点でサハラ砂漠を進軍していた巨大砂上船スフィンクスを停止させた絶好の襲撃機会、その好機を逃さずスフィンクスの破壊と寵愛の少年ファラオを討伐する戦いへの布石である。
「皆様には真正面から攻撃を仕掛け、敵を陽動して頂きたいのです。その攻撃でスフィンクスが保有する戦力を引きずり出し、戦いに乗じて潜入部隊が内部へ向かう手筈になります。
仕掛ける皆様の攻撃が激しければ激しいほど、敵も出し惜しみせず戦力を投入するでしょうし、それだけ潜入部隊の負担を減らす形になります」
正面突破を仕掛けてきた、と相手に錯誤させるほどの猛攻が必要、つまりは戦い方にも工夫が必要と言う事で。
「今回、皆様に担当して頂きたいのは鷲のウカーブ……飛行能力を有し、索敵を得意とするトループスです。
その飛行能力を活かしての戦闘を仕掛けてきますので、其方への対応もお忘れなく」
砂塵に紛れ空を飛び、空中からの攻撃を仕掛けるトループス。
正面突破と見られるように立ち回りつつ、空中の敵に対しどうやって戦うのか。
何も考えず真正面からの突撃は相手の数も多く危険、つまりはディアボロスとして、各々の色を出してどうやって戦うのか、腕の見せ所と言えるだろう。
「指揮官を叩く、いわば潜入部隊がこの戦いの花形……と思われるかもしれません。
ですがその潜入部隊を生かすも殺すも皆様次第、つまり戦いの趨勢を決める重点であることは間違いありません」
勝負を決定付ける戦力を用意したとして、それを適切な時に適切な場にぶつけることが出来るか。
それを成すために皆の力が必要だとファナンは最後に告げて、ディアボロス達を戦場へ案内するのであった。
突風とともに砂埃が舞い上がり、砂塵が光を遮る中。
その砂塵を切り裂くように一つの影が飛び出せば、それに続けて二つ、三つと影が増え、やがてその数が瞬時に数え切れないほどになっていく。
「ギィイイ、ガアァアアア!」
「ファラオの為に! 見つけた奴から手当たり次第にコロセ、コロセ!」
「殺して報告、ファラオに褒めてもらうのダァ!」
言葉にならぬ叫びを上げる者、与えられた命令を告げる者、勝利し賛美を得ようと願望を語る者。
口々に声を上げ、鷲のウカーブが砂塵に飲まれつつ飛び回り、ディアボロスを探し血祭りに上げんと気炎を上げていた。
リプレイ
ソラス・マルファス
目立つ立ち回りが得意ってわけでもねぇんだが、少しでも役に立てそうなら僥倖だ。
大剣を構えて気合裂帛。
「散々好き勝手しやがって。そろそろ覚悟してもらうぜ」
ウカーブが来たらリストバンドのワイヤーを射出。ウカーブ自身に巻き付けて巻き上げることで上空へ行くぜ。
「よぉ、上を取られた気分はどうだ?」
ワイヤーを回収し、呪詛を纏った大剣で薙ぎ払い両断。落ちる前に再びワイヤーを伸ばして次の相手へ巻き付ける。
あとは繰り返しだ。届かねぇときや突出し過ぎる時は無理に移動せず降りるぜ。下は砂漠だ、受け身を取れば問題ねぇだろう。
敵の呪詛は大剣で太陽光を反射して目つぶしすることでタイミングをずらし、浄化の力で耐えるぜ。
遠咲・奏
彷徨う女子高生は、いつの間にかパラドクストレインで、エジプトに降り立っていました。
どうやら大規模な陽動作戦に参加していたようです。
おぼろげな記憶の中の、愛しのお兄ちゃんを探している彼女は、作戦参加者に彼がいないかどうか、探しながらの参戦となります。
ウィザードロッドを天高く掲げ、アイスエイジブリザードを巻き起こします。
敵の反撃は、群れる屍鷲と予測されます。
普段は回避に専念しつつ、なるべく纏めて範囲に入るように調整しながら、まとめてアイスエイジブリザードの餌食となるよう、狙いを定めます。
その際は、素早い術式展開の為、技能の高速詠唱1も活用。
味方との連携重視。
迷惑行為はしません。
他者との絡み歓迎。
天夜・理星
あーあ、やだやだ。
この時代はマジで血気盛んなクロノヴェーダが多すぎて…
って、どこの時代でもそっか。
ま、やることはただ一つなわけですが。
紅の激情、六聖剣。
刀身に火炎使い技能で炎を宿して、振るって両断。
距離が近くないなら炎の斬撃を飛ばして敵集団を攻めていこう。
苛烈に燃え上がればそれだけ向こうの戦力も投入されていく、アタシは潜入部隊の負担を減らす勝負がしたいんだよ!
出来るだけ聖剣で戦って、十分に削れたと判断できた段階で精神集中。
敵の急降下の瞬間、神速反応からのパラドクス。
これで一気に抉っていこう!
危なくなったら一撃離脱にシフト。苛烈から静寂、そこからまた苛烈に戻ってくよ!
まだまだいけるっしょ!?♪
三苫・麻緒
スフィンクスの停止なんて折角のチャンス、掴んだからにはきっちりいかしたいところ
そのためにも…鳥さんには派手に散ってもらおうね!
視界が悪くなるのは少し困るなぁ
魔力の球は数重視で、とにかく大量に発生させるようにしておくよ
敵を攻撃したタイミングで一緒に砂塵も≪吹き飛ばし≫て視界を確保
勿論必要であれば視界確保目的だけで球をいくつか炸裂させることも頭にいれておくね
あちこちで爆破させまくって、相手を≪撹乱≫させるよ!
相手が混乱すれば混乱するほど陽動としては成功だよね
違うとわかっているけれど敢えて叫んじゃう
たぁーまやーっ!
あとは相手の動きをよく≪観察≫して、相手の連撃を喰らわないよう回避も頑張らないとだね
河津・或人
包帯で巻かれてるのに飛べる翼ってのは興味深いな…
物理的に風に乗ってるのとは違うのか?
んん、捕まえて標本にしたい…が、今回の主旨では難しいな
フリージングミサイルで飛び回る鷲を打ち落としていこう
んーやっぱ気になるからせめて翼を狙って原理を究明しつつ
空中に居られないようにしてやろう
正面突破を装う都合上、数減らしも大事だが進軍の足も止めずに
味方の今狙ってるところは声かけて連携するか
完全に独りで仲間を邪魔しないように避けていく
仲間の残留効果もなるべく有効活用
純粋な戦闘の補助以外にも位置取りや移動、連絡に至るまで使い倒そう
*アドリブ連携歓迎
上桂・夜露
「便利な道具なので、外見の無粋は我慢しないと、ね」
砂塵対策に色付きゴーグル、あとは日焼け止めクリーム。服装は、程良く通気性があって肌も出ない普段の着物が良いわね。何なら何処ぞのスナギツネの顔真似でもしてみる?
陽動であれば、他の方と連携し、一点突破を目指すよう行動しましょう。
それを防げば本陣が守られる、という目標は敵にとって、判りやすい行動指針になる筈。こちらとしても、各個撃破を受けにくくなります。
突破できてしまったら皆で同じ方向に反転して、背後から食い散らかす、で良いかしら。そう容易に突破できても困るけど。
「生憎と武士ではないので、一番槍の誉れ等はいりませんが……嫌がらせした実績は欲しいわね」
吹き荒ぶ突風により細やかな砂が舞い上がり、空行く数多の影を、そして地を進む影を。
鷲のウカーブとディアボロス、双方の姿を覆い隠していた。
「便利な道具なので、外見の無粋は我慢しないと、ね」
「おっ、そいつぁこの砂の中じゃ便利そうだな。俺の姿も良く見えるだろうし、頃合を見計らってやってくれ」
色付きゴーグルで目元に押し寄せる砂塵をシャットアウト、日焼け対策もクリームで行いつつ上桂・夜露(久刀・g05745)が進めばその隣には大剣を背中に担いだソラス・マルファス(呪詛大剣・g00968)の姿があった。
二人を最前線にして、やや離れて他のディアボロスたちも続いており衝突すれば適時、機を見て攻める手はずとなっていて。
「それじゃ、一番槍かもしれねぇが……最初のぶつかり合いは俺の仕事かね」
「ええ、私は武士ではないので一番槍の誉れはお譲りしますので、嫌がらせの実績は頂ければと」
そう言葉を交わし両者は離れ、ディアボロスと鷲のウカーブとの戦いが始まろうとしていた。
「来やがれ、それともビビッてるのか?」
上空に舞う黒い影、敵の存在を察知したソラスが大声を張り上げて挑発すれば、それに応ずるかのように。
「ガァガァガァア!!」
グルグルと旋回しながら数多の鳴き声が重なり合い、おぞましき声が呪詛となって降り注ぎソラスの体を蝕んで、その身を黒く染め上げる。
だがしかし、そんな呪詛など通用しないとばかりにソラスは掌を翳し自分の方にクイッと動かしかかって来いとばかりの仕草を見せて。
「どうした、そんなもんか? この剣にある呪いの方がよっぽど効くぜ」
担いだ大剣を振り回し、己を殺意に飲み込む呪詛の大剣の方が精神を蝕むとばかりに高笑い。
そんな様子を見たのか上空を旋回する影たちは、このまま呪詛を振りまいても効果が薄いと察したか、直接攻撃とばかりに数体のウカーブたちが急降下、一気にソラスを葬らんとその距離を詰めていく。
「ギィイイ! 死ねぇ!」
人型をしているのならば真上は死角、対処しようとすればどうしても動く必要があり……そうなれば別の仲間が動いた隙を突き仕掛けるという即席のコンビネーション。
通常ならば数に任せてのコンビネーションで相手を倒せる、筈だったのだが。
「連携するのは良いですが、注意散漫ですね、隙だらけです」
不意に聞こえるは夜露の声、それと同時に伸びるは一本の尾。
それは妖気を帯びて形を成した狐の尾であり、敵対する存在を貫く槍としての役割を与えられたもの。
ソラスに気を向けたウカーブ達は、身を伏せ砂塵の中で静かに近づき隙を伺っていた夜露の接近に気付けずに、不意打ちという形での反撃を受けたのであった。
「グエァァ、まだいるゾッ!」
想定外の一撃、ならば仕切り直しとばかりに急降下してきたウカーブ達が次々と急上昇、その索敵能力で他のディアボロスが居ないか探そうとしていくが。
「ギッ!? きさまっ!?」
「悪いな、散々好き勝手してくれたみたいだしそろそろ覚悟してもらおうか」
急上昇したウカーブの一体が体の異変に気付くも手遅れ、その体にはワイヤーが巻きついており、その先はリストバンド、そしてそのリストバンドを装着するのは不敵に笑うソラスであり……ワイヤーで繋がる形で両者が上空へと舞い上がっていたのである。
何とか振りほどこうともがくウカーブ、だがそうはさせまいとワイヤーを巻き上げる形で距離を詰めるソラス、そして両者がぶつかる寸前にてソラスは担いだ大剣一閃。
重厚な一撃が乾いた肉を断ち、骨を砕いてその身を粉砕、質量によって叩き斬り、ウカーブの体を両断していたのである。
「まず一つ! 他が逃げる前に追撃は任せたぜ!」
大声で叫び、落下しながらソラスが叫ぶ。
そんな彼の視線の先には、ひとまず巻き起こる砂塵に隠れ追撃を割けようとするウカーブの集団があったのだが……仕切り直しなど許さぬとソラスに続く攻撃が放たれたのはその時で。
空中に浮かぶはシャボン玉、と錯覚してしまうような、魔力でできた膜による数多の球体。
だがその球体は単なるシャボン玉にあらず、使用者の意思により軌道を操り、また思うがままに爆発させることができる代物。
「視界が悪いし、砂塵に逃げ込まれて見失うのは困るなぁ、だから……鳥さんには派手に散ってもらうね!」
そう告げ、一斉に起爆させ。
砂塵を吹き飛ばし数多のウカーブを白日の下に晒す一撃を加えたのは三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)
一瞬にして自分達を覆い隠し、身を守るはずの砂塵の多くを晴らされて焦ったウカーブ達は次々と残された砂塵の中へ隠れるように飛び込んで、何とか地上から上空へ。
対空攻撃を受けまいと逃れていくが、それを許さぬとばかりに再び魔力の球体を生み出し麻緒は空中へと飛ばしていく。
「ん、うまく逃げてくね、だったら……次はここ、その次は、ここで」
一つ、また一つと空中に浮かぶ球体が爆ぜ、砂塵を飛ばし開けた空間を作り出し、その爆発を避けるようにウカーブ達が散開と集結を繰り返す。
有効打とならぬ球体の攻撃ではあるが、麻緒に焦った様子はなくむしろ想定どおり、手の内で操っているとばかりに余裕の笑みを浮かべており。
「よし、ここで……出来た、あの中に集まってるから」
準備は出来た、とばかりに微笑み仲間に呼びかける麻緒、その言葉通りウカーブを追い込むように砂塵を吹き飛ばした彼女の球体によって空中には一箇所だけ。
数多のウカーブが逃げ込むことで、砂塵の中に蠢く多量の黒き影が見て取れる異質な空間が作られて。
「んん、なるほど、しっかり狙わなくても適当に撃てば」
「まとめて攻撃の餌食に出来る、という事ですね」
河津・或人(エンジェルナンバー・g00444)と遠咲・奏(彷徨う女子高生・g06523)が空を見上げ、異様に黒くなった砂塵の一角を凝視。
次々と炸裂する球体から逃げるが故に密集してしまった、いわば追い込み漁で網の先へと追い立てられた魚群を一網打尽にするかのように、挟み込むように立つ二人が互いに魔力を高めれば。
偶然にも双方が用いる攻撃手段は似通った力を持つもの、それは氷の力を宿した攻撃で。
「おや、あれは同じ属性の……しかし困ったな、どうやら狙い撃つようなものではないようだ」
「あれは……氷の力、私と同じ? もしかしてお兄ちゃん? いいえ、違うわ。同じような力でも、あんな力じゃない気がする」
互いに高まる魔力、そして生成される氷の弾頭は或人の背負うアームドフォートの射出口に。
凍てつく冷気が凝縮、掲げた杖の先端に輝き白き光を放つ球体を生み出したのは奏。
双方攻撃準備を完了しつつ、或人は翼を撃ち抜き、落下させ。
包帯が巻かれた翼で何故飛べるのか、標本にでもしたいという学術的興味を示し、原理を究明してやろうと思いながらも奏が放つであろう、広域への攻撃では翼どころか全身が凍り付いて分析できないとぼやき。
奏は奏で、彼女曰くいつの間にやらパラドクストレインでエジプトに来てしまった、これはきっと愛しの兄を探す自分に与えられた何かの標と考えて。
愛しの兄に繋がるヒントを探しつつ、似通った氷の力を持つ或人から何かを感じた気がするが気のせいで、だったら群れて飛び回る鬱陶しい害鳥を一斉駆除と言わんばかりに空中へと敵意を向けていたのである。
同質の、氷という力を持ちながら思惑も形も違う両者の視線、それが空中に浮かぶ不気味な黒き砂塵で交錯すれば、それは攻撃開始の合図。
「先に仕掛ける、空中に居られないように撃ち抜くが、撃ち漏らした奴が出てくれば」
「はい、それは私が纏めて凍らせてしまいます」
先ずは自分が、相手の羽を破壊するとばかりに或人が呼びかけ引き金引けば、アームドフォートから冷気を宿したミサイルが次々と射出され、黒く蠢く砂塵の中へと吸い込まれ。
それと同時に着弾した弾頭から冷気が放出、翼を、体を凍らされ、冷気によって破壊された体の痛みに耐えかねたウカーブたちが次々と飛び出してきたのであった。
更に飛び出したのは、被弾したウカーブだけではない。
「ギィィ、逃げろ、チレ! まとまりスギダッ!」
「ジャマダ、避けれンッ!」
密集しすぎたが故に満足に回避行動が取れぬ状況に気づいたか、被弾していないがこのままでは不利、身を隠すよりも散開すべきと判断した個体が次々と飛び出し、個別にディアボロスへ攻撃を仕掛けんと急降下を始めたが。
「見えました、そんな飛び方では、まとめてこれで!」
その動きをいち早く察知、攻撃機会を伺っていた奏がウィザードロッドを掲げれば、杖の先端にて放たれる時を今か今かと待ちわびていた、凍てつく冷気が吹雪となって放たれて。
急降下していたウカーブの体が凍りつき、動きを止めてそのまま地表へ激突。幾つもの砂柱が巻き上がり、氷と衝撃による二つのダメージをウカーブへと与えていたのであった。
自然現象を、そして空中に居るという優位性を持っていたはずのウカーブ達、しかし砂塵という自らを隠す衣は剥ぎ取られ、そして空中に滞在したとてディアボロスは空への攻撃手段を持ち合わせ、次々と放ってくる。
こうなってしまえば優位性も何もあったものではない、ならばもう数の力に任せ、強引に敵対者を排除するとばかりに飛び回っていたウカーブ達の意思は固まったのだろう。
「ギィイイ! コロセ、やられテモきにスルナ!」
「オオ! 最後まで飛んでいらレレバ、オレたちの勝ちダ!」
「シネェエエエ!」
ディアボロス達への殺意を前面に押し出して、なりふり構わず急降下を始めたウカーブの集団。
「あーあ、やだやだ。この時代はマジで血気盛んなクロノヴェーダが多すぎて……って、どこの時代でもそっか」
そんな群集団の前、ディアボロスの最前線に飛び出しながら愚痴を零すのは天夜・理星(復讐の王・g02264)
やる気になって真正面からのぶつかり合い、望む所とばかりに六聖剣・紅/激情を引き抜けば、彼女の闘志を体現したかの様にその刀身には赤き炎が燃え上がり。
「ギァアアア!!」
「ほらほら、もっち近づかないと当たらないよ!」
怒りの感情を前面に押し出し突っ込むウカーブ、もっと近づいてこいとばかりに剣を振るい、刀身に宿った炎の斬激を放出、挑発するように笑うは理星。
互いに有効打とならず、双方近接攻撃で仕留めるとばかりに両者の距離が急接近。
ウカーブは鋭き爪を輝かせ、相手を掴みそのまま引き裂きながら飛び上がり、そして地表へ叩き付け絶命させんと殺意を見せて。
対する理星は居合い腰、剣を引いて膝落とし、突っ込む相手へカウンターで一撃を加えようとする構えを見せた。
片や空中から複数による急降下、片や地表単独にて反撃の構え。
圧倒的にウカーブが優位、そして双方の間合いに入ろうとしたその時に。
ウカーブは両足の爪を大きく広げ、今すぐにでも掴み取れる状態に対し、理星は動かず膝下げ、剣を引いた構えのまま。
勝った、相手はまだ攻撃の動作すら見せていないとウカーブ達が勝利を確信、包帯の下にある顔を醜く歪ませたその刹那。
「刻は刹那、改め瞬け!」
理星の叫びが響き渡ったかと思えば、彼女を狙い急降下していたウカーブ達の視界からその姿は消えていて。
何が起こったか理解する間も無く、ウカーブ達は突如出現した空間の歪みに引き込まれ、骨を砕かれ肉片を飛び散らせ、絶命していたのである。
一体、あの暇に何が起こったか、それは理星がほんの僅かに時間の流れそのものにズレを引き起こしたのである。
彼女だけが普通に動き、されど周囲の時間が遅くなる間。彼女は狙い定めて急降下するウカーブ達の間を堂々と歩き去り、本来ならばありえない移動速度による時間の流れ、空間の歪みがその場所にだけ出現し。
全ての時の流れが正常に戻った瞬間、その帳尻を合わせようと空間が復元しようとする動きにウカーブが巻き込まれ、その体を砕かれたのである。
更に理星は、自分を狙う敵が途中で逃げぬ様、あえて攻撃の構えのまま動かず引き付ける、いわば剣による攻撃と相手を騙すフェイクを入れて、反応できぬ間合いまで敵を引き付けていたのも巧打を与える要因であったのは間違いない。
「どうしたの? やられても気にしない、んでしょ?」
「ギギギッ、ナメルナァ!!」
「あははっ♪ そうそう、まだいけるっしょ!?」
一撃で迫る相手を粉砕、ウカーブ達が先ほどまで気炎を上げて叫んでいた言葉を返し挑発する理星。
どんどん掛かって来い、なんなら残存戦力全て、むしろスフィンクスに残る兵力も纏めてここで相手にしてやるとばかりに笑う彼女。
潜入部隊が相手取るはずの戦力をここに引き付ける、という彼女の思惑通りに、砂塵の遠方には更なる追加戦力が飛び出し此方に向かう様子が見て取れて、陽動としては十分すぎる成果がこの時点で上がっていたのである。
「オ、オノレェエ! マダダ、ここで足止めシテ、援軍とデツブセェ!」
自慢の索敵能力で、増援が向かっている事を察したウカーブが殺意を再び滾らせて、そして吹き荒ぶ突風によって再び生じた砂塵に隠れながらの攻撃を再度画策、だがそれは最早無駄な試み。
「ここまできたら、あえて追い込む必要は無いからね、それっ!」
再び空中に舞うは麻緒が生み出す魔力の球体、それは容赦なく砂塵を吹き飛ばし、隠れ潜み時間差で連続攻撃を仕掛けようとしたウカーブ達の姿を晒す一撃で。
「このまま正面突破といこうか」
「だったら、纏めて凍らせましょう」
不敵に笑う或人が放つミサイルが空中で右往左往するウカーブの翼を凍らせ、地表へと落としていけば続けて生み出される奏の吹雪が反撃の目を摘むように、タイミングを計っていたウカーブの視界を塞ぎ、体を凍りつかせていき。
「あらあら、数だけはいましたけどもう壊乱というやつですね」
小馬鹿にするように夜露が笑い、何とか反撃の糸口を掴もうと攻撃動作に入るウカーブを伸びる尾にて刺し貫いて、攻撃の起点そのものを潰していけば最早勝敗は決したも同然。
何とか戦線を維持し、後続部隊を待つウカーブ達にようやく援軍が合流できようかとなったその時に。
「ん、もう十分倒したし、引き付けられたな」
ソラスが呟き、麻緒に目配せすれば意図を察したのか彼女も頷き、次々と魔力の球体を生み出すが此度は空中だけでなく、地表付近にも多数の球体が漂って。
「それでは、此方も地形を利用するとしましょう、ちょっと違うとわかっていますが……たぁーまやーっ!」
麻緒が叫んだその瞬間、全ての球体が同時に爆発、そして多量の砂を巻き上げて視界を塞げばそれと同時に猛吹雪と多量のミサイルが狙いも定めず放たれて。
思わず後続部隊が足を止めて身を伏せて。攻撃が、そして巻き上がる砂塵が収まり視界が戻ったその時には。
既にウカーブ部隊を壊滅させたディアボロス達の姿は無く、貴重な防衛戦力が無意味に前線に引きずり出され、ファラオの援護に向かえぬという事実だけが残っていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
【狐変身】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
【命中アップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!