転禍為福(作者 藍鳶カナン
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#平安鬼妖地獄変  #長岡京防衛戦  #長岡京  #陰陽師  #挿絵あり 

●黄昏の禍
 時は平安、天禄三年。
 西暦972年――天が赤く禍々しく染めあげられた、ある夕暮れ時に。
 逢魔が時のさきぶれとばかりに、女妖の軍勢が長岡京に押し寄せんとする。
 鮮血に黄金の炎を燈すがごとき色合いの天を翔ける黒馬、その背にあるのは、この軍勢を統べる白蛇姫。
『ふふ、愛しいのう。ああ、愛おしい』
 市女笠を彩る黒紗の裡で紅唇に笑みを刷き、白蛇姫は詠うように禍言(まがごと)を紡ぐ。
『人間(ひと)の子らが血に塗れる様も、人間の子らの営みが血に塗れる様も愛おしゅうてならぬ』
 陶然たる声音に応えたのは嵐のごとき羽音、赤き天の夕暮れを覆い尽くさんばかりの雀の女妖の大群、
『はいっ! どちらもたっぷりお見せしますとも!』
『思うさま愛でてくださりませ、白蛇姫様!』
 愛らしい囀りの合間に威勢よく応える彼女らは、黒き雀の翼持つ少女の姿の妖怪、夜雀。
 大群の軍勢、圧倒的な偉容を長岡京の人々へ見せつけんばかりに悠然と天から迫り、戦端を開けば高らかな口上とともに、彼女らは黒雲の波濤のごとくに襲いかかった。
 ――我らは妖怪の王の一柱ヤマタノオロチ直属の軍勢なり! 長岡京よ、血に溺れ、血に沈むがよい!!

●時先の導
 厳かな伽藍の奥には、清らな静寂に満ちた日本庭園。耳を澄ませば、美しい水琴窟の音色が響く。
 寺院の奥庭たる侘び寂びの空間を間近に望める書院にて振舞われるのは、明るい萌黄色に透きとおる煎茶をそそいだ白磁の湯呑みの底に紅い小梅と結び昆布が揺れる、新年を寿ぐ茶。
「天暦五年、すなわち西暦951年。空也上人が悪疫退散を願って病人に振舞ったお茶で、疫病が鎮まった――という故事が、新年を寿ぐ大福茶(おおぶくちゃ)を飲む習わしとなって、現代にまで伝わっているそうですね……!」
 平安の世に生まれた清原・小雛(人間の妖怪博士・g01264)にとっては身近に感じられるのだろう。
 改竄世界史ではこの逸話がどう認知されているかは判らぬが、それはさて置いて。
「第一次東京奪還戦で奪還された地域に、参拝客へ大福茶と花びら餅を振舞う寺院があると聴きました。皆様も初詣ついでに縁起の良い大福茶と、こちらも新春祝いの意味がある花びら餅を楽しんでくるのはいかがですか? 一年の無病息災と幸福を願う大福茶で縁起をかついで、そうして……平安鬼妖地獄変の長岡京へも、福を齎していただきたいんですっ!」
 時先案内人にして平安鬼妖地獄変の攻略旅団長たる娘が初詣を勧めるのは、折々の季節行事などを皆が刻逆前と変わらずに楽しむことが、最終人類史の堅守に繋がることであるからだ。
 寺院の本堂に詣でた後に、そこから繋がる書院で、清雅な庭園を眺めつつ、大福茶と花びら餅で一服するひとときを。
 奪還されたばかりの地は生活基盤が整いはじめているところ。
 余裕があるとはまだ言えないだろうけれど、小雛が語った寺院で振舞われる大福茶と花びら餅は、新年を寿ぐ縁起物だけは何としてもという寺院の、精一杯の心づくし。有難くいただいたならその後に、平安鬼妖地獄変の長岡京へも、福を為しに。

「既に御存知の方も多いかと思いますが、平安鬼妖地獄変における長岡京は妖怪の軍勢の攻撃に幾度も曝されており、陥落の危機にあります。正義の陰陽師やならず者達が奮戦していますが、もちろん彼らに勝ち目はありません」
 幾つもの軍勢がディアボロス達に撃退されているが、クロノヴェーダたる妖怪達の攻勢はいまだやまず。
 時先案内人が新たに予見したのは、夕暮れ時に攻め寄せる女妖達の軍勢だ。
「この軍勢は圧倒的な偉容を見せつけるように、あるいは加勢を呼びたければ呼ぶがよいと言わんばかりに、悠然と長岡京へ迫ってきます。正義の陰陽師やならず者達が迎撃態勢を整えようとしているところ……つまり、今回は戦いが始まる直前での介入となります」
 戦端が開かれれば彼らに待つのは血に塗れた死の運命。ゆえに彼らには退いてもらわねばならない。
「ディアボロスの皆様、すなわち妖怪や鬼との戦いに長けた者達が助太刀に来てくれることがある――ということは、彼らも既知のことと思います。それに、今回は敵の軍勢すべてが天を翔けて攻め寄せるので、皆様が【飛翔】できる状態であれば、彼らに退いてもらいやすいはずですっ!」
 正義の陰陽師やならず者達に、自分達が飛翔できることを明かし、
『この場は天翔ける術を心得ている我々に任せてくれ!』
『別方向から攻め寄せる軍勢があるかもしれん、君達はそちらへの備えを頼む!』
 といった言葉をかければ、彼らはすぐに納得し、退いてくれるだろう。
 空中戦を挑めば敵の軍勢もディアボロス達との戦いを優先する、と時先案内人は断言した。

 戦端が開かれれば大群の夜雀達の後方で、この軍勢を統べる白蛇姫は高みの見物を決め込むだろう。
 まずは夜雀達を殲滅して、その後に白蛇姫へ挑んで撃破するのが良策だ。
「大群の夜雀達は勿論、アヴァタール級である白蛇姫も決して侮れません。けれど皆様なら勝利を掴めるはずですっ!」
 掴む勝利は、福を齎すための新たな一歩。
 今すぐには叶わずとも『ヤマタノオロチの軍勢』と称するクロノヴェーダ達をことごとく撃破していけば、いずれは正義の陰陽師や彼らと共に長岡京を護っているならず者達との充分な対話が叶い、確かな信頼関係が築けるかもしれない。
 それはきっと、自分達にとっても長岡京の人々にとっても禍ではなく福であるだろうだから。
 長岡京へ、新たな一歩を。

●黄昏の蛇
 天は赤く禍々しく染めあげられ、鮮血に黄金の炎を燈すがごとき色彩を躍らせる。
 影を孕んで棚引く雲は世を焦がす炎から溢るる黒煙とも見えて、ゆうるり迫る夕闇とともに禍々しさを募らせる。
 この夕暮れが禍々しい色を帯びたのは、あくまで天と夕陽の気紛れ、偶然のめぐりあわせによるものだ。
 なれど、今このときを攻勢の機としたのは、女妖の軍勢を統べる白蛇姫が、嗜虐の愉悦を貪らんがため。
 ――天翔ける軍勢が禍々しく彩られた天から攻め寄せれば、より人間(ひと)の子らの恐怖を煽るであろう?
 ――疾風怒濤の勢いで翔けるのもよいが、軍勢の偉容を見せつけながら悠然と迫れば、人間の子らはじわりじわりと恐怖を募らせるであろう? 加勢を呼ぶ猶予を与えてやるのもまた一興、纏めて蹂躙してやるのもさぞや愉しかろう。
『のう、夜雀らよ。そう考えただけでも心が躍るであろう? ああ、愛おしい。楽しゅうてならぬ』
 楽しみ、楽しみ! 夜雀達がそう囀れば白蛇姫は己が紅唇をちろりと舐めて、長岡京を眺めやる。
 血の宴の始まりには天地へ高らかにこう響かせるのだ。
 ――我らは妖怪の王の一柱ヤマタノオロチ直属の軍勢なり! 長岡京よ、血に溺れ、血に沈むがよい!!


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
11
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【エアライド】
3
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【熱波の支配者】
1
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【冷気の支配者】
1
ディアボロスが冷気を自在に操る世界になり、「効果LV×1km半径内」の気温を、最大で「効果LV×10度」低下可能になる(解除すると気温は元に戻る)。ディアボロスが望む場合、クロノヴェーダ種族「アルタン・ウルク」の移動速度を「効果LV×10%」低下させると共に、「アルタン・ウルク」以外の生物に気温の低下による影響を及ぼさない。
【エイティーン】
1
周囲が、ディアボロスが18歳から「効果LV×6+18」歳までの、任意の年齢の姿に変身出来る世界に変わる。
【完全視界】
2
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【使い魔使役】
1
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【クリーニング】
1
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV8 / 【反撃アップ】LV3 / 【リザレクション】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV3 / 【ロストエナジー】LV5

●マスターより

藍鳶カナン
 こんにちは、藍鳶カナンです。
 タイトルは「禍を転じて福と為す」の転禍為福。

 ※当シナリオで調査や情報収集は行えません。予め御了承ください。

●運営予定
 選択肢1→2→3の順にリプレイ執筆予定。
 進行状況については、マスターページも合わせてご確認いただければ幸いです。

 継続参加は勿論、途中参加や一点のみのスポット参加も大歓迎。
 いずれの選択肢も、判定・タイミング・状況次第では採用できない場合がある旨、ご了承いただければ幸いです。

 ※初詣は昼下がり、長岡京への到着・介入は夕暮れ時です。

●選択肢1:初詣
 第一次東京奪還戦で奪還した地域の何処かにある、時先案内人おすすめの寺院で初詣。
 リプレイに描写されるのは『寺院の書院で日本庭園を眺めつつ、大福茶と花びら餅を楽しむ』場面となります。それ以外の行動は『大福茶と花びら餅を楽しみつつ、先程引いたおみくじを連れと見せ合う』『大福茶と花びら餅で一服しつつ、先程庭園を散策した時のことを思い返す』等、大福茶と花びら餅を楽しむ描写に織り込む形で描写予定。
 大福茶はOP参照、花びら餅は薄紅色の白味噌餡と甘く煮たごぼうを求肥で包んだ新春祝いの和菓子です。
 上記以外の飲食はできません。屋台や露店もありません。

 ※この選択肢で生じた残留効果は長岡京でも使用可能です。
 ※ここで【飛翔】を発生させておくのがおすすめです。

●選択肢2:👾夜雀
 敵と陰陽師達の戦闘が開始される前に介入できます。
 OPを参考に「ここは俺達に任せろ!」と請け合って、陰陽師達を撤退させた上で敵を迎え撃つのがおすすめ。【飛翔】があると話がとても早いです。【飛翔】があれば陰陽師達はさくっと納得します(2、3人が一言声を掛ける程度で大丈夫だと思われます)ので、プレイングは夜雀達との戦闘メインでお願いします。
 陰陽師達と関わる場面はリプレイ冒頭のごく僅かのみ、リプレイ本番は夜雀達を迎え撃っての戦闘です。
 空中戦を挑めば、敵は皆様との戦いを優先します。

●選択肢3:👿白蛇姫
 夜雀達を殲滅(選択肢2をクリア)した上で挑むのがおすすめです。
 当シナリオの白蛇姫は、姫・白蛇・黒馬すべて纏めて一体の存在として扱います(白蛇や黒馬を狙って先に倒す、といったことはできません)。
 選択肢2がクリアされていない場合、夜雀達が白蛇姫を援護します。

 それでは、皆様の御参加をお待ちしております。
142

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


山元・橙羽
初詣かー。
僕の願いはもちろん「依頼がうまく行きますように」!
他にも、いずれ北海道とかも奪還したいとか、強くなりたいとか、いい作戦が思い浮かびますようにとか色々あるんだけどね。

大福茶と花びら餅いただきます(もぐもぐ)
それにしても、東京ともなれば…本来ならもっと、人がいっぱい居てもおかしくないんですよね?
…いつか、奪われた元の世界を取り戻す為にも。頑張ります。


ライラ・ロスクヴァ
大福茶に、花びら餅
とても縁起がよさそうで、可愛らしい食べ物ですね
……ふむ、お茶にミントなどは入れないのですね
ゆら、と湯呑みを揺らすと中の紅とリボンが揺れるようで
可愛らしいそれを飲むのが少しだけ勿体ない
両手で白磁を包み、先程見て回った日本庭園を思い出す
華やかさはないけれど、しんとした美しさのある庭園
この世界に来てからは、見るもの全てが新鮮で
全てが美しく、尊いものだと感じます
これが、歴史の積み重ねの果てなのでしょう

ひとくちお茶を頂いて、花びら餅も頂きます
紅白はめでたき色彩のよう
福を取り込み、めでたきお餅もいただいて
……ああ、なんと幸福でありましょうか
お茶をまた飲み、福を齎せるよう気合を入れましょう


樹・春一
味噌餡とごぼう……あんまりお菓子っぽくない取り合わせのように聞こえますね!
これが都会の味! ならばしかと味わわせていただきましょう!

まず記念にスマホで一枚。花びら餅と大福茶!
なるほど花びらの形に見立てているのですね。ごぼうは枝の役割をしていると
なんとも春らしい見た目ではありませんか! 姉さんが好きそう!
お庭の方もたくさん写真に収めさせていただきましたし。いつか見せる時が楽しみです!
折角なら姉さんと一緒にきたかったという思いもまあ、なくはありませんが……
おすすめスポットの下見だと思えば! 寂しくはありませんとも!
少ししか! 少しだけ!

お茶も冷めないうちに頂いてしまいましょう
いただきます!


有栖川宮・永久
折角奪還出来た地域だし、寺院でゆっくりしていくのもいいよね。まだまだ復興途上だけど、取り戻せた事を実感できるのはいいこと。はい、とことん満喫するつもり!!

寺院の本堂でこれからの戦いの加護を願った後、寺院で花びら餅を頂くよ!!うん、寺院の方の心づくしが感じられるなあ。この大福茶、おいしい。体も心も暖まるね。この庭園の風景、確かに取り戻したものなんだね。

ご馳走さまでした。さあ、行くか!!世界を救いに行く為の戦いに!!


咲樂・祇伐
🌸弐祇

あけましておめでとうございます
弐珀さん!
私の方こそ今年もよろしくお願いします
異界での新年、不思議な心地です

弐珀さんは庭園の絵も描きたいと仰るのかと思いました
整えられた庭園の美しい調和……御屋敷の庭をより美しく手入れしなきゃってなんだかやる気も湧いてきました!
それに、美しい光景を眺めながら味わう美味は素敵なひとときを齎して下さいますね
ほっと一息……心から休まる心地です
花びら餅もとっても美味しいの!
優しくて素敵な祝をいただけました

あら!凶!
大丈夫
後は登るだけですから!
私は…可もなく不可もない、吉です
これは一体、どうすれば良いのでしょうね
このまま現状維持するよりも…私も登りたい心地なのですが


灯楼・弐珀
🖼弐祇

明けましておめでとう
祇伐くん
去年も色々楽しかったけれど、今年も仲良くしてくれると嬉しいよ

先ほど見た庭園もとても素敵で美しかったねぇ
庭園自体も一種の作品の様に整っていたし、観るだけでもとても楽しいものだったよ
…勿論、描きたいとも思うけれどね?
この大福茶も花びら餅も、とても美味しいですねぇ
こんな素敵な場所で食べるのですから、猶更そう感じます
ほっと心休まる心地なのもよく分かるよ

そう言えばおみくじはどうでしたか?
お兄さんはこの通り凶なんですよねぇ
まぁ君が言うみたいに後は上がるだけ、ですしね
祇伐くんは吉でしたか
…なら、共に一緒に登るのはいかがでしょう?
互いに協力すればあっという間かもしれませんし


●吉辰良日
 凛冽と、清雅。
 冬の寒さに磨かれた風のみならず、庭園を彩る水も、時の流れさえ澄みきった世界が、厳かな伽藍の奥に広がっていた。
 真白で清らな白砂が波紋を描く白洲の奥には常盤の松や犬柘植の緑を映した池が深く澄んで、対岸には美しい苔に彩られた築山と大小幾つもの庭石が配されて、冬にも緑深い庭園をゆるりと回遊すれば魂も澄んでいく心地になれたけれど。
 寺院の本堂から渡殿で繋がる書院から望む庭園も、一幅の絵画を眺めるようで殊のほか美しい。
「あけましておめでとうございます、弐珀さん!」
「明けましておめでとう、祇伐くん」
 書院で腰をおろせば改まった心地になったから、笑みを咲かせた咲樂・祇伐(櫻禍ノ巫・g00791)と柔く笑み返した灯楼・弐珀(絵師お兄さん・g00011)は改めて新年の御挨拶。
 刻逆を経て初めて迎える新年、第一次東京奪還戦で奪還された地での初詣。激動の日々を思い返せば穏やかにすごせるこのひとときが感慨深く、時空を超えて結ばれた幾つもの縁を思えば不思議な心地。
 今年もよろしくお願いします、今年も仲良くしてくれると嬉しいよ――と微笑み合えば、ともに味わう大福茶と花びら餅もひときわ優しい味わいがする。
 先程緑深い庭園で出逢った清らな白、冬至という名を戴く早咲きの白梅の花も愛らしかったけれど、柔らかな求肥の白から薄桃色の白味噌餡がほんのり透ける様は桜花に彩られた花竜の娘に桜を連想させ、その胸に神代桜咲く屋敷の姿を燈して。
「調和の美しいこの庭園を眺めていたら、御屋敷の庭をより美しく手入れしなきゃって俄然やる気が湧いてきました!」
「いいですねぇ、より美しい庭を観られるのを楽しみにしていますよ。観るのも描くのもいいね、ここと同じに」
 祇伐が桜彩の瞳を輝かせる様に弐珀は金の眼差しを和らげ、改めて書院から望む庭園を眺めやる。スケッチブックを抱いて真冬にも鮮やかな常盤の緑を写しとるのもいいし、雪の日に訪れて新たな美しさに出逢えば胸を打たれるだろう。竹林めいた露地の奥の茶室に向かうのも――と想いめぐらせれば、ふと思い起こしたのは小指ほどの小さな小さな竹筒のこと。
「そう言えば、おみくじはどうでしたか? お兄さんはこの通り凶なんですよねぇ」
 この寺院で授かれるのは小さな竹筒に秘められた御神籤だ。
 筒からころりと掌に転がし広げた弐珀の御神籤には凶の文字が不吉に躍っているものの、運気底をつけども、心身を浄めて階(きざはし)を昇るべし――と綴られた一文を見つけた祇伐が声を弾ませる。
「あら! 凶! でも大丈夫、後は登るだけですから! そして私は……可もなく不可もない、吉です」
 なれど、自身の御神籤を開けば咲いた笑みがすぐに思案顔。
 御神籤の運勢順としては、大吉、吉、中吉、と並ぶことも多いが、この寺院の御神籤の場合は小吉の後に吉が来るらしい。万事平穏に努めるべし――と綴られた一文に小さく首を傾げ、
「このまま現状維持するよりも……私も登りたい心地なのですが」
 考え込むように零れた祇伐の声音に、弐珀が穏やかな声音で返す。
「なら、一緒に連れ立って、共に登るのはいかがでしょう?」
 互いに協力すればあっという間かもしれませんよ、と続ければ。
 運気上昇の萌しとばかりに、庭園の池から美しい白鷺が羽ばたき、青空へと飛び立った。

 常盤の松の緑と純白の翼で羽ばたく白鷺が重なる一瞬を切りとれば、刻逆に奪われた姉に見せたい景色がまた一枚。
 清雅な波を描く白洲越しに観る緑に澄む池、可憐な一重を咲かせる冬至という名の梅花、玉散らし仕立ての槙の緑――と、樹・春一(だいたいかみさまのいうとおり・g00319)はスマートフォンに幾つも収めた庭園の写真に新たな一葉を加え、
「花びら餅と大福茶! こちらも記念に撮らせていただきましょう!」
 手許の新春の彩りも確りと。
 白味噌とごぼうを使った菓子と聴いた時には不思議な心地がしたけれど、京都が発祥の菓子と聴けば納得の雅やかさ。
 京(みやこ)の味がするのだろう迎春菓子は、円く伸ばした求肥を二つに折り、蜜煮のごぼうと薄桃の白味噌餡を包んで、優しい春の彩をほんのりと、はんなりと透かして魅せる。
 ――姉さんが好きそう!
 春一の声がそう弾むのもむべなるかな。
 花びら餅は雪を冠る梅の花に、ごぼうは梅の枝に見立てられているとも聴くけれど、平安時代にまで遡る花びら餅の起源の一説を辿れば、また違ったものが見えてくる。何時の日か、どちらの話も姉に語って聴かせられる日が来るだろうか。
 この書院の縁側で、姉さんと一緒に座って――。
 なんて想えば、いつかじゃなく今ここに姉さんと来たかった、と胸の奥から本音が顔を覗かせるけれど、
「おすすめスポットの下見だと思えば! 寂しくはありませんとも! 少ししか! 少しだけしか!!」
「うん、きっとまたお姉さんに逢えるよ。私達が頑張れば、絶対に!」
 彼が姉を想っているのだと察すれば他人事とは思えなくて、気づけば有栖川宮・永久(燦爛のアンフィニ・g01120)は春一を励ましていた。己もまた刻逆で家族を奪われた身、幸い姉とは復讐者として共に在ることができたけれど、姉も奪われてしまっていたならどれほど寂しく心細い想いをしたことか。
 誰もが一度は胸によぎらせたことがあるだろう。もう二度と、以前の日々は戻らないのかも――と。
 然れど今、永久の眼の前には夏に刻逆で奪われ、冬に奪還した景色が広がっている。
 清浄という言葉そのもののごとき白砂が描く波紋にはひとつの乱れもなく、樹齢数百年と思しき五葉松も荘厳な大枝を池に悠然と差しかけている。奪還された地は刻逆の瞬間に時を止めたかのごとき姿で最終人類史に帰還した。荒廃や戦いの痕など何ひとつない、刻逆以前の姿のままで。
「この庭園の風景、私達が確かに取り戻したものだもんね。今年も色々奪還できるよう、今はゆっくり満喫しようか」
「そうして英気を養うんですよね。まずは長岡京での、ひいては今後のすべての戦いのために」
 ふと耳に届いた話に夕陽の彩きらめく蝶の翅をふるり震わせ、山元・橙羽(夕焼け色の蝶・g01308)も笑みを綻ばせた。
 この寺院も本来ならもっと賑わっていたんだよね、と思えば少しばかり寂しい心地。
 街の姿は以前のままでも、生活基盤は新宿同様にパラドクス効果に頼ることになる。未曽有の事態に心が追いついていない住民の中には現状に慣れるので精一杯の者もいるだろうし、何より、例年なら他の地域からも訪れるだろう参拝客の姿がないことが、今この寺院に人の姿が少ない理由のひとつ。
 ――長岡京での任務が上手くいきますように!
 先程本堂でそう祈願してきたけれど、橙羽の胸に浮かんだ願いはひとつではなくて、復讐者として強くなりたい、いずれは他の大地も奪還したい、と様々な願いが尽きぬ泉のように湧きだしてきた。
 朧な記憶の中にも確かに故郷として燈る、函館を、北海道を。
「……いつか、奪われたすべてを取り戻すためにも。頑張ります」
「ええ、張りきっていきましょう! まずは冷めないうちにお茶をいただくところから!」
 決意を新たにする橙羽に屈託なく春一が破顔して、永久も溌剌ため笑みを咲かす。
「折角の心づくしだしね。こっちも心して楽しませてもらおうか!」
 ――いただきます!
 彩りの美しさと甘味が身上たる白味噌、それを白餡に合わせた白味噌餡は優しい甘さに上品な塩気がほんのり利いた美味、蜜煮のごぼうも穏やかな甘さの裡に大地の息吹を香らせて、米から生まれる求肥との絶妙な調和を咲かせる花びら餅。
 寺院だけでなく、縁のある和菓子屋などの協力のもとで作られたのだろう祝い菓子を味わいつついただく大福茶は、明るく澄んだ萌黄色がこちらも春を思わせ、最初は清々しい煎茶そのものの味わい。一口、二口とゆっくり飲み進めていくうちに、小梅の爽やかさと結び昆布の旨味がやんわりとけこんでいく様が、確かに福を齎してくれるようで。
 戦いの加護ももう祈願済み。心づくしをゆっくり味わって、御馳走様を告げたなら、さあ行こう。
 ――世界を救うための、戦いに。

 大福茶に、花びら餅。
 逸話や由来からして縁起の良さそうな新春のお茶と菓子は、見目にも優しい春を燈す可愛らしさ。虹色の双眸を柔く細めたライラ・ロスクヴァ(セレーネ・g00843)は煎茶の香りの中にふとミントの香りを探してしまいそうになるけれど。
 陽の沈む国――マグレブと称されるアフリカ北西部では古くからミントティーが飲まれてきたと言われているが、現代ではモロッコ風ミントティーとして知られている、中国緑茶にミントと砂糖をたっぷりと加える形式が生まれたのは、少なくとも17ないし18世紀に彼の地へ緑茶が伝わった後のこと。
 然れど、大福茶の由来となった10世紀半ばの空也上人の逸話には、上人が振舞ったのは梅干しを入れた茶であったという伝承もあると聴く。この国の歴史ごと味わう心地で湯呑みを手に取れば、白磁に映えて透きとおる明るい萌黄の煎茶の底に、遥かいにしえの時代からの繋がりを証すような紅い小梅と、鶯色のリボンを思わす結び昆布が揺れて、自然と笑みが零れた。
 ――この可愛らしいお茶をすぐに飲んでしまうのは、少しもったいない気がしますね。
 僅かばかり間を置けば、紅い小梅や結び昆布の風味がきっと更に煎茶と馴染むのだろう。そっと期待を膨らませつつ、先程自身の脚で観て回った庭園を改めて眺めやれば、庭園を歩みながら眺める風景と、この書院から眺める風景では、同じ庭園であるのにまったく異なる印象を受けることに驚かされた。
 完成された世界。
 時の流れさえも静寂の中に包み込んだような、清雅で、静謐な――。
 華やかさは無くとも確かに美しいと思える、この国の庭園芸術。新宿に流れ着いてからは見るものすべてが新鮮で、美しく尊いものだと感じられるのは、きっと、歴史の積み重ねたるものを己が魂に自然と享けとめていっているからなのだろう。
 先程よりいっそう馥郁と香るような大福茶を味わって、優しげで柔らかな花びら餅にも手を伸ばす。紅白をめでたき色彩と感じるのは、ライラの心がこの国に馴染んできている証。
 温かな福を身の芯から指先まで咲かせていくような大福茶、新春の寿ぎを春めく彩と優しい味わいで咲かせる花びら餅。
 ゆうるり味わえば、
「……ああ、なんと幸福でありましょうか」
 春を迎えた蕾が綻ぶような笑みがライラにも咲いた。
 二口目からは、気合を入れるためのお茶。
 ――禍に見舞われる長岡京に、福を齎すことができるように。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV5が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV3が発生!
【反撃アップ】LV2が発生!
【命中アップ】LV1が発生!

アンゼリカ・レンブラント
友達のシル(g01415)と一緒に
長岡京を守りに行く前にまずは現代の初詣からだね♪

大福茶と花びら餅で一服のひとときを
はー。小梅と結び昆布の香ばしさと
お茶の温かさがくれる安らぎは言葉にしがたいね
1年の無病息災と幸せを願って
まず健康でいないとね!

花びら餅ともよく合うよね。
この形は確かに珍しいや。
「歯固めの儀式」っていう平安時代の新年行事からなんだっけ
ごぼうを包んであるのは、歯を丈夫にするってことかな
私も甘いものは好きだけど歯は丈夫。白いよ!
いー、と白い歯をつい見せ合ったり

庭園もとても綺麗だったよね♪
幸せを運ぶ鳥か
私達に翼はないけれど、心の翼はここから羽ばたいていこう
さぁ福を長岡京に届けにいこっか!


シル・ウィンディア
お友達のアンゼリカさん(g02672)と一緒に初詣っ♪

大福茶を頂くけど…
あれ?普通のお茶とは違う?
なんだか不思議な味だなぁ~

このお餅も、見た目がかわいいし縁起物って感じがするよね
それじゃ…
甘すぎない味だね。なんだろ、優しい味わいっていうのかな?

へー、アンゼリカさん詳しいんだぁ~
食感を楽しむのだけじゃなくて、そういう意味合いがあったりするんだね
ふふ、わたしも歯には自信あるよっ♪
見せあいして、ついつい笑っちゃったり

一服しつつ
素敵だったよね庭園
とっても綺麗で、心が洗われるってこういうことを言うんだね
この気持ちを胸に、平安の人達へ幸せを運ぶ鳥になれるように…。

よし、それじゃ行きましょうかっ!!


神之蛇・幸人
綺麗な庭。自然のままもいいけど、人と寄り添える木々も好き
此処を取り戻せてよかった

まずは大福茶をいただきます
一年のはじまりに合う、深くて特別な味
温まってほっとする

和菓子は好きだけど、花びら餅は初めて
……あ。ごぼう、思ってたより柔らかい
甘くて少ししょっぱくて、不思議だけど好きな味

まだまだ大変なのに、こんなに良くしてもらった
見返りはいらないと思ってやってきたけど、
それでも、こうやって顧みられるのは嬉しい
背筋がぴっとする。頑張ろうって思える
少しでも早く助けられるように、取り戻せるようにって

戦うのなんて慣れっこないと思ってたのに、
今じゃずっとそうしてきたような気がする

……御馳走さまでした。行ってきます


●一陽来復
 冴ゆる冬の景色に映える常盤の緑。
 樹齢数百年と思しき五葉松も玉散らしの槙も、綺麗な球状に刈りこまれた犬柘植も、丹精された様が窺える整った美しさ。庭園の奥には楓の木々も見えたから、夏には青葉を透かした木洩れ日が、秋には鮮やかな紅葉が落ちて苔庭を彩るのだろうと想えば、神之蛇・幸人(黎明・g00182)の眦も自然と緩んだ。
 ――在るがままの自然もいいけれど、人と寄り添える木々も好き。
 此処を取り戻せてよかった、と吐息で紡いで、緑があるためばかりでない、清浄に澄みきった大気を胸に満たす。そうして最初にいたたくのは新年を寿ぐ大福茶。庭園を眺めているうち風味が馴染んだのだろう、煎茶の香りの奥からほんのり小梅の香りが開き、味わえば煎茶の清々しい味わいに小梅が爽やかさを添えて。余韻に感じる結び昆布の旨味が心を寛がせてくれる。
 ほっと安らぐ想いで臨む、初めての花びら餅は、
「……あ。ごぼう、思ってたより柔らかい」
 霞のごとき白にほんのり薄紅を透かした求肥や、薄紅色の白味噌餡は勿論、蜜煮のごぼうも黒文字ですっと切り分けられる柔らかさ。あえて喩えるならこのごぼうの食感は、栗の甘露煮に少し近いだろうか。
 程好い歯応えが食めば楽しく、けれど求肥と白味噌餡にほっくり馴染む柔らかさ。ごぼう特有の香りも花びら餅にあっては早春の大地の息吹めいた典雅さすら感じさせ、京の雅の粋とも言える白味噌の優しい風味と甘味を活かした餡の隠し味めいた塩気が、餡の、ごぼうの、それらを包む蕩けるような求肥の上品な甘味を調和させていく。
 好きな味。
 素直にそう感じるとともに、普段から和菓子を好む幸人だからこそ気づくのは、この花びら餅が素人の手によるものでなく和菓子職人の手も入ったものであること。
 新年の縁起物で、精一杯の心づくしを――と望む寺院に共感し、縁ある和菓子屋が協力したのだろう。
 寺院だけでなく、奪還したこの地の様々な人々の心づくし。胸にそんな言葉が萌せば背筋が伸びる思いがする。見返りなどいらないと思って駆け続けてきたけれど、こうした人の心に触れれば暖かな歓びが胸の奥に咲くから。
 今日もまた戦いに赴くことができる。
 戦うのなんて慣れっこないと思っていたのに、今ではもう、背にずっと刀を負って歩んできた気さえする。
 立ち上がれば穏やかな眼差しの住職に、いってらっしゃい、と送り出してもらえたから。
「……御馳走さまでした。行ってきます」

 明るく透きとおる萌黄色は春先の新芽の輝きを思わせて。
 白磁に映える煎茶を覗けば可愛らしい紅と鶯色で新春を寿ぐ小梅と結び昆布がふうわり揺れる。まずはこの見た目と香りをゆうるり楽しんでから口許へと運べば、
「ふふ、煎茶のいい香り……って、あれ? 小梅の香りがしてきたっ!?」
「うん、ほんのり昆布の香りもしてきた。風味も変わってくる感じだよ!」
 初めて出逢った取り合わせの香りにシル・ウィンディア(虹色の精霊術士・g01415)が青い瞳を見張れば、興味津々に黄金の瞳を輝かせたアンゼリカ・レンブラント(黄金誓姫・g02672)がお先に大福茶を味わって。
 煎茶そのもののすっきりとした旨味と渋味に、小梅の爽やかさと昆布の穏やかな旨味がやんわり含まれていく様と、優しいぬくもりと味わいがこころとからだに染み渡る様に至福の吐息をついた。
「はー。この安らぎは言葉にしがたいね」
「不思議な味だけど……うん、なんだかほっとする感じ」
 恐る恐る味わってみたシルも笑みを綻ばせ、一年の無病息災と幸福を願う大福茶を二人で確りと楽しめば、勿論このお茶に良く合うだろう花びら餅にも手が伸びる。
 雪を冠る梅花に見立てた、という説にも頷ける、柔らかな白にほんのり透ける薄紅色の愛らしさ。
 淡く春の彩を覗かせる求肥は儚く見えて確かなもちもち感で春色の白味噌餡と蜜煮のごぼうを包み、合わせて食めば上品な甘味が口中で花開き、優雅な白味噌の風味の余韻が、恋しいと呼びたくなるほどに柔くほんのりと後を引く。
 諸説あれど最も有名な花びら餅の由来は、平安時代に起源があるとするものだろうか。
 このあと向かう先が平安鬼妖地獄変であることにも縁を感じて、
「花びら餅って、『歯固めの儀式』っていう平安時代の新年行事に由来するものなんだってね」
「へー、アンゼリカさん詳しいんだぁ~! どうして歯固めなのかな?」
 何時か何処かで聴いた話をアンゼリカが披露すれば、博識な友に感嘆しつつシルが小首を傾げた。
 歯は『齢』に通じるもの、堅い餅や押し鮎を食べることで長寿や延命を願った新年の行事が次第に簡略化されていき、今の花びら餅になったとか。押し鮎がごぼうに変わったのも、ごぼうが今ほど柔らかく炊かれるようになったのも、時代の流れによるものか。
 自身が幸福になるのも誰かを幸福にするのもまず己の健康が肝要で、健康でいるには歯も大事、と二人は頷きあい、
「私も甘いものは好きだけど歯は丈夫。白いよ!」
「ふふ、わたしも歯には自信あるよっ♪」
 お互いにっこり笑って白く輝く歯を見せ合えば、弾けるような笑声が咲く。
 大福茶の底でころり転がる紅い小梅はきっとカリカリ。悪戯っぽく瞳を見交わし、せーので口に入れた小梅を同時に齧ればカリッと小気味よい音が揃って響いて、いっそう楽しげな笑みか咲き溢れた。
 咲いた笑声が、今いる書院のすぐ外、庭園に静かな波を描く白砂にすうっと吸い込まれる心地になったなら、静謐な世界に美しい水琴窟の音色が響く。
 澄みきった、それでいてまろやかな、不思議な音色。
 幽かなれど確かに聴こえた音色は、心の奥底の水面にそのまま滴を落としたかのごとく、魂に響いた気がして。
 改めて庭園の常盤の緑を見渡したなら、涼やかな流れに漱がれていく心地。心が洗われるってこういうことを言うんだねとシルが双眸を細めれば、
「この気持ちを胸に、長岡京の人達へ幸せを運ぶ鳥になれるように……」
「幸せを運ぶ鳥か。私達に翼はないけれど、心の翼で羽ばたいていこう」
 先に腰をあげたアンゼリカが友に手を差し伸べた。咲かせるのは互いに確かな決意を燈した笑み。
 ――それじゃ行きましょうかっ!!
 ――長岡京の人々に、福を届けにね!!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【エアライド】がLV2になった!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【命中アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!

永辿・ヤコウ
ラヴィデさん(g00694)と

清澄で廉潔
凛とした初春の空気に
身も心も洗われ透き通るよう

庭園へ感じ入るあなたの横顔が
とても真摯で優しかったから
少し見惚れてしまったのは内緒

でも
しみじみ零された呟きごと
大切に胸に沁み入る

「はい」と返す首肯には
自然と柔らな笑みが咲いたに違いない

その後の冗談へは
きょとんとしてしまったけれど


ふくよかで愛らしいお餅
新しい春
歩む一年への期待に紅潮した
乙女か稚児の頬のようです

大福茶の結び昆布も素敵
あなたとの御縁も長く結ばれると良いな
梅も桃も桜も
次の季節の花も景色も
またこうして隣で眺めていたい
想いは胸の裡に、そっと

頼もしい言へ
茶目っ気を添えて綻ぶ

つまり僕らは
福の神という訳ですね


ラヴィデ・ローズ
ヤコウくん(g04118)と

呼吸するにも畏まる、水墨画から飛び出したかの趣深い風景
現代も優美に保たれる程
多くの人の想いが注がれ継がれているのだろうと

空気まで体に良い気がするよ……
よかったねぇ、取り戻せて
しみじみ呟き隣を見る
実はヤコウくんも飛び出してきた説?
なんて。冗談にしても
彼の失った過去を空想出来る程の溶け込み具合

新宿島で出会う食べ物はどれも心躍るけど
花びら餅はまたとびきりかわいいや
ピンクの花
きっと本物も、この地にまた綺麗に咲いてくれるね
見掛けによらず甘じょっぱい味に「?」
続く大福茶の予想外の旨味に「!」
初驚きを齎す特別感に笑む

悪疫退散
素敵な文化を作った先人方へも
しっかり福をお届けしないとだ


ノスリ・アスターゼイン
g01730/シバネ

蜜柑は食ったでしょ
酒は年中
後は、

閑静で清廉な佇まいの書院にて
まるで馴染みの家みたいに
悠々と胡座をかく気取らなさ

新年に味わった品々を
指折り数えながら

餅を喰ったら
正月をコンプリート?

屈託ない笑みは
水琴窟の響き
浄土を描いた庭園
澄んだ寒さに身を震わせた散策
の帰りだからこそ尚更に

寺院の懐深い空気や
シバネの凪いだ水面の如き雰囲気のお蔭も、勿論

求肥のふっくらした口当たり
掌に包んだ茶器の温もり
ほっと一息

新年に抱負を掲げる習わしもあるんだっけ

そうなぁ
いっぱい遊ぶぞー、とか
連れ回さないとね
あんた、籠ってそうだし

差し出す掌
浮かべたのはいつもよりずっと柔らかな笑顔
花びら餅みたいに、眠たげにふわふわ


標葉・萱
g01118/ノスリさんと

静穏に転がる声を傍に
正座して視線は光の射したほう

制覇、はどうでしょう
貴方の知らないものもまだあるかも
なんて、笑っているのを横目に捉え

光の軋む音のするような冬の庭
たくさんの音がしていたようなのに
紙と木枠で隔てて今は少しの別世界
変わらず楽し気に話しているので
地続きなのだと知れるけれど

これでひとひらならば大輪だろうなどと
舌にのせれば綻ぶ甘さ
今し方降る光を落とした水面

ええ、何か始めてみますか?
尋ねれば返るのは
戯れのような言葉だから
ノスリさんらしいけれど
そんなことはないとも言い切れずに笑って噤む

返すに困って暫く浮く手をおいて
柔さに躊躇って息吐いた
まるでもう春が、きたようですね


●新春万福
 滴る雫の水音が反響し、美しく音楽的な響きで唄う。
 凛と澄みきった音色が御仏の手で撫ぜられて、まるくまろやかな響きを帯びるのですよ――なんて。
「本堂の菩薩像そっくりな住職サンに言われたら、うっかり信じちゃわない?」
「御冗談を、などと迂闊には言い出せない、不思議な説得力がありましたよね」
 書院の傍に設えられた手水鉢から音もなく溢るる水が、地中に秘められた甕の中に滴り妙なる音色で唄う水琴窟。その前で住職と行き合った時のことを思い返せばノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)と標葉・萱(儘言・g01730)が交わす声音は禁断の秘密を知ってしまった者同士の密談めいて、それが可笑しくて何方からともなく小さく吹きだした。
 平等院に代表される、夏には極楽浄土もかくやの蓮花の光景が拝める浄土式庭園にも惹かれるけれど、この寺院の、白砂が清浄な波紋を描く枯山水と、冬にも緑が美しい池泉回遊式を合わせた庭園も趣深い。
 ひとしきり散策し、庭園を望める書院に腰をおろせば、ほっと寛げる和やかさ。馴染みの友人宅を訪れたようにノスリは悠々と胡坐をかいて、新年を寿ぐ大福茶と花びら餅を前に、
「蜜柑は食ったでしょ、酒は年中、後は――」
 指折り数えるのはこの新年に味わった品々。
「――餅を食ったら、正月をコンプリート?」
「制覇、はどうでしょう。貴方の知らないものもまだあるかも」
 彼が屈託なくそう笑う様を横目に捉えつつ、萱は柔く微笑んで琥珀の双眸を細めた。
 端然と、なれど自然体の正座で望む庭園。光を感じたのは凪いだ水面にか、はたまた清らな白砂が描く波紋にか。シバネも凪いだ水面みたいな雰囲気あるよね、と続いた言葉に、そう言っていただけると何だか擽ったいですね、と更に口許を綻ばせ、迎春の菓子へ手を伸ばす。
 柔らかに春を透かす半月の花びらは思っていたより大きくて、これでひとひらなら花は大輪なのだろうな、と眦を緩めて、黒文字で切り分け一口食めば、萱の口中で花開くのは甘さばかりでなく、京(みやこ)を思わす雅な美味の調和と競演。
 その表情がもう旨いって言ってる、と彼の様子に破顔して、ノスリも新年を寿ぐ菓子を食む。
 ふっくらとした口当たりの求肥は儚さと蕩けるようなもちもち感も持ち合わせ、雅やかな餡と早春の大地の息吹を思わせるごぼうを優しい味わいで彩って。掌に包んだ茶器の温もりも味わいのひとつと思える大福茶を口にしたなら、清々しい煎茶の奥から覗く小梅の爽やかさと結び昆布の旨味にほっと一息ついた。
 懐深く迎えてもらえた心地。この寺院に、この新たな年に。
 新年に抱負を掲げる習わしもあるんだっけ、と訊けば、おや、とばかりに連れが瞬きひとつ。
「ええ、何か始めてみますか?」
「そうなぁ……いっぱい遊ぶぞー、とか?」
 ――連れ回さないとね。あんた、籠ってそうだし。
 なんて続けたノスリの蜜色の双眸が楽しげに煌いたのは一瞬のこと、そんなことはないと萱が返せなかったのは、我ながら言いきれないなと思ったのと、殊のほか柔らかな笑みで掌を差し出されたから。
 見覚えのある悪戯っぽさも、猛禽めいた鋭さも、今は春霞にふわうりとけて消えてしまったようで。
 浮かしかけた手の置き所に逡巡もしたけれど、花びら餅みたいな笑みの柔らかさに誘われて、差し出された掌に己のそれを置いたなら、零れた吐息が自然にこう紡いでいた。
 ――まるで、もう春が、きたようですね。

 清澄と、廉潔。
 厳かな伽藍の奥に広がる世界には凛と澄む大気が満ち、閑雅な寺院特有の清らな静けさが敷かれていた。幽かに聴こえくる水琴窟の音色も、ともすれば整然たる白砂の波間に吸い込まれてしまいそう。
 新たな年、初春の清冽さに身も心も洗い流され、魂までも透きとおっていく心地で永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)はそっと秘めやかに深呼吸。その傍らでラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は暫し呼吸も忘れて庭園に見入っていた。
 忘れて、というよりは、呼吸するにのも畏まる心地になったから。
 幻想竜域より流れ着いた身には未知の世界、なれど新宿で出逢った水墨画の風景がそのまま眼の前に顕現したかのごとき、趣深い眺めに感じ入る。樹齢数百年と思しき五葉松を見るだけでも、多くの人の想いが長い歳月をかけてこの庭園に、この寺院に注がれ継がれてきたのだろうと思えて、
「空気まで体に良い気がするよ……。よかったねぇ、取り戻せて」
「はい。――本当に」
 心からの呟きとともにラヴィデが傍らを見れば、春の気配を大切に受けとめた花が綻ぶような笑み。
 先程庭園に見入っていた彼の横顔が真摯で優しくて、少し見惚れてしまっていたのはヤコウだけの秘密だけれど、
「実はヤコウくんも水墨画から飛び出してきた説? なんて」
「僕も、ですか?」
 冗談めかした言葉に軽く紫の双眸を瞠った妖狐、失われたその過去を重ね見てしまう程、彼がこの風景に溶け込み馴染んでいると感じているのはラヴィデだけの秘密だ。
 交わした笑みが小さな歓声に変わったのは、新春を寿ぐ大福茶と花びら餅が運ばれてきた時のこと。
 甘やかで柔らかな春霞、ほんのり薄紅色を透かす求肥がまろやかな半月でかたどる花びらは、ラヴィデが相好を崩さずには居られぬ愛らしさ、
「この国で出会う食べ物はどれも心躍るけど、花びら餅はまたとびきりかわいいや」
「ね。ふくよかで愛らしいお餅。新しい春への期待に紅潮した乙女か稚児の頬のようです」
 黒文字をそっと当てればふにっと沈み、愛らしい頬をつついた心地でヤコウも微笑ましくなってしまうけれど、
「……!? ――……!!」
 春果実の風味や蕩ける甘さを想像していたらしいラヴィデが、白味噌餡の雅やかな甘さとほのかに秘められた塩気に幾度も瞬いて、続けて口に運んだ大福茶にやんわりとけこんだ、結び昆布の旨味に銀の瞳を輝かせる様にはひときわ笑みが深まって。
「お気に召しましたか?」
 訊けば『どっちも気に入ったよ』とばかりに返る二度の頷き。
 改めて花びら餅と大福茶を味わえば、初驚きに満たされていたラヴィデの胸に新春の特別感が満ちる。愛らしい迎春菓子、この花びら餅が梅花に見立てられているのなら、この地にも同じ色の花が咲くのかな――と彼が目許を和ませて眺める景色をヤコウも眺めやる。
 冬至という名を冠する清楚な白梅の花はここからも見えたけれど、睦月から如月へ移れば、この花びら餅のごとき薄紅色の梅花もこの庭園に咲くのだろうか。
 あるいは弥生の頃に桃花が、桜花が。
 ――次の季節の花も景色も、またこうして隣で眺めていたい。
 明るい萌黄色の煎茶に揺れる鶯色の結び昆布、彩も縁起のよさそうなそれに、あなたとの御縁も長く結ばれると良いな、と声にはせぬまま微笑する。
 萌した想いは、胸の裡にそっと、そのままに。
 傍らでラヴィデはゆるり最後まで大福茶を味わって、意を決して小梅を齧った。空也上人が疫病を鎮めたお茶には梅干しが入っていたという話もあると聴いたから、またひとつ驚きの味を体験しつつ、悪疫退散の逸話にあやかる福をいただいて。
「この素敵な文化を作った先人方へも、しっかり福をお届けしないとだ」
 平安鬼妖地獄変の長岡京。
 時空を超えてかの地を見霽かすような彼の眼差し、頼もしい言葉にまたひとつ笑みを綻ばせたなら、ヤコウは応える言葉に茶目っ気を添えて、
「つまり僕らは、福の神という訳ですね」
 ――転禍為福を、確かな声音で紡いでみせた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV8になった!
【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV2になった!

シル・ウィンディア
ふふふ、空中戦が得意なのはあなた達だけじゃないんだからねっ!
さぁ、行くよっ!!

飛翔で上空に舞い上がってから、空中戦機動に移行
三次元で前後左右に上下も使って攪乱しつつ行動だね

世界樹の翼をtype.Cにしてから誘導弾を連射して
敵の体勢を崩すことを狙っていくね
うちながら、敵に向って加速して…
そのままエアライドのジャンプで急速に方向転換っ!
残像を生み出して攪乱を行うよ

その後は、左手に創世の小剣を持って高速詠唱
少し離れた位置から、光精瞬殺剣を発動させて、一気に接敵していくよっ!
こう見えても剣も使えるんだからねっ!
パラドクスの攻撃と同時に吹き飛ばしも試みるね

何とかなったかな?
さぁ、本命さん行きましょうか!


永辿・ヤコウ
ラヴィデさん(g00694)

昊は我々が担います
皆様は他方の警戒を

上空から凛と

翼持つラヴィデさんの姿は説得力に満ち
傍らに在る僕も今は
翼無くとも飛翔する身故に
陰陽師達へ驚きと信頼を与える一助になれば良い

夕闇に蠢く夜の気配
黒翼の背に燃え立つ茜空

絵画の如きコントラスト
自在に翔ける頼もしき竜の君
どちらも秀麗、と
浮かぶ笑みは嫣然

熱気騒めく天を切り取り
厳冬の箱庭に招く

静寂の氷獄に鎖して
真白に雪いで差し上げる
血潮さえも凍り付き
天地を穢す事のないように

ラヴィデさんと背中合わせで雀と対峙
皆とも声掛け連携
死角を補う

炎に焼かれ
凍気で砕かれ
舞い散る羽根も消滅したなら
終焉の舞台が整ったと笑うのは
姫か我らか
どちらでしょうね


ラヴィデ・ローズ
ヤコウくん(g04118)と

竜翼で飛翔
呼び掛けはまだ必要なら一声
大丈夫。空は綺麗にしとくよ

決意は実証してこそ
花吹雪を『呪詛』の炎渦へ、ルイユ
飛来する羽根ごと雀を焼き焦がせるか試そう

随分ご機嫌だね

防御面はドラゴンオーラの生む『残像』と
時にエアライドで宙を蹴ることで
経路に変化をつけ狙いを定め辛く
同様に、機を見て一跳びに急加速出来れば
至近で炎を見舞う『不意打ち』が叶うだろうか

茜を穢す血を蒸発させて
炎か毒か呪詛か、肺まで焦げ付きそうな戦場に
舞う氷雪が冷ましてくれる
負けてられないな
常に笑みには余裕を
親玉にお楽しみ頂くためにも、ね

ヤコウくんは勿論、皆と連携して頭数を減らしたい
最後の一羽まで確実に仕留めよう


山元・橙羽
「上からの敵は僕達に任せて下さい、皆さんは別方向からの敵への警戒を!」
長岡京の人達に声をかけたら、飛翔とエアライドで空中戦へ。
これで敵の軍勢は僕達に気を取られるとの事ですが、流れ弾が地上の人たちを巻き込まないよう注意しましょう。
夜雀の攻撃には視界を奪うものが多いようですが、完全視界で少しは対処できるかな?
まさか呼び出した妖精には敵の目くらましは効いてこちらの残留効果は効かない…なんて事になったら困りますが、それなら僕が直接殴りに行けばいいだけの事。あるいは逆に僕が囮になって、妖精に不意を突いてもらう…とか。
とにかく、敵を倒し、長岡京の人々を守る為に頑張りますよー!


ノスリ・アスターゼイン
g01730/シバネ

迫る禍つを軽やかに笑い飛ばし

胸が躍るね
天翔戦

任せてよと言より雄弁な琥珀の翼
陰陽師らへ手を振り
一息に空へ

皆と声を掛け合い
状況把握し捌いて行こう
一羽たりと逃がしはしない

エアライドで空を蹴り
軌道を読ませず飛翔
眼前に肉薄

豆鉄砲を食った顔になっているよ
雀なのに

悪戯な笑みでも瞳は鋭利
油断も見縊りもせず
魔弾を叩き込む

毒は一撃離脱で回避か
風を起こして散らせるかな

そんなに羽根を千切ってしまったら飛べなくなるよ
…風切り羽は、ここかい?

背後に回り
耳元で艶めく囁き
雀の気を惹いて
皆の攻撃の援護もしよう

軈て降り立つ姫の御前

献上するには充分の見世物だった?
でも幕引きには未だ早い
その身を地に叩き落すまでは


神之蛇・幸人
傷つけたり殺したりするのを楽しむ人間もいるけど
力のある妖怪なら尚のこと質が悪いね

おれは斬ったって楽しくない。嫌な感覚が後を引くだけ
それでも迷えば人が死ぬから
善いことをしたいと思いながら殺すただのエゴ
結局のところ、ぶつかりあうから斬るだけだ

式神の背に乗って、接近できる範囲の夜雀は妖刀で〈両断〉
来宵にも爪嘴で引き裂かせる
生憎、空は君達だけのものじゃない
纏わり付く羽根は【飛翔】の急降下、急上昇で〈吹き飛ばし〉
おれに向かってくるのは剣圧で払ってもいいかな
身動きできないほど拘束されたなら、
来宵を式札に戻してから、敵の背後に呼び直して襲わせる〈一撃離脱〉
……喰ってもいいけど、苦しめずにね


アンゼリカ・レンブラント
翼がなくても空中戦は得意だよ
「ここは私達に任せてね!」
陰陽師達に撤退してもらい、
高速で【飛翔】しての空中戦を挑む

まずはパラドクスの突撃攻撃!
夜雀達の1体に突き抜けるような貫通撃をお見舞いしたら、
動きを止めずに距離を取り、
敵陣の隙を窺って再度突撃だ!

仲間の攻撃タイミングに合わせ打ち込むよ
もしくは攪乱するように動いて相手に隙を作り、
そこを仲間に狙い撃ってもらう、等臨機応変に動ければいいね

相手からの攻撃はオーラ操作で障壁を張るのと、
攻撃を受けると同時にエアライドで
宙を蹴って衝撃を緩和できればいいかな
囲まれないよう注意だね。

弱った夜雀には呼吸法で十分力を溜めた
《光輝勇突撃》を叩き込んで落としていくよ!


標葉・萱
g01118/ノスリさんと

譲っていただける?
市井の護りはお願いして
発った背を追いかけに

手近な足場から足場へ、足場から屋根
なくなったなら飛翔で、風も追い越し高く
昇ればある程度の小雀の布陣も
把握できるでしょうか

空の不慣れな分あちらの方が優勢かな
場の把握と伝達に気を留めつつ
数には手数の、牽制も兼ねて
羽根も本体も夕星で穿ち落として
各個の撃破はお任せに

捕まるよりは大回りで逃げましょう
…なんて、鬼ごっこもほどほどに
陽が落ちたら帰る時間だ

小雀たちも帰ったならば
その爪先が降り立つ前に


ライラ・ロスクヴァ
夏半ばからの付き合いのこの翼
まさかこのような場所で活躍することになるだなんて
あまり好きではない翼ですが、人々を守れるのであれば重畳

蝙蝠めいた翼を羽ばたかせ夜雀退治と参りましょう
シックルソードを手に飛翔し、一閃しましょう
数が多いので、他のディアボロス様と声を掛け合って連携が取れるといいですね
ちゅんちゅんとずいぶん姦しいこと
雀であるのならば、夕闇に眠っていて欲しいところですね
ならぬのであればその羽根を捥いでしまいましょうか

貴方たちの『楽しい』は、わたくし達のそれとはずいぶんと違うようで
どうにも共存ができませんので、駆除させていただきます
心苦しいですけれどね


●欣喜雀躍
 ――チッチッチと鳴く鳥を、はよ吹き給へ伊勢の神風。
 最終人類史に伝わる妖怪伝承によれば、この唱え言が夜雀よけの呪文のひとつであるという。無論、伝承の夜雀と平安鬼妖地獄変のクロノヴェーダたる夜雀は姿からして伝承と完全に同一の存在ではないのだろうが、たとえ別物であろうとも。
「わたくし達が神風となり、あの夜雀達すべてを吹き散らすと致しましょう」
 獣神王朝より漂着した身なれども既に様々な伝承に精通したライラ・ロスクヴァ(セレーネ・g00843)は、虹色の双眸で遥か彼方の敵影を捉えつつ全速で【飛翔】する。神速で風切る翼は黒き皮膜の悪魔のもの、夏に望まずして得たそれを好ましいと思ったことはないけれど、この翼とともに得た力で人々を護れるならば、
 ――迷わず、翔けるのみ。
 天は禍々しくも美しく、鮮紅の血潮に濡れながら誰かの指先で金泥を塗られたように彩られ、
 あるいは鮮血に黄金の炎を燈すがごとく燃え上がるように輝いて、ゆうるり迫る妖怪の軍勢を悍ましき影色に染める。
 万全を期して仲間達と積み重ねた【飛翔】は既に最高時速400km。しかも長岡京を護る陰陽師やならず者達に自分達が天翔ける術を持つのだと証し立てる必要があるならば、飛翔の速度を捨ててまで大地を馳せる理由は何処にも無い。
 長岡京の外縁で妖怪の軍勢を迎え撃たんとする陰陽師やならず者達の姿を認めたなら山元・橙羽(夕焼け色の蝶・g01308)は夕陽の彩に煌く蝶の翅を広げて高度を落とし、
「天より迫る敵は僕達に任せて下さい、皆さんは別方向からの敵への警戒を!」
「其方達は……!」
 弓矢で武装し陣を敷かんとする彼らへ呼びかければ、討ち死に覚悟であっただろう全員の眼に希望の光が燈る。迫る軍勢と夕暮れを一瞥した永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)が茜空に大きな狐の尾を翻し、
「ええ、敵はあちらばかりとは限りません。皆様は他方の警戒を」
「大丈夫。空は綺麗にしとくよ」
「お任せあれ、ってね!」
 凛と言を継いだなら、夜闇とも紫闇とも見ゆる竜翼で夕風ひとつ打ってみせたラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)と、彼方の天を悍ましく彩る禍つ群れを軽やかに笑い飛ばしてみせたノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)の魔力の翼が琥珀の煌きを透かす様に、おお、と確かな感嘆と信頼の声が湧いた。仔細の説明は要らぬ模様、
「譲っていただける?」
「譲るも何も、御助勢に感謝を! あちらの妖怪どもはお任せ致しまする……!!」
 駄目押しとばかりに標葉・萱(儘言・g01730)が微笑めば、彼らの統率者らしき陰陽師が応え、その号令一下で即座に皆が長岡京へ退いていく。琥珀の眼差しを安堵に緩めて舞い上がるは遥か茜空の高み。
 廃都といえど今も人の営みがあるのなら、敵を招き入れてやるのでもなく街の上空で戦うのでもなく、妖怪どもが長岡京へ到達する前に迎え撃てばいい。天を翔ければ黒雲のごとき敵影が瞬く間に翼持つ少女達の大群と見えてくる。
 整然と陣を組むでなく勝手気侭に翔ける夜雀達の様子を見れば、
「どうやら、乱戦になりそうですね」
「いいんじゃない? 存分に掻き回してやろうじゃないの」
 双眸を細めた萱の言葉にノスリの口の端が愉しげに擡げられ、天翔戦――と詠うように紡げば彼は高速ゆえに苛烈な向かい風を獲物を狙う猛禽さながらに貫いた。
 鮮血の紅に染まる天が、金色に輝く雲が、奔流のごとく視界を翔け去る高速飛翔の世界を突き抜けて、
「空中戦が得意なのはあなた達だけじゃないんだからねっ! さぁ、行くよっ!!」
 誰よりも速く接敵したのは自陣で最も空中戦に長け、その強みを活かせるシル・ウィンディア(虹色の精霊術士・g01415)。三次元軌道を常に念頭に置きつつ花開かせるは藍鉱石の蕾、鉱石の花と翼戴く杖を魔力銃へ変じたなら、思うさま撃ち放つは天空を縦横無尽に翔けめぐる誘導弾、
『チチッ! 何これ何これ!』
『手応えのありそうな相手!』
『誰が最初に血祭りにあげるか白蛇姫様にお見せしなければ! 楽しみ、楽しみ!!』
 だが夜雀達は瞳を輝かせ、無数に放つ羽根で悉くそれを迎え撃つ。数多の光弾と黒羽が激突し煌きを振り撒くも、
「誘導弾の腕前は互角、攪乱の技量はそっちが上――それでも、わたしは連射も得意なんだからっ!!」
 怯まず猛然と撃ち込む誘導弾の連射。
 なれど彼女の真なる秘密兵器は磨き上げた空中戦の技量を更に冴え渡らす跳躍と残像の技、光弾とともに敵勢へ跳び込めばその刹那、軽やかに宙を蹴り鮮やかな残像を残して遥か高みへ跳ぶ。パラドクスなき光弾が敵に痛手を与えることはないが、
 今のシルの最大の強みは、出し惜しみせぬ全力全開を、純粋な牽制や攪乱に費やせる潔さだ。
 跳躍と残像に夜雀達がその意識と視線を振り回されたのは一瞬のこと。然れどその一瞬で、
「それなら私も全力全開でいくよ! さぁ、勝負だーっ!!」
 眩い夕陽よりも鮮烈な黄金が黒雲のごとき夜雀の大群を貫いた。
 空中戦はアンゼリカ・レンブラント(黄金誓姫・g02672)にとっても最早お馴染みのもの、とは言え確たる技能を持つ仲間や夜雀達に及ぶものではない。なれど一切の躊躇なき真っ向からの正面突撃、それを為す勇気で一瞬にして絶好の機を掴み獲った黄金誓姫の輝ける光剣が敵の躯を見事貫通し、
『チィ……ッ!!』
 完璧な形で決まった自陣最高火力の光輝勇突撃が、夜雀一羽の反撃も次撃も、命さえも一撃で奪い去る。
 熱く熟れて蕩けるような夕陽が天を染める鮮やかさ、夕闇とも黒雲とも見ゆる翳りで逢魔が時のさきぶれを告げる夜雀達、傍らに紫の眼差しを流せば、夕映えの茜と陽射しで朱金に燃え立つ空に映える黒翼で翔ける竜の君。
 どちらも秀麗――と嫣然たる笑みがヤコウのかんばせを彩っていたのも戦場に突入するまでのこと、
「これ以上ない先制となったようですね、なれど敵もまた天晴れと言いますか」
「流石は妖怪……って言っていいのかな、少女のなりでも随分と好戦的だねぇ」
 強襲により一撃で仲間が屠られた様に夜雀達は騒然とするものの、恐慌ではなく血の匂いに猛り昂揚していく気配が強い。
 禍々しくも美しい夕暮れの空が黒風白雨ならぬ黒風血雨荒ぶ戦場へ転じる様を目の当たりにしつつ、ラヴィデが愛おしげに赤薔薇へ口づければ途端にその花吹雪が紫黒に燃え上がりながら雀の女妖達へ襲いかかり、涼風が一閃したかと思えば真白き薄氷がヤコウの意のままに箱庭の牢獄を織り上げて、夜雀達を鎖していく。
 焔の花嵐が翔けて翼を焦がし真白き薄氷が砕けて雀を斬り裂いて、黒き羽根も舞い吹雪いては鮮紅と金に輝く天に血飛沫を描き出し、光も闇も彩も影を鮮やかさを増す世界に、この場の何者よりも大きな翼が翻った。飛来せしは翼長一丈六尺の怪鳥、
 其の式神、族を以津真天、名を来宵と云う。
 ――おれは斬ったって楽しくない。嫌な感覚が後を引くだけ。
 ――それでも迷えば人が死ぬから、善いことをしたいと思いながら殺す、ただのエゴ。
 結局はぶつかり合うから斃すだけだ、と己の裡なる情念を正しく理解しながら神之蛇・幸人(黎明・g00182)は天翔ける己が式神の背で蘇芳を求むる妖刀を抜き放つ。一閃する標的は無論血の宴に昂る夜雀、なれど時空の理を超える者同士の戦いである以上、
『チチッ! 素晴らしい妖気を感じる刀だけど、効きませんとも!』
「だろうね。だけど――」
 たとえ巨鯨をも一刀両断にしてしまえるほど技を磨きあげたとしてもパラドクスの乗らぬ刃では敵に傷ひとつ付けられぬ。勇む夜雀が彼の剣閃を蹴り上げ宙返りを打つが、パラドクスたるは式神・以津真天来宵のほう。妖刀をいなした瞬間に怪鳥の嘴で背を突き上げられ、雀の女妖が血の雨を降らす。
 速度も高度も相手に勝る飛翔は叶えど、空中戦の技量は己より夜雀達が上。なれど幸人は夜雀達へ挑むようにこう告げた。
 ――生憎、空は君達だけのものじゃない。

●干戚羽旄
 ――チッチッチと鳴く鳥は、シナギの棒が恋しいか、恋しくばパンと一撃ち。
 天は赤く禍々しく染まれど美しく、彼我の力と血飛沫が交錯する戦場は橙羽の想像以上に苛烈。それでも怯まず翔けたなら脳裏を掠めるのは伝承知識から浮かび上がったもうひとつの夜雀よけの呪文、
「僕の手にシナギの棒はないけれど、この聖槍がその代わりだ――!!」
 双眸に黄金を輝かせて揮うは妖精召喚の権能を穂先に燈す槍、夕風を貫けば途端に清らに煌く妖精達が翔け、槍撃とともに夜雀達へ襲いかかった。交錯するのは反撃の黒き羽根。
 妖怪伝承では夜雀を捕えた者は夜盲症を患うと語られるが、この夜雀達は自ら獲物を捕えて視界を奪わんとする。これには【完全視界】で対抗できるかと期待した橙羽だったが、パラドクス効果も万能にあらず。
 たとえば森の中で【完全視界】を使うならば、風に揺れる木の葉の先は見通せるだろうが、樹の枝や幹に遮られた先までは見通せない。闇や霧、桜吹雪などにも視界を邪魔されぬこの効果も顔面を覆うように視界を封じられれば厳しく、失明の毒で視力そのものを奪われれば意味を成さない。
 先程の陰陽師やならず者達、時空の理を超えられぬ者達なら視界を奪われたまま絶命させられていただろう。
 なれど、妖怪のパラドクスといえどディアボロスの視界を奪えるのは一瞬の攻防の間のみのこと、
「それも、戦い方次第で何とでもなるってね!」
 戯れるように躍る夕風は風使いの技で操るもの、それでも黒き羽根の毒は散らせぬと察すればノスリは夜雀達より空中戦に長ける己が身と【エアライド】を駆使して相手の狙いを乱す。
 天を翔け風に跳ね、眼を狙った一射をこめかみに掠らせながらも跳び込む敵の眼前で悪戯な笑みひとつ、
「豆鉄砲を食った顔になっているよ、雀なのに」
『……っ!!』
 戯言を紡げど蜜色の双眸は鋭く煌いて、先に橙羽の槍撃が穿っていた腹部へ叩き込むのは油断なく反撃側優勢を勝ち取った双翼魔弾、また一羽が撃墜されれば敵の意識が一斉にノスリへ向いたが、
「おや。あなた方を狙うのは猛禽ばかりではありませんよ」
 鮮血に黄金の炎を燈すがごとき天、その高みで凍てる朝を、昏き夜を思わす硝子のカードが砕け散った刹那、微笑した萱の言の葉とともに堕ちるは冷たく冴ゆる幾つもの夕星。
 凛冽な白銀を夕陽の輝きで朱金に煌かせ、彗星のゆめより解き放たれた冱星の矢が天より堕ちて雀を穿ちて瞬く間に四羽を大地へ叩きつけんとするが、
『チチッ!』
『綺麗綺麗! でも、負けませんっ!!』
 幾つもの反撃の黒羽根が堕天を拒むよう翔け上がる。鬼ごっこ気分で逃れんとしても常軌を逸した軌道で追い縋る。
 白蛇姫のみならず、大群の夜雀達も決して侮れない――脳裏に甦ったのは時先案内人の言葉。
 この戦いで更に効果を重ねられた【飛翔】は最高時速500kmでの移動も可能にしていたが、時空の理を超える者同士、即ち時間も空間も世界法則をも書き換えながら戦う復讐者と歴史侵略者の戦いでは如何な高速であろうと敵のパラドクスから完全に逃れきることは叶わない。
 相手のパラドクス攻撃を完全回避できないのは彼我ともに同じこと、なれど相手の反撃を無にする手立てなら存在する。
「反撃できなくなるくらい、それかこっちが反撃の勢いごと吹き飛ばせるくらい、強烈な攻撃を叩き込めばいいんだっ!!」
 攻撃強化と反撃強化の加護はあれど防御強化の加護はなき此度の戦場、それでも臆さず吶喊するのはアンゼリカ。
 仲間達へのまっすぐな信頼と相乗する揺るがぬ勇気が彼女の何よりの強み、被弾覚悟で前方に全出力で魔力障壁を展開した少女が眩い光輝にも包まれたのは、己が肉体そのものを光輝勇突撃の武器と成すがゆえ。そして最も敵勢が密集したところへ突撃を仕掛けたのは――仲間達へ絶好の攻撃の機を贈るためだ。
 黄金誓姫必殺の破壊力は初撃で証明済み、不運にも標的となった一羽を除く夜雀達が反射的に散った刹那、
「贈られた好機、受け取ったよ。オレ達が纏めて狙うから――」
「ええ、深手を負った雀から落としていただければ」
 彼女の意を正確に汲んだラヴィデの笑みの前で爛熟の散り際を迎えた赤薔薇が紫黒に燃ゆる花嵐と化し、流れるよう魔力を添わせたヤコウが儚くも鋭く凍てる薄氷を踊らせて、灼熱と凍気が烈しく渦巻き幾重にも襲ねて夜雀達を呑み込んでいく。
 複数の敵を標的とする攻撃は同時多発的に幾つもの反撃を喰らうもの、なれどアンゼリカが創り出した夜雀達の隙をついた二人の術はその反撃をも捻じ伏せて、
「了解。各個撃破だね」
「ええ、確と仕留めてみせます」
 苦悶の囀り洩らす女妖達が攻勢に転じるより速く式神を旋回させた幸人が剣のごとき怪鳥の爪で一羽の首を刈り、涼やかな眼差しで獲物を捉えたライラが仄蒼い月の弧を描く刃の一閃で更なる一羽を天空より地上へ葬った。
 まるで、追い風に背を押されるよう。
 確かに感じるのは自陣への追い風、茜空には未だ黒風血雨が荒べど翔けて舞ってヤコウは薄氷の煌きを戦場に鏤めていく。ラヴィデが灼熱の炎渦と爛熟の輝きで夜雀達を焦がす世界を凍てる氷で切り取って、
「静寂の氷獄に鎖して、真白に雪いで差し上げる」
 雀の少女達を招くは厳冬の箱庭、囀りも血潮も凍てついてしまえば天地を穢すこともあるまいと微笑して、次なる獲物へと指先を転じる時には黒風血雨の最中で竜翼と狐尾が触れ合いそうな背中合わせ。
 背を預け合えど死角を潰しきれぬのが空中戦、なれど彼らは二人きりで戦いに臨むにあらず。
「前後左右だけじゃない、上空や地上にまでも、わたしがあなた達を振り回してあげるっ!!」
 ――光の精霊よ……、我が身に宿りて、すべてを斬り裂けっ!!
 戦場の高みから凛と通る声音で落ちるはシルの言の葉と高速詠唱、鮮烈な輝きで夜雀達の眼を惹きつけた刹那、瞬間転移で彼女達の眼前に顕現したシルが左手で描き出すのは碧き流星。光の精霊の力を凝らせた淡碧の剣で夜雀達を斬り伏せたなら、吹き飛ばしを試みるまでもなく絶命した二羽を撃墜して。
 成程、上空や地上ね。と不敵に笑んだのは野を擦る猛禽の名を己に冠した青年。黒風血雨の下方へ潜り込み地を撫ぜるように翔けたノスリが瞬時に上昇に転じて獲ったのは撒き散らすよう黒羽根を撃ち放つ夜雀達の背後、
「そんなに羽根を千切ってしまったら飛べなくなるよ」
 ――風切り羽は、ここかい?
 雀の少女達の耳朶を撫でるがごとき囁きを落とすとともに指先で真実甘くなぞる夜色の翼、
『あっ、だめ、やめて――!!』
『チ、チィ……ッ!!』
 響き渡るは嬌声ではなく至近で双翼魔弾を叩き込まれた苦悶の叫び、爆ぜる彼の魔力と女妖達の血潮の中心へ迷わず翔け、冴ゆる月光を凝らせたがごとき刃を改めてライラは握り込んだ。
 雀の囀りはちゅんちゅんが相場だが、伝承の夜雀の囀りはチッチッチであると聴く。
「そこは伝承どおりなのですね、いずれにしても随分と姦しいこと」
 ――夕闇に眠らぬ雀なら、その翼をもいでしまいましょうか。
 極めて単純なれどそれゆえに何処までも鋭利な一閃こそがライラのパラドクス。耳許に月を、手首に星を躍らせて、冷たい狂気の刃を閃かせた夜の娘が、夜の雀の片翼と命を断ち落とした。
 至近の魔弾を喰らったもう一羽をその命ごと撃墜したのは他の夜雀達をも獲物としながら萱が降らしめた冱星の矢、次々と夜雀達が落とされ自陣の優勢が確たるものになっていく戦場で、琥珀の双眸を淡く翳らせた萱は密やかに訝しむ。
 軍勢を統べるという白蛇姫、彼女は何故この期に及んでも夜雀達に指示ひとつ与えぬのか。

●破邪顕正
 ――もしかして、夜雀達が血に塗れる様を……笑って、眺めてる?
 黒き羽根を数多撒き散らす夜雀達、その遥か後方で滞空する黒馬の背にある白蛇姫。市女笠を彩る黒紗の裡で彼女の紅唇が艶やかな笑みを刷いた気がして、幸人は微かに眉根を寄せた。彼我の距離は未だ遠く、見間違いかと思えどそうも言いきれぬ冷たい何かが背筋を撫でる。
 弾丸のごとく迫り来る黒羽根に妖刀を揮いその剣圧で幾許かを払って勢いを削いだなら、縛められるは幸人の半身。自由の利く片手を閃かせれば巨鳥が式札へと還り、即時の反撃として夜雀の背後に顕現する。
 以津真天の嘴が開けば覗くは鋸のごとき歯列、不意に白蛇姫の笑みが脳裏を掠めれば憐れみが湧いて。
「……来宵。喰ってもいいけど、苦しめずにね」
「確かに、心苦しくないと言えば嘘になりますが――相容れぬ以上、斃しきる以外にないのでしょう」
 妖怪といえど少女の姿をした命が散る様に胸が痛まぬはずもない。然れど夜雀達も血の宴を歓び昂る性(さが)を持つのに違いなく、なれば共存の道はないと割り切って、無数の黒羽根が横殴りの雨となって襲い来る夕暮れをライラは突き抜けた。
 揮う一閃はあくまで冷たく冴えて、なれど真朱を目許に引いた戦化粧が、彼女達に手向ける涙の代わり。
 鮮血に黄金の炎を燈すがごとき天が、鮮やかさと輝きを増していく。それは夕陽がいっそう眩く蕩けたからばかりでなく、黒雲のごとき夜雀の大群が加速度的にその数を減じ、黒風のごとく吹き荒ぶ彼女らの羽根も少なくなってきたがゆえ。
 当然こちらも無傷とはいかないが、だからこそ橙羽は己を叱咤するよう戦意を燃え上がらせる。
「ここが踏ん張りどころですよね、長岡京の人々を守るために頑張りますよー!!」
「その意気だよ! この禍のひとかけらだって、長岡京に届かせたりしないっ!!」
 聖なる槍を手に敵勢へ躍り込むは己自身を囮と成すがため、橙羽が突撃した瞬間に夜雀達の周囲に顕現した妖精達が一斉に襲いかかれば、一呼吸で大きく跳躍したアンゼリカが渾身の力と黄金の光輝を乗せた剣で敵一羽を叩き落とし、
「ここの人達へ、平安鬼妖地獄変の人達へ幸せを運ぶ鳥になりに来たんだから……果たすよ、絶対に!!」
 青い鳥の翼の代わりに青き髪を翻したシルの姿が掻き消え一瞬で彼我の距離を殺して二羽の夜雀の胸元を斬り裂いた。碧き光が引き連れるは夜雀達の血飛沫、茜空を穢すそれを蒸発させるがごとき勢いで迸って渦巻いたのは、ラヴィデが赤薔薇と竜の吐息で熾した紫黒の炎。
「決意は実証してこそ、約束は果たしてこそ、だもんね」
 祝福と呪詛の輝きが反撃の黒羽根ごと二羽の命を焼き尽くせば、
 ――この素敵な文化を作った先人方へも、しっかり福をお届けしないとだ。
 ――大丈夫。空は綺麗にしとくよ。
 決意も約束も胸に燈して翔ける茜空、【エアライド】で小刻みに軌道を変え赤薔薇めいて咲く龍気に己の残像を閃かせつつ狙う次なる獲物は相討ち覚悟の眼差しで正確な毒羽根の一射を撃ち込んで来るも、本来なら銀の瞳から後頭部まで突き抜けたはずのそれに残像の瞳と実体の掌を穿たせて、余裕の笑みを崩さず跳び込む夜雀の懐。
 翼持つ少女に赤薔薇を捧げる竜人――と如何にも浪漫な光景が生まれたかと思えば途端に両者の間で燃え上がって渦巻く紫黒の炎、雀の毒も彼の呪詛も灼熱に呑み、肺をも焦がしそうな熱気にラヴィデ自身も陶然としかけたが、ひらり舞った薄氷がたちまち雪花舞う箱庭を織り上げ、清らな冷気で熱気を浚っていく。
 一息つく間もなく笑み深め、攻勢に繋ぐのは。
「親玉にお楽しみ頂くため、なんて言ってみようか」
「炎と氷の涯てに夜雀の羽根も命も尽きたなら――」
 終焉の舞台が整ったと笑うのは、姫か我らか、どちらでしょうね。嫣然たる微笑でヤコウが応じたのは、絶え間なく翻らす薄氷、それが鎖すべき夜雀達があと僅かばかりであるからこそ。
 初めは黒雲のごとき大群であった女妖も最早数えるほどを残すのみ。
 陽が落ちたら帰る時間だ――と言わんばかりに煌く萱の夕星、宵空を彩る冱星の矢が幾つも降る夕暮れを、瞬間転移で星の瞬きのごとく翔けたシルが揮う光の斬撃が、琥珀の煌き秘めた翼で冱星の矢の合間を縫うよう翔けたノスリの魔弾が、夜雀達を狩り尽くせばその余韻に浸ることなく、
「さぁ、本命さんに行きましょうか!」
 即座に進路を転じてシル達が翔ける先は黒馬の背に悠然と座したままの白蛇姫の御許。飛翔のみならず跳躍も重ね、逸早く姫の御前にノスリが舞い降りて、
「献上するには充分の見世物だった?」
 けれど真なる幕引きは、その身を地に叩き落としてから――なんて本音を隠すことなく挑むように笑んだなら、白蛇姫から返ったのは彼らを心から歓迎するがごとき笑み。
『ふふ、愛しいのう。ああ、愛おしい』
 艶めく紅唇が詠うように言を継いだ。
『人間(ひと)の子らが血に塗れる様も、夜雀の子らが血に塗れる様も愛おしゅうてならぬ』
「……!! 夜雀達が!!」
 誰のために戦ってたと思うんだ!! そう続く言葉が声にならぬ、黄金の髪が逆立つかに思えるほどの憤りがアンゼリカに湧き上がるのは気に留めず、白蛇姫は市女笠を彩る黒紗の裡からゆうるりとディアボロス達を見渡した。
『実に心躍る献上品であったゆえ、褒美をとらそう。我が直々に、其方らの命を弄んでやろうかの』
 紅唇よりなお紅い舌がちろりとそれを舐める様からも、幸人は黎明の眼差しを逸らさない。
 ――傷つけたり殺したりするのを楽しむ人間もいるけれど。
 ――それが力のある妖怪なら尚のこと性質(たち)が悪い。
 改めて得心した。
 確かにこの女妖は、大いなる禍(わざわい)だ。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【神速反応】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【エアライド】がLV3になった!
【飛翔】がLV10になった!
【託されし願い】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV7になった!
【アヴォイド】がLV2になった!
【先行率アップ】LV1が発生!

シル・ウィンディア
…クロノヴェーダに同情するつもりはないけどね
でも、そういうのは、個人的に許せないんだ。
あなたは、謝っても許さないからっ!!

世界樹の翼はtype.Aのままで、左手の創世の小剣での斬撃を中心に立ち回るよ。
飛翔からの空中戦で飛び回ってすれ違いざまに斬撃を繰り出すよ

そのまま止まらずに飛び抜けてから…
敵パラドクスはできるだけ引き付けてから、残像で攪乱して回避して被害を抑えられたらっ!

反撃したあとは、飛翔で飛び回りつつネメシスモード開放っ!
背中に2対の光の翼と体の周りに青白いオーラを展開っ!

そのままじっくりと詠唱を重ねて…
味方の攻撃の隙間で
貫通撃を乗せた全力魔法の六芒星精霊収束砲!

後悔しても遅いからねっ!


永辿・ヤコウ
ラヴィデさん(g00694)

饗宴の贄として嗾けられた雀達
羽根の残滓が消え行く様に
憐れと想い寄せるつもりはない
ただ
姫自身から散る血潮さえ愛でていそうな
禍の本質に背筋が冷える

ふと
傍らから清らな花の香

書院での静穏な記憶が蘇り
心を洗ってくれるようで
眼差しが凛と清冽になる

澱んで渦巻く禍々しき気を
萌える春の香りで清めよう

誘眠
例え一縷の間でも隙を作ることが出来たら
皆々へ繋ぐことが叶うだろうか

姫達の動きをよく見
常に声を掛け合い
皆と連携
突進は飛翔とエアライドで軌道を変え回避

春野辺の彩りは
緩やかに破滅へと導く柔い牢獄
出口に待つのは終焉のみの
迷宮で彷徨う夢

戦後
僅かな残香が
この地に春を萌す福の報せとなると良いなと願う


ラヴィデ・ローズ
ヤコウくん(g04118)と

大丈夫
負けやしないと清々しく隣へ
命を軽んずる輩には集った誰一人

飛翔
常に最高速より緩急つけ偏差を読まれ辛くしよう

パラドクスは『呪詛』宿るレゼル(長弓)にて
命中の加護だけでなく、ヤコウくんや皆の攻撃で
生ず隙を見逃さず射たい『精神集中』

蛇の尾はエアライド交え跳躍する他
オーラとSweetie、燃ゆ荊棘の壁が
多少は衝撃緩和出来ないか『火炎使い・結界術』
負傷時も悦ばせたくないし。血は燃やし
弓引く腕が動けば十分な一笑『忍耐力』
一手でも多く連携に加わり、皆の機に繋げよう

力があって
惨劇を喜劇と愛せるならば、どんなにか世は楽園だろう
それでもオレは。この地獄にこそ、儚く尊く咲く福がみたい


ノスリ・アスターゼイン
g01730/シバネ

俺も愛おしいよ
躊躇なく喰らい付ける相手でさ

雀に同情はしないけど
捨てられるだけの命は虚ろだ

口調は軽く常のまま
だが油断も侮りもしない

沈む前の太陽を揺り起こして
喰い裂きに行こうか
喚び讃えるホルス
天の支配を夜に委ねるには
まだ早いでしょ

皆と声掛け
状況を見極め
連携を密に

飛翔とエアライドを駆使し
近く遠く
軌道を変えて
姫も蛇も馬も翻弄しながら
仲間の攻撃が通る道筋を、隙を作りたい
自身の好機も猛禽の眼差しで決して逃さない

さて
笠の下はどんな美女か
しかし見目より
纏う気配が酷く醜い

血肉にするには毒が過ぎるね
とは
餞の皮肉

なぁ
あれ程
狂おしく
愛おしく思うものが
シバネにもあるかい

そりゃ確かに!
綻ぶ笑みは福々と


アンゼリカ・レンブラント
お前は見過ごせない。必ずここで討つ

ネメシスモードで天使風の姿に
飛翔・エアライドを駆使して空中をダッシュで駆け突撃
パラドクスでの光剣で切り込んでいくよ
見切られにくいように攻撃の度軌道を変える

敵からの反撃には光剣からの衝撃波を黒馬に見舞い、
勢いを相殺してダメージを減じさせるのを狙う
オーラ操作での障壁もある。私の勇気と怒りは
このくらい折れたりしない!

動きを止めず接近戦を続け
時にフェイント・攪乱を行い隙を作り出すことに専念
作った隙に仲間の攻撃が綺麗決まればいいかな

仲間と共に戦う力は、凄いんだ
お前は自らのために命を懸け戦った者を嗤った
だからこその結末だよ

呼吸法で力を溜めた、全力の《光剣収束斬》で決める!


神之蛇・幸人
これは長く使いたくないんだ。生憎と死に急ぐ生き方をしてなくて
でもきっと、あなたは呪いを向けるのに相応しいね[神蝕呪刃]

接近して斬りに行く
【エアライド】を組み合わせた不規則な動きで〈攪乱〉狙い
深くは斬れなくてもいい、退いても仲間がいるから
馬の血も蛇の血も、白蛇姫にとっては嬉しいだけかな
白蛇の尾は【飛翔】で後退しつつ妖刀で受け流す
勢いは削げなくても、少しでも傷を負わせられる手を選びたい

あなたは愛されてるのに、とても淋しいひとなんだね
血が見たいなら叶えてあげる

どうするのがいいか、考えたんだけど
血の馨も温度も一番近くで感じられるのは
きっと白蛇姫自身が斬られたとき

首を狙って刃を振るう〈両断〉


標葉・萱
g01118/ノスリさん

遊ぶものではないでしょうに
随分趣味が悪いこと
憐憫と嫌悪は鞣したうえで
下しきれずに顰めて

先の戦況を見てまだ余興のおつもりならば
実力は確かなのでしょうから、心して

一人というには蛇に馬にと賑やか
相手の出方に気を払いながら
同道の方とも連携できれば
エアライドの勝手も幾分慣れたでしょうか
躱すのは最小の動きで違わず定めに

ご自身の血でも、愉しめますか
悪趣味の返事に興味はないけれど

息つかせぬよに間断なくと
他の方に合わせて連ねましょう
作った機を逃さずに幽冥で以て
致命とはならずとも
次の一手がその喉元まで届くように

問いには見返して
……同じに並べないで、いただける
もっと澄んだ、色をしていたと


●鮮血淋漓
 茜空に儚く舞い散る宵色の花は、饗宴の贄として嗾けられた夜雀達の羽根。
 鮮血に黄金の炎を燈したような夕暮れがいっそう禍々しい猩々緋に燃え上がれば、黒々とした影に彩られる白蛇姫の背後に累々たる屍が山を成し夥しい鮮血が河を成す様が、彼女が想い焦がれ愛でんとする惨劇の様が見えた気がして、
 屍山血河――。
 満を持して迎えた逢魔が時、禍々しい妖気が蜷局を巻く裡に呑まれる心地で永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)は背筋へと伝う冷たい何かに息を呑んだ。然れど、
「大丈夫。負けやしないよ、命を軽んずる輩には。――ここに集った誰ひとり、ね」
「ええ。血を愛づる姫君にそれを御覧に入れてみせましょうか」
 澱んだ血臭の錯覚を浄化するかのごとき薔薇の香り、華やかな甘さに清涼感を秘めたダマスク・モダンがふと薫るとともにラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)の清々しい断言が耳に届けば、静穏な清しさに心洗われた書院での記憶が蘇り、紫の眼差しが凛と澄み渡る。その刹那、
 強く瞳を射る夕陽の輝きより鮮やかに、戦端が斬り開かれた。
「愛おしゅうてならぬ、ね。ああ、俺も愛おしいよ」
 ――躊躇なく喰らい付ける相手でさ!!
 機先を制する加護を掴み獲ったノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)が茜空に荒ぶ勁風を追い風に翔ければ翻る魄翼が彼方より迫る宵闇を覆い、蜜色の眼差しと一瞬で閃いた水晶の刃が遠き山々の褥へと眠りゆかんとする太陽を揺り起こすかのごとく眩く鮮烈に煌いて。
 遥か砂の国の猛禽にして天空の神たる名を讃えて獲物を喰い破る。激しくも鮮やかに血をしぶかせるは白蛇の名を戴く姫、嗚呼、と紅唇より洩れた声音は苦痛ではなく恍惚を孕み、
『愛いことを申す男(おのこ)よの、なれば存分に血と血で睦み合うほかあるまい……!!』
「上等っ!!」
 轟と唸りを上げて揮われた巨大な白蛇達の尾が勁風ごと猛禽を打ち据えんと夕暮れを薙ぐ。只人であれば余波だけでも吹き飛ばされただろう猛き反撃が天空の戦場に苛烈な風巻を生み、
 ――ご自身の血でも、愉しめますか。
 などと、訊くまでもないらしい。と眇めた琥珀の眼差しで白蛇姫を捉えたまま、標葉・萱(儘言・g01730)は逆巻く風を蹴り逢魔が時の赤光に身を躍らせる。冷たき玻璃に求むるは刹那を須臾を永遠を、
「先の戦況を見てまだ余興のおつもりならば、実力は確かなのでしょうから……心してかからねばなりませんね」
「うん、間違いなく強敵だね! けれど、白蛇姫が眺めていた時よりももっと――私達は強くなれるんだっ!!」
 黒玻璃の夜闇が茜空を映したのは一瞬のこと、萱の指先で硝子のカードが砕ければ彼方より迫る菫色の宵闇を追い越して、黄泉より昏き星なき夜闇が白蛇姫を呑み込んだ。途端に夜闇の裡から躍り出る反撃、白く艶光る巨大な蛇尾と交錯するよう吶喊したのはアンゼリカ・レンブラント(黄金誓姫・g02672)。
 数多燈されてきた残留効果という名の加護はこの戦いでも更に積み上がる。それだけではなく、
「白蛇姫! お前は絶対に見過ごせない!!」
 夜雀達が血も命も散らす様に笑んだ女妖への激昂が黄金誓姫の背から天使のそれのごとき翼となって咲き誇る。戴くは水の冠めいた環、纏うは水の羽衣、復讐の女神の名の許に果たした変容が齎す力が少女の裡から爆ぜるように膨れ上がり、掌中に燈った輝きがたちまちアンゼリカの身の丈をも越える光の剣を構築する。
 その様、まさに天雷。さながら裁きの雷のごとし。
「必ずここで、討ち果たす!!」
『そなた、その、力は……!!』
「夜雀達よりもあなたの方がよりいっそう、おれ達ディアボロスの憤りを受けるのに相応しいってこと、だよ」
 鍛え上げた膂力をも乗せて打ち下ろされる巨大光剣、絶大な輝きと破壊力が咄嗟に前脚を振り上げた黒馬の反撃を捻じ伏せ白蛇姫に派手な光の軌跡と裂傷を刻んだ刹那、光剣の輝きを目眩ましに一瞬で肉薄した神之蛇・幸人(黎明・g00182)が抜刀。陽炎のごとく揺らめき湧きたつ呪詛は使い手の命を糧とするがゆえに、己が生気が喰らわれる感覚にも襲われるけれど、
 ――あなたにこそ、この呪いは相応しいだろうから。
 貴(あて)なる蘇芳の輝きを引く妖刀に今度こそ時空の理を超える力を乗せ、幸人の一閃が白蛇姫から鮮やかな血の軌跡を描いた。夜雀が蹴り飛ばした妖刀よと一瞬侮ったのだろう、真っ向から裂かれた雪白の肌や血肉から己を侵蝕してゆく呪詛の感覚に白蛇姫が息を呑む。
『戯言を……!!』
「戯言なんかじゃない! あなたは、謝っても許さないからっ!!」
 凄絶な勢いで白蛇が揮う反撃の尾、勢いは激しくとも狙いの甘いそれを幸人が刃で防がんとした隙を衝き、高空飛翔からの全速急降下でシル・ウィンディア(虹色の精霊術士・g01415)が斬り込んだ。天からの烈風と化した少女の左手には淡碧に煌く小剣、光使いの技で眩い輝きを重ねたそれは先程夜雀達を斬り伏せた技にも見えただろう。なれど、
『!!』
 冴え渡る斬撃は時空を超える力なきもの、白蛇姫がそれに気づいたのは、すれ違い様の一閃に煙管に酷似した得物を咬ませ弾いた瞬間のこと。紅唇が笑みを深め、黒紗の裡の眼差しがシルを追い、
『何とも翻弄してくれるものよの。ああ、愛おしい、蹂躙もよいが、このような睦み合いも愉しゅうてならぬ……!!』
 ――馬に乗り 夕影越えて 血淵(ちのふち)に 蛟(みずち)の牙を 剣(つるぎ)と為さむ
 空恐ろしいまでに麗しい声音が詠み上げるは虎に乗りから始まる古歌の本歌取り、途端に猩々緋に燃え上がる天から巨大な白蛇達が降り落ちる勢いで強襲するが、
「引っかかってくれてありがと! 思いっきり反撃喰らわせたかったんだよねっ!!」
 紅き三つ目を宿す巨大な白蛇の咢ひとつに己が残像を呑ませて、もうひとつに剣を携えた左腕を呑まれながら、反撃強化の加護も掴み獲ったシルは左腕を牙に貫かれる痛みにも構わず右手に握る白銀の長杖に魔力を凝らせた。
 藍鉱石の蕾の開花とともに展開された魔法陣から撃ち放たれたのは、強大なる砲撃魔法。確たる優勢を得て地上から光柱が噴き上がるがごとく迸った魔力砲が白蛇達をも叩き返す勢いで姫を呑んだなら、
「その眩暈のまま、どうぞひとときの微睡みを」
「あげられるものは一瞬の安らぎのみ、だけれどもね」
 完全にシルへ惹きつけられた白蛇姫の眼差しが砲撃魔法の輝きと衝撃に眩まされた刹那の隙を紫の双眸で逃さず見抜いて、妖狐が手許で雅な文香を踊らせれば晩冬の夕暮れを瞬時に幻の春の野が支配する。
 麗らかな光風に波打つは一斉に萌した春草達、萌黄に女郎花にとヤコウの意のままに春の彩を翻す幻が柔らかな春の香りで獲物をその反撃ごとひとときの眠りに誘えば、最大限に高められた命中強化の加護と極限まで研ぎ澄ませた精神集中を十全に活かしたラヴィデが絶好の一瞬を射抜いた。
 竜眼めく宝珠に彩られた呪われし長弓から射ち込まれた紫黒の火矢、昏く輝くそれが白蛇姫の喉から項までを貫いた刹那、茜空の世界が歪む。己を不可視の竜爪が襲ったのだとは彼女はついぞ知り得まい。盛大にしぶいた血潮も反撃も次撃も紫黒の呪炎に灼き焦がされつつ、女妖は陶然たる笑みで己が首から矢を引き抜いた。
『ふふ、ふふ。あはは、はは。これほどの歓待を受けようとはの、ほんに愉しゅうてならぬ、面白うてならぬ……!!』
 一笑するたび、一声紡ぐたびに己が血が溢れるのさえも楽しげに笑う白蛇姫はいっそ凄艶、次撃の機を奪った好機を逃さぬ一気呵成の集中砲火でもまだ屠れはしまいと誰もが肌身で感じとる。なれど相手とて手加減する余裕などあろうはずもない。逢魔が時の空で幾度も激突するのは彼我ともに全力の攻勢、勁風が荒び鮮烈な光と影さえ嵐となるかのよう。
 渦巻く妖気に抗うがごとく吹き荒れるのは幾重もの【ロストエナジー】が齎す瘴気、命を削られながらも姫が操る白蛇達の尾が竜巻を生まんばかりの勢いで襲い来れば、咄嗟に後方へ飛んで衝撃を軽減させた幸人は更に妖刀で受け流さんとしたが、
「少しでも傷を負わせられればと思ったけれど……」
 無双馬を駆る妖精騎士、あるいはジン契約者――『この白蛇姫』はそう考えるのが最も解りやすいだろうか。
 召喚存在やサーヴァントは主と一心同体の存在、彼らに攻撃させるパラドクスを揮えどその反撃を浴びるのは主自身。逆を返せば白蛇や黒馬を傷つけるのは姫を傷つけることと同義、即ち、パラドクスでなければ意味がない。
「一太刀でも多く、あなたにくれてやるほうが良さそうだね」
「夜雀達が傷つくのは笑って見ていても、白蛇や黒馬への反撃は我が身で受けるわけだ。成程ねぇ」
 白蛇でなく姫自身に刃を見舞うべく蛇の尾も逆巻く風も跳び越え、幸人が揮うは反撃の神蝕呪刃。緩急交えた飛翔で狙いを狂わせ、後方跳躍で蛇の尾の威力を半ば殺したラヴィデの反撃の一矢が刀傷へと突き立てば、紫黒の炎が傷を舐め、噴き出す血潮を焦がして燃え上がった。
 鮮血が燃やされる様を煩わしく思ってか、苛烈な攻防の裡に次なる一手の機を掴んだ白蛇姫が獲物と見定めたのは、
『そのほう、紫黒の呪炎の使い手よ』
 ――燃ゆる火も 取りてつつみて 蛟(みずち)には 入るといはずや 盛ぶるいのちも
 煙管めいた得物で指し示されたラヴィデ。
 巨大な白蛇達が紫闇の竜人を喰らわんと襲い来る。やはり本歌取りらしい和歌が詠うは呪炎ごと彼の命が蛇に呑まれる様、然れど巨大な白蛇の喉奥まで覗けそうな至近で展開した荊棘に赤薔薇を咲かせるがごとき竜気、そしてダマスク・モダン薫る護りの薔薇が執拗な猛撃を阻む。
 蛇の牙が肩から胸を抉ったが、歓喜に満ちた姫の哄笑も火炎使いたる彼が己が血を呪炎で焼き尽くせば掻き消えて。弓引く腕が動けば十分と痛みを忍耐力で堪えてラヴィデは余裕の笑みひとつ、反撃は為らずとも攻撃の機は手放さずに弓弦を引き絞る。
 強大な力を思うさま揮え、惨劇を喜劇と愛せるならば、どんなにか世は楽園だろう。
 ――それでもオレは。この地獄にこそ、儚く尊く咲く福がみたい。

●転禍為福
 巨大な白蛇の尾が竜巻を生むがごとき力を秘めているならば、天翔ける黒馬の蹄には大地を踏み砕く力が秘められているに相違あるまい。なれど鮮血に黄金の炎を燈すがごとき夕暮れが猩々緋に燃え上がる逢魔が時、天空の戦場を翔ける黒馬の力のすべては、唯ディアボロスを踏み砕くことのみに凝縮される。
 突進というより近接格闘戦の間合いで繰り出される蹴撃は鉄槌の一撃に似て、無防備に喰らえば背骨まで砕けたやもしれぬ強打をアンゼリカは瞬時に凝縮させた魔力障壁で肋ひとつを犠牲に押し留めた。
 飛翔での接近戦を挑み続ける黄金誓姫はこの程度の傷も覚悟の上、
「――!! 私の勇気と怒りは、このくらいで折れたりしない!!」
『あな惜しや、踏み抜かれたそなたの胸から血潮が噴く様を見られると思うたにのう……!』
 怯まぬ反撃、巨大な光剣を叩き込まれ更なる血に塗れたのは白蛇姫のほう。だが決して自身が優勢でないことは察しているだろうに、女妖は滴る己が血潮を掬って笑う。
 茜空を疾駆する黒馬が間合いを取ろうと即座に彼我の距離を殺して力と力を激突させて、時間も空間も歪めながら苛烈さを増す攻防。然れど昂る白蛇姫の高揚に呑まれぬよう、復讐者達の誰もが己が力も意識も鋭く研ぎ澄ませてゆく。
『ああ、楽しゅうて、愉しゅうてならぬ。そなたらももっと血に塗れ、愛おしい姿を晒すがよい……!』
 麗しき白絹ももはや緋に染まらぬ処が見当たらぬ。己こそ誰より血に塗れながら恍惚たる声音を響かせる白蛇姫、彼女も白蛇も黒馬も翻弄する気概で逢魔が時の天を自在に翔け、
「なぁ、あれほど狂おしく愛おしく思うものが、シバネにもあるかい?」
 眩しげに蜜色の双眸を細めたノスリがふと訊けば、胸の裡を波立たせる女妖への憐憫も嫌悪も鞣してなお呑み下せぬままに萱は僅かに言葉を詰まらせる。なれど逢魔が時の風に耳許の白が微かに唄えば呑み下せぬものも幾らか鎮められた気がして、
「……同じに並べないで、いただけますか。もっと澄んだ、色をしていましたよ」
「そりゃ確かに!」
 乱れを凪がせた声音で紡げば返るのは、連れが楽しげに破顔する気配。
 禍々しくも劇的に彩られる天に轟然と風巻を生みながら襲い来る白蛇の尾、風に身を沈め翼のみを打たせたノスリが弾丸の勢いで翔ければ、思い描く最小の動きでは尾の威力を削げずとも反撃強化の加護でその機を掴んだ萱が凍てる玻璃を手繰る。
 稜線をなぞる眩い夕陽の輝き、鮮烈な朱の一閃を描きだす猛禽の刃に、澄みきった音色とともに砕けた硝子から溢るる暁の淵にして星なき夜、彼らの反撃が白蛇姫を斬り裂き呑み込んだ瞬間、
 ――闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ。
 一音ごとに魔力を織り重ねて紡ぎあげ、極限まで魔力を増大させたシルの詠唱が成就する。
 もしも白蛇姫が強大なる首魁よりの命のみを理由に長岡京を襲う妖怪であったのなら、シルも人々を護るという大義のみで彼女と対峙しただろう。然れど、歴史侵略者達に同情はせずとも、獲物や敵のみならず夜雀達が傷つく様さえも悦び愛でる様は、大義を超えて少女の魂に怒りを燈したから。
「六芒星に集いて全てを撃ち抜きし力となれ! ――後悔しても遅いからね、白蛇姫っ!!」
 復讐の女神の名の許にシルの背に青き二対の光翼が咲き、華奢な身体が雷光めいた青白い輝きで彩られていく。白銀の杖が戴く藍鉱石の蕾は拳ほどの大きさから今や両腕で抱えるほどに大きく膨らんで。
 深青に白銀の煌き鏤めた、星空を展開するように開花する。
 六種の精霊の輝き束ねてまっさらな輝きを生む、虹色の精霊術士最大威力の複合精霊魔法が迸った。視界だけではなく魂の芯まで眩ませそうな凄絶な輝きは貫通力を高めるために魔力砲をより収束させたからこそ。絶対の光が白蛇姫を捉え、
『――!!』
 腹部を貫き、大きな風穴を創り出した。
 茜空に荒ぶ勁風が勢いを増すかのよう。直前の旋回で砲撃魔法の下方に潜り込んでいたノスリが絶好の機を猛禽の眼差しで捉えて低空から一気に迫り上がる。さて、笠の下はどんな美女か――なんて軽口を昇らせるも、油断なく一閃させる刃のほうが当然速い。
 沈む夕陽の眩さを掬い上げる水晶の刃、鋭い煌き奔らす猛禽の爪が、白蛇姫の胸を喉を顎を裂いて、
 新たな鮮血とともに、市女笠を跳ね飛ばした。
 夕暮れの空に市女笠とそれを彩る黒紗が舞う。露わになった姫のかんばせは玲瓏たる美貌、なれど女妖が纏う気配は見目の麗しさを汚泥で塗り潰すかのごとく醜くて。捕えた獲物を放り捨てる猛禽さながらの皮肉な笑みと言の葉を餞に贈る。
「血肉にするには毒が過ぎるね」
『……っ』
「内面ってのはどうしたって、おもてに滲み出るものだからね」
 姫のかんばせに怒りが燈った刹那に確実な狙撃点を獲れば瞬時にラヴィデの銀の眼差しが澄み渡る。この場の誰より高みに至る精神集中の頂で、きりりと引き絞った弓弦を解き放つ。
 今ならきっと、京(みやこ)に咲く梅花の芯とて射抜けよう――。
 射ち込む昏き輝きは紫黒の火矢、清冽な音色を引きつつ翔けた矢が白蛇姫の右の眼を見事に貫けば、それだけでは終わらず不可視の竜爪が姫の眼窩を頬を喉を裂いて、妖しく輝く呪炎で灼き焦がす。
『ああ、あああぁぁあっ!!』
 恍惚も愉悦も一切ない、全き苦悶に彩られた白蛇姫の絶叫が迸った。
 これぞ彼女の末路に相応しいと誰もが思った。これほどの痛手を蒙ってなお斃れぬ様は驚嘆に値するとも思えど、白蛇姫の命の緒がほつれて切れゆく様は見えている。ならば撚り合わせるいとまなど与えず断ち切ってしまうまで。
「反撃や次撃の機会は勿論、息つく間さえ与えたくはないところ――」
「二度と彼女の肺腑に、血臭を満たしはしません」
 琥珀と紫の眼差しが絡んだのは瞬きよりも短い刹那のこと、相通ずる微笑を燈すと同時に萱とヤコウの術が成った。
 ――瞑っておいで、眠る時間だ。
 風にとける萱の詠唱ともに凍てる夜そのもののごとき硝子が砕ければ、茜空を染めるのは暁の淵にして星なき夜。その許に溢れるヤコウが紡ぐ幻は、凍てる夜に相反するような優しい萌黄の春野辺。なれど、どちらもが獲物を捕えて逃さぬ檻にして牢獄であるのは同じ。
 魂を凍えさせる孤独の檻、声さえ洩れぬ世界で春の香りに慰めを求めれば、絶叫で絞り尽くした肺腑に満ちるはひとときの眠りにいざなう幻惑の香り。堕ちる眠りの先は緩やかな破滅へと導く牢獄、終焉のみが待つ迷宮に彷徨う夢。
 眩い黄金の輝きは、白蛇姫には迷宮の涯てと見えただろうか。
 然れどそれは仲間達が繋いだ機を過たずに掴み獲った、アンゼリカが振りかぶる巨大な光剣。
 たとえば白蛇姫が巧みに夜雀達を指揮していたなら、たとえば白蛇姫が端から夜雀達とともに戦線に身を投じていたなら、全く異なる展開が待っていたに違いない。だがしかし、
「お前は自らのために命を懸けて戦った者達を嗤った。だからこその、この結末だっ!!」
 心のままに迸らせる言の葉、その呼気のひとつひとつにさえ力を漲らせ、全身全霊で叩き込む裁きの雷めいた一撃が、終に白蛇姫を黒馬から傾がせる。仰け反るように彼女が背から落下した瞬間には、その上方に幸人が跳躍していた。
「あなたは愛されていたのに、とても淋しいひとなんだね」
 見下ろす黎明の眼差しに燈るのは消えゆく命を――否、己が断ち切る命を悼む想い。なれど迷わず加速する。自身の血を、その馨も温度も白蛇姫は心ゆくまで堪能しただろうと確信し、蘇芳の彩を引く神蝕呪刃で彼女の首を狙う。
 命を喰らわれながらも妖刀・蘇芳を制すれば、磨き上げた技が今こそ遺憾なくその威を発揮した。
 一片の躊躇いもなき両断。
 断ち落とされてころりと宙に舞った白蛇姫の首は、分かたれた己の身体が血を噴く様を残る左眼に映しただろうか。彼女が最期に見た光景は誰も知らず、また識る必要さえもなかった。主の命の終焉を証するように、白蛇も黒馬も消え果てて。
 遥か彼方からゆうるり寄せくる菫色の宵闇をよく似た双眸に映せば、ヤコウの胸の裡に揺るがぬ勝利の感慨が満ちた。澱む妖気も血臭も冷たい浚風が払ってくれたが、己の術が燈した萌える春の名残はいまだ不思議とほのかに香る。
 禍々しき気を清めた証。
 願わくば、この残香が、
 ――この地に春を萌す、福の報せとなるように。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【完全視界】がLV2になった!
【一刀両断】LV1が発生!
【飛翔】がLV11になった!
【エイティーン】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV5になった!
【アヴォイド】がLV3になった!
【リザレクション】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV8になった!

最終結果:成功

完成日2022年02月16日

長岡京防衛戦

 攻略旅団の調査・探索提案に基づき、『呪われて放棄されたとされる長岡京』の調査を行なった結果、長岡京がいままさに陥落の危機にある事が判明しました。
 長岡京は、都が奈良から京都に遷都される際に、一時的に都が置かれた廃都で、京の都から逃れた犯罪者や野盗などが潜む無法地帯であると考えられていました。
 しかし、妖怪の軍勢に襲撃されている長岡京では、正義の陰陽師達が無法者たちと共に街を守ろうと戦っているようなのです。
 長岡京を攻める妖怪の軍勢を撃退し、正義の陰陽師や街を守る無法者を救出してください。
 敵を完全に撃退し長岡京を救う事に成功すれば、改めて長岡京の状況を聞き出すことが出来るでしょう。

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#平安鬼妖地獄変
🔒
#長岡京防衛戦
🔒
#長岡京
🔒
#陰陽師
#挿絵あり


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選択肢『【期間限定】新宿島の初詣』のルール

 パラドクストレインで、事件を解決に出発する前に、新宿区および第一次東京奪還戦で奪還した『港区、品川区、大田区、千代田区、渋谷区、江東区』の神社で初詣を行なう選択肢です。
 全員が同じ神社に向かう必要はありませんので、初詣をする神社をプレイングで指定してください。
 残念ながら、屋台や露天などが並ぶような事はありませんが、どの神社も、参拝客は多く無いので、ゆっくりと初詣が楽しめるかもしれません。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾大群のトループス級『夜雀』のルール

 事件の首魁であるクロノヴェーダ(👿)配下のトループス級クロノヴェーダ(👾)の大群と戦闘を行います。
 敵の数が多いので、撃退するには時間が掛かるかもしれません。
 👾を撃破する前に👿と戦闘を行う場合は、👾が護衛指揮官を支援してくるので、対策を考える行う必要があるでしょう  詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『白蛇姫』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「シメオン・グランツ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。