祈りと破壊(作者 朝下万理
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#獣神王朝エジプト  #ルクソール神殿のオベリスク 


 その日、獣神王朝エジプトのディヴィジョン攻略旅団にて。
「ナセル湖から南は海になっているとの情報だ。………いや、そもそもナセル湖の位置を知らないが……調査関係の依頼も出てくるやも知れぬな」
 という情報を皆に提供したのは、バースィル・アシュラフ(焔陽の獅子王・g02196)。
 そんな彼の言葉に「ちょっと待って!」と反応した人物がいる。
 メルサンク・トトメス(𓌸𓋴𓋹𓁐𓅝𓄠𓋴・g03837)だ。
 「……ナセル湖って、1970年のアスワン・ハイ・ダム完成で出来た湖……これ、要調査だよ!」
 史実と最終人類史の食い違い。
 ディアボロスたちの疑問が一気に確信へと変わった瞬間であった。


「みなさん、お集まりいただきましてありがとうございますっ」
 ぺこりとお辞儀をした天竜・なの唄(春告小唄・g03217)は「早速ですけど」と、頬を赤らめて興奮気味に続ける。
「獣神王朝エジプトのディヴィジョン攻略旅団での話し合いから、重要な事実がわかっちゃったんですっ。それは、ナイル川上流に『この時代には存在しない筈』の『ナセル湖』が存在するというんですっ」
 と、なの唄が取り出したのはタブレット端末。画面にはセナル湖の情報が表示されている。
「ナセル湖は、ナイル川の氾濫を防止する為に1970年に完成したアスワン・ハイ・ダムの『ダム湖』で、当時の大統領の名を冠してます」
 それは即ち、改竄された歴史のダム湖が存在している。ということになる。
 湖の名『ナセル』という呼び名については『現地人の言葉をディアボロス的に翻訳した』ものに過ぎず、なの唄は説明したとおりの意味ではないかもしれない。
「ですが、ナイル川の上流に大きな湖があるという情報、そして、獣神王朝エジプトにおいて本来のナイル川の氾濫期である八月から十月に川の氾濫は発生していないことから、この地域に重大な何かがあるのは間違いないと思いますっ」
 と、語尾を強めていたなの唄だったが。
「ここで残念なお知らせなのです……。みなさんには早速パラドクストレインで向かっていただきたいところではあるのですけど、ナイル川上流地域は『ルクソール神殿』の結界によって塞がれていまして……そこまでお届けすることが出来ないのです……」
 と申し訳なさそうに告げた。
 セナル湖へ向かうには、まず、ルクソール神殿の結界を解かなくてはならないらしい。
「なのでみなさんには、結界の礎であるルクソール神殿のオベリスクを破壊して欲しいのです」
 ルクソール神殿のオベリスクの破壊に成功すればナイル川の上流への探索も可能になり、獣神王朝エジプトの秘密に迫ることが出来るかもしれない。

 ルクソール神殿に祈りをささげる人々。
 彼らは、獣神王朝エジプトの首都である『百門の都テーベ』や、その周辺地域に住む人間達。エンネアドやファラオを信仰する敬虔なエジプト人である彼らは、毎日神殿に通い何時間も祈りを捧げているという。
「みなさんは、まずこの民衆に紛れ込んでください。そしてルクソール神殿に近づいて、頃合いを見計らってオベリスクへの攻撃を開始してください」
 本来オベリスクという建造物は左右で一対。しかし、ルクソール神殿のオベリスクは神殿の入り口の外、向かって左側だけに存在している。その高さ約23メートル程。
 ディアボロスがオベリスクを攻撃しようとすると、当然警備のクロノヴェーダが駆けつけて戦闘になるだろう。なので、クロノヴェーダを撃退しつつ、オベリスクにもダメージを与えなければならない。
「ですがオベリスクは非常に硬くて……おそらく今回の任務で完全に破壊することはできないと思います。なのである程度ダメージを与えられてボスも倒し終えたら撤退をお願いいたします」
 と、なの唄はディアボロスを見渡した。

「本来のルクソール神殿のオベリスクは左右一対であったみたいですけど、その半分が失われた事で結界が不十分になっているのかもしれません。何故、クロノヴェーダがオベリスクを再建しないかはわかりませんけど、この機会は逃せないと思うのです」
 むんと意気込むなの唄が気になるのは、未来の話。
「ルクソール神殿のオベリスクを破壊できれば、予定通りにナセル湖方面にも行けますし、首都テーベの情報も探れそうです。どちらを選ぶかは、みなさんにお任せして――」
 と、なの唄は自信満々に笑んでみせた。
「みなさんの力で、この不穏な旋律を正しい旋律へと導いてくださいっ。よろしくお願いしますっ」


 ルクソール神殿入り口では朝も早くから多くの巡礼者であふれていた。
 巡礼者たちは皆敬虔なエジプト人で、神に祈りを捧げることは、朝に一杯の水を口に含むことのように当然なことであり、とても喜ばしいこと。
 故に、その神殿の入り口をお守りくださるクロノヴェーダにも礼を尽くす。皆、神殿の入り口付近をぐるぐると低空飛行している鳥のようなマミーに手を合わせ、深々と頭を下げた後に次々と神殿の内部へと入っていく。
 鳥のようなマミーといえば、自分にお辞儀をする巡礼者に礼を返すわけでもなく。
 ただ淡々と、不審者が紛れ込んでいないかと厳しい目を巡礼者たちに向けていた。
 神殿の傍らではオベリスクが、朝日に照らされて白く輝いていた。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【傀儡】
1
周囲に、ディアボロスのみが操作できる傀儡の糸を出現させる。この糸を操作する事で「効果LV×1体」の通常の生物の体を操ることが出来る。
【飛翔】
4
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【建造物分解】
3
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【書物解読】
2
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【ハウスキーパー】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV5 / 【ガードアップ】LV2 / 【反撃アップ】LV1 / 【アクティベイト】LV1 / 【アヴォイド】LV2

●マスターより

朝下万理
 こんにちは、朝下万理です。
 獣神王朝エジプトのシナリオです。
 よろしくお願いいたします。

 選択肢①『敵の配下に紛れ込む』
 『敵の配下』は『巡礼者』とお考え下さい。

 クロノヴェーダたちと戦闘を繰り広げながらオベリスクにダメージを与えるため、選択肢②~④までは同時進行で運営する予定です。
 クロノヴェーダは祈りを捧げる一般人に危害を与えることはないので、特別な避難誘導などは必要ありません。ですが、戦闘に巻き込まれて死傷する事が無いように配慮をお願いいたします。
 なお、このシナリオだけではオベリスクは破壊できませんが、ダメージは確実に蓄積されます。

 その他の状況についてはオープニングや『情報』をご覧ください。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
30

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


積商・和沙
ふう、排斥のオベリスクの時はあんなダサい服を着させられたけど、今回は布を被ってはるばる訪れた信者に成りすませばいいから楽よね。
そういえば、こういう建築物って左右対称が基本よね。
そうなると、位置的にあの辺にもう一つのオベリスクがあった筈なのね。
あまりそっちの方を見てると怪しまれるから、今はしっかり信者のふりをしておかないとね。
ありがたや、ありがたや。
って、なんかおばあちゃんになった気がするのは気のせいかしら?
この怒りは後でクロノヴェーダに叩き込んでやるわ。


金森・椿
アドリブ歓迎
絡みOK

私もエジプトの地理やダムという物が何なのか分かりませんが、とりあえずあのオベリスクなる石柱を壊せば良いんですね。
それでは神殿にお邪魔するといたしましょう。

郷に入っては郷に従えと申します。
先を行く巡礼者や周囲の人々の仕草を観察して、私自身もごくごく平凡な巡礼者として振る舞いますね。
【友達催眠】も活用して群衆に溶け込みます。

おはようございます。
清々しい朝ですね。

行商人トークで話を合わせながら、マミーが飛来すれば手を合わせて深々とお辞儀をします。
ニコニコ笑顔のまま、飛行する敵は厄介ですねーなどとこの後に続くであろう戦闘のことを考えておきます。


ツィルニトラ・プリルヴィッツ
あの人達の純粋な信仰が、神を騙るエンネアド達にいい様に利用されている…
……やっぱり悲しいわね

このディヴィジョンの人々を救う手掛かりを得る為に、魔法の竜神として……彼らの信仰を踏み躙りましょう(覚悟決め)

巡礼者達の流れを●観察して、参拝に特に慣れた敬虔な信徒を●看破して話しかけ

あの!
少し宜しいでしょうか?
実は私、ルクソール神殿に赴くのは初めてなのです
神々に粗相があってはいけません、どうか作法などをご教授頂けませんでしょうか?

最近、事故に遭ったお母様が蘇りまして
感謝の念を祈る為に、と田舎から…

(何故か●演技は得意なのよね…。真面目な信徒の方に付き添って知識を教えてもらいつつ潜入しましょう)


●トレインから降りて混ざるまで

 パラドクストレインから降りたディアボロスたちがまず目にしたのは、人々の列。彼らが向かうのは、朝日を浴びて冴え冴えとしているルクソール神殿。
 その神殿の上空では鳥型のマミーが、巡礼のために神殿の門をくぐる人々を見下ろしていた。
「あの人達の純粋な信仰が、神を騙るエンネアド達にいい様に利用されている……やっぱり悲しいわね」
 ツィルニトラ・プリルヴィッツ(自称/捏造 魔法竜神・g02012)は悲しげに呟いた。
 彼らを偽の信仰から解放するためには、ルクソール神殿より先に赴き、さらにエンネアドたちの策略を阻止していくほかなさそうだ。
 改めて腹を括ったツィルニトラは白い布を被り、黒竜の翼や角、黒く長い髪を覆い隠す。
「このディヴィジョンの人々を救う手掛かりを得る為に、魔法の竜神として……彼らの信仰を踏み躙りましょう」
 彼女の言葉に他のディアボロスたちも頷いて、改めて神殿を臨む。
 神殿の入り口向かって左側には、空を指すかの如く聳え立つ石柱が巡礼者を静かに迎え入れていた。
 あれが標的であるルクソール神殿のオベリスク。
「私もエジプトの地理やダムという物が何なのか分かりませんが、とりあえずあのオベリスクなる石柱を壊せば良いんですね」
 金森・椿(薬売り・g02220)は白い布をばさりと広がると、巡礼者の女性たちがそうしているように布で異国の衣装を纏う自分を覆い隠す。
「『郷に入っては郷に従え』と申しますから」
 積商・和沙(四則演算の数秘術師・g02851)は大きな布を一枚被って、少し大きめなため息を吐いた。
「どうしたの?」
 ため息の理由が気になってツィルニトラが声をかける。
 和沙ははっと息を呑んで。
「いや、前にもこうして一般人に紛れ込んだことがあったんだけど、その時に着た服のことを思い出しちゃって……」
 と口にして、蘇る『依頼のためとはいえダサい服を着させられたという苦い記憶』に表情を険しくさせる。
「だから。今回はこうして布を被ってはるばる訪れた信者に成りすませばいいから楽よね」
 そう言って被った布を整えて、色白の肌もデーモンの翼も琥珀色の髪さえも覆い隠した。
「確かに、特別な変装をさせられるよりは楽ですね」
 椿も黒髪を完全に布の中にしまうと、和沙とツィルニトラの準備が完了したことを確認し。
「それでは神殿にお邪魔するといたしましょう」
 と、巡礼者の列へと足を踏み出していった。






 先を行く巡礼者はただ黙々と、神殿内へと歩を進めていく。
 時折お互い挨拶を交わしている人々は、知り合いか何かだろうか。
「おはようございます。清々しい朝ですね」
 椿がにっこりと微笑んで挨拶をすると、周囲の巡礼者たちはまるで催眠に掛かったように椿と同じように笑顔を見せてくれた。
「おはよう。本当にいい朝だね」
 その流れに乗ってツィルニトラも巡礼者に話しかける。
「あの! 少し宜しいでしょうか?」
「なんだい?」
 返事をしたのは中年の女性。
「……実は私、ルクソール神殿に赴くのは初めてなのです。最近、事故に遭ったお母様が蘇りまして、感謝の念を祈る為に田舎から……神々に粗相があってはいけません、どうか作法などをご教授頂けませんでしょうか?」
 ツィルニトラが懇願すると、女性は「あらあらそれはそれは……」と彼女を労わって。
「遠いところから大変だったねぇ。なら、アタシの後について同じようにやると良いよ。あたしは毎日ルクソールでお祈りをしているからね」
 と、導いてくれた。
「ありがとうございます」
 眉尻を下げながらにっこりと笑んで礼を言ったツィルニトラ。
 周りの巡礼者には、彼女は親孝行で信心深い娘に見えたことだろう。
 巡礼の列は牛歩ながら確実に神殿へと進んでいた。
 ふと見上げた三人の目線の先には、向かって左側だけに聳え立つオベリスク。
 神殿とは異質輝きを放つさまは、クロノ・オブジェクトと呼ぶにふさわしい。
(「そういえば、こういう建築物って左右対称が基本よね。そうなると、位置的にあの辺にもう一つのオベリスクがあった筈なのね」)
 和沙はそのまま、向かって右に目線を移す。恐らくオベリスクの台座が残されているはずだが、敬虔な信者たちの列の向こうで、窺うことができない。
 台座が拝めないかとちょっと背伸びをしたり体を左右に揺らす和沙だったが、鳥型のマミーがふと視界に入ったので背伸びをするのをやめた。
(「あまりそっちの方を見てると怪しまれるから、今はしっかり信者のふりをしておかないとね」)
 と、前の人に倣って鳥型のマミーに向かい手を合わせる。
「ありがたや、ありがたや……」
 と拝んではっとする。
 これって……。
(「なんかおばあちゃんになった気がするのは気のせいかしら?」)
 そう考えれば考えるほど、年寄りじみたことをやらされていることも、上空で自分たちを監視しながら信者たちに拝み倒されているマミーへも、怒りがふつふつと湧き上がる。
 なんでクロノヴェーダなんか拝まなきゃならないのよ。と。
(「この怒りは後で、あのクロノヴェーダに叩き込んでやるわ」)
 と和沙は、心の目でクロノヴェーダを睨みつけた。
 椿は周りの人々がそうしているように、鳥型のマミーに向かって手を合わせ深々とお辞儀をする。
 マミーに手を合わせる椿の笑顔は、信心深さの表れとして見えたであろう。
 だがしかし、その腹は違っていて。
(「飛行する敵は厄介ですねー。さて、どう戦術を練りましょうか……」)
 その時を考えれば考えるほど、椿の目尻は下がっていった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!

メルサンク・トトメス
アドリブ・連携可

スフィンクス『プロフェッサー』を連れた、古代エジプト人の神官です。
一応、ディヴィジョン(神獣王朝エジプト)出身の15歳なので成人しています。
普段の口調は「ボーイッシュ(ボク、キミ、だね、だよ、~的な?)」、時々エジプト語になります。

攻略旅団の調査・探索依頼内容を調査することが多いです。
謎に興味を示しますが、解決方法は脳筋寄りです。
戦闘方法は格闘(グラップル)です。

パラドクスで神の加護を得た上で、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他のディアボロスに迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。



 他のディアボロスと同じく巡礼者の列に紛れたメルサンク・トトメス(𓌸𓋴𓋹𓁐𓅝𓄠𓋴・g03837)は寝不足であった。故に神殿に……いや、オベリスクに反射する朝日がまぶしい。
 被った白い布を目元まで下げて、それでも恭しく鳥型のマミーに頭を下げた後、標的を見上げた。
(「……これを倒したら……」)
 あの湖とは、ダム湖ナセル。20世紀中頃にアスワン・ハイ・ダムプロジェクトを支持した大統領の名を冠した湖。そのダム湖が、なぜかこの時代に存在しているという。
 メルサンクの眠そうな目に映るのは、一本のオベリスク。
 このオベリスクの守りを打ち砕くことができれば――。
(「なんでこの時代にあの湖があるのかを調べられる」)
 メルサンクは石畳の敷きの地面を蹴って群衆から飛びあがると、同時にルクソールの空に赤い光とサイレンが鳴り響く。
 何?
 どうしたの?
 ただならぬ空気の変化に巡礼者たちが騒めきだした、その頭上。
「𓊪𓍯𓏲𓄇𓏺𓎡𓊃𓃀𓏏𓃀𓎡𓌪𓂧𓅓𓎼𓂝𓊪𓀠𓎛𓄡𓇋𓀜𓈖𓂧𓃬𓄇𓎼𓂋𓊪𓃬𓀜」
 空を飛ぶ力を受けたメルサンクが詠唱すると、彼女の右手に宿るのはセト神の加護と信託。その力を以ってオベリスクを殴りつけると、激しい殴打音と共にオベリスクが揺れる。
「……ヒビの一本も入らないのは、クロノ・オブジェクトだからか」
 眠そうな目とは裏腹に、メルサンクは微かに口角を上げた。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

メルサンク・トトメス
スフィンクス「プロフェッサー」視点

吾輩はスフィンクスである
名を名乗るほどの者ではない
たった今、新宿島の至宝鰹節を賜る約束と引き換えにウカーブの群れに挑まんとするところである
それにしても人の子の知恵は大変素晴らしい
新宿島で読んだ空中戦闘機動の教本は、普段、我々空の種族が無意識に行うことを整理し理論付けるに加え、初めて知る概念がいくつもあった

いくら数がいても、編隊を組まなければ烏合の衆である
トートの知恵とホルスの加護を得た今、1対1では負けは無かろう

ドッグファイト(【飛翔】【空中戦】)を展開
・すれ違う敵をインメルマンターンで急襲する
・急降下攻撃をやり過ごし、スプリットSで逆襲する

アドリブ、連携歓迎



 オベリスクを殴りつけたメルサンク・トトメス(𓌸𓋴𓋹𓁐𓅝𓄠𓋴・g03837)の背後から攻撃を行ってきたのは鷲のウカーブ。
 メルサンクが振り返ると鷲のウカーブはもうすでに上空で、仲間の鷲のウカーブと群になってぎゃぁぎゃぁと騒ぎ始める。
「……やっぱり攻撃してきたね……」
 眉間にしわを寄せてメルサンクはオベリスクを足蹴にして水平方向に加速力を得ると。
「𓋴𓊪𓂧𓂻𓏺𓉔𓈙𓆃𓂝𓅱𓇋𓂧𓂻𓇋𓏏𓎼𓎡𓂋𓂧𓍿𓆃𓐍𓍿𓋴𓈖𓀜𓋴𓈖𓏏𓋴𓎡𓎣」
 唱えれば小さな身体に天空の神ホルスの神託と加護が巡り、左眼が魔眼と化す。
 メルサンクは自分に向かって急降下してくる鷲のウカーブを見据えた。そして、包帯で巻かれた脚から延びる爪をインメルマンターンで旋回しやり過ごした後、包帯まみれの背に肉薄する。
 背に傷を負った鷲のウカーブはメルサンクから逃れようと再度上昇そして急降下してくるが、メルサンクはその軌道をうまく読んで身を翻した。
 そして今度は水平方向に進んだのち縦方向にUターンし、鷲のウカーブに急接近するなりその首を掴んで地上方向へ投げ飛ばした。
 投げ飛ばされた鷲のウカーブは、逃げ惑う巡礼者でごった返す神殿広場の砂地に叩きつけられる。
「『いくら数がいても、編隊を組まなければ烏合の衆。トートの知恵とホルスの加護を得た今、1対1では負けは無かろう』……プロフェッサーもそう思うでしょ?」
 左眼をまだギラギラと輝かせるメルサンクが同意を求めたのは、スフィンクスのプロフェッサー。
 プロフェッサーはメルサンクの言葉に、満足げにひとつ。こくんと頷いた。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【飛翔】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!

金森・椿
アドリブ歓迎
絡みOK

さて、十分接近できましたしどうやら攻撃が始まった模様。
私もオベリスクを攻撃する頃合いでしょうか。
反応を鈍らせるためにも【平穏結界】から一撃を加えることにいたしましょう。

できるだけ結界内に敵がいない状態にしてからオベリスクへ向けてパラドクスをのせた爆弾付き苦無を叩きつけてやります。
派手に爆発が起きたらさすがに気がつくでしょうがもう遅いです。
たーまやー!

できるならそのまま接近してもう一太刀といきたいところですが、敵に割り込まれたら無理せずに対峙して戦闘に備えますね。
良い動きです。相手にとって不足はありません。
さあ、いきますよ!


ツィルニトラ・プリルヴィッツ
変装衣装脱ぎ捨て上空へ【飛翔】

そろそろ敵も奇襲から立ち直ってくる筈
オベリスクに攻撃できるチャンスはあと僅かね
少しでも打撃を与えないと…!

【自在翼】で竜翼を巨大化し一瞬で最高速に到達
急停止、急加速を駆使し方向転換も自由自在
重力と慣性を無視したような常識外れの●空中戦機動で立ちはだかる警備『鷹のウカーブ』達を突破
速度を乗せての全力のハルバード●一撃離脱でオベリスクを攻撃

これでも亀裂が入る程度なんて…魔法の竜神の沽券に関わるわ、後一撃…!

…いいえ、やる事があるわ、潮時ね

オベリスクから離脱
翼広げて群衆の注目集め再度【避難勧告】

聞きなさい!
今からこの神殿は戦場となるわ、命が惜しい者は直ぐに逃げなさい!


積商・和沙
さてと、始まったようね。
私達も攻撃開始ね。
とはいってもオベリスクの至近距離から電撃を浴びせるだけなんだけどね。

うーん、流石に見つかっちゃったか。
って、どこさわってるのよ、変態鳥。
空中に持ち上げられたら、さっき見えなかったもう一つのオベリスクの跡は見えないかしら?
空中から叩き落とされたら、【飛翔】で落下を防ぐわ。

持ち上げられた時に被っていた布を落としてきたんだけど、これわざとなのよね。
この意味解るかしら?
つまり、今こうしている間もアンテナがワイファイスパークでオベリスクに攻撃中ということよ。


メルサンク・トトメス
気になるのはナセル湖に沈む位置にあったアブ・シンベル神殿だ。
史実ではユネスコが慌てて移設させた。
じゃあこのディヴィジョンでは?

ウカーブと戦うのは後でもできる。でも、このオベリスクを破壊する機会は、そうそう作れない。
プロフェッサー(スフィンクス)、守り(【時間稼ぎ】)は任せたよ。

【構造物分解】でもなお壊れぬオベリスクの破壊に、更なるセトの加護を願う。
あらゆる障害を力ずくで取り除く力を与え給え。
そして他のディアボロスさんたちとタイミングを合わせて攻撃する。

迂闊に近づいてくるウカーブがいたら、巻き込むよ。
暴風と暴力の中に飛び込んでくる方が悪いよね。

時間が許す限り、何度でも叩くからね!

アドリブ、連携可



 上空で激しいドッグファイトを繰り広げるメルサンクと鷲のウカーブ。
 彼らを見上げ、積商・和沙(四則演算の数秘術師・g02851)は口角を上げてふふっと笑んだ。
「さてと、始まったようね」
 金森・椿(薬売り・g02220)も、日除け代わりに手を額に当てながら上空を見上げる。
「では、私たちもオベリスクを攻撃する頃合いでしょうか」
 椿の言葉に、和沙はうんと頷いた。
「攻撃開始ね」
 と、自信満々に笑んだ和沙は逃げ惑う人々の波に逆らって、オベリスクへと駆け出す。
 椿と和沙の言葉を受けて。
「だけど、そろそろ敵も奇襲から立ち直ってくる筈よ……」
 そう呟いたツィルニトラ・プリルヴィッツ(自称/捏造 魔法竜神・g02012)は、被っていた白い布を脱ぎ捨てるなり得物を構えて空へと飛んだ。
「オベリスクに攻撃できるチャンスはあと僅かね……少しでも打撃を与えないと…!」
 ツィルニトラはパラドクスで翼をぐぐっと巨大化させると一つ大きく羽搏いた。そして翼に宿した魔力により推進力全開でオベリスクに迫る。
 だが、自分を止めようと……否、オベリスクへと攻撃を企てようとする自分を排除せんと向かってくる鷲のウカーブ。それらを重力と慣性を無視した空中戦の軌道で全て交わし、トップスピードに乗ったまま得物である『黒竜のバルバード』を振りかぶった。
 魔力の乗った一撃はオベリスクを揺るがせ、激しい殴打音と共にツィルニトラは翼を羽搏かせて離脱する。
 手に残るのは、跳ね返ってきた衝撃の余韻。
 対して、オベリスクをといえば。
 目視できるかできないかの亀裂が走ったと思ったが、瞬で消え去った。
「これでも亀裂が入る程度なんて……しかも修復した……?」
 眉間にしわを寄せるツィルニトラ。
 先ほどの攻撃は、オベリスクに一点集中。全力を乗せた攻撃だというのに。
「……魔法の竜神の沽券に関わるわ、後一撃……!」
 ツィルニトラは今一度『黒竜のバルバード』を振り上げオベリスクを見据えたが、得物を振り上げた手をすっと下げてしまう。
 彼女を止めたのは、巡礼者たちの叫び声。
 ちらと足元を見れば。突然起こった戦闘に慌てふためき逃げ惑い、混乱で道をも見失っている者もいる。
「……いいえ、やる事があるわ、潮時ね」
 とツィルニトラはオベリスクに背を向けると、大きな翼を広げて大きく息を吸った。
「聞きなさい! 今からこの神殿は戦場となるわ、命が惜しい者は直ぐに逃げなさい!」
 ナイル川の上流に向けて指で示せば、再度ルクソールの上空ひ赤い光が明滅しサイレンが鳴り響き。
 巡礼者たちはツィルニトラの指示に従い、示された方へと逃げてゆく。
 人々を導く中で、ツィルニトラは胸を張った。
 オベリスクを叩きのめし魔力の強さを誇示することよりも、神竜の名に相応しい行い。
 それは、混乱に陥って逃げ惑う人々を救うべく導くことである、と。
 地上では、和沙はオベリスクの足元へと到着していた。
「さてと、これに攻撃すればいいのね……至近距離からの電撃がいいかしら――!?」
 身を隠していた白い布を脱ごうとしたその時。鋭い痛みが腰に走ると同時に、地から脚が離れた。
 急降下してきた鷲のウカーブが、和沙の無防備な腰を掴んだのだ。
「……うーん、流石に見つかっちゃったか……って、どこさわってるのよ、変態鳥」
 手放した布が地面に残されていくのを見送った後に、首だけそちらを向けて鷲のウカーブをじろりと睨みつけた和沙だったが。
 実はこれは、先ほどは人波で窺うことすらできなかった『失われたもう一本のオベリスク』の跡を窺う願ってもないチャンスだった。
 和沙は『失われたオベリスク』の方に顔を向けると、そこにはオベリスクの台座だけが鎮座していた。
 が、その台座も白く光を帯びているように見え、和沙は直感で悟る。
「魔力が切れていないのかしら……――!!」
 言い終わらないうちに、鷲のウカーブが和沙を地面へと叩き落とさんと腰から爪を放した。
 上へ引き上げられる力が消えたことにより、和沙の体は重力に則り真っ逆さまに地上に落下してゆく。
 落下直後ははっと息を呑み焦った和沙だったが、ばさりと広げた計算記号の翼で重力加速度を和らげた。
 そのまま数回羽搏いて地上に降り立った和沙。叩きつけられることは回避したが、掴まれた腰に鋭い痛みが走る。どうやら掴まれた時のダメージのようだ。
「……あの変態鳥、後で覚えてなさいよ……!」
 キッと空を睨みつける和沙だったが、『失われたオベリスク』にまだ魔力が残っている様子が窺えたのは大豊作であろう。
 そしてもう一つ、和沙は作戦を企てていたのだ。
「あの変態鳥、さすがに私が布を手放した理由までは解っていなかったみたいね」
 布とは、先ほどまで和沙が被っていた白い布。その布が和沙の隣でひとりでにふよふよと浮かんでいる。
 中では和沙のモーラット・コミュのアンテナが、今でも強烈な電撃でオベリスクへダメージを与えていた。
「もきゅきゅーっ」
 布の中ではアンテナの可愛らしい声と共に、バリバリという電気の弾ける音が響いていた。
 一方。
 ツィルニトラの導きによって蜘蛛の子を散らすように逃げる巡礼者たちから残された椿は、駆け足でオベリスクに近づく。そして、自分の周囲を外から把握されにくい空間にするために、結界を展開させようとタイミングを見計らう。
 結界内に敵がいない状態に……。
 それが思いのほか難しい。
 まず、鷲のウカーブは空を自由に飛ぶ。ディアボロスたちが少しでもオベリスクに何らかの行動を見せようものなら、すぐさまオベリスクへと近づいてくる。
 現に今も。椿の行動を察知した鷲のウカーブたちが、続々とオベリスクに集まってきている。
 もし。
 他のディアボロスの協力があり『平穏結界外で目立つ戦闘をして、敵と戦う』とした行動をとってもらっていたのならば、鷲のウカーブに気付かれずにオベリスクへの攻撃は成功したかもしれない。
 いつまでも時が満ちるのを待ってはいられない。
 珍しく椿が眉間にしわを寄せた。
 その上空では。
 自分をマークしている鷲のウカーブを見据えながら、メルサンク・トトメス(𓌸𓋴𓋹𓁐𓅝𓄠𓋴・g03837)の意識は、ナセル湖へ向いていた。
 メルサンクが気になるのは、ナセル湖だけではない。
 アスワン・ハイ・ダムプロジェクトでダムの底に沈む予定だった『アブ・シンベル神殿』。
 史実では、国際的な教育科学機関が『歴史的な遺産を失うわけにはいかない』と、慌てて救済し移転させた大神殿だ。
(「このディヴィジョンのアブ・シンベル神殿は、どうなっているんだろう」)
 それを調査するためにも、このオベリスクは破壊しなければならないし、破壊する機会はそうそう作れない。
「プロフェッサー、時間稼ぎは頼んだよ」
 メルサンクはスフィンクスのプロフェッサーに鷲のウカーブ対応を任せると、くるりと踵を返してオベリスクを見据えた。
 ルクソール神殿のオベリスクは、所謂『クロノ・オブジェクト』。
 ディアボロスの軌跡である残留効果をもってしても揺らぐことがない。
 それでもディアボロスの攻撃がこのオベリスクに一定数たまれば、護りは打ち砕かれて倒壊するとも聞いている。
 ならば今一度、神の加護を願おうか。
「𓊪𓍯𓏲𓄇𓏺𓎡𓊃𓃀𓏏𓃀𓎡𓌪𓂧𓅓𓎼𓂝𓊪𓀠𓎛𓄡𓇋𓀜𓈖𓂧𓃬𓄇𓎼𓂋𓊪𓃬𓀜 あらゆる障害を力ずくで取り除く力を与え給え」
 メルサンクの体に漲るのは、セト神の膨大な力。
 そんな彼女の足元では。
「……ならば強行突破と参りましょうか」
 椿が物音ひとつ立てることもなく、構えた爆弾付き苦無をオベリスクに向けて投げ放った。
 これはいいタイミング。
 メルサンクは苦無の軌道の邪魔にならないように一段上空に移動すると、握った拳にセト神の加護を込め――。
 椿の苦無がオベリスクの横っ面で爆弾を破裂させると同時に、暴風を纏った拳を今一度、その白い塔に叩きつけた。
 激しい爆音と爆風は「たーまやー」と掛け声を上げたくなるような見事な爆破だったのだが。
 椿は険しい表情のまま愛刀を構えると、此方に向かってくる鷲のウカーブと対峙する。
 もうオベリスクには一定以上のダメージを与えたはずだ。
「次はあなたたちの番……さあ、いきますよ!」
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【飛翔】がLV3になった!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【建造物分解】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV4になった!

ツィルニトラ・プリルヴィッツ
待たせたわね、貴方達
信者の人々も皆逃げた事だし、お互いに遠慮はいらないでしょう?

さあ、魔法の竜神がお相手するわ!

オベリスク攻撃時のような無茶苦茶な●空中戦機動は無理だけれど、竜翼の操作や手足や竜尾活かした重心移動で【飛翔】中の姿勢制御に方向転換

簡単に捕らえられると思わない事ね

敵の群れの攻撃を掻い潜りつつ、攻勢が途切れるチャンスを伺い【停滞刻・偽】を使用
戦旗を一振りして時間停止…したように見える物体の運動の停止で空中の敵を虫ピンで空に留めたかのように●捕縛するわ
相手が硬直している時間はごく僅かだけど…

その一瞬で十分よ!

竜翼から魔力噴射し最高速に
稲妻の如き飛行軌道で全員槍斧で斬り捨ててゆくわ


金森・椿
アドリブ歓迎
絡みOK

これは、ここへきてディアボロスの機動力の真価を発揮する時が来たかもしれませんね。
オベリスクを攻撃している味方を援護するためにも頑張りましょう。

対峙した敵に即応して【飛翔】し、オベリスクを狙う味方を襲う敵に手裏剣を投擲しながら突進して味方との間に身体を割り込ませる勢いで援護します。
接近戦となればそのまま刀で斬り結びますよ。
ここで会ったのも何かの縁、助太刀いたします。
さあ私が相手になりますよ!

統制の取れた敵の連続突撃に手を焼きますがここが踏ん張りどころ。
多少のダメージは覚悟の上でできる限り持ちこたえます。


積商・和沙
さっきはよくもやってくれたわね、変態鳥。
私のおしりを触った覚悟はできているんでしょうね。
アンテナなーに、掴まれたのは腰じゃって言いたそうな顔をしているわね。
レディに無許可で腰に手を回すのなんておしりを触っているのと同罪よ。

仲間を集めれば勝てると思ったの?
甘いわよ。
円周障壁陣を私の周りに展開して突っ込んできた変態鳥たちに反撃をくらわしてあげるわ。

鳥を片付けたら、さっき見た失われたオベリスクを観察してみたいけど
まだでかい邪魔者がいるみたいね。



「待たせたわね、貴方達」
 鷲のウカーブたちと対峙するツィルニトラ・プリルヴィッツ(自称/捏造 魔法竜神・g02012)。
 逃げてゆく人々を背にし、鷲のウカーブから彼らを隠すように黒い翼をばさりと広げると、改めて得物を構えなおす。
「信者の人々も皆逃げた事だし、お互いに遠慮はいらないでしょう? さあ、魔法の竜神がお相手するわ!」
 ツィルニトラが意気揚々と宣戦布告を行うと、金森・椿(薬売り・g02220)と対峙していた鷲のウカーブも一斉に羽搏き空へと飛んでいく。
 奴らはツィルニトラを狙い撃ちするつもりなのだろうし、オベリスクへの攻撃は必要なさそうだ。
「……作戦変更、ここはディアボロスの機動力と連携の真価を発揮する時ですね」
 椿はまだ表情硬く呟くと、乾いた砂の地面から飛びあがった。
 先ほどはその場に佇むオベリスクに攻撃を仕掛ければよかったが、今、対峙するのは動く敵。
 ツィルニトラは鷲のウカーブを倒すために、力押しよりも確実性を採った。
 今一度、空中で強く羽撃いて推進力を得ると、大きな翼や手足、長い尾を巧みに駆使した重心移動でエジプトの大空を滑空していく。
 しかし、鷲のウカーブたちも彼女を捕らえようと追従して飛んでいく。
 黒く長い髪を靡かせながら、ちらと後ろを振り返るツィルニトラ。目線の先には今にも自分に迫らんとする鷲のウカーブの群れ。
「……簡単に捕らえられると思わない事ね」
 その執着心と数の多さに、ツィルニトラは眉根にしわを寄せた。その時。
 下方から手裏剣が放たれ、先頭を飛んでいた鷲のウカーブの推進力が削がれた。
 手裏剣から遅れて地上から飛んできて、鷲のウカーブの前に立ちはだかったのは、椿。
「助太刀いたします、ツィルニトラさん。ここは私にお任せください」
 そう言ったのは、この後にツィルニトラが派手な攻撃を繰り出すと見通してのこと。
「さあ私が相手になりますよ!」
 椿は手裏剣を構えて、鷲のウカーブとにらみ合う。
「助かるわ、椿!」
 ツィルニトラは椿に礼を言うと、さらに翼で風を叩いて上空へ。
 その大きな翼が巻き上げる砂交じりの風の中、椿の足止めを受けた鷲のウカーブよりの後ろを飛んでいた個体がツィルニトラを追いかけて行った。
 椿が砂交じりの上昇気流に乗ってふわりと舞うと、鷲のウカーブたちには、突然彼女が消えたように見えたのだろう。きょろきょろと視線を左右に動かし始める。
「……どこをご覧になっているのですか?」
 少しだけ上空から声がした。だが、その声が耳に届いたときには、もう遅い。
 その包帯まみれの体を切り刻むのは、風を鳴かせながら振り来る無数の手裏剣の雨。
 苦痛の声を上げながらも鷲のウカーブたちは反撃を試みる。椿の手裏剣を一身に受けながらも椿よりも高い位置まで上昇し、急降下。
 だが椿は、その一挙手一投足を椿は見落とさない。彼女の自然と上がった口角が、この戦いの結果を予言する。
 武器を忍者刀に持ち変えて一羽一羽と鷲のウカーブの反撃を交わして行けば、力尽きた鷲のウカーブが次々と地上に落下していく。
 一方。
 椿からさらに上空に辿り着いたツィルニトラは、くるりと身を翻す。
「魔を司りし竜の名の元に命ず! 時計る砂よ、流る水よ、うつろいを止めよ!」
 唱えると得物の柄に現れたのは、魔力で生成された戦旗。その旗には雄々しい黒い竜が描かれている。
 ツィルニトラは慣れた手捌きで旗を回したつにの瞬間、砂塵を舞い上げた乾いた風が、まるで時間を停止させたかの如く止まる。
 ――実際には時間停止ではなく、任意の物体の相変化を調節して疑似的に時間停止に見せかけたのだ。
 鷲のウカーブたちが混乱し硬直する、その一瞬。
 ツィルニトラにとっては、『その一瞬』があれば十分だった。
 まず、一番手前にいる鷲のウカーブに狙いを定めたツィルニトラは竜翼を羽撃かせて魔力を噴射すると、一気に最高速に乗り。狙った敵を得物で一刀両断に斬り裂いた。
 その様子はまさに、電光石火の言葉に相応しかった。
 そのころ地上では。
 積商・和沙(四則演算の数秘術師・g02851)が、先ほど自分を襲った鷲のウカーブをじっとりとした目付きで睨みつけていた。
「さっきはよくもやってくれたわね、変態鳥。私のおしりを触った覚悟はできているんでしょうね」
 変態鳥……いや、鷲のウカーブを指さしてほっぺをぷっくり膨らませると。
「も、もきゅ……」
 隣にいるモーラット・コミュの『アンテナ』が『何か物申したい』と言わんばかりの目線を送っていた。
「アンテナなーに。掴まれたのは腰じゃって言いたそうな顔をしているわね」
 じっとりとした目線をアンテナに送ると、アンテナは慌てた様子でもふもふと頭を振った。
「も、もきゅっ……!」
「レディに無許可で腰に手を回すのなんておしりを触っているのと同罪よ」
「も、もきゅー」
 アンテナは思ったかもしれない。
 あれは手なの? と。
 そうこうしているうちに和沙の周りにも鷲のウカーブがたかって、ギャーギャーとけたたましく鳴きだした。
「なに変態鳥。仲間を集めれば勝てると思ったの? 甘いわよ」
 和沙はさらに訝し気に鷲のウカーブたちを見回していると、一羽、そのテリトリーに足を踏み入れる。
「3.1415926535897932384626433832795028841971693993751058209749445……」
 早口で円周率を唱えれば、和沙の周りに現れるのは円周障壁陣。
 障壁は螺旋を描き、鷲のウカーブを切り刻む。
 痛みに足をひっこめた鷲のウカーブは反射的に空へと舞い上がり、仲間を伴って和沙目がけて急降下した次の瞬間。
 さらに大きく広がった円周率の障壁が鷲のウカーブを次々と斬り刻んでいった。
「……だから、甘いって言ったのよ変態鳥。聞こえなかった?」
 どさりと地面に伏せた鷲のウカーブを見下ろした和沙はその亡骸に一瞥すると、『失われたオベリスク』の台座を観察しようと台座に向かい走り出したが。
 神殿の真正面に差し掛かったその時、神殿の奥からのそりと姿を現した気配に思わず足を止め、神殿内部を注視する。
「……この神殿には、まだでかい邪魔者がいるみたいね……」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【傀儡】LV1が発生!
【飛翔】がLV4になった!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!

珠々院・アンジュ
※連携・アドリブ可能です。
「敵ですね。殺しましょう」
無表情で淡々と喋りますが無口ではありません。
他の人ともコミュニケーションは取れます。
敵に対しても淡々とした口調ですが荒くなります。
成功のため自身の持てる技能は惜しみ無く使います。
表情には出しませんが、相手を呪詛で侵食することに愉悦を感じています。


 パラドクスは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。自身の怪我は疎く気にしません。
他のディアボロスに迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


メルサンク・トトメス
オベリスクをさらに殴って【挑発】する。【破壊】しても構わないよね。もう一つのオベリスクのない台座でも
こっちもクロノ・オブジェクト?
アポピスの弾丸はオベリスクを盾にして(【地形の利用】)防御する。腐毒の弾丸がオベリスクに当たれば儲けもの(【精神攻撃】)
そうだよね、オベリスクに当てたくなければ、こっちに寄って来るしかないよね
ボクが得意な間合い(【グラップル】)にさ

セトの個人的な怒り(「いつもいつも太陽の船を襲いに来るんじゃねえ」)に呑まれるかも知れないけど、仕方がない。セトの加護と神託のもと(パラドクス)アポピスの頭をオベリスクにぶつけたり、もう片方の台座にぶつけたりするね(【吹き飛ばし】)



 神殿の奥より這い出してきたのは、禍々しい色の蛇――の姿のエンネアド。
 その名を『黄金喰いアポピス』という。
 黄金喰いアポピスはディアボロスの前に姿を現すなり、エジプトの早朝の空と同じ色をした8つの眼で彼らを目視してにたりと嗤った。
 よくも信者たちの祈りを途絶えさせてくれたな。
 それどころか、オベリスクの守りも打ち砕こうとは――。
 蛇はそう言いたげにディアボロスを見据えた後、大きな口を開けれ威嚇を始めた。
 避難する巡礼者の波をかき分けて、ルクソール神殿前に駆け付けた珠々院・アンジュ(エントゾルグングフルーフ・g05860)は、黄金喰いアポピスを目の前にするなり、表情も返すに周りのディアボロスたちに告げる。
「敵ですね。殺しましょう」
 清々しい物言いの後。石畳の地面を蹴って駆けだしたアンジュは、表情を変えもせずに呟いた。
「悶えろ、苦しめ、醜くのたうち回れ」
 すると、アンジュの身体を巡る呪いが一気に解放され、軽く開く掌に、地面を蹴る脚に、見据える瞳に、風になびく髪に邪気が満ち――。
 黄金喰いアポピスの懐に飛び込んだアンジュは鱗で覆われた胴体をぐっと掴むと、掌に宿した呪いを圧縮する。
「偽物の守り神め。私たちの邪魔をしてることを後悔させてやる」
 淡々と告げる言葉と共に、掌で圧縮していた呪いを爆発させて黄金喰いアポピスの体を穿った。
 黄金喰いアポピスの体が呪いの浸食でびくんと痙攣する。
 アンジュは苦しむ蛇神の様子を見、さらに手のひらから発せられる呪いを蛇の腹に流し込んだ。
 が、黄金喰いアポピスも黙ってはいない。突然体をうねらせてアンジュを振り払うと、彼女が体勢を立て直さないうちに粘性の高い猛毒を弾丸のように飛ばし始める。
 弾丸はアンジュを撃つ。衝撃で華奢な体が神殿の壁に打ち付けられた。
 が。アンジュはまるで痛みを感じていないかのように表情ひとつ変えずにゆらりと立ち上がると、自身に付いた砂埃をぱっぱと払う。そして黄金喰いアポピスを見据えた。
「私の呪詛とお前の毒、どちらが先に相手を食い尽くすか試すのも悪くない」
 だが必ず私が勝つ。
 表情の乏しいアンジュ。だが、体を巡る呪いだけが轟々と燃え上がっていた。
 生意気に! と言わんばかりに咆哮を上げる黄金喰いアポピスは、挑発的なアンジュに向けて牙をむいた、その時。
 神殿の外から激しい轟が響く。
 メルサンク・トトメス(𓌸𓋴𓋹𓁐𓅝𓄠𓋴・g03837)が、セト神の加護と信託を受けた拳でオベリスクを殴り付けていたのだ。
 慌てて外に出てきた黄金喰いアポピスを、メルサンクは挑発的な目で見据えた。
「やっと出て来た。これさ、もう破壊しても構わないよね」
 黄金喰いアポピスに尋ね、これ――オベリスクを今一度軽く小突く。すると、黄金喰いアポピスは威嚇の咆哮を上げる。
 解ってはいたけど、やはりクロノヴェーダにとってこのオベリスクは重要な物なのだろう。
 メルサンクはちらりと右を見る。その方向には、『失われたオベリスク』の台座がある。
「――あれもクロノ・オブジェクト? なら、あっちを完全に壊そうか」
 不敵に口角を上げたメルサンクは、体をうねらせながら神殿から這い出てきた黄金喰いアポピスの動きを読んで左に跳んだ。そして、オベリスクの陰に隠れて猛毒の弾丸から身を護る。
 猛毒の弾丸はオベリスクに当たり、びしりとひび割れた音を上げる。その音を聞いた黄金喰いアポピスは、慌てて攻撃をやめた。
 そして、悔しそうに眼をギラリと光らせると、接近止む無しとばかりに、じりじりとメルサンクへと迫る。
 オベリスクを護るものが、曲がり間違えてもオベリスクを破壊する一助になってはならぬはずだ。
「そうだよね。オベリスクに当てたくなければ、こっちに寄って来るしかないよね」
 僕が得意な間合いにさ。
 口角を上げながら、メルサンクは感じていた。
 自分に加護と信託を与えてくれるセト神が、黄金喰いアポピスを目の当たりにして『いつもいつも太陽の船を襲いに来るんじゃねえ』と、怒りに燃えていると。
 メルサンクは石畳の地面を蹴り上げるなり――。
「𓊪𓍯𓏲𓄇𓏺𓎡𓊃𓃀𓏏𓃀𓎡𓌪𓂧𓅓𓎼𓂝𓊪𓀠𓎛𓄡𓇋𓀜𓈖𓂧𓃬𓄇𓎼𓂋𓊪𓃬𓀜」
 今一度、セト神の加護と信託を自分の拳に宿らせると、黄金喰いアポピスの脳天目がけて拳を振り下ろした。
 激痛に悶えた黄金喰いアポピスの咆哮がルクソールにこだまする。同時に口を天に向けると猛毒の弾丸をメルサンク目がけて放つが、メルサンクはくるりと身を翻して『失われたオベリスク』の台座の近くに降り立った。
 自分が『失われたオベリスク』の台座に近づいてみてよくわかる。
 やはりこの台座にも魔力が宿っている。と。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【隔離眼】LV1が発生!
【建造物分解】がLV3になった!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!

金森・椿
アドリブ歓迎
絡みOK

鳥だけでなく蛇もいましたか。
はてさて、どう攻めたものでしょうか。
毒牙やあの巨体での巻きつきは脅威に思えます。
どすん?
ちょっ、なんですか、空から――!?
……黄金の壺も当たると痛いです。

緊急【飛翔】で財宝や瓦礫を躱しながらちょうど切れ目を突進してあの蛇に渾身の一撃を加えてやります。
障害物もひとつなら【一刀両断】で強行突破です。
ちょっと惜しい気もしますが戦いの勝利のため、この敵を討ちます!

飛び散る金貨にもったいないと内心嘆きつつ命あっての物種なのでそのまま飛翔して離脱しますね。


積商・和沙
ついに出たわね、アヴァタール級。
神殿の守護者みたいな現れ方をしたけど、どっちかっていうと財宝泥棒に見えるわよ。

それにしても、あの眼の催眠術は厄介ね。
【飛翔】で撹乱させるけどあれだけ眼があると死角なんて・・・あるじゃない。
空中戦を止めて地上に降りて催眠術にかかったふりをするわ。
平伏して崇めればいいのかな?
より強力な催眠術をかけるために近づいた所を下顎目掛けて圏外襲撃よ。

さて、邪魔者がいなくなったことだし、失われたオベリスクの台座とオベリスクの方も調査よ。
台座に何か書かれた石板とかがあったら【書物解読】を使うわ。
あと、魔力を感じたけど今も感じるのかしら?


ツィルニトラ・プリルヴィッツ
信者からの供物かしら?
神獣として随分と蓄えているようね

少し羨ましいわ
沢山の宝物は目に見える形で信仰の権威を増すし、それを有難がって救われる人も確かにいるんですもの
他にも財を街道の整備に回してもっと信仰を集めたり…使い道に悩むわね

尤も、クロノヴェーダというだけで幻滅ものね
魔法の竜神として討伐させてもらうわ

あら、なにからしら?
そんなに見つめて…

真正面から睨み返し●観察、敵パラドクスの性質を●看破
催眠術の種を割って●解体、無力化

蛇の安い催眠が、竜に効くと思わない事ね!

尾や牙、蛇体の攻撃…嘘を見抜き真意を見破る“目”で巨体の攻撃を完全に見切って躱し【飛翔】し接近

槍斧を突き出し複眼ごと中身を破壊するわ


 体勢を立て直した黄金喰いアポピスを目の当たりにし、積商・和沙(四則演算の数秘術師・g02851)は強気に笑んで見せた。
「ついに出たわね、アヴァタール級。さっきは神殿の守護者みたいな現れ方をしたけど、どっちかっていうと財宝泥棒に見えるわよ」
 容姿に対して悪態をつかれてしまうのも無理はない。
 黄金喰いアポピスの体には金細工や宝石類が引っ掛かり、ギラギラと朝日を反射させていた。
 その眩しさに、ツィルニトラ・プリルヴィッツ(自称/捏造 魔法竜神・g02012)はわずかに眉間にしわを寄せる。
「信者からの供物かしら? 神獣として随分と蓄えているようね」
 そう呟いて、むっと口を尖らせた。
「少し羨ましいわ」
 沢山の宝物は、目に見える形で信仰の権威を増す。そして、それをありがたがって救われる人も確かにいる。
 目の前の『神』は、ツィルニトラが目指したい神の在り方の一つを体現していた。
「他にも財を街道の整備に回してもっと信仰を集めたり……使い道に悩むわね……」
 尤も。そう続けたツィルニトラの少し拗ねたような顔つきが一変。
 得物を構え、黄金喰いアポピスを見据えた。
「クロノヴェーダというだけで幻滅もの。魔法の竜神として討伐させてもらうわ」
「鳥だけでなく蛇もいましたか……」
 もはや何でもありですね。と武器を構えた金森・椿(薬売り・g02220)は感心しつつも困ったように息を吐いた。
「はてさて、どう攻めたものでしょうか。毒牙やあの巨体での巻きつきは脅威に思えます」
「毒もだけど、あの目の催眠も厄介ね」
 だけど……と羽を広げて飛び立った和沙は乾いた風に乗りながら、黄金喰いアポピスの周囲をぐるぐると飛び回り始める。それは攪乱と弱点探しのため。
 黄金喰いアポピスはといえば、頭上をちょろちょろと飛ぶ和沙を煩わしそうに睨みつけている。恐らく催眠術をかけようとしているのだろう。
(「八つも目があるのよ。他に死角なんて……」)
 モーラット・コミュのアンテナに反撃させながら、眉間にしわを寄せていた和沙だったが、はっと息を呑む。
 あるじゃない。
 死角が……!
「アンテナ、もういいわ」
 和沙はアンテナに攻撃をやめさせると突然フラフラと空中を漂いだし、力なく地上へと降りた。そしてへたりとその場に跪いた。
 そして恭しく頭を上げるなり、トロンとさせた目で黄金喰いアポピスを見上げ、また額を石畳の地面へとつけた。
「……黄金喰いアポピス様のご意向のままに……」
 その様子に、だれもが息を呑んだ。
 まさか、和沙が黄金喰いアポピスの眩惑の複眼に堕ちるなんて――。 
 アンテナでさえも、おろおろと狼狽えて和沙の周りを飛んでいるばかり。
 黄金喰いアポピスは嫌らしく笑むなり、複眼を輝かせながら和沙に近づいていく。そして、彼女のすぐそばまで差し掛かったその時――。
「アンテナ!!」
「もきゅっ!!」
 顔を上げた和沙の前に滑り込んだのは、先ほどまで主人の変貌に狼狽えていたアンテナ。
 アンテナはそのまま急上昇して、黄金喰いアポピスの下顎目がけて体当たりをかました。
 まるでそれは、強烈なアッパーカット。
 視野圏外からの攻撃に成す統べなく。黄金喰いアポピスは背中……というより頭から地面に倒れ込んだ。
「やったわ、演技大成功よ」
 和沙はアンテナとハイタッチをしながら、よろよろと頭を上げた黄金喰いアポピスを見下ろし。
「そうよね。あなたの複眼で、顎の下までは見えなかったわよね」
 と口角を上げた。
 見事してやられた黄金喰いアポピスはギリギリと歯を軋ませる勢いのまま、得物の切先を自分に向けている黒い竜――ツィルニトラに顔を向け、ギラリと睨みを利かせ始める。
「あら、なにからしら? そんなに見つめて……」
 ツィルニトラも負けじと睨み返すと、キラリと瞳を輝かせた。
「蛇の安い催眠が、竜に効くと思わない事ね!」
 その一喝で黄金喰いアポピスが怯む。自分から目を逸らした一瞬の隙に、ツィルニトラは石畳の地面を跳ねて空へと飛んだ。
 黄金喰いアポピスの複眼が今一度ツィルニトラを追う。
 だがツィルニトラには、複眼から発せられる催眠の波動も、これから行われる体の動きも全てお見通しだった。
「まだわからない? あなたの一挙手一投足は完全に読まれてるってことを!」
 乾いた風をきりながら黄金喰いアポピスの頭上を飛行していたツィルニトラは、その蛇の頭の真上にたどり着くと得物である『黒竜のバルバード』の切先を下に向けて急降下。
 刹那、黄金喰いアポピスの頭を複眼もろともカチ割った。
 ルクソールの街に響き渡るほどの大きな咆哮に、誰もが勝利を確信した矢先。
 上空から椿の足元に何かが落ちてきた。
「ん、なんでしょう」
 それは朝日を浴びてキラリと光る。よくよく見てみると、それは赤い宝石が付いた首飾りだった。
「どうしてこんなものが――」
 呟いて、はっと息を呑み上を向いた椿。振ってくるのもは首飾りだけではなかった。
 金細工の装飾品や財宝が瓦礫と共にどんどん振ってくる。
「ちょっとなんですか、これ!?」
 華麗な脚捌きで、空から降る財宝やがれきを華麗に避けていく椿。ちらと黄金喰いアポピスを見ると、頭と目を潰され平伏して唸っている蛇がしきりに尻尾を振っていた。
 まさか、あの蛇の仕業だというのか。しかも、頭を潰されたというのに……。
 だったら反撃せねばならない――と椿が手裏剣を黄金喰いアポピスに向けて投げ込みつつも地面を蹴って飛び上がった次の瞬間、先ほどまでたっていた場所にドスンと落ちてきたのは黄金の壺。
「……危なかった……です」
 あんなものが頭に当たっていたら……考えるだけでスッと肝が冷える。
 気を取り直し黄金喰いアポピスを見据えた椿は、懐から忍者刀を取り出すと、ちらと上を見上げた。
 もう瓦礫やら何やらが降ってくる気配はない。
 旋回した椿は忍者刀をぐっと構えなおすと、黄金喰いアポピス目がけて一直線に飛んでいく。
 今や無残に潰されてた頭から覗く舌や牙、尾に引っかけている財宝を持って帰ることができたなら――。
「行商人としてはちょっと惜しい気もしますが、戦いの勝利のため――」
 椿は真剣な表情のまま黄金喰いアポピスの顔面で忍者刀を振り上げると、その頭を一刀両断に斬り伏せた。
 神殿にこだまするのは黄金喰いアポピスの断末魔と、反撃に降り注がせた瓦礫と金銀財宝やら金貨やらが地面に落ちる音。
 あぁ、財宝が、金貨が……。もったいない……。
 異国の財宝や貨幣を前にそう嘆いてしまうのは行商人の嵯峨。しかし命あっての物種。
 椿はそのまま上空を飛び、パラドクストレインの待つ場所へと戻っていった。
「さて、邪魔者もいなくなったことだし」
 と黄金喰いアポピスの亡骸を横目で一瞥した和沙は、オベリスクとオベリスクの台座を行ったり来たりして調査を始めた。
 その結果、オベリスクに記された文字の解読はできなかった。しかし、今回攻撃対象であったオベリスクの台座と『失われたオベリスク』の台座は寸分違わず同じものではないが、ほぼ同じものであることがわかった。
 台座に魔力も残っている。
 オベリスクと台座の間を行ったり来たりして考え込んでいた和沙の顔がふと上がる。
「ここのだけじゃなくて……別のオベリスクも調査してみたいわね……別の場所や別の国の……」
 呟いて、和沙ははっと息を呑んだ。
 オベリスクってエジプトだけに存在するものなのかしら――。
 沸き立つ疑問に急かされるように、和沙は急いでパラドクストレインへと戻っていった。
 ルクソールの日は、未だオベリスクを白く照らしていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【書物解読】LV2が発生!
効果2【命中アップ】がLV5(最大)になった!

最終結果:成功

完成日2021年12月29日

ルクソール神殿のオベリスク

 ナイル川の上流『ナセル湖』の存在が大きな鍵になるであろうという攻略旅団の考察がありました。
 史実通りならば氾濫期であった筈のナイル川が氾濫していなかった事も併せて考えれば、ナイル川上流に何らかの秘密があるのは確実です。

 しかし、ナイル川の上流へは、古代エジプトの神殿の一つ『ルクソール神殿』の結界が邪魔して、パラドクストレインで移動する事は不可能のようです。

 ルクソール神殿は、獣神王朝エジプトの首都『百門の都テーベ』を望む神殿であり、非常に強い結界能力を発揮しているようです。

 理由はわかりませんが、ルクソール神殿の入り口に2基建っている筈のオベリスクが1基しか無く、ルクソール神殿の急所となっています。

 オベリスクの周囲には常に警護のマミーやエンネアドが居る為、彼らと戦いつつ、オベリスクの破壊を目指さなければいけません。
 1回の攻撃で破壊することは出来ませんが、攻撃を積み重ねる事で、破壊する事が出来るはずです。  残された1基のオベリスクの破壊に成功後は、攻略旅団の方針により、ナイル川上流のナセル湖の探索に向かう事になります。

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#獣神王朝エジプト
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#ルクソール神殿のオベリスク


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選択肢『敵の配下に紛れ込む』のルール

 クロノヴェーダの配下である、一般人の兵士などに紛れ込む選択肢です。
 ディアボロスの能力により、外見だけで怪しまれる事はありませんが、紛れ込む為には相応の作戦や行動が必要となるでしょう。
 なお、誰かがうまく紛れ込めれば、他のディアボロスを引き入れる事は難しくありません。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『ルクソール神殿のオベリスク破壊』のルール

 獣神王朝エジプトの首都『百門の都テーベ』及び、ナイル川上流地域への侵入を阻む結界である『ルクソール神殿のオベリスク』を戦闘によって破壊します。
 ルクソール神殿のオベリスクは、クロノ・オブジェクトである為、簡単には破壊できませんが、攻撃を積み重ねる事で、その効果を失わせることが出来るでしょう。
 ルクソール神殿のオベリスクを守るクロノヴェーダとの戦闘時に、クロノヴェーダを攻撃する代わりにオベリスクを攻撃する事が可能です。
 敵に一方的に攻撃される事になりますが、それに耐えて、オベリスクの破壊を目指しましょう。

 詳細は、オープニングやリプレイで確認してください。

※2022/1/3追記
 攻略旅団の提案により、ルクソール神殿のオベリスクの効率的な破壊方法についての情報が共有されました。
 この選択肢の判定が、大成功(🔵🔵🔵)しやすくなっています。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『🔵が👑に達すると、敵の大規模な作戦に影響を及ぼす。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾施設を警備するトループス級『鷲のウカーブ』のルール

 施設の警備を行っているトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 撃破する事で、施設での行動を行いやすくなります。
 撃破せずに行動する場合は、行いたい行動の選択肢を選びつつ、👾への対策などを同時に行う必要があるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『黄金喰いアポピス』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「テクトラム・ギベリオ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。