リプレイ
喩・嘉
さあて、皆で腕によりをかけて作った攻城兵器の出陣か
楽しみだ
こういうのは適材適所があってな。押すのは力自慢の者に任せる
俺は巨大破城鎚に上にある櫓に上り、高所から戦場全体の動きを見渡す
【未来予測】も用いて、敵の接近や攻撃について適宜情報を仲間へ伝達
破城鎚の進路についても指示
迫りくる敵には「幻鶴翼陣」で幻影歩兵部隊を召喚し、兵をまとまって進ませるよう指揮
こちらも兵の壁を築こう
放たれる槍は未来予測で極力避ける
※連携、アドリブ歓迎
杏・紅花
これがみんなが作った兵器!
すっごいなあ〜こんなの作れちゃうんだあ
これは壊される訳には行かないねえ!
力自慢って程でもないから、あたしは巨大破城鎚の周囲を【飛翔】しながら守って進むよ
喩嘉サンの情報もしっかり聞いて、近づく敵には拐の【小嘴】で打撃をお見舞いだっ
突撃してくる敵をバット振り回すみたいにしてガンガン打つよ
飛んで球になる魏軍の虫ぃっ!
たくさんいるみたいだし、仲間に襲いかかってくるやつには臨機応変に協力してワイヤーソーで屠る
アドリブ、連携大歓迎〜!
平良・明
アドリブ、連携歓迎
いやぁすごい、私が森の中でフケている間にこんないいものが……
では、今日は最初っから全力で行きましょう。仕事の時間です。
喩嘉さんが叩くべき敵を教えて下さるので私はとりあえず地上で
破城槌を押しつつ、たかる蟲を掃い尽くします
掴む取っ手は右か左かバランスよく
幸児さんとは大声で連携をとります
元々から手なのが戦闘に入りやすくて丁度良い
味方と狙う敵を合わせて、ぼっこぼこです。
折角なら、城門を叩き壊したいですが、今はがまんがまん……
同じ場所に二度訪れるのも時の移ろいを感じられてまたいいでしょうし
ラウム・マルファス
えーと、攻城兵器を守りながら前進しつつ敵を倒せばいーのカナ。やることいっぱい、敵もいっぱいダ
力には自信無いから、守りを担当するヨ。後ろの櫓に乗ってパラドクスで破城槌を見ル。弱いところを見つけたら強い素材に変換したり、修復するヨ。重量やバランスに注意して、常に最大威力が出せるようにしておこウ。実際に動かすのはコレが初めてなんだ、情報収集と改善は大切サ
敵の攻撃は避雷針をつけたドローンと、壁のように展開したナノマシンで防ぐヨ。
敵への攻撃は、イバラの冠で牽制と通常兵器の撃ち落としをしつつ、近い相手はパラドクスで弱点部分をまるっと空気に変換。いくら硬い装甲を持ってても、身体の中を直接弄れば関係ないからネ
守都・幸児
皆で作ったこいつが活躍すんのを見るのが楽しみだなあ
あとは敵を蹴散らして道を拓くだけか
そいつはわかりやすくていい
さあ、一気に【突撃】だっ
俺は破城鎚を後方から押しながら進むぞ
喩嘉の指示を聞きながら明や皆と協力して進路を調整
背後からくる敵は任せとけ
【地形の利用】と【情報収集】で周囲の闇を探す
小さな物陰でもありゃ充分だ
その闇を片っ端から「開」で繋いで利用して
近付く敵と飛んでくる槍を薙ぎ払う
破城鎚自体の影や車体の下の闇も利用するぞ
これで敵も近付けねえだろ
俺の攻撃が届かねえ位置から敵が破城鎚に取りつこうとしたら
【大声】で皆に知らせるぞ
連携して全方位を警戒して守る
上空の敵は紅花に任せるぞ
※連携、アドリブ歓迎
玉梓・はこべ
私は今も逓信局員、その心得を忘れることはない、つもりです
けれども同時に航空兵の端くれですから
偵察は大切な役目の一つです
あらかじめ共有できる情報は合図など示し合わせておきまして
櫓から飛翔し上空から地上の手薄な箇所を確認、進行方向に手榴弾を制圧射撃し爆風を目印に先導いたしますね
当然目立って迎撃されるでしょうけど、此方に目が向くということは攻城兵器に向く目がそれだけ逸れるということ
一撃離脱で着実に撃破しながら、存分に攪乱させていただきます!
合間合間には折を見て衝車を押すお手伝いに行けたらよいのですけれど……!
緋薙・紅花
おおー!
ついに皆さんで作った破城槌の出番ですね!
今回も微力ながらお手伝いしますよ
いえ前回と同様、わたしはきっと今回も敵倒すだけですけども
というわけで破城槌の道を物理的に空けてみましょう!
≪風花疾走≫
『トリックスター・『K』カスタム』に乗って
トループス級の大群に特攻します!
簡単に言うとバイクで吹っ飛ばすぞー!
空を飛ばれると面倒……と言うと思ったかー!
スピードに乗ったバイクなら
跳び上がろうとしている魏軍硬殻兵を捉えられるはず
そこへ全力で突撃です!
とはいえ向こうの攻撃は回避するか弾くしかないようです
致命傷は避けないと!
手足に『スカーレット』を纏わせてクリティカルな奴は弾きますね!
※アドリブ連携OK
●巨大破城鎚、出陣!
雲霞の如き魏軍硬殻兵の大軍が身じろぎもせずに整列している様は、まさに常軌を逸した光景であった。
上空より見渡せば、虎牢関側が配備した戦力のほどを一望することができる。
「私は今も逓信局員、その心得を忘れることはない、つもりです」
巨大破城鎚の櫓から飛び立った玉梓・はこべ(いくさばのたより・g01107)は、いち早く敵陣の上空を飛んでいた。
人々の心、想い、生き様――多種多彩な便りが織りなす物語を担うのも彼女の仕事であれば。
「けれども同時に航空兵の端くれですから」
偵察もまた大切な務めの一つである。
いま、はこべが征くのは紛れもない戦地。
腰部背面で稼働する蜜蜂の腹のような機巧――試製三八式飛行装置“蜂雲”の調子は良好。
後方に視線を送れば、巨大破城槌が、敵軍勢に向けて突撃を始めようとしているところだった。
はこべは向き直ると素早く敵陣に目を配り、付け入る隙を見つけ出した。
「防備が手薄なところを狙えば……!」
前哨戦を経た虎牢関側の疲弊を表すように、魏軍硬殻兵の陣形には随所に綻びが生じていたのだ。
はこべは年式の削り取られた信号拳銃を取り出すと、その眉宇に決意を湛えて、敵陣の一角に突入した。
見る間に高度を落とし、風を受けながら加速する。
「今!」
引き金を引くと、信号拳銃の先端に取り付けられた手榴弾が射出されて硬殻兵の群れに飛び込んでいった。
着弾、爆発。
負荷に耐えながらV字に急上昇するはこべ。
繰り返される急降下爆撃に、硬殻兵が矢を放ってくるが、態勢を崩した弓兵の射撃が小さな的に命中することはない。
「追いかけて来ましたね!」
戦場の空を飛翔しながら、はこべは、背後を見やる。
立て続けの急降下爆撃を成功させた彼女を、魏軍硬殻兵の一団が猛追してきたのだ。
『逃すな、撃ち落とせ』
『羽を毟り取ってやれ』
ギチギチと顎を鳴らし、甲高い声で言い合いながら硬殻兵が飛ぶ。
弓を構えるものもあり、槍を手にしたものもあり、それは一人を相手にするには過剰なほどの兵数だった。
はこべが浮かべたのは、しかし笑みだ。
手榴弾の爆発地点を見れば、多くの硬殻兵が吹き飛ばされ、もとより綻びのできていた陣形に更に乱れが生じていた。
爆発はそれそのものが目印となり、破城槌の進むべき道を知らせている。
彼らがこの機を逸する筈がない。
「活路は開かれたな。さあ、出陣するとしよう!」
天を衝くような巨大破城槌の四方には、戦場を見渡すことのできる櫓が組み上げられていた。
その一角――前方から見れば左奥の高台に立った喩・嘉(瑞鳳・g01517)が、瑞鳳凰扇を手に声を放った。
「応!」
「仕事の時間ですね。任せてください」
巨大破城鎚を推進させる要の二人が、後部を全力で押して、車輪をごろりと回転させる。
「それにしてもすごい、私が森の中でフケている間にこんないいものが……」
そのうちの一人――平良・明(時折の旅行者・g03461)は勇壮極まる攻城兵器を着実に前進させながら感嘆していた。
建造作業を支援すべく守備隊との戦闘を繰り広げた明だったから、実際に目の当たりにしたのはこれが初めてのこと。
「今日は最初っから全力で行きましょう」
人員の関係で後方から押すことになったが――青い作業着と同色の帽子を目深に被った彼は、ちらと視線を横に流した。
「あとは敵を蹴散らして道を拓くだけか。そいつはわかりやすくていい!」
皆で造り上げた巨大破城鎚が、遂に活躍するときを迎えたのだ。
硬化した鬼人の両腕を隆起させて力一杯に押しながら、守都・幸児(迷子鬼・g03876)は快活な笑みを浮かべていた。力業が求められているとなれば、活躍するのは破城槌だけでは決してない。幸児にとって今日の一戦は、その身に宿した力の面目躍如となるだろう。
「さあ、一気に突撃だっ!」
二人の復讐者が力を込めれば、巨大破城鎚が段々と速度を上げていく。
「えーと、攻城兵器を守りながら前進しつつ敵を倒せばいーのカナ。やることいっぱい、敵もいっぱいダ」
櫓の一角を占めたラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)は、そう言いながら眼鏡の奥の目を細めた。
彼が立っているのは喩嘉の反対、前方から見れば右奥の櫓である。
そこから見える、無数の敵兵が身動きもせずに佇立している様は、蟲将そのものの姿も相まって圧倒的な光景と言えた。
力には自信がないけれど、膂力だけが戦を決定づけるものではない。
陽光に眼鏡を反射させながら、ラウムはそのブリッジを指で押し上げた。
「場当たり的な布陣だな」
僅かに睫毛を伏せた喩嘉が、碁打ちの先読みさながらに敵陣の動きを予測する。
魏軍硬殻兵の大群が、キイキイと奇怪な声をあげて遂に迎撃態勢を取り始めた。
「戦は数だが……ただ揃えれば良いというわけではない」
それを見て取った喩嘉が瑞鳳凰扇を天高く掲げる。
破城槌前方の時空が歪み――そして鬨の声が轟いた。
幻鶴翼陣。
虚空より現れ、破城槌を護るような布陣で槍や矛を構えたのは、三国時代の歩兵たちだ。
「歩兵部隊、突撃」
羽扇を敵陣に突きつけた喩嘉の下知に応じて、鶴翼陣を形成した精強なる歩兵が魏軍硬殻兵とぶつかり合う!
「仕掛けてくるのは一定程度に近接した敵だけだ。後の者には構うな!」
対する魏軍硬殻兵のうち或る者は槍をしごいて突撃し、また或る者は羽を広げて飛び上がるや否、次々に矢を放ってくる。
だが櫓の上の喩嘉は飽くまで泰然自若として、襲い来る矢を軽々と避けては兵の指揮と状況把握に務めていた。
力に自信がある者は推進力となり、知略を巡らせる者は支援を担う。
「まさに適材適所というものだな」
矢が破城槌の正面に積まれた石材や頑丈な屋根に突き立つが、
「この程度の損傷なら大事ないヨ」
Rewriter――悪魔の魔法が宿った眼鏡を光らせて損傷程度を確認、破損箇所を適宜修繕しながらラウムが言った。
「上でも守ってくれてるしネ」
「これがみんなが作った兵器!」
飛翔する杏・紅花(金蚕蠱・g00365)が、戦場を征く巨大破城槌の勇姿を見下ろしながら言った。
「すっごいなあ〜こんなの作れちゃうんだあ。これは壊される訳には行かないねえ!」
復讐者が力を合わせれば、これほどの攻城兵器さえ造り上げることができるのだ。
「空の敵は頼んだ!」
大勢の魏軍硬殻兵が飛来するのを気配で察して、後ろから破城鎚を押し続ける幸児が大声を発した。
「任せて! これを壊される訳には行かないからねえ!」
絹のような黒髪に風を受けて飛翔した紅花が、空から襲い来る魏軍硬殻兵の軍勢を迎え撃つ!
小嘴――その名を冠した鶴嘴型の拐が風を切って唸りをあげた。
今や紅花の小さな蚕翅は素早く飛び回れるほどに大きく広がり、白縫纏う可憐なその姿に引き寄せられたか、空を飛ぶの硬殻兵が瞬く間に突撃してきた。
「さあ、かかってくるといいよ!」
不気味な顎をガチガチと鳴らした蟲将の大群が、取り囲むようにして次々に槍を繰り出してくる。
横回転するように一撃をかわし。
続く二撃目を宙返りするように避けて。
ひらりひらりと宙を舞う紅花に翻弄され、硬殻兵の攻撃は尽く空振りに終わる。
『キシャアァァァァァ!』
痺れを切らしたように蟲将の群れは紅花を覆い尽くし、さながら巨大な球状の包囲陣に閉じ込めた。
如何に復讐者とはいえ、槍の嵐に貫かれれば無事では済まない。
「気合いだーっ!!!」
青々とした包囲はしかし瞬く間に内側から吹き飛ばされることとなった。
元気一杯の声が迸ったかと思うと、崩れた包囲陣の中から現れたのは小嘴を構えた紅花だ。
「飛んで球になる魏軍の虫ぃっ!」
宙を舞い踊りながら、巨大破城鎚の上空で、前後左右から来る硬殻兵を次から次へと打撃していく紅花。
小気味の良い音が響き渡り、硬殻兵どもが斜め下に吹っ飛ばされては他の蟲将を巻き込んで転がる。
巧みなバット――否、拐さばきで紅花は空の敵を引き受け続け、
「させないよ!」
歩兵部隊の指揮を執る喩嘉に槍を付き出そうとした硬殻兵を見るや、ワイヤーソーを伸長。
くるりと捕縛するとぶんまわし、群がる蟲将をも弾きながら切り裂いた。
「力技は不得手と聞いたが?」
「まあ、このくらいはねっ!」
これほどの戦場にあっても尚、笑い合う余裕を二人は持っている。
戦いながらも虎型要塞を見やる紅花。
弱肉強食は世の常――虎と対峙する復讐者が、蟲将の群れを蹴散らしながら敵陣を駆け抜ける。
●敵陣、貫いて
虎牢関が近づくにつれ、魏軍硬殻兵の攻撃も熾烈を極めてきた。
寡兵よく大軍を破る軍師の指揮があるとは言え、敵陣のただ中を突っ切って虎牢関に取り付こうとしているのだ。
雨あられと射掛けられる矢は巨大破城槌のあちこちに突き刺さり、追ってくる硬殻兵の数も、未だ少なくない。
「流石に敵も必死だネ」
幾本もの矢が突き立った巨大破城鎚の損傷度を、後方の櫓に立つラウムが見定めていた。
深々と突き刺さった矢は正面や側面の石材をも罅割れさせていたが、全体としてはまだ大事ない。
ラウムが眼鏡のつるに手をかける。
Rewriterの力により、損傷した各部が応急処置的に修繕され、更に補強されていく。
「実際に動かすのはコレが初めてなんだ、情報収集と改善は大切サ」
まさか敵もこうまで攻守の態勢を整えてくるとは思いもしなかっただろう。
どれほど苛烈な攻撃を加えても破城槌は止まることなく、ひたすらに突っ込んでくるのだ。
だが敵陣深くに突入するとなれば、やはり包囲される形になる。
「後方の敵に対応できるか」
櫓の上から喩嘉の声が響いた。
幻影の歩兵部隊は前方と両側面から襲い来る硬殻兵に何とか対応できていたが、後方までは流石に手が回らない。
明が振り向けば、確かに槍を構えた魏軍硬殻兵が突撃態勢に入っていた。
だが、まだ迎え撃つだけの距離は充分にある。
「……幸児さん、此処、少し任せていいですか」
「ああ、頼んだっ!」
視線を横に流して問えば、汗だくながら天真爛漫な笑顔と声が返ってくる。
小さく頷きを一つ、破城槌から手を離すと、槍を構えて詰めかけてくる硬殻兵に明は向き直った。
「元々から手なのが戦闘に入りやすくて丁度良い」
『キシャアァァァァ!!』
甲高い叫びをあげて紫電纏わせた槍を突っかけてくる硬殻兵――その切っ先から電流が迸る前に、明は突っ込んでいった。
「援護するヨ。いくら硬い装甲を持ってても、身体の中を直接弄れば関係ないからネ」
櫓の上でラウムが言い、甲殻の材質さえも変換する恐るべきRewriterの力が、此処に本領を発揮する。
「掃い尽くしましょう。ぼっこぼこです」
疾駆する明の接近を許した硬殻兵たちは、一斉に電撃を放つという攻撃法ゆえ、却って隙を晒すこととなってしまった。
拳が硬殻兵にめりこみ、鎧めいた外骨格を粉々に砕いて吹っ飛ばす。
「……脆い」
瞬時に踏み込み、放たれる打撃。
驚くべき威力の拳が、ただの一撃で硬殻兵を文字通り粉砕しては、後ろから続く敵兵をも将棋倒しにする。
と、魔力を編んで作られた黒い冠――その茨が巻き付いたような冠が縦横無尽に飛び交い、硬殻兵の槍を弾いて。
『グギギ、ギィィィィ……!』
奇声を発した蟲の兵どもが痙攣したかと思うと、その甲殻が崩れるように歪み、無残にくずおれた。
Rewriterを用いたラウムのパラドクスにより、硬殻兵の『中身』が空洞化したのだ。
難を逃れた硬殻兵が槍から迸らせた電撃を、飛来した避雷針付きのドローンが身代わりに受ける。
だが顎を鳴らす硬殻兵の群れは、せめて明だけでも脱落させようと、取り囲んで槍を向けてきた。
「……さて、さっさと追いつくとしましょうか」
拳を構えながら呟く明。
勇壮な排気音を轟かせてバイクが突っ込んできたのはその時だ。
「おおー! あれが皆さんで作った破城槌の勇姿ですね!」
無数の敵を蹴散らして突撃してきたのは緋薙・紅花(サージェナイト・g03888)だった。
華麗にして大胆なドライビングテクニックにより、改造オフロードバイク『トリックスター・『K』カスタム』が唸りを上げ、さながら大河を横断するように蟲将を吹き飛ばして駆け抜ける!
ガソリンに加えて霊力さえも燃焼させるハイブリッドバイクの猛突撃は、如何に蟲将の群れと言えど阻めるものではない。
「破城槌の道、物理的に空けてみましょう!」
実に単純明快、凄まじい突進により敵の包囲を貫通する紅花。
闘気を纏ったその紅き疾走は破城槌を先導する光の軌跡を描き――薙ぎ倒される硬殻兵は数え切れる限度を越えていた。
「凄いものですね……」
作業帽を被り直すと、明は硬殻兵が態勢を整えぬうちに『切り開かれた』道を疾走した。
無論、その間も巨大破城鎚は敵の攻撃に晒されている。
「流石に数が多いなっ」
ギチギチと顎を鳴らす魏軍硬殻兵が両側面から数を頼って巨大破城鎚の行く手を阻んでくる。
明たちが追っ手を打ち払わなければ窮地に陥っていたのは疑いなく――両腕にかかる負担も、最終防衛を担うことさえ、幸児は織り込み済みだった。
魏軍硬殻兵が横合いから一体、また一体と幻影歩兵を突破してくる。
「少々討ち漏らしたか。頼めるな!」
矢面に立つ喩嘉――その言葉に即座に対応できたのは、信頼関係ゆえだろう。
「ああ、任せとけ!」
慌てることなく、両腕に全力を籠めたまま、幸児は精神を集中させた。
「太陽は向こうだな。小さな影でもありゃ充分だ」
ひらけたこの戦場において、木や建物の影を利用するのは難しい。
故に幸児は、最も手近な影――即ち巨大破城槌が落とす影を利用した。
「拓く、開く、須らく」
硬化した鬼人の両腕が歪む。
転瞬、破城槌の下から無数の刃が飛び出した。
進むべき道を切り拓くための力が、進撃を阻もうとする敵に襲いかかる!
槍による攻撃を加えようとした魏軍硬殻兵が次々に貫かれ、驚きの混じった呻きをあげた。
その全てが攻城兵器に指一本触れることなく息絶えたのだ。
「何とか戻れましたね」
「おう、こっちも大丈夫だ!」
明が再び幸児の隣で破城槌を押す。
紅花のバイクが敵を蹴散らす音は、未だ戦場に響き渡っていた。
鋼鉄の騎馬さながらの猛突は、硬殻兵を圧倒し、そして注意を引きつけるのにも一役買っていた。
『ギギギ……飛び道具を使え!』
「やっぱりそう来ましたか!」
パラドクスを用いた硬殻兵の弓射は恐ろしく精確であり、一斉に弓を構えた後に放たれた矢は紅花を猛追する。
だが烈々たる風花疾走はその程度で止められるものではない。
敵を吹き飛ばしながらのジグザグ走行で避けつつも、正面や横合いからくる矢を紅花は迎え撃った。
緋色の闘気――スカーレットを両手脚に纏わせれば、襲い来る矢さえ弾き飛ばし、事もなく叩き折る。
自らの騎乗スキルを存分に活かした走法は、まるで曲技である。
突撃により包囲を貫き、敵陣を駆け抜ける。
ハンドルを握りながらの蹴りに敵が吹っ飛び、数体を巻き込んで倒れた。
『空から狙い撃つぞ!』
『近づきさえしなければよい!
「空を飛ばれると面倒……と言うと思ったかー!」
奇怪な声で言い合って跳び上がろうとした硬殻兵が羽根を伸ばしたところに、速度をあげたバイクが突っ込んだ。
鎧めいた硬い外骨格を持つ筈の硬殻兵が、突撃を受けて容易く四散する。
もはや紅花を阻めるものはおらず、背後の巨大破城鎚に向けて彼女は手を振り、声を上げた。
「さあ、道は切り開きましたよ!」
●そして虎の懐へ
「どんどんこーい!」
蚕のインセクティア――金蚕蠱の紅花が拐を手に、巨大破城槌の上空にて群がる硬殻兵を立て続けに弾いていた。
「間に合いましたか!」
敵を振り払って、はこべが破城鎚の右側面につく。
「ああ、これでバランスが取れますね」
明が左側面に回り、それぞれに取っ手を掴むと全力で力を込める!
破城槌が更に速度を増して、一挙に城塞壁面へと近づいていく。
「虎牢関は目前。もう一息だが、油断はするな」
苦し紛れに投げられた槍は瑞応龍袍を翻して避け、喩嘉が眼前に迫る虎牢関を睨んでいた。
敵の弓射により、破城鎚のあちこちに矢が突き立っている。
しかし走行に支障はなく、内部構造も大槌も、未だ健在だった。
「最後のひと押しだ!」
幸児が明とともに全力をこめて後ろから破城鎚を押す。
細かな作業は苦手でも、硬化した鬼人の両腕――その大力がここまでの道行きを支えたのだ。
どんという衝撃に破城槌が震えたかと思うと、動きを止めた。
遂に虎牢関の壁面へと到達したのだ!
「ふう、ようやく辿り着いたネ」
ラウムが一息つく。
「折角なら城門を叩き壊したいですが、今はがまんがまん……」
さっと額を拭いつつ、明はそびえ立つ虎牢関を見上げた。
「同じ場所に二度訪れるのも時の移ろいを感じられてまたいいでしょうし」
いずれ虎牢関を完全に陥落させる日が来るのかもしれない。
今はとにかく、この虎型要塞を突破するのみ。
攻撃可能地点に到達した巨大破城槌が、遂にその真価を発揮しようとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【未来予測】LV1が発生!
【飛翔】LV2が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV2が発生!
平良・明
では、飛び越えるのは任せて、可能な限り、ぶっ壊しましょう
自分の目の前に大きな壁があったらどうするか
私はとりあえず殴ります、何度も、何度も
昔と違って拳が壊れるまでは殴らないのですよ
自分の分くらいは弁えています
敵の気を引くことになるので、しっかり戦闘態勢で
味方が破城槌を動かしている間、周囲を警備します
近寄ってきたら叩き潰しましょう
破城槌の耐久力の限界が近づいたら
もう、用済みですよね
敵に回収されて解析されるのも御免ですし
最後に、派手に、仕事してもらいますよ
ディガーパックを変形させた爆撃槌で槌の後部を叩き
全力で、城壁に叩きつけましょう
粉々に爆ぜるくらいでいい
道具は最後まで使い切る
ありがとうございます
ラウム・マルファス
みんなが破城槌を動かしている間は、パラドクスで破城槌の修理をしよウ
先端と後部は損傷が激しくなるからネ
ついでに壊す壁の周囲を脆くして、少しでも広く壊れるようにしよウ
他のチームの手助けにもなるかも知れナイ
明の最後の一撃の前にロープを切って、破城槌周囲の空気を変換して、目の前にイイ感じの坂を生成
角度をつけて要塞中腹まで飛ばしてみよウ
目を引けば侵入もやりやすくなりそうだしネ
一通り終わったら壊れた壁から内部へ
要塞の近くまで飛翔で飛んで、要塞の素材をへこませて坂や梯子を作って登るヨ
運動は……苦手だカラ……体力が……ゼェハァ
天辺近くまで着いたら戦いに備えて、要塞の素材を伸ばしたり均して足場を作っておこウ
喩・嘉
巨大破城鎚、よくぞ耐えてくれた。
幸児も大役お疲れ様。なんだか大変な役目ばかり頼んでしまったな。
修繕、守り、起動も仲間に任せられる。
ならば俺は道を作るため虎牢関の城壁の上へ。
巨大破城鎚が起動し、蟲将の注意がそちらへ向いたと同時に行動開始
翅を広げ、櫓から【飛翔】を用いながら城壁へ飛ぶ。
後に続く皆の援護のため、
城壁の上から「晴天炯計」で苛烈な光を降り注ぎ
目潰しをしながら蟲将達を防ぐ
さあ、皆攻め込むぞ
※アドリブ・連携歓迎
守都・幸児
さすが皆で作った巨大破城鎚だっ
はは、大変な役目はお互いさまだろ
喩嘉こそお疲れさん。いい指揮だったぞ、ありがとうな
よし、派手にいくぞーっ
このでかい城壁を粉々に【粉砕】してやろうっ
皆で作った破城槌ならきっと出来るぞ
俺は【怪力無双】の腕力で思いっきり破城鎚を打ち出すぞ
何度も何度も
城壁が砕けるまで
櫓の皆が城壁に飛び移れるまで
何度でもだ
もちろんがむしゃらに打ち出すだけじゃねえ
城壁の様子をよく観察して【情報収集】
少しでも破損の大きい場所を【看破】して狙い打つ
明が最後に槌を押し出すなら
俺も合わせる
「鬼神変」で腕を巨大化させて、思いっきりな
ちょいと名残惜しいが、楽しかった
ありがとうよ破城鎚
※アドリブ・連携歓迎
玉梓・はこべ
それでは私は槌前方の搭乗席に乗り込ませてもらいますね
……目前の壁に叩きつけられにいく視界はなかなか衝撃的ですけれど、ギリギリまで粘って破城槌の衝撃に合わせ、信号拳銃と手榴弾を用いた爆破、粉砕でより衝撃的に壁面の破壊を行いましょう
自分諸共叩きつけられては何度も繰り返す攻撃のお手伝いができませんし、衝撃のその瞬間のみ飛翔し退避、自身が巻き込まれないようには気をつけます
破砕した瓦礫が次の一撃を妨げてはいけませんしそうした瓦礫は適宜隔離眼にて隔離を
最後の一撃の際はありったけ爆破してその爆風に紛れ、加速に乗って一気に砦頂上へ
空中戦に慣れている分だけ、制圧射でほかの皆さんの登攀も援護いたしますね
●巨大破城鎚、起動!
激戦のさなかに虎牢関めがけて突っ込んだ巨大破城鎚は、防衛を担う蟲将たちの度肝を抜いていた。
敵軍が唖然としているあいだに、復讐者たちは攻撃を開始する。
「さすが皆で作った巨大破城鎚だっ」
攻撃可能地点に辿り着いた攻城兵器の有様は、潜り抜けてきた激戦のほどを如実に物語っていた。
無数の矢が突き立つ巨体を見上げ、額の汗を硬化した腕で拭いながら守都・幸児(迷子鬼・g03876)が称賛する。
「破城鎚、よくぞ耐えてくれた」
櫓の上の喩・嘉(瑞鳳・g01517)も、損傷を受けつつ此処まで駆け抜けてきた攻城兵器に、感嘆していた。
ちらと振り向けば、進路に沿って累々と倒れ伏す蟲将の屍が見え――如何に困難な道を進軍してきたかが分かる。
「幸児も大役お疲れ様。なんだか大変な役目ばかり頼んでしまったな」
「はは、大変な役目はお互いさまだろ」
全力で破城槌を押し続け、窮地をも救った幸児である。
その労をねぎらう軍師に、彼が返したのは晴れ晴れしい笑みであった。
「喩嘉こそお疲れさん。いい指揮だったぞ、ありがとうな」
喩嘉もまた、最も危険な場所で激戦を潜り抜けたと言える。
揺るがず動じず、それでいて柔軟に事に当たる。
その冷静さのお陰で此処までやり通すことができたのだと――幸児は瞳に真率な光を湛えて、礼の言葉を口にした。
「私は搭乗席に乗り込ませてもらいますね」
大槌の前方に据え付けられた座席にいそいそと乗り込んだのは、玉梓・はこべ(いくさばのたより・g01107)だ。
この機構も彼女考案のものであり、したがって、使い方は誰より想定できている。
「直前に脱出するとして……用意はしておきませんと」
座席の中で、はこべは信号拳銃の状態を確認した後、手榴弾を取り付ける。
「それじゃ、ボクは破城槌の修理をしよウ。先端と後部は損傷が激しくなるからネ」
櫓の上に立つラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)も、すべきことは決まっていた。
悪魔の魔法を宿した眼鏡に映すのは、堅牢極まる壁――そして今まさに役目を果たさんとしている破城槌そのものだ。
「派手にやっちゃっていいヨ。壊れたら修理するからネ」
「修繕、守り、起動も仲間に任せられるか」
喩嘉が言い、そびえ立つ虎型要塞を見上げた。
「ならば俺は虎牢関の上へ……道を作るとしよう」
「では、飛び越えるのは任せて、可能な限り、ぶっ壊しましょう」
櫓の上――喩嘉の隣で同様に要塞を見上げながら、平良・明(時折の旅行者・g03461)が言った。
青い帽子を被った彼の視線は、鋭い。
「自分の目の前に大きな壁があったらどうするか」
拳を握りしめて。
「私はとりあえず殴ります、何度も、何度も」
壁面めがけ、空を切るように正拳を突き出しながら明は言う。
――ああ、でも昔と違って拳が壊れるまでは殴らないのですよ。
山あり谷ありと形容するこれまでの人生が如何なるものであったか……少なくとも、静かに闘志を漲らせる彼は、味方である復讐者たちにとって頼もしく、敵である蟲将にとっては恐るべきものだ。
自分の分くらいは弁えています――そう語る明は知っている。
やるべき仕事をきっちりとこなせば、道は切り開かれるのだと。
「加減なしの全力だな!」
明の言葉に大きく頷くと、幸児は飛翔し、巨大な破城槌の後部に作られた足場に立った。
「行きましょう……お願いします!」
座席の中で、準備を終えたはこべが声をあげる。
信号拳銃を構え、狙いを壁面に定めて。
「よし、派手にいくぞーっ」
幸児は、両足を踏みしめ、その豪腕を構えた。
巨大極まる槌も、鬼人の腕を以ってすれば単身で打ち出せる。
「っらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
幸児が押すように拳を打ち付けると、轟音が響き渡り、そして。
唸りを上げ、巨大な槌が虎牢関の壁面に突っ込んでいく!
何と凄まじい勢いだろう――座席の中で、はこべは目を見開いた。
しかし航空兵として速度にも負荷にも慣れている彼女である。
(「ギリギリまで粘って
……!」)
手榴弾の起爆に要する時間は既に心の中で数えていた。
迫りくる壁面を確りと目視し――そして信号拳銃の引き金を引く。
射出。
離脱。
爆発。
同時、補強された巨大槌が壁面に激突する!
大音響と大振動は要塞を震わせ、蟲将の守備隊を圧倒していた。
「おい、無事かっ!」
「大丈夫です、なんとか!」
叫ぶ幸児に、はこべが応える。
手榴弾が起爆する直前、座席から飛び出していたのだ。
爆煙と舞い上がる塵埃の中を飛ぶと、はこべは隔離眼の能力で、落ちてくる瓦礫類を異空間に閉じ込めてさえいた。
「まだ行けるな!」
「ええ、もちろん。女は度胸といいますから!」
その機転のお陰もあって破城槌が速やかに二撃目に移ることができ、はこべは再び座席に乗り込んだ。
「確かにこれは簡単に壊せそうにないネ」
ラウムの両目が僅かに細められた。
優れた研究者である彼は、今の一撃で、虎牢関の度外れた防御力を推定していたのだ。
「少しでも広く壊れるようにしよウ」
勿論、与えたダメージは小さくない。
破城槌の打撃により、壁面がひび割れ、砕かれ、派手に破壊されている。
そこへ。
ラウムが眼鏡に手をやって悪魔の力を解き放つと、壁面に更なる変化が生じ、脆い材質に変換されていく。
「此処で目を引けば突破もしやすくなりそうだしネ。他のチームの手助けにもなるかも知れナイ」
攻城兵器を駆使した猛攻撃は蟲将たちを仰天させ、虎型要塞に挑む皆への支援になる。
虎牢関突破作戦における巨大破城槌の活躍は、作戦成功の要として復讐者たちの歴史に刻まれることだろう。
「これほどの兵器を造り上げることができたとは、な」
櫓の上で破城槌の威力を目の当たりにした喩嘉は、改めて驚嘆していた。
まさに適材適所――それぞれの得意分野で力を合わせたからこそ、此処までのことができた。
施設警備を担う鋭蜂兵が騒ぎ出し、頭上を旋回し始める。
「狼狽しているな」
喩嘉は算を見出した要塞内部の状況を思い、薄く笑みを含んだ。
事実、破城槌の攻撃により泡を食った蟲将は、統率の取れた行動が取れていないようだ。
「さあ行くとしようか。後に続く皆のために」
瑞応龍袍のスリットから伸びた薄く美しい翅を広げると、喩嘉は残留効果の力も活かして櫓から飛び立った。
●全身全霊
「まあ、黙って見てるわけないですよね」
防衛を担う呉軍鋭蜂兵が、上空から飛来してくる。
だがその数はほんの僅かであり、まず一体が背中から強烈な打撃を受け、激しく地面に叩きつけられることとなった。
櫓の上から敵の動向を窺っていた明が、痛烈な一撃を加えた後に着地を果たす。
蟲将の刺突が斜め上から来るのを察し、明は避けながらもクロスカウンターの要領で拳をめりこませた。
『ぐぎぃっ
……!?』
悲鳴をあげて吹っ飛ぶ鋭蜂兵。
徒手空拳を以って迎撃する明に、蟲将は釘付けになっていた。
無論、此処で敵を討ち果たす必要はない。
ただ注意を引き、破城槌の攻撃を支援できればそれで十分だ。
「蟲将は任せて大丈夫かナ。今は支援に専念しよウ」
もとより荒事は得意ではないラウムだ。白衣を爆風にはためかせながら、動じることなく堅牢な壁と対峙し続ける。
「まだまだぁっ……!」
幸児が拳を振るい、耳を聾する轟音が立て続けに響き渡って、巨大虎型要塞が振動にビリビリと震える。
圧倒的なまでの破城槌の打突は壁を破砕し、穿つように大きく陥没させていた。
「一点集中だっ! このまま行くぞ!」
「問題ないヨ。攻め続けよウ」
壁の材質を改変し損傷程度を知らせるラウムの言葉を聞いて、幸児は打撃を続けていたのだ。
大質量を以って打ち込む以上、より大きな損傷を与えるには、攻撃を一点に集中させた方が良い。
「……ぐっ」
歯を噛みしめる幸児の口の端からいつしか血が流れていた。
怪力の反動をもろに受ければ、硬化した鬼人の両腕さえ軋むが、構いはしない。
「効いているはずです!」
はこべも信号拳銃と手榴弾を駆使した発破を繰り返し、塵埃に塗れながら、必死の攻撃を続けていた。
軋みをあげる破城槌もまだ行けると訴えているようで――ひび割れた城壁は打撃するたびにその損傷範囲を広げていく。
「此処でへたばるわけにはいかねえよなぁ……!」
流石の鬼の腕も、大槌に連続して拳を振るえばただでは済まない。
それでも、それがなんだと、幸児は力を振るい続けた。
――何度も、何度も。
皆でこの要塞を突破するために。
たとえ我が身が悲鳴をあげようとも。
――何度でも、だ!
驚くべきことに、戦場に響き渡る大槌の打撃音は、回を重ねるごとに大きくなっていた。
「頃合いですか」
蟲将を撃退した明は一息つくと、巨大な破城槌を見上げた。
度重なる打突により虎牢関側に与えた衝撃は十分だ。
あと一打――今がその時だと判断した彼は、飛翔して破城槌の後部に設えられた足場に着地した。
大槌を挟んで、幸児と向き合うような位置だ。
「さぁて、最後の一撃といくかっ!」
幸児が拳を打ち鳴らして両腕を異形巨大化させた。
鬼神変だ。
「ええ、最後に、派手に、仕事してもらいますよ」
明はディガーパック――二本の機械式アームを備えたバックパックを背から下ろし、手に提げるように持ちかえる。
攻撃の気配を察したか、上空で鋭蜂兵の群れが何やら騒ぎ立てていたが――。
「助かります、喩嘉さん」
見上げた明が帽子に手をかけ、幸児がにかりと笑った。
「皆の邪魔はさせんさ。有終の美を飾ってもらおう」
距離が隔たり、声は届かずとも、互いの意志は通じている。
天高く飛翔していた喩嘉が蟲将の群れを相手取って軽やかに飛び、翻弄し、ここぞと瑞鳳凰扇を振るったのだ。
上空から降り注がせたのは、蟲将の目を灼く苛烈な光。
――天の光も度が過ぎれば禍となる。
それは情け容赦のない無数の光条と化し、敵対者のみに牙を剥いた。
喩嘉の晴天炯計が、最後の一撃を阻もうとする蟲将どもの目を完全に眩ませたのだ。
「タイミングをあわせよウ。最後だ、思いっきりやってヨ」
櫓の上で、魔力を凝縮して作り出したイバラの冠――その黒き光輪を操るラウム。
「さて、やるとしますか」
ディガーパックを構えて明は薄く目を閉じる。
空がかき曇る程の気配を漂わせるや、バックパックの先端が瞬く間に変貌を遂げていた。
それは大質量を打ち出すにはうってつけの武器――爆撃槌だ。
(「粉々に爆ぜるくらいでいい。道具は最後まで使い切る」)
青の作業着を纏った体より覇気を漂わせながら、明は眦を決して。
「叩きつけましょう。全力でね」
「ああ! 皆で造った破城槌の威力、見せてやるぞ!」
異形化した手を組み合わせ、幸児が全力で振りかぶり、そして――!
おぉぉぉぉぉぉぉぉっ……!!
気合の声が重なり、渾身の力で放たれた幸児の拳と明の爆撃槌が大槌の後部に炸裂する!
文字通り爆発的な威力で叩き出される巨大槌。
ほぼ同時、茨が巻き付いた黒き光輪が破城槌の隙間から入って内部を飛び交い、大槌を吊るしていた綱が切断された。
常軌を逸した力により押し出された『最後の一撃』――その轟音は復讐者の進撃を鼓舞するように響き渡る!
巨大な槌はこれまで以上の凄まじさで飛び、壁面に突っ込むと、激突と同時に壁を盛大に破壊し――そして遂に限界を迎えた。
「……ああ」
至近距離から手榴弾を発射し、離脱して――はこべはその目で見た。
頑丈な大槌が爆炎の中でひび割れ、剥離し、遂にバラバラに折れ砕けるのを。
役目を終えた巨大破城槌そのものも、圧倒的なパラドクスの余波で瓦解していく。
皆で力を合わせて造り上げ、その務めを完遂した巨大破城鎚に向けて、はこべは飛びながら敬礼を送った。
「ちょいと名残惜しいが、楽しかった。ありがとうよ破城鎚」
飛翔しつつ振り返り、笑いかける幸児。
「さて、登ろうカ」
これ以上、此処に留まっているわけにはいかない。
白衣に塵埃を浴びながら櫓の上に立ち続けたラウムも、その黒き羽をはためかせ、飛んだ。
Rewriterの力を用いれば、要塞の素材を軽くへこませ、それを足がかりにして登攀できたかもしれない。
けれど、残留効果が重なっている以上――やはり飛翔したほうが楽である。
(「天辺に着いたら、要塞の素材を使って足場を作っておこウ」)
息を切らす自分の姿を想像して小さくかぶりを振ると、ラウムは屋上めざして飛んでいく。
「ありがとうございます」
高らかに飛翔しゆく明が、青い帽子を取って、役目を終えた巨大破城鎚に別れを告げた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【クリーニング】がLV2になった!
【建造物分解】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!
●虎牢関最終防衛線
「よもや此処まで登りつめるとはなァ」
猛虎を模した大要塞である虎牢関の屋上――即ち虎の背の上で待ち構えていたのは、孫堅と、守備隊の勇士たちだった。
「進撃もこれまでだ」
「貴様らなど、孫堅様の御手を煩わせるまでもない!」
勇将の下に弱卒なし。流石に此処に布陣した蟲将に狼狽の色はない。
自らを虎と称する孫堅に率いられた呉軍鋭蜂兵の部隊が、復讐者たちの行く手を阻む。
飛翔の残留効果が発揮されている以上、孫堅率いる守備隊さえ打倒できれば、一気に虎牢関を突破することができる。
虎型要塞の上で、決戦の火蓋が切って落とされる!
平良・明
いやぁ逸る、逸ります。本当はこのまま洛陽まで走っていきたい
こういう時こそ落ち着いて、浮ついた足元をさらわれるのは御免です
破城槌はもう使い切ったので、ここで引くわけにはいきません
小型拳銃をしっかり握りしめて端から片付けましょう。
ここは虎の背、一番高い場所、折角なのでもう少し高くしてしましましょう
各々旅路の最中、集まり休まる場所には石が積み上がり、ケルンが出来るそうです
平原随一の関となれば石の一つや二つ積み上げねば。
防衛拠点を作りながら、戦場を観察し安全に立ち回り
大将戦が控えているので無理はしないように
今が一番大事ですが、その最高の今を手に入れるために
最善の遠回りをしていきましょう。
喩・嘉
大将の前にはまずは回りから。
守備隊という以上は練度が上がっているのだろうが、
俺はこの蜂兵とは度々戦っている。もはや弱点も知っているのだ。
羽扇を扇ぎ「青龍水計」で水を呼ぶ
清流よ放たれる炎ごと敵を押し流せ
これが俺が一番得意な技でな
つまりお前らは、どう足掻こうと俺には勝ち目がないということだ
何もここでの殲滅にこだわる必要もない
押し流し、虎の背から落としてしまおう
※アドリブ・連携歓迎
ラウム・マルファス
戦いの前に幸児の腕を治さないとネ
「幸児、腕見せテ。すぐ済むカラ」
復讐者だから大丈夫だろうケド、パラドクスで腕を見て、傷があれば塞いでおくヨ
ついでに止血剤(薬品)と包帯を渡しておこウ
戦いは任せて良いだろウ、少し離れた場所からみんなの戦いを観察
傷を負った人を回復しつつ、怪しい動きをする相手や、死角から迫る敵を警戒しよウ
高所だからネ
下から回り込む敵もいるかもダ
迫る敵は、パラドクスで心臓の細胞を増殖させて破裂させル
数が多いならイバラの冠と、毒薬を塗った魔導ナイフで牽制しよウ
一瞬隙が出来れば誰か対処が出来るだろうからネ
片手間だけど孫堅の動きも情報収集したいナ
目線や立ち姿から、視界の範囲を推察しよウ
守都・幸児
ラウムの手当ては有難く受ける
ありがとうよ、これで敵の大将も思う存分殴れるぞ
せっかく手当てしてもらった腕だ
雑兵相手にまた砕くのも勿体ねえ
俺は腕の回復を待ちがてら、今回は「除」を使って戦うことにするぞ
花吹雪で蜂兵どもの視界を遮り、切り裂いてやる
特に狙うのは連中の翅だ
これで飛び回れねえだろう
俺も何度かこいつらと戦ってる
喩嘉と連携してその【戦闘知識】を活用
敵の動きを【看破】して一体でも多くの蜂兵を虎の背から叩き落とすぞ
そういやあの破城槌、この土地の木や石から作ったんだよな
この土地の花の花吹雪が
破城槌へのはなむけ、ってやつにもなればいい
さあ、あの破城槌みてえに
大将目掛けて【突撃】だっ
※アドリブ・連携歓迎
「いやぁ逸る、逸ります。本当はこのまま洛陽まで走っていきたい」
この難攻不落の大要塞を抜けた先に、何が待ち受けているのだろう。
考えるほどに焦れる心を落ち着けながら、平良・明(時折の旅行者・g03461)は小型拳銃をしっかりと握りしめた。
槍衾を作った呉軍鋭蜂兵は流石に精鋭らしく、切っ先を光らせながら射抜くような殺気を放っている。
「こういう時こそ落ち着いて、浮ついた足元をさらわれるのは御免です」
今がまさに胸突き八丁。山河を行く明は知っている。
物事は往々にして、達成を間近にした時こそが最も危険なのだと。
「ああ、大将の前にその手勢からだ」
長い黒髪と漢服を強風に躍らせながら、喩・嘉(瑞鳳・g01517)は敢えて前衛――明と並んで敵の出方を注視していた。
敵兵の陣形、士気、そして武器……一挙手一投足が計略の成否を左右する要素であり、その全てを利用するのが軍師だ。
「猛将の麾下らしいが、どうやら恐るるに足らん連中らしい」
言葉を用いた挑発もまた、敵の判断を掻き乱す常套手段である。
「俺はお前たちと度々戦っている。残念だが、もはや弱点も熟知しているのだ」
『ギギッ……孫堅様に率いられし我々を甘くみぬことだな!』
対する鋭蜂兵の群れは槍の石突きで足下を叩いて打ち鳴らし、一斉に蜂の翅を擦り合わせ始めた。
(「気を引くことは出来ているな」)
だがこれも喩嘉が巡らす計略の第一段階。
精鋭たる蟲将を屠るには、万全の態勢を整えることが必要だった。
「突破してみせますよ。皆でね」
明は小型拳銃の銃口を敵兵に向けて、睨み据える。
『ギギィッ! その意気、叩き折ってくれる!』
鋭蜂兵たちの攻撃は早かった。
まるで単一の意志に操られているような一糸乱れぬ動きで復讐者の前方に広がり、槍を突きつけて炎熱を解き放つ。
数の有利を利用して一斉に仕掛ける蜂翅業炎法の大炎撃は、敵対する者を瞬く間に消し炭にする――!
「任せて下さい」
紅蓮の炎を迎え撃ったのは、地響きを立てて瞬時に盛り上がった積石の防御拠点(トーチカ)だった。
「ここは虎の背、一番高い場所。折角なのでもう少し高くしてしまいましょう」
凄まじい炎の奔流も、強固に組まれた石の壁に衝突すれば、虚しく火の粉を飛ばしながら散ずるほかない。
『防いだ、だと
……!?』
連続する発砲音。
そして同じ数だけの銃口炎。
驚く暇もあらばこそ、咄嗟に飛び上がって回避しようとした鋭蜂兵が胴体を貫かれてばたりばたりと墜落していく。
「最善の遠回りをしていきましょう」
此処が山場であるならば、一気に突き進むのではなく、回り道をするのが最良。
「今が一番大事ですが、その最高の『今』を手に入れるために」
「幸児、腕見せテ。すぐ済むカラ」
防御拠点に隠れつつ銃撃を続ける明、そして瑞応龍袍から伸びる美しき翅を広げた喩嘉の背後。
眼鏡のレンズを通して、ラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)は硬化した鬼の腕を診ていた。
「復讐者だから大丈夫だろうケド。まずその腕を治さないとネ」
あれほどの負荷が連続的に双腕を襲ったのだ。
「おう、頼んだぜ」
守都・幸児(迷子鬼・g03876)は常と変わらぬ様子を見せていたが、目を細めたラウムは一見してその負傷と疲労の度を推し量り、自らの判断が正しかったのだと頷いた。
常人のものではないとしても、恐らくその筋組織は損傷し、戦い続ければ如何なる支障が生ずるかも分からない。
攻撃を仕掛けようとする鋭蜂兵を横目で見ると、ラウムは視線を動かさぬまま宙に浮かせた魔導ナイフを飛ばしていた。
総数十本、毒を塗り込んだ魔剣だ。
バラバラに飛んだ刃はしかしそれぞれが正確にコントロールされ、防御陣地を越えようとした鋭蜂兵に斬りかかる。
苛立ちながら槍で叩き落とそうとする鋭蜂兵たち。
ラウムがその眼鏡――Rewriterの魔力を解き放つと、幸児の両腕を構成する細胞が再生、賦活。
まるで時が巻き戻るように治してみせた。
「これも一応、持っておくといいヨ」
携帯する薬品の中から止血剤を選び、包帯と合わせて差し出す。
「ありがとうよ、これで敵の大将も思う存分殴れるぞ」
両腕を回し、拳を握っては開き、完全に元通りになっていることを確かめた幸児がにっかりと笑った。
『串刺しにしてやるぞ、侵入者ども!』
不快な蜂の羽音をけたたましく鳴り響かせながら、鋭蜂兵は休む間もなく波状攻撃を仕掛けてくる。
「鬱陶しいですね全く」
「ああ、だがこの程度で俺たちは阻めんさ」
石を積み上げた防御陣地を越えさせまいと明が銃撃を繰り返し、飛翔した喩嘉が空中で演舞するように、突き出される槍をひらりひらりと避け続ける。
(「やはり、鋭蜂兵の戦い方は変わらんな」)
猛将に率いられた兵だけありその槍術は油断ならぬものがあるが、数を頼りに群がっての牽制――そして打ち続く炎熱の放出と来れば、もはや飽きるほど目にしてきた陳到な戦術だ。
敵の出方を熟知しているが故の喩嘉の身のこなしに、精鋭の鋭蜂兵も焦慮を覚え始めていた。
「待たせたなっ!」
完治した幸児が防御陣地の陰――銃撃し続ける明の横に並んだのはその時だ。
「治ったんですね。幸児さん」
「ああ、凄ぇ力だよなぁ」
天高く飛翔したラウムを見上げながら幸児が言って、ぐるぐると腕を回した。
調子は極めて良好だ。寧ろ今まで以上に力を発揮できそうな気さえする。
だが鋭蜂兵を相手に全力でぶつかりあう気は、幸児にはなかった。
「お陰で助かったぞ」
上空で攻撃を引き受け続ける喩嘉を見上げて言い、また、明にも礼を告げる。
眼前にそびえる積石の防御拠点は、蟲将の放った渾身の炎撃さえ防いだものだ。
「各々旅路の最中――集まり休まる場所には石が積み上がり、ケルンが出来るそうです」
それは旅する者が道中で積み上げる道標。
「平原随一の関となれば石の一つや二つ積み上げねば」
頂上に至ったことを示す積石塚は、復讐者たちの快進撃の象徴であり――或いは、全力でぶつかり瓦解した破城槌を弔う『墓標』でもあろうか。
「せっかく手当てしてもらった腕だ。雑兵相手にまた砕くのも勿体ねえ」
「ええ、大将戦が控えているので無理はしないように、ですね」
『ギギギ、抜かしたな!』
『今の言葉、後悔させてやる!』
二人の言葉に精兵たる矜持を毀損されたか、鋭蜂兵どもが不快な羽音をたてて攻撃に出る。
それと同時。
『クカカカッ! かかったな……!』
乱戦に紛れて後方より鋭蜂兵の小隊が挟撃を仕掛けてきた。
「思ったとおりだネ。精兵というから、やると思ったヨ」
だが旋回するように周囲を見回っていたラウムが、黒き翼をはためかせながら、奇襲部隊を迎え撃つ!
放たれたイバラの冠が襲い来る蟲の兵どもを牽制。
『この程度が何だ! 貴様らはもはや死地にあり!!』
鋭蜂兵は散開しながら上昇すると、羽を擦り合わせた。
陽炎がたつほどに周囲の温度を上昇させ、炎の輪が復讐者たちの頭上に展開する!
「やはりそう来たか」
敵のその有様を見て――喩嘉が浮かべたのは憫笑だった。
着地して瑞鳳凰扇を掲げるや、突如として出現した水の奔流に包まれて放たれた炎がかき消される。
朦々たる水蒸気が戦場を包み込んだ。
「火計は水を以って防ぐ。これぞ正攻法というものだ」
怒涛により広範囲を呑み込む水計は集団戦において殊のほか効果を発揮する。
そこに復讐者各人の連携が加われば当然、その恐ろしさは言語に絶するものとなろう。
(「そういやあの破城槌、この土地の木や石から作ったんだよな」)
霧が晴れたとき、治癒した腕を真正面に伸ばして幸児は立っていた。
(「この土地の花の花吹雪が……破城槌へのはなむけ、ってやつにもなればいい」)
握った拳をゆっくりと開く。
そこから溢れ出したのは千々に破れた紙符であった。
突風をうけて乱れ飛んだ紙片は空中で瞬く間に美しき花弁へと変じ、見る間に絶景が描き出される。
――咲いて、裂いて、咲き誇れ。
本来は花に群がる蜂が、逆にその花弁を以って切り裂かれる。
それは息を呑むほどに美しく、世の常理を覆すパラドクスであった。
『翅が……!』
『グァッ……!』
翅が切り裂かれ、鋭蜂兵が地面に叩き落される。
蜂の蟲将にとってそれは手足をもがれるのに等しい痛苦であった。
「逃さないヨ」
何とか逃れようと羽根を広げた兵どもを、たえず警戒していたラウムは見逃さない。
黒き翼で空を打ち飛翔しながら眼鏡を光らせ――そのレンズに映った鋭蜂兵が苦悶の声をあげてバタバタと倒れていく。
翅を切り取られてしまえば、もはや蜂翅業炎法を繰ることもできず。
そして飛べなければ、轟々たる水の流れから、どうして逃れられようか。
「これが俺が一番得意な技でな。並大抵の炎で対処できるものではない」
澎湃たる水の流れは、喩嘉が高らかに掲げた羽扇を合図に、怒涛の如き激流へと変貌を遂げた。
「つまりお前らは――どう足掻こうと勝ち目がなかったということだ」
逃げ場を失った兵にとって、襲い来る鉄砲水ほど恐るべきものはない。
計略とは、機を逃さずに実行すべきもの。
「退場してもらうとしよう」
復讐者たちの前後を横切るように生じた激流は、地に落ちた鋭蜂兵どもを容赦なく呑み込んだ。
精兵たちは天災に見舞われた羽虫の如く、五体を砕かれながら押し流されていく。
「動じないカ。まあ、損耗に慌てるような敵ではないよネ」
飛翔しながら、ラウムが腕組みする孫堅を見下ろしていた。
その威圧感は凄まじく、迸る覇気は配下を失ってなお燃え上がるようだ。
一見してまるで隙がない。
「さて、残るは大将首か」
悠揚迫らざる態度を崩すことなく、瑞鳳凰扇を手に喩嘉は敵将を見据える。
役目を果たした積石の周りを、無数の花弁が彩っていた。
「行きましょう。此処を抜けていくために」
明が帽子を被り直して小型拳銃を握り、幸児が拳を構える。
「さあ、あの破城槌みてえに大将目掛けて突撃だっ!」
餞は送られて。
決戦の時が迫る。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【セルフクラフト】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
【反撃アップ】がLV3になった!
【ドレイン】LV1が発生!
●最後の難関
「兵どもがやられたか。うむ、よく戦った」
散っていった呉軍鋭蜂兵の戦い振りに言葉を贈り、孫堅が腕組みを解く。
勇武の将の名を冠するだけあり、赤き蟲将はそこらの兵とは全く異なる威風を漂わせていた。
紫電迸る剣を構えながら、凄まじい闘気を迸らせて蟲将は吠える。
「此処を越えたくば、この虎を倒してゆけい!」
虎牢関最後の難関が復讐者たちの前に立ち塞がる!
ラウム・マルファス
「うわぁ怖イ。孫堅を名乗ることはあるネ」
正直逃げたいケド、頑張って耐えル
頼もしい味方がいるんだからネ
早業で手持ちのドローンに避雷針を付けて飛ばすヨ
さっきの戦闘を見てたなら、ボクの視線を警戒するハズ
イバラの冠と織り混ぜて牽制、足止めするヨ
激しい戦いだ、足場にヒビも入るでショ
魔力羽と重ねていたナノマシンを、気付かれないよう足場の下へ潜り込ませル
「拘束すル。喩嘉、タイミングは任せるヨ」
合図と共に足場の隙間からナノマシンを伸ばし四肢を拘束しよウ
攻撃は任せたヨ
倒せたらRewriterの物質変換機能で空気を変換して、虎の背に旗を立てよウ
黒地に白で讐の一文字
勝鬨なんてガラじゃないケド、勝利宣言は大事だからネ
喩・嘉
『洛陽・長安』方面に向かうため
要塞虎牢関、超えさせてもらうぞ
この「孫堅」との戦いも二度目になるな
偽なのだが、相変わらずの良い将ぶり
虎王の号令で召喚された幻影は、俺の軍が相手をしよう
「幻鶴翼陣」で同じく兵を召喚し、指揮して孫堅から引き離す
【未来予測】と戦闘知識で敵の行動を予見
敵が猛虎猛襲を繰り出そうとする瞬間にあわせてラウムへ合図を送る
あの大技が止められれば、後の始末は皆がつけてくれる
幸児、紅花、明、連撃だ。頼んだぞ
守都・幸児
俺も孫堅と戦うのは二度目だ
こいつはけっこう気に入ってる
強いことも知ってるぞ
だから、全力でいかねえとな
喩嘉とラウムが作ってくれた隙を最大限に活かし
紅花と明と連携して連撃をぶち込むぞ
破城槌から思いついた戦法を使ってみるか
治してもらった腕も存分に使わせてもらうぞ
俺の得物は新宿島から借りてきた鉄骨だ
こいつを破城槌に見立てて、抱える
「悪鬼粉砕撃」の力を乗せて
思いっきり突いてやる
勢いよく打ち出して発生させた【衝撃波】で孫堅の衝撃波に対抗だ
孫堅は虎と名乗った
ならあいつはただの敵将じゃねえ
俺たちが壊すべき最後の城壁だ
もう一度腕が砕けても構わねえ覚悟の【捨て身の一撃】
さあ、皆で虎の背を乗り越えてやろうじゃねえか
平良・明
今、なんと言いましたか、私を倒していけ?
私は天邪鬼です、ので、そういう事を言われると困ります
まるで天運既に無しと悟っているような言い回しではありませんか
蟲であるとか、それ以前に、その光明に辿り着けない自分に腹が立ちます
洛陽は後回しだ、その光は本物かよく観て行きましょう
旅路に寄り道はつきもの、なので殴ります。
一度乗り越えた壁はその背を見る事ができます
面を越えれば裏に立つ
うしろの正面だぁれ、は少し違いますが
本物をただ再生しているだけなら張りぼてとすぐに判る
江東の虎を名乗り、その実張り子の虎ならば無明の拳でも粉砕できるでしょう。
紅花さんは本物です、あれは冗談で言った訳ではありません。
杏・紅花
わあ〜孫堅サンだっ!噂通り、強そうだよねえ。
強いひと倒したら、あたしの方が強いってことでしょお?んふふ。頑張ろ〜
幸児サンと明サンと合わせるよっ
オジサン虎なの?
じゃあ、速さ対決しよっ
【神速反応】で雷撃を躱しながら肉薄して切り裂くよ
衝撃波でえぐられていく地面も利用して、身を隠しながら接近
横合いから鉤爪で引っ掻いてやるっ
切り込む瞬間に袖から「飛火」っていう炸裂弾も合わせてプレゼント
フラッシュと爆発音で、罵声なんて聞こえなーい
そーいえば何処かの明サンに、「未だ小虎か小狐」って言われたっけな〜
いつかあたしも大きい虎にな ってやるっ
だから今は、目の前にいる虎の背中を飛び越しちゃうっ
玉梓・はこべ
虎の背に在り阻む最後の関門が江東の虎というのは何ともよくできた話です
尤も、本物の虎でなしに蟷螂さんである辺りがクロノヴェーダらしいと言えばらしい、のでしょうか
皆さんそれぞれに思いはあるのでしょう
それはもちろん孫堅さん、貴方にも
正義は我にありというつもりはありません
けれど、奪われたものを奪い返すために
奪われた怒りを果たすために
私たちが、私たちの復讐を成し遂げるために
握りしめるのは先刻砕けて散った破城槌の焼け焦げた一欠片
宿した思いは、焔の熱はこの手の裡に
私たちもまた、正史の裔にいるのですから
耳に障る音も振り切れるほど、私自身の翅で羽ばたいて
虎牢関を越えて、その先へ
この想い、果たさせてもらいます!
●頂上決戦
虎牢関を巡る激戦は熾烈を極め、要塞の上で敵将と対峙する復讐者たちも、今まさに決戦に挑もうとしていた。
猛虎の背の上に立つ孫堅は、眼前の敵を尽く討ち果たさんと、烈々たる気迫を漲らせている。
(「虎の背に在り阻む……最後の関門が江東の虎というのは何ともよくできた話です」)
紅き蟲将を目の当たりにしながら、玉梓・はこべ(いくさばのたより・g01107)は思う。
(「尤も、本物の虎でなしに蟷螂さんである辺りがクロノヴェーダらしいと言えばらしい……のでしょうか」)
鋭角的なその姿は、同名の英傑とは全く異なる存在であることを表している。
けれど堂々と雷名を騙る以上、アヴァタール級とて、油断ならぬ敵であるのには間違いない。
「全力でいかねえとな」
鬼人の手に鉄骨を握りしめた守都・幸児(迷子鬼・g03876)は、蟲将・孫堅の武勇のほどを知っていた。
個体差はあるものの、勇猛果敢を体現するその在り方は、敵ながら好ましくさえ思う。
「要塞虎牢関、超えさせてもらうぞ」
相手にとって不足なしと、喩・嘉(瑞鳳・g01517)は瑞鳳凰扇を握る手に力を込めた。
『フッ、鋭蜂兵どもを討った知略と武勇……しかと見させて貰った。だが我が軍勢は未だ滅びてはおらぬ』
孫堅が将剣を天にかざして咆哮する。
呼応するように空間が歪み、凄まじい喊声が虎型要塞の背に響き渡った。
歩兵、槍兵、そして弓兵――孫呉に忠誠を誓う幻の精鋭部隊が瞬く間に居並んで、各々の武器を構えたのだ。
「面白い、では俺の軍が相手をしよう」
対する喩嘉は羽扇を振るい、敵軍と対峙させるように虚空より兵を召喚していた。
幻鶴翼陣――それは巨大破城槌の大進撃をも支えた、精強なる歩兵部隊である。
『孫呉を統べる江東の虎が此処に命ずる!』
呉の幻影部隊が雄々しき声を張り上げて武器を掲げ、孫堅に呼応する。
「武勇だけでこの陣を破れるものではない」
応、応――! 負けじと武器を振り上げ、鬨の声をあげる喩嘉の軍勢。
『我が前に立つ敵を鏖殺せよ!』
「歩兵部隊――突撃」
将剣を突きつける孫堅。
羽扇を振りあげる喩嘉。
双方の幻影兵団が、虎の背を戦場としてぶつかり合う!
両軍打ち合って剣を鳴らし槍を鳴らし、矢は風切りの音を連ねて空を裂き、此処に凄まじい合戦が幕を開けた。
「敢えて突破を狙うか。流石は虎を名乗るだけのことはある」
喩嘉の幻影歩兵はその名の通りの鶴翼陣、対する呉軍は鋒矢の陣形に酷似していた。
矢印の形を取って正面突破を図ろうとする攻撃重視の陣立ては、虎を名乗る孫堅の性質を表している。
(「侮られたものだな」)
堅陣に風穴を開けようと大突撃をかけた呉軍を前に、喩嘉は飽くまで冷静だった。
「今だ、覆い包め。然る後に殲滅せよ」
羽扇を振るう喩嘉の下知に掛け声で応えると、幻影の軍勢は鶴が翼を閉じるように敵軍を両翼包囲する。
これぞ鶴翼陣の本領。
防御に秀でた陣形は呉軍の攻撃を喰い止め、包囲攻撃を加えて一挙に押し潰す!
「自身と兵の武勇に慢じたな、孫堅。否、貴様は偽りの将なのだが」
そして喩嘉の眼前――幻影歩兵が敵軍を包み込んでいる間に、復讐者たちが蟲将めがけて攻めかかった。
●激闘
『なるほど、敵ながら天晴れな用兵よ。しかし、これで終わると思うな』
孫堅が将剣を振るうと、目を疑うような光景が戦場に現出した。
波のような鬨の声をあげて、またも呉軍の歩兵部隊が虚空より駆け現れて、突撃を始めたのである。
復讐者たちを押し潰そうと、幻影の兵士たちが攻めかかる。
だが、次に生じたのは、軍勢が蹴散らされていく信じがたい光景であった。
「分かりきった攻撃であれば対処できるものです。頭数だけでは勝てませんよ」
敵軍の中に突っ込んでいったのは、青の作業着に同色の帽子――となれば、それが誰かは瞭然。
「――シッ」
さながら壁の如くに敵兵を押し留め、屠っていく復讐者は、平良・明(時折の旅行者・g03461)をおいて他にない。
その意気は大軍勢を相手にしてなお揺るぎない金城鉄壁。
幻影の兵が拳に打たれ、悪い冗談のように吹き飛ばされては消滅していく。
『ムゥゥ……なんという武勇……!』
流石の孫堅もこれには瞠目せざるを得ない。
刻まれる手傷など意にも介さず敵兵を薙ぎ倒して突っ込んだ明の剛拳を、孫堅は剣を以って受け止めた。
「先程、なんと言いましたか。私を倒していけ?」
振るわれる将剣の狙いは尽く人体急所。明がその精妙無比な剣をかわすこと数度。
「私は天邪鬼です、ので、そういう事を言われると困ります」
双拳を繰り出しながら口にした明の言葉は、蟲将の虚飾を暴き立てるように鋭く尖る。
「まるで天運既に無しと悟っているような言い回しではありませんか」
――腹が立ちますね。蟲であるとか、それ以前に。
明がギリと拳を握りしめる。
――その光明に辿り着けない自分に。
『余程腕に自信があると見える。この猛虎を容易く越えるつもりなのだからな!』
「洛陽は後回しだ、その光は本物かよく観て行きましょう」
将剣を相手に拳で撃ち合い、明は遂にその胴部に猛烈な連打を叩き込む。
孫堅の鎧めいた胴の一部がひび割れた。
肩を揺らして哄笑した蟲将は、明の喉首を引き裂かん猪突し、剣を閃かせる。
が、黒きイバラの冠が死角より襲いかかって牽制。
翻った剣はそれを瞬時に斬り捨てて、
『そのような小細工でこの俺を仕留められると思うな!』
「うわぁ怖イ。孫堅を名乗ることはあるネ」
まるで闘争の権化のような紅き蟲将の戦い振りを前に、ラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)は震えるような素振りを見せた。正直逃げたいケド――武闘派ではない研究者としては、武勇を誇る将軍の相手は余りしたくないのが本当のところだ。
それでもと、ラウムは戦場に立ち続ける。
(「――頑張って耐えヨウ。頼もしい味方がいるんだからネ」)
幻影を操ることができたとしても、蟲将はもはや単騎。
復讐者との最大の違いは、力を合わせて戦う仲間がいるかどうか。
Rewriter――その眼鏡の奥の瞳に映るのは、孫堅と激しく打ち合う復讐者たちの奮闘だ。
吹き抜ける風に白衣をはためかせながら、ラウムは密かにナノマシンやドローンを放っていた。
「おぉぉぉぉぉぉッ……!」
敵の幻影兵が消滅したのと同時に突っ込んだ幸児が、鉄骨を両手で構え、孫堅に突きかかる。
孫堅が避けざま将剣を閃かせ、それが硬く変化した鬼の腕に弾かれて火花を散らした。
幸児は鉄骨を握り、剣を相手に激しく打ち合う。
『そのような得物で我が剣を防ぐとはな!』
(「まだだ……まだその時じゃねぇっ
……!」)
互いに最大の一手を繰り出す機を窺いながら、壮絶な打撃と斬撃の応酬が繰り広げられる。
もしラウムの手当てがなかったならば、此処までの格闘戦を演じることは難しかったかも知れない。
『その武勇、見上げたものだ。俺が手ずから息の根を止めてやる!』
孫堅は翅を広げ、幸児に渾身の一撃を見舞おうと地を蹴る。
『なに
……!?』
だがその時、紅き蟲将の背後から奇襲する形で、不意に人影が攻めかかった!
「わあ〜孫堅サンだっ! 噂通り、強そうだよねえ」
白磁のような肌も露わに、あでやかな白と赤の衣を纏った杏・紅花(金蚕蠱・g00365)が硝子の如き瞳を光らせる。
小さき蚕の翅をはたはたと。残留効果たる飛翔の力で、屋上の床すれすれを飛ぶ。
はこべの手榴弾が爆発を起こして。
戦いの中で吹き飛んだ瓦礫や舞い上がった塵埃にも身を隠して接近してみせた彼女は、敵の横合いから奇襲を仕掛けたのだ。
「強いひと倒したら、あたしの方が強いってことでしょお? んふふ。頑張ろ〜」
弱肉強食は世の理。
嫣然たる笑みは天真爛漫に見えて、その実、懐に隠し持つ暗器のような油断ならない鋭さをも併せ持っている。
旗袍のような衣服の裾を振るうと、放たれた炸裂弾――飛火と名付けられた丸薬型の擲弾が爆発した。
たまらず飛び退いて将剣を突きつける孫堅。
『この虎を倒すだと? 抜かしたな、小娘!』
「オジサン虎なの? じゃあ、速さ対決しよっ」
軽やかに着地した紅花の脚が硬質な音をたて、ことりと首を傾げた表情が一転、無邪気な子供のように笑みを含んだ。
『俺と競うだと。笑止!』
孫堅が背中の翅を鳴らすと、にわかに雷雲が呼び寄せられ、上空で轟々と唸りを上げる。
そのような中にあっても、紅花は爛漫たる態度を崩さず、地を蹴ったその体がにわかに掻き消えた。
否――両脚に気を集中させた少女は余りの疾さ故に残像を引いて、孫堅の周りを高速で駆け跳んでいるのだ。
蟲将を護るように落ちてきた無数の雷を、紅花は俊敏な足捌きで避け続ける。
美しき舞いを雷撃が彩る超常の光景が展開され、凶悪に尖った鉤爪による斬撃が孫堅の体に裂傷を刻む!
またも飛火を投げつけた紅花の前で、爆発が花を咲かせた。
「フラッシュと爆発音で、罵声なんて聞こえなーい」
紅き蟲将の翅の音は神経を侵食し意識を撹乱するが、音と光で封殺してしまえば何のことはない。
「そーいえば何処かの明サンに、『未だ小虎か小狐』って言われたっけな〜」
孫堅を中心に挟撃する形をとった明も、構えを取りながら言葉を返していた。
「紅花さんは本物です、あれは冗談で言った訳ではありません」
「む~」
頬を膨らませる紅花。
「いつかあたしも大きい虎になってやるっ」
意志の力が後押しするように少女の脚は更なる疾さを加え、変幻自在の闘武で孫堅を翻弄する。
「だから今は、目の前にいる虎の背中を飛び越しちゃうっ」
●決着
「あの動きを止められれば。一瞬だけでも……!」
飛翔しながら機を窺っていたはこべが、復讐者の攻撃に吹き飛ばされた孫堅めがけて信号拳銃の引き金を引いた。
射出された手榴弾が敵将の至近距離で爆発を起こす。
朦々たる爆煙に取り巻かれながらも、それを煙幕にして孫堅は飛び立とうとしていた。
奇襲攻撃に打って出ようとした紅き蟲将は、その実、迂闊にも復讐者の連携に誘い込まれたのである。
「喩嘉、タイミングは任せるヨ」
予期していたラウムと喩嘉はこの時を逃さない。
(「あの大技を阻止できれば、後の始末は皆がつけてくれる」)
喩嘉が此処ぞと声を放った。
「幸児、紅花、明、連撃だ。頼んだぞ」
「応!」
「まかせてっ!」
「準備はできていますよ」
各人各様に返すと、三人が連携して孫堅に攻めかかる!
鉄骨と拳で挟撃する幸児と明。
跳び回りながら爪撃を仕掛ける紅花。
『小癪な者どもめ! この虎に群がるか!』
懐に入り込んだ明が拳を握り込む。
『な、に……』
「虎? 所詮は『張子の虎』ですね。これなら無明の拳でも粉砕できるでしょう」
未だ迷悟の中、然し闇を切り裂くように明は拳を振るう。
「拘束すル」
たたらを踏んだ蟲将の姿に好機を見出したラウムが、遂に用意していた搦め手に打って出た。
戦いの中で生じた亀裂――屋上に刻まれたその隙間から、ナノマシンが連鎖するよう繋がり、その『蔓』を伸ばしたのだ。
「捕まえタ。攻撃は任せたヨ」
孫堅の四肢が瞬く間に拘束される。
しかし紅き蟲将はそのままで翅を鳴らし、再び雷雲を呼び寄せた。
暗き雲が光と轟音を放ち、蛇の如き雷槌が落ちてくる。
猛烈な雷撃の中を風切りの音とともに飛来したのは、ラウムが飛ばした避雷針つきのドローンだった。
降り注ぐ電撃が枝分かれするように各機に直撃、容易く墜落させていく。
(「流石に保たないカ
……!」)
避けきれない雷撃がラウムを襲うが、防御力を底上げする残留効果もあり、彼は勝利の確信に笑みを浮かべていた。
「孫堅は虎と名乗った。ならあいつはただの敵将じゃねえ」
新宿島から借りてきたという鉄骨を、巨槍でも構えるように幸児は抱えて。
「俺たちが壊すべき最後の城壁だ!」
砕け散ることさえ厭わず力を尽くした破城槌のように。
身動きを封じられた孫堅めがけて、猛突撃を仕掛ける!
蟲将より発せられた猛烈な衝撃波の突破を可能としたのは、全力を籠めた悪鬼粉砕撃の威力ゆえ。
渾身の力で突き出された鉄骨――新宿島の工事現場から借り受けたと云うそれは、ただの器物ではなかった。
「おぉぉぉッ!」
孫堅の胴に突き刺さり、突撃そのものの威力も上乗せして蟲将を打ち貫く!
『ぐ、ぬぅぅっ……!』
大打撃を負って尚くずおれなかったのは『孫堅』を名乗る猛将の闘志が未だ潰えぬ証拠。
「ああ、やっぱりお前は強敵だ」
幸児が言った次の瞬間、暗雲が轟々と上空に立ち込めて、またも稲光が閃いた。
はこべが敢然、その中を飛んでいく。
「皆さんそれぞれに思いはあるのでしょう。それはもちろん孫堅さん、貴方にも」
孫堅の翅音が反響し、はこべの意識は雷の中、耳鳴りのようなシンとした静寂に包まれていた。
まるで爆発に耳をやられたときのよう。
――お前の道行きに正義はあるのか。
蔑み、煽るような幻聴が不意に響き渡り、心をざわつかせる。
はこべは心中でかぶりを振った。
(「正義は我にありというつもりはありません。けれど、奪われたものを奪い返すために。奪われた怒りを果たすために。私たちが、私たちの復讐を成し遂げるために」)
雷光の中を飛翔するはこべは、まるで雷雲の中を行く戦闘機のようだった。
彼女が握りしめていたのは焼け焦げた一欠片。全力で戦い砕け散った破城槌の破片だ。
宿した思いも、焔の熱も、まだ手の中に――心の内にある。
蜜蜂の翅を羽ばたかせて、はこべは決死の覚悟で孫堅に突進した。
舞い飛ぶ慰問袋の中身が激戦の空に舞い上がり、あるものは雷に焼かれ、あるものはひらひらと戦場に舞い落ちていく。
犠牲になった者の想い、散華した者の想い、志を継ぐ者の想い――あらん限りを載せて、はこべは飛ぶ。
「この想い、果たさせてもらいます!」
万感を抱き、耳に障る音を振り切るように、蜜蜂の翅が羽ばたいた。
すれ違いざまの試製三八式打突手榴弾の一撃が、紅き蟲将の胴を打ち、爆発に呑み込む。
立て続けの攻撃を受けた孫堅の胴がパラドクスの力を籠めた決死の突撃を受け、遂に大穴を穿たれた――!
爆煙の中からあらわれたのは、片膝をつき、剣を足下に刺しながら息絶えた、孫堅の亡骸だった。
白衣を風になびかせながらラウムがそれを一瞥し、そしてRewriterを光らせる。
「勝鬨なんてガラじゃないケド、勝利宣言は大事だからネ」
彼が抉れた屋上に突き立て、固定させたのは、勝利の御旗。
黒字に白で『讐』の一文字が書かれた旗が、虎牢関の上に翩翻とひるがえる。
それこそは、この戦場において、復讐者たちが勝利を遂げた証であった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【未来予測】がLV2になった!
【隔離眼】がLV2になった!
【クリーニング】がLV3になった!
【神速反応】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【先行率アップ】がLV4になった!