地獄変第二幕『呪われた連歌』

【!期限延長により状況が困難になっています!】
 ディアボロスの活躍により、京の都を騒がせていた『数え歌殺人事件』は無事に解決する事が出来ました。
 しかし地獄変の事件はまだ終わりではありません。
 京の都では『この歌を送られた相手は、3日以内に返歌を作って、別人に送らなければ呪われて死ぬ』という、『呪われた連歌』事件が耳目を集め始めています。
 3日以内に返歌を送らなかった場合、或いは、既に、この呪いの歌を送った事がある相手に歌を送ってしまうと、体が腐り落ちて死んでしまうというのです。

 歌会などを通じて、呪いの歌を受け取ってしまった被害者に接触し、ディアボロス宛に返歌を送ってもらっいましょう。
 ディアボロスが歌の返歌を『事件を起こしているクロノヴェーダ』に送り付けて撃破する事が出来れば、『呪われた連歌』の呪いを打ち破ることが出来るでしょう。

恋詠(作者 雨屋鳥
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#平安鬼妖地獄変  #地獄変第二幕『呪われた連歌』  #地獄変 


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 乾いた唇を割る。わずかに鉄の味を飲み込む。
「では、始めようではありませんか」
 歌人の一人がそう告げた。屋敷の一間に集められた面々は互いに顔を合わせ、そして、帳の向こうで佇む人影を一様に眺めた。
 頷く所作が返る。そこにいるのは、この歌会の主催者であるはずだ。その彼女は声の一つ発さない。
 男もいる会だ、高貴な女性であれば姿をこそ見せないことはあれど、会を開いておいて声すら無いというのはどこか不自然にも映る。
 以前はそうではなかった。意欲に満ちたこの場の歌人たちの中に、人目を忍んで逢瀬を交わした者もいるだろう。恋の歌を得意としていた彼女は、いつしか帳の向こうで歌の文を交わすだけの相手となっていた。
 それに零すのは、落胆ではなく、安堵でもあった。
 以前と変わった彼女が何者か――否、何なのか。彼らは理解しかねていた。巷に聞く呪いの歌。それに関わっているのかとすら考え、そして、己の懐が途端に重く感じ始める。
「ええ、始めましょう」
 震えそうな声ながらも毅然と振る舞い、頷いた。
 この会で、誰かにこの文を渡さねば、己が腐り落ちる。その確信があった。誰から届いたかも知れぬこの文が、その呪いの歌だというのはすぐに知れた。流れる文字を追う眼がそう訴えかけてくる感覚は、まさしく全身に冷えた水を流し込むような悪寒であった。
 この中の誰を呪うか。その誰かがすでに呪いを送った後の者であるか、どう知れる。それを問うわけにはいかない。それを語れば、誰かを呪ったと白状するもので、そして己もまた呪われていると知らしめる事となる。
 どうする。
 考えるうちに、探るような気配が蔓延る歌会は終わりを告げた。
 詰めていた息を吐き出す。がくがくと震える足を引きずるようにして立ち上がる。
 そうだ、誰も呪うことなんて出来ない。
 彼は門を潜りながら、心中で呟く。心が軽くなったような気がした。
 後日、彼の身体は腐り落ち、その懐から文は消え失せていた。


「すでに呪いを経た誰かに送ったか、それとも、挙句の果てに呪いを発して消えたか」
 手紙の行方は知らないけれど。
 春日宮・緋金(案内人・g03377)は不確定の未来を指し示しながら、告げる。
「このままだとクロノヴェーダの策略のまま、恐怖を掻き立てるためのお膳立てとして三人が死ぬ」
 呪われた歌を受け取った被害者は、三日以内に呪いの歌を受け取っていない別人に返歌を送らなければいけない。もし送らずにいる、もしくは、すでにその呪い歌を送られた誰かへと返歌を送れば、被害者は身体が腐り落ちて死ぬ。
 それがこの呪いだ。
「クロノヴェーダの正体は知れてる」
 歌会を主催する帳の向こうの君。それこそがクロノヴェーダ。この連鎖の始端を担うもの。
 だが、このまま呪いを放置しては歌人たちは助かりはしない。
「呪いの被害者を出さずに事件を解決するには、ディアボロスがその呪いを受け取り、返歌をクロノヴェーダへと叩き返すことさ」
 クロノヴェーダは、返歌を受けたことはない。故に返歌を送り、クロノヴェーダを倒す。
 そうすれば呪いの連鎖を打ち破る事ができるだろうと、緋金は説明した。

 クロノヴェーダは正体を隠して歌会を開いている。
 不審がられているのは声も出さずにいることだけで、彼女が妖怪や鬼といった類であるとは思われておらず、また見破られる事を良しともしていない。
 故にディアボロス達も、際立って不審な行動を取らなければ、ディアボロスであるということが露見してしまうことは無いと思われる。
「だから、この歌会にどうにか参加して、呪いを受けた歌人に接触してもらう」
 そして、したためているその呪いの文をディアボロスへと送るようにさせるのだ。そうすれば、ディアボロスはクロノヴェーダへと呪いを返すことができる土台が整う。
「後は返歌を携えて、歌会の前に帳を破るだけさ」
 まどろっこしいかも知れない。クロノヴェーダの所在は分かっているのだから、直接強襲することもできるにはできるが、そうすれば呪いの被害者は助けられなくなるだろう。

「人を呪わば穴二つ、なんて言うけどね」
 縁もなくかけられる側からすれば、一人で穴入っててほしいもんだね。
 緋金は口を歪めて話を締めくくった。


『冬海に 沈む火種の 静けさや 白き波間に 声ぞ消えゆく』
 冬の海に沈む夕日を歌う句。
 歌人たちが送られた歌に向かい、揺れる高灯台の火に照らされながら、筆に墨をつけていた。
 目を数度瞬かせる。その仕草には、ただならぬ緊張が見えている。それもそうだろう。その手元に送られた上の句は、呪いの連歌なのだから。
 これをまた誰かへと送らねば、己が腐り落ちて死ぬ。
 そして、誰かが死ぬと知りつつも、これまでの養い続けた教えが歌に向き合わずにいることを許しはしなかった。誰に送るとも決めかねるその歌を。
 読まずにはいられない。

一、
 愛おしくも、しかし、どこか恐ろしい歌だった。
 果たしてそれを愛と呼べるだろうか。我が身さえ燃やし朽ちさせるような。悲鳴すら波の音にかき消されて熱が冷たい波の間に砕けてしまうような。それでいて、なおも海の底で光を放つ情景を思わせるその歌を。
 忘れられるものか。
 これは恋を歌う呪いだと、固唾を呑み筆を走らせた。
『忘れじの ちぎり果てれど 空風に 絶えることなく あぶくは立ちて』

二、
 儚くも、しかし、どこか恐ろしい歌だった。
 最後に残った一葉が木枯らしに吹かれる様を眺めるような。
 ああ、それはまるで、その一葉が風に吹かれる瞬間を待ち望んでいるような。
 言葉を偽り、かんばせを偽り、恋い慕う乞いが崩れる様を移す鏡こそを愛するような。
 これは恋を歌う呪いだと、指を震わせ筆を走らせた。
『誰ぞ待つ 吹く凩に 恋焦がれ 暮れゆく空に 黛の尾』

三、
 美しくも、しかし、どこか恐ろしい歌だった。
 秋の情景の中に沈む陽。その直後に訪れるだろう夜闇を思わずにはいられず。それでも、その火の熱から目を逸らせず身動きの取れないような妖魅に彩る白泡の山並み。
 それは誘いか。引いては寄せる波が手招くように。行かずには居られない。
 これは恋を歌う呪いだと、足指を強張らせ筆を走らせた。
『息白し 氷てる口間に 波の音 悴む指を 丸めて歩む』

 したため、そして、懐に入れた呪いを座して抱える。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【プラチナチケット】
4
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【セルフクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が1mの「コンクリートの立方体」を最大「効果LV×1個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。

効果2

【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV6 / 【ガードアップ】LV2

●マスターより

雨屋鳥
 当シナリオを担当させていただく雨屋鳥です。
 恋の歌のシナリオです。

①呪われた歌の返歌(👑7)
 歌を作って、クロノヴェーダの屋敷に潜入し、歌を送り返す選択肢です。
 三人の歌人が呪いを受けています。
 クロノヴェーダへ返す歌を作って、それを送り返します。一、二、三とありますので指定いただけると嬉しいです。
 また、短歌を読み解く能力には自信が無いので、解釈なども添えていただけるととても助かります。
 あと私も「そういうことかあ」となって楽しいので、何卒よろしくおねがいします。
 また、形式なども特にこだわりません。思いがあればOKじゃないかなと思います。

②歌会への参加(👑5)
 選択肢①で必要な歌を歌会に参加している歌人から受ける為に歌会へ参加する選択肢です。
 歌会の後や最中に、揺さぶったり、根気よく話したりしてください。

③アヴァタール級との決戦『恋ひ侘ぶ媿『鈴鹿御前』』(👑11)
 帳の向こうのクロノヴェーダ、鈴鹿御前との戦闘です。
 パラドクスは元パラドクスと同等の動きをするように描写します。

 それでは、皆様の心躍るご活躍お待ちしております。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


菅原・小梅
◆行動
此度の歌会では3人も呪われているとは随分と
悪しき縁は断ち切らないとですね

首尾よく潜入する為に相応しき身なりを整えて
表は濃紅、裏は濃黄、朽葉の襲の色目とした水干装束
私自身が調合した香をしかと焚き詰めて
成人前の貴族の子息として振舞えば
【伝承知識】とも齟齬はないでしょう
何より性別以外は偽ってませんしね

その上で歌を一つ
「鈴鹿川 八十瀬の波に 鯉はねて 誰か声にぞ 袖は濡れつつ」

口数や視線の配り方等の所作を【観察】し
不運な方(三.の人)にそっとお声掛けしましょう
尋常ならざるお困り事があるのでは御座いませんか?(【プラチナチケット】を使用し)

えぇ、その道に秀でた者が居るなら抱えずとも結構なのでは?


 菅原・小梅(紅姫・g00596)は、歌人の集まる座敷にいた。
 表は濃紅、裏は濃黄、朽葉の襲の色目とした水干装束。元来の歴史、この時代に置いては男性の服装であったそれを身に纏った彼女は自ら調合した香を焚き、貴族の子息として振る舞っていた。
 女性らしさを排した動きに徹し、日頃見る所作を真似する。それによって、小梅は怪しまれる事なく歌会に参加できていた。
 僅かに心地よく掠れる声も少年らしさに拍車をかける。
「鈴鹿川 八十瀬の波に 鯉はねて 誰か声にぞ 袖は濡れつつ」
 読む歌は、割とありがちな情景を歌うもの。歌会に参加している歌人からすれば、違和感など無い句ではあるが。
 小梅は、それに返る歌を待つように見せながら、密やかに帳の向こうへと視線を向ける。分かりやすい動きはなかった。
 その歌に込めたのは、鈴鹿川の浅瀬を眺める女性の袖が鯉が跳ねた飛沫に濡れ、誰かの声に漸く気付くほど素晴らしい景色だと思わせる情景。だけではない。
 鈴鹿御前が、誰かの声に恋しい人を想い涙し、袖を濡らす。その意味を込めている。
 それは『あなたを分かっている』という意思表示にもなる。
 だが、帳の向こうから反応はない。
「……」
 もう一歩踏み込むか。浮かんだ思考を食い止める。
 鈴鹿川を歌に読んだだけでは、こちらが正体に気づいているという確信を得るには足りないだろう。だが、これ以上探りを入れて勘ぐられてしまえば、クロノヴェーダとしての正体を明かして襲いかかってくる可能性もある。
 歌人たちから引き剥がして打倒したとて、呪いを返す相手がいなくなってしまう。踏み込み過ぎは悪手か。
 一度瞼を閉ざし、帳から座する歌人たちへと静謐な目を向ける。
「……」
 歌が読み上げられていく。引用、定石、確かな教養から導かれる言葉の重なりに、些かならず興味をそそられながらも小梅は、その中の数人に目星をつける。
 息遣い。
 視線。
 口数。
 所作。
 人の目を避ける、なおかつ己は周りを観察し、時折誰かと目が合えば不自然に合わせたままに視線を固定させる。規則正しすぎる呼吸。常にこすり合わせている指先。
 見つけた。と後はただの歌人に扮して、歌に耳を傾けた。
「尋常ならざるお困り事があるのでは御座いませんか?」
「――っ」
 暗い気を背負うように門を潜る男性の前に立ち、小梅はそのように声を掛けていた。
 周囲に人はいない。牛車もなく徒歩で歩く彼は、火に触れたかのように狼狽し小梅の顔を見て、顔から血の気を失せさせた。
 喉を鳴らす。返事はない。うつむいた彼の表情は読めはしないが。
「分かりますか」
「ええ」
 悲しげに、そして、自らに呆れたような笑いに震える声が小梅に返る。疲れ切った目が、それでいて、強い光を宿す目が小梅を見つめていた。
 その道に秀でた者が居るなら抱えずとも結構なのでは? 小梅がそう差し述べた言葉に彼は静かに頷いた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

御澄・機津
昔のライブハウスだろ。
参加しねえ道理はないよ。
(装い馴染ませ
かつ目立つ着崩し
)
──恋、ねぇ。
おれには無縁だったな。

(歌人の一人へ)なあ、あんた
件の歌は受け取ったのか
受け取ったのは誰だ?
誰にどんな歌を返すつもりだ?
[破壊、誘惑]
いっそ相手に清々と叩き返してやろうぜ。
それにおれは
あんたの創った歌が知りたい。
教えてはくれないか。

(作曲とは異なり
己のスタイルと少し逸れる、が
指を鳴らして)

もののふの 八十も退く
凍てた火か
盛り生らずば おそることなし

……狼煙にも、
況してや炎にもならねえまま、
ただ呪う火種は
悲しいだろうがな
それでも恐れるもんじゃねえ
あんたらは歌で競い戦う人間だろう
(精々、ロックに生こうぜ。)


 着崩した着物も、少しは奇異に見られてはいるが然程邪険にされているわけでもないらしい。
「……」
 御澄・機津(黒白未明・g02821)は、徐々に高まっていく多動衝動を抑えながら、それでも大人しく座敷に座していた。
 歌会ってのは、まあ、昔のライブハウスだろ。という感覚で紛れ込んだ歌会ではあるが、想定以上に退屈を機津へともたらすものだった。
 それでも、彼が不機嫌を撒き散らす事がなかったのは、交わされる言の葉の耳心地のよさと、端々のどうにか汲み取れた想いに感じ入ったからか。
「……恋、ねぇ」
 膝に肘付いた掌の中で唇を動かした。指の腹で口の動きを感じ取りながら、言葉にしても動かぬ心に溜息を飲み込む。
 おれには無縁だったものだ。その言葉で口を動かすことはなかった。
 代わりに奥歯で噛み締め、噛み砕く。
「な」
 身を乗り出すように。脈絡もなく機津は隣の歌人へと声を掛けていた。瞳を覗き込む。一瞬たりとも逸らさない機津の目が、彼の視界を絡め取った。
「誰にどんな歌を返すつもりだ?」
 煩わしい会話は省く。既に同じような会話を繰り返し、外ればかりを引いている。怪しいと思っても結局、逆に訝しげに見返されるばかりだ。
 歌を返す相手を問う。など歌会ではありえない問ではある。送られた当人に返すのが返歌だ。繕った化粧も剥がれていく中、機津は漸く当たりを見いだせたようだった。
 己の懐に手を当てる彼に、浮かべていた希薄な笑みを拭う。
「いっそ相手に清々と叩き返してやろうぜ」
 懐に入っているそれを意識して言えば、歌人の表情には恐怖が浮かぶ。そして、機津の視線を引き剥がした目が周囲を泳ぐ。
 周囲を見るそれを誰にも怪しまれていないかと疑っているように機津は捉える。
「大丈夫だよ、それにおれはあんたの創った歌が知りたい」
 それが救いを求める視線が交じる事に気づきはしない。だが、機津の望みに歌人の動揺はわずかに息を潜めた。
「何を……」
「ああ、そうだな」
 ぐだぐだと冗長に話すのも違うだろう、と機津は思い直した。ここは歌会なのだから、歌を作るべきだろう。
 バンドが奏でる『歌』とは違うそれに数秒、こめかみに親指を押し付けた後、機津はぱちんと指を鳴らしてみせた。
「もののふの 八十も退く 凍てた火か 盛り生らずば おそることなし」
 狼煙にも、況してや炎にもならねえまま、ただ呪う火種は悲しいだろうがな。
「あんたらは歌で競い戦う人間だろう」
 機津の笑みを忘れたような声が、その舌に乗る。
 それでも恐れるもんじゃねえ。告げる機津に歌人の彼は、混迷の中ながらに懐から文を取り出していた。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【プラチナチケット】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

樫谷・都黒
そろそろわたしも歌を学ばないといけないと思い、こちらに参加させていただいた次第です。

都に住む子女の振りをして参加
呪われた歌人を探す
怪しまれない様に参加者を観察
歌を作らず周囲を見回している人物にあたりをつけ教えを乞うために話しかける
不慣れな物でして良ければ歌を教えてくれませんか。

「見初められ 惑い迷って 懐に 焦がれ朽ちたる ちり芥」
意訳:まったく無縁な相手の恋文もらって抱え込んで困っているならどうぞこちらの塵塚に

華も無い野暮ですけれど、あなたが野晒されるよりはマシですし。

華の無い野暮ですけれど穴を掘るのは得意ですから、
傍迷惑な方も歌と一緒に埋めて差し上げますよ。


「不慣れな物でして良ければ歌を教えてくれませんか」
 樫谷・都黒(臥し者は独り路に・g00233)は、そっと囁きかけるように、一人の女性に声を掛けていた。
 都の子女として歌会に参加した都黒に、その女性は二、三度瞬いた後に、固い笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、……勿論」
 勿論、と言う声にはこちらを探るような声音があった。
 歌会に紛れ込んだ都黒は、歌を作りかねているように振る舞いながら参加者を観察していた。積極的に歌を作るわけではないけれど、意欲はあるように。
 そして探していたのは、同じように歌に集中せず周囲を見回している人物。この歌会に歌以外の目的をもって参加しているような人物。
 それが、この女性だった。
「実は歌会に参加させていただいたのは、初めてで」
 歌というものにも不慣れなのです。と恥じ入るように吐露して眉を顰めた。貴族の子女にも教養の得手不得手というものはどうしてもある。歌を苦手として舞を得意とするものもいるがゆえに、歌会で教えを乞われるということも不思議なことではない。
 都黒のしおらしい様子に、毒気を抜かれたように微笑んだ歌人はもう一度都黒に頷いていた。
「ええ、我流ではございますが、私でよろしければ」
「ありがとうございます」
 そうして都黒は幾らかの教えを受けて、歌人へと歌を一つ送り出した。
「見初められ 惑い迷って 懐に 焦がれ朽ちたる ちり芥」
 都黒が読んだ歌に、歌人は目を見張る。
「……いかがでしょう?」
 問いかける声に、なんと返せばいいかと目が泳ぐ。
 上の句は、恋愛のやるせなさというべきか、望まぬ恋慕に惑う青春を思わせるものではあるが、その下の句。特に最後。
『ちり芥』
 恋文を事もあろうにゴミと呼ぶ歌に、情緒のなさに怒気を募らせ――そして、霧散する。
 都黒の目は、揶揄すような嘲りはなく真っ直ぐに歌人を見つめている。
 表に読み取りやすく、そして尚且、態と野暮な意味合いを持たせたのであれば、都黒が注目してほしいのは、そちらではないのだろう。思考がめぐり、そして行き着く。
 無縁な相手からの恋文。その扱いに困っているのなら、それを捨ててしまえばいいと。『無縁な相手からの恋文』それが呪いの歌を指しているというのなら。
 眼前の少女の表情を合わせて読み解くならば。
「私が、呪いを塵に捨てましょう」
 都黒は、その瞬間、見つめる女性の目に理解が広がるのを見た。
 伝わっただろうか。拙い歌に込めた思いは。
 歌人に送るには華もない野暮ではあれど、彼女が野晒しとなる事以上の野暮はない。都黒はその背を押すように。
「穴を掘るのは得意ですから」
 先程彼女がそうしてくれたように、微笑んでみせた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【隔離眼】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!

●オープニングでも記載していますが、歌人から受けた歌は以下の3つです。

一、
『忘れじの ちぎり果てれど 空風に 絶えることなく あぶくは立ちて』

二、
『誰ぞ待つ 吹く凩に 恋焦がれ 暮れゆく空に 黛の尾』

三、
『息白し 氷てる口間に 波の音 悴む指を 丸めて歩む』
 
 また、歌会の最中得た情報として主催者は、恋の歌に対して強い興味を持つようです。返歌のメインテーマを恋情に関するものにすれば、呪い返しへの抵抗が薄らぐかもしれません。
白水・蛍
アドリブ、連携歓迎。

さて、呪い返しと参りましょう。

平安時代の狩衣等、貴族に見える服を着こみましょう。多少は違和感は出るでしょうが【プラチナチケット】を残留させることで違和感を薄れさせたいです。

接触するのは、一番の方にいたします。
そして歌を受け取り、私もその先にいらっしゃる方に歌をしたためましょう。
「忘らるる ちぎる想いは 空風に 流して遠きに 届く思いを」
(あなたは約束を忘れてしまったのでしょう。私はこの思いを空に吹く風に通じて遠くにいるあなたに届けと願うばかりです)

歌に込めた思いは、その先にいるあなたに返す呪いの言葉。
無為なる人を巻き込む怒りです。
人を呪わば穴二つ。覚悟なさい。


菅原・小梅
三の呪いの返歌

◆行動
悲しいことに都には悪鬼羅刹や妖怪変化が蔓延っております
ですが、それを討つものが居るのもまた確かなのです
私共はその様なものと考えて頂ければですよ

役目でもあるのですから気に病むことなく
歌を預けて頂き、その解釈もお伺いしても宜しいですか
成る程……ならば

「うまさけよ 鈴鹿の霜と 陽にとけて 未だ乾かぬは よみ返すふみ」

表向きは冬の鈴鹿で恋文をながめ、涙ながらに朝から酒に溺れる方の歌

その実は鈴鹿の地所縁の化生がもたらす死から上手く避けるもの
溶けては呪いが解けてに繋がり
そして元々の送り主を黄泉へと返す文とする意味へと転ずるのですよ

傍迷惑な恋心は枕詞付きでしかと本人宛に返さなければですね


樫谷・都黒
歌の意味を教えてもらいつつ、中学生と雅を解さぬ田舎者な土地神の知識を使用して歌を作る

出来た歌を詠み返してもらう訳にもいきませんから、あとは本番頼りですね。
教えてくれてありがとうございました。

二の歌への返歌
『冷ゆる月 凍ゆる身抱いて 思ひ遣る 東風あひ帰らむ 遠き君を』
意訳
冬の夜、一人寂しく凍えているけれど、遠くにいる貴方は春の風と共に帰って来ることを想っています
二の歌の造りの無理やりな逆造り

逢いに行かないのか、行けないのかわかりませんけれど、
道すがら厄介事は困りものですからね。
だれも馬に蹴られる趣味など持っていないでしょうし。

ただ、残念な事にわたしは蹴られたら蹴り返すモノだったわけですが。


「忘れない、ですか」
 白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)はその黒い瞳で文の墨をなぞった。
 歌人に接触したディアボロスから受け取った件の呪い歌。それを見つめる目は、冴える涼しさを持ちながらも、静かな怒りを忍ばせている。
 蛍には、それが憧れの思いが僅かに滲む歌のようだ。流れるような筆、その節々に揺れる強張りに、読んだ歌人とは会っていなくとも恐らくは気の弱い人物だったのだろうと知れた。
 それでも誰かを想い、命亡き後もその誰かを想っていたいと願ったのか。
「ですが、ただ消える泡になどさせはしません」
 蛍は筆を取る。
 彼の思いを不条理な死で沈めんとした呪いの主に、蛍の想いを――静かなれど明確な怒りを届かせる為に。
 あなたは、約束を忘れてしまったのでしょう。
 私はこの思いを空に吹く風に通じて、遠くのあなたへと届けと願うばかり。
 恋の歌を呪いとするならば、あなたは恋の心などとうに忘れてしまったのだろう。
 筆先を流す。その先で鋭く止めた最後の一文字は、蛍の迷いのなさを示すように紙の上で完結する。
「忘らるる ちぎる思いは 空風に 流して遠きに 届く思いを」

 己の影が夜闇の暗がりに解けていくような落日へと視線を向けながら、菅原・小梅(紅姫・g00596)は男性に語りかけた。
 迷いが見えた。年若い少年へと、この呪いを託してよいのかという迷い。それは悔いへと変わる迷いだ。
「悲しいことに都には悪鬼羅刹や妖怪变化が蔓延っています」
 歌人は声に思う。男装とは知らぬ故に中性的な顔が濃い影に揺れる度、性も歳も移ろわせるような妖しさに魅せられる。細く伸びる首は、冷える風に凍えないだろうか。
「お気に病まず」
 思考を読んだような返事に息を呑み「役目でもあるのですから」と続いた言葉に、呪いの事かと思い直す。そんな表情の変化に、小梅は僅かに疑問を覚えながらも、受けた文を開いた。
「解釈もお伺いしてよろしいですか?」
「……ええ」
 彼ははにかみ答えた。
「冬の海が好きなのです。寒いのは苦手なのですが、冬の朝、凍るような海を眺めるのが」
 恋とは、その海に身を投じたくなる彼の瞬間に似ていると。そうして、安らぎと温もりを求めてしまうのだと。
「成る程、ありがとうございます」
 一つ瞑目し、小梅は交わした言葉を思い返していた。それきり歌人とは別れ、小梅は文と向き合っている。
 温もりを。陽のあたたかさを。小梅の中で言の葉が色を帯びる。
 冬の鈴鹿で恋文を眺め、涙ながらに日の上る朝から酒に溺れる歌。満たされぬ安らぎを酒で埋める歌。
「傍迷惑な恋心は枕詞付きで、しかと本人宛に返さねばですね」
 だが込める真意は、鈴鹿の地に所縁のある化生が齎す死という呪いを避けること。日にとけるは霜と呪い。読み返す文は、死して尚、陽の光を浴びる化生を黄泉へと返すと転じる。
 筆を置く。夜は更けた。黄泉路には似合いの頃合いだろう。
「うまさけよ 鈴鹿の霜と 陽にとけて 未だ乾かぬは よみ返すふみ」

 細く伸びる雲が濃く翳り、日の暮れを示している。もうすぐ日が暮れる。それを待つ。
「会いに来てはくれないものかと、願わずにはいられないの」
 きっと最後の時まで。約束をしたわけでもないのにね。
 そう話す歌人の目尻に浮かぶ皺に、樫谷・都黒(臥し者は独り路に・g00233)はこくりと得心したように頷いた。
 その心の全てを理解出来たわけではない。むしろその笑みに悲しみの欠片を漸く見いだせたばかりだ。その意味はわからない。
 その時、半身を喰らった神が囁いた気がした。都黒は、言葉に変換して唇を動かした。
「信じているのですね」
「ええ、どれほど疑っても、信じる心が消えてはくれないもの」
 御前様は人心を解するか。どうしてそれを囁いたかは知れないけれど、少し理解が進んだ気がした。
 その場で都黒は、返歌を組み立てる。
 行くならば、帰りを。
 冬へと吹く風に、冬から吹く風を。
 少しばかり無理矢理なれど、彼女が読んだ句の逆造り。冬の夜、独り寂しく凍えていても、それでも春の風と共に貴方が帰ってくると信じている。
 思いは途切れず、いつか結ばれると。
「……ありがとうございました」
 文を閉じ、都黒は彼女に礼を告げた。この歌を詠み返してもらうわけにもいかない。これは既に呪いを孕んだ呪歌。
 呪の主とともに、土に埋める歌だ。
「冷ゆる月 凍てる身抱いて 思ひ遣る 東風あひ帰らむ 遠き君を」

 したため、そして、懐に入れた呪いを座して抱えることはない。
「誰も馬に蹴られる趣味など持ってはいないでしょうし」
 都黒は屋敷の塀を伝うように歩みながら呟いた。声は夜の風が攫っていく。
 人の恋路に踏み入ることが野暮であるとは知っている。とはいえ、その恋路が道行く人に厄介をばらまくものならば、蹴られても構わない。
「残念なことに、私は蹴られたら蹴り返すモノですので」
 既にディアボロスは揃っている。目を合わせ、そして門兵へと貴族然とした仮衣を着込んだ蛍が凛と踏み出した。
「お開けください」
 通る声。そのふるまいに関係者と紛う門兵達が通用口を開き、ディアボロス達を屋敷へと招き入れた。
 文を届けに来たのだと。彼らは言う。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】がLV4になった!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!

 届いた文に、それは静かに声を漏らす。
「ああ、ああ」
 文を濡らすのは涙粒。嗚咽を響かせるのは歓喜か。歌会の後もそこで歌を詠んでいたそれは、初めてその声を発していた。
「ふふ、ああ、とても……とても愛おしい」
 濡れる唇を白魚の如き指先が撫でる。紅潮した頬を熱い涙が伝い、酔いしれるような瞳が熱く、熱く帳を見つめた。
 それは呪いの歌。
「素晴らしい恋の歌。私に向けられた熱情」
 でも、とそれは艶めかしく自らの体を掻き抱き、重く熱を持った息を忙しなく吐き、唾液を飲み込んだ。
「私は貴方以外に揺るがない」
 鮮烈な色を滲ませる瞳が歪に弧を描く。艷めく吐息は甘やぎうねる。
「愛情も憎悪も憤怒も悦楽も悲哀も狂喜も……私の全ては貴方だけに、貴方の為だけに」
 滂沱の如く溢れる涙に、満面の笑みを浮かべ、鈴鹿御前は立ち上がる。
 その所作は優雅なれど武人のそれで。
「ああ、田村麻呂さま……」
 どこからともなく現れた刃を振り切り、帳が裂ける。その向こうにいるそれは。
 愛を証す、そのための敵。愛を詠う、そのための。


 歌会を開いていた座敷での闘いです。
メルキディア・セデクリエル (サポート)
『受け継いだ\"夢\"を取り戻すその時まで……!』
 天使の魔創機士×ミニドラゴン『ジェスト』、21歳の女です。
 口調は女性的だが時々謎のフリーダム口調になります。

 パラドクスは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他のディアボロスに迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
戦闘時は天使であることを利用した囮作戦やタンク役を務める傾向があります。
また、武器を持ってない仲間に刀閃機イオスラッガー以外の閃機シリーズを貸したりします。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


 ディアボロス達を迎え撃つ鈴鹿御前は涙袋を赤く染めながら、笑みを浮かべている。陶酔するその表情。メルキディア・セデクリエル(閃機術士のエンジェリアン・g03132)は縁無しレンズの奥から、静かにその紅潮を眺めていた。
「……」
 夢想の中にあるように、現実を見ていながらも現実を見ていない。そんな印象を受ける。
「まるで快楽物質の増幅剤でも打ったみたいね」
 言いながら、メルキディアは光線剣を展開する。その刹那。眼前。切っ先が迫る。
「……っ」
「おや」
 一足に飛び込んできた鈴鹿御前が、その動作の始まりを見せぬ突きを放っていたのだ。光線剣を振るう余裕もなく、背後へと飛びながら身を捩り、顔を逸らす。刃が冷たい銀を放ち、鼻先を掠めるように過ぎる。
 躱された。そう見た鈴鹿御前が意外げに声を発しながら、舞うように体勢を変えたと思えば、突いたままの刃を振り下ろしへと移す。迫る銀光。だが、それだけで窮地に追い込まれる程、メルキディアも生半可な生命ではない。
「し、ッ」
 振るう天使の力は彼女を人ならざる領域へと誘う。既に目も止まらぬ早さで振り切られた刃が彼女を切り裂くよりも先に、展開した光線剣がその刃を薙ぎ払っていた。
「――は」
 くるくると切り離された刃が畳へと突き立つのを背後にメルキディアは、走る悪寒に従って鈴鹿御前から身を離しながら、光線剣を薙いだ。手応え。跳ねる刀。切っ先まで揃った刃を切断した、と思えばその逆の手に握られた、また別の刀が迫りくる。
 どこから取り出したか。考える間もない。メルキディアは無数の剣閃と踊る。切り結び、圧倒的な熱量に瞬く間に鉄を熔かし斬り。
 手品のごとく繰り出される刀。キリがない。
「ならっ」
 斬撃を避け、払い除けた瞬間に、メルキディアは背に構えていた大盾型閃機を床に叩きつけるように起動する。即、展開。
 鈴鹿御前の腕から瞬速の突きが放たれる。
 だが、その突きがメルキディアを貫くことはない。
「成る程、これは手強い」
 愛に歪む声ではない、武人としての声が目の前の女傑から漏れる。鼻先三寸。立ちはだかる障壁がその切っ先をとどめていた。
「少し、目が慣れてきたみたい」
 そして、メルキディアの刃が飛び込んできた鈴鹿御前の腹を裂いた。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【セルフクラフト】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!

樫谷・都黒
わたしの歌は如何だったでしょうか?お気に召したら幸いですが。

歌に仕込んだ【呪詛】が一つ
帰って来るのは春、即ち、春を迎えられなければ出会えない
技能は上だが身体能力差は残留効果で補う
多少の分断は狂骨の方から握らせてフォロー
呪詛は偽装妖刀で吸収し、刃の伸長に流用

恋や愛という物は実はよくわからないのですが、
誰かを想うというその様については少し羨ましいと思いますよ。
ただ、度が過ぎれば病と変わらないようですけれど。

そしてその病が無関係な人を苦しめるのであれば、
排除するのも当然のことですよね。
征きますよ。《狂骨》

敵の意識、呪いは自身に向けさせ周囲の人への被害を抑える


狭間・ならく
(アドリブ・連携お任せ)
鬼退治か?
鬼退治だな??

ナラクさんに任せろ。……ひひひ、なーんてな。
歌にかこつけて馬鹿やるヤツァ嫌いだね。ナメんなよ。
歌会は楽しくやるモンだゼ。

そら、こっちを見ろよ。鬼のあるべきはこんな優雅な宴じゃねェ。血の祝宴さ。

──咲け、地獄花。


白水・蛍
アドリブ、連携歓迎

私の歌、想いを……あなたに返す『呪い』の歌を。
感想を是非とも聞かせてほしいところですね。

恋や愛、女性ならばあこがれるものでしょう。
しかし、私はよくわからないのですけどね。
恋や愛、その前にやる事がある。我々の大事な物を取り戻す為の戦いが。
だから、奏でましょう、歌いましょう。
歌い奏でることこそ、我が本領。
さあ、皆様と共に歌う勝利の歌を!
≪ブレイドハープ≫を奏で、音の魔力を相手に全力でぶつけますわ。


 腹を裂かれながら、しかし、血を恐れることなく距離をとった鈴鹿御前。その佇まいからしても、彼女がただの箱入り娘だなどとは思うことなど出来ない。
「ひひ、気に食わねぁな」
 狭間・ならく(【嘘】・g03437)は笑んだ口を動かした。それが笑みだとひと目見ただけでは気付けないような表情から零れ落ちるのは、欺瞞めいた怒りと薄っぺらの享楽。
「ふふ」
 鈴鹿御前は、そんな言葉に、戯れるようにならくを見つめた。ならくには、それが気に入らない。いや。
「それで、なんだっけ。恋い焦がれてるって?」
「ええ、恋焦がれて、お慕いしています」
 それが、己を見ていないことをこそ、気に入らないのか。冴えた頭でならくは、自分の中に漫然と漂う感情を手繰ろうと、もがくように心に手をなびかせる。
 言い切った彼女の言葉を軽薄に笑い飛ばすように、ならくは問いかけた。
「ホントに?」
「ふふ、あはは。ああ……ええ」
 蝶が舞うように笑うものだな。ならくはそう、ややズレた感想を抱く。
「どうしてでしょう、だってあの方の傍に居たいのです。でも、私を見ていては欲しくはないのです。それでも私を思って、想って、私の温度を覚えていて。事切れる刹那に私を、私だけを考えて。絶えず傍にいて、絶えず離れないで。私の全ては貴方に、貴方のために」
 胴体を抱くように、腹の傷に指先を浸す。既に止まっている流血が彼女の指に絡む。
「ああ、あなた達も貴方のために」
 私の憎悪を映す鏡となって、と悪鬼が笑う。
 やだね。ならくは端的に返す。そんな彼女たちの会話を聞いていた白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)は、緩やかに首を振っていた。
「やはり、私はよくわからないですね。あなたの言う恋というものは」
 彼女は柄に竪琴を合わせたような刀剣を抜く。いや、それはむしろ刃の付いた竪琴というべき代物なのだろう。蛍がその弦に指を掛ける。その音が弾き跳ねる、その瞬間に。
 樫谷・都黒(臥し者は独り路に・g00233)が肉薄する。
「戯言はお終いですか?」
 鋼がぶつかり、耳を劈くような鉄の悲鳴が空間を走り抜ける。都黒の持つ骨の鎌が吹き飛び、鈴鹿御前の刀が根本からへし折れる。
 弾かれた。
 都黒はその衝撃に腕に痺れ走るのを感じながらも、その鎌、狂骨を手放しはしない。いや、鎌の方から手放してはくれない。己を都黒の腕に繋ぎ止めるように柄になっている異形の腕が都黒を掴み続ける。
「――ッ!」
 鎌の道連れに無理に捻れた腕が激痛を走らせるが、悲鳴を上げている暇はない。
 鈴鹿御前の刀を幾つ壊そうが、意味は無いことは先程の攻防で見ている。それに限りがあるかは知らないが、限りがあると甘く見るだけ屍が生み出されるだけだろう。
「は」
 動け。咄嗟に腕を抑えた都黒の頭上に剣戟が走る。人を殺す事に躊躇いのない一撃。底に飛び込んだのは、都黒の頭蓋でも、ならくの腕でもなかった。
 音。音の魔力が剣の間合いの外から溢れ、押し飛ばす。爆ぜた衝撃に身を任せて後方へと身を舞わせた鈴鹿御前がその下手人、蛍へと視線を投げかける。そこにあるのは、嫌悪とも付かぬ悦楽。
 蛍にそれを理解はできない。だが、それが害を呼び込むものだと理解している。だから。
「奏でましょう、歌いましょう」
 これ以上失わないように。失ったものを取り戻すために。
「さあ、皆様と共に歌う勝利の歌を」
 爪弾く音が、声に震える。

 駆ける。い草の編み目を踏み砕くように剣舞を魅せる。
 薙ぎ払う一撃をステップを刻んでタイミングをずらして避ければ、身を沈めて肉薄。緋色の刃が奔る。奔らせる。ならくの振るう灼刀が突き出される刃を逸らす。
 弾ける火花めいた銀光が目に焼き付く。
 そうだ。
 応酬する斬撃。他人を侵す刃。転がるように躱した刃が上質な畳を斬り刻む。肌に線引く傷から流れる血の粒が柱や床に飛び跳ねる。
 両の手に刃を握る都黒がならくと入れ替わるように鈴鹿御前の首を刎ねんと踊る。無数の刃の残骸。それを花片がごとく舞わせる鈴鹿御前にならくは刀を握る。
 蛍の音撃が、鈴鹿御前の攻撃、その出先を挫くように差し込まれ、その間隙を突く。
 ああ、武人だ。いや、武人などではない。それでも、しかし、故に、転じて。
 そうだ。
 鬼なら歌会だなんて優雅な宴は似合わない。血の祝宴こそがよく似合う。
「お前は、鬼だろうが」
「ああ、厭しい」
 だが、ここに至っても、鈴鹿御前が見つめるのは眼前の敵などではなく、そこに映る彼女自身だ。
 切り結ぶ。
「それも、貴方への恋なのですから」
「そうかい」
 吐き捨てる。
「……」
 散漫。故に隙がない。
 都黒は、己の身体に植え付けられた呪詛に息を喘ぐ。刀身へと受けた呪詛を吸わせたとて彼女自身への侵食が完全に失われるわけではない。
 凍てる。
 指先は悴み、舌は乾き、臓腑が黒ずむのが全身の軋みに分かる。それで、いい。
 息を吐く。白く。
「――」
 声を吐く。白く。
 春にならなければ、出会うことはない。見失う。鈴鹿御前の切っ先は、まだ届かない。冬に忘れる。ならくの表皮を風が撫ぜるように、刃が逸れる。
 呪いを。
「冷ゆる月 凍てる身抱いて 思ひ遣る 東風あひ帰らむ 遠き君を」
 返す。
 斬られた帳の向こう。呪いに沈む文が、燃え上がる。
 輪廻は成った。鬼が生み、人が紡いだ呪い。
 それが今結ばれる。
「うまさけよ 鈴鹿の霜と 陽にとけて 未だ乾かぬは よみ返すふみ」
 この世を蝕む鈴鹿御前の呪詛が解けて失せゆく。
 息をする。肺はそれを受け入れる。正しい在り方が、繰り返される。
「忘らるる ちぎる思いは 空風に 流して遠きに 届く思いを」
 届かぬ声も、歌も、思いを乗せた万物よ、届けと。契りを手繰り、蛍の歌う言の葉が全ての障害を越え、届く。
 ならくの刃が、鈴鹿御前の振るう大刀を切り裂いていた。更に、止まることはない。全身を跳ね上げ、振り上げた刃が逆袈裟に鬼を掻き斬る。
「――」
 踏み込む。刀を触れない、間合いの内側。懐。事ここに至り、刃を頼りはしなかった。その後を考えない、肩から全速力をぶつける体当たり。衝突。刻まれ体勢を崩した鈴鹿御前が宙を浮く。その手にいつの間にか刃が握られている。床に脚を突き立てるように身体を押し留め。
「少し羨ましいと思いますよ」
 都黒の落とした刃が、鈴鹿御前の胴体を貫いていた。
「誰かを想うというその様については、少しですが」
 鈍く跳ねるような音とともに床に叩きつけられた鈴鹿御前が、血を吐いた。
 胸に妖刀を突き立て床に縫い止めた鈴鹿御前を見下ろす。
 虚ろな瞳には何が映るのか。まるで人が死ぬようだ、と見慣れぬ光景に慣れたように想った。
「恋や愛、女性ならばあこがれるものだとは分かっていますが」
 しかし、やはり分からない。と蛍は愛歌に囚われた鬼を見つめながら、その瞼を細めた。何に怒りを覚えていたのか。こうしてみれば、己は本当にこの鬼に怒っていたのかと、僅かに困惑が浮かぶ。残るのがただの残滓だからか。
 都黒は蛍の言葉を受けて、鎌を握った。
「ええ、度が過ぎれば病となるようですが」
 いえ。都黒は僅かに動いた鬼の唇が語ろうとした言葉を代弁してみせた。
 病すら、恋だというのでしょうね、あなたは。
「わたしの歌は如何だったでしょうか?」
「――」
 その鬼は明確に微笑んだ。
「そうですか」
 鎌が首を刎ねた。


 波が揺れている。
 冬を朝が和らげている。
 恋文を波にのせ海へと流した。
 溶けゆく紙が遠くへと送られていく。
 鬼に取って代わられたという想い人を偲ぶ。
 冷える風に肩を震わせた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【腐食】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【命中アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2021年11月18日