リプレイ
ファハド・ハリーリー
儀式を止めなくては
まずは探索だね
パラドクスで【照明】を出しておこう
足元、道の先、暗くては歩くのも大変だ
安全に
探索者より後手にファハドたちが来たということは痕跡が残っているはず
仕掛けで人為的に動いた跡、大きないきものが通った跡
移動で、積もった砂ぼこりが動くだろうから
それらを辿り追いかけていけば、きっと見つけられる
[看破][情報収集]
蛇や蝙蝠が近づいてきたら追い払おう
シャフィーカ、お願い
光や物音で集ったのなら、尻尾で叩いてやればきっと怯んで逃げる
信心、想い……探索者も墓守も、彼らの意思はどのくらいあるのかな
心からの従属でなければ、辛いだけだ
※アドリブ、絡み可
金刺・鞆
墳墓……偉大なものの、墓。それは本来ならばけして暴くべからず、侵すべからずの静謐の地、です。
名も知らぬ眠りの君に、部外者であるわたくしが踏み入る非礼を詫びねばなりませんね。
なれど、此度の外法の企み、捨て置けぬ、です。どうかひととき、お赦しくださいませ。
内部は……複雑に入り組む、でしょうか。
各々、【パラドクス通信】で情報を把握できるようにしたいところ。地形、敵の痕跡、情報収集は計りごとに欠かせぬもの、ゆえ。簡単な地図を記しながら、仲間の支援も行えれば、僥倖。
それらとともに、進むときは煌々と灯りを焚いて。半覚醒のりたーなー、も、見つけねばなりません。なれば、誘き寄せてしまえばよろしい、かと。むん。
日金・陽洋
わざわざ殺し合いをさせるたぁ、つくづく好き勝手やってくれる
故郷の記憶こそほとんどねえが…同じリターナー、見過ごせねえな
差し支えなければあらかじめ邪魔にならない程度の光源、それに筆記具を用意
迷路を歩くには左の壁に左手を触れて歩け、と言ったか
それも実践してみるが…【風使い】で迷宮内の風を読んでみるか
先に何かあれば風の流れも変わる、何かしら情報は得られるかもしれねえ
毒を持った生物は…仲間が嫌がるようなら程々に埋めるか吹っ飛ばしとくか
生物の殺された痕、魔術、特別な雰囲気を感じるものを感じた時はメモを取り、道中での情報収集もしていこう
仲間とは連携・情報共有
不要な破壊はせずに情報を得たいところだ
アドリブ可
レン・ナイトハルト
「まるで蠱毒だな」
探索者と墓守を戦わせて覚醒を促す、か
随分なやり口じゃないか、首謀者は笑いが止まらないだろうな
いずれにせよ対象を見つけるのが先決だ
連中に痕跡を隠す気はないだろう
注意深く足跡や周囲の砂埃、扉の状態を確認して進めば追いつける筈だ
あとは時間との勝負になる
障害物は手早く【破壊】
【歴史知識】も墳墓について役に立てばいいんだがな
首謀者は勿論、関係者に対して特別な感情はなく関心もない
案内人の希望を無碍にすることもないが、無理をする必要もないということだ
他のディアボロスの動き次第かもしれん
「ケ・セラ・セラ、なるようになるさ」
ショットガンを片手に、揺れる魔力の翼を背に、私は痕跡を辿る
花鶴・景臣
神を騙る連中に碌な奴が居ないのは相場が決まってんだよ
火炎使いで光源を確保
ただ闇雲に歩いても埒が明かねえが…
情報が全くない内はどうしようもない
ある程度運に任せて移動しつつ情報収集
鍵がかかった扉に出くわした時は
眠る人々に心内で謝罪を一つ
極力元の姿を留めた破壊を試みる
同じ場所で彷徨わないよう色を付けた小石でも置いて目印にするか
鍵が破壊されずに開錠された扉はないか?
もしかすると探索者が通った後かも知れねえ
…後は、蠍や蛇の残骸が残っちゃいねえか?
先に進んだ探索者が駆除したものなら
多分、その方向が正解だろう
周囲の観察は怠らず、情報共有が可能なら大いに活用
神のお遊びに付き合ってる暇はねえ
さっさと見つけ出すぞ
●墳墓迷宮
「わざわざ殺し合いをさせるたぁ、つくづく好き勝手やってくれる」
日金・陽洋(陽光・g05072)は呆れたような声をあげる。その裏にあるのは当然、怒りだ。
「まるで蠱毒だな」
レン・ナイトハルト(Black Devil・g01874)の低い囁きが、暗き通路に響いた。
「探索者と墓守を戦わせて覚醒を促す、か――随分なやり口じゃないか、首謀者は笑いが止まらないだろうな」
揶揄を隠さぬ彼女の声音は、墳墓の雰囲気と合わせ、不穏な気配を連想させる――ゆえにか、陽洋は無意識に頷いていた。
(「故郷の記憶こそほとんどねえが……同じリターナー、見過ごせねえな」)
案ずる彼の意思を汲んだかどうか。
吐き捨てるような吐息と共に、冷たい靴底で床を蹴り――。
「神を騙る連中に碌な奴が居ないのは相場が決まってんだよ」
花鶴・景臣(灰に帰すまで・g04686)が氷のような眼差しで闇を睨んでいた。
「神のお遊びに付き合ってる暇はねえ――さっさと見つけ出すぞ」
その声音は、ひどく冷ややかだ。
レンにしてみれば――縁もゆかりもないリターナーの身の上を案じるほどの情もないが、敵の狙いを妨害するのは、是非もない。
感情の吐露は人それぞれであるが、エンネアドの悪趣味な趣向は不快に違いない。
「……ならば、あとは。時間との勝負だな」
「そうだね」
レンの囁きに、静かに目を伏せたファハド・ハリーリー(天渡りの子・g04298)は、同意に首肯した。
「儀式を止めるために……まずは探索だね」
ファハドは正面をひたと見据え、掌を天に向けて差し出す。
「星の灯、ここに」
彼の手の内に、星型の照明がふわりと浮かび、周囲を照らし出す。
土を固めた壁面。それは単に掘っただけでなく、確りとした粘土質に整えられていた。その丁寧な作りを見つめ、金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)がほうと溜息を吐いた。
「墳墓……偉大なものの、墓」
――異国の匂い。異国の作り。
だが、変わらぬものが此所には在る、と鞆は小さく身震いした。
(「……本来ならばけして暴くべからず、侵すべからずの静謐の地、です」)
厳かな空気。砂漠の世界だというのに、どこかひんやりと膚を撫でるような、緊張感。気にしすぎやもしれないが、彼女はそういうものに敬意を払わずにはおられぬのだ。
「名も知らぬ眠りの君に、部外者であるわたくしが踏み入る非礼を詫びねばなりませんね――なれど、此度の外法の企み、捨て置けぬ、です。どうかひととき、お赦しくださいませ」
袖を合わせ、一礼とともに。きちりと断り――仲間の背を追う。
ディアボロス達はそれぞれに灯りを用意していたが、やはりファハドの光源によって、それぞれの探索が捗ったといえよう。
皓皓と周囲を照らすそれは明るすぎる嫌いもあるが、会敵を怖れる状況ではない。
やや頭上、壁を這うような音に気付いて、ファハドは足を止める。
「シャフィーカ、お願い」
寄ってきた蛇を、ミニドラゴン『シャフィーカ』がシャーっと威嚇し、その尾で払えば、すごすごと闇の中に消えていく。
蠍だ蛇だ蝙蝠だと襲いかかって来ても、皆平然と追い払うか、時に仕留めた。
後方を確認せず、引き鉄を引き――轟くショットガンの咆哮が、通路にわんわんと響いた。
「先の痕跡を消したくないが、後ろならいいだろう」
そうレンは嘯いて、しつこく飛来してきた蝙蝠を射貫いた。物音に関しても――光についても、ディアボロス達は特に気にしなかった。
駆けつけるものといえば、リターナー達であろうが。
「なれば、誘き寄せてしまえばよろしい、かと。むん」
――とは、鞆の言である。異論はなかった。いずれ出遭わねばならぬのだ。
「迷路を歩くには左の壁に左手を触れて歩け、と言ったか」
呟きながら、陽洋が左手を壁に付け、ペンを片手に辺りを眺める。目立ったものは見当たらぬ。淡々とした通路が続き、時に分岐している。迷宮と称するだけはあって、道は幾重にも分かれていた。目立った印も、当然存在しない。
後から刻まれた印などもないのは、リターナー達は予め道を教わっているのだろう。
「……死骸だな」
景臣が足元に血の跡を気づき、膝を折って順に辿る。
「やはり、連中に痕跡を隠す気はないようだな」
レンの言葉は正しく。
壁際に叩きつけられた蛇の死骸だ。通路の端に片付けた、というよりは、襲いかかる火の粉を払った結果、という雰囲気に見える。
(「この疵は、爪か……?」)
声に出さず、景臣は死骸の疵を観察して、得物を推測する。力で引き千切られた無残な姿だが、鋭利なものが鱗を貫通している。
そして顔を上げれば、放射状に進路が分かれている。
ファハドが足跡などがよく見えるように、光量を上げた。照らされた灯りの中に、少し血に汚れた足跡が複数浮かび上がった。
そちらの調査は仲間に任せ、風を探るように陽洋が金の双眸を伏せて集中する――。
「風の流れとしては、短い道と長い道に分岐してる……手応えではな」
床を探っていたファハドが「たぶん、こちらかあちらだ」と通路を絞る。
「どうやら扉が沢山あるみたいだね」
青の双眸を鋭く細めたレンが続ける。そちらの通路は短く、十数メートルもいけば突き当たりだと陽洋は風読み告げる。
「なれば、次の道は扉の向こう……でしょうか」
「――複数同時起動の仕掛けなんかがあったら、厄介だな」
首を傾げた鞆の近く、景臣が闇を睨んで腕を組む。
成る程、ないとは言い切れぬ。
むんと鞆がひとつ唸り、「暫し、別れ、探ってみますか」と問うた。
途端、ディアボロス達の傍らに、小型通信機が現れた。
こつこつと堅い床を踵が叩く。背中で魔力の羽が揺らし、堂々と進んだレンは脚を止め――突き当たりの、扉の錠を眺める。何やらヒエログリフが描かれた、それっぽい扉だが。
「……さて?」
木の扉に、閂型の鉄の錠。扉を撃ってしまえば道は拓くだろう。だが、果たして、リターナー達は錠をかけ直して先へ進むだろうか。
「そもそも、外錠ならば……中を確かめるまでもないか」
それでも彼女は入念に、扉の下方、足元や埃の痕跡をチェックする。
引き返せば、景臣が石壁を全身でもって押し込んでいた。僅かに、動く――が、数センチ動いたところで、一度退く。ファハドが即座に灯りで照らしてくれた。痕跡を壁に見せかけた通路のようだ。
「そいつは何人かで押す仕掛けじゃないのか」
「そのようだ」
陽洋の指摘に、景臣は素直に認める。少し押して、他の罠の気配はないか、確かめたのだという。空間を覗き込めば風の音がする――続いているのだろう。
「シャフィーカ、周りを見ていて」
相棒に一声、ファハドは頼むと、ディアボロス達で押す。
重い石だがこれだけ揃えば苦労はしない。だが、じっくり慎重に押し込み、数十センチの隙間を確保したところで、がちりと止まってしまう。
先は続いているようだが、通り抜けるのに苦労しそうな隙間であった。外れだろうか、という呟きに、横から闇を覗き込んだ鞆が、むんと意気込む。
「わたくしが偵察に」
「おれも行くよ。灯りは大丈夫だね?」
ファハドが振り返ったのは、残る面々だ。それぞれ、困らぬ程度の装備はあると頷くや、小柄な二人は隙間に身を滑らせた。
知らせは、すぐに届いた。
「こちら……石室への抜け道の模様。地下へ道が続いているよう、です……踏み潰された蠍を、複数、確認……」
小型通信機から、鞆の声がする。続けて、ファハドが告げる。
「奥で突っぱねる仕掛けを解除したから、もう少し押せると思う――」
三人で押し込むと、確かに、大人でも充分に通り抜けられるだけの隙間が出来た――その足元に、血に似た汚れが顔を覗かせる。
光源の元に進めば、六十センチ四方程度の穴が開いている。石造りで、目立たぬが足がかりもありそうだ。
なかなか跳び込むのに勇気のいる通路だが――。
「ケ・セラ・セラ、なるようになるさ」
レンは微笑した。
下の通路へ降りると、空気は更にひやりと冷えるようであった。
厄介な迷宮だな、とファハドは溜息を吐いた。彼らはこの道を、如何なる心情で通り抜けてきたのだろうか。
「信心、想い……探索者も墓守も、彼らの意思はどのくらいあるのかな」
(「心からの従属でなければ、辛いだけだ」)
甘える相棒の背を撫でて、灯りを掲げる。それを頼りに、鞆が地図に書き込みを行い、今までの道程を纏めている。
柄に手をかけた景臣の厳しい眼差し、飄々とするがショットガンを常に構えているレンを傍らに、陽洋が風を読む。
「ん? なんだ。向こうから急に、強い風が……」
訝しむ声に重なり、不穏な鳴き声が聞こえた。妙に高い、鷹の声だ。
続く、地を叩くような細かな振動が周囲の埃をふるい落とす。土煙を避けるように口元を覆ったファハドが、遠くに光を差し出す。
ディアボロスの視界に飛び込んできたのは、やや開けた空間――寝殿への前室かくやという一間にて、鷹のような姿をしたマミー達が、天上から放出された大量の蠍を蹂躙している姿であった――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【照明】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
日金・陽洋
あれが、半覚醒状態の…
殺し合いも、人から外れる事も、させるかよ
俺達は盗賊じゃねえ、お前達を止めに来た
神から授けられた任務、と言われているんだったか
蛇や蠍を潰したのは見事だが…今のその姿は、お前達のなりたいものだったか
神が人のためにあるというなら、お前達の姿や思いを変えようとしてまで任務を出すのか
そんなもの、無理やり従わせるのと変わらねえだろ
お前達の崇める、そうまでして任務を果たそうと思う神とは何だ
力が得られても、俺は奴隷のようになるのは御免だ
・戦闘
向かってくるものに破軍衝
仲間が攻撃されそうな場合も纏めて吹き飛ばす
回避に有効なら【エアライド】活用
他の残留効果も有効に使えるなら活用しよう
アドリブ可
レン・ナイトハルト
「ゾッとする光景だな」
タバコに火を点けながら感想を口にする
もう連中は人間より化け物側に見える
当人たちにどこまで自意識があるのかも疑問だ
もっとも、
「私に言われたくはないか」
背に浮かぶ魔力の翼は人のそれとは言えないだろう
いずれにせよやることは変わらない
「助かるなら、それこそ神の思し召しだ」
ショットガンによる【制圧射撃】
味方と連携しつつ各個撃破を狙う
前衛に敵が固まりすぎるなら【誘導弾】で挑発
「大人しくしてくれるなら殺しはしない」
警告はしておく
裏を返せば容赦はしないということだ
マミーどもが群がってくるのを見計らい【驟雨】を発動
案内人の慈悲に感謝しろよ
私だけなら永遠に眠ることになっただろうから
●繋ぐ一糸
侵入者に対する最終的な防衛装置は、毒蠍を落とす罠だったらしい――しかしそれも、毒も蠍も怖れぬ者が相手なら意味は無い。
それを示すかのように、見る間に、ただの肉片へと変じ床に散らばった。
ディアボロスはその光景に――当然、臆す事はなかった。
「あれが、半覚醒状態の……」
日金・陽洋(陽光・g05072)は、知らず、眉間に皺を寄せた。
険しい視線を向けるのは、リターナー達の姿は――肥大した双腕は翼のように変形し、包帯から突き出した嘴、細い脚と鋭い鉤爪。
そんな姿の五人が、執念深く蠍を踏み潰している。
「ゾッとする光景だな」
蠍の欠片を踏み潰し、人ならぬ声をあげて歓ぶ彼らを前に。
言葉とは裏腹に平然とした様子で、レン・ナイトハルト(Black Devil・g01874)は煙草に火を点けた。ゆっくりと一服を楽しみながら眺めながら、もう既に化け物のようだ、と続ける。
「あの姿……行動。当人たちにどこまで自意識があるのかも疑問だ」
冷淡な彼女の言葉に、陽洋は頭を振った。
同調しかねない己の心を、捻じ伏せるように。
「殺し合いも、人から外れる事も、させるかよ」
「仲間の意思は尊重しよう」
決意の滲む声音に、レンはただ頷く。
そもそも、――誰にも届かぬよう、口元に密かな自嘲を浮かべ、独り言つ。
「私に言われたくはないか」
魔力の翼を背負う己とて化け物だと嘯き、されど満更でもない表情でショットガンを構える。
背は彼女に任せ、隙のない足取りでウカーブ達の前へと陽洋が進めば。
鋭い鷹の眼差しが一気に集まる――彼らは「……賊カ」「賊ダ」と呟き始める。切れそうな記憶を、改めるかのように。
「俺達は盗賊じゃねえ、お前達を止めに来た」
陽洋の一声を、当然、彼らは信じない。
高まった殺気を前に、煙草を咥えたレンは薄く笑った。
「話を聞いてもらうにも……作法というものがありそうだな」
嫌味では無く、淡々とした感想に、解っていると陽洋は黙って身構えた。
敵対者を認識したウカーブ達は、アンバランスな身体を器用に操り、舞い上がった。鷲のように飛翔するには空間が狭すぎるため、壁を利用して高く跳躍したような形だ。
鉤爪の脚が、空を裂き、掴みかかってくる。
「――いずれにせよやることは変わらない」
軽やかに飛び退き、レンが囁く。
自分の務めは相手を無力化すること。もし、己の力を受けて尚。
「助かるなら、それこそ神の思し召しだ」
嘯く、刹那。
腹に響くような炸裂音が、鷲の鼻先で轟く。既にマミー化が進んでいる相手だ、射撃による負傷は期待していない。
爆風紛れ、敵の下を潜り抜けるや、容赦なく蠍の死骸を蹴り付け振り返る。
「大人しくしてくれるなら殺しはしない」
陳腐な警告を放ってみる。
――裏を返せば、容赦はしない。まあ、効き目がないのは、解っているのだ。
ギィーーーギ、ギギ。
浴びせられたのはおぞましい鳴き声。鷲のものとは思えぬひび割れたそれは、妙に間延びして響く。音で、頭の中を無遠慮に掻き交ぜられている――そんな苦痛だった。
鳴き声を上げながら、壁を蹴って素早く切り替えした五体のウカーブを、レンは微動だにせず迎え撃つ。
大きく広がった悪魔の翼が、魔力に満ちたように輝いた。
「流転、急襲、落日、崩壊」
低い声音が囁くや。
激しい雨の如く――無数の羽が、ウカーブを穿つ。途端、血霞が部屋に漂い、濃密な臭いが広がった。
全身を魔力の雨針に貫かれたそれらは、血にまみれ地に落ちた。
致死ダメージではないが――すぐには起き上がれぬようで、地に這いながら、呻いた。
「う、ゥ……神の力ヲ得たのに、ナゼ……」
その疑問に、痛ましげな眼差しを向け、陽洋は口を開いた。
「神から授けられた任務と言われているんだったか――蛇や蠍を潰したのは見事だが……今のその姿は、お前達のなりたいものだったか」
静かに、問いかける。
今の姿――陽洋の指摘に彼らは、理解できぬというように首を捻った。
「神が人のためにあるというなら、お前達の姿や思いを変えようとしてまで任務を出すのか」
「姿……イシ……」
確かに言われてみれば、仲間は異様な姿だ。己も異様らしい。何のために墳墓に挑んだのか。その記憶すら、少し飛んでいる。
何故、我々は……否、隣り合う、あの怪物は、何だ。思考は直ぐに混沌としてしまう。
陽洋は彼らの戸惑いを前に、一呼吸を置き、強く告げる。
「そんなもの、無理やり従わせるのと変わらねえだろ――お前達の崇める、そうまでして任務を果たそうと思う神とは何だ」
――神。絶対者。
反映と成功を約束してくれる……家族のために。己のために。
立ち上がらねば、賊を討ち、務めを果たさねば。だがしかし、その、賊とは。
怪物を生み出そうとする神の意志とは何なのか。疑問を抱いても解は無く、混乱するばかりだ。
「力が得られても、俺は奴隷のようになるのは御免だ」
金の眼差しでしかと見つめ。強く、そう告げた陽洋へ。
苦悩に身をよじりながら、ウカーブ達が立ち上がる。
「神よ、ナゼ!」
葛藤するような絶叫とともに、錯乱状態で、再度襲いかかって来た。
仕方ねえ、と陽洋は腰を落とす。彼の頭上高く飛び上がり、頭を狙って爪で掴みかかってくるウカーブへ、冷静に――重い、拳の一撃を喰らわせる。
接触の瞬間、生じた強烈な衝撃波が、続く鷲どもも纏めて吹き飛ばす――先のレンの一掃が効いていたのだろう、ウカーブ達は烈風に為す術も無く弾かれると、壁に全身を強か叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
「……生きてる、よな?」
陽洋は恐る恐る、彼らを覗き込む。
ずるずると床に崩れ落ちたウカーブは、密やかに呼吸をしているようだ――リターナーにきちんと戻るか、見守ることは出来そうにないが。
ひとまず起き上がってくる様子もないなら、このまま通り抜けられるだろう。
安堵の息を吐いた青年を横目に、紫煙くゆらせたレンは青き眸を細め、失神した彼らへそっと告げる。
「案内人の慈悲に感謝しろよ――私だけなら永遠に眠ることになっただろうから」
そして、そこの彼にもな。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【エアライド】LV1が発生!
【隔離眼】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV2になった!
金刺・鞆
なれらの信ずる神の御意志は歪められ、叛逆の徒に体よく利用されているのです。
この地を守らんとするあなたがたも、探索を命じられたあのものたちも、ともにこの地、この世に伝わる神々を奉ずる民なのでしょう。
あなたがたの信ずる神は、身命賭して仕えるものをいたずらに相争わせる存在なのですか?
同胞の変化に、恐怖を覚えたのではないのですか? ほんとうに、その異変は神がもたらしたものなのですか?
今なら間に合うのです。どうか、人として生き、人として生きることをやめないで。人であることを、やめないで……!
多少時間がかかっても、救える者を救いたく。自我保つものを狙って攻め、揺れるものには引き続き言葉を尽くしたい、です。
花鶴・景臣
ったく、神ってのはおっかねえもんだ
あんたもそう思わないか?
侮辱?…良く言う
あんた等だって少からず思ったんじゃねえか
人が唐突に変貌する様子はどうだった?
――怖かったろ?
大体、侵入者を排除する為だけに
性格まで変える必要は何処にあるんだ?
神なんぞそんなもんさ
あんた等がどれだけ信奉しようと
どれだけ敬愛しようと
結局手前勝手に民を弄び、捨て駒にしてしまう
己が己じゃない化け物に作り替えられる
良しとするなら好きにしろ…だが
僅かでも迷いがあるなら
間違いと思うなら踏み留まれ
探索者と墓守が殺し合い展開だけは避けなきゃならねえ
極力致命傷を与えぬよう立ち回り
踏み留まれた奴等を叩き、目を覚まさせる
ほら、好い加減起きやがれ
ファハド・ハリーリー
無意味な犠牲を出したくない
おれは墓守たちの元へ向かう
彼らを説得しよう
もし墓守と探索者の諍いがあれば
あいだに入り、互いを引き離す
出したままだった照明を幻惑の光に変える
相手の精神に訴えるように、あちらの目を見る
人と真剣に話すときは目を見て話せと、御主人に躾けられたから
あなたたちは、信心を利用する存在に騙されている
神の言葉だというけれど、それはほんとうにあなたを導く言葉?
いまあなたはあなたの神とは違うものの思惑で動いている
信仰が踏みにじられている
そんな痛々しい姿になってまで、遂行せねばならないもの?
このままでは知性も心も
人としてのなにもかもを捨てた怪物になってしまう
あなたに命を下した者に疑問を持って
●神かく騙りき
果たして、鷲と化したリターナー達と、ディアボロスが開戦した頃。
先程までの迷宮に比べ、如何にも高貴なものが眠るのではと思わせる、彩りに満ちた通路を、リターナー達が衝突する寸前で駆けつけられたのは、幸いと――そして、その状況を作らぬ為に、三人は先へ駆けた。
対峙する相手の気配を察するは、程なく。
「賊メ!」
「主ら、此所カら先ヲ望むこと叶わヌとしれ!」
口々に吼えて、湾曲した剣を抜き払う――彼らの声は、濁り、男性と女性の声が入り交じっていた。
雌獅子神群――姿形は女性神のものだが、元は男であったものも多かろう。それは、先程みた鷲どもにも当てはまるだろうが。
――痛ましい。
ファハド・ハリーリー(天渡りの子・g04298)は素直にそう感じた。元の容貌すら解らぬ姿に変じた彼らを、誰が哀れまずおれようか。
(「無意味な犠牲は出したくない」)
静かに敵を見据える。表情こそ大きく動かぬが、明るい緑の瞳は、真摯な光を湛えている。再び掌に載せた星型の照明を、前へと差し出し。
その輝きが双方を――否、獅子神達を、幻惑するよう照らす。精神をこちら側に引きつけるような光の下で、ファハドは相手をひたと見つめた儘、口を開く。
(「人と真剣に話すときは目を見て話せと、御主人に躾けられたから」)
「あなたたちは、信心を利用する存在に騙されている」
彼を見る獣神の目は、憎悪に似た感情を滾らせた。
唸り、威嚇するように牙を剥く彼らへ、ファハドは静かに続ける。
「神の言葉だというけれど、それはほんとうにあなたを導く言葉?」
「なれらの信ずる神の御意志は歪められ、叛逆の徒に体よく利用されているのです」
戦う為の扇を堅く握りしめ、金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)が言葉を継ぐ。
いずれにせよ戦闘は避けられぬものであろうが、できれば、救いの道を行きたい。鞆は強ばる指先を感じながら、息を吐く。
「……指揮官は、仰ってイた――賊は『此方を丸め込もうとうする』と。瞞さレるな!」
墓守としての役目を忘れるな、と、誰かが叫ぶ。
そう叫んだ者へ、ファハドはぴたりと視線を合わせた。
「今の自分の姿……どんな形か、自覚はある?」
此所に鏡はない。
だが、彼が差し出す光は、暗い通路に確りと影を焼き付けている。獣に変じた身体。性別すら変じた、異形。
「いまあなたはあなたの神とは違うものの思惑で動いている――信仰が踏みにじられている……そんな痛々しい姿になってまで、遂行せねばならないもの?」
ファハドは小首を傾げる。それでいいのか、と。
「このままでは知性も心も――人としてのなにもかもを捨てた怪物になってしまう。あなたに命を下した者に疑問を持って」
空気が少し、傾いた気配がして、鞆がきゅっと口元に力を入れた。
だが、認めぬと、獣神の一体が、言葉を受け容れぬよう一喝する。
「これは、神カラ授かった力だ……!」
信じられるか、と敢えて鼻白む。皆の戦意を鼓舞するかのように。
ったく――呆れたような、怒りを含んだような、吐息のような声音が、それを嗤う。
「神ってのはおっかねえもんだ……あんたもそう思わないか?」
睨み付けるように此方を見つめ、放たれた花鶴・景臣(灰に帰すまで・g04686)の問い掛けに、それは顔を赤くしながら牙を剥く。
「不敬ナ! 神を侮辱するカ!」
「侮辱? ……良く言う」
は、と息で笑って、景臣は双眸を更に鋭く細めた。その内心まで、見透かそうとするかのように。頬が引き上げる笑みに似た唇の形は、皮肉だ。
「あんた等だって少からず思ったんじゃねえか……人が唐突に変貌する様子はどうだった? ――怖かったろ?」
景臣の言葉に――。
幾人かは沈黙した。記憶は曖昧だが、確かに見ている――忘れられるはずがない。
先程の戸惑いをなかったことには出来ぬ。何故それを知っているのか、それを問い詰めることも忘れる程に。
「そう、あなたがたは謀られているのです」
二人の言葉を反芻させるべく、鞆が力強く頷く。
「この地を守らんとするあなたがたも、探索を命じられたあのものたちも、ともにこの地――この世に伝わる神々を奉ずる民なのでしょう……あなたがたの信ずる神は、身命賭して仕えるものをいたずらに相争わせる存在なのですか?」
諫言だ、と言われている。だが、鞆の言葉を否定できぬ。
何故なら彼らは賊の姿を見ていない――墓荒らしの賊風情が、我らを欺くために、このような事を騙ろうか。
「同胞の変化に、恐怖を覚えたのではないのですか? ほんとうに、その異変は神がもたらしたものなのですか?」
少女の声音は、静かにしみこむ。こうも心身が変化する神のご加護とは、一体何なのだろう――。
一介のリターナーである彼らに、答えがあろうはずもない。
「――今なら間に合うのです。どうか、人として生き、人として生きることをやめないで。人であることを、やめないで……!」
必死に語りかける鞆の前に――苦しみ藻掻きながら獅子神が一体、近づいてきた。
「グゥ、ガアァ!」
葛藤の末、理性が消えてしまったのやもしれぬ。
言葉も無く剣を抜いた神が、ふらつきながら斬りかかるのを、無造作に振るわれた白刃が払い落とす。
「ったく、世話の焼ける……」
敵に向けた景臣の表情は、苦々しいものがあった。
お前らは、そんなに易く暴れるような存在じゃないだろう、と不機嫌そうに言う。
「大体、侵入者を排除する為だけに、性格まで変える必要は何処にあるんだ?」
「……」
解ってるんだろう、だから、苦しんでるんだろうが――一体に呼応するように、獣の如く目を輝かせ始めた彼らへ、景臣は鋒を突きつける。
「神なんぞそんなもんさ――あんた等がどれだけ信奉しようと、どれだけ敬愛しようと……結局手前勝手に民を弄び、捨て駒にしてしまう」
それでも、景臣の声は届いているのだろう。苦痛に鼻頭に皺を寄せ、高い唸りを上げる。聴くに堪えぬ、神を奉じる歌。
ファハドの翳す光が、三人との距離を曖昧にするが、それを斬り裂いて踏み込んでくる彼らを――労しげに見つめた鞆が、扇に神気の吐息を吹きつけるよう、応じる。
「祓え給い清め給えと申す事を聞こし食せど」
揃えた指先で静かに扇を薙げば、清めの神気で押し返す。
くるりと舞い、躍る白髪。
「努力する者を、謀る神は――神にあらず……どうか、祓戸大神よ」
呪いを祓え――己が神に願い、捧げる舞を舞う。
奇しくも対比的な対峙の狭間。
怯んだ彼らの前へ、景臣が剣戟を伴いながら躍る。その身体は猛り狂う紅き地獄を放出し、紅蓮に染まっていた。
「己が己じゃない化け物に作り替えられる――良しとするなら好きにしろ……だが――僅かでも迷いがあるなら……間違いと思うなら踏み留まれ」
対抗と吹きつけられた獅子神の炎を、彼は炎纏う剣風で一蹴する。
柄で叩き、刃の腹で峰打ちを決め、力加減こそ容赦はしなかったが、炎は加減した。
駆けながらも、対峙する敵の表情を見れば――彼らが行く途は決めたのだと解る。
だからこそ、景臣は叩きのめしながら、呼びかける。
「ほら、好い加減起きやがれ」
――果たして、十体ほどの小隊は、次々と通路に沈んでいった。
昏倒しながらも、その姿は穏やかな印象があった。彼らの表情は何処か晴れやかであり――容貌からは、獣の気配を遠ざけつつあった。
「さて、では、指揮官とやらに目通り願おう」
落ちた鍵を拾い上げたファハドが、仰々しい装飾の施された石室を一瞥し、囁いた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【照明】がLV2になった!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
●名も無き誰かの寝所にて
灯りが焚かれた、藍と赤で彩られた石室の中心で、神砂使いは不機嫌そうにディアボロス達を睨みつけた。
高貴なる者を連想させる風体のマミー。その姿形だけ見れば、これ以上、この場で待ち構えるに似合いの存在もおるまい。
だが、この男は、世界に存在しうる何かの形を真似た、一介のアヴァタール級クロノヴェーダに過ぎぬ。
「神聖なる儀式を穢した、うぬらの行い……万死に値する」
厳格な声音で、陳腐な台詞を発し――されど、やはり油断ならぬ気配を纏ったマミーは、軍配を振るう。
床も壁も天井も、四角く磨かれた石がきっちりと並ぶ一室であるが、うっすらと黄砂が積もっている。さらさらと男の指揮によって、浮かび、躍る――。
「兵はまた連れ戻し、教育すれば良い。うぬらを排除してからな」
金刺・鞆
神を騙る簒奪者どもめ、なにが神聖か。彼らをきさまのもとには返しません。教育などと、かようなものはただの洗脳なり。
信心とは、己の裡よりわきいでてささげるもの。他者から強いられるものでなければ、ひととしての在りようの搾取を許すための方便にも非ず。
……はらの底が、ぐらぐら、と。これまでにも度々感じたこの熱さ。これが、怒り、なのでしょうか。かように焼かれるような想いでは、浄めの舞は舞えぬやもしれません。
なれば、猛き神に奉じます。どうか是なる禍きもの、滅ぼす御力を御下賜くださいませと!
風や砂の扱いならば、わたくしにも多少の覚えあり。舞扇に巻き込んで、攻勢幾ばくかを削ぎましょう。怒りもすべて、祓に載せて。
レン・ナイトハルト
「できるなら好きにしたらいいさ。勝者の権利だ。是非もない」
神聖かは甚だ疑問だったが、首魁の憤りはもっともだ
私が奴でもそう思ったに違いない
だが、従う義理と道理はない
【偽神】を発動
出し惜しみはなしだ
ショットガンで牽制して肉薄、肉弾戦を仕掛ける
【味方をディフェンスする】
私は潰れ役だ
肝心なのはこの親玉を仕留めること
それは仲間がなんとかする
「砂が相手なら固めればいい」
固める水分なら自前で用意できる
負傷による流血で砂を固めて殴る蹴る
「どうした? 万死も何も、まだ一度も殺せていないぞ」
一度くらいで殺されはしない
魂が肉体を凌駕する
タバコを咥えて火を点けながら、
「今のは良かった。私じゃなかったら死んでたかもな」
日金・陽洋
墓荒らしに殺し合いをさせといて神聖なる儀式たぁ、言ってくれる
人を人と思わねえてめえの行動こそ、赦されたもんじゃねえ
神の御意志だ何だとぬかして、やらせる事は洗脳と殺し合いか
殺されて、リターナーとして生かされて、使えなきゃ命ごと捨てられる、それがてめえを信じた人の末路たぁ、酷だとは…てめえは思わねえんだろうな
俺も生かされた身だが、てめえ等には屈しない
自分や誰かの為にてめえを信じた人々…解放してもらうぜ
戦闘はできるだけ仲間と連携
残留効果も活用
特に地形活用をしてくるなら【エアライド】で有利を図ろう
向こうの攻撃にも注意し、技能で分かる事があれば共有
砂の巨人になろうが何だろうが…一撃、ぶちかます
アドリブ可
花鶴・景臣
その辺にしといた方が良いぜ?
大仰に嘯いて、それで負けたら恥ずかしいからな
侮る素振りを見せど、決して慢心はせず
復讐者との連携は、出来得る限り密に
降り注ぐ熱砂は服で威力を僅かでも削ぎ
忍耐力で立ち止まる事なく敵へ駈ける
もしエアライドで最適路を見出せたら活用
この程度の熱、炎に焼かれるよりずっとマシだ
砂で視界が制限されるのは敵も同じ筈
それなら暗殺の要領で接近も手だ
残像で撹乱しつつ、不意打ちを狙おう
捨て身の一撃を見舞い、クソッタレの自尊心諸共
神様の野望を打ち砕いてやるよ
…はて
あんた、さっき何て言ってたっけな
万死に値する?
俺達を排除?
…はっ、消されるのはあんたが先らしいぜ?
人命を軽んじる神にぴったりの末路だ
ファハド・ハリーリー
ファハドは神を信じてはいないけど、己の心の拠り所を汚されるというのは、辛いことだと知っている
これ以上苦しい想いをするひとを増やさないよう、混乱の元を絶つ
殴りつけるよう、勢い良く火球を放つ
他復讐者の攻撃の邪魔にならないよう[火炎使い][ブレス]で炎の挙動を制御
必要あれば連携もとっていきたい
敵から距離を取り、あちらからの攻撃を受けないよう回避行動
【エアライド】も利用し、建築物を盾にしつつ良位置をとろう
砂の巨人、砂の塊、あの質量はこわい
シャフィーカ、はぐれないよう気を付けてね
身を覆っていた砂を剥ぎ取ることができれば、こちらのもの
ミイラなら、きっとよく燃える
消し炭以下にしてあげる
●復讐者
「神聖なる儀式を穢した、うぬらの行い……万死に値する」
神砂使いの言葉が石室に響くや、肩を竦めた男がいる。
「その辺にしといた方が良いぜ? 大仰に嘯いて、それで負けたら恥ずかしいからな」
顎を上げ、花鶴・景臣(灰に帰すまで・g04686)が言い放つ。
嘲弄に、男は動じぬ。それが自信からなのか、単純にディアボロス達を侮っての事なのかは解らぬ。
「敗北など、考慮する必要などあるまい」
「そうか」
刀の柄に触れ腰を落とした彼の横、同じく身構えた青年が不快そうに眉を寄せた。
「人を人と思わねえてめえの行動こそ、赦されたもんじゃねえ――墓荒らしに殺し合いをさせといて神聖なる儀式たぁ、言ってくれる」
日金・陽洋(陽光・g05072)は、強く敵を睨み、言う。
「神の御意志だ何だとぬかして、やらせる事は洗脳と殺し合いか」
「洗脳だと、笑止」
陽洋の言葉に、男は皮肉げに表情を歪めた。
「我らがファラオを、エンネアドを――信仰することで、人は生きる価値を持つ。当然のことだ。ましてや蘇りの奇跡を得たリターナーは、自らそうあるよう務めるのは義務であろう」
勝手な言い分だ。だが、少なくともこの男は、そのように思っているのだろう。
思いながらも――陽洋は閉口した。
新宿島に流れ着いた瞬間に失った多くの記憶。だが、この世界でリターナーであった時、きっと彼らのいうような意識があったのやもしれぬ。
この儀式への――このクロノヴェーダどもへの不快感。
「無駄さ」
ばっさりと言い切って、陽洋の横をするりと通り抜けたのはレン・ナイトハルト(Black Devil・g01874)――真っ直ぐに敵を射貫く彼女の眼差しは平静そのもので、憐憫も義憤も知らぬように凪いでいた。
兵を連れ戻すといったな、と神砂使いに囁くように言い、
「できるなら好きにしたらいいさ。勝者の権利だ。是非もない」
彼女自身において、縁もゆかりもないリターナー達の身の振り方が、敵となろうが味方となろうが――その生死すら、気に掛けるものではない。
そして、このクロノヴェーダの心情も理解はできる――同調するかは別として。
この儀式が果たして神聖であるかについては首を捻るものの、計画を悉く邪魔されたのなら、憤るのももっともだ。
その立場なら、私でもそう思ったに違いない、と。唇が弧を描く。
「だが、従う義理と道理はない」
しかしこうして対峙した以上、描く結論はただひとつだ。
下げた手にショットガンを、その姿勢で歩きながら、
「孤高、強襲、蹂躙、静謐」
静かに囁く。命じるように。揺り起こすように。
魔力の羽が仄かに輝き、レンの身体に悪魔の力が満ちる。
「出し惜しみはなしだ」
無造作に肩の高さまで腕を上げるや、その先の銃が吼えた。
炸裂音が空気を震わせ、神砂使いの包帯に包まれた肩が爆ぜる。刹那、レンの拳が鼻先に迫る。
撃つか逸れるか寸前に、男は思いの外俊敏に後じさり、砂が巻き上がる。
疵も身体も包み込み、砂の巨人となったそれは、ディアボロス達へ突進してきた――。
レンは、それを全身で受け止める。事もなげに、否、それなりに壮絶な音が響いたが、彼女は軽薄な笑みをもって受けた。
その隙を見逃すはずもない、見立て通り、神砂使いを挟んで対峙するように、景臣と陽洋が挟撃を仕掛ける。
縦に走った白刃、景臣の一閃は毒を孕み男を襲い、速度を乗せ放たれた横に薙ぐ蹴撃は、シンプルにレンと敵の距離を離そうという陽洋の気遣いが見えた。
「笑止っ!」
神砂使いが哄笑しながら、砂を繰る。周囲の砂が波打って膨れ上がり、ディアボロス達を呑み込もうと覆い被さった。
降り注ぐ熱砂を振り払うように、二人は跳躍した。宙を蹴って、高々と舞い上がる攻撃の手は追いかけてくるようで、ちりちりと焦げるような痛みが、生身の膚に感じた。
(「……この程度の熱、炎に焼かれるよりずっとマシだ――が」)
景臣が小さく舌打ちしたのは、痛みでは無く。頭上を制しようとも、砂で視界が遮られている事実へ、だ。
同時に、それは相手の弱点でもあろうが――地上の砂そのものが、男の感覚器官のように働くのか、床の砂は絶えず不気味に蠢いている。
砂を纏い、砂を操り、ディアボロス達を退けた男は、呵々と笑う。
「神聖な儀式を穢すものども、神罰を喰らうがよい――!」
そこへ、
「神を騙る簒奪者どもめ、なにが神聖か」
金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)の怒りに満ちた一声が、石室に強く響いた。
「彼らをきさまのもとには返しません。教育などと、かようなものはただの洗脳なり」
その貌こそ髪に隠れて見えぬが、彼女が腹を立てているのは明らかだった。
「信心とは、己の裡よりわきいでてささげるもの。他者から強いられるものでなければ、ひととしての在りようの搾取を許すための方便にも非ず」
舞扇を突きつけた鞆の言葉を耳に、ファハド・ハリーリー(天渡りの子・g04298)は肩口に顕現している相棒の額を指で撫でて、肯く。
「ファハドは神を信じてはいないけど、己の心の拠り所を汚されるというのは、辛いことだと知っている」
穏やかに。ファハドは言い――ライムグリーンの瞳が、ひたと敵を見据えるや、僅かに細められた。
「これ以上苦しい想いをするひとを増やさないよう、混乱の元を絶つ」
地を蹴る。既に戦場は敵の思う儘に形成されている――正面から仕掛けるのは、不利だ。
先の二人に倣い、すかさず宙を蹴り付け、加速しながら。
見下ろした先、砂の巨人の弱点は無いか――付け入る隙がないか、確認する。
砂の紗幕のようなもので本体は朧気だ。それを引きつけようというレンがいて、彼女が潰れる前に、決定的な一撃を食らわせようという、ファハドと二人。
(「砂の巨人、砂の塊、あの質量はこわい……」)
そっと息を吐く。感情が出ない貌であるが、その心は――この冒険活劇の締め括り、悪を懲罰する展開に、好奇が疼いている。
「シャフィーカ、はぐれないよう気を付けてね」
そっと囁けば、相棒は肩に齧り付くように、彼に捕まる。
「祓え給い――」
鞆もまた、舞扇を手に。息を吐き、いつもの祝詞を諳んじる。
(「……はらの底が、ぐらぐら、と――これが、怒り、なのでしょうか」)
様々ないくさに挑む中、度々感じてきた、腹の底から身を灼くような熱を、強く感じる。此所までの――持て余すほどの熱は、滅多にない。
それほどに、この敵は。
神を騙り、神を信じる者を翻弄するということが――鞆には度し難かった。
怒りの熱は依然、彼女の中で渦巻き、いつものように神に呼びかける境地に至れぬ。
(「かように焼かれるような想いでは、浄めの舞は舞えぬやも……しれません」)
だが、それでも構わない。
何時如何なる時とて唱える願いは、舞いを奉じる相手は、あの御方に違いない。
「……なれば、猛き神に奉じます。どうか是なる禍きもの、滅ぼす御力を御下賜くださいませと!」
邪気を清める慈悲の心が湧かぬならば――滅し、祓う。
「……祓え給い清め給えと申す事を聞こし食せど」
舞扇を手に、怒りもすべて、祓に載せて。
敵の操る、砂を浚う風を吹かせる。開いた扇は砂を裂き、静謐なる鞆の舞踊はそれらの間に存在する力を祓って消し去る。
「風や砂の扱いならば、わたくしにも多少の覚えあり」
「小癪な」
軍配を振り上げれば生じる砂嵐を、四散させたのは、赤き液体。
「砂が相手なら固めればいい」
鞆の前へと滑り込み、その嵐の暴虐を受け止めたレンが笑った。
スマートな黒衣に身を包んだ身体は、即座に敵へと躍りかかる。幾度となく繰り返した、悪魔の能力を生かした肉弾戦。
その結果そのものは、レンの姿を見れば明らかだ。一挙一動の度に舞い散る滴は汗でなく、鮮血だ。
「どうした? 万死も何も、まだ一度も殺せていないぞ」
「ぐ」
挑発に、男は唸る。敵に応じて攻め手を変える事で砂を制御する集中力が落ちているのか、或いは取捨選択の判断が厳しいのか。
決したように、男の元に砂が集まる。砂の巨人と化し、まずは鬱陶しいレンを排除しようと決めたらしい。
振りかざされた砂の拳は、レンの二倍の大きさ、圧縮された密度を持ち――圧倒的な物量をもって叩き潰しに掛かるが、彼女は躱さない。
凄まじい音がして、砂は石室の床に朱を混ぜて散る。どれもこれも、土塊のように固まっており、天上まで飛び散る礫が、衝撃の強さを知らしめる。
なれど。
「今のは良かった。私じゃなかったら死んでたかもな」
レンは顕わになった男の足を踏みつけながら、鮮やかな血に濡れた朱唇で煙草を咥えた。
生きてはいる。立ってはいる――だが、これ以上動くのは難しい。
――しかし。
その背後で、大きく息を吸う音がする。
「ミイラなら、きっとよく燃える――……消し炭以下にしてあげる」
ファハドが吐き出した灼熱の炎が、ぎゅっと圧縮された火球となって、その背を抉る。僅かに残る砂の鎧を剥ぎ取るように、燃え広がる炎の狭間を割って――熱砂も、巨人の腕も怖れぬように、刀を水平に構えた景臣が突進してきた。
「……はて。あんた、さっき何て言ってたっけな――万死に値する? 俺達を排除? ……はっ、消されるのはあんたが先らしいぜ? ――人命を軽んじる神にぴったりの末路だ」
身動きならぬ男に、躱される道理はないが、敢えてその言葉を耳元に囁けるまでに肉薄し――、
「クソッタレの自尊心諸共――神様の野望を打ち砕いてやるよ」
しなやかに上半身を捻り、嗤った景臣が振り抜いた刃には、毒蠍の毒が宿る。
ファハドの炎が届いていたらしく黒く焦げた背へ、深々斬りつける。彼らへの反撃へ、砂を繰ることすら、鞆が許さぬ。
濁音しかない苦痛の絶叫をあげた神砂使いの傍らで――じゃり、と砂を踏み込む音がした。
「殺されて、リターナーとして生かされて、使えなきゃ命ごと捨てられる、それがてめえを信じた人の末路たぁ、酷だとは……てめえは思わねえんだろうな」
静かな声で陽洋が零す。
今なら解る。神への忠誠も信仰も、クロノヴェーダの勝手な言い分。奴らの手勢を増やすために利用されているに過ぎぬことを。
「俺も生かされた身だが、てめえ等には屈しない――自分や誰かの為にてめえを信じた人々……解放してもらうぜ」
曾ては、そうして切り捨てられる側であったが――そして今は、それを打ち破る力を持っている。
「一発、ぶちかます!!」
陽洋の身体から闘気が放出される。淀みなく強く、気を漲らせた彼は、残る距離を刹那で詰めた。
狼の如き疾駆、その速度と共に、握り込んだ拳を鋭く捻じ込む。拳は、より強い闘気で強化されており、僅かな砂の抵抗ごと、男の腹を撃ち抜いた。
彼の束ねた銀髪の先が、膚に触れた時。
「莫迦な……」
増悪の根源たるクロノヴェーダは砂の中に崩れ落ちた。そのまま、制御を失った砂が降り注ぎ、埋もれてしまう――何もかも、覆い隠すように。
「ったく。てめえには不釣り合いな寝床だ」
砂山を一瞥し、背を向けて、陽洋は軽く目を伏せた。
瞼の裏で――道中で戦った必死なリターナー達の姿と。遠き、虚ろな記憶の影と重なった。
残る思いはただひとつ。
神の盤上遊戯が如き、悍ましき儀式から逃れたリターナー達が――自分のような末路を辿らぬ事を。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】がLV2になった!
【怪力無双】LV2が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【熱波の支配者】がLV2になった!
効果2【凌駕率アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】がLV4になった!