リプレイ
文月・雪人
【雨雪】
※アドリブ連携歓迎
海路の可能性はずっと気になっていたのだけれど
安房国の動きは気になるし、今試せるのは有難い
相模国にも兵器工廠破壊作戦の時に
隠れ里を作って保護したヒルコ達がいて
出来れば様子を見に行きたい
氏政を倒してこの地の圧政が解かれた事で
皆も隠れる必要が無くなった事も伝えて安心して貰いたい
ディアボロスの事は忘れているだろうか
それとも思い出してくれるだろうか
【アイテムポケット】にお土産を沢山沢山詰めて行こう
食料や衣服等の定番支援セットに
桜餅やお団子や飴玉等の甘味も添えて
出来れば一緒に食べながら皆の暮らしぶりを聞いてみたい
困っている事があれば可能な限り手伝って
その上で此方も協力をお願い出来ればと思う
皆を苦しめた破壊兵器
安房国にはあの技術を持ち込んだ連中の拠点がある
奴らの更なる悪事は何としても阻止したいけど
国境を超える方法を探るには皆の協力が必要なんだ
危険を伴う任務だけど、俺達が必ず守り通すから
手伝ってくれる人はいないだろうか
水への不安感は
長巻の【水中適応】で水遊びをしながら和らげよう
鈍・長巻
【雨月】
※アドリブ連携歓迎
雪人の【アイテムポケット】の効果を借りて、俺も支援物資の運搬を手伝おう。
体格の小さいヒルコだけの生活は、それなりに苦労も多かっただろうしな、
少しでも足しになればと思う。
そうだな困り事があるなら、俺も雪人と共に手伝おう。
あとこの機に交流するなら折角だ、
お茶とおにぎりとお菓子も用意して、皆で花見もいいかもしれない。
落ち着いた所で仲間と共に、ヒルコ達に協力をお願いする。
俺達の仲間として、船員を大募集だ。
敵と遭遇する危険性がある事も正直に伝えた上で、
戦闘になっても皆を護る事を最優先にする事を約束し、協力者を募りたい。
そういえば、皆は実際の海を見た事はあるのだろうか。
まあ、大きな大きな水たまりだな。
泳ぎが得意な方が向いてはいるけれど、泳げなくても心配はないぞ。
俺達と一緒なら水中でも呼吸が出来る裏ワザが使える。
なんなら試してみるか?
もし海が怖い様子なら
手近な池や川で【水中適応】の効果を試して安心して貰いたい。
遊びの延長で慣れて貰えば、恐怖感も薄らいでくれるかもしれないしな。
春も日に日に深まる四月の半ば。
遅咲きの桜が華やかに咲き誇る相模国の山里に、二人の復讐者が訪れていた。来た道を確かめるように周囲へ目を配りながら、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は呟く。
「安房国の動きは気になるし、海路の可能性はずっと気になっていたのだよね」
相模国を苦しめた北条氏政は倒れたが、家康からエゼキエル勢に『安土城』の改造が託されたというのはなんとも気味の悪い話だ。叶うならばすぐにでも手を打ちたいところだが、令制国の壁が立ちはだかる現状、正攻法で安房国へ攻め入ることは難しい。もどかしい想いはあるが、ひとまずはこうして海路の可能性を試せるだけでもよしとするべきだろう。
そうだなと頷いて、鈍・長巻(ある雨の日の復讐者・g03749)は数歩の距離を縮め、先を行く腐れ縁の傍らに並んだ。
「それに、この辺りのヒルコたちの様子も気にはなってたんだ」
「ああ。氏政を倒して、この地の圧政も解かれた。もう隠れる必要がなくなったってことも、伝えておきたいしね」
兵器工廠破壊作戦を経て、相模国のヒルコたちは天魔武者の目を逃れるため、復讐者たちが整備した各地の隠れ里へ移り住んだ。氏政亡き今となっては、その里も役目を終えたと言っていいだろう。ヒルコたちに安心してもらうためにも、できるだけ情報は共有しておきたかった。
目的の隠れ里は、人里離れた山中に位置していた。とはいえ川や池などの水場は近く、ヒルコたちが隠遁生活を送るには支障のない場所だ。少し湿った土と草花の匂いが立ち込める山道をしばらく登っていくと、生い茂る木々の枝葉を透かして木造の家々が見え隠れし始める。入り口で立ち止まると、突然の来訪者を珍しがって里のヒルコたちが集まってきた。
「やあ――ええと。俺たちは……」
「お久しぶりです! でぃあぼろすの方々ですね!」
「! ああ、久し振り」
はきはきと声を弾ませ出迎えるヒルコたちの姿に、雪人はそっと眦を下げた。憶えていた、というよりはこちらの姿を見て思い出したという雰囲気だが、それでも己の成したことで彼らの暮らしが守られたという事実は素直に嬉しい。
「今日は皆に話があってきたんだ。お土産もたくさん、持ってきたよ」
運搬用のアイテムポケットには、食料や衣服などの生活必需品はもちろん、桜餅や団子などの季節の甘味も詰め込んである。
学生服の背を屈めて小さなヒルコたちと目の高さを合わせ、長巻が言った。
「ここでの暮らしで困ってることはないか? この際、何かあれば相談に乗るぞ」
小柄なヒルコだけ、それも慣れない場所での生活には、それなりに苦労も多かったであろう。とはいえ突然訊かれてもすぐには出てこないであろうから――まずは、アイスブレークということで。アイテムポケットから竹皮包みのおにぎりを両手に取り出して、少年は続けた。
「よかったら、飯でも食いながら話さないか?」
●桜下のひととき
簡素な丸太小屋が立ち並ぶ隠れ里の外れには、一段と立派な桜の木が聳えている。春の柔らかな日差しに包まれ、零れんばかりの花の下で温かい茶と菓子を囲む時間は和やかで、ともするとここが改竄世界史の中であるということを忘れそうになってしまう。
「なるほど……近況は分かったよ。大きな問題もなさそうで、安心した」
蒼い瞳のクダギツネを膝に載せ、雪人は若葉色の鮮やかな緑茶を傾ける。二人は食事がてらにそれとなくヒルコたちから近況を聞き出したが、氏政没後の相模の国はいたって平穏であり、取り立てて困ったことも今のところはない、ということだった。圧政から解き放たれたヒルコたちが自立した生活を送れているのなら、それは何より喜ばしいことだ。
だがいつまでも楽しい話を続けていられるかというと、こちらもそういう状況にない。さてどうやって本題を切り出そうかと考えていると、ところで、とお喋りなヒルコの一人が口を挟んだ。
「お二人は、何か用事があってここへ来られたのでは?」
あちらから話を振ってくれるのなら、都合がいい。一瞬、雪人と顔を見合わせてから、長巻は背筋を伸ばして切り出した。
「実はな――俺たちの仲間として、船員を大募集してる」
「センイン?」
「ああ。俺たちと一緒に船に乗って、海を渡ってくれるヒルコを探してるんだ」
海、と繰り返した何人かのヒルコたちは、あまり海に馴染みがないと見える。不安を与えることのないように言葉を選びながら、少年は続けた。
「まあ、分かりやすく言うと大きな大きな水たまりだな。泳ぎが得意な方が向いてはいるけれど、泳げなくても心配はないぞ。俺たちと一緒なら、水中でも呼吸ができる裏ワザが使える」
はあ、と一人のヒルコが分かったような分からないような相槌を打って、言った。
「それで、船に乗ってどこへ行くんですか?」
「皆を苦しめた破壊兵器があっただろう? あの技術を持ち込んだ連中の拠点が、この海を挟んで向かいの、安房国にあるんだ」
すかさず、雪人が後を継いだ。
「俺たちとしても、奴らの更なる悪事は何としても阻止したい。けど、国境を超える方法を探るには皆の協力が必要なんだ」
行き先が行き先だけに、旅路には危険もついて回るだろう。道中で敵と遭遇する可能性もないとは言えない――というよりも、状況を考えればその可能性の方が高いとさえ言えよう。懸念は包み隠さず伝えたうえで、雪人は続けた。
「危険を伴う任務だけど、俺たちが必ず守り通すから。手伝ってくれる人はいないだろうか?」
改めて問い直すと、ヒルコたちは皆一様に顔を見合わせた。そしてにっこりと笑みを浮かべて、小さな手を振り上げる。
「おれが行くよ」
「私も行く!」
競うように名乗りを上げたヒルコたちの瞳には、復讐者たちへの信頼と感謝の念が輝いている。彼らなりに、天魔武者の魔の手から自分たちを救ってくれた復讐者に報いたいという想いもあるのだろう。
ほっと胸を撫でおろして、長巻は言った。
「じゃあ、近くの川で水に慣れてみるか。それから一緒に来る奴を選んでもらおう」
せせらぐ春の川での訓練を経て、しっかり者のヒルコの娘を一人旅の仲間に加え、復讐者たちは山中の隠れ里を後にした。まず初めに目指すのは、相模湾――安房国への冒険の、始まりである。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV2が発生!
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※訂正※
阿波国への出発点は「武蔵国の海岸」となります。
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文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
引き受けてくれたヒルコさんにお礼を伝えつつ、改めて自己紹介を。
ヒルコさんの名前も聞いておきたいな。
船は最終人類史から、『小型の潜水艇』を持ち込みたい。
今回の任務で重要なのは、第一に『隠密性』だ。
敵に見つからない事が、安全の維持に直結するからね。
発見され難い水中に潜って進める事と、
船全体が【平穏結界】の効果範囲の30m半径内に入る大きさである事は、とても重要だと思う。
クロノオブジェクトではないので、パラドクスに対して装甲こそ強くはないけれど、
最終人類史の技術力で、優れた隠密性と安定した潜航力を持つ潜水艇を用意したい。
天正大戦国への運搬に関しては、少人数用ならトレインの貨物列車に乗せられないだろうか。
流石に難しい場合は、技術の専門家と相談して、部品に分けて運び込んで組み立てよう。
千早城改造の時に習得した、造船や操船の知識も役に立ちそうだね。
現地での運搬や組み立て時には、必要に応じて【怪力無双】を使おう。
船の名前はそうだね、
出航場所が武蔵国の海岸だし、『武蔵丸』とかどうかな?
武蔵国の南端に近い海岸。
陸に向かって吹きつける強い潮風が、狩衣の白い袖を翻していた。海に張り出した岬の突端から下方を確かめて、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は言った。
「見てごらん、ヒナ。これが最終人類史の――ディアボロスの船だよ」
「わ……すごい!」
焦げ茶色の髪を頭の左右で二つに結ったヒルコの娘は、名をヒナと言った。しっかり者で物怖じしない彼女は今回の作戦にはうってつけの人物で、雪人ともすぐに打ち解けてしまった。青い水面に浮き沈みするものをしげしげと見つめて、娘は興味津々の様子で尋ねる。
「でも、船っていうより鉄の塊みたいだわ」
「そうだね、実際金属の塊というのは間違いじゃない。これは『潜水艇』といって、水の中に潜って進める代物なんだ」
パラドクストレインの貨物車両を用いて運び込んだのは、ごく小型の潜水艇だった。もっと大きな艦を部品に分けて持ち込み、組み立てるということも考えたが、そもそもが少数精鋭の作戦だ。隠密性が成否の鍵を握る今回の作戦には、定員は少なくとも小型の方が何かと適当であろう。
なるほど、と頷いて、ヒナが言った。
「海の中を進むから、普通の舟より見つかりにくいのね」
「その通り。この作戦では、敵に見つからないことが安全の維持に直結するからね。まあ、相手方に水中探査能力がないとも限らないけど……」
少なくとも目視で確認できない分、海上を堂々と行くよりは見つかりづらいはず。クロノオブジェクトではないためパラドクスでの攻撃に対して抵抗力はないが、最終人類史の最新の技術を用いて造られたものだけあって安定した航行が期待できそうだ。
「船の名前はそうだね、船出の場所に因んで『武蔵丸』とかどうかな?」
いいんじゃないかしら、と笑う娘を伴って、雪人は眼下の潜水艇を目掛け岸壁を蹴った。座席の上に着地すると、船体が大きく揺れて波を立てたが問題はない――今のところは、すべて想定通りに進んでいる。並んだ座席の隣にヒルコの娘を座らせて、雪人は操縦桿を握り締めた。
「それじゃあ、出発しよう。準備はいい?」
「勿論!」
頼もしい応答に微笑みを浮かべて、青年は操作盤のボタンを押し込んだ。ガラスドーム状の屋根が落ちてきて、完全に閉まった瞬間、風の音が聞こえなくなる。握った棹を前に倒していくと、潜水艇はゆっくりと潜行を開始した。白い波頭が透き通ったドームに打ちつけ、砕けたかと思うと、空と海の境界がみるみる頭上へ遠ざかっていく。
「さあ――行くよ」
武蔵国の岸辺から対岸の安房国の領海に入るまでは、最短距離で凡そ10キロ。いざ動き出せば恐らく、事態が動くのにそれほどの時間は掛からないだろう。そのわずかの間に何が起きるのかは、まだ誰にも分からない。小さな潜水艇は厳かな緊張感に包まれながら、果てのない碧の世界を泳ぎ出した。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
文月・雪人
【雨月】
長巻とも合流して出発
【平穏結界】は必須だね
水や食料等の必要物資は【アイテムポケット】に入れて行くよ
俺はヒナと潜水艇に乗って操舵を担当
長巻には船外で周囲の警戒を頼む
国境には夜闇に紛れて向かう
【完全視界】で視界を確保
最終人類史で用意した海底地図も参考に
敵に見つかり難いルートを選び
危険がない事を確認しながら海底に沿って進んで行こう
ヒナの様子は常に気にかけておくよ
大丈夫だよと声をかけ不安を和らげる
手を繋げばヒナも【完全視界】を使えるし
神秘的な海の景色も楽しんで貰えたら嬉しい
もしヒナに余裕があれば見張りの手伝いも頼もう
役割がある方が気が紛れそうだし
見張りの目は多い方が助かるしね
頼りにしてるよ、ヒナ!
海の国境はどうなっているだろう
現地の状況を確認しながら慎重かつ素早く調査
ヒナと一緒なら境を越えられるか
同行できる影響範囲はどこまでか
船やヒナ自身に影響はないか
敵が察知する仕掛けがないか確認
敵発見時は
ヒナを庇い護れる様に備えつつ
極力見つからない様に隙を見て逃げる
帰還後ヒナにお礼を
協力ありがとうだよ
鈍・長巻
【雨月】
遅くなってすまない
ダイビングスーツと足ヒレ着用し
雪人とヒナと再び合流する
【アイテムポケット】に水や食料、コンパス、地図、双眼鏡、防水望遠カメラ、合図用の旗等も持参する
ヒナへのお土産として飴玉と綺麗な貝殻も
船の操縦は雪人に任せて
俺は【水中適応】で船外作業を担当しよう
潜水艇の内部からだけだと視界も限られてしまうしな
【完全視界】と双眼鏡で遠くまで見通して
敵に見つからない様に周囲を警戒する
潜水艇の船外に張り付いて同行
船内部との通信は基本的に有線を使い
距離を取る際は予め決めたハンドサインと、旗の色で合図する
今回は見つからない事を第一に考え
敵がいる場合は岩場や海藻に隠れ、迂回する
戦闘不可避な場合は俺が囮になって船を逃がす
国境では単独の潜入と、ヒナ同行の船との違いを確認する
また無理のない可能な範囲で安房国の様子も観察したい
隠密行動で海面へ浮上し
双眼鏡で安房国の海岸沿いを観察
見える範囲で近代的な拠点の有無や、安土城の場所、警戒状況を確認
ラピュセルからの漂着者にも注意する
調査後は無理はせず帰還する
どこまでも蒼い水の世界には限りがない。武蔵国の海岸を離れた小型の潜水艇は、一人のヒルコと一人の復讐者を乗せ、粛々と深みへ潜っていく。ドーム状の屋根をこんこんと叩く音を耳に留めて、操縦桿を握る文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は船体の後方を振り返った。すると、ダイビングスーツにフィンを装着した鈍・長巻(ある雨の日の復讐者・g03749)が揺蕩う水を蹴り、透き通ったドームの側方に回り込む。
「遅くなってすまない」
「いや、追いつく頃だと思ってたよ」
水中マイク越しに伝わる声に応じて、雪人は微かに口角を上げ、前方に視線を戻した。潜水艇の内部から見渡せる範囲には限界があるため、探索は操縦を担当する雪人と、船外の警戒を担当する長巻の二人組で行うことにした。念のために用意した平穏結界効果のためか、海中の様子は至って静かなものだ。最終人類史から持ち込んだ海底地図を参考に危険がないことを確認しながら、潜水艇は慎重を期し、水底を這うように進んでいく。
「この分なら、国境に着く頃には日が沈むな」
「かえって好都合だよ。隠密行動は夜闇に紛れるのが定石だ」
マイク越しに呟く長巻に、雪人が応じた。それにこちらは『完全視界』の効果で夜目も利く――ぬかりはない。航行は長時間に及ぶであろうが、水や食料等の必要物資は十分に用意してあるため、その点においても苦はないだろう。
ふと隣の座席に目を配ると、ヒルコのヒナは些か緊張した様子で、揃えた膝頭に両手をついていた。大丈夫だよと柔らかく笑って、雪人は告げる。
「こうやって手を繋げば、ヒナも俺たちの残留効果を使えるし。せっかくなら、神秘的な海の景色も楽しんで貰えたら嬉しいよ」
「ありがとう。でもどうせなら何かの役に立てるといいのだけど……私にできることはない?」
しっかり者で勤勉なヒルコの娘には、ただ水に揺られているだけというのも決まりが悪いらしい。気にしなくていいよ、と喉まで出かかった言葉を飲み込んで、雪人は首を捻った。彼女のようなタイプは、何がしかの役割がある方が気が紛れるのかもしれない。
「それなら、見張りの手伝いを頼めるかな。何か変わったものを見つけたら、俺たちに教えてほしい」
よろしくと笑いかけると、ヒナは嬉しそうに表情を輝かせた。何しろここは全方位に向かって広がる海の底、見張り番の目は多いに越したことはないだろう。
そうして無音の世界をどれほど進んだことだろう。日が沈み、船体を包む蒼が一段と深さを増した頃、随行する長巻が再び潜水艇のドームを叩いた。
『停まれ』
唇の動きでそう伝えて、長巻は双眼鏡で前方を見やる。そして改めてマイクに泳ぎ寄ると、続けた。
「前方に障壁だ。注意して進もう」
令制国の境界――即ちここは既に、安房国近海ということだろう。まずは俺がいく、と身振りで伝え、長巻が泳いでいく。しかしどうやら先には進めない――ならばと雪人が潜水艦を前進させたが、結果はこちらも同様だった。船体にも、同乗するヒナにも特に変わった様子はないが、とにかくこれ以上前には進めないようだ。
「これは……抜けられないな。ヒルコが同行していても、それで特別な効果が得られるわけじゃないみたいだ」
「私じゃだめだったかしら……」
「いや。俺たちは国境越えにヒルコがどう影響するかを確認したかったんだ。『影響はない』ってことが分かったのは、間違いなくヒナのお蔭だよ」
残念がる少女を安心させてやりたくて、務めて穏やかに雪人は言った。しかし実際、ヒルコが同行していても令制国の仕組みに影響はない、とすると、ヤ・ウマトの冥海機が陸奥国沖でヒルコを利用していたのにはいったいどういう理由があったのだろうか。
(「あれは『ディヴィジョン境界の霧』対策だった? だとしたら、ディヴィジョン境界の霧と令制国の境界の仕組みは、そもそもの原理が違うのかもしれない……」)
それはあくまで推測だが、いずれにせよヒルコを伴ってみても令制国の境界を越えられないということは事実だ。一足飛びの潜入が難しいと分かったのは残念ではあるが、せっかくここまでやってきたからには、他にもできることがある。
再びこんこんと船体を叩いて雪人らの注意を引くと、長巻は予め決めておいたハンドサインで『上』を示した。頼むよというように雪人が頷くのを確かめて、少年は力強く水を蹴り海上へと浮上する。水中適応の効果があるとはいえ、新鮮な空気は少なからず、緊張に強張った身体をほぐしてくれる。
(「って、ほっとしてる場合じゃないな」)
すかさず双眼鏡を覗き込み、長巻は波に揺られるまま安房国の海岸沿いに目を配る。ちかちかと明滅する光を湛えた高い塔のような建物は、灯台であろうか? その他にも、港湾地域には複数の船とともに、煌々と輝く現代的な設備が見て取れた。仔細は不明ながらも、それが天正大戦国の技術によるものでないことは明らかだ。
(「安房国の港には現代技術の設備があるのか。安土城は……ここからじゃ、見えやしないな)
致し方ない――人間の目の高さから、見渡せる距離には限界がある。しかし得られる情報は一粒として洩らすまいと、長巻は具に観察を続けていく。すると。
「!」
けたたましい警報が、風に乗って耳についた。港の様子が慌ただしくなり、人影がざわめき出したかと思うと、停泊していた船の数隻がこちらへ向かって滑り出す。夜の暗い波を分けて進む船の外見は、現代の巡視艇に近いと見える。
(「多分、レーダーのような装置を持ってるんだな……」)
これ以上ここに留まるのは、危険だ。一息に潜水して雪人らの待つ船に戻り、長巻は水中マイク越しに呼び掛ける。
「サイレンが鳴ってる。急いで引き返すぞ」
「ああ、分かった」
今回の探索はここまでと見切りをつけて、雪人は操縦桿を倒した。外周の把手に掴まった長巻も乗せて、潜水艦は猛スピードで水底を引き返していく。どのみち見つかっているのだから、帰りは最短ルートで安全圏まで逃げ切るだけだ。
「ヒナ、今回は協力ありがとうだよ」
「いいのよ、あんまり役に立った感じはしないけど、分かったことがあるならよかったわ」
そう言って、ヒナははにかむように笑った。スタート地点の海岸に戻ったら、旅のお礼に用意した飴玉に綺麗な貝殻を添えて、勇敢なヒルコの娘に贈るとしようか――そんなことを考えながら、復讐者たちは武蔵国の沿岸へ帰還するのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!