
3


真珠湾の守護者、最期の日(作者 朝下万理)
#空想科学コーサノストラ
#コーサノストラ、真珠湾追撃決戦
#真珠湾
#コーサノストラ、真珠湾海戦
#冥海機
#冥海機ヤ・ウマト
⊕
●
空と海との境界線で次々と上がる水飛沫と爆炎と黒煙をじっと見据えてきたその冥海機は、手を腰に据えた仁王立ちのまま静かに「最早これまでか」と呟いた後、そっと目を伏せた。
彼女こそがジェネラル冥海機『アリゾナ』。
超弩級の威力を誇る猛将として名を馳せ、冥海機ヤ・ウマトに仇なす者を屠る黒き戦艦だ。
春の海風に青緑色の髪を靡かせるその冥海機は、潮騒の奥の戦火を再び見遣る。
爆炎が上がるということは、ディアボロスが冥海機に破れ太平洋の海へと沈んでいく証――ではなく、自分の妹たちたるトループス級・アヴァタール級冥海機がディアボロスに破れて海へと抱かれる証。
このままではまもなくこの真珠湾にディアボロスが到着するであろう。
それを察して何機かの冥海機はアメリカの西海岸に向けて出発したところ。
だが、『アリゾナ』は西海岸敗走隊に属することはなかった。
なぜなら。
『アリゾナ』は自身のロボットアームの手をグッと握り、とんと自分の胸を叩いた。
「我を誰だと思っている。『真珠湾の守りの要』『真珠湾の守護者』と謳われる冥海機『アリゾナ』だ。この真珠湾を放棄すると決議された際に、身の処し方は決まったも同然。我が身も魂もこの真珠湾と共にある。沈むならば、この美しい港湾に抱かれ眠ろうぞ」
告げて颯爽と進みいるのは、本拠地たる真珠湾の海。
『アリゾナ』はもう二度と見ることがないであろう真珠湾の景色を目に焼き付け、聞くことがないであろう港湾のざわめきを聴き、潮の香りを胸に吸い込み、海面をそっと撫でた。
が、次の瞬間。彼女が垣間見せるのは『真珠湾の守護者』たる精悍な表情。
「――だが我は独りでは逝かぬ。一人でも多くのディアボロスの魂を冥土の灯火にしてやろう」
告げて笑った『アリゾナ』の赤い瞳は、一層紅く爛々とゆらめくのであった。
●
「お集まりいただき、ありがとうございましたっ」
新宿駅グランドターミナル。
停車するパラドクストレインの隣、木製リンゴ箱の上に乗った天竜・なの唄(春告小唄・g03217)は集まったディアボロスに溌剌とした笑顔を向ける。
「皆さん、真珠湾海戦お疲れ様でしたっ。皆さんが真珠湾海戦に勝利した事で、真珠湾に集結していた冥海機はアメリカ西海岸に向けて敗走を開始したようですっ」
しかし、ただ敗走するだけでは無いようで。
「ディアボロスの追撃を阻止する為、5体のジェネラル級冥海機がディアボロスに決戦を挑んで来たのですっ」
そんな冥海機側に勝ち目などあるわけもなく。
「おそらく……いえ、確実に彼女たちにとっては負け戦でしょうっ。しかし死を覚悟して挑んでくる敵は総じて手強い――故にその戦いは熾烈を極める事でしょうっ」
だがアメリカ西海岸への道を拓くため、冥海機との戦いは避けられない。
「なので皆さんには、皆さんに挑んでくる5体のジェネラル級冥海機を決戦で撃破して欲しいのですっ」
そう告げたなの唄は、詳細についても説明を始める。
「皆さんにお願いしたいのは、ジェネラル級冥海機『アリゾナ』と、その忠実な護衛であるトループ級冥海機『サイキックラブ』、そして皆さんに一矢報いるという復讐心に突き動かされたトループス級冥海機『JK型海防艦』ですっ」
護衛の『サイキックラブ』はディアボロスからジェネラル級を必死に守ろうとするらしい。故にこの護衛を残したままジェネラル級と戦うと苦戦するかもしれない。
かといってディアボロスを狙う『JK型海防艦』も実に侮れない存在だ。
断片の王『超大和』を殺し、ディヴィジョンを奪ったディアボロスへの復讐心に満ちており、普段以上の戦闘力を発揮することが予想される。
「『アリゾナ』自身も、敗北を覚悟した上で決戦を挑んできていますっ。……その覚悟を甘く見る事は出来ないでしょうっ……」
きゅっと唇を結んだなの唄の表情が物語る。
この戦いはおそらく、熾烈を極めることになるだろう。
なの唄は、今一度、集まったディアボロスを見回して告げる。
「この真珠湾追撃決戦に勝利すれば、コーサノストラの冥海機勢力は壊滅状態となるでしょうっ。そして、アメリカ西海岸に逃げ延びる事が出来ても冥海機は完全にコーサノストラの傘下となり、冥海機の為に行動する事は無くなるでしょうっ」
まずは確実に5機の冥海機を沈めないことには鎮守府があったハワイ・真珠湾を手に入れることは叶わない。
だからこそ、笑顔で激戦地に赴くディアボロスを送るのが自分の勤めと、なの唄はきゅっと結んでいた口角をあげた。
「冥海機との戦いもいよいよ大詰め、激しい戦いになるのは確実ですっ。けど皆さんなら無事に還ってきてくれると信じてますっ」
普段はふわふわと語る彼女が強い語気に込めるのは、確かな言霊の力であった。
●
ジェネラル級冥海機『アリゾナ』の胸の内を聴き、奮い立ったのは生き残ったトループス級冥海機たちだった。
「『アリゾナ』様。私たちもお連れください。私たちは『真珠湾の守りの要』たる『アリゾナ』様とともにあることを誇りに思っております……!」
『アリゾナ』の背後で膝を着き首を垂れるのは、男装の麗人たるトループス級冥海機『サイキックラブ』。
彼女たちの決意を背中で聴いた『アリゾナ』は彼女たちの方を振り返りもせずたった一言の感謝を告げる。
そんな『アリゾナ』と『サイキックラブ』の姿を見て震え立ち上がったのは、『JK型海防艦』。
「……ウチらだって、負けてらんないっしょ! 『超大和』様を殺し、私たちが愛した世界まで奪ったディアボロスは絶許!」」
「一人、一体。確実に打ちのめしたるわい!」
「『アリゾナ』様には太刀筋の一本もつけさせないんだから!」
意気揚々と声を上げる彼女たちとて、己の死期が近いことなど百も承知。
だが、どうしてこの胸の高揚を抑えようか。
我先にと真珠湾を進みゆく彼女たちの背を見つめ、また、背に感じる精悍な気配に触れ『アリゾナ』は思った。
頼もしい護衛たちに恵まれた。と。
リプレイ
ラキア・ムーン
アリゾナ、か
最初に確認されたのは七曜の戦だったな
随分と時間は掛かったが、ようやく捕捉出来たか
ヤ・ウマト攻略のやり残しだ、此処で終わらせる
必要ならば水面走行を使用
まずは此方を狙う、JK型海防隊を殲滅する
《RE》Incarnationを構えながら、敵へと『突撃』
ギリギリまで距離を詰め、此方の得手の間合いまで持ち込もう
【Call:Flame_Edge】起動
槍先へ炎の刃を展開し、槍の間合いを伸ばす
伸ばした炎の刃を広く振るために『薙ぎ払い』
敵へと前進しながら、炎の刃で敵を焼き斬る
敵の射線を撹乱する為、敵に接近しても敵の合間を縫うように駆け続ける
少しでも砲撃の際に連携が乱れれば儲けものだ
Emu【E.S】展開
魔術障壁で敵の砲撃を受け、砲撃の軌道をズラしてなるべく直撃を受けないように対応
しっかり防御を固め、敵に隙を突かれないように注意
死に物狂い……か
そういう敵は強い
だが、此方は常に死に物狂いでやってきた
今更覚悟で、負けていられるかよ
アドリブ連携等歓迎
藤原・鏡子
※連携、アドリブ歓迎
<心情>
己が死すとも一矢報いる……その意気や良し。
せやけど、ウチらもここでもたついとるわけにはいかへん。
アンタらの屍を乗り越えて、ウチらは渡米せなあかん。
姓は藤原、名は鏡子……推して参る!
<行動>
敵は艦隊なだけあって砲撃は得意なもの。
しかも死に物狂いとなれば、それを掻い潜って接近戦を仕掛けるのは無謀の極み。
ウチも遠距離からの砲撃に徹して一人一人、着実に沈めていく方針にするわ。
【未来予測】の残留効果を発動できたら、撃ち合いでも多少は有利になるはずや。
もし近接して攻撃する味方がいるなら、砲撃による近接支援も同時に行うで。
まずは一撃──ご挨拶仕る。
雷霆万鈞──霹靂神!
レールカノンの砲身が電撃を纏い、最大出力で飛翔体が超音速で放たれる。
代価として訪れる強烈なリコイルを、鬼人の膂力を以って強引に抑え込む。
冷却のために砲身が水蒸気を撒き散らし、焼き切れたヒューズが宙を舞う。
飛翔体と共にヒューズを装填し、再び発射体勢へと移行する。
せめてこの美しい真珠湾で、安らかに眠りなはれ。
麗・まほろば
なるほどなるほど
お前がここの守護者なんだね
つまりお前を倒してこそ、真にハワイを取り戻すことができるというわけだ
これは否が応でも頑張らないわけにはいかないね?
【水面走行】を展開!
【51センチまほろば砲】! 装填用意!
目標! 海防を担うトループス級クロノヴェーダたち!
まほろばは超々々々弩級戦艦だ。細々と策を捏ねるよりも真正面からどどーんっと撃ち込むぞ!
前を往く仲間への援護、そしてこっちにもまほろばが居るぞと警戒させて隙を作るためでもある
さぁ砲撃開始だ!
敵の砲撃には【15.5センチまほろば砲】を盾にして、極力、直接被弾しないように努めよう
ここまできて新宿島にさよならだなんて、もったいないからね。もちろん、最後まで戦い抜くんだから
おかえしはもちろん大艦巨砲射撃!
口径の違いというものを教えてあげるよ!
『私たちが愛した世界まで奪った』?
まほろばの大好きだったものを奪ったクロノヴェーダがよくいうよね
そして同じだから大好きなものを奪われた者が油断ならないことはよくわかってる
最後まで油断せずいくよ!
●
冥海機ヤ・ウマトが誇る『大本営』があった場所――真珠湾を目と鼻の先にして。
「……アリゾナ、か……」
太平洋にて数々の冥海機と戦ってきたラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)が、ぽつりとその冥海機の名をつぶやいた。
ジェネラル級冥海機『アリゾナ』。
『真珠湾の守護者』『真珠湾の守りの要』と謳われるその冥海機の存在が白日の元に晒されたのは、《七曜の戦》の決戦時空だった。
あれから時が流れること約一年半強。
「随分と時間は掛かったが、ようやく捕捉出来たか……」
感慨深げに呟くも、やることはただ一つ。
「ヤ・ウマト攻略のやり残しだ、此処で終わらせる」
ただ静かに真珠湾を見やる彼女の決意を静かに聴いていたのは、同じパラドクストレインに乗り合わせた藤原・鏡子(八千代の怨讐・g08000)。
鮮やかな緑色で見据える先は、冥海機ヤ・ウマトの断片の王である『超大和』を討ち取った際に奪還しきれず、空想科学コーサノストラに持っていかれたハワイ群島。
これが、冥界機ヤ・ウマトの奪還に尽力していた仲間たちの心残りとなっているならば、それは鏡子の心残りであるも同然。
「ほな、憂い仕舞いにいきましょか?」
はんなりとした鏡子の言葉にラキアは一つ頷いて、悪魔の翼をひとつ羽撃かせながら桃銀の髪を靡かせ海面を駆け始める。
鏡子もグリーンオプティシアンの角を太陽に輝かせると、その歴戦の猛者の背を追うようにして黒髪のロングヘアを海風に翻した。
真珠湾に向けて海面を直走るディアボロスの目的はただ一つ。
『真珠湾の守護者』――ジェネラル級冥海機『アリゾナ』の撃破だ。
だがそう易々と、目的を果たさせてもらえないのは、百も承知。
真珠湾へと向かう二人の目前に現れたのは、水兵服に身を包んだトループス級冥海機『JK型海防艦』たちだった。
「っ! 見つけたぞ、ディアボロス! 『超大和』様の仇!」
「絶対に殺す! 覚悟する時間すら与えてやらないんだから!」
そう叫ぶや、速度を上げてこちらへと接近してくる。
「お出ましのようだな」
「ほんまですなぁ」
ラキアは愛用の黒槍『《RE》Incarnation』を構え、鏡子も背負っていたレールカノン『電影鏑・婚ひ星』の砲口を『JK型海防艦』へと向けた。
一方の『JK型海防艦』も各々の武器を構え、ディアボロスに迫り来る。
「私たちが愛した世界を奪った罪は、死んで償ってもらうから!」
『JK型海防艦』のその言葉を、
「は? 『私たちが愛した世界まで奪った』?」
と、あどけない声でリフレインさせたのは、ラキアでも鏡子でもない。
二人よりもわずかに遅れてこちらへと到着した、麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)だった。
「…… まほろばの大好きだったものを奪ったクロノヴェーダが、よくいうよね」
クロノヴェーダたる冥海機は、愛する祖父との思い出はおろか、麗・まほろばという零式英霊機の存在すらもあの愛おしい世界から消し去った憎き存在。
海の碧を映すガラスの瞳に目一杯の憎悪を込めて敵軍を睨みつければ、『JK型海防艦』は一瞬たじろいだ。
しかし、負けていられないと口を開く。
「っ、うっさい! こっちはお前たちを倒すために死に物狂いなんだよ!!」
「『アリゾナ』様へは、指一本触れさせない!」
啖呵と同時にこちらへ向けられた砲口から次々に放たれるのは砲撃の雨。中には柄付き爆雷で襲いかかってくる『JK型海防艦』もいる。
その気迫たるや普段のトループス冥海機の比ではなく、ディアボロス側の防御や回避のさらに上を超えてくる。
相手の攻撃においては、回避も防御も無意味のように感じられるほどだ。
各々が反撃を繰り出す中、まほろばも反撃を返してひとつ生唾を飲んだ。
帰る世界を失った冥海機による決死の攻撃は威力が大きく、まほろばも『15.5センチまほろば砲』に隠れていたとはいえ無傷では済んでいない。
怒りと覚悟は彼女たちにさらなる力をもたらしていると言っても過言ではないだろう。
「……まほろばは大好きなものを奪われた者が油断ならないことはよくわかってる。……だから最後まで油断せずいくよ!」
と攻撃のために彼女が出現させたのは『51センチまほろば砲』。
「51センチまほろば砲! 装填用意! 目標! 海防を担うトループス級クロノヴェーダたち!」
砲弾を装填し指差し確認した後に真珠湾の方向を見据えれば、自分へと迫り来る『JK型海防艦』の型が確認できた。
自分が小回りが効く戦艦なら一旦引いて彼女たちを引きつけたり、横にズレで誘い出すなりできるだろう。
けど、まほろばは超々々々弩級戦艦。
前を往く仲間たちへの援護、そして、敵の注意を自身へ集めることにより、敵の警戒感や危機感を煽り、隙を作るため――。
「細々と策を捏ねるよりも、真正面からどどーんっと撃ち込むぞ! さぁ砲撃開始だ! ―― まーほーろーばー……フラーッシュ!」
宣言して桃色の前髪をくっとあげれば、額に現れたのは『まほろばサーチライト』。サーチライトから発射された超圧縮された光は、迷うことなく目標の姿をあらわにする。
「発射用意――……撃てーーっ!!」
真珠湾にもその存在を知らしめんと腹から発した号令と共に、装備しているありとあらゆる火器砲口から発射されるのは、全心全力を込めた砲撃の豪雨。
激しく轟く発砲音と共に砲口を飛び出した砲弾は、迷うことなく『JK型海防艦』の小柄な体を撃ちのめしていく。
爆音と爆炎、そして悲鳴と水飛沫が上がる中、全ての砲弾を撃ち終えたまほろばは咄嗟に『15.5センチまほろば砲』を盾に身をグッと固くする。
すると爆炎の向こうから飛び出して来たのは、油まみれで満身創痍の『JK型海防艦』三体。
三体はまほろばの目の前に飛び込んできたかと思った刹那、息を合わせて振り上げたのは柄付き機雷。
先ほどの攻撃はあれに痛い目を見せられた。
それに真珠湾を目の前に倒れ、新宿等に流れ着くことになったらもったいない。
「まほろばは、最後まで戦い抜くんだ!!」
柄付き機雷が振り下ろされたタイミングで後ろに飛んだまほろばは、機雷が爆発したタイミングに合わせて『15.5センチまほろば砲』の方向を三体へと向けた。
「口径の違いというものを教えてあげるよ!」
告げて砲弾をぶっ放し、満身創痍だった『JK型海防艦』を一気に海へと沈めてしまう。
太平洋の温かな海風に艶めく黒髪を靡かせながら鏡子は『JK海防艦』の鬼気迫る戦いに目を細めた。
「己が死すとも一矢報いる……その意気や良し」
敵ながら天晴れと口角を上げた鏡子の身体にも、先の攻撃による傷が深く刻まれている。故にトループス級戦と侮れば、一瞬で足元を掬われかねないだろう。
「せやけど、ウチらもここでもたついとるわけにはいかへん。アンタらの屍を乗り越えて、ウチらは渡米せなあかん」
鮮やかな緑を宿す拳をグッと握って、自分をギロリと見据えて突撃を開始した『JK型海防艦』を負けじと睨み返して鏡子は告げる。
「我が名は、姓は藤原、名は鏡子……推して参る!」
鏡子はレールカノン『電影鏑・婚ひ星』の砲口を『JK型海防艦』へと向けながら、さらに敵を見据えて観察を続ける。
(「敵は艦隊なだけあって砲撃は得意なものやった。しかも死に物狂いとなれば、この後それを掻い潜って接近戦を仕掛けるのは無謀の極みや……」)
「ならウチは遠距離からの砲撃に徹して一人一人、着実に沈めていくわ」
未来を見ようと試みても、やはり戦闘中は何もかもが揺らいで見える。
ならば自分の経験と直感を信じたらいい。
鏡子はレールカノンをグッと構えて、海面を捉える足に力を込める。
先ほどの反撃で、一度は敵に見せた手だ。
だが、今は自身が攻撃側。迷うことはない。
「まずは一撃──ご挨拶仕る」
告げてレールカノンのハンドルにかかる手に力を込めれば、雷神の力を宿した銃身が電撃を纏いバチバチと稲妻を迸らせる。
目標は、一番手前にいる『JK型海防艦』。
「――雷霆万鈞──霹靂神!」
鏡子が声高らかにトリガーを引くと、最大出力にまで圧縮された飛翔体が強烈な閃光を伴って射出された。
その光の飛翔体は何人にもその姿を目で追う暇すら与えない。砲口から発射された次の瞬間には、一番手前の『JK型海防艦』を射抜いたのだ。
「え」
何が起こったのか。と言わんばかりの『JK型海防艦』は、自身の腹から配線やら油やらが飛び散っているのを見て、やっと自分が射抜かれたのだと理解できたのだろう。
これは鏡子の集中力と鬼人の膂力の賜物。
これだけ大きな銃火器は射撃時に反動や照準ブレ――リコイルが発生する。
しかし鏡子は、自身の身体的能力でそれを強引に抑え込むことに成功していた。
遅れて海面から立ち昇るのは、飛翔体が海面を撫でながら飛んでいった証の水飛沫の道。
その水飛沫を浴びながら、鏡子は油まみれとなった『JK型海防艦』に鋭い視線を向ける。
「せめてこの美しい真珠湾で、安らかに眠りなはれ」
餞の言葉を送った相手に、もう生命の色は感じられない。だが、最後の力を振り絞って射出される反撃の砲は、真っ直ぐ鏡子の元へと向かってくる。
鏡子は、焼き切れたヒューズを舞わせる銃身を立てて、いっときの盾がわりとしてその陰に身を寄せる。
今でもその砲身は先ほどの砲撃の威力の凄まじさを謳うように、冷却のための水蒸気を撒き散らしているが、今は得物の頑張りを誉めてやる暇もない。
だが時期に、敵の砲撃は軌道を外し、上空へ一発発射されたのちに発砲音は聞こえなくなってしまう。
それはその冥界機が事切れた証拠でもあった。
『JK型海防艦』への反撃を行ったラキアは空中で体勢を立て直し、海面に着地するなり血に濡れた頬を乱暴に拭い、ぐっと敵を見据えた。
「……死に物狂い……か」
『JK型海防艦』の言葉をリフレインさせたラキア。
彼女をはじめとしたディアボロスは、今までも決死の想いを抱く相手と幾多のも激闘を繰り広げてきた。
彼らは本当に強かったし、気迫に圧し負けそうになりそうになったことも一度や二度ではなかった。
相手からしたらディアボロスは、突然現れて領土を侵略していった敵であろう。
だが、こちらからしたら冥界機や他ディヴィジョンのクロノヴェーダは、太平洋をはじめ、地球上のありとあらゆる陸と海、そして全ての人類とディアボロスの大切なものを奪っていった略奪者だ。
その略奪者に奪われた全てものを取り戻すための戦いにおいて、ラキアをはじめディアボロスが手を抜いたことなど一度もない。
「――此方は『常に』死に物狂いでやってきた……! 今更覚悟で、負けていられるかよ!」
気合一閃。
ラキアは『《RE》Incarnation』構えると、海面を蹴って敵との距離を急激に詰めていく。
だが、すぐには攻撃をしない。
自身の得手の間合いまで距離を詰めるや、構える黒槍に長大な炎の刃を宿すなり――。
「焔の刃よ、我が敵を焼き尽くせ!」
炎によって赤く燃え染まる黒槍で敵を薙ぎ払うが如く一気に横に広く振るえば、一番手前にいた『JK海防艦』二体を後ろへと吹き飛ばした。
ラキアは炎の刃を振り上げながらさらに海面を蹴って進むや、この二体に向けて刃を一気に振り下ろした。
炎の刃は黒槍の重さを感じさせないほど軽やかだったが、業火であることに変わりはない。
叩きつけられた炎はその水平服の少女艦を一気に包み込むや、叫び声だか爆発音だかわからない音を立てる。
その只中でも反撃の砲と死の淵に居てもなお鋭く射抜くような目線は、確実にラキアへと向いたのだ。
ラキアは咄嗟に、魔力障壁『Emu【E.S】』を展開するや後ろへと飛んだ。すると放たれた砲弾は、先程までラキアが立っていたポイントに確実に打ち込まれる。
こうなっては止まって防御するよりは、敵の射線を撹乱した方がいいだろう。
だが、錯乱した弾が当たっては元も子もない。故に、確実に敵砲の直撃を避けねばならない。
ラキアは魔法障壁を敵にしっかりと向けながら、砲撃の止むのをひたすら走って耐える。
が、やがて砲撃は止み。
ラキアがゆっくりと顔を上げれば、海域に散らばるのは『JK型海防艦』の残骸のみ。
そこから目線を上げれば、真珠湾へと続く細い運河があらわになった。
冥海機らしき影は運河の奥からは見えてこない。
ならば、湾内で戦おうというのだろうか。
戦艦『アリゾナ』史実をなぞるつもりなのだろうか。
「なるほどなるほど。あの奥に守護者がいるんだね」
まほろばは前髪を直しながら、その双眸を真珠湾へと向けた。
「つまりその守護者を倒してこそ、真にハワイを取り戻すことができるというわけだ。――これは否が応でも頑張らないわけにはいかないね?」
激戦を終えても尚にんまりと微笑むまほろば。
ラキアと鏡子も真珠湾を見据えると、三人のディアボロスは再び海面の上を駆けはじめた。
目指すは真珠湾の奥に座する、ジェネラル級冥海機『アリゾナ』だ。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【水面走行】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
●
パールハーバー・エントランスへと進み行ったディアボロスたちがまず感じたのは、物悲しさではないだろうか。
かつてここ――真珠湾には、冥海機の『大本営』が存在した。しかし、空想科学コーサノストラの所属となって時代が退行した影響か、どの鎮守府の港湾よりも陳腐に貧相に見える。
加えて、真珠湾を捨てアメリカ西海岸へ敗走した冥海機も多くいるためか、他の鎮守府のどこよりも静かなものであった。
それでもここが敵の本拠地であることには変わりはない。
傍に得物を携えながら時に辺りを見回し、陸地から聞こえる小さな物音にも警戒しながら慎重に真珠湾内へと歩を進めていくディアボロスたち。
そんな彼らの目前に真珠湾内に浮かぶ島が見えてきた。
フォード島。
正史でのこの島は、まさに太平洋戦争開戦の地。
そしてこの島の傍は『アリゾナ』の名を冠する戦艦が撃破沈没した海だ。
2025年の今でも、戦艦『アリゾナ』はフォード島の傍で長い眠りについているはずであった。
みるみるうちにその姿をディアボロスの前に晒し始めたフォード島。
しかし同時に、ディアボロスの目に飛び込んできたのは、フォード島の目前で仁王立つ漆黒の冥界機と、その配下の存在であった。
「貴様らがディアボロスだな? ようこそ我が大本営・真珠湾へ」
ゆるく癖のついた青緑色の髪を風に揺らし、赤い瞳を爛々と輝かせるその冥界機は、ディアボロスを悠々見据えながら続ける。
「だが、ただでこの真珠湾に上陸できるなどと思うなよ? 勝利の目は潰えたとて易々と真珠湾を貴様らに明け渡すことは、『真珠湾の守護者』としても矜持に反する。それに今や亡き姉妹や、偉大なる父に無念をここで晴らさずいつ晴らすのか……」
それに、同時にディアボロスと対峙しているであろう『戦艦長門』、『伊勢』、『神鷹」、そして『ニュージャージー』も奮闘してくれることだろう。
「――ならばこの『真珠湾の守りの要』たる『アリゾナ』。二つ名に恥じぬよう、ともに戦う姉妹に負けぬよう、貴様らへと挑ませてもらおう」
その冥界機――『アリゾナ』は高らかに宣言すると、黒い鮫を思わせる海戦装から伸びる全砲口をディアボロスの方へと向けたのであった。