リプレイ
トロワ・パルティシオン
まずは前提を振り返ろうか。
僕らの当面の大目標は、戴冠の戦に勝つこと。
ここは大丈夫だよね。
じゃあ次に、今の状況を確認しよう。
僕らはずいぶんと強くなったよね。最終人類史は今や強豪勢力だ。
ディヴィジョンを次々と撃破してきたし、イレギュラーの件も今後の調査に期待できるだろう。
僕らがここまで来れたのは、もちろんディアボロスの皆が頑張ったからだけど、それだけじゃないよね。
奪還戦は言うまでもなく、それ以外でも、人々の協力があったからやってこれた。
最終人類史の人々はれっきとした、共に戦う仲間だ。
だから今度の世界会議、掲げる理念は『人命最優先』でどうかな。
僕らは仲間を絶対に見捨てない。そうだろう?
ただ、これはあくまで理想の話。
残念だけど、被害をゼロにするのは現実的じゃない。
ディヴィジョン境界近くからの避難を手伝うとか、防衛拠点を作るとか、出来ることや求められることは多いだろう。
その調整と実現は決して簡単なことじゃない。
それでも、僕らなら出来るはずさ。
皆で戴冠の戦を乗り越えて、未来を掴もう。
●世界会議の理念
会議室に集まったディアボロス達が意見を交わした後、その会議の内容を取りまとめるべく、トロワ・パルティシオン(新時代の音色・g02982)が口を開いた。
「僕らが、世界会議の理念として掲げるのは『人命最優先』、それにつきるだろうね」
トロワの『人命最優先』という発言に、多くのディアボロスは、我が意を得たりと頷きを見せる。
「だけど、それは、一人の犠牲者も出さないという理想論の話じゃない。
ディアボロスは、クロノヴェーダに勝利しなければならない。
もし、ディアボロスが敗れれば、最終人類史に帰還した人々の祈りは簡単に失われるだろう。
豊富な人口を利用して感情エネルギーの供給源とされるか、アルタン・ウルクに全て平らげられるか、最終人類史が再び丸ごと歴史改竄されて全員消え去るか……。
その末路がどうなるかは様々に想像できるけれど、いずれにしても、許される事じゃない」
トロワは、多くのディアボロスに決意を促すように、そう強く言葉を継いだ。
「ディアボロスの皆の中には、一刻も早く全てのクロノヴェーダを撃破して勝利する事が、結果的に一般人の被害を最も小さくする……と考える者もいるかもしれない。
勝利の為ならば、一般人をディアボロスの統制下に置くべきだという意見にも、一定の利はあるんだろう。
けれど、この考えを突き詰めれば、勝利の為なら目の前の一般人の犠牲はやむを得ないと見捨てる事を意味する。
戦術的には、確かに正しいのかもしれない。
だが、その正しさを、僕らの多くは認める事など出来はしない……。
ディアボロスの戦う力の源泉は『復讐心』だけれど、人々を助けたいという心もまた、戦う力となっている。
それに歴史の奪還戦の時をはじめ、最終人類史の人々の協力は僕らの戦いを支えて来た。
今、最終人類史の国や組織の間で意見が分かれていようと、彼らはれっきとした、共に戦う仲間だ。
だからこそ、僕らディアボロスは『人命最優先』という理念を忘れてはならないのだと思う。
《戴冠の戦》の犠牲者を0にする事は、現実的には不可能だろう。
クロノヴェーダを倒し、全ての大地を奪還する……。それが、ディアボロスの使命なのも疑う余地はない。
けれど、この使命を果たす範囲で、可能な限り多くの人を救う事を諦めないという姿勢を『世界会議の理念』として、改めて最終人類史の人々に示そうじゃないか」
トロワや、彼女と考えを同じくする者達の示す理念は、ディアボロスが目指すべき『最善の未来』を掴み取る努力を惜しまず、しかし、ディアボロスが敗北する事で訪れる『最悪の未来』から目を逸らさずに、するべき事を行うという覚悟の表明でもあるのだろう。
更に、トロワは、多くのディアボロスに理解を呼びかける。
「今回の世界会議について、一般人の命を秤にかけるような話し合いに違和感を覚えた者も多いと思う。
前回の会議のように『夢や希望を語る』話し合いを期待していたディアボロスも少なからずいただろう。
そもそも、僕たちディアボロスだって、自分が世界の行く末に責任を持つような立場になるなど、想像もしていなかった者が大多数のはずだ」
トロワは、ここで大きく息を吸うと、ディアボロスに向けて、今目の前に在る現実について語る。
「けれど、《戴冠の戦》があと数か月に迫る今、僕たちディアボロスは、現実を直視しなければならない。
各国の政府は、充分に機能しているとはいいがたい。
国連などの国際機関も、機能不全を起こしている。
なにより、クロノヴェーダに対し、通常兵器の使用は無効どころか有害だ。
各国政府が独自にクロノヴェーダに攻撃を仕掛けようものなら、一般人の被害は更に拡大するのは間違いない。
だからこそ、クロノヴェーダとの戦いに最も詳しい僕達ディアボロスが世界会議を開催し、《戴冠の戦》に備える必要がある。
ディアボロスだけでなく、最終人類史の人々全てを含めた皆で未来を掴む。
そのためにも、『考えたくない事を考える』事は、力を持ち、これまで戦って来たディアボロスの責任なのだと思う」
トロワが、そう言って締めくくると、その意見の正しさを理解したように、最初はまばらに、そして徐々に大きく拍手が広がっていくのだった……。
世界会議の理念は『人命最優先』と決まった。
今後の話し合いは、『《戴冠の戦》に向けて、一般人と復讐者の連帯を強める』というワイルドカードの方針と、ディアボロスがクロノヴェーダに勝利し、大地の全てを奪還する上での犠牲を最小限にする『人命最優先』という理念に基づいて行われる事になるだろう。
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●世界会議の開催地と日程の決定
新宿島に用意された会議室の一つ。
トロワ・パルティシオンが、世界会議の理念の説明を行った会場で、その熱気の冷めやらぬ中、綿抜・カスミが、新たな議題についての説明を始めていた。
「理念に関する話し合いに参加して頂いた皆様、お疲れさまでした。
様々な意見が出された事で、世界会議に向けた理念を決定する事ができたと思います。
早速ですが、次は、世界会議の開催地と日程について、話し合いを行なってください。
《戴冠の戦》が始まるのが『2025年8月』だとすれば、猶予は半年もありません。
早急に、開催地と日程を定めなければ、世界会議の開催に支障が出るかもしれません」
カスミは、そう説明すると、プロジェクターを起動する。
画面には、開催地を決めるにあたる注意が表示され、カスミは、それに合わせて説明していった。
「皆さんは、会議を行う場所には、大きな意味は無いと思われるかもしれません。
最終人類史であれば、充分に準備すれば会議を世界中に生放送する事も出来ますし、インターネット配信であれば、視聴者投票などの双方向性を持たせる事も可能です。
まあ、実のところ、私も場所に意味なんてあるの? と思っていたのですが……」
と、カスミは個人的な意見を交えつつ、説明を続ける。
「ですが、世界会議を何処で行うかは、一般人の感情に大きな影響を与える事が統計的に確かなのだそうです。
判りやすい例でいえば、オリンピックや万博、サミットが地元で開かれれば、周辺住民の興味が大きく盛り上がる……という理論ですね。
また、地元で世界会議が開かれれば、その地域の一般人の方々が、世界会議に好意的になる事も予測されています」
カスミは、プロジェクターに表示された統計資料を基に解説を行う。
この資料は、最終人類史の社会学者たちが取りまとめた、信頼性のある統計情報であるようだ。
「上記の観点からすれば、世界会議の開催地は、人口が多く、世界会議に対して好意的では無い地域で行うべきである……となるかもしれません。
ですが、話はそう簡単ではありません。
世界会議の会場に選ばれなかった地域の住人は、何故自分達の地域で行わなかったのかという不満を抱くかもしれません。
更に、世界会議が開かれる地域に悪感情を抱いている人々は、それだけで、マイナス印象を抱きやすくなってしまいます。
また、ディアボロスへの好感度が低い地域で会議を強行した結果、開催地で『反・世界会議デモ』などが起きれば、世界会議への印象悪化も考えられるでしょう。
開催地の決定は、それらのメリット・デメリットを含めて、選定する必要があるという事です」
カスミは、そう説明すると、開催地についての提案方法にも言及した。
「まずは、開催地をその場所に選んだ理由、『メリット』が何かの説明を行ってください。
この理由は、現地の一般人等には説明しない情報となりますので、裏の事情なども隠さずに説明を行ってください。
周辺住民の好意度や警備のしやすさ、会場の見栄えなども重要な要素になるかもしれません。
次に、その場所を開催地として選んだ『表向きの理由』を説明してください。
こちらは、世界会議の開催国と共に、広く公開する情報となります。
『表向きの理由』に多くの人が納得してくれるならば、地元で開催されなかった不満を持たれにくくなるでしょう。
また、世界会議をどこで行うかも、世界会議への印象に影響を与えるので、その点も考慮に入れると良いでしょう」
カスミは、そう話を結ぶと、話題を日程についてのものに変えた。
「といっても、日程については、あまり選択肢はありません。
選べる日付は、最大でも4月上旬から7月下旬までの幅しかないからです。
世界会議で決まった内容を踏まえて、諸々の準備を行うならば、世界会議は早く開けば開くほど良いでしょう。
が、早期開催を優先した結果、準備や根回しが不十分になる事も予測されます。
ディアボロスに好意的な政治家や外交官、文化人なども、根回しに協力してくれるでしょうが、効果を発揮するには時間が必要です。
最低限の根回しを考えるならば『5月以降』の開催とするのが妥当でしょう。
逆に最終人類史の人々の防衛意識やディアボロスへの協力意識を高めたまま《戴冠の戦》に挑むのなら、世界会議の開催を『《戴冠の戦》の直前』とするのが良いかもしれません。
この場合、世界会議の結果を踏まえての準備活動などは行えないのがデメリットとなるでしょう。
とはいえ、既に対アルタン・ウルク防衛設備の建設が開始されているなど、世界会議を経ない準備活動は行えます。
一長一短ありますので、色々と考えてみて下さい」
カスミは、そう言って説明を終えると、集まったディアボロスに、準備会議としての話し合いを促すのだった。
一里塚・燐寧
まず結論から言うと、あたしは【南極の旧竜域ダンジョン範囲】で【6月中旬】に会議をやりたい、って思うよぉ
前にディアコレの舞台にもなった南極の一部って、実は七曜の戦で奪い返されてないんだよねぇ
ここを会場にする『メリット』は、どこの国でもないから皆同じ立場で参加や配信の視聴が出来ること!
さらに【寒冷適応】で極寒の極地でも安全・快適に過ごせるのを体験したり、配信で見て貰えたら、復讐者の存在の大きさも示せるよぉ
これは現地民の盛り上がりがない弱点を加味しても、大きなメリットじゃないかなぁ?
住民がいないのは治安を気にしなくていい、って利点でもあるしねぇ
南極への渡航も豪州経由でイケるはずっ
『表向きの理由』は「復讐者と全世界が連帯し、国や出自を越えて平等に語り合うために、誰のものでもない南極を選んだ」で行こう!
『開催の日程』を考える時に大事なのは「何もない場所に会場を設営する労力」と「戴冠の戦までに参加者全員を帰宅させる余裕」だねぇ
だから6月中旬には、会場の工期を確保しつつ撤収も確実に、って意図があるよぉ
●世界会議の開催地と日程
『人命最優先』の理念を掲げた世界会議。
その理念を踏まえ世界会議の開催地を何処にするべきか、会議室に集まったディアボロスは多くの候補地を出しつつ、そのメリットとデメリットについて検証していった。
新宿区、あるいは新宿に近い江戸川区を推すディアボロスは複数いた。
だが、それ以上に、『政治的中立』を踏まえての提案が多く出る。
中には、メインの会場を設定せずに、世界各地に用意した多くの会場で同時に開催するという提案も出た。
この提案には賛同の声も上がったが『世界会議』という趣旨を鑑みて不採用となる。
そして出された最終的な結論は、ディアボロスにしか実行不可能なものとなった。
「それじゃぁ、世界会議の開催地は『南極』に決定ってことで」
一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)が、そう議論を経て決定した結果を口にする。
「一応、多数決の結果ではあるけど、政治的中立性を重視した意見が南極以外にも多く集まったのが、決め手だったね」
燐寧は、そう言うと、南極開催の場合のメリットについて、説明を始める。
「まずは、政治的中立性だね。
南極は1959年の南極条約で、『南極を自国の領土と主張することの禁止』『南極の利用は平和的・科学的な目的に限る』『南極での軍事活動の禁止』が定められてる。
これは、今回の『世界会議』の趣旨に最も相応しいんじゃないかなぁ?
『復讐者と全世界が連帯し、国や出自を越えて平等に語り合うために、誰のものでもない南極を選ぶ』ってことで行こう!」
燐寧の宣言に、多くのディアボロスが頷いた。
その同意を受け、燐寧は、更なるメリットを説明する。
「まず、周囲に一般人の住民がいない環境は、警備上でも大きなメリットになるよねぇ。
各国の要人はディアボロスが護衛するにしても、周囲に多くの一般人がいる都市で誰も巻き込まないようにして、テロとかデモに対応して……となると、現地警察との協力体制の構築とかが必要になるよぉ。完璧を求めると、必要な事前準備は《戴冠の戦》までに間に合わなくなっちゃう危険もあるっていうか、無理かなぁ。
ディアボロスがいれば【悲劇感知】や【活性治癒】をフルに使って誰も死なせずに済むとしても、そもそも横槍を入れさせたくないよねぇ」
現在奪還済みの南極は、かつて幻想竜域キングアーサーの『竜域ダンジョン』があった南極半島の一角。
最終人類史で南極へ辿り着くだけでも、ディアボロスの支援無しで来るには、かなりの費用と労力がかかる。
現状、国家が表立って反発するようなことは考えにくく、横槍はまず入らないだろう。
「こっちも準備は必要になるけど、会場づくりの資材はパラドクストレインの『貨物列車』で運べるし。
周辺環境については【熱波の支配者】で会場周辺だけ温暖にもできるし、【寒冷適応】で平気にしても良いよねぇ。
【ハウスキーパー】があれば、参加者の期間中の滞在はどこでも問答無用で快適にできるよぉ」
南極に限らず、地球上のどこであれ、そこで実行すると決めたなら、やり方は幾らでも考えられるだろう。
「で、ここからがあんまり大っぴらには言えないメリットってやつだけど、一般人の参加者は自然と限定されるから、参加者に変なことを言わせずに済むんだよね。
周囲にお仲間が沢山いると元気になる右や左に偏った人も、周囲をディアボロスっていう武力に囲まれていれば、軽々には発言できないよねぇ。
自由な発言を禁じるわけじゃ無いけど、無責任なヤジや、愉快犯的な言動なんかは防げるはず」
この燐寧の説明には、多くのディアボロスが微妙な表情を浮かべた。
勿論、燐寧にしても別に喜べる話でもないが、これは明確なメリットなので説明を避ける事はしない。
「参加者にプレッシャーを掛ける……と言うと、確かに、印象は悪いけどさぁ。
だけど、別に言論を統制するんじゃなくて、無責任な言動や煽り演説などを防いで、真剣な議論ができるなら、より広い範囲の参加者を招聘できるってことにも繋がるんだよねぇ。
普段からあたし達に協力的な人ばっかりじゃなくて、例えば、各国の政治的な代表者や、ディアボロスに批判的な言動を行っている人なんかも、この環境なら世界会議に招ける。
つまり、より広い意見を集めてもらう為の舞台設定でもあるわけ」
燐寧のこの説明に、微妙な表情だったディアボロスも、納得の仕草を見せた。
周囲が海に囲まれ、ディアボロスの【寒冷適応】が無ければ凍え死ぬような環境となれば、普段は攻撃的で無責任な失言の多い政治家なども、良く考えて発言を行ってくれる可能性は高い。
勿論、そもそも参加を拒否される可能性はあるが、それは他の会場でも同じことだろう。
「開催の日程は、こちらも多数決の結果だけど『6月中旬』で決定かなぁ。
南極開催については、準備や来る人達の移動にも時間がかかるから、丁度良いよねぇ」
南極半島に最も近い奪還済みの土地は冥海機ヤ・ウマトから奪還した『イースター島』となる。
招待する相手には、そこまで航空機で来てもらい、2週間ほど移動することとなる計算だ。
その船舶内で本会議前の事前相談や根回しなどが行われる流れとなるだろう。
往復を含め1ヶ月以上に及ぶ移動期間、会議に専念できる相手しか招けないというのは大きな問題だが、ディアボロス達にしても相手が会議に専念してくれるというのは利点にもなりうる話だ。
あるいは現在行われている【怪力無双】の強化、その後に予定される【飛翔】との併用化が早期に実現すれば、ディアボロスが船を引っ張って移動期間を短縮することも不可能ではないかもしれない。
そうして開催地の日程の説明を終えた燐寧は、一礼して、元の席につくのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
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●会議を開催するルールの決定
燐寧が席に戻ったのを確認して、綿抜・カスミが入れ替わるように会議室の正面に経つと、会議に参加しているディアボロスにねぎらいの言葉をかける。
「まずは、開催地と日程についての話し合い、お疲れさまでした。
政治的中立性やテロの防止、招聘する会議参加者の発言についてなど、様々な要素を考えての決定は、とても素晴らしかったと思います。
南極には、未知のディヴィジョンが存在していますので、その脅威を知らしめるという意味でも、良い選択だったでしょう。
極地ですので一般人の移動には困難はありますが、準備期間が長いので、移動自体は問題無いでしょう。
また、現在には無い方法での移動なども可能になるかもしれませんね。
他の懸念点としては、現時点で、最終人類史と南極の間には、ディヴィジョン境界の霧などは一切確認されていませんが、これがいつまで続くか判らないという事があげられます。
今後、南極の未知のディヴィジョンと接触を重ねて、ディヴィジョン境界の霧の発生が確認されたような場合は、対応が必要になるでしょう。
こちらから過度な接触を行わなければ、問題は無い筈ですが、世界会議の開催が契機となって敵の侵攻を誘発する恐れはあるので、今後の動向には注意を怠らないようにして下さい。
もっとも、対策を行いつつ南極で世界会議を行うことで、被害なく南極ディヴィジョンの情報を得られれば、その面でもプラスとなりうるでしょう」
この言葉に引き続き、カスミは次の議題についての説明を開始した。
「次は、会議を開催するルールを決める事になります。
開催するルールについては『どのような施設を準備するか』『メインの会議の他に、どのようなイベントを用意するか』『実際の運営で気を付けるべきことは何か』など、多岐にわたります。
特に会議以外のイベントの内容によっては、参加して貰う一般人の選び方も変わりますので、色々考えてみてください。
会場が南極となった事で、現地の住民への対応などは必要無くなりました。
ですが、南極には『世界会議』を行える会場がありません。
まずは世界会議の内容を考え、必要な施設を建設する準備を始めなければならないでしょう」
そう言うと、カスミは会場に決まった南極の様子をプロジェクターに表示する。
「現在最終人類史に南極として存在する大地は『竜域ダンジョン周辺』で、この地域は地面が存在します。
ですが、その周囲は、地面の無い海上に浮かぶ氷となります。
地面のある範囲はダンジョンが広がっていた範囲ですので、新宿島の半分にも満たない大きさです。
場合によっては、周囲の氷も活用する必要があるかもしれません。
ただ、本来の南極の大地は奪われたままなので、この地域の氷は4年ほぼ前から凍り始めたものしかありません。
海上までの洋上の氷をパラドクスで破壊し、船が通行できるようにするといった工夫はできそうですが、氷上に本格的な建築を行うのは避けた方が良いでしょう。
関連しそうな残留効果についてですが、最終人類史における【寒冷適応】の効果範囲は半径3km程度となっています。
【熱波の支配者】でも気温調整は可能ですが、この場合、周囲の氷が全て溶けてしまうので、難しいかもしれません。
ただ【熱波の支配者】の効果範囲は半径14km程度で、【寒冷適応】よりずっと広範囲をカバーできる強みはあります」
南極、しかも極めて限定された土地で既存の施設が全く存在しない。設営については工夫が必要になりそうだ。
ただし、建物さえ作ってしまえば、【ハウスキーパー】で快適な滞在は約束される。
世界会議の中継については、中継機能を持った船舶を用意する事で、問題無く中継は可能という試算が出ている。
中継については、生放送にするか、録画中継にするかなども、調整が必要になるだろう。
「また、世界会議を中止する為のルールも設定を行なう必要があります。
開催場所は、南米に近い為、例えば『黄金海賊船エルドラードが、最終人類史に侵入してきた』といった場合は、世界会議の開催は中止せざるを得ないかもしれません。
他にも『招聘した一般人の3割が、否定的な意見をいって参加を拒否した場合』や、『ディアボロスが行った民意調査で、世界会議の開催を支持しない比率が50%を越えた場合』など、世界会議を中止する要件について検討をお願いします。
ただし多くの人の意見を求めるような行為は、その行為自体が影響を及ぼす点には注意が必要でしょう。
勿論『どんな困難な状態となっても世界会議は強行する』という方針を取る事も可能です」
そこまで説明したカスミは、
「最終的には、皆さんのアイデア次第となります。これまでの話に出なかった斬新なアイデアでも、実現可能であり効果が高いとなれば、それが採用されます。皆さんの、積極的な提案をお願いします。
今回、南極に招聘して世界会議に来てくれる参加者の皆さんは、帰国後は、その地域の一般人の代表として活躍してくれることが期待されています。
ですので、集まってくれた参加者に対する教育や訓練などを行うのも、効果が期待できるかもしれません。
その点もアイデアに含める事が出来れば、良い世界会議になると思います」
そう言って、集まったディアボロスに、ルールに関する話し合いを行うようにお願いしたのだった。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
発言時は真摯に一礼を
1.議事進行
基本事項はディアボロスから説明し、質疑応答
以降は、議題について話し合う形式ではどうか
出席者が防衛技術等の専門家なら、意見交換の時間も有意義で必要な事だ
南極ディヴィジョンの影響も考慮し録画中継かな
2.イベント
各地の代表の有志で防衛設備の構築案の発表会と、参加型の避難訓練を
ここは生中継でも良いと思う
全世界に興味を持ってもらいつつ、正確な知識を伝え、地域代表者の顔を覚えてもらえると帰国後もスムーズだろう
実際に即し、連帯感の増す行事がいい
3.施設
南極の陸地上に、アイスホテルやイグルーを参考に、アイスクラフトや周辺の氷を用いて、広い会議場と関連施設を建築
卓は円卓を推そう
環境にも優しく
寒冷適応し、熱波の支配者は氷が溶けない範囲で
4.中止条件
・他ディヴィジョンの侵攻で安全上の問題が発生した場合、代替地の活用が不可能な場合
・招聘した一般人の3割が会議に否定的な意見で参加拒否した場合
(距離や繁忙ではない)
ディアボロスも警備や案内係に加わり
問題があれば、即応できる態勢で行こう
●会議を開催するルールの決定
世界会議の開催場所が『南極』と決定した事で、会議に参加していたディアボロス達は、早速、南極という極地での開催に必要な事柄について話し合いを行っていった。
【寒冷適応】で半径3km以内であれば、一般人でも快適に過ごす事が可能となるので、それを利用しての運営となるだろう。
【熱波の支配者】も捨てがたいが、周囲の氷が完全に溶けると色々と問題が出そうなので、今回は不採用となったようだ。
ある程度、話し合いを終えた後、話し合いを取りまとめた、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が、議事進行を買って出た。
「世界会議の会場については、幾つかの意見が出た。
その良い所を組み合わせて、以下のような対応にするのが良いだろう」
エトヴァの操作により、現在の最終人類史の南極の様子が、会議室備え付けのスクリーン上に映し出される。
「まず、メイン会場は、奪還した元・竜域ダンジョン土地の上に建設する。
土地は狭いが、基礎工事を行う事で、かなりしっかりした建物を建設する事が出来る筈だ。
建設するメイン会場は、技術的な調査を専門家に行ってもらう必要はあるが、可能な限りの高層建築を行っていきたい。
狭い土地で、多くの会場を用意するならば縦に伸ばすのが良いという意見は、合理性があるだろう。
参加者が多くなった場合は、宿泊施設も充分に必要になる上、南極という極地に高層建築を用意して見せれば、ディアボロスの威信を増す効果も期待できる。
また、竜域ダンジョンだった地域の周囲の海については【冷気の支配者】も利用して、より堅牢で分厚い氷山化を行い、その上に、アイスホテルやイグルーを参考に【アイスクラフト】や周辺の氷を用いて、広い会議場と関連施設を建築しよう。
下は地面の無い海上となるが、この会議後すぐに着手すれば充分に安全な施設を建造できるだろう。
こちらも、強度計算や設計については、専門家に分析をお願いする予定だ」
エトヴァの説明に、ディアボロスたちは、大きく頷いた。
準備時間は、数か月しか無いが、資材についてはパラドクストレインで運びこむ事が出来る。
実際の作業については、【操作会得】によって、ディアボロスが作業を行う事も出来るし、会場予定地から最も近い『イースター島』を後方拠点とすれば、一般人の技術者を建設現場まで運ぶ事も出来るだろう。
ディアボロス達が優先して氷上に滑走路を整備すれば、ジャンボジェットとまではいかなくても、飛行機での往復や、人員の輸送も可能になる。
飛行機での移動は、天候の問題で難しい場合もあるが、ディアボロスが同乗するならばパラドクスによる残留効果を得られるので、比較的安全に運行が出来るだろう。
会場関連の説明を終えたエトヴァは、次にイベント内容について説明を始める。
まずは、『世界会議』の議事進行についてだ。
「メインのイベントである『大会議』は、《戴冠の戦》が主題でもあるので、ディアボロスが発表を行い、それに対して、一般人からの質疑応答を受け付ける形式が妥当だろう。
これならば、ある程度、方向性をディアボロスがコントロール可能だ。
ディアボロス側に、一般人と協力する意志がある事を示す事も期待できる。
ただ、質問を行う一般人をどのように選定するか、事前に質問内容を提出してもらうかどうか、などは検討が必要だ。
可能ならば、世界会議の席上で有益な意見交換を行いたいが、ディアボロスが返答に窮するような質問が多く出されると、ディアボロスへの信頼に罅が入る可能性もある。
かといって、会議が完全なやらせに見えるのも良くは無いので、バランスが重要になるだろう」
細部は煮詰める必要はあるが、この方針に対して反対する者はいないようだ。
「次に、メイン以外のイベントだ。こちらは『世界各地の防衛の取り組み』を説明するパビリオンを用意し、クロノヴェーダとの戦いへの正しい知識や対策を周知するのが良いだろう。
また、避難訓練を実際に体験してもらうのも重要だろう。
地域の指導者を集めて、実際に体験してもらい経験して貰う事ができれば、実際の現場でトップダウン的な正しい対応が可能になる筈だ。
各地域の担当省庁の政治家や、軍・警察の幹部、学校の防災担当者などを招く事が出来れば、効果が高まる筈だ。
こういった地域の実力者とディアボロスが顔つなぎする事で、連携的な効果も大きくなる筈だ。
これらは次の議題にも関わるが、懸念点は、招く有力者の選定方法だな。
会議までに新たに『帰還』を行う地域をどうするかも絡んで来る。
現状、『帰還』を行ったら即紛争が再開されるような土地は後回しにしているし、協力が見込める有識者に絞って『帰還』させているような土地もある。
そうした地域の中には、政府組織がまともに機能しておらず、反社会的と言われるような勢力が大きな影響力を持っている地域や、或いは、政党や宗派が二分して権力争いをしている地域などもある。
どのような基準で招聘するかは次の議題となるが、熟慮が必要となるだろう」
その後、エトヴァは、大会議以外のイベントについての説明と、その懸念点について説明をすると、最後に、大会議を中止する基準の説明を行った。
「大会議の中止については、大会議の安全を確保できなくなった場合を想定している。
何らかの理由で、クロノヴェーダが最終人類史に攻撃を仕掛けて戦闘状態になり、その戦闘が長期化した場合などは、大会議を行っている場合では無くなるだろう。
実際にクロノヴェーダの侵攻は発生していないが【南極で『ディヴィジョン境界の霧』が頻繁に確認される事態となった場合】は、南極での開催を諦め、別の地域での開催も視野に入れていこう。
その場合は 政治的中立の面はやや犠牲となるが、 開催地の決定で次点だった『東京都新宿区』が候補地となるだろう。
また、世界会議は、一般人とディアボロスの連携強化が目的だ。
【招聘した一般人の3割が会議に否定的な意見で参加を拒否した場合は、会議の開催を見合わせる】としたい。
以上が、大会議開催のルールとなるが、いかがだろうか?」
そのエトヴァの問い掛けに、多くのディアボロスは賛同し、拍手でもって、応えるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
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効果2【ガードアップ】がLV2になった!
●参加して貰う一般人の選定
発表を終えたエトヴァを拍手で労らった、綿抜・カスミは、最後の議題である『参加して貰う一般人の選定』について、解説を始めた。
「だいたいの内容は、エトヴァさんが説明して下さいましたが、『理念』『開催地』『日程』『開催のルール』を踏まえて、この『世界会議』に参加する一般人を、選定する基準について話し合いたいと思います。
まず、重要なのは、世界会議に参加して貰う一般人の人数を決める事でしょう。
世界各地から、イースター島までは通常の飛行機で移動可能です。
その後、一般の参加者は、イースター島から、大型客船などを利用して南極に向かってもらう事が想定されています。
大型客船は1隻で、1000人規模の人員を運べるので、日本・ヨーロッパ・オーストラリアなどの奪還した地域の大型客船を利用できれば、かなりの人数の人員を運ぶ事が出来るでしょう。
全力で参加者を運ぶのならば、理論上、数万人規模でも対応は可能になる筈です。
ですが、船での往復には1か月以上かかる為、移動時間がネックになるでしょう。
新たに滑走路などを整備すれば飛行機での移動も可能ですが、一度に運べる人数は多くありません。
飛行機だけでの輸送の場合は、船を利用する場合の1/10以下になるのは避けられません。
一般の参加者は船で移動し、時間に余裕の無い参加者や、一部のVIPなどを飛行機で運ぶといった対応も必要かもしれません」
カスミは、船と飛行機のメリットとデメリットを提示した上で『参加人数』、すなわち大会議の規模を話し合って欲しいと会議に参加するディアボロスに求める。
「次に、参加人数とは別に『招聘する一般人の立場や役職』についても考えてください。
例えば、10%を政治家や政府関係者、20%を警察関係者、20%が学者で、20%が企業や団体の代表、残り30%が希望者抽選枠……などでしょうか。
他にも、ディアボロスに友好的な人80%、否定的な人20%などといった指定の仕方でも構いません。
人選については、皆さんの出してくれた意見を取りまとめて、決定する事になるでしょう」
と、人選についての説明を行った。
そして、最後に付け加える。
「これは招聘する対象とも関わって来るのですが、『今後の最終人類史への帰還』についても検討をお願いします。
まだ『帰還』していない人は招聘できず、世界会議でも意見を得ることはできませんので」
それはそうだ、とディアボロス達は頷くのを確認し、カスミは続けた。
「現在は『安全が確保された地域』かつ、『人々が生活を維持できる地域』から順次『帰還』を行っています。
ですが、《戴冠の戦》に向けた世界会議で招聘する対象を決めるに際し、この基準を緩めるべきかどうかも、検討が必要になると思うのです」
現状、ディアボロスが奪還した地域でも『帰還』していない地域は多い。
その理由として、生活の維持において『社会的な不安や紛争などの発生可能性』を踏まえて判断しているためだ。
「社会的な不安については、他のディヴィジョンと隣接していない地域でも、内戦や紛争がある地域や、テロ組織が多い地域などを、有識者との協議で判断しています。ですが、私を含めディアボロスに多い日本人から見ると、既に『帰還』済みの地域でも安全とは言いがたい地域も多いです」
方針を緩め、この『社会的不安のある地域』に対する基準を引き下げれば、クロノヴェーダの支配領域と接していない中東諸国やアフリカ大陸、フィリピン、インドネシアなどで『帰還』人口を大きく増やすことが可能となる。
「ご存知の通り、『帰還』した人口はディアボロスの力の限界や、【能力値アップ】等の効果量に直接影響してきます。
《戴冠の戦》の勝利と『人命最優先』の理念の両立を考える上で、『帰還』の基準を従来のまま維持すべきかどうか。
難しい問題ですので、これに関しては意見や提案がある場合のみ、発言をお願いしたいと思います」
カスミは、そう言うと、再びディアボロス達に会議の続きを行うようにお願いするのだった。
シル・ウィンディア
会議の規模かぁ…。
人数は5,000人~10,000人くらいかな?
収容力とかの問題もあるから、あまり多すぎるのもどうかなぁ…。
ただ、少なすぎると全世界会議の意味が無いから、そこそこの人数を集めるって意味で、これくらいの規模は必要かなぁって。
比率は、
ディアボロスに友好的な人85%、否定的な人15%
かつ
政府関係者:5%、警察・軍・防衛担当:25%、学者・専門家:20%、その他企業団体トップ:10%、希望抽選:40%
これは、友好的な人だけだと、気づかないことがある可能性があると思って、否定的な人も必要だと思うから。
ただし、否定的な意見が30%を越すと会議自体が中止になるから、その為のぎりぎりのラインが15%かなって。
ただ、否定的な意見の方が内容としてピックアップされて、意見として強く見える可能性には注意が必要だけどね。
警察・軍関係の人を大目にしたのは、いざという時の避難誘導を行ってもらうためだね。
出来るだけ被害は出したくないし、一番、避難現場に近いのはその人達になるかなっていう所での人選だね。
●参加して貰う一般人の選定
世界会議について話し合う会議場では、開催地と日程・会議を開催するルールが確定した事で、世界会議に参加して貰う一般人の選定についての話し合いが行われていた。
話し合いの過程で、幾つかの食い違いは発生したが、大筋については皆の意見が揃っていた為、短い時間でまとめが終わったようだ。
「うん、みんな、話し合いお疲れさま。早速、結果を報告するね」
意見のとりまとめも行った、シル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)が、元気にそう報告して、報告を開始した。
シルはまず、会場の規模を先に決める事について、軽く振り返る。
「イベントの内容も決まっていないのに、会場の規模を先に決めるのは、普通の感覚だとおかしいかもしれないけれど、世界会議開催までの期間や《戴冠の戦》までの期間を考えればやむを得ないね。
メイン会場の建設は、すぐにでも手を付けなければならないし、一般人の移動に必要な『客船』や『飛行機』の手配にも、時間が必要になるから。
参加して貰う一般人にも都合はあるだろうし、各国の警察や消防の幹部を派遣して貰うのなら、その調整も必要になってくるので、スケジュールは先に抑える必要があるし。
メイン会場以外の、氷を利用した施設などは、後からでも準備出来る。
そちらはイベント内容に合わせて調整する事は可能になるはずだよ」
これまでの話し合いでも出席したディアボロスからは、大衆向けの別の情報提供の場が必要などといった意見こそあれ、世界会議の開催自体を止めたり、別の形での話し合いの場を設けるべきといった意見は出ていない。
会議自体は必要だ、という点で、ディアボロスの認識は一致していると言って良いだろう。
以前の大戦、《七曜の戦》時点の『帰還』済みの地域は、まだごく僅かだった。
だが、《七曜の戦》の直後からディアボロスは世界規模での『帰還』を加速させており、《戴冠の戦》の影響を受ける最終人類史の人々の数は、《七曜の戦》とは比較にならない。
《戴冠の戦》という再度の大戦の発生は、昨年の大会議で既に人々に伝わっている。それを受け、アルタン・ウルク対策の防衛施設の建設など、準備は始まっている。
だが、それらの国々での準備も、完璧とは言い難いだろう。
ディアボロスの奮闘によって、最終人類史は(『刻逆』により最初にほぼ全滅したのを除けば)クロノヴェーダによる犠牲はこれまで皆無と言って良い状態だ。
犠牲を出していないこと自体は皆の努力の成果であり、世界会議の理念としても最優先すべきことだ。
とはいえ、『初めてクロノヴェーダとの戦いに向き合う人々』と語り合い、連帯をさらに強めようとするならば、世界会議は必要だというのがディアボロスの一致する認識に相違なかった。
その事実認識を改めて確かめた上で、シルは人数についての結論をまとめる。
「世界会議のメイン会場の規模は『1万人』という事で決定します。
この『1万人』は、ディアボロスの数は含まないけれど、関係者やディアボロス以外のスタッフの人数は含んだものを想定しているよ。
この人数に合わせてメイン会場の広さやホテルの部屋数などを決め、専門家に設計を依頼する予定だね。
ちなみに、品川区にある日本最大の客室数を誇るホテルでも、収容人数は1万人に届かない。
極端な話、メイン会場はみんなが集まれる広い会議場一つで良いけれど、宿泊施設の方は無数の部屋が必要になる。
なので、メイン会場以外に宿泊できる施設を何棟か建設する必要がありそうだけど……現実的な線だと、移動に使った客船の一部に、そのままホテルとするといったところかな。そのあたりは、専門家に検討して貰う事になるね」
会場の規模は1万人、と画面に表示される。
更に、招聘する一般人についての割合についてシルは続ける。
「招待する一般人は『ディアボロスに肯定的な方達』で8割を固めつつ、『過激では無いがディアボロスに迎合していない知識人』なども招待して、公平性を演出したいと思うよ。
勿論、1万人の一般人を全てディアボロスが選出するというのは難しいから、ある程度の人口比率などを踏まえて、国や地域ごとに招待券を配布して、その分配は現地の人に任せるという方法を取るという事にするのが良いだろうね。
あとは、各国の警察や軍、消防、病院、青年団、企業などの関係者、知識人や有識者等にも招待券を配布し、実務担当者の派遣も要請する予定だよ。
世界各国の実務担当者を集めてイベントを行う事で、世界全体での取り組みなども可能になるはずだね」
そう言うとシルは、作成された画像をプロジェクターで映し出す。
それは、この後の世界会議の流れに関するロードマップであった。
シルは、その画像を背景に、今後の流れについて、説明を行っていく。
「まず、世界会議の開催は『6月中旬』という日付が決まっているよ。
《戴冠の戦》まで約2ヶ月というタイミングだね。
なので、全ての準備は、この時期に間に合わせるように動く必要が出て来る。
関係者の人達には、無理を言う事になるけれど、私達ディアボロスも最大限協力して準備を行っていこう。
中継地点であるイースター島の整備は、すぐにでも取り掛かれるから、まずは、ここから手を付けよう。
南極に建設する1万人規模のメイン会場の建設については、まずは中核となる技術者だけ現地に移動して貰って地盤とかの調査をして貰って、それに基づく設計が必要になる。
調査は観測機材の利用方法だけディアボロスが【操作会得】すればすぐ出来るとして、最速でも着工は4月中旬以降。
資材についても、パラドクス・トレインで運び込んだ資材や機材を使って、まずは、ディアボロスが初期工事を行う事になると思う。
ディアボロスがいれば現地での作業中も【寒冷適応】をはじめ各種残留効果を駆使していくから、極地での作業とはいえ危険なんかは無い。迅速に作業を進められるよ。
工事については、アルタン・ウルク対応の防衛施設建設のノウハウや、【操作会得】の効果も利用して、作業を行っていきたいね。
ディアボロスなら、パラドクス・トレインで好きに往復できるから、現地のインフラが整っていなくても作業可能になるのも大きいと思う。
ディアボロスによる工事をある程度終え、インフラが整えば、一般人に工事に加わってもらえる。
迅速に進めれば、6月の会議に間に合わせる事も可能なはずだよ。
工事とは別に、並行して、世界会議で行うイベントの企画なども考えていこう。
勿論、ディアボロスは、イベント運営のプロでは無いから、細部については、イベントを企画する専門家にお願いする事になる。だけど、盛り込みたいアイデアなどがあれば、ワイルド・カードに意見を出して貰おう」
そう内容をまとめたシルは、最後に全てのディアボロスに呼び掛ける。
「世界会議の理念である『人命最優先』を元に、ディアボロスと一般人が連携して《戴冠の戦》に挑むべく、最善を尽くしていこうね!」
その号令と共に、世界会議に関わる準備会議は締めくくられる。
かくして、方針が決まった『世界会議』に向け、ディアボロス達は慌ただしく動き始めることになるのだった。
●世界会議方針のまとめ
<基本データ>
・開催日:6月中旬
・開催地:南極(竜域ダンジョン跡地)
・規模 :一般人の1万人(スタッフ込み)
・理念 :「人命最優先」
<スタッフを除く、一般人の参加者について>
ディアボロスに好意的な人の比率が8割程度になるように配慮する。
国や地域の代表者に全体の10%程度の参加権を割り当てる(誰を出席させるかは、国・地域ごとの自治に任せる)。
警察・軍・防衛担当者については、実務担当者を中心に、20~25%の範囲で招待を行う。
各種専門家は、大学教授、技術者、研究者、知識人、民間企業の社長など、様々な立場で影響力のある人を10~20%の範囲で招待する。
一般参加者として地域毎に参加者枠を用意する(参加者の抽選方法などは、各地域で決定して貰う)。
<予定されているイベント>
(1)《戴冠の戦》に関する大会議
《戴冠の戦》に関する様々な事柄について、世界中に発信します。
ディアボロスが議事進行を行ない、一般人からの質疑応答などを行います。
世界会議の最大の会議で、基本的には全員が参加します。
どのような議事進行を行うかは、これからの提案によって決定します。
(2)ディアボロスと一般人の連携に関わる分科会
様々な状況で、ディアボロスと一般人が連携して活動するにはどうするべきかを話し合う会議を行います。
議題毎に、数十名程度の数百名程度の参加者を集めて、打ち合わせを行います。
例)
・軍・警察などの実務担当者を集めた、対クロノヴェーダの避難マニュアルを考える分科会
・国や企業の流通担当者を集めた、輸送に関する分科会
・国や学校関係者を集めた、今後の教育に関わる分科会
(3)対クロノヴェーダを想定した各種告知イベント
・逆説連鎖戦を実際に体験してもらうイベント
一般人が護身用の武器で応戦などしないように告知する等
・パラドクス効果の告知イベント
【避難勧告】が行われた場合にどうするかや、【フライトドローン】で避難する時の手順などを実際に行ってもらう。
他にも【建物復元】を実際に見せて、避難時には家財道具を置いて逃げても大丈夫だと周知するなど、有用と思われるイベントを用意します。
<スタッフを除く、一般人の参加者について>
ディアボロスに好意的な人の比率が8割程度になるように配慮する。
国や地域の代表者に全体の10%程度の参加権を割り当てる(誰を出席させるかは、国・地域ごとの自治に任せる)。
警察・軍・防衛担当者については、実務担当者を中心に、20~25%の範囲で招待を行う。
各種専門家は、大学教授、技術者、研究者、知識人、民間企業の社長など、様々な立場で影響力のある人を10~20%の範囲で招待する。
一般参加者として地域毎に参加者枠を用意する(参加者の抽選方法などは、各地域で決定して貰う)。
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