リプレイ
荒田・誠司
【心情】
頭を弄って感じなくなったら色々と終わるんだよなぁ
俺は俺にできることを、エルバとして頑張るとしよう
【行動】
まずは俺の機械化された腕は長袖の服と手袋で、脚は長ズボンを穿いた上で長靴を身につけて誤魔化す
それからボロボロの空き缶を自分の前に置いて蹲るように横になって、物乞いのように見せる
誰かが来たら起き上がって、親や親戚は死んだ、恵んでくれと弱りきった子供の演技をしよう
上手く誘拐されたら隙を見て隠し持っていたチョークで壁に印をつけながら歩いていく
歩いている最中に隙がなければ工場の付近の硬い地面でわざと転倒し、そこに印を書く
逃げ出すために長靴の中にも色々隠していくつもりだ
エメリヒ・ラインヴェーヴァー
祖国が大変な目に遭っているんだ
オレが、オレたちディアボロスがなんとかしないと!
まずは捕まってるみんなを見つけなきゃだね
もちろん他人との協力は惜しまないよ
とりあえず変装が必要かな
この時代の住人の服装に沿い
ボロボロの物に着替え…
怪しまれないよう演技しよう【演技】【臨機応変】
浮浪者を装い、道端の街路樹にでも寄りかかって如何にも生きてく糧がない男でございって顔でいる
人を物色してるような怪しいヤツが近づいたら地面に倒れるなりして音を立ててコッチヘ注意を向ける
誘われれば二つ返事で頷くよ
生きるために、この死に体みたいな状況から脱出したいって答えてね
工場への道筋、逃亡道中に使えそうな物品、目星を付けておく
白浜・轟
吐き気がするような話だった
そんなことが当たり前に行われているのが
今の世界だっていうのか
このナリで向いてるかはわからねえが
身代わりになって村人が助かるなら、やってみるしかない
田舎町の隅で通り過ぎる者達に声をかける
なるべく弱々しい声で
それでいて、肉体労働ができるのをアピール
仕事を、くれませんか
なんでもいい
荷物運びでも、掃除係でも、靴磨きだってやる
金と食いもんが必要なんだ
なんだってするから、頼む…!
これで敵が食いつくかはわからないが
やらないよりはずっといい
上手く引っかかればこれでもかと感謝して
ああ、ありがたい
あんたのおかげだ…これで明日も、生きていける
ところで仕事はなんだ?
何も聞かされちゃいないが
●白墨を辿って
緑豊かなライン河畔の小さな村。葡萄畑での仕事を終え、のろのろと家路につき始める人々の表情は一様に暗く、彼らの苦しい暮らしぶりが窺える。
木骨組みの家々が並ぶ街角に立ち、白浜・轟(人間のデストロイヤー・g01246)は握った右手に力を籠めた。
(吐き気がするような話だった)
出発前、時先案内人の口から語られた話を思い起こせば、胸の奥底で燻る怒りが首をもたげる。子どもを捕らえ、心持たぬゾルダートに改造するなど、想像するだけで気分が悪くなった。しかしそんなことが当たり前のように行われているのが、この機械化ドイツ帝国――クロノヴェーダに侵された、彼らの地球の一部なのだ。
(だけど、誘拐対象が子どもだけっていうのは厄介だな)
身代わりになって罪のない村人達が助かるのなら、危険を冒すことにためらいはない。だが、相手が対象を選んでいるのは事実だ。故に、せめて情報を得られればと轟はここに立っている。
「すみません、仕事をくれませんか? なんでもいいんです」
なるべく弱々しい声を作り、けれどきちんと周囲に届くように。二十代半ば、しかも人より大柄な轟は敵のターゲットにはならないかもしれないが、人攫いが貧しく身寄りのない人間を探しているのならば、助けを求める声を聞けば一瞥くらいはくれるだろう。例えその先を望めなくとも、何もしないで待っているよりずっといい。
哀れな男を装って、轟は声のトーンを強めた。
「金と食いもんが必要なんだ! なんでもやる、荷物運びでも掃除係でも、靴磨きだって……」
はっとして、青年は言葉を切った。ほんの一瞬の出来事ではあったが、通り掛かりの男と視線が合ったのだ。
キャスケットを被った労働者風の男。それは一瞬、確かに轟を見て、そしてぷいと顔を背けた。男の後ろには少年が一人、一歩離れて歩いていく。顔も身形も似ていない二人は、親子という風にも見えなかった。
「……あれは」
「アレだな」
道の向こうから、返る声があった。少し離れた街路樹の木陰で、エメリヒ・ラインヴェーヴァー(黒雲・g00180)が顔を上げる。貧しい村人達に溶け込めるようボロ服を身に纏い、いかにも生きることに疲れた浮浪者のような出で立ちをしていても、その瞳には一分の翳りもない。
試してみようか、と口にするや否や、エメリヒはよろよろと立ち上がり、大きな音が立つようわざと大げさに倒れ込む。けれども少年を連れた男はちらりと後ろを振り返っただけで、またすぐに歩き出した。
「……大丈夫か?」
「こんな清々しく無視されると、ちょっと哀しくなるなー」
覗き込む轟の手を取って、エメリヒはじろりと男の後姿を睨みつける。しかし人を物色するような素振りといい、あの男が人攫いである可能性はかなり高いだろう。
「でも、この道を行けば引っ掛かるぞ」
この街に潜り込んだディアボロスは彼らだけではない。できるだけ気配を断ちながら、二人はキャスケット帽を追っていく。すると河を背に少し進んだマルクト・プラッツで、男は足を止めた。
「隠れろ」
間違ってもここで気取られることのないように、轟とエメリヒは建物の陰に身を隠す。簡素な市場の中ほどに立って、男は辺りを見回していた。そして何かを見つけたのか、広場の片隅に向かって歩き出す。
「君、こんなところでどうしたんだい」
聞こえてきた声色はあくまで穏やかな中年男のものだった。目を凝らせばその向こう側で、誰かが壁を背に蹲っているのが見える。汚れた空き缶を身体の前に置き、長袖のリネンシャツに長ズボン、長靴を履いた少年が一人、気だるい熱を持った石畳に横たわっていた。
「お父さんや、お母さんは?」
間を置かず、声の主が尋ねる。するとその少年はのそりと上体を起こし、視線は地面を見つめたままで応じた。
「死にました」
少し癖のある黒髪に、つり目がちな茶色の瞳がやけに目を引く少年の、年頃は十六、七歳だろうか。親戚は、と重ねる声にそれもいないと首を振って、少年は丁寧な口ぶりで続けた。
「一ペニヒでもいいんです。……恵んでいただけませんか」
そう言って、じっと男の顔を見る。するとその言葉を待っていたとでも言うように、男は後ろに立つ別の少年を仕種で示し、応じた。
「可哀想に、苦労したね。彼も君と同じような境遇なんだが……これから私の家へ行くところだ」
「あなたの家?」
「ああ、何もできないが食事くらいはと思ってね。君、名前は?」
問われ、少年はにこやかに笑った。
「セージ」
金を積まれて汚れ役を請け負っただけのその男には、分からなかっただろう。
嬉しげに微笑む茶色の瞳に揺らめいた復讐者の静かな怒りも、『荒田・誠司(雑草・g00115)』という彼の本当の名前もだ。
ではついておいでと笑う男に促され、誠司はその場に立ち上がる。頭を弄られ何も考えられなくなるなんて、冗談じゃない――何も知らずに前を歩いていく男と一人の少年の背後で、確かめるようにズボンの後ろポケットに手を伸ばすと、指先に一本のチョークが触れた。
(俺は俺なりに、頑張るとしようか)
ほんの僅か、見えるか見えないか程度にポケットからチョークを引き出してすぐに戻し、少年は男の後についていく。その合図を、仲間達は決して見逃さない。
「掛かったな」
「ああ、行こう!」
思わず顔を見合わせて、轟とエメリヒは軽く片手を打ち合わせる。浮浪者の振りは、もう終わりだ。後はつかず離れず彼らを尾け、たとえ途中で見失ったとしても、白いチョークのしるしは『秘密工場』への道程を間違いなく教えてくれるだろう。
(オレが――オレ達が、なんとかしないと……!)
まるで別物に作り変えられたこの祖国を元の姿に戻すため。知らず奥歯を噛み締めて、エメリヒは轟と共に先を急ぐのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
紫空・千景
逃げる準備が整った処で、立ちはだかる壁はいつでも邪魔な物だ
ならば私の得意分野で役に立とう
潜入で解いたポニーテールを結び直し
僅かに口許に笑み宿して
……鋼の犬、番犬みたいな物か
暫し相手をしてもらうぞ
出来れば各個撃破
同時に相手するのは二体までが理想
得物を構え、虚閃一刀
相手が飛びかかる空間ごと裂き、切り伏せる
存在を消してしまえば増援の心配もないだろうが
戦って得た情報は次の戦いへ活かし効率を上げ
幾らでも来い
距離は常に零を
余所見をするならば死角に潜り込み
他の者が削った対象は優先で撃破を試みる
隠れるのは性に合わんが影に紛れ
――出会ったが、最期と思え
屠り散らす
鉄屑と為る前に存在ごと無かった事に
噫、左様ならだ
荒田・誠司
【心情】
潜入成功、ガチで子供ばかり狙っているのかふざけるな
改造された子には悪いがせめて安らかに…
【行動】使用技能:情報収集、忍耐力、臨機応変、早業、忍び足、暗殺、罠使い、機械知識
脱出する人達と別れ、地形情報を頭に入れつつ脱出口とは別の方向へ進み
適当な廊下や誰もいない部屋の出入口にパラドクスを使用し、罠を設置
自分にはかからないようにして、わざと敵に発見される
敵の攻撃を耐えながら誘導し、敵を罠にかける
それで倒せればいいけれど倒せなかったら武器で攻撃してとどめを刺す
これを繰り返して敵の数を減らしていく
強運の加護と泥濘の地、平穏結界を利用して一対多数にはならないように注意し基本的には隠密行動する
●廃城の根
「くそ、ガチで子どもばかり狙ってるのか、奴らは!」
ふざけるなと吐き捨てて、荒田・誠司(雑草・g00115)は唇を噛んだ。
秘密工場の場所を突き止めた誠司らは誘拐犯を縛り上げると、攫われそうになっていた子どもを街へ帰し、後続のディアボロス達と合流して潜入を開始した。ライン河畔の丘の上、聳え立つ廃城の地下へと続く階段は見つけるのにこそ苦労しなかったが、工場内部は思ったよりも広大で、入り組んだ通路と立ち並ぶ無数の扉が侵入者達を惑わせる。
ディアボロス達は、大きく二つのグループに分かれて工場内を進んでいた。その目的は、片や施設内を警備するトループス級クロノヴェーダの掃討、もう一方は囚われた子ども達の解放と救出であり、誠司達は前者だ。入り口で道を別った救出班の面々は、今頃牢獄へ到達している頃だろうか?
駆ける脚は緩めることなく思い巡らせていると――来た道の後方で、金属を引っ搔くようなけたたましい音がした。
「っ、掛かった!」
道すがら張り巡らせた蜘蛛の糸は、敵の接近を着実に捉える。長い通路の半ばでくるりと反転し、ディアボロス達は身構えた。
見据える先には、無機質な光沢を放つ四足の獣がぞろぞろと集まりつつあった。刃と化した蜘蛛の巣にその身を裂かれても、痛みを忘れた鉄狼達は構わず此方へ向かってくる。
「……改造された子らには悪いが……」
元に戻してやることができない以上、彼らにできることは一つしかない。隠し持っていた拳銃を右手に狙いを定め、誠司は精神を研ぎ澄ます。
「せめて、安らかに」
パン、と乾いた音と共に、弾丸は鉄狼の眉間を撃ち抜いた。しかし『仲間』の屍さえも踏み越えて、狼達は殺到する。後退しようと構えたその隣を、しなやかな影が駆け抜けた――紫空・千景(暁閃・g01765)だ。
「番犬よ、暫し相手をしてもらうぞ」
唇に微かな笑みを刷いて跳躍し、娘は空中で妖刀の柄に手を掛ける。こんなものがうろついていたのでは、助けられるものも助けられなくなる――ならば、立ちはだかる壁は斬り払って進むのみだ。
軽やかな鞘走りと共に抜き放った刀の先が鮮やかな剣閃を描き、飛び掛からんとする鉄狼を空間ごと斬り伏せる。さらりと宙を舞う長い髪を一本のポニーテールに手早く結い上げて、千景は再び刀を握り締めた。
「適材適所という奴だな」
囚われた子ども達の救出が完了するその時まで、敵をそちらに向かわせるわけにはいかない。一度に相手どるのはできるだけ少数に留めたいところだが、この数では是非もないだろう。
「幾らでも来い」
機械仕掛けの獣達が道の端から殺到する。誠司の援護射撃を背に受けて、千景は臆することなく敵の喉元へ肉薄する。そして続く一体を、一刀の下に鉄塊へ変えた。
「噫――左様ならだ」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
山田・菜々
子どもたちが犠牲になるのは絶対に許容できないっす。全力で救出するっすよ。
急がば回れっす。まず、近くの村で一時的に保護してくれるところを探しておくっすよ。そして、工場を出たあとの避難ルートを事前に作っておくっす。
工場に入ったら、ゾルダートたちに見つからないように、こっそり探索するっす。見回りが手薄そうなところを探しておかないとっすからね。
それじゃあ、いよいよ救出っす。「助けにきたっすよ。」救出に来たことがわかるように、先に声をかけるっす。入ったら、まず、携帯食を配るっす。腹が減っては戦はできないっすからね。そして、先導するようにして、様子をうかがいながら、脱出するっす。
鬼歯・骰
道標頼りに潜入
先行はツリガネ(g00541:ジュース屋の店主)に任せ
標葉(g01730:顔馴染み)と一緒についてく
昔から逃げ隠れる事はよくやったからな
こういうのは慣れてる
鬼神変で両腕変えて
鍵も牢屋、その他逃げるのに邪魔になるもんあったら破壊してくか
…見てくれ怖いが泣いてくれるなよ
軽く手をあげ無害の主張
痛いのも辛いのも腹が減るのも嫌だよな
でもそれを感じなくなっちまうのは、もっと怖ぇよな
俺はここからお前らを出して、悪い奴をぶん殴るしか出来ねえが
まだ自分を自分として生きていたいならさっさと逃げようぜ
人生なんて結局運頼みではあるんだが
生きてなきゃ、どうにもなんねぇからな
チビども守る事最優先で
急ぎ帰路へ
標葉・萱
残された痕を追って秘密工場へ
前行くお二人(鐘堂さん:g00541/鬼歯さん:g00299)の
頼もしいことですね
経路も倣い隠密を心がけましょう
拙い分【壁歩き】で死角を行くように
逃げ出す手伝いを致しましょう
破壊の名残に巻き込まれないように
怪我はないですか、一人でも行けますか
難しいようなら共に
行けるなら来た道を先に
……愛想も人好きのする笑みも得て出ないですが
視線を合わせたなら丁寧に静かに、脅かさぬよう
どんな理由があろうとも
自由を奪う理由にはなりません
選ぶための選択肢を、広げるお手伝いだけ
だから今の荒事には目を瞑っていてくださいね
悪戯っ気を少しのせて
駆ける路は前行く背のために
鐘堂・棕櫚
秘密工場へ続くチョークの道標を追って敵地へと
こっそり動くのは自信ありです
アサシネイトキリングで気配を消しながら
慎重に牢屋を目指しましょう
争いの気配や見張りは避けて迂回路などを探しつつ
骰さん(g00299/うちのお客さん)と萱さん(g01730/うちのお客さん)が
共に警戒にあたって下さるので心強いです
牢は鍵があるなら骰さんにお任せを
わぁ本当怖いですね
萱さんと一緒に子供を怯えさせぬよう笑顔見せ
皆と一緒の脱出を試みます
大丈夫ですよ怪しくないですよー
真の安心はまだ遠くとも
より良くしようと頑張る人達が沢山います
ですから俺らと一緒に明るい明日を
夢見てくれませんか
帰り道も辿る白墨
一秒でも早く、彼らに自由を
一方、その頃。
地下水の滴りだけが断続的に音を奏でる牢獄は、沈黙の只中にあった。
抱えた膝に顔を埋めた子ども達は、先刻連れていかれた少年と特段の知り合いではなかったけれども、だからといってショックを受けないわけではない。次は自分の番かもしれないと、そう考えると身体が震えて、手足の先が冷えていく――そこへ。
コツ、コツ、コツ。
濡れた石の床を踏む足音が近づいてくるのに気づき、子ども達はぎくりと肩を跳ね上げた。しかし奇妙なことに、今日は足音がいくつも重なっている。
一体どうしたことだろうと息を詰めていると、牢獄と通路を仕切る鉄格子の向こうに見知らぬ一団が顔を出した。
「うわ、」
「きゃ……!」
「しーっ。お静かに」
立てた人差し指をそっと唇に添えて、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)は努めて静かに言った。喉元まで出かかった悲鳴をぎりぎりのところで飲み込んで、囚われの子ども達は潤んだ瞳を瞬かせる。怪しくないですよ、と笑う柔和な笑顔は凡そ悪人には見えないけれども、味方と判断するだけの根拠もない。その戸惑いを見て取って、山田・菜々(正義の味方の味方・g02130)も重ねた。
「大丈夫、君達を助けにきたっすよ」
一人、二人――全部で、四人。見たことのない、さりとてこの場所を取り仕切るあの機械仕掛けの魔女とも違う彼らの登場に、子ども達は戸惑い、動揺を隠せないようだった。
棕櫚を先頭に気配を殺し、慎重に牢獄をめざすこともうどれほど経っただろうか。戦闘の発生している個所を避けて回り道を繰り返したために少し時間は掛かってしまったが、お陰で敵に気取られることなくここまで潜り込むことができた。
現れた大人達が悪意の接触者でないということを察したのか、檻の中の少年少女達は恐々とながら立ち上がると、鉄格子に近づいてくる。
「兄ちゃん達、あいつの手下じゃないの?」
「どうやってここまで……」
首を傾げる子どもたちを見下ろして、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)はああと応じた。
「昔から逃げて隠れてはよくやったからな」
「慣れっこというわけですか」
しょうがない人だと淡々と口にして、標葉・萱(儘言・g01730)は上体を屈め、子ども達に視線を合わせた。
「皆さん、怪我はありませんか」
尋ねれば、子ども達は一様に首をふるふると横に振った。棕櫚のような愛想のよい笑顔は萱には作れないが、あくまで対等に接しようとしていることは伝わったらしい。概ね十代前半から後半といったところか、みな健康面に問題はなさそうだが、この入り組んだ工場内を子ども達だけで行かせるのは少々危険そうだ。
まあ――何はともあれ。
「ちょっと下がってろ」
近寄ってきた子ども達に部屋の奥へ移動するよう促し、骰は言った。
「見てくれは怖いが、泣いてくれるなよ」
子ども達は一瞬、きょとんとして骰を見たが、その言葉の意味はすぐに理解った。胸の前に掲げたその両腕は、危害を加えるつもりはないと主張しながらも、見る見るうちに異形化していく。本当怖いですね、と呑気に笑う棕櫚と骰の腕とを交互に見比べて、子ども達はぽかんと口を開いた――そして。
ふ、と鋭く息を吐き、振り下ろす腕は粗末な錠前をいとも簡単に叩き壊す。驚きに立ち尽くすばかりの子ども達を前に鉄格子を開き、菜々は牢内に駆け込んだ。
「みんな、よく頑張ったっすね! お腹が減ったんじゃないっすか?」
携帯食を手渡した菜々の機転は、子ども達の警戒を解くのに大いに役立ったと言えるだろう。いつから閉じ込められているのか詳しいことは分からないが、案の定、子ども達は空腹だったらしい。我先にと食べ物に手を伸ばす子らの様子を見つめて、骰は微かに眉を寄せた。
「腹が減んのは、嫌だよな」
痛いのも、辛いのも。
しかしそれは、彼らが今生きているという確かな証でもある。男はその場に膝を折ると、携帯食を貪る子ども達と視線の高さを合わせ、諭すように続けた。
「だけど、死んだらそれさえ感じられなくなっちまう。俺はここからお前らを出して、悪い奴をぶん殴るしか出来ねえが――まだ生きていたいんなら、さっさと逃げようぜ」
久方の食事に気が緩んだのだろう。ぽろぽろと涙を零しながら、子ども達は頷いた。しかしその内の一人が、肩を落として口を開く。
「でも、街へ帰っても……」
彼らの言わんとすることは分からないではない。無事に街へ帰ったところで、身寄りのない彼らの暮らしぶりが貧しく、苦しいものであることには変わりないのだ。
でも、と続けて、萱が言った。
「生きていれば、あなた達は選ぶことができます。その自由は、何者にも奪うことはできません」
「ええ。今の状況を良くしようと、頑張っている人達は沢山います。ですからそう諦めずに――俺らと一緒に、明るい明日を夢見てくれませんか」
安心させるように笑って、棕櫚は言った。どんなに苦しい今日だって、生きていなければ始まらない。生きてさえいれば、可能性は決してゼロにはならないのだから。
それに、ある程度は手も打ってある。
「近くの村の教会で、一時的にでも子ども達を保護してくれるように頼んでおいたっす。避難ルートもばっちりっすよ」
右手でOKのサインを作り、菜々は満面の笑みで片目を瞑った。ここにいる子ども達を無傷で助け出せることが、純粋に喜ばしい。白墨のしるしを辿って街へ降りれば、彼らは自由を取り戻せるだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】がLV2になった!
【怪力無双】LV1が発生!
【壁歩き】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
ルル・ムル
うけたまわりました。ルルがやってみせましょう。
民の危機はルルの危機。人々へ救済の手を差し伸べるのです。
機械。相手は機械。便利な道具はもろい。
すな。砂の嵐。ルルを取り巻く砂の嵐。
一体見つけました。機械へ砂の嵐を向けます。
足止めをして一体ずつたおします。
ルルの情報は与えません。サンドストームを壁にします。
銃口に砂を詰めましょう。噛みつくこともするのですか。
口を狙って砂を詰め込みます。
ルルは身軽ですがもろい。機械と同じです。
一定の距離は保ちます。近付かれたら機械の背中を踏み台にして逃げます。
避難の方はどうでしょう。犠牲者はいませんか。
朔・璃央
歴史を綴る立場を外れると、こうも蹂躙されるものなのですね
最期は人として在りたかったでしょうに
痛いほどに気持ちがわかります
私も、そう在りたいと願ってますので
いまだ囚われた人々を救うか、もはや人為らぬ人々を救うか
今回は後者としましょうか
囚われた人々が逃げる手助けにも繋がるでしょう
他に動いている方もいるでしょうし
孤立している固体を狙っていくとしましょうか
息を潜めて隠密行動を心掛け
物陰に潜み巡回ルートを伺い孤立した際を狙います
殴り倒すには砲が面倒ですね
気付かれる前に一息に近づいて『鐵拳』で奇襲を
距離を取られぬよう組み付き
あとは殴り続けましょう
何も感じないのだそうですね
多少、罪悪感が薄くなって助かります
白浜・轟
脱出は他に任せ、鉄狗の相手をする
ぞろぞろと…ペットにしては可愛げもないな
毛の一本もないのかよ
平穏結界で、敵の所在や違和感に少しでも気付けるといいが
個別に倒す面々の無理を減らせるよう
己の火器を全て解放、派手に砲撃をばら撒く
オレがダメージを増やせるだけ増やせれば
各個撃破を担当してくれる奴らも余力が持てる
脱出中に建物を壊す訳に行かないから
そこは気をつける
駆け回るのは雪の日だけにしとけよ
火器の射線に入らぬよう意識してこちらも避け
篭手で殴りつけてトドメを刺す
痛かったか?
…ああ
痛覚だとかそんなの、持ってねえよな、オマエらは
それにしても
こんなに簡単に壊せるもんなのか
…この拳は知らぬ間に、いつのまにか
エメリヒ・ラインヴェーヴァー
オレも露払いに加わっちゃうよー
誘拐被害者の子たちが無事に逃げられるようにね
さあさあ、あっちの避難終了までお相手願うよ!
相手は複数、素早い、なら残留効果の【泥濘の地】でちょーっと動きを制限させてもらうよ
【ダッシュ】【忍び足】で相手に負けないくらいチョロチョロ動き回って砲弾を避けつつ
右腕の電爪で破壊していくね【一撃離脱】【衝撃波】
あと電気流し込んで部品ぶっ壊しちゃえば動きはもっと鈍るよねえ
特大の電気ショックをくらいな!【電撃使い】【機械知識】【気絶攻撃】
倒したら巻き込まれないようさっさと退散するよ~!
栂瀬・要一
ラヴィ(g01563)と
現在効果発動中残留効果は全て適用
特に【泥濘の地】【トラップ生成】で敵の動きを阻害
…もう痛みを感じずに済む、ってのはせめてもの救いかもな…
まぁいい、戻れねぇなら送ってやるよ
一度通った道なんでな、案内には適任だろ
接敵時は『忍び足』で【アサシネイトキリング】
基本は剣で戦いつつ、トドメを刺す時や距離がある敵の動きを妨害したい時は銃使用
敵の攻撃は基本受けるよりも回避を
極力トドメは引き受ける
(汚れ仕事はガキのやる事じゃねぇからな
仲間が致命傷を受けそうな時には『捨て身の一撃』も辞さない
自分を大事にする方法なんて知らねぇなぁ
…ま、とは言え目立つ傷くらいは避けてやるよ、泣かれるのは面倒だ
ラヴィス・ラトゥレーチェ
ヨーイチ(g01462)と
幼い元の姿の欠片もない彼らに弟の姿を重ねるが、首を振ってそれを払う
惨い事をするもんだ
戻れないなら…せめて安らかに眠らせてあげる
残留効果はありがたく使わせてもらうよ
敵の機動力を削ぐ【トラップ生成】
『高速詠唱』で友人(妖精)達を『召喚』し、【フェアリーコンボ】で攻撃
極力ダメージが多い個体を狙って、手早く倒す
攻撃はできるだけ避けるようにして、囲まれないように警戒
ヨーイチにも戦いやすいように声掛けも忘れず
あのねぇ、ヨーイチ。気遣いは嬉しいけど、私は騎士の端くれだよ
これくらい慣れてるから、キミはキミの事を大事にしてよね
でも、気遣いは受け取っておく。ありがと
●鉄の屍
遠く、冷たい金属のぶつかり合う音と、仲間達の声が聞こえていた。息を殺し、狭い通路の隙間や物陰に身を潜めながら、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)は慎重に工場の奥へと進んでいく。その胸中は、静かな憤りに満ちていた。
(歴史を綴る立場を外れると、こうも蹂躙されるものなのですね)
時計の針は狂い、罪もない人々の犠牲と共に在るべき歴史を踏み躙る。それがディヴィジョン――切り取られた地球の断片だ。あの日世界に何が起きたのか、異変の全容は杳として知れないが、目の前の出来事から目を背けてはならないということだけは本能的に理解できる。
何度目かの曲がり角までやってきたところで硬質な足音が近づいてくるのに気づき、璃央は壁の陰に張りつくようにして道の先を覗き込んだ。長く薄暗い通路の向こうには、カツカツと機械の脚を鳴らしながら歩いてくる狼の姿が見える。
「……最期は、人として在りたかったでしょうに」
物憂げに睫毛を伏せて、璃央は眉根を寄せた。
人として生まれ、人として死ぬ。そんな当たり前の権利さえ、ここではいとも容易く奪われる。
分かりますよと呟いて、美しい少年は両の拳を握り締めた。
(私も、そう在りたいと願ってますので)
もはや人ならざる者達を助け出す術があるとすれば、それはただ一つ――終わらせてやることだけ。
深呼吸一つ、近づいてくる足音の主をやり過ごして、璃央は通路へ飛び込んだ。熱源を感知したのだろうか、反転しようとする鉄狼の砲身が火を噴く前に一気に距離を詰め、その背中に躍り掛かる。
デーモンイーター――即ち悪魔喰らい。振り上げた拳は喰らった悪魔の力を帯びて、鉄狼の鼻面を殴り飛ばす。地に伏した獣の背を片足で押さえつけ、璃央は言った。
「もう、何も感じないのだそうですね。……多少、罪悪感が薄くなって助かります」
組み敷いた獣が火花を散らし、捩れて動きを止めてしまうまで――何度でも繰り返し、その拳を突き入れる。ぽつりと呟いたその表情は、照明を背に影となって見えなかった。
地上では、傾きかけた陽射しがラインの川面にきらきらと光を投げ掛ける頃である。工場内では、依然としてディアボロス達と巡回中のトループス級クロノヴェーダ達との交戦が続いていた。
「さあさあ、あっちの避難終了までお相手願うよ!」
わざと大きな声で呼び掛けて、エメリヒ・ラインヴェーヴァー(黒雲・g00180)は鉄狼の注意を自分に向けさせる。機械の脚と石床が擦れるカシュカシュという気味悪い音と共に、狼はエメリヒを目掛け猛然と駆けてくる。
「悪いけど、ちょーっとそこでじっとしてて?」
流れるような軽口と共に、男の指がぱちんと鳴った。途端、石床の一部が泥濘のようにぐにゃりと蕩け、鉄狼の足を掬い取る。まかり間違ってもこの道を通すわけにはいかない――背にした通路のその先には、街をめざして逃げる子ども達がまだいるかもしれないのだ。そして降り掛かる火の粉を払うことこそが、彼らの役目だ。
「おっと、」
足を止めた鉄狼の背で、取りつけられた砲が火を噴いた。規則的な破裂音と共に飛び散る無数の弾丸を寸でのところでかわしながら、エメリヒは胸の前に手を構える。右手の甲を覆った電撃は鋭い爪を象って、バチバチと青い火花を散らした。
「とっておきのを、喰らいな!」
身体を傾けて避けた弾丸は頬を掠め、鮮やかな紅が宙を舞ったが、砲門の下に潜り込んでしまえば銃器も恐るるに足らぬもの。に、と好戦的な笑みを浮かべて、エメリヒは床を蹴る。ねじ込んだ拳は獣の腹へ強力な電撃波を叩き込み、その回路を灼き切った。
「やるな」
「まあ、これくらいはね?」
白浜・轟(寒虎・g01246)の声に応えて、それほどでもとエメリヒは笑う。しかし――まだ終わりではない。通路の奥からは次々と、新手がこちらに向かってくる。
「ち……ぞろぞろと」
不愉快を隠す気もなく眉をひそめて、轟は言った。
毛の一本もない無機質な表面は、番犬にしても可愛げがなさすぎる。尤もこれから屠る相手に、可愛げがあっても困るのだが。
燃え残った炭のような黒い瞳に迫りくる鉄の狼を映して、轟は腕の火砲の照準を合わせた。そして十分に引きつけてから、狼の眉間目掛けて鉛玉を叩き込む。
ガァンと重たげな音と共に、一匹の狼が吹き飛んだ。しかしそれには目もくれず、次の一匹が轟に向かって突進する。地下だけに下手に柱や壁を傷つけるのも躊躇われて、轟は銃口を下げ、籠手をはめたもう一方の手を握り締めた。
「駆け回るのは雪の日だけにしとけよ」
挑むような口ぶりで、灰色の男は重心を落とし、身構えた。駆ける鉄狼の背中で不気味に見つめる砲台が熱を帯び、紅い光を蓄え始めるが――
「当たるかよ……!」
的としては多少大きいが、射線に入りさえしなければどうということはない。左右にジグザグと蛇行しながら狭い通路を駆け抜けると、轟は渾身の力でもう一匹の鉄狼を叩き伏せた。
「痛かったか? ……ああ、いや。オマエらは」
もう、痛みも感じないんだっけ――。
蒼い火花を散らす骸を見下ろして、男は長い息をついた。見つめる拳の籠手に残る擦れたような跡が、彼がたった今奪ったものの存在証明だ。
(こんなに簡単に、壊せるもんなのか)
知らぬ間に、いつの間に、この拳は――こんな。
知ってか知らずか眉を寄せながら、轟は緩く首を振る。まだ手の届く命を救うそのためには、感情に浸っている時間などないのだから。
「わ」
床を蹴り跳躍したルル・ムル(花頭蓋・g02918)の残影を、鉄狼の牙が噛み砕く。あぶない、と口にして機械の背を一歩二歩、花色の娘は軽やかに歩いて反対側へと降り立った。身の丈ほどもある翅は薄く、鉄の牙を前にしては余りにも脆い。
しかし――彼女は慌てない。
(機械。相手は機械)
どこか茫洋とした紫紅の瞳を鉄の狼に向け、ルルは呟くように言った。
「便利な道具は、もろい」
稲穂にも似た触覚が、渦を巻く風にばたばたと揺れる。呼び寄せる砂の嵐はルルの身体を爪先から頭の天辺までなぞるように取り巻いたかと思うと、鞭のようにうねりながら鉄狼へと殺到する。体表を硬い金属に覆われた狼は砂粒など物ともせぬかのように見えるけれど――。
「ギ……ギギ……」
踏み出そうとする前脚が、次第に重く、硬くなる。細かな砂粒は鉄の身体に傷をつけることは能わずとも、金属の継ぎ目を埋めることはできる。一度動きを止めてしまえば、鈍重な鉄塊は手頃な的でしかない。
一丁の拳銃を右手の中でくるりと回し、栂瀬・要一(黄泉人不知・g01462)は標的を見定める。紅い瞳にはやり場のない想いが滲んでいた。
「……もう痛みを感じずに済む、ってのはせめてもの救いかもな」
人としての尊厳を奪われ、地を這う鉄塊へと堕とされて、その上なおも苦しみ続けるのだとしたら――そんなことは、想像もしたくない。思わず吐いた溜息に静かな憤りを乗せて、男は引き金に指を掛ける。
「まぁいい。……戻れねぇなら送ってやるよ」
リターナーとして蘇った男にとって、死出の旅路は既に一度通った道だ。もはやそこへ誘うことでしか救えないというのならば、せめてその道行が穏やかであるように努めよう。
「案内には適任だろ」
轟音と共に銃口が火を噴いた。放たれた弾丸は回旋しながら宙を裂き、狼の額に突き刺さる。その光景にまだ見ぬクロノヴェーダへの嫌悪感が溢れて、ラヴィス・ラトゥレーチェ(暁月夜・g01563)は眉を寄せた。
(惨い事をするもんだ)
物言わぬ鉄塊と成り果てた子ども達が、どんな境遇で生きてきたのかは分からない。身寄りもなく孤独に生きることが、幸せであったとも思えない。
けれどどんな生活の中であれ、笑顔になれる瞬間はあったはずだ。生きてさえいてくれたなら――それを守れる可能性も、然り。
哀れな子ども達の本当の姿を思い描けば幼い弟の姿にだぶって見えて、ラヴィスはやりきれない想いを抱えたまま、呼び寄せた妖精達に目配せする。
(今はもう、眠らせてあげることしかできないけど)
たった一つでも、まだ彼らにしてあげられることがあるのなら。
伸ばした手の指先から、蒼い光の鱗粉を溢して妖精達が飛び立った。彼女達が右へ左へひらひらと狼の視線を引き付ける間に、ラヴィスは一気に距離を詰め、敵の傍らへ回り込む。
これが、最後の一匹。しかし振り上げた妖精剣を鉄狼の背に突き立てんとした――瞬間。
硬い金属の割れる音が響くまで、なんの気配も感じなかった。けれど行き場のない刃を掲げる娘の目の前で、鉄狼は傾き、動きを止める。視線を上げるとそこには、白煙立ち昇る銃を構えた要一の姿が在った。
「……あのねぇ、ヨーイチ」
む、と唇を尖らせて、ラヴィスは言った。
「気遣いは嬉しいけど、私は騎士の端くれだよ。これくらい慣れてるから」
「は? 何のことだか」
突きつけられた人差し指の主を一瞥して、要一はわざとらしく肩を竦めた。そのまま拳銃を剣に持ち替えて、その瞳は通路の先を睨み据える。
(汚れ仕事なんざ、ガキのやることじゃねぇからな)
尤も、聡い娘はすべて分かっているのだろう。死角を埋めるよう背中合わせに寄り添って、ラヴィスは言った。
「キミはキミのことを大事にしてよね」
「は、自分を大事にする方法なんて知らねぇなぁ」
「……キミって奴は、もう!」
憤慨したような声を背にして、要一は微かに口角を上げた。
「ま、目立つ傷くらいは避けてやるよ。泣かれるのは面倒だ」
誰がいつ、泣いたって――? そんな声が聞こえた気がするが、じゃれ合うのはすべてを終えてからだ。
最後の一匹を地に伏して、十秒。二十秒。静まり返った通路に新手がやってくる気配はない。
「避難の方はどうでしょう。犠牲者はいませんか」
「分からん。だが、少なくとも追手は通してないな」
尋ねるルルに、轟が応じた。上手く行ってるといいが、と加えた言葉に、その場の誰もが同じ思いを寄せる。だが今は、仲間達を信じるより他にない。
「さーて、それじゃあ次、行きますか!」
ぱん、と両手を打ち合わせて、エメリヒが言った。そう――彼らの倒すべき敵は、まだ残っているのだから。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV1が発生!
【怪力無双】がLV2になった!
【建造物分解】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
【モブオーラ】がLV2になった!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV2になった!
山田・菜々
この首謀者を野放しにするわけにはいかないっす。必ず鉄槌を下すっすよ。
残留効果2をすべて使用。総力戦すよ。
まず先に連れられている少年をひきはなすっすよ。光学迷彩で忍び寄り、ナイフで少年をつかんでいる腕をねらって切りつけるっすよ。
屋外にむけて逃げたらすぐに手榴弾を出現させてなげつけるっすよ。爆発とともに走って、拳で追撃をかけに行くっす。そこからインファイトで屋外に逃がさないようにするっすよ。
荒田・誠司
【心情】
相手は強敵だがやってみるしかないか
周りは武器だらけだ、お前らが使ってきた道具で倒してやるよ
【行動】
使用技能:地形の利用、臨機応変、情報収集、看破、早業
まずは敵の攻撃を遮蔽物で避けながら、相手の行動の観察や周辺に置かれている物の把握など情報収集をする
遮蔽物が無ければ怪力無双で作る
必要な事が分かれば、残留効果2を全て使用し適当な物品を武器にして戦闘を行う
咄嗟の回避は壁歩きやトラップ生成を使用して行う
出来れば子供達を手術していた道具を武器に使いたい、改造された人の気持ちを思い知れ
鐘堂・棕櫚
弱いひとほど弱者を標的にしますよね、ねえ工場長さん
適当に煽る言葉を投げ付けつつ
連れられている子供が居たら
手振りで逃げろと伝えてみましょう
ええ飛べません、飛べませんが
なんとか地面近くまで降りるタイミング狙います
萱 (g01730)さんのお力で
奴さんも自由に飛び回れないでしょうし
骰さん(g00299)は見た目通りの筋モン暴力バトルですか
派手にやっちゃってください
俺も光学迷彩とモブオーラの残留効果を使って
死角からちまちま削りますので
上空からドリルで狙われたら
大人しく食らいますがバールで殴り返しますからね!
痛かった分きっちり!
そろそろ因果応報という言葉を味わってみて下さい
ガラクタになるのは貴方の番です
鬼歯・骰
暴力で解決すような分かりやすいのはいい
存分にやってやろうじゃねぇか
…飛べねぇな
問いには首を横に
まぁ、なんとかやるしかねぇだろ
地形の利用で周囲にあるもの足場にしながら接敵
標葉(g01730)の砂嵐で鈍った相手の
関節やパーツの機動力落ちそう部位狙って鋸でぶん殴る
随分と固そうななりしてっから怪力も全部乗せでいこう
一撃入れたら他のやつに任せて距離とってレーザー回避
光学迷彩なり、周囲のもを破壊するなりで目くらましを
まぁ多少怪我しても動けなくなるまでは気にせず
敵を破壊出来るまで何度でも殴りに行くか
ツリガネ(g00541)、案外負けず嫌いだなお前
趣味の悪い工場ごとがっつり解体されて
アンタがゴミになっちまいな
標葉・萱
脅威は一つでも、少ない方が良いでしょうから
きちんと、ここで終わらせましょう
飛ばれてしまうのは厄介だな
……飛べませんでしょう?
ちらと窺ったのは同道のお二人(鐘堂さん:g00541/鬼歯さん:g00299)を
ですよね、と冗談とも知れぬ期待が外れて頷いて
屋外へ向かうなら好都合
攻撃しに降り立つのを狙って【サンドストーム】を
目晦ましと、攻撃を当てやすくなるように
囮と援護といきましょう
風に風で、仕返されるのは少し、癪ですが
バールで殴り返すのは随分、……強火かと
そろそろ、お仕舞にしましょう
彼らの明日には不要と、それまでのこと
エメリヒ・ラインヴェーヴァー
あとは親玉だけだね!
残留効果2、使わせて貰うよ!
飛行装置を使って空から行くよ【空中戦】【戦闘知識】
レーザーを避けながら突撃、すれ違い様に爪を使って、やたらめったらにある線をブッた斬るね【一撃離脱】【両断】【電撃使い】
ブンブン飛び回ってればアッチも狙いつけられないでしょ
そうして上下左右死角の端から飛び出してまた爪で斬っちゃう!【不意打ち】
こっちがボロボロになる前に終わらせる!
朔・璃央
嫌いですよ、飛び回るやつ
翼も生えてるみたいですし、嫌いですね
そこはかとなくアークデーモンに見えなくもないですし
……嫌いですね
あの醜い両腕で狙ってくるようですし、
降りてくるところを狙うとしましょう
狙い以外の攻撃の回避を行いながら、行動をよく観察
エアライドも活用しながら
上手く遮蔽物で射線を切るように動き回りましょう
降りてくるタイミングを見極められたら、
飛び込んで来るのに合わせて『破軍掌』を置いておく感覚で
一点を狙うよりは避けにくいでしょう
上手く叩き落とせたら組み付きを狙って、
怪力無双で翼を剥ぎ取ってやりたいですね
ぶんぶんと飛び回らなくなるだけで、
多少は不快感が減ってくれるでしょうきっと
白浜・轟
撫でるような女の声
その割にはおぞましい見た目で
こいつが、ガキ共を
メシひとつ食えなかったガキを
身体を断たれてたまるか
エアライドで回避し光学迷彩で身を隠す
遮蔽物はあらゆる物を使って同じ場所に留まらない
素早く駆けて近付いたら
魂が、感情が、満ちる怒りが燻る前に
拳で全てを叩きつける【破壊
味方と共に攻撃の手が止まぬよう意識
仲間が逃走を阻止してくれてんだ
それに重ねたダメージアップと命中率アップがある
赤い熱線も腕のドリルも
潰してしまえばいい
オマエにわかるか
訳の分からないモノになって
意識も殺されて
そうして化け物のまま死んでいく
わからねぇなら、わからねぇまま死ねよ
もう二度とその鉄屑が直せぇくらい
壊し尽くしてやる
●石室に見ゆ
「いやだ、はなして! はなしてよー!!」
幼さの多分に残る少年の叫びは、石造りの部屋に痛々しく反響した。うるさいわねえと困ったように口にして、機械仕掛けの魔女は子どもの襟首を掴み無造作に持ち上げると、部屋の中心へ進んでいく。
秘密工場の奥の奥。古城の遺構に手を加えたものらしい苔むした石壁の手術室は、やたらと広く、中央に並んだ複数の手術台を不気味な機械が囲んでいた。癒すための施設ではないから衛生面を気にする必要がないのだろう、それぞれの器具には黒く変色した血液がこびりついたままになっている。
いよいよ声も出せなくなった子どもを手術台の一つに叩きつけて、魔女は言った。
「聞き分けのない子ねえ。痛いのは一瞬だって言ったじゃない。後はなんにも感じないの。わかる? それとも――」
機械人形のような外見に反して、尋ねる声は底抜けに甘い。伝説の水精が歌うように、声の主は続けた。
「ちゃんと痛いうちに、もっと痛い目に遭いたいの?」
かちかちと歯の根を鳴らして、子どもは恐怖に見開いた瞳から涙をこぼす。極度の緊張に冷え切った手足の先は、もうぴくりとも動かすことができない。ぎらつく照明を背に覗き込む魔女の表情は読めないが、ただその声が楽しそうに弾んでいるのは理解できた。
「よしよし、いい子ね。そのままじいっとしていて頂戴ね。すぐに終わるから、だいじょう……」
薄気味の悪い猫なで声を遮ったのは、鼓膜を震わすような轟音だった。何事かと振り返った魔女の目と鼻の先で、手術室と通路をつなぐ金属の扉が紙のようにひしゃげて倒れ込む。その向こうにまず見えたのは、固めた拳を震わせて立つ、白浜・轟(寒虎・g01246)の姿だった。
「……オマエが、親玉か」
壊れた扉をさらに踏みつけて、轟は大股で部屋の中心に歩み寄る。その気魄は、おぞましい姿形の魔女を畏怖せしめるほどの怒気を湛えていた。
「オマエが――メシひとつ食えなかったガキどもを」
「な、何よあなた達! どこからここへ――きゃあっ!?」
ギィン、と重たげな金属音に続いて、絹を裂くような悲鳴が上がった。手術台に少年を抑えつけていた右手を跳ね上げて、魔女は一歩二歩と後ずさりする。何が起きたのかも分からぬまま、火花を散らす右腕を押さえて今いた場所を振り返ると、見えない霧が晴れていくかのように、山田・菜々(正義の味方の味方・g02130)の姿が浮かび上がる。その手には、一振りのナイフが握られていた。
「好き勝手するのも、ここまでっすよ!」
「な――何なの。あんた達一体、なんなのよ!」
言葉を取り繕うのも忘れ、ヒステリックに魔女は叫ぶ。その意識が完全にこちらに向いたのを見て取り、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)は手術台の上に目を配る。子どもはすっかり怯え切っていたが、それでも縋るような瞳でディアボロス達を見つめていた。膝の横に揃えた手をひらつかせて視線を誘い、そして素早く一振りすると、子どもは歯を喰い縛って手術台から転げ落ちる。
「あっ、こら、」
「弱いひとほど。弱者を標的にしますよね――ねえ、工場長さん」
わざと大仰に声を張り、棕櫚は続けた。一瞬で注意を引き戻された魔女へ挑むような眼差しを向けて、そうそう、とエメリヒ・ラインヴェーヴァー(黒雲・g00180)が後を継ぐ。
「まー、観念しなよ。後はもう、アンタだけなんだからさ」
「私……だけ……!?」
鉄仮面に覆われた魔女が、どんな顔をしているのかは分からない。けれどもその声には明らかな焦りと、現状に対する危機感が滲んでいた。
「気づいてなかったのか?」
「敷地が広すぎるのも考え物ですね」
呆れたように口にする荒田・誠司(雑草・g00115)に、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)が淡々と重ねた。捉えた子ども達を解放され、警備の手下達を無力化されてなお気づかないというのは、仮にも『工場長』としていかがなものかと思うけれど。
「あなた一人をどうこうしたところで、すぐに何かが変わるわけではないのでしょうけどね」
やれやれと肩を竦めてその手に砂風を纏わせ、標葉・萱(儘言・g01730)は続ける。
「脅威は一つでも少ない方が良いでしょうから――きちんと、ここで終わらせましょう」
「ああ。……存分にやってやろうじゃねぇか」
刺すような金の瞳で機械の魔女を睨み据え、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)は唸った。今を生きる人々のため、そして眠らせてやることしかできなかった、多くの子どもたちに報いるために。ディアボロス達は武器を取り、鋼の魔女に挑み掛かる。
●ラインに沈め
「ええい――寄るな! 寄るんじゃない!!」
金切り声を上げる魔女の目が紅い光を宿す。一歩、二歩、空気を踏んで跳躍すると、轟は放たれる熱線を跳び越えた。燃え盛るままの怒りと共に振るう拳は、魔女の頬を掠めて石壁を打ち砕く。おのれと苦々しげにディアボロス達を一瞥し、魔女は背中に生えた翼のような装置を駆動させた。大量の煙をふかして飛翔する先は、手術室の奥にあるもう一つの扉だ。そしてその向こうは恐らく、地上へとつながっている。
「逃げるぞ!」
そうはさせないと手術台を囲む照明具を咄嗟に折り取り、誠司は魔女の背に向けて投げつける。しかし魔女は乱暴に扉を開くと、振り返ることなくその先へ突き進んでいく。
「首謀者を野放しにするわけにはいかないっす!」
罪のない子ども達を玩弄したクロノヴェーダには、鉄槌を下さねばならない。掌に手榴弾を握り締めて、菜々は奥歯を噛み締める。しかしその時――子どもの、泣く声がした。はっと足を止め振り返れば、手術台の傍らにへたり込んで少年が独り、泣いている。
「いいよ、こっちは任せて!」
力強く告げて、エメリヒは脚部に取り付けた飛行装置のスイッチを入れた。急加速するその背中を見送って、萱は困りましたねと眉を寄せる。
「知ってましたけど、飛ばれてしまうのは厄介ですね。お二人とも、飛べませんでしょう?」
「飛べねぇな」
「ええ、飛べません」
間を置かず否定する骰と棕櫚に『ですよね』と頷いて、駆ける脚を速める。傾斜のきつい階段は長く、地下と地上を最短距離でつないでいるようだ。
「まぁ、なんとかやるしかねぇだろ」
何の勝算もなく、ただ飛び込んだわけではない。それに狭い室内で事を構えるより、外の方が好都合なこともそれなりにある。
階段を駆け上ることしばらく、頭上で重々しい音がした。出口の扉が開いたのだろう、見上げる路の先から赤らんだ光が差し込んでくる。
「嫌いなんですよ、飛び回るやつ」
形のよい唇を歪めて、璃央は上体を前傾し加速する。辿り着いた光に手を伸ばせば、狭い通路から一転して視界が開け、夕映えに染まるラインガウの丘と森が飛び込んでくる。そして落ちかけた太陽を背にして浮かぶ、機械の魔女の姿も――また。
はあ、と肩で息をつき、璃央は嫌悪感を露わに瞳を細めた。
「……やっぱり、嫌いですね」
鉄に覆われた頭部から髪のように伸びたケーブルが作る影は、正に化け物だ。背中から突き出た翼は或いは、璃央にとっては憎きアークデーモンのそれにも似ている。
しかし立場や境遇は異なれど、見上げるディアボロス達の胸に過る想いは同じ――絶対に、射ち落としてやる。
斜陽に不気味な黒点を作る女を見据えて、エメリヒは不敵な笑みを浮かべた。
「こっちがボロボロになる前に終わらせないとね!」
飛行装置が熱を帯び、唸りを上げた。夕焼け空を切り裂く一矢のように、エメリヒは魔女へと肉薄する。きゃあ、と間の抜けた悲鳴を上げて、来ないでよと魔女は叫んだ。
「来ないでって言ってるでしょお!」
紅く光る双眸から迸るレーザーを潜り抜ければ、後方で石壁の崩れる音がする。けれど構ってはいられない――狙いをつけられないよう、上下左右へ不規則に飛び回って魔女の死角へ入り込み、エメリヒは雷刃と名打たれた爪を一閃する。蛇のようにうねるコードが一本、二本と断ち切られ、夕映えに黒ずんだ森の中へと落ちていく。
「なんなのよ……一体なんなのよ、あんた達!」
「お前に名乗る名はないよ」
少し癖のある黒髪を風に揺らして、誠司は鋭く上空の敵を睨みつける。その手のメスは地下の手術室にあったものだ。鈍く光る刃を痛いほどに握り締めて、少年は叫んだ。
「改造された人の気持ちを、思い知れ!」
どれだけの人間がこの刃に恐怖し、そして死んでいったのかを。
渾身の力で投げつけたメスは一直線の軌跡を描いて、機人の継ぎ目に突き刺さる。忌々しげにそれを抜き取ると、魔女は馬上槍のように尖った両腕を胸の前に突き出した。そして怒りに震える声で、憎々しげに告げる。
「邪魔するんじゃないわよ」
ギュンギュンと激しい機械音を伴って、尖った両腕が回転を始めた。醜い、と一言吐き捨てて、璃央は仲間達を一瞥する。
「降りてきますよ」
少年が言葉を終えるのと、回る螺旋が大地を刺し貫いたのはほとんど同時だった。直撃こそかわしたものの、二の腕に火傷しそうなほどの熱が触れて、棕櫚は奥歯を食い縛る。燃える太陽に負けずとも劣らぬ鮮やかな紅がぱっと散り、強かに打ちつけた背中に衝撃が走った。しかし黙ってやられているほど、行儀のよい性質ではないもので。
「っ、この――やりましたね!」
取り落としかけた得物を握り直し、圧し掛かってくる魔女の横面をバールの先端で力いっぱい殴り飛ばす。その光景を間近に見て、骰が意外そうに言った。
「案外負けず嫌いだなお前」
「お褒めに預かりどうも」
ぐい、と裂かれた腕を拭って、棕櫚は敵の軌跡を追う。強かに殴られた魔女は咄嗟に飛行装置を真下へ向けて、上空に退避しようと試みたようであるが。
「な、何!?」
宙に浮かぶ魔女の身体に砂混じりの風が絡みつく。目に見える風のうねりを辿った先、地表から上空の敵を仰いで、萱は言った。
「もうそろそろ、お仕舞にしましょう」
この国の未来に彼女は必要ない。いわんや将来ある子ども達には、なおのことだ。
吹き荒れる砂嵐に煽られて、魔女の身体がぐんと傾いだ。その瞬間を見逃さず、骰は崩れかけた城壁を駆け上がるとその頂部を蹴って反転し、魔女の頭上へ躍り出る。見上げる魔女が『まずい』と思った時には、もう遅かった。
「アンタがゴミになっちまいな」
「あ、待っ――」
続く言葉が呪詛であったか、懇願であったかは分からない。叩きつけるように振り下ろした片刃の鋸は鮫の歯の如く機械の継ぎ目に喰い込んで、その腹を薙ぎ払う。
小さな嘆息をこぼして、棕櫚は冷やかに言った。
「因果応報、ですよ」
罪もない子ども達を人ならぬものに作り替え、あまつさえガラクタと呼んだ女の末路には相応しい。大きくバランスを崩した魔女は尖った腕を投げ出して、錐揉み状態で墜ちていく。その先には、待ち構える璃央の姿があった。
「まったく性懲りもなく、ぶんぶんと」
不快なので、やめてもらえます――? 淡々とした口ぶりに明らかな嫌悪の響きを乗せて、少年は右の掌を体の前に掲げた。音もなく構えた掌底は落ちてくる『それ』に触れる寸前、痛烈な衝撃波を放つ。どん、という振動が空気を伝って、ディアボロス達の肌に痺れるような感覚を残した。
「ぐ、う……き、さま、らあ」
美しい声を屈辱と憤怒に濁らせて、女はもがく。その瞳に熱線の光はもはやなく、折れた翼はもう二度と、彼女を空へは運べない。しかし地に這う女を見下ろしても心は少しも晴れることなく、轟は唇を歪めた。
「オマエにわかるか」
人としての尊厳を奪われ、意識もないまま訳の分からぬ姿に変えられて。
化け物のまま死んでいった、哀れな子ども達の無念が。
名も知らぬ子らの慟哭が、どこからか聞こえてくるような気がした。血の滲むほどに固めた拳を振り上げて、男は告げる。
「わからねぇなら、わからねぇまま――死ねよ」
突き下ろす拳は、機械の胸を一息に貫いた。断末魔を響かせる暇もなく、鋼の魔女は絶命する。恐らく彼女は最期の瞬間まで、敵対者達の正体と目的を知ることはなかったであろう。
怒りに肩を震わせながら、轟は立ち上がった。終わったか、と口にして、誠司は僅かに眉を寄せる。
彼らは確かに、一体のクロノヴェーダを終わらせた。しかし、それで何かが帰ってくるというわけではない。戦いを終えながらもなお重苦しい空気に、ディアボロス達は口を閉ざす。
かつんと、微かな音がした。
咄嗟に顧みれば七条の視線の集まる先、地下工場へと続く階段の出口から誰かがこそりと顔を覗かせている――菜々と、彼女が保護していた少年であった。
「皆さん、ご無事で何よりっす」
戦いの余韻と救えなかった命の重さに淀んでいた空気が、俄かに軽くなる。彼らが此処を訪れたことで、救われた命が確かにあるのだ。今は救えなかったものを数えるよりも、救えたものを数えたい。
ふ、と口元を和らげて、エメリヒは宵色へと移りゆく空を仰いだ。
「さ、オレ達も帰ろっか」
足元の地面が、ぐらぐらと揺れ始める。地下の施設が崩壊を始めたのだろう――巻き込まれる前に、一刻も早くこの場を離れなければ。
監獄の崩れゆく音色を聞きながら、ディアボロス達はラインの丘を後にする。その背中は、手を引かれて走る少年の瞳の中で何よりも勇ましく、頼もしく映ったことだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【操作会得】がLV2になった!
【強運の加護】がLV4になった!
【モブオーラ】がLV3になった!
【土壌改良】がLV2になった!
【飛翔】LV1が発生!
【エアライド】がLV2になった!
【建造物分解】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【アヴォイド】がLV4になった!
【フィニッシュ】がLV3(最大)になった!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!