虚実の駆け引き(作者 baron)
#冥海機ヤ・ウマト
#ミッドウェー海戦~ミッドウェー環礁の戦い
#ミッドウェー鎮守府
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ディアボロスの動きは超大和をして意外にも慎重であった。
超大和はその演算力を駆使して計画を見直し、練り直していく。
「ディアボロスの索敵を避ける為に包囲網は多少広げる事になったが、問題は無い」
「敵の移動拠点の場所も割り出しは完了、いつでも破壊できる」
「ディアボロスがミッドウェー鎮守府を攻めて来させるだけだ」
これらの点で全く問題が無いように見える。
作戦で設定した大枠一杯に広げたことで、ディアボロスは妥当な範囲での索敵活動ゆえに見つけられなかったのだ。
それを越えるような変質的な哨戒活動をするには、何らかの理由があって、それを元に決断が必要だったろう。
「誘いをかける必要があるか」
予定では鎮守府に食いつく動きを既に見せ始めている筈だった。
超大和が意外に思い、そして実現できてない計算は、まだミッドウェー島を攻める気配がない事である。
近くにまで寄って部隊を幾つか撃破したがそれだけであり、触手を隠した施設まで進行しても居ないのだ。
「鎮守府に残るトループス級を全て環礁内に展開」
「ディアボロスが攻撃してくれば、逃走を装って敵を誘引せよ」
「そのままを島内に誘き寄せ、包囲殲滅するのだ」
島に上陸し、攻勢をしなかったので施設に隠した触手には気がついていない筈だ。
何らかの秘密兵器が格納されているか、強力な砲台というところだ。ゆえに計画はそのまま進行させる。
その為に激しい戦いと成れば、役に立たぬかもしれないトループス級を使う事にした。
誘因の為の囮として使えば死ぬかもしれないが、『大いなる犠牲』で済むはずだ。自らすら囮にした超大和が悩むことはない。加えて言えばディアボロス側に超火力の遠距離兵器があれば、トループス級など瞬時に撃滅されるだろう。それを考えれば有用で有情な使い方であるだろう。
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「ミッドウェー海戦に向けた情報戦にも一区切りがついたようだ。
鎮守府の調査を進めた事で、敵軍の動きについて多くの情報を得る事が出来ている。
だがジェネラル級の位置を特定して決戦を挑む程の情報を得る事はできなかったようだ」
アウグスト・エステルブリッツ(人間の思想家・g08506)は順調ではあるが、想定よりも情報が集まって居ないと伝えた。
何度も哨戒を繰り返したことで、超大和の戦略や仕掛けを予知する事が出来た。
だが、相手の奇襲などは全周警戒して対策しているものの、敵部隊が予想以上に外縁に居たので見つけられなかったのだ。
「敵の策が全てわかったのは確実に良い事だし、全てを見抜くなど不可能だ。問題ない範囲で成功したと言って良い。
考えを切り替えて、得られた情報を元に攻略旅団で新たな作戦を立て、決戦の勝利に向かって欲しい」
何事にも捨拾選択というものがあるとして、全てを万全に行う事は出来ない。
敵が思ったより外に部隊を配置していた為、過剰な偵察をしなかったので発見できなかったが、逆に言えば奇襲も出来ない。
お互いに千日手を行いながら少しずつ状況を進めているというところだろう。こちらは一部でジェネラル級との決戦を早めたり、断片の王へ一気に暗殺作戦を行うルートを構築できなかったが、逆に言えば敵の罠をこの段階で見抜くことが出来たのだ。
「新たに判った事として、ミッドウェー島にはジェネラル級に匹敵すると思われる、8本の巨大な触手が存在している。
断片の王『超大和』は、この8本の触手で攻め寄せたディアボロスを防衛する。おそらく耐久性だけならジェネラル以上。
その間に周囲に展開したジェネラル級による包囲殲滅作戦を狙っているようだ。
加えて『超大和』は、『しぶや』の場所を把握し、いつでも破壊できる準備を整えていると思われる」
おそらくディアボロスの包囲が完了する間際で、『しぶや』を破壊する事を狙っているのだろうという。
ただミッドウェー鎮守府に残っている戦力は多く無く、戦力の大半はジェネラル級と共に島の外に出ているようだ。
「敵はトループス級は、ミッドウェー島の環礁地域に布陣して、ディアボロスを待ち受けている。まずはこの対処だな」
千日手になったことで、状況を動かすべく敵はトループス級を囮に使ったようだ。
これに対処しつつ、何か作戦があれば攻略旅団で判断するという事だろう。
どんな策を使うにせよ、敵部隊を壊滅させること自体は有意義なのだから。
「ミッドウェー環礁に展開したこのトループス級は、誘いで間違いない。
ディアボロスが戦いを挑めば、ディアボロスが追撃可能な速度で、ミッドウェー鎮守府に逃走する。
この動きは無視しても良いのだが、敵の誘いに乗らないように、ミッドウェー鎮守府の戦力を減らす事が可能だ」
上手く行けば次の作戦を有利に運ぶことが出来るだろうとアウグストは告げた。
また超大和に対しても、ディアボロスが、超大和の策に乗って攻撃を仕掛けてきているように見せかければ、油断を誘う事が出来るだろう。何しろ相手の予想内であり、少しずつだが鎮守府を目指している様に見えるからだ。
「ミッドウェーの戦いは睨み合いのまま、両者が番外戦で少しずつ手を進めている段階だ。
この状況を打ち破る為の作戦を思いついた場合は、攻略旅団で提案して欲しい」
敵の狙いが判明しそれに乗っているので、大きく変化はしていない。
もし、状況に合わせた的確な作戦があれば、勝利に近づく事が出来るだろう。
イニシアティヴはこちらにあるし、全く路線を変える場合でもディアボロスには採れる手段も多いのだと告げた。
「作戦を20以上、敵を逃走させずに撃破させる事が出来れば、ミッドウェー島のトループス級の戦力を全滅させる事も可能だ。
超大和に狙われている『しぶや』だが、安全の為に後方に撤退させる事も可能だ。
しかし、その場合、超大和に違和感を感じさせてしまうかもしれない。幸い、『しんじゅく』が、ミッドウェー海域に向かっているので、『しぶや』が破壊されても、作戦展開には影響は無い。君たちがどのような作戦を選ぼうとも、私はそれが正しいと言おう」
あえてアウグストはこれまでと同じ言葉を繰り返した。
少しずつ成功が積み上がり、申請されている作戦数もあとわずかというところだと告げて励ましたのである。
●
「死が、死が待って居ます。しかし、それは恐れるべき事でしょうか?」
「いいえ。それは我らにとって餞。王より託された重大な使命」
敵部隊の中でも危険地域に布陣した者たちはみな忠勇である。
いずれも命を懸けて戦う気概がある。
だが……。
「しかし作戦を忘れてはなりません」
「ええ。必要と有れば背を晒して王の元へ導きましょう」
敵はその地を守るというよりは、ディアボロスたちを誘き寄せようと布陣しているのだった。
リプレイ
ラキア・ムーン
……いかに断片の王の命とはいえ、自らの死すら肯定的になるとはな
まあ、クロノヴェーダとはそういうものか
その忠誠心利用させて貰う
水中適応を使用
敵と接触するまでは海上の仲間の近くの海中で移動
仲間が敵と接触したら海中より敵トループス級の直下まで移動
仲間が攻撃を仕掛けるまでは敵に発見されない事を最重視
敵の退却に合わせて海中を移動しつつ浮上タイミングを図ろう
仲間が泥濘の地を発動し敵の歩みが遅くなったタイミングで浮上
敵トループス級直下、もしくは少し追い抜いた場所へと移動し敵の退却を妨害しよう
浮上しつつ【Call:Divine_Edge】起動
《RE》Incarnationを術式とオーラで強化しつつ、浮上と同時に水面走行に切り替え槍を振り『薙ぎ払い』
敵を浮足立たせ、行動を妨害し退却の足並みを乱れさせその間に殲滅出来るように攻撃して行こう
トビウオ戦闘機の攻撃を槍で受ける
槍で捌き防御し敵に態勢を崩されない様に対処
なるべく敵を足止め出来るよう、敵との近接間合いを維持し敵退却を妨害し続けよう
アドリブ連携等歓迎
三間・勲
(連携アドリブ歓迎)
ひとまず相手の思惑に乗るふりをしてあげましょう
人が最も油断するのは「上手く行った」と安心した瞬間でしょうから
実際は深追いしないように、細心の注意を払いつつ殲滅を目指します
相手にも知恵があるのでこちらが追いかけたくなるような逃げ方を心がけると想定します
僕達が最も関心を向ける対象が「積極的に挑んでくる強敵」であると示し
士気の高さを確信させつつ敵の動きの誘導を試みます
【水面走行】で行動
断片の王を守る精鋭部隊…相当の手練れとお見受けします
ここで武功を立てさせていただきますね
宣戦布告し、敵が逃げる姿勢を見せれば「がっかりです…時間が惜しいのでここの敵は無視しましょうか」と興味が薄れるふりをします
一方で敵が分散しないよう集団の外側に居る個体を中心に狙いを定めパラドクス攻撃を
可能なら迂回するような動きを見せつつ味方と共に敵群の外周を包囲する陣形をとり、制圧射撃で挟撃を試みます
反撃は「氷盾」で受け、目標を撃破すれば次々と速やかに付近の別個体に狙いを切り換え判断に使う時間を削減します
月鏡・サヨコ
超大和の直属のトループス級ともなれば、その練度は侮りがたい
これは全軍の中でも精鋭と言える相手を騙す、困難な作戦
……それでも、私達にはこの戦いを完遂しなければならない理由がある
まずは敵が偽装撤退の成功を確信する所まで導こう
こちらの全速力を誤認させ、相手も振り切らないことを考えるとスピードを出しきれないように追走の速度を調整
勲がその路線で行くなら、私も話を合わせよう
超大和が座す場所に通じる航路であれば、より兵力の層を厚く取っているはず
敵の練度が低い以上、ここは違うということか……などと、耳をそばだてて聞き取ろうとすれば聞き取れるぐらいの声量で相談
敵に私達の声に意識を傾けさせ、方針を操りつつ戦闘への集中を僅かなりとも乱そう
「深入り」の領域に入る前に頃合いを見て【泥濘の地】を発動し、敵の動きを鈍化させ総攻撃
『零式弾・広域砲撃』の榴弾を敵の逃げていく先に撃ち込み、眼前で起きる爆発で退路を潰そう
トビウオは≪巡洋戦艦海戦装『黒姫』≫の機銃で極力撃ち落とし、止めきれない分の弾は≪海戦装用増設防盾≫で防ぐ
麗・まほろば
あと少しといっても油断しないのが超々々々弩級戦艦なのさ!
全力で依頼に取り組むよ!
【水面走行】を拝借!
仲間と連携して、突出しすぎないように行動するよ!
まほろばは【泥濘の地】を重ねることで敵を思う通りには進ませないことにするよ!
速度を合わせて普通に進もうとするクロノヴェーダには泥濘による速度低下を!
泥濘を抜けるために早く進もうとするクロノヴェーダはあえて対象から外し早く進みすぎるという状況を!
まほろばたちを釣りたいなら、また再び速度を合わせようとしてくるはず、だからこの繰り返し
クロノヴェーダの速度感覚を狂わせて、敵の思惑を想定通りには進ませないように調整するよ!
あとは仲間とタイミングを合わせて、まほろばは海に油を垂らし大波でクロノヴェーダたちを飲み込むよ!
敵の戦闘機には【51センチまほろば砲】を盾にして致命傷を極力さけるよ!
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ディアボロスたちのミッドウェー攻略戦第二章もそろそろ締めに入って来た。
もちろん予定は未定であり、第三章で大きくに進行することも、大阪城のようにいったん諦める可能性もあるだろう。
「あと少しといっても油断しないのが超々々々弩級戦艦なのさ! 全力で依頼に取り組むよ!」
麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)は気合を入れ更に気分を引き締めた。欺瞞作戦という物はその過程によって相手に影響を与えることもあるのだ。
「せっかく倒されても良いという相手だからね! 立派な船魂になってもらおうじゃないの!」
生き死にの概念に関してヤ・ウマト出身者は割りと緩い所がある。
その果てにや零式英霊機や冥海機に成ったりするわけだから何を言わんやである。
難きクロノヴェーダであり、しかも今回は囮になって死ぬつもりなのだから心苦しいということもない。
「……いかに断片の王の命とはいえ、自らの死すら肯定的になるとはな」
ラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)は指先を顎に当てて考える。
何処か釈然としないような、逆にしっくりくるような微妙さを感じる。
「まあ、クロノヴェーダとはそういうものか。その忠誠心利用させて貰おう」
「ええ。ひとまず相手の思惑に乗るふりをしてあげましょう。人が最も油断するのは『上手く行った』と安心した瞬間でしょうから」
ラキアの言葉に三間・勲(漁火・g10186)が頷く。
超大和の戦略は手堅くその読みは深い、だが、対抗できない訳でもないし策というものは逆用できなくもないのだ。
「ただし、実際は深追いしないように、細心の注意を払いつつ殲滅を目指しましょう」
「そうだな。超大和の直属のトループス級ともなれば、その練度は侮りがたい」
勲が油断をしないように引き締めると月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)はネコがそうする様に天を仰ぎ見た。同じころ、パンツァーハウンドの桂は仲間に抱えられていたが……尻尾がいつものようにブンブンではなかったという。
「これは全軍の中でも精鋭と言える相手を騙す、困難な作戦。……それでも、私達にはこの戦いを完遂しなければならない理由がある」
もしかしたら、前哨戦であるミッドウェー哨戒任務において、後少しというところで出し抜かれた事を気にしているのかもしれない。いや、それとも、冥海機に関わって死んでった全ての者に心を馳せているのだろうか?
「相手にも知恵があるので、こちらが追いかけたくなるような逃げ方を心がけると想定します」
勲は当然のことを口に出した。
精鋭部隊のが馬鹿であるはずがない。
脳筋なのではなく、普段に限れば余計な事は考えないようにしているだけだ。貝は貝柄に合わせて穴を掘ると言うが、任務に合わせて最適解を選んでいるに過ぎない。
「僕達が最も関心を向ける対象が『積極的に挑んでくる強敵』であると示し、勇猛果敢な部隊……士気の高さを確信させつつ敵の動きの誘導を試むのはどうでしょうか?」
勲はまず思想段階で、移動するペースやコースを狭めるべきだと告げた。
逃げ易い一撃離脱を繰り返すパターンと、前衛後衛に分かれてジリジリ引くタイプでは動きが違うからだ。前者ならば食いつくまで何度でも突撃して来るだろうし、後者ならばターゲットレンジのギリギリに留まり続けるだろう。
「勲がその路線で行くなら、私も話を合わせよう。その上で、だ。追撃時には敵が偽装撤退の成功を確信する所まで導こう。その為にはこちらの全速力を誤認させるべきだろう」
これに対してサヨコの提案は、速力を最大にはせずに追い掛けるパターンだ。
こちらの全速力を誤認させ、相手が容易く振り切ってしまわないペースを保たせる。
その上で、相手が『ディアボロスのペースを掴んでいる』と思った所で一気に飛び出る作戦である。
「それで良いんじゃないかな? なら、まほろばは【泥濘の地】を重ねることで敵を思う通りには進ませないことにするよ!」
「ふむ。ならば私は敵と接触するまではディアボロス側の海中で潜み、少しずつ敵の直下まで移動しよう。その時に攻撃をしなければ速度の調整は出来るだろう。重要なのは見つからない事、退却を試みであろう泥濘の地を使ったタイミングで浮上し、ケリを付ける」
そして、まほろばがアイデアを出せばラキアも調子を合わせて来る。
泥濘の地という残留効果は相手の速度を劇的に落とすし、そのタイミングで戦闘に参加せずに隠れた仲間が攻撃すれば『間に合うか怪しい追撃』から『攻撃がほぼ間に合う』まで可能性が上がると思われた。ここに先ほど勲やサヨコがいったアイデアも合わせれば大丈夫だろう。
その辺りの事を話し合った一同は、残るは敵と戦う事だと言わんばかりに移動を始めた。
『あら。ぼうや達はディアボロスね。いらっしゃい』
「断片の王を守る精鋭部隊……相当の手練れとお見受けします。ここで武功を立てさせていただきますね」
勲はブリキ製のおもちゃのような航空機を複数召喚した。
会話しながら攻撃準備をしているように思わせつつ接近する。
『やれるものならやってみなさい。うふふふ』
(「予定通りだな。もし向こうが逃げ続ける気ならば、我らが向かうべき場所ではないと注意を勧告するとしよう」)
敵は余裕ぶっているが、そこに保身の気持ちがないのだろう。
その様子を見てサヨコは相手の気持ちを揺さぶりつつ、こちらの戦意を高く見せる努力をする事にした。敵が踏み留まるならば断片の王が居ると言い、逃げ続けるならば居ないから行くべきではないと声を掛けて、相手が関心を抱くワードを口にするのだ。
「行きますよ。道を切り開くために……!」
勲は横にスライドし、盾を構えながら迂回する構えを見せた。
同時に玩具の航空機へ攻撃命令を出し、突撃させながら機銃掃射。
これは艦隊が相手の砲撃を受け流しながら、航空機で攻撃を掛ける機動戦を表している。
『激しいのね。でもそんなに性急では嫌われるわよ? もっと腰を据えて動かないと』
「来ましたね。ですが、その程度では僕は抜かれませんよ」
敵がこれからの撤退戦に向けて装甲重視で航空機を飛ばして来た。
機銃掃射を生存重視の突撃戦法で潜り抜けさせてくるのを、大きな氷の盾でガードしながら撃ち合っていく。ただし、それは敵中央ではなく外縁を狙い、あえて火力を分散させていった。
「いまだ……纏めて、焼き払う!」
サヨコはここで攻撃を行うが、彼女もまたあえて火力を分散せた。
榴弾に時限信管を付けており、敵中央へひとまず叩き込んだのだ。
勲とは別々の敵を狙っており、敵全体を軽くローストしつつ、総攻撃に備えて敵全体の体力を削ることにしていた。
『非力ね? 女の子は相手を包み込むくらいで無いと』
「編隊攻撃か? ふん。榴弾ならば航空目標に合わせることも出来るぞ。それに……対空の備えが無いとでも思ったか!」
敵がトビウオ型の戦闘機を並べて十火力を放つと、サヨコは黒姫に備えられた対空機銃で撃ち落としながら防盾を使って深刻なダメージを受けないようにしていく。相手へのダメージを分散させる以上、防御は入念にやっておくべきだろう。
(「まだかな? うーん、まーだだよね。ここは相手を選んで泥濘の地に巻き込まないと。まほろばたちを釣りたいなら、また再び速度を合わせようとしてくるはず、だからそこで調整する」)
まほろばは一瞬躊躇して、泥濘の地は使わずにタイミングを計っていた。
ただし攻撃しないと怪しまれるので、形ばかりの気がそぞろな攻撃である。
重要なのはここで無理に敵全体を泥濘の地に巻き込む事ではなく、上手く相手を調整することなのだから。
「ひとやすみ、ひとやすみっと」
まほろばは携行していた水筒から中身をポトリとおとした。
それはドロリと海に垂れ、黒い色合いの液体が流れ落ちていく。
それは決して新宿で人気のコカ系の名前を持つ炭酸飲料ではない。どうみても工場とかで使う重油であった。
「そしたら大波小波でたのしーなっと」
『この臭い油? なら燃やしてあげるわ!』
まほろばの動きにより、まるで海が逃げるかのように大波を起こす。
その攻撃に対して敵は先ほど同じように編隊飛行する航空機に攻撃を掛けさせた。
(「よし。座標を合わせた。ここから少しずつ撤退するであろう敵よりも前に出る」)
その頃、ラキアは敵の真下に居た。
正確には隠れられる場所を探しての行動なので、移動するだけで手いっぱいだ。
だが攻撃していないことで、上手く位置調整と移動が出来ている。後は相手が撤退するのに合わせて、いつでも前に出られるようにして浮上するだけである。
『このまま付き合っても怪我をするだけよ。この子たちを前に出して私たちは下がりましょうか』
敵はトビウオ型の航空機のみを使って戦闘を始めた。
もちろん召喚物に対するダメージは本体に及ぶわけだが、ディアボロスがダメージを分散させている分だけ余裕がある。
「超大和が座す場所に通じる航路であれば、より兵力の層を厚く取っているはず。敵の練度が低い以上、ここは違うということか……?」
サヨコはその消極性に合わせて僅かな声を発し、敵が注意していれば聞こえる程度のトーンにしておく。その上で仲間が突撃するのを他人事のように冷静に眺め始めた。
「がっかりです…時間が惜しいのでここの敵は無視しましょうか? いえ、向かって来る敵も居ますね」
「……傷つくのを恐れている? それとも統制が採れてないだけか? いや、受け流しているだけ……」
勲が演技を行いながらブリキの航空機に指示を出すと、サヨコは適当に榴弾を放ちながら泥濘の地をセットする。
(「来たね。速度を合わせて普通に進もうとする敵には泥濘による速度低下を! 泥濘を抜けるために早く進もうとする敵はあえて対象から外し早く進みすぎるという状況を! これを繰り返して流れと連携を乱すよ」)
まほろばは重油で引き起こす波に隠れて、自身も移動して使う泥濘の地を調整した。
この残留効果はディアボロスの周囲に展開されるため、あえて巻き込みたくない敵から離れれば良いだけである。そして波で攻撃しているという事実があれば、相手に不思議がられることもないだろう。後は海に隠れている仲間が退路を塞いだところで全力で攻撃するだけである。
「今此処に、強靭なる刃を授けよ」
ラキアはこの時、既に最後の移動を開始していた。
もっとも敵の後ろにいる敵の向こうに浮上し、後ろを取ると同時に螺旋を描く槍に闘気を纏っていく。
『伏兵ですって!?』
「今更気がついたとしても、もう遅いな」
ラキアが槍で敵を薙ぎ払うと、勲の航空機に攻撃を受けていた敵は絶命する。
彼が外縁を狙っていたのはこの時の為であり、流石に一撃では落ちない敵も、累積ダメージにより倒されたのだ。最後のいたちっぺに編隊が迫るが、引き抜いた槍で受け止めながら別の敵に絡みに向かった。それは近接攻撃で足止めという意味もあるが、先ほども言ったディアボロスの周囲に泥濘の地が発生するという効果を狙っての事である。
「さあ、総反撃だ! 敵陣を切裂く」
「待ちかねたぞ。全艦最大船速!」
ラキアの声にサヨコたちは応じた。
あえて落としていた速度を最大にして敵に迫る。
そして、ここまで手を尽くした状態で負ける筈もあるまい。
ディアボロス達の作戦勝ち、敵は逃げることも出来ずに無残に破れ去り、また一歩次の局面に近づいたのである。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
【泥濘の地】LV2が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ラストリベンジ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!