リプレイ
マリアラーラ・シルヴァ
集落の人々にウィッチが迫ってるって脅かしても
マリアみたいな子供が言うんじゃイタズラって思われちゃう
だから一張羅のドレスで貴族に扮したうえ
パラドクスの騎士のお兄ちゃんを従えて集落に登場
(可能ならお兄ちゃんの騎馬に乗せてもらって雰囲気出したいな)
集落の全員に集まってもらうよう命令するよ
物々しい騎士様と着飾った子の命令口調に異常を感じ人々が集まったら
用意していた王家の旗を掲げてもらって
王命です!と出発前にシャルル様に書いてもらって封蝋した密書を見せびらかすの
そして識字率の低さを理由に代読させていただいても?と尤もらしく封を破り
読み上げるのはパテーへの即刻避難命令
騒然とする人々へ王からお言葉も預かっています…と語り掛けるね
私は今は身を潜めているが魔女打倒の志は決して揺らがない
皆も今は耐え逃げ延びてほしい
そして協力者とともに魔女を討ち滅ぼし私が迎えに行くその日まで
パテーで生き延びてほしいのだ
そんな宣言と共に魔女が迫っているのです!急いで!と急かせば
雰囲気に飲まれた人々は慌てて出立してくれると思うの
エルフリーデ・ツファール
アドリブ連携歓迎
魔術触媒の為、常に煙草を吸ってます
まったく。
相変わらず胸糞悪い事しかやらかさんな。
こいつらのお陰で善良な『魔女』の評価まで下げられちゃあ溜まったもんじゃねェ。
一先ずは村人達の避難からだな。
【使い魔使役】で適当な動物をパテーまでの先導に使おう。
住み慣れた場所から離れるのには悲壮感は必要だが、ただそれだけちゃあ立ちいかないのが人の心ってもんだ。
動物を先導させれば親に連れられるままの集落の子供達もそれにつられて移動しやすくなるだろう。
そうすれば全体の避難速度は上がるはずだ。
迅速な避難は必要だが、それで怪我したり心が荒めば本末転倒だからな。
「魔女の相手は魔女に任せときな。アンタらは自分と家族や知り合いの命を最優先にすりゃアいい。今はここを離れる事になっても必ず帰ってこれる日はやって来るさ」
●幼女、魔女とともにあらわる
「……いつもとは違うし、動きづらくはあるけど……」
幼女と、
「ほう……中々に可愛らしいじゃあないか。お人形さんみたい、ってやつだな」
魔女が、
ジャンジャンブル集落に、姿を現していた。
ジャンジャンブル集落。
そこの住民は、女性が多かった。小規模の畑にショウガを始めとする作物を耕し、ささやかな収入を得ているが、
そんなところに、ディアボロスの彼女たちが現れたのだ。
「……え?」
村長の女性が、農作業の手を休め、
来訪した彼女らを見た。
「……あ、あの。失礼ですが、どこかのお貴族様でしょうか?」
村長が、おずおずと声をかける。
彼女は……少女は、馬に乗っていた。
美しいドレスを着こなし、若い男性がその馬を操っている。
騎士のような、その美麗な男性は……令嬢、または姫に仕える者のように、少女をうやうやしく地面に下ろした。
「……マリアは、マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)。皆に、お話しがあるの」
と、少女は、
スカートの裾をちょこんとつまみ、軽くお辞儀をし……告げた。
「……とても重要な事で、時間も限られているの。だから、村の人たちを全員呼んで欲しいのね」
その後ろには、やはり馬に乗った女性が。
「……そういうわけだ。悪いが、急いでくれ。四の五の言っている暇はないんでな。……おっと、自己紹介が遅れたが、私はエルフリーデ。エルフリーデ・ツファール(紫煙の魔術師・g00713)という」
エルフリーデと名乗った、ぶっきらぼうな口調の彼女は、服装からしてどこかの軍人らしい。が、被っているくたびれた帽子は魔女のそれ。まるで眠りが足りていないかのような、気だるい顔で……口には紙巻らしい煙草をくわえている。
「……は、はい。こちらへ……」
と、村長は、
この闖入者たちを、ジャンジャンブルの中心部。教会へと案内した。
●村の代表団、彼女らと話し合う
「……村長さん、本当にこの方々は……?」
「……確かに、王家の旗をもっとるだが……」
「……でも、怪しくねえだか? こげな片田舎に……」
それぞれ、ジャンジャンブル村の牧師、牧場主、地主。
この集落の人数は多くはない。ゆえに、何か問題が起こったら、村長と牧師、牧場主に地主といった村の代表たちが、この教会に皆で集まり、話し合いを行って決めている。
そして今回も、代表たちはディアボロスたちを迎えていた。
教会に上座をもうけ、そこにディアボロスたちを迎え入れ、対面するように代表たちが座り、更にその後ろにジャンジャンブル村の皆が集まっている。
「……あの、それで……お貴族様のお嬢様に、軍人さん……で、よろしいんですよね? どういった御用で?」
村長が、おずおずと口を開いた。
そんな彼女らに、
「……みなさん。マリアたちは……王命でここに来ました」
マリアラーラは、立ち上がった。
「……改めて、みなさんにお伝えするの。シャルル様からの、王命です!」
と、王家の旗を立てた前で、彼女は『それ』を……、
封蝋した密書を、掲げた。そして、
「……あなたが、村長さん? それに、牧師さんにも確認したいのだけど」
と、マリアラーラは二人に訊ねる。
「……失礼だけど、このジャンジャンブルの識字率は、どのくらい?」
「え、識字率ですか? ええと……私と村長の他は、一割ほどでしょうか。私たち以外は、主に読み書きを教えた子供くらいで、それ以外は……」
牧師が答える。
「……それならば、代読させていただいても?」
「それは、構いませんが……その後で、私たちに確認させてください」
牧師に頷き、マリアラーラは、
密書の、封を切った。
マリアラーラは、その封を切った密書……王命が記された書状を読み上げ始めた。
「……『我、シャルル・ヴァロア王の名のもとに、ここ、ジャンジャンブル集落に住まう全ての者たちに命じる。即刻、パテーへと退避せよ。近々、キマイラウィッチたちの侵略が明らかになった。かの者たちは、臣民であるお前たちを虐殺する事を企んでいる。ゆえに、この地から離れ、安全なパテーへと避難せよ』……」
読みつつ、今回の作戦内容を頭の中で確認していく。
(「……まず、マリアがこうやって、王命が記された書状を読み上げる」)
そして集落の読み書きできる人にそれを確認してもらい、本物だと納得してもらう。
読み上げる際には、雰囲気を作り上げ、それに飲まれた人々が逃げるようにしむける。
最後に、エルフリーデのパラドクス効果で出した動物に、道案内させて避難。避難誘導の際には、かわいい犬猫などの動物を先導させる事で、悲壮感を紛らわせるように努める。
(「……うまく、やってみせるの!」)
心の中の誓いとともに、
「……書状の内容は、以上になります。そして、もう一つ、王様からお言葉を預かっています」
書状を読み終えたマリアラーラは、言葉を続けた。
「……『私は、今現在は身を潜めているが、魔女打倒の志は決して揺らがない。皆も、今は耐え忍び、逃げ延びてほしい』」
その言葉に、ジャンジャンブル集落の皆は、聴衆は、どよめいた。
「……『そして、協力者とともに、魔女を打ち滅ぼし、私が迎えに行くその日まで、パテーで生き延びてほしいのだ』……以上です」
集落の皆は、動揺している。
牧師と村長は、マリアラーラから受け取った書状を手にして、文章の確認を。
マリアラーラの書状の内容、そして王命。それらを聞き、
ジャンジャンブル集落の住民たちは、明らかに……衝撃を受け、動揺しつつあった。
●集落の皆、疑いの目を向ける。
「いやあ! もうだめだわ! 私達ここで死ぬの!」
「ばかな、シャルルさまが、ここを捨てろだなんて信じられん!」
「嘘よね? ここから出ていけだなんて……」
そして、
「……ああ、やっぱりな」
エルフリーデが、嘆息した。
予想通りだったのだ。『反対する奴が、出てくるだろうな』といった予想を立てていた彼女だが、
その数は、予想以上だった。半数近くが、主に中年の男女たちが……この事に拒否感をあらわしていた。
(「ま、それも当然だろうよ。腰を落ち着けた中年や老人は、動きたくなくなるものだしな」)
ましてや、土地や家、この場所自体への『愛情』や『執着』などもあるだろうし……何より『一時的にでも、今の生活を捨てろ』と言っているようなもの。
それが王命だと言われたところで、素直に納得してくれるとは限らない。
「みんな、すぐにでも移動の準備をして欲しいの。でないと、皆がひどい目に遭っちゃう……」
マリアラーラが訴えかけるが、聴衆は『はいそうですか』と従ってくれない。むしろ……降ってわいたこの状況に、嘆きおののくのみ。
「だ、だいたいおめえみたいなお嬢ちゃんが、なんで王様からそんな命令受けられるだ!」
「そうだあ、あんたが詐欺師やペテン師かもしれないじゃないだか?!」
「あたしたちを騙そうったって、そうはいかないわよ!」
そして、民衆の感情が、マリアラーラに疑いの目を向けた。
「おい、アンタら……」
エルフリーデが何か言わんとしたが、マリアラーラは、
(「……大丈夫なの。まかせて」)
無言で、それを制した。
そして、
『……まあまあ、紳士淑女の皆さん。この少女が、皆さんを騙せるとお考えですか? こんな小さな子供が?』
マリアラーラに仕えていた、眉目秀麗な若き男が、騎士のようなたたずまいの美青年が、
集落の皆の前に進み出た。
「な、なんだあんた? ……えっれえハンサムだなあ……」
「で、でも。最近じゃあ、子供でも、大人を騙す、っていうし……」
人々、特に中年女性たちは、彼の前に勢いを弱める。
『……ペテンと申しますが、騙すならばもっと簡単に、なおかつ効率的に騙しますよ。こんな手間をかけて、皆さんにわざわざ怪しまれるような、そんな事をするペテン師がどこにおりますか? それに……』
かぶりを振る青年は、旗を指差した。
『……あの王家の旗、そして王命を記したこの書状。これらを偽造するのは手間がかかります。これらは、偽造し所持するだけで、不敬により死罪にもなりましょう。ペテンにしても、あまりに手間がかかりすぎです。そして……』
青年の語りに、皆は引き込まれていた。
『……この地に『奪いたいほどの価値あるもの』は、あるでしょうか? 失礼ですが、無いのでは?』
確かにそうだ。資源も無ければ、戦場における重要地点でもない。畑と牧場も、他の場所に比べ小さく狭い。作物や家畜も少ない。
そうだと言う声が、上がり始める。
『盗賊団の類がねぐらにするにも、ここは不便で籠城に向きません。そして、金貨など金銭もお持ちではないでしょう。仮に我々がペテン師だとして、皆さんから何をだまし取れますか? そして、もう一つ……皆さんに求められているのは『避難行動』のみ。望むならば、事態の収拾した後に、戻って来る事もやぶさかではありません』
青年の説得に、多くが納得しつつあった。
(「……流石だな、マリアラーラ」)
小声で、彼女を賞賛するエルフリーデ。
まさに然り。マリアラーラのパラドクス、『SuperMariaBros.(マリアノステキナオニイチャンタチ)』は、マリアラーラの想像する、有能な青年……、
マリアラーラが言うところの『凄くて強くてカッコ良くて華麗で素敵でとっても豪華な絶対無敵のお兄ちゃん』を呼び出すというもの。
今回呼び出されたのは、『討論に長けた者』。弁舌鋭くも爽やか、相手を言論でやり込めるのみならず、相手に『納得』してもらう事をも得意とする『お兄ちゃん』。
彼の言葉の前に、集落の人々からは、納得の雰囲気が漂ってきた。
「……わかっただよ。あんたらがおら達をペテンにかけようとしてるとしても、おら達はなんも差し出せねえしな」
「……おら達をだまして、人買いにおら達自身を売るのかとも思っただが、この集落の人間は老いぼればかりで、力仕事や色事に売れる奴隷はほとんどいねえしなあ」
自虐的に、そんな事を呟く村人たち。
「でも……わかんねえだよ。なんでその……攻めてくる魔女たちは、おらたちを殺そうとするだか?」
地主の質問に、
「それは、私が説明しよう」
エルフリーデが進み出た。
●集落の皆、パテーへの旅立ち
「……ここを攻め込んでくるのは、キマイラウィッチ……魔女って事は伝えたな?」
エルフリーデの言葉は、ぶっきらぼうではあるが……逆にそれが、説得力を増していた。
「そして、オルレアンに、その魔女どもの頭……ジル・ド・レって奴が陣取ってやがる。連中はある敵と戦ってんだ。アンタらには関係ない事だがな」
タバコの灰を落とし、彼女は話を続ける。
「……で、このジル・ド・レって莫迦は『オルレアン周辺の人間たちは、敵の仲間』と勝手に思い込んでな。オルレアン周辺の集落と、そこの人間たちを拷問し、敵の事を聞き出して殺そう……と企んでんだよ。当然、このジャンジャンブルも含まれてる」
それを聞き、集落の人々は、
「そんな! わしらは敵なんか、知らんだよ!」
「あたしの死んだ友人は、魔女の婆さんだったけど、その人はそんな事しなかっただよ!」
再びざわめき出した。
「ああ、わかってる。魔女にも色んな奴がいる。だが、言った通りオルレアンの魔女連中はまともじゃなく、理解も話し合いもできん。私らは、そんな莫迦どもからアンタらを守りたいと思い、王命を受けてここに来た……と、こういうわけだ」
「……確かに最近、オルレアンや、それに近い場所の人々が、集落ごと殺されたという噂を聞きました。まさか、そんな事が……」
牧師が、十字を切る。
「で、ですが……パテーに行けば、大丈夫なのですか? その魔女たちが、パテーに攻め込んできたりは?」
村長が不安げに聞いてくるが、
「心配はいらん。シャルル陛下がそこに安心できる避難所を作られた。そこは魔女も手出しできないし、兵隊の守りも固く、食料もたっぷりある。だから、安心して過ごす事ができるとの事だ。しばらくはそこでのんびり過ごせばいい」
エルフリーデは、わざと楽観的にそう言ってみた。が、
「で、でも……」
「そないな、恐ろしい奴らがいるなんて……」
それでも人々から、不安はぬぐえていない。彼らに、エルフリーデは、
「なに、魔女の相手は魔女……に詳しい、私らに任せときな」
つとめて明るく言う事で、不安を払拭せんとした。
「不安なのはわかるぜ。けど、アンタらは自分と、家族や知り合いの命を最優先にすりゃアいい。今はここを離れる事になるが、必ず帰ってこれる日はやって来るさ」
更に……エルフリーデは訴えかける。彼女なりに誠意を込め、感情を込めたその言葉の前に、
「……わかっただ。軍人さん」
「……それに、貴族のお嬢さん。わしら、あんたらに従うだよ」
集落の人々は、全員が『旅立ち』を決意していた。
まるで、熊のような大柄かつ、丸っこい体型のムク犬。愛嬌のあるその顔は、見ているとどこか穏やかな気分になる。
ムク犬は、村人たちを先導し歩んでいた。そしてゆっくりとだが、そのムク犬に続き、集落の人々は歩いている。
中には、牛や馬に荷車を引かせ、体力のないものはそれに乗せられてもいた。
彼らはマリアラーラとエルフリーデの話を聞いた後、すぐに家に引き返し、僅かな財産や持ち物をカバンやザックに詰め込むと、
ジャンジャンブル集落からの脱出を決行。列を作り、パテーの方向へと歩き始めていたのだ。
しかし、危機的状況である事は理解しているが、やはり『悲壮感』は完全に拭えていない。いないが……、
先行し先導するムク犬の存在は、集落に住む人々、特に僅かにいる子供たちを喜ばせていた。
「……そのムク犬が、アンタらを導いてくれる。王宮で特別な訓練を受けた動物だから、世話とか心配はいらん。アンタらの足なら、三日程歩けばパテーへとたどり着けるだろう」
その時には、この王の旗をパテーの人間に見せれば、すぐに保護してくれるはずだ……と、エルフリーデは付け加えた。
(「……私のパラドクス、『【炎の螺旋】Flammenspirale(フランメンスピラーレ)』から生じた『使い魔使役』の効果、うまくいってるようだな」)
まさに然り。このムク犬はエルフリーデが呼び出し、彼女が操る存在。見聞きした内容をエルフリーデが知り、そこから指示を出す事も可能なので、何かあったら対処できるだろう。
とはいえ、
「……あ、あの……本当に、大丈夫なんだか?」
「そ、それに……おらたち、本当に行けるんだろうか?」
それでも、不安を覚える者たちは多かった。だが、
「……心配は要らないの。必ず……ジャンジャンブル集落は守ってみせるから」
「ああ。言っただろ、アンタらは自分と、家族と、知り合いの命を最優先にしろってな。……私達は、どこまでもアンタらの味方だ。少なくとも、それだけは信じてくれ」
ディアボロスたちに対し、
「……分かりました。では、お任せします。……あなたたちを、信じましょう」
村長と、
「ええ。……どうかあなた方に、神の御加護がありますように……」
牧師からは、信頼の言葉が。
そして、ジャンジャンブル集落の皆はディアボロスたちに見送られつつ、パテーへと向かっていった。
「……さてと、マリアラーラ。集落の連中は見送った。まずは第一段階、成功ってとこか」
「そうなのね。次にすべき事は、覚えてる?」
「……ジル・ド・レの手下の、キマイラウィッチどもを迎え撃つ。……おっと、その前に『奴らにニセの情報を掴ませ、一部を逃がす』だったな……っと、タバコが終わっちまった」
「うん。……戦いそのものもそうだけど、ジル・ド・レに勘違いさせるための作戦も、忘れちゃダメなのね」
「だな。……ったく、それにしても連中、相変わらず胸糞悪い事しかやらかさんな。まったく、溜まったもんじゃねェ。奴らみたいな連中のおかげで、善良な『魔女』の評価まで下げられる事にはな」
「……それに、罪無き人々を拷問して殺すだなんて、ぜったい許しちゃだめな事なのね」
「ああ。……っと、もう一本。火を付けてと……ふーっ、まさに、一服しねぇとやってらんねェぜ」
「そうなのね」
だが、その言葉と裏腹に、
エルフリーデ、そしてマリアラーラの瞳には、輝きが宿っていた。
絶望を越えた、魔性の輝き。それは、キマイラウィッチたちに対する、宣戦布告の輝き。
敵との戦いに対し、気合を充実させているゆえの輝きに他ならなかった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
マリアラーラ・シルヴァ
よその報告書を見ると
・内通者
・南に拠点
って情報が伝わってるのかな?
内通者から襲撃情報が洩れ復讐者が南の拠点へ集落の人々を避難させてるって筋は通るよね
さらに「人々が集落ごと殺されたという噂を聞きました」って牧師様が言ってように
拷問しきっても復讐者の気配すら無い集落もあれば
遭遇した復讐者が避難させたのか住人が居ない集落もあったりで…
盤面は今動いている真っ最中とジルドレは考えてくれるかも?
なら今は内通者を捨て置いてでも拙速に動くとき!ってジルドレに決心させる情報を与えたいな
パテー隠蔽どころかオルレアン防衛軍を割って南に派遣してくれるかも
だからマリアは人々のお家から避難の邪魔で置いてった物を
南の拠点に持ってく(フリをする)ために【フライトドローン】に積み込んで回るね
そしたら情報収集命令遂行のため魔女達は
集落の様子やマリアが何をしているのか遠巻きに(もし姿を見せたら逃がさないよ)観察して
復讐者の避難計画は物資の回収運搬フェーズへ進んでるって推測
ジルドレに復讐者の体勢が整う前にって伝令を出すと思うの
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
仲間と連携を取ろう
時先案内人さんたっての勧めならば、話にのろう
マリアさんに話を合わせつつ情報工作
内容は
・オルレアンの南方にディアボロスの拠点があると思わせること
付加的に
・今が攻め入る好機でもありそうだということ
以上を露骨ではなく自然に匂わせておこう
戦う態勢を取りつつ、必要なら
人々の避難を終えて、南方へ帰るところだと見せかける演技
マリアさんを手伝いつつ、物資をフライトドローンに積み込む
キマイラウィッチが姿を見せたら驚き慌て
まずいぞ、見つかった
早く、物資を運び出してしまおう
不自然でない程度に応戦しつつ、隙をみて南に逃げ出すような動きをする
早く! こっちだ!
南方へ退却し、ある程度追わせたい
追ってきたら、【トラップ生成】で、あらかじめ退路に仕掛けてあったように罠を発動
トラバサミや落とし穴、足止め系の罠を多用
かかったな! 少しでも動きを鈍らせて逃げ切ろう
今攻め込まれては困る
どうしても南方へ物資を運びたくて、キマイラウィッチに足止めを仕掛けているとみせる
穂村・夏輝
(トレインチケット)
荒田・誠司
(トレインチケット)
●騙される方が悪い、騙される方が間抜け。と、そう言う者も居る。
「……間違いなく、来たのね?」
ジャンジャンブル集落。
その建物の一つ。その内部にて、マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)は、
「……ああ、アンジェローザが発見し、俺も確認した。まだここに到着するのは暫くかかるだろうが、間違いなく奴らは接近している」
招かれざる来訪者たちが接近しているのを、穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)から報告されていた。その隣には、彼のオラトリオ、『アンジェローザ』も控えている。
「……思ったよりも、早いな」
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は、考え込む。
「……俺たちも、確認した。このゴーグル越しに連中を視認したが……エトヴァ、それにマリアラーラ。奴らは間違いなく、危険な連中だ」
エトヴァと、マリアラーラに対し、荒田・誠司(雑草・g00115)が補足する。彼に続き、
「俺も、そいつと同じ意見だ。現時点で確認できた人数は、4……いや、5名。移動速度はやや早め……例えるなら、野生の犬、又は狼と同程度だ」
シェスト・ツリュクベコメン(サイボーグの殲滅機兵・g03339)が、付け加えた。
「……了解したの、誠司、シェスト。それに、夏輝にアンジェローザ。みんな、偵察・哨戒してくれて感謝するの」
マリアラーラの感謝の言葉に、
「なに、任務だからな。それで、次はどうする?」
シェストの問いかけに、
「……それじゃ、みんな。先刻に話し合った通りに……」
エトヴァのその言葉に、マリアラーラは大きくうなずき、
「皆も、先刻に話した通りに、行動してなのね」
後方へと振り返り、待機していたディアボロスたちを促した。
「はい。では、私は……物資を運ぶお手伝いを」
セレスティア・リュミエール(碧月のソルシエル・g05430)と、
「じゃ、私も……っても、めんどそうだけど」
サナリア・ナナリカ(ダダダメ天使・g00116)が、申し出る。
「面倒? なら、私が代わりにやろうか。ひとつ貸しな」
それに対し、リン・エーデルリッター(爆弾魔のテロリスト・g01691)もまた申し出て、そして、
「さ、それじゃ……ドローンに物資を積んでなの! シェストと誠司、夏輝とアンジェローザは、引き続き哨戒をお願いするの!」
「このドローンが運ぶのは、『オルレアンの南側』。そこに存在する『ディアボロスの拠点』だ!」
マリアラーラとエトヴァの声とともに、皆は作業に取り掛かった。
『星狼の魔女』たちには、個人名は無い。
基本的に、彼女たちは集団の名称として『星狼の魔女』を名乗っている。
が、それでもやはり個人の認識とその必要性は生じるため、アルファベットと数字、号数で個体を識別していた。
その部隊を率いるのは、K9号。
彼女はK10号から13号までの魔女たちを率い、ジャンジャンブル集落の先行偵察任務を命じられ、それを遂行していた。
かの集落は、何もないと聞いている。が、かえってそういう場所に重要な情報が眠っていたり、敵にとって重要拠点だったりする事も往々にしてある。
今回は、先行し偵察。集落内の住民はどの程度で、どのくらいの人数か、年齢層や、その思想など、人と場所とを調べて来いという任務内容だった。
緊急と判断した場合にのみ、場合によっては攻撃も許可されていたが。なるべく戦いは避けたい。
心の中で確認していたK9号だったが、
『…………ん?』
彼女は次第に『奇妙』さを感じていた。
人の気配が無かったのだ。気配だけでなく……人影が全く見当たらない。
『……止まれ』
隊を止め、
『……おかしいな。いくら何でも、人の気配が無さすぎる』
K9号は訝しんだ。いくら小さな集落で、住民が少ないとはいえ……人の気配が全くないのは、気になる。まだ接近しておらず、遠目に見る程度の距離ではあるが……。
『あの集落に、何かあった? それとも、ジル・ド・レ様の言われたように、敵が動き始めたとか?』
K10号が呟くが、彼女たちは確信が持てなかった。
『……まさか、私たちが来ることを予測して、集落を捨て逃げた?』
『あるいは、罠を仕掛けている?』
皆が皆、推論を語るが……所詮推論は推論。確信できない事には変わりない。
『……行こう。行って確認するしかない』
彼女たちは、再び駆け出した。そして、
集落の住人を、目撃した。
「……間違いないな。奴ら、ジル・ド・レの手先だろう」
そしてその様子を、誠司は観察。
「ああ。……だが、怪しんでいるのが気になる。……夏輝、お前の小さな天使をマリアラーラとエトヴァの元へ。『魔女たちが接近しているが、怪しんでいる』と、メモを持たせてな」
シェストは誠司、そして夏輝の隣で、魔女たちの言動を気にしていた。
「わかった。……アンジェローザ、頼むよ」
オラトリオは頷き、すぐに向かっていく。
「……さて、俺たちの、この後の行動は?」
「……敵が、集落の方で騒ぎを起こすまで……このまま待機、だったな」
夏輝と誠司に、
「その通りだ。……一部は帰還させるわけだが、それ以外との交戦は必須だろうからな」
シェストは自身の腕……精巧な義手を展開させ、内蔵した銃器を確認しつつ呟いた。
『星狼の魔女』たちは、集落の目前へと接近していた。近くの雑木林の、まばらに生えている木々の陰や、藪に隠れ、そこから観察する。
『……男に、幼女か。兄妹か、あるいは親子か?』
『他は……女が三人。銀髪に、黒髪と青髪か』
そいつらは家から何かを運び出し、倉庫らしき建物へと運んでいる最中のようだ。明らかに、引っ越しか、拠点移動のための行動に見えた。
男の方は色白の肌に、長身で、青の瞳と髪色を。イケメンなルックスは、見ていると魔女たちの胸を高鳴らせる。
幼女の方も、中々の美少女。人形がそのまま命を宿し、動いているかのよう。
……美形に美少女。それらは、殺す時、拷問する時には、魔女たちに愉悦を与えてくれる。それを想い、K9号は舌なめずりを。
銀髪の女は、どこかはかなげ。色白の肌も伴い、神秘的な雰囲気を醸し出している。
黒髪の女は、手足が長く溌溂。髪は短めで、スタイルは悪くない。
青髪の女は、メガネをかけ、髪形はツインテール。胸や尻が、他の二人よりかなり大きめ。
「…………! …………」
「……、…………」
彼女らはなにやら話し合っているようだが、ここからは聞こえない。
もう少し近づかんと、魔女たちは接近する。
やがて、
「……拠点へと運ぶ物資は、これで全部?」
「……あとわずかだ。後は、あの木箱で全部の筈だ」
「これだけあれば、もうしばらくの間は大丈夫そうなのね。早く南に持って行くように、準備するの……」
そんな会話が、魔女たちの耳に聞こえてきた。
●しかし、『自分は騙されない』と吹聴する者は、案外簡単に騙される。
(「……どうやら、やって来たみたいなのね」)
(「……ああ、そのようだ」)
すでにエトヴァとマリアラーラは、アンジェローザから、夏輝のオラトリオから、接近している事を知らされていた。
その事を承知で、気付かないふりをしつつ……フライトドローンへと、木箱を運ぶ。
それは、『マリア仕掛けの神(デウス・エクス・マリア)』……マリアラーラのパラドクス。
大きなぬいぐるみ……の形をしたドローンを操る彼女の力であるが、知らない者が見たら、それはただのぬいぐるみにしか見えない。
「荷物、積み終わった?」
マリアラーラの問いに、
「ほとんど完了です。食料と日用品、集められるだけ集めました」
セレスティアに、
「ええと、これでアジトにこいつを運べば良いわけだね。へへっ、これだけあれば、キマイラウィッチとの戦いも楽勝だろうよ」
リン、そして、
「だねー。ええと、運ぶ先のアジトは、どこだったっけ? たしか、オルレアンの……南側だったよね?」
サナリアは、そう答えた。
「ご苦労様。……そろそろ、敵も焦り出している頃だろう。攻め入る好機だと思うが、皆はどう思う?」
エトヴァもまた、訊ねる。
「賛成なのね。拠点の物資も十分に集まったし、オルレアンの南側に拠点があるなんて、敵はまだ気付いてないはず。こっちの拠点の場所が知られていない今のうちに戻って、即座に攻撃を仕掛けるべきと思うの」
マリアラーラの返答に、他の皆も頷く。
「それじゃ、皆……」『させるかよ!』
いきなりその場に、『星狼の魔女』が現れ、攻撃を仕掛けてきた。
K9号が、黒く輝くその爪で切りかかる。
『『星爪の断罪』! お前らの目論見も、拠点の場所も! 聞かせてもらった!』
なんとかその攻撃を躱したエトヴァとマリアラーラは、
(「うまくいった
!」)(「計画通り、なの!」)
ほくそ笑むのを必死でこらえつつ、戦闘態勢を取る。
「……!」
セレスティアは、バイオリンを手にし、
「へっ! 不意打ちとは趣味がよくねーな!」
リンはマチェットと、何かをその手に握る。
「……ったく、面倒が増えたねっ!」
サナリアもペイントツールを握り、背中合わせに身構えた。
「…………(こくり)」
そして、マリアラーラは、
物陰に隠れていたアンジェローザに、目くばせし、夏輝の元へと戻らせた。
『……おい、お前ら』
それに気づかず、K9号を始めとした『星狼の魔女』たちは、
『……お前らが、ジル・ド・レ様や、スネークウィッチ様の仰っていたディアボロスどもだな? 残念だったな。お前らの拠点の場所、しっかり聞かせてもらった! その礼に、殺してやるぞ』
笑みを浮かべつつ、狩りをしかける狼のように……迫ってきた。
「まずいぞ、見つかった。早く物資を運び出してしまおう!」
エトヴァが慌てた様子で、逃げ腰に。
「……退避計画、バレたら仕方ないのね。伝令出される前に、物資回収をすませるの!」
マリアラーラも、同じく逃げ腰でそう叫ぶ。
『無駄だと言ってるだろうが! ボケが!』
『すぐにお前たちを片付けてやる! 召喚!『星青炎舞』!』
K10号、K11号、K12号、K13号。
彼女らは、一瞬で地面に青き火炎で魔法陣を描き、
そこから、青き炎で構成された狼を召喚した。
『ははははは! 焼け死ね!』
K9号の哄笑が響き、そして、
『星青炎舞』が飛び掛かったが、
「……だったらこっちも、せいぜい派手にやろうじゃあないか!」
リンが、携えていた『何か』を投げつけた。それは『星青炎舞』の一体に、その鼻先に当たり、
……爆発した。
爆風は凄まじく、その風圧で炎の狼四体は全て巻き込まれ、吹き飛び、霧散してしまった。
それだけでなく、魔女たちすらも後ろざまに吹っ飛ばし、地面を転がした。
「私の爆弾、人呼んで『悪意の爆弾(マリス・ボマー)』。悪意があればあるだけ範囲が広がる代物だけど、流石は魔女。イイ感じに爆発したようで♪」
と、意地悪く笑みを浮かべるリン。
『くそっ! 星青炎舞がだめなら直接攻撃だ! 我々の爪で切り裂いてやる!』
『全方向から、『星爪の断罪』で飛び掛かられたら、躱しようがあるまい!』
と、K9号が見守る中、四方向から飛び掛かるが、
「おおっと! そうはいかない! 『リアライズペイント』!」
飛び掛かられる前に、ペイントツールを用いてサナリアは、
『石壁』を描いていた。それはディアボロスたちの周囲に展開。襲い掛かる魔女たちを寸前で遮り、その攻撃を阻む。
『ふん、その程度の手妻で、我らを防げると思うな!』
だが魔女たちは、再び爪を振るい、その石壁を……切り刻み破壊する。
しかし、
「…………~♪」
途端にその場に、まるでそぐわないような『楽曲』が響いて来た。
それは感情豊か、それは官能的、それは美しく、心に響き、心を震わせ……、
心を、精神を『掻き乱し』、動きを止めさせられた。
「……さあ、もっと聞いて下さい。私の、『リリカルメロディ』を」
セレスティアはバイオリンを用い、パラドクスの音楽を奏でていたのだ。
『……くっ、こ、この音は……っ!』
音の前に身もだえる魔女たち。それはK9号も例外ではなく、
『聞くな! くそっ……引け! 撤退しろ!』
逃げる事を選択した。
「って、逃げるなよ! まだ爆弾はあるんだぜ!」
追撃しようとするリンを、
「……それより先に、物資を!」
エトヴァが止めた。
(「……まさに、『予想通り』。だが、敵もこのまま、逃げたままじゃあないだろう」)
情報収集した後、そのまま撤退し本陣に情報を持ち帰るのが偵察のセオリー。それをこうやって襲ってきたのは、まず間違いなく……こちらが『攻め入る』と発言したから。
(「手柄狙いや焦りもあるだろうが、このままここで我々を倒す事で、不安の芽を摘もうとも考えていたのだろう。ならば
……」)、
「……みんな、彼女たちは追ってくるに違いない。このまま、南へ物資を運ぶ! マリアラーラさん!」
「了解なの!」
エトヴァの言葉に続き、マリアラーラは巨大ぬいぐるみに、
『マリア仕掛けの神』、ぬいぐるみ型ドローンに飛び乗る。
エトヴァも一緒に乗り、浮上。
「皆さんは、この集落で待機を。奴らがもし戻ってきたら、対処を願います!」
彼はそう言い残し、ドローンとともに南の方へと向かっていった。
そして、離れた場所では、
「……どうやら、始めたらしいな」
「そのようだな。発砲音や爆発音が聞こえてきた」
「アンジェローザ、戦いだ。行くぜ」
木の陰に隠れていたシェスト、誠司、夏輝も、動き始めた。
●時には、騙された事にすら気が付かない事も。
『……くっ、あのディアボロス共。なかなかやるな』
K9号は、林の中に隠れていた。K10号から13号までの皆も、同じく隠れている。
『……やはり、攻撃は拙速すぎたでしょうか』
『いや、K13号。やつらは我々に、すぐにも攻撃すると言っていた。我々は、オルレアンの北側、パテーか、その周辺に奴らの拠点があるものと思い込んでいたが……そう思わせていた事も、奴らの作戦の一環だったに違いない』
『北にあると思わせておいて、実際は南側に拠点があったのなら、我々の不意を突く事が可能。ならばすぐにも奴らを捕虜にして、情報収集しなければなるまい』
K11号と12号の指摘に、K10号も頷く。
『ともかく、この情報を持ち帰らねば……待て! アレを見ろ!』
K9号が指摘した先には、ぬいぐるみ型巨大ドローンに乗った、マリアラーラとエトヴァの姿が。そしてドローンには、大量の物資も積まれている。
『……莫迦め、物資を積み過ぎて高く飛べないようだ。ちょうどいい……あれを不意打ちして、奴らの片方を殺し、もう片方を捕虜としよう。連れて帰り、オルレアン南側のどこに拠点があるか、吐かせてやる』
魔女たちは、即座に散開した。
そして、手ごろな木を発見すると。それに登り始めた。
(「……あのベーダたち……『追ってきてる』みたいなのね」)
低空飛行中のドローンに乗りつつ、マリアラーラはそれを確信した。
どことなく、気配を感じていたのだ。
エトヴァもまた、それに気づき頷く。
「……!」
そして、
「……敵襲!」
木に登り、ドローンに飛び掛かって来た『星狼の魔女』たちを認めた。
即座に二人は、地面に飛び降り、転がって立ち上がる。
ドローンは墜落。物資もまた……木箱が落ち、地面に転がった。
『逃がすな! 幼女のほうを殺せ! ……いや、捕まえて男への人質にしろ!』
K12号、13号が、マリアラーラを追い、
K9号、10号、11号が、やはり逃げたエトヴァへと向かっていった。
マリアラーラは、エトヴァと別れ、逃げ続け、
そして、大木の前に追い詰められた。
『追いかけっこは、もう終わりだ。よくも手こずらせてくれたな』
『悪い子は、お仕置きだ!』
「……それ以上、近づかないで」
マリアラーラは、そのまま大木を背にして、向き合い……K12号と13号に言い放つ。
『どうした、怖いか?』
『もっと怖がれ……拷問の前に、恐怖を味わうがいい!』
舌なめずりして、『星狼の魔女』たちが迫って来る。
「……やめて、来ないで」
『いやだね。お仕置きすると言ったろう?』
『もう逃げられん、覚悟しな!』
「来ないでって、こんなに頼んでるのに?」
『しつこいぞ! このクソガキ!』
『その口、黙らせてやる!』
「そう、ならば……あなた達の負けなの」
『?』
『何を言って……ぐはあっ!』
K13号は、後ろからの不意打ちを食らい、血を吐いた。
彼女の後ろには、シェストが。
「……『アサシネイトキリング』。いい年した大人が、子供をいじめてんじゃあないぜ」
シェストは魔女の後方に忍び寄り、『機械鎧義手銃(マシンアームスナイパー)』を起動。その義手の掌から銃口を展開させ、K13号の後方から一撃を喰らわせていたのだ。
『なっ……貴様!』
K12号が、それに対処せんとするが、
「自己改造……『完了』! はーっ!」
死角から現れた誠司が、その魔女に飛び掛かった。彼は自身の両腕……機械腕を、それぞれ片刃の剣の形状に変形させ、切りかかる。
「『自己改造:機械刃(リモデリング・マシンブレイド)』! 切り伏せる!」
『な、なにいっ!?』
その両腕の、鋼の刃。その鋭い切っ先と刀身は、K12号の『星爪の断罪』でも受けきれず、
『! ……ぎゃああああっ!』
彼女の身体へ、鋭い一斬を叩き込み、切り伏せた。
「……おおっと、急所は外した。あんたらは捕虜になってもらう」
機械刃の両腕を、その切っ先を、切り傷を与えたK12号に向ける誠司。
「動くな……動くと、もう一発食らわす」
シェストも、義手銃を構えるが、
『……K12号、ここは退くぞ! ……行けっ!』
K13号が、『星青炎舞』を放つ! 青き炎の狼が、誠司とシェスタに襲い掛かるが、
「……っ!」
シェストの義手銃からの弾丸に貫かれ、
「……はーっ!」
誠司の両腕の機械刃が、狼へと切り込み、その炎の身体ごと霧散させる。
「……くそっ、逃げたか!」
「……ああ、どうやら……逃げられたようだ」
誠司とシェストが、周囲を見回すが……二人の魔女の姿は消えていた。
「……うん、予定通りなの。二人とも、ありがとう」
そして、自身を助けてくれたことに、マリアラーラは二人へ感謝するのだった。
●故に、自分は騙されないなどと思わぬ方が良い。
K9号は、K10号、K11号とともに、エトヴァを追っていた。
あの忌々しい優男は、この敵ども、ディアボロスどもの中心人物に違いない。K12号・13号がへまをしたとしても、こっちの男さえ押さえればなんとかなる。
「逃がすな、K10号、K11号。先回りして奴を挟み撃ちだ!」
そうだ、これで終わらせる! K9号がそう考えたその時、
『! ぎゃあああっ!』
『?! なっ、なんだあっ!?』
先回りしたはずのK10号と11号から、悲鳴が上がった。
『あ、足がっ! こんなところにトラバサミの罠が!』
『こ、こっちには落とし穴が! くそっ、なんでこんなものが……!』
『罠、だと
……!?』
立ち止まったK9号に、
「……かかったな! その通り。こちらも、今攻め込まれては困るからな。物資を拠点に運びこむまで、足止めさせてもらう」
エトヴァは言い放った。
(「【トラップ生成】で、退路に仕掛けておいた罠。うまく発動できたようだ」)
そして、心の中で確信する。
トラバサミに落とし穴。それにネットに足を引っかけるワイヤーなど、数々の足止め用ブービートラップを、そこかしこに仕掛けておいたのだ。
逃げる先々に、罠を仕掛け足止めする。そうする事で、『ディアボロスたちは、オルレアンの南側にある拠点に物資を運ぶため、キマイラウィッチたちを足止めする』と思わせる。それがエトヴァの作戦。
(「どうやら、うまく騙せたようだな。後は……」)
このキマイラウィッチたちを、本隊へ帰還させて、この事を報告させればいい。
問題は、どうやって彼女らを帰還させるか。
(「こちらが逃げて、彼女らを帰還させるか? だが……」)
どうやら、敵はこちらを攻撃する気のようだ。ならば、一戦交えるしかない。
『残糸結界』を展開させようとするが、
「……すまない、待たせた!」
空中から、夏輝が降り立った。
『! 仲間か! だが、一人増えたところでどうにもならんわ!』
嘲りとともに、K9号は『星青炎舞』を放つ!
『その狼の炎に、焼き殺されるがいい!』
青き炎の狼が、夏輝へと襲い掛かるが、
「……そちらは炎の狼、しかも一匹だけか?」
恐れる事無く、夏輝は、
「……ならばこちらは、炎の馬! それも、大軍だ!」
赤く燃え盛る、炎の身体を持つ大量の駿馬を召喚した。
『なっ
……!?』
「『炎馬騎行』! いけーっ!」
荒々しき、燃える炎の馬の群を出現させる、夏輝のパラドクス。その馬の群は、K9号の狼へと突撃し……、
あっさりと踏みつぶし、蹴散らした。
そのまま、勢いを止めずに魔女へと迫り……、
『…………! ひいいっ!』
K9号ごと、魔女がいた空間を蹂躙し、駆け抜けていった。
「…………」
だが、K9号は死んではいなかった。『炎馬騎行』を受けはしたが、
かろうじて生き延び、退却していったのを……夏輝とエトヴァは確認した。
『K9号!』
『くそっ、やられたか! 仕方ない、我々も退却だ!』
トラップからなんとか逃れてきたK10号と11号も、それを悟り……、
『覚えていろ! だが、お前達の拠点の位置は分かった! オルレアンの南のどこかだな!』
『必ずその拠点を見つけ、お前達の仲間全員を潰してくれる!』
同じく、退却していった。
「……どうやら、こちらの作戦に、見事に引っかかってくれたようですね」
退却する様を見つつ、エトヴァはそれを確信していた。
そして、
「エトヴァ! ……こっちに来た奴らは、重傷を負って逃げたの」
マリアラーラが、シェストと誠司を伴い、合流した。
「ああ。俺の一撃と、こいつの機械刃をそれぞれ受けて、逃げ帰ったぜ。そっちはどうだ?」
「死体が無いとこを見ると、そっちも全員、返しちまったみたいだが……」
彼らに、夏輝は、
「ああ。彼のトラップと、俺のパラドクスで、奴らは重傷を負い、恐れをなして逃げてったよ。オルレアンの南のどこかに、俺たちの拠点があるって事を信じてな」
そう言った。
「奴らの様子からして、まず間違いなく、こちらで与えた情報を信じている。だが……ジャンジャンブル集落にこうして我々がいる事も、同時に知った事になる」
エトヴァが考え込み、
「となると……次にあの魔女たちは、本隊とともに、ここに攻め込んでくるはずなのね」
マリアラーラが、次に訪れる戦いの事を口にした。
ジル・ド・レへの情報工作……『ディアボロスたちの拠点は、パテーではなく、オルレアンの南側に存在する』という偽情報を流布する事には成功した。
しかし、ここにディアボロスがいる事も、同時に知った。そして仲間が、重傷を負わされ逃げ帰って来た。
ならば次に行う事は?
『仕返しと、詳細を聞き出すために、本隊で攻め込み本格的な攻撃を仕掛ける』
こちがすべきは、それに対し対処しなければ。
「……みんな、戻りましょう」
「そして、あの魔女たちの襲撃に備えるの」
ここからが、戦いの本番。
絶望を越えた、魔性の輝き。
それをエトヴァとマリアラーラは、そしてディアボロスの皆は、
瞳の中に、再び輝かせるのだった。
善戦🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【液体錬成】LV2が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【フィニッシュ】LV2が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
1.「トループスは倒しきらずに少数を残し、情報を持ち帰らせる」
2.「配下の数を削りながら引き離すなど妨害して、アヴァタール級との戦闘に邪魔が入らないようにする」
この2点を目的に行動
魔女の残忍さを利用し、アヴァタール級から引き離すよう移動
数が多すぎるな……!
逃げ出して追わせよう
【トラップ生成】を発動させ、物を括り付けたワイヤーを断ち、見えない場所で物音を立てたり
茂みに仕込んだスピーカーから女の子の声を流して、逃げ遅れた幼子がいるように見せかけ
俺自身もしまった、という顔で演技
まだ逃げ遅れがいたか……! あの子を護らないと!
幼子を探すように駆け出しつつ、応戦
PDで銃撃し、一撃で倒せる敵>消耗した敵から狙い、確実に数を減らす
煙幕弾で視界を攪乱しつつ
ある程度倒したら、幼子を探しに行くフリで駆け出し、追っ手を撒こう
反撃には俊敏な動きを観察し、魔力障壁を張り防御
身を引きつつ、狙いを逸らす
爪の威力は強化コートで軽減
罪の定義から聞かせてもらいたいな
PD通信で状況共有を
……早くマリアさんの所に合流しないとな

日金・陽洋
(トレインチケット)
煌・純星
(トレインチケット)
白風・時花
(トレインチケット)
●星狼の魔女、襲来
「……! 来た……!」
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は、
ジャンジャンブル集落に向かってくる、『彼女たち』の存在を感知した。
「……やはり、一緒か。マリアラーラさんの言う通りだな」
そう呟くと、彼は頭の中で考えた。
「……するべき事は……」
ひとつ、『トループス級・星狼の魔女たちを、アヴァタール級・スネークウィッチから引き離すようにこちらが移動』
ひとつ、『星狼の魔女たちの数を、削りつつ引き離すなどの妨害を行いつつ、アヴァタール級と戦うマリアラーラたちに邪魔をさせない』
「……ちょっと骨が折れるな、両方しなきゃあならないってところは。けれど……」
その覚悟はできているし、そのための『筋道』も見つけている。困難な道であり、簡単にはいかないだろうが。
が、エトヴァは理解していた。この困難を乗り越えられるからこそディアボロス。
今回も、乗り越えるつもりだった。
『…………いたな、ディアボロス共!』
『よくも仲間を可愛がってくれたな! 倍にして……いや、十倍、百倍にして返してやる!』
『覚悟しな! テメーらは私たちに拷問されて死ぬ以外の道はないって事を!』
そして、迫って来る魔女たちを前にして、
エトヴァは、逃げ出した。
『……奴らを逃がすな! ディアボロス共を八つ裂きにしろ!』
と、アヴァタール級……スネークウィッチがそう叫ぶのが聞こえた。
先刻に、K9号らを痛めつけられた仕返しか、
かなりの量の魔女たちが、エトヴァを追っていた。
(「……いいぞ、追って来たな」)
ジャンジャンブル集落の周辺、丘陵地や森林地帯を駆けるエトヴァは、
「……こちら、エトヴァ。みなさん、準備を願います」
『パラドクス通信』で、他のディアボロスたちへと連絡を入れていた。
そして、エトヴァから連絡を受け、
「……奴らは、女子供を惨殺した。ならば……彼らの裁きの代行者として、今こそ力を振るわせてもらおう」
ケルヴィン・カルニナ(人間のダークハンター・g07173)と、
「……ったく、つくづく放置できねえ連中だぜ。キマイラウィッチってのはよ。俺の拳で、奴らに目にもの見せてやる」
日金・陽洋(陽光・g05072)が、魔女たちに宣戦布告。
「『白龍(パイロン)』! 準備はよろしいですか? 私たちで、悪い奴らを倒しますよ!」
煌・純星(少女軍師(仮)・g00517)は、自身の携える自動人形『白龍』に話しかけ、
「……こちらも、準備は出来ています」
白風・時花(妖狐のカースブレイド・g03205)は、携えていた妖刀の柄に手を伸ばす。
「へっへっへ……さあて、星狼の魔女が相手ですかい。どうしてやりやしょうかね」
下卑た口調で、レオネオレ・カルメラルメルカ(陰竜・g03846)は舌なめずり。
彼の人形『デブリパッチワークドール『ヴァリアント』』も、物言わず待機している。
準備は、万端。
絶望をもたらすキマイラウィッチたち。彼女らへ、絶望を叩き返すため。彼等の闘志は燃え上がっていた。
『星狼の魔女』。
その中の一人、K1号。彼女はK9号が戻って来てから、こんな仕打ちをしたディアボロスどもへ『仕返し』してやるべく、
戦意を、または殺意を、高めていた。
彼女の下に付く、K2号からK8号までの魔女たちも同様。
『……我々を舐めくさったくそったれどもは、必ず殺す! いや、ただ殺すだけじゃあない、拷問し、苦痛を与え、身も心もボロボロにしてやらなきゃあ気が済まない!』
そうとも、自分たちこそが、魔女こそが、キマイラウィッチこそが、この世を統べる資格がある。
この世の弱くウザったい奴らは、ジル・ド・レ様が行われるように、自分たちが拷問し殺す権利がある。なにせ……自分たちが、その拷問を受けて殺されたのだから。
ああ、そうとも。やってやる。我々こそが正義であり真理、そして支配者。
支配者に逆らうものは拷問して殺し、我々の命令が聞けないなら、その耳に新たな穴を開けて、無理やり聞かせてやる。
そして、あの優男の姿を見つけた。あいつは幼女とともにぬいぐるみに乗って、オルレアン南の、奴らの本拠地に逃げようとしたとの事だが……、
逃がさん。捕まえて殺して……いや、殺す前に拷問し、拠点の正確な場所を吐かせてやる。
しかし、
『……!? 何か、聞こえる!』
K3号が、何かの音を聞き、立ち止まった。
『どうした?』
『わからん。だが、何かの物音が聞こえた。……まただ!』
『……やつら、仕掛けてきたな。……後続のK14号たちに伝えるか?』
答えんとしたその時、
『……伝えておけ。おそらく奴ら、まだ近くにいるのだろう』
スネークウィッチが、魔女たちのボスが、そう述べた。
『罠かもしれんが、不安要素があるなら取り除くに越した事はない。まだ敵が数体、この近くに潜んでいるならば……そいつらを一掃しろ。もしも手ごわいようなら、全員を向かわせて構わん』
『はっ! 命令のままに!』
跪き、そう言ったK4号は、
『……! また、聞こえました!?』
『……こちらも聞こえた! 声です!』
K5号、K6号がともにそう言ったため、耳を澄ませた。
『……声からして、ガキだな。逃げ遅れたか?』
『だったら、そいつを捕まえてやろう。奴らへの人質に使えるだろうよ』
K7号と、K8号が、その声の方へと向かっていく。
『……よし、捕まえて来い! お前達も行け! 奴らを逃がすな! ディアボロス共を八つ裂きにしろ!』』
スネークウィッチの命令を受け、
K1号の言葉を聞かず、K2号から8号。
そして、K14号からさらに多くの『星狼の魔女』たちは、
藪の中へと入っていった。
「くっ、まだ逃げ遅れた者がいたか!」
そして、エトヴァもその声の元へと向かい、
『……おい、いたぞ! あいつがディアボロスに違いない!』
K1号らと、鉢合わせしてしまった。
●襲撃の魔女、遭遇
「……くっ……!」
歯噛みするエトヴァに、K1号から8号は、嘲るような笑みを見せつけた。
『これはこれは、アンタが我らの仲間を痛めつけてくれた、ディアボロス殿ですかい?』 『仲間が世話になったお礼……たっぷりとして差し上げましょう』
『へっ……たった一人か?』
『もう一人、幼女が……くそなまいきなメスガキが一緒だったと聞いたが?』
『ああ、多分そっちは、スネークウィッチ様がお相手されてんだろうよ。あの方は女子供をいたぶり殺すのがお好きだからなあ』
『良いよなあ、いじめ殺すってのは。あたしもあやかりたいぜ』
『ああ。あれ以上愉しい事なんかないぜ』
『ま、男が相手でも構わねーが』
彼女らの、その言動……言葉だけでなく、その表情と、滲み出る『雰囲気』。
それら全て、『不快』だった。ただひたすらに『不快』。おぞましい何かに形を付けたような、そんな気がした。
星狼の魔女たちの外観が整っている事だけが、唯一の救いだった。だが、整っているがゆえに……かえって内面の醜さが強調されている。
「……悪いが、逃げ遅れた子供を助けないといけない。戦うのはそれからにしてもらいたい」
エトヴァはそう述べると、
明後日の方向へ、自身が逃げていった。
『そんな事知るか! 逃がすなよ、半分はあいつを追え! 残り半分は逃げ遅れたガキを捕まえろ!』
K1号から4号はエトヴァを追い、K5号から8号は、周囲を探索し始めた。
『ちっ、外れくじ引いたぜ……』
と、5号以下は、『声』の主を探す。
しばらく探していると、
『……あれじゃないか? へっ、マヌケなガキだ』
それらしい者の姿を見つけた。
それは、フリル付きの服を着ており……何かの荷物の下敷きになっている。
おそらく逃げる時に、この荷物の下敷きになり、そのまま放置されたのだろう。
そいつは、力なく手足を動かしているが、下敷きになった荷物からは逃れられそうにない。
良く見たら、近くにもう一人倒れていた。うつぶせに倒れ、帽子をかぶっているために顔は分からない。
ますます都合がいい、このままこいつらを捕まえて、あのディアボロスの人質に……、
そう考え、K7号・8号は、すぐに近づいていった。
『……? 待て、そいつの様子……』
K4号が警告を放とうとしたが、
『え?……ひっ!?』
遅かった。下敷きにされた少女は、荷物を自力で吹き飛ばし、
K7号と8号を、手にした青龍偃月刀で切り捨てたのだ。
『……くそっ! これが少女? どうも怪しいと思ったんだ!』
「あら……白龍は可愛いじゃないですか。……それ以上に、カッコいい武将ではありますけどね」
と、K5号へ……倒れていたもう一人の少女が起き上がり言い放つ。
「……初めまして、煌・純星(ファン・チュンシン)と申します。そしてこちらは……」
と、少女は、
青龍偃月刀を持つ、もう一人の少女……を装った、自動人形を紹介する。それは纏っていたフリル付きの服を脱ぎ捨て、その姿を露わにした。
「……『白龍(パイロン)』。私の大切な、自動人形です」
その自動人形は、仮面をつけた美丈夫のそれ。中華武将のような外観をしていた。
『……ふん、人形遣いか。まあいい……』
『……一人と一体か、『我々』にとっては、ちと物足りないかもな……』
K5号とK6号は、引きつりつつ、にやりと笑う。
「……物足りない? それはどういう……」
『こういうことだ!』
答える前に、『星狼の魔女』たちの後ろから、
さらに多くの、『星狼の魔女』の姿が現れた。
「……なっ……これは!」
追い詰められたエトヴァの前にも、
K1号から4号までの魔女の他、
K14号からのナンバリングの、更に多くの『星狼の魔女』が、姿を現していた。
『残念だったな、我々を出し抜けたと思っていたようだが、逃げ遅れがいたのだろう? ばかめ、我々を騙せると思ったか!』
K1号が勝ち誇るように言ったが、
「……そちらこそ、こっちを追い詰めたと思ったか?」
エトヴァは冷静に、それに言い返した。
『なんだと? ふざけたことを抜かすな!』
一瞬、魔女たちは『何を言っている』といった表情を浮かべたが、すぐに元の調子で言い返す。
それに対し、
「ふざけてなどいない。俺は……いつも真面目だ」
冷たくそう言い放つと、自身の銃を……両手に『Νέμεσις―α』、『Νέμεσις―β』をそれぞれ構え、連続で銃撃した。
『ちっ! 乱射して周囲の敵を一掃するつもりか! しかしその程度……』
だが、K1号の見立ては間違っていた。銃から放たれたのは、閃光弾、そして煙幕。
光と煙とが、エトヴァの姿を隠していったのだ。
『……な、なんだ!?』
混乱している中、
「『Wunderfarber-β(ヴンダーファルバー・ベータ)』! 絢爛と、咲きほこれ!」
手にした銃の銃口から、弾丸が放たれ……星狼の魔女たちの命を奪っていく。
『み、見えない! 奴はどこだ!』
『くそっ! この煙幕が邪魔だ! 吹き飛ばせ!』
『だ、だめだ! 同士討ちしてしまう!』
視界が阻まれ、周囲への目視ができず、うろたえる魔女たち。だが、
「……? これは!」
エトヴァは、『見せつけられた』
煙幕の中に浮かぶ、自分の『死にざま』を。
『……『星詠み』だ! 貴様の死にざま……我々全員から『星青炎舞』を食らい大やけどを負った後に、『星爪の断罪』を受けた様子を見た感想はどうだ?』
K1号の勝ち誇る声とともに、
『『動揺』したか? そのまま死ね!』
『楽には殺さんぞ……こないだ殺した、とるに足らない村人どものように、お前も殺してやる!』
『暇つぶしに拷問してやったら、ひいひい泣きわめいて、少しは楽しめたぞ。お前も同じ目に遭わせてやる』
『楽しみか? 我々は楽しみだ!』
やがて、煙幕が晴れてきたその時に、
『見えた! 全員、奴に『星青炎舞』を放て!』
煙幕の中、魔女たちは青き火炎の狼を放った!
●残酷の魔女、対決
「……確かに、これは多いですね」
純星は、白龍とともに、周囲に集まった魔女たちを見返した。
『多いだろう? 絶望にまみれ、そのまま殺される覚悟はできたか?』
余裕を見せ、ニタニタと笑うK4号。K5号も同じく笑みを浮かべる。
が、
「……ですが私にも、仲間がいるんです」
と、後方から、魔女たちの死角から、いきなり、
『え?』
現れた『彼ら』が、何体かの魔女を叩きのめした。
「……へっへっへ、あっしはレオネオレ・カルメラルメルカと申しまさあ」
と、先刻の魔女の笑いが可愛いと思えるような、卑屈な笑いを浮かべるドラゴニアンがそこに。
その脇には、白龍のような『自動人形』が控えていた。
色々な部品をつぎはぎした姿をしており、左腕が無く、右腕が二本。そして、顔の上半分は骸骨のそれ。
「こちらは、あっしのデブリパッチワークドール『ヴァリアント』でさあ」
『ヴァリアント』は、数人の魔女を、その二つの右腕で掴み、殴りつけ、殴り飛ばしていた。
『……このおっ! ガラクタ使いごときが、我々にかなうとでも……』
飛び掛かる『星狼の魔女』。しかし、
「……では、私の刃ではかないましょうか?」
飛び掛かったと同時に、切り捨てられていた。
「……白風・時花と申します。お見知りおきを」
妖刀を片手にした、琥珀色の瞳と白い肌・髪の美女、妖狐の剣士が、そこに立っていた。
『……な、仲間がいたか……』
K4号、K5号は、余裕が消えた様子で、うろたえている。
「……私と『白龍』、時花さん、レオネオレさんとヴァリアントさん。これだけ居るなら……お相手は出来るかと」
マイペースで、純星は述べる。
『……だ、だまれえええっ!』
『お前らを殺す! 必ずだ!』
『おい、仲間をもっと呼んで来い! こいつらを殺さないと、スネークウィッチ様に示しがつかないわ!』
そして、ペースを乱された『星狼の魔女』、K4号と5号、および他の魔女たちは、
一斉に襲い掛かって来た。
薄くなった煙幕の中、エトヴァに迫って来た『星青炎舞』の群は、
「!」
現れた、マント姿の剣士が持つ突刺剣『Rapiers rītausmā』が、薙ぎ払った。
『なっ……何者だ!』
「……オレか? ケルヴィン・カルニナ……裁きの代行者だ」
傷ついたマントを纏った、紅玉の瞳の青年。彼が、レイピアを構えつつ言い放つ。
うろたえるK1号の後ろからは、
『ひっ……ぎゃあああっ!』
何者かの打撃音が、そこに響いた。
「そして俺は、日金・陽洋だ」
そちらにいたのは、銀髪に金の瞳、色黒な肌を持つ精悍な青年。彼はすでに、魔女たち何人かを殴り飛ばした後だった。
『……貴様らが、貴様ら如きが、我々を翻弄する、だと!』
『ふざけんじゃあねーっ! 返り討ちにしてやるわ!』
K3号と4号が、十数名の『星狼の魔女』とともに、ケルヴィンと陽洋に突撃する。
「……ひとつ言っておく。いらん世話だが……『足元』、気を付けろ」
陽洋の言葉を、
『知るか! この人数で同時に放つ『星爪の断罪』! よけられるか! 防御できるか!?』
『受け止めたら数で押し切る! 躱したらそちらに向かい攻撃する! この勝負貰った!』
魔女たちは嘲り返した。
だが、そんな嘲りなど聞く耳持たず、
「……そうか、ならば行くぞ」
陽洋は、まるで武道家が戦いに向かう前のように、腰を落とし、構え、力をみなぎらせる。
『星爪の断罪』とともに、向かってきた魔女たちを前にして、
陽洋は、彼女らに対してではなく、
地面に向かって、その拳を叩きこんだ。
『?! 何のつもりか知らんが、勝った! 死ねぇッ!』
K3号が勝利を確信し、爪で斬り込まんとしたその時、
『え?』
地中に『衝撃波』が駆け、『砂嵐』が舞い上がった。
『な、なんだとおッ! なぜ衝撃波が!? そうか、さっきの地面への拳か!』
まさに、K4号の言った通り。その砂嵐は、さながら『砂漠を進むサイドワインダー(毒蛇)』のごとく。
『ひっ……ひぎゃあああああっ!』
そのまま、衝撃波は、
K3号をも含めた魔女たちを巻き込み、吹き飛ばし、強烈なダメージをその身に与え……、
一気に、その数を減らしていった。
「……『地蛇衝波(チジャショウハ)』。言ったはずだ、『足元に、気を付けろ』とな」
陽洋の呟きとともに、魔女たちはその半数近くが、
一気に、倒されていた。
『……お、おのれええええっ! ……え?』
そして、K4号もまた、
「……先刻、『暇つぶしに拷問し、殺した』と言っていたな?」
いつの間にか、後方に立っていたケルヴィンの剣に、『Rapiers rītausmā』の刃に、
「……貴様らに殺された人々の『無念』、そして『怒り』と『悲しみ』。……それに比べれば、貴様らにはこの『暗夜の一撃』がもたらす死すら、慈悲深い!」
……急所を、貫かれていた。
『……そ、そんな……死にたく、な……』
言いつつ、K4号は、
事切れた。
『……ば、馬鹿な! 一気に……形勢逆転だと!?』
K2号は、唖然とし、
『おい、仲間をもっと呼んで来い! こいつら……かなり腕が立つぞ!』
K1号は、命じていた。
●星狼の魔女、決戦
「……我招くは金色の貫く雷光、汝らに慈悲はなく……」
迫りくる、K5号、6号、そして魔女の群が放った『星青炎舞』。
その、炎の狼たちの群へ、
「……神の輝きのもとに屠られるだろう。『ライトニングビーム』」
レオネオレは、かざしたその掌から、黄金の光線を、
稲妻のビームを放った。それは掌から一直線に、輝きつつも炎の狼たちを直撃し、薙ぎ払う!
その勢いは止まることなく、増援に駆け付けた魔女たち数人をも貫き、薙ぎ払い、
『ギャアアッ!』『ひいっ!』『ぐわあっ!』
一度に多数の魔女に、引導を渡していた。
『くそっ! くそっ! お前らごときが、我々を倒すなど……!』
『認めん! 絶対に、認めない!』
だが、回り込んできたK5号たちが、別の方向から爪で切りかかるも、
「……! ………」
立ちはだかった時花が、『舞』をみせ、妖気を高める。
そして、
『……ひっ!』
K5号を含む、その魔女たちは、
時花が伸ばした、硬質化した『狐の尾』に貫かれていた。
「……『奪魂尾獣穿(だっこんびじゅうせん)』。認めようと、認めまいと、あなた方の死に場所は……ここです」
妖狐のカースブレイドは、冷たく言い放つと、
まだ息のあるK5号へ、妖刀で止めを刺す。
『……このおおおおっ! せめて、貴様一人だけでもぉぉぉっ!』
一人残ったK6号が、純星に飛び掛かるが、
「『白龍』!」
純星に命じられ、白龍が突撃した。
自身の持つ青龍偃月刀を振るい……、すれ違いざまに、K6号を……、
『叩っ切った』。
「……『白龍一閃(ハクリュウイッセン)』。お粗末様でした」
『畜生! こいつら……強すぎる!』
『おい、仲間をもっと呼んで来い!』
なおも魔女たちは、増援を呼ぶも、結果は同じ。
やがて、生き残りの僅かな魔女は逃走し、
「……おおっと、どうやら終わったと思って良さそうですねえ」
「ええ……そのようね」
レオネオレと時花の言う通り、その場に再び静寂が訪れた。
「さて……もしもし、エトヴァさんですか?」
と、純星は、
パラドクス通信で、エトヴァへと連絡を入れていた。
「……はい、こちらエトヴァ。そちらの魔女たちは、全て倒しましたか?」
そして、エトヴァの方も、
周囲の魔女たちを、ケルヴィンと陽洋とともに、やはりほぼ一掃していた。
既に、後ろに居た魔女たちの数名は、かなわないと思って途中から逃げてしまっている。
「ええ。こちらもほぼ倒すか、逃げてしまいました。後は……」
と、追い詰めたK1号、2号と対峙する。
「……エトヴァ、オレが殺るか?」
「いや、俺に任せてくれ」
ケルヴィンと陽洋が迫るが、
「いや、ここは俺が……」
と、エトヴァは銃を持ちあげる。
しかし、K1号が、
『お前が囮になれ!』
『ひっ!』
K2号を蹴り飛ばし、その隙に、
逃げ出した。
K2号もまた、エトヴァの脇を通り逃げんとするが、
「……オレが逃がすと思うか?」
その胸を、ケルヴィンの剣が貫いていた。
だが、逃げつつK1号は、
『……莫迦なやつらだ! ジル・ド・レ様に殺され、地獄に落ちるがいい!』
そのまま、K1号はただ一人。仲間の死体を蹴り飛ばし、去っていく。
陽洋は、逃げ帰るその魔女を見つつ、呟いた。
「……『トループス級は、情報を持ち帰らせるため、全部倒さずに少数を逃がす』」
彼に続き、ケルヴィンも、
「そして……『アヴァタール級との戦闘に、邪魔が入らないようにする』。だったな」
静かに、言葉を口にする。
今、アヴァタール級には、マリアラーラが向かっている。
そして、トループス級たる『星狼の魔女』たちは、逃がす分以外は全て倒した。
「……最初の『トラップ生成』で、ワイヤーを断ち、物音を立てる。そして見えない場所に仕掛けたスピーカーから、少女の声を流し、逃げ遅れた幼子が居ると仕向ける。この作戦、うまくいったようです」
エトヴァもまた呟くが、その口調にはやや疲れが。
「後は、追手がいるようなら、撒くつもりでしたが。その必要は無さそう……」
そう言いかけたその時、
『死ね!』
先刻に逃げたと思わせた、数名の魔女が、
物陰から『星青炎舞』を放ってきた。
「……逃げずに、不意打ちするとはな!」
が、素早くケルヴィンが剣で切り払う。
「……エトヴァ、どうやら連中の中には逃げたと見せかけ、隠れて不意打ちを狙う奴らもいるようだ。そいつらはオレと陽洋に任せてくれ」
「ああ。お前は速く、マリアラーラの元へ向かってくれ。後で俺たちも向かう」
二人からの言葉に、
「……わかりました。この場はお願いします!」
エトヴァは駆け出した。
「……はい。こちらにも、僅かですが隠れたり、不意打ちを仕掛ける魔女がいます。それらを片付けてから、エトヴァさんの援護に向かいますね!」
「はい。純星さんも、どうかご無理をなさらず!」
通信を切り、エトヴァはマリアラーラの元へ、
アヴァタール級『スネークウィッチ』と戦っているはずの、彼女の元へと走った。
「待っててください、マリアさん! すぐ駆けつけます!」
善戦🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【パラドクス通信】LV2が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【動物の友】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
【狐変身】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV6になった!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
マリアラーラ・シルヴァ
「アヴァタールを誘きだし、仲間によるトループスへの攻撃や工作を邪魔させないようにする」
ことを目的に行動
仲間の分断作戦の片翼を担ってアヴァタールな蛇ベーダを誘い出すよ
ベーダ達は『仕返しと、詳細を聞き出すために、本隊で攻め込み本格的な攻撃を仕掛ける』と思うんだけど
偵察を出すくらい賢い蛇ベーダなら
・復讐者側も攻め込まれるとみて籠城するだろう
・南の拠点から援軍が来て挟み撃ちになるのは避けたい
そんな風に先の展開も予想してるはず
だけど復讐者の作戦は挑発と誘導
すると蛇ベーダは籠城しないなら南からの援軍は早々には現れないと洞察して
時間はあると…残忍さを開放し楽しむ余裕はあると考えを改めると思うの
そこにマリアのパラドクスで蛇ベーダだけを攻撃するよ
敵を闇で覆う技なんだけど
もし蛇ベーダが本物の蛇みたいに熱を感知できるなら
小柄な熱源は報告にあった子と推測し
狼ベーダ達をみんな仲間の追跡に向かわせるんじゃないかな
だって拷問を楽しむなら大人数は邪魔だもの
上手く釣れたら教会に逃げ込むけど
早めに助けに来てくれると助かるの
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
トループスを撒けたら、マリアさんの元へ駆けつけ合流を
マリアさんの状況は通信に聞き耳を立てておく
なるべく忍び足で駆けて、居場所(教会)へ
様子を伺い、敵味方の位置を確認
初撃は不意打ちならば上々
怒りを自身のほうへ引きつけ、そのままマリアさんと挟撃する
随分と悪趣味だな……
教会は神聖な場所だ
戦況は常に観察しつつ把握
仲間と声を掛け合い連携
両手の銃でPDで攻撃
狭い場所に跳弾を仕掛け、縦横無尽に弾丸の雨を降らせ
逃げ場をなくすように操り、銃弾を襲いかからせる
掠めるように放つ弾丸で気を逸らしつつ、死角から撃ち抜く
隙を作り、仲間の攻撃も通りやすくしよう
敵の攻撃には、魔力障壁で身を護り、呪詛の影響を遮断しつつ
傷はコートで抑えて忍耐
銃を向け、反撃を続けよう
大軍で押しかけ、罪なき人々をいたぶることを
復讐をとは呼ばない
いよいよ、オルレアンだ
ジル・ド・レの蛮行を止めさせないと……な

袁・景理
(トレインチケット)

橡・広志
(トレインチケット)
郷見・竜治
(トレインチケット)
レリア・キュイ
(トレインチケット)
時坂・暁
(トレインチケット)
●邪の道を行く蛇
ジャンジャンブル集落を臨む、森と隣接する広場。
『罠かもしれんが、不安要素があるなら取り除くに越した事はない。まだ敵が数体、この近くに潜んでいるならば……そいつらを一掃しろ。もしも手ごわいようなら、全員を向かわせて構わん』
そこに『スネークウィッチ』。蛇の魔女が居た。
彼女は、己の配下たる星狼の魔女たちから、『二つ』の事を聞いていた。
一つ。ディアボロスの姿を発見した。
一つ。ジャンジャンブル集落の住民と思しき、幼子の声を聴いた。
かくして彼女は、星狼の魔女たちを向かわせた。
『……奴らを逃がすな! ディアボロス共を八つ裂きにしろ!』
だが、向かわせたまでは良かったが……そこから先は計算外。
しばらくが経過し、
『……増援を、お願いします!』
『奴らは、かなり腕が立ちます! 応援を!』
戻って来た星狼の魔女たちは、そんな泣き言を抜かしてきた。
粛清してやろうかと思ったスネークウィッチだったが、先刻に自分で『手ごわいようなら、全員を向かわせて構わん』と言った手前、断るわけにもいくまい。
何より、部下をただ減らすのは愚策。
『……す、スネークウィッチ様……』
『奴らは……かなり腕が立ちます。ここは早く戻り、ジル・ド・レ様に……』
『そうです。ジル・ド・レ様に、事の次第をお伝えされては』
K9号たちが、傷ついた、情けない様子でそんな事を言ってくる。彼女らは実際に怪我をしているが、これほどまでに弱いとは……買いかぶり過ぎていたか。
『……オルレアンの南側に、ディアボロス共の拠点がある。だったな?』
この情報の真偽は分からんが、奴らがそちらの方向に撤退しようとしたのは確か。本拠地や本部ではなくとも、奴らにとって重要な場所……前線基地かもしれない。
どちらにしろ、警戒して越した事は無かろう。
『……お前たちはオルレアンに下がれ。傷だらけで、なおかつ戦う力もないお前達には、ジル・ド・レ様へ情報を伝達する程度しか役に立たん。行け』
『は……はい、了解しました』
失望とともに、下がるK9号たち。
やがて、周囲ほぼ全ての星狼の魔女たちは、姿を消した。
「…………」
その様子を、マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)は近くの木の陰に隠れつつ、伺い見ていた。
(「……マリアの『読み』、全てではないけど……どうやら、そう外してはいないようなのね」)
今、同時進行でエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が、ジャンジャンブル集落の方に居て、星狼の魔女たちを誘き出し、戦ってくれている。
また、ボスを守るためか。『星狼の魔女たち』が六名、スネークウィッチの周囲を警戒していた。
あれをなんとかしたいところだが、上手い考えが思いつかない。
どうしたものかと考えあぐねていると、
「……おいおいおいおいおいおいおいおい、なんだぁ? あのアートのセンスの欠片もねぇ連中は?」
橡・広志(理不尽への叛逆・g05858)に、
「……あれが、拷問を行う魔女たちの頭目ですのね」
袁・景理(四世三公の令嬢・g07661)、そして、
「ったく、蛇の魔女? 見た目だけで強力そうだ。侭ならねえな」
郷見・竜治(今は燻る火が如く・g01084)が、マリアラーラの後ろから覗き込んできた。
「……で? ここで覗いているだけじゃないんでしょう? 私たちは何をすればいいの?」
更に、レリア・キュイ(愛のために戦う戦士・g01078)に、
「あの狼のウィッチだけでなく、蛇のウィッチを殺せと命じるなら、僕は喜んで従おう」
オートマタ『蟷螂乙女』を連れたブレロー・ヴェール(Misère tue à l'abattoir・g05009)もまた、進み出る。
「攻撃するのは、あの狼の方ですか。それとも……蛇の方を直接叩く?」
時坂・暁(パラダイス・ロスト・g00297)の提案に、マリアラーラは、
「……みんな。悪いけど、あそこにいるトループス級ベーダを、全部誘き出してほしいの」
そう答えた。
「……ヘイ、そこのセンス皆無なNotアーティスティックな嬢ちゃん達! 俺が教えてやろうか? アートの真髄ってやつをよぉ!」
広志が、いきなり彼女らの前に姿を現した。
「言ったところで無駄よ。芸術の『げ』の字すらも、理解できるようには見えないわ」
その隣には、レリア。
「そうだな。連中なら『アート』より、マーシャル『アーツ』を好みそうだ」
そして、竜治。
三人に対し、スネークウィッチは、
『……現れたか、ディアボロスども。……星狼の魔女たちよ! この者どもを血祭りにあげろ!』
言い放った。
命令を受け、三人の星狼の魔女が向かう。が、まだ三人残っている。
あと少し、なのに……!
「……どうやら、私たちも参加しなきゃならないみたいね」
だが、マリアラーラのその焦りを感じ取り、
景理と、
「……僕の自動人形と、僕のサファーデ。どちらに殺されたいか、選ぶんだな」
ブレロー、そして、
「仕方ありません。私もいくとしますか」
暁が、残りの三体を受け持つ事に。
(「みんな、お願いするの!」)
彼ら、彼女らが戦いの場に進み出るのを、マリアラーラは見守った。
●蛇は本来、『知恵』『不死』の象徴なり
スネークウィッチは、自分の周りから『星狼の魔女』が、
護衛に残しておいた分も含め、『いなくなった』事を実感していた。いきなり現れたディアボロス共は、この自分から護衛を引き離すかのように、星狼の魔女たちを誘き出していた。
こうして孤立してしまったが……構わぬ。
近くに気配がする。それも、子供らしき気配が。しかしそれ以外に、気配は無い。
念のために護衛を付けさせていたが、自分一人でも、一個大隊程度の戦力は有している。
敵増援が南から来たとしても……構うものか。星狼どもに任せるつもりだったが、自分が相手してやるのも悪くない。
そして、それ以上に……何者か知らぬが、この自分に挑戦しているような気がしてならん。
いいだろう、私と知恵比べしたいなら、試すがいい。
『……試すまでも無く、それはお前の破滅だと言う事を、その命を以て知るがいい』
マリアラーラは、自身が先刻に行った説明を、今一度確認のために頭の中で反芻した。
………………
「あの蛇ベーダは、最終的には倒す予定だけど、今慌てて攻撃したところで、恐らくは倒せないの」
「蛇ベーダの目的は、恐らくディアボロスに対する『仕返し』と、『情報収集』。そこから『本隊で攻め込む』事も、おそらく考えているの」
「そして攻め込む際、『ディアボロス側は籠城』『南からの敵の援軍とで、挟撃されるのは避けたい』と予想しているはず」
「けど、マリアたちの今回の作戦は、『挑発』及び『誘導』。籠城しないと気付かれたら、援軍は来ず、時間的余裕が生じると蛇ベーダは洞察し、自分の残忍さを楽しむようにすると思うの」
「けど、ひとつだけ当てが外れたの。実際の蛇みたいに、小柄な熱源感知させ、狼ベーダたちを『自主的に』仲間の追跡に向かわせると思ってたんだけど……」
「予想に反し、あの護衛ベーダたちを離さないの。皆には、護衛の狼ベーダたちを全員、引き離してほしいの」
「蛇ベーダは間違いなく強敵。だから皆に、『蛇ベーダを孤立させる事』を手伝って欲しいの」
……………………
(「これで、『孤立』させる事には、目途はついたの。けど……」)
マリアラーラは、気付いた。孤立したという点では、自分も同じだと言う事を。
これが、吉と出るか、凶と出るか。
蛇の魔女を釣り上げるべく、
「…………」
マリアラーラは、こっそりと接近し、
「…………!」
パラドクスを、発動させた。
『……? これは……闇?』
まさに然り。スネークウィッチは、
マリアラーラがもたらした『闇』に一人、包まれていた。
(「……『眠れない夜(ノンレムナイト)』。全てを包み込む闇、月の光も、星の輝きも届かない、夢のない夜で包み込む魔術……さあ、どうするの?」)
周囲には、あの星狼の魔女たちはおらず、彼女一人だけ。
そして五感を遮断されれば、どんな者も戸惑い、時には慌てる。
しかし、
『……どこの誰かは知らんが、随分と可愛らしい手品をするじゃあないか。何のつもりかな、この闇は?』
慌てるどころか、スネークウィッチは、余裕の口調で、
まるで周囲にマリアラーラが居る事を承知しているかのように、そんな事を言い放った。
(「!……まさか、気付かれた? いや、バレてはいないはず
……!」)
しかし、不安だった。晴朗の魔女たちから離し、孤立させた。その後でこちらが誘き出し、後で仲間と合流し、総攻撃する事で倒す。
そう考えていたが、その考え通りにいかない。そんな予感が強まっていく。
『……なあ、聞こえてるか? この暗闇を作った何者かよ。お前のような男……いや、女かもしれんな。ともかく、お前のような度胸のある相手は嫌いじゃあない。その点は褒めてやろう』
そして、スネークウィッチからは、そんな言葉が。
『ひょっとして、一人だけでなく、複数名がこの闇をもたらしているかもしれんな。だからこちらも……『複数』で、お前……いや、お前達か? ともかく、そちらを探すとしよう』
(「……複数で探す? どういう事?」)
『ああ、ひとつ言っておく。足元に気を付けよ。それから……神経を麻痺させる『神経毒』と、血管を破壊する『出血毒』。どちらが良いか、選ぶんだな。それともう一つ……隠れたところで、体温はごまかせまいよ』
(「毒? 体温? マリアの熱源を感知するの? それとも……」)
そこまで考えたマリアラーラは、
「……ひっ!」
思わず悲鳴を上げてしまった。
足元に、すぐ近くまで『蛇』が接近していたのだ。
それも、大量の蛇が。
『見つけたぞ……ほう、どうやら『幼女』のようだな』
そして、スネークウィッチから、確信めいた言葉が投げかけられた。
「……待っていて下さい。マリアラーラさん!」
エトヴァ・ヒンメルグリッツァは、急いでいた。
先刻から、嫌な予感が強くなっていたのだ。パラドクス通信をしようとしても、彼女から「これから蛇ベーダにパラドクスをかけるから、しばらくは通信しないで」と言われ、控えていた。
教会まで、どうか逃げていて下さい……!
エトヴァは、必死に祈った。祈りつつ……先を急いでいた。
『……ふん、逃げたか』
スネークウィッチは、自身の放った蛇……呪詛でできた『スネークカース』を産み出し、けしかけた蛇が、マリアラーラを見つけたことを感知した。
この呪詛の蛇は、テレパシーのようなものでスネークウィッチと繋がっている。
だが、相手もさすがに一か所にとどまっていない。大量の蛇の群から逃れ、駆け出している。
そちらの方へ、闇の中をスネークウィッチは進んだ。
いつしか、自身を覆っていた闇が晴れ、彼女は自前の五感で感知した。
ジャンジャンブル集落、その中の教会。
その粗末な建物に向かい、この場に似つかわしくない幼女が、マリアラーラが、自分から逃げているという事を。
●その尾を咥える蛇は、無限を表すウロボロス
ジャンジャンブル集落から、かなり離れた場所の一角。
そこでは、ディアボロスたちと星狼の魔女たちとが、戦っていた。
「くそっ! この連中、かなり素早いぜ!」
竜治は、青狼の魔女たちと殴り合いつつ、思わずつぶやく。
「全くね! はっ、その分戦い甲斐があるけど!」
レリアが同意し、
「へっ! まったくアートじゃあねえぜ! っつーかよぉ……」
広志は不満を漏らし、敵の爪を己が得物……鉄パイプで受け止めた。
受け止めつつ、
「……ちっとは、アート心に刺さるような戦い方をしてみろってんだ。こんな風に……な!」
『跳んだ』。
ただ『跳んだ』だけでなく、そのまま『飛んだ』。
その身体に、オレンジ色のオーラを纏い、広志は飛行する。
「これが!これが! これが『俺のアート』だあああああッ!『デザイン、最強の俺(オレンジコメットイマジネーション)』!」
『! ディアボロス! 貴様如きが、このような技を使うか! ……ひっ!』
狼の魔女は叫ぶが、飛行能力を得た広志の前には、手が出せず、
彼が薙ぎ払った鉄パイプからのオーラ、ないしはその弾丸が直撃し、果てた。
『なっ! ……え?』
「あら、彼だけでなく、私にも注目してよね! ……どうかしら、私の脚は?」
戸惑う別の星狼の魔女に、
助走をつけて高速で駆け出し、低く跳躍しつつ飛び出したレリアが接近した。
「プロポーションには、すっごく気を使っているのだけれど!」
その勢いのまま、鋭くも強き飛び蹴りを繰り出す!
そして、蹴り飛ばした魔女を足蹴にして再跳躍。別の魔女へ、竜治と戦っていた魔女にも蹴りを放つ。
「……『空駆の駿撃(エアスラストレイド)』。ごめんあそばせ」
魔女たちが倒れるのを背中に感じつつ、レリアは降り立って首だけ振り向かせると、そのまま微笑んだ。
そして、離れた場所で戦う、他のディアボロス三人も。
『『星青炎舞』!』
炎の狼に難儀していたが、
「……炎には、『風』で対抗しますわ」
景理が、立ちはだかる。
「……恵風よ! 追風となりなさい! 『天恵の薫風(テンケイノクンプウ)』!」
彼女が放つは『風』。それは恵みをもたらし、悪しき気を吹き飛ばし、『星青炎舞』の炎の狼を吹き消し、
自らの、味方のディアボロスたちへの追い風と化した。
「……感謝する、景理! おかげで僕たちも……奴らの元に『切り込める』!」
と、ブレローが、その風を背中に受け、
自動人形『蟷螂乙女』とともに、青狼の魔女たちの元へと飛び出し、接近する!
『おのれ! だったら我が爪で……!』
「いいや、それは見切った」
ブレローは魔女の足元にスライディング、滑り込むと、シザーテイクダウン……俗に言う、柔道の禁じ手『蟹挟(かにばさみ)』を放つ!
『ひっ! ……こんな体術ごときに、我々が……』
「いいや、これだけじゃあないんだよ」
倒れた魔女へ、『蟷螂乙女』の両足……スパイクを展開させた両足が、振り下ろされる!
『ひっ……ぎゃああああっ!』
「これぞ、『鋏咬脚(シゾー・ランセ)』。この二段構え、簡単には避けられないよ」
聞いていなかった。その魔女は、自動人形の蹴りを受け……その命ごと踏みつぶされていたのだ。
『な、仲間が!』
『おのれ! ならば我々が……!』
「いいや、させません! ハイロゥ駆動!」
暁が飛び出す。
魔女たちの周囲に『ハイロゥ』……天使の環が展開し、取り囲む。
「……生命(いのち)亡き地よりこちらへ。吹き荒ぶは死を呼ぶ冷厳……」
その内部に発生するは、『闇』。魂すらも凍てつかせる、暗き闇が、魔女たちを包み込んだ。
「……迸れ――『死を呼ぶ冷厳(コールドアビス)』!」
『ひっ……ぎゃああああっ!』
『こ、この闇が……我々の最後か……』
魔女たちは、『闇』に凍てつき、そのまま引導を渡され……果てた。
だが、
『……莫迦な奴らめ、我々を倒せても……』
『……我々が、お前達を……スネークウィッチ様から離した事までは……気付くまい……』
彼女らは倒れる直前に、呟いていた。
「……まさか……」
「僕らを、スネークウィッチから引き離すために……わざと誘い出したのか?」
暁とブレローが、そのつぶやきを聞いていた。
「だとしたら、マリアラーラ様が危ないですわ! 彼女もまた、孤立しています!」
景理が叫ぶ。が、
魔女たちの思惑通り、彼等の現在位置は……、
先刻の場所から、ジャンジャンブル集落から、かなり離れた位置にあった。
そして、戻るためにはどの方角に向かうべきか、彼等は分からなかった。
●蛇の力、生かすも殺すも、善悪も、当人次第
『さあ、お嬢ちゃん。いい子だから、教会から出ておいで』
ジャンジャンブル集落。
その、教会。
マリアラーラは、なんとかスネークウィッチから逃げ、この教会、この聖堂に逃げ込めた。
幸い、扉を閉め、かんぬきをかけられたが……気休めでしかないだろう。
「……みんな、早めに助けに来てくれると助かるの。だけど……」
予想以上に見つけられるのが早く、しかも……予想外の方法で、カーススネークを用いるやり方で、追い詰めてきたのだ。
呪詛の毒蛇の事を見たら……数え切れないほどの数だった。
このまま総攻撃を食らうと、間違いなく自分は一巻の終りだろう。
『ほら、とっとと出て来なさい。既にこの問いかけは……『拷問』へと、移行しつつあるのよ?』
魔女の言う通りだった。壁の隙間、教会の建物の隙間という隙間から、
呪詛の蛇たちが、くねりつつ、入って来たのだ。
『ああ、楽しい……楽しいわ。この圧倒的な優位! 勝利確実なこの状況! そして相手は、無力で逆らう術がないときたものだ。まさに『赤子の手をひねる』というやつね!』
「…………」
マリアラーラは、返答しなかった。弱音だけは吐くものか。
「!」
かんぬきを閉じた扉が、吹っ飛んだ。
そしてそこには、スネークウィッチの姿が。
『開けてくれないから、勝手に開けさせてもらいました。……あらあら、可愛い女の子ね。拷問のしがいがありそう……』
「…………!」
『ほらほら、『スネークカース』と一緒に、追い詰めたわよぉ? ふふっ、あなたを拷問して、情報を全部聞き出した後には、じっくり遊んであげる。手足を切り取り、目を抉り鼻や耳を削ぎ、少しずつ、少しずつ……生きたまま、バラバラにしてあげるわね』
まさにその通り。マリアラーラは教会内部に追い詰められた。
スネークカースは、円形にマリアラーラを囲っている。
この蛇たちを何とかしても、あの蛇の魔女からも逃れられるとは思えない。
蛇の胴体で構成された下半身が、非常に素早い動きを見せていたのだ。
それでも、覚悟を決めたマリアラーラは、
「……悪いけど……マリアより先に、あなたは自分の心配するべきなの」
挑発的に、そう言ってみせた。
『はあ? 私が自分の何を心配……』
そう返答した次の瞬間。
「マリアさん、伏せて!」
エトヴァの叫びとともに、弾丸が強襲した!
エトヴァは、教会に赴き、
後ろ向きのスネークウィッチが、教会内部に入り込もうとしていたのを見た。
それだけでなく、教会の中には、大量の毒蛇が湧いており……マリアラーラを囲っている。
「踊れ! 導け! 祈りの下に!『Silberner Freischütz-Ⅲ(シルベルナー・フライシュッツ・ドライ)』!」
迷うことなく、両手に構えた銃から、弾丸を浴びせかけた。
聖なる白銀の弾丸は、連射され、教会内部に、
その床を席巻していたスネークカースの群に突っ込み、縦横無尽に跳弾し、全てを撃ち抜いていく。
『……ひっ! ぐあああっ! な、仲間か!?』
そして、その標的はスネークウィッチも含まれていた。背中に弾丸を多く喰らっており、ダメージを負っていたのだ。
何発も打ち込んだ弾丸が、教会内部で跳弾を繰り返し、
スネークカースを撃ち抜き、一掃し、
『ひいいっ!』
最後に、スネークウィッチの前面に打ち込まれ、止めに。
「エトヴァ! ありがとう、助かったの!」
「マリアさん! 遅くなりすみません。大丈夫でしたか?」
「マリアは大丈夫なの。……少し焦ったけど、この通り……痛っ!」
駆け寄ったマリアラーラの足に、一匹だけ生き残っていた、スネークカースが噛みついたのだ。
が、その蛇は既に撃たれており、噛んですぐに離れ、死んだが、
『……不意打ち……効いたぞ、ディアボロスよ……』
まだ死んでいなかったスネークウィッチが、血を流しつつ立ち上がった。
『……マリアラーラとかいう、その小娘に噛みついてやった。その呪詛、あと数分のうちに……猛毒となり、小娘を死なせる』
「……呪詛を解け!」
『……はっ、ならば……私を殺してみろ。そうすれば、呪詛は消える。だが……殺せなかったら、お前を殺し、小娘が死ぬまで私も生き延びてやる』
嘲笑いつつ、スネークウィッチは立ち上がる。
「……俺が勝てば、マリアさんは助かり、お前は死ぬ。俺が負けてもお前は死ぬが、マリアさんも道連れにする。そういう事か」
『そうさ! 察しが良い坊やだ! さあ、殺してみろ!』
と、スネークウィッチは、
死力を、文字通り死力を振り絞り、下半身の蛇の尾の集合体を鞭のように振るい、打ち据えんとする。
『『蛇尾連打』!』
死の舞踏のように、エトヴァは打たれるが、
(「ぐっ……この蛇の尻尾の打撃、強力だ!」)
防弾防刃コートが、彼の身体を守る。が、やはり衝撃を防ぎきれず、エトヴァも打撃をこらえる事に精一杯。
「ぐっ……ああああっ!」
そのまま、教会の外へと蹴り飛ばされた。
『そして、スネークカース! 呪詛を受けろ!』
更に、呪詛の蛇を差し向けるウィッチ。
「このっ!」
エトヴァは銃を撃ち、弾丸を放つが、
『どこを狙っている! 外れたぞ!』
そう、外してしまった。屋外で、遮蔽物などが無いため、跳弾もできない。
(『勝った!』)と、スネークウィッチが確信したその時、
『……え?』
彼女は、後方から頭蓋骨を撃ち抜かれたのを、激痛とともに感じていた。
「……外してはいない。地面や、地面の石ころ。衝撃波、飛翔の風圧、お前の躰。全てを利用し、見切り、計算して……跳弾させた」
そう、エトヴァの『Silberner Freischütz-Ⅲ』は、周囲の全てを利用する事で、跳弾させ、敵を必ず貫くパラドクス。
先刻に撃った時、片手だけでなく、もう片方の手の銃からも弾丸を放っていたのだ。
それを地面の石や、後方の教会の壁などを利用して、複雑に跳弾させ、
最終的に、ウィッチの後頭部に弾丸が当たるようにしていた。
「……ひとつだけ、言っておく」
倒れたスネークウィッチに対し、
「大軍で押しかけ、罪なき人々をいたぶることを……復讐とは呼ばない」
彼は、静かに、あくまでも静かに……死にゆくウィッチに、そう言葉をかけていた。
「……エト……ヴァ……」
と、マリアラーラが、片足をひきつつ現れた。
「マリアさん……大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫……。痛みも、呪いも、徐々に引いてるのを感じるの」
既に、回復しつつある。
やがて、
「マリアラーラ様!」
景理たちが、星狼の魔女を追った者たちが、敵を倒し戻ってきた。
辛勝。
ぎりぎりといったところだが、どうやらジャンジャンブル集落を襲うキマイラウィッチは、一掃できたと判断してよいだろう。
「……いよいよ、オルレアン。ジル・ド・レの蛮行、止めさせないと、な」
エトヴァの独り言は、
ディアボロス皆が、聞いていた。
そうだ、蛮行は止めさせねばならない。今は疲れ切っていたが……、
必ずや、ジル・ド・レを倒し、平和を樹立せねば。
ディアボロスたちは、強敵を倒した後に、改めて誓うのだった。
善戦🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【隔離眼】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV3になった!
【土壌改良】LV2が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
【使い魔使役】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV7になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ダブル】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV5になった!