リプレイ
クィト・メリトモナカアイス
ごんどっどっどどごんどっどっどど。
というわけで。再びやってきたぞゴンドワナ!
んむ。巨大神像を見つけてからもう1年くらい経ったろうか。
オベリスクで1台を最終人類史に運び、エネルギーの充填方法や解体組み立て方法を調べ。ようやくここで漕ぎつけた。かんがいぶかい。
前の実験のように右心房に金のケーブルを繋いでエネルギー充填したら分解始め。
獣神王朝エジプトでは人は蘇るものだった。
巨大神像の修復を復活とみなして、解体を死者の書に書かれた葬送の手順に沿って行おう。具体的には口や鼻など人体では穴にあたる部分や手足へ油を塗り、祭器……黄金猫拳打棒で触れながら祈りを捧げて分解してみよう。
んむ、一号機なので元々を踏襲してエジプトらしく。それでいて最終人類史らしく。
デザインのコンセプトは「金色をベースに青のラインが入ったエジプト風カラーリング塗装のキラリと光る金属装甲」でどうだろう。
愛称は「ナイル」。神が滅んでも大地の恵みは失われず。
見た目がエジプトだし、最終人類史の人でもエジプトって分かる名前がきっと良き。
フルルズン・イスルーン
元より本来搭乗してたクロノヴェーダを模してた神像だけど、生物的な側面があったのは搭乗者の同調式の操縦とは別に再生修復の為でもあったんだねぇ。
で、少ないロスで分解と再構築の模索と。
断面に保護用のラップでもかける? 人間も指切れたときは傷口を保護してるとくっつきやすいとかあるし。
とりあえずイート・ゴーレムくんおいでー。
では、エネルギーが各部位に生き渡った後【修復加速】をかけながら分解を行う!
なにやら矛盾してるけど、つまるところ直しやすいって効果が働いてるなら、修復に必要とされるエネルギーも抑えられるんじゃないか理論!
ではゴリゴリと関節部から外していこうか。
うーん、個人的には『胸部』・『腹部』よりは骨格的に見て『胸腹部』・『腰部』なんだけどねぇ。内蔵のバランス的な意味で腹部かな?
背骨パーツをどう分けるかで悩みそうだ。
あ、ボクは他の人のアイデア聞いてパーツをアートで調えて増設するよー。
こういう時は自分の発想より他の人の案を聞いて形にしたくなるものさ。
各々のイメージを思うがまま出力したまへ。
一里塚・燐寧
いやー、ついにこの時が来たねぇ
魂の故郷がエジプトのあたしとしちゃ、立ち会わずにはいられないよぉ
エネルギー充填完了後、≪テンペスト・レイザー≫の鋭い回転鋸刃でパーツ分解を手伝い装甲の装備へ
修復時に各部位に送るエネルギーのロスを防ぐため、分解したパーツ間、或いはパーツと心臓間に導管を造れないかなぁ?
装甲にチューブをつけるとか、実績ある「金のケーブル」を継ぎ目に仕込むとかでさ
最初の巨大神像だし、デザインはエジプトを前面に押し出した金ぴかファラオ風で行こう
頭部装甲をネメス頭巾のような形にして、ボディ各部にはヒエログリフでマーキングするよぉ
愛称は『キングネコ2世』!
ネコ2世は第26王朝のファラオで、ナイル川から紅海への運河開削を考えたり(但し頓挫)
フェニキア人と協力してアフリカ周航の船を送り出した、世界に目を向けた王様なんだよぉ
異国で戦う巨大神像にぴったりで響きもキュートでしょ?
2機目以降はエジプト風じゃないかもだし、今推したい熱意を示すため大勲章を使用
【オーラ操作】でファラオの如き覇気を放つよぉ
無堂・理央
巨大神像の天正大戦国持ち込み、一度は「無理でした」だった案件なんだよね。
他の人の提案含めて地道な積み重ねの結果、今回可能になった!
良かった良かった、大阪城攻めにも間に合って本当に良かった。
装甲は分解前に取り付けたものを認識するんだよね?
だとしたら、分解を前提にした装甲の張り方をしないといけなさそう。
分解しやすいようにしつつも関節部分を守れるように装甲の配置を考えてみよっと。
装甲の素材は他の人が金属をご所望だし、最終人類史の技術をふんだんに使った軽くて丈夫な合金にしちゃおう。
一機目は比較の兼ね合いも合わせて分解した関節部分に一切の細工せずに分解したらそのままパラドクストレインに乗せるね。
分解の手順とかも巨大神像毎に分けた方が比較研究できるかな?
それとも分解の手順は統一しちゃった方が分解方法や分解後の処置が違った際の使用エネルギーの差が分かりやすくなるかな?
文月・雪人
大坂城攻略への巨大神像投入は本当に有難い
俺自身は神像の研究は初めてだけど
千早城で得た経験も少しは役に立つだろうか
仲間と協力して作業を行いたい
ゴンドワナでの作業だし【怪力無双】は必要そうだよね
接合時に正確な再現を行う為にも
分解前の状態をよく確認し、記録用の写真や動画を撮っておこう
神像の心臓へエネルギー充填した後に分解作業を開始する
アブ・シンベル神殿で発見したという工具類も使いたい
装甲などのネジを外して分解可能な部分があれば
『ミイラの右手型特殊ドライバー』で外して分解しよう
神像が人体を模しているなら、骨の継ぎ目の位置を確認し
切断面がなるべく綺麗になるように『ハヤブサの羽根型切断器』で切断する
コードの切断面からエネルギー漏れがないかを『サソリ型エネルギーテスター』で確認し
『砂色の薔薇型コード接続器具』をコネクタとして使って止血出来ないかも検討したい
デザインや名前に関しては、なるほど一機目は、出身地のエジプト由来が人気なのかな?
ならばいっそ頭部にも、それっぽいイメージのマスクをつけてみたりとか?
野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎
『巨大神像』もここに来るまで多くの苦労があった筈です、関係者に敬意を表しつつ、大阪城の攻城に関わるという事でしたら僅かなりとも助力が出来ればと思います。
まずは解体作業ですね。
実物を確認してからになりますが、人体を模した物であるならば関節部分を上手く切り取る様に分離させたいです。
関節の可動域が干渉しない様に関節部分は装甲の面積が少ない可能性が高いと思います。
面積の少ない部分を選び出来るだけ断面を綺麗に斬れば修復のエネルギーも節約出来るのではないでしょうか。
《妖刀『鐵喰』》で斬って良さそうであれば斬らせてもらいましょう。
戦闘用クロノ・オブジェクトですから大変そうですね。
1機目は元のディヴィジョンであるエジプトのイメージを前面に出したデザインや愛称とする事に賛成します、デザイン詳細はお任せしつつ……耐久度は素材に左右されないとはいえ「神像」ですし装甲材は聖別した金属を用いるのはいかがでしょうか。
あまり詳しくないので聖別が大変なものだったら申し訳ないのですが。
月下部・小雪
つ、ついに巨大神像を使えるようになるん、ですね。
今までいっぱいやってきた研究の成果を見せる時、です!
こんな大きなロボットが現れて、大阪城の天魔武者さんがびっくりするのが楽しみです。
まずは『心臓』からエネルギーを注入です。
きちんと純金のケーブルで接続してロスを最小限にしますね。
次は分解、です。ここからは3機とも別々のやり方で試して、比較できるとよさそう、ですね。
ま、まずはシンプルに関節部分で、すぱーんといっちゃいましょう。
クロノ・オブジェクトなので意味ないかもしれませんが【一刀両断】も使ってみますね。
あっ、せっかく3機あるので、それぞれ筋力や頑健さが得意そうな見た目、
敏捷性や器用さが得意そうな見た目、賢さや魔力が得意そうな見た目にしてみるのもいいかも、ですね。
エジプトリスペクトの機体だと……賢さや魔力、でしょうか?
※アドリブ連携大歓迎
「ごんどっどっどど、ごんどっどっどど。というわけで、再びやってきたぞゴンドワナ!」
青空の下に広がる、巨獣大陸の雄大な大地。そこに横たわる3機の巨大神像を前に、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)がご機嫌のステップを刻む。
今日はクィトにとって待ち望んだ日だ。いや、彼女だけではない。巨大神像の作戦に関わって来た復讐者たちの積み重ねた時間と努力――それらが実を結ぶ、いわば念願の日だった。彼女たちは今回の作戦で神像を天正大戦国に移送し、再起動を行おうと言うのである。
「んむ。巨大神像を見つけてから、もう1年くらい経ったろうか」
ここまでに至る道のりを思い返し、クィトがしみじみと呟いた。
オベリスクで神像の1機を最終人類史に運び、エネルギーの充填方法、更には解体・組み立て方法を調査。そうして辿り着いたのが、今日の作戦だ。過去に確保した神像は起動こそ叶わなかったが、取り出された心臓部はエネルギーを充填した状態で、既に復讐者たちの前に運び込まれている。
いよいよ、巨大神像の起動作戦が始まろうとしている――その事実に、クィトの胸はわくわくと弾んだ。
「んむんむ。かんがいぶかい」
「いやー、ついにこの時が来たねぇ。魂の故郷がエジプトのあたしとしちゃ、立ち会わずにはいられないよぉ」
一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)もクィトの傍で、期待に笑顔を浮かべていた。
最初に分解作業を行う1機目の傍では、エネルギー注入に用いる心臓も設置を完了し、いつでも作業に取り掛かれる状況だ。その周囲では、諸々の準備に取り掛かる仲間の姿も見える。分解の方法によって修復に要するエネルギーが変動することもあり、その表情は一様に真剣だ。
「もっきゅっきゅ!」
「コダマ隊員、見回りお疲れ様、です!」
月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)が、モーラット・コミュのコダマに労いの言葉を送る。
周囲に巨獣がいないことを報せるコダマを抱きかかえると、彼女は感慨の吐息を洩らしつつ、巨大神像をクィトらと共に見つめた。
「いよいよ、ですね。今までいっぱいやってきた研究の成果を見せる時、です!」
時間と情熱をかけて起動に漕ぎつけた巨大神像。それが動き出す瞬間を焦がれるように、小雪の瞳がキラキラと輝く。
今回の作戦で起動に成功すれば、大阪城への実践投入は秒読みだ。動く神像を目にした『豊臣秀吉』の驚く様を想像し、ふふっと笑みを零す。
「西宮では、陽動のお祭りも始まりましたし……城攻めが楽しみ、です!」
「天下の名城vs巨大神像、絵になりそうだよね。それにしても一度は無理だった案件、よく実現できたねえ……」
追加装甲のパーツ類を検分しながら、無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)は最初に分解作業を行う神像――1号機と仮称されたそれを仰ぎ見た。
復讐者たちの提案と、地道な積み重ねで実現した今回の作戦では、神像の外観や愛称も変更可能となっている。分解後に神像の改装と命名を行い、心臓含む各パーツを貨物車両に積み込む――それがゴンドワナで行う作業の流れだ。程なく検分を終え、理央は準備完了の合図を送る。
「それじゃ、始めようか。皆よろしくね!」
かくして復讐者たちは、各々の持ち場へと向かっていく。
最初に着手するのは分解作業。エネルギー注入の支度が整う中、作戦の第一歩が始まった。
「純金ケーブルさん、接続確認! 注入開始、です!」
小雪の声を合図に、充填は開始された。
横たわる1号機と、その横に設置された神像の心臓。両者を繋ぐケーブルを介し、最終人類史で蓄えられたエネルギーが1号機の心臓右心房へと注入されていく。純金素材のケーブルでロスを減らしつつ充填が進む中、小雪はクィトと注入量の計測を始めた。
「エネルギーは3機均等に、ですね!」
「んむ。三分の一までもうちょい」
じきに充填が完了すれば、いよいよ神像の分解だ。
何時でも作業に着手できるよう、工具類のチェックを済ませたのは文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)。彼が使用するのは、かつてアブ・シンベル神殿より持ち出された品々であった。接続機器にテスター、ドライバー、切断器……いずれも効果は未知数だが、最終人類史のものに比べて効果が劣ることは無いだろう。
「写真と動画の撮影は済んで、切込みを入れる場所の選定も終わって……いよいよ解体か。緊張するね」
「ええ。人体を模した物ですし、関節部を上手く切り取って分離させたいですね」
ミイラの右手型特殊ドライバーを手に呟く雪人に、野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)が頷きを返す。
彼女は雪人と共に神像の関節可動域に目星をつけ、切込みを入れる場所を選定し終えたところだ。巨獣にも劣らない巨大な体躯を誇る巨大神像――かつて獣神王朝エジプト奪還戦ではジェネラル級巨獣さえ圧倒したと言うクロノ・オブジェクトの力に想いを巡らせ、裕樹はクィトたちに視線を移した。
(「……ここに来るまで、多くの苦労があったのでしょうね」)
クィトを始め、巨大神像の作戦に関わって来た復讐者たちへ、裕樹は敬意を込めた眼差しを送る。
主に天正大戦国で活動する彼女が今回作戦に参加したのは、自分の力が大阪城攻略の一助になればと思うが故であった。断片の王『徳川家康』が指名した次代の後継者が一体、『豊臣秀吉』。かの天魔武者が居城の大阪城を攻める際、巨大神像は頼もしい力となってくれるに違いない。
「本格的な戦いに向けて、しっかり成功させたいですね」
「そうだね。俺自身、神像の研究は初めてだけど……千早城で得た経験が少しでも役立つことを願おう」
裕樹の言葉に、雪人もまた頷いた。
分解が始まれば運搬も必要となるだろう。発動しておいた怪力無双は、今後の作業をスムーズに進めてくれる筈だ。
準備万端――そんな一言に相応しい状況が整う中、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は先程から食い入るような眼で巨大神像の全身を見回していた。分解前の姿と一時の別れを惜しむように、その瞳の輝きは一秒も陰ることが無い。
「生物的な側面があったのは、搭乗者の同調式の操縦とは別に、再生修復の為でもあったんだねぇ。で、少ないロスで分解と再構築の模索と。よく出来てるなぁ……!」
獣神王朝エジプト奪還戦で巨大神像を駆使する戦いに携わり、過去の神像に関わる依頼にも参加して来たフルルズン。そんな彼女にとって、神像の存在は未だ心を捉えて離さないようであった。と、そこへ、
「んむ、充填完了。では、やるぞー」
「お、いよいよだね。イート・ゴーレムくんおいでー」
クィトの合図が届くと同時、フルルズンは待ちわびたようにゴーレムを召喚、修復加速を発動した。
最大LVで使用できた奪還戦時とは状況が違い、望める効果は良くても応急処置程度だろう。とは言え、使って損は無い。いよいよ始まる分解と、装備品の増設、天正大戦国での修復・起動――これより始まる作戦に、彼女の好奇心は留まるところを知らない様子だ。
「よーし! それじゃあ分解、行ってみよう!」
充填完了に伴い、1号機からケーブルが取り外される。
かくして7名の復讐者たちは、巨大神像の分解に取り掛かった。
両手両足、胸部と腹部、そして頭部。
心臓と共に移送する7つのパーツの装甲を、雪人が神殿の工具で手際よく取り外していく。
抵抗なく装甲が外れ、まっさらな表面部が露わになる中、クィトは神像の頭部で厳かな祈りを捧げていた。
「んむんむ。んむんむんむ……」
祭器の『黄金猫拳打棒』を掲げた後、棒のまるい肉球で神像の口に触れる。
右手と右足、そして人体の穴にあたる鼻や口。猫拳打棒が触れているのは、その最後となる箇所だ。神像の修復を復活とみなし、獣神王朝エジプトにおける葬送の手順に沿って作業を進めようと言うのである。
「んむんむんむ……んむ! 祈りは終わり。やるぞー」
「装甲の取り外しも完了だ。始めよう!」
クィトと雪人が作業を完了すると同時、響くのはエンジンの子気味良い響き。それは鎖鋸剣『テンペスト・レイザー』が燐寧の手で駆動を始める音だ。
「ふふふ、腕が鳴るねぇ。このまま、スパッと行っていい感じ?」
「そうですね。ま、まずは両手の関節部分から、いきましょう!」
燐寧の問いに、小雪が頷きを返した。
神像が再建に費やすエネルギーは解体時の工夫で変化する。今後の運用を考える上でも、3機は異なる方法で分解・比較検討したいところだ。その為にも、1号機は出来る限りシンプルな方法で分解する――それが復讐者の方針であった。
「シンプルにすぱーんと、分解開始です!」
「オッケー! じゃあ始めるよぉ!」
同時、鎖鋸剣の回転刃が神像に滑り込む。
心地よい手応えと共に、刃を入れていく燐寧。それを皮切りに、続く6人も次々作業に取り掛かっていった。
「コダマ! ボクたちも作戦開始、です!」
「もっきゅ!」
コダマの応援を背に受けて、小雪もまた作業を開始する。
燐寧の刃で半ば以上断ち切られた手腕部に、『アクマの腕』で手刀を一振り。右の手腕部が景気良く切断され、ズズンと重い音を立てて分離された。
「やりました。切り離し成功、です……!」
「いい感じだね。じゃ、切ったやつは改装の作業場に運んじゃうよー」
切断した箇所を理央が数名の仲間と運び出す中、フルルズンと雪人は次なる作業に取り掛かる。本体の切断面で修復加速を使用した後、砂色の薔薇型コード接続器具で応急処置を完了。そうして一通りの流れを済ませた復讐者たちは、次の部位へと移り、着々と作業を進めていった。
「次は両足ですね。では……参ります!」
両手の解体を手際よく終え、さらに作業は進んでいく。裕樹は妖刀『鐵喰』を構えると、目星をつけた足の関節可動域へ一思いに刃を振り下ろした。
狙い定めた場所を寸分過たず、鐵喰の刃が神像の身体を断ち切る。続く雪人も、人間で言う骨の継目をハヤブサの羽根型切断器で奇麗に切断していった。程なくして切り離しが完了すれば、サソリ型エネルギーテスターでコード切断面の数値を計測。エネルギー洩れの参考用にデータを記入していく。
「結果が分かるのは後になるだろうけど……今は出来ることをやっておきたいからね」
「そうですね。戦闘用クロノ・オブジェクトと聞いて、難儀も覚悟していましたが……滞りなく進んで何よりです」
安堵を交えた口調で雪人と裕樹が言葉を交わし合う最中も、作業は着々と進む。
程なく、仲間たちと共に神像の両足を取り外すと、理央はそれらを改装作業場へ運び始めた。両足は分解が容易な箇所で切断されており、関節部を守る追加装甲なども問題なく取付出来そうだ。
「さてさて、どんな姿になるのかな……っと。こっちもそろそろ大詰めかな?」
両足の運搬を終えて戻ってみれば、ちょうど残った部分の切断が終わったところであった。
胸部、腹部、頭部に分かれた神像の傷口に、イート・ゴーレムを連れて応急処置を施すフルルズン。切断された断面部に荒く毛羽立った箇所があれば、愛用の鑢『ᚠᛁᛚᚨ』で磨きをかけていく。この後に行う作業の為にも、傷口は出来る限り奇麗にしておきたいところだ。
「よし、っと。これで切断は完了だ」
程なくして解体作業が完了し、作業場には全てのパーツが運び込まれた。
左右の手足、胸部と腹部、そして頭部の計7つ。当初の予定通り、心臓と共に天正大戦国へ移送する部位が、完全に切断された状態で揃えられている。
「うんうん、成果は上々かな? ゴーレムくんもお疲れ様!」
「つ、次はいよいよ1号機さんの改装と、命名ですね!」
「どんな姿になるのでしょうか。私も、今から楽しみです」
歓声を交わしながら、喜びを分かち合う復讐者たち。
そんな中、燐寧は切断されたパーツを前に、その断面をしげしげと見遣っていた。パーツとパーツ、或いはパーツと心臓の間に導管を造ることで、修復時のエネルギーロスを防げないかと考えたのだ。装甲にチューブを付ける、金のケーブルを継ぎ目に仕込む、等々……考えた案は幾つかあったが、こちらは組み立て時に試す必要がありそうだ。
(「効果ナシ、ってオチはない気がするんだけど……ま、天正大戦国で検証するようだねぇ」)
燐寧は気持ちを切り替えて、仲間の元へと向かって行く。
こうして復讐者たちは、次なる作業――神像の改装に着手するのであった。
「さてと、素材はこれで全部だね。じゃあ早速始めようか!」
分解された神像の周囲にずらりと並ぶ、加工用の金属。
最終人類より持ち込まれたそれは、理央の手で余さず配置を終えていた。用意したのは軽さと丈夫さを併せ持つ合金で、加工し易いよう工夫が為されている。裕樹の希望した聖別済みの金属も別途運び込まれており、装甲用の素材に不自由することはない。
分解された神像と比較しながら、案を出し始める復讐者たち。その様子を見守るフルルズンは、増設用パーツを滞りなく調えて、作業に移る準備を終えた後であった。こういう時に、自分よりも他人の案を形にする方が性に合っていることは、彼女自身承知の上である。
「さあ、各々のイメージを思うがまま出力したまへ」
装甲の作成にあたり、最初に決めるべきはイメージ案だ。東洋風や西洋風など、その方向性によって製作する物は大きく変わる為、ある意味最も重要な部分と言えるだろう。難航する可能性もフルルズンが想定したのも束の間、しかしさほどの時間を要さずに案は決まった。
「んむ、1号機なので元々を踏襲してエジプトらしく。それでいて最終人類史らしいデザインが良さげ」
「うんうん。やっぱ最初はエジプトがいいよねぇ」
「賛成です。エジプトのイメージを前面に出す案、素敵だと思います」
「せっかく3機あるので、“頑健”“敏捷”“賢さ”で、それぞれ見た目を変えるのもいいかも、ですね!」
1号機のイメージ案は『エジプト』。それは参加した復讐者たちが大なり小なり共有する思いだったらしく、異議の声も上がることなく、すんなりと決まった。
そうなれば、次に決めるべきは細部の装甲だ。
クィトは手持ちの紙を取り出すと、そこに自身のイメージを鮮明に描き出していく。金色をベースに青のラインが入ったカラーリング塗装の、キラリと光る金属装甲。エジプトに詳しくない者でも一目でそれと分かる、シンプルながらも主張の
籠ったデザインだった。
「んむ、こんな感じでどうだろう。……そう言えば、カラーリングは変更可能? 作業前に、そこは知りたみ」
「問題ないと思うよ。最悪、上から塗装すれば良い訳だしね」
首を傾げるクィトに、フルルズンが答える。
装甲類は修復時にクロノ・オブジェクト化するが、そこでカラーリングが何かしらの制限を受けることは無い。色も含め自由に決めて大丈夫だと分かれば、次に手を挙げたのは燐寧である。
「エジプトを全面に押し出したデザインと来たら、ここは金ピカファラオ風で行きたいねぇ。こんな感じで!」
そうして彼女が描いたのは、豪華な巨大神像のイメージだ。
頭部にはネメス頭巾を模した装甲。さらにボディ各部にはヒエログリフの塗装。金色の輝きを全身に帯びる巨大神像は、きっと見る者の眼を奪う立派な姿となるだろう。情熱の溢れる燐寧の絵を見て、雪人は賛同の頷きを返した。
「頭部にエジプト風の装甲か……俺も同様の案を考えていたし、いいと思う」
「私も、面白いと思います。デザインも素敵ですし……正直、豊臣秀吉の反応も楽しみですね。史実の彼は金などの派手なものを好んだそうですから」
「ふむふむ。それじゃあ皆、エジプト風の案でいいかな?」
続く裕樹とフルルズンの言葉にも、異議の声が上がることは無く。
かくして1号機のデザインが決定すると、復讐者たちは改装作業に取り掛かり始めた。
一般の素材を駆使した作業ということもあり、それからの作業は流れるように進んでいった。
用意された金属を加工し装甲用パーツを作成。ネメス頭巾を模したそれを筆頭に、完成した装甲をボディ各部に装着し、仕上げにヒエログリフの塗装を行えば、出来上がったのは金色に輝くエジプト風の巨大神像パーツである。後はこれを心臓と一緒に貨物車両に積み込めば、1号機の移送準備は完了だ。
「さて、じゃあ最後に愛称を決定しないとね。誰か、案のある人はいる?」
「はいはいはいっ! あるよぉ!!」
理央が言い終えると同時、勢いよく挙手したのは燐寧であった。
その全身が放つ覇気は、ファラオもかくやと感じるほどに熱く威厳に満ちたもの。彼女の熱意は、魂に刻まれた大勲章の輝きと共に、圧倒的な力を帯びた言葉となって紡がれていく。
「実はねぇ、とっておきの名前があるんだよぉ。最高にキュートでカッコいい、これしかないって名前が!」
「ほうほう、気になるねぇ。どんな名前なんだい?」
興味を示すフルルズンを筆頭に、6人の視線が集中する。
その中心で、燐寧は堂々と胸を張って告げた。エジプトの全てを統べる偉大なる王のように。
そうして彼女の口から紡がれる、巨大神像1号機の新たな名前。それこそが――。
「『キングネコ2世』! どう、素敵でしょ?」
ネコ2世。
それは最終人類史における、エジプト第26王朝のファラオの名でもある。
フェニキア人と協力してアフリカ周航の船を送り出した、世界に目を向けた王。その偉大さ、そして可愛さを持つ響きの名前は、まさに異国で戦う巨大神像に相応しい――そう語る燐寧の言葉は有無を言わさぬ説得力を帯びて、1号機に新たな愛称を授けることとなった。
「キングネコ2世さん……いい響き、です!」
「それでは、最初の作業は完了ですね。残る2機の名前も、今から楽しみです」
「んむ。頑張るぞー、えいえいおー」
そうして復讐者たちは、改装を施したパーツを心臓と共に貨物車両へ積み込んだ。
1号機改め『キングネコ2世』の作業を終えて、次なる目標は2号機の分解である。そこで授けられる新たな姿と名前は、果たして如何なるものと成るのだろうか――。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【通信障害】LV2が発生!
【修復加速】LV1が発生!
【一刀両断】LV3が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV3が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
無堂・理央
それじゃ、次の巨大神像分解作業いってみよー!
巨大神像の解体作業、ボクも思い付いた事があるけど今回は見送っとくね。
複数の対応を一気にやると比較検証し難いし。
念の為、【操作会得】で制作者残留思念のサポートを受ければ解体効率が少しは分かるかな?
二号機は天正大戦国にちなんで鎧武者な外見にしちゃおー。
朱色をメインに黒で縁とかにラインを入れた装甲で鎧を作ってくね。
参考にするのは当世具足、構成の基本になる板札はネコ2世でも使った合金の板を使い繋ぎ紐にはワイヤーで板札同士や板札と必要な部品とを繋いでいこう。
盾代わりの袖や草摺もしっかり組み上げて頭部は頭形兜って言われてる兜を被った形にするよ。
篭手に手甲に脛当てとかもちゃんと再現していかないとね。
名前は装甲の色から「朱鉄(あかがね)」とかどうかな?キラキラネームっぽいかな?
三の文字を入れるなら「朱鉄三郎太(あかがねさぶろうた)」って武家の名前っぽくしちゃえるかな?
文月・雪人
順調に進んで良かった
次もこの調子で頑張ろう!
アブ・シンベル神殿の工具類は引き続き使いたい
そして分解後の処置に関しては
試したい事があるんだけど、どうかな
序盤は1機目と同じく
装甲を外し、関節部分を綺麗な断面で切断し
コード断面に『砂色の薔薇型コード接続器具』を付けて
切断面の修復加速と応急処置を行ったら
今回は更に一工夫
各切断面に取り付けた薔薇型コード接続器具同士を金のコードで繋ぐ事で
『分解後もエネルギーの循環経路を繋いだ状態で運搬する』事も試してみたいなと
人体の場合、血液循環が止まれば細胞の壊死が進み
時間が経つほど再接続は難しくなる
巨大神像の場合は、部位の劣化の心配は低そうだけど
金コードのエネルギーロスも踏まえつつ
循環を維持するべきか止めるべきか
何方の方が復活時の心臓への負担が少ないか
試せたらいいなと
装甲は、天正大戦国での戦いに備えて鎧武者風はどうかな?
城取合戦でも絵になると思うんだ♪
前立てに時計デザインも推したいよ
朱鉄、いい名前だね!
ならば合わせて
朱鉄時三郎(あかがねときさぶろう)とか、どう?
クィト・メリトモナカアイス
キング〜キング〜、我らの〜キングネコ2世〜。
んむ! それでは次の分解!
特に記載のない部分に関してはキングネコ2世の分解方法を踏襲。
後で比較してどれが効果があったのか?の分析をしやすくしよう。
というわけで。
キングネコ2世はパーツの切り離しを両腕、両足、腹部、頭部と進めたわけだけど。
これを逆順にして分解を進めたい。
頭部といえば脳。ロボ的にいうとしーぴーゆー。
最初に頭部と心臓を離せば、心臓から各部位へエネルギーを送る命令みたいなのが出なくなって、エネルギーの流出を抑えられるかも。
もしキングネコ2世と比べてエネルギー消費が多くとも、「分解は末端より行う方がエネルギー消費量が少ない」という結論は出せる。
んむー、とりあえず確定している用途は大阪城攻め。
実際の運用第一号は戦国でだろうし、いい感じに好みのでざいんにするとよいぞ。
一号機がキングネコ2世だったし、愛称はどこかに数字を入れるのも良いかも?
◯◯三號みたいな。
なんばー1が飛んでる?
なんばー1はオベリスクで運んできて研究に使ってるやつということで。
月下部・小雪
1号機、『キングネコ2世』さんの分解は完了、ですね。
続いて2号機の分解に着手しましょう!
バッテリーの心臓から2号機の心臓に残りエネルギーの半分を注いだら分解開始、です!
なるべく最初と同じように分解をして……今度は切断面に色々と細工をしてみましょう。
心臓から繋がっていると思われる血管相当のケーブルの断面をまずは塞いじゃいます。
純金ケーブルとは逆に、エネルギー効率の悪い素材があったら、それを包帯替わりにしてみましょう。
ゴンドワナで修復できないくらい壊れちゃってた神像は、破損個所からエネルギーが漏れちゃってたんじゃないかって、思います。
傷口をふさぐことで少しでもエネルギーのロスがなくなればって考え、です!
次は2号機のお名前、ですね。
今度は天正大戦国をモチーフにするということで了解、です!
や、やっぱり武者姿の装備を準備した方がいい、でしょうか?
かっこいい兜を作って2号機さんにプレゼント、です。
お名前は、ボクも3の数字を入れたい、ですね。
『朱鉄参號』を推して、みます!
※アドリブ連携大歓迎
野本・裕樹
キングネコ2世、良い名です。
次は2号機ですね。
比較検証したい部分以外の手順はキングネコ2世と一緒にした方が良さそうでしょうか。
斬るのは慣れていますから頑張りますね。
そういえばケーブルはなぜ純金が良いのか考えていたのですが純金の優れた点は品質の劣化のしにくさなのですよね。
古代エジプトでは神聖視されたり不滅の象徴とされたとも聞きます。
切断後の処置として切断した面の純金での保護を試す事は出来ないでしょうか?
鎧武者の外見ならば天正大戦国での戦いにおいて心理的な効果もあるかもしれませんね。
その上に赤備えともなれば目を引くのは間違いないでしょう。
戦場で目立つ朱は精鋭の証、良いと思います。
名前は2号機ですし赤備えなら「源二郎」とかもアリかと思ったのですが数字が被りますね。
因みに「源二郎」は真田幸村から。
大阪の陣でも攻守が逆とはいえ縁がありますし、悪くないかなと思ったのですが。
3の付く良い案も思いつきませんし、お任せしますね。
フルルズン・イスルーン
では次の巨大神像に移る!
今度は【活性治癒】だね。構造物扱いしといてなんだけど、ここで突然生きものとしての性質があると言われるかもしれないし。
ま、差異を作ってエネルギーの充填具合を確かめるのも目的だ。多少突飛でもやってみるものさ。
と言うことでメディスン・ゴーレム。癒しの力をー!
ちなみに【活性治癒】は同作業するみんなにも発動するものとする。
まあ本来の使い道とは違うんだけど、この手の作業って疲れるからね。
ちまちまとリマインドで今回はどういう作業にしたかも記録として残しておこう。
面倒くさいは作業の大敵さ。給水所にドリンクも置いて補給の機会を増やそうね。
新宿島のオベリスクで24時間ぶっ続け作業とかもあったけど、ディアボロスといえどゴンドワナの気候もある。
ゴーレムくんもメンテがなければちゃんと動かないのだ。
そして今回もボクはアートで整える!
好きなものをどしどしと挙げたまへ。形にしてしんぜよう。
1号機改め『キングネコ2世』の作業を終えた復讐者たちは、次なる神像の分解に向けて準備を進めていた。
作業内容は1度目と同様だ。バッテリー用の心臓でエネルギーを充填し、分解作業を実施。然る後に改装・命名を行うという流れである。
「キング~キング~、我らの~キングネコ2世~」
1号機の新たな名を、ご機嫌で口ずさむのはクィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)。彼女を含む復讐者たちにとって、名前を得た神像は今まで以上に大事な仲間になっていた。
「キングネコ2世、良い名です。次は2号機ですね」
「うん、順調に進んで良かった。この調子で頑張ろう!」
二回目の分解に向けて準備が進む中、野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)と文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)が次なる巨大神像に目を向ける。その心臓部は既にバッテリーと接続され、チャージ完了を待つばかりだ。
「『キングネコ2世』さんの分解は完了、ですね。充填も後少しで終わり、ます!」
前回に引き続きチャージ作業を行いながら、月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)は瞳を期待でキラキラと輝かせる。
一回目はシンプルなやり方で分解を行ったが、今後の運用に備えた比較検証という意味では、今回・次回と異なる方法で分解を行いたいところ。仲間たちも考えは同じらしく、全員が準備を整えてすぐにでも作業を開始できる状態だ。果たして数分後、小雪が仲間たちに合図を送る。
「2号機さん、充填完了、です!」
「了解だよ。じゃあ、まずは装甲からだね」
バッテリーの3分の一をきっかりチャージし、分解可能となった2号機。
そこへ雪人が、前回同様にアブ・シンベル神殿の工具を手に装甲の取り外しを開始していく。他の仲間たちも、解体用の武装を持って切断ポイントを選定する者、残留効果の準備をする者……全員が前回の作業と同じ顔ぶれということもあり、その動きは驚くほどスムーズに進んでいった。
「ふむふむ……残留思念は現れないか。ちょっと残念だけど、仕方ないね」
そんな中にあって、無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)は操作会得の不発に軽く肩を竦めてみせた。
製作者のサポートを受けることで解体効率が上がるかも知れない――そう期待しての行動であったが、
「分解作業は『操作』に該当しない……ということかもね。気を取り直して、分解いってみよー!」
「装甲の取り外しも完了だ。いつでも行けるよ」
「んむ! では、やーるぞー!」
理央の横で声を揃え、黄金猫拳打棒を掲げたクィトが開始を告げる。
かくして復讐者たちの手によって、2度目の分解作業は進められていった。
「さーて、いよいよ2号機の番だね。腕が鳴るぞー」
横たわる神像の巨体を眺め、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は呟いた。
切断する箇所は一度目と変わらないが、今回は異なる残留効果の使用を彼女は考えていた。修復加速ではなく、活性治癒を用いようと考えたのである。
「もしかすると、実は巨大神像は生物だった……なんて可能性も有り得るし。多少突飛でもやってみるものさ!」
神像ごとに差異を設ければ充填具合を確かめる指標にもなるだろう。それに何より、試せる可能性は何でも試したい――そんな情熱に突き動かされ、フルルズンはメディスン・ゴーレムを召喚。切断作業の開始された神像の切断面に、活性治癒を発動し始めた。
「そういえば、今回は首からなんだね?」
「んむんむ。キングネコ2世とは逆の順」
早くも仲間たちの手で切り離されていく頭部を見上げながら、クィトが頷きを返す。
切断の方法は前回と同様に、かつ解体の順番を逆にする――それが、2機目の分解作業の方針だった。すなわち、頭部、腹部、両足、両腕。この順にパーツの解体は行われる。
頭部は人間の身体では脳の存在する部位であり、マシンならばCPUに該当する部分だ。最初にそこを心臓から離せば、各部位へのエネルギーを送る命令が早期に止まる。つまり、エネルギー流出を低く抑えられるかも知れない――そう考えたのだとクィトは言う。
「んむ。もしキングネコ2世と比べてエネルギー消費が多ければ、『分解は末端より行う方がエネルギー消費量が少ない』という結論を出せる」
「ど、どんな結果が出るのか、楽しみ、ですね……!」
全ての結果が分かるのは先の話だが、そうなれば俄然期待も高まると言うものだ。小雪は前回に引き続き、アクマの力を開放して放つ手刀で神像の巨体に切り込みを入れて、他の仲間たちと共に解体していく。二度目となれば手慣れたもので、程なくして頭部から腹部、腹部から両足と、作業はスムーズに進んでいった。
「うんうん、いい感じだ」
理央は周囲の状況を確認しながら、順調な進捗に満足の笑みを洩らす。個人的に試したい解体方法を思いついていた彼女だが、比較検討のことを考えると対応が多すぎるのは望ましくない。自身のアイデアは次回に回し、サポートに専念すると決めていた。
「さて。これで残るは両手だけかな。さぁ、スパッとやっちゃおうか」
「そうしましょう。斬るのは慣れていますから、一息に行きますね」
裕樹が刀を振るい、ものの見事に右腕を切断する。反対側の左腕でも、雪人が工具で解体を終えた所だった。
「一度やったおかげで、だいぶコツが掴めた感じがするね。……よし、これでパーツは全部分けられたかな」
鏡のように切断された断面を見澄まして、満足の吐息を洩らす雪人。
そうして7つに分割されたパーツを前に、復讐者たちは早速次の作業に移っていく。改装を行う前に、ある処置を神像に施すことを彼らは決めていたのだ。
「今回は、切断面に細工をして、みましょう!」
2号機の分解を滞りなく完了すると、小雪は改装前の追加作業に着手していった。
人間の身体で言う動脈に該当すると思しき太いケーブルを塞ぎ、純金以外の素材を包帯代わりに巻きつけていく。かつてゴンドワナで回収した神像が修復不可能だったのは、破損個所からのエネルギー漏出にあったのではないか――そう仮説を立てた上での試みである。
「傷口を塞ぐことで、エネルギーのロスが無くなればって考え、です」
「うんうん、思いついたことはどんどん試していこー!」
フルルズンは断面に活性治癒を施した後、一連の作業内容をリマインドで記録していた。
今後の比較検討などを行う上で、データは少しでも大いに越したことは無い。空いた時間を利用して設営した給水所にはドリンクも完備してあり、時折休憩がてら喉を潤す仲間の姿も見えた。ゴーレムにメンテが欠かせないように、復讐者にも適度な休息は必要というのが彼女の持論だ。
「ゴンドワナの気候を考えれば、水分補給はこまめに……おや?」
ふと視線を移した先、別バーツ傍では、何やら仲間たちが難題に突き当たったらしい様子が見えた。神殿の工具を持った雪人と、彼の作業を見守るクィトと裕樹である。
「……これは少々、想定外の事態だね」
「んむ。んむむむむ……」
「そうですね。さて、どうしたものでしょうか……」
眉を寄せる二人の傍、切断されたパーツのケーブルは、すでに裕樹が純金による保護を始めていた。小雪のそれと同様に覆われた断面を前に、思索を巡らせるのは雪人だ。切断後のパーツ同士を神殿の接続器具で接続し、循環経路を繋いだ状態で運搬したい――そんな彼の狙いは、しかし一つの壁に突き当たったのだ。
「……無理そうかな、これは」
「んむ。大きすぎて、積み込めぬ」
そう、サイズの問題である。
分解状態ではない巨大神像は、大きさで言えば巨獣とほぼ同じ。積載できるだけの容量が、パラドクストレインには存在しないのだ。クィトがサイズを測定した上で色々試しても結果は変わらず、雪人は頭を抱えた。
神像を人体に見立てた分解で、重視した要素の一つがエネルギーの循環だ。ケーブルからの流出が少ない状態を維持できれば心臓への負担も減り、ロスも減らせるのでは……そんな案が、現状では実現困難であることを認めざるを得なかった。
「とは言え、ここで諦めたくはない。こうなったら、少し荒っぽいけど……」
雪人は気を取り直すと、切断部分でエネルギーが循環するよう接続を行うことにした。当初とはやや違う形になったが、これで上手く行くことを願うしかない。程なくして裕樹の純金による保護も終わり、想定外の事態は多少あったものの処置は問題なく終わる。
「よし。後は効果があることを願うだけだ」
「お疲れ様でした。きっと、上手く行きますよ」
作業を終えてほっと一息つく雪人に、純金でケーブルの保護を済ませた裕樹が微笑んだ。
かつて古代エジプトでは神聖視され、不滅の象徴とされたと言う純金。その力が神像を守ってくれることを祈りながら、裕樹は雪人やクィトと共に作業を完了するのであった。
そうして諸々の処置が完了すれば、次なる作業は神像の改装である。
前回同様、アート担当はフルルズン。今度はどんな案が出るのかと、早くも彼女は興味津々の様子だ。
「さー、好きなものをどしどしと挙げたまへ。形にしてしんぜよう!」
「んむー、とりあえず確定している用途は大阪城攻め。いい感じに好みのでざいんにするとよいぞ」
フルルズンの隣で、クィトもんむんむと頷く。
キングネコ2世のデザインはエジプト風と来て、2号機のそれはどうなるか――復讐者たちの間で期待が高まる中、挙手したのは雪人と理央であった。
「装甲は、天正大戦国での戦いに備えて鎧武者風はどうかな?」
「ボクも賛成! 鎧武者な外見にしちゃおー!」
天魔武者相手の戦いとなれば、やはり武者のデザインは外せない。雪人と理央の出したアイディアを、フルルズンは早速イメージ案に落とし込んでいく。
装甲のカラーは朱色をメインに、黒で縁にラインを入れたもの。
モチーフとする鎧は当世具足で、板札の素材にはネコ2世でも使った合金の板を使い、繋ぐことで使用する。修復に伴うクロノ・オブジェクト化までは、板札や部品同士を繋ぐ紐には頑丈なワイヤーを用いることとした。そうして描き出されていくイメージに、仲間たちの眼はたちまち釘付けになっていく。
「朱い鎧に身を包む巨大神像か。カッコよさそうだね!」
「そうですね。鎧武者の外見ならば、天正大戦国での戦いにおいて心理的な効果もあるかもしれません」
フルルズンの言葉に、頷きを返したのは裕樹だ。
『豊臣秀吉』と配下の待ち構える大阪城。そこに攻め入るは、朱色の装甲に身を包んだ2号機の勇姿――そんな光景が、彼女の脳裏に鮮明に描き出される。鎧武者という外見もさることながら、それに劣らず彼女の想像力を刺激したのは、朱色というカラーリングであった。
「赤備えともなれば、目を引くのは間違いないでしょう。戦場で目立つ朱は精鋭の証、良いと思います」
裕樹の熱意に触発されたように、雪人と小雪も頷きを送った。
「朱色の巨大神像か……いいね、城取合戦でも絵になりそうだ♪ あ、前立てに時計デザインも推したいよ」
「武者姿の装備、ですね。かっこいい兜を作って2号機さんにプレゼント、です!」
そうして神像のコンセプトが『朱色の鎧武者』に決まると、細部のデザインも滞りなく決まっていった。
兜は戦国武者らしい頭形兜、前立てには時計の意匠、そして盾代わりの袖や草摺、篭手に手甲に脛当ても組み上げれば、デザインは完成だ。
「いや素晴らしいね。人間の鎧武者が、本当にそのまま大きくなった感じだ」
「ふふふ、今から完成が楽しみだねー。それじゃ、始めよっか!」
描き上がったイラストを前に拍手が上がる中、さっそく素材の加工作業に取り掛かる復讐者たち。
こちらも一度目の作業と同様、完成にはそう長い時間を要することなく。分解された2号機のパーツには、全ての装甲が取り付けられるのであった。
「さて……改装も終わりましたし、いよいよ最後ですね」
朱色の装甲を取り付けられ、積込を待つばかりとなった2号機。その機体を前に告げる裕樹の言葉に、仲間たちは同意の頷きを返した。注入、分解、改装――それら作業が完了し、着手するのは命名作業である。
「んむむ。愛称はどこかに数字を入れるのも良いかも?」
1号機がキングネコ2世だったし、と呟くのはクィトだ。運用する神像が3機存在することを考えると、ナンバリングで各機の差別化を図るのは良いアイディアと言えそうだった。早速仲間たちが名称を考え始める中、裕樹は叩き台として一つの案を挙げる。
「2号機の赤備えであれば、真田幸村の『源二郎』も……ああ、でもそれだと数字がキングネコ2世と被りますね」
「んむー、それなら◯◯三號みたいな。なんばー1は、オベリスクで運んできて研究に使ってるやつということで」
数字は1と2を除いた数字を用い、名前には武者を連想させる呼称――そんな方向で更に議論が進んでいく中、次に手を挙げたのは理央であった。
「装甲の色から『朱鉄(あかがね)』とかどうかな? キラキラネームっぽい?」
「朱鉄、いい名前だね! ならば数字を合わせて『朱鉄時三郎(あかがねときさぶろう)』とか、どう?」
そこに雪人も加わって、命名作業は更に進んでいく。
色と数字という二つの明確なコンセプトは、シンプルかつ個性を感じさせるものだ。フルルズンは候補名をリストアップし、確認を兼ねて仲間たちを見回した。
「朱鉄という呼称、それと3のナンバリング。このふたつは確定で良さそうだねー。他に案のある人、いるかな?」
もう一押しで、2号機の命名は決定する――。
そんな空気が漂う中、手を挙げたのは小雪だ。
「『朱鉄参號』を推して、みます!」
カラーリングには理央の『朱鉄』を。数字には雪人の『3』とクィトの『號』を。
それらを組み合わせ、小雪がアレンジを加えた呼称に、異論が出ることは無く。フルルズンは6人の総意を確認し、パンと手を叩くと、2号機の新たな名前を告げた。
「よーし! それじゃ『朱鉄参號』に決定ー!」
「朱鉄参號か……良い名前だね。キングネコ2世ともども活躍が待ち遠しいよ。さて、そしたら……」
「んむ。3号機の分解、やるぞー」
かくして雪人とクィトを始め、復讐者は次なる仕事に取り掛かる。
キングネコ2世、そして朱鉄参號。2機の分解・改装・命名が終わり、残るは最後の1機のみだ。
巨獣大陸ゴンドワナと天正大戦国、ふたつのディヴィジョンを股に掛た巨大神像の分解移送作戦。その作業は、いよいよ山場を迎えようとしていた――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【操作会得】LV3が発生!
【修復加速】がLV3になった!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
一里塚・燐寧
おー、気が付くと三機目だねぇ。これで最後かぁ~
あたしはもうまともな妙案が思いつかないから、ここは奇策!
作業中、神像を動かしてる時みたいに自分のエネルギーを供給してみたら実質的にロスを抑えられたりしない?
……んまー無理そうならやんないけどさ
ゴンドワナモチーフなら、あたしはハンターよりむしろ巨獣そのものに近い方も考えてみようかなぁ?
ほら~。怪獣特撮じゃ怪獣を模したロボットって大定番じゃん!
頭部を肉食恐竜の獰猛な顔のような形状にして、腕と脚の装甲には分厚い爪をつけ、可能ならスタビライザーとして尻尾状のパーツもつけることを提案するよぉ
まさに映画のメカ怪獣の着ぐるみみたいなカンジ
狩人案に決まるなら巨獣の素材を使った装備ってイメージになるだろーから、そこと調和する部分を選り抜いてもらってもいいかもねぇ
名前は……ここまで来たら全部数字要素入れちゃおっか
ラテン語の「quadri-」(4つの)と「rex」(王)を混ぜて「クアドレックス」とかどぉ?
ティラノサウルス・レックスっぽさもあって、中々イケてなぁい?
月下部・小雪
『朱鉄参號』、2号機のお名前も無事に決まって、残りのエネルギーを最後の3号機に注入開始です。
これが現時点で修復できそうな最後の巨大神像さん、ですね。
分解手順は1回目、2回目を踏襲しつつ、またまた色々試してみます。
関節以外を切断するのは、研究のために持ち帰った時に試した手順、ですね。
あの時は復元方法がわかりませんでしたが、今回もチャレンジしてみましょう!
後は、コクピットに誰か搭乗したままで移動させてみましょうか。
ふぅ、無事に分解できましたね。後は名付けと改装です。
ボ、ボク、3号機はゴンドワナモチーフにしたい、です!
とてつもなく大きなキングゴンドワナさんとの決戦で、きっと大活躍してくれるはずです。
見た目は巨獣を狩るハンターさんなので、迷彩柄にしてみるのはどうでしょうか?
後は巨獣から剥ぎ取ったような武器や防具なんかもいいかも、です。
お名前は巨獣の王様を狩る者……キングハンターとかどうでしょうか。
これに数字の4を足して……『キングハンターⅣ』というお名前です!
※アドリブ連携大歓迎
無堂・理央
最後の巨大神像分解、いってみよー。
分解手順等々はネコ2世分解手順を基本に進めるね。
ボクが分解で試したい事は「関節を切らずに残す」分解だね。
曲がる部分を避けてその近くを切り離しての分解、多分だけど切断面積は先の二機分より多くなるだろうし消費エネルギーも増える可能性が高い。
けど、可能性止まりだからその点を確定させちゃおう。
作業中の雑談として巨大神像のあれこれ。
この三機以外を復元しようとしたら専用の設備とかが必要なんだよね。
でも専用の設備とかは獣神エジプト王朝と共に消えさったと。
普通に考えればもう施設は手に入らないんだろうけど、攻略旅団の提案次第ではいけるかも?
断頭革命グランダルメのナポレオンが機械化ドイツ帝国に繋げたようにオベリクスで歴史の奪還戦中の獣神エジプト王朝に道を繋げるとかさ。
っと、分解作業終わりだから雑談も終了っと。
三機目の愛称、流れだと4が入るんだよね。
今度は捻ってクワトロとかテトラとか4を意味する言葉を入れちゃう?
クィト・メリトモナカアイス
朱~鉄~参號~、朱~鉄~参號~。飛び立て、戦え、朱~鉄~参號~。
というわけで。
3号機の分解を始めよー。
キングネコ2世、朱鉄参號とは別のやり方をしたい……のだけど。
……んむ、思いつかぬ。
というわけで「分解した後の処理」を試してみようと思う。
【アイテムポケット】より取り出したるはー、氷。あと氷。そして氷。最後にびにーる袋。
この氷をびにーる袋に詰めて。この氷嚢で断面を冷やしながら移送する。
ずばりエネルギー凍結さくせん。
もしかしたらもっと冷やす方がいいとかあるかもしれぬけど。
その辺りの詳細は「冷やすと相対的にエネルギー消費が減るかどうか」を見てからでも良いと思う。
ふんむー、むむむむむ……ぴきーん。
それじゃあ鱗風の装甲にするのはどうだろう。
鱗状の小さな装甲を重ねて甲殻風に。肩とかには装飾を加えてーちょっと大きめに作ってかっこいい鎧みたいな雰囲気で。
手足の爪装甲はあるとかっこよさそう。
こう……モンスターのハンター的な。そんな防具。もとい装甲。
んむー、ここまできたら4は欲しい。
野本・裕樹
朱鉄参號、天正大戦国での活躍に期待ですね。
3機目も頑張っていきましょう。
今更ですけれど安全な作業の為に【平穏結界】を張っておきますね。
ゴンドワナではここまで来れば心配は無いと思いますけれど、天正大戦国でもきっとこの残留効果の出番はある筈ですから。
基本的な手順はこれまでと同じように行っていきましょう。
今度は保護ではなく分解の方にも目を向けたいと思います。
それぞれの部位の継ぎ目で分離させたいですが、関節可動域以外に継ぎ目があるならばそちらでも分離を試したいです。
修復に要求されるエネルギーが面積によるものならばこれまでの方が効率が良さそうですが、関節という複雑な機構のある部分を切断せずに残しておく事もまた修復のエネルギーに関わる可能性はあるかもしれませんね。
順当にいくと次は名前に4が入りますけれど、どうしましょうか。
文月・雪人
朱鉄参號、中々凛々しい感じに仕上がったね。
起動させるのがめっちゃ楽しみだよ。
にゃふふ、3機目も引き続き頑張ろう!
アブ・シンベル神殿の工具の使い方も、だいぶ慣れてきたかな。
そういえばエネルギーを移すケーブルに関してなのだけどね、
最終人類史で用意した純金製のケーブルと、巨大神像に使われているケーブルでは、
エネルギーの伝導効率はどれぐらい違うのだろう?
今後の参考にしたいし、可能なら、
『サソリ型エネルギーテスター』で測定して比較しておきたいな。
あと、切断後の処置に関してなのだけど、
人体の場合、切断部位の劣化を防ぐには、とにかく冷やしておく方がいいらしくてね、
『温度を下げる』という手もあるのかなって思ったのだけど、
どうやらクィトも同じ考えっぽい?
冷却には、【アイスクラフト】で出現させた氷塊を割って使えたらって思うよ。
ふうむ、名前に関してはやっぱり、4の数字は入れたいよね。
ゴンドワナモチーフもカッコ良さそう。
フルルズン・イスルーン
よーしよし、ではまずは解体の手法からだね。
今回は【無鍵空間】だ。無理やり外してるけど、実はパズルめいた正規の分解方法が存在する論!
あるなら研究で既に言及されてる? オベリスクでやってるからねぇ。
さてリング・ゴーレムくんおいでー。
新宿島文明で見るなら、毎回カッターで斬るよりアタッチメント構造化で特殊な工具なしで取り外しと接合もありかもしれないという視点。
内部コードをソケット式にするなり、関節部をジョイントボールにしてガッチャンコするなり。
ただし耐久性に難がでるのと、そもそもアタッチメント構造を認識しない可能性が高いのだ。
多少のエネルギーロスがあれど、生物的な接合は耐久的な意味で素晴らしいことさ。
可能性の模索だけは一応ね。
そして今回もボクはアートをする。
ボクはそのために来てるといっても過言じゃないのだ。巨大神像は色々手伝ったからというのもあるけどね。
来れなくても作るぞよよよ。
巨獣大陸ゴンドワナを舞台に進む、巨大神像の解体作業。
機能を停止した神像は順調に分解・改装・命名が行われ、ついに最後の1機を残すのみとなっていた。
「朱~鉄~参號~、朱~鉄~参號~」
作業場に声を弾ませて、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)が2号機の新たな名前を口ずさむ。これから始まる3号機の作業が完了すれば、いよいよ作戦は山場だ。天正大戦国での再起動に向けて、彼女を含む7人の復讐者たちは着々と準備を進めていった。
「飛び立て、戦え、朱~鉄~参號~」
「凛々しい感じに仕上がったよね。起動させるのがめっちゃ楽しみだよ」
クィトの歌に微笑を浮かべ、移送待ちの2号機改め『朱鉄参號』に文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)が視線を向ける。朱鉄参號は装甲のデザインに関わった経緯もあって、思い入れは深い。これから始まる作業を終えたら、和泉国でまた会おう――そう誓う彼の手元には、既に神殿の工具がきっちり揃っている。
そうして視線を移した先には、手つかずの姿で横たわる3号機の姿があった。巨大神像の分解もいよいよ最後とあって、仲間たちの感慨も一入である。一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)も、その一人であった。
「おー、気が付くと三機目だねぇ。これで最後かぁ~」
1号機改め『キングネコ2世』はエジプト風の姿、そして2号機改め『朱鉄参號』は戦国武者風の姿。三機目であるこの機体が、果たして如何なる姿に生まれ変わるのか――それを思うと、今から楽しみで仕方ない。神像の顔を仰ぎ見て、燐寧はてきぱきと支度を進めていく。
「やー、ワクワクしちゃうねぇ。頑張ろうねぇ!」
「ええ、本当に。今回も宜しくお願いします」
期待に声を弾ませる燐寧の横で、平穏結界を発動した野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)が頷いた。幸いにして周囲に敵の気配はないが、用心するに越したことは無い。この後に控える天正大戦国での作業を考えれば、この効果は早期に準備しておきたいところだ。
「キングネコ2世、朱鉄参號、そして3号機……天正大戦国での活躍が待ち遠しいですね」
そう言って裕樹が視線を向けた先では、ちょうど純金ケーブルを用いたエネルギー注入が終わろうとしていた。
程なくしてバッテリー用の心臓がチャージを完了すると、月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)がそれを確認。分解作業の準備が整ったことを告げる。
「注入OK、です。これが最後の巨大神像さん、ですね!」
「そうだねぇ。じゃあ引き続き、やっちゃおう!」
これが最後の巨大神像とあって、燐寧を始めとする7人の意欲はいっそう高い。
分解し、改装し、命名し。そして再び起動を行う為に、復讐者たちによる3号機の分解作業は開始された。
「じゃあ、装甲の取り外しから始めようか」
「ボクもお手伝いするよー。リング・ゴーレムくんおいでー」
雪人が工具を神像の装甲に伸ばすと、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)もゴーレムと一緒に取り外しに加わった。三度目となれば作業も慣れたもので、無駄な時間を費やすことはない。程なくして装甲は残らず取り外され、神像は解体可能な状態となった。
取り外しの漏れが無いことを確かめて、解体準備を終えた仲間たちへフルルズンがサムズアップを送る。
「よーし、いつでもOKだよ。どこからやる?」
「ふんむ、キングネコ2世、朱鉄参號とは別のやり方をしたい……のだけど。んむ、思いつかぬ」
準備を万端整えた状態で、しかしクィトは俄かに眉を寄せた。
今まで同様の方法で切断を行っても、むろん問題はない。だが神像のエネルギー消費量を調べる上では、何らかの新しい方法で分解し、比較検証を行いたいところだ。果たして名案は無いものか――そう考えているところへ、無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)が提案を申し出る。
「それなら、関節部は残す形で分解してみない?」
前回・前々回の分解は、いずれも神像の関節部をメインに実行されている。
であれば、それ以外の場所を切断なり分解なりする形で解体してみてはどうか、というのが理央の案であった。
「ボクの予想だと、切断面積と消費エネルギーは比例関係にあると見てるけど……現時点では仮説の域を出ないから、検証してみたいんだ。どうかな?」
切断面積の差が消費エネルギーにもたらす影響の検討は、確かに面白い試みと言えよう。クィトを始め、仲間たちは理央の提案に頷きで応じると、さっそく分解を開始していく。
「んむ、よさそう。頑張るぞー」
「異議なし! 善は急げだ、やってみよー!」
「研究のために持ち帰った時に試した手順、ですね。試す価値は、あると思います!」
かくしてクィトとフルルズン、更には小雪らによって、あちこちで作業の音が響き始めた。
分解の順番はキングネコ2世と同じ――すなわち、手腕部からだ。今回は関節を避けて分解を行う為、雪人は神殿の工具を手に、肩と肘のちょうど中間に目を向ける。パーツに継目があればそこから分解する予定であったが、それらしい箇所は一切見当たらない。
「とりあえず外側を切断して、後は中を見て判断する感じかな。そっちはどうだい?」
「うん、難しそうだねー。試してみた無鍵空間も、全然反応が無いし……」
「可動域以外に目立った継目は無いようですね。仕方ありません、では、始めましょうか」
フルルズンと裕樹がそう結論付けると、雪人は工具を切断用のそれに持ち替えて、神像に刃を入れていく。
切込みの入った箇所へ、続けて刀を振るう裕樹。関節部よりも面積が多いこともあって多少の手間こそ要したが、外側の切断は問題なく完了した。
理央は解体に今までと異なる手応えを覚えつつ、フルルズンに問いを向ける。
「関節部に比べると、切断は多少手間がかかる感じかな。内部の様子はどう?」
「んー……見た感じ、取り外せそうなパーツもゼロじゃ無さそうだけど……」
神像の内部構造を観察しながら、フルルズンはそう答えた。
若干の苦い色が混じる声は、外部同様、内部も分解による解体が難しいことを告げている。ケーブルを始めとする主要な部品はどうあっても分解不可能で、切断せずに分離させるのは困難という結論が出るのに時間はかからなかった。そうして手腕の切断が完了すると、フルルズンは額の汗を拭って安堵の吐息をつく。
「ふー、これでよし。面積が多い分ちょっぴり手こずったけど、それでも思った程では無かったね」
「はい。おまけに、いい収穫もあったみたいです。ここを見てみて下さい!」
そう言って小雪が指さしたのは、切断を終えた手腕部の断面であった。
パーツやケーブルが通っているのは他の箇所と同様だが、その数は関節部のそれに比べて少なく、加えて構造がシンプルなものが多い。関節を切断して分解を行った前回・前々回と起動時の消費エネルギーを比較分析すれば、興味深いデータが得られるかも知れない――その場の誰もが、そう感じ取る。
「修復に要求されるエネルギーが面積だけなら、こ、これまでの方が、効率が良いかもしれませんけど……」
「ああ、成程。構造やパーツの数も、関係してくる可能性はありますね」
小雪の言わんとするところを察し、裕樹が得たりと頷いた。
仮に面積以外にも、関節等の複雑な機構の有無で修復エネルギーの消費量が増減するならば、その情報は今後の運用でも役立つに違いない。
果たして結果やいかに――裕樹を始め、復讐者たちの目が期待に輝いた。
「和泉国での起動作業……待ち遠しいですね」
「本当に。分解の度に新しい情報が出て来て、驚きの連続だよ」
微笑と共に頷きを返し、雪人は好奇心を湛えた眼で断面のケーブルを凝視する。もしかするとエネルギーの伝導効率も、純金製のそれと比べて違うのだろうか? 本格的に測定する機会があれば、ぜひ試してみたいものだ――その結果に想像を巡らせる中、神像の分解は着々と進んでいく。
「んむ。今回は、他にも試してみよう」
そうして作業が順調に進む中、作業場へ運ばれて来た切断済のパーツに、クィトは新たな挑戦を試みることにした。
事故で人間が手足切断などの怪我を負った場合、患部には氷で冷やすと良いとされる。それを神像にも適用できないかと彼女は考えたのだ。
「ずばりエネルギー凍結さくせん。天正大戦国に移送するパーツを冷やしてみる」
「切断面の冷却か、面白そうだね。俺も協力するよ」
そう言って、クィトに協力を買って出たのは雪人であった。どうやら彼も同じアイディアを考えていたらしく、その様子は大いに乗り気のようだ。
雪人は冷却用素材にアイスクラフトを発動し、氷壁を粉砕。そうして作られた氷を、クィトがアイテムポケットから取り出したビニール袋に詰めて氷嚢を作成、切断部の隙間を中心に敷き詰めていく。こうすることで断面を冷却し、天正大戦国まで移送を行う寸法だ。
「冷やすことで相対的にエネルギー消費が減るか否か……んむ、その結果が分かってから、詳細を詰めるのが良さそう」
「そうだね。人体の場合、切断部位の劣化を防ぐには、とにかく冷やす方がいいらしいけど……神像の場合はどうかな」
良い結果を願いつつ二人が作業を進める間も、神像の分解は着々と進んでいた。
燐寧は作業の最中に、自身のエネルギーを供給できないかと挑戦を試みる。こちらは稼働する気配を見せない神像の様子を見るに、あまり結果は芳しくないらしい。
「んん~、奇策通じずかぁ。予想はしてたけど残念だねぇ」
「操作の方も全然反応がないですし……供給や操作は、再起動しないと無理そう、ですね」
機能を完全停止したコクピットに搭乗してみた小雪は、そう結論付けて地面に降りる。
現在の状態では、出来ることにも制限があるのだろう。今回試せなかった諸々は、早くても天正大戦国に向かった後の話となりそうだ。
そうして程なくすると分解は完了し、作業場には全てのパーツが揃えられた。氷嚢によって冷却される7つの部位に目を向けて、理央は達成感に満ちた笑みを浮かべて言う。
「問題なく終わったね。さあ、次は改装作業だ!」
費やした労力は少なくなかったが、全員の協力の甲斐あって神像は三機とも無事分解出来た。達成感と同時に、これほど巨大で複雑な代物を整備していた獣神王朝の設備に、彼女はふと想いを巡らせる。
(「向こうの専用設備に近いものがあれば、出来ることも増えそうだけど……何かいい方法があればなー」)
クロノヴェーダとの戦いは、今後更に激しさを増していくだろう。今回確保した3機にしても、あるいは仮に新たな神像の確保を試みるにしても、色々と課題はありそうだ。そうして理央が今後のことに考えを巡らせる中、3号機の改装作業は始まろうとしていた。
同じメンバーで同じ作業を三回も行えば、そこには必然的に阿吽の呼吸が生まれて来る。
分解を終えたパーツの周りに改装用の資材を並べ、3号機のデザインを決めるべく集まる復讐者たち。そこへフルルズンは胸を張って進み出ると、開口一番に告げた。
「皆、準備はいいかな? さあ、遠慮せず案を出したまへ!」
仲間の案を描き起こすデザイン担当は、すでに自他共に認める彼女の役割として定着したようである。
異議の声が上がらぬ中、張り切って準備を完了するフルルズン。そこへ真っ先に手を挙げたのは小雪であった。
「ボ、ボク、3号機はゴンドワナモチーフにしたい、です!」
「獣神王朝、天正大戦国と続いて巨獣大陸か、面白そうだねー。外見はどんな感じだい?」
「ええと……巨獣を狩るハンターさんなので、迷彩柄にしてみるのはどうでしょうか?」
ペンを手に尋ねるフルルズンに、小雪は目を輝かせながらイメージを伝えていく。
獣神王朝エジプト奪還戦で作成された巨大神像は、巨獣との戦いで大きな力を発揮するクロノ・オブジェクトだ。今後のゴンドワナ攻略や断片の王との決戦においても、きっと頼もしい戦力となるだろう。凶暴な巨獣たちを相手に戦う狩人――それが小雪の考えた、3号機のコンセプトだった。
「後は巨獣から剥ぎ取った見た目の、武器や防具なんかもいいかも、です!」
「面白そうだね。巨獣にはコクピットを狙う知能も無いだろうし、激しい戦いになりそうだ!」
小雪の案に胸を躍らせれば、スケッチは瞬く間に描き上がった。
カラーリングは迷彩柄、装甲は巨獣から剥ぎ取ったような防具。武器の作成は改装の範囲をやや超えるため今回は見送りとなったが、それでも巨獣と戦う狩人の勇猛さは全く失われていない。
「うんうん、いい感じだねー。他に案のある人はいる?」
「ふんむー、むむむむむ……ぴきーん」
フルルズンが言い終えるや、何事かを閃いたように挙手するのはクィトだった。巨獣の狩人という小雪のコンセプトに、彼女が挙げたのは装甲の追加アイディアである。
「外装を鱗風にするのはどうだろう。こうして、こうして、こう。鱗状の小さなものを重ねて、甲殻風に」
「ふむふむ。手足のデザインはどうする?」
「んむ、そこは爪装甲があるとかっこよさそう。こう……モンスターのハンター的な」
そうして描き上がったのは、鱗型の装甲で体を包む巨大神像だ。全身に迷彩柄のカラーリングを施し、手足には鋭い爪の装甲を。力強さと獣特有の凶暴さを両立させた、対巨獣のデザインである。
「こっちは、より巨獣を連想させるデザインだね。戦闘の時は、派手な絵になりそうだなぁ」
咆哮と共に迫る敵を前に、地響きを立てながら立ち向かう巨大神像。
神像と巨獣が派手な格闘を演じる姿は、実にロマンをかきたてる。フルルズンやクィトを始め、仲間たちが思い描く光景を代弁するように、更なる案を出したのは燐寧であった。
「それならさ、いっそ巨獣そのものに近いのはどうかなぁ? 特撮映画じゃ怪獣を模したロボットって大定番じゃん!」
そう言って燐寧が描き出したイラストは、神像の全身を恐竜チックな外見に寄せたものであった。
どこか映画のメカ怪獣を彷彿とさせるそれの頭部は、肉食恐竜を思わせる獰猛な形状に。そして手足の爪はクィト案を、鱗と迷彩模様は小雪案を合わせ、最後に尻尾型のパーツを取り付ければ完成だ。
「出来れば尻尾はスタビライザーがいいかな、なんて思ったけど……厳しいかなぁ、やっぱ」
「そうだね、追加機能は厳しいかも……ただ、稼働不可なアクセサリなら十分いけると思うよー」
「それなら折角ですから、着脱も可能にしてみませんか?」
「あー、いいかもね。それなら尻尾の形状は色々作れるし」
「あまり長すぎると、邪魔になりそうだから……まずは移動に支障がない、シンプルな形で造ってみようか」
裕樹や理央、それに雪人も加わって、あれこれ案を出し合って。
そうして7人のイメージを元に出来上がったイラストが、フルルズンの手によって描き出される。
全体のモチーフはゴンドワナに、装甲は巨獣の鱗を模したものを取り付けた。機体のフォルムは肉食恐竜を模して、更にカラーリングは大自然に溶け込む迷彩柄。手足には爪型装甲を取り付け、尻尾パーツは稼働不可かつ着脱可能なアクセサリとして用意する。
巨大怪獣――そんな言葉が似合う、厳しい外見のデザインだ。
イラストでさえ見る者を圧倒するその姿に、理央と雪人が感嘆の吐息を洩らす。
「おー、カッコいいね。何だか、口から光線とか吐きそうな感じ?」
「巨獣との戦いだと、とっても絵になりそうだね。……じゃ、作って行こうか!」
かくして復讐者たちは、作業に取り掛かるべく動き出す。
鱗を作り、爪を作り、頭部や尻尾のパーツを拵え、迷彩塗装を施して――天正大戦国の地に立つ姿に胸を躍らせながら、作業は滞りなく進んでいった。
そうして開始から暫しの後、改装を無事完了した復讐者たちは、いよいよ最後の作業に取り掛かる。
鱗状の装甲を始め、恐竜のような厳しいパーツを着けた3号機。かの神像の呼称を付ける命名作業だ。引き続き仲間たちの前で、フルルズンがリストアップ用の紙を手に意見を集め始めた。
「さあ皆、どんどん案を言ってくれたまへ!」
そんなフルルズンの言葉に、最初に口を開いたのは裕樹である。彼女が最初に出したのは、機体のナンバリングに関する案であった。
「1号機がキングネコ2世、2号機が朱鉄参號……順当にいくと、3号機の名前は『4』が入りますでしょうか」
「んむー、ここまできたら4は欲しい」
果たして裕樹の言葉に、クィトもまた賛同を示した。
今回の作戦で再起動する3機とは別に、最終人類史には技術試験用の神像が1機存在している。それを考えれば4という数字もさほど違和感を与えるものではないだろう。
3号機に『4』の数字を入れる――それは裕樹やクィトのみならず、他の仲間たちも同じ考えだったらしい。雪人と理央も頷きを送り、裕樹の案に同意を示す。
「やっぱり、4の数字は入れたいよね。ゴンドワナモチーフもカッコ良さそう」
「どんな名前がいいかな。少し捻って、『クワトロ』とか『テトラ』とか?」
ナンバリングには『4』を意味するもの。それに加えて、ゴンドワナを想起させるもの。
これら二点を3号機の名前に用いる方向で話が決まると、更なる話し合いを経て、候補はふたつに絞られた。
燐寧と、小雪の案である。
「ラテン語の“4つの”と“王”を混ぜて“quadri-rex”……『クアドレックス』とかどぉ?」
「お名前は巨獣の王様を狩る者、“キングハンター”……これに数字の4を足して『キングハンターⅣ』です!」
甲乙つけ難いふたつの案に、場に沈黙が下りる。
シンと静まり返った空気は、そのまま復讐者たちの思案と迷いを示すもの。優劣つけ難い二つの名前に頭を悩ませること暫し、沈黙を破ったのはクィトであった。
「んむ。二人の案を合わせて、『レックスⅣ』はどうか」
レックスは恐竜の外見から、Ⅳは一見で番号が分かるシンプルさから。
そうしてクィトが切り出した案に、異議の意見が出ることは無く――3号機の新たな名前が、晴れてここに決まる。
「レックスⅣさん、ですね。いい名前だと、思います!」
「うんうん。大暴れするのを見る日が、今から待ち遠しいよぉ」
新たな名を得た神像を前に、小雪と燐寧をはじめ満足の微笑を浮かべる復讐者たち。そうして最後、フルルズンはリストに記された『レックスⅣ』の名前に大きな花丸を描き、作業の完了をここに告げるのだった。
1号機、キングネコ2世。
2号機、朱鉄参號。
3号機、レックスⅣ。
後は、新たな名を得た3機を天正大戦国へと移送し、再起動すれば作戦は成功だ。
程なくパーツの積込が終わり、撤収準備が完了すると、最終確認を終えた裕樹と雪人が頷きを交わし合う。
「それでは行きましょう。和泉国へ」
「ああ。神像の稼働まで、もう少しだ!」
次なる舞台は、天正大戦国『和泉国』。
巨大神像を載せたパラドクストレインと共に、復讐者たちの作戦は佳境に向けて動き出す――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【一刀両断】がLV5になった!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV7になった!
【ダブル】LV1が発生!
クィト・メリトモナカアイス
獣神王朝エジプト奪還戦の。ぼる……ぼる……そう、ボルレオニス。そいつの戦場でこんな報告があった。
「新宿島が来ている今であれば、神像が多少破損したとしても、【修復加速】によって修復は極めて短時間で完了する。」
巨大神像にも【修復加速】は効果があることが分かっている。
早く終われば見つかる可能性もそれだけ減る。
こっそり素早く終わらせるのだ。
というわけで運び込んだらまずは【平穏結界】そして【修復加速】を展開。
んむー、この大きさだとトレインよりあんまり遠くには持っていけぬ。場所はここで作業するのが良さそう。
自動で修復するらしいし、1台ずつ組み立てるのではなく並行していこう。
まずはキングネコ2世の心臓部に両手足や胸部、腹部をかちりかちりとはめ込み。修復が始まったら他の2機も同じように。
んむ、あとは偵察が来るかもしれぬのでそれへの対応。
というわけで巨大神像が見えぬあたり……岸和田城の入り口があったらへん?で見張り番をしよう。
敢えて姿は隠さずにおうだち。
門番は居ることが侵入者から分かることにも意味がある。
月下部・小雪
えへへ、天正大戦国にやってきました。
キングネコ2世さん、朱鉄参號さん、レックスⅣさん。
つ、ついに3機の巨大神像さんが立ち上がる時、です!
周りに天魔武者のスパイがいないか確認したら、【怪力無双】を使って巨大神像さん達をトレインから運び出しましょう。
極秘で建造するときには棕櫚の葉で筵を作って隠すといいそう、です?
さて、ボクは【クリーニング】を使って神像さん達を綺麗にしてあげますね。
切断面が綺麗な方が修復に有利に働かくかも、しれません!
比較するために、右左で【クリーニング】の有無を分けてみたほうが分かりやすいかもですね。
無事に修復できたら綺麗に洗ってあげた後に筵を被せて大阪城攻めまでは隠しておきましょう。
秀吉さんがびっくりする姿が目に浮かびますね。
※アドリブ連携大歓迎
一里塚・燐寧
いやー、3機もあると武装も差別化してみたくなるねぇ
例えば格闘型、砲撃型、電子戦みたいな……んま、それはいつか機会があればってことで
今回はきっちり立ち上がるとこまで仕上げよぉ~
【修復加速】を重ねて効果を増強
【平穏結界】は重ねすぎると「外周が広すぎて中に入り込まれやすい」問題があるから、ほどほどで大丈夫かもねぇ
組み立て開始まで神像が待機したり、今後置き場として利用できるスペースがあるといいんだけど、岸和田城周辺ってどんな様子だろ……?
そこは詳しい人に教えて貰おっか
組み立てまで保留になった「パーツとパーツ、或いはパーツと心臓の間に導管を造る」を満を持して試すよぉ
心臓からパーツに繋がるチューブやパーツの切断面に仕込む金のケーブルを用意して、修復時に装甲ごと神像の一部として取り込んでもらおう
うまく行けばエネルギーの伝達効率がよくなってロスが減るんじゃないかなぁ?
ヒルコや人間を利用した偵察も警戒し、怪しい動きをする人が城周辺に入ってこれないようにきっちり巡視
無事に巨大神像を隠す所まで見守っちゃうよぉ
フルルズン・イスルーン
組み立ての時間だ!
情報が出回る前に【修復加速】で修復の時間を早めるとして、これ継続的に現地に置いておく都合上の隠蔽に関しても考えた方が良さげ?
んーむ。普段は水の張った堀にでも沈めて、使う時はざぱーって起き上がらせるとかも考えた方がいいかもねぇ。
まあ、とりあえず再度イート・ゴーレムくんおいでー。
さてボクも【平穏結界】で巨大神像包んで【怪力無双】でサクサクと並べて繋ぐのだ。
意外と効果が一体分程度の範囲。三体あるからそれぞれ誰か一人ついて発動してると安心かな?
一応このディヴィジョンの陣幕張っておこうね。うっかり結界切れても即座に巨大で不審なものが見えたと噂にならない用隠蔽には気を付けていこう。
寝かせていれば十分幕で覆える大きさだしね。
あとはそれぞれの起動可能になる時間を計ったり、起動させたときに残留効果の干渉を確認したりと細かな所も見て後々の運用の備考にするのだ。
さて、最後の仕上げ頑張ろうねゴーレムくん。
野本・裕樹
『豊臣秀吉』は最後の最後、詰めを誤った為に断片の王の立場を逃しました。
ここでのミスは命取り、最後まで油断せずに掛かるとしましょう。
ここからはより慎重な作業が求められる筈です、皆さんと少しでもスムーズに作業出来るように念の為【パラドクス通信】を準備しておきますね。
神像付近には確実に誰かが残り【平穏結界】の内部で隠密に作業を。
直接作業に携わらない人は【パラドクス通信】を利用し協力して周辺警戒できると安心でしょうか。
天正大戦国での経験が役に立つかはわかりませんが、周辺警戒には積極的に参加したいと思います。
何か気付く事があれば【パラドクス通信】で即連絡です。
城内の整地作業などの下準備に最終人類史から重機を持ち込むのはどうでしょうか。
小型のショベルカーなどであればパラドクストレインの貨物車両にも積み込める筈、操作も【操作会得】があるので心配ありません。
より繊細さが要求される場面は【怪力無双】に任せ、他は重機で時間を短縮出来ればと思います。
再起動、絶対に成功させましょう!
文月・雪人
愈々和泉国へ!
岸和田城に来るのも何度目かな
秋祭り作戦が陽動になっているとはいえ、油断は禁物だね
【平穏結界】を重ねて使用
幸い人数もいるし
巨大神像も岸和田城も丸ごと結界範囲に入る位置取りで
声を掛け合って動きたい
作業場所は、城の存在を目隠しとして使える場所がいいと思う
【修復加速】【怪力無双】で岸和田城の外壁を修復しつつ
内部に大きなスペースを作って、巨大神像を運び込む
もし城内への運び込みが困難な場合は
摂津国と海から見え難い城の南西側に作業スペースを確保する
組み立て作業時も【怪力無双】【修復加速】使用
ケーブルの端に付けた薔薇型コード接続器具を繋ぎ
切断面がピッタリ合う様にパーツを合わせる
修復の経過を観察し、記録を確りと取っておこう
そういえば、巨大神像は水への耐性はあるのかな
海や川に潜っても平気そう?
改めて確認しておきたい
修復出来たら愈々起動だね
起動には起動キーと、感情エネルギーが必要なのだっけ?
ならば願いを込めて起動しよう
巨大神像よ、俺達に力を貸して欲しい。
戦国の地に立ち上がり、巨城を貫く刃となれ!
天正大戦国、和泉国。
かつて城取合戦の舞台となった岸和田城跡地では、復讐者たちによる神像の受け入れ準備が始まろうとしていた。
「愈々和泉国へ! ここに来るのも何度目かな」
懐かしさを込めた笑顔を浮かべ、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)が城の跡地を見遣る。
国主であった狂月神機『淀殿』との決戦に勝利してから、はや8カ月。戦の跡地は平穏な空気に満ちて、敵の姿も無く、神像の再起動には最適な場所と言えそうだ。
「これが最後の一仕事だね。細心の注意で臨むとしよう」
和泉国は大阪城に近い土地だけに、敵の斥候が来る可能性が常に付きまとう。現在、西宮では陽動を兼ねた秋祭り作戦が行われているが、さりとて油断は禁物だ。作業が露見しないように平穏結界を発動すると、雪人は共に作戦に着手する仲間たちを振り返る。
「幸い人数もいるし、声を掛け合って動けるといいね。今回もよろしく」
「こちらこそ。最後まで気を引き締めて掛かるとしましょう」
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は頷きで応じると、さっそく連絡用のパラドクス通信を発動した。
今回の作戦では、作業場周辺の警戒も必要となる。仲間たちと常に顔を合わせられずとも、連絡手段があれば意思疎通で問題が生じることは無いだろう。
最後の最後で詰めを誤り、断片の王の立場を逃した『豊臣秀吉』――彼と同じ轍を踏む訳にはいかない。命取りに繋がるミスの無いよう、気を抜かずに臨むつもりであった。
「えへへ、天正大戦国にやってきました」
そんな中、月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)は早くも準備を整えて、作業の始まりを待ち侘びている。神像に関わる過去の作戦に参加して来た一人とあって、その期待は募るばかりだ。
「キングネコ2世さん、朱鉄参號さん、レックスⅣさん。つ、ついに3機の神像さんが立ち上がる時、です!」
自分たちが命名した神像が大地に立つ、浪漫あふれる光景に胸躍らせる小雪。
そんな彼女を含め、再起動に着手する復讐者は6名だ。いずれも分解作業から共に作戦を行って来た者たちであり、改装と命名を行った神像の起動は、まさに待ち望んだ瞬間である。次々に集合する仲間たちの輪に小雪も早速加わると、程なくして裕樹と雪人が今後の方針を話し始めた。
「神像の到着には、まだ時間がありますし……今のうちに準備を進めてしまいましょうか」
「うん、まずは修復・再起動する場所の確保と、隠蔽工作の準備。それから周辺の警戒かな……皆も、それでいい?」
雪人の確認に異論が出ることはなく、復讐者たちは最後の仕上げに動き出す。
キングネコ2世、朱鉄参號、レックスⅣ。3機の神像を迎え入れる作業は、かくして幕を開けるのであった。
「まずは作業場所の選定だね。これは、城の内側――城壁を衝立代わりに使える場所を推してみるよ」
資材の確認を早々に済ませ、雪人は修復・再起動を行う場所についてそう提案した。
整地や外壁修復が比較的容易であり、加えて陣幕を張ることも可能。そこにスペースを設け、組み立てと起動を行ってはどうかという案に、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)が賛同を示す。
「いいと思うよぉ。それにしても……岸和田城の跡地ってあんな感じなんだねぇ」
そう言って彼女が見渡した先、城の跡地は手が入ることもなく荒れ果て、天魔武者はおろか人の気配すらない。城取合戦の後、恐らくはそのまま放置されていたのだろう。神像を外部から隠す為の外壁部分も、千早城が激突した方角を除いては無事に残っている状態だ。
「外壁を修復加速で直して、それから運び込む感じかなぁ。置場のスペースは問題なさそうだし、序盤は力仕事でガンガン行っちゃう? 部外者に入り込まれないように、平穏結界は程々にする感じで」
「そうだね。可能なら、一緒に作業場の整地も行いたいかな……8カ月も放置されてる状況だしね」
「でしたら、“これ”の出番ですね」
と、雪人の言葉を継いで、裕樹が運んで来たのは作業用の小型ショベルであった。かつて武蔵国の忍城攻めでも活躍した工作用重機は、大まかな力仕事の時間短縮に最適と言えるだろう。操作会得は既に発動されている為、操縦に特別な技能を要することもない。
小型ショベルで整地を行い、繊細な力仕事は怪力無双と修復加速を併用して行う――そんな裕樹の提案に、仲間たちから異議が上がることもなく。早速、準備は開始されることとなった。
「最後のひと頑張り、ですね。頑張りましょう!」
「もっきゅー!」
かくして小雪とコダマの声を合図に、岸和田城の跡地へ向かう復讐者たち。
程なく開始された整地と修復の作業は、今までに用意された残留効果もあって滞りなく進んでいった。裕樹が重機で地面を均し、修復加速で外壁を直し、大きな障害物は怪力無双で運び出し。6人がかりの作業ということもあり、受け入れ準備は早くも完了目前である。
「さー、ラストスパートだ! 一応、このディヴィジョンの陣幕も準備しておこうね!」
受け入れ場所を中心に、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は用意した陣幕を手際よく張っていく。万が一平穏結界が切れた時、神像の姿を外部に晒さない為の仕切りだ。その大きさは、寝かせた状態の神像であれば十分に覆える範囲であり、秘匿性をより高めてくれるだろう。
巨大神像の起動を夢見て、積み重ねて来た数々の試行錯誤。それが今、ようやく結実しようとしているのだ。起動成功の瞬間を待ち侘びながら、フルルズンは期待に満ちた笑顔を浮かべる。
「実に待ち遠しいねー。修復のデータもきっちり測定しないとね!」
「楽しみだよねぇ。いやー、3機もあると武装も差別化してみたくなるよぉ」
城壁の修復を終えて戻って来た燐寧が、フルルズンに同意を示す。今回の作戦は神像の再起動が成功条件だが、彼女の眼は既に“その先”を見据えつつあるようだ。
(「例えば格闘型、砲撃型、電子戦みたいな……んま、それはいつか機会があればってことで」)
まずは、この作戦を成功させねば――そう思って燐寧が城跡の外へ視線を移せば、そこには今まさに停車するパラドクストレインの姿が見えた。
どうやら、神像を積んだ車輛が来たらしい。後は組み立てを行い、修復完了の時を待つのみだ。
再起動までは後少し。燐寧は仲間たちと頷きを交わし合い、次なる作業に取り掛かっていった。
「んむ、すべて揃っている。いざ運ぶべし、組み立てるべし」
確認が完了した神像のパーツを、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)が怪力無双で軽々と持ち上げる。
運ぶ先は、岸和田城跡地に設けた起動用スベースだ。周囲は平穏結界と城の外壁、更にはフルルズンの陣幕という三重の守りに囲われており、周到な隠蔽工作が施されている。復讐者たちは神像のパーツを次々に担ぐと、それらをスペースまで運び込んでいった。
無論、その間も警戒は無論怠らない。小雪はコダマを連れて周囲に敵がいないことを確認し、改めて運搬に加わる。
「もう一息、ですね! 頑張っちゃい、ます!」
「もきゅー!」
「楽しみだよねー。さてと、運ぶのはこれで最後かな?」
小雪と共に搬入を完了すると、並んだパーツを前にフルルズンは胸を躍らせる。
後は組み立てを行い、数日の修復期間を経て起動を行うのみだ。そうすれば、いよいよ大地に立つ神像の姿を拝むことが出来る。早速イート・ゴーレムを呼び出すと、彼女は仲間たちに呼びかけた。
「準備はいいかな? じゃ、作業を始めよー」
「んむ。自動で修復するらしいし、並行して組み立てていこう」
フルルズンの言葉に頷き、クィトは早速作業を開始した。3機の神像を、6人がかりの同時並行で進める流れである。
彼女が着手したのは1号機――キングネコ2世だ。同じ機体を受け持つ燐寧と息を合わせ、心臓部に両手足、胸部、腹部と各パーツを手際良く嵌め込んでいく。
燐寧はパーツや心臓の間に導管を造り、心臓からパーツに繋がるチューブ、加えてパーツの切断面には純金のケーブルを用いて接続を行っていた。分解の際に保留となった作業を試せるとあって、その眼には期待の光が宿っている。
「うまく行けば、エネルギーの伝達効率がよくなってロスが減るんじゃないかなぁ?」
「キングネコ2世の分解箇所は、朱鉄参號と同じだから……両者の再起動時間に差があったら、効果があった可能性は高いということだろうね」
アブ・シンベル神殿の工具でレックスⅣの切断面を合わせながら、雪人が頷きを返した。
その横ではフルルズンや裕樹、そして小雪も手分けして接続作業を行っている。小雪は接続が完了した朱鉄参號の切断面にクリーニングを施して、接着までの時間が短縮できないか試みていた。結果を比較判定すべく、右腕のみ効果を使用した上での挑戦である。
「極秘で建造するときには棕櫚の葉で隠すといいそう、です?」
隠蔽の道具は大いに越したことは無いと、小雪が用意したのは棕櫚製の筵。朱鉄参號を筆頭に、3機の神像の組み立てが終わると、毛布宜しく筵をかけて更なる隠蔽を施していく。
そうして、後は修復完了を待つだけの段になり――クィトが直面したのは、少々想定外の事態であった。
「んむむ。これは……一瞬で修復完了とは行かない感じ?」
神像の切断箇所を筵の隙間からちらりと覗き、首を傾げるクィト。彼女を始め、復讐者の手で解体された断面は、どれも繋がった様子は見られない。修復加速は相応のレベルを維持しているが、未だ変化は見られないままだ。
獣神王朝エジプト奪還戦で神像を用いた際、最大レベルの修復加速によって損傷がすぐに修復したとの記録があった為、いけると思ったのだが――そう呟くクィトに、フルルズンは暫し思案した後に言う。
「奪還戦で使った神像は起動状態で、損傷もそれほど深くなかったからね。極度に酷いダメージを受けてると、修復加速は効果がなくなるのかも」
「おおう、ならば致し方なし。修復完了までの警戒、頑張るぞー」
かくして修復加速を断念すると、クィトは仲間と共に各々の持ち場へ向かって行く。
城跡の周辺、神像を覆う陣幕など、数か所を手分けして行う見張り作業である。裕樹が用意した通信機で、互いの連絡も問題なく取り合える状況だ。
「いよいよ後少し、ですね。楽しみ、です!」
「たねぇ。よぉし、気合入れていくよぉ」
最後まで油断を排しつつ、城跡の外へ向かう小雪と燐寧。
これが終われば、いよいよ神像の再起動を残すのみとなる。大地に立つ神像たちの姿に期待を弾ませて、6人の復讐者は周囲の警戒を開始するのであった。
復讐者たちによる厳重な警備が行われる中、神像の修復は開始された。
警戒の網が張り巡らされた岸和田城跡の一帯に、忍び込む隙は何処にもない。連絡を欠かさず、休憩と交代を挟み、時間は一日また一日と無事に過ぎていった。
「こちら野本。神像付近、異常ありません」
「お疲れ様ぁ。城跡の周辺も問題ないよぉ」
通信機から届く裕樹の声に、連絡を返すのは燐寧だ。
彼女は今、城跡の周辺を持ち場に、見回りを行っている最中であった。ヒルコや人間を利用した偵察が寄越される可能性も考慮した巡視活動は、幸いにして未だ人影の一つも捉えてはいない。視線は油断なく周囲を見澄ましたまま、燐寧はふと感じた疑問を口にする。
「最悪、偵察部隊の出現は覚悟してたけど……今の感じだと、来そうにない感じかなぁ?」
「そうですね。もしかすると、秀吉は西宮方面に神経を集中しているのかもしれません」
現状で天魔武者勢力が和泉国への偵察を仕掛けていないであろうことは、裕樹もまた感じ取っていた。豊臣秀吉の真意は不明だが、今の状況は神像を再起動する上で好都合と言えよう。後は、肝心の修復が1日も早く完了することを願うばかりだった。
「今のところ修復は順調のようですが……気になりますね」
「もどかしいよねぇ。起動までの時間がはっきり分からないと」
「んむ。さっき休憩中に見た感じだと、だいぶ進んでるみたい」
そう言って、二人の会話に加わるのはクィトであった。
彼女は現在、城跡の門で見張り番を行っている最中だ。自身の姿を周囲に知らしめる為、敢えて姿は隠していない。
「門番は居ることが侵入者から分かることにも意味がある。これぞ、におうだち」
怪しい者は一人も見逃すまじ――そんな決意を胸に彼女が周囲に意識を向けていると、ふいに通信機から新たに仲間から連絡が届く。神像のデータを収集していたフルルズンからだった。
「皆、嬉しいお報せだよー。最初の1機、修復が完了したよ!」
フルルズンの報せが伝わると、仲間たちは通信機を手に歓声を交わし合った。
待ち望んだ瞬間は目前だと言う実感に、数日間の警戒で僅かに感じつつあった疲労はすっかり吹き飛んだようだ。
「やりましたね! 全機の再起動までもう少し、です!」
「後少しと見てはいましたが、ついに……頑張った甲斐がありましたね」
「んむんむ、我も嬉しい。このまま最後まで頑張るべし」
「もうひと息って感じだねぇ。ちなみに、一番乗りはどの子?」
喜びと達成感に満ちた声で快哉を叫ぶ復讐者たち。そこへ誰もが気になっていたであろう問いを向ける燐寧に、フルルズン
と共に測定を行っていた雪人が言葉を返す。
「一番乗りはね――レックスⅣだよ!」
「3号機かぁ。他の2機はどんな感じ?」
「この分だと遠からず修復が終わりそうだね。とても順調な経過だよー」
燐寧の問いに、フルルズンがそう返した。
関節を切断して分解を行った1・2号機と異なり、3号機は関節を避けた分解を行っている。恐らくは、それが修復時間の短縮に繋がったのだろう。仲間たちの期待が高まる中、燐寧は更に問いを向けた。組み立ての際に試した導管接続の結果が気になったのだ。
「様子はどう? 良い感じかなぁ?」
「修復はキングネコ2世の方が先に終わりそうだねー。順番は違うけどバラした箇所自体は2機とも同じだから、組み立て時の導管接続の有無は、修復時間にも影響してる可能性が高いと思うよ」
あくまで仮説であり、断言は出来ないことを付け加えた上で、フルルズンはそう告げた。
最短で修復が完了したのはレックスⅣである為、今後の神像の分解移送にはレックスの方法を採用することとなる。だがそれとは別に分解移送時の更なる節約を試みるならば、現在のそれを基準として新たな方法を探ることも可能だ。その場合には攻略旅団での提案が必要だが、試す価値はあるに違いない。
「という訳で、もう少しで修復は完了するよー。皆、頑張ろう!」
「そうですね。再起動、絶対に成功させましょう!」
裕樹の言葉に頷いて、復讐者たちは再び警戒に戻っていく。
残る2機の修復完了には、実際さほど長い時を要さなかったが――期待に胸を弾ませる復讐者たちにとって、それはいつも以上に長く感じられるものであった。
「よし、頃合いだ。始めよう!」
それから全機の準備が完了した報せが雪人より届くと、復讐者たちは神像の前に急ぎ集まった。
最初に修復が終わったのはレックスⅣ。次いで終わったのはキングネコ2世。そして最後が朱鉄参號。再起動を待つ3機の巨大神像、そのコックピットが次々に開放されていく。
後は搭乗者の感情エネルギーを動力源に、再起動を完了させるのみだ。相談の結果、各機の起動は名前を付けた復讐者が行う形で話は纏まった。
「レックスⅣさんはボクが担当、です! コダマは皆さんと一緒に、見守ってて、下さい!」
「もきゅ!」
「あたしはキングネコ2世だねぇ。よぉし、頑張るよぉ!」
「では朱鉄参號は俺が乗ろう。いいかい?」
「んむ。いざ起動すべし」
そうしてクィトが手渡すのは、各神像を動かす為の起動キーだった。これを用い、動力源となる感情エネルギーを搭乗者が注ぐことで、神像は再び動き出す。裕樹は周囲に敵がいないことを今一度確認すると、搭乗した3人へ合図を送った。
「異常ありません。いつでも行けます!」
「じゃあ、さっそく始めようか。――巨大神像よ、俺たちに力を貸して欲しい……」
最初に起動を行ったのは、雪人が搭乗する朱鉄参號であった。
もうじき始まるであろう大阪城の城攻めで、神像の存在は戦局を大きく左右する。その力を今こそ借りる為、願いを込める雪人。そんな彼の言葉に応じるように、感情エネルギーが神像の全身に行き渡り、
「戦国の地に立ち上がり、巨城を貫く刃となれ!」
そうして次の瞬間、それは起こった。
雪人の声に応えるように、朱鉄参號が、その巨体をゆっくりと天正大戦国の地に身を起こしたのである。
全身を覆う鎧兜はクロノ・オブジェクト化が施され、神像の装甲として生まれ変わっている。勇壮でありながら、見る者に畏怖をも抱かせる姿――それは正に、朱色の鎧武者さながらだ。雪人が前立てに施した時計の意匠も相まって、その姿はある種の荘厳さを感じさせる。
その光景に裕樹とクィト、そしてフルルズン、更にはコダマが揃って息を呑む。そして、
「レックスⅣさん、起動、です!」
「さあ行くよぉ、キングネコ2世!」
続けて小雪が、燐寧が、搭乗する巨大神像を続けて起動していく。
両手両足に鋭い爪、立派な尻尾。鱗型装甲に大自然の迷彩模様を施した、獰猛な肉食恐竜を連想させる『レックスⅣ』。
ネメス頭巾を模した装甲と、ボディ各部にヒエログリフの塗装。そして全身には金の輝きを帯びる『キングネコ2世』。
そうして命を吹き込まれた3機を見上げ、復讐者たちは惜しみ無き歓声を上げた。悲願であった、神像の再起動――長き時と仲間同士の協力と、そして幾度にも渡る作戦を積み重ね、ついにそれが現実となったのだ。
「“巨大神像、天正大戦国に立つ”。作戦成功だね!」
待ち焦がれた光景を前に、フルルズンが満面の笑みを浮かべて言う。
響き渡る歓声の中、小雪は機器類のチェックを終えると、大阪城の方角に意識を向けながら思った。
帰還する前にもう一度、神像たちを綺麗に洗ってあげることにしよう。本番の城攻めまで、彼らにはゆっくり休んで貰わねばならないのだ。
「秀吉さんがびっくりする姿が、目に浮かびますね」
遠からず始まるであろう大阪城攻略を、必ずや成功させてみせる。今日新たに自分たちの仲間に加わった、頼もしい3機の巨大神像と共に――そう、小雪は誓うのであった。
そうして再起動が滞りなく確認されると、神像たちは暫しの眠りについた。
最後の諸作業を恙なく終えて、暫しの別れを惜しみながら、復讐者たちは最終人類史へと帰還していく。
摂津国を治める『豊臣秀吉』が控える大阪城、その攻略は旅団で提案された摂津西宮の陽動作戦と連携して行われることになるだろう。その後、他ディヴィジョン等への移送を行うような時は、レックスⅣへの対応を元に分解・組み立てが行われることとなる。
「もうすぐ、始まりますね。……大きな戦が」
神像たちが眠る岸和田城跡を振り返り、裕樹は呟いた。
天魔武者『豊臣秀吉』が支配する摂津国。かの令制国の攻略は、いよいよ大詰めだ。
その根城たる大阪城での戦いが如何なるものか、知る者はいない。だが、どれほど厳しい戦が待っていようとも、きっと復讐者は勝利を掴むだろう。
キングネコ2世、朱鉄参號、そしてレックスⅣ。
復讐者の手によって蘇った、人類の新たな仲間たち。彼らと肩を並べて戦うその時は、刻々と迫りつつある――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【修復加速】がLV6になった!
【クリーニング】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【平穏結界】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【リザレクション】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV10(最大)になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!