オルレアン防衛、ジル・ド・レ軍迎撃戦

 オルレアン強襲決戦により『城亀ジャン・ポトン・ド・ザントライユ』の撃破に成功し、オルレアンの制圧に成功しました。
 また、分断したオルレアン南方派遣軍の『ラヴァル兄弟』の部隊に攻撃を仕掛けており、ジル・ド・レの軍勢に対する攻撃を仕掛ける絶好の機会が訪れています。
 しかし、ジル・ド・レの軍勢には、『屠殺者』オリヴィエ・ド・クリッソン、『盲信の騎士』ジャン二世、フィリップ善良公 という3体のジェネラル級キマイラウィッチが合流しており、ディアボロスの姦計により陥落したオルレアンを取り戻すべく、転進を開始したようです。
 ディアボロスが制圧したオルレアンから出撃し、ジル・ド・レの軍勢を迎え撃ってください。

ジル・ド・レ
フィリップ善良公
『屠殺者』オリヴィエ・ド・クリッソン
『盲信の騎士』ジャン二世

オルレアン制圧の先に待つ復讐とは(作者 北瀬沙希
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●火刑戦旗ラ・ピュセルーーオルレアン近郊
 オルレアンから戻って来た配下からの報告を受け、ジェネラル級キマイラウィッチ『フィリップ善良公』は、アヴァタール級キマイラウィッチ『ヘキサトリニティ』とトループス級キマイラウィッチ『星狼の魔女』の混成軍を前に静かに演説し始める。
「皆の者、よく聞け。城を守っていた城亀殿が、ディアボロスに殺された」
「城亀殿が、ディアボロスに……!?」
 キマイラウィッチたちの間に動揺が広がる中、フィリップは静かに、だがよく通る声でキマイラウィッチたちに告げる。
「そして、ジャンヌ様も愛したオルレアンの街は、今この時もディアボロスによって穢され続けている」
「おお……何たることだ!!」
 魔女たちの反応を静かに見届けながら、フィリップは細剣を天に掲げ、静かに、だがよく通る声でさらなる言の葉を紡ぐ。
「お前達に出来る事は、命を捨てて、オルレアンを取り戻す事だけだ」
「その通りだ!! フィリップ様のお言葉通り!!」
「皆の者、オルレアンを奪ったディアボロスに復讐せよ! 怒りを燃やし、その命を燃やし尽くせ!」
「そうだそうだ!! ディアボロスを許してはならん!!」
「復讐の心さえあれば、この戦いで命を失ったとしても、再びジャンヌ様の元に導かれるだろう」
 フィリップの静かな声と対照的に、褒美とも取れる言の葉を耳にしたキマイラウィッチたちは、己が復讐心に突き動かされるまま叫ぶ。
「そうだ! ジャンヌ様のため、そして死せる同胞たちのため、ディアボロスへの復讐を果たすのだ!!」
「ディアボロスを殺せ!! そしてオルレアンの民に制裁を!!」
 かくして、口々に憎悪と復讐心を吐き出しながら。
 キマイラウィッチたちは、ディアボロスへの激しい殺意を胸に、オルレアンへ向けて進軍し始めた。

●新宿駅グランドターミナル
 グランドターミナルの片隅に集まったディアボロス達を前に、藤森・智樹(人間の魔導忍者・g08569)が固い表情で説明を始める。
「オルレアン強襲作戦により、オルレアンの留守を守っていたジェネラル級キマイラウィッチ『城亀ジャン・ポトン・ド・ザントライユ』の撃破に成功したよ」
 これで、火刑戦旗ラ・ピュセルの重要拠点である『オルレアン』はディアボロスが制した事になる。
「でも、この状況をジル・ド・レが許すはずがないのは明白だよね。だからジル・ド・レは、南方派遣軍を率いてオルレアン奪還に向かってくるようなんだ」
 幸いにも、南方派遣軍の一部、ラヴァル兄弟の軍勢を、攻略旅団の作戦によって足止めしている最中だ。
 敵の足並みはそろっていないため、今こそジル・ド・レと決戦して撃破する好機となっている。
「この好機を逃すわけにはいかない。急ぎオルレアンから出撃し、ジル・ド・レ軍に攻撃を仕掛け、決戦の準備を進めて欲しい」
 頭を下げる智樹に、ディアボロス達は其々の想いを胸に頷いた。

 ディアボロス達を前に、智樹は慎重に言葉を選びながら説明し始める。
「ジル・ド・レ軍のキマイラウィッチは、騙し討ちでオルレアンを奪われた事への復讐の念によって、その力を強めているようだ。一段階上の強敵と戦うつもりで、戦闘を進めて欲しい」
 トループス級と戦う時は複数のアヴァタール級と同時に戦うつもりで、アヴァタール級と戦う時はジェネラル級と戦うつもりで戦わねばならない、ということになる。
「ジル・ド・レら4体のジェネラル級は、ディアボロスへの怒りから、最前線で指揮をとっているようなので、この作戦で、前衛部隊を撃破する事が出来れば、決戦を挑む事ができるだろう」
 しかし、少しでも冷静になれば、ジェネラル級たちはディアボロスの狙いがジル・ド・レ達の撃破にあると気づき、後方に下がる事が予測されている。
 そうなれば、敵軍との総力戦となり、かなりの長期戦になる上に周辺からの増援も発生するため、ジル・ド・レの撃破は難しくなるだろう。
「皆には、前衛の敵を撃破しつつ、ジル・ド・レを挑発して冷静さを奪って欲しい」
 ただ、挑発を行う事で、敵の戦意が更に増幅される危険があるので、挑発を行うタイミングは良く考慮するべきだろう。

「敵の重要拠点オルレアンを制し、ジル・ド・レ等有力ジェネラル級を撃破できれば、《戴冠の戦》の前に火刑戦旗ラ・ピュセルに奪還戦を挑む事も可能になるかも。その為には、短期決戦でジル・ド・レらに決戦を挑む必要があるね」
 逆に、この作戦に失敗した場合、オルレアンでの籠城戦を余儀なくされる。
 もし、籠城戦となった場合、周囲からの増援が発生するため、簡単に勝つことはできなくなり、長期戦にならざるを得ないだろう。
 状況によっては、せっかく制圧したオルレアンを放棄することにもなりかねない。
「苦しい戦いになるのは明白だが、だからこそ、是が非でも今回の短期決戦を成功させてほしい」
 では、頼んだよと頭を下げる智樹に見送られながら。
 ディアボロス達はパラドクストレインに乗り、復讐心滾るキマイラウィッチたちが待ち受けるオルレアンへと赴いた。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【託されし願い】
2
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【完全視界】
2
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【水面走行】
1
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【温熱適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、気温摂氏80度までの暑さなら快適に過ごせる世界に変わる。
【パラドクス通信】
2
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【コウモリ変身】
2
周囲が、ディアボロスが小型のコウモリに変身できる世界に変わる。変身したコウモリは最高時速「効果LV×50km」で飛行できるが、変身中はパラドクスは使用できない。

効果2

【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV6 / 【ガードアップ】LV4 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 今宵、お送りいたしますは、オルレアン防衛、ジル・ド・レ軍迎撃戦。
 皆様には、オルレアンを奪還せんと押し寄せるジル・ド・レ軍を相手取っていただきます。

 なお、本シナリオは怒り心頭のジル・ド・レ軍を相手にするため、やや厳しく判定を行います。
 加えて、挑発が成功した場合は、判定がさらに厳しくなります。それ相応の準備をした上での挑戦をお願い致します。

●シナリオ進行について
 本シナリオは選択肢①②③同時にプレイングを受け付けます。
 選択肢③をクリアすればシナリオ成功となりますが、挑発の成否が後の情勢と敵の強さに大きな影響を及ぼしますので、以下の情報をもとに攻略順を考えていただけますと幸いです。

①ジル・ド・レ軍への挑発
 ジル・ド・レまで届くような挑発を行っていただきます。
 目前の敵に対してではなく、ジル・ド・レまで届くような大声や派手な演出のほうが、効果があるかもしれません。

 本選択肢に届いたプレイングは、最優先で執筆致します。
 ただし、挑発が成功すると選択肢②③の難易度が上昇しますので、相談所で相談いただき、タイミングを熟慮いただいた上で行うことを推奨します。

②👾ジル・ド・レの軍勢との激戦『星狼の魔女』
③👿ジル・ド・レ軍指揮官(アヴァタール級)との激戦『ヘキサトリニティ』
 攻め寄せるジル・ド・レ軍との戦闘です。
 基本のディアボロスへの復讐心に加えて、拠点を騙し討ちで陥落させられたり、ジェネラル級を殺されたりという事で、戦闘力が大幅に上昇しております。一段階上の敵を相手にするつもりで挑んでください。
 なお、選択肢①クリア後は、さらに難易度が上昇します。

 プレイングの採用は👑達成程度とし、過度のプレイング採用は行いません。
 プレイング受付締切等、シナリオ進行に関する告知は、全てマスターページにて行います。

 それでは、皆様のプレイング、心よりお待ちしております。
15

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【白の盾】連携アドリブ歓迎

ジャンヌが愛したオルレアン、か……
人の死で飾り立てた城がか……?
あの地に生きる子たちに出会ったよ
彼らこそ、あの街を愛し、街に愛される者だ
真なる解放は――貴殿らを倒してから

戦況を観察しつつ把握
敵は前衛部隊。突出や孤立せぬように、周囲の仲間と足並みを揃え行動
仲間とは死角を補いあえるように立ち、援護

タワーシールドを構えて攻防一体の構えでPD攻撃
敵の一角を切り崩すように、誘導弾で一点を穿つように射撃し傷を深め
味方の攻撃で鈍った動きや、体勢の崩れを逃さず撃ち抜く
複数攻撃で前衛を押しとどめるように交戦しつつ
すでに仲間が削った敵がいれば止めを刺していき
俺が削り役なら、的確に止めを任せていこう

仲間と声を掛け合い、狙いを合わせ
基本は一撃で倒せる敵>消耗した敵を狙い、確実に倒す
包囲に来る敵は優先度を上げる

マティアスさんをWIZでディフェンス
敵の攻撃にはガードアップで護りを固め
俊敏な動きを観察、輝く爪をシールドで防ぎつつ、強化コートで急所や深手を避ける

オルレアンを、今こそ人の手に!


マティアス・シュトローマー
【白の盾】

攻略を進めれば進めるほど、復讐の念で強化される――本当に厄介な相手だね
キマイラウィッチという種族は

これまでに交戦した指揮官レベルの能力を持つ敵を複数体相手取る以上、突出せず、仲間と死角を補える陣形をキープして敵の撃破にあたりたい

まずは一体!
手負いの敵に狙いを定め、指を鳴らす合図でパラドクスを発動。瞬時に張り巡らせた蜘蛛の巣状のトラップ(効果1ではなくフレーバー)でその動きを封じ、構えたP08から弾丸を放ちながら肉薄
次いでダッシュの勢いをのせた回し蹴りをお見舞いしよう
威力の高い単体攻撃で削りもしくはトドメを刺していく

不吉な出来事ねえ…
君達を討ち漏らすとか?
反撃によって齎された動揺は、この作戦を完遂させるという意志と勇気を持って振り払おう
また、被ダメージを【ガードアップ】の効果で軽減しつつ、エトヴァをPOWでディフェンスし、チームの継戦能力を維持
だからこそ、必ずここで仕留めるよ
今出来る最善を尽くせば何も怖くない

許されようなんて端から思ってないさ
君達が何度蘇ろうとオルレアンは渡さない


ルチル・クォンタム
【白の盾】
アドリブその他諸々歓迎です

命を捨てる覚悟は本気の証。その覚悟は受け取りました。
でも、僕らも負けるわけにはいかないから。
その命を踏みにじっても僕らは此処を渡さない。
オルレアンは護りぬきます。――行きます!
相手に向かってパラドクスを発動します。
女神様。月の女神様。その力を僕にお貸しください。
――月は狂気を招く。その狂気でお前たちは命を落とす。狂気齎す女神の威!《ルナティック・リープ・ニードル》!!

相手の反撃はガードアップで耐えつつ致命傷を避けます。
僕らの罪はないわけじゃない。でも、『お前達』に対する罪はないよ。
戦う事に罪はない。そこにあるのはお互いの主張だけだから。
だから!この痛みは意味を成すものじゃない!って強がって、そのまま反撃行きます!
――狂気は際限なく訪れる――


ヴェルチ・アリ
可能ならば【白の盾】の皆さんと共に。

遅れて!しまって!申し訳!ありませんっした!!相変わらず炎しか取り柄ありませんが、助力させてください!!

…なんてね。いい加減、復讐を我が物だけの様に語るのはやめてもらおうか、反吐が出る。

お前たちが、何も知らぬ人を殺しただろうが。
お前たちが、人の骸を好き勝手に弄んだだろうが。

人の復讐心を我が心の様に受け取り、そして力に変える。その在り方が既に吐き気がする。

あぁ、本当に。復讐って感情は、たちが悪い。俺も身をもって思い知ったからな。他人面出来なくなったよまったく。

…せめてもの送り火だ。その感情事、灰と共に宙に流れ去れ。

【火炎使い】を使い、蒼い炎をもってこちらの炎で染め上げ、戦場支配を奪い返す。

味方と連携し、突出しすぎないように。撃ち漏らしがないように、確実に弱った敵は仕留める。
相手からの反撃は武器やバイクを盾にして何とか防ぐ。
本物の炎って奴を魅せてやろう。そんな生っちょろい炎で、こっちを焼けると思うなよ復讐の亡霊風情がさァ!!


アドリブ、絡みを歓迎します。



 ディアボロスが制圧したオルレアンを奪還すべく、キマイラウィッチたちが次々とオルレアンに向けて行軍している。
「ジャンヌ様のため、そして死せる同胞たちのため、ディアボロスへの復讐を!!」
「ジャンヌ様のためならば、この命、喜んで捧げよう!!」
「城亀様を殺めたディアボロスを殺せ!! オルレアンの民にも制裁を!!」
 語気にディアボロスへの復讐心を乗せながら進軍を続けるキマイラウィッチ達の前に、ルチル・クォンタム(加護の外に出た守り人・g10515)が立ちはだかった。
「命を捨てる覚悟は本気の証。その覚悟は受け取りました」
 ――でも、僕らも負けるわけにはいかないから。
「その命を踏みにじっても、僕らは此処を渡さない」
「ディアボロスが……!!」
 怒りをさらに募らせるキマイラウィッチ達の前に、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)も姿を現す。
(「攻略を進めれば進めるほど、復讐の念で強化される」)
 ――本当に厄介な相手だね。キマイラウィッチという種族は。
 キマイラウィッチ達に聞こえぬよう、そっと心の裡のみに呟くマティアスの横では、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)がトループス級キマイラウィッチ『星狼の魔女』たちの動きを観察していた。
 前衛部隊たる魔女たちが発する殺気と復讐心は、異常に強い。
(「突出や孤立せぬように、周囲の仲間と足並みを揃え行動するのが良いか」)
 そう、エトヴァが分析した、その直後。
「城亀様を殺めたディアボロスめ、徹底的に引き裂いてくれよう!!」
 魔女たちが黒く輝く爪を伸ばしながら、俊敏な動きで距離を詰めて来た。


 最初の攻撃の標的となったのは、ルチル。
 狼のような俊敏な動きでルチルに迫った魔女たちは、次々と黒く輝く爪を振り下ろした。
 ルチルも咄嗟に【ガードアップ】の恩恵で耐えようとするが、魔女たちはそれすらものとせぬ勢いで一気にルチルを斬り裂いた。
(「ぐぅ……っ、一撃が重い!!」)
 足をふらつかせながらも、ルチルは大鎌を構えながら己が力を具現化させ、パラドクスを発動。
「オルレアンは護りぬきます。――行きます!」
(「女神様。月の女神様。その力を僕にお貸しください」)
『――月は狂気を招く。その狂気でお前たちは命を落とす。狂気齎す女神の威!《ルナティック・リープ・ニードル》!!』
 具現化した力がエネルギーの針となり、ルチルを斬り裂いた魔女の四肢を掠めるが、その傷は浅い。
(「一段階上の敵を相手取るつもりで、とは言われていましたが、やはり――!!」)
 ひとりひとりがアヴァタール級に匹敵する力を持つと確信し、ぐっと大鎌を握り締めるルチル。
 そんなルチルの死角を埋めるように、マティアスが立ちながらP08を構えた。
「これまでに交戦した指揮官レベルの能力を持つ敵を複数体相手取る以上、突出はしたくないな」
 エトヴァとともにお互いの死角を補える陣形をキープしようとしながら、マティアスはルチルが撃ち抜いた魔女に目をやり、指を鳴らす。
『動かない方がいいよ。その手足が大事なら』
 ――パチン!!
 魔女が蜘蛛の巣状のトラップに捕らえられると同時に、マティアスの目前にどこか不吉な予感を抱かせるような光景が広がるが、マティアスは構わずP08のトリガーを引き、弾丸を追うようにダッシュ。
 銃口から発射された弾丸が魔女を貫いた直後、ダッシュの勢いを乗せた回し蹴りを腹に浴びせるが、魔女は軽くふらついた程度。
(「今の戦況は……」)
 エトヴァがタワーシールドを構えながら戦場を観察すべく目を凝らしていると、続けざまに3体の魔女が俊敏な動きでエトヴァに迫り、黒く輝く爪を振り下ろす。
 ひとつ、ふたつとタワーシールドに深い切り傷が穿たれ、みっつ目の爪がエトヴァの足を切り裂いた。
「ぐっ……!!」
 盾と脚から響く衝撃の重さにぐっと耐えながら、エトヴァは標的を追尾する誘導弾を発射し、3体の魔女を青白い炎で燃やしながら腹を貫いた。
 3体のうち、マティアスの連撃を受けた魔女が大きく体勢を崩しながら青い炎の狼を召喚しようとした、まさにその時。
「遅れて! しまって! 申し訳! ありませんっした!!」
 どこか慌てて謝罪するかのような声と同時に、蒼炎のビームが空間を貫いた。
「ヴェルチさんか!!」
 エトヴァが振り向けば、後方からヴェルチ・アリ(GE-07・SOL01847・g03614)が青い炎の狼を振り払いながら蒼炎のビームを魔女に発射していた。
 ビームはやがて蒼の炎と化しながら広がり、魔女を燃やし始めている。
「相変わらず炎しか取り柄ありませんが、助力させてください!!」
 ヴェルチが駆け寄り、ルチルたちの死角を埋めるように立った頃には、蒼炎に呑まれた魔女が力尽きたか、膝を折っていた。


 トループス級との戦闘は、激戦の様相を呈していた。
 ディアボロス達は誰ひとりとして突出せず、孤立もさせぬよう陣を組み、お互いの死角を作らぬようカバーし合いながら、魔女に攻撃を集中させてゆく。
 一撃で倒せる魔女がいれば最優先で狙い、そうでない場合は消耗が見られる魔女を狙い、1体1体に攻撃を集中させていった結果、魔女の数はひとり、またひとりと確実に減っていった。
 だが、復讐心で戦力が増大している魔女たちは、1体1体がアヴァタール級に準ずる力を持っている。
 仮に反撃の手を逸らし、軽減する手を打ったとしても、残留効果が十二分に高まっていない状況では、負傷が嵩むのは避けられない。
「おのれ、ディアボロス……!!」
 次々と同胞が倒れていくのを目にした魔女たちが、敵愾心を露わに黒く輝く爪を大きく振り上げる。
 その狙いは――最も継戦能力の高い、エトヴァだ。
「エトヴァさん!!」
 マティアスがエトヴァを庇い、その爪を受ける。
 ――ザクッ!!
 黒く輝く爪は、マティアスの左肩から右わき腹にかけて、深々と袈裟に斬り裂いた。
「ぐ、は……っ!!」
【ガードアップ】の恩恵を受けていてもなお強烈な一撃を浴びせられ、一瞬息が詰まり、意識が飛びかける。
「マティアスさん!」
 すぐさまエトヴァが誘導弾を発射し、炎に包み込むが、復讐に燃える魔女たちの手は止まらない。
 そして、魔女たちの黒く輝く爪の一撃は、ルチルにも容赦なく襲い掛かる。
「ディアボロスに制裁を! 無残なる死を!!」
 ――ザシュッ!!
「ぐぐぅ……っ!!」
 立て続けに肉体を斬り裂かれ、ルチルも息を詰まらせる。
 咄嗟に致命傷を避けるよう動きはしたものの、急所を避けるだけで精いっぱい。
 やはり【ガードアップ】だけでは、アヴァタール級に匹敵する魔女の痛撃を軽減するには足りなかったか。
(「残留効果頼みにするだけではなく、攻撃を受け流し、軽減する方法を模索したほうがよかったでしょうか?」)
 それでも、ルチルは痛みをこらえながら、懸命に魔女たちに言い返す。
「僕らの罪はないわけじゃない。でも『お前達』に対する罪はないよ」
「何を言う!! オルレアンを我らの手から奪ったことこそ、お前達の罪!!」
「戦う事に罪はない。そこにあるのはお互いの主張だけだから」
 ――だから。
「この痛みは意味を成すものじゃない!」
 痛みに耐えながら、ルチルは具現化したエネルギーの針で魔女を撃ち抜いた。
 魔女がマティアスに指先を突き付け、星の光を広げる。
「さあ、お前の未来を星に聞いてやろう」
「……っ!?」
 マティアスの目前に、復讐に燃えるキマイラウィッチ達の猛攻で次々と倒れ伏すディアボロス達と、キマイラウィッチ達に無残に蹂躙されるオルレアンの民の姿が現れる。
 ――おそらくこれは、魔女を討滅できなかった場合、ほぼ確実に齎される未来。
(「これは、俺たちが敗れた後の未来か!?」)
 その光景にマティアスは激しく動揺し、脚を止めてしまった。
 直後、躊躇なく容赦なく、魔女の黒の爪がマティアスの腹を切り裂く。
「がはっ……!!」
 更なる深手を負い、思わず二、三歩後ずさってしまうマティアス。
 だが、この作戦を完遂させるという意志と勇気を奮い立たせ、傷の痛みで動揺した心を無理やり鎮めながら、星詠みをした魔女に蜘蛛の糸を絡みつかせた。
「俺たちがやられる未来ではなく、だからこそ、必ずここで仕留めるよ」 
 ――今出来る最善を尽くせば、何も怖くないのだから。
「君達が何度蘇ろうとオルレアンは渡さない」
 マティアスはP08から発射した弾丸を追うようにダッシュし、着弾と同時に魔女の腹を蹴り飛ばす。
 大きく体勢を崩した魔女に、ヴェルチが糾弾の声をぶつけながら迫った。
「お前たちが、何も知らぬ人を殺しただろうが。お前たちが、人の骸を好き勝手に弄んだだろうが!」
「お前達こそ、城亀様を、そして我らが同胞を沢山殺したではないか!!」
「城亀様の、同胞たちの復讐を、今この手で!!」
 負けじと糾弾する魔女たちの言に、ヴェルチは妙な苛立ちを覚えていた。
 ――彼らの糾弾こそ、人の復讐心を我が心の様に受け取り、力に変える業。
 そんなキマイラウィッチの在り方を目にすると、苛立ちだけでなく吐き気すら覚える。
 ――あぁ、本当に。
「復讐って感情は、たちが悪い」
 だが、その感情は、ヴェルチ自身も身をもって思い知っている。
 だからこそ――他人面は出来ない。
 できなく……なったから。
「……せめてもの送り火だ。その感情事、灰と共に宙に流れ去れ」
 ヴェルチは己が火炎使いの力で、魔女の青い炎を自らの蒼に塗り替えようとしたが、青の火勢は衰える気配を見せない。
(「技能だけでは、パラドクスの炎を塗りつぶせそうにないか……それなら!!」)
 ――炎が防げぬなら、弱っている魔女だけでも撃ち漏らさない!
『迸れ、迸れ……奔流よ、炎よ、閃光よ、ホトバシレッ!!』
 ヴェルチはバイクを盾に蒼き炎を防ぎながら魔力及び体内の熱エネルギーを凝縮し活性化させ、右瞳から蒼炎のビームとして撃ち出す。
 ヴェルチの裡で滾り狂う紅の凶火が、オルレアンの人々やディアボロス達を導く蒼の導火と化したかのように収束し、未来を妨げる魔女のうち2体を容赦なく貫いた。


 ヴェルチの蒼炎を受けた魔女が倒れ、残る魔女の数はあと3体。
 そしてその3体の視線は――全てエトヴァに向いていた。
「お前がこの部隊の鍵だな!」
「ジャンヌ様が愛したオルレアンを穢すとは!! その蛮行、万死に値する!!」
 攻防一体、かつ削りの役も担っていたエトヴァを倒すべく、魔女たちは黒く輝く爪を振り上げる。
「人の死で飾り立てた城がか……?」
 エトヴァも俊敏に動く魔女たちの挙動を観察しつつ、【ガードアップ】で守りを固めながらタワーシールドを構えた。
「俺はあの地に生きる子たちに出会ったよ。彼らこそ、あの街を愛し、街に愛される者だ」
 爪の三連撃を、エトヴァはタワーシールドで逸らし、なおかつ急所や深手を避けるよう身体をずらしながら、3体に誘導弾を連射。
 3本のうち1本はタワーシールドで逸らすも、2本の黒く輝く爪が強化コート越しに切り裂くが、同時にエトヴァに爪を向けた3体全てに誘導弾が命中した。
 誘導弾が青白く燃え上がり、魔女たちを次々と燃やし、傷を深めてゆく。
 やがて、負傷が嵩んでいた魔女がさらに1体倒れ、消滅した。
「真なる解放は――貴殿らを倒してから」
「――月は狂気を招く。その狂気でお前たちは命を落とす。狂気齎す女神の威!《ルナティック・リープ・ニードル》!!」
 すかさずルチルがエネルギーの針を具現化し、魔女たちの胴を深く、深く穿つ。
 黒く輝く爪がルチルの四肢を掠めるが、気にせず針を深く突き刺した。
「うが、あぁ……」
 針を受けた魔女が、精神を狂気に侵され、一瞬だけ瞳を虚空に彷徨わせるも、すぐに戦場に視線を戻し、ヴェルチに青い炎の狼を嗾けながら炎を広げる。
「そんな生っちょろい炎で、こっちを焼けると思うなよ復讐の亡霊風情がさァ!!」
 ヴェルチも青い炎の狼と燃え広がる炎を、得物を盾にしてやり過ごしながら、瞳から蒼炎のビームを発射。
 ビームは青き炎の狼ごと魔女を撃ち抜き、さらに1体消滅に追いやった。
 残った最後の魔女が、マティアスの目前に星の光を集め、不吉な光景を見せようとするが。
「見せないさ」
 エトヴァがマティアスを庇いながら、心の裡から湧き上がる動揺を抑え込む。
 視界が遮られたからか、マティアスの心が動揺することは、ない。
「最初から許されようなんて端から思ってないさ」
 エトヴァに感謝しながら、マティアスが魔女の眉間に銃弾を撃ち込み、ダッシュからの回し蹴りを浴びせかける。
 それがトドメとなったか、最後の魔女が仰向けに倒れ――消滅した。


 魔女たちが全て倒れた後、アヴァタール級キマイラウィッチ『ヘキサトリニティ』のみがその場に残される。
 キメラのような容貌のキマイラウィッチは、さらに復讐心を滾らせ、怒りに燃える瞳でディアボロス達を睨んでいた。
「ディアボロスめ、良くも同胞を!! 魔女たちを!!」
 業火の如く燃え盛る怒りの視線を、ルチルは大鎌をぐっと握りしめながら見返し、ヴェルチも蒼く輝く瞳で睨み返しながら吐き捨てる。
「いい加減、復讐を我が物だけの様に語るのはやめてもらおうか、反吐が出る」
 そして、エトヴァは――タワーシールドを高々と掲げながら、高らかに宣言した。
「さあ、オルレアンを、今こそ人の手に!」
「君達が何度蘇ろうと、オルレアンは渡さない」
 マティアスの静かな声に、さらにヘキサトリニティが怒りを募らせてゆき。

 ――オルレアンをめぐる戦いは、さらに苛烈さを増してゆく。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【コウモリ変身】LV2が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【温熱適応】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV3が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!

エイレーネ・エピケフィシア
愛するクロエ様(g08917)をディフェンスし共闘

道理に反する怨恨が不浄の獣にどれほどの力を与えるとしても、一歩も退きません
今こそ、キマイラウィッチに、クロエ様の……真なる魔女の怒りを知らしめる時なのですから!

≪神護の長槍≫と≪神護の輝盾≫を手に前衛を担当
盾で自身と後衛のクロエ様を護りながら戦います
壁となってクロエ様の詠唱が目立ちづらい状態を整え、彼女の術で出現した植物の怪物による射撃に敵が応じる猶予を減らしましょう

盾を構えたまま槍を敵に向け、穂先より『勝利齎す女神の威光』を放射
クロエ様より先に動く場合は槍を横薙ぎに振るって、光で3つの頭部を纏めて薙ぎ払い、ダメージを与えつつ視界を妨げて後続の攻め手を見え難く
逆に後に動く場合は、頭に矢が刺さった隙に槍を突きつけ、敵の胴を貫くように光を照射
【命中アップ】の導きの下に直撃を狙います

敵の技に対しては蛇を槍で打ち払い、牙と角を盾で防御
防ぎきれず肌を噛まれる時も、咄嗟に身を逸らし喉首等の急所に当てさせません

魔女の称号を穢す輩を、わたしは赦しません!


クロエ・アルニティコス
愛するエイレーネ(g08936)をディフェンスし、共に戦います。

オルレアン公の名前を知っていますか?
シャルル・ド・ヴァロワ。お前たちが焼き殺そうとしたこの時代の復讐者ですよ。
元の持ち主より奪い、支配し、街を穢してきたものたちはお前たちでしょう。盗人猛々しい。
思い込みの激しい……ですが、この狂気こそが魔女どもの力というわけですね。

【ケンタウロス・タクスス】を使用、ケンタウロスを象った植物の怪物を作り出し矢を放たせ攻撃を行います。
エイレーネより先に動く場合は獅子の頭や山羊の頭を狙って矢を放たせ、複数ある頭部への攻撃で注意を引き付けることで続く攻撃に繋げ、後に動く場合は敵の人間の胴を狙って矢を放たせ、大きなダメージを与えることを狙います。
敵1体を的確に貫く技にエイレーネとともに【命中アップ】を重ねて、痛打を与えていきましょう。

エイレーネとは常に傍で戦うようにし、敵の攻撃からお互いを守り合えるように。
反撃の氷嵐は守護の青薔薇の防御結界で身を守ります。

狂った魔女の排除も、きっと魔女の仕事でしょう。



「ディアボロスめ、良くも同胞を!! 魔女たちを!!」
 トループス級キマイラウィッチ『星狼の魔女』達を全て倒され、さらに復讐心を募らせているアヴァタール級キマイラウィッチ『ヘキサトリニティ』の前に、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)とクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)が救援機動力で駆け付ける。
「道理に反する怨恨が不浄の獣にどれほどの力を与えるとしても、一歩も退きません」
「今こそ、キマイラウィッチに、クロエ様の……真なる魔女の怒りを知らしめる時なのですから!」
 守護の青薔薇の防御結界を展開するクロエの前に立ちながら、エイレーネは神護の長槍と神護の輝盾を構え、凛と言い放つ。
 その言の葉に、ヘキサトリニティの女性の唇が歪んだ。
「――真なる魔女、ですって?」
 低い声音とともに、獅子と山羊、そして女性の目が、一斉にクロエに向けられる。
「だったら、先に一つ、魔女狩りと行きましょうか?」
 エイレーネが体制を整える前に、ヘキサトリニティの女性の口が詠唱を始め、獅子と山羊が鳴き始めた。


 獅子と山羊の鳴き声と女性の声が共鳴し、魔力が増幅され氷嵐と化す。
 それはあっという間に威力を増し、悠々と戦場全体を呑み込む程にまで膨れ上がった。
(「この魔力……やはりアヴァタール級の魔力ではありません!!」)
「さて、まずは――真なる魔女とやらから凍り付かせてあげましょうか?」
 ヘキサトリニティがクロエを指差すと、氷嵐は瞬く間にクロエを呑み込んだ。
「う……くっ……!!」
 咄嗟に守護の青薔薇の防御結界を張り巡らせるも、荒れ狂う氷嵐はクロエの全身を凍り付かせ、ズタズタに引き裂いた。
「クロエ様!?」
「大丈夫です、反撃はできます――『種子に宿るは我が哀傷、芽吹け『ケンタウロス・タクスス』!』」
 氷嵐に揉まれながらクロエがパラドクスを発動すると、ケンタウロスを象った植物の怪物が現れる。
 現れた怪物は、氷嵐に枝葉をもぎ取られながらも、良くしなる枝と強靭な蔓でできた弓に矢を番え、山羊の頭に向けて放った。
 矢が頭に突き刺さると同時に山羊の詠唱が途切れ、氷嵐の威力が弱まる。
(「今のうちに私が!」)
 エイレーネが盾を構えたまま槍の穂先をヘキサトリニティに向け、パラドクスを発動した。
『アテーナー様! 大神ゼウス様の姫神にして、勝利を齎す女神よ! どうかこの槍に、人々の敵を撃ち破る力をお与えください!』
 エイレーネの祈りが届いたか、アテーナー神の加護の光明が槍に宿り、黄金に輝く。
 先ほどは先手を取られ、大切なクロエ様への攻撃を許してしまったが、二度も先手を許すつもりはない。
「クロエ様を傷つけ、魔女の称号を穢す輩を、わたしは赦しません!」
 一喝と共に、エイレーネは黄金の加護が宿った槍を、地面と水平に、横薙ぎに払う。
 刹那、槍の先端から黄金の破壊光線が放たれ、獅子と山羊、そして人間の頭を薙ぎ払った。
「うふふ、その威勢良い声、どこか気に食わないわね」
 黄金の光に目を晦まされながら、ヘキサトリニティも獅子の牙と山羊の角、そして杖から伸びる蛇の毒でエイレーネを喰らおうとする。
 エイレーネも牙と角に刺されまいと盾を掲げ、蛇の毒を避けるべく槍で払おうとしたが、槍で払われた蛇がエイレーネの腕に向け胴を伸ばし、噛みついた。
「く……っ!!」
 噛みつかれた箇所から蛇の毒が体内を回り始め、エイレーネは思わず膝をつく。
「エイレーネ!!」
 その姿を見て、クロエが再度怪物を召喚し、矢を射かけさせた。
 今度の狙いは、ヘキサトリニティの三つ頭ではなく――人間の胴。
 ――ヒュッ!!
 ――ゴウッ!!
 反撃の氷嵐がクロエの周囲を荒れ狂い、再び四肢を凍り付かせようとするが、怪物が放たった矢は真っ直ぐ氷嵐の中心を突っ切る。
 注意を惹くのでもなく、妨害するのでもなく、痛打を与える目的で放った一撃は、的確にヘキサトリニティの胴を貫いていた。


 その後も、エイレーネとクロエは、常にお互いの傍で戦うようにし、敵の攻撃からお互いを守り合えるような位置取りを保ちながら、交互にヘキサトリニティにアタックしダメージを重ねてゆく。
 エイレーネが盾と鉾の役割を担い、クロエの詠唱を隠しながら黄金の加護を得た槍で果敢にアタックし、三つ首の目を晦ましながら薙ぎ払い。
 クロエもエイレーネに護られながら怪物を召喚し、三つ頭の何れかに射かけ注意を逸らし、時には胴を狙い痛烈な一打を与えていく。
 ふたりの技能の高さに加え、幾度となく強大なクロノヴェーダに挑んだ経験から練り上げた作戦が功を奏し、ふたりはジェネラル級に匹敵する強さを誇るキマイラウィッチを前に、一歩も引かず渡り合っていた。
 だが、ヘキサトリニティはジェネラル級キマイラウィッチ『城亀ジャン・ポトン・ド・ザントライユ』を討ち取られ、復讐心を募らせているため、己が力をジェネラル級に匹敵する程にまで高めている。
 ゆえに、ヘキサトリニティからの反撃は苛烈を極め、クロエは氷嵐に巻き込まれ全身を斬り裂かれ、エイレーネも喉首以外に生じた噛み傷から血を滴らせていた。
「オルレアン公の名前を知っていますか?」
 何度目かの攻防の後、クロエはエイレーネの盾に身を隠しつつ、ヘキサトリニティに問いかける。
「あら、今さら何を聞こうと?」
「シャルル・ド・ヴァロワ。お前たちが焼き殺そうとしたこの時代の復讐者ですよ」
「あらあら、そんなのもいたわねえ」
「元の持ち主より奪い、支配し、街を穢してきたものたちはお前たちでしょう。盗人猛々しい」
「盗人はお前達ディアボロスでしょう? 騙し討ち同然に城亀様を討ち取ったのだから」
 嗜虐心を口端に浮かべるヘキサトリニティに、クロエの表情が若干曇る。
(「思い込みの激しい……ですが、この狂気こそが魔女どもの力というわけですね」)
 クロエにとって、『魔女』とは戦い方であると同時に、生き方そのもの。
 だから、目の前の復讐心滾らせる『魔女』たちの在り方が……どうしても狂っているようにしか思えない。
 ――ならば、今為すべきことは。
「……狂った魔女の排除も、きっと魔女の仕事でしょう――やりなさい!」
 クロエの短い声と同時に、植物の怪物が召喚される。
 怪物は主の意を汲んだかのように、三つ首のひとつ、山羊の頭に向けて矢を射かけた。
 反撃でクロエと怪物が氷嵐に包まれるが、射かけられた矢は氷嵐を貫き、真っ直ぐ山羊頭に突き立つ。
 三つ首全ての視線がクロエに向けられ、エイレーネから逸れた。
「魔女の称号を穢す輩を、わたしは赦しません!」
 すかさずエイレーネは黄金の加護を受けた槍の穂先をヘキサトリニティの胴に向け、黄金の破壊光線を発射。
 薙ぎ払うようにではなく、一直線に発射された黄金は、ヘキサトリニティの胴を貫いていた。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【隔離眼】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV2が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
怒れる魔女よ。その復讐を振りかざし、弱き人々を虐げるは傲慢だ
ディアボロスは逃げも隠れもしない
互いに譲れぬものはあろう

敵の動きを観察し、把握
仲間と連携できる場合、立ち位置に確度をつけ、味方の攻撃に合わせ援護射撃
正真正銘の強敵相手だ

銃でPD攻撃
攻撃動作の看破と合わせ、動き出しを制し詠唱を妨害するように
獅子、山羊、蛇の動きにも注意を逸らさず対峙
一撃ずつを有効打にすべく、命中アップで研ぎ澄まし
確実な攻防で、銃弾を重ね穿ち続ける
観察を続け、負傷による動きの乱れ、攻撃直後等の獣と女性の視線のずれ、愉悦の隙があらば逃さない

反撃は確実に来ると予期し
敵の攻撃にはガードアップのせ、タワーシールドで氷嵐の直撃を防ぎつつ、バイザー越しに視野を確保し隙は見せず
荊の魔力障壁を全身に纏い、強化コートで軽減する
その攻撃は苛烈、なれど
分が悪くても、繋ぐための戦い
ガードアップで粘り一撃でも多く

ここを一歩たりとも譲る気はない!
俺達の復讐は、未来を切り開くための復讐
魔女の呪いじみた復讐の連環は、ここで断ち切る!



 エイレーネ・エピケフィシアとクロエ・アルニティコスが退いた後、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が再び前に進み出る。
「怒れる魔女よ、その復讐を振りかざし、弱き人々を虐げるは傲慢だ」
「あら、憎い憎いディアボロスが、また引き裂かれにやって来たのね」
 アヴァタール級キマイラウィッチ『ヘキサトリニティ』は獅子と山羊、そして女性の瞳でエトヴァを見つめる。
 その視線と言の葉の端々に、堪え切れぬ嗜虐心が見え隠れしていた。
「ああ、俺たちディアボロスは逃げも隠れもしない」
 互いに譲れぬものはあろう、と呟きながら、エトヴァもまた、確りとヘキサトリニティに目を向ける。
 エイレーネとクロエが挑んでいる間に、ヘキサトリニティの動きはある程度観察し、把握している。
(「やはり、本来はアヴァタール級だが、ジェネラル級に匹敵する力を持っているようだ」)
 正真正銘の強敵相手、油断は禁物。
 タワーシールドを構えながら、エトヴァは相手の攻撃の動き出しを看破しようと目を凝らした。
 獅子と山羊の口が開き、女性の口が何かを詠唱し始める。
「『――戦い抜く』」
 その一瞬を狙いすまし、エトヴァは詠唱を止めるべく、パラドクスを発動し――銃の引金を引く。
 高い技量と的確なパラドクス、そして戦術眼で機を見極めた一撃は、確実にヘキサトリニティを捉えた。
「うふふ、それで止められるとでも?」
 ヘキサトリニティが女性の口にほんの少しだけ嘲笑が浮かべた直後、エトヴァの周囲に氷嵐が発生し、荒れ狂い始めた。
 おそらく、銃弾が命中する直前に、詠唱が完了していたのだろう。
 タワーシールドを掲げつつ、荊の魔力障壁を全身に纏い、さらに強化コートで少しでも冷気と氷の暴力を軽減しようとするが、冷気は容赦なくエトヴァの身体を蝕み、無数の氷片がコートや衣服、そして皮膚を切り裂いた。
 見立て通り、ヘキサトリニティの攻撃は苛烈。
 格上相手に、分も悪い。
 それでもエトヴァは観察を続け、負傷による動きの乱れ、攻撃直後等の獣と女性の視線のずれ、愉悦の隙があらば逃さず、氷嵐に確実に射撃を重ねてゆく。
 なぜなら、これは――。
(「――後に繋ぐための、繋げるための戦いだからな」)
 エトヴァ自身、救援機動力をフルに生かし、多くの戦場を転戦している。
 そして、この戦場にも、他の戦場にも、多くのディアボロスが駆け付け、戦ってくれているのを目にしてきた。
 彼らが作ってくれた挑発の機を逃さぬために。
 そして何より――ジル・ド・レとの直接対決の機を逃さぬために。
「ここを一歩たりとも譲る気はない!!」
 己に活を入れながら、エトヴァはタワーシールド越しに銃を突き出す。
 そして、氷嵐がエトヴァを呑み込むと同時に、引金を引いた。

 ――ターン!!

 エトヴァの決意を籠めた弾丸が、銃口から飛び出す。
 反撃の氷嵐がエトヴァを巻き込み荒れ狂うが、強い決意の籠った弾丸は真っ直ぐ氷嵐を貫き、ヘキサトリニティの胴を撃ち抜いた。
「ああ……ああ憎い憎い憎い!! ディアボロスめ、たっぷり八つ裂きにしてやる!!」
「俺たちの復讐は、未来を切り開くための復讐。魔女の呪いじみた復讐の連環は、ここで断ち切る!!」
 魔女の怨嗟の声に、エトヴァは力強い言の葉で立ち向かう。
 その一方で、エトヴァは頭の片隅で冷静に次の一手を思考していた。
(「そろそろ……挑発を入れる頃合いか?」)
善戦🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【完全視界】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!

青沢・屏
前線は奮戦中――問題ない。
そして、私がやるべきことは、これだ。

さあ、銀色に輝くリボルバーを空へと掲げ、高く掲げ、引き金を引く!
そして、拡声器を手に取り、敵陣に向かって大声で叫ぶ!

おい、こっちを見ろ、この役立たずども!特にそこのジル・ド・レェ!
そうだ、貴様らのことだ!狂気に溺れ、他人から借りた力で、自分が強い、偉いと勘違いしている――ただの脇役共が!
我々はオルレアンで哀れな「ラヴァル兄弟」を屠った。そして今日、かつて私の手下だった「ヘキサトリニティ」をもう一人、加えてやる!!

貴様らなど、所詮は操り人形に過ぎん!
復讐だ、我々を殺したいだとほざき狂っている今こそ、かかってくるがいい!

光の刃を振り下ろすと同時に、リボルバーを射撃モードに切り替え、魔力弾で目に見える軍旗を狙い撃つ。
撃ち落とせても、落とせなくてもいい、貴様らが“軍隊”である限り――こんなことは許せないだろう?

我々、ディアボロスは、ここにいる!
さあ、喚け、叫べ、泣き喚いて死にに来い!



(「そろそろ……挑発を入れる頃合いか?」)
 エトヴァ・ヒンメルグリッツァが思案を始めたその時、背後から銃声が響く。
 エトヴァが銃声に反応し振り向いてみれば、青沢・屏(静かなる炎・g00202)が、銀色に輝くリボルバーを真っ直ぐ空に向けて高く掲げていた。
 銀のリボルバーの銃口からは、薄く煙が立ち上っている。
 注目を向けるための銃声は、確かにアヴァタール級キマイラウィッチ『ヘキサトリニティ』と、その後方の敵陣にいるキマイラウィッチたちの耳に届いていた。
(「前線は奮戦中――問題ない」)
 ――そして、駆け付けた自分がやるべきことは――これだ。
 そう、理解した上で放った1発の銃弾に対する、ヘキサトリニティと後方の陣にいるキマイラウィッチたちの反応は――嗜虐的、かつ憎悪の視線。
「あら、今頃痛めつけられに来たのかしら?」
(「よし、掴みは充分だ」)
 そう判断した屛は、拡声器を手に取り、ヘキサトリニティと後方の敵陣に向かって大声で煽り始めた。

「おい、こっちを見ろ、この役立たずども! 特にそこのジル・ド・レェ!」
 突然屏の口から飛び出した言の葉に、ヘキサトリニティの両肩から生えている獅子と山羊がうなり声を上げ始める。
「そうだ、貴様らのことだ! 狂気に溺れ、他人から借りた力で、自分が強い、偉いと勘違いしている――ただの脇役共が!」
「言わせておけば……!!」
 ヘキサトリニティの女性の口からも怒りの言の葉が漏れるが、屛は意に介しない。
「我々はオルレアンで哀れな『ラヴァル兄弟』を屠った。そして今日、かつてわ……」
『私の』と続けようとして、屏は違和感を覚え言葉を詰まらせた。
(「しまった、『私の』だと、私自身の手下という意味になってしまう」)
「何を言いたいのかしらね?」
 言い換えの言葉を探している屏に、ヘキサトリニティが冷たい声を浴びせる。
 その声に若干たじろぎそうになるが、屛も負けじと代わりの言の葉を口にした。
「……いや、お前の手下の『ヘキサトリニティ』をもう一人、加えてやる!!」
「……っ!!」
 死の宣告に等しい言の葉を耳にしたヘキサトリニティの全身から、怒気が立ち昇った。
 おそらく、後方の陣にいるキマイラウィッチ達も、怒りを募らせていることだろう。
「貴様らなど、所詮は操り人形に過ぎん! 復讐だ、我々を殺したいだとほざき狂っている今こそ、かかってくるがいい!」
 拡声器のマイクを手に堂々と宣言しながら、屛はリボルバーを射撃モードに切り替え、目に見える軍旗を狙い魔力弾を発射。
 実際に軍旗に命中したかどうかは、屛にはわからない。
 だが、重要なのは――軍旗を狙い撃ちされた、という事実、そのものだ。
「貴様らが“軍隊”である限り――こんなことは許せないだろう?」
「やってくれる……!!」
 軍旗に向けた射撃を目にし、さらに怒りを募らせるヘキサトリニティに、屛はとっておきの言の葉を放つ。
「さあ、我々、ディアボロスは、ここにいる! 喚け、叫べ、泣き喚いて死にに来い!」
 堂々と、朗々と宣言しながら、屛はヘキサトリニティを、そしてその後方にいるジェネラル級キマイラウィッチ『フィリップ善良公』の陣を見つめる。
 その言の葉を耳にしたキマイラウィッチたちは、殺気の籠った瞳で屏を睨んでいた。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携等歓迎
拡声器をスピーカーに繋ぎ、ジル・ド・レへ大声で挑発
仲間の挑発には「そうだそうだ」「まったくその通り!」と合いの手や嘲笑を入れ煽ろう

そこに見えるは、間抜けのジル・ド・レじゃないか!
今頃、アホ面を晒しにオルレアンに来てくれたのかい?
戻りが遅いと思えば、お友達に泣きついて、これ見よがしの大軍を連れてきたとは
ジル・ド・レは、実力なしの臆病者だぞ!

もはや、オルレアンに貴様の玉座は存在しない!
ジャン・ポトンは貴様を呪いながら死んでいったぞ!
なぜ、自分一人に防衛を任せて出ていったのかとな!
大将がこんなにアホな臆病者なら、オルレアンが陥落したのも当然だったな!
そんな役立たずの将など、ジャンヌ女王も願い下げだろう
というか、よく今までオルレアンを任されていたな……もしかして、ジャンヌもアホなのか……!

力だけのゴリラの群れなら、どれだけ大軍を集めてもムダ。猿山に帰りな
ボス猿の女王の足を舐めて、オルレアンを取り返してくださいってみっともなく泣きついてきな!

おや!ジル・ド・レの地団駄が聴こえるぞ!
と嘲笑


マティアス・シュトローマー
この戦いの中でも同胞を倒されたヘキサトリニティは復讐の念を募らせている
そんな彼女達をここからさらに挑発するなんて正気の沙汰じゃない――けど、俺達の狙いはそのさらに先のジル・ド・レ
(作戦の大胆不敵さに笑って)いいね、派手にブチかましてやろう

先の戦いでの傷を感じさせない余裕の笑みを張り付けて拡声器を構えよう

あはは
仲間を討たれ、大切な拠点を俺達に占拠されても尚、得られた力はこの程度
同情してしまうよ
それとも何?
ジャンヌ様のところに逃げ帰って泣き付くためにわざわざ討たれに出てきてくれたとか?

そりゃそうだよなー
後ろでふんぞり返ったあの間抜けなジル・ド・レの言葉に従っていたら、君達ですら命がいくつあっても足りないだろうからね
あーあ、馬鹿な上司の下についてしまったせいで可哀想に

そこで聞いてるんだろ、ジル・ド・レ
自分が無能なせいでオルレアンを奪われ、仲間が倒れていくのを見るのはどんな気持ち?
君の心を代弁してここでご機嫌なタップダンスでも踊ってあげようか
ほら、特等席は空けておくから出てきなよ
手拍子もよろしく



 青沢・屏が拡声器越しにジェネラル級キマイラウィッチ『ジル・ド・レ』達の軍勢に向けて挑発している間に、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)はいったん銃を納め、拡声器を繋いだスピーカーをジル・ド・レたちの陣があると思しき方角に向けていた。
(「この戦いの中でも、同胞を倒されたヘキサトリニティは復讐の念を募らせている」)
 マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)もまた、拡声器を構えながら、ジル・ド・レ達ジェネラル級の陣があるであろう方角を見つめる。
 正直、復讐の念を滾らせている、アヴァタール級キマイラウィッチ『ヘキサトリニティ』を始めとする魔女達を、ここからさらに挑発するなんて正気の沙汰じゃないとは思うけど。
(「俺たちディアボロスの狙いは、そのさらに先のジル・ド・レを始めとするジェネラル級」)
 ――だからこそ、彼らに撤退の隙を与えぬよう、敵の戦力が上昇するのを覚悟の上で挑発に挑む。
 その、あまりにも大胆不敵な作戦に、マティアスは思わず笑っていた。
「いいね、派手にブチかましてやろう」
「そうだな。では……」
 笑うマティアスに同意しながら、エトヴァはすぅ、と息を吸い込み、拡声器のマイクを手に、戦場に向けて話し始めた。


「そこに見えるは、間抜けのジル・ド・レじゃないか! 今頃、アホ面を晒しにオルレアンに来てくれたのかい?」
 エトヴァの口から飛び出した言の葉に、ヘキサトリニティの三つ首が一斉に怒りの色に染まる。
「戻りが遅いと思えば、お友達に泣きついてこれ見よがしの大軍を連れてきたとは、ジル・ド・レは、実力なしの臆病者だぞ!」
「ジル・ド・レ様を臆病などと……!!」
「もはや、オルレアンに貴様の玉座は存在しない! ジャン・ポトンは貴様を呪いながら死んでいったぞ! なぜ、自分一人に防衛を任せて出ていったのかとな!」
「城亀様をも愚弄するか!!」
 ヘキサトリニティの怒号が響くが、しかしエトヴァは涼やかに受け流しながら熱のこもった言葉で心を乱してゆく。
「大将がこんなにアホな臆病者なら、オルレアンが陥落したのも当然だったな!」
「な……っ!?!?!?」
「そんな役立たずの将など、ジャンヌ女王も願い下げだろう。というか、よく今までオルレアンを任されていたな……」

 ――もしかして、ジャンヌもアホなのか……!

 敬愛する女王を貶され、ヘキサトリニティの女性の顔が怒りに紅潮するのを見て、エトヴァはさらに畳みかける。
「力だけのゴリラの群れなら、どれだけ大軍を集めてもムダ。猿山に帰りな」
「我々がゴリラだと!?」
「ボス猿の女王の足を舐めて、オルレアンを取り返してくださいってみっともなく泣きついてきな!」
 言葉の端々に熱と嘲笑を含め投げかけながら、エトヴァは笑みを浮かべる。
 ヘキサトリニティの全身から立ち昇る怒気が、さらに強まった気がした。


 そんなエトヴァの挑発を耳にしながら、マティアスは心の裡でそっと苦笑を浮かべていた。
(「エトヴァも煽るなあ……俺も負けちゃいられないな」)
 先の戦いの負傷を感じさせぬよう、余裕の笑みを浮かべながら、マティアスも拡声器越しに煽り始める。
「あはは。仲間を討たれ、大切な拠点を俺達に占拠されても尚、得られた力はこの程度。同情してしまうよ」
「そうだそうだ!」
「それとも何? ジャンヌ様のところに逃げ帰って泣き付くためにわざわざ討たれに出てきてくれたとか?」
「そうだぞ! 全くその通りじゃないか!!」
 マティアスもエトヴァと同じように笑いながら、ひたすら侮蔑の言の葉を投げ続ける。
 正直、頭をフル回転させながら言の葉を紡いではいるけれど、時折エトヴァが合いの手を入れてくれるおかげで、挑発の言葉がスムーズに口をついて出るのは有難い。
 内心、エトヴァに感謝しながら、マティアスは半ばあきれたような声音で、とっておきの言の葉を投げた。
「まあ、そりゃそうだよなー。後ろでふんぞり返ったあの間抜けなジル・ド・レの言葉に従っていたら、君達ですら命がいくつあっても足りないだろうからね」

 ――あーあ、馬鹿な上司の下についてしまったせいで可哀想に。

「馬鹿とは……!?」
 ヘキサトリニティの抗議とも罵声ともとれる声を無視し、マティアスは拡声器の音量をさらに上げ、戦場の向こう側に呼び掛ける。
「そこで聞いてるんだろ、ジル・ド・レ。自分が無能なせいでオルレアンを奪われ、仲間が倒れていくのを見るのはどんな気持ち?」
「君の心を代弁してここでご機嫌なタップダンスでも踊ってあげようか? ほら、特等席は空けておくから出てきなよ」
 空いた手で手招きしながら、「手拍子もよろしく」と続けるマティアスに、ヘキサトリニティの殺気が吹き付けられる。
「おや! 図星なのかい? ジル・ド・レの地団駄が聴こえるぞ!」
 追い打ちとばかりに嘲笑を浮かべ、さらに煽るエトヴァにもまた、殺気が浴びせられた。
 実際のところ、ジル・ド・レが地団駄を踏む音はエトヴァ達には聞こえないし、そもそもジル・ド・レの陣の様子を伺い知ることは叶わないから、ジル・ド・レの反応はわからない。
 だが、重要なのは、ジル・ド・レを徹底的に挑発し、冷静さを奪い去ること。
 そして、ジル・ド・レを始めとする、オルレアン周辺にいるジェネラル級キマイラウィッチたちから――撤退という選択肢を奪い去ること。
 ――そのためなら、普段使わぬ下品な言葉をも口に出そう。
 そう腹をくくったエトヴァとマティアスの挑発に、後方の陣にいるジェネラル級キマイラウィッチ『フィリップ善良公』も耐えかねたか、顔面を大きく憤怒に歪ませながらヘキサトリニティに命じた。
「ジャンヌ様をも虚仮にするとは。魔女たちよ、ディアボロスに更なる制裁を!」
 その命令は、キマイラウィッチたちに対する挑発が上手くいったことを意味していた。

「もちろんそのつもり……全員纏めて氷漬けにして、引き裂いて叩き割ってくれるわ!!」
 ヘキサトリニティの怒号が響いた直後、全身から怒気と魔力が急激に膨れ上がる。
 直後、これまでとは比べ物にならない程の冷気が――ディアボロス達の周囲を荒れ狂い始めた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【白の盾】連携アドリブ歓迎
六翼のネメシス化

激昂した魔女なら力量は遥かに上
だがこちらには仲間がいる
オルレアン奪還と防衛のために集ってくれた仲間達……
だから、俺はどこまでも戦える
ここを通しはしない。真の解放を待つ人々のために!

仲間とはパラドクス通信も併用し声を掛け合い連携
間合いを取り、敵を半包囲するように位置取り
敵の動きを観察しつつ把握
こちらの視界で捉えたもの、気づきを仲間に報せ
隙や乱れを見逃さず好機としよう

両手の銃を連射し、PD攻撃
敵の攻撃動作を阻害するよう、動きを縫い留め味方を援護
適時狙いは見つけた隙、詠唱の喉や獣の口を交え
仲間とは互いに隙を作り合い
仲間の攻防の隙を狙い撃ち、一人が猛追を受けないようにすぐ注意を惹き返す

攻撃後はすぐ反撃に備え
敵の攻撃には詠唱を察知、ガードアップをのせて氷嵐を魔力障壁とコートで凌ぐ

敵に怒りによる攻撃的姿勢や注意の乱れあれば見逃さず
命中、ダメージアップを籠めた銃弾で撃ち抜こう

俺はもう迷わない
ジル・ド・レの喉元に銃を突き付けてみせる
オルレアンの人々を、守り抜く!


ルチル・クォンタム
【白の盾】
アドリブその他歓迎
騎士のネメシス化で相手に対峙します。
魔女を倒すは騎士道……なんてね。

今更怒って本気出したって遅い!最初から全力でこい!
味方とパラドクス通信併用で連携とりつつ半包囲するように位置取り。
味方の隙を作るのに、パラドクスを以て突撃しつつ攻撃。
もしくは味方が作ってくれた隙を見てパラドクスを以て突撃しつつ攻撃するよ。
血によって作られた針を以て相手を貫く。ダメージアップ・命中アップも併せて火力を乗せた一撃にて相手を貫く!

相手の反撃はガードアップや自分が纏ってる魔力(aura de lumière et d'obscurité)や針水晶の籠手等の装備、<結界術>の技能も併せて魔力障壁を張り致命傷を抑えつつ耐えてみせます。デスサイズで角や牙を<粉砕>で威力下げる事も試みる。
血が流れれば流れるほどパラドクスは扱いやすくなる……なんてね。耐えたら再度攻撃!相手が倒れる迄何度だってやりあってみせる!

オルレアンは渡さない。ううん、このラ・ピュセルの全てをお前達には渡さない!


ヴェルチ・アリ
【白の盾】


左腕に巨大な篭手を。右肩から全身を覆うような巨大な装甲に覆われたコートを。
ネメシス起動。重武装Ult、チェック完了。ターゲット確認。排除、開始。

【火炎使い】を使い、限界を超えた炎熱を刀身に注ぎ込み続け、その灼熱のパラドクスをもって相手を一気に燃やし尽くす。
【パラドクス通信】を使い、味方と連携。半包囲の形の布陣を意識し続け、相手の隙を見逃さずに攻撃を確実に叩き込めるようにする為に情報共有は絶やさない様に。


相手からの攻撃は、強化されている装甲及び外殻にもなっている堅牢なエンジンで防御。
噛みつかれようが、角に突かれようが。堅牢な装甲に触れている間にも容赦なく高温でその肉を焼き、少しでも緩めばそこへ炎刃を叩き込んでやる。

そういやぁ、お前らさ。人々の身体を火炙りにして、楽に殺さないで苦しみ続けるのを眺めてたことあったんだっけ?まぁ、ほんとかどうかはどうでもいいんだ。
その気分を、今身をもって、味わってみろってだけだ。
太陽の輝きの下で、灰の一欠片も残さずに。沈め。

アドリブ、絡みを歓迎します。


マティアス・シュトローマー
【白の盾】

ジェネラル級をも凌ぐ力、か
作戦は半分成功。残る半分の成功はここからの俺達に懸かってる
君達の復讐心をも超える覚悟を見せてあげるよ

姿の変わらないネメシスで挑む
P08を構えパラドクスを発動。同時に放たれた七つの弾丸が貫くのはヘキサトリニティの四肢。加えて三獣の頭
ダメージアップの効果をのせ、一番槍として動く場合は、仲間が肉薄するための道を切り開くよう挑発を交え注意を引き付けながら
中盤以降に動くのであれば、仲間の攻撃に畳み掛ける事で敵に息をつく暇も与えないように
パラドクス通信で仲間と声を掛け合いながら、半包囲の陣形崩さぬよう立ち回ろう

反撃のブレスはいずれも口から放たれるもの。敵の位置からその軌道を予想し、装備したライオットシールドを角度を付けながら構える事で被ダメージを軽減しよう
毒のブレスに対してはオーラ操作で体を覆い、ガードアップの効果も活用

ここを耐え切り、ブレスが止むと同時に再び弾丸を叩き込もう
もう誰も君達の身勝手な復讐に巻き込まれる事の無いように
ここから先、オルレアンへは行かせない



「全員纏めて氷漬けにして、引き裂いて叩き割ってくれるわ!!」
 ディアボロス達の挑発を受け、怒り狂ったアヴァタール級キマイラウィッチ『ヘキサトリニティ』の怒号が響くと、全身から怒気と魔力が急激に膨れ上り、これまでと比べ物にならない程の冷気が荒れ狂い始める。
「くっ……!」
 挑発に関わったマティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)は、ネメシス形態を解放しながら腕を顔面に翳し、急激に下がる気温と吹き付ける冷気から顔を守っていた。
「ジェネラル級をも凌ぐ力、か」
 キマイラウィッチたちは復讐心を滾らせているゆえ、この戦場にいるトループス級はアヴァタール級並みの、アヴァタール級はジェネラル級並みの力を持つと言われていた。
 その上で挑発し、復讐心を高めた今、目の前のヘキサトリニティから発せられる魔力はジェネラル級を上回っているだろう。
 だがこれで、ヘキサトリニティから冷静さを奪い去り、撤退の機を失わせた。
(「作戦は半分成功。残る半分の成功はここからの俺達に懸かってる」)
 マティアスがP08を構えるその横で、六翼のネメシス形態を解放したエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が、両手に銃を握り締めていた。
 ――激昂した魔女なら、力量は遥かに上。
 しかも残留効果が限られている今、本来なら撤退を考えてもおかしくない状況。
 だが、ここには、オルレアン奪還と防衛のために集ってくれた仲間達もいる。
 ――だから、俺はどこまでも戦える。
 その想いを胸に、エトヴァは力強く宣言した。
「ここを通しはしない。真の解放を待つ人々のために!」
「ネメシス起動。重武装Ult、チェック完了」
 力ある声を聞き届けながら、ヴェルチ・アリ(GE-07・SOL01847・g03614)もネメシス形態を解放し、左腕に巨大な篭手を、右肩から全身を覆うような巨大な装甲に覆われたコートを装着する。
 ルチル・クォンタム(加護の外に出た守り人・g10515)もネメシス形態を解放し、騎士の姿で対峙した。
(「魔女を倒すは騎士道……なんてね」)
 全員がネメシスに、文字通りの復讐者へと変化し、ヴェルチが冷たい声音で淡々と告げる。
「ターゲット確認。排除、開始」
「どうやら覚悟はできたようね!?」
 その直後、ヘキサトリニティの激昂とともに、肩から生えている獅子と山羊、そして杖の蛇が一斉に頭を上げ、大きく息を吸い込んだ。


「「ガアアアアアアアアアア!!」
 獅子と山羊が咆哮し、蛇が大きな咢を開ける。
 直後、獅子の口から炎が、山羊の咆哮と同時に雷が、そして蛇の咢から毒が吐き出された。
 トリプルブレスの対象となったのは、マティアス。
 装備したライオットシールドを角度を付けながら構え、さらにオーラと【ガードアップ】の恩恵を受けて少しでも軽減しようと試みたが、炎と雷、そして毒のブレスは容赦なくマティアスをシールドごと呑み込んだ。
「ぐぐぅ……っ!!」
 目の前が炎に埋め尽くされると共に、雷が容赦なく全身を打ち据えるが、マティアスはぐっとシールドを構え、かろうじて耐え切る。
 ――ヘキサトリニティの戦力は、危険な域にまで上昇している。
 一撃で戦闘不能になりかねない程の強烈な一撃を耐え切れたのは、ひとえに【ガードアップ】の恩恵に他ならない。
「君達の復讐心をも超える覚悟を見せてあげるよ――『一打ち七つ』」
 ブレスが止んだ直後、マティアスはP08のトリガーを引き、七発の弾丸を叩き込んだ。
 七発の弾を受けながら、ヘキサトリニティは嗜虐的な笑みを浮かべ、ルチルに視線を向けた。
「うふふ、騎士はたっぷり甚振ってあげなければ」
 その意を察した獅子と山羊、そして蛇が、一斉にルチルに噛みついた。
 ルチルも【ガードアップ】の恩恵を受けつつ、さらにルチル自身が纏う魔力――aura de lumière et d'obscuritéの加護や針水晶の籠手で防ごうとするが、それでも山羊の角と蛇の牙が魔力障壁を破り、獅子がルチルの胴に鋭い牙を立てた。
 獰猛な牙が、鎧ごとルチルを噛みちぎる。
「ぐぐぅ……!!」
 胴から走った激痛に、一瞬息が詰まった。
(「防御に使えそうな装備や技能、残留効果は全て利用していますが、それでもこの威力ですか……!!」)
 だが、逆説連鎖戦の法則に基づき、行動を阻止されなければ、どれだけダメージを受けようが反撃は可能だ。
「血が流れれば流れるほどパラドクスは扱いやすくなる……なんてね」
 ルチルの言の葉が虚空に滲みこむと同時に、胴から滴り落ちるルチル自身の血が少しずつ寄り集まり――針になる。
『使えるものは全て使って僕は戦う。この血だって僕の武器だ! 血にて作られし針《ブラッディ・ニードル》!!』
 至近距離から発射された紅の針が、ヘキサトリニティの三つ首に次々と突き刺さり、僅かな隙を生じさせた。
 その隙を逃さぬと、エトヴァが両手の銃を構え、撃つ。
『――結束を力と成せ』
 ふたつの銃口から飛び出した5つの銃弾は、ヘキサトリニティの獅子と山羊の首、そして女性の頭と鳩尾、心臓を貫くが、魔力が増幅された氷嵐もまた、容赦なく魔力障壁とコート越しにエトヴァを凍り付かせ、引き裂いた。
『偽装展開、ガウェインの炎刃! ガラティーン、限定解除! 総てを照らし、罪悪を染め上げるは宙光の陽炎!』
 そのわずかな隙をこじ開けんとばかりに、ヴェルチが強化されている装甲及び外殻にもなっている堅牢なエンジンで防御しながら、Galantyne00に限界を超えた炎熱を注ぎ込み、振り下ろす。
 獅子の牙が堅牢な装甲に触れ、山羊の角がエンジンの一部を破壊するが、ヴェルチは構わず容赦なく、炎熱の刃を山羊の頭に叩き込んだ。


 その後も、怒り狂い、復讐心を極限まで高めたヘキサトリニティの攻撃は、熾烈かつ苛烈を極めた。
 三つ首に寄る噛みつきが全身を食いちぎり、トリプルブレスが肉体に毒を流し込みながら炎と雷で、荒れ狂う氷嵐が肉体を凍らせ引き裂いてゆく。
 それらは全て、純粋な魔法であり、暴力。
 そのいずれもが、無策で受ければ1発で戦闘不能に追い込まれかねない程の威力。
 それでもディアボロス達は、盾や魔力障壁、装甲や残留効果で三つ首の攻撃を防ぎ、逸らし、軽減しながら、【パラドクス通信】で情報を交換し半包囲の陣を維持し、少しずつ攻撃を重ねていった。
 エトヴァが二丁拳銃で十字型に撃ち抜けば、マティアスもP08から七発の弾丸を同時に発射し、少しでも注意を惹きつけ。
 ルチルが己が血を真紅の針に変え少しずつ削りながら、ヴェルチが限界を超えて燃え盛る炎刃で斬りつける。
 時には言の葉で挑発し、決してひとりに狙いを絞らせぬよう立ち回りながら、ディアボロス達は隙を見て次々とパラドクスを叩き込んでいった。
 だが、極限まで戦力を、魔力を高めたヘキサトリニティの攻撃は、その都度ディアボロスの体力をごっそりと奪ってゆく。
 ――このままでは、ディアボロス側が押し切られてしまうかもしれない。
 誰かが危機感を抱いたその時、ルチルの目前に一筋の光が現れた。
 光は途中で三つにわかれ、ヘキサトリニティの三つ首に吸い込まれている。
(「これはおそらく、【命中アップ】の光!?」)
 ――ならば、その導きに従うべき!!
「今更怒って本気出したって遅い! 最初から全力でこい!」
 ルチルは胴から滴り落ちる血を針と変え、味方の攻撃の隙を作るために突撃しながら射出する。
「オルレアンは渡さない。ううん、このラ・ピュセルの全てをお前達には渡さない!」
 覚悟の乗った宣言と共に、【ダメージアップ】の乗った真紅の針が至近距離からヘキサトリニティの三つ首に突き刺さる。
 獅子の牙がルチルの腕に噛みつこうとするが、至近距離から突き立った真紅の針に無理やり頭の向きを変えられ、牙先が腕を掠めるにとどまった。

 ――この一撃が、戦場の流れを大きく変えた。

 獅子が狙いを逸らされたのを見て、ヴェルチがGalantyne00を手に肉薄する。
「そういやぁ、お前らさ。人々の身体を火炙りにして、楽に殺さないで苦しみ続けるのを眺めてたことあったんだっけ?」
「さあ? 何故今それを聞くのかしらね?」
 ヘキサトリニティが返事をする間にも、獅子と蛇、山羊が、ヴェルチの首と頭に噛みつき、腹を抉ろう
「まぁ、ほんとかどうかはどうでもいいんだ」
 首筋の装甲に牙を立てられ、山羊の角と蛇の牙が装甲を破り抉っても、ヴェルチは構わずGalantyne00の刀身に天より落ちてくる光を集め、超巨大な炎の刃を形成。
「その気分を、今身をもって、味わってみろってだけだ」
 ――太陽の輝きの下で、灰の一欠片も残さずに。沈め。
 太陽に決してかき消されぬ冷たい声音とともに、ヴェルチは炎刃を大上段に振り上げ、獅子の頭を両断せんと一気に振り下ろす。
 ヘキサトリニティの獅子の頭が両断され、業火に焼かれ沈黙した。
 だが、ヘキサトリニティ自身はまだ倒れない。
「おのれ、おのれおのれおのれえええええ!!」
 山羊の鳴き声で魔力を増幅しながら、ヘキサトリニティはさらに怒りを募らせながら氷嵐を発生させ、エトヴァを呑み込む。
 だが、蓄積したダメージと怒りによる攻撃的な姿勢、そして注意力が乱れたのを、エトヴァの冷静な観察眼は見逃さない。
「俺はもう迷わない。ジル・ド・レの喉元に銃を突き付けてみせる」
 ――オルレアンの人々を、守り抜く!
 氷嵐に揉まれながら、エトヴァは二丁拳銃から強い決意の籠った弾丸を撃ちだす。
 5つの弾丸は氷嵐を突き抜け、今度はヘキサトリニティの両肩と鳩尾、そして首筋と心臓を貫いた。
 十字型に撃ち抜かれ、体勢を大きく崩したヘキサトリニティに、マティアスがP08の銃口を向ける。
 これ以上、息をつく暇は――与えない。
「もう誰も君達の身勝手な復讐に巻き込まれる事の無いように」

 ――ここから先、オルレアンへは行かせない。

 驚くほど静かな声を発しながら、マティアスはP08のトリガーを引く。
 発射された七発の銃弾のうち、三発が獅子と山羊の首と蛇の頭を撃ち抜き、残り四発が女性の頭と喉元を貫いた。
 七発全てに急所を撃ち抜かれたヘキサトリニティが、大きく体勢を崩す。
「今だ!!」
 エトヴァの合図で、全員が残る力を振り絞り、再度パラドクスを叩き込んだ。
 真紅の針が胴を穿ち、炎熱の刃が山羊の頭を叩き割り、5つの弾丸と七発の銃弾が的確に急所を抉る。
「ジャン、ヌ、さま……い、ま……」
 最後にディアボロス達の猛攻を受けたヘキサトリニティは、どうと仰向けに倒れ、静かに消滅していった。


 戦闘終了を告げるかのように、全員のネメシス形態が解ける。
 だが、この場にいる誰もが満身創痍で、息を荒げていた。
「終わった、な……」
「ええ、ここは終わりました」
 エトヴァが二丁拳銃を納め、ルチルが胴の傷を押さえながらよろよろと立ち上がる。
「みんな、傷だらけだな……」
「でも今はひとまず、帰ろうか」
 ヴェルチの気遣いに、マティアスも痛みをこらえながら笑みを浮かべ、皆を促した。

 かくして、誰一人として重傷を負うことなく戦い抜いたディアボロス達は、パラドクストレインに乗り、新宿島へと帰還した。
善戦🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【パラドクス通信】がLV2になった!
【水面走行】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【託されし願い】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!

最終結果:成功

完成日2025年02月19日