待ちたる冬来るか(作者 黒塚婁
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#吸血ロマノフ王朝  #サンクトペテルブルク強襲作戦  #サンクトペテルブルク 

●大元帥の思惑
 『大元帥』アレクサンドル・スヴォーロフは読んでいた書類を執務机に戻すと、静かに息を吐いた。
「あのラスプーチンが、窮余の策を討たねばならぬとはな。それほどまでに追い詰められたか……」
 呟く声音に、感情の色は無い。
 ただ、そのようにあの怪僧が終わることは意外であったかもしれぬ。
「奴の窮余の策が成されれば、ディアボロスの後背を脅かす事になるだろうが、期待はできぬだろう」
 ――まだ、決定的な知らせは彼に届いておらずとも。
 この状況になった時点で、そうと判断して、次の策を選ばねばならぬ。
「冬将軍の権能を、雪の女王が引き継ぐ事ができれば、状況は好転するが……。冬が来るまでは、防衛に徹するしかあるまい」
 再び、息を吐く。
 しかし、その表情は冷徹な儘。
「一時的に、吸血ロマノフ王朝の大半をディアボロスに奪われる事となるが、最後に勝利すれば、問題は無い」
 大元帥は意を決したように、何かを書き付け――そして、控えていたノーブルバトラーを呼びつけると、こう指示を出す。
「竜血卿に、再度、使いを出してくれ」
 双眸を鋭く細め、脳裏に描くは、欠損から成り立つ新たな勢力図か。
「何度断られようと、彼の力は、吸血ロマノフ王朝の未来の為には必要なのだから」
 告げ、封蝋された手紙をバトラーに委ねるのであった。

●首都強襲作戦
「シュリッセリブルク要塞制圧作戦、お見事でした!」
 夜嵐・真赭(閃耀・g07223)はそう口火を切って、ディアボロス達に笑いかける。
 これで、吸血ロマノフ王朝の断片の王のいる最重要拠点『サンクトペテルブルク』への攻撃が可能となった――しかし、ここは最重要拠点。
 当然、吸血ロマノフ王朝のジェネラル級の過半が集結している。
「ですので、まずは揺さぶりを掛けます。市街地を攻撃することで、敵の危機感を煽って、反応を待つわけです」
 ジェネラル級ヴァンパイアノーブルのプライドは高い。
 自分の、否、王のお膝元で敵が好き勝手するのを、見逃すことはなかろう――となれば、撃破の機会ができるというもの。
「そして、相手が思わぬほどの被害を与えることができれば――断片の王さえ動かせるかもしれません。まあ、皆さんの前に出るというよりは、サンクトペテルブルクからの脱出という形をとるでしょうけど」
 真赭は真剣な表情で、ひとつ頷き、纏める。
 つまり今回の作戦は、シュリッセリブルクから出撃し、サンクトペテルブルク市街地に向かい、破壊工作及び迎撃に出て来る敵を討つ――というものだ。

 ところで、攻略旅団の提案による『シュリッセリブルク要塞の機密文章の解析』の結果によると、サンクトペテルブルクのヴァンパイアノーブル達は、冬までの間は防衛に徹し、冬に大作戦を展開し、春になる前にディアボロスを討つ戦略を練っているらしい。
 詳細はわからないものの、敵が本格的に動く前――つまり冬の前に、有力戦力を潰してしまえば、計画が崩れることは間違いない。
「ということで、皆さんを迎撃してくる敵を倒し、戦力を潰すのも充分な打撃なのですが、同時に重要なのは、市街地を破壊すること……です」
 視覚的なダメージがどれほどヴァンパイアノーブルを刺激するか――。
 一度、言葉を止めて、真赭はディアボロス達をゆっくり一瞥する。
 勿論、そこに住むのは、ヴァンパイアノーブルではない、ただの一般人。
 彼らに被害を出さぬよう――しかし派手であるほど効果が高い……許された時間内で可能なことを工夫し、実行してほしい、と告げる。

 吸血ロマノフ王朝の首都といえる『サンクトペテルブルク』――この地が敵に攻撃され、市街地は破壊され、更には迎撃部隊も敗れた、という状況を迎えれば、サンクトペテルブルクの一般人から『従属』の感情が薄れるかもしれない。
 そうなれば、ヴァンパイアノーブル達が得られるエネルギーが弱まり、大規模な作戦を起こしたくても起こせなくなるやもしれぬ。
「鉄道の維持管理はなんとか軌道に乗せられそうですが、かの地の冬は苛烈です――早期に決着をつけて、前に進めたいところですね」
 そのためにも!
 勢いよく、真赭は手を打って。
「是非、作戦を成功させて……サンクトペテルブルクも攻略しちゃいましょう!」
 にっこり微笑んで、ご武運を、と説明を締めくくった。

●サンクトペテルブルクの人々
 ひそひそと、語り合う人々の声が聞こえる――。
「大領主の貴族様に目を付けられて、殺された者がいるらしい」
「またか……」
 恐ろしいね、仕方ないね、という応酬。
 だが、この街で、ひっそり大人しく暮らしていれば――それよりはいいかもしれない。
 ともすれば陰鬱な話題ばかりになりそうなところを、誰かが言う。
「それにしても、今年の夏は、寒さが落ち着いていると思わないか」
「ああ――寒いのは寒いが、去年ほどの凍死者は出ないかな」
「でも、冬は怖いな」
 表情を曇らせた誰かに、誰もが頷く。
 今のうちに、確りと冬の支度を調えておかねば。
 彼らは厳しい寒さを乗り越え、ヴァンパイアノーブル達の目を逃れ、逞しく生きていかねばならぬのだ――。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
2
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【傀儡】
1
周囲に、ディアボロスのみが操作できる傀儡の糸を出現させる。この糸を操作する事で「効果LV×1体」の通常の生物の体を操ることが出来る。
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【避難勧告】
2
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
1
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【命中アップ】LV1 / 【ダメージアップ】LV4 / 【ガードアップ】LV1 / 【反撃アップ】LV2 / 【先行率アップ】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

黒塚婁
どうも、黒塚です。
重点目標と定まり、新たな指針も出たところで首都攻めです。

●補足安堵注意事項
シナリオ展開は、①→②→③

①は採用決定後、リプレイ提出は執筆状況に関わらず、期間ギリギリまでは待つ予定にしております。
無理な動員を誘っているわけではありません。ご安心いただけるよう、一応、方針表明として。

●その他諸々
プレイングはいただいてから、1~2日おいて採用決定をします。
残留効果の説明もよくご確認ください。
※パラドクスのフレーバー文について拡大されたプレイングも不採用の度合いが高まります。プレイングの本筋は、ルールご参照ください。

進行必要数を多く超えたプレイングの採用は避ける方針です。
ご了承の上、ご参加いただければ幸いです。

それでは、皆様の活躍を楽しみにしております。
90

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
仲間達と連携、アドリブ歓迎
PD通信等を借りる

ロマノフは破壊活動と隣り合わせだな
生活圏の破壊には気が引けるが
一刻も早く、支配と従属からの解放を
旧い体制を覆す、今、革命の鬨を

可能なら事前に周囲を双眼鏡で偵察し、破壊対象と大通り等の避難経路に目星をつけておく
仲間と協力し手筈を整え、地区の特色も踏まえ臨機応変に
人命を守り行動
仲間の演説に合わせ【避難勧告】を発動

仲間と手分けして速やかに
小分けにしたエリアを安全確保し、避難誘導の完了した一帯から順次破壊を行う
大声で警告と避難を呼び掛け、動けない方は背負って担ぎ出す
ここは危険だ
巻き込まれたくなければ、ただちに避難を!

吸血貴族達を揺さぶるため、象徴的な部分を優先し破壊する
目立ち聳える尖塔や屋根、黄金や彫像の意匠
豪奢や権威を感じさせるものへ次々にPDの矢を放って爆破
また、脆くなった基礎部分へ矢を放ち、根本から崩壊させるように
全部破壊にはこだわらず
部分を徹底的に破壊する事で復元不可能にする
避難経路に余波がないように

さあ! 長く引き篭ったノーブル達を炙り出そう


ルィツァーリ・ペルーンスィン
アレンジ連携歓迎

心情
余りこういうのは得意じゃないがだからって自分は手を汚さずに他人に任せるなんて論外だしな
被害を出さず頑張るとするか
とりあえず噂を流して……親しい相手の様に感じた方が警戒も緩みそうだし此れだけ大きいと全ての住人の顔を知る人もいないから友達催眠を使ってと

〇友達催眠を用い住民に接触
最近、抵抗勢力が出て来て其の所為で大領主の貴族様に被害が出たらしい
俺達と姿が変わらん奴等だけでなく鳥の翼をもつ奴等とか異形の気持ち悪い奴等とかいるらしいぞとか去年より寒さが落ち着いたのも普段寒さを維持している御方が倒れた所為らしいって聞いたから巻き込まれない様に気を付けた方が良い等と噂を流し住人達にノーヴルは絶対じゃないのではという疑心の種をばら撒いていく

噂をばら撒き終わったら残留効果で〇避難勧告
避難が始まってから噂の信憑性を増す為に一般人を巻き込まない様にしつつ〇契約召喚でアークデーモンか大天使を呼び出し建物破壊開始

其れじゃあ始めるか
正直、気持ちいいもんじゃあないが其れでもやらんといけん事だしな


エレナ・バークリー
サンクトペテルブルクについに手が届きました。ここで吸血貴族どもを一気に追い詰めましょう。

寒空の下、広場で「大声」で「演説」して、市民の皆様を【士気高揚】させましょう。

皆さん、この国は日没の太陽のように地に沈もうとしています。
全てはこの国の民を不当な『圧政』から解放するために。
そのために私達は大領地を開放し、モスクワを人の動かす街に変え、吸血貴族を根絶やしにし、人々の尊厳を取り戻すための戦いを続けてきました。
その活動も最終局面に達しています。皇帝(ツァーリ)のお膝元で、私達がこうして堂々と演説出来る事実が、王朝の没落を証明しています!

皆さん、再び立ち上がる勇気を持ってください。私達は、皇帝を追い詰めるためこの街を破壊するという苦渋の決断を下しました。
しかし、私達の行動で死傷者が出ては意味が無い。皆さん、安全な場所へ退避してください。【避難誘導】始動!

避難は終わりましたね。私のパラドクスは広域破壊に都合がいい。
「全力魔法」で天地逆しまなれば岩礫降り注ぎを行使。
狙いは市庁舎、教会、集合住宅等。


レイラ・イグラーナ
えぇ。もっと良い手段があったのではないか、誰も犠牲にしない道はあったのではないか。歩んできた道を悔いることはあれど……この歩みは止めません。
成すべきことを成しましょう。

人民の皆様、お聞きください。
私たちは、これよりこの街を破壊します。
そんなことをしては貴族が黙っていないと、そう思うでしょう。
だからするのです。
目的は街を破壊することではございません。
街を破壊し、貴族を誘き出し、討ち……この吸血ロマノフ王朝の支配を破壊すること。それが目的です。

できるわけがないと、そう思う皆様のお気持ちは分かります。
それができるなら貴族に従属し、辛い暮らしなどされないでしょう。
ですから……戦いの音が止んだ後、またここを訪れ下さい。
私たちの勝利と貴族たちの敗北の跡をお見せいたします。

本来この場で私たちの戦いをお見せしたいところですが……戦闘と破壊に巻き込まれないよう、今はどうぞお逃げ下さい。私たちは本気です。

避難を呼びかけ【避難勧告】を使用後、【天上奉仕・熱狂】を使用。革命の楽曲の重圧で市街を破壊します。


マティアス・シュトローマー
ロマノフ奪還という大義のために、一般の人達が住む市街地を破壊する――何度やっても複雑な思いは消えないね
けれども、内政に通じるジェネラル級を倒したり、鉄道網を破壊したり。これまでやってきた事の影にも、確実に犠牲になったロマノフの人はいる訳で

……ヒールな立ち回りには慣れてる。行こう、断片の王の牙城を崩すために

到着後、仲間と手分けして住民の避難誘導を。演説を聞いても尚応じない相手は【怪力無双】を使って脅す事も有効だろうか

さあさあ、巻き込まれたく無ければここから離れて
俺達は今からこの街を破壊する――名前だけの貴族様を打ち倒すためにね
住み慣れた家や街を離れる事は出来ない?
俺みたいなガキに軽々担ぎ上げられてる君達がよく言うよ
早く行って!――俺達の気が変わらないうちに

避難の完了したエリアから破壊活動を。ナックルダスターを付けた拳にパラドクスを乗せ、強烈な突きを放とう
特に街のシンボルになっているような目立つ建造物を狙う事でヴァンパイアノーブル達に危機感を与えたい

これでよし、っと
大目玉を食らうのは確実だね


一角・實生
人々から従属の感情を薄れさせ、且つ敵の目論見を打ち破ることができるならば
日々を営む場所を破壊するのは少し胸が痛むけれど
……それ以上のものを人々に齎せるのならば、やるだけだ

【パラドクス通信】で情報を共有していくよ
避難状況、人々の説得状況、破壊開始のタイミング等
俺は破壊行動をメインに、避難が遅れている人々を強制的に移動させよう
そう猶予はない

通信で避難の開始を確認したら、無人の建造物――例えば灯りが消えていたり、人の気配がなかったり
それらをスコープで観察し看破
特に目立つものや高さのあるものに狙いを絞り、区画の避難完了と同時にパラドクスを発動できるよう備える
紺青色の雷光は人々の足を速めるだろう
グラナトゥムでも破壊していくよ
避難経路上に瓦礫が飛ばぬよう注意を

動かぬ人々の情報を得ればその場所へ
【避難勧告】を使い、特に高齢者や子供を抱え人々の列へ合流
皆で逃げ、皆で生きるんだ
仲間とも協力し全ての人々を移動させたい

立ち止まる者もいるかもしれない
彼らの背を押し、嘆きにも淡々と伝える
それでも今は歩いて欲しいと


●葛藤と実働
 エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)はサンクトペテルブルクを双眼鏡で一瞥し、そっと息を吐く。
 街並みは極めて普通。ヴァンパイアノーブルが闊歩しているわけでもなく……否、詰めている場所には詰めているのだろうが、住宅街として一般人を住まわせている区画なのだから、そこにあるのは吸血ロマノフ王朝に生きる人々の営み。
「ロマノフは破壊活動と隣り合わせだな……生活圏の破壊には気が引けるが」
 ふぅ、と息を吐く。どうしても気が重い――気楽に挑める任務では無い。
 観察した限り……街は広い。
 仲間達と手分けして破壊の限りを尽くしても――退路も、避難場所も、充分あるだろう。
 あると見なしながら――そう、心に言い聞かせているような感覚は消せぬ。
「ロマノフ奪還という大義のために、一般の人達が住む市街地を破壊する――何度やっても複雑な思いは消えないね」
 マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)が、ぽつりと零す。
(「けれども、内政に通じるジェネラル級を倒したり、鉄道網を破壊したり――これまでやってきた事の影にも、確実に犠牲になったロマノフの人はいる訳で」)
 考え、彼は口を噤む。
 見えない犠牲なら無関係などと言いはしないが、直接関与していないところで犠牲になっているものは、どうしようもないのは事実。
 だが、今回は。
 命を奪わぬからといって――住む家を破壊し、常冬の地に投げ出す。他ならぬ自分達の意思と、手で。
「ロマノフは破壊活動と隣り合わせだな……生活圏の破壊には気が引けるが」
 重い溜息を吐いたのは、エトヴァだった。
 それでも、と一角・實生(深い潭・g00995)は、目を伏せた。
「人々から従属の感情を薄れさせ、且つ敵の目論見を打ち破ることができるならば――」
 綺麗事は言うまい。
 これは、一般人を恐怖に追い込む作戦に違いない。
「日々を営む場所を破壊するのは少し胸が痛むけれど……それ以上のものを人々に齎せるのならば、やるだけだ」
 最後には、彼らにも利となる。そう確認するように――實生は目をぱちりと開いて、今の街並みを見つめる。記憶に焼き付けるように。
「えぇ。もっと良い手段があったのではないか、誰も犠牲にしない道はあったのではないか……」
 レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)が頷く。癖の無い銀の髪が、さらりと靡いた。
 ――もし、この作戦を行わず、この地に戦いを挑んだら。
 ヴァンパイアノーブル達は、彼らを避難させるだろうか――守るだろうか。いずれにせよ、この地を戦場にし、巻き込むのは変わりない。この地で、決戦を望む以上。
「歩んできた道を悔いることはあれど……この歩みは止めません――成すべきことを成しましょう」
 凜と前を見つめた彼女の言葉に……皆が、それぞれ頷く。
 その時――双眼鏡を覗いていたエトヴァが、おや、と声を零した。
「人が動き出したようだ」
「――となりますと、ルィツァーリ様は巧く噂を撒けたでしょうか」
 レイラが軽く首を傾ぐ。
「いずれにしても、時間だ――」
 グレーの瞳を眇め、マティアスは敢えて露悪的に笑う。
「……ヒールな立ち回りには慣れてる。行こう、断片の王の牙城を崩すために」
「ええ。ここで吸血貴族どもを一気に追い詰めましょう」
 エレナ・バークリー(Highlander/Absolute Wish・g00090)が不敵な眼差しで応じ――エトヴァも頷く。
「一刻も早く、支配と従属からの解放を――旧い体制を覆す、今、革命の鬨を」
 視線を交わし――皆、それぞれに動き出した。

●噂と演説
「余りこういうのは得意じゃないが――だからって自分は手を汚さずに他人に任せるなんて論外だしな……被害を出さず頑張るとするか」
 ルィツァーリ・ペルーンスィン(騎士道少年・g00996)は、そう意気込み。
 一足先に街に潜り込んでいた。
 といっても、わいわいと賑わっている様子はなく――ぽつぽつと知り合いが集まっている印象だ。
 一応、商店がいくつかある通りらしくはある。
「また地方で……」
「それは怖いわ――」
 ルィツァーリは、不安そうな噂話を交わす中年女性達に、こんにちは、と声をかけてみる。
 友達催眠の力で、女性達はルィツァーリを、何処の誰だろうと思えど、不審には感じない――あら、こんにちは、と彼女達も挨拶を返してくれる。
「最近、抵抗勢力が出て来て其の所為で大領主の貴族様に被害が出たらしいですよ」
 年相応の雰囲気で、そう囁く。
「抵抗勢力?」
「俺達と姿が変わらない奴等――だけじゃなくて、鳥の翼をもつ奴等とか、異形の気持ち悪い奴等とかいるとかなんとか……」
 あやふやな情報っぽく言う。
 この辺りに住む者は大天使なら見かけたことはあるかもしれない……が、反応はイマイチだった。後で、契約召喚で見せつけるつもりではあるが。
 あまり一般人達に実感の湧く情報ではなかったとしても、後々ヴァンパイアノーブルの支配は絶対じゃない――と不安になってくれれば充分だ。
 ついでに、と相手の表情を見ながら、ルィツァーリは続ける。
「去年より寒さが落ち着いたのも普段寒さを維持している御方が倒れた所為らしいって聞いたから、巻き込まれない様に気を付けた方が良いですよ」
 そう告げるも。
 中年女性達は怪訝そうな表情だ。確かに、ヴァンパイアノーブルならば環境も変えられるだろうとは思いつつ、ルィツァーリの言うことは――少年が突如、語り出すという状況的に、俄には信用しづらい。
 それは彼が接触した他の人々も似たような反応だった。
 だが、ルィツァーリは、幾人かにちゃんと言葉を交わすと、充分とばかりに引き上げる。
 噂なんて、こんなものだ。
(「元から、言葉だけで動かそうとは思っちゃいない――これは『疑心の種』に過ぎないからな」)
 仕込みは充分。
 次のフェーズに、彼は避難勧告を発動させる――突如と、通り一帯に、赤い光が明滅し、サイレンが鳴り響く。
 人々は脱出せねば、という感情を揺さぶられ、のろのろと動き出す。迷う様な足取りなのは、何処へ逃げるべきか、曖昧だからだろう。
「其れじゃあ始めるか――正直、気持ちいいもんじゃあないが其れでもやらんといけん事だしな」
 標的の建物に人がいないことを確かめた上で――ルィツァーリは大天使を召喚し、建物へと攻撃した。
 白い翼を大きく広げた大天使は、自分の姿を見せつけるように悠然と宙に浮かぶと――容赦なく石造りの住居へ、無造作に剣を叩きつけ、破壊する。
 轟音と、瓦礫の崩れる音――もうもうと立ち籠める煙。
「うわああ!」
 人々は、それぞれに悲鳴を上げて、逃げ始めた。

 広場――住宅街の一部から避難してきた人々が、ひとたび落ち合い、情報を交換している場所で……エレナとレイラが声を張り上げた。
「人民の皆様、お聞きください。私たちは、これよりこの街を破壊します」
 その声は――内容の異質さからか、ざわめく人々を一瞬で沈黙させた。
 何を言っているんだ、冗談でしょうという眼差しを受けて……彼らがそれを言葉にするよりも先に、レイラは続ける。
「そんなことをしては貴族が黙っていないと、そう思うでしょう――だからするのです。目的は街を破壊することではございません」
 ――ますます、何をいっているのだろうという気配が、漣のように広がる。
 レイラはしかし、至って真面目な表情と口ぶりで、人々を一瞥しながら、告げる。
「街を破壊し、貴族を誘き出し、討ち……この吸血ロマノフ王朝の支配を破壊すること。それが目的です」
 しん、と静まる。
 恐らくは、何を言っているのか理解できずに。実際、首を傾げている者が多い。
 そこへ、次はエレナが声を張った。
「皆さん、この国は日没の太陽のように地に沈もうとしています。全てはこの国の民を不当な『圧政』から解放するために」
 彼女は朗々と演説する――。
「そのために私達は大領地を開放し、モスクワを人の動かす街に変え、吸血貴族を根絶やしにし、人々の尊厳を取り戻すための戦いを続けてきました」
 人々の反応は、あまり変わらない。
 実感はあまりないだろう――非現実的な話だと、怒ったり嘲笑ったりしだす者がいないのは、二人の表情や態度があまりに真剣で、口を挟む余裕がないからだろう。
「その活動も最終局面に達しています。皇帝のお膝元で、私達がこうして堂々と演説出来る事実が、王朝の没落を証明しています!」
 力強くエレナが言い切った時……人々に広がっていたのは、困惑の気配。
 彼らの中に、ヴァンパイアノーブルに逆らおうとするものがないのは事実。
 元より、彼らに逆らい戦おうという意思がないので、エレナとレイラの言っていることは、あまりに現実感が無いのだ。
 だからこそ、自分達が街を、家を失うことに繋がるのか。飛躍しすぎていて、理解が追いつかない――そんな困惑を前に、レイラは、静かに頷く。
「できるわけがないと、そう思う皆様のお気持ちは分かります。それができるなら貴族に従属し、辛い暮らしなどされないでしょう」
 ひと呼吸おいて、穏やかに、なれど高らかに、彼女は宣言する。
「ですから……戦いの音が止んだ後、またここを訪れ下さい。私たちの勝利と貴族たちの敗北の跡をお見せいたします」
 エレナは毅然と告げる。
 そして、危機感を煽る赤い光が明滅しだし、けたたましいサイレンが鳴り響く。避難勧告を発動させた証だ。
「――皆さん、再び立ち上がる勇気を持ってください。私達は、皇帝を追い詰めるためこの街を破壊するという苦渋の決断を下しました。しかし、私達の行動で死傷者が出ては意味が無い。皆さん、安全な場所へ退避してください」
 同時に彼女は、人々が躊躇いなく逃げ出せるよう――この演説に、士気高揚の力を乗せていた。
 避難を始めた人々の、どこか非難がましい眼差しや、縋るような眼差しを前に――、
「本来この場で私たちの戦いをお見せしたいところですが……戦闘と破壊に巻き込まれないよう、今はどうぞお逃げ下さい。私たちは本気です」
 レイラは楚々と一礼し、急ぎ避難するよう促す。
 今は正しく理解されなくとも、皆が生きてくれればいい。
 願いながらも、表情は平静を保つと、レイラは、そっと両腕をあげた――その先、握る銀の針が煌めいて――銀の軌跡は、拍子を刻むよう振り下ろされた。
「歌う血煙、奏でる雑踏。割れた刃が眼下に迫る」
 彼女の指揮で奏でられるは、革命の意思を訴える熱情の楽曲。それは破壊の力を伴い――一際大きく頑丈そうな建物を、押しつぶす。
 人々の悲鳴が上がる。
 混乱が無いのは、避難勧告の力ゆえ……此所しか無い、という方角へ、人々は次々と逃げていく。
 人影の失せた広場で――エレナが息を吐く。
「避難は終わりましたね」
 後は、気兼ねなく、広範囲へ……といっても、街はやはり広い。
 集合住宅を狙って、魔力を向ける。
「清気は天に昇り濁気は地に沈む。我、この理を覆し、天の上に地を生みださん。歪みし理は綻ぶが運命。天の岩、地に正しく降り注ぐべし」
 空中に浮かんだ岩盤が、落下と共に岩塊となって降り注ぎ――街の一角が、煙を立てて、崩れ落ちた。

●混乱と破壊
 大きな都市の一画は、混乱に見舞われた。
 赤い光とサイレンに促されて動き出した人々だが、住民は身動きがとれなくなるような夥しい数でもない。
 なれど、すべての人間が的確な避難を行えるわけでもなく。
「ここは危険だ。巻き込まれたくなければ、ただちに避難を!」
 エトヴァが指示を出す、攻撃が行われない方向を示すのは簡単だ。自分達が破壊するのだから――その欺瞞に、苦笑を浮かべる暇もない。
 ひとりでも無辜の住民を巻き込みたくないと考えるなら、徹底して街の状況を観察せねばならぬ。
 不安そうにきょろきょろと歩き回る母親がいるなら、子供が逸れているのだろう、とか――焦って転んでしまった者がいるなら、背負って他の者に託す、とか。
 自分達で決めた事とは言え、こういったフォローは、神経を使う。
(「これに比べたら、敵拠点を徹底的に破壊しろという任務は楽だったな」)
 人間を逃がしたりという任務は身を張れば守れる――襲撃者にさえ気をつければ良いのだから。
 残留効果の影響上、目の前にある建物に、意固地に居座る者はいないと思うが――実際は、そうであってくれ、と願うしかないのだ。
 實生は敢えて背の高い建物を駆け上がって、周囲を見ていた。狙撃手としての性質もあるが、下からでは見えない、逃げ遅れた者達の存在を見つけ、パラドクス通信で共有するためだ。
「そう猶予はない」
 破壊は始まって言う。それもちゃんと全員で状況を確認してから始めたことだが、実際、破壊活動が始まってから出てくる人間もいる。
 何かしら理由がある者も多いだろう――窓の向こう。泣いている子供と、それを宥める少女の姿を認め、實生は走った。
 窓辺から窓辺に飛翔できれば早いだろうが、流石に躊躇い、屋根伝いに巧く移動して、子供達の元へと駆けつける。
「大丈夫かい」
 問いかけると、二人は、半泣きで頷く。聴けば、転んで――人並みに流され親とはぐれて逃げ遅れたようだ。これは、親も二人を探して近くに留まっている可能性が高いな、と彼は表情を硬くした。
 本来なら優しく宥めて立たせるが、實生は二人を抱えると、一足飛びに建物から脱出した――周囲を探れば、やはり不安げに彷徨く両親がいた。
「ありがとうございます!」
「礼はいい……俺は、此所を破壊する側の人間だ」
 厳しい表情を崩さず、實生は告げる。はっ、と顔を強ばらせた二人に、どんな表情を返せたか。
「皆で逃げ、皆で生きるんだ」
 静かに告げると、親はぎくしゃくと首を縦に振り、子供達の手を引いて歩き出す。
 振り返った子供達が、問いかけてくる――。
「もうおうちにかえれないの?」
 そんなことはないさ、と言いたかった。実際、決戦が終われば――思う。
 だが家を破壊するだろう自分が、そんな言葉をかけるのは高慢なのではないか。そんな気持ちがよぎる。
「おうちがなくなったら、とても悲しいだろうね。でも――今は歩いて欲しい。お父さんお母さんと一緒に、ね」
 淡淡と――しかし、いたわりをもって、送り出す。
 彼らの姿を見送った實生は。再び高台へと移り、愛銃を抱えると。集合住宅の窓辺を、先程よりも念入りにスコープで確認してから――撃った。
「汀に漂う残滓たち。――いま一度、俺にちからを」
 紺青色のいかづちが、スパークし……轟音と共に建物を破壊する。
 白煙を上げて崩れ始めた瓦礫が、避難経路を潰さぬよう、計算した角度で――というのも、神経を使う。
 しかし、パラドクス独特の耀き。薄曇りの空に爆ぜる雷の光は、赤い明滅を斬り裂いていた……この辺りも危険だ、と周囲に知らしめる効果もあるだろう。
 願うより、他に無い――。

 さて、粉塵舞う道で――苛立ち紛れに、中年男性が瓦礫を蹴った。
「くそ、俺の家が!」
「おじさん、逃げないの?」
 そこにマティアスがやってくる。片手に大きな瓦礫を担いでいるのは、邪魔だったから――ではなく、力を見せつけるためだ。
「さあさあ、巻き込まれたく無ければここから離れて! 俺達は今からこの街を破壊する――名前だけの貴族様を打ち倒すためにね」
 男性はぎょっとしたが……マティアスをぎっと睨む。その腰は引けているが、今すぐ逃げ出すという様子は無い。
「ふ、ふざけるな! なんでオレが……」
 おやおや、と彼は内心で苦笑いして――ぽいっと瓦礫を投げ捨てると、代わりにその男性を担ぎ上げる。
「っ、やめろ!」
「住み慣れた家や街を離れる事は出来ない? 俺みたいなガキに軽々担ぎ上げられてる君達がよく言うよ」
 担ぎ上げて、てくてくと軽やかに少し歩くと、ぽいっと投げ捨てる――無論、男性が怪我をしないように、しかし、少し乱暴に。
「早く行って! ――俺達の気が変わらないうちに」
 拳を握って殴るジェスチャーを見せると、流石に逃げ出した。
 ふう、と息を吐き、マティアスは振り返る。彼が狙うのは、鐘楼のある建物。
 ポケットからナックルダスターを取り出し身につけ、不敵に笑う。
 刹那、すっと彼の表情から笑みが消えた。
 無我の境地――雑念をすべて捨て去ったマティアスは、ただ、突きを繰り出す。
 空間をも激震させる一撃は。
 一瞬遅れて、ゴォンと破壊の音が駆け抜けるや、地響きを立て、目の前の壁が崩れ始める。後はあっという間だ――鐘楼が鈍い音色と共に地上に落ちて、ひしゃげる。
「これでよし、っと――大目玉を食らうのは確実だね」
 グレーの瞳を眇めて、マティアスは零し、彼方に、黄金の魔法塗料が焦臭い街にうねり輝くのを見た。
「――Blühe.」
 クロスボウから矢を撃ち出す度、黄金の軌跡が空に残り。続けて、激しい爆発を起こす。
 美しい屋根や、拘って建築されたような壮麗な建物、ヴァンパイアノーブルが関与していそうな建築物を重点的に狙い、エトヴァは矢を叩き込む。
 もうもうと立ちのぼる灰色の煙、無惨な一画の姿は陰惨だ。犠牲者がいないなど、到底信じがたい破壊の惨状は――必ず作戦を成功させる、というディアボロス達の意思表示だ。
「さあ! 長く引き篭ったノーブル達を炙り出そう」

●迎撃部隊
「なんたることだ」
 アヴァタール級ヴァンパイアノーブル、アレクサンドル二世は破壊された街を見て、苛立ちを隠さず、呟いた。
 護衛と伴うトループス級ヴァンパイアノーブル皇帝官房第三部らは、生真面目な顔で、
「なんという大罪」
「もはや極刑と処すしかございませんね、閣下」
 口々にそう喋り出す。
 その態度は、アレクサンドル二世を立てているようではあるが、上官はこめかみを引き攣らせ、高圧的に命じる。
「黙れ、我に意見するな」
「御意」
 皇帝官房第三部らはぴたっと黙る。
「誰に言われるまでもない――このサンクトペテルブルクで、斯様な振る舞い……死すら温い!」
 皇帝のような気位の男は、そう一喝し――ディアボロスの気配を察し、彼方を睨み据えた。
「八つ裂きにしても足りぬ。肉を撒き、その血で街を洗い流してくれよう――うぬらも、そう心得よ!」
「はっ!」
 皇帝官房第三部らは揃って敬礼し……男を守るように、前に躍り出たのだった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【避難勧告】LV2が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!

マティアス・シュトローマー
あはは、効いてる効いてる
ヒールに徹するはずが、あちらの指揮官様の台詞の方がよっぽど悪役らしいね
街は守れず、けれど自分の身をしっかり配下に守らせるあたりもいかにも貴族様だなあと

【パラドクス通信】で避難状況を確認し、時間稼ぎも兼ねた挑発を。上位の存在に逆らえないクロノヴェーダであれば尚の事、上官を悪く言われたら冷静さを欠くはず

続いて向かってくる敵に先手を取られないタイミングでパラドクスを発動。雷撃を纏った数多の弾丸を敵陣に向かって放ち、連携を打ち崩す
ダメージアップの効果を重ねた複数体攻撃で敵の狙いを自分に集中させ、陽動としての役割も果たしたい
また【通信障害】の効果も展開し、援軍を呼び込まれたり、こちらの情報が別部隊に伝わる事を阻止しよう

俺の役割は陽動として君達の視線を引き付ける事
目的を達成した以上、今更隠す必要なんてないからね
尋問に対してはライオットシールドを構えながら隠す事なく答え、反撃アップの効果を乗せた一撃をカウンターとして叩き込む

あとは君だけ
その名や態度に相応しい相手である事を祈るよ


一角・實生
敵意へはグラナトゥムを改めて構え直し視線を向ける
よし、狙い通り――お出ましだね

人々の避難状況を【パラドクス通信】で報告し合いながら仲間と合流
避難経路が主戦場となるならば一般人の気配は徹底的に探っておくよ
万が一があってはならない

シュトローマーさんの悪役発言には深く頷く
そうだなあ。本職には敵わないってことかも
わざとらしく敵にちらりと目をやることで挑発に更に加担しよう

仲間が作り出した機を活かすタイミングでパラドクスを発動
【先行率アップ】に【ダメージアップ】をのせて敵群を撃ち抜こう
仲間の攻撃で乱れた態勢を整える前に連続して攻撃を叩きこむよ
同時に数の利も一気に削り取る

発動後は遮蔽物館を移動しながらグラナトゥムを撃ち続け反撃に対抗
これは一点ものでさ、押収されるのは困るんだ
奪われてもそれは本来俺のもの
己の戦闘知識を元に敵の動きを看破し、忘れじの徽章が形成した障壁を纏い反撃威力の軽減を試みる
自分の攻撃を喰らうのは新鮮で……中々効くものだね

人々の従属の感情を薄めることに繋がるのなら
奴にはここで斃れて貰おう


エレナ・バークリー
やってきましたね、吸血貴族。
見られたからには仕方ありません。消えてもらいましょう。
あなた方もそのつもりでしょうから、お互い様ですよね。

「全力魔法」「撹乱」「蹂躙」「強打」「連撃」「連続魔法」で、天地逆しまなれば岩礫降り注ぎを行使。
降り注ぐ岩石の雨にどれだけ耐えられますか?
巻き添えで、市街地も更に破壊しておきましょう。

ふむ、拘束術ですか。温い。戦場で剣一本に生命を賭して駆け抜ける騎士を、何だと思っているんです?
これは逆説連鎖戦。相手を拘束しようが固めようが、その意識ある限り、攻撃は緩みません。
ましてや、私が扱うのは魔法ですから。口さえ動けば問題はないんですよ。身振りを補う分、多少詠唱は長くなりますが。

あなた方が軒並み岩の雨に埋もれるまで、瓦礫の雨で叩き潰します。
もっと違う立場で出会っていれば、口説いて私の恋人(モノ)になっていたかもしれませんね。実に残念です。

いつまでもあなた方と付き合っているわけにも参りません。名残惜しいですが、さようならです。
次は真っ当な生命として生まれてきますように。


●支配者と解放者
「よし、狙い通り――お出ましだね」
 一角・實生(深い潭・g00995)は愛銃を構え――皇帝官房第三部に苛立ちをぶつけるアレクサンドル二世に笑いかけた。
 周囲から、人の気配は消えている。先程までの騒動が嘘のように静かで……倒壊した建物なども相まって、突然災害に襲われたかのようであった。
 ここまでやったのは、他ならぬ自分達。
 だからこそ、
(「万が一があってはならない」)
 實生は相手に悟られぬよう気を張り詰め、端末から聞こえる情報に耳を澄ます。
 幸い、戦闘地帯にはもう誰も残っていない――。
「やってきましたね、吸血貴族」
 別の方角から、一歩前に進んで……エレナ・バークリー(Highlander/Absolute Wish・g00090)が不敵に笑う。
「見られたからには仕方ありません。消えてもらいましょう――あなた方もそのつもりでしょうから、お互い様ですよね」
「ふん、下郎めが……」
 アレクサンドル二世は忌々しげに吐き捨てる。
 それを前に、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)はヴァンパイアノーブルどもへ指を突きつけ笑う。
「あはは、効いてる効いてる」
 ぎろり、と睨み付けられても、マティアスは怯えない。
 くすくすと笑いの余韻を残しながら、肩を竦める仕草を向け、
「ヒールに徹するはずが、あちらの指揮官様の台詞の方がよっぽど悪役らしいね――街は守れず、けれど自分の身をしっかり配下に守らせるあたりもいかにも貴族様だなあと」
 敢えてかんに障る物言いを選んでぶつける。
「そうだなあ。本職には敵わないってことかも」
 ふふ、と双眸細め、敵を見やり、實生が相槌を打てば。
「貴様愚弄するか!」
「最早許さぬ!」
 そう叫んで皇帝官房第三部達が前に出る。
 ヴァンパイアノーブルの基準で法秩序の維持に務めんとする彼女達は、アヴァタール級に指示されるよりも早く、ディアボロスに怒りを向けた。
「おお、怖い怖い」
 マティアスは戯けるように言って――さっと拳銃を敵に向けた。
 同時に、距離をつめてくる敵へ、撃った。
「分断と混乱を」
 雷撃纏う弾丸が数多放たれ――ばりっと空気を裂く音が先行しながら、幾筋もの光条をひいて、第三部らの身体を穿つ。
「お前を不審尋問する! この尋問に黙秘権は無い!」
 なれど第三部は歯を食いしばり、そうマティアスに迫る。
 尋問の内容は兎角、パラドクスとして放たれれば力は及ぶ――首を詰められたような息苦しさを感じつつ、「なーんだ」と笑った。
「俺の役割は陽動として君達の視線を引き付ける事――目的を達成した以上、今更隠す必要なんてないからね」
 あっけらかんと言い――第三部が悔しそうに表情を歪める。
 そんな彼女らの頭上に、大きな影が落ちる。
「清気は天に昇り濁気は地に沈む。我、この理を覆し、天の上に地を生みださん。歪みし理は綻ぶが運命。天の岩、地に正しく降り注ぐべし」
 朗々と詠唱を終えたエレナが、第三部らに微笑みかける。
 頭上の影は、彼女が魔力で作り上げた岩盤――それは、一瞬にして落ちてくる。
「降り注ぐ岩石の雨にどれだけ耐えられますか?」
 エレナの問い掛け通り……岩盤は落下しながらバラバラに砕け、無数の岩石の雨と変じ、戦場に降り注ぐ。
 第三部らは散り散りに跳んで避けたが、甲斐もなく――華奢な身体は岩石に打たれ、鈍い音を立ててた。
「ぐっ……」
「武器を捨て! 地面に伏せ! 手を頭の上へ!」
 血にまみれながら……第三部らが叫ぶ。
 エレナの身体目掛け、地中より鋼鉄の鎖が走る――即座に元の位置より跳び退こうとも、鎖は四方八方よりしつこく追いかけ、エレナを縛り上げる。
「ふむ、拘束術ですか。温い。戦場で剣一本に生命を賭して駆け抜ける騎士を、何だと思っているんです?」
 冷笑を浮かべるエレナに、第三部は「黙れ!」と叫ぶ。
 それでも、エレナの余裕を崩すことは出来ぬ――。
 パラドクスである以上、拘束も、伴う苦痛は永遠には続かぬ――そして、彼女自身の耐久云々の前に。
 仲間がいる。
「――お先に」
 實生が囁く。
 それを掻き消すのは、彼の相棒、グラナトゥムから吐き出された激しい銃声。
 銃弾の限りを撃ち出すかのような連射であるが、デタラメに放っているのではなく――敵の立ち位置や意識を観察し、その行動を阻害する制圧射撃。
 肩を、背を、或いは頭を撃ち抜かれ、倒れたまま動かぬ者も、いた。
「っ……その凶器を証拠物件として押収する!」
 何とか立ち上がった第三部らは、叫んで、實生へと躍り掛かる。
 苦笑をひとつ、彼女らと距離を取りながら、
「これは一点ものでさ、押収されるのは困るんだ」
 そう武器を庇う。
「逆らうか!」
 怒りの儘、狙撃銃を構えるような姿勢をとる――そして……武器を奪わなくとも、第三部らは彼の技を再現したのような、反撃に出る。
 見えぬ弾丸が、實生を襲う――。
 しかし、スマートな射撃であるならば、狙われる部分は読める。読んでも尚、先読みされて脚を掠める銃弾。
 睨み付けて来る第三部らを見遣り、再び實生は苦笑する。
「自分の攻撃を喰らうのは新鮮……中々効くものだね」
 けれど、元は己の技。急所をマントで庇って、素早く駆け抜ける――敵は、狙いが定めきれず、彼に掠めるだけで精一杯、脚を止めている隙に、再びマティアスやエレナが仕掛けて来る。
 雷光が爆ぜ、岩石が降る――攻撃の度、第三部は仲間の数を減らしていく。
「チィッ」
 忌々しげに舌打ちし、尋問を難なく躱して銃弾を放ってくるマティアスを睨む者に。
 既に軌道も拘束力も読み切ったとばかり、鎖の合間を潜り抜けたエレナは視線を送り――それにしても、と双眸を細めた。
 その紫の流し目に気付いた第三部は、やはり、剣呑に睨み返してきた。
「もっと違う立場で出会っていれば、口説いていたものを――実に残念です」
 もし惜しむことがあるならば、可憐な見目の第三部が、ヴァンパイアノーブルであること――クロノヴェーダであるだけで、ありとあらゆる魅力が無価値になるとも言える……エレナは残念そうな吐息を一つ、再び岩礫を降らせる。
「いつまでもあなた方と付き合っているわけにも参りません。名残惜しいですが、さようならです」
 冷徹な言葉通り、容赦なく降り注ぐ岩石の中、必死に抵抗する敵を。
 逃さぬよう、マティアスは狙い済まし――撃つ。
 雷光が激しく、戦場を白く染め、踏み止まっていた第三部を焼き焦がす。
 軽く銃を取り回し、實生も、退きながら撃つ――扇状に広がった射線、残る敵は次々射貫かれ、赤い飛沫を上げて倒れる。
「……!」
 気付けば、もう戦場に残るヴァンパイアノーブルは、アレクサンドル二世だけ。
 その部下たる皇帝官房第三部は、ディアボロスに大した傷痍も与えられぬまま、全滅した。
「あとは君だけ――その名や態度に相応しい相手である事を祈るよ」
 マティアスはからりと笑って、怒りに青ざめたアレクサンドル二世に、ウインクを投げる。
 第三部を退けて尚、隙無く銃を構えた實生は、集中を高めるような一息の後、翠の眼差しで、敵将をまっすぐ射貫く。
「人々の従属の感情を薄めることに繋がるのなら――ここで斃れて貰おう」
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【通信障害】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【士気高揚】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!

エレナ・バークリー
手勢は片付けました。今、この場に残るのはあなただけです、皇帝(ツァーリ)アレクサンドル二世。
全く、この街にはどれだけのクロノヴェーダがいるのやら。殲滅するまでは先が長そうですね。

「全力魔法」「風使い」「なぎ払い」で、哮の吐息、遮るものなしを行使。
パラドクスを宿したクレイモアで、皇帝の身体をすれ違い様に撫で切りにして差し上げましょう。
蝙蝠を使った反撃はちょっと厄介ですね。いつもの魔力障壁は避けてくるでしょう。「結界術」を展開してある程度抑えつつ、皇帝目指してパラドクスを乗せた剣を振り回し、出来る限り相殺。
食いついて肥え太っていく蝙蝠は、引っぺがして踏み潰します。パラドクスで具現した存在はどうにもしようがないのは分かってますが、気分ってやつですよ。

さあ、思いっきり刃を交わしましょう、皇帝!
反撃も出来ないくらいに「連撃」を重ねて、パラドクスで切り裂いてあげます。

討滅が終われば、仲間に【パラドクス通信】で状況報告を入れます。
「――地点での作業は完了です。次の目的地の指示をお願いします。どうぞ」


マティアス・シュトローマー
それじゃ、俺も皇帝に失礼の無いよう全力を尽くそう
時間を掛け過ぎるのは不敬にあたるかもしれないし――何よりこの先の予定も詰まってるからね

仲間と足並みを揃えてパラドクスを発動。アレクサンドル二世をぐるりと囲むように蜘蛛の巣状のトラップを出現させ、動きを封じた上で銃撃や蹴撃の連続攻撃を浴びせる
至近距離から足を掬うように蹴りを食らわせ、体勢を崩したところをさらに銃で撃ち抜こう
また、近接攻撃を仕掛けるエレナとは挟撃になるよう位置取りには常に注意を払いたい
皇帝ともあろうお方を一人にはしておけないさ
さあ、遠慮せずに

一つの部隊を相手取る事になるなんてね……!
利用出来るものは利用させて貰おう
反撃として召喚された兵隊の攻撃は、ライオットシールドを構えながら市街地を駆ける事で、受けるダメージの軽減と破壊箇所の拡大を狙う
またガードアップの効果も纏い、致命傷を負わないように

もう次の目的地の話が……
そろそろ上位の貴族様達も街の異変に気付く頃だろうか
本物の皇帝――ニコライ2世へとお目通りが叶う日も案外すぐに来たりして


レイラ・イグラーナ
断片の王ではなく、一人のヴァンパイアノーブルでしかない。
それでも、貴方を討つことは革命家としての私の悲願でした。
皇帝の名を持つ者、アレクサンドル二世。お覚悟を。

革命家としての姿のネメシス形態へ。
針状の細剣「惨禍鬼哭血革針」を抜き近接戦闘を行います。

共に戦う皆様とは別の方向より攻撃を行い、同時にいくつもの方向から攻撃することでこちらの攻撃がより当たりやすいように。
惨禍鬼哭血革針を用いた刺突でアレクサンドル二世を貫きます。

敵が放つ赤い蝙蝠の群れに襲われれば蝙蝠を惨禍鬼哭血革針で払い、突き、血を吸われ、食いちぎられようと一歩も後ろには下がらずに最前線で戦い続けます。
このサンクトペテルブルクでの戦いに象徴されるように、私たち革命家は人民のためと言い、扇動し、結果として人民を苦しめる作戦を実行する。
ですからせめて……私が最も血を流さねば、顔向けなどできないでしょう。

革命とは人民の血によって始まり、革命家の血によって成され、支配者の血によって終わるもの。
この場は、貴方の血で終わりとしましょう。


一角・實生
これだけ街を破壊され目の前で部下も全滅させられたんだ
奴の苛立ちと怒りは相当なものだろう
羽根が逆立つプレッシャーを感じながらも、銃口は奴から外さずにいるよ

数の利を活かした多方向からの攻撃を後押しするように、俺は中距離からの銃撃で戦闘に参加しよう
直ぐ目の前の敵にばかり気を取られていると危ないよ
仲間の攻撃と攻撃の間を埋めるようにパラドクスを発動
【命中アップ】と【ダメージアップ】の効果を乗せて敵を銃撃し、近い場所にある奴の注意を強制的に俺へ向かせたい

その後はすぐさま手近な瓦礫へ駆け込もう
多方向からの反撃を防ぎつつ、グラナトゥムからウェントゥスへ持ち替え蝙蝠を撃ち墜としていくよ
徽章による障壁も時には展開

ふと子供達とその両親の姿が脳裏を過ぎる
目的のため彼らの帰る家を奪ったのは俺
刻一刻と迫る冬

……隠れて痛みをやり過ごすよりも撃破だ
瓦礫から飛び出し仲間の援護を再開しよう
仲間が受ける反撃を撃ち墜とし、奴のいのちが露出する瞬間を作り出すよ

崩壊した街を眺める
――この地を支配する存在を引きずり出した後は、きっと


●血で雪ぐ
「貴様ら……」
 アレクサンドル二世は怒りに震えながら、ディアボロスを睨み付けている。
 言葉も口に出来ぬ憤怒――アヴァタール級とはいえ、否、アヴァタール級だからこそ、個のディアボロスよりも勝る圧がそこにある。
(「これだけ街を破壊され目の前で部下も全滅させられたんだ――奴の苛立ちと怒りは相当なものだろう」)
 一角・實生(深い潭・g00995)は、変わらず銃口を突きつけながらも、羽が逆立つようなプレッシャーを覚えていた。
 無論、どんな敵であれ、臆する者は――彼を含めて、此所には誰もいない。
「手勢は片付けました。今、この場に残るのはあなただけです、皇帝アレクサンドル二世」
 ツァーリ、と。敢えてエレナ・バークリー(Highlander/Absolute Wish・g00090)は呼びかけた。
 飄然とした空気を纏いながら、強気に笑って見せる――。
「全く、この街にはどれだけのクロノヴェーダがいるのやら。殲滅するまでは先が長そうですね」
 相手の殺気を煽るように囁かれた言葉を、継いで。
「それじゃ、俺も皇帝に失礼の無いよう全力を尽くそう」
 マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)は戯けた一礼を披露する。
「時間を掛け過ぎるのは不敬にあたるかもしれないし――何よりこの先の予定も詰まってるからね」
 ぱちんとウインクをひとつ。
 それが相手の神経を逆撫ですると確信して、笑う。
(「ツァーリ……」)
 レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は、心の裡で、そう呟いた。
 偽りの皇帝――そう呼べば、この地の、断片の王を連想するだろう。
 だが、彼もまた皇帝を騙るヴァンパイアノーブルであり、それゆえにか、その気位は皇帝並みに高い――断片の王の気位は、知らないが。
 目の前のヴァンパイアノーブルは、ディアボロスに好き放題挑発される事に憤り、ギリギリと奥歯を噛みしめ、
「下賤のモノが……」
 憎しみを籠めて、そう零すを、聴き。
 そっと息を吐いて、レイラは貌を上げた。
「断片の王ではなく、一人のヴァンパイアノーブルでしかない――それでも、貴方を討つことは革命家としての私の悲願でした」
 静かな声音で……しかし、レイラの赤い瞳は、怜悧と冴えて、敵を射貫く。
 今の彼女は、メイドではなく――革命家であり暗殺者。黒き装束はその証……もっとも、元よりそこから外れた覚えは無いが、より強くその使命を顕わにする姿で。
「皇帝の名を持つ者、アレクサンドル二世。お覚悟を」

 ディアボロス達は軽く視線を交わすや、同時に動き出す。
 そうすることで誰から仕掛けるか――判断を迷わせよう、意識を分散させようという、シンプルな判断。
 中央のアレクサンドル二世は、纏う血を漂わせながら、低く告げる。
「愚民ども――否、民でもないうぬらは……ただ刑戮する」
「へぇ――やってみせてよ」
 拳銃を突きつけた姿勢でマティアスは。
 そのまま軽やかなフットワークで距離を詰め、アレクサンドル二世の腹目掛けて横蹴りを放つ。そのまま上半身を傾ぐ、前のめりの蹴りだ。
 咄嗟、躱そうとする相手に。マティアスは俯き気味の姿勢から、にやりと笑って告げる。
「動かない方がいいよ。その手足が大事なら」
 周囲にはマティアスが仕掛けた、蜘蛛の巣状のトラップ――敵の動きを制限する、罠の上。彼は横飛びに銃弾を浴びせながら、告げる。
「皇帝ともあろうお方を一人にはしておけないさ――さあ、遠慮せずに」
「何……」
 招き入れるように。
 彼の正面――クレイモアを大上段に構えたエレナが駆けてくる。
「深淵に眠る古き竜。世界を三重に取り巻くものよ。我が刃は汝が吐息と等しく。ただ全てを切り裂かん」
 丹田より深い息を吐き――同時、精霊剣を振り下ろす。
 竜の咆哮が如き轟音が空気を揺らし、烈風が大地を割る。
 それはアレクサンドル二世の背を直撃し、衝撃はその向こうまで突き抜けていく。
 ぎろりと。
 男の目は二人を睨み、凍りつくような呼気とともに、
「愚か者どもが」
 唸るように告げる。
 彼の周囲に漂っていた血のコートが、蝙蝠の形に変わり、エレナを包むように襲いかかり――それより一歩早く、機関銃のヒステリックな銃声と共に、マティアスの足元を激しく抉った。
「一つの部隊を相手取る事になるなんてね……!」
 足を止めず駆け抜けながら、焦ったようでもなく呟く。
 アレクサンドル二世が召喚した傀儡の徴兵は、主の指示のまま、マティアス目掛け、機関銃を掃射し続ける。
 そして、血の蝙蝠は、エレナの肉を食いちぎらんと牙を剥く。
 大剣を振るって、蝙蝠の群れを凌ぎながら、彼女もまたアレクサンドル二世から距離を取る。
 ちくりと小さな痛みがあれば、そこにいた蝙蝠は一回り大きくなる――彼女はそれを力任せに引っ剥がすと、地に叩きつけて踏みつけた。
 しかし、反撃で二人を一度遠のけたとて、アレクサンドル二世には絶え間なく攻撃が向けられる。
「直ぐ目の前の敵にばかり気を取られていると危ないよ」
 實生が忠告する――当然、親切心などではない。
「蝕む痛みを」
 昏冥の力を込めた銃弾が、的確に敵の肩を貫いた。
 貫いた傍から、籠められた力が、ヴァンパイアノーブルの身体を蝕む――實生が囁いた通り、感覚を狂わせるほどの痛みだ。
 撃って――彼は即座に大きな瓦礫の後ろに駆け込む。
「小童が」
 馬鹿にしたような声が背中越しに聞こえた。
 そんなことをしても、パラドクスには無意味だということは、承知の上。
 彼が瓦礫から、貌を覗かせた時。その手で光るは、黒い拳銃。視界を埋める赤い蝙蝠の群れを、慎重に撃ち落とし、被害を抑える。
 死角から聞こえた地を踏みしめる音に、アレクサンドル二世は素早く身を返す……。
「それは血によって始まり、血によって成され、血によって終わるもの」
 針状の細剣を手に、レイラは厳かに告げ――流れるように、眼前の男へと叩き込む。
「っ」
 彼女の血で作られた剣を、鋭く深く、捻じ込まれ、アレクサンドル二世は苦痛の表情を一瞬浮かべたが。
「この高貴な身体に傷を――!」
 青白い貌が、どす黒い怒りに染まる。
 羽ばたく血蝙蝠の数は増し、黒衣のレイラを包み込む。
「その程度の流血で騒ぐとは……みっともないですね」
 蝙蝠らの牙は、服越しにも血を啜り、レイラを傷つけていく。
 しかし彼女は、流れる血をものともせず――剣を振るい、突き、蝙蝠に正面から挑んでいく。
「このサンクトペテルブルクでの戦いに象徴されるように、私たち革命家は人民のためと言い、扇動し、結果として人民を苦しめる作戦を実行する。ですからせめて……私が最も血を流さねば、顔向けなどできないでしょう」
 だから、自分は最前線で戦う――それを示すように、彼女は蝙蝠どもを振り払い、更に敵へと距離を詰めようとしている。
 彼女の言葉を耳に、實生の脳裏に……先刻追い立てた親子の姿が浮かぶ。
(「目的のため彼らの帰る家を奪ったのは俺――刻一刻と迫る冬……」)
 気付けば、強く歯を食いしばっていた。
 そして、實生は瓦礫の後ろから飛び出す。
「……隠れて痛みをやり過ごすよりも撃破だ」
 再び、グラナトゥムを構えて――呪いの弾丸を、撃つ。
 弾丸は、空気を斬り裂く高い音とともに、目にも止まらぬ速さで駆け抜け、再びアレクサンドル二世の身体を穿って、高く血飛沫が舞う。
 噴き上がるのは、蝙蝠だ。
 男の周囲には無数の蝙蝠が渦を巻いている。
 そこへ、目を輝かせたエレナが、喜悦に満ちた表情で馳せる。
「さあ、思いっきり刃を交わしましょう、皇帝!」
 竜の咆哮が轟く――凄まじい重みの斬撃が、男の片腕を斬り飛ばす。
 蝙蝠に食いつかれながら、エレナは幾度となく剣を叩きつけるべく躍った。
「不敬なり!」
 隻眼を剥き、アレクサンドル二世が吼えた。斬り落とされた腕とその先は、血でつながり元に戻っていく。その血からも、無数の蝙蝠が生まれて放たれる。
「それはそうだ。俺達はそのために来たんだし――」
 その後頭部に銃を突きつけ、マティアスが、あっけらかんと言う。彼の身体はしつこい部隊の攻撃で、削られ、薄汚れていたが――万事計画通りと、愉快そうに笑って見せる。
 全力で、貴族を――皇帝を侮辱するために。
 雁字搦めの蜘蛛の巣。苦痛で動きを苛み、至近距離から容赦なく撃ち抜く。
 敵も然る者と思うのは――後頭部を銃撃されて尚、倒れぬ敵の頑丈さだ。真っ赤に染まったアレクサンドル二世は、その血液を操って傷を埋め――同時に、蝙蝠を産みだし攻撃に使う。
 もっとも、それがその場凌ぎであることは、誰の目にも明白である。
 皆の助けになればと、實生はその蝙蝠を掻き消すように銃弾を撃ち込む。そうなれば、その蝙蝠が自分に襲いかかってくると解っていながら。
(「――奴のいのちが露出する瞬間を作り出す」)
「黙れ、黙れェ!」
 そう叫び、男は兵を呼ぶ。
 皇帝を救うため、召喚された兵隊がマティアスを追い立てるようコンバットナイフを振るってくる。
 だが、もう充分だと――マティアスも、素直に逃げに移る。
 開いた距離を、埋めるように跳び込むは、銀髪を靡かせた革命家。
「革命とは人民の血によって始まり、革命家の血によって成され、支配者の血によって終わるもの」
 低い姿勢から、一歩前へ。腰を捻り、身体を盾に隠した刀身を、素早く斜め上へと捻じ込む。
 鈍い触感。肉を抉る感触。到達する、ぷつんと張りのある何かを貫いた、手応え。
「――この場は、貴方の血で終わりとしましょう」
 夥しい血が、重力に従って、流れ零れていく。
 レイラが腕を振り抜けば、崩れ落ちた重い身体が、土と血に汚れた汚泥に倒れ込む。その表情は、屈辱と怒りに染まった凶相であった――。

「――地点での作業は完了です。次の目的地の指示をお願いします。どうぞ」
 エレナがディアボロス通信で、此所にはいない誰かにそう告げる。
 それを耳に、マティアスが曖昧に笑う。
「もう次の目的地の話が……」
 実によい進捗であるとも――戦いの果てに、この街がどうなるのだろうという、複雑な感情。
(「そろそろ上位の貴族様達も街の異変に気付く頃だろうか」)
 派手に立ち回れば回るだけ、ジェネラル級を引き摺り出せる。
 だから、結果のための、代償には目を瞑る。否、まっすぐ見つめた上で――呑み込んで。
「本物の皇帝――ニコライ2世へとお目通りが叶う日も案外すぐに来たりして」
 敢えて、明るく言う。
「そうですね。それも、私の悲願ですから」
 レイラは目を伏せ、いつもと変わらぬ静かな様子で頷く。
(「――この地を支配する存在を引きずり出した後は、きっと」)
 下ろした腕。何も持たぬ拳を、堅く握り込み。實生は強い眼差しで街を見つめる。
 戦いは、血によって起こり、血によって終わる。
 戦うものは、それでいい。
 だから、せめて――戦いの外にある人々が、血を流さずに済むように。
 祈りを籠めて、彼らは進む。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【傀儡】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【ガードアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2024年10月06日

サンクトペテルブルク強襲作戦

 シュリッセリブルク要塞制圧作戦を成功させたことで、東進して敵の拠点である首都サンクトペテルブルクを強襲する作戦が実行可能になりました。
 攻略旅団の提案による『シュリッセリブルク要塞の機密データの解析』の結果、冬になるまでは防衛に徹し、冬の間に大規模な作戦を展開、春になる前にディアボロスとの決着をつける……という計画を持っている事が判明しています。

 冬将軍との密約により、寒さが和らいだとは言え、冬の季節に入れば、吸血ロマノフ王朝の寒さが厳しくなるのは必定です。
 その前に、サンクトペテルブルクへの強襲作戦を行い、敵の目論見を打ち砕く必要があるかもしれません。
 サンクトペテルブルクには断片の王、『大元帥』アレクサンドル・スヴォーロフを筆頭に、多数のジェネラル級が集結している事が判明しています。

※特殊ルール(24/09/02更新)
 攻略旅団が【重点目標】として指定したため、複数のジェネラル級との決戦チャンスが生じます。
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(1)成功シナリオ数×10
(2)選択肢『住民の避難と、サンクトペテルブルク破壊活動』の🔵数
===========
(1)+(2)の合計数が多ければ多いほど、交戦できるジェネラル級の数が増加します。
 合計数によっては、断片の王がサンクトペテルブルクを放棄する事もありえるかもしれません。

『大元帥』アレクサンドル・スヴォーロフ

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#サンクトペテルブルク


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選択肢『住民の避難と、サンクトペテルブルク破壊活動』のルール

 吸血ロマノフ王朝の最大拠点『サンクトペテルブルク』の市街地への破壊活動を行います。
 首都であるサンクトペテルブルクの市街地に大きな被害が出れば、大きな心理的効果が期待できるでしょう。

 破壊活動の対象となるサンクトペテルブルクの市街地には一般人が居住しています。
 過去の調査で、サンクトペテルブルク内の一般人にはヴァンパイアノーブルへの従属が徹底的に刷り込まれており、従属から離れさせるための生半可な扇動や流言は通用しないことが判明しています。
 ですが、被害を出せば敵はそれを利用してくるでしょう。被害を出さないように住民を避難させつつ、市街地の破壊活動を行わせてください。

 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『🔵が👑に達すると、敵の大規模な作戦に影響を及ぼす。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾護衛するトループス級『皇帝官房第三部』のルール

 事件の首魁であるクロノヴェーダ(👿)を護衛するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 👾を撃破する前に👿と戦闘を行う場合は、👾が護衛指揮官を支援してくるので、対策を考える必要があるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『アレクサンドル二世』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「レイラ・イグラーナ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。