驚異の巨大化ゾルダート

 機械化ドイツ帝国で暗躍する悪の組織は、度重なるディアボロスの妨害に業を煮やし、未完成の『ゾルダート巨大化装置』を持ち出し、決戦を挑んできました。
 未完成の『ゾルダート巨大化装置』には、巨大化の効果時間が終了すると同時に巨大化していたゾルダートが爆発、死亡するという大きな欠点があります。
 この欠点があったとしても、巨大化したゾルダートの戦闘能力は絶大であり、ディアボロスを完膚なきまでに撃退できると信じて、送り出したようです。

 街で暴れようとする巨大化ゾルダートを食い止め、人々を護りましょう。

アルメ・リッターを待ちながら(作者 坂本ピエロギ
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#機械化ドイツ帝国  #驚異の巨大化ゾルダート  #悪の組織  #巨大化ゾルダート 


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 西暦1918年、11月某日。
 秋も終わりを迎えつつある機械化ドイツ帝国の片隅で、ひとつの街が消えようとしていた。
『はーっはっはっは!! 我らが組織に逆らう者共よ、怯えながら死ぬがいい!!』
 街の中心部に突如出現したのは、一人の巨人――戦車の優に数倍にまで巨大化したゾルダート。
 彼は得物の破城槌をブンと振るうなり、辺りの家々を、学校を、市場を、市民もろとも片っ端から更地に変えていく。
 運よく難を逃れても、街の人々が助かることはない。男の体には爆弾が仕込まれ、数分後には全てを消し飛ばすからだ。
「死ぬまで暴れ続けてやるぞ! 俺に心残りなど無いのだ! はーっはっはっはっはっは!!」
 心底愉快そうに笑いながら、ゾルダートは嵐のごとき暴虐を続けた。
 そう、悔いはない。あのスイーツを心行くまで食ったとき、彼の未練は消えたのだから――。


 所は変わり、西暦2021年の新宿島。
「ちょっと急ぎの依頼なんだけど、誰か、手の空いている人はいる?」
 新宿駅グランドターミナルに程近い構内の一角で、道行くディアボロスを呼び止める女が一人。グレーテル・ベッカー(人間のレジスタンス諜報員・g01436)――機械化ドイツ帝国出身の時先案内人である。真剣な色を帯びた彼女の言葉に、数名のディアボロスが集まってきたのを確かめると、グレーテルはさっそく説明を開始した。
「機械化ドイツ帝国で発生している、巨大化ゾルダートの事件は知ってるかしら。皆には、それを解決してほしいの」
 グレーテルによると、事件が起こるのは帝国のとある市街地だ。
 人口規模こそ決して大きくないが、周囲には肥沃な農地が広がり、美味しい果物の産出地としても知られる古い街。
 そんな土地が、巨大化ゾルダートの手によって消滅する危機に晒されているという。
「知っての通り、帝国内では悪の組織があちこちで暗躍してるわ。罪のない一般人を苦しめてきた彼らの活動も、皆の活躍のおかげで随分減ったけど……それで諦めるほど、向こうもヤワじゃなかったみたいね。ゾルダート巨大化装置とかいう玩具を開発して、ディアボロスを街もろとも消し飛ばす作戦に出てきたわ」
 この装置で巨大化したゾルダート『フォーアライター』は身長20mに成長し、戦闘力も大幅に向上する。
 おまけに体内には自爆装置が取り付けられ、巨大化から10分後に自爆。周囲を焼け野原へと変えてしまう。
 真正面から戦えば、激戦となるのは間違いないだろう。

「ただ、この装置には弱点があってね。使用者に『心残り』が少しでもあると、巨大化を維持できないの」
 つまりゾルダートが生への未練を持った時点で巨大化は解除され、自爆機能も失われる。
 その為か、作戦を遂行するゾルダートには事前に街で休暇が与えられ、心残りのないよう過ごすことが許されるという。
 もし敵に『心残り』を生じさせたいなら、そのタイミングで接触するしかないだろうとグレーテルは告げた。
「街で一定の時間を過ごせばゾルダートは巨大化して暴れ出すわ。皆が先に攻撃を仕掛けても戦闘になるから注意してね」
 作戦目標は、ゾルダートを撃破すること。
 巨大化した状態で倒しても、普通のサイズに戻った状態で倒しても、作戦は成功となる。
 いずれの方法を選ぶかは、ディアボロス達で話し合ってほしいとグレーテルは言った。

「最後にひとつ、大事な情報。ゾルダートが休暇を過ごす場所についてよ」
 グレーテルの情報によると、敵はとある一軒のカフェでひと時を過ごすようだ。
 このカフェには菓子店が併設されており、店が提供するケーキやペイストリー、その他様々なスイーツを楽しめる。
 甘くて美味しい果物やチョコレート、そしてチーズなどを用いた品々はどれも大人気だ。
「で、このお店でゾルダートが注文するのは一種類だけ……それが『アルメ・リッター』というスイーツなの。卵とミルクに浸して焼いたパンに、好みでジャムをつけて食べる料理よ。皆にはフレンチトーストと言った方が分かり易いかもね」
 グレーテルいわく、実はこのゾルダートはスイーツというものを全く知らないという。
 甘いお菓子に憧れ、やっと最後に得られた自由。そこで彼は唯一名前を知っていたアルメ・リッターを注文したのだろう。そんなスイーツ初体験の相手に心残りを生じさせる方法といえば、そう――。
「皆が、好きなスイーツを好きなだけ食べる。それがゾルダートには一番効く筈よ。彼はあくまでアルメ・リッターを食べることに集中してるから、その横で『他にも美味しいスイーツが沢山あるんだ!』って思わせるほど、巨大化解除の成功確率は上がるわ。店には珈琲や紅茶、ソフトドリンクも揃ってるから、そっちとの併せ技で攻めるのもアリね」
 そうしてグレーテルは参考までにと、店のスイーツを幾つか挙げていく。

「果物系だと、今は林檎を使ったお菓子が多いかしらね。例えば……」
 例えば、瑞々しい林檎のフィリングを薄い生地で包んで焼いた、バターの薫るアプフェルシュトゥルーデル。
 或いは、一口サイズに千切ったパンケーキをバターで焼いて、林檎ジャムやアイスを添えたカイザーシュマーレン。
 林檎のフィリングを生地で覆って焼いたゲデクター・アプフェルクーヘンもお勧めだ。一見アップルパイに似た菓子だが、卵と砂糖を加えて焼いた生地の濃厚な味わいは唯一無二のものである。
「果物系が苦手な人はチョコレートやチーズ系の品もお勧めよ。こっちは例えば……」
 たっぷりの白チーズを生地に載せて焼き上げ、真っ赤な苺のコンポートで彩を添えたトプフェントルテ。
 香り高い洋酒をしっかり利かせた、チョコとサクランボの甘い芸術、シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ。
 3層のスポンジ、2層のクリーム、コーティングに飾り付け、その全てがチョコを尽くしのトリュッフェルトルテ……。
 他にもザッハトルテやドボシュトルテ、クレームシュニッテンなど、美味しい逸品が揃っているとグレーテルは言った。
「私が挙げたのは、あくまでメニューの一部よ。ケーキやデザート類はもちろん、他のスイーツ類もカフェにあるものは大体揃ってると思っていいわ。あ、未成年の飲酒喫煙とか、お店の迷惑になるような危険行為は厳禁だから気をつけてね?」

 そうして説明を終えると、グレーテルは敵に関する情報をひとつだけ付け加えた。
「アルメ・リッターは、日本語で言えば『貧乏な騎士』という意味なの。私のいた国では、『アルメ・リッターを焼く』って言葉がそのまま貧乏暮らしの例えに使われるくらい、貧しさの代名詞みたいなお菓子で……普通だったら、人生の最後に奮発して食べるようなものじゃないわ」
 果たしてゾルダートになる以前、彼はどのような人間だったのか。
 今となっては、それを知る手掛かりはない。彼がもう人に戻れない以上、知る意味もないだろう。
 僅かな沈黙の後、グレーテルはディアボロスへと向き直り、告げる。歴史を狂わせた侵略者への怒りを秘めた声で。
「それじゃ、行きましょう。確実な撃破を頼むわね」


『おお……素晴らしい!』
 運ばれて来たアルメ・リッターに、フォーアライターは歓喜の吐息を漏らした。
 黄金色に輝く二枚重ねのトースト。蕩けるバターと芯まで沁み込んだミルクと卵の香り。付け合わせには旬の林檎を使ったコンポートに加え、薄紅色の林檎ジャムまで添えられている。それらが混然一体となった生地からふわりと立ち昇るシナモンの芳香などは、もはや暴力的でさえあった。
『焦ってはいけない。まずは、少しずつ……』
 フォーアライターは深呼吸をひとつ、添えられたフォークに手を伸ばす。
 一度にジャムを塗りたくる贅沢はしない。そんな真似は彼にとって、あまりに刺激が強く、恐れ多い行為なのだろう。
 黄金色に輝くパンの淵に、心ばかりのジャムをつけて一口。その感動的な味わいに、しばし言葉を失い呆然となる。
『これが……スイーツの味……!』
 しばし恍惚に浸った後、気づけば皿を空にしていたフォーアライターは、そわそわした様子で店の人間を呼びつける。
『今日だけは心行くまで奮発するとしよう……もう一皿、アルメ・リッターを。あー、ジャムはラズベリーを少し多めに』
 程なくして、注文した品が運ばれてきた時――。
 店のドアが静かに開かれ、新たな客の入店を報せるのだった。



 全長20mに巨大化したゾルダートと決戦を行います。
 攻撃力は巨大化していない状態のゾルダートの実に5倍、耐久力は10倍以上となります。
 が、『ゾルダート巨大化装置』が未完成な影響もあって、極端に動きが鈍くなるため、数値ほど戦闘力は上昇していないようです。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。


特殊ルール 【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、シナリオは成功で完結する。
👑33

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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
1
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【飛翔】
3
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【強運の加護】
2
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【浮遊】
1
周囲が、ディアボロスが浮遊できる世界に変わる。浮遊中は手を繋いだ「効果LV×3体」までの一般人を連れ、空中を歩く程度の速度で移動できる。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【勝利の凱歌】
3
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【落下耐性】
1
周囲のディアボロスと、「効果LV×300m半径内」の通常の生物に、どんな高所から落下しても、落下時の衝撃を2mの高さから落下した程度に軽減する能力を与える。
【通信障害】
1
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV2 / 【ガードアップ】LV4 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【アヴォイド】LV4 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

坂本ピエロギ
 坂本です。機械化ドイツ帝国のシナリオをお送りします。
 街の破壊を目論むゾルダート『フォーアライター』。スイーツ初体験の彼に未練は残るのか、それとも……。
 本シナリオは緩めの速度で進行を予定しておりますので、お気軽にご参加ください。

●成功条件
 選択肢①または④の達成

●進行の順番について
 本シナリオは、下記の順に執筆を行う予定です。
 ③「ゾルダートの休日」→①「巨大化ゾルダート決戦」・②「ゾルダートへの呼びかけ」→④「ボス戦」

 リプレイは③から開始され、完結後に①・②を、さらに②の完結後に④のプレイングを募集します。
 ②が成功した時点で①は参加不可能となり、プレイングも失効となりますのでご注意下さい。
 また、④については人数次第で採用数の制限を行う場合があります。

 それでは、皆様の参加をお待ちしています。
74

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


魚竹・凛々乃
へぇ、なかなか素敵なお店じゃない

どのスイーツも素敵だけど…あたしは、生の林檎をトッピングした真っ白いチーズケーキを食べるわ
新鮮な赤い皮を活かしたデコレーションなら、ゾルダートの目にも止まりやすいんじゃないかしら?
食レポ番組みたいな綺麗な所作でケーキにフォークを入れて、少し大袈裟にリアクションしちゃうわね
「たまらないわ!やっぱり秋は林檎よね」
「秋は」を強調して他の季節の果物への未練も残せれば上々ね

なんて作戦立ててるけど、いざケーキを口にしたら仕事のことなんて忘れちゃうかも
「カロリー気にせず食べるスイーツ、サイコー!」
ついこないだまでアイドルだったんだもの、カロリーを気にしないなんて久しぶりだわ


 温かい店内に漂う、炒った珈琲豆の香り。ショーケースに並んだ色とりどりのケーキ。
 テーブルのあちこちでは人々が雑談に花を咲かせ、のんびりとひと時を過ごしているのが見える。
 そんな店の空気に、魚竹・凛々乃(元・きらきらピンクのりりぼんちゃん・g03685)が抱いたのは、
「へぇ、なかなか素敵なお店じゃない」
 というものであった。
 そうして凛々乃は案内されたテーブルで注文を出すと、すぐさま周囲に視線を巡らせた。この店のどこかに、事件を起こすクロノヴェーダがいるはずだ――。
(「どこかなー……っと。あ、いたいた」)
 果たして店の窓際、一人用の席に目当ての相手はいた。
 熱々のアルメ・リッターに、ジャムをちびちび塗して食べる一人の男。ゾルダート『フォーアライター』の姿である。
『うまい。実にうまい……!!』
(「心ここにあらずって感じね。それじゃ、あたしも仕事しますか」)
 程なくして注文の品が運ばれてくると、凛々乃はフォークを手に取った。
 注文したのはトプフェントルテ。白チーズの上に林檎の果肉を載せたチーズケーキだ。
 一方フォーアライターはと言えば、あっという間に二皿目を食べつくし、三皿目を待っている。それを見た凛々乃は好機とばかり、トッピングされた林檎の紅色を翳すようにして言った。
「わあ、このケーキ美味しそう!」
『なに……!?』
 フォーアライターの視線をひしひしと感じつつ、凛々乃は思わせぶりな手つきでフォークを取る。
 事前の作戦では色々と台詞を考えてはいたものの、実物を目にすればそんな思いは消えていた。
 まずは少し欲張りつつ――ひとくち目を、ぱくり。
「美味しい……!」
 口当たりの軽いチーズと、林檎の爽やかな甘さ。それらが一体となって生じる味は濃厚ながら決してくどくはない。
 儚く消えていく風味の余韻を惜しみつつ、凛々乃はケーキを愛しそうに見つめる。
「まだこんなに残ってるなんて……最高じゃない」
 これがアイドルだった頃なら、まずカロリーのことが頭に浮かんだことだろう。だが今は違う。
 美味しいスイーツを存分に堪能できるのだ。そう、最後のひと欠片まで。
「秋はやっぱり林檎よね。ああ、春や夏の新作スイーツが楽しみだわ!」
『なっ、何だと……』
「ふふっ。カロリー気にせず食べるスイーツ、サイコー!」
 打ちひしがれるフォーアライターを前に、歓喜の嬌声をあげる凛々乃。
 甘い宴は、まだ始まったばかりだ。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!

秋津島・光希
※連携、アドリブOK

わざわざ未練作った上でぶちのめす…ってのも
敵ながら何つーか、やりきれねえな
ま、人には戻してやれねえし。きっちり仕事はすっけど

つーことで、食う
普段は人並みの量に抑えてっけど、今日は思う存分食う
成長期かつインセクティアの胃袋なめんな

手始めに、だ
カイザーシュマーレン三人前を注文
林檎のコンポート添え、クランベリーソース添え、バニラアイス添え
全部違うモン添えてもらって食べ比べだ
あと珈琲な

食べ比べた感想は敵に聴こえるよう、あえて口に出しつつ
珈琲飲んで一言
「家族やダチにも食わせてやりてえな…」
敵に未練残す目的半分、本音半分ってとこだ

さーて、まだまだ食えるな
店員のお勧め聴いて追加注文すっか


イツカ・ユメ
※アドリブ、他者様との絡みOK

好きなスイーツを好きなだけ食べてオッケーと聞いて!
ふふー、何食べようかなぁ

お店についたら、フォーアライターさんの近くの席に
ねぇねぇ、あなたが食べてるの、なぁに?わたしもそれにしようかな
なんて、気さくに話しかけつつ
まずはアルメ・リッターにジャムを贅沢にたっっっぷり付けていただきまーす

これも美味しいけど、世の中にはたくさんのスイーツがあるんだもの
他のも食べなきゃ勿体ないよ
宝石をちりばめた王冠みたいな華やかなフルーツタルト
パンケーキにアイスを添えてあつあつとひえひえの夢のコラボ!
あ、お酒に合うスイーツってあるかな?
等と、花まる笑顔で食レポ全開でスイーツ食べまくるよっ


クラウ・ディークラウ
おいしい……おいしい
クラウ、甘いもの、好き
ファッジやスコーン、良く食べてた、けど
初めてのお菓子も、おいしい
(カイザーシュマーレン、一口サイズが食べやすくて好きな様子
せがんでくるリームとも分け合いながらいただきます)

次のは……これも、おいしい
チーズ、ぎっしり……食べ応え、すごい
けど、なんでか、重過ぎない
甘いだけじゃなくて、さっぱりな酸味も、あるから……?
不思議、面白い
(トプフェントルテをゆっくり食べ進めつつ
リームもチーズ系が大変気に入った模様)

クラウも、知らないもの、いっぱい
ここのお菓子だけでも、いっぱい
もっと、いろんなもの……見て、触れて、知っていかないと、ね
せっかく――まだ、生きてるんだから


 天にも昇る心地というのは、まさにこういう気分を言うのだろう。
 テーブルに鎮座するスイーツの眺めに、イツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)は堪らず歓喜の声を漏らした。
(「好きなスイーツを好きなだけ食べてオッケーだなんて! ふふー、いっぱい食べようっと」)
 そうして彼女はおもむろに、傍の席に座るフォーアライターへと視線を移す。
「ねぇねぇ。あなたが食べてるの、わたしのと一緒だね!」
 イツカがそう言って指さしたのは、自分のテーブルでふわりと湯気を立てる一品。
 黄金色に輝く二枚載せのトーストに、林檎のジャムを添えたスイーツ――アルメ・リッターである。
 気さくな様子で話しかけるイツカに、フォーアライターはちらりと視線を返すと、
『……ん? ああ、そうだな』
「えへへ。それじゃあ、まずはラズベリージャムを贅沢にたっっっぷり付けて……」
 黄金色が隠れるくらいにジャムを塗りつけたトーストを一枚、イツカは早速ぺろりと平らげた。
 トーストから沁み出すバターと乳の香りがベリーの甘酸っぱさと混ざり合い、噛み締めるたびに頬が緩む。
「ふふふ、二枚目もいただきまーす!」
 ゆるゆると目尻を下げ、至福のひと時を堪能するイツカ。その光景にフォーアライターの喉がごくりと鳴る。
 自分もあれを試してみようか――そう思って彼がジャムに目を向けた、その矢先である。
「さーて、次はこっちを食べようっと。他のスイーツを味わわないなんて、勿体ないもんね」
『!?』
 イツカのテーブルに並んだ三品に、フォーアライターは目を奪われた。
 クッキーの土台に栗のムースを盛り、表面を覆うマロンペーストを栗のメレンゲで飾ったもの。
 宝石のような果物をゼリーの中へ散りばめた、王冠のようなフルーツタルト。
 一口サイズに千切って焼いた熱々のパンケーキに、キンと冷たいバニラアイスを添えたもの……。
「栗のやつがマローニトルテ、果物のやつがオプストトルテ、それでこっちが――」
「カイザーシュマーレン、だな?」
「ん。美味しそう」
 イツカの言葉を継いだのは、隣席の秋津島・光希(Dragonfly・g01409)だった。その傍にはクラウ・ディークラウ(遮る灰色・g01961)の姿もある。
 二人のテーブルには、奇しくもイツカと同じカイザーシュマーレンが揃っている。光希は林檎とジャムとアイスで三皿分、クラウはトプフェントルテも一緒だった。
 そんな未知のスイーツに釘付けのフォーアライター。三人はそこへ追い打ちをかけるように、
「ねえ、皆で食レポやらない?」
「いいね。乗ったぜ」
「ん。面白そう」
 そうして、ディアボロスによる食レポ大会が幕を開けた。
 まずは光希である。彼は湯気を立てるパンケーキにクランベリージャムをふりかけると、手際よくかき混ぜた。
 狐色のパンケーキがジャムの赤色を帯びるにつれ、空腹を煽る香りがテーブルを包む。小麦とバターとジャムの相乗効果で力強さを増した香ばしさは、否が応でも食欲をそそらずにはいられない。
「どれどれ……おお、こりゃやばい美味さだ」
「あ、凄くいい匂い……」
「ん。リームも、あれが、いいの?」
 生唾を飲み込むイツカ。一方クラウの席では、彼女のメーラーデーモンが辛抱堪らんとばかり鼻息を荒くしていた。
 さっそく山盛りのパンケーキにジャムをひとまぶし。熱々の一切れを一緒にいただく。
「おいしい……おいしい……クラウ、甘いもの、好き」
 温かい菓子を満喫しながら、ふとクラウは故郷のスコーンを思い出した。お腹が空いた時など、よく頬張ったものだ。
 早く次をとせがむリームを宥めつつ食事を進める一方、イツカは花まる笑顔でトルテ二種の食べ比べに興じている。
 かたや光希は早くも二皿目へと取り掛かるところ。そんな光景を、フォーアライターはただ見守る以外にない。
「あー、すっっっごい幸せ……!」
「よし。次は林檎のコンポートでいくか」
 光希はパンケーキの一切れにコンポートを一緒に突き刺して、一口で豪快に頬張った。
 林檎のシャクッとした食感と、パンケーキのふんわりした歯応えの組合せが実に良い。並の人間なら悲鳴を上げそうな量の食事も、インセクティアの彼にとっては前菜のようなものだ。
 大食いのイツカもまた、二種のトルテに舌鼓を打っている。オプストトルテはカスタードクリームのリッチな味が素晴らしく、フルーツの甘味と酸味をぐんと引き立たせてくれる。マローニトルテも、ラム酒で花開く栗の風味が実に良い。
「ふわー…… ……もう最高! 胃袋がふたつ欲しいっ!」
「トプフェントルテも、おいしい。チーズ、ぎっしり……」
 クラウはといえば、白チーズのケーキを相手に格闘の真っ最中だ。
 二人に比べて食は太くないクラウだが、そんな彼女でもこのケーキは重さを感じず、いくらでも食べられそうだった。
 舌の上でチーズが儚く崩れ、軽やかな風味がふわっと広がる。そこへ更なる甘味を加えるのは真っ赤なベリー。地味ながら後を引く美味しさは、リームもすっかり気に入ったらしい。
「甘いだけじゃなくて、さっぱりな酸味も、あるから……? 不思議、面白い」
 そうして――最後にフォークを伸ばしたのは、三人が三皿ともに同じスイーツだった。
 カイザーシュマーレンのアイスクリーム添えである。
「溶けねえうちに、いただこうぜ」
「ん。リームにも、あげる、ね」
「あつあつとひえひえのコラボ、いただきまーすっ!」
 甘くて冷たいバニラアイスを、もっちりした熱々のパンケーキに絡める。それを一思いに、パクリ。
 熱さと甘さと冷たさ、混然一体の味わいを柔らかな生地とともに噛み締める、これが美味くない訳がない。
 誰もが惚けたように言葉を失うこと暫し、光希は熱い珈琲をぐっと干して呟いた。
「ああ……家族やダチにも食わせてやりてえな……」
 本音混じりの言葉を漏らして視線を向けた先、フォーアライターは無言のまま。
 スイーツ初体験の彼にとっては刺激が強過ぎたのか、石のように固まって動かない。
 となれば――光希は考える。ここは最後のひと押しと行くべきだろう。他でもない、店のおすすめスイーツで。
「さーて、まだまだ食えるぜ。二人はどうする?」
「勿論、わたしも貰うよっ!」
「……ん。クラウも」
 程なくして運ばれて来たのは、林檎を使ったスイーツ三種であった。
 林檎を円形のバター生地に入れて、胡桃やレーズンと一緒に焼いたアプフェルクーヘン。
 煮林檎をドライフルーツと混ぜ合わせ、バター入りのパイ生地で包んで焼いたゲデクター・アプフェルクーヘン。
 芯を抜いた林檎にバターとシナモンを詰め、パイ生地で包み焼きにしたアプフェル・イム・シュラーフロック。
 見たことのない菓子の数々を、クラウは好奇心の籠った目で見つめる。
(「クラウも、知らないもの、いっぱい。ここのお菓子だけでも、いっぱい」)
 クラウは今月で16歳。それは本来なら迎えることさえ許されない筈の時間だった。
 しかし、それでも彼女は思う。いまだ自分が見たことのない世界、そのすべてを見て、触れて、知っていきたいと。
(「せっかく――まだ、生きてるんだから、ね」)
「よし、食おうぜ!」
「わーい! みんなで一緒に食べようっ!」
 クラウ・ディークラウ、ディアボロスとして過ごす最初の秋。
 この日、少女の想い出に新たな一ページが綴られた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

 フォーアライターはかつてないほど混乱していた。
 無理もない。今まで見たことのない幾つものスイーツを、彼は見てしまったのだから。
『トプフェントルテ……カイザーシュマーレン……オプストトルテ……』
 彼にとってアルメ・リッターは唯一無二のものであり、最後の食事に選ぶほどの料理であった。
 腹いっぱい食べられたら死んでもいい、迷いなくそう言えるスイーツであった。
 だというのに、何故だろう? いったい何故――。
『何故俺は……おかわりを躊躇しているんだ……?』
 まさか自分が、欲しているというのか? あの見たことも聞いたこともないスイーツを?
 いや違う。気の迷いに違いない。
 邪念を払うように、フォーアライターはジャムを塗したアルメ・リッターに齧りつくのだった。
篝・ニイナ
【白花】

そんなに甘いもんが好きなのか?
何にせよ、心残り作ってやりゃいいんだよな
量はラルムクンに任せたわ
って言わずともおめめキラキラさせちゃってさ
食べる気満々で頼もしいよ

俺は洋酒の匂いがする、チョコと桜桃のなんとかトルテってやつと珈琲を
こんくらいで酔わねーよ
と言いつつも食べ進める事に陽気な気分になる
いやあ、美味いなあ
美味いもんがこの店だけでもこんなにあるんだから
世界にはもっと沢山あるよなあ
とは、大きめな声で

目前の青年はそれはもう夢中といった感じで
見ているだけでお腹いっぱいになってくるが
どうやら幸せも撒き散らしているらしい

まあ確かにこんなに満たされるのなら
また食べに来てやってもいいな、ラルムクンと


ラルム・グリシーヌ
【白花】

甘やかに心解すスイーツを知る程
望みの色は輝きを増すのに
この一時だけで心残りは拭えないよね

多彩な魅力溢れるスイーツは沢山ある事
ゾルダートに気付いて貰う為
先ずはカイザーシュマーレンに
艶やかな林檎ジャムを纏わせ一口

サクふわな触感と蕩ける甘さが美味しい…!
幸せ過ぎて頬も緩んじゃうね

ニイナは洋酒が深く染み込んだトルテにしたんだね
…大丈夫?酔わない?
と声零しつつ綺麗に完食すれば続いて
シナモン鏤めたシュネーバル
紅の彩咲かせたトプフェントルテ
瞳輝かせて次々と頬張る

美味しくて煌びやかなスイーツ達と
出会えるなんて凄く幸せだね
でも一日じゃとても足りない!
明日も次の日も、ずっと
ニイナと一緒に楽しめたら嬉しいな


「わあ……これは美味しそうだ!」
 甘く温かい香りが、ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)のテーブルを満たす。
 艶やかな林檎ジャムをたっぷり添えた、熱々のカイザーシュマーレンである。
「いただこう、ニイナ。冷めてしまっては勿体ないよ!」
 ラルムは子供のように目をキラキラと輝かせながら、銀色のフォークを手に取った。
 年齢17歳、育ち盛りの少年。そんな彼にとって美味しい食事は心が躍るイベントだ。ましてそれが、篝・ニイナ(篝火・g01085)と一緒とあっては猶更である。
「食べる気満々で頼もしいな、ラルムクン」
「ふふっ、ありがとう。ニイナはチョコと桜桃のトルテにしたんだね」
「おう、シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテだ。見た目も洋酒の香りも両方気に入ってな」
 そう言ってニイナもまた、銀色のフォークを取った。
 ビードロ玉のような桜桃を満遍なく散りばめたチョコケーキから漂うのは、妖艶な洋酒の香り。
 キルシュトルテに、カイザーシュマーレン。それは、これから始まる素敵な時間を予感させるものだった。 それを示すように、離れた席のフォーアライターも二人のスイーツにちらちら視線を送っている。気になるのだろう。
「んじゃ、食うとしようぜ」
「そうだね。いただきます」
 仲の良い兄弟のように目配せを交わし、二人の宴が始まった。

 カイザーシュマーレンは感動的な美味しさだった。
 火傷しないよう息を吹きかけ、まずは一切れ。その味わいにラルムの頬がとろりと緩む。
「んんん……! サクふわな触感と蕩ける甘さが最高……!」
 林檎ジャムの甘さと、蕩けたバターの混ざりあう香り。生地を噛み締めるたびに鼻腔を抜けていくその芳香は、ふわりとした熱々を頬張ることの幸せを何倍にも高めてくれる。パンケーキの山はいまだ皿の底を見せず、否が応でも期待が高まった。こうしたスイーツは、量も美味しさのうちなのだ。
「どうしよう。食べれば食べるほど、もっと食べたくなる……!」
「いい食いっぷりだなあラルムクン。見てるこっちも幸せになるよ」
「良かった。ニイナが食べてるトルテも美味しそうだよね」
 そう言ってラルムは、シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテに視線を向けた。
 落葉に見立てたコポーの間から除く桜桃は艶やかで、ルージュのような輝きがある。酸いも甘いも嚙み分けるようになった大人が、特別なひと時を楽しむイメージがありありと思い浮かんだ。それを一口一口、ゆっくりと愛でるように味わうニイナの姿に、ラルムは心配そうな顔で尋ねた。
「……大丈夫? 酔わない?」
「平気さ、こんくらいで酔わねーよ。にしても甘露甘露。きっとこの店だけでも美味いもんが沢山あるんだろうなー」
 そんなニイナの言葉に、ぐふっという呻きが遠くから聞こえた。フォーアライターの声だった。
 どうやら、かなり効いているようだ――確かな手ごたえを感じつつニイナは思う。
(「確かにアルメ・リッターも美味いだろうさ。だが、スイーツってのはそれだけじゃないぜ」)
 そうこうするうち、トプフェントルテを頬張るラルムのテーブルへ新たな品が運ばれて来た。
 細長い小麦の生地をボール状にして、油で揚げたものである。
「ラルムクン、それは何だ?」
「これはシュネーバル、雪玉っていう意味のお菓子なんだ。ほら、塗した粉砂糖が雪に見えない?」
「ああ、確かに。まん丸い鳥の巣にも見えるなあ」
「当たり。シュネーバルは『コウノトリの巣』とも言ってね、砂糖以外にも種類があるんだ。例えば……」
 そう言ってラルムは、さらに運ばれて来たシュネーバルを、フォーアライターにも見えるようにかざしてみせる。
「これ。チョコのコーティングにクラッシュナッツを塗したやつとか」
『なっ』
「こっちはアイシング。こっちはクリームを中に詰め込んだやつだね」
『なななっ』
「ほおお、どれも美味そうだなあ!」
「そう言うと思ってね。良かったら何個かどう?」
「いいのか? サンキュー、ラルムクン!」
 二人で食べるシュネーバルは、どれも最高の味だった。
 熱さと甘さと、油。そこにたっぷりのシナモンを効かせた美味を存分に堪能し、皿はあっという間に空となる。
「ご馳走様。……幸せだね」
 温かい紅茶の香りを楽しみながら、ラルムは言った。
 スイーツが美味いことも無論ある。だがそれ以上に、ニイナとこうして一緒の時間を楽しめることが幸せだ。
「明日も次の日も、ずっとニイナと一緒に楽しめたら嬉しいな」
「確かにこんなに満たされるのなら、また食べに来てやってもいいな、ラルムクンと」
 ニイナはシュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテを食べ終えて、ぽつりと呟く。
「そういや、もうすぐ誕生日か。二十歳まで、あと少しだなあ」
「うん。その時は、素敵なお祝いをしようね」
「おうよ。今から楽しみだぜ、ラルムクン」
 こうして、二人の時間はゆるゆると過ぎていく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

響風・涼花
※アドリブ・絡み歓迎

スイーツか……私も好きだったよ。
じゃあ、一緒に食べない?アルメ・リッターを食べるのも良いけど、私達なら他の美味しいスイーツも教えられるわ。
アルメ・リッターになら、紅茶も合うだろうしそれに添えて食べられる物を食べましょう。

私は紅茶に合う物を。シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテなんて上品で良さそう。
食べれば食べるほど、チョコの風味とサクランボの甘酸っぱさが広がっていく……洋酒の香りも、アクセントとしてばっちりね。
私もそのアルメ・リッターを食べても?代わりにキルシュトルテをあげましょう。シェアっていうのよ。都会の流行りで、分け合う美味しさ。これで、他の物を味わってくれれば。


「こんにちは。美味しそうなスイーツね、それ」
『……?』
 自分のテーブルへ歩いてきた者の気配に、フォーアライターは首を傾げた。
 見たところ店の人間ではなさそうだ。一体何の用だろうと訝しむフォーアライターに、少女――響風・涼花(世界に拳を叩きつけろ・g05301)は言った。
「良かったら、これもどう?」
 皿に載せたケーキを見せながら、涼花は続ける。
 彼女のスイーツとアルメ・リッターを少し交換してみないか――いわゆる、シェアの申し出だ。
 どんな菓子かと見てみれば、生地にチョコレートをふんだんに使い、天辺をサクランボで飾り付けた一品である。
『シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテか。……洋酒を使ったケーキだな、確か』
 他所のテーブルで仕入れた知識を辿りつつ、フォーアライターは言った。
『すまんが他所を当たってくれ、酒は一滴も摂りたくない。このあと大事な用があるんだ』
「あら、違うわ。これはショコクランツって言うケーキよ」
 冠を模したリング状の生地、トップを飾るのは宝石を模した赤いチェリー。生地にぎっしり詰め込んだバタークリームは、バニラプディングとバターを混ぜ合せたもので、食べる者に至福のひと時を約束する。特に紅茶との相性は抜群だ――そう、涼花は付け加える。
「アルコールは入ってないから、お酒が駄目でも安心よ。どう?」
 フォーアライターはフォークを手にしたまま数秒ほど沈黙して、
『……いや、やはり結構だ』
「あら残念。気が変わったら言ってね」
 そうして涼花は自分のテーブルへ戻ると、気持ちを切り替えてショコクランツを食べることにした。
 紅茶で体を温めて、まずは王冠部分をぱくりと一口。チョコのほろ苦い甘さとチェリーの酸味が広がり、バタークリームの濃厚な風味がそっと追いかけて来る。その素敵な味わいに、涼花の目尻も思わず下がった。
「やっぱり紅茶とバターは鉄板の美味しさね。んー、最高だわ……」
 温かい吐息をほうと漏らし、涼花はふとフォーアライターが放った一言を考える。
(「大事な用がある、か……」)
 温かい紅茶でクリームの残り香を洗い流すと、涼花はぐっと拳を握った。
 互いに譲れぬものがある以上、戦いは避けられない。涼花にも仲間達にも、退く理由はない。
 ――アンタの意志は分かったわ、フォーアライター。
 ――あくまで街を破壊する気なら、私達も全力で撃破するまでよ。
 戦いの刻は、着々と迫りつつあった。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【強運の加護】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】がLV3になった!

『さて、食事も済んだ。……いい味だったな』
 満足して店を出たフォーアライターは、しみじみとした声で呟いた。
 アルメ・リッターは頬が落ちるほど美味かった。夢にまで見たスイーツを腹いっぱい食べた今、もう未練はない――。
『そう、未練などない……ないんだ……』
 雑踏を避けて歩くうち、気づけば彼は街の広場へと辿り着いていた。
 ここで暴れれば、確実に目的を達成できる。あとは決断するだけだった。
『……始めるか』
 ほんの数秒ほど間を置いたのち、フォーアライターは体内に仕掛けられた装置を一思いに起動する。
 その途端、彼の体はぐんぐんと巨大化を始め、20mもの高さへと到達する。
『はーっはっはっは! 我らが組織に逆らう者共、地獄に落ちるがいい!』
「う、うわああああ!」「た、助けてくれ! 化け物だ!!」
 広場の市民達が悲鳴を上げて、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
 このままフォーアライターが暴れれば、街は程なくして焦土と化すだろう。
 だが、彼は知らなかった。ゾルダートの凶行を阻止すべく、足取りを追っていたディアボロス達の存在を。
 逃げ惑う人々をかけわけて復讐者が広場へ辿り着く。ゾルダートの巨大化を解除し、街の人々を守る為に。

 勝つのは果たして、ディアボロスかフォーアライターか。
 残り時間はあと10分――破滅へのカウントダウンが、いま始まる。
秋津島・光希
※連携、アドリブOK

被害を抑えることを考えても
真っ向勝負は得策じゃねえな
…心残り、自覚してもらうか

【飛翔】の最高速度で
一早く敵の目線の位置へ
注意を引き、街や住民から気を逸らすことと
声を届きやすくする意図だ

「テメェ、カフェにいた奴だな!」

敵の目の前で、自分の口元に付いた林檎のソースを拭う
…ついさっきまでの幸せな時間を想起させる為に付けてたんだ
気付いてなかったわけじゃねえ

「テメェが暴れたら、あのカフェもなくなっちまうだろうが!
どのスイーツもめっちゃ美味かったんだぞ!」

食った感想も交え一品一品、名前を挙げる
本来なら奴が知らずに済んだはずの名前を、な

なあ、食わずに死ねるのか?
あの絶品スイーツの数々を!


響風・涼花
アドリブ・絡み歓迎

どうやらまだ心にはまだ少し、付け入る隙はある。
あの巨大さと真っ向勝負するよりは……こっちの方がまだ勝機があるわね。
これである程度、時間を稼げるといいのだけれど。

飛翔で飛びつつ、彼の目の前に。
引き付けて声を届けやすくする。

ねえ。アルメ・リッターは美味しかった?
そうでしょうね。こうして大事な用の前に食べるケーキなんて美味しいに決まってるもの。
でも、貴方の心はまだ満足なんてしていない。
トプフェントルテ、カイザーシュマーレン、オプストトルテ。
どうか食べてみて。貴方が知らない未知の味を。
貴方の心はまだ冒険を諦めていないのよ。
未知の美味しさを求めるっていう心をね。


クラウ・ディークラウ
クラウの声、聞こえる?
遠い……?
(必要なら【浮遊】を使って、ふわふわと目の前まで移動)

暴れるのは、良くない、けど
あなたは――偉い、よ
本当の、命懸け……簡単には、できない
それだけ、大事にできるものが、あるのは
すごいと、思う

……でも
もう少しくらい、わがままになって良いとも、思う
さっきのお菓子、どれも美味しいし、美味しそうだった
もっともっと、食べても、良かった
良かった、のに――

……リーム、お願い
(【通信障害】の発生を頼んで)
これで、何かあっても
あなたの言葉、記録に残ったりは、しないから
私たちの心にだけ、残すから
今の、気持ち……やりたいこと、やりたかったこと
教えて、ほしい


ラルム・グリシーヌ
心残りをなくさせて自爆とは穏やかじゃないね
こんな事を強いる組織に強い憤りを感じるけど
今は、ただ為すべき事を

彼と目線が合う高さまで飛翔し
意識を此方に惹き付ける様に語り掛ける

こんにちはお兄さん
先刻、アルメ・リッターを
とても大事そうに食べてたよね
味、香り、色
その時の幸せを思い出せる程に

俺が頼んだシュネーバルも興味深々に見てたよね?
チョコやアイシングでおめかしして
見た目も味も最高だったよ
言葉にできない夢のような甘さ…
君にも味わって欲しいな

ねえ…本当に何も心残りはないの?
スイーツはひとつだけじゃないよ
移ろう季節と共に生まれる甘い幸せを
思う存分頬張ってみたくはない?
それを楽しまずに命を終わらせてもいいの?


『もう俺に心残りなど無い! 死ぬまで暴れ続けてやるぞ、はーっはっはっは!』
 街中に、フォーアライターの哄笑が木霊した。
 火炎放射器の炎が大空を焦がす。これからお前達は死ぬのだと、逃げ惑う市民達へ告げるように。
 しかし今、その暴虐を阻止せんと動く者がいる。秋津島・光希(Dragonfly・g01409)である。
「あの野郎、あくまで街を破壊する気か。させねぇぞ、絶対止めてやる!」
 光希はカフェを飛び出し、すぐさま空へと飛び立った。
 見澄ました先の中央広場、そこには巨大化装置を起動したフォーアライターの姿がある。
 破城槌に手榴弾に火炎放射器で武装する、全長二十メートルに及ぶ巨人。その出で立ちはまさに怪物そのものだ。
「ヤツの注意をこっちに引きつけねぇとな。広場の避難も、まだ完了してねぇ」
「そうだね。残る仲間もすぐに来る、急ごう」
 ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)は光希に追いつくと、戦場となる広場を上空から見下ろした。
 円形の広場には五、六人の市民が見える。死傷者はいない。一分もあれば逃げる時間を稼げるだろう。
「俺は市民の避難を助けるよ。すぐ合流するから、光希は先にフォーアライターを!」
「おうよ、任せな!」
 光希は速度を上げると、あっという間にフォーアライターの間合いに潜り込んだ。
 身長の倍はあろうかという鉄仮面、そこから覗く眼光が光希を捉える。
 空気を震わすプレッシャーを退け、更に加速。頭部の周囲を挑発するように飛びながら、吼えた。
「おいテメェ、カフェにいた奴だな!」
『貴様は……カイザーシュマーレンの少年か』
 フォーアライターは、光希をすぐに思い出したらしい。
 光希は不敵な笑みで応じると、口元に付いたソースを目の前で拭ってみせる。
「よく覚えてるじゃねぇか。あのパンケーキは最高だったぜ、特に林檎ソースの奴とかな!」
『う……それがどうした!』
 甘い林檎の香りに反応したのか、対面のフォーアライターは動きを止めた。
 時間にして一秒を数えるか否かという短い時間。その一瞬で光希はふたつのことを確信する。
 ひとつは、フォーアライターが葛藤の狭間にあること。もうひとつは、彼がその葛藤を自覚していないことだ。
「つまり、もう一押しが必要ってことか……ラルム、市民の避難は!?」
「完了した。仲間達も着いたみたいだ」
 そして、広場から市民が避難を終えたその時――新たなディアボロスが二人、戦場へと到着する。
 響風・涼花(世界に拳を叩きつけろ・g05301)と、クラウ・ディークラウ(遮る灰色・g01961)が。
「お待たせ。どうやら、まだ少しは付け入る隙がありそうね」
「……ん。絶対、止める」
『無駄なことを!』
 ふたたび暴れ始めた巨大ゾルダートの暴威は、圧倒的の一言につきた。
 破城槌を振るえば建物は砂糖菓子のように脆く砕けた。火炎放射器を放てば鉄の自動車は飴細工のように溶けた。
 ひとたび広場の外へと逃れれば、確実に死者が出る――そんな相手を、四人は空中から包囲していく。

 光希に続き、口を開いたのは涼花だった。
「ねえ。アルメ・リッターは美味しかった?」
『お前は、カフェで俺に話しかけた……』
「そ。……美味しかったんでしょ? 大事な用の前に、あんなにおかわりして、不味い訳ないわよね」
 簡単に否定できる筈の問いへ、フォーアライターは即座には答えなかった。 
 ほんの暫しの沈黙の後、彼が寄越したのは返答ではなく問いかけだ。
『……何が言いたい?』
「簡単よ。アンタはまだ、満足してないってこと」
 鉄仮面の奥から向けられる眼光に怯むことなく、涼花は肩を竦めてみせる。
「勿体ないと思わないの? ショコクランツ、凄く美味しかったのに。他のお菓子だってそうよね、皆?」
 頷きを返す三人に、涼花はどうだと胸を張ってみせた。
「ほらね、アルメ・リッターだけなんて勿体ないわ。もっと正直になればいいのに!」
 飄々とした口調で笑う涼花の声には、ほんの少し、悲しい決意が混じっていた。
 一度ゾルダートになった者は人間に戻れない。自爆すれば、街の人々を虐殺した本物の怪物として死ぬことになる。
 そんな結末だけは防ぎたかった。だから巨大化を解いて終わらせる。これ以上、彼が誰も殺すことのないうちに。
「私の仲間が食べたスイーツだって、アンタは覚えてたわ。興味があったからじゃないの?」
『ぐ、そ、それは……』
 言葉に詰まるフォーアライターの姿は、涼花の言葉が図星であることを示している。
 そこへ言い返す間を与えぬよう、さらに説得へ加わる者がいた。ラルムである。
「やあ、こんにちは。先刻、アルメ・リッターをとても大事そうに食べてたよね」
『……シュネーバルを食べていた少年か』
「その通り、覚えててくれて嬉しいよ」
 フォーアライターに微笑みを向け、ラルムは穏やかに語り掛けた。
 いま行うべきは説得だ。末端兵士に死を強いる組織への憤りは、そっと胸の奥へとしまい込む。
「折角だ。シュネーバルの素晴らしさを、少し聞いて貰おうかな」
 三度目の説得にあたり、ラルムは趣向を変えることにした。
 涼花は図星をつくことで未練に訴えた。光希が訴えたのは視覚と嗅覚だ。
 では、ラルムが訴えたものとは何か。それは、想像力であった。
「今日みたいな肌寒い日は、揚げたてが特に美味しいんだ。粉砂糖、それにチョコやアイシングでおめかししたもの。それを最初に目でじっくりと愛でながら、どれにしようか悩んでね。お店から湯気が漂ってたら、それはタダだから存分に楽しむ。おっと、温かい紅茶も忘れたらいけない」
『ぐ、ぐぬぬ』
 ラルムの言葉に、ゾルダートは言葉を挟めない。
 そこに確かな手応えを感じ取り、ラルムの言葉は少しずつ熱を帯びていく。
「懐に入れれば、まだぽかぽかと暖かい。それを冷める前に頬張るんだ。外はカリッと硬くて、中はもっちり柔らかくてね。コーティングの甘味と温かい生地、それからお供の飲物。この組み合わせで、どんな味だって楽しめる。いざ頬張った時の、夢のような甘さ……君にも味わって欲しいんだけどな」
『ぐぬぬぬっ……!』
 ラルムの言葉は、フォーアライターの想像力をこれ以上なく刺激したようだ。
 恐らく彼の脳裏では、カフェで出て来たシュネーバルが最高に美味そうな光景で再現されているのだろう。
 そうして、締めの一言をラルムは言う。
「そんなシュネーバルでさえ、数あるスイーツのほんの一つに過ぎない。それくらい、素敵なスイーツは多い。春夏秋冬、夜空の星が数え切れないようにね。君が知ってるアルメ・リッターだって、そのたった一つなんだ。なのに君は、まだ知らない甘味を頬張ってみたくないの? それを楽しまずに命を終わらせて、本当に満足なの?」
『黙れ黙れ黙れええええ!!』
 フォーアライターの咆哮は、もはや悲鳴に近かった。
 説得の効果は明らかだ。四人が最後の一押しを加えようとする中、クラウはそっと耳打ちするようにフォーアライターへ告げる。今も巨体の奥で鼓動を続ける、その『心』に訴えるように。
「もう少しくらい、わがままになって良いとも、思う」
『……我儘に、だと……?』
「ん。さっきのお菓子、どれも美味しいし、美味しそうだった。もっともっと、食べても、良かった」
 クラウの脳裏に、カフェでのひと時が甦る。
 見たことのないスイーツの数々。食べたこともなかった味。
 そして、それらを仲間と共に食べて過ごした、あのかけがえのない時間が。
「良かった、のに――」
 俯くクラウの背後で、リームが電磁槍を高々と掲げる。
 通信障害の発動を合図に、ラルムが、涼花が、クラウとともにフォーアライターの周りを囲む。
 正面を塞ぐのは、光希だ。
「思い出してもらうぜ、スイーツの未練を」
 あらん限りの空気を肺へと送り込み、光希は吼える。
「テメェが暴れたら、あのカフェもなくなっちまうだろうが! どのスイーツもめっちゃ美味かったんだぞ!」
 ジャムにアイスにコンポート、一口食べれば身も心も温かくなるカイザーシュマーレンを。
 皆で分け合って食べた、二種のアプフェルクーヘンと、丸ごと林檎のシュラーフロックを。
 そして、トプフェントルテを、ショコクランツを、シュネーバルを。
「食わずに死ねるのか? あの絶品スイーツの数々を!」
『……俺は……』
 巨人の腕が力を失い、破城槌が地面に下ろされた。
 しばしの沈黙が流れた後、クラウはふわふわとフォーアライターに近づいて、告げた。
 今の気持ちを、偽りない想いを知りたいと。
「やりたいこと、やりたかったこと。あなたの言葉、教えて、ほしい」
 フォーアライターは無言である。
 クラウはなおも続ける。
「私達の心にだけ、残すから。だから――」
『……いいや、断る』
 それは、明白な拒否を示す返答だった。
「どうし、て……」
『それを口にすれば、俺は任務を果たせなくなる。だから断る。……そう言いたかったが……』
 フォーアライターの全身から、白色の煙が溢れ始めた。
 自爆装置の起動か? いや違う。その証拠に彼の巨体は、いま少しずつ縮小を始めていた。
『どうやら……ここまで、だな……』
「ああ……あ……」
『なあ小娘。俺はお前達なんか大嫌いだよ』
 空に留まるクラウを仰ぎながら、フォーアライターは確かに笑った。
 四人のディアボロスから、その視線を片時も逸らさずに。
『食料と言えば毎日パン屑と臭いミルク。せめて最後にと望んだ食事で……よりにもよって……』
 煙が広場に充満する。白色の海へフォーアライターが沈んでいく。
 その光景を、クラウ達は瞬きも忘れて見つめていた。
『まだ生きたい……同じ笑顔で、同じスイーツを……食べたかったと……思ってしまうとは……』
 そして吹きすさぶ風が、煙を吹き消した時――。
 広場の中に残されたのは、巨大化能力を喪失して立ち尽くすフォーアライターの姿だった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【落下耐性】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV2になった!

 たっぷり三十秒ほどの沈黙を経た後。
 フォーアライターは、ゆっくりと火炎放射器のノズルを向けて、言った。
『……まだ、終わってはいない。来るがいい』
 自暴自棄ではない。組織への狂信でもない。そして恐らくは内蔵する装置の命令によるものでもなかった。
 何者に強いられたものでもない、ゾルダートたる己の意思をもって、彼はディアボロスへ語り掛ける。
『俺は焦土特化型ゾルダート、フォーアライターだ。そして――』
 お前達は敵だと。この死闘は、どちらかの死をもってのみ決着するのだと。
『武器を取れ。この街を、あのカフェを……スイーツを……焦土に消したくなければ』
 破城槌を、火焔放射器を、手榴弾。
 持てるすべての武器の矛先を向けて、フォーアライターは告げる。
『この俺と――最後の勝負だ、ディアボロス!』
秋津島・光希
※連携、アドリブOK

同じ笑顔で、同じスイーツを――まったく、俺も同じ想いだよ
お前の覚悟も意思も受け取った
…フォーアライター、勝負だ!

常に【飛翔】状態
速度上昇効果を攻守に生かす

敵は近接、遠隔ともに対応可能な装備をしてやがるからな
まずは奴の戦い方を『観察』だ
間合いを急に詰めたり、離れたり
翻弄するように飛びながら
隙になり得る動きを『看破』する

狙うは火炎放射器が火を吹く、その一瞬
放たれた炎の揺らぎに紛れるように
敵の死角に回り込み、パラドクスで強襲
『一撃離脱』戦術だ
俺の得意なやり方に持ち込むぞ

一切の手加減はしねえ、できねえ
街を守るって目的は勿論だけどな
フォーアライターの覚悟に、全力で応えてやりてえから


ラルム・グリシーヌ
心残りを抱かせて、生きたいと…
甘い幸せに心を満たされたいと願う相手を
斃さないといけないんだね

戦う道しかないのなら
互いに悔いが残らない様に全力でお相手させて貰うよ
君が決めた覚悟の果てに応える為にも

竪琴を爪弾き白葩を詠う
旋律も聲も朗々と響き渡らせ
爆ぜる焔をも凍てつかせる冱花を
戦場に鮮やかに咲かせよう

連携重視
敵の攻撃は飛翔で回避に努めつつ
周囲に被害が及ばぬよう留意
手榴弾は氷塊で閉じ込め風で更に上空に舞い上げ吹き飛ばす
仲間を狙うなら眩い光矢を次々と生み出し牽制

クロノヴェーダは許せないけど
君のことは嫌いにはなれない…

巡る命の先で、君が甘い幸せに包まれることを祈ってるよ
その時は俺もご一緒させてもらえるかな


イツカ・ユメ
……そっか。それが、あなたの選んだ道なんだね。
なら、これ以上、かける言葉はわたしには見つけられない。
心残りがあっても、自分の役目を果たそうとするあなたは、立派な騎士だと思うから。
わたしも、わたしの役目を果たす為に剣を執るよ。

なるべく周囲に被害が出ないように、
周りの人達と連携して【臨機応変】に立ち回り。
皆の想いを、あなたの想いを、繋ぎ紡いで歌にするよ。
あなたが幸せだと感じた、甘いものを楽しむ一幕を再現して歌い上げて。
最後に送る一撃は、お菓子のように甘くはないけれども……おやすみなさい。


終わったらさっきのお店で、アルメ・リッターをもう一度。
またいつか、笑顔で。
一緒に食べられるといいな。


響風・涼花
アドリブ・絡み歓迎

あんたが選んだ道だ。どうもこうも言うつもりはないよ。
でも、その道選んだなら……私はあんたを倒す。
最後の勝負だフォーアライター。

広範囲で焼き尽くす攻撃に対して、飛翔と強運の加護で炎が届かないところまで移動。
投げナイフを投擲して誘導弾性質を持って牽制しつつ、時間稼ぎ。
炎が少しでも弱まった所を見て、ヴァルハラバーサークルで突撃。
地形の利用をしつつ、加速して捨て身の一撃で貫通撃を叩き込む。
ある程度ならダメージを覚悟して突っ込む。

クロノヴェーダを許せない私の怒りの炎は、あんたの出す炎よりも熱い。
刻め、これが覚悟の果ての怒りだ。


クラウ・ディークラウ
……分かった、最後の勝負

クラウはあなたの敵、だから
あなたを、倒して――その思い、勝手に抱きしめていく
(もやもやな魔晶剣を手に)

焼き尽くす、炎……うん、クラウにそれは、とても効果的
体が慣れても、心は慣れない
でも
(避けない、退かない
自己犠牲ではなく、そうしたいと感じたから、まっすぐに
薙ぎ払いに対し一点突破を仕掛ける意味でも)

(鋭さとは逆の、ふんわり包むような一撃なれど、【スコルピオンスティング】
動きを鈍らせる毒で、味方への支援にも、続けて畳み掛けるにも)
……毒
きっと、クラウ達の言葉も……あなたの心への、毒だった
効いてくれて――聞いてくれて、ありがとう
クラウは、あなたのこと、嫌いじゃなかった、よ


 ディアボロスが戦う理由。それはクロノヴェーダを討ち、世界を奪還することだ。
 クロノヴェーダが戦う理由。それは改竄した歴史を統一し、世界の覇者となることだ。
 復讐か、簒奪か。
 両者が目指す先はけして交わらず、そこに和解は存在しない。
 故にスイーツを巡るこの戦いも、両者の帰結はただひとつ。即ち、戦いによる決着を置いて他にはなかった。

「……そっか。それが、あなたの選んだ道なんだね」
 イツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)は青色の瞳でフォーアライターを見つめ、そう呟いた。
「だったら、わたしは勝負を受けるよ。あなたは、立派な騎士だと思うから」
 イツカは深呼吸をひとつ、改造スマートフォン『happy heart』を手に、精神を研ぎ澄ましていく。
 あのゾルダートは選んだのだ。心残りがあっても尚、自身の任務に殉じることを。
 ならば自分もまた、己が役割を果たす為に剣を取ろう――それがイツカの示す答えだった。
「ん……分かった、最後の勝負」
 小さな首肯を返し、クラウ・ディークラウ(遮る灰色・g01961)もフォーアライターに向き直る。
 己の決意を示すように掲げるのは、魔晶剣『輝かずの刃』。定型を持たぬ刀身を靄のように揺らめかせながら、クラウは眼前の相手に向かって告げる。
「クラウはあなたの敵、だから。あなたを、倒して――その思い、勝手に抱きしめていく」
『やってみるがいい。出来るものならな』
 火炎放射器を構え、フォーアライターは言った。
 顔を覆う鉄仮面の下、彼の浮かべる表情は伺い知れない。
 だが、それはきっと憎悪や嫌悪ではない筈だ。一時とはいえ心を通わせた相手を葬ることへの決意と、そして哀しみに違いなかった。今の自分のように――ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)はそう考える。
(「心残りを抱かせて、生きたいと……満たされたいと願う相手を、斃さないといけないのか」)
 飛翔の力で上空に留まりながら、ラルムはそっと目を伏せた。
 フォーアライターに譲れぬ想いがあるように、自分達にも譲れぬ想いがある。
 互いに言葉を尽くし、なお戦いが避けられないなら躊躇は出来ない。竪琴を手に、彼もまた覚悟を決める。
「全力でお相手させて貰うよ。君の覚悟に応える為にも」
「その通りさ。あんたが選んだ道だ、どうもこうも言うつもりはないよ」
 ラルムの言葉に首肯し、響風・涼花(世界に拳を叩きつけろ・g05301)は『敵』をまっすぐに見つめる。
 戦う未来は避けたかった。それは彼女だけではない、ここに集う多くの仲間達の意思だったに違いなかった。
 だが、それはもはや過去のことに過ぎない。ひとたび戦うことを選んだのなら、涼花が出来ることは一つだけだ。
「私はあんたを倒す。覚悟はいいね、フォーアライター」
 闘気を解放し、上空へと飛翔する涼花。
 同時に秋津島・光希(Dragonfly・g01409)もまた上空を舞いながら、爆撃槌を構える。
 手加減も容赦もする気はない。全力で戦い、勝つのみ。
 胸の奥、クロノヴェーダへの渦巻く怒りと共に、戦士としての敬意を込めて光希は言った。
「同じ笑顔で、同じスイーツを――まったく、俺も同じ想いだよ」
 そして告げる。
 お前の覚悟も意志も受け取ったと。持てる全てをもって相手をすると。
「行くぜ。フォーアライター、勝負だ!」
『来い。勝つのは俺だ!』
 そして――戦いが始まった。

 巨大化能力を喪失したことで、フォーアライターの大きさは通常のゾルダートと同程度にまで戻っていた。
 そこへ切り込むように光希は上空を降下、急速度で敵へ接近する。
「航空突撃兵の機動力、甘く見るなよ!」
 大空を戦場とする光希にとって、死をも恐れぬ航空突撃は最も得意とするひとつだ。
 速度を乗せ、更に加速。対するフォーアライターは、火炎放射器を向けて撃墜する構えである。
『叩き落としてやる!』
「――そうは、いかないよ」
 ラルムは竪琴を爪弾き、光の矢を生成すると、一斉にフォーアライターめがけ放つ。
 狙いを逸らす牽制の射撃だ。目を眩ませる矢の閃光を、しかしフォーアライターは物ともしない。
 そして火炎放射器のトリガをプッシュ。大空めがけ紅蓮の炎を投射した。
「おっと!?」
 身を翻して緊急回避。1秒前までいた空間が炎に呑み込まれる。
 あれが直撃すればただでは済むまい――肌を焼く熱波のダメージに舌を巻きながら、光希は再び上空へと上昇する。
(「だが今の攻撃で、動作の癖はおおよそ把握した。ここからは一気に攻める!」)
 狙うはフォーアライターの胴体。全神経を研ぎ澄まし、爆撃槌を振り被る。
 この一撃に全てを込める、そう覚悟を決めて。
(「一切の手加減はしねえ、できねえ」)
 光希には戦う理由があった。
 敵がクロノヴェーダだから。街の人々を守りたいから。そうした理由も無論ある。だが何より大きいのは、
 ――アイツの覚悟に、全力で応えてやりてえから。
 それこそが、あのゾルダートに払える最大限の敬意だと思ったから。
「勝負は今だ。食らえ、フォーアライター!」
 全身に力を漲らせ、翔ぶ。ダイブアンドズームによる急降下突撃が、火焔放射器の投射より一瞬早く標的を捉える。
 ブンと振るわれる爆撃槌。ガードを破られたフォーアライターの身体が宙に浮き、吹き飛んだ。
 同時、敵に態勢を立て直す時間を与えぬよう、ディアボロス達は次々に攻撃を続行する。
「逃がさないっ!」
 真っ先に懐へ飛び込み、接近戦を挑んだのはイツカだ。
 一撃、二撃。得物のスマホが振り下ろされる度、鋼のひしゃげる音が響く。
 鈍器の如き威力を誇る改造スマートフォンの威力は、半端な鉄板くらいは容易に屑鉄へ変える硬さを誇るのだ。
「もう一発……っ!」
『いつまでも、自由にさせると思うな!』
 反撃とばかり、フォーアライターの懐からピンの抜けた手榴弾が放り投げられ、立て続けに弾け飛んだ。
 パラドクスの閃光が網膜を焼き、衝撃波が全身を襲う。耳をつんざく轟音が平衡感覚を滅茶苦茶にかき乱す。
 立て続けに響く衝撃。それを遮るように響くのは、ラルムの竪琴が奏でる音色である。
「さあ、奏でよう――終幕を彩る調べを」
 大空を舞台にラルムが奏でる白葩の旋律が、フォーアライターの周囲を絶対零度の空間へと書き換えていく。
 凍てつく空気で包まれた広場は、いかなる脅威も存在を許されない。凍結によって空中で砕け散っていく手榴弾は、まさに純白の花弁そのものだ。
 苦悶の呻きを漏らすフォーアライターを見下ろしながら、ラルムはそっと目を伏せた。その瞳に浮かぶのは、復讐を果たす達成感ではない。無慈悲な力で相手を葬ることへの哀しみであり、悔恨であった。
「クロノヴェーダを許すことは出来ない。けれど、俺は君のことが嫌いではなかった」
『黙れ……! お前達に、俺の何が分かる――』
「そう、分からないかもね。あなたはクロノヴェーダで、わたし達の敵だから」
 フォーアライターの言葉を遮るように、広場を歌声が包み込む。
 声の主はイツカ。歌うのはイツカノウタ<origin>。拙く荒削りな、今を生きる命達の歌だ。
「でも、わたし達は知ってる。あなたはお菓子が大好きで、自分の心にちょっぴり素直になれない、そんなひとだって」
 イツカは歌う。仲間達の幸せと、フォーアライターの想いを繋ぎ、そして紡ぎながら。
 食べたいと願い、ついに食べられなかったスイーツ達。それをフォーアライターがカフェで楽しむ一幕である。
 大きなテーブルの上に並ぶのは、甘いジャムを添えた熱々のカイザーシュマーレン。真っ白な砂糖で化粧した、揚げたてのシュネーバル。口当たりの爽やかな、甘いトプフェントルテ。そうして最後に運ばれてきた林檎尽くしのスイーツの数々を、アルメ・リッターと一緒に楽しんで――。
 それはけして叶うことのない、しかし最後まで捨てきれなかった夢の光景だった。
(「だけど……ごめんね」)
 歌のさなか、スマートフォンを握りしめ、イツカはそっとフォーアライターに詫びた。
 何故ならば――これから送る一撃は、お菓子のように甘くはないから。
「いつか叶う、夢はきっと叶う……そのいつかは、今だよ!」
 渾身の力を込めて振り下ろすスマホの角が、鈍い手応えとともに鋼のヘルメットへ直撃。
 不快な電子音を漏らし、サイボーグ化した全身から火花が散り始める。ダメージレベルが限界を迎えつつあるのだ。
 その間にも上空からは涼花の投げナイフが降り注ぎ、容赦なく体力を削っていく。
 もはや勝敗の行方は明らかだ。しかしフォーアライターはあくまで敗北を拒むように、火炎放射器のノズルを向ける。狙いは二人――涼花とクラウだった。
「焼き尽くす、炎……うん、クラウにそれは、とても効果的」
 迫りくる炎と対峙しながら、クラウは自分が鈍化した灰色の時間の中へ投げ込まれるのを感じた。
 コマ送りのようにゆっくりと、視界いっぱいの炎が迫る。
 その最中、走馬灯のように脳裏をよぎるのは、初めて新宿島へ流れ着いた時のことだ。
(「……炎。焼き尽くす、力。……クラウから、すべてを、奪ったもの」)
 魂に刻まれた恐怖は、否が応でも肉体に現れる。
 全身の毛が逆立ち、血液が逆流する音が聞こえる。
 今ならば回避も間に合うだろう。だが――その道を、彼女は選ばなかった。
「避けない。退かない。そうするって、クラウが決めたから」
 剣を手に、地を蹴る。モノクロームの世界が色を取り戻し、鈍化した時間が再び流れ始める。
 炎が全身を捉えた。たちまち立ち昇る黒煙と、髪が、体が焦げる匂い。かつて人として絶命した瞬間に感じたそれらを全てかき消し、猛毒を宿す魔晶剣の刀身が靄となってフォーアライターを捉える。
「……毒。きっと、クラウ達の言葉も……あなたの心への、毒だった」
 斬撃というには余りにも柔らかな一撃で、致命の毒を流し込みながらクラウは言う。
「効いてくれて――聞いてくれて、ありがとう。クラウは、あなたのこと、嫌いじゃなかった、よ」
『まだだ……まだ……!』
 クラウが囁くのと、フォーアライターがトリガに指をかけたのはほぼ同時。
 この距離ならば外さない。仕損じることは許されない。
 そうして火炎放射器を構えた刹那――クラウの背後を飛翔する影が、ひとつ。涼花であった。
『……!!』
「私達はディアボロス。その怒りは、あまねく世界のクロノヴェーダを許せない」
 赤々とたぎる闘気『怒りの思念』で全身を覆うその姿は、まさに鬼神のごとく。
 拳を握り固め、構えるはヴァルハラバーサークル。あらゆる防御をこじ開け、そして突き破る、必殺の突撃だ。
「そして。私の怒りは、あんたの出す炎よりも熱い」
『くっ……!』
 フォーアライターは、狙いを涼花へ絞ろうとする。
 だが遅い。クラウのスコルピオンスティングが付与した猛毒は彼の全身を蝕み、迎撃さえ許さない。
「刻め。これが、覚悟の果ての怒りだ!」
 死をも恐れぬ拳、そこに涼花が宿したものは――すべて。
 勇気と、知恵と、決意と、意思と、響風・涼花というディアボロスのすべてを注いだ拳は、フォーアライターの心臓に大穴を穿ち、その機能を完全に停止させた。
 そうして爆発で身体が崩壊していくさなか、天を仰いだフォーアライターは最期の息を吐き切るように、
『――お前達の、勝ちだ』
 それが、彼が遺した最後の言葉だった。

 かくして戦いが終わり、後には僅かな部品の残骸のみが残された。
 熱で溶け、原形を失ったそれらをかき集め、光希と涼花は戦士の墓を拵える。
「……終わった、ね」
「ああ。せめて彼が、安らかに眠れることを祈ろう」
 残骸を見下ろすクラウ。その横で、ラルムは愛用のハープを爪弾いた。
 もしも彼が生まれ変わった時は、甘い幸せに包まれた生を送れるように。
 そして叶うならば、その時は自分も一緒に席を囲めるように願いながら。
「おやすみなさい。貧乏騎士のゾルダート」
 ラルムの葬送曲が流れる中、イツカは墓標へ歌を捧げながら思う。
 帰還の前にもう一度、あの店でアルメ・リッターを頼もう。コンポートも添えて、ジャムはたくさん。それが任務に殉じた彼への餞になると信じて。
「またいつか、笑顔で。一緒に食べられるといいな……」
 冬の迫る十一月、機械化ドイツ帝国の街角。
 戦いの終わりを物語る小さな墓標が、青空の下で佇んでいた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV3になった!
【勝利の凱歌】がLV3になった!
【託されし願い】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】がLV4になった!
【ガードアップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2021年11月26日