排斥のオベリスク

【!期限延長により状況が困難になっています!】
 アヴァタールの小神殿では、エンネアド達が神像を利用して一般人の信仰を力に変えていました。
 ディアボロスにより、神像が砕かれエンネアドの撃破にも成功しましたが、獣神王朝エジプトでは、より大規模な神像として『オベリスク』の建立が盛んに行われているようです。

 新たに建立されるオベリスクは『世界の守護』が願われた太陽神アテンのオベリスクです。
 このオベリスクの効果は『獣神王朝エジプトの排斥力』の強化です。
 つまり、このオベリスクの建立を見過ごせば、獣神王朝エジプトのディヴィジョンへの介入が困難になってしまうでしょう。阻止せねばなりません。

死に蕾むブルーロータス(作者 夕狩こあら
7


#獣神王朝エジプト  #排斥のオベリスク 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#獣神王朝エジプト
🔒
#排斥のオベリスク


0




 石切り場より削り出した花崗岩を研磨し、全長20m程度の巨大な方柱を造る。
 先端を四角錐状に、太陽神を象徴するピラミディオンに加工して「オベリスク」とした巨柱は、多くの奴隷達によって小高い砂丘へと運ばれると、目下、丘陵中央部に刳り抜かれた穴に嵌められた。
「よいか。オベリスクに捧げられた汗も涙も、今こそ全て報われる」
 全き人力で切り出し、純然たる力で磨き上げたオベリスク。
 現地への運搬こそ、てこやころ、引き網を使ったものの、この大土木工事をパラドクスの力無しで行った奴隷達は、ロープを強く張りつつ、オベリスクが穴の底にある台座にしっかと埋め込まれるまで、それこそ死に物狂いで頑張った。
 掌には血が滲むが、彼等の視線は雄々しく聳え立つオベリスクに結ばれよう。
「見よ。信仰を捧げつつ、人力のみで建てたオベリスクに今こそ神秘が齎される」
 ヒヒ頭の獣神が手を振り翳した、正にこの瞬間、魔術的な効果が視覚化される。
 太陽を浴びた巨石が、間もなくその表面を削り出して、神聖な言葉を纏い始めたのだ。
「おおっ、オベリスクにヒエログリフが刻まれていく……!」
「我々の信仰が太陽神アテンを描き出していくぞぅ!」
 奇跡を目の前にして、喜びに沸く奴隷達。
 そうしてオベリスク全体にヒエログリフが刻まれれば、運搬から建設までを監視していた鷲姿のマミーが地上に降り立ち、奴隷達に労いの言葉を掛けて回る。
「ご苦労であった。オベリスク建造に関われた名誉に与るがいい」
「喜べ。お前達は、この儀式を盤石にする為の生贄にしてやろう」
 汗と涙を捧げた者よ、今こそ血を捧げよ――!
 鋭い爪をした足に奴隷を捕まえたマミーは、空へと急上昇した後、次々に彼等を地面へ叩き落す。
 太陽を浴びて輝くオベリスクの周辺に、屍鷲のおぞましい鳴き声と、人間の生々しい悲鳴が広がるのだった。


「獣神王朝エジプトでは、己を模った神像を使って、人々の信仰を力に変えるエンネアドがいたが、連中の目論見は、復讐者の奮闘と活躍によって見事に阻止されたのじゃ」
 皆のお陰なのじゃと、人々に代わって礼を言うハネル・メリセシャト(と謎の獅身・g03346)。
 偽神を奉っていた小神殿も機能を失ったと言を足した少女は、然し、エンネアド達の別なる企みが明らかになったと口を開く。
「なんと今度は、自分達に集められる信仰を阻害した復讐者を排斥する為に、巨大建造物『排斥のオベリスク』を建立しようと画策しているのじゃ」
 排斥のオベリスク――。
 其は人間の奴隷達を大量に集め、信仰を捧げながら造らせたオベリスクで、純粋な力のみによって運搬・建立させた後、更に命を捧げさせる事で、排斥力を、つまり復讐者が獣神王朝エジプトに介入しにくくしようとしているのだ。
 無論、これを放置する事は出来ない。
 新たに捕捉した脅威『排斥のオベリスク』の破壊を皆々に願い出たハネルは、次いで、この破壊活動に割ける時間があまり無い事を包み隠さず伝えた。
「実はオベリスクを破壊するチャンスは、オベリスクの建立後、生贄が捧げられるまでの短い時間だけじゃ」
 杏を取り入れる時期より短いと、声色を落とした少女は言を続けて、
「先ず皆には、奴隷達に紛れて建設現場に潜入して欲しい。復讐者がオベリスク建立の儀式に紛れる事で、クロノ・オブジェクトである『排斥のオベリスク』を破壊する弱点を作り出すのじゃ」
 排斥のオベリスクは台座に埋め込まれると、奴隷達の祈りを受け取って四面にヒエログリフを刻む。
 このヒエログリフの文字の中に、復讐者が願った「偽物のヒエログリフ」を刻む事が出来たら、正にそこが「弱点」となるので、復讐者は短時間でも効率的に弱点を探して攻撃し、破壊する事が出来るのだ。
 復讐者が信仰とは関係のない事を祈ったなら、オベリスクに現れる文字は独自のピクトグラムとなって動き、或いはオリジナルの象形文字となって光ったりするので、祈りを捧げた本人なら、より発見しやすくなるだろう。
 勿論、そうでなくとも、オベリスクの建造工事に関わった者が注意深く探せば、どこか違和感のある文字を見つけることが出来るに違いない。

「工事に従事している奴隷達は、各地から急いで集められた人間ばかりにて、紛れ込むのは難しくない筈じゃ」
 大規模な工事で人数が多い上、皆々が顔見知りでは無いので、怪しまれる事は無い。
 ただ、明らかに不審な動きをすれば、工事を監視している『鷲のウカーブ』の注意を引き、正体が露見する懼れはあろう。
 特に、パラドクスの効果などを使用すれば、一気に発見される危険が高まるので、復讐者は「自分の力のみ」で土木作業を行う必要があるとハネルは注意を促す。
 少女は件の土木工事自体が『儀式魔術』を構成しているのだと語気を強めて、
「復讐者が運搬や建造作業に加わる事で、排斥のオベリスクに弱点を造り出すことができるのじゃ」
 と、小さな拳をグッと固めて見せる。
 但し、復讐者がオベリスクを攻撃しようとすれば、周囲で警護や監督にあたっていた『鷲のウカーブ』や、指揮官たる『ヘジュ・ウル』が邪魔しようとしてくるので、その妨害を排除する必要があるとも警告を忘れない。
「ヘジュ・ウルを撃破する前にオベリスクを破壊するのが一番じゃな」
 さすれば目的は果たされる――。
 ハネルの隣で説明を聞いていたスフィンクスが、ここでにゃふんと頷いた。

「――なに、奴隷に紛れると言っても心配無用じゃ。鞭で叩かれたりする訳では無い」
 古代エジプトの一般人の多くは奴隷であるが、彼等は奴隷だからと言って特別に虐げられているという事は無い。
 彼等は古代エジプトの非常に優れた土木技術を体現する大工事の担い手にて、休憩や食事を不足なく与えられており、だからこそ此度のオベリスク建造に信仰を捧げる事が出来ている。
「現場に集められた奴隷達はエンネアドへの信仰を疑っておらず、此度のオベリスクの建立に関われる事を誇りにさえ思っているのじゃ。工事に潜入する場合、彼等と話を合わせておくと良かろう」
 もしか彼等の信仰は、復讐者が果敢に戦う姿や、オベリスクの破壊と共に瓦解するかもしれぬ。
 そう言って交睫をひとつ、凛乎と唇を引き結んだハネルは、眼前の精鋭に深々と頭を下げるのだった。


 オベリスクの建立予定地まで続く工事現場は、かなり雑然としている。
 枕木を運んで敷く者や、ロープを引く者など、主に力仕事を担う奴隷達。
 彼等が息を合わせて引っ張れるよう、オベリスクの上に乗って指揮をとる工事監督は、各地域から集まった者達の掛け声を統一すべく音頭を取っていた。
「全員がタイミングを合わせないとうまくいかないぞ! そーれ、わっしょい! わっしょい!」
「わっしょい! わっしょい!」
 集められたのは若く精強な男達ばかりでは無い。
 進路上にある小石を取り除く老いた者も居れば、工事従事者に水を運ぶ者の中には女性の姿も見られ、かなり多くの奴隷が集められたとは、周囲に朦々と立ち込める砂埃の規模で分かるだろう。
 そして砂埃の更に上、晴朗の空には監視役の『鷲のウカーブ』が帆翔しているのが見える。
 連中が降りて来るのは、奴隷達が祈りを捧げ終わった時――即ち『排斥のオベリスク』に生贄を捧げる時で、人間の願いを利用して作成した巨大建築物を起動させ続けるエネルギー源として命を摘みに来る。
 それまでに復讐者は奴隷の中に紛れ込み、オベリスクを運んで祈りを捧げなくてはならない。
 オベリスクの排斥力を弱め、且つエンネアドに集まる「信仰」に水を差すような、何か別の祈りを――。
 巨石を破壊するに格好の文字を刻み入れるべく、目下、幾人かの復讐者が砂埃の中に影を滑らせた。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【罪縛りの鎖】
2
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【過去視の道案内】
1
移動時、目的地へ向かう影が出現しディアボロスを案内してくれる世界となる。「効果LV×1日以内」に、現在地から目的に移動した人がいなければ影は発生しない。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
2
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【建造物分解】
2
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【使い魔使役】
2
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【操作会得】
2
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
1
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV4 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV7 / 【フィニッシュ】LV2 / 【反撃アップ】LV2 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV2 / 【アヴォイド】LV2 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV3

●マスターより

夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、復讐者の「獣神王朝エジプト」への介入を困難にする『排斥のオベリスク』の建立を阻止するシナリオ(難易度:普通)です。

●現地の情報
 獣神王朝エジプトの砂漠地帯、沢山の奴隷が土木作業に従事する雑然とした工事現場です。
 石切り場より切り出された巨石は既にオベリスクに加工され、復讐者が紛れ込めるのはこのうち「運搬」からで、オベリスクを嵌め込んだ後の祈りを捧げる「儀式」から、生贄が捧げられる(奴隷が殺される)までの間にオベリスクを破壊する必要があります。

●敵の情報
 集団戦『鷲のウカーブ』
 全身が鷲のように変貌したトループス級マミー。
 飛行能力を有し、工事中は奴隷の監視や索敵を、儀式成功後は生贄を捧げる為に奴隷の人間に襲い掛かります。
 飛行能力と策敵能力の代償に思考力は低くなっているようです。

 ボス戦『ヘジュ・ウル』
 ヒヒ頭人身のエンネアド(アヴァタール級)。
 好戦的な知識の神、トト神と習合していたものが分離して再び活動を始めたようです。
 復讐者がオベリスクの破壊を試みようとすると、妨害すべく襲い掛かってきます。

●シナリオ情報
 当シナリオは「工事現場の奴隷に紛れ込む」を皮切りに「排斥のオベリスクを破壊する」「鷲のウカーブ戦」「ヘジュ・ウル戦」と進行する予定ですが、復讐者の選択によって変わる場合があります。

●シナリオ攻略のコツ
 当シナリオでは古代エジプトの大規模土木工事を経験しながら、敵の儀式を破壊します。
 儀式の時に「ビールうまい」と祈ると、ビールの絵文字が刻まれたりするので、ご自身が見つけやすい弱点を考えられると良いでしょう。

 以上が復讐者が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
79

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


新堂・亜唯
俺達の介入を妨害するわ、奴隷の命を捧げさせるわ
マジでロクな物作らねえよなクロノヴェーダ……
で、作業員に紛れ込んで偽ヒエログリフを刻めばいいんだろ? こいつは是非にでもやらなきゃね

こんだけ盛大にやってるなら、俺みたいな子供の奴隷が紛れ込んでも大丈夫そうかな
……不覚にも、お祭りみたいでちょっと楽しそうって思っちゃうけど
とりあえず【友達催眠】使って、作業員の人にお願いしてお手伝いに入れてもらってー

偽のヒエログリフ……どんな祈り込めようかな……。

「綺麗なお姉さんに膝枕してもらいたい」……。

うん、かなり強い祈りが込められる気がするぞ。
これほど純粋な祈りならばそれはもう、神への祈りより眩く反応するはずだ!


フルルズン・イスルーン
ひぃ、ひぃ。
水を運ぶのも楽じゃないんだけど!
バレないようにパラドクスでゴーレムくん出したい……。
でも隙がない……。

日雇い労働なノリで紛れ込んだら、めっちゃくちゃきついんだよ!
そもそも肉体労働向いてないー。ズルしたい(空を見る)できないー。
とりあえず魔術知識と砂使いと氷雪使いで、
砂避けと暑気払いのルーンの御守り刻んで、こっそり環境対策だけはしておくのだ。

うー、ごーれむぅ。ごーれむぅ。ごーれむぅ。ごーれむぅ……。
(以下漏れ出る情熱翻訳)
『ゴーレムくん作りたい』『ゴーレムくん作らせろー』
『ゴーレムくんが居ないと死ぬ』『ノーライフ・ノーゴーレム』
『ゴーレムゴーレムゴーレムゴーレムゴーレムゴーレム』


アイゼン・ロート
パラドクスは使わない。レタも管に収めたまま。自らの力だけで奴隷として働こう。エンネアドに対する、形だけの信仰も添えてやってな。

【情報収集】【地形の利用】
潜入する前にエンネアド信仰と、周辺地域の生活について知識を得たい。他の奴隷と近しい生活スタイル・服装、支障ない常識を語れるようにな。
潜入前に調べ回っているヤツがいると知れると面倒だから、これは警戒されない程度に留める。

後は周りに合わせて仕事をこなすだけだ。同じ奴隷と談笑するなり、同調するのも良い。バレないことを優先する。
真面目にやることで任される仕事も増えるかもな。

その時が来たら、刻んでやろう。
失った記憶の虚しさと、それすらわからぬ空虚な心を。


アルマース・ハーズィン
オベリスクを壊すのに、建造に協力しないといけないのか。
肉体労働は好きでは無いが……、やらなければいけないのであればしょうがないな。

現場では建造作業は直接やらないようにして、作業者のサポートを積極的にやるようにしよう。
ほかの作業者の食事の配膳や、作業場所の整備なんかがやりやすそうだな。

作業時は見張りに怪しまれない程度に、情報収集も出来たらやろう。
このあたりで有力なエンネアドとかが聞ければ良いだろう。

完成時の祈りは今回の目的とは逸れてて、分かりやすいものにしよう。
『私の家族の仇は必ず取る』、『奪われたものは取り返してみせる』。
このくらいシンプルなものの方が良さそうだな。


エヴァ・フルトクヴィスト
ディアボロスの排除を目的としたオベリスク、
今後の介入を維持する為にも何としても排除しないといけないですね!

流石に魔女の格好では動きにくいので現地の奴隷風の服装を。
古代エジプトの建築技術の高さをオベリスクで実感しつつ、
力仕事は厳しいので皆さんに水を配りながら倒れない様にサポートを。

オベリスクの祈りの際は平和の祈りを捧げますよ。
とはいえ、それはクロノヴェーダによる侵略が無くなる平和。
誰もが、クロノヴェーダによって時や命を奪われず、
その人の時を生きていける世界。
根底にある奪われた怒りと共に、戦い勝ち取る誓いも祈りに込めて。

私の祈りと決意はルーン文字として現れるかと。
ヴァルヴァの破壊の予言としますよ!


一角・實生
オベリスク建立に向けて真摯に取り組む姿を演出する為、不本意だが砂埃を存分に浴びよう

エンネアドへの深い信仰心を持つ者なら上空のウカーブにも似た感情を持ったりはしないだろうか
運搬中に視線を密かに走らせ[情報収集]、空へ敬意を表しているような相手を見つけて話しかけてみるよ
信仰の在り方やこの事業に携わることの誇らしさを訊いてここでの振る舞いの参考にしたい
黙々と作業するのは嫌いじゃないから余力を残しつつ取り組むよ

信仰とは無関係のこと……さて何を祈ろう
こういうのって咄嗟に思いつかないんだよな
運搬中にでも考えておけば良かった

……そうだ
温泉に浸かりたい。温泉。温泉
無表情のまま頭の中で温泉と言う単語を連呼するよ


冰室・冷桜
まーじでー、めんどくせーことしやがってくれますよねぇ
ま、ドンパチするよかマシですけど
ちょっくら肉体労働に勤しむのも健康的でいいでしょ

と、思っていましたが大分前言撤回してぇ……!
元一般人女子中学生にこの暑さの中で肉体労働はきついってぇ……ちゃんと休めるのはいいけどさぁ
休んでいる最中は同じく休憩している奴隷の人らとお話しながら【情報収集】
作業のコツとか聞きつつ、模範的な奴隷の振る舞いを参考にしていきましょ
ついでにオベリスクのこととかも聞きたいわね
他にどんなのがあるとか、どこにあるとか

んでもって、お祈りはー
涼しい場所で休みたい、プール、海、オアシス……!
汗を流してすっきりしてぇ……!


ジズ・ユルドゥルム
成程、排斥のオベリスクとは。相手も我々を多少は目の上の瘤と思っている、ということか。

怪しまれても面倒だ、私も水運び女として立ち回ろう。
服装も質素なものに着替え、真面目に働くとも。

折角の機会だ、奴隷仲間たちから情報収集をしよう。
どこから来たのか、もと住んでいた場所で最近変わったことが無かったか、なぜこの建設現場へ来たのか…。
自分のことを聞かれたら、西方のオアシスから出稼ぎに来たとでも言う。

祈りの内容はもちろん奴らへの怒りと決意で…
……しかしこう暑くては、肌寒くなってきた新宿が恋しくなるな。
帰ったら鍋にしよう。魚介の鍋がいい。
海老帆立烏賊蛸蛤蟹…(魚介系食材への募る思いが祈りに混じる)


樹・春一
雑念を混ぜればいいのですね!
日頃から神のことばかり考えておりますので、そちらへ思考を逸らすのであれば!
……神のことを考えていてはいけない?

で、では姉のことを
いや、姉が弱点になるはずがありません。逆に強固になって無敵のオベリスクになってしまいます!

雑念、雑念……改めて言われてみると難しいものです
とりあえず労働はしますが! 身体を動かしながら考えればいいのです!
大丈夫です! 肉体労働は得意ですよ!
故郷ではよく山を駆け回ったりしたものです!
山と言ってもちょっと大きな公園みたいなものですが!
草地を駆け上がり木に登り池に浮かんだ鴨を眺め
やっぱり緑多い山の景色が一番好きですね!
たまには帰りたいなあ。田舎


辻・彩花
ディアボロスの介入に対してきちんと対策してくるあたり、クロノヴェーダも案外利口だね。その企みも阻止させてもらうけどね。

とは言ったけど……運搬作業がここまでしんどいとはね。ディアボロスもラクじゃないよ。
真面目に運ぶフリして【念動力】でちょっぴり浮かせるのはダメかな?……ダメだよね。はい、ちゃんとやります。
休憩時間中とかに他の奴隷たちに話しかけてみるよ。あの猿頭のエンネアドについて知ってる事やどう思ってるかとか聞いてみる。

信仰とは無関係のお祈り、か。新しい洋服が欲しい!とか、もっとオシャレになりたい!とかでいいのかな。



 獣神王朝エジプトへの介入を困難にすべく、排斥力を高めるオベリスクを打ち立てる――。
 儀式魔術系が得意なエンネアドが最も正しい対抗手段を打ってきたとは、辻・彩花(Stray Girl・g03047)も認めよう。
「復讐者の介入に対してきちんと対策してくるあたり、クロノヴェーダも案外利口だね」
 目深に被ったスポーツキャップ、陽光に翳を差す鍔の下で、シアンとライムの彩瞳が砂埃の奥――工事現場を見る。
 隣する新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)は、彼女への相槌に溜息を添えて、
「俺達の介入を妨害するわ、奴隷の命を捧げさせるわ、マジでロクな物作らねえよなクロノヴェーダ……」
 しかも作ろうとするものがデカいと、凄まじく奥行きのある現場と、其處に滿ち溢れる奴隷を見遣る。
「相手も我々を多少は目の上の瘤と思っている、という事か」
 爲て遣ったりだと、少し口角を持ち上げるはジズ・ユルドゥルム(一つ星・g02140)。
 雑然たる現場を一巡りした琥珀色の烱瞳は、己がより違和感なく身を置ける仕事――水を運ぶ女奴隷が良いと光を絞ると、彼女達と似たような装いに、質素な服に着替えて紛れる。
「私が運ぼう。貴女は少し休むといい」
 重たそうに甕を担ぐ女性を見つけ、怪しまれる事なく仕事を代わる。潜入は上々だ。

 むわっと熱気を帯びる砂埃に翠眉を顰めるは、冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)。
「まーじでー、めんどくせーことしやがってくれますよねぇ」
 敵に悪態を零す花脣がツンと尖るが、一方で「ドンパチするよかマシ」とも思っている少女は、教科書で見たような風景に溜息ひとつ置くと、丸眼鏡の奥、黑彩の瞳に光を燈す。
「ちょっくら肉体労働に勤しむのも健康的でいいでしょ」
 云って、ぐいと天秤棒を担ぐ。担うは石の運び出しだ。
 傍らのフルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は、眼前の原始的な光景にぱちくりと目を瞬いて、
「きつい、きけん、けむたい。これが古代エジプトの3Kと」
 果して非力なロリっ子(32)に担える仕事があろうかと、砂煙の向こうに目を凝らす。
 蓋し此度は日雇い派遣にて、オベリスクが自立するまで頑張れば宜しいと前向きに考えた少女(アラサー)は、己が出来る事を探しにタタタッと駆け出した。

「砂埃の奥に見えるのが、復讐者の排除を目的としたオベリスクですね」
 此度は魔女の格好でなく、女奴隷風の服装で現地に馴染んだエヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)は、真赭の麗瞳いっぱいに映る巨石と、其を大人数で運搬する作業光景に目を瞠る。
 鏡の如く磨かれた表面に、まだ文字は刻まれておらず――。
「今後の介入を維持する爲にも、何とか儀式を阻止したいですね!」
 力仕事は嚴しいが、水を配って皆々を支えられると考えたエヴァは、水甕を持って歩く女達の方向に向かうのだった。

「オベリスク建立に向けて真摯に取り組む姿を演出する、と……不本意だが砂埃を存分に浴びよう」
 慣れぬ役者も演じて見せる、と朦然を潜るは一角・實生(あざよいの鷲・g00995)。
 背に負う純白の大翼などは特に砂埃を嫌おうが、眼路を行き交う者達が血を被るよりは――と、彼の天秤は決して狂わず、爪先は眞直ぐ雑然の中へ、「わっしょい!」と叫ぶ石引き集団へ踏み込んでいく。
 行く先を揃えるアイゼン・ロート(朧・g01684)も一縷と迷い無い。
「奴隷らしく振る舞ってみせよう。エンネアドに対する、形だけの信仰も添えてやってな」
 記憶を喪った男は唯だ粛々と任された仕事をこなすのみにて、クダギツネのレタも管に収めた儘、ぐいと腕捲り。
 己に似た体格の者が多く巨石の運び手になるのを観察した彼は、極力違和感を與えぬよう、巨石に敷く丸太を直ぐにも運びに掛かる。

「雑念を混ぜていけばいいのですね! 分かりました!」
 石切り場から削り出され、ナイルの海運を使って運ばれる間にも、人々の祈りを注がれたという巨石柱。
 純然たる祈りによって排斥力を高めるのが敵の狙いにて、其處に不純物を混ぜれば良いのだと合點した樹・春一(だいたいかみさまのいうとおり・g00319)は、意気揚々と水汲み用の甕を摑む。
「日頃から神の事ばかり考えておりますので、そちらへ思考を逸らすのであれば! ……神の事を考えていてはいけない?」
 えっ、てなる。
 シスターが神を想わぬ時があろうかと、早くも難題に突き当たる春一。抑も男なのだが、今は言及すまい。

「……オベリスクを壊すのに、建造に協力しないといけないのか」
 慥かに工事現場に乗り込んで破壊するだけでは、復讐者こそ人々の支持を失う。
 オベリスクを破壊するまでに、人々の信仰を集めるエンネアドの支配を覆す必要があろうと呟いたアルマース・ハーズィン(リターナーのガジェッティア・g04123)は、この世界では豪商の娘として暮らしていた故に肉体労働には馴染みが無いが、やらなければいけないのであればしょうがないと足を進める。
 力仕事はせずとも作業者のサポートは出来よう。食事の配膳や作業所の整備等に積極的に参加する姿は、まさに適材適所と云った處か、彼女を含め多くの復讐者が現場で働き始めた。


「作業員に紛れ込んで偽のヒエログリフを刻めばいいんだろ? こいつは是非にでもやらなきゃね」
 砂埃を潜り、雑然とした人波を縫って現場を見て回る。
 精悍な男達が巨石を囲み、石工の頭領がその上で「わっしょい!」と音頭を取る姿は、或る種お祭りのようにも見えよう。大声を出して大きなものを運ぶ作業に樂しさを見た亜唯は、瞳を輝かせて近付いた。
「こんだけ盛大にやってるなら、俺みたいな子供の奴隷が紛れ込んでも大丈夫そうかな」
 子供なら小石拾いに回るところ、巨石の運搬を願い出る。
 周囲の男達も常なら「危ない!」と手で遮るところ、亜唯の自分達にも負けぬ大きな聲に目を瞠った彼等は、成程「スジがある」と一目置き、少年に大きな丸太を渡した。
「頭領に次いで精一杯に声を張れ!」
「はい! そ-れ、わっしょい、わっしょい!」
 元気な掛け声は、それだけで力になる。
 男衆と一緒に丸太を石に嚙ませ、てこの原理を以て石を押し出した亜唯は、この間に樣々な話を聽けたろう。
 異なる村々から集められた当初は、「そーりゃそーりゃ」やら「そいやそいや」やら、皆の掛け声もバラバラであったと耳にした彼は、それだけ文化の異なる、広い地域から集められたのだろうと、奴隷達の身の上を知るのだった。

 上空に屍鷲が監視している爲、下手な動きは出來ない。
 敵を警戒する一人、アルマースは休憩所に入れ替わり立ち替わり訪れる労働者達の食事を配膳しながら、樣々な村から集められたという彼等の話を聽く事にする。
「お疲れさま。時間は限られているが、しっかり休んでいくといい」
「ありがとうよ。塩を多めに頼めるかい」
「……秘密にしておいてくれるなら」
「はっはっは、上手なお嬢だ!」
 食事は誰もが口を開くものにて、情報が多く零れる場所でもある。
 アルマースは賑々しく会話する卓に耳を寄せ、時に自らも輪に入って尋ねてみる事にした。
「このあたりで有力な神と云えば、誰になるだろうか」
「そりゃあヘジュ・ウル樣が一番さね! これだけの人を集められた徳高い方だよ」
 巨大土木工事には多くの資材と人員が必要になる。
 また重労働に欠かせぬ塩を安定して供給できる力が要る。
 お陰で不足無い休憩と食事が出來ていると、多くの奴隷が感謝を示すのを見たアルマースは、このように権威を見せる事で信仰を集めている面もあろうかと、大量の塩を入れた甕を見るのだった。

 一方、水を入れた甕を見るフルルズンは早くもヘバり気味。
 水量がそのまま重量となる水甕に足をもたつかせた佳人は、たぷんと搖れる水は零さず悲鳴を零す。
「ひぃ、ひぃ。水を運ぶのも樂じゃないんだけど! おも!」
 ハッキリ言ってめちゃくちゃキツい。そもそも向いてない。
 繊麗の躯に秘めるは厖大な魔力であって、肉体労働に適性がある訳では無いのだと柳眉を顰めたフルルズンは、時にチラと上空を見遣り、監視の目を光らせる屍鷲を竊み見る。
「……ズルしたい……けど、できないー」
 バレないようにゴーレムを召喚して運ばせたい。だが連中も隙が無い。
 敵は数の多さを武器に多樣な高度と角度から地上を見下ろし、その影を砂に滑らせる事で「ズルしよう」とか「ラクしよう」とかいう労働者を牽制しているのだ。
「むねん……」
 せめてこの砂埃と暑さは何とかしたいと額の汗を拭ったフルルズンは、砂避けと暑気払いに密かにルーンの御守りを刻み、労働環境の改善を試みる。これなら儀式の時まで持ち堪えられそうだ。
 而して幾許か気力を取り戻した少女は、再び水を運び始めた。

「復讐者の介入を、阻止したいみたいだけど……その企み、こそ、阻止……させてもらうよ……はぁー」
 潜入前はもっと凛々しく言っていたが、運搬作業は想像した以上に重労働。
 彩花は力いっぱいロープを引っ張るも、数センチずつしか動かない巨石を恨めしそうに睨め、パラドクスが使えない不便に翠眉を顰めた。
「これ、真面目に運ぶフリして念動力でちょっぴり浮かせるのはダメかな? ……ダメだよね。はい、ちゃんとやります」
 復讐者もラクじゃないと溜息し、再びロープを張り直す。
 巨石が斜面に向き合った處で休憩に入れば、彩花は同じロープを引き合った奴隷達に「お疲れさま」と聲を掛けるがてら、少々会話してみる事にした。
「全体の指揮を執っているのは、猿の頭をした神樣らしいね」
「ああ、ヘジュ・ウル樣だぬ? とても賢い御方だぬ」
 彼は知恵を司る神で、此度の大工事も彼の知識と技術によって効率化されたとか。
 成る程、彩花も定滑車と動滑車の仕組みに助けられたし、牽引方向とは逆向きに己の体重と脚の筋肉を使うと教わったが、これらの知恵も神より授かったと思えば信仰は高まるかもしれぬと思う。
「おらは頭が悪いけんど、神樣の仰る事は正しいと思うんだぬ」
「神樣、かぁ……」
 彼等は五感に感じるものを現実と認める――。
 彩花は完成が待ち遠しいと言う青年に頷くと、手元の水をグッと飲み干した。

 一方、彩花ら工事從事者に水を配っていたエヴァは、此處でも異文化に刺激されまくっていた。
「水甕は頭に乗せて運ぶといいわよ」
「こう、ですか?」
「厚手の布を乗せてから……そうそう」
「顎を引くのがポイント、ですね!」
 仲間にアドバイスを貰いつつ、背筋を伸ばして水甕を乗せる。
 而して見える景色は、古代エジプトの高度な土木建築技術そのもの。水を配るにあちこちの現場を移動した彼女は、そのお陰で全長20m程の巨石が全き人力で、祈りと共に運ばれる樣子を隈なく見る事が出来た。
「今回建立されるのは、『世界の守護』が願われた太陽神アテンのオベリスクなのですね」
 口々に祈られる神の名を注意して聽く。
 世界の守護とは、つまり、獣神王朝エジプトに行き渡るクロノヴェーダの支配を盤石にする事か――。高度な技術によって運ばれるオベリスクを見る星眸(まなざし)は烱々と、漸う光を増していく。

 そして、エヴァと同じく皆々に水を配っていたジズは、何往復かの後に親しくなった奴隷仲間から話を聽き出していた。
「西の訛りがあるようだが、君は……」
「せやねん。ウチはここからちっと離れた村でいつもは畑をしとるさかい、此處はよう慣れんよ」
 奴隷と云っても、彼女の家は小作人。日本で云えば江戸時代の農民に近い。
 村長の言いつけで此處に來たのだと話す女性の他には、岩岸付近の村から來たとか、石切り場周辺の村から石工の夫と共に來たと言う女性等が居り、全員が此度の工事が一大事業であるという認識を持っている。
(「タウエレトの小神殿にも神像があったが、獣神王朝エジプトでは更に大規模なクロノ・オブジェクトとしてオベリスクの建立を盛んに行っているようだな……」)
 多くの人を集めるだけの力があるようだが、果して彼等が故郷に戻る事はあるのか――。
 其の多くが工事後に生贄に捧げられているのではないかと佳脣を引き結んだジズは、仲間に呼び掛けられてハッとした。
「自分は何處から來はったん」
「私か。私は……西方のオアシスから、出稼ぎに」
「オアシス! こないぎょうさん砂の所はしんどいな。これ飲んどき」
 云って、水を渡される。
 幾許か瞠目して水を受け取ったジズは、彼女達を必ずや村に帰したいと思うのだった。

 扨て、ジズらが運ぶ水甕に水を汲み入れる重労働に就いていた春一は、労働こそ神への奉仕と歓びそうになる處、グッと拳を固めて耐えた。
「神を考えずして仕事に励む……何と難しい試練でしょう」
 何か他の事を考えねばと、ぎゅうっと瞑った瞼に浮かび上がるは、未だ行方知れずの――。
「姉のことを……いや、姉が弱点になるはずがありません。逆に強固になって無敵のオベリスクになってしまいます!」
 云って、瞳を閉じた儘かぶりを振る。
 かの巨石柱に姉の似顔絵など刻もうものなら――と悲劇を過らせて考えるのをやめた春一は、大きな水甕からザブザブと水を汲み、仕事を同じくする奴隷達を驚かせた。
「お前さん、そんな働いて死なんけ?」
「大丈夫です! 肉体労働は得意ですよ! 故郷ではよく山を駆け回ったりしたものです!」
「山の方から來たんけ」
「ええ、唯だ山と言っても、ちょっと大きな公園みたいなものですが!」
 嘗て野山に吹き渡る風を胸いっぱいに、青々とした草地を駆けて木に登った。
 其處から見える池に行っては、水面に浮かぶ鴨を眺めて日がな一日を過したものだと――懐かしい景色を甦らせた春一が、水甕に搖れる水面をじっと見つめる。
「? どしたんけ?」
「やっぱり、緑多い山の景色が一番好きですね!」
 田舎を思い出したのだと咲うシスターに奴隷達も共感したか、同じく郷愁を過らせるのだった。

 斜面を登り始めるオベリスクに丸太を咬ませた實生は、てこの力で巨石を押し出すついでに空を仰ぐ。
 朦々と立ち込める砂埃の上には、屍鷲がぐるぐる帆翔して地上を監視しているが、エンネアドに深い信仰心を持つ者なら、連中にも似た感情を持つだろうか――。
 交睫ひとつして地上に戻った烱眼は、有翼の屍を敬い仰ぐ初老の男性に視線を結ぶと、然り気無く話し掛けてみる。
「ヘジュ・ウル樣のお近くで働けるとは」
「羨ましいべっちゃな。試練を乗り越えた者の姿っちゃよ」
「おじいさんも空を翔びたいかい?」
「べっちゃなー。丸太に油を潜らせるだけの爺より役立つかもしれんちゃ」
 死者の中から魂の回生を得たリターナーが、更に儀式を経て覚醒するのがマミーだ。
 彼等は獣頭人身の神に仕えて護衛となり兵隊となり、この度の巨大事業では空からお役目を果たしているのだと敬意を示す男に對し、實生は屍鷲らも人々の信仰によって力を高めているのだと密かに警戒する。
 一方、佳脣を滑る科白は、埃を被る老爺を励まして、
「おじいさんの仕事も重要だよ。油がないと丸太も動かない」
 巨石を運ぶに大事を担っているのだと汗を見せれば、彼も嬉しそうにニッと笑う。
 信仰は兎も角、默々と作業するのは苦で無し。實生は老爺が油を注ぐに合わせ、力いっぱい丸太を押し上げるのだった。

「健康的な労働と思っていました。だが大分前言撤回してぇ……!」
 燦々と照る太陽の下、熱い砂の斜面で冷桜がうだる。
 現代日本の中流家庭に生まれた、元はごく普通の女子中学生に天秤棒での石運びは嚴しいと、両肩に喰い込む重量を睨めた少女は、班長に漸く休憩を言い渡され、這う這うの体で小屋に向かった。
「日陰だ……ありがてぇ、ありがてぇ……!」
 日干し煉瓦で作られた休憩所は、太陽を遮るだけで涼しい。
 水を飲みながら作業班のメンバーと会話した冷桜は、ここで作業のコツやオベリスクについて情報を求めた。
「石を見つけるんも運ぶんも、神に祈りながらすんのが良いんだど」
「成程、それが模範的な奴隷の振る舞いってやつね」
 純粋な祈りを捧げる事で、魔術的な排斥力が強化されるのだろうと真意を読む冷桜。
 咽喉を潤した彼女は更に切り出して、
「此處の他にどんなオベリスクがあるとか、どこにあるとか知らない? 見てみたいなぁ」
「多くの労働者が集められてるってんは聞くけんど、場所は知らんど」
 情報が一方向なのは、戻った者が居ないという事だ。
 他で行われている巨大土木工事も、人々の信仰を利用して建てたクロノ・オブジェクトを機能させるエネルギー源として、生贄を必要としていると考えた冷桜は、濡れた脣をきゅっと引き結んだ。

「おぅい、そこの力持ち。今から台座に嵌めるけん、ロープ任せたる」
「あざす。オベリスクが立つ所を間近に見られて光栄っす」
 巨石の上に乗った班長の呼び掛けに顔を持ち上げるアイゼン。
 砂埃に紛れる間に優れた洞察力を発揮した彼は、周囲の者達の訛りや常識を習得した事で、すっかり現地民の如くとなり、更には真面目な働きぶりが評価され、オベリスクを台座に立たせる重要な仕事に加わる事となった。
「明日どうなるか分からんけん、早うせんとな」
「うす、“明日はアンズ”っす」
 上空の屍鷲や同僚からも怪しまれぬよう感覚や口調を寄せる。而して馴染み切る。
 砂丘の中央部、窪と掘られた台座部分に近付けられたオベリスクは、幾つも結ばれたロープに吊られて頭を擡げ、純然たる力でよって漸う垂直に、遂に台座へと嵌め込まれた。
「おおー! 建ったどー!」
「…………完成っすね」
 最後までロープを引ききった手は真っ赤だ。
 周囲の奴隷と近しくした粗末な服は砂だらけで汗まみれで、アイゼンも肩で息をする程だったが、彼は頭を覆う布の陰から鋭い視線を投げ込み、雄壮と聳え立つオベリスクを仰ぐのだった。


『さぁ、祈りを捧げよ! 皆々の涙と汗は、神の前に報われる!』
 ヒヒ頭のエンネアドの號令の下、奴隷達が一斉に跪く。
 全体の動きに合わせて膝を付いた春一は、巨柱の先端、鏡の如く磨き上げられたピラミディオンが太陽光に輝き始めるのを仰ぎつつ、今こそ雑念を高めるべきと手を組み合せた。
「雑念、雑念……改めて言われてみると難しいものですね」
 当初は神のこと以外は考えられぬと苦労したが、砂埃に塗れ、砂という砂を味わったからこそ思い描く景色がある。
 凛と睫を持ち上げた春一は、鴇色の佳脣に心からの聲を零した。
「――偶には帰りたいなあ。田舎」
 囁いた瞬間、眩い光がオベリスク全体に疾り、石面を刻んでいく。
 其は思い描いた本人こそ判然ろう。「山」と「木」、そして「池に浮かべる鴨」を印した独自のヒエログリフは、颯爽たる風を吹かせて存在を顕かにするのだった。

 然うだ、オベリスクは復讐者の想いにも應える。
 なれば祈りの内容は勿論……と、ジズは歴史を改竄した者達への瞋恚と決意を兆すが、斯くもオベリスクを輝かせる太陽の強さと砂の暑さは、肌寒くなってきた新宿を恋しくさせる。
「……帰ったら鍋にしよう。魚介の鍋がいい」
 海老帆立烏賊蛸蛤蟹……鱈も安ければ入れたいところ。
 そうして魚介系の食材に思いを募らせば、カッと光り輝いた石面に別なる文化で発達した象形文字――即ち漢字が刻まれ、オベリスクが部分的に寿司屋の湯呑のようになる。湯気立つ匂いもバッチリ、磯の馨だ。
「信仰とは無関係のお祈り、か……」
 何が良いだろう? と小さく呟く彩花。
 不圖(ふと)己の砂埃を被った袖に瞳を落とした彼女は、噫、洋服を新調したいと手を合わせる。
「新しい洋服が欲しい! もっとオシャレになりたい!」
 元々はファッション好きなフツーの女子高生。
 自分らしさを表現できる装いに包まれたいと祈れば、巨石柱は彼女の願いを刻み出し、現代地球の最先端ファッション――「サスティナブルマインドを意識したフェイクレザーのフレアシルエットボトム」の絵文字を、其の身に輝かせた!

 時に肉体労働に苦しめられたフルルズンは、祈りは難なく捧げられたろう。
 三度の飯よりゴーレム作らせろなゴーレムクラフターは、任務中は召喚が叶わなかったゴーレムを思い起こし、美し花脣にその情熱を溢れさせる。
「うー、ごーれむぅ。ごーれむぅ。ごーれむぅ。ごーれむぅ……」
 ゴーレムくん作りたい。
 ゴーレムくん作らせろー。
 ゴーレムくんが居ないと死ぬ。
 ノーライフ・ノーゴーレム。
 ゴーレムゴーレムゴーレムゴーレムゴーレムゴーレム……その想いは見事「ゴーレム型の動く絵文字」となり、ごりごりと石面に刻まれていく。
「……どんな祈りを込めようかな……」
 偽のヒエログリフを刻むに、亜唯も真劍だ。
 少年は強い想いが良かろうとギュッと手を合わせると、心からの聲を零し、
「綺麗なお姉さんに膝枕してもらいたい……!」
 噫、これほど純粋(?)な祈りならば、石柱も明るく眩く反應しよう。少年の正直すぎる想いを受け取ったオベリスクは、「美人で優しいお姉さんの柔らかな太腿に頭を乗せる少年」の絵文字を刻み、キラキラと存在感を示すのだった。

「こういうのって咄嗟に思いつかないんだよな……運搬中にでも考えておけば良かった」
 慾の無い者ほど悩むが、實生も雑念を探すのに苦労している。
 殊のほか作業に集中してしまったと顧みつつ、砂埃に汚れた頬を拭った彼は、不圖、ここに格好の願いが浮かんだ。
「……そうだ、温泉に浸かりたい。温泉。温泉」
 全身の汗と汚れを洗い落とし、熱い湯に浸かりたい――。
 嘸や疲れが取れようと、無表情の儘「温泉」なる語を頭の中で連呼すれば、巨石柱はその願いの分だけ温泉マークを刻み、そこからほんわりと湯気を立たせた。
 一方、休憩所での一時に救われた冷桜が求めるは、涼を感じさせる憩いの場所。
「涼しい場所で休みたい、プール、海、オアシス……! 汗を流してすっきりしてぇ……!」
 熱帯びた身体を冷たい水に潜らせ、砂とも埃ともオサラバする――!
 砂まみれの手で少女が強く祈ったなら、オベリスクはユラユラと波を動かす「海」と、爽涼の風に搖れる「木立」、そして海を泳ぐに最適な、ごくごく普通のスクール水着を刻み入れるのだった。

 水甕を傍らに跪いたエヴァが捧げるは、平和の祈り――其はクロノヴェーダによる侵略が取り去った後に訪れる平和だ。
「……誰もがクロノヴェーダによって時や命を奪われず、その人の時を生きていける世界。根底にある奪われた怒りと共に、戦い勝ち取る誓いも祈りに込めましょう」
 奴隷の姿に身を窶したとはいえ、彼女は“ヴォルヴァ”。
 その祈りと決意はルーン文字としてオベリスクに刻まれ、「ヴォルヴァの破壊の予言」として神秘的な光を放ち出す。
「そうだな、連中の目的と逸れたものが良いだろう」
 連中が望む「世界の守護」が達せられぬよう、分かり易く違う事を――とアルマースが祈り始める。
 無理をして考える必要は無し、己が常に胸に刻み入れる『私の家族の仇は必ず取る』『奪われたものは取り返してみせる』という誓いを示せば、石柱に疾った光は赫々とヒエログリフを刻み入れ、堂々、太陽神アテンを讃える文言に割り込んだ。
 而して文字を刻む者も居れば、「空白」を刻む者も居る。
「……時は來た。さぁ刻んでやろう」
 地を這うような低い聲で囁くはアイゼン。
 彼を滿たすは「失った記憶の虚しさ」と「それすらわからぬ空虚な心」にて、その心を写したオベリスクは、一度は刻み入れた太陽神への讃歌を掻き消すよう空白で塗り潰す――其も他の部分と較べれば異樣に浮き立った。

 斯くして不純物を交ぜられたオベリスクは、所々に動く絵文字や光る文字を飾る、ちょっとした面白オブジェクトとなって完成した。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【アヴォイド】LV2が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
【反撃アップ】LV2が発生!
【命中アップ】LV1が発生!


 復讐者がオベリスクに独自の文字を刻んだ結果、その一部、太陽神アテンへ捧げられる祈りは次のようになる。

「太陽は(温泉)から美しく現出す。生きる(膝枕)、(綺麗なお姉さん)よ。
 太陽は(海鮮鍋)から昇り、(ゴーレム)で全土を充たした。(ホタテ)。
 太陽は■しく、■■で、輝き、地上のすべての■■のはるか上に■■■■。
 太陽の光は、創造したすべての(仇討ち)の前で全土を(奪還する)。
 太陽が(プール)に沈むと、大地は(もっとオシャレになりたい!)、眠ったようになる。
 (鴨)は、(池)で(スイスイ游ぐ)。(蛤)は(海老)を見ることは出来ない。
 家族の仇を取り、奪われたものを取り返す。温泉。

 すべての獅子がその穴より出て来、すべての(ゴーレム)は(ゴーレム)。(ゴーレム)(ゴーレム)。
 太陽が(オアシス)から昇り、(美人のお姉さん)に(膝枕してもらう)と、(海)は明るい。
 ■■■は■■■を追い払い、(スク水)を与える。
 (イカ)が活動し、すべての(カニ)がその(温泉)に満足する。
 草が緑に育ち、鳥は(汗を流してスッキリしてぇ)、その翼は神の(温泉)を礼拝する。
 すべての(山)と(木)は、その両の足で飛び跳ね、飛び、(たまには田舎に帰りたい)。
 それらは神が■■■■■■。神は(新しい洋服が欲しい!)
 我々は時や命を奪われず、其々の時を生きていける世界が訪れる。而して平和が齎される」

『なんっ……なんじゃこりゃー!!』
 ヒヒ面人身のエンネアド『ヘジュ・ウル』が頓狂な聲を上げる。
 ヒエログリフの読めぬ奴隷は何が起きたか理解っていない樣だが、知識の神を自負する猿邪はビックリ仰天、見た事のない文字群と空白――不純物の混入を訝しむばかり。
 而して奴隷の中に紛れ込んでいた復讐者だけがカラクリを知ろう。
「――よし、成功したようだな」
「祈りでない想いが刻まれた分だけ、排斥力が弱められただろう」
 この部分をパラドクスで攻撃すれば、弱点を衝かれたオベリスクは破壊される。
 跪礼する集団から矗然(すっく)と立ち上がった復讐者は、何事かと顔を持ち上げる奴隷達が巨石の下敷きにならぬよう、注意して破壊に掛かるのだった。
冰室・冷桜
よっしゃ、首尾は上々っと
あとはドンパチに紛れてぶっ壊しましょうってね

……そいや、これ。祈りで弱点ができるってー話だったけど
どういう風に狙えばいいのかしら、そこら辺とか頭から完全に抜けてたけど
あのスク水っぽい?のがアタシのだと思うけど……水着なんて持ってねーし……
水ぶっかけりゃいいかしら……?
いや、でもそんなんないしなぁ……よし!
普通にぶっ壊しましょう! なんかアタシ以外のが反応するかもだし!

とゆーわけで、奴隷の皆さんに紛れ込みつつ、だいふくを【召喚】
雷でバチバチした槍で思いっきりオベリスクにフルスイングをぶちかませましょう


アルマース・ハーズィン
オベリスクに弱点を作り出す作戦はどうやら成功したようだ。
あとはこの弱点を狙って、崩せば良いわけだな
エンネアドには気づかれてしまっているようだし、早速取り組まないといけないな。

オベリスクには【エアライド】を使って、最適な移動経路を踏まえて、空中ジャンプを交えながら向かおう。

オベリスクの元に着いたら同行者たちによって刻まれた絵文字が、碑文に含まれているようなので、一番目立つであろうそれを目印に弱点を探す。

弱点が見つかり次第『赤蠍の尾針』を構えて、《精神集中》してから、弱点に向かって【スコルピオンスティング】を使用する。

毒性の魔力を帯びた《捨て身の一撃》だ。この一撃で崩れ去るといい。


エヴァ・フルトクヴィスト
捧げられた祈り、元の厳かであったであろうものが、実に俗っぽく。
私が真面目過ぎただけでしょうか。
知識経験出会いを沢山、とでも願っておけばよかったです。

とはいえ、送った祈りは真なる私の切なる願いでもあります。
我がヴァルヴァの予言たるオベリスク破壊の成就を皆さんと共に!

パラドクス通信で密に連絡を取りつつ連携。
配下への攻撃の状況を一般人に紛れつつ観察。
オベリスクへの意識が逸れた所で飛翔、
妨害は未来予測で感知しつつ、
エアライドを使って軌道変更を織り込みつつ攪乱、臨機応変に回避。
光の槍を光るルーン文字の場所に叩き込んみますよ!

ディヴィジョンを閉じさせる訳には行きません!
偽りの神たる侵略者を討つ果たすまで!


辻・彩花
あのお猿さんの驚いた顔ったらないね。今度はオベリスクを破壊してもっと驚いてもらおうか。

【フライトドローン】に乗って弱点を探して攻撃しやすい位置に移動するよ。
フレアボトムかぁ。次のコーデに取り入れてみようかな。今の時期ならアウターは……っとそれは後でね。
【キャンディフォーユー】で弱点を【爆破】するよ。余った飴は自分で食べちゃお。肉体労働の後の甘い物は最高だね。

破片や瓦礫が奴隷たちに落ちないように【念動力】でキャッチして誰もいないところに捨てるよ。
奴隷たちはアタシたちがオベリスクを破壊する事をどう思うかな。みんな頑張ってたからね……でも必要な事だし、心を鬼にするよ!


樹・春一
何やら楽しげな内容になっているようですね! さっぱりひとつも読めませんが!
しかし確かに僕たちの信仰が描かれました! 残念ながら姉さんではありませんが、見つけ出して破壊してみせましょう!

……願いを破壊するって割と酷なことでは?

まあ破壊と創造はお友達! つくってこわしてたのしい!
壊れたらまた作ればよいのです! 今度はガッツリ煩悩のみで構成された平和なやつを!
とりあえずは多分牧歌的な風景っぽいやつを……あっ鴨
可愛いですねえ。寒くなると池や川にたくさん浮かんでるんですよ
見てよし食べてよし。僕のかはわかりませんがきっとこれです!

これ普通に殴っても大丈夫でしょうか
急に崩れたりなんてしませんよね
ハレルヤ!


一角・實生
余剰分の巨石等が置かれているような身を隠しやすい場所へ向かう
気取られぬよう【モブオーラ】を纏い移動したいな
移動後はパラドクスを発動しまずは温泉マークを砲撃して行こう
他のディアボロスへ弱点の位置を知らせることもできる

浮かび上がった弱点は面白いものが多……見て直ぐ判るようなものが多い印象だったけれど一応【パラドクス通信】でも情報を共有し合いたい
俺のは温泉マーク。湯気が出てる
何度も願ってしまったから複数あるかも

粗方破壊し終えたら【友達催眠】の力を借りつつ奴隷の人達に近付き言う

これだけ大きなオベリスクなら力を維持する為の代償だって必要な筈だ
此処で直ぐに得られる代償として最適なもの
――何だと思う?



『えっ? なんっ、えっ?』
 予想外の事態に当惑しきる首魁ヘジュ・ウルを前に、奴隷達は「一体何が起きたのか」と不思議そうに顔を見合わせるが、仕掛け人の一人、辻・彩花(Stray Girl・g03047)はしたり顔。
 佳人はキャップの眉庇に吃々たる竊笑を隠して、
「あのお猿さんの驚いた顔ったらないね。中々良い表情を見せてくれる」
 あんぐりと開いた口も、目の剥き具合も、まさに喫驚そのもの。
 かの表情こそ儀式の失敗を示してくれるとは、樹・春一(だいたいかみさまのいうとおり・g00319)も頷こう。
「何やら樂しげな内容になっているようですね! 僕には何が何だか、さっぱりひとつも読めませんが!」
 蓋しこの渾然こそ成功の證左(あかし)。
 残念ながら、幸いにして? 姉が描かれる事は無かったが、我々の想いが慥かに銘に刻まれたと春一は佳顔を晴れやかに、混迷を極めるオベリスクを仰ぐ。

 ――なんかヘジュ・ウル樣テンパっとらんけ?
 ――儀式を失敗しなすったとか……いやいや、そげなこと!
 ――でも書き初めで淸書を間違えた子供みたいな顔してはる。

 幾人かの奴隷達が小声で囁き合う中、彼等に紛れた冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)は黑瞳を眞直ぐ石柱に結んだ儘、小気味佳く口角を持ち上げる。
「よっしゃ、首尾は上々っと」
「オベリスクに弱点を作り出す作戰は、巧くいったようだ」
 輕快に滑り出る佳聲に凛乎と頷くは、アルマース・ハーズィン(リターナーのガジェッティア・g04123)。
 頗る自由に彫り込まれたと碑銘を眺める彼女の隣、一角・實生(あざよいの鷲・g00995)もその出來栄えに瞠目して、
「浮かび上がった弱点は面白いものが多……見て直ぐ判るようなものが多いな」
 翠緑の烱瞳が自ずと引き付けられるは、矢張り、自身が刻んだ温泉マーク。
 何度も願った影響で各所からホコホコと湯気を出していると云えば、視線を同じくしたエヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)もふふっと咲みを零す。
「私が眞面目過ぎただけでしょうか……知識や経験、出会いを沢山、とでも願っておけばよかったです」
 奴隷達が捧げた祈りも、其處に刻まれる筈だった文言も、もっと嚴かなものであったに違いないが、實に俗っぽくなったと石柱を仰いだ双眸は、祈った本人こそ判然る、ヒエログリフに紛れたルーン文字を捺擦る。
 敵には不純物と映ろうが、これらが純粋な祈りであることに偽りは無し、
「この祈りは真なる私の切なる願いでもあります。我が予言を現実に、オベリスク破壊を皆さんと共に!」
 云えば、意志を同じくする者が呼應しよう。
 最早跪礼は不要にて、組み合せた手を解いたアルマースは凛然と立ち上がり、
「あとはこの弱点を狙って、オベリスクを崩せば良い訳だな」
「そうだね、あのお猿さんにはもっと驚いてもらおうか」
 続く彩花も砂まみれの服を払いつつ、かの者なら面白い反應を見せて呉れようと、黑々としたオーラを漲らせていく。
 而して復讐者が立ち上がれば、周囲の奴隷達が奇異の視線を集めるが、冷桜は變わらず飄然と、颯ッと吹き抜ける風に金糸の髪を遊ばせつつ、輕やかに朗らかに物騒を告げた。
「よーっし、うまくドンパチに紛れながらぶっ壊しましょう」
「はい! 敵に見つかる前に弱点を見つけ出し、破壊してみせますとも!」
 彼女に應える春一も気合充分、固めた拳をぱしんと掌に包んで見せる。笑顔こそ柔らかいが、その拳は石柱をミンチにするくらいの力はあろう。

 一方、集団から立ち上がる彼等が怪しいとは敵も気付く。
 ヘジュ・ウルは彼奴等こそ渾沌を刻んだ下手人だと指を差し、
『信仰に鎖がれた奴隷どもに、これ程の雑念を抱ける者は居まい……ウカーブよ、立ち上がった者達を捕えて調べよ!』
 と、上空で帆翔する屍鷲を呼び寄せ、不審者の拘束に掛かった。

 而して須臾、屍鷲が飛び方を變えた事に気付いたアルマースが戒心を兆す。
 急降下する邪影を仰いだ麗人は、烱瞳を地上に戻すや紅脣を開いて、
「敵に気付かれているようだし、迅速に取り組まないといけないな」
 奴隷達を攻撃する筈だった屍鷲が復讐者に矛先を向けたのは良いが、それでもは時間は限られようと懸念を示せば、石柱に祈りを捧げた仲間のうち、幾人かが屍鷲の迎撃に回ろうと申し出る。
 直ぐさま動き出す彼等には、エヴァと實生が小型通信機を差し出して、
「相手は仲間を呼び合うようなので、私達も密に連絡を取りつつ連携しましょう」
「俺達は弱点の形や位置を発信する。敵味方の動きを把握すれば、被害を抑えられるだろう」
 半径20km圏内を通信できる端末にて、此度の戰場で不足は無し。
 オベリスクの破壊と屍鷲の撃退を同時に、且つ迅速に行うべく情報を共有しようと提案すれば、其に賛同した仲間達が端末を掴んで駆け出した。
 そうして迎撃組を送り出した者の一人、冷桜は不圖(ふと)石柱の碑銘を仰いで、
「……そいや、これ。祈りで弱点ができるってー話だったけど、どういう風に狙えばいいのかしら」
 頭から完全に抜けてたと告ぐ佳人は、砂まみれの繊指を上へ、自分が刻んだであろう絵文字を指差す。
「あのスク水っぽい? のがアタシのだと思うけど……水着なんて持ってねーし……水ぶっかけりゃいいかしら……?」
 云って直ぐ、眼鏡を隔てた烱瞳を周囲に巡らせるが、砂だらけの工事現場に水は無し――。
「いや、でもそんなんないしなぁ……よし! 普通にぶっ壊しましょう! なんかアタシ以外のが反應するかもだし!」
 ふ つ う に ぶ っ こ わ す。
 物理的衝撃を、パラドクスを叩き込むのが順当だと結論付けた彼女には、春一も晴やかな笑顔で賛意を示そう。
 彼は石柱に見立てた腕を一方向に倒しながら言を添え、
「人が居ない方向へ、樵夫が木を倒すようにしては如何でしょう?」
 多くの復讐者が祈ったお陰で、沢山の弱点が刻まれた。
 四面に散らばる弱点のうち、奴隷達が居る場所と逆側に位置するものだけを狙おうと提案する春一に、「成程」と合點した一同は、目下、屍鷲の迎撃に向かう仲間に続き、搏ッと爪先を蹴った。


 若しか知恵の神による魔術的儀式が失敗したのではないか――。
 奴隷達が密かに疑義を抱く中、その集団を颯然と駆け抜けた彩花が疾る、馳る。
 美し彩瞳は眞直ぐ、太陽を浴びて黄金色に輝くオベリスクに結ばれているが、眼路の脇には不思議そうに影を追う奴隷達が映ろう。優れた視力はその中に、共にロープを引いた青年を捉える。
「奴隷達はアタシたちがオベリスクを破壊する事をどう思うかな。みんな頑張ってたし……」
 彼は完成が待ち遠しいと話していた。その横顔は希望に輝いていた。
 彼等の努力を無碍にするのは心が痛むが、純粋な信仰が蹂み躙られている事實を知る彩花は止まらない。迷わない。
「この世界に必要な事だし、心を鬼にするよ!」
 些細な事で親と喧嘩して家を飛び出した少女に帰る場所は無い。
 だが青年には帰る家があり、彼の帰りを待つ者も居るだろうと、幾許の逡巡を撥ね退けた彩花は、逆側に回り込んで須臾、古代エジプトならぬ絵文字を発見すると、不意に微咲(えみ)を差した。
「フレアボトムかぁ。今冬のコーデに取り入れてみようかな」
 ふむふむ、と興味深くデザインを見る。
 自ずとトータルコーデを考えてしまうのがオシャレさんらしかろう、
「今の時期ならアウターは……っと、それは後でね」
 続く言を遮るように繊手をポケットへ滑らせた佳人は、其處から取り出したキャンディを投げると同時、距離を取った。
「アドバイスありがと。これはアタシからのお返し」
 花脣を滑る佳聲に被さる爆発は、【キャンディフォーユー】!
 忽ち爆ぜたソーダ味のキャンディは、彈けるようなパステルブルーの衝撃を炸裂させ、石柱をズシンと震わせた。

「成程、信仰で固められた部分はパラドクスを拒むが、私達が刻み入れた部分はそうでない、と……」
 朦々と烟り立つ噴煙を視界の端に捉えつつ、次撃を継ぐはアルマース。
 彩花と同じく、奴隷達が居る場所とは反對の面に回り込んだ彼女は、砂を蹴るや宙空を蹴って上に、上に、石柱に刻まれた絵文字を見ながら駆け上がっていく。
「樵夫が木を倒すように一方向に、だったな」
 受け口を作るに重要なのは方向にて、必ずしも己が刻んだ弱点を攻める必要は無い。
 彩花が破壊した部分の少し上を切り崩したいと云えば、小型無線機から「丁度、温泉マークが湯気をくゆらせている」との情報が入り、これを目標に最適な移動経路で接近する。
「ここだ」
 鴇色の脣を滑る佳聲は低く冷く。
 而して双眸に鋭い光を湛えた麗人は、繊手に『赤蠍の尾針』を握り込めると、意識を研ぎ澄まして毒性の魔力を注ぎ入れ、砂漠の蠍が如き猛毒を宿らせた。
 滴る程の紫毒は間もなく衝き入れられよう。
「建ったばかりだが、この一撃で崩れ去るといい」
 閃穿、【スコルピオンスティング】――ッ!
 全力で振り下ろされた蠍尾の毒撃は聢と碑銘を貫き、穿ち、雄大な石柱を刮げるのだった。

「巨石の運搬に使った斜面は完全には取り除かれていないのか。助かった」
 身を隠す場所は充分にあると、砂塵に紛れて移動した實生が回り込むも反面。
 気配を殺して南側へ疾った彼は、所々から湯気を出す温泉マーク(香りつき)のうち、彩花とアルマースが攻撃した付近のものを捉えると、我が身に宿れる呪詛を解放した。
「……何度も願ってしまったが、逆に複数あって佳かった」
 小型通信機に己の座標を告げ、射線に入らぬよう注意を促しつつ、紺青の呪詛を地に蹲わせる。
 而して純白の大翼と兩脚を砂の斜面に固定した實生は、迸る呪詛の餘波で砲台状に形状變化したパニッシャーを構えると、乾いた空気を搏つように砲撃を開始した。
「会合線を引く。この垂直線上が倒れる方向だ」
 佳聲は淡々と、然し爆ぜる砲音は猛々しく。
 仲間によって貫穿された部位を拡げるは、【ヴァントーズの礼讃】――呪詛を帯びた砲彈が間隙なく石柱へと撃ち込まれ、オベリスクはぽっかり口を開けたような、正に「受け口」を完成させた。

 ズゥゥゥウウン……ッ! と唸りを挙げるオベリスクに奴隷達が騒めく。
 彼等から見れば背面で起きた爆発にて、何が起きたのかと皆々が目を丸くするが、不安げに動く者の足は冷桜が制する。
 花脣を滑る佳聲は努めて穩やかに人々の不安を宥め、
「皆さん、動かないで。ここが一番安全だから」
「せやけど、この音と搖れは……」
「持ち場を離れた奴隷にどんな罰が下るか分からないわ」
「せ、せやな。ステイや」
 此度は指向性のある倒石方式にて、この場に居る限り被害は無い。
 下手に逃げれば、彼等を生贄として殺そうとしていた屍鷲らが矛先を變えようと警戒した冷桜は、奴隷達を説得する傍ら、メーラーデーモン『だいふく』を召喚し、眞白の翼に風を摑ませた。
 向かうは石柱の正面。彩花とアルマース、そして實生が衝撃を衝き入れた場所のちょうど反対側。
 オアシスで涼むにスク水とは些か凡庸な気がするが、兎に角、そこが弱点だ。
「えぇと、受け口に向かって水平に? ハイそこ!」
 本人に代わってスク水の絵文字を捉えただいふくは、二又の鋩を持つ白銀の槍を構えるや、紫電を迸らせてゴー!
 バチバチと霹靂を帯びる鋭鋩をズドンとブチかまし、「追い口」にあたる裂傷を刻むのだった。

 その裂傷を更に深めんと畳み掛けるは春一。
 名残惜しく稲妻を疾らせる損傷部に辿り着いたシスター(男)は、黑々と耀ける兩の眸に牧歌的な風景絵文字を捉えると、其處にスイスイと池を游ぐ水鳥を発見した。
「あっ鴨」
「クェー」
 絵文字は匂うし音も出す。勿論、鳴きもする。
 田舎で見たまんまだと瞳を細めた春一は、そのむっくりとしたフォルムに郷愁を覚える。勿論、味も思い出す。
「……可愛いですねえ。寒くなると池や川にたくさん浮かんでるんですよ。見てよし食べてよし。僕のかはわかりませんが、きっとこれです!」
 莞爾と頬笑みつつ、砂地を強く踏み込み、腰を落して。
 握り込めた拳に神の祝福を――眩い光を力と溜めた春一は、ここで不圖、素朴な疑問を浮かべた。
「……願いを破壊するって割と酷なことでは?」
 黑瞳をぱちくりと瞬き、鴨のつぶらな瞳を見る。
 蓋し彼の超ポジティブシンキングは全力で左に舵を切ろう。
「まあ破壊と創造はお友達! つくってこわしてたのしい! 壊れたらまた作ればよいのです! 今度はガッツリ煩悩のみで構成された平和なやつを!」
 建つべきは「世界の守護」を騙って復讐者を排斥するでない、眞に平和なオベリスク。
 鴨を前に垂涎する口元を拭った春一は決然と、再び拳を握り込めて【神槌】(マリョクヲアゲテブツリデナグル)!
 光帯びる拳打を叩き込むと同時、そこから放射状に光劍を突き入れた!
「こちら側に崩れぬよう普通に前へ殴り切ります! ハレルヤ!」
 ガガガァッ! と衝撃に呻くは鴨でなく石柱。
 幹まで衝撃を差し込まれたオベリスクは、春一の眼前で大きく身を反らせた。

「あと少しで倒れます――!」
 最も高い位置、ピラミディオン付近まで至ったエヴァが喚起する。
 高度を上げるほど屍鷲に妨害される危険が高まるが、緻密な通信網で迎撃組と連絡を取りつつ、敵軍の挙動を逐一予測して移動した佳人は、虚空を蹴って巧みに軌道を變えながら鳥瞰を得ていたのだ。
「皆さんが的確な部位に衝撃を入れて下さったお陰で、オベリスクは均衡を崩し始めています。あと一押しですね!」
 南側に受け口、北側に追い口を刻んだ事で、石柱は自然倒壊すら有り得る状態。
 漸う太陽の方向へ傾き始める巨柱を冷靜に観察したエヴァは、あと一撃、自壊を促す決定打があれば――と凛然を萌すと、花脣に秘呪を唱え、次元の疆界より世界樹の枝を呼び出した。
「世界を支える樹、天の光宿りしトネリコの枝よ。ここに顕現し、生命の輝きを示せ!」
 魔力を注がれる程に玲瓏を増す枝は光の槍となり、兩の繊手に握られる。
 而して須臾、生命の輝きに溢れる槍の穂先をオベリスクへと向けたエヴァは、煌々と光れるルーン文字へ、まるで光を結ぶように冱撃を衝き入れた――!
「ディヴィジョンを閉じさせる訳には行きません! 偽りの神たる侵略者を討ち果たすまで!」
 閃くは【世界樹の天槍】(ユグドラシル)。
 晃然と光を湛えた槍撃は凄まじい衝撃を石柱に疾らせ、ぐうらと傾く身を砂地へ押し付けた!

 ――どわーっ! オベリスクが倒れるどーっ!
 ――衝撃に耐えや! どえらい砂煙が來るで!
 ――建てたばっかりなのに壊れるなんて……!

 オベリスクすぐ死ぬ――!
 猛然と吹き付ける砂煙に奴隷達が身を伏せるが、万が一にも破片や瓦礫が此方に來たなら、念動力で安全な所へ投げ入れる用意のある彩花は沈着たるもの。
 奴隷の集団に戻った彼女は、再びポケットに手を滑らせ、
「作業完了。肉体労働の後の甘い物は最高だね」
 破壊部位を絞った事で飴が余ったと、片頬を膨らませるはプリン味。
 続々と合流する復讐者達が成功を祝う傍ら、奴隷達は建てた直後に倒壊したオベリスクにショックを隠しきれぬ樣子だが、これで「命拾いした」とは實生が教えよう。
 彼は砂地に横臥わる巨石を指差して、
「これだけ大きなオベリスクなら、力を維持する爲の代償だって必要だった筈だ」
「だべな……だけん俺らが必死に祈って……。……祈るだけじゃ足らんかった?」
 然う、足りなかったとは冷艶の佳顔が何より物を言う。
 緊張を解かぬ青年の前、ヘジュ・ウルが労働と祈りの他に「何」を求めたか思案した奴隷達は、この世界に生きるからこそ思い描く「一つの解」に至る。
「此處で直ぐに得られる代償として最適なもの。……何だと思う?」
 最適で最上のものは、勿論――。
 自ずと答えを出した石工の頭領が、がっくり肩を落として云った。
「……血じゃ。血にまさる供物は無いけんね……」
「……俺らはここで殺される予定だったんけ……」
 嚴然と聳立するオベリスクを仰いだ時、僅かにも家族を思い描いた者が蹲る。涙する。
 工事を終えれば故郷に帰れると思っていた奴隷達は、神が求めた残酷に打ち拉がれるばかりであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【罪縛りの鎖】LV2が発生!
【活性治癒】LV2が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV2が発生!
【ドレイン】LV2が発生!
【命中アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!

フルルズン・イスルーン
ゴーレムぅ……ゴーレムを崇めよ〜……。
あの飛んでるやつを〜、生贄に捧げるのだ〜。
(目が濁っている。どうやら製作不能期間時に一時的狂気に陥ったらしい)

フェル・イズ・ファードン。
よくも作らせてくれなかったなぁ〜。
生贄になるのはぁ〜……(溜め)お前達だぁ〜!!!

冷気で凍えさせてまともに飛べなくしてやるぅ〜。
落ちてこ〜い、落ちてこ〜い。
ゴーレムのグラップルで抱擁してくれるぅ〜。

あ、他の人に目を向けたなぁ〜。逃げようとしてるなぁ〜(イチャモン)
逃さないぞぅ〜。お前はバックブリーカーの刑だぁ〜!
逃げてない奴もラリアットで破壊だぁ〜!
一つも残さず殲滅だ〜!

(鷲が存在してる間呪々としてたそうな)


新堂・亜唯
……オベリスクの破壊には、もうけっこう人が行っちゃったかな?
……よく考えると、あのヒエログリフけっこう恥ずかしいことを願ったというか……
恥ずかしい絵を描いてしまったというか……。

いや、純粋純粋、純粋な願いですよ。
あれが俺に込められるもっとも純粋な願い。
それはそれとして向こうの現場は皆に任せよう。決して顔を見られたくないわけじゃない。

それはそれとして皆がオベリスクを破壊したら俺はトループス級の相手に回ろうかな!!
決してみんなと顔を合わせるのが恥ずかしいわけでは無い!
【飛翔】の効果を使ってあの空飛ぶマミーに俺の拳【螺月流・電刃】を叩き込んでやるんだ!

うぉお覚悟しろクロノヴェーダ!!!!


ジズ・ユルドゥルム
これはひどい。
決意を念じたはずがほぼ雑念のほうが刻まれているじゃないか。太陽が海鮮鍋から昇ってるぞ。
真面目に祈った仲間もいるというのに…私としたことが…
鱈を忘れるとはっ…鍋と言えば鱈だろうっ…!!(握りこぶし)

さて、私はオベリスク破壊の露払いと行こうか。
貴様らの相手は私だ!

戦闘開始とともに、周囲の奴隷達へ早々にここから離れるよう声をかける。
ここは戦場になる。命が惜しければ逃げるんだ!

敵の急降下は、「砂使い」で砂塵を舞い上げ奴らの視界を遮り、連携攻撃を妨害しよう。
「轍読み」で軌道を見切ってしまえば、地上からでも反撃のしようはある。
私の間合いに降りてきてくれるとは…かえって好都合だ。



 多くの復讐者の祈りを刻んだオベリスクは、混然にして渾沌。
 宛如(まるで)寄せ書きみたいになったオベリスクを仰いだ首魁ヘジュ・ウルは、喫驚を怒氣と變えた。
『だっ誰だ、こんなヒドい事をしたのは! 太陽神アテンの讃歌が滅茶苦茶ではないか! 消せないんだぞう!』
 これ程の雑念を抱けるなど、並大抵の者では無い。
 奴隷の中に危険人物が紛れていると齒切りした猿邪は、上空を帆翔する屍鷲を呼び寄せて犯人を洗い始めた。

「これはひどい」
 混迷を極める絵文字には、ジズ・ユルドゥルム(一つ星・g02140)も呻ろう。
 漆黑に艶めく睫を上に、碑銘を仰いだ麗人は、くつくつと煮立つ鍋から昇る太陽神に何とも言えない気持ちになる。
「決意を念じた筈が、ほぼ雑念が刻まれているじゃないか」
 物の見事に海鮮鍋。
 昇り立つ湯気には磯の馨りさえ漾って。
 ずんぐりしたフォルムがゆかしい土鍋を捉えたジズは、おのず翠眉を寄せた。
「真面目に祈った仲間もいるというのに……私としたことが……」
 雑念が勝った事を恥じようか。
 ――否、
「鱈を忘れるとはっ……鍋と言えば鱈だろうっ……!!」
 ぎゅうっと握り込めた拳を砂地に叩き付ける。鱈を忘れていたなんて鱈に云えようものか!
 奴隷達に紛れつつ己が失念を悔いた佳人は、新宿島に帰ったら必ず美味しい海鮮鍋を作ろうと、力強く立ち上がる。

 雑念を込めるにも正直過ぎたとは、新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)も實感するところ。
 綺麗なお姉さんに優しく膝枕される少年の絵を見た少年は、柔かそうな太腿がいいなぁと思うと同時、絵にこそ現れるリアル味に妙に恥ずかしくなってくる。ヒエログリフなる神聖な文字と同居するには少々後ろめたい。
「……いや、純粋純粋、純粋な願いですよ。あれが俺に込められるもっとも純粋な願い」
 猿邪には不純物と睨められようが、真なる願いである事に偽りは無し。
 よくよく考えると恥ずかしい事を願ったというか、恥ずかしい絵を描いてしまったというか、そこはかとなく気まずいが、魔術儀式は妨害できたので、これで成功なのだ。ヨシ!
 目を游がせたからか、少年は急降下する屍鷲を直ぐにも捉えて、
「犯人捜しに降りて來たみたいだ。俺が相手するよ!」
 オベリスクの破壊は仲間に任せる。適材適所にて、決して顔を見られたくない訳では無い。
 なればと差し出される小型無線機を受け取った亜唯は、音声のみで通信する事に安堵したか分からないが、全力ダッシュで屍鷲の群れに駆け出した。

 一方、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)も願いを石柱に刻み入れた訳だが、碑銘を仰ぐ青藍の佳瞳は光を失い、濁りきっている。
「ノー……ライフ……ノー……ゴーレム……」
 製作不能期間が存在した影響で一時的狂氣に陥ったらしい。かわいそうに。
 禁断症状を現した少女(32)は、虚ろな瞳を空へ注ぐと、素早く滑空する屍鷲の群れに呪いの言葉を浴びせた。
「ゴーレムぅ……ゴーレムを崇めよ〜……あの飛んでるやつを〜、生贄に捧げるのだ〜」
 白雪の繊手に握れるはゴーレムコア。
 複雑なルーンを刻んだゴーレムの中心核に、生來に宿れる氷結魔法を注ぎ込んだフルルズンは、【アイス・ゴーレム】――忽ち氷雪のゴーレムを創造し、周囲一帯に冷氣を放った!
「フェル・イズ・ファードン。よくも作らせてくれなかったなぁ〜。冷気で凍えさせて、まともに飛べなくしてやるぅ〜」
 さぁ復讐劇の始まりだ。
 集団で一氣突撃に掛かる屍鷲を捉えた彼女は、射線を結び合わせるように氷雪を叩き付ける。
 翼が凍て切るほどの吹雪に屍鷲が錐揉まれる中、美し佳脣は低く冷たく囁(つつや)いて、
「生贄になるのはぁ〜……」
 溜める。
 けっこう溜める。
「……お前達だぁ〜!!!」
 くわっと目を見開いた。


 幾人かの復讐者がオベリスクの破壊に回る間、下手人の捜索に掛かる屍鷲を迎撃する。
 通信機を手に情報網を共有した迎撃組は、破壊組が南方へ石柱を倒すと聽き、その援護をする傍ら、北側に密集する奴隷達を守るべく位置に付いた。
「ここは戰場になるが、太陽の方向には行ってはならない。石柱の下敷きになる」
「オベリスク、倒れるん……?」
「でなければ貴女達が生贄にされてしまう」
 命は惜しいだろうと背越しに烱瞳を置き、跪礼の集団から飛び出すジズ。
 露払いを務めようと砂を疾った佳人は、上空からぎょろりと目を光らせる屍鷲を引き付けるや、アカシアの杖を高く掲げ、砂塵の旋風を巻き上げる。工事中、一握の砂も被らずに監視していた連中には似合いの目晦ましだ。
「犯人を捜しているなら手柄を呉れて遣る。貴樣らの相手は私だ!」
 視界を遮られた屍鷲には聲しか届くまい。
 敵群が仲間の位置や地上までの距離感を失う一方、【轍読み】(ファロゥ・オン・サンズ)――周囲の砂と風の流れを鋭く感知したジズは、連中の進路を聢と予測して風の刃を叩き付けた。
「私の間合いに降りてきてくれるとは……かえって好都合だ」
 一翼も逃さぬと嚙み付くは、猛然たる砂嵐。
 鞭撃の如く撓った風刃は、屍鷲の翼を斬り、骨を断ち、醜い肉の残滓を砂地に沈めた。

「うぉお覚悟しろクロノヴェーダ!!!! 俺が目論見を潰してやる!!」
 ジズとは逆方向へ、敵軍の分断に掛かった亜唯は氣合充分、砂の斜面を颯爽と駆ける、駈ける。
 戰場に残留する超常の力を借りて飛躍した少年は、強く拇指球を踏み込むや宙空へ、ブロンドのポニーテールを躍らせながら屍鷲の群れに對峙した。
「多くの復讐者が破壊工作に回ってくれてる! だからオベリスクは心配ない!」
 かの石柱は必ず倒れる。
 故に碑銘は振り返らず、眼前の翼邪のみを見据えた少年は、空中で更に躍進して距離を詰めた。
「俺は俺が預った事をやり通すだけだ!」
 決して!
 みんなと顔を合わせるのが!
 恥ずかしい訳では!! 無い!!!
 空いっぱいに叫んだ少年は、蒼く耀ける闘気を拳に集めるや、【螺月流・電刃】――! 霹靂を迸發(ほとばし)る拳打を閃々炸裂させ、生ける骸を雷鎚に撃ち抜いた!!
『ゲェギャギャギャアッ!!』
『ギャィィイイイ異異ッ!!』
 怖ましい絶叫を上げた屍鷲が四肢を千切って墜落していく。
 この世界の理を逸した死骸は、砂地に叩き付けられるや間もなく狭霧となって消えるのだった。

 ジズが紡ぐ風刃と、亜唯が繰り出す雷刃。
 そしてフルルズンが放つ氷刃によって次々と空から引き摺り降ろされる屍鷲に活路は無い。
「落ちてこ〜い、落ちてこ〜い。ゴーレムのグラップルで抱擁してくれるぅ〜」
 佳人は氷雪のゴーレムを奴隷の前に立たせつつ、己は手をわきわきと、錐揉みして落ちて來る屍鷲を死に迎えた。
『ィィ……ィイイ……ッ!!』
『……ァァアア嗚嗚……ッ!』
 絶対零度の冷気を浴びれば、異形の身とて鈍化は必至。
 そして耐久性のある氷の腕(かたい)に捕われたなら、彼等は身を砕くしかなく――攻防一体のゴーレムを前に攻め口を潰された屍鷲らは、首魁が探し求める下手人を前に続々と絶叫を摘み取られていった。
 一部、上空で劣勢を認めた屍鷲にも逃げ場は無い。
「あ、他の人に目を向けたなぁ〜。逃げようとしてるなぁ〜」
『……ッ、イッッ……ッ!!』
 呪わしい瞳に映ったが最期。
 怖気るほどの冷気に翼を取られた邪は忽ち揚力を失い、つぶらな瞳をしたゴーレムの前に差し出される。
「逃さないぞぅ〜。お前はバックブリーカーの刑だぁ〜! 逃げてない奴もラリアットで破壊だぁ〜!」
 さぁ、審判の刻だ。
 主が命ずる儘に前進を始めたゴーレムは、諸有る命を凍えさせる冷気を放ちながら薙ぎ倒してゴリゴリ、掴んでメリメリ、或いはブンブンと振り回して屍鷲を蹂躙していく。
「一つも残さず殲滅だ〜!」
 其を操る少女(32)は、眼路に邪翼が消え果てるまで凄惨な波動を放ち続けるのだった――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【使い魔使役】がLV2になった!
【腐食】LV1が発生!
【過去視の道案内】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!


『ふなっ? オベリスクが……どわーっ!!』
 愉快な絵文字を刻んだ石柱が、所々爆発しながら崩れる。
 下手人を洗い出すべく降下させた屍鷲らが悉く倒される。
 破壊工作に割ける時間は限られていたが、復讐者はオベリスクの破壊班と屍鷲の迎撃班に分かれて双方を同時に進めた爲、敵に対処する時間を與えず、結果、双方を成功に導いた。
 一方、相手にとっては痛恨の失策。痛烈なダブルパンチ。
『んんンンくくぐぐぐぅ……可怪しい、何處で間違った……!?』
 当初に想像していた景色と全く異なる惨状を目の当たりにした『ヘジュ・ウル』は、愕然と口をパクパクとさせていたが、流石は「知識の神」を名乗る猿邪、これは復讐者の仕業に違いないと思うに至る。
 彼は齒切りしながら言を絞り出し、
『……祈りながら石を切り、研磨し、汗を流して運んだ後は、血を流してエネルギーを高める……排斥力抜群のオベリスクが打ち立てられたものを……豈夫(まさか)排斥しようとした者達に邪魔立てされるとは!! くそぅ、くそぅ、くそぅ!!』
 兩手をブンブン振り回し、地団太を踏む。
 餘りのショックで知性を削がれたか、幼子の樣に悔しがるヘジュ・ウルには、奴隷達も「これが本当の神なのか?」と疑心を抱く者も現われ始める。
 果して奴隷達の瞳には、エンネアドと復讐者、どちらに義が見えよう。
「もう生贄を捧げても無駄な筈……お前の魔術儀式は失敗した」
「さぁ、奴隷達を解放して貰おうか。彼等には帰る故郷がある」
 偽りの神を明らかにすべく、眞実を示すべく、復讐者が首魁に向けて武器を突き付けた。
樹・春一
どこで間違ったかですって?
そんなもの最初からに決まってます!

殴る前に労働者さんたちにひとつ
偽の神の企みは潰えました
信じていたものに裏切られた心中お察しします
しかし信仰を諦めてはいけません!
僕たちがここにきて皆さんをお守りできたのは、真の神のお導きなのですから!
神は見ておられるのです。悪しき者から民を守るために!
祈りましょう信じましょう! この世界に光あれ!

よっしこれで拳の威力アップ間違いなし! いきますよ偽の神よ!
もしも貴方が真の神であるならば、この拳で貴方は砕けるでしょう
もしも貴方が真の神でないならば、この拳は貴方を砕くでしょう
わかりますか! 詰みです!
神の力を宿した拳、味わうがいいのです!


フルルズン・イスルーン
ふぅー(すっきり)。
やはりゴーレムくんは強いのだ!
でもまだまだ作り足りないんだなぁ、これが。
じゃ、締めの一本行ってみよう!

機を狙うよ、プロトゴーレムくん!
あんなでも知識はありそうな相手だし、ゴーレムくんの弱点は付いてきそうだ。
なので、砂使いと拠点構築で多少の防備を備えつつ観察して機を伺うよ。
そして高速詠唱、早業、召喚を準備。
やることはシンプル。
瞬間的にゴーレムくんを錬成して、やられるまでにぶん殴る!

素材は何処にでもあるし、遮るものがなにも無いなら後は速度勝負さ。
たとえ攻撃を受けようとも、ボクの情熱は止まらない。

さあキミ、覚悟はできたかい? ボクはもう済んだよ。


新堂・亜唯
なんか……ちょっと申し訳なかった気もするけど
よく考えたら結局はクロノヴェーダの悪だくみ!
妨害工作に一切の悔いなし、残るはアヴァタール級を倒すだけだ!!
証拠……げふんげふん、オベリスクも砕けたことだしな!!

こうなればもう小細工は不要……。
奴の懐まで駆け込み、拳の間合いへ持ち込み、殴り合うぜ!
この手が届くところまで近づけば、俺の距離だ!

俺の流派、螺月流、最強の拳打……
【螺月流・鋼鉄拳】を叩き込んでやる!

奴のゴッドフィスト……神を気取った拳が勝つか
俺の鍛えに鍛えた鋼鉄の拳が勝つか
勝負の時だぜ、ヘジュ・ウル!!

……そういえば今回ヒエログリフに描いた願いって他の人にも見られてんのかな……(不安)


アルマース・ハーズィン
さて、残ったのはエンネアド、お前だけだな。
実際に働かされて分かったが、労働量に対してどうやら報酬が釣り合ってないようだ。
奴隷たちを働かせた代価、ここで支払ってもらおうか。

攻撃をある程度離れた場所から出来るように、『ヘジュ・ウル』から距離を取るように後退する。

ほどよい場所に着けたら『赤蠍の尾針』を構えて、《精神集中》しながら心臓に狙いを定める。
精神集中が完了したら、【毒性魔術:一射絶命】を使用する。

心臓をしっかり貫ければいいが、貫いていなくても体に当たっているなら毒がある。
体を蝕む毒に苦しんでもらうのも一興だ。
奴隷たちに支払ってない分、味わうといい。


エヴァ・フルトクヴィスト
オベリスクを倒すのに反感もあると思いましたが……。
今回は皆さんの声掛けもあって、
エンネアドの信仰心ややり方に疑問も持たせられたようで存外のいい結果に思えます。
さあ、偽りの知恵の神、お前を倒して奴隷の彼らをあらゆる意味で解放しますよ!

パラドクス通信で綿密にやり取りしつつ、連携しますよ!
相手の殺気を感じたり、斬撃を観察して、未来予測も用いて太刀筋を読み切って。
強運の加護飛翔の速度の緩急やエアライドを使って回避を試みますよ。

そのままカウンター気味にブレイズマイトを託された願いを乗せて、
貫通の一撃を喰らわせます!

奴隷の方々には今回のオベリスク建立の経験は生きる糧となるはず。
ですがまずは故郷に、ですね。


一角・實生
神というが言動はどう見ても猿だな
神を騙り命を軽んじた報いを受けて貰おう

奴隷の人達を瓦礫などの障害物の陰に集め守るよ
後は故郷に帰るだけだ、ここで死なせる訳にはいかない
【モブオーラ】を纏いあの興奮状態のサ……偽の神が俺を認識し辛いよう対策、≪パニッシャー≫で狙撃していくよ
併せて【未来予測】を使いそれでも奴の目が此方へ向く未来を予測したら【飛翔】、積極的に攻撃を加えることで奴隷達から意識を逸らしてみる

堰き止めていた[呪詛]が十分に溜まった時点でパラドクスを発動する
動きが鈍ったところを仲間に攻撃して貰いたい

ふと思い出すのはオベリスクに刻まれた温泉マーク
どんな香りがするのか嗅いでおけば良かったな


辻・彩花
わーお、期待通りのリアクションありがと。
アンタが何企んでもアタシたちにはお見通しってこと。理解した?

知恵を司る神って言うからどんなすごい技使うのかと思ったら、まさかの拳で語る系?
アンタが奴隷たちに知恵を授けて工事を効率化させたって聞いてたけど、今のアンタを見ると信じられなくなってきたよ。

煽るだけ煽ってアタシは相手と大きく間合いを取って逃げに徹するよ。
悔しかったら捕まえてみなよ。ま、頭に血が上ったお猿さんには難しいか。って感じでダメ押しの【挑発】

逃げてばかりだと思って油断してるところを一転【ドラッグ&ドロップ】で【不意打ち】するよ。
こんな単純な手に引っかかるなんて、やっぱりただのお猿さんだね。



 ――本來なら。
 奴隷達が汗を流して建てたオベリスクを破壊した復讐者は怨嗟を浴びたろう。
 然しヘジュ・ウルが血を求めていたと知った奴隷達は、信じていた神を迷い出す。
 胸奥に澱む疑心は、神より命を慈しむ復讐者を見る裡、徐々に顕在化し始めた。

「砂の斜面に身を潜め、衝撃の余波を凌ぐんだ」
 これから戰闘になると告ぐ、冷艶のテノール・バリトン。
 一角・實生(あざよいの鷲・g00995)は周囲に點在する遮蔽物を確認すると、橄欖石の如き烱瞳に奴隷達を映す。
「後は故郷に帰るだけだ、ここで死なせる訳にはいかない」
 無辜の命を護るべく踏み出ると同時、彼等に防衛行動を促す實生。
 辻・彩花(Stray Girl・g03047)はオベリスクが倒壊した方向を指差して、
「あのお猿さんを南側に誘い込んで、極力此處から遠ざけよう」
 と、奴隷達に被害が及ばぬよう提案する姿は、かの神より人々の事を考えてくれているように思う。
 その隣、新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)は偽神を糾彈すべく拳を握り込め、
「皆にはちょっと申し訳なかったけど、全てはヘジュ・ウルの悪巧み!」
「そうなんけ?」
「うん、そう、全部あいつのせい!」
 妨害工作に一切の悔いなし。
 無辜の命を摘まんとした巨悪滅ぶべしと、証拠隠滅……いやオベリスクの粉砕を見た少年は雄心勃勃、斜面に移動し始める奴隷達を守るよう立ち開かる。
 猶も悩める者には、樹・春一(だいたいかみさまのいうとおり・g00319)が寄り添おう。
「信じていたものに裏切られた心中お察しします。しかし信仰を諦めてはいけません!」
 偽神に蹂み躙られた心を慰めるに、彼の言葉は頗る優しく、頗る強い。
 碑銘をミンチにした拳は、力無き者の肩に置かれては温もりを届けて、
「僕たちがここにきて皆さんをお守りできたのは、真の神のお導きなのですから!」
「真の神……」
 偽神に隠されてしまった神こそ信じるべきと、翳陰に収まる彼等の背を押してやる。
 奴隷達の表情に變化が見て取れるとは、エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)が佳瞳を細めて、
「オベリスクを破壊した私達に尠くない反感があると思いましたが……皆さんのお声掛けに助けられ、エンネアドの信仰心ややり方に疑問も持たせられたようで、存外のいい結果に思えます」
 エンネアドが糧とする信仰の減衰は必至――なれば。
 女奴隷らしく砂避けの布を巻いていた可憐は、サッと取り払って瑠璃色の髪を暴くと、正面を向いて言い放った。
「さあ、偽りの知恵の神! お前を倒して、奴隷の彼らを諸有る意味で解放しますよ!」
『解放? 莫迦な、奴等は鎖がれているのが常態よ!』
 猿邪は呵々と嗤って一蹴するが、その大笑とて皆々に聽こえていよう。
 自ら偽神へと貶めているとは気付かぬか、アルマース・ハーズィン(リターナーのガジェッティア・g04123)は「愚かな」と呟くや、よく通る聲で畳み掛け、
「実際に現場で働いてみて分かった事だが、労働量に対して報酬が釣り合ってないようだ。奴隷たちを働かせた代価、ここで支払ってもらおうか」
 と、殺氣溢れる烱眼を突き付ける。
 エヴァの言は齒を剥いて笑い飛ばした猿邪は、二度目は苛立ちを露わに、狭霧と消えゆく死骸を指差して言った。
『笑止! 損を被ったのは我等の方!! あれだけ屍鷲をやっつけておいて何を言う!』
 マミーは多くのリターナーから数体しか覚醒せぬ戰力。
 怒れる指先が骸を数えた後に指差した先、屍鷲という屍鷲を始末したフルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)が、實に晴れ晴れとした笑顔を見せた。
「勿論、ゴーレムくんの立派な姿が見られてスッキリしたけど。まだまだ作り足りないんだなぁ、これが」
『まだーッ!?』
 猿邪の目が飛び出るが、透徹の青瞳に偽りは無し。
 正気を取り戻した佳人は繊手を前に、
「じゃ、締めの一本行ってみよう!」
『ちょ待』
 漲る魔力に花顔が白むと同時、一同が爪先を蹴った。


「ワール・デネク・ムン、生まれよ土なる者」
 秘呪によって砂より生成されるは【プロト・ゴーレム】。
 ぬん、ぬん、ぬんと巨躯を現したゴーレムが、ずん、ずん、ずんと前進すれば、猿邪は我が身が巨影に覆われたその瞬間、慌てて召喚した【偽りの月】の光に黑影を押しやる。
『待っ待っ、早い!』
 ゴーレムが怪腕を振り被る動作を禦して殴打を遁れた首魁は、ホッとしたのも一瞬、巨躯の背より現れた亜唯に目を剥く。
「もう小細工は要らない! 俺の距離に持ち込んで殴るだけだ!」
『ッ、早いと言うておる! 神だって心の準備とかあるじゃろ!』
 敵が後退した瞬間を攻める亜唯も見事だが、体勢を崩した状態から拳を合わせる相手も中々のもの。
 兩者の拳が閃々と結び合うと、その角逐は波動となって放射状に駆け抜ける。
 而して巻き起こる砂塵に隠れて銃爪を引くは實生。
「興奮状態のサ……偽の神が落ち着きを取り戻す前に畳み掛けよう」
『ぬわっ! うおっ!?』
 眞白の体毛に血を滲ませる彈丸は、軌跡や座標を読まれぬよう砂煙の向こうから。
 決して平坦でない地形を活かし潜伏した實生は、不断なる狙撃で奴隷達から意識を逸らせる。
『んぎぎ……四方八方からちょこまかと!』
 遠近を違えた波状攻撃は妙々。
 更に通信機で綿密に情報を共有する復讐者は、巧みな連携で優位を奪おう。
「アタシはお猿さんを揶揄いながら逃げに徹するよ」
「挑発が成功すれば、射線が見切れそうですね。お頼みします!」
 音聲で遣り取りする彩花は敢えて猿邪の視界に入りつつ、一方のエヴァは死角から敵の挙動を具に観察し、読み取った情報を仲間へ伝達していく。
「知恵を司る神って言うから、どんなすごい技使うのかと思ったら。まさかの拳で語る系?」
『ふなっ、ケチをつけるか! 分からず屋を拳で殴って何が悪い!』
「野蛮だね。アンタが授けた知恵の数々が工事を効率化させたって聞いたけど、これじゃ信じられなくなってきたよ」
『カァーッ、これだから若い娘は! 大人には多面性があるんだぞう!』
 猿並みに俊敏だが、感情に左右されがち。
 知性ある故に挑発が効くと、エヴァが竊笑したか解らないが、とまれ彩花の動く先が敵の進路であり射線であると、通信機越しに攻略の鑰を受け取ったアルマースは、巨柱の瓦礫の間を最良の位置とした。
「蠍は昏い蔭に潜むもの。執拗に追いはしないが、取り立てる時は一瞬だ」
 直前まで距離を遠く、一瞬の隙を狙う。
 漸う五感を研ぎ澄ませる佳人の耳には、戰塵に澄み渡る春一の佳聲も聽こえようか、
「神は見ておられるのです。悪しき者から民を守るために! 祈りましょう信じましょう! この世界に光あれ!」
 奴隷にも届けた当の科白は、自身も鼓舞する。
 我が拳が神の加護に包まれるのを実感した春一は、「よっし」と双眸を邪に結ぶや、砂上に横臥る石柱の瓦礫を駆け渡り、【神拳】(シンコウヲアツメテブツリデナグル)ッ! 側面を強襲した!
「もしも貴方が真の神であるならば、この拳で貴方は砕けるでしょう! もしも貴方が真の神でないならば、この拳は貴方を砕くでしょう!」
『んン? それって、ンン? もう一回言ってみ?』
「わかりますか! 詰みです! 神の力を宿した拳、味わうがいいのです!」
『アーッ!』
 炸裂――!
 神の力を籠めた拳は神を砕く拳にて、脇腹にメリ込んだ衝撃が体幹を捉えて吹っ飛ばす!
 体格差を裏切る一撃に躯を浮かせたヘジュ・ウルは、碑銘に叩き付けられると同時、熱を手放し始めた温泉マークに触れて「熱ッつぅ!」と叫ぶのだった。

「まだ熱を持っていたのか」
 スコープ越しにその樣を視た實生が片眉を持ち上げる。
 魔術的儀式により刻まれた絵文字は、倒壊して排斥力を失ったものの、帯びた熱が収まるまでは暫し時間を要するらしく、温泉や海鮮鍋は充分に温かい。
「どんな香りがするのか嗅いでおけば良かった」
 硫黄か鐵か、己は好む匂いだと温泉に想いを馳せる實生。
 一方、同じ光景を視た亜唯は動搖しよう。
「……ヒエログリフに描いた願いって他の人にも見られるんだ……」
 成程と呟きつつ冷や汗が伝う。
 かの「綺麗なお姉さんに膝枕してもらう少年」の絵文字は、幸か不幸か、倒壊の衝撃で砕けてしまったが、あれを奴隷達や同行者に見られたと思うと、ちょっといたたまれない。
 亜唯は咳払いに後悔を押しやると、通信機の回線を開き、
「よし! 敵が怯んだ今がチャンス!」
 巨石運搬時にも音頭を取った大声で、怒涛の連撃を促した。


『ムギャ痛ァ! 熱ぅーっ!』
 碑銘に躯を打ち付けた猿邪が二轉、三轉した隙に接近する蒼白い光、一条。
 熾々と燃ゆる闘志を双眸に湛えた亜唯は、赫灼たる光を帯と引いて肉薄ッ、握り込める拳に我が信念を強く強く籠めると、【螺月流・鋼鉄拳】――己が流派、螺月流、最強の拳打を猿面へ叩き込む!
「神を気取った拳が勝つか! 俺の鍛えに鍛えた鋼鉄の拳が勝つか! 勝負の時だぜ、ヘジュ・ウル!!」
『ッ、ッッ……やらいでかぁ!!』
 辛うじて反應と反射を間に合せた猿邪が迎え撃つが、魂の純度で亜唯には克てまい。
 砲彈の如き超高速の拳打は、何合かの打ち合いの後に邪の拳を凌駕し、脇を開けるや鼻頭を強打した!
「全身全霊で振り抜く――!」
『ンギャギャギャギャーッ!』
 鼻血を噴きながら躯を逸らした瞬間、次手が差し入る。實生だ。
 彼の耳は獣めいた悲鳴を聽きつつ、瞳は瞭かに照準を絞り、脣は淡々と訣別を告げよう。
「神というが言動はどう見ても猿だな。神を騙り命を輕んじた報いを受けて貰おう」
 これまで堰き止めていた咒い『哭戒』を解放した實生は、【グリムアングリフ】――其を銃彈に乗せ一氣放出! 飛翔して射角を變えた彈道をヘジュ・ウルの肩口へ結び、霹靂に貫かれた樣な激痛を以て挙措を鹵掠(うば)った。
『んっ、ぎっ、ぎぃ……っ!』
 更に彈痕から染む呪詛が痛痒を拡げれば、叫ぶ事も儘ならず。
 猿邪は剝いた目をグリグリと、何處から撃たれたか周囲を見渡すが、撃手たる實生も、次撃を継ぐエヴァも捉えられない。
「動きが鈍った。この間隙を繋いで貰いたい」
「お任せ下さい。人々の想いを、託された願いを乗せた一撃を――!」
 誰よりも連携を意識した佳人は機を見るに敏。
 通信機で言を交わしつつ、颯爽と空を翔けたエヴァの向かう先は逆方向の宙空で、開けた視界に戰場全体を映した彼女は、砂の斜面に身を隠す奴隷達の、未來を見つめる眼差しに應えるべく魔導杖を振り被った。
「奴隷の方々にはオベリスク建立の経験は生きる糧となる筈です。ですが先ずは故郷に、ですね!」
 此度の経験は必ずや生きる。
 蓋し命なくして、活かす場所なくしては生きぬ。
 その爲の一振りとなろうと魔力を漲らせた星鏡のヴォルヴァは、【ブレイブスマイト】――やっとの事で放たれた巻物群を躱しつつ、カウンター気味に冱撃を届けた!
『なっ、なんちゅう……ムギャーッ!!』
 魔力漲る書物ごと貫いた衝撃が術者を搏ち据え、悲鳴ごと轉輾(のたう)たせる。
 砂に塗れたヘジュ・ウルがペッペッと砂を吐いて起き上がれば、これを眞正面から見た彩花が悪戯に皓齒を見せて、
「わーお、いい表情。期待通りのリアクションありがと」
『冗談では無い! 神を冒瀆してタダでは済まぬぞう!』
「悔しかったら捕まえてみなよ。ま、頭に血が上ったお猿さんには難しいか」
『頭に血……こちとら血どころか砂まみれじゃー!』
「おっと」
 猿と呼ばれた偽神は、彩花の尻こそ赤くなるまで叩きたかったろう。
 小生意気な少女を摑まえるべく手を伸ばしたヘジュ・ウルは、然しこの瞬間こそ狙い定めていた“赤蠍”に摑まる。
「心臓だ」
『な、っん――!!』
 蠍の名はアルマース。
 瓦礫の間に身を潜めていた麗人は、脇が空いた隙に懐へ飛び込むと、繊手に握れる『赤蠍の尾針』を差し込む。
 極限まで集中力を高めた烱瞳には、肋骨の奥で鼓動する心臓が視えたか、隙間を潜った【毒性魔術:一射絶命】は聢と心臓を刺すと同時、猛毒を流し込んだ。
「苦しみ悶えるも一興。諸々の未払い分を嚙み締めるがいい」
『くッ……をおッッ……!!』
 奴隷達が味わわされた苦心と絶望に較べれば、死すら輕いと、耳元で冷然と囁(つつや)くアルマース。
 ヘジュ・ウルは動きを鈍らせながらも反撃に出るが、蠍に振り下ろす筈の拳は、いや躯ごと不可視の力に運ばれた偽神は、今度こそ彩花を間近に痛罵を浴びた。
「こんな単純な手に引っかかるなんて、やっぱりただのお猿さんだね」
『ッッギャギャーッ!!』
 叫喚を絞らせるは【ドラッグ&ドロップ】ッ!
 グンと引き寄せた躯に華麗なるドロップキックをお見舞いした彩花は、少し浮いたキャップを被り直しながら言う。
「アンタが何企んでもアタシたちにはお見通しってこと。理解した?」
『全て謀略だったと……くそう、くそうっ、何時からだ!? どこで間違った!?』
 工事は全て順調だった! 儀式に問題は無かった!
 我が知謀に過誤は無かったと、猿面に靴跡をつけたヘジュ・ウルが愕然とする中、兩拳を神々しく光らせた春一が勢い良く横っ面を殴り掛かる。それこそボンクラ息子を打ち据える父親より強靭な拳で殴り切る。
「どこで間違ったかですって? そんなもの最初からに決まってます!」
『プゴー!』
「偽の神よ、その悪しき企みごと潰えなさい!」
『ホギャアーッ!!』
 ドスドスドス! と連撃を叩き込む啓蒙の拳に容赦は無し。慈悲も無し。
 知恵の神と名乗りつつ、所詮は猿知恵であったか、排斥すべき復讐者の動きを読み切れなかった猿邪は、失策の代償として顔面に――詰まり急所が集中する部位に集められる閃拳殴打に鈍い呻きを上げるしかない。
 軈てヘジュ・ウルの面貌はパンパンに、また猿の尻の如く赤く張れ上がり、
『……ホァ……ホァァアア……ッッ』
 ヘロヘロと砂上を彷徨う足を留めるは、純朴な瞳をしたゴーレム。
 砂の怪腕をブンブンとさせる巨人を前に、チラと脇見を――先刻に召喚した偽りの月を確かめた猿邪は、魔力が尽きぬ裡は凌げるだろうと股の間を抜けんとするが、駆け出した矢先、奥部で待ち構えていた烱瞳に射られる。
 砂門の番人を務めるはフルルズン。
「さあキミ、覚悟はできたかい? ボクはもう済んだよ」
『ヒッッ……!』
 偽りの月が出ている限り、ゴーレムの行動が制禦される事を予測していた佳人は、接触の瞬間まで砂地に隠していた二体目の超特大ゴーレムくんを起こすと、その巨掌を猿邪へ叩き付けた。
『でかーっ! だがこんなもの、振り切ってやる――!』
「やられるまでにぶん殴る! それっ、いけっ、プロトゴーレムくん!」
 奴隷達がまだ信仰を持っていたなら、或いは振り切れたかもしれぬ。
 然し復讐者の戰いに希望を見出した奴隷達は、彼等の勝利を祈り、結果として支持者を失ったヘジュ・ウルは、砂の巨拳に強かに打たれて躯を吹き飛ばし、己が召喚した月と衝突して爆発した。

『ァァァァアア唖唖アア嗚呼ァァァァ……ッ!!』

 汚い花火となって四散爆裂する、偽の月と偽の神。
 神には有り得ぬ末路を辿った猿邪を憐れむ者は無し、次々と陰から出て來た奴隷達は拳を突き上げ歓喜すると、砂まみれになった復讐者を温かな笑顔で迎える。
 勇者を映して細む彼等の瞳は、鱗が落ちたように透徹と輝いていた――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【建造物分解】LV2が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【操作会得】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV7になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV4になった!
【フィニッシュ】がLV2になった!
【先行率アップ】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2021年11月13日