リプレイ
天夜・理星
…さ、まずは避難と洒落込みますか。
町の住民を魏の将を装って避難させにいくわけなんだけど、今回はちょっと急がないとダメみたいだね?
さて具体的にどうしようか。装い方は演技と臨機応変でどうにかするよ。後、その辺にそれっぽい衣装あるならそれ着たいところなんだけどさ。
で、雷がこの後落ちるぞー、なんていっそ冗談でも聞かせようか?
さしずめアタシは、予報好きのさすらいの民ってね。
民の皆さんに自分の身を守って逃げてもらわなきゃ。
関羽という将はあなたたちが考えているよりもずっと冷酷でね。
ほら、同志たちも生き延びろって言ってる。
命が助かれば、物を食べたり余裕を持ったりできるでしょ?
お願い、この通り。逃げちゃってよ。
天咲・ケイ
やはり、この地でも力を持たない人々が憂き目に
あおうとしているのですね……。
そして、関羽を名乗る将が暴虐を行うというのも
気持ちの良い話ではありませんね……。
義勇軍に協力を要請した後、魏の兵に扮して
住民に避難を訴えます。
「関羽は我々魏の民を人とは思っていません。
このままこの地に留まれば、間違いなく
皆さんが想像している以上の惨劇に見舞われるでしょう。
まさに今は危急存亡の秋に他なりません。
いつの日か戻って来れる事を信じて、
今はこの地を離れましょう」
と説得します。
赤薙・夜明
魏将を装うのは……。私には少し難しいでしょうかね。
世間知らずさや仕草、格好の不自然さは、「異邦の旅商人の子」
とでもしておきましょうか?
商品も仲間も蜀軍に容赦無く奪われ偶々自分は生き延びた
という事にしましょう
【口福の伝道者】で村の人達と中華まんでも食べながら話をします
仲間は財を渡せば赦すという言葉を信じ、腰抜けと嘲笑われて殺されました
私は親が命を捨ててここまで来る事ができました
アレらに通じるのは武のみ
それが無ければ力の無い者や死に掛けの老人であっても殺されるでしょう
土地も焼かれ踏み荒らされる。
逃げれば命だけは残ります。死ぬ事なんて後からでもできます、それなら今は生きる道を探したほうがいいでしょう
獅子城・羽鳥
魏や呉をマシと言うつもりはないが蜀が一番気に入らない
血に飢えた戦闘狂の自称関羽からはさっさと民をトンズラさせて
思いっきりガッカリさせてやるよ
連係・アドリブ歓迎
常に《臨機応変》
トレインで出来る限り荷車や必要物資を持ち込む
予め《偵察・情報収集》で周囲の地形を把握
可能なら蜀軍の位置も見付ける
以前の依頼で入手した魏軍伝令兵の格好で《演技》
治癒活性や持って来た医療品で弱った者の手当て
樊城は渡したが
民を残虐極まりない関羽の前に置き去りにするつもりはないとの仰せだ
許昌までは遠くとも頑張って生き延びろ
少しだが荷車と物資も持って来た
蟲将は我々が食い止めるから
義勇兵は人間の兵だけ最小限の相手をしながら民を守れ
戦乱の世とは言ってもできる限りで丹精された農地はそこそこの実りが望め、これをすべて諦め愛着ある故郷を捨てろとは流石にディアボロスとて言い出しにくかった。目の前の収穫はもとより代々受け継いだ土地も、とくれば文字通り断腸の思いであることだろう。
「樊城は渡したが、このまま民を置き去りにするつもりはないとの仰せだ。しかも暴虐極まりない関羽が迫っているとなればなおさらの事」
魏兵のなりをした獅子城・羽鳥(メタリックトルバドゥール・g02965)の言葉に、この集落の長であり近隣の村々のまとめ役という老人がうなだれた。
「しかし……ご覧の通り、まだ収穫も手つかずの畑ばかり。まして先祖が開墾し代々受け継いできた土地を離れるなど、儂等にはとても」
「まさか関羽が我々魏の民を、同じ人間だと思っているとでも?」
やはり魏兵に扮した天咲・ケイ(人間の破軍拳士・g01192)は、あえてやや突き放すような言い方をする。返答に窮した村長の背を、補佐なのだろうか、ひょろりと背の高い痩せた男が支えるように擦っていた。
「先祖代々のものをこんな理不尽な形で手放し、見知らぬ土地に逃げなければならない無念はわからないでもありません」
命や誇りや、それぞれが大切にしてきたもの。
それを理不尽に、しかも一方的に奪われる痛みはディアボロスならば必ず知っている。
「ですがこのままこの地に留まれば、間違いなく皆さんが想像している以上の惨劇に見舞われるでしょう」
「ほら、同志たちも生き延びろって言ってる」
すでに住人が逃げ出していた空き家から薄汚れた服を拝借し、天夜・理星(復讐の王・g02264)は魏軍に徴用されたばかりの雑兵を装っていた。いかにもそれなりの身分ある魏兵揃いの集団という作戦も考えにはあったが、兵士に農民の苦心がわかってたまるかと頑なになられてしまう気がしたので、あえて雑兵で少し外してみたという流れである。
「命さえ助かれば、逃げた先で生活を繋いだりこれからの事も考えられるでしょ? 今は辛いかもしれないけど、関羽はあなたたちが考えているよりも、もっとずっと冷酷だよ」
「まさか、そんな」
「名ある将軍が無抵抗の民を、まして皆殺しなど……」
史実の関羽なら慈悲を望めたのかもしれないが、残念ながら彼等にとっての『関羽』とはヒトですらない別蟲の、しかもクロノヴェーダだ。目こぼしなど期待できるはずがない。
「ねえお願い、この通り。逃げてくれないかな」
「……アレらに通じるのは武のみです」
赤薙・夜明(白蛇の手の後裔・g00805)は老爺の隣に立つ痩せた男へ、竹皮に包んだ饅頭を差し出しながら呟いた。ふたつに割ればほのかに湯気があがる饅頭は、夜明の左手にあるそれと同一のもの。
「武なき者や力なき者、それがたとえ子供や死にかけの老人であっても容赦しないでしょう。土地も家も、何もかも焼かれ踏み荒らされる……私の仲間も商品もそうなりました。親が私の代わりに命をなげうってくれなかったら、きっと私は今ここにはいない」
旅商人の子というふれこみの夜明は、じっと茜色の瞳で老爺を見上げる。しかし、と痩せた男が反論するように声をあげた。
「軍なら食料はいくらあっても困るものではないはず。幸いこうして食べ物なら多少は……あるいは、あまり多くはないが他の村からも銭を集めて渡せば……!」
「そうして財も何もかもありったけ渡し、腰抜けと嘲笑われて殺されたのが、私の仲間です」
二の句が継げなくなった痩せた男が、途方に暮れたように手の中の饅頭を見つめる。
さらに夜明は内懐からひとつ、ふたつと饅頭を取り出し、薄汚れ、疲れた風体の村人へ渡していく。秋の風に、饅頭のほの暖かさが手の平に嬉しくないはずがなかった。
「今逃げれば命だけは、確実に残ります」
私のように、と夜明は静かにつけ加えた。家族はもちろん仲間の記憶など本当はどこにもないけれど、許昌へ逃げれば命だけは助かるのは本当だった。
「まあ、遠い許昌までの旅が辛くないわけもないが、許昌までの護衛は義勇兵に依頼済だ」
樊城から許昌まではざっと300km。平坦な道が整備されているわけでもなければ、道中に安全で暖かな宿があるわけでもない。半日歩き通して早くて数日、老人の脚に合わせれば少なくとも十日はかかるだろう。しかし秋という季節柄、暑さ寒さはなく、雨さえなければ比較的安定した行程を期待できるはずだ。羽鳥はそこに賭けている。
「少しだが荷車や物資も用意した」
なにぶんパラドクストレインへ羽鳥一人で持ち込める範囲でしかないので量としては微々たるものだが、多少なりとも心遣いや誠意を表す形にはなるはずだ。何より雨よけの類いは、老人や小さな子供にとっては食べ物より彼等の命をつないでくれる可能性すらある。
「やって来る蜀将については必ず我々が食い止めてみせる。約束しよう」
折良く、すでに話をつけてあった義勇兵が三々五々、村の周辺へ到着しつつあった。夜明の、ある意味でのほぼ無限饅頭と、ケイの説得が功を奏した形である。
戦闘狂の関羽から見事民を避難させられれば、蜀軍は冬を控えて糧食どころか一番重要な兵も手に入れられず目算が大きく狂うことだろう。魏や呉のほうがマシと言うつもりもないが、羽鳥としては個人的に蜀が一番気に入らない。関羽を落胆させられるならばそれはそれは胸がすく事だろう。
「まさに今は危急存亡の秋に他なりません」
それに、その名を名乗るものが暴虐を喜ぶという事自体、気持ちのよい話ではないなとケイも思っている。
……憂き目に遭うのはいつだって、常に、力を持たない無辜の人々ばかりだ。その事がとても彼にとってはやるせない。
「畑地を捨てていくのはつらいでしょうが、逆に言えば蜀軍にすべて残す義理もないのです。荷として積める食糧は積んで、許昌までの旅程で食べてしまえばいい。それだけ蜀軍の取り分は少なくなるのですから」
旅の支障になる量はさすがに考え物だが、村人だけならまだしも義勇軍が護衛についてくれる。それはそのまま、ある程度の荷物持ちや車曳き要員が増えるという意味なので、すっかり意気消沈していた村人たちの顔色もだんだん良くなってきた。
「……そうか。それもそうだな。こんな事になった原因の蜀の奴等に、全部くれてやる義理はねえんだ。本当に、その通りだ」
「ああ、まったくだ。家財は無理だが、食糧は持てるだけ持っていっちまおう。あいつらに食わしていいモンはここにはねえんだ!」
そうと決まれば善は急げ、とばかりに村人達が勢いこんで散っていく。白髪の村長はなんとも言えない表情でそれを見送っていたが、深く息をついた後にディアボロス達へ深々と頭を下げた。
「……魏兵の方々。若い者にこの先は任せて、我ら旅に耐えられぬ年寄りは……」
「その先はどうか言わんで下さい、長老。そんなもの誰も、絶対に従いませんよ。皆で行くんです、一人も欠けずに、許昌まで」
鼻をすすりながら、痩せた男が老爺の手を握っている。皺だらけの長の頬に涙が光っていた。
「ええ、そうです。いつの日か戻ってこられる事を信じ、今はこの地を離れましょう」
「景気づけに、雷でも落として蜀軍を牽制しちゃおうか?」
気遣わしげなケイの言葉に何度も頷いていた痩せた男と村長が、理星の台詞に一瞬ぎょっとした顔をする。しかしすぐに冗談と理解し、しきりに目元を拭っていた。
ここに残ることはもちろん一矢報いることなどできずとも、蜀の手に渡るであろうものを減らしてやる事ならできる――その考えに至った村人達の動きは速かった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
蜀最強の将と噂される関羽。今のディアボロスの実力では歯が立たぬと、確かに聞いていた。さりとてその最強の蟲将とやらにこちらの邪魔をされるのも、それはそれで気に食わない。まずは略奪部隊としてやってくる文官の始末を確実に済ませておくべきだろう。
場所は樊城から集落へと続く道沿い。深い藪のなかへ潜んで、略奪部隊が通りがかるのをディアボロス達は待っていた。
さほど長い時間待つまでもなく樊城の方向から、砂埃を蹴立ててやって来る隊列が見えてくる。いかにも最近徴用されたばかりで練度もなにもあったものではない風情の一般兵と、馬に兵車を牽かせている、でっぷりと肥え太った何か。
鎧や武具のたぐいを所持している気配はなく、しかも中々上等そうな柔らか物の着物を着ているので、おそらくかの人影が件の文官だろうとすぐに見当はついた。
藤堂・茶虎
皆が住民を避難させてくれてはいるようじゃが、住民を狙う者どもを捨て置く訳にゃぁ行くまいて、一気に殲滅させてもらうぞ!
…む!?この世界に豚の「くろのべぇた」なぞおったかのう…?まぁよい。
豚にせよ虫にせよ、害あるものは駆除するのがわしらの仕事じゃ。
お主も将なら多少の心得はあるんじゃろ?少し運動に付き合って…む、逃走…鬼ごっこがご所望か?良いじゃろう!
墨獣命画で実体化させた土竜を地中から消しかけつつ追いかけっこに付き合ってやろう、追跡するのはそこそこ得意なんじゃ。
モノを投げつけて来たら薙ぎ払って叩き落してやろうかのう。
さぁ今じゃ墨土竜よ、捕まえるんじゃ!
最後はこの藤の重でその頭を叩き割ってやろうぞ。
獅子城・羽鳥
げえ、関羽(棒読み)
今の俺達では勝てないのは分かってるが足止めに行く皆の邪魔をされないように
強欲豚の始末だ
残留効果活用
連係・アドリブ歓迎
自分のパラドクスと敵の攻撃方法の特性を考慮して戦う
可能なら味方を援護
勝利のためある程度のダメージは仕方ないが仲間を不利にする行動はしない
常に光学迷彩と《臨機応変・一撃離脱・幸運》
〈忍び足〉で静かに背後から近接武器やニードルガンで〈不意打ち・暗殺》
敵の反撃は「逃げる振りして攻撃」とわかってるから深追いせず観察して対処する
陣地作りでの時間稼ぎ等にも注意し、引っ掛からないよう観察
もし《地形の利用》で逆手に取ってやれたら面白いかもな
万一関羽来たら退いて仕切り直し
藤堂・茶虎(妖狐のリアライズペインター・g04826)と獅子城・羽鳥(メタリックトルバドゥール・g02965)は、隊列の接近に備えて息をひそめる。
「とりあえず住民の説得はうまくいったようで何よりじゃ。ディアボロスたる者、無辜の者どもを捨て置く訳にゃあいくまいて」
「しかし問題は関羽、だ。やりあうだけならまだしも、文官や張任を庇われたら後々面倒だろ。できるだけ早めにこっちを、――っと」
馬蹄の音が大きくなり羽鳥は頭の位置を低くした。
「なあ、羽鳥ちゃんよ」
「なかなか攻めた呼び名をありがとう。何か気になる事でも?」
目の前を、わりにゆっくりと兵車が通り過ぎていく。車上の姿を確認した茶虎が小さく唸った。
「この世界に豚のくろのべぇたなぞおったかのう」
「さあ? あれだけ丸いんだ、ダンゴムシの線もあるだろ。あとは色からして頭文字がGのアレか」
「なるほどG……まぁよい。豚にせよ蟲にせよ害あるものは駆除するのがわしらの仕事ゆえな、それがGならなおのこと」
文官当人が聞きつければ間違いなく怒髪天を衝くだろう会話を交わし、二人は身を潜めていた藪から移動をはじめた。忍び足のまま少数での不意討ちに適した箇所までそのまま移動を続ける。
文官の一行は三叉路にさしかかっていた。羽鳥は音もなく文官の背後へ急接近し、つやつやとした黒髪をたくわえる項へ――他の急所は分厚い脂肪に阻まれる気しかしなかった――左手を突き出す。
ぎゃっ、と間抜けな悲鳴と共に黒衣の文官が兵車から転がり落ちた。姿を歪ませて突如襲撃してきた正体不明の刺客に、一般兵が我先にと逃げ出す。
「待て、逃げるな、戻らんか! 儂を置いて逃げ出すとは何事!!」
「蜀には正義も人望もないときた。早々に詰みだな、文官さんとやら」
項を押さえ這いつくばる文官の行く手を阻んだ羽鳥の指先に光る、ニードルガンの先端。文官は襲撃者が羽鳥であったことを理解したようだ。
「なんじゃ情けないのう……お主も将なら多少の心得はあるんじゃろ? 追跡するのはそこそこ得意なんじゃ、わしに少々つきあうがよい!」
「なんと一人と思わせておいて新手とは卑怯な!」
「一人で来たぜなんて一言も言っていないが……?」
「いや待て、待て、話せば分かる! 銭が欲しいならいくらでもやるぞ、ほれ!! だから命だけは取らんでくれ!!」
懐から次々と銅銭をばらまきつつ、黒衣の文官は這ったまま後退った。全く興味のない顔で羽鳥が銅銭を拾い上げようと身を屈める。
「む、逃走……鬼ごっこを所望か? 良いじゃろう!」
待ってましたとばかりに茶虎が大筆を構えたその刹那、黒いボールが跳ね返ったような勢いで文官の肥え太った身体が羽鳥へ突進した。
「――と思わせてその隙にァああががが痛い痛い痛いッッ!!」
「悪いな、偽装工作は織り込み済みだ」
跳ね返ってきた黒いボールの額で血がぴるぴる噴いている。そういや額も多少脂肪薄そうだったな、と羽鳥は他人事のように考えた。
「『我が一筆にて命を吹き込み、想いは現となりて顕現せん』――さぁ今じゃ墨土竜よ、あの脂肪たっぷりなGを捕まえるんじゃ!」
「ヒッ」
砂埃舞う地面へ瞬く間にあざやかな筆致でモグラを描きあげ、茶虎は声高く宣言する。土中から飛び出した巨大な墨色のモグラに、黒衣の文官が身を縮み上がらせた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【動物の友】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
――ふと何か、馥郁とした香りを嗅いだような、饐えた血の臭いが戦場から届いたような、そんな気がした。
酒器を口元へあてたまま、関羽は動かない。赤い目は空気を読んでいるようにも、深く思索を巡らせているようにも見えた。
蜀兵ではない何者かの気配が樊城周辺、正確には略奪隊が向かった村々や集落の付近に点在していることはわかっている。わかっているとは言っても、侵入者なり襲撃者なりの報告が伝令からもたらされたわけでもなければ、火の手があがっただの狼煙があがっただの、明確な兆候があったわけでもない。
ただ、『知った』。そう表現するほかない。
ややしばらくの後、関羽はゆっくりと酒器を脇へ置いた。上腕の下、二対めの腕で青龍偃月刀を掴む。
「面白い」
ただの手練れであるならば捨て置いただろう。
しかし樊城周辺にざわざわと蠢いている多くの気配は、ただの手練れという表現にはおさまらない何かを秘めている。ぶあつい緑色の外殻の下、至高の武を望む血がじりじり湧いてくるのを確かに感じている。
魏将にも呉将にも、ましてや蜀の中にも感じられない異質の武に心がどうしようもなく高揚した。
待っていた。自分はこれを待っていたのだ。長いことずっと埋められていなかった切望を胸に、関羽は立ちあがる。
「面白い……」
確かめなければならない。この異質な、本質から相容れぬ異形のような、それでいてどこか子供のようないとけなさすら感じさせる武の持ち主達を。
その伎倆を確かめなければならない。今すぐに。
アンクレアアニムス・サフィールヴァーグ
ジェネラル級なんて知ったことじゃねぇです
テメェの仇敵とかどうでもいいです
ただ、テメェらの、どこでも召喚して荒らすっていう能力が
上手くいくとか思われることが、気に食わねーんですよ!!
あるじも間違いなくそうおっしゃってるです!!
明らかに被害が拡大していそうなところに突撃し、十字架を投げ飛ばす
群ごと裂く槍とか知ったこっちゃねぇです!!
こちとら群ごと潰す十字架で対抗するです
身を竦ますような気合?知ったことか
その程度で臆するならば復讐なんて考えちゃいねーです
死を恐れる必要のない存在というのの恐ろしさを刻んでやるです
攻撃は受ける前提で突っ切って思いっきり十字架を叩きつけてやるです
アルカロイド・ヴィリディス
あの馬厄介そうですね
特殊な能力を持ってるならばサンプルが欲しいですね
一番激戦区になっていそうなところに関羽は突っ込んでくるでしょうから
というか一番激戦区を作るでしょうから補足は容易でしょう
リスを召喚し、ちょこまかと紛れて闇討ちさせます
小さくて素早い存在をどれだけ正確に取れるかで次回以降の動きに繋げます
あわよくばリス君の必殺「ドラゴンクロー」で赤兎馬の皮膚を少しでも剥げれば
面白い薬とか作れそうなんですよ
関羽のデータは興味ないです
サンプルを取る
ふざけている様に聞こえるかもしれませんが
真の研究者はいつだって命がけですよ
フィードバックするダメージは体躯の倍率的にもヒドそうですが
それでもそれは欲しいです
イシェル・アーレント
まぁ、ディアボロスって存在が怖れずに先陣を切らないと、よくわからない人らが現地民に行き成り説得しに来ても……だよねってことで
やれる範囲なら理不尽じゃないんだ、僕にだって少しぐらい手伝える筈!
アイスエイジブリザードで大地に斑で厚めに凍結させた大地を築き、赤兎馬を使った大地での行動の制限を狙うよ
凍ってない部分は、人間が最低限動けるように工夫するね
何の制限も無く宙に居続けられる筈もないだろうし、少しでもあの機動力を削げたらいいな
オーラで氷を割られようとめげずに作り続けながら後退するよ
あの人?赤兎馬に拘ってるみたいだし、時間は稼げる、よね
っていうか、まだ僕これぐらいしかできないし!凡骨根性舐めんな!!
エレーナ・ニェスチャースチエ
随分と自尊心が高そうな奴だ
見定めてやる
みたいなこと言ってる割には
群れるのがお好きなようで
オレは別に強かねぇから群れさせてもらうけど
攻撃に関しちゃ誰よりも下手糞だ
だけど事守る事に関しちゃある程度はやれる
敵を害するのが攻撃だけとは限らねぇってのを見せてやる
関将百烈撃に合わせて関羽の周りに檻を張る
敵に対して突きを行うという結果を捻じ曲げ
「敵に」対してではなく「自身に」対して行った結果に拒絶する
その拳はアンタに帰すぜ
幾ら盾を折られようと
幾ら地に叩きつけられようと
オレは護る事をやめはしない
誰か一人でも立っているのなら負けじゃない
逃げ帰るならお好きにどうぞ
何度だって、アンタの前に現れてやるぜ
腑抜けの関羽
その襲来は突然だった。時空を歪めでもしたのか、あるいは転移でもしたのか。
轟、と砂煙を巻き上げ赤兎馬が高く嘶く。備え、かつ予測していたとは言え、小柄なアンクレアアニムス・サフィールヴァーグ(信徒兼学徒・g01233)の目に巨躯の猛将はまさしく山のように見えた。
「来やがったか……!」
その威容にむしろエレーナ・ニェスチャースチエ(泡沫の夢幻・g01265)は八重歯を見せて笑う。イシェル・アーレント(凡骨ウィザード・g05042)とアルカロイド・ヴィリディス(不動天・g05040)は息を飲みつつも慎重に距離を測る。
これまでの敵とは根本的に違っている、という情報はあった。有数のクロノ・オブジェクトとして知られる赤兎馬を有し、撃破はおそらく不可能であるということも。
しかし、だからと言ってアンクレアアニムスが脚を止める理由にはなっていなかった。
「……存外、若いものだな」
喉の奥で笑う笑い方をして、関羽はディアボロス達に向き直る。
初めて対峙するジェネラル級クロノヴェーダの威圧感に、イシェルはうすら寒い予感を隠せない。強い、どころの話ではない。別次元だ。それはエレーナやアルカロイドも感じているはずだ。
しかしアンクレアアニムスは自らの得物を手に、傲然と言い放つ。
「ジェネラル級なんて知ったことじゃねぇですし、テメェの仇敵とかもどうでもいいです」
そう、心底どうだっていい。興味がない。
「ただ、テメェらの、――どこにでも現れて荒らすって能力が上手くいくと思われることが、気に食わねーんですよ!!」
肺腑の底からの絶叫に乗せて、巨大な十字架が関羽めがけて振り下ろされる。否、振り回せるとも思えぬ巨大さゆえにむしろ『墜落してくる』と表現すべきか。
轟音と衝撃波が戦場を呑み込み荒れ狂う。手応えはあった。あったと、思う。
しかしそこに残っていたのは、軽く片腕を上げ泰然と赤兎へ跨がる関羽と、その頭上に静止しているアンクレアアニムスの十字架。
「な、――!?」
刹那、十字架へ凄まじいとしか言いようのない反発が返ってきて、アンクレアアニムスは必死に抵抗した。盛大に足元の地面を削りながら持ちこたえ、体勢を立て直そうと目を上げた先。そこにはもう手を伸ばせば触れる距離に緑色の鎧がある。
「なかなか重い。誉めてやろう」
後頭部へつめたい血が凝集する錯覚。防がなければ、という思考が走った一瞬にアンクレアアニムスの体躯は左へ殴り抜かれ吹き飛んでいた。咄嗟に十字架を盾に身を守ったものの、軽々と突き抜けてきた無数の衝撃で意識が希薄になる。
森の木々をなぎ倒してようやく止まったアンクレアアニムスを、関羽は一瞥した。そのまま止めを刺しに行くのではと身構えたアルカロイドへ赤い瞳が向く。
「介抱してやれ。まだ息はある」
残りの三者の相手をするつもりはないと言わんばかりの台詞。
まずはあのクロノ・オブジェクトの脚を止めなければと、イシェルが動いた。
「僕にできるのはこれ位しかないけど、凡骨根性舐めんな!!」
秋深まる時期とは言え、まだ雪が降るような気温にはならない。聞き慣れぬ単語の詠唱に従って急速に下がってゆく気温に、関羽は目を細めた。
異境の魔術に気を取られたものと見たアルカロイドは、自身の背後へ召喚獣を顕現させる。召喚獣とは言っても彼女が操るのは栗鼠だ。小さく敏捷な体躯であるからこそ可能になることもある。彼女は関羽に興味はない。むしろ赤兎馬のほうに興味があった。
素早く動く栗鼠ほどの大きさのものをどれだけ正確に補足できるか、あわよくばその皮膚組織を剥ぎ取れれば面白いことができそうだと思ってすらいる。
「……確かクロノ・オブジェクトって言ってたよな、その馬」
イシェルの意志に従い沸き立った暗雲が、戦場へ風雪を連れてきた。空気が乾燥しやすい大陸では滅多に吹雪になどお目にかかれない。
不意に暴力的な冷気と風に晒された関羽は、目の前へ腕をかざし視界を守った。赤兎馬の足元をぶあつく、白く、魔力の氷が覆う。イシェルの意図を察した関羽が手綱を引いたのと、アルカロイドの栗鼠が赤兎馬に向かって駆け出したのはほぼ同時。
「見定めてやるみたいなこと言ってる割に、兵の群れと馴れ合うのがお好きなようで!」
さらに間髪入れずエレーナが関羽の周囲へ隔絶結界を構築し、畳みかける。
猛将と赤兎馬を閉じ込めるように屹立した結界は一見ただの檻のように思えた。しかしてその檻はただの足止めではなく、何を閉じ込め、何を守るかはエレーナの意志によって決まる。
「御自慢の脚も、動かせなければ意味がないよね?」
いよいよ強まる風雪に紛れて、アルカロイドの栗鼠が赤兎馬の足元へ辿り着いた。ただの野生動物ではないだけにさすがに気配を察したのだろう、関羽が振り返る。
「赤兎を狙わぬ敵が今日まで存在しなかったと思うか?」
濃い赤の目が一瞬細まり、地面へ縫い止められていたはずの赤兎馬の後脚がステップを踏むように栗鼠をしたたかに蹴り飛ばす。
人の身でも馬の蹴りが命に関わることを思えば、栗鼠がどうなったかは何をか況んや、という所だ。むしろアルカロイド自身が蹴りを受けずに済んだことこそを喜ぶべきかもしれない。
「赤兎の脚さえ止めればと考えた者がいなかったとでも?」
何も言えずに立ち尽くす栗鼠の主を見返って、関羽は嘲るどころか、嘆かわしい、と言わんばかりの溜息を吐く。
「儂がここに立てているのは、そのすべてを打ち破った結果である」
そして白雪の幕の中からイシェルをも眺め、首を横に振った。
「実に嘆かわしいぞ。ついに我が仇敵に値する武に出会ったかと思ったが」
なぜか何の根拠もなく、侮っているはず、そう思っていた。
しかし目の前の関羽は、ある意味で策を弄したディアボロス達を心から残念がっているように見える。正面からの純然たるぶつかりあいを望み心待ちにしていた、そんな口調にも聞こえた。だからこそ、イシェルの作り出した氷の足枷を砕く青龍偃月刀のオーラはより苛烈になる。
ぶるりと身を震わせた赤兎馬の足止めはもはや機能していなかった。エレーナの檻が破られればこの猛将の独壇場だろう。
「僕にだって少しぐらい、……時間は稼げる、よね」
風雪の寒さではない、どこか異質なうすら寒さを覚えながら、イシェルは再度赤兎馬の脚を止めるために口早の詠唱を始めた。関羽は「まだ生きている」とは言ったものの、アンクレアアニムスの声が聞こえないことが気になる。少しでも撤退のための時間を稼がなければならないと、そう思った。
「それだけ武がお望みなら、敵を害するのが攻めとは限らねぇってのを見せてやるよ!」
すでに築いた檻を二重三重に重ねて、エレーナは関羽を煽る。概念を捻り、あるいは曲げ、結果を壊すナニか。歪曲された虚空を切り取り隔絶する、盾でもある。
檻を薙ぎ払おうと迸った青龍偃月刀のオーラは、エレーナの意志に従いそのまま関羽へ返った。死をもたらす瘴気をまとい、反射するように自らへ牙を剥いた龍の姿のオーラにさすがの関羽も息を飲む。
「これがオレ達、復讐者――ディアボロスのやり方だ。覚えとけ」
「そうか。なかなかに面白い」
だが、と蜀の猛将は緑色の装甲が瘴気で灼ける煙をたゆたわせつつも笑ったようだった。手綱を引き、それが己の攻撃を反射する檻と知りながら、赤兎馬が一歩を踏み込む勢いをも乗せた青龍偃月刀での突きを放つ。
「これでは仇敵とは呼べぬ」
己が身に絡みつき、喰い破らんとする龍ごとエレーナの檻を突き崩し、関羽は吼えた。赤兎馬の脚は止まらない。凶悪としか表現しようのない突きは檻の主に向かっている。
「ぬるい、ぬるいぞ復讐者とやら! お前達の復讐とは、かようにぬるま湯のごときものか!!」
持てるものをもってこの身を焼き尽くしてみせよと、そう言われているようだった。真っ赤に灼けた鉄柱を身体の中心へねじ込まれた、そんな錯覚と衝撃がエレーナを襲う。青龍偃月刀の石突きで地面へ縫いつけられエレーナは血を吐いた。
「が、ッ……は、」
「命まではとらぬ」
いっそ仏か菩薩か、と思うような声音だった。
猛将はそれきりディアボロス達への興味を失ったように、赤兎馬の手綱を引く。石突きで強打された腹の内部が、どう考えてもまともな形を保っている気がしない。
「オレは……絶対に、やめない」
いくら盾を割られようと、いくら地を舐め這いずり回ったとしても。
誰かに言われてやめられるようなものなら、今自分はここにいない。口の中、鮮血の味がする砂を噛み、エレーナは顔を上げた。
「何度だって……アンタの前に現れてやる
……!!」
「なるほど」
赤兎の首をめぐらせ、関羽はただ快活に笑う。その言葉を待っていたとばかりに。
「その意気や良し。何度でも挑むがよい、復讐者」
苦戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
シルヴァーナ・バルタン
仇敵に値する者
ならば
一番激戦区の戦場に関羽は現れるでござろうな
ならば私も一番激戦区の地点で
乱戦に紛れ込んで交戦するでござる
まずは奴を戦場からすぐには逃がさない事が重要でござる
人込みに紛れ
赤兎馬に一撃を与え
一瞬でも「何か居るのか?」と興味を持たせるでござる
その後に関羽に行う攻撃は
まず奇襲など通らないでござろうな
ならば開き直って
渾身の殺意と威力を込めた【アサシネイトキリング】の一撃を放つでござる
ダメージを通すつもりなのは当然でござるが
それ以上に
自分を殺す意思を持って来た馬鹿が居る
と言う事を刻んでもらうのが重要でござるからな
全員が日和って逃げる様な温い戦場と言う意識だけは
まずは破壊してやるでござる
オーウェン・シュイ
関羽に挑むと聞きまして
単騎で挑むのなら瞬殺される相手でしょうが、こちらには数の利があります
ついでに言えば命を惜しまず戦える身
一矢報いてやりますよ
戦場の仲間と協力して関羽を倒します
ありったけの力をこの刀に込めて、赤兎馬を殴ります
脚の一本も破壊できれば、馬の機動力は落ちましょう
将を射んとすれば…ですね
相対するのは私だけではない
この群れの力があれば、どんな将でも倒す糸口が掴めます
体が動く限り、欠片でも『私』が戦場に残っている限り戦い続けます
勝利は我々がいただきます!
白尾・真狐
【アドリブ歓迎】
関羽……なんか学校の授業でそんな名前のやつがいるって聞いたことがあるような無いような……まあいっか~
でもなんか、めっちゃ強いらしいじゃん?まあ他の強いらしいのと戦ったことないんだけどさー?
ここは一発、ジェネラル級がドンくらいやばいのかを知っとかないとね
というわけで一発ダイブアンドズームで爆撃槌の一撃をお見舞いしときましょー
深追いせずに一撃離脱で、可能なら同じく飛翔の残留効果で飛んでる味方と連携して追い詰めていきますよーっと
どこかに「自分が相手をするべき敵がいる」と感じたのだろうな、とシルヴァーナ・バルタン(宇宙忍者・g01173)は考える。どこかで、非常に大きくそして異様な空気が爆発した、そんな気配があった。
「動いたようでござるな」
「ええ」
まずは関羽を逃がさないことが重要、そう結論しシルヴァーナは気配の方向へ向かう。彼が仇敵に値すると期待した相手がいるとするなら、そこは間違いなく激戦区だ。ならば自分も戦いの激しい場所に向かうのが得策だろう。
一方、できれば戦わずに済ませたかった、と白尾・真狐(まったり狐娘・g05562)は口元に当てた手の下で溜息をついた。しかしあちらがディアボロスの気配を感じ取り姿を現した以上、そのまま放置してはおけない。ここは一度、ジェネラル級クロノヴェーダの力量とやらを知ることのできる機会と捉えるべきか。
「関羽かぁ~……なんか学校でそんな名前のやつがいるって聞いたことがあったような、ないような……」
「三国志の英雄でござるよ」
「ふぅん? そうなんだ?」
あんまりエーユーってのに興味もないし、と真狐は眠たげに伸びをした。
「でもなんか、めっちゃ強いらしいじゃん? まあ他の強いらしいのと戦ったことないんだけどさー?」
「単騎ならまず間違いなく瞬殺される相手でしょうね」
うげえ、と舌を出した真狐にオーウェン・シュイ(風雲月露・g03920)は苦笑する。確かに興味がなければ、関羽もただ大柄で、常に馬に乗っている髭の長い蟲将、というだけなのかもしれない。
「ですがこちらには数の利があります。ついでに言えば命を惜しまずに戦える身でもある」
逆に言えば今の所の強みはこれのみでもあるのだが、それを悲観したところでどうなる話でもなかった。
ほどなく、進む道の先でただならぬ轟音が響き渡る。
「何でござるか――アレは」
遠目にも超常の力、パラドクスによるものだとシルヴァーナは直感した。その相手が文官や張任でなければ相手は間違いなく関羽のはず。すでに勝負は決しているようだった。
何かとてもおそろしいものが近付いてくる、と真狐の中の動物的な勘も警告している。
……アレは危険だ。でも脚が凍りついたように動かせない。
「――」
ジェネラル級クロノヴェーダで強敵という知識も情報もあった。けれどそれは、ただの「知識」でしかなかったのだと思い知った。赤兎馬の一歩一歩が重い地響きを伴っているような錯覚がある。自分が立っている地面が地割れを起こしていないことが妙に不思議だった。
長い髭を撫でて蜀将・関羽はディアボロス達を興味深げに眺める。
「お前達も復讐者とやらか」
も、という言い方にオーウェンは内心歯噛みした。見る限り関羽に大きなダメージはなく、赤兎馬も気力十分といった風情で、先に戦っていたはずのディアボロス達の身が案じられる。
「ではお主が関羽でござるな。なれば、何も言うことはござらん」
関羽が身構える前に、オーウェンはシルヴァーナと入れ替わるように地面を蹴った。腹の底から沸き上がる衝動を、妖刀に篭めて赤兎馬の足元へ叩きつける。
将を射んとすれば、というやつだ。脚の一本でも破壊できれば機動力は落ちる。
「お前も赤兎馬を狙うか……!」
どこか苦りきった声音で関羽が呟くのを、オーウェンはエンジンの轟音の下で聞いた。飛行装置を背負った真狐が真っ青な空から墜落するように突撃してくる。高空から急降下突撃を行っての一撃離脱、航空突撃兵の十八番は関羽にとって完全に未知の戦法のはずだった。
「エーユーだか何だか知らないけど、一発ダイブアンドズームの爆撃槌、お見舞いしますよーっと!!」
真狐が覗く照準器とオーウェンの妖刀の角度は完璧。絶対に逃げられない、その確信があった。
しかし関羽はオーウェンの斬撃を無双の突きによって拳で粉砕し、真狐による直上からの急降下は赤兎馬の跳躍で捌ききってみせた。
「二者同時とは! 考え――」
「否。三者でござるよ」
そして間髪入れず、関羽へ第三のパラドクスが迫る。
「日和って逃げるようなぬるい戦場という認識を、まずは破壊してやるでござる」
赤兎馬の着地を狙った一撃がシルヴァーナの手に硬質な手応えを返してきた。赤兎馬の高い嘶きが聞こえたが無視する。とてもとても赤兎馬への奇襲を許してくれるような生半可な相手ではなかったが、猛将の討ち取りを狙う者がいる、その記憶を刻まんとして馬上の関羽を見上げると。
「そうか」
そこには竿立ちになった赤兎馬と、青龍偃月刀を振り上げた姿。急いで視線を走らせると、深追いはしない主義らしく真狐は完全に折られた主翼を抱えてやや離れた場所に蹲っている。まともに拳を浴びたオーウェンは、と思った瞬間にシルヴァーナの意識は叩き降ろすような激しい衝撃に呑み込まれて消えた。
闇雲に動けば逆に危ないということは理解しているのだろう、真狐は関羽を凝視したまま動かない。体が動く限り、たとえ欠片ひとつでも自身がが戦場に残っている限りは戦い続ける、そう決意していたけれど。
体に力が入らない。痛覚とか触覚とか、すべての感覚がばらばらに切り離されたかのようだ。ぼろぼろになって地面に横たわるオーウェンのそばへ、痛打を受け意識のないシルヴァーナが吹き飛ばされてくる。
「我が仇敵にふさわしき相手はここにもおらなんだか。赤兎を狙うつまらぬ手を弄するなど、興醒めも甚だしい」
「今は及ばずとも」
まともに息ができない。喘ぎながらひどく掠れた声をあげた。
敗者の恨み言と受け取るもいいだろう。それでも、とオーウェンは関羽を睨みあげる。
「勝利は、我々が、いただきます。いずれ」
「――やはり武は、よい」
少年のような明るさで関羽は肩を揺らして笑った。
「その気概を待っていた。余計な口上も賢しらな御託も不要。いくらでも相手になろうぞ」
オーウェンの執念をよしとした関羽は、高い笑い声をあげ赤兎馬を駆り砂煙へ消えていく。吐き気がするほどの痛みが今更襲ってきて、オーウェンの視界を攪拌した。
苦戦🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
水戸・宗一郎
自分から戦場に足を踏み入れるなど柄ではないが
このまま手を拱いて居てはここの住人達がジリ貧で苦しむだけだからな
覚悟を決めよう
個別に数で攻めるだけでは芸が無いからな
ならば相手の興味を引くような威力のある一撃を作り出す方向で
仕掛けてみようではないか
土地の防衛を対価に戦場を一時的に購入し
地脈から力を使って
仲間の攻撃を
【上方修正】で限界ギリギリまで強化しよう
力の制御に集中している以上
他の事に気を散らす事は出来んからな
だがあまり舐めるなよ?
死ぬ程の痛みが来ようが
体を引きちぎられようが
立つ事すらままならぬ状況になろうが
決して強化の手を緩める気は無い
仲間が最後の一撃を叩き込むまでは
決して手を緩めたりはせんぞ
キルシュブリューテ・クォアランティーン
色を、集めているの
関羽の色は、どんな色なのかしら?
先ずは前段階、色を見させて貰いに来たわ
関羽を視界に捉えて
リアライズペイントで関羽を描いて彼と全く同じ技を鏡写しの様に行わせる
恐らくはそんな偽関羽を見て見くびるでしょう
所詮偽物だ、と
それとも怒るかしら?
でも、反応さえしてくれればそれで十分
思考の雑音が、貴方の腕を鈍らせる
その関羽は所詮、絵画でしかない
だからこそ、予想外な攻撃をしてくるのよ?
お腹から槍だって生えてしまうし、腕は鞭のようにしなる
たとえ防いだとしても
受けてさえくれればそれで成功
良いのかしら?
私だけに夢中になって
復讐者はまだ、他にも居るのよ?
彼を嘲嗤うように笑みを浮かべて数を連ねましょう
ペリドット・ノーゲンナルガ
純粋な戦闘狂とやらか?
ボクとしてもちょっと挑んでおきたい相手ではある
いずれもっと上を狙う気ならば、壁の高さくらいは知っておくべきだからね
リアライズペイントで関羽を描く
化け物とはいってもいずれ挑むべき者よりは弱い
描く時間くらいはあるはずだ
いくら歯牙にかけぬといっても一振りはかかるだろう
一撃一撃が化け物というなら
戦場においてその一振りにかかる時間でも時間稼ぎとしての価値はあるだろう
だからこそ意識が持つ限り一撃でも多く貰ってやろう
数で攻めるのが此方の戦術だというのなら駒にでも何でもなってやるよ
鎌夜・神月
蛮勇上等
無茶無謀はお手の物ってな
勝てねぇ事は挑まねぇ理由にならねぇんだよ
宗一郎の支援を俺の体が破産する限度一杯まで借り入れだ
膨大な龍脈の力で魂までガタが来そうだが構わねぇ
この戦場で滅びようが【怨技・惨月】で殺し合う
つっても関羽は強敵だ
早々にボロクソにされて野郎は新しい獲物を探そうとすんだろ
だがな、逃がさねぇよ
仇敵に値しねぇ
そんな腰抜けじみた日和った言い訳で、まだ息の根がある「敵」の前から尻尾を巻くなんてダセェ真似はしねぇよなァ?
さぁ、殺し合おうぜクロノヴェーダ
無数の突きが俺の体を微塵に貫いても止まらねぇ
念動力で死に体を無理くり動かしてでも前へ
俺が消滅する刹那に
その御大層な目玉一つ毟り取ってやる
ただならぬ空気により、樊城周辺に散っているディアボロス達にも関羽が現れたことは察知できた。
純粋な戦闘狂なのだろうか、とペリドット・ノーゲンナルガ(シェイプシフター・g01924)は内心首をかたむける。敵と認めるに値する相手がいれば姿を現す、それはいい。しかし、ただやってきて戦って去っていく、という行動は少々不可解なように思えた。ただしペリドットとしても一度挑んでおきたい相手であることには間違いないので、都合が良いと言えば都合は良い。
現状でもっとも高いと思われる壁の高さは把握しておくべきだ。いずれもっと上を狙うつもりなら。ましてそれが避けられぬ戦いであるならば。
「一撃一撃が化け物、というのは」
得物を握り掲げた腕の感覚がなくなっていく。リアライズペイントで描き出した偽関羽が本物とまったく同じ青龍偃月刀を振り上げているが、そこに無数の龍が絡みつき拮抗状態になっていた。
「噂にたがわぬ、という所のようで」
「それともあなたは所詮は絵、ひいては偽物だと見くびるかしら? それとも怒る?」
ペリドットが描いた偽関羽、その前に本物、そしてその背後にやはり拮抗を保つもう一体の偽関羽がいる。ペリドットとまったく同じ、キルシュブリューテ・クォアランティーン(隔絶の絶界・g00134)が描いた偽関羽。
そこまではまだ良い。さらに鎌夜・神月(慇懃無礼千万・g01128)が加わり三対一、という構図になっている。
「仇敵に値しねぇ、そんな腰抜けじみた日和った言い訳で、まだ息がある敵の前から尻尾を巻くなんてダセェ真似はしねぇよなァ?」
関羽はやや眉間を顰めただろうか――そんな表情に見えた。なにぶん蟲将は人間より顔のパーツが少なかったり別なものに取って代わっていたりするので、多少人間のそれより機微がわかりにくい。
「殺し合おうぜクロノヴェーダ。たとえ勝てねぇとわかっていようが、そんなもの俺がお前に挑まねぇ理由にはならねぇんだよ」
「なるほど」
神月の両拳を受け止めた二対目の両手から、ぎちぎちと不吉な音が聞こえる。籠手に守られているにも関わらず、押し返そうとしている関羽のたなごころは徐々に狭まっていた。押し負ければ両手を握りつぶされる、という未来が形になりかけていることに神月はそれでも、鼻で笑う。
『怨技・惨月』。純然たる力と力のぶつかりあいにこれほど似合いのものはないはずだという、自負めいた確信すらあった。
「真っ向勝負に、二つの似姿。絵を戦わせるとは、かくも面白き力を振るうものよ」
「ええ、しょせん中身のないハリボテ、どこまでも絵でしかない。実体はあるけど結局偽物。当然本物になれもしない」
見くびってくれても怒ってくれてもどちらでも構わない。キルシュブリューテはそろそろ苦しくなってきた息の下、そう言いつのりながら微笑んでみせる。
二人の関羽が関羽を前後で挟み撃ちにした図は傍目にこそなかなかシュールではあった。ところが一方の偽関羽は完全に鏡映しのように行動し、一方はそうはならず意外にややこしい。なおかつキルシュブリューテの狙い自体、関羽が受けてさえくれれば成功、もし拮抗に持ち込めればもっと上等、というものだった。
「それに偽物に夢中になって、良いのかしら? 復讐者は他にもいるのよ」
「復讐者、か」
しかして楽しげに呟き、武神は裂帛の気合とともに偽関羽二体、そして押し切れぬと判断したのだろう神月の両拳をも弾ききる。そしてそこまでがペリドットとキルシュブリューテの誘いだった。
「待たせたな。契約完了だ」
丸眼鏡のサングラスを押し上げ、地面に手の平を当てた姿勢から水戸・宗一郎(金の亡者・g00253)は立ち上がる。吉祥の方角を見定め物事を万事よいように運ぶのは陰陽師の仕事だが、宗一郎にとっての仕事とはそれと少々趣が異なる。ただし金儲け以外に興味のない陰陽師がたどりついた極致は、ある意味言の葉を他より重んじる陰陽師としてとても「らしい」ものだった、とも言えた。
「土地の防衛を対価に『購入』した。この周辺一帯を」
「購入だと?」
意味の通らぬ宗一郎の台詞に、関羽が明らかに訝しんだ。戦いの真っ最中だと言うのに地面に手を当てて何やら始めたので成り行きを見守っていたようだが、地面が割れるなり罠が噴出するなり想像していたのかもしれない。それがまさかの『購入』ときた。
不可解すぎる物言いに関羽は警戒を強めたが、宗一郎の目には今更警戒したところでもう遅い。そしてキルシュブリーテをはじめ仲間が稼いでくれた時間に感謝したい気分だった。
「なあに地脈からちょいと、な。『上方修正』するためには――必要な契約なんだ」
うすく笑いなら両手の土を払った宗一郎に、関羽は警戒を緩めない。しかし宗一郎の口角がつりあがり、二体の偽関羽が先ほどとは雲泥の差の鋭い身のこなしで打ちかかってきた瞬間、息を詰めたようだった。
自分から戦場に足を踏み入れるような柄ではないことなど、自分自身がいちばんよくわかっている。ただし無辜の民が苦しむのを座視するのも、どことなく座りが悪い。
「私も覚悟を決めよう。あまり舐めるなよ?」
土地の防衛を対価に戦場を『購入』し、地脈から力を得て同意した相手に強化を施す。強化とその制御に注力する以上、宗一郎当人は関羽の攻撃に対処するすべが限られる。何があろうが、それでも手を緩めるつもりはなかった。
「摩訶不思議な術まで使うか」
しかも強化ばかりではなく、『上方修正』の真骨頂は同時に敵に対し相手の限界以上の力を流し込み自壊を誘う点にある。ひどく不可解な、腹の内側から暴れながら膨れあがってくるような、戦意とも高揚とも違う剥き出しのナニかに、関羽は低く唸った。
「なるほどその術士が要なのだな」
「それがどうした。宗一郎は殺させねぇしお前は俺を止められねぇ。そして、逃がしもしねぇよ」
赤兎馬が高く嘶き、入れ代わり立ち代わり行く手を阻む偽関羽に苛立った様子を見せる。軽くその腹を蹴りながら宥め、関羽は吼えた。
「ならばこの赤兎と共に止めてみせよ!!」
その場を揺らすような声音にキルシュブリューテは目を瞠る。
かの蜀将の『色』とはどのようなものかと、興味があった。熱すら感じるような大音声にキルシュブリーテは目を瞬かせる。
その瞬間、彼女だけが垣間見た関羽の色とは何色だったのだろう。
「残念だけど、こちとら駒でも何でもやってやる覚悟で来ているんでね」
「その御大層な目玉、ひとつむしり取ってやるよ!」
『上方修正』による能力上昇にものを言わせ、ペリドットと神月は攻勢に移った。内側からの自壊が無視できぬ速さで広がってでもいるのか、関羽の攻撃が微妙に重さが変わっている気がする。
暴れ川を手懐けようとでもしているかのようだ、と宗一郎は微動だにせず目の前の関羽を睨み続けていた。仲間への能力強化と、関羽への力の放出。それは一気に大量の水を流し込まれ蛇のようにあばれまわるホースを、意のままに大人しくさせようとするのに似ている。
鋭く赤兎馬の腹へ蹴りを入れ、関羽は偽関羽二体の同時攻撃を一方は青龍偃月刀で受け、他方は龍相のオーラで薙ぎ払った。ふうふうと荒い息を吐いているが苦しげと言うよりも、今はむしろ興奮しているかのような形相になっている。
「脆いんだよォ!」
息をつかせる事もなくもう一度神月のパラドクスが炸裂した。自らの身体が破綻しかねない限度まで龍脈の力を借り入れ拳を突き出した、その先に待っていたもの。
生木がへし折れるような生々しすぎる音に、ペリドットが口元を押さえた。もはや籠手はまるで役に立っていない。関将百烈撃と真正面からぶつかりあった結果、神月は骨が裂け肉がねじ切れる激痛に呻く。そして関羽の緑色の籠手もまた割れていた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【未来予測】LV1が発生!
【液体錬成】LV2が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【反撃アップ】LV2が発生!
恒星・沙織
相手がジェネラル級の相手だとしても
アンクちゃんから想いを託されました
だから死ぬ気で戦いましょう
共に戦って欲しいと彼女から感じた
絶対に関羽を倒す
その燃えるような強い想いは
紛うことなき本物でしたから
関羽の武器に手が届くまでは
何があっても意識を手放しません
斬撃で吹き飛ばされる訳にはいきません
土壌改良で足場を固めながら機を狙う
砂で止血をし形だけでも繋げることで
僅か間でもこの体は持つはず
赤兎馬の進行方向に立てば
私など避けるに値せず武器で切り伏せるはず
直接体に受けた斬撃へと
砂上楼閣で受け取ったその身を焦がすような想いを
武器を通じて関羽に伝播せます
割に合いませんよ
骨を切らせ、皮一枚
だけど想いは関羽に届かせる
不忍池・蓮児
戦場で暇そうにしている奴と
偉そうにしている奴はどちらも嫌いだ
本人もお望みの様だし、仕掛けるぞ
戦場ならやり合った後の廃棄された武器が死ぬほどあるだろ
それを生かして投擲を繰り返して襲撃する
相手の突きの一発一発でその場凌ぎの武器はへし折られるだろうが
ついでに俺の腕もなくなるかもしれねぇが知らん、投げる、殴る
試しているのがどっちか、というと間違いなく向こうだろうが
その奢りがある内に時間を稼がせてもらうぜ
チェインを繋げるのが俺らのやり方の筈だしな
叩き込む隙を少しでも多く狙っていくモンだろ
俺は挑んだだけで満足とかする気はねーぞ
やるからには徹底的にだ
佐藤・六咲
「キキキキ。大層お強い関羽様はさぞやうんまいんでしょうなぁ」
強い肉=美味い
胸を膨らませ、関羽にお越し頂く為そこらの兵を頂き前菜としやしょう
関羽を見つけたら
全身を武器として使い文字通り喰らい付く
敵が強大
勝ち目がない
死ぬかもしれない
知ったことではない
目前の美味そうな肉に比べたら些事
期待にギラギラと目を輝かせて襲いかかる
まるで虫そのものの様
届かず、倒れ、死のうともそこに一切の後悔もなく
「?つまんなそうですねアンタ。なんか賢しいこと考えててやりてえこと出来てねえ面だ。肉質落ちそうなんでやめて貰っても良いですかね?」
肉はやはり幸福な内に食うのがベスト
真顔で改善を要求する
シュガー・カトレア
美味しい料理があるって聞いたんだけど
本当にあるのかなぁ…?
ショコラさんを自爆させる覚悟でショコラさんにお鍋を持たせて
戦場に全力投球します。
ショコラさんなら飛べるし
最悪自爆してもお鍋のスープさえあれば鯨を出せる。
一撃でも当たればこちらのものなのです。
今日のスープは中華スープなのですよ。
戦場にいる敵を出汁にしてスープを作ります。
美味しい料理って聞いたのに全然違う気がするのです…。
関羽さんって美味しいもの好きなんでしょうかね?
お酒に合いそうなものとかだと辛いものかな?
まぁスープの出汁にされるのは予想外でしょうけど
美味しい料理の為の犠牲、もとい尊い美味しいの為の命
貰っていくのですよ。
傷ついた二対目の両腕を大きく振り、関羽はディアボロス達から一度距離を取ろうとする。しかしそれを許さない人影があった。ディアボロス達が樊城をめぐる三国それぞれの軍に介入した時の置き土産だろうか、折れたものやほぼ使われていないようなものまで多種多様な状態の戟や矛、そして剣に弓。不忍池・蓮児(人間のバウンサー・g00161)が即席の攻撃手段とするためには十分な数が、その場には散り散りに残されている。
突如真横から射られた弓矢は青龍偃月刀の柄で弾き、次いでそのリーチと鎌状の突起で馬上から引きずり落とそうと振るわれた戟を関羽は空いた左腕で殴り抜くように弾いた。続いて現れた新手を確かめんと愛馬を駆った関羽の行く手を阻むように、恒星・沙織(砂に想いをこめて・g01008)が待ち受けている。
ぞわり、と沙織の足元の砂が炎のようにざわめき立った。そして彼女の杖先が示す通り急速に上空へ向かって砂は伸び上がり、関羽めがけ滝じみた勢いよく落ちくだる。
「ぐ、ッ」
ただの砂嵐ではない、直接精神を苛むような、腹の奥底を揺らすような不可思議な衝撃に関羽は短く呻いた。黒く苦く、それでいて喉元が焼けつくかのような熱さが残る。戦意を揺さぶり翻弄してくる強い感情に、関羽はそれ以上赤兎馬を走らせておけなくなったのかなんとか手綱を引いた。
さらに脚だけで赤兎馬を襲撃者たる蓮児から引き離すように動かすと、びょうと一陣の風が吹き抜けて睨みあう形になる。関羽から手出しできぬそのうちに、傷ついたディアボロス達は退却した。
宝珠を飾った長い杖を支える沙織の表情は動かない。それもそうだろう、彼女が関羽に放った『思い』は彼女自身のものではなかった。
「忙しそうなところ悪いが、つきあって貰おうか。やるからには徹底的にと決めてきたんでね」
バールのようなものを右手で弄びながら、蓮児は頬を歪めるようにして笑う。
「関羽様は大層お強いとの噂。さぞやうんまいんでしょうなぁ」
木質のような、金属が軋むような。そんな笑い声まじりの佐藤・六咲(糞虫・g01156)の声に、青龍偃月刀を油断なく構えて関羽は振り返った。蜀将にとっては奇っ怪な、しかしディアボロス達には有用なパラドクスはまだ継続している。
「美味い? 何の事を言っておる」
「そりゃアンタ、関羽様の肉の事でさァ。強い肉は美味い。当然のことだ」
六咲のなんとも独特な理論に関羽は軽く頭を揺らした。もっとも、その『強くて美味い肉』を味わうためにこのあと食らいつこうと本気で考えていることを知ったならば、反応は少し違ったかも知れない。
「美味しい料理があるって聞いてきたのですけど……それってもしかして」
そしてシュガー・カトレア(泡沫の海・g00679)の表情は渋い。満漢全席もかくやという美食を期待したのに、可食部もわからずただ硬そうな蟲将が『美味しい』と言われてもちょっと困る。素揚げか佃煮ならまあわからないでもない。
「でもカニは殻硬くても身は美味しいですし……タラバガニとか実はヤドカリらしいですし蟲将も美味しいのかも……エビみたいに殻からもいい出汁とれるのです……?」
「頼むから蟲将の出汁とか勘弁してくれ」
つい自前の寸胴でスープを取る光景を想像してしまい蓮児は目元を覆った。煮干しは聞くが蟲とか蝗とか聞いたことはないし、だいいち出汁ガラを漉す光景なんて考えたくもない。やめろ蟲将ぶつ切りとか正気度が削れる、と蓮児は気分を変えるようにあえて大きな声を上げた。
「俺は戦場で暇そうにしている奴と偉そうにしている奴が嫌いでな。御本人も戦いをお望みのようだし、満足いくまでやってやろうじゃねーか」
「ええ、死ぬ気で戦いましょう」
三角帽子の鍔をわずかに下げ、沙織はその下でうすく笑む。たとえ相手がすべて未知数のジェネラル級クロノヴェーダだとしても、彼女には焦げつくような強い思いを託された相手がいた。
「キキキ、関羽の旦那ぁ、この憐れな男にひとつナニか恵んでやってくださいよォ」
――そう例えばたった今傷物になったばかりな腕の一本でも。仕掛けるつもり満々な六咲のタイミングを見計らい、シュガーは相棒のショコラに鍋を抱えさせた。
ボロをまとった痩身の猫背が意外な力強さで関羽へ取り付いた。目深く被ったフードのせいで無精髭が目立つ顎の線以外の顔立ちや表情はわかりにくいが、色濃く落ちている暗がりにぎらぎらと黒瞳が輝いている。そしてそのまま、籠手が割れ緑色の外殻がむきだしている腕へ爪を立てた。
まさか言葉通りに喰らいついてくると予測していなかった関羽は、力任せに六咲を振りほどこうとした。馬上で揉み合いがはじまり赤兎馬が竿立ちになる。ほぼ零距離からの百烈撃を浴びても六咲は文字通りに噛みつき齧りつき、離さない。
「ショコラさん行っちゃって下さいなのです!!」
今ならそう簡単に六咲を振りほどくことはできないはず、そう判断しシュガーは相棒のスフィンクスを渾身で投擲した。しかしそれでもショコラを見逃さなかったのはさすがは歴戦の将か。六咲を振り払う動作に乗せて手綱をさばき、鍋を抱えたスフィンクスごと馬体で弾きとばす。
これで先ほどよりかは戦える――そう考えただろう関羽の視界に、忽然と一体の鯨が顕現した。悠々と巨体をくねらせた、うつくしく琥珀色に透き通る鯨を蜀将はどのような思いで見上げただろう。
「スープの出汁にされるのは予想外だったでしょうけど、すべては何よりも尊い『美味しい』の一言のためです。ちなみに」
ぐい、と空気を握りこむようにシュガーは右手を拳にした。
「何を言って――」
「『本日のスープ』は中華スープなのです。お口に合えばよいのですけど」
瞬間、関羽は赤兎馬ごとスープの鯨に呑み込まれる。拳で打つことで流れを押し返すも、痛めつけられた腕のせいでままならない。それどころか青龍偃月刀を握った手から突然がくりと力が抜け、関羽は己が右手を凝視した。
「何と……何だ、これは!」
「何でもねぇよ、俺達にとってはな」
残留効果を重ねるのも奇想天外なパラドクスを放つのも、ディアボロスにおいてはいつもの事。蓮児にとっては何も変わりがない。あるとすれば激闘のすえに腕がなくなるかもしれない、といううす暗い予感があること程度か。
告げられた内容に目元を険しくし、関羽は身構える。
「ここは一念を通させていただきます――託されたので」
宝珠を飾った杖を構え、沙織はその行く手へ立ちはだかった。
力量、ないし伎倆を試しているのはどちらかと訊かれれば間違いなく関羽だろう。しかし蓮児はその認識が関羽にあるうちにはできる限りその場に留めようと果敢に攻撃を打ちこんでいた。一撃でも多く叩き込めばそれだけディアボロスの勝率は上がるし、このたび挑んだだけで満足するつもりもなかった。
「やりあうからにゃ徹底的にって言っただろ。まだまだ逃がさねえぜ」
「逃走?」
その一言に関羽は、明らかに笑った。
「それは心外。心躍る武は存分に味わわなければ、お前達への礼を失するではないか」
返礼はこれからだと言わんばかりの台詞に沙織は唇を引き結ぶ。関羽はおもむろに赤兎馬の首を巡らせ、狙いを沙織に定めたようだ。蓮児がまだ無傷の矛を手にして投げ槍のように投擲し、自らその矛へ追いすがるように関羽へ迫る。
青龍偃月刀を構えた一対目の腕が矛を弾きとばし、そしてバールのようなもので殴りかかった蓮児の腕は返す腕の動きで繰り出してきた突きで相殺された。反発する動きを殺しきれずに蓮児の脚が一歩下がる。得物が蜀将の突きを受けた瞬間、うまくいなしきれなかったのか肩と肘から嫌な音が聞こえていた。
泥状になっていた足元を乾いた砂で覆い、砂使いであり魔女でもある沙織は自ら関羽への距離を詰める。今一度長杖を振るい、『思い』を顕現させた。
ひどく無理な姿勢から身体を捻り、蓮児は反射的に手に触れたものを掴んで地面を蹴る。
沙織の周囲は燃え上がる業火と、あるいはやるせなさ、口惜しさを凝らせたような闇が互いに絡みあうように渦巻いていた。鉄鞭を両手に握った蓮児はすでに数合を関羽と打ち合っており、肉体の限界が近い。すでに見切ったのか、関羽の青龍偃月刀は沙織を守るように屹立した業火と闇を完全に両断した。
――かのように、思われた。
ぎりりと沙織が掲げた杖が高い悲鳴をあげる。関羽に届かせるまでは何があっても、どんな結末になろうとも倒れられないと、そう決めていた。
「待てやァ関羽!!」
渾身で蓮児が突き出した鉄鞭は果たして、関羽の左草摺を砕いていた。さらにその下まで鉄鞭が届いたかを蓮児が確認する術はない。彼が最後に見たものは眼前に迫る関羽の拳であったからだ。
「……皮一枚、というやつです」
掲げていた杖がなすすべもなく一気に肩口まで押し下げられる。焼けた鉄じみた熱い感触がぞぶりと生々しい感触を伴って左肩へ食い込み、沙織はたまらず膝をついた。それでも顔は俯かず目も閉じられない。馬上の関羽だけを見ていた。
沙織の血に染まった砂が爆ぜ、関羽の視界を奪う。爆風にかすむ視界の向こう、杖にのせた『思い』が確かにその先へ届いたことを見届けて沙織は意識を手放した。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【土壌改良】LV1が発生!
【強運の加護】LV2が発生!
【断末魔動画】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV3になった!
【ドレイン】がLV2になった!
天夜・理星
やあどうも文官の皆さん。
こっちはこっちで、粛々と世界を救うお仕事、進めさせてもらうよ。
民たちに手は出させない…これ以上犠牲が出ちゃったら、アタシ悲しいしさ。
ところで、アタシって有言実行するタイプなんだよね。
だから降らせるんだよ、雷を、このパラドクスでさ。
具体的には彼らが陣地を作る素振りを見せたら、聖剣を解放するって感じで。
聖剣を空に掲げて、雲すら突き破る程の雷を集団に落としてさ。
そこからはダッシュと突撃で、速攻重視で敵たちを貫いていくよ。
あ、そういえばモノとか投げるのかこの集団。ならそれもダッシュで軌道から外れて避けていこう。
ここを凌げばあとは張任だけだね。
みんな気張りなよ、無理はせずにね!!
赤薙・夜明
関羽の方は他の方々にお任せして。
此方は文官を止めますか
古代中国では文官も武官と兼任する事があったそうですね。
【滅菌漂白】で煙幕を張り【撹乱】します
一気に攻め込み【避難勧告】怯んだ相手はとっとと逃げてもらいましょう
相手の士気をさげます
何を積んで何を投げてくるかはわかりませんが滅菌漂白は洗浄です。
害意を持つモノは【解体】して【浄化】しますね!
巨大な体躯のモグラに散々追い回されどつき回され、肥え太った文官が這々の体で膝をつく。折角の柔らか物の着物も泥まみれのかぎ裂きだらけ、せっかく油で梳かして結った髪も見事なくらいにザンバラのぼろぼろだった。
「やあどうも文官さん」
「ヒッッッ」
さすがにちょっと可哀相な気もしないでもない――と、天夜・理星(復讐の王・g02264)は文官の前へ屈みこむ。一方赤薙・夜明(白蛇の手の後裔・g00805)は墨色のモグラが何故か達成感を漂わせながらかき消えていくのを見送りつつ、次の一手を思案していた。
関羽は他のディアボロスに任せてある。現時点では討伐不可能とされている強敵だが、退き際さえ見誤らなければ大事には至らないだろうと彼女は考えていた。一部の例外を除けば落命レベルの痛手を被ったとしても、ディアボロスは新宿島へ流され還りつくことができる。強敵と矛を交わしてみたい気持ちもわからなくもないが、やはりそこまでの無茶はしないで欲しいし、血は流さないに越したこともない。そう思う。
はあ、と物憂げに理星は溜息をつき、今や泥団子と化した文官に切々と語った。
「悪いけどあの人たちに手は出させない……これ以上犠牲が出ちゃったら、アタシ悲しいしさ。悪く思わないでね」
「ええいよってたかって小癪な真似をっ! 小金稼ぎのまたとない機会を潰してくれおって!!」
……古代中国では文官が武官も兼任していた事例があったらしいが、果たしてこの文官はどうなのだろう、と夜明は他人事のように考える。それにしても仮にも国の高官が村を襲って金をまきあげるつもり、と堂々宣言するのはどうなのか。いやクロノヴェーダなのでそういうものと言われればそういうものかもしれないが。
「え、何、よってたかってってそっちが言うの?」
「悪いか! この世知辛い世の中では銭がなければ明日すら生きていけぬ!」
「しかも小金稼ぎって認めちゃうんだ……まあいいけど」
つい半目になってしまった理星が立ち上がる。これがいわゆる汚物は消毒だ、というやつだろうかと思いながら身構えた。
「こっちはこっちで粛々と世界を救うお仕事、進めさせてもらうから。そっちもそのつもりで」
「世界を救う? 何の話だ」
「まあこの話はもういいから。ところでアタシって有言実行するタイプなんだよね」
そう言いながら理星がいとも意味ありげに聖剣の柄を握ると、文官は泣きながら縮み上がった。
「有言実行ってそういうー!!?! ええい、もうこれ以上なりふり構っていられん!!」
それまでの惨状はどこへやら、文官は突如がばりと跳ね起きて猛然と走り出した。すわ逃走か、と思いきや自然に土塁のように土が盛り上がっている所へ走り込まんとする。
好機と見て取った理星が、今度こそ聖剣を抜き放ち空へ掲げた。一条の光が空へ吸い込まれ、数瞬ののち轟雷なって轟き、文官が潜り込んだ陣地へ無数の稲妻が落ちくだる。いぎゃっ、と轟音の向こうから文官の悲鳴が聞こえた。
害意を持つものは片っ端からバラして浄化しなければ。
「何を積んで何を投げてくるかなんてわかりませんが、ともかく――滅菌漂白は洗浄です」
夜明の手の中へ忽然と現れた発煙手榴弾を、彼女は渾身の力で陣地へ投げ込んだ。土塁のむこうでもうもうと煙が立ちこめている。相手からの反撃を警戒していたものの、数度稲妻が落ちたあとは何の反応も物音もなく静まりかえっていた。
用心しつつ夜明が土塁の向こうを覗きこむとそこにはもう誰もいない。理星が小さく吐息をつくのが聞こえた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【避難勧告】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【アクティベイト】LV1が発生!
天夜・理星
…何やってんのさマジで。
目離すとみんなすーぐ無茶をして。
もーしょうがないんだからー…。
【マイフレンズ】!!
あいつに一回挨拶しようか!!!
これ以上仲間が傷付くのを見てるだけとか、そんなのはもう飽きた!!
目的は撃破じゃなく挨拶。
致命的な隙を晒すのは避け、みんなを頼る。
つまりは真剣に一撃だけを当てることを重視しての、絆の真剣勝負!
斬撃に両断の技能を意識して、みんなが作ってくれるその隙を狙って斬りに行く。
空中を駆けられたら精神集中に徹して回避を試みる!
一度でも攻撃を当てることが出来れば、一撃離脱だ!
…こっちも死ねないんだよ。
みんなの助けで、復讐を何度でも果たすってんだから。
血なら幾らでも流せるんだ!!
眉立・人鳥
アドリブ・絡み歓迎
【マイフレンズ】
どうやらうちの王様も頼る事を覚えたらしい
だったら応えるのが仲間ってもんだ
相手は究極の武、生ける伝説、おまけに油断も無しときた
だが、タダで負けるつもりはねェ
一瞬、すらも難しいかもしれねぇがやるぜ
目が潰れようが、脳が焼けようが関係ねェ、全力だ
その程度の覚悟は安いもんだろ
奴にも損傷はある、今、一番脆い部分を剛体悪魔の眼をもって暴く
仲間との連携、未来予測をはじめとした効果、技能アイテム
現時点の俺の全てで楔を打つ
無理なら光使いでマーク、何でもいい、何としても理星へ伝える
俺が望むのはこれから先、未来へ繋げる一撃だ
俺がどうなろうが前だけ見てろ、それも王様の役目だろ
疾れ、理星
アイネリス・レナリィ
【マイフレンズ】
アドリブ絡み歓迎
様子見すら危険だとは思うけれど…ええ、お供しますよ。
伝説にご挨拶と行きましょうか。
さて…やるからには仕留めるつもりで行かないとね。
【飛翔】して【空中戦】を挑む。
空中と地上、遠と近を切り替えながら仕掛けていくわ。
【連続魔法】による【逆巻く流星】で飽和攻撃、味方が下がれば前に、こちらが下がるときは牽制を交えて極力隙を見せないように。
一撃を通すなら、これだけでは届かないかしら?リズムを変える必要がありそう。
分散と集中、理星さんの攻撃に合わせてこちらも攻撃。もちろん布石だから、防いでもらうように仕掛けないと。
道は作ります。目が覚める良いのをお願いしますよ、理星さん。
七社・小瑠璃
流石武神関羽の名を持つジェネラル、無傷では無いとは言え圧倒的じゃな。
正直わしには立ち向かう術が思いつかん。
が、友が戦に赴くのだ。座して見ている訳にはいかぬ。
理星殿は無理をするなと言っておったが……すまんな、それは無理じゃ。
【マイフレンズ】
先に征くぞ、理星殿。一声かけて先行。
馬など狙わぬ、正面から真っ正直に関羽に突撃する。
おぬし確か「命まではとらぬ」とか言っておったな?
それは良い……おかげで、死ぬ気ならおぬしを一発殴れる!
致命傷だけは体をずらして避けつつ接近、密着、至近距離から陰陽符を叩きつける、狙いは青龍偃月刀を持つ小手!
薩摩の兵で血迷うておらんもんは一人もおらん!わしごと爆ぜよ!式神ぃ!
黒城・廉也
【マイフレンズ】
アドリブ連携歓迎
あれが武神…凄い気迫を感じるッス
でも、ディアボロスとしてここで挨拶しとかないとッスね!
【未来予測】に【軽業】で敵の攻撃の一子挙動に注目
仲間と連携しながら攻撃の被害を最小限に抑え魔眼発動に備える
【未来予測】で攻撃と共に読みたいのは関羽の視線ッス
一秒でも先を読み、機会を見つけたなら俺の武器や全力魔法等の技能をフル活用
俺の持つ魔力を視線に込め、魔眼を発動し動きを封じる
強敵でも、強敵だからこそ…動きを一瞬でも止めることができれば、それが千載一遇のチャンスになる…だって俺たち一人で戦ってるわけじゃないんスから
俺の全てで天夜さんへ託す一筋の光を作って見せる
天夜さん!今ッス!
百鬼・運命
【マイフレンズ】で参加
「関羽の圧倒的ステータスに現状の復讐者では対抗できない以上、人海戦術で疲弊させる以外に倒す手段はない…が、疲弊を加速させる事は可能だな」
アイテムの呪符に関羽の闘気を撥ね返して攻撃するようにした呪詛返しを仕込み、パーティーメンバーの他、知り合いや他の参加者にもできるだけ渡しておく。
ようはロストエナジーという毒で削り倒す戦術
「御守り代わりになればいいのだが…」
無茶して突っ込んだり一撃離脱するのもいるので、自動反撃で関羽の攻撃を鈍らせる狙いもあり。
符を配り終えた後は狙撃で仲間を援護
「さて三国志演義では、関羽はこの地で毒と狙撃の手傷を負ったが…後は天夜さん頼むよ」
アドリブ絡み歓迎
トバリ・ナイトライト
【マイフレンズ】
あれが関羽……噂に名高い相手なだけあります
今戦うのは無謀のようにも思えますが……しかし、やる価値はあるでしょう
理星さんの呼びかけで集まった皆さんで、関羽に挨拶です
「関羽殿、お初にお目にかかります」
隠しナイフを抜いて不意打ちを仕掛けます
簡単に不意などは突けないでしょうが、靴にも隠しているナイフでの一撃や、
武器が弾かれたのならばそれを念動力で操作するなど、
なんとか相手の虚を突けるよう努めます
しかし一番の作戦は、一緒に戦う仲間との連携です
無双の猛将といえど、息を合わせれば僅かな隙程度は生まれてくれるはず!
その為にも、捨て身になっても構わない覚悟で!
その隙さえ作れば……
「理星さん!」
霧宮・悠希
【マイフレンズ】
今は倒せない敵……だからこそ挑む価値がある、かな。
行きましょう。そして――ディアボロスの狩りを見せてやる。
※戦闘中は必要なこと以外ほぼ喋らなくなります
脅威そのものの関羽と戦うことになるかどうかはともかく、やるべきことをやるのみ。
つまり、復讐だ。狩りの時間だ。
残留効果を利用しつつ戦場を駆け回って「狩人」の機関砲とミサイルランチャーを撃ち込み、時には「執行人」で斬り込む。
『オーバーライト』……ディアボロスとしての衝動、念動力、異能の力で周囲に干渉し現実を改変していきながら。
無敵の存在なんかありはしない……! 不滅の存在なんかありはしない!
ディアボロスがお前達を必ず狩り尽くしてやる!
クロスタール・ガイゼル
僕は正直、勝算のない戦いが苦手です。
――でもね、戦友が往くと言うのなら。
それを見届けない訳にはいかないのですよ。
参りましょう。巨大な敵が僕達を成長させるというものです。
【マイフレンズ】
「クロスタール・ガイゼル――推して参ります」
自身の口にCrazy Biteを携え、両目を見開く。
使うパラは【精神衝撃】
関羽を【観察】し、一挙手一投足を逃さず【看破】を試みる。
その全ては【未来予測】の為に。
単調な攻撃が通るなんて思えない。
ではどうするか?
己が身を盾とし天夜さんが繰り出す挨拶の為に、道を。
【未来予測】を使い僅か一秒の、関羽の隙を天夜さんに託す。
茨の道であろうと僕達は、共に。
後は、頼みましたよ。
ゼット・ノアール
【マイブレンズ】で参加
「敵性存在、【関羽】…。未知数か。俺からはまだ計り知れないか」
だが旅団の要請に応えないでは傭兵は名乗れん。死力を尽くす。
何人かは突撃を強行するようだ。
ならば援護の為、Mk-49機関銃で弾幕を張って敵の動きを少しでも抑制する。
今の一騎当千の如き猛攻は疲弊させる事でしか鈍らせる可能性を見いだせん。
百鬼のように他にも分析している者もいるだろうが俺はそう看破した。
大きな動きの後を狙い、ゼットン、ミサイルも発射して大怪我を負っている者を鎖で引き寄せ関羽から離れるサポートをしよう。
天夜の攻勢が成功すれば良し。
出来ず共、最後には俺も自身を弾丸と化し、突撃する。
※アドリブ大歓迎です
――僕は正直、勝算のない戦いが苦手です。
でもね、たとえ負け戦でも戦友が死地へ赴くと言うのなら。
それを見届けない訳にはいかないのですよ――
風が遠い音を届けたような気がして、クロスタール・ガイゼル(良い狐・g01139)は銀の毛並みの耳をそよがせた。
何が、とでもなく、ただ待っていたものが「来た」なと知る。近付く気配に小さく喉が鳴った。
休耕地なのかそれとも単純に耕す主がいなくなったのか、木立で仕切られてはいるが野草が生い茂るままにされた畑の真ん中に彼等はいる。現段階で知られている限りでは初めてのジェネラル級との接触ゆえに、関羽そのものの情報も乏しい。それでは有利不利の判断材料にはならない。
しゃらら、と枯れ色になりつつある草を薙いで風が渡る。大柄な蜀将が赤兎馬とともに木立のほうから歩み寄ってきたのはそんな時だった。
「お前達も『復讐者』のようだな」
硬い蹄が地面を蹴る音に霧宮・悠希(小さき復讐者・g02383)は顔を上げる。今は倒せないとされる敵がもう目の前で、悠然と手綱を握っていた。先程まで繰り広げていた激しい戦いの残滓を漂わせている。
ふと風を読むように関羽は風下へ視線をやり、軽く首を振った。その視線のずっと先、離れた場所で雷鳴が轟いたことを悠希は知っている。それを呼び寄せることでクロノヴェーダへ鉄槌をくだした人物のことも。
「銭にしか興味のなかった彼奴まで討たれたか。まったく、――退屈が逃げるようだ」
丸眼鏡のブリッジを押し上げ、百鬼・運命(人間のカースブレイド・g03078)は無言のまま符を抜いた。
関羽との圧倒的力量差を鑑みれば、現状の復讐者では対抗できないと考えるのが道理だ。それは事前にこのたびの略奪阻止作戦の説明を受けた段階でわかっていたし、実状とも合致する。ならばどう戦うべきか。
見上げる威容に黒城・廉也(後輩サキュバス・g02175)は息を飲む。
これが武の神と呼ばれる所以か。気迫と呼ばれるものが具体的にどんなものかは知っていたし、そのつもりでもいた。しかし目の前の関羽のそれは、これまでのどれとも違う圧と重さを感じている。
「すごい気迫を感じるッス……」
「まあ、『今は』倒せない敵だそうですが」
悠希は黒光りする銃火器――と思しき複合兵器の銃身を引き起こして、そのまま流れるように狙いをつけた。
「だからこそ今ここで挑む価値がある、という事でしょう」
「確かに。ディアボロスとして関羽にはここで挨拶しとかないとッス」
年若さを感じさせない、ひどく怜悧な声音に廉也は軽く笑う。見る限り、まだ自分の半分ほどしか生きていないように見える悠希に遅れを取ってはならない、そんな気分だった。
……さて演義では、確か関羽はこの地で毒と狙撃の手傷を負ったのだったか、と運命は考えを巡らせる。
すでに場の仕込みは終えていた。自身へ向けられた呪いや怨念、ひいては敵意悪意のたぐいを反射するための符は、この休耕地にばらまき済み。関羽との圧倒的力量差を多少なりともひっくり返すためには一対多数の人海戦術で疲弊させる、もとい消耗戦で倒すほかに手段はない。致命的な一撃を放つことはできないが、スリップダメージを与え消耗を加速させることなら運命にも可能だ。この符で構築された結界さえあれば――運命が立てた作戦はそのようなものだった。
「ここで演義再演が成るかどうかは、俺達次第ってわけだ」
掌の符をぐいと握り、運命は休耕地へ張り巡らせた術式を起動する。空気の変調を悟ったのか関羽は赤兎馬の腹へ蹴りを入れ、微動だにしないクロスタールへ突進した。
栄えある一番手に選ばれた、と考えるべきか。喉の奥で低く笑う笑い方をして金瞳が見開かれる。
「クロスタール・ガイゼル――推して参ります」
「どこからでも来るがいい、復讐者! その武を披露してみせよ!!」
関羽の咆哮、そして悠希の『狩人』から銃弾が吐き出される射撃音が重なった。ぶわりと煙幕のように広がる無数の龍のオーラに弾丸ははじかれ、あるいは相殺されながら休耕地の地面を削り千々に葉を散らせる。
「それでは」
肩幅ほどで足をひらき不動のまま、クロスタールは迫る関羽を凝視していた。濁流が川を下っているような、雷が轟いているような。爛々と目を輝かせ突進してくる赤兎馬と関羽をまっすぐに見据えたまま、クロスタールは低く呟いた。
「精神力(ちから)比べと参りましょう」
瞬間、クロスタールを蹴り飛ばしてそのまま進むかと思われた赤兎馬はすんでの所で急カーブし彼を避けた。遅れて、どうっ、と鈍い衝撃のようなものが関羽を中心に広がる。否、広がった、と思われた。
長い髭を揺らして関羽はクロスタールを振り返る。
「……ふ、はは、」
驚きと歓喜と衝撃がないまぜになった、何とも言えない表情で関羽は肩を揺らした。
「妖術のたぐいか。いや、それすらもお前達復讐者の武の有り様か。気迫とも覇気とも違う……」
「お褒めにあずかり光栄です」
金瞳はいつのまにか隠れておりにこりとクロスタールの表情が和らぐ。この盤上へ絶え間なく布石を打ち続けているのは、なにも運命だけに限らないのだ。
「流石は武神の名を持つジェネラル級、すでに無傷ではないとは言え圧倒的じゃな」
「あれが関羽……噂に名高い相手なだけあります」
打ち捨てられて久しい、今にも崩れおちそうな農具小屋の陰へ潜み、七社・小瑠璃(よどみに浮ぶうたかた・g00166)とトバリ・ナイトライト(透明の黄昏・g00064)は様子を伺う。連続した重い地響きと土の柱があがり悠希の重火器が炸裂したのがわかったが、ここからでは舞い上がった土煙の向こうになるため状況はほぼほぼ不明だ。しかし爆音の隙間に廉也の声も届いており、先陣が一瞬で殲滅されたわけでもないことは想像できる。
「今戦うは無謀のようにも思えますが、しかし、やる価値はあるでしょう」
「敵性存在、【関羽】……未知数、か。俺からはまだ計り知れないが」
そしてその予測を裏付けるように、ゼット・ノアール(群青の傭兵・g01952)の眼には関羽以外の存在が見えていた。すぐに龍のオーラが二度、土煙を払いのけて荒れ狂う。それはそのまま、悠希の火器の次に誰かがパラドクスを行使したという意味に他ならない。
「正直なところ、様子見すら危険だとは思うけれど、――」
びきり、と渇ききった耕地を両断する亀裂が入りアイネリス・レナリィ(黒鉄の魔女・g01781)の足裏にまで届いた。慌てふためくことなく静かに足を除け、気が気じゃない、といった様子で戦場を見守る背後の人影へほんのわずかに口角を上げてみせる。
「もちろんお供しますよ、我等が王。伝説へ粋なご挨拶といきましょう」
「……みんなちょっと目離したスキに何やってんのさマジで……」
行くのだろう、と当然のことを当然のように言いきったアイネリスへ盛大な溜息をついた天夜・理星(復讐の王・g02264)を、にやにやと大層人の悪い笑い方で眉立・人鳥(鳥好き兄ちゃん・g02854)が眺めている。
「人聞きの悪い事言うなあ。皆わかってんだぜ、うちの王様が何を考えているのか」
「……アタシちゃんと仕事してきたんだけど。民はきっちり逃がしたし、ついさっきもなんかGっぽいの倒したし」
「そりゃあ、なあ。有言実行の王だからな。それで? 一人で張任んとこ乗り込むつもりだったとか?」
違うよなあ、と煽ってくる人鳥から顔をそらしてむくれた理星の視線の先、トバリが口元に当てた手の下で声を殺して笑っていた。
自分が有言実行を是としている、なんてこの場の誰もが知っている。真っ先に無辜の民を救わんと魏兵を装ったし、逃がした農民たちを襲う可能性もあった文官もちゃんと排除した。そしてあとは張任を倒せば、別にそれで良かったのだ、本当は。それで。
それさえ達成できれば逃がした民はもう許昌まで義勇軍に守られて、きっと無事に。
「もー……本当に、しょうがないんだからー……」
でももっと深い所では全然、なにも、赦せていなかった。
傷つけるものは赦せない。別に張任を排除できればそれで良い、とものわかりの良いつもりをしていただけだ。
「みんなすーぐ無茶して、怪我して」
赦せることなどできやしないのに、民だろうがどこかの兵だろうがディアボロスだろうが、際限なく傷つけるだろうものを見ないふりをしていただけだ。復讐の王なのに。
「……でもそういうのはもう飽きた。あいつに皆で一回挨拶してこようか」
けれどこれ以上誰かが傷つくのを見ているだけが王だと言うのなら、そんな王冠はいらない。
「道は作ります。目が覚める良いのをお願いしますよ、理星さん」
「やっとうちの王様も誰かを頼ることを覚えたらしいな」
「うるさい」
人鳥へ舌を出して、理星はその場の面々を見回す。
「助けを借りるからには全力で行くよ、ジェネラル級相手に死なない程度の血で済むなら安いってもんだし。でも皆で還るんだからね、無理だけは絶対禁止」
理星自身も、血を流さずに、などと甘い夢をうたうつもりは毛頭なかった。傷までならいい、けれど命までは決して渡さない。その上で挑む。挑んでみせる。
「当然じゃ。薩摩の兵に安心安全策をと言われても困るでな」
「薩摩基準で言われるとさすがにちょっとそれは……」
「まあおぬしの心からの望み、確かに聞き届けた。力を尽くすとしよう」
もとより小瑠璃はできない事はしない、果たせない約束はしない主義だ。理星の覚悟を聞く前にこの場へ来ていた時点で、するべき事はわきまえていたし理解してもいる。
偽らざる所を言えば、実はジェネラル級に立ち向かう術など思いついていない。しかし友と定めたものが戦うと言うなら座視しているわけにはいかない。結局、何もかも泰然と見守れる神の座にはまだまだ遠いという事かもしれないなと思う。
「そういうわけで先に征くぞ、理星殿」
「私もそろそろ。ゼットさん、先陣の援護を頼めるかしら」
「心得た。弾幕ならば如何様にも」
我が意を得たりとばかりにアイネリスと共にゼットが背の高い藪に紛れて移動をはじめた。気を付けて、と短く声をかけてきた理星に小瑠璃は軽く笑って、ゼット達とは別の方向から戦場に向かう。ゆえに、ひどく小さく漏れた呟きは誰にも聞こえなかった。薩摩の兵を自負する者に、血迷っていない者など存在しないのだから。
「無茶はするなと言っておったが……」
……すまんな、理星殿。それは無理な話じゃ。
頭上を旋回する黒鉄の魔女を、関羽は常に視界にいれている。枯れ草が茂っていたはずの休耕地は見渡す限りまさしく焼け野原と化していた。
挨拶と表現はしたがアイネリスにそのつもりはない。字義通りの挨拶をしたいならむしろ折り目正しく訪れていればそのまま何事も還されるのではと、そんな気がしていた。だからこそ現実的には届かないと承知しつつも関羽を本気で仕留めるつもりでいる。
徐々に増えていくディアボロスに、流石の関羽も対処に終われているようだった。悠希が機関砲とミサイルランチャーを乱射し上空からはアイネリスが遠近織り交ぜた波状攻撃を仕掛け、距離を取ろうとする所へ追撃しようにもゼットが煙幕を張ることで断念せざるを得なくなる。さらに運命がばらまいた符により、割れた器から水が一滴一滴漏れ出していくように、無尽蔵とも錯覚しそうな関羽の体力を削っていた。
そしてそれでも押し切れる余裕をなおも感じられないのは、やはりジェネラル級ということなのだろうとアイネリスは紫色の目を細める。宙空からの自由落下、慣性を乗せて叩きつける槍刃を果たして躱しきれるか。
ゼットの煙幕を蹴破るように【執行人】を手に斬りかかった悠希を、蜀将は青龍偃月刀で受け止めオーラで弾く。一対目の腕で得物を支えたまま廉也の闘気を赤兎馬の脚でいなし、ゼットの腕から射出されたミサイルキャノンは傷ついた二対目の腕を振り回して相殺した。
「――『波打ち、追い立てろ』」
そして頭上からアイネリスの槍刃が迫る。墜落、とも思えるような速度で突っ込んでくる魔女に関羽は唸る。避けるか、それとも受けるか。あるいは弾くか。その一瞬一瞬が絶え間なく押し寄せることで蜀将は薄皮を剥いでいくように、僅かずつ消耗していく。
直上から真っ直ぐに撃ちこまれてきた刃のおおかたを関羽はからくも弾ききった。しかしほぼ同時にクロスタールが狙い澄ました精神衝撃を放ったため、緑の外殻へいくつか縦の裂け目が入る。
入った、と確信したアイネリスはそのまま焼け野原へ急降下し転がりこむように着地した。ぎらりと光る赤い目と視線が合い、背すじが凍る。
跳ね起きて再度槍刃を手の平へ並べ、動物的な勘で前へ突き出した。そのまま上半身がどこかへ持って行かれるような衝撃が襲いかかる。アイネリスが薄目をあけると槍刃と青龍偃月刀が噛み合い火花を散らしていた。凄まじい力で上から押しきられそうになり膝が砕ける。
「! アイ――」
「全エネルギー収束」
思わず身を乗り出した廉也の傍ら、ゼットは全身のエネルギーを球体のかたちに凝集させた。最大出力のエネルギー体は一瞬でゴルフボール大から大人ひとかかえほどにもなり、さらに急速に膨れあがる。ゼットの意図を察したのだろう、廉也が飛び出して一直線に走った。
ぐいとアイネリスの眉間へ青龍偃月刀が迫った瞬間、関羽は至近距離の爆発で赤兎馬ごと吹き飛ばされた。一緒に爆風にかっ浚われそうになりながら、廉也はアイネリスを捕まえ自らの体重で重石をかける。
しかし横殴りの爆風を受けたにもかかわらず関羽は見事としか言い様のない手綱さばきで体勢を立て直すと、姿勢を低くしたままの廉也へ何のてらいもない上段からの一撃を見舞った。
横からの爆風に耐える廉也がすぐには動けぬであろうこと、ましてアイネリスを吹き飛ばされぬよう庇っている状況では躱すのは至難を極めるであろうことを知ったうえでの攻撃だった。
ふ、となぜか廉也の頬が緩む。必殺の斬撃を振り下ろしたはずの関羽に向かって彼はその瞬間、確かに笑ってみせた。
「『堕ちろ』」
「――!」
持てる力のありったけを魔眼へ注ぎ込み廉也は関羽の意志をねじ伏せる。
『逸らすことは許されない』。『この目を凝視する以外の行動は許されていない』。そんな一方的な意志を叩きつけ、従え、と確信に満ちて蜀将の視線を捕らえていた。今頃彼の頭蓋を割っているはずだった青龍偃月刀は、廉也の頭上数センチの位置からぴくりとも動かない。否、動かせなかった。
「何!? 何だ、これは!」
「何でもない」
見る限りで想像する年齢からはあまりにも怜悧すぎる悠希の声音に関羽は肩を震わせる。
どろどろと変な脂汗がふきだして廉也のこめかみを、頬を伝って顎まで届いた。目の奥へ焼けた鉄串でも突っ込まれたかと思うような熱と激痛。魔眼に全ての能力を注ぎ込んだ代償がそれだった。何か目の前が白く荒い、おかしな形状の粒子でかすみ、焦点がずれる。視線が合わなくなりかけて廉也は懸命に己を叱咤した。
「これが『復讐』だ。復讐者の狩りだ」
せめて悠希が関羽を射程に捉えるまでは。
もはや避けようもないと思える距離からの一斉射撃を仕掛けるべく、悠希は大口径の機関砲を構えた。廉也の『夢魔の魔眼』に乗じたそれを、関羽は視線でとらえることができない。明らかに殺気を浴びているにもかかわらず動こうとしない乗り手に焦れたのか赤兎馬が叫ぶように嘶き歯を剥くが、それでも。
「無敵の存在なんかありはしない……!」
獣じみた咆哮をあげて蜀将は身悶える。動けずにいる関羽へ吸い込まれていくいくつもの銃弾、そしてそこまでが廉也の限界だった。
赤く輝く視線の束縛を断ち切り、無理矢理身体を捻る。盾にするように高速で振り回された青龍偃月刀から無数の火花が飛んだ。魔眼の影響で十全に動くことはできなかったらしく関羽の四肢へ点々と銃創が穿たれる。
「中々やるではないか」
身を傷つけられた事に怒るどころか、むしろ歓迎せんばかりに関羽は太い声をあげた。
「追い詰められるほどに磨かれ研がれ、高みを望む。……いや、まだ足らぬ」
なぜ彼が猛将と、蜀最強の将と呼ばれ、そしてジェネラル級という地位にあるのかを、真に理解したような思いで廉也は喉を鳴らす。傷つきもはや十全ではないのに、むしろ関羽はさらに至高の武を望み要求してみせた。
「これでは足らぬぞ、復讐者。さらに愉しもうではないか!」
それはなぜか公平で公正なジャッジを心から喜ぶ、競技者の声音によく似ている。得体の知れない危険を感じたのか、藪の陰から飛び出しかけた理星を人鳥がすんでの所で制止した。何故だと食ってかかる理星の口元も押さえこみ、堪えろと言い聞かせる。
「全力で行くんだろうが、焦るんじゃない」
噛みつくように言い募りかけた理星の眼に、蜀将を挟んでゼットが見えた。
焼け焦げた藪を荒々しく蹴散らし、ゼットが手持ちの銃を乱射する。おそらく関羽の目には、万策尽きた兵の絶望にも似て見えたかもしれない。それでも武人と目した相手は侮らない主義なのだろう、油断なく身構えてゼットを迎え撃つ。
しかし、機関銃に弾を吐かせながらゼットは利き手の仕込み鎖を操った。関羽の足元を縫うようにして死力を尽くした廉也とアイネリスを回収する。
ゼットからも理星が戦いの行方を注視しているのが見え、黒と金の視線が交錯した。機械と金属に置き換えられ、サイボーグ化された肢体に人の体温と呼べるようなものは、体熱と言えるものはない。しかしゼットはもはや存在しえないはずの血の熱さを指先に感じていた。
「おぬし確か『命まではとらぬ』と言っておったな?」
廉也とアイネリスを抱えたゼットが距離を取るのと入れ替わりに、運命と小瑠璃が前に出る。心得たタイミングで運命が援護に入り、関羽はその場へ足止めされるを得ない。
「いかにも。礼を失するゆえ手心は加えぬが、敗れた者の首を刈る気はない」
「そうか。それは良い心がけじゃ」
陰陽符を握る小瑠璃はすぐに術者と判断できるが運命は予測できる選択肢が多すぎると考えたのだろう、蜀将は悠希の銃口と運命を警戒しつつ赤兎馬の首を巡らせた。
少なくとも今ここで誰かが倒れたとしても首を落とされる心配だけはない。自分も含めて。小瑠璃にはそれで十分だった。そして人鳥にも。
「いいか」
呼吸を計りながら人鳥は努めて低く呟いた。
「俺がどうなろうが前だけ見てろ」
「――は?」
「それが王様の役目ってもんだ」
何が、と理星が問い返す前に人鳥は彼女の前から消えていた。
相手は考えうるかぎり究極の武を誇る生ける伝説、しかも慢心どころか油断もなし。勝算などないことは最初からわかっている。それでも人鳥はタダで負けをくれてやる気はなかった。
脳が灼き切れようが、眼が潰れようが関係ない。その程度の覚悟で済むならむしろ安いと笑えすらする。
関羽の損傷の最たる部分を、そう、これまで相対したすべての復讐者たちが積み上げた今もっとも脆い部分を暴くのだ。そのためには何が必要か。
アイネリスと廉也を降ろしたゼットの背後に、ピンポン球ほどの大きさのエネルギー体が今一度膨れあがる。爆発的な勢いで膨張するその気配に覚えがあったのだろう、関羽がゼットを振り返り、その表情が一変した。
――実に良い眺めだ、とゼットは他人事のように考える。そして長い長い、しかし一瞬にも思える攻防が始まった。
「いいか関羽!」
先ほどよりかは小さな爆発と言っても、数瞬関羽の体勢を崩すには必要十分。赤兎馬の足元がぐらついた隙に悠希の複合兵器が火を吹いた。猛然と龍のオーラが悠希に向かって身を伸ばし無数の顎を開く。
「どれだけ事実をねじ曲げようと、たとえ焼却しようとも不滅の存在なんかありはしない! ディアボロスがお前達を必ず狩り尽くしてやる!!」
悠希が伏せていた藪が根こそぎ薙ぎ払われていくのを横目に、小瑠璃は真正面から関羽へ挑んだ。
命までは取られない。ということは、死ぬ気なら関羽を一発殴れるということだ。『攻性式神結界』として構築された範囲が光を帯びる。
「中途半端は性に合わぬ! わしごと爆ぜよ、式神!!」
「血迷ったか
……!!」
思わず唸った関羽の呟きは、ある意味的を射ていた。大振りの青龍偃月刀の一撃で弾こうとするも、その動作は二重三重にも打たれてきた復讐者たちの布石の前に封じられる。ひとつは運命の呪符で、ふたつはクロスタールの『精神衝撃』で。
小瑠璃を蹂躙するはずだった龍のオーラが突如向きを変えて己が身に牙を剥き、そして直接脳髄の中心を打ちすえてくる尋常ではなく衝撃に関羽は呻く。これまでも復讐者たちの反撃は何度も受けてきたが、運命のそれは本質が違っているようにも思えた。
反撃を受けるたびに、思い過ごしでもなんでもなく、枯れ葉が積み重なるように消耗の度合いが増していく。腕が重くなり相手の動きへの反応が僅かずつだが遅れてきていた。まさしく毒が回るかのように。
「何と周到な……!」
乗り手の異常に赤兎馬が嘶き竿立ちになった。そのまま主にかわり一度敵陣と距離をとって仕切り直そうとでもしたのか赤兎馬は駆け出し、駆け出そうとして、果たせなかった。
「――お忙しい所を失礼」
そしてついに、最後の最後に残していた布石が打たれる。
「お初にお目もじ仕ります。関羽殿」
焼け野原をあざやかに軽やかに駆け抜け、トバリは激しい攻防で荒れきった地面を蹴った。赤兎馬の前脚が虚しく空を掻く。
隠しナイフを抜き不意討ちを仕掛けてきたトバリに、関羽はからくも身を捩り初撃を避けた。しかしトバリも青龍偃月刀の柄を鉄棒がわりに、くるりと素早く一転する。
そのまま回し蹴りの要領で、靴へ仕込んだナイフで関羽の側頭部を狙った。
しかしトバリはこの蹴りが入るとは最初から思っていない。
この作戦の要は共に戦う仲間との連携である。たとえ古今無双の猛将と言っても、ディアボロスが息を合わせ機会を伺い続ければわずかなチャンスは生まれてくれるはずと確信していた。そのためには己が身を捨てても構わない、そう思っている。
だからこそトバリの不意討ちは、この勝負の最後の布石たりえたのだ。
「ぐ、ぅっ」
蹴りを避けようと大きく関羽の上体が傾ぐ。隠しナイフの切っ先は長い髭のひとすじをかすめ空を切った。身にこそ入りはしなかったが、美髯公とも呼ばれる関羽の象徴のひとつへ爪痕を残せたことについ頬をゆるめる。
「まだまだ!!」
視界の端に人鳥をとらえ、あと一撃、とトバリは胸の中で呟く。あと一撃入れる時間を――と、そう考えた瞬間に青龍偃月刀が大きく反転したのが見えた。棒術に似た体捌きで、遠心力をそのまま柄へ乗せトバリを打ちすえる。
まともに柄の一撃を脇へ食らい吹き飛ばされる寸前、彼は全身で叫んだ。
「理星さん!!」
名を呼ぶいくつもの声に導かれるように、理星は走った。
青龍偃月刀を振り抜いた姿勢のままだった関羽の脇腹、鎧に似た外殻に守られていないそこは面白いくらいにがら空きで、人鳥は迷いなく拳を振るう。確かな手応えと、初めて聞く苦悶の叫びが人鳥の耳をつんざいた。
反射結界への負荷が限界に達したのか、運命の符が端からみるみる焦げついていく。関羽の攻撃をこれ以上反射させらないと悟り、運命は符を捨てた。ギミックリボルバーを抜き、落下してくるトバリの援護に入る。
「『刻は昨夜、――』」
吸い寄せられるようだ、と理星は考えた。
主の苦痛のままに荒れ狂う龍のオーラに人鳥が薙ぎ倒され、赤兎馬が狂ったようにステップを踏む。青龍偃月刀の切っ先で胴を両断されそうだと思ったものの、半分どうでもよかった。
この確信が逃げないうちに斬らなければ。そう思った。
「『剣を取れ!!』」
人鳥が拳で抉った関羽の脇腹。そこに、ぼやりと北極星のように目印が光っている。
そここそが、目指すべき一点であると示すように。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【書物解読】がLV2になった!
【飛翔】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
【未来予測】がLV2になった!
【建造物分解】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV7になった!
【能力値アップ】LV2が発生!
【ドレイン】がLV3になった!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【アクティベイト】がLV2になった!
あの、馥郁とした香りを嗅いだかのような瞬間の悦びを覚えている。
これまで対峙したどの武とも違っている異質の武。妖術じみたそれを操るもの、くろがねの弾と火を吐く実に重そうな筒や尋常でない大きさの武器を取り回すもの、かと思いきや翼もないのに宙を舞い駆けるものまで多種多様だ。もちろん剣や槍や、己が拳に命を賭けるものも多い。
二対目の腕の下、放置しておけはしまい、と思える傷が口を開けている。してやられたという苦い思いと、こうでなくては、という歓喜が半々だ。
幼児の手をひねるのはたやすい。しかし育つ芽を摘んだところで面白くはないし何も変わらない。
ようやく、これまでの戦いへ一石を投じるような武の数々に出会えたのだ。これに心躍らせずに、何に心動かされようか。
その愉しみの前には、だらだらと絶えず下肢を濡らすほどの傷も悪くないとすら思う。
恐らくこれは目印ということなのだろう、関羽は傷の上にぼうっと灯る光を愛でるように眺めた。目印、それも良い。そこを狙う復讐者の策とはどんなものか、想像するだに楽しく、矛を交わす瞬間を思えば苦痛など些事であるとしか考えられない。
傷を与えたことを良しとしたようで復讐者達は一度撤退していった。しかし彼等とは別の気配がまだ残っている。
そうだ、行かなければならない。
彼等の伎倆はここまでなのか。あるいは、この首を刈るほどのものなのか。
自分はそれを確かめなければならない。
湯上・雪華
【奴崎組】
今回は関羽、強敵だからこそ、ボクも燃え上がる。
心強い仲間となら恐れること無し
なにより、この伽藍を満たす闘争を!
組の皆と連携して攻撃
妖刀に暗器一式、片割れのお人形、使えるものは何でも使って地上からの撹乱を。何分、ボクの売りは素早さなので!
唯妃さんの罠に関羽が掛かったなら畳み掛けて、難しそうなら援護を。
確実に落とし穴に落とすことが肝要、なんてね。
この身、蝕む呪詛を、捨て身の一撃でもって関羽に刻めれば良し。
出来なくとも、もう一度を望んでいる仲間の為に、道を開く手伝いになれば充分。
痛みも技もなにもかも喰らい尽くす。故に渇望抱く伽藍なり。
アドリブ、絡み等完全受け入れ
大怪我描写等大歓迎
染・四四乃
◉アドリブ・絡み歓迎
【奴崎組】にて参加
「奴崎組、染・四四乃。只今参上だ!圧倒的強者ならばいっそう刃を交える価値あり。首は取れずとも、せめて腕置いてけぇ!!」
【行動】
・奴崎組の仲間達と連携を取る。
・【斬撃】のフェイントを見せつつ、『桜花一刀流・千日手』に【殺気】を込めて存在感を見せつける事で武器または腕で防御せざるを得ない状況を作って連撃を斬り放つ。
・回避だけでしのげないのは明らかなので、【斬撃】で受け流したりして関羽の攻撃を僅かでも直撃しないよう試みる。
・離脱は思考に無い、刀が振れるまで私は闘い続ける。
「なんてったって私は負けるのが大嫌いだからな!!」
リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】
とにかく攻めて、アタッカーとしての我を印象付けようぞ!
唯妃の罠が牙を剥いた時、我は真っ先に衝角にて突撃。
落とし穴に落とされんとする者が警戒するのは頭上からの追撃。
関羽ならば虚を突かれたとしても、無理矢理にでも対空を仕掛けてくるであろう。
それで良い。
そこに我がいる。
読み通り無数の龍に挑むただ一匹の龍がいる。
ああ、我は本気で奴を貫かんとするぞ。
全身を貫かれようと前進しこの角を届かせる。
だがまあ我が奴の意識を、迎撃を一身に引き受けられたのなら。
読み通りだからこそ、我が全力の突撃が策の本命だと思い込むなら。
――ぬしがきめろ、王(理星)よ。
蜘蛛(唯妃)めが身を賭したのだ。
我とて命を賭けようぞ。
白木・鞠花
●アドリブ・絡み歓迎
【奴崎組】
「あのね、決めたのですよ、変わるって」
「だからせめて、変わるなら、護るのですよ、皆を、歴史を」
組の皆と連携を重視して、攻撃
関羽が攻撃してきたのならその手段を叩き落すまで
愛用の金属バットで虫退治してやるですよ!?
なるべく唯妃さんの傍で、彼女へと注意が向くように立ち回り
パラドクスで、唯妃さんの罠へ絶対に叩き落してみせる
罠に嵌ったらそれがチャンス!
「理星さんの花道!繋げるですよう!!」
まだ動けるのなら理星さんが受けそうな攻撃を叩き落せるなら叩き落す
この花道は閉ざさせない!!
戦えば戦う程戦意は高揚して己の怪我も気にせずに殴りつけるですよ!!
※怪我重傷等ダメージ厭いません。
ここへ至るまでに果たして幾人のディアボロス達を越えてきたのか。もはや十全と言えないにも関わらず、相手取ることそのものが難しい相手だったかを理解できる。
馬上の相手という事もあるだろう。白木・鞠花(月夜の白菊・g04664)にとり、ジェネラル級クロノヴェーダとは何か、それを納得せざるを得ない威容であったとも思う。
「なるほどね。強敵と言われるのも納得できる」
片割れと自ら表現する操り人形を従え、湯上・雪華(悪食も美食への道・g02423)はうすく笑った。強敵だからこそ興は乗る。そこに気心知れた面々がいるなら何を恐れることがあるだろうか、とすら思うのだ。
そしてこの裡の伽藍を埋める闘争とくれば、どうして忌避できよう。まして相手が関羽ならばなおのこと。
「奴崎組、染・四四乃。只今参上だ! 圧倒的強者ならば、刃を交える一層の価値あり。いざ!」
妖刀を構えた染・四四乃(人間の鬼狩人・g01829)の名乗りを受けた関羽は、赤兎馬の首をめぐらせてやや興味深げに向き直った。
「いかにも儂こそが関羽であるが――復讐者にも名乗る名はあったのだな。ついぞ聞かなんだ」
「名を知りたければ自分から、と言うけれどな」
「まあ、違いない」
こんな事で関羽が嘘をつくメリットはないので、名乗ってみせたディアボロスがいなかったのは事実なのだろう、と四四乃は推測する。
「今となっては惜しい気もする。名さえ聞いておればな」
名前さえ聞いていれば、何だったのか。その時雪華には関羽が何故そんな台詞を口走ったのか理解できなかった。
「ともかく、ここで出会ったのも何かの縁。相手をしてもらうよ」
妖刀を構えた雪華を面白いものを見る顔で眺めやり、関羽はそのまま青龍偃月刀を小脇にする。
見れば二対目の腕は力が入っておらず、さらにその下の脇からはだらだらと血が流れていた。動きに鈍さはないので致命傷ではなさそうが、軽傷とも言えないなと雪華は判断する。
一瞬呼吸を計る間があり、そのままリューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)が地面を蹴った。轟、と嵐を従えたかように砂と風を巻き上げ関羽へ肉薄する。
青龍偃月刀が唸り砂塵の嵐をリューロボロスごと薙ぎ払う、と思われたその瞬間。
「させません、ですよ!」
関羽の得物を叩き落とすかのように鞠花が金属バットを打ちこんだ。
「決めたのですよ、変わるって」
一瞬その台詞にリューロボロスが目を瞠ったものの、そのまま行くべきと見て取り竜王螺旋大衝角を叩きつける。その小柄な体躯からはおよそ想像できない、もとい不釣り合いにすら思える巨大な角が幻出し、龍のオーラと激しく拮抗した。
鞠花の打撃はなかば捻るような赤兎馬の体のこなしで受け流したものの、派手に体勢が崩れる。跳ねるように赤兎馬がリューロボロス、そして鞠花から距離を取った――のもつかの間、その動きへ暗器が迫った。
「そっちから離れるなんて、寂しい事はしないでほしいね」
関羽は一度大きく息をつき、雪華の暗器を己が得物で力任せに叩き落とす。さらに大きく一歩を踏み込み、雪華は続けざまに神蝕呪刃を放った。
素早さにおいてなら決して他の三人の誰にも負けない自負がある。思いがけない畳みかけに関羽は唸り、再び赤兎馬の身体のこなしで避けようとして、果たせなかった。もともと満足に動かせていなかった二対目の腕へまともに入る。
「まだまだァ!!」
高く吼えて斬りかかると見せた四四乃の動きに合わせ、今度は鞠花が前へ出た。まるで我が我がと先を争うような波状攻撃に、関羽は赤兎馬の手綱を操りつつ防戦に切り替える。雪華の操り人形は石突きで突き放しリューロボロスの衝角もぎりぎりで躱したが、躱した瞬間の体勢の崩れを見逃さなかった鞠花が三度目の正直とばかりに金属バットを渾身で振り抜く。
「せめて、変わるなら――護るのですよ!」
耳をつんざく二度の破砕音と思わず手を離しそうになる衝撃が返り、鞠花は顔を上げた。
「皆を、歴史を!」
蟲将ゆえ本来ならすべて脚と呼ぶべきかもしれないが、ちょうど人で言うところの左脚にあたる一本が鐙を踏めなくなっていることに気付く。刀傷と殴打痕。四四乃と鞠花のものだった。
肩で息を継ぎ、鞠花は金属バットを握る手に力をこめ直す。
「……そうか」
鐙を踏めなくなった脚をやや恨めしげに眺め、そして尋常でない決意を滾らせる鞠花を関羽は流し見た。苦痛をにじませてはいるが、しのぎを削る戦いで高揚している様子にも思える。
「ならば存分に、そうするが良い!」
関羽は無事な脚で赤兎馬の向きを変える。リューロボロスの巨大な衝角を最大の障害とみなしたようで、長柄の得物を振りかぶり赤兎馬の腹を蹴った。
「それで良い。それで良いぞ、関羽」
縦に裂けた瞳孔の目を輝かせてリューロボロスは笑う。
「来い。そして我が衝角に貫かれるが良い!」
むしろその展開は彼女の狙い通りであり、願っていたものでもあった。
派手な動きで関羽の目を引きつけ隙を誘う。さらに関羽を衝角で縫い止められればもっと良い。あとは雪華なり鞠花なりがなんとかしてくれるだろう。自分は事前の読み通り、無数の龍へ挑むただひとりの龍を演じきればよいのだ。
たとえ全身を貫かれようとも、命を賭してこの角を届かせればそれでよい。
リューロボロスは向かってくる関羽に自ら距離を詰めにかかった。関羽の身長をゆうに越える巨大な角は凶悪なまでの回転を加えて、赤兎馬ごと粉々に粉砕せんとして迫る。
互いにまともな正面でのぶつかりあい、体重の少ない方が圧倒的不利と見て雪華は直前でリューロボロスと関羽の間へすべりこんだ。関羽が一瞬だが明らかに目を瞠ったことに満足し、己が身を蝕む呪詛を開放する。
「ここはこちらが貰うよ、悪いけど」
仲間のために道を切り開くことができるなら捨て身の一撃も悪くない。雪華はそう思っている。まして関羽がそれを想定外ないし予想外、あるいは均衡ではなく押し返されると判断しての驚愕を与えられたのならば上々だ。
捨て身の一撃で関羽に爪を立てられればそれで良いとした雪華とリューロボロスは、きっとこの場においてひどく似たもの同士だったのだろう。
「喰らい、啜り尽くせ!!」
雪華の一喝、それは関羽に対してではない。
ほかの誰でもない、裡に伽藍を抱えた己へのものだった。
耳を聾する衝突音が響き、青龍偃月刀の切っ先とリューロボロスの衝角、そして雪華の妖刀が噛み合って拮抗している。が、そのあやうい均衡は瞬く間に崩れた。
「おおおおお!!」
これまでディアボロス達が耳にしたことのない太い咆哮をあげ、関羽は凄まじい膂力で二人の得物を押し返す。しかし一人と二人の構図がわずかに力の方向を曲げたのか、弾きかえすでもなく受け流しきるでもなく、互いに交錯するという形で届いた。
そして向かう先はやはり二つと一つ、――二人分の刃が届き関羽は大きく表情を歪める。
傷つきながらも蜀将を縫い止める形になった二人の背後、四四乃が飛び出した。
「関羽!!」
大喝し、二人分の得物で身動きできずにいる関羽へ妖刀を振り下ろす。直撃だけは避けようとわずかな身動きで青龍偃月刀の柄を盾にしたが、傷ついた脇を狙った斬撃を止めるまでに至らない。どしりと鈍く重い感触と、四四乃の頬へまだ熱い血飛沫が飛んだ。
しかし関羽の刃をまともに受けていた雪華がついに膝をつく。交錯していた得物を関羽は力任せに振り払い、その動きから繋げて四四乃の妖刀をも突き放した。
無理にその勢いへは逆らわずバックステップで体勢を整え、四四乃は今一度吼える。
「たとえ首は取れずとも、その腕置いていけぇ!!」
「ぐうっ」
怒濤の連撃を関羽は長柄で受けるが、度重なる傷のせいかそれとも片脚のみで赤兎馬を御するせいか、形勢はやや不利に見えた。
「なんてったって私は負けるのが大嫌いだからな!!」
その勝ち気な叫びを乗せた桜花一刀流・千日手を、関羽はもはや使い物になっていない二対目の腕で受け止めた。しかし、入った、と確信した四四乃の目が瞠られる。関羽は受け止めたその上から青龍偃月刀を振るい妖刀を押し返したのだった。
「……確か、染・四四乃、であったか」
喉の奥で笑う笑い方をして、関羽はいっそう自重をかけるようにして妖刀を押しかえす。これ以上は危険と判断し、四四乃はなんとか刃を傾かせて関羽からの圧を外へ流した。おそろしく耳障りな金属音が響く。
「儂の腕を所望するとは、勇ましきことよ。ここで散らすには惜しい」
離脱は選択肢になかったものの、蹲った雪華のまわりへ広がるおびただしい血溜まりが気になった。しかし関羽はそれ以上四四乃をはじめディアボロスを追い詰めることはせず、青龍偃月刀を小脇にし馬上から見下ろしてくる。
「腕はやれぬが、新しき蟲将を迎えるとなれば兄上も吝かでないだろう」
「蟲、し――? あに……? ……何の話をしている」
「我が配下となるよう兄上に頼んでもよい、と言っている」
配下とは、と重ねて問おうとして四四乃は黙り込んだ。
……つまり、劉備の許可を得るから蟲将となり蜀の軍門に下れと言っているのだ。四四乃に。ようやく、関羽の配下となるよう誘いを受けていることを理解する。
すぐには言葉が思いつかなかった。いや、蟲将となることや蜀に下ることが魅力的だと感じたわけではない、決してそうではなく、――。
「悪い話ではないだろう。お前達復讐者が武、兄上へ推挙するに十分である」
「…………」
理解しがたい、いや理解してはならない、そう思った。
はは、と渇ききった笑いが自分の口から漏れるのを四四乃は聞く。怒りにまかせて乱雑に振った妖刀は、青龍偃月刀に弾かれて派手な火花を散らした。
「四四乃さん……?」
今日これまでに対峙したディアボロスの名を聞いていればと関羽が惜しんだのはこの事だったのだと、薄くなる意識の中で唐突に雪華は思い至る。ディアボロスの力量を認めたのはまあ、良い。しかしその結果がこれとは思わなかった。
「誰がクロノヴェーダなどに下るものか! ディアボロスを、私達を、見くびるな!! 侮るな!!」
四四乃は全身で叫び、関羽を拒絶する。
いや、らしいと言えば、らしいのかも知れない。そもそも蜀軍は兵が足りておらず人狩りをするほどだったのだ、それが有能な兵候補と来れば配下に望むのは自然な流れかと鞠花は考える……それでもやはり、関羽の申し出はどこまでもこちらの心情を逆撫でするものでしかないが。
「それが返答か」
残念だ、と蜀将は言葉通り、心底残念そうに呟いた。
「再びまみえる日には首取り合う敵だな。それはそれで一興ではある」
血に曇った声音で関羽は短く笑い、馬首を巡らせた。
赤兎馬の蹄の跡と並び、ぱたぱたと音を立てて血痕が続く。ここであと一押しがかなわなかった口惜しさはあったが互いに痛み分けに持ち込んだことは喜んでいいだろう。関羽の側も傷は確実に積み重なっており、幕引きは近そうだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【腐食】LV1が発生!
【一刀両断】がLV2になった!
【土壌改良】がLV2になった!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV9になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!
穂村・夏輝
関羽は強い。でも、ここで足踏みしているようだと『断片の王』、その候補者たちにも手は届かない
「何としてもその強さに追いつかせてもらうよ」
可能なら、また血肉や甲殻の一部などを採取して力の一部として取り込んでおきたいけどね。デーモンイーターとして
パラドクスによる攻撃はアンジェローザに任せ、自分はアンジェや味方を庇うような立ち回り。剣や手甲で攻撃を受け流しつつ、敵の武器を強打したりして攻撃の軌道を逸らしたりなどしておく
攻撃で倒れるようなことがあっても、せめて【ラストリベンジ】でもう一撃【ジャッジメントレイ】を入れさせてもらう
「最後に一回、一花咲かせてもらうよ」
イシェル・アーレント
戦闘って初めてだったけどさ
首が飛んでも戻れるって解ってても怖いもんは怖いし
でも見知った小さな子が正面切ったんだから、僕もやるしかないじゃん!
ラグドール物理の呪いで生成したヤギに騎乗して、他メンバーと合わせて突貫
ヤギの舌は誰か鍔迫り合いをする、赤兎馬が怯む、動きが止まるタイミングで死角から嗾けるよ。他人にぶつかりそうなら舌操作で事故回避
呂布とぶつかった時、義兄弟と一緒だったろ、狡ィとか言うなよ!
呪いが掛かり次第、抜き身の妖刀で脇腹狙いの一突き
受けられても手を割かせるために粘る
はぁぁぁでもやっぱ死ィにたくねぇぇええ!!!
死にたくないから……退かずに前のめりィ!
絶対に退かない泣かない、男子だし!
オーウェン・シュイ
また来ました。楽しくて
復讐心や負けた悔しさもありますけど、やっぱり敵が硬くて強いのは楽しいですね
戦いが続くほど、残留効果…仲間の気持ちで我々は強くなれます
何度でも立ち上がって、戦いに来ます
戦場の仲間と協力して関羽に挑みます
少し見ない間に関羽が傷だらけですね。いい流れです
籠手に全力を込めて殴ります
絶対に一撃、当ててみせます
【強運の加護】と【命中アップ】が、私に味方しますように
どんな深手を負っても、命ある限り戦い続けます
刀や石や、その他何でも、この翅さえも
武器になるもの全て関羽に叩きつけます
楽しいですね。手強い敵は。
恒星・沙織
飛んだのは意識だけでしたか
ならば死地に半歩踏み込める
皮1枚と奪った肉片と血潮を軸に
復讐者が流した紅血と想いを吸い上げ
己が鮮血で夢砂を固め【一想の砂】で作り出す青龍刀
それは自らを含め戦場の血の量で強度を増し続ける
上方修正を受け支援をながら
全体へ行う支援の継続のため水戸のお兄さんを
青龍刀のリーチを活かし
関羽を近づかせないようネメシス化しディフェンス
削られたなら砂へ溢れる想い託せばいい
裂かれるなら砂で固めて形を保てばいい
抉られるなら砂で形作り動かせればいい
この身が意思を保ち続けるまでは
鮮血の想いが絶えない限りは倒れない
四肢が機能しなくとも身体も砂の使い魔の一部
自らを行使し決して今度は意識を手放さない
陳・桂菓
【魔女の薬店+常連】
使用武器は双短戟『騰蛟昇竜』
【阻竜矛林獄】での足止め狙いだが、見てから放ったのではまず間違いなく間に合わない。
そこで、第一に関羽の注意を己に向け、その瞬間に手前に勘で闘気の槍を先打ちすることにする。
「風の噂では、義兄弟三騎で呂布一騎とようやく打ち合える程度だったそうだな。その程度の武で、よくもまあ大きな顔ができたものだ」
仮にタイミングよく矛林を生やせたとして、間もなく関将百烈撃に砕かれるのは目に見えている。
そこで矛林を突破してくるところに捨て身の突撃を敢行。双短戟を挟み込むように振るい、鍔迫り合いに持ち込む。
目的は呼吸一つ、瞬き一つの時間でも長く関羽を足止めすること。
ジギタリス・フォクスグローブ
今始末をつけるのには賛成だよ
敵を撃退しない理由は無い
コウアンをディフェンス
残留効果はコウアンに利用させる
光学迷彩で姿を隠せ
関羽を殺すつもりで挑む
だが一人で討てる相手ではないからねぇ
受けられる支援は受けて
仕事を全うするよ
狙うのは赤兎馬が着地して
オジサンに関羽の刃が振り下ろされる瞬間
関羽の青龍偃月刀を叩き落とすように武器を振り軌道を逸らす
抵抗を受けた瞬間は関羽の隙になるだろうからなぁ
被弾しても即死しなければいい
コウアンはその隙をついて関羽の影に牙を突き立て縛り上げて
より大きな隙を作れ
オジサンはその為の囮だ
後は他の復讐者に任せる
殺すつもりなのは本当だよ
トドメを刺すのは誰でもいいだけでねぇ
ペリドット・ノーゲンナルガ
面白そうなことしてるのが見えるね
ボクが恐れを抱くほどの立ち回りをした関羽といい
全く止まる理由の方がないね
不忍池・蓮児をディフェンス
水戸・宗一郎が狙われたらディフェンス対象を水戸へ
足止めを行う者達の隙を補うようにスポット的に
耐久度を抑えた代わりに生成速度に寄せた偽関羽を量産する
耐久に寄せた時はあれで足止めできた
なら、続いている水戸の強化とネメシス化を混ぜて総出力を上げ
共に描いた者との液体錬成をあわせて回転率を加えれば
隙の間を補うくらいの
色のない偽関羽くらいなら
すぐに幾らでも出せる筈だ
命などとうに賭けている
最悪死ぬだけだ
”摩訶不思議な術の使い手”を死ぬ気で守れば
キミの予想外の事位起こるだろ
不忍池・蓮児
意識飛んだか
顔面パンチなんて久々に喰らったわ
やられっぱなしで終わらせてやる気はねぇよ
残留効果【口福の伝道者】
中国行きだからって忍ばせていた中華まんを
食べて可能な限り増殖させ
后食で一気に消滅させる
最初から関羽に挑んでいた復讐者の武器を対象として強化する
地脈っつーほどじゃねーがやりようはあるってな
たらふく力を食わせて強化してやるよ
俺は言った筈だぜ
やるなら徹底的に、だ
顔面パンチの気絶程度で止まるかよ
獲物見つけたら襲い掛かるくらいには暇なんだろ
まだまだ付き合えや
礼を失するとか気にするならな
二度と起き上がれなくなるくらいまでは付き合えや
果たしてそれを巡り合わせと呼ぶべきだったか、それとも偶然と言うべきだったかは誰にもわからない。
明らかに手負いとわかる関羽と遭遇し、誰が好機と考えたかそれとも誰が哀れと考えたかという事も。
「『復讐者』か。なんとも似合いの名よ」
すでに双短戟を構えている陳・桂菓(如蚩尤・g02534)を眺め、関羽はやや疲れたように呟いた。しかしディアボロスとの戦闘に飽いたというわけではなく、単純に負傷と失血のせい、という事も察せられる。
「しかしながら、ここまで心躍る武の応酬は久方ぶりである」
「関羽、だね。何としてもその強さに追いつかせてもらう」
そう言い放った穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)へ関羽は少し動きにくそうにしつつ向き直った。
「『断片の王』へ手を届かせるためには、キミを倒さなければならないから」
「ここで決着をつけるのには賛成だよ。敵に出会って撃退しない理由はないからねぇ」
夏輝の言い分に、ジギタリス・フォクスグローブ(不実・g03167)も異存はない。が、イシェル・アーレント(凡骨ウィザード・g05042)だけ反応が一瞬遅れた。
「えっ、ああいや、はい」
仮に首飛んだって新宿島に戻れるってわかってても復讐者でも怖いもんは怖いんだって、とは口が裂けても言えず、押さえた口の中で本音を噛み殺した。
実を言うならたとえ何度でも生還できるとしても死にたくないと思うし、先ほどの一度目の邂逅でもうたくさんだ、というのが偽らざる所だ。しかし見知った小さな子が正面切って立ち向かったのだから、ここで尻尾を巻いて逃げるのは我ながらさすがにどうかと思う。ここまで来たからにはやるしかない、というやつだ。
「風の噂に聞いたが、義兄弟三騎で呂布一騎とようやく打ち合える程度だったそうだな? その程度の武でよく大きな顔ができたものだ」
「何の話だ、それは」
注意を惹こうと考えた桂菓が煽るように言い放つが、関羽は訝しげな顔をしただけに留まる。言葉通りに全く思い当たる所がない、という反応なので演義の逸話をもとにした罵倒は意味がないようだ。
「さて。コウアンに一働きしてもらおうか」
袖の中から後ろ手に竹筒を取り出し、ジギタリスは栓をきる。するりと中からクダギツネのコウアンが現れ、あっという間に足元の藪へ紛れた。
各自が一人で立ち向かって倒せる相手ではないことなど、とうにわかりきっている。そのためにはジギタリス自身が捨て石になるかのような策を選ぶ必要も時にはある、とも。
「さあ関羽、蜀将最強との噂、私が確かめてやろう!!」
愛用の双短戟『騰蛟昇竜』を振りかざした桂菓が一気に間合いを詰めようとした。イシェルもまた魂が宿る頭骨を媒介に一匹の山羊を作りあげ彼女に追従する。
ふと二対目の腕がもう役に立っていないことにイシェルは気付いた。先刻より傷ついていることは明白だったが、負傷が重なっているようで得物を振ることはもちろん指先一つ動かせていないようだ。
「『食い止める!』」
桂菓の狙いは実にシンプルだった。得物を突き立てた地面から槍を打ち出すパラドクス、阻竜矛林獄による足止めである。恐らく彼との力量差からそのまま食らうであろう事などなく矛の林は間に合わないか、あるいは関羽の拳で粉砕されるかのどちらかだと考えていた。そのため顔を合わせた瞬間から自分に注意を向けることで狙いを隠そうとしている。
双短戟が一閃し、赤兎馬の足下から剣山じみた無数の槍が突き出した。それを関羽は躱すでも串刺しになるでもなく、桂菓の読み通り拳で打ち砕くことで直接的に、かつ物理的に排除する。桂菓は最初からその瞬間を待っていた。
そして同じ瞬間を待っていたのは桂菓だけではない。
「この後に及んで狡ィとか言うなよ、関羽!」
「何!?」
赤兎馬の脚が止まった瞬間、狙い澄ましたタイミングでイシェルが騎乗した山羊の舌が伸びる。ただ山羊が舌を伸ばしただけならことさら誰も驚きなどしないだろう、しかし彼が生成した山羊の舌はざっと見るかぎりでも軽く数メートル、鞭か縄かと思うほどの長さで伸びていた。
明らかに脅威である目の前の桂菓か、あるいはいかにも異様な力を発揮しそうに思えるイシェルの山羊か。関羽は山羊をより大きな脅威とみなしたようで、鋭く振るった得物で尋常でない長さの舌を叩き落とす。桂菓の双短戟はいくつか掠りながらも連続して打ちだした拳で相殺し、そこで一度仕切り直し――と思われた。
「何か、少し見ないうちにいい男になりましたね。関羽」
良い流れです、とオーウェン・シュイ(風雲月露・g03920)はみなまで言わずにおいた。欲をかき口に出してしまったせいで運が逃げてしまうのは避けたい。不機嫌そうに中華饅頭を取り出してかぶりつき、不忍池・蓮児(人間のバウンサー・g00161)は傷だらけの関羽を睨む。
「やられっぱなしじゃ終わらせてやれねぇんだよ、悪いがな」
「増援か……!」
「『復讐者』ですから。そんな名の者が、まさか聞き分けが良いとでも?」
明らかに目元をゆがめた蜀将へ、恒星・沙織(砂に想いをこめて・g01008)とペリドット・ノーゲンナルガ(シェイプシフター・g01924)がそれぞれの武器を掲げた。
「このボクが恐れを抱くほどの立ち回りなんて、止まる理由の方がないからね――それじゃあ早速、キミを増やそうか」
くふり、鼻の奥を鳴らすように笑ってペリドットの指先が振れる。タクトを操る指揮者めいた指先の動きに従い、小柄な体躯からのびていた影が次々と複数の塊になって躍りあがった。
宙へ墨色の残滓を引き、なにやら大きな体躯が戦場のあちらこちらへぼわりと滲んで顕現する。墨色、あるいは影色とも言うべきモノクロームで構成され実体化したそれは、等身大の偽関羽だった。色彩の有無こそあれ見覚えのある光景に関羽が身構える。
「貴方が私に対し、消し飛ばせたのは意識だけ。ならば消せなかった想いの分、――」
――私は死地へ半歩、踏み込むことができる。声もなくそう呟いた沙織の手元、透明な涙型の瓶に詰まった砂がぽつりと丸く、鮮やかな赤に染まった。血を一滴一滴吸うように赤い砂はみるみる瓶の内側に広がり、ついには全体が赤くなる。
関羽が消すことが、奪うことができなかったものこそ沙織の真骨頂であり武器でもあった。
「『想いを形と成して顕現せよ』」
大きく宙へ砂を撒くように振られた右手、そこには深紅の柄をもつ一振りの青龍刀が握られてある。砂から形作られた青龍刀は沙織の、ディアボロス達の、流された血のぶんだけ強度を増し、想いは刃の鋭さとなって裡に満ちるだろう。
「ここで逃げたら最強の蜀将の名が泣くだろうな。当然最後までやるんだろう?」
桂菓の台詞に関羽は沈黙したままだった。言うまでもないという事なのだと、沈黙自体を返答と受け取り桂菓はもう一度双短戟を正眼に構える。ペリドットが生み出した墨色の関羽がふたつみっつ、分身のように寄り添った。
「絶対に一撃、当ててみせますよ。覚悟して下さいね」
「……良かろう」
オーウェンの何やら楽しげな言い分に、関羽は青龍偃月刀を下段へ据えてうすく笑ったようだった。一呼吸置いて桂菓、蓮児、オーウェン、そして夏輝がそれぞれの武器を手に関羽へ迫る。
攻撃そのものは相棒のオラトリオへ任せ、夏輝自身は天晶剣や手甲を駆使しつつ援護へ回った。ジギタリスはやや離れた場所からじっと戦況を注視している。しかし相棒のクダギツネに指示を出しているのだろう、時折指先や口元が動いていた。
「意識飛んだ程度で止まってられるかよ
……!!」
「頼んだよ、アンジェローザ」
后食によって強化された蓮児自身の両手を護るガントレットはもちろん、復讐者達の得物はそれぞれ見るからに凶悪で、関羽へ分の悪さを知らしめるに十分だっただろう。今や少なくない傷を負い対応の精度も速度も落ちた蜀将にとり、早いうちに攻勢に移れなければ一対多数の不利は敗北という結末に直結することは明白だった。
躱すことは早々に諦めたのだろう、役に立っていない二対目の腕をアンジェローザにくれてやり、オーウェンの突きは青龍偃月刀を握っていない左腕で受ける。がつりとなかなかの音がしたものの、それ以上は無理そうに思えた関羽の掌は意外にも深く押し返せた。
――やれる、と動物的な直感がオーウェンの脳裏に閃く。
「まだまだ付き合えや! 獲物見つけたら襲い掛かるくらいには暇なんだろうが!!」
全身で放った怒号のまま、蓮児は畳みかけるようにバール状の得物を振りかぶる。
「気に入った。その意気や良し!」
鍵状になった先端が装甲を削り嫌な音を立て、かつ二・三発ほど体幹上に食らったがやはり先ほどのように意識を持って行かれるほどの圧倒的な重さはない。
蜀将の体勢が崩れた瞬間を見逃さずに、今一度桂菓は双短戟『騰蛟昇竜』を地面へ叩きつけた。攻防で荒れた地面から息もつかせぬ勢いで槍が突き出し、赤兎馬が横っ飛びに避ける。
「そこォ!!」
飛び越えるのでも、青龍偃月刀で薙ぎ払うのでもなければ、赤兎馬の着地先が槍の出現していない地面であると想像する事はそう難しくない。予測し、着地とほぼ同時に振りぬいた双短戟は一方が赤兎馬に蹴られて防がれたものの、もう一方は鐙を踏めなくなっていた脚へ刃傷を負わせた。
すでにそこは顧みる必要はないと考えているのだろう、関羽は新しく血を流しはじめた傷の箇所を一顧だにしない。
「我等が陣営に迎えたい所ではあるが、復讐者は頑固なものらしいからな。実に惜しいことよ」
「蜀に来いって意味かな。そこは素直に、お断りするよ」
一度間合いを計るため二歩を下がった桂菓と機会を伺うオーウェンをまとめて黒色の偽関羽に守らせつつ、ペリドットは関羽を注視する。偽関羽はもともと回転率重視で作成しているのではなから戦力としては期待しておらず、隙間を埋めさえできれば良かった。あとはすでにネメシス化して能力が底上げされているペリドット自身が偽関羽の消滅する速度よりも早く、量産できるかどうかだけ。
青龍刀が関羽の流した血を吸い上げる感触を伝えてきて、沙織はオーウェンの動きを視界にいれつつ移動する。
「楽しいですね。手強い敵は」
元々の復讐心はもとい、先頃は思うほどには歯が立たなかったという純然たる口惜しさもある。しかし戦い甲斐のない敵というのもそれはそれで大層味気ない。なにより戦いが長引けば長引くほど、ディアボロスという生き物は強くなりさらに高みへ駆け上がることができる。
ならば何度でも立ち上がって戦いに来てやる、とすらオーウェンは思うのだ。
「ディアボロスへその意気や良し、と言いましたか。そっくり同じ言葉をお返しします」
オーウェンのその台詞に、仕掛ける、とみた沙織は素早くイシェルと視線を交わした。背の翼をはためかせアンジェローザが降下し攻勢をかける動きに乗るかたちでともに急襲する。
魂に満ちる衝動をそのまま破壊的な念動力に変換し、籠手に護られた拳で叩きつける――非常にシンプルな、それゆえに純粋な火力の高さを誇るパラドクス。当たれ、と念じ直感した箇所は傷ついた側とは逆の脇。満足する手応えと、視界をよぎった関羽の苦痛の表情でオーウェンは有言実行を成し遂げたと知る。
その隙に、イシェルの山羊が再度舌を伸ばし関羽の二対目の腕へ絡めた。
「くっ」
文字通り、何かの糸を切られたかのように関羽の身体から力が抜ける。足止めや視界不良など行動阻害のたぐいには様々あるが、こうして直接的に矛を交わす戦いで最も厄介なうちのひとつは単純に力を奪われることだ。形勢が傾きつつあると判断し沙織は夢砂から作り上げた青龍刀を片手に斬り掛かる。
もしこの身が削られたなら、砂へ溢れる想いを託せばいい。
もしこの身が裂かれるならば、砂で埋めて固めて形を保てばいい。
もしこの身が抉られるなら、砂で伽藍を満たし動かせばいい。
失なわれたものは埋めればよい。遠くで輝いている北極星のように確固とした意志が、春にぬるむ雪解け水のようにしなやかな心が、暗闇を照らす炎のようにつよい想いが。そうあれかし、と希む自身を手放しさえしなければ。
そうすればたとえ致命的な一撃を受けたとしても最後まで魂を凌駕し立ち続けられるだろう。
「うぉおおお、お!!」
ろくに動かぬ腕、言う事を聞かぬ脚、そのすべてを叱咤するように関羽は咆哮した。呼応するように赤兎馬が嘶きその場を動こうとするが、ずらりと並んだ影色の偽関羽に阻まれる。
「厄介な
……!!」
ぎらりと作成主であるペリドットを睨み、関羽は唸った。先ほどと違い直接削りに来ない分、相手をせずとも立たせておけばよいものと考えていたのかもしれない。
しかし体力を消耗し手数が限られてきた今、ただ行く手を阻まれるだけでもひたすら地味に、シンプルに邪魔だ。排除の手数を割くこと自体が惜しい。だからこそペリドットの策は戦いの終盤に有用であり重要な意味があった。
「『摩訶不思議な術の使い手』じゃない使い手でも、キミの予想外の事くらい起こせるってわけだ」
おそろしく事も無げに言いきってから、ペリドットはさらに矢継ぎ早に偽関羽を描きあげる。青龍偃月刀なり何なりで薙ぎ払えば耐久力のない影色の偽物はすぐに霧散する、それはわかっていた。しかし復讐者を倒すために残しておいた力をそんなものに使いたいわけがない。
「ああいや、もっとわかりやすく言おうか。足止め、もとい嫌がらせ、ってね」
ペリドットの呟きをかき消すように再び咆哮した関羽は、残る力を振り絞って青龍偃月刀を振るう。すんでの所で斬撃へ割り込んだ沙織が青龍偃月刀をはじくが、沸き立つように広がった龍のオーラに夏輝とオーウェンが捕まった。
ようやく包囲網の一角を崩したことにより赤兎馬が大きく跳躍し、数歩離れた場所に着地する。
そしてその着地と同時、それまで光学迷彩に紛れ長いこと機会を伺っていたコウアンが動いた。夏輝達の被弾と入れ替わりに前へ出たジギタリスへ、良い獲物とばかりに青龍偃月刀が振り下ろされる。
分厚い刃をまともに肩口に受け、さすがに押し殺した呻き声が出る。
そのまま上から斜めに押し切られそうになる所を、己が身に刃を食い込ませたままジギタリスは耐えた。すぐに大量の血がだらだらと左半身を染めるのを無視しきって、青龍偃月刀を掴む。
瞬間、関羽の表情が変わった。
「……何? 何だ、これ、は」
ジギタリスに得物を振り下ろした姿勢のまま動けないでいる。ぎりぎりと音がしそうな動作で首を巡らせた関羽が見たものは、地面へ落ちた影に牙を立てているクダギツネ、コウアンの姿だった。
「……まあ、一人で討てる相手ではないからねぇ……即死しなければ良いさ」
このまま自分を拘束するつもりでいると悟った関羽に、背後からイシェルの声が届く。
「あああぁくそおお死にたくねえ! もっかい粘らせてもらうからな!!」
外野が聞いたなら多少破綻した論理に聞こえるかもしれないが、イシェルの中での筋は通っていた。死にたくないからこそ退かずにあらなければならないと思えるし、前のめりにもなれる。
ジギタリスの、もといコウアンによる管狐影縛法を引き剥がそうと懸命にもがく関羽を、蛇じみて伸びた山羊の舌がとらえた。しかしその舌がもたらす呪いの恐ろしさを一度知ったからには、何があっても引き剥がさなければと関羽が考えるのも無理からぬ事だっただろう。
んぎゃ、とも、うぎゃ、ともつかぬくぐもった声と一緒に、山羊に騎乗したままだったイシェルの身体が尋常ならざる膂力でぶん回された。咄嗟に沙織が追いついて山羊もろとも放り出される事は回避したが、でたらめに振り回されるせいで体勢を立て直すことも難しい。
「こ、このっ、馬鹿力っ
……!!」
「黙って、舌を噛み、――」
獣じみた咆哮をあげて管狐影縛法と脱力の呪いの双方に抵抗する関羽と、山羊を制御するイシェルとの根比べだった。山羊が四肢を踏ん張って引き寄せにあらがうのを見、沙織は地面に突き立てた青龍刀に自重をかける要領で制動を試みる。凄まじい勢いで刃がこぼれ刀身すら折れかけるのを、脳が灼け切れそうなほどの想いを引き寄せ意志を貫くことで修復しぎりぎりで堪えきった。
「が、あアァ、あ」
唐突にがくりと引き寄せが止まりイシェルと沙織がそれぞれの肩越しに振り返ると、関羽は青龍偃月刀をジギタリスに当てたまま赤兎馬の鞍へ肘をついている。その腕もだらりと鞍から落ちて、イシェルの脱力の呪いが競り勝ったことを知った。
ひゅうひゅうと笛のような音がする息をしながら、ジギタリスは己が身に振り下ろされたままの青龍偃月刀を掴み続けている。
「あァ、殺すつもりなのは、本当だよ」
言い忘れていた、と言わんばかりの口調でジギタリスは馬上の関羽を見上げながら呟いた。
肩口へ深々と食い込んだ青龍偃月刀。ジギタリスは左半身と左半面を濃密な赤に染めながらも素手で掴んだそれを渾身で押し戻す。傷口から刃が抜けたせいで血飛沫が飛ぶが、今はもうどうでもよかった。
「トドメを刺すのは、誰でもいいってだけでねぇ」
それはどういう意味か、と問うてくる関羽の表情に深い満足を得ながら、ジギタリスは肩口から外した青龍偃月刀を外側へ放りだすように手放した。その動作に引っ張られたのか関羽の上半身が大きく揺らぐ。 指先一本動かせず喘ぐように息を継いだ関羽の目に、夏輝の笑顔が見えた。
「関羽、キミの罪をここで贖えとは言わない」
相棒のアンジェローザ共々、傷ついた姿の夏輝はそれでも満足そうに、晴れやかに笑った。
「けれどその重さは受けていってもらう」
オラトリオの翼が輝き関羽は目を瞠る。
「最後に一花、咲かせてもらうよ」
蒼穹まで一直線に駆け上がるような断罪の光がその場の景色を灼いた。苦悶の声と同調するように、むしろ自ら声をあげているように、無数の龍がうねり荒れ狂う。
血濡れた、鬼のような形相で関羽は二度三度咆哮した。死闘に幕を引くべく、蓮児が何のてらいもない、后食を乗せた最後の突きを繰り出す。苦悶しつつも力任せに腕を振り上げたのはクロノヴェーダとしてのプライドか、それとも別の何かか。
「言ったはずだぜ、関羽」
喉に血が絡む声音で蓮児は関羽を睨みあげる。重い衝突音。
関羽の反撃の拳はわずかに逸れて蓮児の肋をとらえ、蓮児の拳は関羽の鳩尾を抉っていた。
「やンなら徹底的に、だ、ってな」
先刻の突きが肋骨を逝かせたのか、鉄錆の匂いがする息を吐くも蓮児はその場へ踏みとどまる。
赤兎馬の鞍上で関羽は半ば突っ伏したように数瞬、動かなかった。動けなかった、のかもしれない。
何度か咳き込み、最後にがふりと大量の血を吐いて、関羽は青龍偃月刀へすがるようにして半身を起こした。美髯公の二つ名の由来ともなっている長い髯が血に濡れている。
「お、ぉ……」
喘鳴の下、それでも関羽は喜びに打ち震えているようだった。
「……これぞ、我が仇敵にふさわしき武……しかし、これだけの、武を誇りながら、何故」
もう一度関羽が大量の血を吐いた。主の窮状を悟ったのか赤兎馬が高く嘶く。
いちはやく赤兎馬の意図に気付いた沙織が声を上げようとしたものの、激闘を戦いぬいたディアボロス達にその行く手を阻むことはできなかった。いや、たとえ十全であったとしてもなりふりかまわね全力疾走に入ったその脚を止められたかどうか。
手負いの関羽を乗せたまま高く蹄の音をさせて駆け去って行く赤兎馬の姿を見送り、沙織は長い溜息を吐いて肩の力を抜く。
「行ってしまいました……が」
現時点で関羽を滅ぼす手段がないことは承知していた。もし関羽がここで敗北したとしても死亡する事はなく、赤兎馬がその脚にものを言わせて撤退することも。誰もがその上で挑んだのだ。
「それでも、私達の勝利です」
関羽を完全に滅ぼす機会はいずれ巡ってくるだろう、今はその時までに力を蓄える時かもしれない。
ひどく長く、かつ短い一日が終わろうとしていた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【水源】LV1が発生!
【強運の加護】がLV4になった!
【建造物分解】がLV3になった!
【エアライド】LV1が発生!
【避難勧告】がLV4になった!
【傀儡】LV1が発生!
【液体錬成】がLV3になった!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!
【反撃アップ】がLV4になった!
【アヴォイド】がLV4になった!