リプレイ
●猫又通りに聞こえてくるのは
にゃぁ、にゃぁと聞こえていた声が、ふいに囁くような声に変わる。すくりと二本の足で起ち上がった黒猫たちは目をまん丸くした少年に言いました。
「えぇ、覚えているようで良かった。わたしたちは貴方に助けてもらった黒猫で、本当はこうして……えぇ、尻尾が三つあるのよ」
「今日は俺達の……、お前達の言う猫又の祭りがあるからな。連れてってやる。ほら、目を隠せ。お前が人だってばれないように」
片方の目を布で隠して。尻尾の代わりに服を揺らして、誘う先には何も無くても。
「私達の手を取って。迷わないようにするから。もしも迷ってしまったら、花弁を辿ってきてちょうだい」
「すぐに見つけてやる。だからほら、今日は此方側にやってくると良い。俺達の——猫の夜だ」
「演芸場の準備はどうだい?」
「あぁ。無事に終わったよ。ま、綺麗にしたばっかりの座布団は猫がねちまってるけどなぁ」
からからと男は笑った。演芸場では名の知れた男は、白の乗った髪をぴん、と弾き、夏の暑さにうだる外を眺めみた。
「猫たちもこっちの方が過ごしやすいんだろ。ま、話を聞いてくれるんなら、なんでもさ。
病院の方はどうなってんだ?」
「それならディアボロスの人々が手伝ってくれるみたいでさ。いやぁ、猫又と少年の物語使おうって盛りあがったのは良いけど一週間何もねたが出てこなかったときは終わったと思ったね」
「終わってんなぁそれ……」
まぁ何にしても、と男は息を吐く。
「折角の夏だ。怪談だ妖怪だって色々あるが、楽しもうじゃねぇか」
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マスターより
ご参加頂きありがとうございます。
秋月諒です。
●プレイングについて
①・②を受付中です。
終了タイミングはマスターページ・タブで告知しますのでご確認ください。
③の受付は、①・②の受付終了後、改めて告知させて頂きます。
★あわせプレについて
二人まで
★2人以上の参加(併せプレ)について
迷子防止の為、お名前or合言葉+IDの表記をお願いいたします。日程は揃えて頂けると幸いです。
また、片方だけにお名前などがある場合は、諸々判断が付かないため事故防止でお返ししています。
梅指・寿
それじゃあおばあちゃんは猫と関わった怖い話を一つ話そうと思うわ。
ある蒸し暑い夜、おばあちゃん縁側で夕涼みをしていたの。
住んでいる所は猫さんが沢山いて、その日も馴染みの黒猫さんやサバトラさんと一緒に月を見ながら涼んでいたの。
ふと、月が雲に隠れて暗くなった時だったわ。
祭囃子の音が聞こえてきたの。
トントン、シャンシャン、ピーヒャララ
最初はかすかな音色だったけどだんだんはっきり聞こえてきたわ…まるでこちらに近づいているみたいに…
気味が悪くなってきた頃だったわ
おわーぉ おわーぉ
側にいた黒猫さんとサバトラさんが威嚇するような鳴き声をあげたの。
二匹とも普段はめったに鳴かないの。なのにその時だけおばあちゃんの側で威嚇の声をあげたわ。
そうすると
ザザザザザッ
暗闇の向こうで沢山の人が逃げ出すような足音が聞こえたの。
まるで黒猫さんやサバトラさんの声に恐れをなしたように…
月明かりが戻って庭がはっきり見えた時、ほんの数メートル先に沢山の足跡がついていたわ。
黒猫さんやサバトラさんがいなかったらどうなっていたのかしら…
●宵のひとひら、風が鳴いて
演芸場の舞台には、猫の絵が薄らと描かれた襖があった。ひとつ、ふたつとある絵は、好んで寄席を見に来ていた作家が描いたものだという。一匹、二匹と演芸場に遊びに来ていた猫たちがちょっとしたやんちゃをした時に生まれた足跡を追って、彩って。作家の走らせた筆に、またひとつ、ふたつと見えた爪痕に小さく笑うと梅指・寿(不沈の香・g08851)は賑やかな拍手の中、高座に立った。
「それじゃあおばあちゃんは猫と関わった怖い話を一つ話そうと思うわ」
にゃぁ、と客席から聞こえたのは、演芸場を寝所にしている猫のものだろう。ふ、と寿は微笑む。日本人形のように美しい姿をした娘は、少女らしい笑みと共に見る者を、ほっとさせる、穏やかな笑みをひとつ浮かべて話し出した。
「ある蒸し暑い夜、おばあちゃん縁側で夕涼みをしていたの。
住んでいる所は猫さんが沢山いて、その日も馴染みの黒猫さんやサバトラさんと一緒に月を見ながら涼んでいたの。
——ふと」
言の葉を一度、切る。ゆっくりと瞳を伏せ、記憶を辿るように寿は口を開く。
「月が雲に隠れて暗くなった時だったわ。
祭囃子の音が聞こえてきたの」
漆黒の瞳が外界に晒される。艶やかな黒髪は揺れることなく——ただ、紡ぎ落とされた言葉が、瞳が演芸場の人々の心を奪う。黒猫やサバトラのかわいらしい姿を思い浮かべていた人達が、緊張したように息を飲むのを見ながら寿は小さく指を揺らした。
「トントン、シャンシャン、ピーヒャララ」
手の甲に軽く触れて、釈台をトントン、と軽く叩いて。祭り囃子を招いていく。
「最初はかすかな音色だったけどだんだんはっきり聞こえてきたわ……まるでこちらに近づいているみたいに……」
静かな声で、寿はそう言った。誰もが息を飲む空気の中、そう、と口を開く。
気味が悪くなってきた頃だったわ、と寿は息を落とす。
「おわーぉ おわーぉ。
側にいた黒猫さんとサバトラさんが威嚇するような鳴き声をあげたの」
二匹とも普段はめったに鳴かないの。
ほう、と息を落として、寿は客席を見る。僅か、身を乗り出すようにして紡ぐ。
「なのにその時だけおばあちゃんの側で威嚇の声をあげたわ。
そうすると、
ザザザザザッ」
「——!」
「暗闇の向こうで沢山の人が逃げ出すような足音が聞こえたの」
客席がひゅ、と息を飲む。さざ波のように驚きが広がる中、ぽつり、と寿は言った。
「まるで黒猫さんやサバトラさんの声に恐れをなしたように……」
にゃぁ? と演芸場に遊びに来ていた猫が客席から声を上げる。ゆるゆると揺れる尻尾は愛らしくも、びくりと震えた少年はむんずとその猫を抱きしめる。
「……」
だいじょうぶよ、と声をかけたくなる心を今は我慢して。寿は怪談を紡ぎ上げる。
「月明かりが戻って庭がはっきり見えた時、ほんの数メートル先に沢山の足跡がついていたわ」
それはおばあちゃんが猫と関わった怖い話。
ある蒸し暑い夏の夜。
「黒猫さんやサバトラさんがいなかったらどうなっていたのかしら……」
暗闇の向こうに潜んでいたのは——何であったか。その真実は、誰も知らぬ闇の中。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
八上・霞
猫ちゃん猫ちゃん、かわいいね。
怪談話、こんなのでどう?
片眼を隠す蔵面を着けて。
昔昔ある所に、猫をとても可愛がっているお姫様がいました。
そんな彼女のところに、誕生日の贈り物がたくさん届きました。
その中にあったのが美しい拵の刀です。お姫様は一目でその刀を気に入って、部屋に飾りました。
その夜から、お姫様は悪夢を見るようになりました。得体の知れない影にどこか遠くへ連れていかれる夢でした。日が経つごとに、遠く遠く、暗くて深い所へ連れて行かれるようで、お姫様は怖くなりました。
ついに夢の中で「助けて!」と叫んだ時、「にゃあ!」という鳴き声がして、お姫様は夜中に目が覚めました。部屋を見渡すと、飾り棚の上に愛する黒猫がいて、その下には飾っていた刀が落ちて床に転がっていました。
黒猫は目を覚ましたお姫様を見て「にゃあ」と鳴きました。
例の刀を寺へ預けると、悪夢はぴたりと止みました。
それから、お姫様はますます猫を可愛がるようになりましたとさ。めでたしめでたし!
あ、猫ちゃん!怪談話どうだった〜?ふふ。
※アドリブ歓迎
●夜ごと宵の語り部と
舞台袖には、演芸場に遊びに来た猫の姿があった。に、と小さく鳴く黒猫は舞台袖が気に入っているのか。くるくると八上・霞(閃光・g00118)の足元を回った後に、みゃぁ、と小さく鳴く子猫を足元に招いた。
「猫ちゃん猫ちゃん、かわいいね」
抱っこして良いかな? とキラキラと目を輝かせながら、霞は膝を折る。舞台の上まで行けば、また気まぐれに他に遊びに行ってしまうか――或いは、あの座布団はこの子猫に盗られてしまうだろうか。
「可愛いだろうなぁ」
もふん、と座る姿を思い浮かべて笑みを零すと霞は、そっと撫でるように手を伸ばして、指先で触れるだけで終える。抱き上げるには子猫は柔らかすぎる。
(「気がするっていうか」)
何と無く、だ。
ふ、と小さく笑って、指先にじゃれついてくる子猫に手を振る。言葉を返す誰かがいれば、猫ってそもそもよく伸びるだろうとか言っただろうか。揺れる蔵面にじゃれつくつもりはないのか、みゃう、とだけ高く聞こえた声に霞は内緒話でもするように言った。
「怪談話、こんなのでどう?」
しゅるり、と蔵面で片眼を隠す。結い上げた髪はそのままに、艶やかな黒の瞳を隠せばこの身もまた――猫又のひとり。
「昔昔ある所に、猫をとても可愛がっているお姫様がいました。
ある年のこと、そんな彼女のところに、誕生日の贈り物がたくさん届きました」
姫の誕生を祝う品です。美しい衣や美しい宝石。それは香しい香など、様々なものがありました。
「その中にあったのが美しい拵の刀です。お姫様は一目でその刀を気に入って、部屋に飾りました」
刃の一振りを示すように、霞は指先で空を切る。一振り、受けとるかのように手を動かして見せながら客席へと目をやった。
「その夜から、お姫様は悪夢を見るようになりました。それは、得体の知れない影にどこか遠くへ連れていかれる夢でした」
「――!」
怪談を聞いていた客達が小さく息を飲む。その様子を見ながら、霞は晒した片眼をゆるりと細めて口を開く。
「日が経つごとに、遠く遠く、暗くて深い所へ連れて行かれるようで、お姫様は怖くなりました」
何度も、何度も夜ごと暗く深い所に連れて行かれそうになるのです。
「ついに夢の中で「助けて!」と叫んだ時、「にゃあ!」という鳴き声がして、お姫様は夜中に目が覚めました」
それは鋭い一声でした。猫の鳴き声にお姫様は驚いたように顔を上げました。
「そうして部屋を見渡すと、飾り棚の上に愛する黒猫がいて、その下には飾っていた刀が落ちて床に転がっていました」
カタン、と落ちた刀が一振り。飾り棚の上にはゆるりと尾を揺らす黒猫が一匹。
「黒猫は目を覚ましたお姫様を見て「にゃあ」と鳴きました」
宵の深く、刀は鞘から抜かれる事無く。棚に戻ることも無く。翌朝、お姫様は寺に刀を持っていくことにしました。
「例の刀を寺へ預けると、悪夢はぴたりと止みました」
静かな語り口でそう話をしめると、霞は笑みを見せた。
「それから、お姫様はますます猫を可愛がるようになりましたとさ。めでたしめでたし!」
わぁあと盛りあがる客席から拍手が沸く。賑やかな声を聞きながら舞台袖へと戻れば霞の怪談話を聞いていたのか、黒猫がにゃ、と姿を見せた。
「あ、猫ちゃん! 怪談話どうだった~?」
「にゃ」
それは良かったと言う鳴き声か。機嫌良く響いた声は連れの子猫も一緒で。んみゃ、と小さく聞こえた声に霞は、ふふ、と笑みを零した。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【平穏結界】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
ルチルーク・フレンツェン
イスカンダル奪還戦でごっそりエネルギーを使いそうで結構ピンチですね……。
「新宿島の人々を守る為も兼ねて、出来るだけ怖がらせてみせたいです。」
即興の創作なので爪が甘いかもしれませんが
【熱波の支配者】と【冷気の支配者】で上手く調整すると致しましょう
(顔を隠す蔵面をお借りして)
友達の友達から聞いた、今みたいにとても暑苦しい夏の夜の、少年の体験
その彼は猫が大好きで野良猫によく餌を与えていました
でも貧乏な彼では真夏に腐りにくい餌を用意しにくい
ですので水だけでも野良猫に与えていました
その夜も一匹の、今そこでくつろいでいる猫の瞳のようや野良猫を見つけました
竹で作った水筒から皿へ水を入れ野良猫の前へ差し出す
野良猫も喉が渇いていたのか、皿の水を飲みに来てくれた
かわいいな、ぴちゃぴちゃと飲んでくれて
ぴちゃぴちゃ
ぴちゃくしゃ
くしゃくしゃ
おや?水音とは違う、何かを食べているかの咀嚼音?
猫の口をよく見ると、口の中から夜の闇の奥まで伸びている、長い髪の毛
野良猫はさっきまで何を食べていたのでしょうね?
お粗末様でした
●夏の夜にて
演芸場には沢山の観客が集まっていた。怪談話にやってきた人々は、ディアボロスの話も聞けると知ってまた随分と賑やかになってきている。
「あそこにも猫がいますね……。当機の視界で確認したかぎり、三匹でしょうか」
舞台袖で小さく呟いたのは、長い銀色の髪を揺らす少女であった。足元、にゃうにゃうと鳴く子猫に少女は長く伸びた前髪を揺らす。
「……どうしたら良いでしょう」
子猫が懐いてきているのは少女にも分かる。けれど、感情の殆どを失った少女には――ルチルーク・フレンツェン(均衡を破りし逆襲機械・g02461)にはどうするのが正しいのか、よく分からなかった。
『もきゅきゅ!』
「ルシグーナ」
もふ、とルチルークの腕に、 モーラット・コミュ『ルシグーナ』が身を寄せた。その暖かさに、昔の――ルチルークが普通の少女だった頃の記憶を辿るように、子猫に手を伸ばす。
「みゃう」
機嫌良く頬を寄せていった白猫は満足したのか、舞台袖の座布団の上に戻っていった。子猫は気まぐれに甘える相手を探しているらしい。
――わぁ、と賑やかな拍手と共にと前に舞台に出ていた人の怪談が終わった。
(「イスカンダル奪還戦でごっそりエネルギーを使いそうで結構ピンチですね……」)
ほう、とルチルークは息をつく。
「新宿島の人々を守る為も兼ねて、出来るだけ怖がらせてみせたいです」
即興の創作だから、爪が甘いかもしれないが効果は用意してある。良い感じに見せられるはずだ。顔を隠す蔵面をしゅるり、と結ぶとルチルークはゆっくりと舞台に立った。
「友達の友達から聞いた、今みたいにとても暑苦しい夏の夜の、少年の体験。
その彼は猫が大好きで野良猫によく餌を与えていました。でも貧乏な彼では真夏に腐りにくい餌を用意しにくい。
ですので水だけでも野良猫に与えていました」
ゆっくりとした口調で語り出すルチルークに、誰もが引き込まれるように舞台を見ていた。
「その夜も、彼は一匹の、今そこでくつろいだ瞳でいる野良猫を見つけました」
彼は、竹で作った水筒から皿へ水を入れ野良猫の前へ差し出しました。野良猫も喉が渇いていたのでしょう、すぐに皿の水を飲みに来てくれました。
「かわいいな、ぴちゃぴちゃと飲んでくれて」
効果を紡ぐようにして、ルチルークは宙に手を動かす。野良猫の背をなでるように指先を滑らせ、小さく呟く。
「ぴちゃぴちゃ」
野良猫が水を飲む音を。
「ぴちゃくしゃ」
不意に混ざる異音に、人々がザワつく。冷えた空気が肌に触れる。
「くしゃくしゃ」
見えぬ野良猫を撫でるように宙に滑らせていた手を、ふ、とルチルークは止めた。
「おや? 水音とは違う、何かを食べているかの咀嚼音?」
不思議に思い、彼は野良猫の方を見ました。
「猫の口をよく見ると、口の中から夜の闇の奥まで伸びている、長い髪の毛」
「――!」
ひゅ、と人々が息を飲む。ざわめきが恐怖となって響く中、驚いた人々を見ながら、そう、とルチルークは紡いだ。
「野良猫はさっきまで何を食べていたのでしょうね?」
夏の夜と少年の怪談は此れにて終わり。
「お粗末様でした」
ひやりとした恐怖が、演芸場に残っていた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
不破・結宇
雑面を身につけて語る
あるところに猫好きの少女がいて、彼女は野良猫たちに煮干しや牛乳をあげて可愛がっていた
しかしある真冬の日のこと、行方不明になった
手がかりはなく警察の誰もが諦めかけた
その夜、彼らの前に黒猫が一匹現れた
何かを訴えるような黒猫に導かれるままついていく
するとそこには無残に殺された少女のものらしき遺体があった
更に驚くことに近隣一帯の野良猫達が集まっては亡骸に寄り添っていたのだ
その様子は少女が冷えないよう暖めてあげているようにも見えた
黒猫が警察へと頭を下げる
「あの子をみつけてくれて ありがとう」
そういった気がした
その後少女はあつく弔われ犯人も無事捕まったという
もしかしたら可愛がってくれた彼女のために猫達が動いたのかもしれんのぉ
優しいあのこが寂しくないように、寒くないように
●沈香
板の上に、細く長い影が落ちていた。一歩、また一歩と足を進め行く女に足音は無く、枯れ枝のような細身は 舞台の上で無ければ倒れてしまうのではないかと思う程だ。
「……」
はらりと衣が揺れた。細い女の姿に対し、尾を引くように衣が揺れる。ゆるり、と緩く揺れた猫の尾に、ぴんとたった茶色の猫の耳に興味が引かれたのか舞台袖から、ととと、とやってきた子猫の姿に観客達は舞台上にいる女が実在しているのだと知る。
「――これは、とある町での話じゃ」
ほっそりとした指先で舞台上に触れた。座布団に正座をすると、一礼と共に顔を上げる。蔵面に隠された瞳は片方を晒したまま、金色の瞳がゆるり、と弧を描き――語り部は口を開く。
「あるところに猫好きの少女がいて、彼女は野良猫たちに煮干しや牛乳をあげて可愛がっていた」
とん、とん、と指先は戯れる子猫の背を撫でる。ふ、とやわく、息を零すと不破・結宇(ナナシの薬売り・g10601)は照明の落ちた薄暗い客席を見た。
「しかしある真冬の日のこと、行方不明になった。
手がかりはなく警察の誰もが諦めかけたその夜、彼らの前に黒猫が一匹現れた」
にゃぁ、にゃぁと何かを訴えるような黒猫に導かれるままついていくと、薄暗いその場所に何か、影が見えたのだ。
「よくよく見ると、そこには無残に殺された少女のものらしき遺体があった」
にゃぁ、にゃぁ。
猫たちの声がする。これ以上、何があるのだと人々は怯えながら灯りを持ち上げた。
「驚くことに近隣一帯の野良猫達が集まっては亡骸に寄り添っていたのだ。
その様子はまるで、少女が冷えないよう暖めてあげているようにも見えた」
にゃぁ、にゃぁ。
やってきた警察官たちに、黒猫はしきりにそう鳴いてみせた。くるり、と足に身をすり寄せ、そうして――。
「頭を下げたのだ。
それは「あの子をみつけてくれて ありがとう」と言ったようであった」
にゃぁ。にゃぁ。
猫たちは何時もどおり森の中へと帰っていった。
そう、と結宇は膝の上の子猫を撫でた。
「その後少女はあつく弔われ犯人も無事捕まったという」
「みゃぁ」
合いの手を入れた子猫に、ふ、と笑う。片割れを晒した金色はゆるり、と弧を描き結宇は美しい――だが、どこかあやしげな笑みを浮かべた。
「もしかしたら可愛がってくれた彼女のために猫達が動いたのかもしれんのぉ」
にゃぁ。にゃぁ。
猫たちは身を寄せ合って。
目を覚まさぬ少女のために。動かなくなった少女のために。
「優しいあのこが寂しくないように、寒くないように」
ここにいるよ。と鳴いたのだ。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
フレデリカ・アルハザード
顔を隠す能面を着け
これは友達の友達から聞いた話ですが
ある時、幼少期から共に過ごしていた猫が亡くなり、手厚く葬った少女がいました
彼女は中学に入ってからいじめられており、飼い猫の墓にお参りする事が生き甲斐でした
ある時、イジメっ娘が飼い猫との思い出の品を傷付けようとした際、反撃して逃げてきましたが、イジメッ娘達はナイフ等を持って追いかけてきました
もう駄目だと思った時、何とあの飼い猫がいるではありませんか
にゃあ、と
『もう大丈夫だよ』
と告げる様に鳴いた後…気が付くと、少女は病院のベッドの上で治療を受けていました
少女が走って逃げている様を猫に餌をやっていた愛猫家たちから見られ、イジメッ娘達の悪事は露見しました
こうして、少女はイジメから逃れる事が出来ましたとさ
…余談ですが、イジメッ娘達は行方をくらませていましたが、三年後に見つかったそうです
――白骨死体の状態で
また、その際の検視の結果は…
――見つかる数日前まで『生きてはいた』様です
情の深い者は、敵対者には容赦も慈悲もない
猫であっても、同じなのでしょう
●宵猫奇譚
薄暗い客席には、沢山の人々が集まっていた。ひとつ、ふたつと灯した提灯は怪談語りに相応しく――だが、その下でゆらり、ゆらりと機嫌良く揺れる尻尾は妙に頬笑ましい。
「……可愛らしいですね」
「みゃぁ?」
舞台袖にもかれらの寝所があるらしい。ちょこん、と置かれた座布団の上に、機材を入れるはずだった箱はとうの昔に黒猫たちのお気に入りになったのだ、という。人懐っこい子猫が、ととと、と走ってくるのにフレデリカ・アルハザード(正逆の聖女・g08935)は笑みを零した。
「こんにちは。行ってきます」
「んにゃ」
優しく頭を撫でる。小さく零れた鳴き声は、まだ、にゃぁと鳴くには慣れぬ子猫だからか。あたたかな、命の証に聖女は祈りの言葉を零す。小さく、この命の行き先を祈って。
「……」
さぁ、これより先に紡ぐのは怪談話だ。しゅるり、と顔を隠す蔵面をつけ、フレデリカは舞台に立った。
「これは友達の友達から聞いた話ですが。
ある時、幼少期から共に過ごしていた猫が亡くなり、手厚く葬った少女がいました」
怪談らしい語り口からそう始めれば、客席の意識がこちらを向く。先を待つ視線にゆっくりとフレデリカは語り出した。
「彼女は中学に入ってからいじめられており、飼い猫の墓にお参りする事が生き甲斐でした」
ある時のこと、イジメっ娘は彼女と飼い猫の思い出の品に手を伸ばしたのです。
「イジメっ娘が飼い猫との思い出の品を傷付けようとした際、少女はなんとか反撃してその場を逃げました。
――ですが、イジメッ娘達はナイフ等を持って追いかけてきたのです」
客席がざわめく。何があるのか、何が起きるのか、と心配そうな視線にフレデリカは口を開く。
「もう駄目だと思った時、何とあの飼い猫がいるではありませんか」
そこにいたのは、亡くなった猫でした。少女が大切にしていた猫は、いつもと変わらぬ声で鳴いたのです。
「にゃあ、と。
『もう大丈夫だよ』と告げる様に鳴いた後……気が付くと、少女は病院のベッドの上で治療を受けていました」
では、少女を追い掛けていた子達はどうなったのでしょうか。
少女が走って逃げている様を猫に餌をやっていた愛猫家たちから見られ、イジメッ娘達の悪事は露見したのです。
「こうして、少女はイジメから逃れる事が出来ましたとさ」
少女を助けたのは、大切にしていた猫であったのか。少女のために現世にやってきたのでしょうか。
「……余談ですが、イジメッ娘達は行方をくらませていましたが、三年後に見つかったそうです」
一拍を置く。ゆっくりと顔を上げ、色の無い、静かな声音でフレデリカは言った。
「――白骨死体の状態で」
「……」
なるほど、と波打つ人々の声を耳に、フレデリカは紡ぐ。白骨死体で見付かったのだから、捜査が行われました。
「その際の検視の結果は……――見つかる数日前まで『生きてはいた』様です」
「――!?」
白骨死体であったというのに、だ。
「情の深い者は、敵対者には容赦も慈悲もない。
猫であっても、同じなのでしょう」
これにて話は終わり。
友達の友達から聞いた、猫に纏わる少しだけ変わった――恐い、話。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【通信障害】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
エイレーネ・エピケフィシア
愛するクロエ様(g08917)と共に
顔を隠す蔵面を被ります
猫又とは、長い時を生きた猫が変じるものだとか
わたしも二本目の尾が生えて来るまで、あなたと共に在りたいものです
昔々、とある街に、幽霊騒ぎで知られる空き家がありました
夜な夜な、今は引き払った住人の亡き妻がすすり泣く声が聞こえ、家に近づいた者を呪うというのです
悪霊を封じるには亡骸を焼かねばならないため、困った近隣住民は女の墓を掘り起こそうとしました
しかしこの街の庶民は粗末な共同墓地に葬られており、夫が去った今は埋葬場所の手掛りがありません
人々が途方に暮れたその時、一匹の猫が墓地で目撃されました
それは夫が家を去る際に捨てたかつての飼い猫で、執拗に墓所の一所の土を執拗に爪で探っていました
近隣住民の一人がその場所を掘り起こすと……穴の中には、あの妻の亡骸が!
そして、人々は亡骸を検分している内に、脚の骨に猫の牙が食い込んだ噛み痕があることに気付いたのです
はて。この傷は一体いつ何処でついたのやら
骨の在り処を探り当てた猫は知っているかもしれませんね
クロエ・アルニティコス
恋人のエイレーネ(g08936)とともに
顔を隠す蔵面をかぶり参加
猫、ですか……えぇ。もちろん猫は好きです。
ちらりと横目でウェアキャットの恋人の方を見ながらそんなことを言いつつ話の場へ。
昔、素行の悪い子供がいました。
悪戯好きと言えば聞こえはいいですが、度を越して人や物を傷つけ、親の言う事も聞かない子供です。
ある時、子供は猫を見つけました。
「当たったらどんな反応をするだろう?」ほんの軽い気持ちで子供は猫に石を投げつけます。
が、ひらりと避けられ当たらない。ムキになって何度投げても当たらず、手ごろな石が無くなったところで猫も去っていきました。
イライラしながら眠りについた子供はその日夢を見ます。顔の見えない巨人たちが、子供の頭ほどもある岩を何度も何度も何度も何度も、投げつけてくる夢を。
あわや直撃というところで子供は夢から覚め、跳ね起きます。
すると枕元にはどこから入ったのか昼間の猫が。
にゃあと一声鳴いて猫は去っていき、その日から子供は見違えるほど行儀よくなりました。
皆さんも、猫には優しくしましょう。
●終わりの先でも
ディアボロスも交えた怪談話で演芸場は盛りあがっていた。息を飲み、震え――そうして、ほ、と息をつく。そんな人々の様子を、演芸場を遊び場としている猫たちは興味深そうに見ていた。何をしているんだろう、と思っているのか、それとも一緒になって遊んでいるのか。
「エイレーネ、そろそろ……」
出番だそうです、と舞台袖の恋人に声をかけようとしたところでクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)の目に映ったのは、恋人の服の上ですよすよと眠る子猫の姿だった。
「……寝てしまったのですか?」
「はい」
吐息一つ零すようにして、クロエの視線にエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)は頷いた。小さく、笑ったのは衣の裾を寝所にするようにして眠る子猫がぴすぴすと鼻を鳴らしていたからだ。
『出番までこちらでお待ちください』
スタッフに案内されて辿り着いた舞台袖は、元々演芸場に出入りする猫たちのお気に入りの場所だったらしい。クロエと二人、腰掛けて話をしている間は良かったのだが、にゃうにゃうとやってきた子猫はエイレーネの尻尾にじゃれつき、そうこうしている内にクロエがスタッフに呼ばれ、空いた先をクロエから勧められていた子猫は結局二人の足元、エイレーネの衣の上を寝所に決めたのだ。
「この子も、これから大きくなるのでしょう」
「んにゃ?」
寝惚けている子猫は随分とあたたかい。抱き上げて、空いた席に座らせるとぐずるようににゃう、と鳴く。
「えぇ、そうですね」
白い小さな子猫の頭を撫でると、クロエは顔を上げた。この子猫他にも、演芸場には一匹、二匹と猫の姿が見える。猫又の物語が伝わる地らしいと言うべきか。恋人の服の上を陣取っていた猫をクロエはそっと持ち上げた。
「猫、ですか……えぇ。もちろん猫は好きです」
「クロエさ……」
ちらり、と横目でウェアキャットの恋人を見る。ぱち、と瞬いたエイレーネが何を言うより先に、クロエは舞台へと向かっていった。
「……」
小さくエイレーネは笑う。にゃう、と残された子猫は先を行った彼女が――愛する妖狐が、どんな顔をしてそう言っていたのか知っているのだろうか。
「猫又とは、長い時を生きた猫が変じるものだとか」
しゅるり、と蔵面をつける。顔を隠す面は、歩く一歩と共にふわりと揺れて。
「わたしも二本目の尾が生えて来るまで、あなたと共に在りたいものです」
「……」
エイレーネの言葉に、ぴん、と立ったクロエの耳がぴくり、と揺れた。顔を隠すように蔵面をつけたのは同じ。彼女の青い瞳は見えぬまま――それでも、紡ぐ言葉は届いていただろうか。小さく零した笑みは、二人だけの秘密のまま。舞台に上がりきれば、次の怪談を待っていた人々の拍手が二人を出迎えた。
●二人語り
「昔、素行の悪い子供がいました」
――そう、静かに語り出したのはクロエであった。
「悪戯好きと言えば聞こえはいいですが、度を越して人や物を傷つけ、親の言う事も聞かない子供です」
子供のやることとはいえ、親御も随分と困っていたのです。
「そんなある時、子供は猫を見つけました」
クロエの言葉に、観客達が引き込まれるように身を乗り出す。続きを、先を待つ視線にクロエはゆっくりと口を開いた。
「「当たったらどんな反応をするだろう?」ほんの軽い気持ちで子供は猫に石を投げつけます。
が、ひらりと避けられ当たらない」
ひょい、ひょいと避けたとでも言うのでしょうか。子供は何度も次の石を拾います。
「ムキになって何度投げても当たらず、手ごろな石が無くなったところで猫も去っていきました」
そうして、夜になってからのことです。
イライラしながら眠りについた子供はその日夢を見たのです。
「顔の見えない巨人たちが、子供の頭ほどもある岩を何度も何度も何度も何度も、投げつけてくる夢を」
低く、静かに紡ぎ上げるクロエの言葉にだれもが真っ直ぐに舞台を見ていた。次は何が起きるのか。息を飲むような人々に、静かにクロエは続けた。
「あわや直撃というところで子供は夢から覚め、跳ね起きます。
すると枕元にはどこから入ったのか昼間の猫が」
ゆるり、と尾を揺らす姿に子供は驚きました。
「にゃあと一声鳴いて猫は去っていき、その日から子供は見違えるほど行儀よくなりました」
蔵面の下、小さくクロエは笑みを浮かべるようにして告げた。
「皆さんも、猫には優しくしましょう」
一礼と共に一つ目の語りが終わる。
「……」
その話を、伏せた瞳でエイレーネは聞いていた。蔵面の下、隠した顔は客には見えず――ただ、ゆっくりと終えた彼女の怪談を聞き終えて顔を上げる。
「昔々、とある街に、幽霊騒ぎで知られる空き家がありました。
夜な夜な、今は引き払った住人の亡き妻がすすり泣く声が聞こえ、家に近づいた者を呪うというのです」
これでは誰も近づくことはできません。
「悪霊を封じるには亡骸を焼かねばならないため、困った近隣住民は女の墓を掘り起こそうとしました」
しかし、とエイレーネは言葉を切る。静かに、何処か厳かに響く彼女の声に客席の人々は息を飲んだ。
「この街の庶民は粗末な共同墓地に葬られており、夫が去った今は埋葬場所の手掛りがありません。
人々が途方に暮れたその時、一匹の猫が墓地で目撃されました」
にゃぁ、にゃぁ、と猫は鳴きます。
「それは夫が家を去る際に捨てたかつての飼い猫で、執拗に墓所の一所の土を執拗に爪で探っていました」
かりかり、かりかりと。
これは何かあるに違いない、と近隣の住民は思いました。
「近隣住民の一人がその場所を掘り起こすと……穴の中には、あの妻の亡骸が!」
「――!」
ひゅ、と息を飲む声がエイレーネの耳に届いた。驚く客席の気配を感じながら、静かに話を続ける。
「そして、人々は亡骸を検分している内に、脚の骨に猫の牙が食い込んだ噛み痕があることに気付いたのです」
「――!?」
それって。
え、どうして……もしかして。
ざわめく人々の気配を感じながら、ゆるり、と柔らかな語り口でエイレーネは先を紡いだ。
「はて。この傷は一体いつ何処でついたのやら
骨の在り処を探り当てた猫は知っているかもしれませんね」
一礼と共に二つ目の怪談の終わりを告げる。恐怖と、驚きの中にいた人々の拍手が演芸場を包み込んだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
●猫と病院とお化け屋敷と
「良かった! ディアボロスの皆さんに手伝って貰えるとは」
「私達だけでは、どうにも案が偏ってしまって」
そう言いながら、ディアボロス達を出迎えたのは病院に勤める医師や看護師、そしてお化け屋敷運営のために集まったスタッフ達だった。嘗て、病院に世話になっていて元気になった人々もいる。
「猫又の物語も、大きくなったら思い出すことも無いと思っていたんですが……意外と、覚えているもので。あーだこうだと盛りこむには良いんですが、お化け屋敷ってなると私達にはどうにも経験が浅くて」
「チェーンソー持ったのが追い掛けてくる、とかいきなりどーんと首がとかは分かるんですが……」
「どちらかといえば、クリーチャーだなんだって話になりましてね。ディアボロスの皆さんの知恵を借りられるのは有難いんです。
どうか、一緒にお化け屋敷を作ってください」
僕達も、体でも何でも動かしますんで。
そう言った人々は楽しそうだ。夏の一時。びっくりを楽しめるようになった皆と一緒に。——さぁ、お化け屋敷を始めよう。
クィト・メリトモナカアイス
準備中メイン
猫!
猫と遊びに……いない?
準備するのに邪魔になる?
それはそう。そっかー……
んむ、それじゃあ我も準備を手伝おう。
準備を手伝ってー、本番は我も猫と戯れるのだ。
んむ、我も猫のイラストを描こう。
というわけで壁に猫のイラストを描き描き。
どことなく……というかどうみてもエジプトの壁画のようになっているけど、可愛い猫のイラストよりはずらり並んだ壁画猫の方が怖いのではないだろうか。
しっぽは2本描かねば。しっぽが2本でー、2倍かわいいー。
んむ、次は演出。
すとーりーはあるし、それに沿った怖がらせ方をしたい。
こう……「人の匂いがする……」みたいな音声を入れて「人とバレてはならない、バレそう」を意識させたうえで「見 つ け た」みたいな音声を入れたり。
後ろでガタガタっと物音をさせて後ろを振り向かせたところで「駄目だよ、逃げちゃ」みたいな音声とともに花弁(っぽい足元のライト)を消したり。
最後には「こっちだよ」みたいな音と共に足元の花弁ライトが再点灯されて出口に導かれるのだ。
●とびっきりのお化け屋敷のために
今は使われていない病棟には、お化け屋敷の準備に様々な機材が運び込まれていた。セロハンの飾りに、動く巻物。遺跡にでも置いてありそうな仮面には、妙な模様がついている。
「!」
猫の、足跡だ。
ぱっと、少女は顔を上げる。緑の瞳を輝かせ、くるくると辺りを見渡せば銀色の髪が揺れた。ぱさぱさ、と触れる頬にあるのは守護者としての紋であった。獣神王朝エジプトの大地を知る娘は、まっ白な壁に残る足尾と、ぴん、と立った耳のイラストに、足を伸ばす。
「猫! 猫と遊びに……いない?」
今は準備中で、猫たちは中に入ってくることはないらしい。
「そっかー……」
それはそうだ。気まぐれな猫たちはきっと、好きなように遊んで、予想だにしない場所を昼寝の場所に選ぶだろう。むむ、と足を止めると、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)は顔を上げた。
「んむ、それじゃあ我も準備を手伝おう」
お化け屋敷にするにしても、どうするのか。ある程度の道筋はあるようだが、やれることはいっぱいありそうだ。
「準備を手伝ってー、本番は我も猫と戯れるのだ」
そうとなれば、お化け屋敷の準備だ。仕掛けの準備が進む中、クィトが手伝うことになったのは壁に描く猫のイラストだった。
「んむ」
ぺたり、ぺたぺたとクィトは筆を進めていく。ペンキは十分。必要があれば、と用意されたスプレーよりペンキと筆を使いながら、時折足場の上にとん、と乗る。柔らかな背中を描いたところで——ふと、思った。なんというかこう、とっても見覚えのある雰囲気に。
「どことなく……というかどうみてもエジプトの壁画のようになっているけど」
大きな耳に、すらりと長い手足。きらりと輝く瞳に色を入れたところでクィトは唸る。だが、ここはお化け屋敷だ。
「可愛い猫のイラストよりはずらり並んだ壁画猫の方が怖いのではないだろうか」
とん、と足場から飛び降りて、くるりと振り返ればそこにあったのは壁画の猫たち。
「しっぽは2本描かねば。しっぽが2本でー、2倍かわいいー」
しゅるり、と描く尻尾は二本。並んで描かれた猫たちが、長い廊下を覆うように姿を見せた。
次は演出だ。ラップで作ったミイラや、動く絵巻にと仕掛けはあるのだが繋がりが微妙なのだという。
「すとーりーはあるし、それに沿った怖がらせ方をしたい」
考えるようにして、クィトは顔を上げた。
「んむ、声だ」
人の匂いがする、というような音声を入れるのだ。これは猫又たちの宴に紛れ込んだ人の過ごす時間。片眼隠しの蔵面が姿を隠してはくれるが——そこに、ドキドキはある。
「こう……「人の匂いがする……」みたいな音声を入れて「人とバレてはならない、バレそう」を意識させたうえで「見 つ け た」みたいな音声を入れたり」
「あ、いいですねそれ! すごいそれっぽいです!」
目を輝かせてそう言ったのはスタッフだった。
「スピーカーと録音の用意をしますね。他に今のうちに用意しておくものってありますか?」
「そうだな……花弁のライトはあるか?」
足元を照らすにも、花弁のライトは役立つだろう。何より、合図と演出にできる。客の後ろでガタガタっと物音をさせて後ろを振り向かせたところで声を入れるのだ。
「そこで「駄目だよ、逃げちゃ」みたいな音声とともに花弁を消したり……」
見付かってしまったという事実は、追い掛けられるかもしれないという演出は客をびっくりさせるだろう。
「最後には「こっちだよ」みたいな音と共に足元の花弁ライトが再点灯されて出口に導かれるのだ」
「最高じゃないですか! すぐに準備しますね!」
ぱたぱたと駆けていくスタッフを見ながら、クィトは用意してあったライトの一つを灯す。淡い光、猫又達の道標。
「きっと、良い宴になるな」
そして本番は猫と存分に戯れるのだ!
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
ラウム・マルファス
病院だからネ、使ってないとはいえ、本物のネコを入れるわけにはいかないカナ?ネコがいないなら、ドローンの出番だヨ。
コミカルなネコ型ドローンを召喚。クロネコ2匹、尻尾を2本にして猫又っぽくしておこウ。
お礼のお祭り案内なら、怖いより楽しい方が良いよネ。フロア1つ借りて、お祭り屋台をめぐる脱出ゲームにしてみよウ。せっかくだから動物の妖怪多めが良いカナ、鳥獣戯画みたいに、ウサギとかカエルとかネズミとかタヌキとかネ。全部ドローンは制御が大変だから、トラップ生成でだした人形も飾っておこウ。
入口でコインとお化け提灯を渡して、病室やナースステーションにあるお店で買い物できるようにするヨ。商品はクッキーとか飴。
油揚げを買って廊下のキツネドローンに渡せば、トラップ生成で隠してたエレベータの入口が見えるようになって帰れるヨ。
ボクはナースステーションの奥で、監視カメラから様子を見てよウ。迷子とか怪我したら助けに行くけど、まぁドローンにお任せで大丈夫なハズ。
一応、終わったらクリーニング使っておくネ。
●クロネコ冒険譚
本番を前に、お化け屋敷用の病棟は賑わいを見せていた。壁一面に猫の描かれた廊下を抜ければ、不思議なお面の並ぶ部屋に辿り着く。ラップで作ったミイラに、不思議な箱と来たところで未だ準備の進んでいないフロアもあった。
「この辺りはまだ進んで無いんだネ」
くるり、とラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)は、がらんとしたフロアを見渡した。使わない病棟は封鎖するという話だ。ガランとした空間も、これはこれで恐くはあるのだろうが――ひとまず、部屋の中に猫の姿は無い。
「病院だからネ、使ってないとはいえ、本物のネコを入れるわけにはいかないカナ?」
後は、猫の方が怪我をしないようにか。それでも折角だ。本物の猫が入れないのなら、案内役も必要になる。
「ネコがいないなら、ドローンの出番だヨ」
パチン、と指を鳴らす。淡い光の下から、一匹、また一匹と姿を見せたのはネコ型のドローンだった。くるり、と猫らしく動いてみせるドローンを抱き上げて、そうだネ、とラウムはひとつ笑みを見せた。
「折角だし、クロネコ2匹、尻尾を2本にして猫又っぽくしておこウ」
『……?』
こてり、と首を傾げて、耳をぴこぴこと動かしてみせるドローンにラウムはふ、と笑う。
「今日は猫又としてのお仕事だヨ」
『ニャウ』
一拍あけて、二つの尾を揺らしてみせた。
「さて、このフロアだけど……お礼のお祭り案内なら、怖いより楽しい方が良いよネ」
どうせなら、とラウムが提案したのは『お祭屋台を巡る脱出ゲーム』だ。
「せっかくだから動物の妖怪多めが良いカナ、鳥獣戯画みたいに、ウサギとかカエルとかネズミとかタヌキとかネ」
実際の動物は連れてこれないが、ドローンであれば用意できる。できは、するのだが――……。
「うーん、全部で、十を余裕で越えるカ」
良いけどネ、とラウムは息をつく。それっぽい雰囲気にはなるだろう。やれるかやれないかで言えばやれるのだが――どうしたって、制御が大変になる。
(「トラップ生成でだした人形も飾っておこウ」)
ちょっとした違い、というやつだ。
一匹、もう一匹と用意したドローンを借りたテーブルの上に広げながら、先に調整を終えたウサギを見る。ぴょんぴょんと好き勝手に遊ぶのをネコ型ドローンに捕まえさせながら、ラウムは汗を拭う。
「夏だネ」
夏の風物詩。夏がやってきた証。今年も、もう一度季節は巡り得た。
「……」
フ、とラウムは小さく笑う。ぱたぱたとご機嫌なドローン達の額を軽く小突いて、残りの仕掛けに取りかかった。折角の屋台だ。入り口でコインとお化け提灯を渡し、ナースステーションにある店で買い物が出来るようにするのだ。
「商品はクッキーとか飴。後は……」
フフ、とラウムは小さく笑う。本番はもうすぐ。賑わう病棟に開始の声が響く。
『……ここで買い物ができるんだ』
『うーん、何がいいかな……。クッキーも飴もあるけど』
あ、と客の一人が声を上げる。
『あぶらあげがあるよ! さっき、狐のドローンがいたよね。あの子に上げたら……』
「……」
にぎわう子供達の姿を、ラウムはナースステーションの奥、監視カメラ越しに眺めていた。今の所迷子は無し。ドローン達が良い道案内になっているようだ。
「良い時間になると良いネ」
ふ、とラウムは笑う。賑やかな時間を彩ったドローン達を眺めながら。今日という日、不思議な宴の主人として。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
恋人のエイレーネ(g08936)とともに
それでは……私たちは2人ですし、案内の猫又役としてお手伝いをしましょうか。
尾は一本しかないので飾りをつける必要がありますが、ディアボロスたちなら猫の姿でも案内できますし、必要ならそちらの方が良い場面もありそうです。
【猫変身】で黒猫の姿に変身します。
ん……自分で猫の姿になるのは初めてでしょうか。
おかしなところなどありませんか?
エイレーネの傍により、くるりと回って見てもらいます。
ありがとうございます、おかしなところはないようで安心しました。
戦場でも輝くあなたより美しいなんて、そんなことは……
その後は客の案内役。
二人でお化け屋敷のガイドを行い、やってくる客を案内します。
人の姿と【猫変身】の猫の姿を使い分け、人の姿で道を指し示したり、猫の姿で高所へと飛び乗り、次の道を示したりします。
恐れることはありません。
私たちが導きます……花弁を見失わないように。
考えてみれば確かに……えぇ、悪くない体験でした。
エイレーネ・エピケフィシア
愛するクロエ様(g08917)と共に
(猫変身した恋人を見て真顔で沈黙)
……はっ、すみません
何も変ではありませんが、美しすぎる余りに暫し呼吸を忘れてしまいました
恐らくですが、神や霊に非ざる定命の者の中ではクロエ様が最も美しいのではないでしょうか?
仮面と作り物の二本目の尻尾をつけクロエ様と共にお客様を案内します
クロエ様が狐の尾に突っ込まれたら次のように説明を
実は彼女は新たな尾が育ちつつある猫又でして
更に長く年月を重ねれば太い尾が裂け、第三の尾を生じるのです
花弁を道に撒いて道標に。まるでアリアドネーの糸のようですね
ならば道標から目を逸らすよう仕向ければよい緊張感が生まれそうです
【使い魔使役】で普通の猫を操り、全く道を外れた所で楽し気な猫の集会を行わせたり
或いは横から突然目玉のついた提灯や作り物の生首を飛び出させて、花弁を見失いかねないように
その上で本当に道を間違えそうな時は、冷静さと勇気を保って進み続けるように導きます
猫たちが冥府に導きの灯を点す……ふふっ、思いのほかわたし達らしい仕事でしたね
●花めくあなたとの旅路
猫又達の不思議な祭り――病棟の一部を利用して行われているお化け屋敷は賑わいを見せていた。不思議なビデオに、揺らめく尻尾。壁一面に描かれた猫に見送られ、人々は屋台を巡る脱出ゲームか長く続く迷い路を選ぶことになる。
「それでは……私たちは2人ですし、案内の猫又役としてお手伝いをしましょうか」
「はい」
その迷い路の一角、その入り口に二人の姿はあった。入り口はひとつ、この先は右回りの迷路になっている。道案内がいた方が良いだろう。
「尾は一本しかないので飾りをつける必要がありますが、ディアボロスたちなら猫の姿でも案内できますし」
そう言いながら、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)はしゅるり、と黒猫に姿を変えた。ゆるり、と揺れる尻尾。ぴん、と立った耳の感覚は変わらないのだが――やはり、少し違う。
(「ん……自分で猫の姿になるのは初めてでしょうか」)
ゆるりゆるり、と尾を揺らし、随分と低くなった視点に黒猫となったクロエは考えるように息をついた。
『おかしなところなどありませんか?』
「……」
押し黙ったままの恋人に、気が付かないまま。
『エイレーネ?』
とてとてとて、とエイレーネの傍により、黒猫はくるり、と回ってみせる。一拍、珍しく言葉を返さない彼女に瞬いて顔を上げた。
『何か……』
「……はっ、すみません。何も変ではありませんが、美しすぎる余りに暫し呼吸を忘れてしまいました」
一息であった。一息で真顔から回復したエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)はそう言った。艶やかな美しい毛並みに、すらりと長い手足。揺れる尾さえ美しい。愛する彼女の黒猫の姿だ。魅入ってしまうのも不思議は無い。
『ありがとうございます、おかしなところはないようで安心しました』
とん、とクロエが窓枠に乗る。視線を合わせるようにしてそう告げた彼女の言葉に、姿に、じぃっと見て――それこそ穴が空いてしまうのではないかと、何かあったのではないかとクロエが首を傾げるほどに見てエイレーネは言った。
「恐らくですが、神や霊に非ざる定命の者の中ではクロエ様が最も美しいのではないでしょうか?」
『戦場でも輝くあなたより美しいなんて、そんなことは……』
ぴん、と耳を立てた黒猫が、何処か恥ずかしそうに尾を揺らした。人の姿であれば頬を染めていたのか、或いは本当に不思議そうに瞬いていたのか。猫の青い瞳からは知れぬまま。怪談を上がってくる客の賑やかな声が二人の耳に届いた。
「ここ……だよな、次は」
「俺達の進んでる道、あってるか?」
恐る恐る、辺りを見渡す子供達と目が合う。わ、と驚いたように跳ねた彼らにエイレーネとクロエは互いに瞳を合わせて、ふ、と笑った。
「……」
「私達が御案内します」
黒猫はゆるりと尾を揺らして。そんな愛おしい姿の傍ら、エイレーネは微笑んで来訪者達に告げた。仮面をつけ、作り物の二本目の尾をつけたふたりは今日は猫又の案内人。
「道を、教えてくれるの? この先真っ暗なのに分かるの?」
「はい。私と彼女が案内します」
真っ暗な通路の先を指さす。カツン、と一歩、足音が何処までも反響すれば子供達は、びくり、と身を揺らす。
「……」
それでも逃げ出さないのは覚悟だろうか。
大丈夫だよ、とそれまでずっと手を震わせていた少女が拳を握る。
「案内してくれるって言うし、私達だってここまで来れたし」
「そう、そうか。そうだよな。四階まで来れたし……その先だって」
「でも、その猫……まだ尻尾一本だよな……。大丈夫なのか?」
案内とか、というのは迷うのではないか、という不安からだろう。真っ暗闇の通路。カチ、カチと聞こえる時計の音と何かが這いずるような音は彼らにとっては恐怖だろう。
(「とはいえ、子供達の心配ももっともですが……」)
尾は飾りをつけてはいるのですが、とクロエは思う。さて、どうしましょうか、と考えていたところで、エイレーネが子供達の前に膝を折った。
「実は彼女は新たな尾が育ちつつある猫又でして
更に長く年月を重ねれば太い尾が裂け、第三の尾を生じるのです」
「そうなんだ……」
「すげぇ……!」
『……』
その言葉に、誰もが心を惹きつけられる。
恋人の姿にふ、と笑ってクロエは小さく尻尾で触れた。にゃぁ、と聞こえた声は、彼女のものだったか、お化け屋敷に流れる猫の声であったか。
「――さぁ、先へ」
花弁を道に撒く。淡く色付いた花弁は、暗く続く道の中で子供達を導く道標となる。
「まるでアリアドネーの糸のようですね」
『はい』
小さく、二人だけに通じる会話で言葉を交わす。真っ直ぐに道を進み、時に目玉のついた提灯を突然飛び出させたり。
「きゃぁあああ!」
「なんかでたー!」
「逃げろ……ッなんで、こっち行き止まり!?」
道は!? と子供達が慌てて声を上げる。作り物の生首がどーん、と上から姿を見せればとびっきりの悲鳴と共に来た道を引き返す。
「道、道が……」
「どうしよう、ずっと同じに見える」
「でも、さっき右にいったら、ずっとじゃおかしいよ! 今度は左に行くべきだよ」
「でも……、あ、待って、案内の人は……猫又は? 猫は……!?」
花弁を見失いかけた子供達が辺りを見渡す。見付からない、と今にも泣き出しそうな子供達を視界にエイレーネはクロエを見た。
「そろそろですね」
『はい』
見付からないと言いながら、それでもあの子達は自分達の行くべき道を見つけていた。ただ、勇気が無くて進めないだけだ。それなら――導くのが案内人の役目。
「恐れることはありません」
とん、と黒猫は棚から飛び降りてその身を解く。妖狐の姿に戻りながら、クロエは静かに告げた。
「私たちが導きます……花弁を見失わないように」
「冷静さと勇気を保って進み続けるよう」
クロエとエイレーネの言葉に、子供達が驚いたように顔を上げ――そして、頷く。
「よし、行こう。左であってるよ」
「手を離さないように握って」
「行ってくるね! 猫又さんたち!」
花弁の先へと子供達が駆けていく。迷わぬようにその道を導きながら光の向こうへと飛びだしていく背を見送った。
「猫たちが冥府に導きの灯を点す……ふふっ、思いのほかわたし達らしい仕事でしたね」
光の向こうへと行った子供達にエイレーネは笑ってクロエを見た。ふわりと名残の花が舞う。
「考えてみれば確かに……えぇ、悪くない体験でした」
淡い光の下、微笑むエイレーネを見てクロエも笑みを零した。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【罪縛りの鎖】がLV2になった!
【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV2になった!
朔・冥夜
天彩/g02572と
なあなあ、其処のお客人
黒猫だけじゃないぜ、余所見も油断も禁物
ほうら、アッチにもコッチにも
「ばあ!」なんて【猫変身】で姿を変えた白猫が
【光学迷彩】や【壁歩き】で
しゅたっと急に現れて頭に着地してみたり
天井から驚かしてみたり
足元でくるくるり
そうだ。猫又らしく、しゃんとしねぇとな
黒猫の天彩に倣って背筋ぴん、仁王立ち
天彩も頑張ってる
狐姿よりも先に猫姿を見たレア感あるが
くっ…やっぱり足が攣りそうだにゃん
不格好?うるせーにゃん
こちとら初めての猫変身でな
蔵面から覗く猫目は恥ずかしそうに視線彷徨う
へえ、天彩のトラップ中々ギミックが効いてるなあ
…猫好きはちょっと可哀想になるね
俺は…そこに気を取られるお客に
【冷気の支配者】で冷えひえの……不意打ちだ
襟首にペタン!と肉球をお見舞いしよう
ふみふみ、ふみふみ
どうだ、吃驚しただろう。怖いだろう。
椿の花びらを差し出し
さて、お帰りの時間だぜ
――祭りは楽しんで貰えたか?
笑顔だな……しかも和まれている
俺達の渾身の脅かしを躱すとはやるな
もう、迷わないように
眞守・天彩
冥夜さん/g02572と
猫又ってどんな姿だと思う?
多分ねぇ、…こんな姿!
(【猫変身】を使った黒猫姿。
ドヤ顔で仁王立ちをしている…が、耳と尻尾がへにゃっとしている)
あぁっ猫姿で二足歩行しんどい!猫又すごい…!
冥夜さんの立ち姿を見てると励まされるな
不格好でも努力が大事!
猫姿でお客さんを入り口に案内するよ
お話通り、猫又についておいで、だね
【エアライド】や【壁歩き】を使って妖怪感ましましでいっちゃおう!
俺の一押しは【トラップ生成】で作った、妖怪すねこすりゾーン!
足元をふわふわした物が擦っては引っ込む特殊床!
踏むと猫っぽい鳴き声がする効果付き!
触れません!!
トラップだからね、猫がいる訳じゃないから
猫好きな人は、ほら、
冥夜さんのふみふみで幸せな顔をしているから大丈夫だよ!
お化け屋敷、どうだった?
みんないい笑顔だよね。怖がってない…
もしかして俺たち、お化け屋敷の才能ない??
…まぁ、楽しい思い出が作れたなら、いいか!
ゴールでは矢車菊の花弁を差し出すよ
この先も迷子にならないよう、気をつけてね
●宵に二つの尾が揺れて
ひとつ、また一つとフロアを抜けていく人々の賑やかな声がお化け屋敷病棟に響いていた。
「ここ、かな?」
「ここだよな、次のフロアって」
ぱたぱたと慌てるように響いていた足音が、ふいに、止まる。警戒するように右に、左にと見渡すのは子供達だった。
「それで? 兄貴はねこまたが何なのか知ってんのかよ」
「……」
少年が足を止める。えーっと、と辺りを見渡すそこに、とん、と足音が響いた。
「猫又ってどんな姿だと思う?」
「――!」
さっきまで何も聞こえなかったのに。
さっきまで何も見えなかったのに。
暗闇になれたはずの目に、薄暗いだけの病室が並ぶ場所から、ひょい、と彼は姿を見せた。ぴんと立った耳は黒く、暗い廊下でもよく見えるほどの青い瞳。面で隠した半分から見える夜の深い青。星空に似た色彩に、少女がぱち、と瞬く。目が合えば、ふ、とそのひとは笑って言った。
「多分ねぇ、……こんな姿!」
しゅるん、とその人が姿を変える。目の前にいたひとはいつの間にか消えて、そこに現れたのは二本の足で立つ――猫だ。
「すごい……」
「お兄ちゃん猫又さんだ!」
「すげぇえ猫又って立つんだ。そうだよな!」
「これが……ねこまた……」
驚きと、感動。そして子供達の興味心に包まれる中で黒猫は、それはそれはドヤ顔で仁王立ちしていた。
「……」
耳と尻尾が、へにゃってきてしまっていたのだが。
(「あぁっ猫姿で二足歩行しんどい! 猫又すごい……!」)
眞守・天彩(くろきつね・g02572)は、子供達の夢を壊さないように必死に、それはもう必死に立っていた。猫の姿――そう、猫変身で得た姿を子供達は本物の猫又と信じているようだった。大分ぷるぷるはしているのだが、そこは猫。たぶん毛とかがどうにかしてくれる。
「……ん?」
「……」
前言撤回。ばれたかもしれない。
う、と吐く息が、みゃぁと変わり、震える足を必死に支えて、ぴん、と立つように耳に頑張ろうよ、と祈っていれば、とん、と馴染みのある足音が天彩の耳に届いた。
「なあなあ、其処のお客人。黒猫だけじゃないぜ、余所見も油断も禁物」
ふらり、と衣が揺れる。風を纏うそれは、薄闇の中から姿を見せた。蔵面で半分、瞳は隠され、晒す紫昏は緩く弧を描いた。
「ほうら、アッチにもコッチにも」
「え……?」
そい、とさした指先が、暗闇を示すと同時に、はらり、と衣が床に落ちた。ひゅ、と息を飲んだ子供達を前に、それは――現れた。
『ばあ!』
「わぁあああああ!」
しゅたっと、少年の頭の上に白猫が着地したのだ。
「猫……さん?」
「いやだってさっきの人は……!?」
「じゃぁ、この白猫も……猫又?」
ゆるり、と白猫は尾を揺らす。ぴょん、と少年の頭の上から壁に跳んで、とことこと当たり前のように壁を歩けば子供達が息を飲んだ。
「え、どうなって……」
「わ……すご、うわぁあ天井からいきなり出てくるなよ!」
「にゃぁ」
ころころと鈴を鳴らすように白猫は鳴いて、足元でくるくるり、と身を回していた。
(「随分驚いたみてぇだな」)
子供ってのがある分、逆に余り驚かないかとも思ったんだが、と白猫――基、朔・冥夜(星朧・g06409)は思う。結構、驚いている。目を輝かせているのは、一番年下の少女だろう。
「猫又……ふたり、二匹? いるんだ。お話通りだね!」
わぁ、と零す声に、ふと冥夜は思う。
(「そうだ。猫又らしく、しゃんとしねぇとな」)
ゆるりと尾を揺らし、子供達の前に立って――二つの足で起ち上がる。背筋をぴん、と伸ばして仁王立ちになれば、わぁあ、と声が上がった。
「やっぱり猫又はいたんだ!」
「すごいや」
「猫又さんは、道を知っているの?」
「……」
それは、それはもう黒猫の天彩と白猫の冥夜。二人――二匹の猫又は好評だった。好評だったが為に、四本足に戻るタイミングを見失ったわけなのだが。
(「天彩も頑張ってる」)
ちらり、と冥夜は傍らを見た。へにゃっとした尻尾をどうにかしようとしているのか、ぷるぷると震えているのが見える。
(「狐姿よりも先に猫姿を見たレア感あるが」)
何せ猫だ。猫の耳は慣れないのか、微妙にこっちもへにゃっているのだが――天彩ばかり見ている余裕もなくなりそうだ。
「くっ……やっぱり足が攣りそうだにゃん」
「不格好でも努力が大事!」
先に行った子ども達を見送って、天彩は身を戻す。
「不格好? うるせーにゃん。こちとら初めての猫変身でな」
ふぅ、と吐く息と共にゆるりと身を戻せば、蔵面から覗く冥夜の瞳は恥ずかしそうに視線を彷徨わせていた。
「お話通り、猫又についておいで」
さぁ、次のお客さんの案内だ。二匹の猫又に誘われるまま、やってきたのは学生達だ。
「うわ……え、なにこれ」
「ふ、ふわふわ……!? え、猫の声!?」
「わぁあなんか触ったー!」
ここはそう、天彩の一押し、トラップ生成で作った妖怪すねこすりゾーンだ。ふわふわしている、と学生達が行っているのは、足元をふわふわした物が擦っては引っ込む特殊な床だ。真っ直ぐ歩いているはずなのに何かがいる気がする。何度見ても何もいないし触れないのに猫の声までするのだ。
「へえ、天彩のトラップ中々ギミックが効いてるなあ。……猫好きはちょっと可哀想になるね」
右に、左に。そろり、そろりと足元ばかり期を取られている学生の背に白猫の姿をした冥夜がぴょん、と飛び乗った。
「冷えひえの……不意打ちだ」
「!」
それは、襟首にぺたん、と落とされた一撃。冷たい肉球がいきなり触れれば――……。
「どうだ、吃驚しただろう。怖いだろう」
「うわぁああああ!」
「きゃぁああ!」
「え、なに、なに!?」
一人が腰を抜かし、もう一人がそれに驚いて声を上げて。何が起きたか分からないうちに、ふわふわに出会っていた。
「あ、ふわふわ……猫ちゃんの声がする」
ちょっとした、現実逃避と共に。
「そういえばさっきの、猫好きな人は、ほら、冥夜さんのふみふみで幸せな顔をしているから大丈夫だよ!」
二人目にしたふみふみとぺたぺたは、それはもう大好評だった。
「さて、お帰りの時間だぜ」
椿の花びらを差し出して白猫は言う。
「――祭りは楽しんで貰えたか?」
「お化け屋敷、どうだった?」
ゆるり、と尾を揺らすようにして黒猫は問う。にゃう、と零れた声と共に、最後の客達は「楽しかった」と笑みを見せた。
「笑顔だな……しかも和まれている」
「怖がってない……」
白猫と黒猫は、それはそれは困ったように顔を見合わせました。尻尾はぺたりと垂れて、猫の耳はぺしゃんとしながら、それでも顔を上げます。
「もしかして俺たち、お化け屋敷の才能ない?」
「俺達の渾身の脅かしを躱すとはやるな」
揺れた尻尾は、ぐぬぬと唸るものか。それとも、全くと笑うものか。
「……まぁ、楽しい思い出が作れたなら、いいか!」
楽しそうに笑みを零し、辿り着いたゴールを前に、黒猫は――天彩は矢車菊の花弁を差し出した。
「この先も迷子にならないよう、気をつけてね」
ゆるり、とその横で白い尾を揺らして白猫は――冥夜は言った。
「もう、迷わないように」
これは、猫又達に導かれた物語。猫又達に案内され、暗闇を、細道を抜けた人々は沢山の驚きと楽しさと出会いと共にお化け屋敷の時間を楽しんだのでした。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
●猫又横町へようこそ!
カランカランと下駄を鳴らして、ひとつふたつと影が行く。ころころ転がる鈴の音は祭りの飾りか、それとも二つ揺れた尾のものだろうか。
「ねぇ、目移りばっかりしてないでこっちにおいでよ」
「この店だって良いものがあるよ」
にゃぁにゃぁと聞こえる声が不思議と耳に届いたのは、この夜の幻覚か。見渡した先に広がるのは妖怪横町——猫又たちの祭り。とっておきの悪戯を込めたドリンクは、どんな色に変わるだろうか。
「さぁ、隠して隠して」
「きみがひとだってばれないように。そしたら手をつなぐから」
離しちゃだめだよ、離さないけどね。
にゃぁ、と言って、猫又が笑う。あの時、物語の中で少年と猫又達が駆け抜けたお祭でどんな時間を過ごそうか。
水上・鏡夜
雪路(g04126)と一緒に
アドリブ歓迎
髪は簪でまとめて、服装は華やかな着物、遊女に少し似せておくかな
毛女郎の仮装で妖怪横丁を楽しもうか
逸れないように雪路と手を繋いで、のんびりと散策を
何気ない事でも二人だから幸せに思うんだろうね
白、黒、三毛にまだらと、本当に猫だらけだね
ん?雪路、どうかした?
……ありがと。雪路も似合ってる、よ。
あぁ、バタフライピーを使ってるのか
酸性、アルカリ性に触れると色が変わるんだよ
試してみる?
レモンなら赤に、重曹なら緑に変化してくのは面白いだろ?
あぁ、似てるのかもね
でも、こっちのほうが安全だよ
暑い時期だし、かき氷でも買わない?
シロップで舌の色が変わるのも猫又の悪戯みたいだよね
味はぶどうにしようかな(雪路の色だよな)
お互いの色を選んでるのに気づいて、口元を隠してしまう
……好きな物が増えるのは良いことだよね
左雨・雪路
鏡夜(g09629)と一緒に
アドリブ歓迎
着流しにマフラー、光学迷彩で首だけが無く頭が浮いているように見せて妖怪「首無」の仮装
妖怪横丁をのんびりと手を繋いで散策しよう
こうして2人で歩くだけで、幸せを感じてしまうなんて、ね
通りには猫も多いけど、普段と違う装いの鏡夜につい目が行ってしまう
ん、かわいいなぁって思ってね。……ねこ。
猫又ドリンクだってさ
ばたふらいぴぃ?へぇ、ころころ色が変わって面白いな。君の用意した新薬テスターを思い出すね。
かき氷か、良いね暑い日にぴったりだ。
確かに色んな色もあるし、面白いよね。
じゃあ俺はブルーハワイ?ってやつ試して見ようかな。
食べた事は無いけれど、何となく鏡夜の色味に似てるから、ね。
君は?
●ふたり、揃えて
夕暮れ時の妖怪横丁は賑わいを見せていた。にゃぁにゃぁと聞こえる猫の声は、猫又たちの祭りに誘われてやってきた猫たちのものか。出店には猫のマークが描かれ、淡い光が灯す先では看板猫宜しく白猫達がにゃぁ、と鳴いていた。
「――雪路」
カラン、とひとつ下駄を鳴らし、歩を止める。ゆるり、と傍らを見れば、ぱちと瞬く瞳と出会った。気だるげな男の赤茶色の瞳は二度、三度と瞬いて、小さく名を呼ぶ声がする。
「鏡夜?」
問いかけるように緩く首を傾げれば、マフラーが揺れた。着流しにしゅるりと巻いたマフラーは光学迷彩もあって首だけが無い、頭が浮いた首無しの姿に見える。そんな首無しが緩く首を傾げたのだから、子供達の視線がわぁ、と向く。賑わいを気にする様子など無いのか、ただ一歩、身を寄せてきた左雨・雪路(低血圧系忍者・g04126)に、ふ、と水上・鏡夜(添星・g09629)は笑った。
「手。逸れないように」
すい、と鏡夜は手を差し出す。遊女に似せた華やかな着物に、髪は簪で纏めて。そろり進める一歩を小さくすれば毛女郎の仮装に身を包んだ鏡夜の手を雪路が取った。
「ん」
小さく答えた言葉とは別に、恭しく取られた手をぎゅ、と握られる。淡く灯る明かりの下、ふたり影を揃えるようにして妖怪横丁の中へと足を進めた。カラン、コンと下駄を鳴らし、甘い香りに右に左にと視線を向ける。つないだ手をつい、と引いて、あそこ、と呼ぶように指先で手の甲に触れる。
「何かあった?」
問うのは鏡夜の番だった。気だるげな顔をしたひとは、吐息を零すようにして笑う。
「こうして2人で歩くだけで、幸せを感じてしまうなんて、ね」
夕暮れ時に手を繋いで、ただ一緒に歩く。それは穏やかな時間だった。楽しげな子供達の声を聞いて、賑やかな出店の呼び込みを聞いて。街中を何に追われること無く二人で歩く。
「何気ない事でも二人だから幸せに思うんだろうね」
少しだけ、握る手を強くした。つい、と手を引くようにしたのは二人同じで――ふ、と目を見合わせるようにして鏡夜と雪路は笑った。
「みゃぁ?」
ふいに、そんな声がした。
合いの手を入れたのか、それとも二人の仮装が気になったのか。つい、つい、と鏡夜の着物に子猫が手を延ばしていた。
「へぇ、猫。白、黒、三毛にまだらと、本当に猫だらけだね」
「みゃう」
「返事は一人前だね」
ほら、とひらひらと鏡夜が手を遊ばせれば、子猫たちがぴょん、と跳ねる。ひら、と手を回して、次はちょん、と触れて。じゃれつく子猫は、鏡夜を遊んでくれる相手と見たのか。ゴロゴロと喉を鳴らす猫にしゃがみこんで鏡夜は手を延ばした。
「なに? ご機嫌だね」
「みゃう」
「……」
そんな鏡夜と猫の会話を雪路は眺めていた。いや、正しく言えば――目が、離せなかったのだ。彼女から。撫でられて機嫌良く鳴く猫よりも、普段と違う装いの鏡夜に目が行ってしまう。
「ん? 雪路、どうかした?」
その視線に気が付かない彼女じゃない。視線を上げた鏡夜が小さく首を傾ぐ。初めて見るような仕草でも無いのに、どうしたって目で追ってしまって。
「ん、かわいいなぁって思ってね」
「……?」
雪路の言葉に鏡夜が瞬く。金色の瞳が不思議そうな色を乗せたのを見ながら雪路は、ふ、と笑うようにして言った。
「……ねこ」
「……ありがと」
言い添えた言葉に返ってきたのはそんな言葉で。あれ、と思うより早く、すいと立ち上がった鏡夜が雪路の影を踏む。
「雪路も似合ってる、よ」
「――」
間合ひとつ、踏み込まれて。届いた言葉に返す言葉を雪路が一拍逃せば、にゃぁ、と二人の足元で猫が鳴いた。仲良しだね、とでも言うように。
「猫又ドリンクだってさ」
人懐っこい子猫たちと別れ、やってきた出店には猫又のイラストが描かれたドリンクがあった。可愛らしい絵柄のカップに足を止めれば「あぁ」と鏡夜が金の瞳を細めた。
「あぁ、バタフライピーを使ってるのか」
「ばたふらいぴぃ?」
慣れぬ言葉を雪路が口にすれば、鏡夜が空いた手を揺らした。
「酸性、アルカリ性に触れると色が変わるんだよ」
試してみる? と誘う鏡夜の言葉に頷いて、二つ注文する。パッションフルーツをベースに三層になっているフルーツティーだ。レモンを入れれば一番上の層が色を変えていく。
「レモンなら赤に変化してくのは面白いだろ?」
「へぇ、ころころ色が変わって面白いな。君の用意した新薬テスターを思い出すね」
一口、喉を潤す。味はフルーツティーで、入れたレモンがふわり、と変わる。手元を見れば、色が変わってカップに描かれた猫又の尻尾が見えていた。
「あぁ、似てるのかもね。でも、こっちのほうが安全だよ」
そんな尻尾を見ながら、鏡夜がゆらりとカップを揺らす。ふわりと香るフルーツと共に蜜の甘みが残る。
「暑い時期だし、かき氷でも買わない?」
「かき氷か、良いね暑い日にぴったりだ」
祭りの終わり、夏の夜を楽しむようにカキ氷を楽しんで。
「シロップで舌の色が変わるのも猫又の悪戯みたいだよね」
ふふ、と笑って鏡夜は出店で味を選ぶ。ここでも色が変わるものはあるらしいが――……。
「味はぶどうにしようかな」
呟いて鏡夜はふ、と思う。
(「雪路の色だよな」)
この色彩に思い出すのは、傍らの彼の事だった。ふいに繋いだ手をつい、と引かれる。顔を上げれば、ぱっと味を決めたらしい雪路がこちらを向いていた。
「じゃあ俺はブルーハワイ? ってやつ試して見ようかな」
食べた事は無いけれど、と
「何となく鏡夜の色味に似てるから、ね」
「――」
柔く、声が落ちた。優しい瞳に鏡夜はじわりと頬が熱くなるのを感じていた。雪路が選んだのは鏡夜に似ている色だからで。鏡夜が選んだのは――……。
(「雪路の……色」)
お互いの色を選んでいる事実に、照れたように口許を隠す。
「君は?」
僅か覗き込むようにしてそう聞いてくる雪路は、鏡夜の心に気が付いているのだろうか。す、と小さく息を吸って鏡夜は顔を上げる。
「ぶどうにするよ」
小さくそう言う。微笑む彼の視線に何か良い返すべきか。結局紡いだのは少し間を開けてのことで。
「……好きな物が増えるのは良いことだよね」
そう言えば、雪路は指を絡めるようにして手を繋ぎなおした。うん、と笑って。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【通信障害】がLV2になった!
【光学迷彩】がLV2になった!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!
不破・結宇
アドリブ絡み歓迎
怪談の時の蔵面を口だけ出す感じで身につけてぶらぶら
出店を満喫
折角じゃ、涼しげな流水に金魚柄の浴衣姿でまわろうか
気になるものはたくさんあるけどお腹には限界があるけん、よお選んでいただこうか
ふむ、雷神様のわたあめか、どれどれ……
なるほど、中にパチパチする飴が入っとるんじゃな?刺激的じゃ
こっちはかき氷か、ブルーハワイ?初めて聞く味じゃ、それにするか
サイダーっぽい感じで結構好きかもしれん
なんじゃ、うちの舌がどうかした…
くふふ、真っ青に染まっちょるのぉ
〆はバタフライピーのお茶にしようかのぉ
レモン汁を数滴たらし
色を変える前と後をそれぞれ写真に取って
酸性とアルカリ性にバタフライピーの色素が反応して色が変わる…
仕組みは分かっていても目にするとやっぱり不思議じゃあ
おっと、今のうちは通りすがりの化け猫のお姉さんじゃけん
●宵々泳いで
通りを賑やかな声が駆けていった。風鈴の涼やかな音色は夕暮れ時に良く似合う。ひとつ、ふたつと見えた出店は近づくほどに猫の模様が目に付く。ぴん、と立った耳に尻尾は二つ。ゆらり揺れると思えば、二匹の猫が看板猫よろしく腰掛けていた。
「にゃーご」
「みゃ」
小さく鳴いた白猫の二匹にふ、と笑い不破・結宇(ナナシの薬売り・g10601)は足を止める。ぴん、と白猫が耳を立てたのは浴衣に描かれた金魚が理由か。涼しげな流水に金魚の泳ぐ浴衣を揺らし、結宇は小さく笑った。
「気になるものはたくさんあるけどお腹には限界があるけん、よお選んでいただこうか」
怪談の時につけていた蔵面を、口許だけ出すようにしゅるりと巻いて結宇は出店へと目をやる。しゅわしゅわとしたサイダーを扱う店に、果実水を扱う店では苺や林檎などフルーツの形をした容れ物に入れて持ち歩けるのだという。
「ふむ、雷神様のわたあめか、どれどれ……
なるほど、中にパチパチする飴が入っとるんじゃな?」
隣には甘味の店もあるようだ。物珍しげに足を向けた結宇に店主が楽しげに声をかけた。
「折角の祭りだからなぁ。かき氷はどうだい? ブルーハワイだが……」
「ブルーハワイ? 初めて聞く味じゃ、それにするか」
ゆるり、と尾を揺らして結宇は笑みを零す。見慣れぬ名前の味をしたかき氷を受けとって、さくり、とスプーンをさす。一口、口に入れてみれば不思議な味が広がった。
「サイダーっぽい感じで結構好きかもしれん」
「あれ、お姉さん。舌が……」
店主の手伝いをしていたのか。猫を膝に抱えていた少年が目をぱちくり、とさせる。
「青くない?」
「なんじゃ、うちの舌がどうかした……くふふ、真っ青に染まっちょるのぉ」
これもまた猫又の悪戯のひとつか――それとも、見せるそれがそうなのか。にゃう、と戯れに鳴いた猫を見送って、結宇は店の看板メニューだというドリンクを頼んだ。二層になっているドリンクにはブルーベリーと黒猫の飾りがちょこんと乗る。
「これから色が変わるんじゃの」
ふふ、と笑みを零して先に二層の綺麗な状態を写真に撮っておく。レモン汁を数的たらせば、深く濃いブルーが紫に変わってけば、グラスに黒猫の姿が見えた。
「酸性とアルカリ性にバタフライピーの色素が反応して色が変わる……仕組みは分かっていても目にするとやっぱり不思議じゃあ」
ほう、と息を落とす。見つけたグラスの黒猫に、とん、と指先で触れて結宇は笑みを零す。夕暮れ歩きに喉を潤すには調度良い、不思議なドリンク。変わる色彩を、染まる夕暮れの空に添えてあと一枚を撮れば「あ」と背に声がかかる。
「お姉さん、もしかしてさっき怪談で……」
「おっと、今のうちは通りすがりの化け猫のお姉さんじゃけん」
しぃ、とひとつ指先でつくって結宇は蔵面で顔を隠す。晒すは楽しげな口許ひとつ。揺れる尾は機嫌良く揺れて、化け猫のお姉さんは次の出店へとゆらり、と向かった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
朔・彗藍
リビト/g00145
片目隠す蔵面に猫耳と尻尾が二本ゆらり
猫又になりきってみたのです!にゃん!
怖いですか、どうですか、リビト(じっ)
撫でられ擽ったそうに尻尾抱きしめぶんぶん
リビトは鬼人さん、龍?
角が格好良いですね
不思議なもの沢山ですが気になるもの有りますか?
私は猫さんのバタフライピーが飲んでみたくて
良ければご一緒にどうでしょう
綺麗な海の青色からストローで底をくるりかき混ぜると
紫色へと変化して二色に溶けあう
綺麗…まるで魔法のようです
ちょっとお揃いみたいだなって
なんて、互いの瞳を指してはにかむ
折角ですし何か記念になるものを探して
彼の背をちょん、とつついてみる
――リビト、手を出して貰えますか
青い花弁を傍らに魚くわえた黒猫の
縮緬根付をころり
猫又のお話から
リビトが帰り道に迷わないよう
花弁を贈りますね
今日は私猫又ですから
!むにり、頬に触れる感覚
白猫さん!ふふ、くれるの?有難う
お守り可愛い…!
嬉しくて思わず彼ごと撫でようとしてしまう
頷いてすす、と隣に並び
近くなった距離に見上げ
一緒の方がやっぱり安心します
津・リビト
彗藍/g00192
花弁で片目が隠れた蔵面を付けて
頭には角のようなものが二本生えているかもしれない
――猫又、か
じい、と眺めてから笑みを零し
かわ……いや、とても怖いぞ
なんて柔く頭を撫でようとして
不思議なものが沢山あってどれも気になってしまうな
ばたふらいぴー、初めて聞いた名前だ
ああ、飲んでみたい
海色から夜空の色へ変化する様に驚きつつ
ん、綺麗な色だな
――ふふ、本当だ。とても良く似ている
俺と彗藍の色だ
辺りを見渡しつつ
背を突かれば、掌を彗藍の前に差し出す
? こうだろうか
素敵な贈り物に頬を緩ませ
可愛い黒猫だな
貰って良いのか?
ありがとう、これで道に迷うことはなくなるな
前に白猫が一匹歩いていたので
嫌がられなければ抱き上げ
少しだけ驚かせたくて
後ろから彗藍の頬を突こうとする
「うけとってくれるかにゃん?」
真顔で白猫に声をあてながら
花弁が入った黒猫のお守り袋を差し出し
自分にも撫でてくれるとは思わなくて目を瞬かせた
猫又さん、花弁で道を教えてくれるのも良いが
隣に歩いてくれると嬉しい
なんて、お祭りを満喫するだろう
●瑠璃の夜を泳ぐ
賑やかな通りにみゃぁと鳴く猫たちの声があった。看板猫宜しく客を招いたから鰹節をくれと強請っているのか、それともふふん、と尾を揺らしてみているのか。通りのあちこちには楽しげな声が溢れ、その賑やかさの中、夕焼けをとん、と飛び越した娘の白い髪が揺れる。
「猫又になりきってみたのです!」
白雪を思わせる髪と同じ、白い猫耳がぴん、と立って。ふわり揺れる尻尾がふたつ。片目を隠す蔵面をしゅるりと巻いた娘は「にゃん!」と悪戯っぽい笑みを見せた。
「怖いですか、どうですか、リビト」
とん、と影を踏んで。つま先の触れる距離で朔・彗藍(ベガ・g00192)が、じっとこちらを見上げていた。ゆるり、二つの尻尾が機嫌良く揺れたようにみえたのは、晒す片眼の薄紫が煌めいて見えたからだろうか。
「――猫又、か」
じい、と眺めてから津・リビト(釣人・g00145)は笑みを零した。
「かわ……いや、とても怖いぞ」
「ふふ」
柔く頭を撫でれば、擽ったそうな笑みが零れる。ふさふさの尻尾を抱きしめた彼女が、つい、と背を伸ばすようにしてこちらを見上げた。
「リビトは鬼人さん、龍?」
「どっちだと思う?」
花弁で片眼の隠れた蔵面が風に揺れる。ほんの一瞬、二つの瞳で捉えた白雪の猫又は、ぱちり、と瞬いてむむむ、と眉を寄せた。
「どっちでしょう……。でも、どっちも良く似合ってますよ!」
ふふ、と笑みを零して彗藍は、ぴん、と白い猫の耳を立てた。
「角が格好良いですね」
「ん。ありがとう」
ほんのりと淡く、あたたかく。胸に灯る思いがある。くしゃり、と彗藍の頭を撫でてリビトは悪戯好きの――いや、怖がらせに来た猫又に言った。
「行こう」
「はい!」
かわいい、の言葉はとりあえず内緒にして。ぱ、と瞳を輝かせるようにして頷いた彼女にリビトは笑みを零した。
みゃうみゃう、にゃう、と通りには猫たちの声が響いていた。出店に見えた尻尾の影は猫の姿を映しているのか――それとも本物の猫たちが遊びに来ているのか。甘い香りに誘われ、じゃれつく白猫たちがにゃぁにゃぁと二人を誘う。
「こっちに行ってみましょう! ……? リビト?」
「いや、……うん。行こう」
白猫達と猫又と。己は龍か鬼か。彗藍と猫たちの頬笑ましい姿に小さく笑って、一歩先を歩いていた彼女が待つ場所へとリビトは足を進めた。
辿り着いたのはちょっとしたカフェスペースを併設した出店だった。妖怪横丁の名前はあるが、猫耳の屋根を持つ出店が並ぶこの場所は猫又達の宴という言葉がよく似合う。
「不思議なもの沢山ですが気になるもの有りますか?」
月明かりの差し込む開けた会場を見渡していれば、こてりと、傍らで彗藍が首を傾いでいた。
「不思議なものが沢山あってどれも気になってしまうな」
言いながらリビトは出店を眺め見た。
季節柄だろうか。飲み物を扱う店が多い。とろり甘いチョコレートを扱うフローズンドリンクも、ミルクを注げば色が変わる。鮮やかな空の青が映えるゼリードリンクにマンゴー風味のラッシーにはグラスに白猫のイラストが隠れているようだ。
「私は猫さんのバタフライピーが飲んでみたくて」
彗藍があそこです、と指をさしたのは深い夜の空に星が飾られた出店だった。
とびっきりの夜空をあなたに。
そう描かれた文字と聞き慣れぬ言葉にリビトは目をぱち、と瞬いた。
「ばたふらいぴー、初めて聞いた名前だ」
「良ければご一緒にどうでしょう」
「ああ、飲んでみたい」
興味を滲ませる海の瞳に笑みを零して、白い猫又は二本の角を生やすひと誘う。とん、と二人、月明かりの下で並んで手に入れたドリンクは、ぱちぱちとソーダーが歌う青いもの。ほんのりと作られた二層に、そうっとストローをいれる。綺麗な海の青色からストローで底をくるり、とかき混ぜれば紫色に変化して二つの色が溶けあっていった。
「綺麗……まるで魔法のようです」
「ん、綺麗な色だな」
驚いたように落ちた声に顔を上げる。ぱち、と出会った瞳に――海の青に彗藍はそろりと手を伸ばした。
「ちょっとお揃いみたいだなって」
なんて、と互いの目を指さしてはにかめば、ふふ、とリビトが笑った。
「俺と彗藍の色だ」
ふわり、溶ける色彩は二人の色。空の青と、深い紫が出会って。今宵の猫又と角を持つ青年は互いの瞳に色彩を映して笑った。蔵面の下、隠した瞳はいつものままで――互いを見る瞳にだけ、色を移し合って。
「――リビト、手を出して貰えますか」
「? こうだろうか」
ちょん、と背をつついた先、振り返ったリビトが不思議そうに差し出してきた手に、ちょこんと乗せるのは青い花弁を傍らに魚くわえた黒猫の縮緬根付。
「可愛い黒猫だな」
頬を緩ませたひとが首を傾ぐ。
「貰って良いのか?」
「はい」
ころり、と掌に載った猫と共に彗藍は彼を見上げた。
「リビトが帰り道に迷わないよう、花弁を贈りますね」
物語で猫又たちがそうしたように。
「今日は私猫又ですから」
「ありがとう、これで道に迷うことはなくなるな」
手の中には可愛い黒猫。迷わぬようにと手を添えてくれた猫又は白い二つの尾を揺らして。楽しげに宴を見る姿をリビトが追っていれば、ふいに前を白猫が歩いてきた。
「みゃう……」
「しぃ……」
嫌がることはなかったが、何事かと声を上げようとする白猫にそう頼んで抱き上げる。少しだけ驚かせたくて、そっと足音を隠して。後から彗藍の頬をつついた。
「うけとってくれるかにゃん?」
「白猫さん! ふふ、くれるの? 有難う。
真顔で白猫に声をあてながら、リビトが差し出したのは花弁が入った黒猫のお守り袋だ。
「お守り可愛い……!」
ふわり、零れた笑みと共に嬉しそうな手が白猫と一緒にリビトを撫でた。
「――」
「あ」
自分も撫でてくれるとは思わなくて。目を瞬かせたリビトに伸ばした手の行き先に気が付いた彗藍が、声を上げる。
「これはその……」
「……」
ほんのりと頬を染めた彼女に、かわいいと今度は言っても良いのだろうか。ふ、と笑みを零すようにしてリビトは言った。
「猫又さん、花弁で道を教えてくれるのも良いが
隣に歩いてくれると嬉しい」
「……!」
こく、と頷いた猫又は、すすっと隣に並び。近くなった距離を見上げるようにして笑みを零した。
「一緒の方がやっぱり安心します」
ゆるり二つの尾は揺れただろうか。彗藍の言葉に、ふ、とリビトは笑う。二人歩くお祭の夜は、まだ暫く続いていくのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【猫変身】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
効果2【ダブル】がLV2になった!
【命中アップ】がLV3になった!
イツカ・ユメ
しぃちゃん(g02594)と猫になるよ。にゃん♪
華やかな浴衣に、ふわふわ猫尻尾を装備して。
しぃちゃんの真似っこをして、猫耳お団子髪型にすれば……にゃんともかわいい猫又に大変身!
お揃いのにゃんこな妖怪姿のしぃちゃんも、とってもお美しぃ…!!
しぃちゃんが妖怪に誑かされないように、わたしがしっかり守るね!
いざとなれば、猫パンチをお見舞いするよ!
片目を隠して見る世界は、いつもと違う妖怪の世界。
あっちでにゃんにゃん、こっちでにゃあ。
ねぇねぇ、猫さん。
どこかオススメのお店に案内してくれる?なんて。
気まぐれな猫についていったら、不思議飲み物屋さんを発見!
わぁ!色が変わるなんて面白いね。味は……甘、いや、酸っぱ、しょっぱい??
すれ違う子供達を驚かせたりしつつ、焼き立て秋刀魚もいただきます。
だって、猫で妖怪だもの。
……あれ?ねぇねぇ、しぃちゃん。
今、子供達と一緒にいた猫、尻尾が三つに割れてなかった?
足元の、花びら?
ふふ、なんだか猫の足跡みたいにも見えるね。
もしかしたら、本物の猫又がいたのかな?
篝・子火
イッカ(g02834)と猫になる
じゃん。猫耳みたいな団子の髪型にした。甚兵衛を着て蔵面を付ける。仕上げにしっぽで準備万端だ。
……イッカ、大丈夫なのか。
かわいっかに猫を足したら可愛いの倍増。下手したら本当の妖怪に攫われてしまうかもしれん。攫われないよう、片目だけでも隠すんだぞ。
さて準備万端。
共に猫について行く。七色変化の不思議飲みもの?もちろん、飲むしかない。
……な、んか、味も甘いような塩っぱいような!不思議だぞ!
すれ違う子供たちと戯れて遊びつつ、猫の気分で焼き魚も食べてしまう。うみゃうみゃうみゃい。お魚くわえたどら猫の気持ちがわかる。
どうした?猫の尻尾?割れてるのは当たり前……いや、猫は尻尾が一つ。もしや……
あれ、イッカ。足元に花びらが落ちてるぞ。すれ違った……子どもたちの向かった方に続いているな。本当の妖怪だったのかもしれんな。
●ねことねこと不思議な夜
にゃぁにゃぁと遊ぶ猫たちの声が、夜の通りに響いていた。出店の看板猫たちがくるりと尾を巻いて眠る横で、子猫たちがぴん、と耳を立てる。
「みゃう」
「ふふ、ふわふわだよ」
そう笑みを零したのは緑色の髪を揺らす娘だった。華やかな浴衣にふわふわの猫尻尾を装備して。じゃれつく猫ちゃん達に挨拶しながら、イツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834) は傍らの彼女を見た。
「しぃちゃん!」
「……イッカ、大丈夫なのか」
お揃いの猫耳お団子に髪を結い上げた彼女は、それはそれは心配そうに、まじまじとイツカを見ていた。
「かわいっかに猫を足したら可愛いの倍増。下手したら本当の妖怪に攫われてしまうかもしれん」
にゃんともかわいい猫又だった。それは間違い無い。何処を見ても間違い無くて、どう考えても間違いがないからこそ――篝・子火(天高し・g02594)は心配だったのだ。
「攫われないよう、片目だけでも隠すんだぞ」
肩を掴んで言い聞かせるように子火が言う中で、イツカはお揃いの猫又たる子火を見て思っていた。
(「しぃちゃんも、とってもお美しぃ……!」)
髪型はお揃いに。纏う甚兵衛はすらりとした手足に良く似合い、蔵面で片眼を隠せば――それは美しい猫又の姿だった。
「しぃちゃん」
肩を掴む彼女に手を取って、イツカはぎゅ、と握った。
「しぃちゃんが妖怪に誑かされないように、わたしがしっかり守るね! いざとなれば、猫パンチをお見舞いするよ!」
そう猫又は猫であるのだから。すちゃっと伸びた爪とパンチがクリーンヒットで悪いひとも妖怪も吹き飛ばせるのだから。
そうして二人駆け出した猫又の祭りは、甘い香りに、香ばしい香りと何処を見ても心を擽る。ふらり右を見れば猫耳宜しくホイップの立ったドリンクに、左を見れば二種類のオレンジと青いソーダゼリーのドリンク。
「イッカ、あれはなんだ?」
「青リンゴみたいだね。ミントも一緒かなぁ?」
グラスも凝ったものが多いのか。掌の温かさで猫が姿を見せるものもあるという。右に左に、賑やかな通りは決して初めて見るようなものでも無いはずなのに、片眼を隠して見ればいつもと違う妖怪の世界。
「にゃぁにゃぁ」
「みゃう」
「こいつらも賑やかだな」
ふ、と子火が笑みを零す。足元じゃれつく猫たちは人懐っこいのか、それとも揺れる尻尾で二人を仲間と思っているのだろうか。にゃうにゃうにゃーお。挨拶を求めてくる猫たちに、ふ、と二人して笑うとイツカはそっと膝を折った。
「ねぇねぇ、猫さん」
「みゃう?」
伸ばして手に擦り寄ってくる三毛猫に小さく笑って、イツカは聞いた。
「どこかオススメのお店に案内してくれる? なんて……って、あれ……?」
「ついてこいってことみたいだな」
「んみゃ!」
先を行くのは三毛猫さんで。ふ、と吹き出すようにして笑った子火がイツカを呼ぶ。
「行ってみるか、イッカ」
「うん!」
とてとてとて、と先を行っていた三毛猫は振り返ってみゃぁと鳴く。早く着いておいでよ、なんて言うように。地面にはにゃんこの足跡を残して。道案内されるように二人が辿り着いたのは、夕焼け色に猫の絵を描いた不思議な飲み物の店だった。
「みゃーお」
「おやおや、これはまた。この子が素敵なお客サンをつれてきてくれるとは」
双子のような猫又さん、と店主は笑った。
「色の変わる不思議な飲み物はいかがかな?」
「わぁ! 色が変わるなんて面白いね」
ぱちと瞳を瞬かせたイツカの横、子火も頷いた。
「七色変化の不思議飲みもの? もちろん、飲むしかない」
それは朝焼けと夕暮れの名前を持つ不思議なドリンク。フルーツティーをベースに、とろりと蜂蜜とレモンの入ったドリンクはバタフライティーを空に見立てていた。
「……な、んか、味も甘いような塩っぱいような! 不思議だぞ!」
くるり、ストローでかき混ぜればふわりと変わる空の色。深い紫は夜の空に似ていた。
「甘、いや、酸っぱ、しょっぱい??」
首を傾げて、むむっとグラスを眺めて。レモンスカッシュに似た味をする不思議なドリンクは、猫又達の悪戯のように二人を翻弄していた。
そうして喉を潤し、すれ違う子ども達と戯れて遊ぶ頃には空に一番星の姿も見えていた。猫の気分で焼き魚も一緒に食べる。焼きたての魚にはふはふと息を零し、ぺろりと食べきるのは今日の子火とイツカは猫で妖怪だから。
「うみゃうみゃうみゃい。お魚くわえたどら猫の気持ちがわかる」
「だって、猫で妖怪だもの」
ふふ、と笑い合ったそこで、ふとイツカが足を止める。
「……あれ? ねぇねぇ、しぃちゃん」
「どうした?」
「今、子供達と一緒にいた猫、尻尾が三つに割れてなかった?」
ついついと袖を引く彼女に、子火は緩く首を傾ぐ。
「猫の尻尾? 割れてるのは当たり前……いや、猫は尻尾が一つ。もしや……」
は、と顔を上げて、右に左にと見渡しても揺れる尻尾は見えないまま。代わりに、にゃーおと声がした。
「あれ、イッカ。足元に花びらが落ちてるぞ。
「足元の、花びら? ふふ、なんだか猫の足跡みたいにも見えるね」
ひとつ、ふたつとみっつとよっつ。
にゃーお、にゃーおと声を残していったのは遊びに来ていた猫たちだけじゃなかったのか。
「もしかしたら、本物の猫又がいたのかな?」
ね、しぃちゃん。
そうっと小さく。きっときっと隠れて遊びに来たであろう子たちのために、イツカはそういう。可愛い猫又のそんな言葉に、子火は笑うようにして頷いた。
「すれ違った……子どもたちの向かった方に続いているな。本当の妖怪だったのかもしれんな」
何せ今日は猫又達のお祭。妖怪横丁。揺れる尻尾が多くてもきっと誰も気にしないで、いっぱい遊べる日なのだから。みゃーお。と楽しかった夜のお礼のようにどこかで猫の鳴く声がした。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【猫変身】がLV3になった!
効果2【ダブル】がLV4になった!
金刺・鞆
ロキシアさま(g07258)と、ねこのおまつり! です!
(受け取った蔵面を目元につけて――両目とも隠してしまうと危ないかも知れないので、ひとまず左側を隠すようにして)
むん。これで猫又の仲間入り、です? ロキシアさまも似合っておりますよ!
出店の品々も猫又になぞらえたものばかり。むふふ、なにを試してみるか目移りしてしまいますねえ。
お財布に多少の余裕はあれど、お腹の量は有限にて。全部食べるのはむずかしいのです。
ねこみみ。ツノとみみでなんだか頭がぎざぎざしております。むふふ。
(迷いつつ、気ままなねこを眺めていれば)
みてください、こちらの三毛猫さん……とても人懐こい、です!
ふわふわ、ふかふか……あっお腹もよいのですか……?
今年の夏はあついですねえ……ねこさんもあついですか……むふむふん。
かき氷屋さんで、ねこさん用にシロップをかける前の削り氷を作ってもらうのもよいでしょうか。
わたくしは……メロンに練乳もかけてしまいます。えへん。
かき氷を食べて舌の色がかわるのも、この場においてはねこのいたずら、やも。
ロキシア・グロスビーク
鞆ちゃん(g03964)と!猫又横丁へ!
ふぅん。こんなかんじで!
揃いの蔵面が左眼を隠す
といってもファッション(眼帯)で隠すこともあり慣れっこ
あは。両目もそれはそれで妖怪ぽいかも
ん。似合ってます
どうもね。鞆ちゃんだからこそもあるかしら
ここまで猫祭りなのも珍しいや。どこもかしこも猫猫猫
僕も大食いではないからなー
後で映えなドリンクやフラッペとか……
あ、猫耳カチューシャ!くーださーいな!
おっけ!これで西洋猫又ロキシアくんっ
口元に指を当てる妖しい所作でそれっぽく
鞆ちゃんも着けてみる?
おおっ新感覚。あたらし鞆ちゃん!
ふふふとわらって目に収めるのです
うわ~~可愛い~~!!
お目々きらきら。犬も好きだけど僕は猫派なんだ
僕もお伺いを立ててから撫でよう。ねこーねこー
猫に癒され、猫を愛でる鞆ちゃんの姿にも癒され
いいね!動物も涼を取りたいだろーし
美味しく涼しく楽しもうか
かき氷食べるなら、シロップはいちごかな!
あっ練乳いいなー。僕もかけよっ
僕の舌色もいちご色に赤々と
パラドクス抜きの神秘に、無邪気な笑い声がひとしきり
●ふたり、揃えて
「ふぅん。こんなかんじで!」
しゅるり、と慣れた様子でロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)は蔵面で左目を隠した。見慣れぬ視界――という気分にもならないのは、この眼帯で隠すこともあるからだ。今日の日にあわせた衣装をひらり、と揺らして、スカートの裾を払う。結い上げた髪とあうように少しだけ調整をしていれば、よいしょ、と傍らの彼女が蔵面と格闘していた。
「むん。これで猫又の仲間入り、です?」
両目とも隠すと危ないと思ったのだろう。くるくると回して、左側を隠すようにしゅるり、と少女は蔵面をつけていた。そろりと覗く瞳で金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)はロキシアを見上げていた。
「ロキシアさま」
「ん。似合ってます」
ふふ、と吐息一つ零すようにしてロキシアは笑う。振りまく可愛らしさは今日は秘密にして、つい、とつま先を伸ばす彼女を見る。
「鞆ちゃん」
「ロキシアさまも似合っておりますよ!」
「どうもね。鞆ちゃんだからこそもあるかしら」
「?」
ぱちと瞬いた瞳にふ、と笑って。逸れぬようにと傍らに立つ。
「行きましょうか」
「はい!」
ぱっと顔を上げる鞆と一緒になって蔵面が揺れた。さぁ賑わいの中、猫又達に違う道に案内されないように。つい、と袖を引く代わりに手を取って。賑わう出店の通りに足を踏み入れれば、二人を出迎えたのはぴんとたった猫耳のような屋根を持つ出店の数々だった。
「ここまで猫祭りなのも珍しいや。どこもかしこも猫猫猫」
物珍しげにロキシアは辺りを見渡した。揺れる尻尾に猫の足跡と飾りつけられた出店に、看板猫宜しく本物の猫たちが居座っている。飼い猫なのか、或いは鰹節が目当てなのか。甘い香りの先を見れば猫の形をしたクッキーの乗ったカフェラテに、蜂蜜たっぷりのフルーツティーをベースに作られたバタフライティー。ふんわりとしたホイップの載ったあれは――……。
「チョコレートです……? むこうのは、紫色の、ソーダ、でしょうか?」
「後はジュレっぽいかしら? ゼリードリンクもあるみたいだけれど……」
むむむ、と二人して唸るように足を止める。
「むふふ、なにを試してみるか目移りしてしまいますねえ」
くるくると鞆はカフェスペースに並んだ店を見た。
グラスに猫が隠れたドリンクもあれば、飾りに猫が潜むのもある。肉球の形をしたクッキーが乗っていたり、おまけについていたりと色々あるのだが――ここに、一番の問題があるのだ。
「お財布に多少の余裕はあれど、お腹の量は有限にて。全部食べるのはむずかしいのです」
「僕も大食いではないからなー。後で映えなドリンクやフラッペとか……」
月明かり差し込む夜の宴だ。写真的にはめちゃ良いし、何より今日という日なのだから。ふふん、と機嫌良く一歩を進めたところで、それはロキシアの目に映った。
「あ、猫耳カチューシャ! くーださーいな!」
「おや、お嬢ちゃ……ん? ん?」
首を傾げた店長に、ふふっと笑ってロキシアは今日のドレスを揺らす。悪戯っぽく笑ったロキシアが、どちらであるかなんて店長には分からぬまま。無事にゲットした猫耳をロキシアはすちゃり、とつけた。
「おっけ! これで西洋猫又ロキシアくんっ」
口許に指をあてて、目を白黒させる店長に、しぃ、とひとつ笑ってみせると、くるりと鞆に妖しく笑う。
「鞆ちゃんも着けてみる?」
「ともが、ですか?」
ぱちと瞬いた彼女に頷いて渡せば、少しばかり悩みながらも、どうにか頭によいしょと乗せた鞆が顔を上げた。
「ツノとみみでなんだか頭がぎざぎざしております。むふふ」
「おおっ新感覚。あたらし鞆ちゃん!」
ふふふ、と笑ってロキシアは鞆の姿を瞳に収める。ぴんと立った猫耳と一緒に少しばかり照れくさそうに、鞆は頬に手を添えた。
「みゃぁ」
「んみゃ? にゃぁ」
そうしてお腹と相談しながら何にしようかと悩んでいれば、人懐っこい猫たちが二人のところにやってきていた。みゃお、みゃーおと足元から呼ぶ姿に視線を落とせば、とびっきりの可愛い顔で三毛猫が鞆を呼んでいた。
「にゃぁ」
「みてください、こちらの三毛猫さん……とても人懐こい、です!」
わ、と鞆が声を上げたのは、足元ぐるぐると回る猫がいたからだ。尻尾が妙に擽ったい。
「んみゃ」
「うわ~~可愛い~~!! お目々きらきら。犬も好きだけど僕は猫派なんだ」
思わず、と一緒になってしゃがみ込んだロキシアにも三毛猫が機嫌良くにゃぁ、と鳴く。人懐っこい子は子猫から少し大人になろうとしている頃だろうか。そう、と鞆が手を伸ばせば頬をすり寄せてきた。
「ふわふわ、ふかふか……あっお腹もよいのですか……?」
「にゃ」
「ありがとうございます」
さぁ撫でるのだ、とばかりに。晒されたふかふかのお腹にご機嫌な尻尾はゆらゆらと揺れて。鞆は思わず笑みを零した。
「気持ち良いですか?」
「みゃ」
「ねこーねこー」
お伺いを立てるようにして、そろりとロキシアも手を伸ばす。良きに計らえと尻尾で返ったお返事に、二人してふ、と笑う。頭を撫でて、そうと背中を撫でていけばロキシアの手に三毛猫は機嫌良く喉を鳴らしていた。
「ご機嫌だね」
「です」
零れる笑みに、つられるようにロキシアは笑っていた。なにせ猫は可愛いし、癒やされるし。猫を愛でる鞆の姿にも癒やされる。
「今年の夏はあついですねえ……ねこさんもあついですか……むふむふん」
「みゃう」
見れば、三毛猫はすっかり鞆の膝の上を寝所に決めたらしい。みゃうみゃうと鳴いて、機嫌良く尻尾を揺らす猫に鞆は考えるようにして言った。
「かき氷屋さんで、ねこさん用にシロップをかける前の削り氷を作ってもらうのもよいでしょうか」
「いいね! 動物も涼を取りたいだろーし。美味しく涼しく楽しもうか」
さぁ、そうと決まれば味は何にしようか。猫用のかき氷をひとつ用意してもらって、んにゃ、と機嫌良く膝から降りた三毛猫を見送ると二人はメニュー表を眺めてひとつを選び取った。
「かき氷食べるなら、シロップはいちごかな!」
「わたくしは……メロンに練乳もかけてしまいます。えへん」
それはとろり甘い夏の贅沢。
「あっ練乳いいなー。僕もかけよっ」
ひとくち、しゃくりと食べたロキシアの舌が苺色に赤々と染まる。きぃん、と頭がならないように。それでも涼しい甘さを満喫するように。ぴん、と立った猫耳のついたスプーンで二人はかき氷を楽しんだ。
「かき氷を食べて舌の色がかわるのも、この場においてはねこのいたずら、やも」
「ふふ」
鞆の言葉にロキシアも笑う。それはパラドクス抜きの神秘。不思議で楽しい一時にふたり、無邪気な笑みが零れた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
【隔離眼】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【ドレイン】LV1が発生!
遠野・野茉莉
かれん(g01789)と参加
かれんに対しては敬称無しで砕けた口調
アドリブ歓迎です
「仮装ははろうぃんで経験した事があるけど…。ふふっ、それとはまた違う賑やかさがあるね。」
久し振りの仮装。それも、幽霊の仮装が出来て少してんしょん高めな私
それに、隣にかれんがいてくれている
かれんと出かけれて嬉しいから、いつもより沢山お喋りして色んな屋台を見て回りたい
誘ってくれたかれんにお礼を込めて、何か贈りたいけど…ぁ。これ、いいかも
屋台のお店に売られていた綺麗な二つのぶれすれっと
お揃いを込めて贈りたいけどさぷらいずをしたいから、気づかれないように買わないとね
贈り物を探しつつ、他の事も楽しみます
「そういえば、猫…猫又? かな。このお祭りに素敵なお話しがあったみたいだから、会えたら嬉しいね。」
それと
滅多にしないかれんのお願い事だから、叶えてあげたい…ううん、私もしたいだけかも
かれんと背中合わせ。ふふっ、こんな可愛いお願い事ならいつでも大丈夫だけれどね
朝比奈・架恋
野茉莉さん(g05024)と参加
アドリブ歓迎です
一歩一歩立ち止まってしまうほどに、どこも本当に楽しい光景が広がっているねっ♪
見たこともない珍しくて面白いお菓子もいっぱいだよ…!!
私は着物を着て和風髪飾りを付けて座敷童子さんの仮装でやってきたよっ♪
とても大きくて可愛い巾着袋も用意してきたから買ったお菓子はたくさんここに詰め込んじゃおう!
したいこと!もちろん野茉莉さんと一緒に素敵な一日を楽しむこと!!
大きな綿菓子を買ったり!2人仲良く手を繋ぎながらたくさん思い出作っちゃうよっ♪
そして野茉莉さんにすごく似合うアクセサリーを探してプレゼントするのが今日のサプライズ!
出店のゲームで頑張って取ってみようかな…!!
ふふっ、この妖怪横丁には猫さん達もたくさん訪れているみたいだね♪
出逢えたらすごく嬉しいっ♪細道を覗いてみたりしよう!
あとは――。少し背中合わせに歩いてみたいなって♪
背中からいっぱい安心な気持ちが広がって、目には見えずともいつもそこに野茉莉さんがいてくれる幸せをすごく実感できちゃうと思うから♪
●月と星は共に巡る
「一歩一歩立ち止まってしまうほどに、どこも本当に楽しい光景が広がっているねっ♪」
カラン、と下駄が鳴る。一歩楽しげに踏みだした少女は、くるりと振り返った。
「見たこともない珍しくて面白いお菓子もいっぱいだよ……!!」
しゃらりと結い上げた髪を飾る和風の髪飾りが揺れた。しゃらしゃらと涼やかな音色と共に零れる鈴の音は、朝比奈・架恋(駄菓子屋の少女・g01789)が今日という日を楽しみにしていたからだった。座敷童の仮装に身を包み、一歩だけ先に行っていた架恋は振り返った先にいる人を呼ぶ。
「野茉莉さん!」
「ふふ、そうね」
やわく零れた笑みと共に架恋の姿を見守るようにしていた遠野・野茉莉(倖せを願う一人の少女・g05024)が隣にやってくる。いつもよりほんの少し、進める足が軽やかなのは久し振りの仮装。それも幽霊の仮装ができているからだ。
「仮装ははろうぃんで経験した事があるけど……。ふふっ、それとはまた違う賑やかさがあるね」
少しテンションが高くなっているのは分かっている。それでも進む一歩に心は隠せないし、野茉莉さん、と呼ぶ声に駆け出していきたくなるような、そんな不思議な気持ちを抑えられなかった。
(「隣にかれんがいてくれている」)
ふわふわとしたあたたかな気持ちと一緒に、隣に立つ。一緒に出かけられて本当に嬉しいのだ。先を歩いても置いていく訳では無い彼女の手が、野茉莉の手に触れた。
「一緒にいこ!」
「えぇ」
はぐれないように、と言う訳では無く。ただ、手を繋ぎたいから、と言う架恋に、野茉莉は頷く。幼い頃、失った記憶と共に何もかも信じられなくなっていた自分は――いま、こうして繋いだ手と、架恋と一緒に歩いている。
「とても大きくて可愛い巾着袋も用意してきたから買ったお菓子はたくさんここに詰め込んじゃおう!」
「そんなに大きいの?」
ぱちと瞬いた野茉莉に、ふふふふ、と架恋は悪戯っぽく笑って頷いた。
「勿論!」
とびっきりのやつだから、と零した笑みに釣られて笑う。仲良しさんじゃないか、と笑みを零した出店の店長がサービスだよ、と猫の形をしたクッキーの乗ったフラッペをくれた。
「良いのでしょうか……?」
「いいさいいさ。うちじゃぁその可愛い巾着に入るには向いてないが、お嬢さん達二人の良い思い出になるならね」
年嵩の女性はそう言って笑った。そうして渡されたのはチョコレートを使ったフラッペで。ふわりと甘い香りに、ふ、と野茉莉は笑う。
「かれん。少し……そう、少しだけ動かないでね」
「ん? あ、もしかしてクリームついて……」
る? と続く言葉より先に、すい、とハンカチで取れば、くすぐったそうに架恋が笑った。
「野茉莉さんも」
「私も……?」
申しわけ無さに慌てて伸ばした手は、悪戯っぽく笑う架恋に制されて。
「はい。味見」
「え……?」
ぱっと目の前、突然のように現れたのは大きな綿菓子で。知らぬ間に買っていたらしい架恋は、悪戯ひとつ成功したように笑った。
「一緒にたべよ、野茉莉さん」
「えぇ」
こくり、と頷いて。悪戯っ子の頬に綿飴をつける。わぁ、なんて上がる声に二人して笑いながら通りを歩く。猫又達の宴をテーマに開かれた宴は、色々なものを扱っている。飲み物をメインに、他にはちょっとした土産ものだろうか。きらきらと目の端に輝いて見えたものに架恋は足を止める。
(「野茉莉さんにすごく似合いそう……!」)
それは、架恋の今日のサプライズだった。野茉莉と一緒に素敵な一日を楽しむのが今日の目標で、それでサプライズだってしたい。したいのだが――……。
(「どのタイミングで行くかだよね。あれは出店のゲームみたいだし……」)
頑張って取るには自信はあるけど、問題はタイミングだ。むむむ、と唸っていれば「あら」と野茉莉が顔を上げる。
「野茉莉さん?」
「ううん、大丈夫よ」
その大丈夫に感じた遠慮に、ぎゅっと一度手を握り直して架恋は言った。
「あ、私、ちょっとだけぱぱっと見てくる場所あるんだけど、良いかな?」
「えぇ」
きっと野茉莉さんも何かみたいのがあるのかな? そんなことを思いながら、架恋は駆け出した。向かうは少し前に見掛けた出店、射的の景品。
(「あのアクセサリーは絶対、野茉莉さんに似合う……!」)
ぱっと駆け出していった彼女を見送るようにして、野茉莉は、ほ、と息をついた。誘ってくれた架恋にお礼を込めて贈りたいものがあったのだ。
(「さぷらいずをしたいから、気づかれないように買わないとね」)
何かに気が付かれていた気もするけれど、架恋も何かに急いでいたし大丈夫かもしれない。そう思いながら野茉莉が選んだのは、屋台に売られていた綺麗なふたつのブレスレットだった。お揃いで買ったそれを、秘密にするように隠せば調度架恋が戻ってきたところだった。
「野茉莉さん!」
「おかえり、かれん」
「ふふっただいま!」
ぱっと架恋は笑みを浮かべた。おかえりを言ってくれる野茉莉に、待っていてくれた彼女に。二人、並ぶように立って当たり前のように手を繋いで。歩く一歩、足音が重なる。
「そういえば、猫……猫又? かな。このお祭りに素敵なお話しがあったみたいだから、会えたら嬉しいね」
「ふふっ、この妖怪横丁には猫さん達もたくさん訪れているみたいだね♪」
野茉莉の話に、架恋は笑みを見せた。
「出逢えたらすごく嬉しいっ♪ 細道を覗いてみたりしよう!」
「ん」
そうしよう、と微笑んで、弾む心を野茉莉は思う。
(「滅多にしないかれんのお願い事だから、叶えてあげたい……ううん、私もしたいだけかも」)
二人、手を繋いで。幽霊と座敷童は猫又を探して旅に出る。そんな一節が頭に浮かぶ。
「あとは――。少し背中合わせに歩いてみたいなって♪」
「背中合わせに?」
お願いをひとつ唇にのせて、架恋は野茉莉を見た。澄んだ青い空のような瞳。真っ直ぐに見ていればそこに自分の紫が映って、ふふ、と架恋は笑う。
「背中からいっぱい安心な気持ちが広がって、目には見えずともいつもそこに野茉莉さんがいてくれる幸せをすごく実感できちゃうと思うから♪」
「ふふっ、こんな可愛いお願い事ならいつでも大丈夫だけれどね」
「それじゃぁ……」
行こう、と誘う言葉と共に二人は歩き出す。夕暮れ時に、座敷童と幽霊の影は伸びて。そうして向かった細道でにゃぁと鳴く何かと出会ったのでした。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【現の夢】LV1が発生!
【植物活性】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
八上・霞
ジェームズ(g10136)と一緒に出店巡り!
藤柄の浴衣を着て、猫耳と猫尻尾をつけて行こ~。尻尾は二本で猫又気分。
色が変わるジュースなんだって。わーい。綺麗だね!映え!
カップも猫ちゃん柄でかわいい~持って帰りたいな~。
好きっていうわけではないけど……怪談はねえ、結構レパートリーあるよ私。うちは田舎だったから話してくれる人もいたし。
でも怪談ってなかなかめでたしめでたしで終わらないんだよね。だからあれはアレンジ版。
ほんとは助けてくれる猫ちゃんはいなかったの。お姫様は妖刀に食われておしまい。私が知ってるやつはそんなのばっかりだよ。
……んー……んー……秘密。そういうところは鋭いよね。
怪談を教訓にして言えるのは、「妖刀の言うことに耳を貸さないこと」。だから鞘から抜いちゃ駄目なんだ、こいつ。
(手を握られて彼を見上げる)
……だって……一人だったから……。次はお前がやれって言われたから……。
嫌じゃない?こんな得体の知れない不気味な女。
……うん……。(手を握り返す)
(黙って肩を彼に擦り寄せる)
※アドリブ歓迎
ジェームズ・クロサワ
霞(g00118)と。
狼耳をつけて人狼風に。片眼を隠す蔵面を着ける。
浴衣は……これは何というのか、靄みたいな柄の……
……霞柄?
まずは出店でドリンクを買う。
酸性の度合いで色が変わるんだったか……科学の実験みたいだな。
映え……は俺にはよく分からない。
お前、思ったよりも怪談話上手かったな。好きなのか?
(ふぅん、と鼻を鳴らす)
妖刀って、お前が持ってるやつのことか?
お前が知ってる怪談話の中に、お前がどうなるか示すようなやつはあるのか?
(彼女の手を握る。指を絡めて、がっちりと離さないように)
お前は一人で、自分に押し付けられたものを全部抱え込もうとしているように見える。
まだ一人だと思ってるか?俺は?まさか迷惑かけたくないとかそういうことを考えてるんじゃないだろうな。
得体が知れないのは元からだろ。嫌だと思ってたら俺はここにはいない。
弱ってるお前も悪くはないが、
お前はいつも通り、何でもないことで笑ってる方がいい、霞。
……手を焼いた野良猫が懐いたような気分になる。
彼女の肩を抱いて、髪を撫でる。
※アドリブ歓迎
●猫も隠す幸いを
みゃぁみゃぁと機嫌良く鳴く猫たちも相手を選ぶらしいと八上・霞(閃光・g00118)が気が付いたのは、猫又宜しくつけた尻尾にじゃれついていた猫たちが、連れの男に興味を示すことがなかったからだ。
「……みゃぁ」
「なんで面倒くさそうな顔するんだよ」
「猫ちゃんに、そんな顔……されて……!」
ふは、と耐えきれず零した笑みにジェームズ・クロサワ(遺薫・g10136)がたっぷりと息を落とした。狼耳をつけて人狼に扮したジェームズは、蔵面で片眼を隠したまま二度目の息を落とす。
「尻尾の方が遊びやすいんだろ。猫だし」
「負け惜しみ?」
からからと笑いながら霞が見上げた先、ジェームズは三度目の溜息を舌の上で溶かして言った。
「……、その尻尾、一本とってやろうか」
「わー遠慮しておくー」
狼さんを怒らせてはいけないのだ。うん。
藤柄の浴衣に猫耳と二本の尻尾をつけ、猫又宜しく霞は少しばかりを先に行く。一歩の大きさがある男が追い付くのはすぐのことで、溜息交じりに賑やかな通りを見る目に出会う。
「ドリンクか……」
夕暮れ時から夜に向かおうとする時間とは言え、じんわりとした暑さは残っている。アイスの乗ったフロートに、紅茶味のフラッペにはチョコレートをたっぷり使って。変わる色も様々なのか。その中で霞の目にとまったのは、朝焼けを描いたバタフライティーだった。赤は苺のスムージーを。ぱちぱちとしたソーダーが入ったバタフライティーは、果実の甘い香りがした。
「色が変わるジュースなんだって」
「酸性の度合いで色が変わるんだったか……科学の実験みたいだな」
くるり、とストローでかき混ぜれば空に見立てられたバタフライティーが色を変えていく。
「わーい。綺麗だね! 映え!」
ちょこんと載った花と共に、カップを持ち上げれば一足先にやってきた月明かりが淵に座っていた。
「映え……は俺にはよく分からない」
眉を寄せた男の横、ふふ、と笑って霞は猫が姿を見せたカップを見る。ゆるり揺れる尾は、触れた手の温度で見えるのだろうか。おぉ、なんて息を零して顔を上げる。
「カップも猫ちゃん柄でかわいい~持って帰りたいな~」
「……持ち帰りはできるらしいぞ」
小さく落ちた息と共に、あそこ、と示したジェームズが、カップに口をつける。喉を潤すようにして一つ息を落とすと、月明かりの外から一歩を踏み込む。
「お前、思ったよりも怪談話上手かったな。好きなのか?」
霞の方へと、一歩。
「好きっていうわけではないけど……怪談はねえ、結構レパートリーあるよ私。うちは田舎だったから話してくれる人もいたし」
カフェスペースの一角、賑わいに背を向けるようにして霞は息を落とす。
「でも怪談ってなかなかめでたしめでたしで終わらないんだよね。だからあれはアレンジ版」
カップに描かれた黒猫を眺める。描かれた猫。手の中にあっても――あの世界にはいなかったのだ。
「ほんとは助けてくれる猫ちゃんはいなかったの。お姫様は妖刀に食われておしまい。私が知ってるやつはそんなのばっかりだよ」
ふ、と落とす息と共に軽く肩を竦める。怖いやつっていうよりはね、と落とした息と共に、顔を上げて話を終わりにするはずだった霞の瞳にジェームズの顔が映る。
「――」
その瞳に一拍、反応が遅れた。ゆるり、と顔を上げて、ふぅん、と鼻を鳴らしたジェームズが口を開く。
「妖刀って、お前が持ってるやつのことか? お前が知ってる怪談話の中に、お前がどうなるか示すようなやつはあるのか?」
矢継ぎ早というほどでも無く。だが――その言葉を途中で奪うことは霞には出来なかった。気が付いたら踏み込まれていた一歩分。許した事実も分かっているから、こつん、と触れた下駄に、少しだけ唸る。
「……んー……んー……秘密。そういうところは鋭いよね」
「……」
一頻り唸った後、落とす息があった。つま先が振れるような距離で落とす息も、隠す視線も生めやしない。二度、三度と薄く開いた唇が言葉を紡ぐその時をジェームズは待った。待つってことを、こいつはもう知っているし。
(「俺も待てる」)
別に苦しめたい訳でも無いから。ただ待つように視線を向ければ、四度目に開いた唇から声が落ちた。
「怪談を教訓にして言えるのは、「妖刀の言うことに耳を貸さないこと」。」
だから、と霞は腰の刀をトン、と叩く。
「鞘から抜いちゃ駄目なんだ、こいつ」
「……」
それを抜いているところを確かにジェームズは見たことが無かった。ぶん回したりが精々のそれは、だがずっと霞の腰にあり――間違い無く彼女の人生と共にあった。
「――」
手を取る。彼女の手を。つい、と引くようにして、触れた指先がぴくり、と震えたのを分かったまま指先を絡めるようにして強く握る。
「お前は一人で、自分に押し付けられたものを全部抱え込もうとしているように見える」
握った手を決して離さないように。がっちりと強くジェームズが霞の手を握れば、ゆるゆると霞が顔を上げる。
「……だって……一人だったから……。次はお前がやれって言われたから……」
「まだ一人だと思ってるか? 俺は?」
低く唸るような声が出た。名を呼ぶより強くジェームズは霞の手を握る。
「まさか迷惑かけたくないとかそういうことを考えてるんじゃないだろうな」
「嫌じゃない? こんな得体の知れない不気味な女」
霞の黒の瞳が揺れていた。迷いと戸惑いと、確かな傷を残しながら。
「得体が知れないのは元からだろ。嫌だと思ってたら俺はここにはいない」
吐きだした息と共にジェームズはそういいきった。何度だってそう応えるだろう。必要なら言い聞かせるように何度でも。
「……うん……」
ゆっくりと握り直された手が霞の熱を伝えていた。じわりと滲むような体温にジェームズは強く、彼女の手を握った。
「弱ってるお前も悪くはないが、お前はいつも通り、何でもないことで笑ってる方がいい、霞」
「……」
返る言葉は無かった。だがふいに――熱が触れた。黙ったまま肩をすり寄せてきた霞の手をひく。どうした聞くつもりは無かった。ただ、肩を抱くように手を回せば、こてり、と素直に肩に重さが触れた。
(「……手を焼いた野良猫が懐いたような気分になる」)
少しずつ知る過去も、事実も。こうして許された距離も。
髪を撫でれば、はたはたとジェームズの浴衣が揺れた。霞のような柄の浴衣。蔵面で隠された片眼だけでは、腕の中の彼女は危うくて――それでも、離さぬようにと肩を抱いていた。
「……」
その姿を眺めるのは猫ばかり。相手を選ぶ猫たちはにゃぁと鳴くことも無いままに、二人を見守って尾を揺らすと、月明かりの中に消えていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【猫変身】がLV4になった!
【狼変身】LV1が発生!
効果2【ダブル】がLV5になった!
【グロリアス】がLV2になった!
朔・冥夜
雪璃/g00793
鬼灯描く蔵面に朱の着流し
ちらと覗く二本の鬼角、腰に酒瓢箪をぶら下げ
酒呑の鬼、ってね
妖怪に馴染んでりゃ好いんだが
青行燈のお嬢さん、百話目をお願いしてみようか?
美鬼は雪璃だろ、鬼同士ほら揃いのようだ
さて、食い倒れといくか?
雪璃のおすすめも知りたいところ
満月焼き?お好み焼きじゃなく
甘いものなのか
見た目も味も楽しませてくれて面白いな
…ん、美味い!
お、雪璃
こっちこっち、狐の顔の可愛い饅頭があるぜ
中身は小豆餡に、芋餡、チョコらしい
良かったら一緒に食おう
俺は普通の小豆餡
……あ、共喰いに
いや、何でも無ェよ?
にんまり悪戯な笑顔浮かべ
愛らしいもんだから俺も一寸食べ難いけど
がぶり一口
美味い匂いにつられて猫が足元へ
ふは、懐っこい子だ
白猫は雪璃の狐尻尾に興味深々飛びついてる
……俺の妹みたいな猫だな
毛並みふわふわ尻尾が大好きなところも
なんてな
ええー、俺あんなに見てそう??
過保護過ぎない?
くく、余計情が湧いたし仲間に入れてあげようぜ
おいで、って手招いて
お次は何を食べようか?
賛成!まだ楽しめそうだ
茜來・雪璃
冥夜/g06409
蔵面には蝶が舞い
白と青基調の着物を纏う
青く灯る鬼灯の行燈を掲げ
狐火も今日だけ青く灯したなら
1日限定の青行燈
物語語っちゃう?なーんて
わあ、美鬼がいる…!
いえーい!食い倒れだ!
ん?私のおすすめ?
そうだなあ…あ!あれは?猫又印の満月焼き
ふと目に入った屋台の看板を示して耳をぴこり
見た目は小さいお好み焼きだけど、実は…だって!
すっごく気になる!
んん!?これ、パンケーキだ!
ソースはチョコで青のりは…抹茶!
ひひ、面白くて美味しいねえ
なになに~?
わ、かわいい!みんな狐だ!
色んな味があるんだねえ
うん!私はね、チョコ!
いっただっきまー……え?冥夜今なんて
ちょ、ちょっとー!食べづらいじゃんかー!
あっは!にゃんこ来たねえ
なあに?遊ぶ?いいよー
ほら!捕まえられるかな?
ニンマリ笑い、ひょいひょいと二尾を揺らす
…ふふ、確かに!ちょっと彗っぽいかも
じゃああっちの橙色の座布団でうずうずしつつ
こっちをずーっと見てるにゃんこは冥夜だね?
ついっとにゃんこを指差し、くすくすと
次は…しょっぱいもの食べよ!
●百の噺に鬼と狐
かんからころん、と下駄が鳴り、にゃうと機嫌良い猫の声が通りから響く。気まぐれに顔を覗かせた子猫たちにとっては、今宵通りを行く者達の姿は随分と気になるのか。みゃぁ、と鳴いた子猫に、指先で狐をつくって、こん、と挨拶する。揺れる二尾にじゃれつく猫に小さく笑って妖狐はひらり、と着物の袖を揺らした。
「にゃぁにゃぁ猫さんこんにちわ」
蝶の舞う蔵面に、白と青基調の着物はこの時期に良く似合う。青く灯る鬼火の行燈を掲げ、ふぅ、と零す吐息で狐火を青く灯すと、茜來・雪璃(朧夜ノ蝶華燈・g00793)はくるりと回ってみせた。
「さぁ出来上がり。一日限定の青行燈」
「みゃぁ」
合いの手を入れた猫に擽ったそうに笑みを零せば、からん、と響く下駄の音が隣にやってくる。からんこん、と行く姿は月明かりの下に尾を引いて、鬼灯描く蔵面に朱の着流し。
「おや」
晒す片眼は弧を描いて、腰にぶら下げた酒瓢箪にじゃれつく猫を眺めた青年は吐息ひとつ零すようにして指を揺らす。ちらと覗く二本の角。酒呑の鬼と洒落込んだ朔・冥夜(星朧・g06409)は、雪璃へと視線を向けた。
「青行燈のお嬢さん、百話目をお願いしてみようか?」
「物語語っちゃう? なーんて」
くるりと振り返った先、雪璃は止まった。じじっと見た先、青行燈は晒す青の目を輝かせた。
「わあ、美鬼がいる……!」
ぴょこと跳ねた心は狐火も一緒か。わぁわぁ、と瞳を輝かせた娘に、ぱちと瞬いて冥夜は笑う。
「美鬼は雪璃だろ、鬼同士ほら揃いのようだ」
青行燈に酒呑の鬼。
猫又たちの宴に紛れ込むにはとっておきの鬼達は、小さく笑い合って賑わいの中に向かった。
ちょこんと立った猫耳の天幕に、甘い香りはふわりと踊る。薄い飴がかけられた苺飴には猫の飾りがついて、カフェラテには猫のクッキーが乗る。ひとつ、ふたつと通りに残る猫の足跡は出店への誘いだろうか。バタフライティーを使った蜜紅茶に、ミルクティーのフラッペはとろり注ぐチョコレートで色を変えていた。
「さて、食い倒れといくか?」
「いえーい! 食い倒れだ!」
冥夜の言葉にぱっと瞳を輝かせると、雪璃はくるりと出店を見渡した。甘い飲み物も多いが、鼻先を誘う香ばしさはどら焼きだろうか。目移り泳ぐ瞳に気が付いたのか、興味深そうにひょい、と冥夜が視線の先を覗き込む。
「雪璃のおすすめも知りたいところ」
「ん? 私のおすすめ?」
そうだなあ……、と雪璃は出店に目をやった。あんず飴に、ソース煎餅。出店では定番の並びを見ていく中で、ひとつ目が合う。
「あ! あれは?」
「みゃう」
「猫?」
眉を寄せた冥夜に、看板猫みたいなんだけど、といいながら、雪璃は耳をぴこり、と立てた。
「猫又印の満月焼き」
「満月焼き? お好み焼きじゃなく」
余計に眉を寄せた冥夜に、そうそう、と雪璃は顔を上げた。
「見た目は小さいお好み焼きだけど、実は……だって! すっごく気になる!」
「甘いものなのか」
へぇ、と冥夜が息を落とせば、看板猫がみゃうと声を上げてやってくる。ほらほらこっち、と誘う猫に笑って、雪璃は歩き出した。
「行ってみよう!」
「そうだな」
そうして、手に入れた出来たてはほんわりと甘い香りのする円形の和菓子だった。ゆるり尻尾を揺らす猫又の焼き印のついたお菓子を、ぱくり、と一口広がるのはチョコの甘み。そう、チョコだ。
「んん!? これ、パンケーキだ! ソースはチョコで青のりは……抹茶!」
「見た目も味も楽しませてくれて面白いな」
……ん、美味い! と笑みを零した冥夜の横、雪璃もぱくりと二口目を堪能しながら二つの尾を揺らした。
「お、雪璃。こっちこっち、狐の顔の可愛い饅頭があるぜ」
「なになに~? わ、かわいい!みんな狐だ!」
中身は小豆餡に、芋餡、チョコ。
満月焼きからスタートして、二人の妖怪は出店を巡る。右に左に、くるりと回ってやっぱり戻って。そうして次に足を止めたのは冥夜の見つけた饅頭を扱う出店だった。
「俺は普通の小豆餡」
「うん! 私はね、チョコ! いっただっきまー……」
はふり、と一口。雪璃が食べようとしたところで冥夜は言った。
「……あ、共喰いに」
「え? 冥夜今なんて」
手元には可愛い狐顔の饅頭。
ぱくりと食べようとしたのはそれはもう妖狐たる雪璃な訳で。
「いや、何でも無ェよ?」
にんまり悪戯な笑顔を浮かべ冥夜は一言、そう言った。それはもう悪戯に、美しく。酒呑の鬼は食べないのか? と饅頭を示す。
「ちょ、ちょっとー! 食べづらいじゃんかー!」
お狐さんお狐さん。
そんなことを口にして、雪璃は手の中のお饅頭に謝った。
「みゃぁ?」
「にゃぁ」
そうして出店を巡っていれば気が付けば後を追い掛けるように猫たちが近づいて来ていた。ぱくり、一口食べる二人にじゃれつくようにやってきたのは遊んでほしいのか、それともおねだりのためか。
「あっは! にゃんこ来たねえ」
「にゃぁ」
応えるようにやってきた白猫が、足元するりと身を寄せてくる。むんずと足を踏むというよりは、ちょこんと愛嬌だろうか。ふ、と息を零した冥夜の前、それなら、と雪璃が立ち上がった。
「ほら! 捕まえられるかな?」
「ふは、懐っこい子だ」
ニンマリと笑って、ひょいひょいと二尾を雪璃が揺らせば白猫はみゃうみゃうと飛びついてくる。じゃれつくように伸びた手。ジャンプするけど届かなくて、でも諦めない。
「……俺の妹みたいな猫だな。毛並みふわふわ尻尾が大好きなところも」
なんてな、と冥夜は息を零す。吐息一つ零すようにして顔を上げれば、ふふ、と雪璃が笑った。
「確かに! ちょっとぽいかも。じゃああっちの橙色の座布団でうずうずしつつこっちをずーっと見てるにゃんこは冥夜だね?」
「ええー、俺あんなに見てそう?? 過保護過ぎない?」
ついっと指さされた猫と白猫を交互に見て、息を吐く。軽く竦めた肩と共に、にゃぁと鳴くより視線が強い猫に冥夜は手を伸ばす。
「くく、余計情が湧いたし仲間に入れてあげようぜ。おいで」
「……みゃぁ?」
「渋い顔するなよ」
「ふふ」
くすくすと笑って、雪璃はじゃれついてきた白猫を抱き上げた。ふかふかーと笑っていれば、宵の鬼が青行燈を呼ぶ。
「お次は何を食べようか?」
「次は……しょっぱいもの食べよ!」
「賛成! まだ楽しめそうだ」
鬼達の夜はまだ始まったばかり。猫又たちの宴を存分に楽しむのだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【植物活性】がLV3になった!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV4になった!
咲樂・祇伐
🌸樂祇
わぁあ、お兄様!猫ちゃんです!
桜猫又の仮装は猫ちゃん達を驚かせないように
…光り輝くド派手な猫又仮装をしてきたお兄様も今や落ち着きのあるかっこいい灰猫又
安心して隣を歩けるといいますか
…似合いすぎて直視出来ないのが本音
だってかっこいいのに可愛い
ずるい
ツンとすましたフリして目の前の猫達を褒めまくり意識を逸らす作戦
むにゃにゃ!?
ほ、頬をむにるなんて
変な顔になるから駄目!
なのに明るく笑うから許せて、しまう
猫ちゃん達のお祭りです
どんな子達がいるのか見つけなきゃ!
もしかしたら本当の猫又も居るやも?
喉が渇いたの声に私もと応えて
…喉がかわいていたことを思い出す
色変わりなフラッペは爽やかで美味しくて火照った身体を冷やしてくれて緊張もとけるよう
猫マークもすごく可愛くて癒されるわ!
このマーク、皆違うのかしら?にっこり笑う顔があなたに似ている、って嬉しくなったり
あ、見てお兄様!
フラッペの色が変わっ…
っ……ッッ
頬の感触
変わったのは、私の顔色
い、悪戯!?
そう悪戯
目を離せないのも何もかも
あなたの可愛い悪戯のせい
咲樂・神樂
⚰️樂祇
猫又だらけの妖怪横丁…宛ら猫又横丁ね
猫たちが闊歩しているわ
光る猫又の仮装は光すぎて嫌だって、祇伐が言うから控えめに灰猫又の仮装にしたの!猫又の祭りにぴったりでしょう?
…なんてキメてみたのに
あたしのかぁいい妹は猫ちゃんに夢中なよう
あなたの隣にいるあたし(猫)の方がかぁいいと思うのだけど……妬けるわ
猫に
泥棒猫め
猫に夢中な祇伐の頬を両手でむににと挟んでから笑う
茶虎に黒猫、サバに錆……どんな猫ちゃんがお祭りを楽しんでいるのか猫探ししながらお祭りを楽しみましょ!
喉が渇いたわ!
一緒に買ったのは色の変わるフラッペね
猫マークが可愛いと祇伐も大喜び
…喜ぶ姿もかぁいくて幸せ
でもその笑顔はあたしが咲かせたいのよね
冷たいものを飲んでいるのに、胸のうちは燻るようで……この感情の名はまだしらない
…猫の悪戯で色が、ね…
あたしも今、猫だから──悪戯しても許されるかしら
祇伐、名を呼んで
あれもこれもとはしゃぐ彼女の頬に、口付けひとつ
ふふふ!
桜猫は真っ赤に色変わりしたわね!
悪戯成功
やっと視線を独り占めできたから
大満足
●四百八病の外か猫か
にゃぁにゃぁと猫の声が通りに響く。出店の前にちょこんと座り、気まぐれに遊びに行っては客を連れ帰るのは招き猫か、それとも店主の座布団を狙ってか。ベンチを見れば先に猫が丸まり、くわっと欠伸がてらに塀で背を伸ばす。
「わぁあ、お兄様! 猫ちゃんです!」
そこはどこを見ても猫ちゃんいっぱいの世界だった。ぱぁっと瞳を輝かせるようにして娘は通りを見渡す。さっき見て来た通りもそうだが、このあたりは子猫も多い。好奇心旺盛な子猫が、んにゃ、とまだ鳴きなれぬ声で呼ぶのは撫でての声か、それとも咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)達を大きな猫と思ってか。
「みゃぁ」
「ふふ。可愛いです……」
思わず零れた笑みと共にそっと膝を折る。驚かせないようにそろりと手を伸ばせば、こてり、こてりと首を傾げた子猫がずい、と祇伐の掌に頬を寄せた。
「わぁあ……!」
「猫又だらけの妖怪横丁……宛ら猫又横丁ね」
そんな祇伐の姿を見守るように後にいたひとの声が、ほう、と落ちる。
「猫たちが闊歩しているわ」
「……」
まったく、と息を落とすのはにゃうにゃうと鳴く猫が袖にじゃれつくからだろうか。そろり、と祇伐が振り返った先、見えたのはぴんと立った灰色の耳に、揺れる尾。灰色の猫の猫又は、物憂げに息を落として、ほーらほら、と指先を猫に遊ばせる。
「……」
それは、落ち着きの大人のかっこいい姿だった。
『光る猫又の仮装は光すぎて嫌だって、祇伐が言うから控えめに灰猫又の仮装にしたの! 猫又の祭りにぴったりでしょう?』
あの時、光り輝くド派手な猫又仮装をしてきた咲樂・神樂(離一匁・g03059)も、今は落ち着きのある格好いい灰色の猫又だ。桜猫の猫又も、それはそれは安心して隣を歩けるのだが。だが、だ。
(「かっこいいのに可愛い」)
うぅ、とひとり心の裡で祇伐は唸る。桜猫又の頬が染まるのは、似合いすぎて直視出来ぬ傍らの所為で。
(「ずるい」)
唇を尖らせてひとつ、音に響かせぬ言葉を唇に乗せて。にゃお、と鳴く猫たちに視線を向ける。
「かわいいです」
「にゃぁ」
「ふふ」
指先にじゃれついてくる猫たちが可愛いのも、ふかふかのもふもふなのも全部本当で。けれど、ツンとすましたフリをして目の前の猫たちばかりを見るのは灰猫又をまだまだ見慣れぬから。
「……」
もう少しだけ、とおすまし桜猫又はそっぽを向いて。そんな背中ばかりを見ていれば、それはそれは灰猫又の視線も鋭くなるのだ。
「……」
「……んみゃ?」
猫たちに向けて。
「泥棒猫め」
「……!」
ぴゃぴゃっと尻尾を立てた猫をひらひらと、神樂は指先で見送る。別にそんな――まぁ、すごくは怒っちゃいないのよ。泥棒だとは思ってるけど。
(「あたしのかぁいい妹は猫ちゃんに夢中なよう」)
光る猫又から灰猫の猫又に。
キメてみたのに、祇伐はツン、と猫たちの方を向いたまま。にゃうにゃうじゃれつく猫ばかりだ。
(「あなたの隣にいるあたしの方がかぁいいと思うのだけど……」)
こんな猫がいるのよ、なんて。言って顔を覗き込むには妬けてしまう。小さく落とした息ひとつ、とん、と軽やかに踏み込んで神樂は祇伐の隣にしゃがみ込む。
「お兄さ……むにゃにゃ!? ほ、頬をむにるなんて変な顔になるから駄目!」
「ふふ」
猫に夢中な祇伐の頬を両手でむにむにと挟んで、神樂はからからと笑う。
「茶虎に黒猫、サバに錆……どんな猫ちゃんがお祭りを楽しんでいるのか猫探ししながらお祭りを楽しみましょ!」
「――」
うぅ、と唸る声はあったか。撫でる手を取られた猫がにゃぁと鳴いたのか。ふふ、と小さく笑って可愛い妹の方を見れば、怒りきれずに膨れた頬に出会う。
「どう?」
「猫ちゃん達のお祭りです。どんな子達がいるのか見つけなきゃ!」
もしかしたら本当の猫又も居るやも?
実は何処かに隠れていて、実はそこから眺めているかもしれない。そう思えば、桜猫又の好奇心が育つ。見えぬ尻尾が揺れた気がして、ふ、と笑うと神樂は顔を上げた。
「喉が渇いたわ!」
「私も」
そうして、二人向かったのはバタフライピーを使った色の変わるフラッペの店だった。マンゴーティーをベースに使ったものは晴れた空の青をバタフライティーで作って、苺のスムージーが眠るフラッペは、夕暮れ時の空をバタフライティーがつくる。しゃくり、と一口、口に入れれば爽やかな涼しさが祇伐の口の中に広がった。
「爽やかで美味しい」
ほう、と祇伐は息を零した。爽やかな美味しさが火照った身体を冷やしてくれる。
「猫マークもすごく可愛くて癒されるわ!」
にっこり笑う顔があなたに似ている。嬉しくなって笑みを零せば、ふふ、と柔く零れた笑みと共に甘やかに声が届く。
「……喜ぶ姿もかぁいくて幸せ」
擽ったいような、そんな心にもう一口フラッペを口にして。しゃくり、と感じた甘さに思わず祇伐は笑みを零した。
「あ。猫のマーク、これ触っていると色が変わる……」
ぱち、ぱちと瞬く瞳は、楽しそうに輝いて。桜咲く柘榴の瞳が煌めきを乗せるのを眺めながら神樂は、ふ、と笑う。
(「でもその笑顔はあたしが咲かせたいのよね」)
吐息零すようにして、笑う。口許、浮かぶそれは笑みだというのに、冷たいものを飲んでいるのに、胸のうちは燻るようにあった。
(「……この感情の名はまだしらない」)
燠火のようにある想いは知らぬまま。その形も知らずにいるのだろうか。二度目の息を舌に
溶かし、ゆるり、と神樂は祇伐を見る。
「……猫の悪戯で色が、ね……」
あたしも今、猫だから──悪戯しても許されるかしら。
ゆらり、とはしゃぐ彼女に身を寄せる。両の手に持ったフラッペを、これ、と見せるように持ち上げた指先をそっと抑えて神樂は身を寄せた。
「あ、見てお兄様! フラッペの色が変わっ……」
「祇伐」
名前を呼べば瞳が出会う。楽しげなままの瞳に、ふ、と零す笑みは無いまま――そう、と彼女の頬に唇を寄せた。
「っ……ッ」
「ふふふ! 桜猫は真っ赤に色変わりしたわね! 悪戯成功」
その頬に、口付けをひとつ。かぁっと頬を染めた祇伐が顔を上げる。
「い、悪戯!?」
変わったのはフラッペより祇伐の顔色で。白皙を染める色彩は夕暮れよりも鮮やかな赤。つん、とつつくのは止めておこう。大満足に、神樂はふふ、と笑う。やっと祇伐の視線を独り占めできたのだから。
「……」
そんなご機嫌神樂の姿に、祇伐は引かない頬の熱を持て余していた。
『悪戯成功』
楽しげに笑ったひとの瞳には、ぱちくりとした自分が頬を染めて映っていて。頬に残る熱に、触れられた感触を思い出してしまう。
(「そう悪戯」)
目を離せないのも何もかも、あなたの可愛い悪戯のせい。頬の熱は隠しきれぬまま、身体を冷やすフラッペが手の中で溶けていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【勝利の凱歌】がLV2になった!
効果2【ドレイン】がLV2になった!
【グロリアス】がLV3になった!
フィオリナ・ネージュ
いとり(g09163)と横丁屋台へ
猫さんがいっぱい!
猫変身したくなってしまいますね!
一緒に駆け出してみたくなるといいますか
猫目の蔵面から顔を覗かせて
尻尾をいつもより揺らしちゃうのはご愛敬
今日はいとちゃんと横丁デートですから!
腕組むあなたと軽やかに
つゆちゃん、エトもお揃いの蔵面着けて
猫さんたちとはしゃぎ回りたそう
迷子になっちゃだめですよ
懐っこい黒猫さんを抱き上げて
見て、いとちゃん!
この子不思議なくらい甘えてくるの
いたたっ、エト、猫パンチしないで下さい……!
かき氷屋さん、賛成ですー!
私はいちご味にします
猫又印のプレートチョコが刺さってて可愛いです
いただきます!勢いよくぱくり頬張り
あっ、頭がキーンと……!!
ふふふ、これぞ夏って感じですね
…え?舌?
いとちゃん、黄色!
真似するようにちろ、と舌を出して
どうですか?私も変わってます?
真っ赤になった舌がお目見え
なんだかおかしくなってお揃いね、なんて笑うの
相棒の子たちと、それから私達二人分
何か買っていきましょうか?
猫又グッズ、記念になりそうです
雫芽・いとり
フィオリナ(g09310)と
今日のお祭り、猫又さんがテーマなんだって!だからかな?
猫さんもいっぱい…!ほら、あっちにも!
…こっちに、もーっ!!
ぎゅーっと、こっちの猫さんには腕組み
御機嫌元気に屋台の方へと誘導
私も今日は猫さんになっちゃお、って蔵面も付けて
つゆとエトちゃんもいるから
もふ度は猫さんたちにも負けないぞ!なんて
ホントだー!すっごい懐いてる!
エトちゃん、ご主人取られちゃうって思ったの?
だめー、ってするよう、つゆが慌てて
フィオちゃんとエトちゃんの間へ
ちょっとだけ黒猫さんと遊ばせてあげよーね?
あ、かき氷屋さん見っけ!一緒に食べよ!
私はレモン!
冷たいかき氷を2人で頬張って
勢いよく食べちゃったら…
!!
キーン、ってお約束
ね、ね、フィオちゃん
べっ、って舌出し
黄色くなっちゃった舌がぴょこっと
フィオちゃんも真っ赤ー!
こういう舌出し妖怪さんいたよね?提灯おばけ…?
お揃いで仲間入り?なぁんて
みんなで妖怪さんした記念にお揃いにしよっか?
それぞれ色違いの首輪をつけた
尻尾がゆらゆら揺れる猫又キーホルダーを手に
●猫又たちの宵の宴
「んー……みゃぁ」
くぅっと背を伸ばした黒猫がそんな声を零す。賑わう通りを気にする様子も無いままに、くわ、と欠伸を零した猫たちにとっては、お休みとおでかけの時間らしい。みゃうみゃうと鳴いて、ゆるり揺れる尻尾で先導する。
「みゃぁ」
「わぁああ……」
ゆるり、と揺れた尻尾は挨拶だったのだろうか。するり、と足の間をぬうようにして移動していった猫にフィオリナ・ネージュ(華たそがれ・g09310)は瞳を輝かせた。
「猫さんがいっぱい!」
「今日のお祭り、猫又さんがテーマなんだって!だからかな?」
こっちとか、と雫芽・いとり(芽吹ノ雫・g09163)が辺りを見渡せば、通りを行く猫もいれば、店の前からとてとてとやってくる子猫もいる。くわり、と欠伸ひとつ二人の足元にやってきた子猫はぴん、と尻尾をたてた。
「みゃ」
「ふふ。こんばんは」
挨拶に満足したのか、また遊びに行く姿を見送ってフィオリナは笑みを零した。
「猫変身したくなってしまいますね! 一緒に駆け出してみたくなるといいますか」
「そわそわしちゃうね」
ふふ、と二人笑い合って、しゅるりと蔵面を巻く。花の紋様を刻む蔵面で片眼を隠して、祭りを行く君と君がひとだってばれないように。
「私も今日は猫さんになっちゃお」
晒す甘い蜂蜜の瞳が弧を描く。ね、と足音ひとつ、つま先が振れる距離で笑った大切な友人にフィオリナは微笑んだ。
「えぇ」
猫目の蔵面から顔を覗かせて。ゆるりゆるりと尻尾がいつもより揺れてしまうのはご愛敬。じゃれつく猫たちに内緒ですよ、と指先をつくってフィオリナはいとりを見た。
「行きましょう」
蜂蜜の中、さらりと上げた蔵面が孔雀青を映す。さぁ視線を交わすのは秘密に。猫又たちの姿に身を隠して、ふわり吹いた風が金糸雀に染まる髪といとりのミントレモンに出会う。淡く、甘く、月明かりの下、二人の妖怪は連れのふたりと共に祭りに歩き出す。
「猫さんもいっぱい……! ほら、あっちにも!」
あそこも、と笑みを零したいとりの視線の先、追い掛けるように一歩前に出れば、ぎゅーっと絡む優しい腕。
「……こっちに、もーっ!!」
「今日はいとちゃんと横丁デートですから!」
ぎゅっと身を寄せて笑い合えば、仲良しなの? と言いたげに、子猫がみゃ、と鳴いた。
月明かりの下、ひとつ、ふたつと灯る灯籠が道を照らす。蔵面で片眼を、顔を隠して歩く通りはいつもと同じようで――不思議とどこか違う。変わって見えるのは、メーラーデーモン『つゆ』やスフィンクス『エト』も同じなのか。お揃いの蔵面をゆらして、あっちにふらふら、こっちも気になると興味津々のようだ。
『♪』
機嫌良く尾を揺らして、エトが子猫の上をふわり、と飛ぶ。尻尾で揶揄っているのか、それとも一緒に遊んでいるのか。みゃう、と下から呼ばれる様子を眺めていたエトが、するり、と子猫の元に降りる。
『……』
つい、と触れるか触れぬか。んにゃ、と返す子猫とつゆの姿を見ながらいとりとフィオリナは笑みを零した。
「みんなもふもふだけど、つゆとエトちゃんもいるから、もふ度は猫さんたちにも負けないぞ!」
「んみゃ?」
『……♪』
『♪』
いとりの言葉に悪くはないとでも言うようにぴくり、と耳を動かしたつゆの横、機嫌良くエトが尾を揺らす。猫たちと一緒にはしゃぎ回りたそうなふたりにフィオリナは顔を上げた。
「迷子になっちゃだめですよ」
そう声をかけたさき、足元にもふり、とあたたかな何かが触れる。
「みゃぁ?」
そこにいたのは黒猫で。可愛らしく見上げてくる姿にそう、っとフィオリナが手を伸ばせば、黒猫は頬をすり寄せてきた。
「みゃぁ」
ごろごろと喉を鳴らしながら、つい、ついと足を上げる。ねぇ抱っこしないの? とばかりに懐く姿にフィオリナは笑みを見せた。
「見て、いとちゃん! この子不思議なくらい甘えてくるの」
腕の中、抱き上げた黒猫は頬をすり寄せるようにごろごろと喉を鳴らしていた。そうっと頭を撫でれば、その手をおさえてぺろり、と舐めてくるのはありがとうのお返しだろうか。機嫌良く尾を揺らす姿に、いとりは目をぱちくりとさせた。
「ホントだー! すっごい懐いてる!」
『……』
かわいい、と声を上げるいとりと、微笑むフィオリナの前、てしたし、と地面を叩く尻尾があった。ふさふさのそれがてしたしと地面を叩き、ふわりと浮き上がって空を叩く。
『……』
エトは思った。かのねこにでれでれのご主人をどうにかしなければならぬと。たぶんそんなことを。
『……』
むすり、と毛を膨らませて、羽根を広げるエトの姿をつゆは見ていた。どうしよう、と思いながら、そうこうしているうちに――……。
『……!』
「いたたっ、エト、猫パンチしないで下さい……!」
「エトちゃん、ご主人取られちゃうって思ったの?」
『……!!』
だめー、とするようにあわててつゆがフィオリナとエトの間に入りこむ。ふるふると頭を振るつゆと、ふんすふんすとするエトと、我関せずくわり、と鳴いた猫の姿がそこにはあった。
「あ、かき氷屋さん見っけ!一緒に食べよ!」
「かき氷屋さん、賛成ですー!」
必殺猫パンチと、気ままな黒猫と、あわてるつゆに見守れながら夏の夜を過ごす。暑くなった体を冷やすように二人はカキ氷の出店に向かった。猫又印のプレートチョコがささった可愛らしいカキ氷は、スプーンも猫の足跡をモチーフに作られているらしい。フィオリナはいちご味を、いとりはレモン味を選べばふわりと甘い香りと爽やかな香りが広がる。
「いただきます!」
「いただきまーす!」
ぱくり、と二人一緒に勢いよく頬張れば、冷たい甘さが広がると同時に、頭がキーンとして。
「あっ……!」
「!!」
ぴんと、フィオリナの耳が立って、いとりの翼が揺れる。瞳を隠す蔵面まで思わずぴょんと跳ねて。夏の醍醐味。片眼だけ晒して目を合わせてふたりは笑い合った。
(「あ……」)
そうして、ふと、いとりは気が付く。
「ね、ね、フィオちゃん」
べっ、と舌を出せば黄色くなった舌がぴょこっと姿を見せる。
「……え? 舌? いとちゃん、黄色!」
「どうですか? 私も変わってます?」
真似するようにフィオリナもちろり、と舌を出す。そこにあったのは苺のように真っ赤になった舌で。
「フィオちゃんも真っ赤ー! こういう舌出し妖怪さんいたよね? 提灯おばけ……?」
カキ氷のレモンといちごで、猫又は不思議に他の妖怪に姿を変える。
「お揃いで仲間入り?」
なぁんて、と悪戯っぽくいとりは笑う。ちろり、みせた舌はふたりだけの内緒で隠して。猫になった二人は不思議な妖怪たちの世界に入りこむ。
「なんだかおかしくなってお揃いね」
くすくすと笑い合って、カキ氷の最後の一口をぱくり、と食べる。染まる舌は相変わらず、きーんとするのだけは何とか回避して。笑い合うとつん、と指先で触れあう。逸れないように手を繋いで。
「相棒の子たちと、それから私達二人分。何か買っていきましょうか?」
フィオリナはそう言って、となりを見る。お揃いでは? とぱっと顔をあげたつゆとエトに笑いながらいとりは頷いた。
「みんなで妖怪さんした記念にお揃いにしよっか?」
そうして見つけたのはそれぞれ色違いの首輪をつけた猫又のキーホルダー。ゆらゆらと揺れる尻尾は通りで出会った猫たちのようにご機嫌に――それでいて、みんなで過ごした楽しい時間を伝えるよに優しく、揺れた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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