地獄変第二幕『呪われた連歌』
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ディアボロスの活躍により、京の都を騒がせていた『数え歌殺人事件』は無事に解決する事が出来ました。
しかし地獄変の事件はまだ終わりではありません。
京の都では『この歌を送られた相手は、3日以内に返歌を作って、別人に送らなければ呪われて死ぬ』という、『呪われた連歌』事件が耳目を集め始めています。
3日以内に返歌を送らなかった場合、或いは、既に、この呪いの歌を送った事がある相手に歌を送ってしまうと、体が腐り落ちて死んでしまうというのです。
歌会などを通じて、呪いの歌を受け取ってしまった被害者に接触し、ディアボロス宛に返歌を送ってもらっいましょう。
ディアボロスが歌の返歌を『事件を起こしているクロノヴェーダ』に送り付けて撃破する事が出来れば、『呪われた連歌』の呪いを打ち破ることが出来るでしょう。
はずかしいうた(作者 荒雲ニンザ)
#平安鬼妖地獄変
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時は改竄された過去。
京の都。
とある雅な屋敷にて、歌会が開かれていた。
美しく艶やかな着物を着た女性陣たちが、狐のようにつんとすましている向こう、化かしてやろうと言わんばかりの男性陣が、狸のように鎮座している光景。
中央に白い着物を着た、これまた透き通るほど白い肌の女性が一人、気位高そうに喋り始めた。
「歌のやりとり一つで、男女が恋に落ちるのが世の常というもの……。身を焦がすほどの情熱をささやきもすれば、焦らして雪解けを待つような交しもまた必要。下手な歌ほど、愛は興醒め……腐らせる」
それから、その女性が狸の中の一人を指名し、こう言った。
「そなた、あの娘を愛しき相手と思うて、試しに詠んで差し上げなされ」
その者が慎みながらも、何やら小難しい歌を口ずさむ。
すると、指名された娘は突然背筋が凍るような感覚を覚え、自分が巷で噂の『呪われた連歌』の標的にされたと気がついた。
そう、この気位高そうな女性、アヴァタール級クロノヴェーダ『白蛇姫』。そして、並んだ狸の数名は、トループス級『黒虚天狗』であった。
当然、普通の貴族達は、そんな物騒な輩が歌会を開いていると思うはずもなく、ただ連歌の手習いを受けようと参加しただけ。
「さあ、そこの娘。あちらにおわす殿方を、そなたの愛しい殿方だと思い、今の歌に返してみなされ」
指名された娘は端正な顔立ちではあったが、凜とした眉に頑固そうな口元、京の民が好む『はんなり』とは縁遠く、その歌会の中で些か浮いていた。
あちらにおわす殿方と指された男性は、少々照れながらも穏やかに微笑み、こちらの様子を窺っている。どう見てもこの者はクロノヴェーダではない様子。
ここで連歌を返してしまえば、この殿方に呪いが移ってしまう。
彼女はしばらく目をつむっていたが、目を見開いた後、筆をとる。
しん、と静まる空間に、彼女の呼吸が聞こえ始めた。
それは徐々に早くなり、荒くなると、ついには筆を落として俯いてしまう。
この気丈な娘には、誰かに呪いを肩代わりさせることなど、到底できなかったのである。
深紅の毛氈にじわりと広がる墨の染みは、まるで腐食していく闇のようであった。
●
時は今。
場は新宿改札内、ホームにある待合室。
時先案内人、大和屋・酔仙(妖狐の妖怪博士・g03240)が、セールで買い込んだ納豆を大量にぶら下げて手を振っていた。
「こないなかっこですみません。さっそく依頼をお伝えします」
袂落としから和綴じの手帳を取り出し、それを読み始める。
「平安鬼妖地獄変の京の都で、また歌の事件が発生しております。今度は、呪われた連歌の事件ということで、皆様には返歌を作って対処していただくこととなります」
ここで言う『連歌』とは、5・7・5・7・7の31音である短歌を、これまた同じく5・7・5・7・7の31音である短歌で応答して詠む、詩歌の一種である。
まずは概要から。
この事件の特徴は、呪われた歌を受け取った被害者が、3日以内に、呪いの歌を受け取っていない別人に、呪いの歌の返歌を送らなければならないといったもの。もしそれができなければ、体が腐って死んでしまうのだという。
本来の返歌は、歌を送ってくれた相手に返すものだが、この呪いの歌は全くの別人に送る必要がある。
歌の先生に擬態しているのは、アヴァタール級クロノヴェーダ『白蛇姫』。
また、その取り巻きであるトループス級『黒虚天狗』が人間の男性に擬態しており、同じ歌会に参加している。
「この白蛇姫なる妖怪、『恋愛』を詠むことにかけて執念を燃やしておりまして、思わず頬を染める情熱的な恋歌を好んで歌っているようです」
おそらくは今回も愛だの恋だのといった内容の歌を投げつけてくるかと思うので、皆にはその恥ずかしいほどの愛だの恋だのの返歌を詠んでもらうことになる。
その恥ずかしい恋歌を受け取った人物について。
「呪いの歌を受けた被害者は、名前を梓子さんと言います。事情を知った侍女の春さんが、何とかして梓子さんの呪いを別の人に移そうと、歌会に参加するように画策したようなのですが、梓子さんはそれを望まず、他人に呪いを渡すことを拒んでいるようです」
このままだと、夕刻には梓子の体が腐り落ち、彼女は死んでしまうだろう。
「梓子さんは、あの当時の貴族社会ではかなり珍しい、男勝りな女性のようで、歌や踊りよりも武芸、恋愛よりも友情を重んじる人物のようです。おそらく、その性格が災いし、今回のことに繋がってしまったのでしょう。今回、侍女の春さんがいなければ、どうなっていたことやら……」
春のおかげで、この歌会に梓子が参加しているので、うまく二人に接触し、呪いの歌について話を聞きだしてほしい。
そして、梓子からディアボロスに呪いの歌を送ってもらい、その歌をクロノヴェーダに叩き返すことが出来れば、呪いの連鎖を打ち破ることができるだろう。
「皆様は和歌に慣れていない方も多いかと思いますが、心配ご無用。5・7・5・7・7であれば小難しいルールは必要ありません」
5・7・5・7・7で、顔から血が出んばかりの愛だの恋だのなこっぱずかしい内容をたたきつけてやろう!
流れを説明する。
必要とあらば抜かす、後回しにするといったこともできる箇所はあるが、上から順番にこなしていけば、スムーズに事が運ぶという目安になるだろう。
あくまでも目安なので、自由にしてくれて構わない。
一、歌会への参加。
梓子と春は、すでに歌会の会場にいる。
ただ、梓子は出席するのを渋っており、離れの庭で弓の稽古をしているらしい。
歌会会場はクロノヴェーダが警備している可能性が高いので、返歌をたたきつける前は、奴らに気づかれぬように密かに潜り込みたい。
離れは警備が手薄だが、庭の門には人間の警備が一人ついている。
二人に接触できた後は、梓子や春に歌会の様子を聞いて情報を集めよう。
梓子は性格上、かなり硬派な女子なので、恋愛を歌うのに抵抗があるぞ!
がんばってアドバイスをして懐柔し、返歌を歌わせて呪いを引き受けよう。
二、呪われた歌の返歌。
歌会に参加する。
主催する白蛇姫が歌の師匠として活動している間は、周囲の警戒などを行わないので、ディアボロスが目立つ行動をせず、正体を隠すようにして行動すれば、ディアボロスの正体が露見することは無い。
クロノヴェーダにたたきつける恋歌を考えたら、その場でぴしゃりとこっぱずかしい歌をぶつけてしまおう!
この時、歌の内容の意味もそえると、参加者たちが興味津々となるだろう。
三、護衛するトループス級『黒虚天狗』。
冒頭で狸と言われていた男達が正体を現すので、それを撃破。
恋愛和歌を好む黒虚天狗なので、しゃらくさいぞ!
四、アヴァタール級との決戦『白蛇姫』。
色々と恋愛をこじらせているクロノヴェーダなので、その辺りをつついてやってもいいかもしれない。
とにかく最後はぶっ倒すだけなので、遠慮なくやってしまおう。
呪いを無視するのならば、歌会に参加せずに、歌会が終わった後にでも屋敷に踏み込めば、クロノヴェーダと戦闘を行うこともできる。
しかし、呪いの歌の被害者の体が腐り、梓子が死んでしまうので、これは最後の手段として欲しい。
「梓子さんは、誰かに呪いを押し付けることのできない、心優しく気高い人物のようです。それを慕う春さんの気持ちを考えると、助けてあげたくもなりましょう……」
どうかお二人をよろしくお願いします、と頭を下げる酔仙を後にし、案内所を後にした。
紅葉がひらりと舞い降りる庭で、梓子が弓の稽古をしている。
雅な一角にいきなり無粋な的が置いてあり、そのド中心を矢が射貫いた。
「梓子さまぁーっ、お願いどすさかい、呪いの連歌対策をしておくれやすぅうーっ」
「嫌や」
「そう言わんとぉ!」
「嫌や! あないな恥ずかしい歌、死んでも無理!」
「返歌をしいひんと、ほんまに死んでまいます! どないしても恋歌を作るのが無理ちゅうなら、適当な歌を作ってうちに返しとぉくれやす!」
「アホなこと言わんといて! 春が死んでまいますやろ!」
「このままでは梓子さまが死んでまいます! 春は……春はそんなん嫌なんどすーっ!」
二人ともにして、まさに、風雲急を告げるやりとりをしていた。
リプレイ
砂糖・乃子
復讐とはただ怒るだけでは美しくないもの。
わたしもまた、歌の宴に。
桃色の和服を身に纏い、庭へ。
ただ、残留効果のプラチナチケットは他の皆様が残してくれるものを使ってしまいましょう。
関係者を名乗れば、もし警備の人が反応しても大丈夫でしょう。
わたしも聞きましょう、この宴でどんな歌が主に詠まれるのか、
そして、2人は何をしたいのか。
…恋とは、真っ直ぐであることが重要なのでしょうね。
アドリブ、連携歓迎
狭間・ならく
(アドリブ・連携お任せ)
【プラチナチケット】と詩でなんかさり気なく通る。よーっす、“今日もお疲れさん”。
ひひ。女だてらに弓の練習たァな。マ、狩衣でそれ見てるナラクさんも大概なモンだがな。
「梓弓ひき野のつゞら」……ってか?
冗談だよ。恋の歌は苦手ってンだろ。ちィと話聞かせてくれや。なァに、悪いようにゃしねェさ。婿取りじゃあるまいし、今どき年頃の貴族の娘なんぞいくらでも身代わり立てられるだろうよ。違うかい?
……あー、アタシじゃ年増がすぎるって苦情は受け付けらんねェぞ。どうせ御簾越しだろ。バレねーバレねーって。
菅原・小梅
◆行動
歌会に遅参したのが恥ずかしく
離れからお邪魔した成人前の貴族の『子息』として離れの警備の者に接しましょう
(【プラチナチケット】を使用し)
違和感なきよう香をしかと焚き詰めた水干装束を纏っていますしね
庭の二人に会えたら歌を一つ
『梓弓、ひかれし心、山粧(やまよそ)う、小春日和を、曇らせまいと』
梓子様に惹かれ紅葉の如く飾り立て来てしまいました
暖かなお二人の関係が曇ってしまわない様にと思いまして
そんな歌と一緒にお声掛けしますね
些か射に乱れを感じますね、お悩み事があるのでは?
同性の誼でご相談に乗りますよ(微笑)
相談を聞く際には基本的に否定はしません
私自身もしも男子だったら…と嘆かれた経験がありますしね
●
また一つ、梓子が矢を放った。
ひゅと的を逸れた一本は、門戸近くの柱に突き刺さり、その横に立っていた狭間・ならく(【嘘】・g03437)が口笛を鳴らす。
「えらくまた、外したもんだねェ。苛々してると、“的が”どこかに行っちまうよ」
「何者どすか!」
その後ろから、菅原・小梅(紅姫・g00596)が砂糖・乃子(レシピを探しています・g04318)と共に現れた。
「些か射に乱れを感じますね、お悩み事があるのでは?」
春を背後に庇い、主従が逆転している梓子が弓を構えようとしたところで、小梅が言う。
「歌会に参加しようと離れに来ましたら、何やら場にそぐわぬ物音がしたので、ちょっと様子を見に来ただけです。驚かせてしまいましたのなら、どうかお許しを」
プラチナチケットの効果は、警備をしていた者以外にも効いているようだ。梓子と春も、彼女らが歌会の関係者だと思い込み、ふと気を緩める。
慌てて春が頭を下げた。
「え、えらいすんまへん! ほら、梓子さま、もう弓はしもうて、歌会に戻りまひょ!」
「嫌や」
そう反対を向いてしまう梓子に嘆く春を見て、ならくが愉快そうに笑う。
「ひひ。恋の歌は苦手ってンだろ」
「な!?」
『何故それを知っている』と、顔を赤くして狼狽える梓子をからかおうとしているならくに、乃子が苦笑いをしている。
「ちィと話聞かせてくれや。なァに、悪いようにゃしねェさ。あンたの持ってるその“歌”……アタシ達に教えてほしいってだけ」
梓子の顔色が変わる。
「何故知ってるんどすか」
乃子もそれに続く。
「この宴で、どんな歌が詠まれているか、教えて頂けませんか」
語るまいと唇をぎゅっと噛む梓子に耐えかね、春が堰を切ってしゃべり出す。
「呪いどす……! あの歌会は、『呪われた連歌』をやりとりする、えげつない場所になってるんどす……」
「春……!!」
「今、その呪いを受け取ってるのんは、この梓子さま。今日の陽が沈んだら、お身体が腐って死んでまうんどす……。何とかして誰かにその呪いを渡して難を逃れようとしてるんどすけど、この調子で全然取り合うてくれへんのどす。もう時間が……」
やっと誰かに話せたことで、春の中で何かがぷつりと切れたようだ。その場でわんわんと泣き始めたので、乃子がそっと寄り添ってやる。
「わたし達、この事件を解決する方法を知っているんです」
二人が同時に乃子に顔を向けた。
「ど、どういうことどす……?」
春の涙を袖でぬぐってやりながら、聞く。
「春さんは、どうしたいのですか?」
「うちは、梓子さまをお助けしとうございます……」
「梓子さんは?」
「……誰かが犠牲になるんやったら、そないなばかげたことは、ここで終わらせるべきかと」
ならくが笑った。
「イイ女だねェー。アンタを死なせたくないのは、この春同様、アタシ達も同じってことさ」
と、そこで小梅の透き通った声が空を渡る。
「梓弓……ひかれし心、山粧(やまよそ)う……小春日和を、曇らせまいと……」
それを聞いた梓子の表情が変わった。
「その歌は……?」
「梓子様に惹かれ、紅葉の如く飾り立て来てしまいました。暖かなお二人の関係が、曇ってしまわない様にと思いまして……」
振り向けば、春の顔はどしゃぶりの嵐。
年若くかわいらしい娘が、小汚く鼻を垂らし、猿のように目を赤くして、それをさせているのは誰かと責められれば……自分である。
友を大いに心配させ、泣かせた狭間で揺れる梓子に、ならくが言った。
「アタシ達に歌を教えな。代わりに歌会に出てやるよ。婿取りじゃあるまいし、年頃の貴族の娘なんぞいくらでも身代わり立てられるだろうよ。違うかい?」
「しかし……結局誰かが犠牲に……」
乃子が首を横に振る。
「大丈夫。この連鎖、必ず止めてみせます」
梓子はしばらく俯いていたが、意を決したように先程歌を詠んだ小梅に向き直った。
「毒となる……思い強さに木枯らしの……一矢報いて、こころまと……」
梓子と春がお互いを思いやる様は、まるで毒となるほどで、凍てつく風のように傷つけあったが、心に訴えかけたものは見事に刺さった……あとは頼むと、そう言いたいのだろう。
ディアボロス三人はその歌を耳にした瞬間、己の身に呪いが移されたと把握した。
「恋歌なんてもの、到底歌えやしまへんが……」
梓子の言葉を遮り、その真っ直ぐな気持ちを受け止めて乃子が微笑む。
「お互いを思いやるのも……愛ですよ」
さあ、これからが勝負。
歌会にいる白蛇姫に呪いを返すべく、ディアボロス達は行動に移った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV2が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
砂糖・乃子
…恋愛を語るそこなお方。
どうかわたしにも、一つ歌を詠ませて…うふふっ…
いえ、何もおかしくないですよ。
愛は呪いのようなものとも言いますし。
陽炎の…心燃ゆ春…打ち続く…
黙す蛇さへ…夢と消ゆ朝。
陽炎のように思い合う2人の暖かな瞬間は、いつまでも続く。
失恋を拗らせた蛇もまた、その真っ直ぐな言葉に、燃え上がる愛に敵わない。
これがわたしの、返歌です。
愛とは自由でもあります。
誰にも邪魔されず、羽ばたくべきなのですよ。
時間をかけて育てる愛の方が多いでしょうが…
あなたは開花を遅らせ過ぎた。
あなたに尊さを穢すことは出来ません。
Vous serez toujours seule…
あなたはひとりぼっちです、永遠に。
菅原・小梅
◆行動
首尾良く歌をお預かりする事が出来ましたね
後は肝心の恋の返歌ですが……
「君待つと、我が恋ひをれば、息白く、出羽の小町の、乞いも知らずに」
万葉の額田王様からの本歌取りです
愛しい貴方の訪れをお待ちしておりました
出羽出身で美女の小町からの誘いもあったことも知らずに一晩中
そんな悲しい悲しい意味合いですね
(何となく白蛇姫を【観察】し、心の内を【看破】してみる)
又、恋ひは乞いであり
邪な乞いは折られ、正しき乞いは
小野篁様の血縁である小町様から閻魔様へと届き
顔面蒼白になるぐらい悪人が裁かれるもの
そう願う歌でもあります
此れを返せば呪は解けるでしょう
そして遥かな未来ならこう称されるかと……フラグは折れたと
狭間・ならく
(たまには装束もちゃんとしよ)(周りに合わせて)
恋の華にいのちをかふるものならば
はなともどもにたおらばやとも
なーんてな
(古今の真似っこ)(折らばや折らむそのフラグごと)
(恋しさにいのちまでかけられるようなヤツならまぁ歓迎ですけどそうじゃないなら一昨日来やがれ、を遠回しに)(え、歌が成立してない? 気にすンなよ、雰囲気だ雰囲気。パラドクスで誤魔化す)
狸にゃ分かるまいが、
いとしもにくしも所詮は裏表サ。
コインの裏表なんて結局は地続き、
区別になんの意味もねェ。
それと同じで──
毒〈呪い〉だって毒〈祝い〉で返せるモンさね。
ひひ、“アンタの恋路に祝福あれ”。
●
歌会が始まった。
春に先導され、梓子の後ろから、しれっと貴族に扮したディアボロスたちが室内に入り込む。
目だけで参加者の様子を探ると、男性陣に4名、『狸』の黒虚天狗だと思われる人物が鎮座しているのが分かった。
白蛇姫は言わずもがな、歌仙である。
クロノヴェーダ陣は、人間風情が少々増えたところで、興味も示していない様子。むしろ獲物が罠の中に落ちたとでも言いたげに、鋭い目をこちらに向けている。
呪いを持っているはずの梓子に落ち着きがあるのを不思議に思ったのか、白蛇姫が声を掛けてきた。
「おや、昨日落とした筆……誰かに拾うてもろうたのですか」
「……本日は、その筆をお持ちになった方々に来てもろうとります」
「ほお……それは愉しみなこっとすな。ほな、そちらの殿方に返歌を……」
「いえ」
そこで菅原・小梅(紅姫・g00596)が割り込んだ。
「お招きに預かりました私としては、歌仙様直々に御礼をお返ししたく思います」
「……何どすて?」
白蛇姫の顔色が変わったのを確認したが、小梅はそのまま静かに目をつむると、『白蛇姫に対して』返歌を読み始めた。
「君待つと……」
「おやめなされ!」
「……我が恋ひをれば、息白く……出羽の小町の、乞いも知らずに」
「……くっ!!」
突然平静さを失った歌仙に、参加者たちは何事かとざわめき始める。
小梅は目を開き、着物の襟を乱した白蛇姫に視線を移す。
「おや、失礼。悲恋の歌はお嫌いのようで」
美女の誘いに出かけた思い人を待ちぼうけし、知らぬまま一夜を明かす女心を歌ったものだ。
「そういえば……、小町様のお父上様である篁様は、冥府で閻魔大王の補佐をしていたとか。そんな伝説がありましたが、真になれば、この世も少しはまともになるというものでしょう。そうは思いませんか、歌仙様?」
どこからか舌打ちが聞こえた。クロノヴェーダから漏れたものであろう。
白蛇姫は憤りを吐き出すように言った。
「勝手なことしてもろうては困ります。恋愛を読む勉強をしてるちゅうのに、我先に悲恋を読むとは、いちびりさんやあるまいし……」
「では、私が胸をも焦がす歌を差し上げましょう」
言うや砂糖・乃子(レシピを探しています・g04318)が歌を詠み始める。
「陽炎の……心燃ゆ春……打ち続く……黙す蛇さへ……夢と消ゆ朝」
おお、と一般人から感嘆のため息が漏れた。
「最近知り合った方で、命の危機に迫る悩みを持つ主と、それを助けようと命をかけて尽くさんとするけなげな侍女がおりまして。それを返歌に読ませて頂きました。執拗に粘着して絞め殺そうとする毒蛇も、お互いを思うその真っ直ぐな熱には適わず、最後には焼かれて滅びることになるでしょう」
にっこりと微笑む乃子を前に、人々はこの歌を聞いて『そうに違いない』と頷いていたが、一人歌仙だけが憤った。
「ほほ……蛇の執念は邪念と申したいのか。ただ求めているだけではないか、愛や恋を」
「奪うことが、求めることにはなりませんでしょう? 蛇は全ての恋愛に嫉妬をし、牙にかけて殺しているだけ。でも真実の愛が持つ尊さを穢すことは出来ません。そう、結局のところ、ずっとひとりぼっちなのです」
付け加えて、乃子が薄く微笑みながら最後の部分を軽くフランス語にして放り投げると、嘲笑されたと受け取った白蛇姫は牙を剥いた。
それを見た参加者がひそひそと耳打ちをしている。
もう一押しと言わんばかりに、嘲笑の達人がたたみかけにきた。
一見、遠目から見れば普通に見かける貴族の娘。いつもの出で立ちとは真逆な雰囲気で、大人しくそこに座っていた狭間・ならく(【嘘】・g03437)がいきなり大声で歌を詠み始めた。
「恋の華にぃぃー」
その場にいた者達が一斉に彼女に視線を移す。
「いのちをかふるーものならば-、はなともどもにーたおらばやともー……」
しん……と静寂が訪れ、ニッと笑う。
「なーんてな」
浮かれる周囲はおそらく、いつも聞かない雰囲気の歌ばかりで、斬新さを感じているのだろう。少々どぎつい内容ばかりだが、裏を読めば愛ばかりの内容で、貴族連中の興を買っているらしい。『ちょっとスリリングでワクワクしますわ』といった感じなのだろうが、“ワル”い雰囲気の恋愛にときめく一部がいるのは、今も昔も変わっていない様子。
ならくは顎をくいと上げると、白蛇姫にふんと鼻を鳴らす。
「恋しさに、いのちまでかけられるようなヤツなら、まぁ歓迎ですけど。そうじゃないなら一昨日来やがれ、ってヤツなんだよ歌仙サンよ」
「貴様もか……」
完全に呪いを解かれ、今にもはがれそうな金箔。
傍らで見ていた狸の皮すらはがれそうで、では引きはがしてやれと、ならくは続けた。
「狸にゃ分かるまいが、愛しも憎しも所詮は裏表サ。コインの裏表なんて結局は地続き、区別になんの意味もねェ。それと同じで……毒(呪い)だって毒(祝い)で返せるモンさね」
そして両手の指二本、合計4本、人差し指と中指をあわせて立て、クイクイと曲げながら、嫌みたっぷりに言ってやる。
「ひひ、“アンタの恋路に祝福あれ”!」
「貴様ぁぁぁ……!!」
その一言を聞くや白蛇姫の身体から赤黒いオーラが吹き上がり、今まで身に纏っていた上品な気配が消し飛んだ。
悲鳴が響き渡り、場は一瞬にして騒然となる。
梓子に春が駆け寄り、お互い身を寄せ合った。
「こ……こら一体どないなことや……歌仙はんは、妖怪やったちゅうんか……」
「このくそ生意気な小娘どもを、殺してまえ!!」
白蛇姫の号令一つで黒虚天狗が翻り、正体を現した。
「ふ、ふ、ふ……これはこれは、可愛らしいお嬢さん方ですね」
「楽しい宴となりそうだ……」
「覚悟して頂かなくてはなりませんが、か弱き女性ですからね、苦しまないようにして差し上げますよ」
「私たちは、紳士ですからね」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】がLV5になった!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
砂糖・乃子
…残念です。
そのような心で紳士を語るなどと。
『あなたがたに、これ以上の救済はあり得ません』。
このパラドクスはその証左です。
これがあるから、哀れな蛇が求める結末は泡沫の夢と消えたのです。
そして、この声には、あなたがたしか聴けない周波数がある。
耳を塞ぐ余裕など無いと思いなさいな…わたしも味方との十分な連携を取らせていただきますので。
呪いの羽をもし受けたとしても…情熱で耐えましょう。
この情熱は、クロノヴェーダには無いものでしょうから。
和服ももう意味を為しません。
あなたがたはもう、文字など詠んでいい存在ではない。
…二人が想い合う邪魔をしないでいただきたい。
さあ、めでたしめでたしまで後少し。
●
周囲は騒然だ。
黒虚天狗が立ちふさがって退路を塞いだせいで、参加者達がクロノヴェーダを前に恐怖で四方に散らばりはじめた。
梓子と春はその流れに圧されぬよう、必死にかさばる着物を引き摺り、壁際に身を寄せている。
「気の強そうなお嬢さん、私がお手を取りましょう。死への道標……我が手に添えて、勇み足……美しきかな、その蒼白」
くくく、と笑う黒虚天狗を睨み付ける梓子を目にし、砂糖・乃子(レシピを探しています・g04318)が顔をしかめる。
「あなたたちの相手は私です!」
「おやおや、私の相手をして下さいよ。無視されては寂しくなってしまう。四鏡、天狗の鼻も、色違い……霞と消えて、戸惑いかな……ふふふ」
もう一人の黒虚天狗が前に出て、その進みを遮った。
(「彼女達一般人を避難させないと、被害が広がってしまう……。せっかく呪いを解いても、ここで死人が出てしまっては元も子もないわ……」)
乃子はそう考え、ひとまず自分に意識を向けさせるために挑発を試みた。
「あなたがたに、これ以上の救済はあり得ません。あなたがたはもう、文字など詠んでいい存在ではない。その軽い口、閉じてもらいます!」
言うや相手の態度を見ることなくパラドクスを放つ。
「ぎゃっ……!?」
乃子から発せられた衝撃に黒虚天狗たちは耳を押さえたが、その指の隙間から血が飛び散った。
Backstage pass。
「この声はあなた方にしか聞こえない。耳を塞いでも無駄なこと」
「猪口才な娘も嫌いではない……では、私たちからの返歌をお受けなさい!!」
3匹が羽で仰ぎ、鴉の黒矢を乃子めがけて撃ち放った。
耐えてみせると身構え、燃やし尽くさんとばかりに睨み付ける。
皮膚を切り裂いて通り抜ける黒い矢を振り払い、乃子が大きく息を吐いた。
「……まだまだこれからです」
成功🔵🔵🔴
効果1【プラチナチケット】がLV6になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
狭間・ならく
アタシが小娘に見えンなら顔洗って出直しな。
っはぁ──面倒くせェ。
面倒くせェけどテメーらを放っておく理由がねーんだわ。特に後ろのその女は。
なァ。アタシを怒らせンのも大概にしろよ。身内で持ち上げてなーにが“歌仙”だ。
なァ?
・・・
貴様ら。
(装束を雑に脱ぎ捨て、少しは動きやすい格好に)
(灼刀──)(構え、)
(【虚像閃】、)
おらよ
・・・・・・・
死んであの世で償え。
貴様らが穢した名に詫び続けろ。
乃子の攻撃に続き、狭間・ならく(【嘘】・g03437)が間合いに入る。
「よそ見してると死ぬぜ!?」
(「どの道死ぬが」)
そう思いながら、装束を翻して蹴りを食らわせ、勢いを止めて小さく鼻を鳴らす。
黒虚天狗は避けてから錫杖を向けた。
「ふむ……冷ややかな笑みがまたそそるというもの……そなたに求愛の歌を詠もうか」
「っはぁ」
けっ、と似た響きで吐き捨て。
「面倒くせェ。……面倒くせェけど、テメーらを放っておく理由がねーんだわ。特に後ろのその女は」
黒虚天狗を目に入れてもいない様子で素通りする視線の後ろ、ディアボロスたちの戦いを睨み付けている白蛇姫に焦点を当てる。
「なァ。アタシを怒らせンのも大概にしろよ。身内で持ち上げてなーにが“歌仙”だ」
「姫様に無礼は、さすがにいけません」
黒虚天狗が視界を遮ると、ならくのこめかみに青筋が浮き上がった。
(「貴様ら」)
引かれた装束をそのまま脱ぎ捨て、内の着物だけになると足を開いて着崩れさせ、そのまま気を溜める。
(「灼刀……」)
刀に手を添え、握ると同時に鞘から放つ。
「おらよ」
虚像閃。
浮いた着物ごと黒虚天狗を一太刀。
声一つ発する間もなく、黒虚天狗の一体が床に転がった。
「く……! 黒翼影討ノ術!」
残像を戻そうとするならくの影を追い、錫杖を突いてくる。
「ちっ」
腕でそれを抑え、後方に飛び退いて間合いをとった。
「いってェ……」
残りあと3体。
成功🔵🔵🔴
効果1【神速反応】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
ブレロー・ヴェール
そんなに言葉遊びが好きなら僕からもひとつ
「ふるゆきの、きえざることぞ、しらじらし、きょうのすずめも、しずかなれかし」
ピーピーとうるさい小鳥はさっさとご退場願おうか。
(氷塊になった蟷螂乙女を投げつけて)
ほら、少しは運動しないとモテないよ。
もう一体減らせば、退路が確保できそうだ。
壁際に散り散りになって身を寄せ合っている一般人の中から、突然1体の人形が中央に躍り出た。
何事かと黒虚天狗は一瞬怯んだが、それを操るブレロー・ヴェール(le vengeur du sang・g05009)に気がつくと、呆れた様子でため息をつく。
「……戯れや、度が過ぎたるは、子供だまし。朱の鮮やかさ、千切り絵の如く……聞こえてますか、貴女のことですよ」
どん、と錫杖で床を突き、それにおびえた一般人達が悲鳴を発する。
身を潜めてチャンスを窺っていたブレローは、その挑発に返歌を投げた。
「ふるゆきの、きえざることぞ、しらじらし……きょうのすずめも、しずかなれかし……」
「生意気なことを……出てこないなら、この周辺を軽く撫でるだけですよ……!」
黒虚天狗の1体が錫杖を振り上げた瞬間、中央の人形に強烈な冷気が走る。急速に冷却された人形……蟷螂乙女は氷塊となり、その身に蓄えた氷の塊を爆散させた。
「ピーピーとうるさい小鳥は、さっさとご退場願おうか!!」
「ちぃ……!! そこか!!」
破裂で鋭く尖った氷を受けながら、黒虚天狗が黒翼影討ノ術でそれを突き落とす。
そのままブレロー目がけて2体が一撃を叩き入れてきたのを、彼女は身構えて受け止めた。
勢いで後方の壁に激突したが、何とか弾いて間合いを取る。
黒虚天狗がよろめきながら肩を揺らしていた。
「その雪のように白い肌……引き裂いた感激を味わい……我が歌にして差し上げよう」
顔は隠されて見えなかったが、笑っているのだろう。
ブレローは口の端から伝う1本の血の筋を手の甲でぬぐい、息を整えた。
「後ろに1体、転がってるけど」
「まだ二人残ってる、と言って頂きたいですね……」
成功🔵🔵🔴
効果1【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
砂糖・乃子
さて。
壁際にあるは2人の女子。
如何様に避難させるべきか…
否。
『愛は満ちました』。
初めから悩む必要などなかったのです。
狭間・ならく
チッ……ったく、面倒くせェな。
だが、アタシの影を捉えられるンなら戦り甲斐もあるってなモンよ。
……ひひ。あァ、下手くそな歌で誘われるよかよっぽどいいゼ。
マ、それはそれとして邪魔なンは邪魔だから押し通らせてもらうが。退けよ。これ以上テメェらと遊んでやる義理もねェ。
なァ。言い訳なら地獄で聞いてもらえや。
黒虚天狗を残り2体に減らし、退路が開けた。
砂糖・乃子(レシピを探しています・g04318)は崩れた壁や折れて曲がった柱の場所を確認した後、怪我人や身動きのとれない一般人がいないか、敵の気配を掴みながらも目で探る。
白蛇姫が北、黒虚天狗がその前に2体。
(「南か西の通路に誘導できれば、それぞれが散らばって攻撃範囲から出られる……」)
前で黒虚天狗に睨みをきかせている狭間・ならく(【嘘】・g03437)を見たが、背を向けていたので合図はできなかった。しかし乃子は彼女を信じて避難誘導に出る。
一体減らせれば、ならくが残りを仕留めてくれるはず。
「ここに彼らをとどめておくわけにはいかないの! これからも、もっともっと愛や恋を詠う人々が、この世には必要とされているのだから!」
言うや次の瞬間、乃子のLa passion irrésistibleが炸裂。
一体が爆破で倒れ、爆風を受けた1体が怒りにまかせて錫杖をなぎ払う。
「くっそ……!!」
「くっ……!!」
乃子は身体でそれを受け止めて痛みに耐えたが、その時パラドクス効果の避難勧告が発動した。
危険な場所に赤い光が明滅し、わんわんとサイレンが鳴り響き始めると、白蛇姫が動転した様子で周囲を見回す。
「な、何や突然……!?」
乃子は壁際に身を寄せ合う梓子と春に視線を移し、ウインクを投げてから顔を西の通路へ向けてやる。
「愛は満ちました……!」
満ちたものは、流れ出る……。梓子は乃子が逃げろと言っているのに気がつくと、隣にいた春に支持を出した。
「春っ、逃げ遅れた人達を連れて、西の出口へ!!」
「は、はいぃぃ!!」
逃げていく一般人を前に、残り1体の黒虚天狗が飛び出した。
「逃しませんよ!!」
ならくがその間に滑り込む。
「チッ……ったく、面倒くせェな!」
足をかけて転ばせると、黒虚天狗は体勢を崩して羽を広げた。
いい獲物だ。攻撃範囲が広がり、的を狙いやすくなった。
剣を振るったがそれを避けられ、ならくが『へえ』と感心する。さすが最後までしぶとく生き残った1体だけはある。
「女だと思って手加減していれば……もう容赦はしませんよ!」
「……ひひ。あァ、下手くそな歌で誘われるよか、よっぽどいいゼ」
「では貴女の墓に、私の詩を刻んでやるとしましょうか!」
「退けよ。これ以上テメェらと遊んでやる義理もねェ!」
目当ては白蛇姫。邪魔だとばかりに剣を突き出し、角度をつけて間合いに飛び込んだ。
すでに避難は済んだようで、周囲に人影はなし。
思い切り戦える。
「すぐにあの生っ白い姫さんも送ってやんよ。死んだ言い訳なら、地獄で聞いてもらえや!!」
セーブしていた力を解放し、思い切り一刀を振るった。
真っ二つに分かれた胴体がずれ込み、黒虚天狗は慌てて自分の身体を押さえようとしたが、そのまま身動きとれずに地に両断した身体が落下して朽ち果てた。
黒虚天狗撃破。
白蛇姫は深いため息をつくと、目をつむる。
「……本に、男っちゅうのは……いざとなった時、全く役に立たしまへんな……」
その身体からどす黒い妖気が立ち上がり、それはみるみる渦を巻いて彼女を包み込むと、その中から猛り狂った黒馬と、嫉妬と執着に染まった白蛇が現れ出た。
「もののふの……八十の冬越え、産声も……輪廻の先に……常闇を残さん……」
深紅の瞳が見開かれ、その短歌と共に周囲の家屋がひしゃげ落ち、空気が淀んだものへと汚染された。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!
狭間・ならく
皮肉か? それとも自虐か?
貴様ら輪廻の輪からのハズレモノどもが何を抜かす。
どこの誰に引っかかったか知らんが、正しく輪廻を続けるなら、テメーな次の行き先は地獄だろうよ。全て贖ってからこの世に帰ってこい。
(ネメシスモード)(其れは額に角を持つ、地獄の鬼にも似た姿で)(灼刀を構える)
……ハッ。
地獄の焔は明るかろうが、如何な常闇だろうと、アタシはそれを切り裂いてやるよ。
──吠えろ、灼刀。
(赫赫と、燃えるような刃を閃かせる)
●
狭間・ならく(【嘘】・g03437)が大きく息をつき、一歩前に出る。
「皮肉か? それとも自虐か?」
「ほほ、呪いや」
「ぐだぐだぐだぐだ……」
ならくが灼刀をちきっと鳴らし、白蛇姫に切っ先を向ける。
「……正しく輪廻を続けるなら、テメーの次の行き先は地獄だろうよ」
吸い込む空気で分かるほど、ならくの周囲で温度が上がった。
「この世に戻ってきてェんなら……全て贖ってから帰ってこい!」
言葉の勢いと共に、地獄から炎が吹き上がるかの如く、彼女の身体を朱のオーラが覆い尽くす。それは一瞬にして頭上まで届くと、振られた刀で払われた。
そこにいたのは『鬼』にも似た姿のならく。二本の角が額から天に伸び、眼光の鋭さが尋常でないほど増している。
白蛇姫が一瞬怯んだ隙をつき、その懐に飛び込んだ。
「なっ……!」
目で追えぬ速度。瞬きする間もなく一太刀の光が視界を過ぎる。
(「地獄の焔は明るかろうが、如何な常闇だろうと、アタシはそれを切り裂いてやるよ」)
「吠えろ、灼刀!」
空間が赫赫と発光し、白蛇姫が悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「お、おのれぇえ……!!」
白蛇の尾が薙ぎ払い、それを腕で受けたならくは後方に退いた。
じゅうじゅうと音を立てて焼け焦げる二の腕を震えながら押え、白蛇姫は息を荒くして奇声を発する。
「キィィィぃイ!! 許さへん……許さへん、殺したるゥゥ!!」
成功🔵🔵🔴
効果1【一刀両断】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
ブレロー・ヴェール
男というのは勝手に生きて勝手に死ぬ生き物だからね、まったくどうしようもない……いや、それはともかくやっと本命のお出ましか、気を入れてかからないとね。
蟷螂乙女を捨て身で突進させて白蛇姫に抱き着かせてから、擁贄血刺で串刺しにして今回は冷却装置の冷媒を注入しようかな。蛇なら寒いのに苦手そうだしね。
先に倒した黒虚天狗の骸を前に、ブレロー・ヴェール(le vengeur du sang・g05009)が聞こえぬほどの声でつぶやいた。
(「男というのは、勝手に生きて勝手に死ぬ生き物だからね、まったくどうしようもない……」)
誰のことを指しているのか、何かを思い出していた様子でもあったが、髪を振り乱す白蛇姫にその視線を向ける。
「あの娘も贖罪が必要みたいだよ、蟷螂乙女……」
いっておいで、と手で払い、操り人形をけしかけた。
人形は突進した後、白蛇姫のか細い背にもたれかかり、無表情のまま両腕でその身体にしがみつく。
抱きついたとは言えぬような、そんな気味の悪い行動に、白蛇姫は嫌悪感を露にして身を振った。
「こないな枷、振り払うてくれるわ!!」
言い終わる前に、人形は内から無数の棘を外へと競り上げる。
「ぎゃっ!?」
串刺す棘は背骨に当たり、蟷螂乙女を白蛇姫から押しのけた。
白い着物が一瞬にして鮮血に染められ、そこから氷の塊が生み出されていく。
「な、何をした!!」
静かにそれを見ていたブレローが淡々と答える。
「蛇は寒いのが苦手でしょう?」
「くっ!!」
白蛇姫の周囲を渦巻く白蛇がその氷をかち割り、勢いのままブレローに攻撃を向けた。
蟷螂乙女と共に後方に弾かれたが、大したダメージは受けていない。
すっと姿勢を正して息をつく。
成功🔵🔵🔴
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
砂糖・乃子
…役に立たないのはあなたの心がそうさせているからです。
ああ馬鹿なお人。いつまでも嫉妬に駆られているようでは…。
あなたの常闇は、あなた自信が産んだものです。
ずっと踏み出せず拗らせて、挙句の果てに愛を得られない。
だから妬んでいたのでしょう…?
ただでさえ醜いその心がもっとしょうがなくなってしまう…。
いい加減、現実をご覧なさい。
この期に及んでまだ和の歌を紡ごうと言うのであれば、大蛇ごとあなたを焼きましょう。
わたしを追跡してくる蛇の顔に、styloの紅い光のインクを一滴垂らせば…
超火力、大蛇のソテーなどできますでしょうか。
わたしは料理人である故、文字を綴るように料理をする。
芸術の再生、あなたで下拵えを。
一つ攻撃の間が空いた時、白蛇姫は突然苛々と金切り声をあげ、着物についた鮮血を恨みで黒々と染め上げていく。
まるでそれは、人の心を暗闇に落とした、彼女そのものを象徴するような光景で、砂糖・乃子(レシピを探しています・g04318)は不快感に眉をひそめる。
白蛇姫はその乃子に目をやり、乱れた髪の垣間から血走った瞳を覗かせて言った。
「……命尽きる最期くらいは、愛でも詠んで呪い殺して差し上げよう思たのに……」
嗚呼、と乃子の口からため息が漏れる。
「馬鹿なお人……」
「あんたらに……!! あんたらごときに!! 何が分かる!!」
白蛇姫は怒りに狂う寸前で、白目を剥いて声を張り上げた。
「……ずっと箱に閉じ込められ……そうか思たら急にあてがわれた男しか知らんと、愛も恋も遠おして虚しい中で……待てど暮らせど、訪れるのんは四季折々の季節だけ……!!」
この当時、男が女の元へ通う。それが貴族の中では普通のこと。心が合わなければそれまでで、女の元から遠退き、ただ囲うだけで放置する男は大勢いた。白蛇姫が男勝りな梓子に目をつけたのは、おそらくそれらから縁遠い、自由奔放な姿が癪に障ってのことだったのだろう。
乃子は再び言った。
「……馬鹿なお人。あなたの常闇は、あなた自信が産んだものです。ただでさえ醜いその心が、もっとしょうがなくなってしまう……」
男が選ばない理由は、自分で産み出していた。拗ねてひねて嫉妬深く冷たい女……否、そんな人間のどこに惹かれよう。
「呪い殺したる……どいつもこいつも、みんなみんな……末代まで祟られたらよろしい!!」
襲い来る白蛇姫を前に、乃子はペン“Stylo”を取った。
伸びる蛇をしなやかに避け、流れるかのように追ってくる肢体を目で確認しながら、牙を剥く顔にそのインクの一滴を振りかける。赤い光は彼女の意思に呼応し、一気に発火すると大蛇の顔面をウェルダンに焼いた。
「千早振る……神白喰らふその腹に……喉元通る、暴れ石榴……」
白蛇姫が短歌を詠み始めると、暴れた白蛇は燃える頭ごと乃子に牙を立てる。
「く……!」
何とかその顎を押しのけ、転がるように地に逃げ込んだ。
「はあっ……はあっ……」
大蛇は白い身体をうねらせて戻り、白蛇姫を中心に首を上げた。
「その程度かえ……」
体力はまだまだ衰えず、その闇深い執念が垣間見える。
成功🔵🔵🔴
効果1【おいしくなあれ】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
護藤・勇佐季
※共闘・アドリブ歓迎
あ"??
カスが何を一丁前にほざいてやがる。
黙って死ね。
元がただの女だからか、馬の巨体のせいか、その場で暴れるばかりでどうも鈍重だ。
なら、容赦せずそこを突く。
【新宿理心流・燗刺】で攻撃、胴体に刀が刺さるようならそのままブチ抜いて磔にしてやる。
避けるようならそのしみったれた顔面に飛び膝蹴りくれてやらァ。
いくらお涙頂戴で鬱屈垂れ流そうと関係ねェ、カスはカスだ。
根性無しの悲劇の自分語りなんざ聞く価値もねェ。
「ギャーギャーとやかましいんだよカスがよォ。その臭ェ口閉じろっつってんの、おわかり?」
「オラ、どうしたァ!!泣き喚いてないで呪い垂れ流してみやがれ、出来るんモンならなァ!!!」
「あ? カスが何を一丁前にほざいてやがる……」
突然頭上から柄の悪い男性の声が聞こえ、一同が上を仰ぎ見る。
そこには崩れて空洞になった屋根に、護藤・勇佐季(新宿理心流・g05829)がけだるく腰掛けていた。
憎悪の対照である男がやってきたとばかりに、白蛇姫の眼光が鋭くなる。
「……はれ、お早いおつきどすなぁ。女同士で楽しゅうやってましたさかい、男の子はんの入る隙間があるかどうか……」
ゆるりと手を広げ、荒れた室内を指し示す。
「ギャーギャーとやかましいんだよカスがよォ。その臭ェ口閉じろっつってんの、おわかり?」
「品のない男は嫌われますえ」
褒め言葉だとばかりに、勇佐季が鼻を鳴らして立ち上がる。
そして腰の刀を抜くと穴の中へ勢いよく投げ入れ、自らも落下して前触れもなく白蛇姫に飛び膝蹴りを喰らわせた。
不意打ちを食らった白蛇姫は避ける間もなく腰元に刀を突き刺し、その柄を無情に勇佐季が靴の底でねじ込んだ。
「ぎゃあ……!!」
猫が車に弾かれたようなような悲鳴が響き、それを耳にする男の顔は残酷で、情けのかけらも見当たらない。
「オラ、どうしたァ!! 泣き喚いてないで呪い垂れ流してみやがれ、出来るんモンならなァ!!!」
そのまま蹴り抜こうとしたが、白蛇姫の反撃が入る。
「恨めしい下衆めが……!!」
蛇が下から勇佐季の足を払いのけ、その衝撃に壁まで吹き飛ばされた。
「……へっ」
ぷ、と口の中ににじんだ血を吐き出し、切れた唇を舐めて見せる。
成功🔵🔵🔴
効果1【落下耐性】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
砂糖・乃子
…困りましたね。
ここまで頑固だとは…うふっ。
となれば、前言は撤回せざるを得ないでしょう。
愛の……随に。
ネメシス形態に変異、明確にとどめを刺します。
髪色はピンクに変じ、ピンクの瞳はそれが一層の鮮やかさを伴って水色の魔眼となる…。
これは即ち、わたしの中にある愛の力の暴走なのです。
ええ、そうですとも。
このわたしはクロノヴェーダと同じ。
人間で、■■なんです。
振るわれる尾を神速反応で回避してから、正面に立って、アイスをお作りしましょう。
愛に愛されないあなたを救済するには、まず愛がしあわせであることを再認識してもらう、それが良いんです。
せめてわたしに愛されて、見つめられて逝きなさい。
Bon voyage.
ブレロー・ヴェール
恨みや憎しみで呪わずにはいられない程恋い焦がれて叶わなかった想いがあったんだろうね。
あのお姫様には悪いがすっぱりと殺してあげるくらいしか僕にできる事は無いな……
おっと君はまだだよ、蟷螂乙女。まだまだ死なせてはあげないからね。
(蟷螂乙女を蹴倒して踏みにじり、繰り糸を乱暴に引絞って緋鳴砲を発動させる。)
フフフ、今日もいい声で哭くじゃないか……
それにしても愚かな人だ、男がダメだったなら女がいるじゃないか、ねえ?
勇佐季との戦いを見ていたブレロー・ヴェール(le vengeur du sang・g05009)が静かに首を振る。
時代的な境遇に同情がないとは言えなかったが、それが史実というもの。正しい歴史に戻すのがディアボロスたちの役割であり、完全にクロノヴェーダとなった白蛇姫を助けることは不可能だ。
せめて我々にできることといえば、その息を止めてやり、これ以上の罪を重ねるのを防いでやるだけ。
手元の蟷螂乙女が倒れかけ、咄嗟にブレローが身体を抱く。
「おっと君はまだだよ、蟷螂乙女」
(「まだまだ死なせてはあげないからね」)
抱いた腕を放し、荒れた床に乱雑に放り投げると、靴の裏でにじるように押さえつけ、勢いよく操り糸を引き絞った。
声なのか、音波なのか、その狭間の悲鳴を耳にした白蛇姫は身をよじり、砲撃を喰らって地へ身体を打ち付ける。
「がっ……がはっ!」
そのまま顔を上げ、血走った目で蟷螂乙女を睨み返すと、執念の歌を口ずさんだ。
「泡沫の……流れて消ゆる、思ひ出に……ただ朱の如く……我が頬を伝う……」
呼応して蛇が床を滑り、ブレローごとその口内に飲み込んで身をよじり、勢いよく吐き出して地に叩き付ける。
「ははっ……は、はーっ……はははは!!」
額に流れる赤い血が、見る見るうちに黒く染まり、白蛇姫の倒れる周囲に黒い血だまりを広げていく。
ブレローは上半身を起こしたが身動きがとれない。白蛇姫もまた、起き上がれぬほど憔悴している。
「愚かな……あんたは愛を知るべきだよ……」
血だまりの中央で黒く染まり、気が触れたように笑い狂う女を独り目にとめて、砂糖・乃子(レシピを探しています・g04318)が複雑な表情をして微笑んだ。
「……うふ」
一歩、また一歩、歩み寄る度に身体から気の筋が線を引き、それは次第に彼女の髪の色を桃色に染めいく。
鮮やかなピンクは瞳にまで広がり、それは一瞬の発光で虹のプリズムを引き寄せ、水色の魔眼となる……。
それは愛の暴走。
乃子の中で満ちて満ちて行き場を失った愛が、その姿をネメシスへと導いた。
大蛇の攻撃を回転して避けながら、血に伏せてこちらを睨み付ける白蛇姫へまた一歩を近づける。
手の届く目前まで辿り着いた時、ふと慈愛に満ちた微笑みを現し、そして両手に雲のようなアイスクリームを再現するとそれを差し出した。
「な……?」
むけられたことのない笑みに白蛇姫は怯み、その唇を薄く開く。
乃子の熱で溶けた雪解けは、手を伝って一滴を垂らし、黒い血を流す唇へと辿り着いた。紅すら闇に消えたそこにクリームの淡い色が灯り、それは愛しくも悲しく終焉を運ぶ……。
Finale. Crème glacée。
この世界、この時代で、貴重な甘さを感じたのが最期。
「射ゆ……獣の……」
その枕詞だけを残し、白蛇姫の魂は特級厨師であるパラドクスに崩壊され、眠るように静かに息を引き取った。
かかる言葉は、心を痛み・行き死ぬ。
どちらをかけたかったのか、今となっては知る由も無し。
願わくば、愛を知った後、輪廻の先に辿り着くことを望みたい。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV3になった!