リプレイ
文月・雪人
この地が戦地となる事は村の人々も気づいている様子
それでも動けぬほどに、気力も何もかも失っているという事か
それでも彼らにも譲れぬ願いがあるのだね。
子供達の無事を願うその気持ちに寄り添いながら、
皆の背中を押す事もまた、ディアボロスの役目なのだろうと思う。
急ぎ村へと向かって状況を確認し
【士気高揚】を使いながら山への避難を呼びかけよう
子供達の無事を願う大人達の心と
不穏な空気に不安を感じる子供達の心
互いを思う皆の気持ちに寄り添いつつ
村人達皆で協力して全員で一緒に逃げる様に促したい
お子さんが心配ですか?
ならば皆で一緒に逃げればいいのです。
この地に住む皆さんなら地の利もある。
天魔武者に見つかる事無く隠れられる場所にも心当たりがあるのでは?
皆の知恵と力を合わせれば、この難局もきっと乗り越えられる。
それにほら
孝行したい時に親が無いなんて
寂しいじゃないですか
天魔武者達の相手は私達にお任せください。
私達はディアボロス、天魔武者と戦う者です。
稲葉山城の濃姫も必ずや打ち倒し、この地を圧政から解放してみせましょう!
改竄世界史天正大戦国美濃国。
千早城の進軍先にある村を訪れた文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は、そこに充満する昏い空気を受け止め、「うーん」と思考を巡らせる。
(「この地が戦地となる事は村の人々も気づいている様子。それでも動けぬほどに、気力も何もかも失っているという事か」)
これは、時先案内人の言葉通り、『濃姫の圧政が適当であった』と言う事だろう。文字通りの意味で。
生かさず殺さずの本質を、彼女は相応に理解しているように思えた。
「それでも彼らにも譲れぬ願いがあるのだね」
時先案内人の予知の中、彼らは子供を逃がすことのみを願っていた。
それこそが彼らの希望であり、そして。
「きっと、彼らの行動の原動力になる筈だ」
単身、村へ乗り込みながら雪人はぽつりと呟いた。
到着した村は、閑散としていた。
大人達は無気力に座り込み、あるいは家に籠もっている。何より、村を彩る子供達の声が無いのだ。
(「既に子供は逃がした後か……」)
確か、予知の締め括りがそうであった。
おそらく既に子供達を山へ逃がし、大人達だけが村に残っている、と言う状況なのだろう。やり遂げた感を感じるのは、彼らが自身等の望みを全うしたが故か。
「皆さん。立ち上がってください!」
村の中央に立った雪人は、演説宜しく声を張り上げた。【士気高揚】の力も合わさり、彼らの心に勇気を満たす、そんな声であった。
「皆さんも山へ逃げましょう! もう既に子供達を逃がしたのでしょう? ですが、それだけじゃあ足りない! 皆さんの知恵と勇気が無ければ、この難局、乗り越えることは叶わないでしょう!」
山と一口に言っても、その地形は多種多様だ。坂道や森林地帯もあれば、川や洞穴などの地形もある。それを駆使すれば、天魔武者に見つからず、隠れられる筈なのだ。
それをよく知るのは誰かと問えば、おそらく此処に居る大人達だろう。
「それに……孝行したいときに親が無いなんて、とても寂しいじゃないですか」
最後の言葉は感情に訴えかける物であった。
雪人の真摯な説得に、村人達は顔を見合わせる。
「だけどなぁ……」
「もういいだ。オラ達の分まで、子さえ生きてくれれば……」
元より諦観が漂う村だった。
その反応も致し方ないと言える。
「私達はディアボロスです! 天魔武者の相手は私達にお任せ下さい! 稲葉山城の濃姫も必ず打ち倒し、この地を圧政から解放してみせましょう」
約束は果たす。
雪人の言葉に、村人の反応は二極に分かれていた。
一つ。そのまま座り込んだまま、嘆息のみ零す一団。そして、半分ほどだが、雪人の言葉に背を押され、山へと向かう者達の姿があった。
「……そうだ。何とかしてくれるなら、俺達だって」
もしかしたら、それは最期を子供と添い遂げたい。その望みの発露だったかもしれない。だが、それでも、彼らが足を踏み出してくれたことは事実であった。
「……濃姫様が勝ったら、オラ達は敵対戦力に味方したって処罰の対象となっちまう。とてもじゃないが、今はそれに全てを賭けられん」
座り込む村人の言葉は確かに正論だった。領主である濃姫より復讐者に従うということは、そう言うことだ。そのリスクを冒してまで、次の一歩を踏み出せるかと言えば、否と唱える人種だっているだろう。
「……そうですか」
このまま死ぬのも致し方ないと彼らが受け止めれば、諦観もまた勇気と化してしまう。ならば、どうすべきか。
(「子供のために生きると決めた彼らには、やはり当事者の言葉じゃないと届かないか」)
このままであれば村の半分は救えるだろう。それだけを是として戦いに移るか。それとももう少しだけでも粘るか。
復讐者達は今、分水嶺に立たされていた。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【士気高揚】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
巴屋・萩
あやー、これは困った事になっておりますねぇ。
残った皆さんはこのまま死ぬつもりみたいですけど、我々としてはそう言う訳にも参りません。
人質に取られたりすると面倒ですし、このまま戦って勝っても楽しい結果にはならないですからねぇ。
とゆー事で、まずは子供達が逃げた山に参りましょう。
村から逃げて来たみんなー、でーておーいでー!
父上と母上をお迎えに行くでありますよー♪
あんまりにも不審者でありますが、プラチナチケットがあればきっと村で見た事あるお姉ちゃんくらいの関係性にはなれるはずであります。
そしたら一番小さい子を早くご両親に会わせよう、と言う名目でおんぶして一足先に村へ行きます。
他の子には追っかけてきてもらいましょう。
子供だけで逃げたんですから降りるのだって出来るはずです。
いやー、困りましたね村人の皆さん!
皆父上母上と一緒にいたいそうで、山から降りて来ちゃったのであります。
他の子も続いておりますし、こうなったら一緒に逃げるしかないのでは?
さ、ここまでしたら動くしかないでしょう!
一蓮托生であります!
「あやー。これは困ったことになっておりますねぇ」
さてどうする? と立ち悩む復讐者達に新たな声が掛かる。
復讐者の一人、巴屋・萩(迷猫魔忍帳・g09008)であった。ゆるりとした声と共に登場した彼女は、ぐるりと周囲を見渡す。
(「この人達を放置して、人質に取られたりしたら面倒ですし、このまま戦ってこの人達が被害に遭えば、勝ったとしても楽しい結果にはならないですからねぇ」
無論、それこそがジェネラル級天魔武者『濃姫』の狙いなのだろうが、それを是とするのは癪だった。
故に、萩は直接村に乗り込まず、多少の策を講じてきた。その策とは何なのか。それは、これから判る話であった。
「みんなー。でーておーいでー!」
訝しげな表情の村人達を差し置き、萩はそう呼び掛ける。
「……一体何を?」
村人の一人が顔を上げたその刹那だった。
「おっとう! おっかあ!!」
元気の良い子ども達の声が飛び込んできた。見れば、なんと、山へ逃げたはずの子ども達が一斉に村へと戻ってきているでは無いか!
「な。なして、お前達……」
「お姉ちゃんに連れてきて貰ったんだ!!」
父親に駆け寄った少年が、何とか立ち上がった彼に抱きつき、言葉を発する。
親子の会話を皮切りに、村の方々で同じ声が上がっていた。
「馬鹿っ。此処は戦場になるって――」
「駄目だよ 母様! やっぱりアタシ達と一緒に逃げようよぉ!!」
「オラ達はお前達さえ生き残ってくれれば……」
「やだよぅ。オラ達を捨てないでよ……」
エトセトラ。エトセトラ。
嗚咽すら聞こえる涙混じりの再会であった。
「いやー、困りましたね村人の皆さん! 皆父上母上と一緒にいたいそうで、山から降りて来ちゃったのであります」
言葉を句切った萩は、そして山に視線を向ける。
「他の子も続いておりますし、こうなったら一緒に逃げるしかないのでは?」
村人に向ける笑顔は、とても輝いていた。まさに一蓮托生とはこのこと、と向けられる純粋無垢な微笑であった。
「……あ、あ、あ……」
村に舞い戻ってきた子ども達を抱き締め、大人達は嗚咽を零す。そこに諦観はなかった。ただ、子ども達を生かす為に、自分達も一緒に逃げ出さなければ赦されないとの理解と、そこに踏み出す勇気のみであった。その二つが、彼らに宿っていた。
それ故の嗚咽だった。
喜色と悔悟が入り交じったそれに、萩は親子の情の美しさを見た気がした。
ディアボロス。ラテン語・ギリシャ語で「悪魔」「敵対者」を意味する語句である。
彼ら/彼女らの悪魔的策略は、今もなお健在であった。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
巴屋・萩
いえいえ、たまたま最近やる気が出たものですから!
さて、過程はともかく皆さん避難して下さったようですねぇ。
そしたらぜひぜひすぐ進軍と行きたい所ですが、どうやらそうもいかなそうであります。
まずはお城を守ると言う事でがんばりましょう!
私には良く分かりませんけどどうやら大事なお城らしいですからね、これ。
ほうほう、戦闘後にでも詳しくお聞きしたいですね!
でもいけませんねぇ、こんなに鳥がいっぱいいては。
私の本能が刺激されて、今すぐにでも飛び出したくなってしまいます。
でもそこはじっと我慢して、防空体制を取りましょう。
敵を待ち受けて発見次第手裏剣を投げ、雨のように降り注がせてやっつけるのであります!
基本的にはなるべく近付けない方向性で頑張りたい所ですね。
羽音がしなくとも良く見て敵の存在を感知し、敵の接近を許さないようにすべきでしょう。
攻城戦の知識があればどの辺から攻めてくるかも少しは予想出来たりするかもですし、とにかく駆け回って手裏剣を投げますよ!
敵の攻撃で動けなくならなければまぁ、なんとかなるでしょう!
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
住民達の避難は何とか完了だね、
萩が来てくれて助かったよ、ありがとう。
そして次なるは千早城の防衛だ。
そうだよ、千早城はね、令制国の城を攻めて攻略するにはとても有用なクロノ・オブジェクトなんだ。
河内国で確保して、皆で起動して、改造して、難局を幾つも乗り越えて……って、語るとついつい長くなっちゃいそうだね。
まあいわば、俺達の大事な城であり、武器であり、共に戦った戦友みたいなものってところかな。(笑顔
という事で防衛の策だけど
敵が空から襲撃すると分かっているなら対処もし易いというものだ
仲間と【防空体制】を重ねて、連携して襲撃に備えよう
『ブレイズウェイブ』のパラドクス使用
いくら羽音を消そうとも、空飛ぶ敵は見逃さない
【防空体制】でいち早く敵を見つける事で、攻撃から千早城を確実に庇いつつ
【反撃アップ】で敵の動きを見極める
【命中アップ】な力と共に闘志を籠めた刀を振るい
近づく前に【ダメージアップ】な炎熱の波で焼き払おう
あの黒い翼は、実に良く燃えそうだ
俺達の大事な城だ、破壊なんてさせないさ!
「住民達の避難は何とか完了だね、萩が来てくれて助かったよ、ありがとう」
山へと逃げていく村人達を見送り、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)はぺこりと巴屋・萩(迷猫魔忍帳・g09008)へ頭を下げた。
「いえいえ、たまたま最近やる気が出たものですから! 過程はともかく皆さん避難して下さったようですねぇ」
謙遜に笑う萩に、雪人は微笑を以て答えとする。
まあ、過程は兎も角、村人達全員を避難させることが出来たのだ。結果オーライという奴である。
「では、まずはお城を守ると言う事で頑張りましょう! 私には良く分かりませんけどどうやら大事なお城らしいですからね、これ」
これ、こと千早城を指差す萩。
対する雪人は微笑を微苦笑に転じ、言葉を紡いだ。
「そうだよ、千早城はね、令制国の城を攻めて攻略するにはとても有用なクロノ・オブジェクトなんだ」
千早城の確保は河内国。その後、復讐者達皆で起動し、改造し、幾つもの難局を乗り越えてきた存在。言わば大事な城であり、武器であり、共に戦った戦友なのだ。
「……って、語るとついつい長くなっちゃいそうだね」
「ほうほう、戦闘後にでも詳しくお聞きしたいですね!」
そう。千早城に新たなる危機が迫っている。
語り合いはその後でも出来るだろう。
くけーとの鳴き声が響く。バサバサと羽音が響く。それは、天よりの黒き使者、トループス級妖怪『黒虚天狗』到来の印であった。
それを迎え撃つのは二人の千早城の瓦屋根に上った二人の復讐者、雪人と萩であった。不安定な足場に於いて、しかし、復讐者達は地上と変わることなく身構え、そして戦闘を継続出来る。欲を言えば万が一、落下したときの為の対策があれば良かったが、それは致し方ない。落ちなければ良いと、割り切ることにする。
「団体さんのお出ましですね! 真っ向勝負でしょうか?」
黒虚天狗達が千早城に取り付く刹那、萩が純粋とも取れる声を上げる。
だが、雪人はそれに対し、首を振るのみであった。
そう、彼は知っている。敵は目の前に展開する一団のみではないことを。残留効果【防空体制】はそれを如実に伝えてくれていた。
「そこだっ!」
炎熱の波が虚空を焼く。否、そこに在ったのは目前の集団とは別行動の黒虚天狗達であった。羽音を消すことで、本隊を陽動とし、横から復讐者達を攻撃するつもりだったのだろうか。
炎に貫かれた数体が黒焦げと化して千早城の屋根から地面へと落ちていく。その様子に一瞥のみ向けた雪人は、更なるパラドクスを紡ぐべく、黒虚天狗達へ睨眼を向けていた。
その横で、萩もまた臨戦態勢と踊り出でていた。自身もまた、千早城防衛の任を任された者だ。そして、その職務を全うする事こそが、此度の戦いの勝敗に繋がるのだろう。
「……ああ、でもいけませんねぇ、こんなに鳥がいっぱいいては。私の本能が刺激されて、今すぐにでも飛び出したくなってしまいます」
思わず口に出た台詞は、舌舐めずりせんばかりの表情と共に。それが冗談なのか本気なのか判らなかったけれども。
しかし、と放った手裏剣を雨霰と分裂させた彼女は、その豪雨を以て黒虚天狗達を討ち取っていく。
「ええいっ。敵は寡兵だ! 倒してしまえ!」
「――そうはいかないよ」
黒虚天狗の錫杖は、その刺突によって身体の自由を奪う。
屋根での戦闘時に身体の自由を奪われればどうなるか。火を見るより明らかだ。
故に、一撃たりとも受ける訳に行かないと、雪人は気合いを込めた声を上げる。
「何とかなるでしょう! ……いいえ、何とかするのです!」
瓦を足場に四方八方に飛ぶ萩もまた、注意すべきは錫杖の刺突と、己を鼓舞しながら手裏剣を乱舞。その都度、黒虚天狗達の身体が斬り裂かれ、地へと導かれていった。
墜落の先では余程無体な事になっていただろう。もしかしたら、移動する千早城に踏み潰され、事切れた者もいたかも知れない。
(「あ、でも、クロノヴェーダですしね! そうは問屋が卸さない、かもしれませんね!」)
千早城がクロノ・オブジェクトである以上、轢死はありそうだが、そう簡単にそんな終焉も迎えない。そんな気もした。そして生憎、それを確かめに行く暇は何処にもなかったのだ。
「俺達の大事な城だ、破壊なんてさせないさ!」
炎を薙ぎ、黒き羽根を焼きながら雪人が宣言する。
青青とした空と煌々と輝く太陽を背にした復讐者達の姿は、美濃の山中でも輝いていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【防空体制】LV2が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
巴屋・萩
お、どうやら割と上手く行っているようですよ文月殿(g02850)!
このまま畳み掛けてしまいましょうかねぇ。
敵も忍者であれば相手にとって不足はありません、私も忍者らしく戦うとしましょうか。
つまりこそこそ隠れて陰から襲い掛かってやっつける、と言う事であります。
そうなのですよ、猫なので余計に慣れたものであります!
まずは光学迷彩で隠れて近付きましょう。
頃合いを見て、授けていただいた作戦通り思いっきり煙幕を張りますよ!
おお、クダ吉殿!ご協力ありがとうございます!
これならお互い全く見えなくなる、ほどの事はなくても隠れやすくはなると思います。
後は残像を見切り辛く出来たりするかもですね。
こちらは完全視界をお借りすれば敵も丸見え、視界には問題ないと言って良いでしょう!
これにより狙うのは各個撃破であります!
どうもあの敵の忍者の踊るようにこちらを惑わす動き、私のものとよく似ているように感じます。
これは私も頑張って、黒猫のダンスを披露しなければなりませんね!
文月殿、せっかくなのでこちらはデュオで参りましょう!
文月・雪人
萩(g09008)と連携参加
何とか上手く撃退できたね、この勢いに乗って本隊の方も倒していきたいところだ。
そうか、萩は魔導忍者なのだね、忍んで戦うスタイルも手慣れたものという訳だ。
ならば此方は【完全視界】を用意しようかな。
此方の視界を確保しつつ、クダ吉に発煙筒をばらまかせ、
煙幕で敵軍の視界を少しなりとも悪化させられたらと思う。
千早城の走る音が響く中、視界の悪化で敵の連携を妨害しつつ、
一方で此方は油断なく萩と連携し、
【光学迷彩】で煙幕に紛れて不意打ちを仕掛けていきたい。
『無明轟刃』のパラドクス使用
【完全視界】で戦場を見通して、敵の位置を素早く把握し【命中アップ】
なるべく先手を取りつつ刀を振るい【ダメージアップ】な攻撃で薙ぎ払う
逆説連鎖戦だし反撃はあるけれど、それもまた想定の内
【反撃アップ】で敵の動きも読み取りながら攻撃を重ねて
踊る様に立ち回る敵の攻撃や移動の方向を密かに誘導していく事で
戦いの流れを此方のペースへと引き込んでいこう
黒猫ダンス!
なら俺も白猫ダンスで合わせていくよ、にゃんにゃーん♪
「お、どうやら割と上手く行っているようですよ文月殿! このまま畳み掛けてしまいましょうかねぇ」
快進撃続ける千早城の進軍に、巴屋・萩(迷猫魔忍帳・g09008)は歓喜の声を上げる。そんな喜びの声に呼応し、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は微笑を浮かべていた。
「何とか上手く撃退できたね。この勢いに乗って本隊の方も倒していきたいところだ」
天から襲い来る黒虚天狗は一網打尽にした。ならば、残すは進路上の敵――即ち、アヴァタール級天魔武者『小西行長』率いる敵本隊だ。
それを討ち、千早城の進路を確保する。それが今、復讐者達に課せられた使命であった。
「そして、理解しておりまする。敵もまた、同じなのでしょうね!」
普通に考えれば、人間大の天魔武者達が集まったところで、千早城のような機動要塞を止められる筈もない。蹂躙され、礫圧されるのが精々だろう。
だが、敵も復讐者と同じく常識の外に身を置く歴史侵略者だ。
ならば、千早城を止める術を持っていても不思議はない。否、必ずそれを行使し、復讐者の行く手を阻むだろう。
「――例えば、乗り込みとかですね!」
正確無比に天守閣を貫く手裏剣や苦無を見やり萩は言う。
この得物。この戦法。敵もまた、熟練の忍者に違いない。
そして、萩もまた、熟練の忍者なのだ。
相手にとって不足なし。忍者の動きを読むのも忍者の仕事。まして、萩はウェアキャット――即ち、猫だ。陰の戦いは二重の意味で得手とする存在だ。
「そうか。ならば俺は萩の援護に徹しようか」
自信満々の彼女に対し、雪人はにぃっと笑う。
仲間をその気にさせ、士気を向上する。むしろ指揮官などの後方支援者に求められるカリスマこそが、雪人の強みかもしれなかった。
発煙筒、そして煙玉。
煙幕を放ち、敵の視界を塞いでいく。視界を狭めれば、復讐者側もまた不利を被るが、しかし、それには及ばない。彼らの敷く残留効果【完全視界】がその悪影響を取っ払ってくれる筈だ。
(「まぁ、それはクロノヴェーダ側も一緒だろうけれど」)
とは言え、雪人達も煙幕のみを突破口と定めていない。共に使用する【光学迷彩】があれば、索敵は困難を極めるはず。その思いは果たして――。
「――ッ?!」
気配を感じた。飛び道具に乗じ、数体――否、トループス級天魔武者『くのいち天魔武者』達が乗り込んで来たのだろうか。
流石は忍び。足音を感じさせず、気配も薄い。だが、そこに困惑の色があるのだけは、感じられた。
確かに乗り込んだ先がもぬけの殻ならば、困惑もするだろう。
だが、そうでないことを彼女達は即座に知る形となる。――それも、最悪の形で、であった。
「にゃん? ござる!」
それは、敵と同じく忍びの形をした脅威であった。
煙に染まった視界に映る大量の影は、全てが萩の写し身であり、しかし、その本命――即ち、萩本人はくのいち天魔武者等の背後へ忍び寄っている。ねこまると銘を打った脇差しが翻るや否や、そこに倒れていたのはくのいち天魔武者の一体であった。
音もない刺客の攻撃に、ただ、戦慄の吐息が木霊していた。
(「おっと。萩だけに注目はさせないよ」)
不意を打ったとは言え、これは逆説連鎖戦。敵が我を取り戻せば、如何に視界が淀んでいようが、忍ぶ萩に集中砲火が飛ぶのは目に見えている。
故にと、雪人は疾風の如く白銀の刃を振るう。それは季節外れの吹雪を彷彿させるように薙がれ、そして、くのいち天魔武者達を斬り裂いていった。
「行くよ。クダ吉。萩の援護を宜しく!」
共に駆け抜けるサーヴァントにもまた、小声で命を飛ばす。
呼応し、戦場内を駆け抜ける小柄な影は、そのまま、猫の忍びの元へ直行。途中途中でくのいち天魔武者に体当たりを喰らわせながら足を薙ぐ様は、主顔負けの戦働きでもあった。
萩と雪人。そしてクダ吉。二人と一体による攻防。そして萩の生む無数の幻影が見せるそれは、くのいち天魔武者達にどの様な錯覚を覚えさせただろうか。
「おおっ。クダ吉殿! そして雪人殿も感謝でございます! ご協力ありがとうございます!」
律儀な礼に思わず苦笑してしまう。
ともあれ、と黙礼にて返答とした雪人に、返ってきたのは華のような天真爛漫な笑みであった。
「さて。敵の攻撃もまた相応に厳しくなってきました。ならば、私達も頑張って、黒猫のダンスを披露せねばなりませんね!」
「黒猫のダンス!」
くのいち天魔武者達の舞い踊る太刀筋を踊りと評した萩は、負けじと舞うように脇差しを、そして短刀を振るう。一手二手三手と重なる剣戟は、確かに舞に似ていた。
だが、復讐者達は知っている。それが舞われれば舞われるほど、周囲の敵を打ち倒していく死の舞踏である、と言うことを。
そしてまた、雪人もまた、それに呼応し、答える者でもあった。
「なら俺も白猫ダンスで合わせていくよ、にゃんにゃーん♪」
――端から見れば、悪戯とも取れただろうか。だが、それでも駆け抜ける白銀の刃は、そして雪を思わせる白い狩衣を纏う彼の戦乱舞は脅威であった。
黒と白。二つが織り成す舞はくのいち天魔武者達を切り裂き、そして床へと伏せさせていく。中には致命傷を受けたまま、城外へと弾き飛ばされ、そのまま落命する者もいた。
まさしくそれは二色が織り成す脅威であった。
そして、それを受け止める力を、攻め入った筈のくのいち天魔武者達は有していなかった。
「――くっ。強すぎる……」
「でぃあ……ぼろすめ……」
呻き声と呪詛のみが響く戦場の中、萩と雪人は互いに微笑し、そっと息を吐く。
――残すは将たるアヴァタール級天魔武者『小西行長』のみ。
そして千早城から見下ろす視界の中、それはいた。
祈るように手を組み、そして、天守閣に立つであろう復讐者達を睥睨している。
まるで一体であっても千早城を止めると言わんばかりに、その進路に立ち塞がっていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!
犬神・百合
(トレインチケット)
「神よ……」
アヴァタール級天魔武者『小西行長』の独白に、ふふりと犬神・百合(ラストダンス・g05341)は笑みを浮かべた。百合の如き微笑を妖艶と取るか、それとも純真と取るかは受け手の感性に寄る物だろう。
ならば、目の前の歴史侵略者はそれをどう受け取るだろうか。
「貴方が祈るのは何かしら? わたくし達への天罰? それとも安らかな終焉? どちらにしろ、ディアボロスの前に立った時点で貴方はお終いですわ。わたくし達が引導を渡して上げますのよ」
百合が叩き付けた挑発の言葉は、強がりでもハッタリでも無い。目の前のアヴァタール級天魔武者がどの様な力を持っていても必ず倒す。その誓いを言葉にしただけであった。
小西行長。正史では肥後こと熊本県の一地方を納めた武将の名である。そして、キリシタン大名としても名を馳せている。
故に、その名を奪った歴史侵略者が神に祈るのは当然と言えば当然と言った処か。
だが、と百合は内心で笑う。そう。笑うしかない。歴史を奪い、世界史を改竄し、民草を苦しめる存在が、何を神に祈ると言うのか。
「貴方はどんな花を咲かせるの?」
先手必滅。
未だ手を合わせ指を組む小西行長に対し、百合はパラドクスを行使。無数に召喚された銃口が一斉に敵を穿つべく火を噴いた。
血肉が弾け、血の華が咲き誇る。そこに追随するのは、朱に染まった名も無き花の開花であった。百合の放った弾丸が小西行長の身体を苗床代わりにと、幾多の花を狂い咲かせたのだ。
それでも、小西行長は祈りの体勢を崩さない。
だが。
「――ッ?!」
両の手は合わさり、指は組まれたまま。目は伏せられ、その視線が向ける先は遙か天頂の先。
だが、それでも、足下から伸びた触手は上半身に準じていなかった。絡め取るように持つ大太刀と長槍は降り注ぐように百合を強襲。集中砲火を続ける彼女の身体を梳り、虚空に血の跡を刻んでいた。
「神よ。罪深きディアボロスを汝が御許で許し給え……」
血の涙を流さんばかりの文句と共に紡がれるのは、幾多の斬撃と刺突であった。
それらを己の身省みずに受け止めた百合は、再度微笑を紡ぐ。それは妖艶で、そして純粋無垢な少女の笑みであった。
「ええ。ならばわたくし達は貴方の望み通り、貴方を貴方の神の御許へ送ってあげますわ。全てに等しく愛を持って……屠りましょう!」
彼女の宣言は、今この瞬間にアヴァタール級天魔武者『小西行長』と復讐者との戦端が開いたことを示していた。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【植物活性】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】がLV2になった!
「我ガ刃、我ガ剣閃、汝ニ見切レルカ?」
アヴァタール級天魔武者『小西行長』に対し、怒濤の如き剣閃が奔る。一振り、二振り、三振り、四振り……。レオンハルト・アストレイア(過去を望む悪魔モドキ・g03365)が紡ぐ刃は、計六振り。それらがまるで、一つの舞の如く、小西行長の身体を斬り裂き、梳っていく。
「私は刃……狙った獲物は逃しません」
幾多の剣閃に追随するのは、ルゥルゥラナ・レイラ(宵闇の刃・g08924)の操る『凍てつく闇』であった。一見、骸骨を想わせる風貌の天魔武者に、凍える身体があるかは疑問だったが、しかし、それでもパラドクスはパラドクス。凍てつく闇は小西行長を包み、その身体から熱量を奪っていく。その証左か、その身体から生えた触手の動きが、鈍くなったようにも感じた。
「レオンハルトさん――ッ」
「ええっ。任せるっすよ!!」
口数少ない暗殺者の少女に応え、レオンハルトは応と頷く。
凍てつく闇を纏う小西行長の動きは鈍い。素首を叩き落としてやるとばかりに、無銘の妖刀を振りかぶり、そのまま小西行長の首目掛け、横薙ぎに振り抜いた。
響くは甲高い金属音。それは緩慢な動作ながらも差し込まれた大太刀と、レオンハルトの無銘の衝突により、奏でられていた。
「神よ。罪深きディアボロスに救いを――」
「――祈られるほど、信心深くはねぇッスよ!」
地面が砕け、そこから生えた触手が、その先端に握られた大太刀や長槍が、レオンハルトを下方から強襲する。
急成長する石筍を思わせる無数の刺突を、しかし、レオンハルトはその刃を足場にして跳躍。空へ逃れると同時に再び無銘を構えた彼の視線は、小西行長の頭へと注がれていた。
「無茶を!」
ルゥルゥラナの悲鳴は当然であった。
空に跳び、無防備となったレオンハルトを小西行長が見逃す道理も無い。再び地面から幾多の触手を伸ばすと、彼の身体を捕らえるべく、一斉に突き出したのだ。
生憎、空で体勢を整える力を、レオンハルトは有していない。デーモンの羽根も、あくまで【飛翔】の残留効果を行使せねば、飾りと同じだ。宙で身動きが取れないレオンハルトが早贄と化すその刹那。
対なる影が奔る。電光石火に駆けるそれらはレオンハルトへ伸びる触手群を刈り取り、彼の身を串刺しから救っていった。
影は猫人と、ペンギンの形をしていた。当然ながら、一つはルゥルゥラナ。そしてもう一つは彼女の従者、ダンジョンペンギンのフラートであった。
その影走りを見送り、レオンハルトは再度、剣閃を小西行長の頭上へと叩き付ける。
悲鳴と共に一歩後退する彼奴から視線を逸らさず、しかしと紡がれた言葉は、他方へと向けられた感謝でもあった。
「無茶は承知の上っすけど……ほら、ルゥルゥラナさんが助けてくれると信じてたっすよ」
刹那に浮かんだ笑顔は人懐っこく、整った顔立ちの彼には似つかわしくない程に柔らかい物であった。
「……それが、役目ならば」
それは、嘆息混じりにも、誇らしげにも聞こえる文句であった。
ぽつりと紡がれた彼女の言葉を受け、レオンハルトは再度、無銘を構える。
敵は強い。それは二人共が見止めることだ。小西行長の攻撃はレオンハルトを、そしてルゥルゥラナやフラートを切り裂き、三者に手傷を負わせている。だが、歴史侵略者の損耗もまた、復讐者達比ではない。幾多のパラドクスを受けた彼奴の息は荒く、損傷を身体の所々に覗かせていた。
「さて、もう神に祈る時間は済んだっすよね? それじゃあ……そのまま、倒させて貰うっす」
「笑止! 滅するのは貴様達の方ですよ。ディアボロス!」
レオンハルトの宣言に、小西行長の応説が衝突。周囲へと木霊していった。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
巴屋・萩
文月殿(g02850)、やりましたね!
ええ、私一匹ではここまで辿り着けなかったでしょう。
後はあのお化けみたいなやつだけでありますよ。
早い所やっつけてやりましょう、私達の連携で!
作戦の方、了解であります。
ささーっとやってきますのでどうかお怪我など無きよう。
それではここから、私は黙って静かに行動であります。
先程の煙幕の残りも利用しつつ、光学迷彩を使って隠れてしまいます。
文月殿が正面で注意を引いてくれている間に、木とか地形の影にでも潜んでじーっと機を待つとしましょう。
ささーっとやるとは申しましたが、こう言う時に焦ってはいけません。
まずは気配を消して潜み、同じく密かに行動しているクダ吉殿が仕掛けて下さってからが私の出番です。
光学迷彩があろうとも、攻撃に出れば私も見つかってしまいます。
でも敵の動きは縛られていますし、私のパラドクスでは残像が出ます。
急所に一本針を突き立てるくらいの余裕はあるでしょう。
上手くやれれば武器の大きさの差なんて問題になりません。
お任せ下さい、文月殿!
必ず仕留めて見せますよ!
文月・雪人
萩(g09008)と参加
にゃふふ、順調なのはきっと萩と一緒のお陰だね。
一緒に戦う仲間の存在はね、やっぱり心強いものだなと。
残る敵は一体のみだけど、アヴァタール級は油断できない相手でもある。
引き続き連携を密にして作戦を実行していこう。
敵の動きを見極めながら『管狐影縛法』のパラドクス使用
密かにクダ吉を放ちつつ
俺自身は囮として、刀を手に正面から切り込んでいこう
小西行長は史実ではキリシタン大名の一人であったらしいけど、
名を奪ったお前は誰に何を祈っているのやら。
立ち塞がるというのなら、此方もまた押し通らせて貰うのみ!
油断なく【反撃アップ】で大太刀と長槍の動きを読みながら
攻撃を刀で受け流して切りかかる振りをして敵の意識を引き付ける
だが俺の動きはあくまでも囮だ
その隙を突いて死角から飛び出したクダ吉が、敵の影に牙を突き立てて【命中アップ】
【ダメージアップ】なパラドクスの力で攻撃し、影を縛って敵の体の自由を奪う
勿論これで終わりじゃないさ
積み重ねた布石の先、今作戦の本命は萩による急所への攻撃だ
任せたよ、萩!
「さて、ここまで順調だね」
アヴァタール級天魔武者『小西行長』と対峙する文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)が零したのは、喜色の声であった。
村人の避難誘導、千早城の防衛、そして進軍。目の前に立つ小西行長もまた、仲間達の攻撃に傷付き、焦燥の色が窺える。この作戦も後少しで終結を向かえるだろう。
(「だけど、それでも、敵はアヴァタール級だ」)
勝って兜の緒を締めよ、の話では無い。勝つ前から兜の緒を締める必要がある。
敵は多対一を以てようやく対等なアヴァタール級歴史侵略者。如何に傷付こうが、倒れるその間際まで、逆転の目を有しているのだ。
「小西行長は史実ではキリシタン大名の一人であったらしいけど、名を奪ったお前は誰に何を祈っているのやら」
「当然、祈るべき相手は神。そして、祈るべき内容は、あなた方のような不敬者の存在に対する許容です」
神を持たない復讐者に代わり、祈祷するとでも言うつもりか。
嘆息を零した雪人は白銀の剣を抜くと、それを構え、宣言した。
「立ち塞がるというのなら、此方もまた押し通らせて貰うのみ!」
些か大仰な構えは、彼なりの意図があってのこと。それを小西行長が見破れるか否か。――勝敗は、その賭けの成否に掛かっていた。
激しい金属音が鳴り響く。雪人の白刃と、小西行長の大太刀が衝突し、そして上がった悲鳴の音であった。
「キリシタン大名の名を奪った割に、武も長けているじゃ無いか。小西行長!」
「武のみではありませんよ」
数合に渡った剣戟に対し、しかしと小西行長は笑う。
「……可笑しな事を。この後に及んで策があるとでも言うつもりかな?」
「ええ。ただし、あるのは貴方達の策だ、と断じましょう」
大太刀で雪人の白刃を受け止め、しかしと長槍を虚空――己の背後へと振るう。刹那、小動物の悲鳴じみた鳴き声が響き渡った。
「――ッ!」
「主とサーヴァントの相互攻撃は見事と褒めましょう。ですが、私の得物は見ての通り二つありましてね」
穂先に纏わり付く血潮を払い、小西行長は高らかに言う。
そう。確かに雪人の狙いは己を囮とし、別働隊による側面攻撃だった。そして、それを看過した小西行長によってクダギツネのクダ吉は傷付けられ、その牙を止められた。
だが、その整った顔に曇りはない。己がサーヴァントを傷付けられた。今起きた事象は、彼にとってそれだけでしか無かったのだ。
「勝ち誇っているところを悪いけど――俺の策がクダ吉のみと思った時点でお前の負けだ。小西行長」
「――何?!」
驚愕の声は、しかし、それ以上紡がれなかった。
「お任せ下さい、文月殿! 必ず仕留めて見せますよ!」
遮るように響き渡ったのは巴屋・萩(迷猫魔忍帳・g09008)の声であった。刹那、地形の影より跳び出でた萩は、己の身を包む【光学迷彩】を解くと、小西行長へと肉薄する。
雪人と鍔迫り合いを交わし、クダ吉を切り払った小西行長はそこで既に、己が抱く全ての得物を使い切っていた。
即ち、萩の攻撃を止める手段を、彼は有していなかったのだ。
金属が金属を食い破る鈍い破砕音が響き渡った。
それは萩による暗器の一刺し――彼女が『針』と呼ぶ剣の一突きであった。甲冑を穿たれ、肉を貫かれた小西行長は、かはりと骸骨じみた口から血塊を零す。
「ふふん。上手くやれば武器の大きさの差など問題になりません。急所を一突きすればほら。大太刀や長槍など比べものにならぬ戦果を上げるでしょう」
「お、おおおおっ」
呻き声と共に、小西行長は肉薄する萩の身体を打ち払う。だが、殴打を受けた萩の身体は、まるで霞の如く消失。新たに出現したからだが更なる刺突を小西行長へと叩き付けてくる。
「消えた、だと――?」
「消えるはお化けみたいな貴殿の専売特許でしょうに。ともあれ、敢えて私めは言いましょう。――それは残像でありますよ、と」
残像を形成する程の俊敏さで小西行長の周囲を飛び回る萩は、その勢いのまま、パラドクスの一刺しを続けていく。
いわゆる蝶のように舞い、蜂のように刺すと言われる一撃離脱戦法であった。だが、その一突き一突きが急所を刺し貫く以上、萩の攻撃そのものが小西行長にとって致命傷であった。
「くっ」
「さて。萩だけに構って貰っても困るよ」
身軽な猫人に翻弄される小西行長へ、投げ掛けられた言葉は或る意味、死の宣告であった。
雪人の言葉が終わるや否や、小西行長の全身に鋭い痛みが走り、身体を硬直させる。
(「馬鹿なッ?!」)
言葉の主の白刃は鍔迫り合いのまま、微動足りともしていない。そして、それ以外の攻撃を、雪人が行った形跡は何処にもなかった。
だが、確かに小西行長はダメージを受け、その身を縛られている。何故? と疑問を投げ掛ける。その瞬間、彼は悟った。
そう、確かに雪人自身は何もしてないのだろう。
だが、それは雪人のパラドクスが小西行長へ行使されなかったと言う話ではない。
「呪い師如きが――!」
「にふふ。キリシタンに言われてもねぇ」
雪人は平安鬼妖地獄変を出自とする陰陽師である。その得手は武士のような正面衝突では無く、むしろ搦め手と呼ばれる策略、そして呪術であった。
此度用いた管狐影縛法は、クダ吉を媒介にし、小西行長の影を縛ると言う物。即ち、小西行長に叩き込まれたパラドクスは雪人ではなく、彼のサーヴァントであるクダ吉の牙を媒介とした物で、そしてその対象は小西行長本体ではなく、地に映る影であったのだ。
クダ吉の牙は小西行長に損傷と、影縛りの呪を叩き込む。それが、雪人の行使したパラドクスであった。
「私一匹ではここまで辿り着けなかったでしょう――」
動きを止めた小西行長へ、萩は終焉を彩るべく再度、肉薄する。両の手で支えられた『針』は小西行長の正中線を捉えると、そのまま彼女全ての膂力を推進力とし、突き進んでいった。
甲冑が砕け、血肉が拉げる音がする。天魔武者の躯体が砕け、そして、血だか機械油か判らない何かの液体が噴出し、萩の得物と身体を汚していった。
断末魔の叫びは聞こえない。代わりに聞こえたのは、雪人が口にした呟きであった。
「……いいや。此処まで快勝だったのは、やっぱり萩のお陰だと思うよ」
一緒に戦う仲間の存在は心強く、そして、ここまでの快進撃となったのは、彼女による功績だと雪人は素直に賞賛していた。
彼の視線を追えば、それが映すのは塵にと消え行く小西行長の亡骸であった。
「この戦いで萩も俺も傷一つ負わず、敵将を討ち取れた。この大成功な戦功こそ、充分な証拠じゃないかな?」
「文月殿!」
その喜びは如何程ばかりか。
感涙すら零しそうな笑顔を振りまく萩に、雪人もまた同じ微笑を浮かべる。
――戦いは今、終わりを告げたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】がLV2になった!
【傀儡】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】がLV3(最大)になった!
【反撃アップ】がLV2になった!