リプレイ
旗楽・清政
【翠緑の師弟】
いよいよ、島津の北進に横槍を入れるための拠点造りが始まるのでござるな。
日向、大隅と島津が進出した地の、残された民草等の惨状と言えば、
それはもう筆舌に尽くし難きものでござった。
同様の苛政と辛苦を、肥後の民草等にも味合わせたりするわけにはいかぬ。
何としてもこの拠点造りを成功させ、そして島津の肥後への北進も阻止するでござるよ。
それにしても、日向より島津軍は一掃したと思っておったが、
まだ残っておったのでござるな。
斯様な場所なれば、それも無理からぬ事ではござろうが。
ともあれ、此処に残る島津軍を一気に叩き潰すでござるよ。
見るに彼奴等、巡回にしては随分と腑抜けておる様子。
なれば、巡回中に奇襲を仕掛けると致そう。
戦場は高原なれば、【光学迷彩】とそれがしらの緑色で、
それなりに気付かずに近付けよう。
気付かれても、強襲するまででござるがな。
まずそれがしが、遠距離より光王刃で仕掛けるでござる。
反撃は実の拳にせよエネルギー塊にせよ、ビームシールドと
五枚胴具足、闘気で防ぎダメージを軽減するでござるよ。
エスメラルダ・リベロ
【翠緑の師弟】
(常時軍人モード)
島津の北進を止める為の拠点造り、か。
随分と清政殿はやる気のようだが、この時を待っていたようだから無理もないな。
私も大隅の復興作業には参加したが、その時の民衆の惨状を思えば、
肥後を島津に攻略させるわけにはいかん。
あの惨状を、肥後にももたらさせてなるものか!
そのためにも、この拠点造りは成功させねばならんな。
それで、まずは未だ此処に残る島津軍の排除だが、
このトループス級、巡回中だと言うのに随分とたるんでいるな。
何時までも敵が現れないとなれば、こうもなるものか。
まぁ、いい。
新たな戦場に赴きたいと言うなら、赴かせてやろう。今、此処でだがな。
そして、此処からおさらばしたいと言うならおさらばさせてやろう。この世そのものから、だがな。
清政殿の【光学迷彩】を借りて潜みつつ接近し、奴等を奇襲だ。
私は二番手として、清政殿の光王刃の直後に絶海砲戦で砲撃だ。
如何に装甲が固かろうとも、この肥後の火力の前では!
反撃に対しては、緑の大盾と肥後の艤装、オーラフィールドで防御するぞ。
旗楽・嘉内
【翠緑の師弟】
日向の高原に島津の北進を止める為の拠点を造るって、
御先祖が妙に張り切ってるなぁ…。
まぁ、御先祖そもそも九州の国衆だし、その御先祖の子孫がオレなんだから、
九州はある意味オレにも縁がある地とも言えるか。
あと、この世界の島津って天魔武者の大名の中でも相当みたいね。
日向大隅の民衆が如何に悲惨だったかってのは御先祖からも
エスメラルダさんからも聞いてるけど、琉球の方では
二十時間労働させてたって聞いたぞ。
そんな非道(長時間労働)は許しておけないし、
そんな奴等の勢力を拡げさせるわけにもいかない。
絶対に島津の北進は止めるし、そのためにもこの拠点はしっかり造るぜ。
さて、まずはコイツ等の排除からだな。
御先祖の【光学迷彩】も借りて、二人と一緒に出来るだけ潜みながら近付くぞ。
そして、二人に続いて締めくくりの緑翠蝗だ。
どんなに装甲が固くても、その隙間に入ってくる蝗までは止められまい!
流石にこれで仕留め損ねるとは考えにくいが、万一仕留め損ねて反撃を受けた際は、
マジックシールドと翠緑天鎧で何とか耐えるぞ。
一蝶・信志
絶景をお望みかしら?(ザッと前に出る)
いいわよ、とくとご覧なさい。このワタシの美しさを!!
パラドクス『絶世の美シンディ』で敵の視線をワタシに釘付けにしてア・ゲ・ル💕
(仲間の隠密行動も支援よ!)(本人は心の底から支援のつもりでいます)
美女でもなく美男子でもない、ワタシは美シンディ!
そう、性別を超越したカンペキな存在なのよ!
見なさい、この美脚!
ジムにエステ、脱毛サロン!
人類の叡智とワタシの努力のすべてを注いだ美の結晶よ!
…あっあっ、イヤーーーーッ!
地中からミサイルとか、不山隊さんのえっちーーーー!!!
(足下潜行型焙烙火矢の爆風で捲れたスカートを抑えながらパラソルで撃ち返そうとぶんぶん振り回す)
※「魔法少女シンディ」の装い
言動は女性的
コミカル、雑魚扱いオッケーです
他の方の行動と矛盾がある場合は調整していただけますと幸いです
●序幕
微風に草そよぐ高原の只中に、JR山手線の車両に似た列車が停まっていた。しかし、そこに駅のホームなど存在しない。そもそも、レールが敷かれていない。
異様な光景ではあるが、その列車がパラドクストレインとなれば、話は別だ。
「いよいよ、島津の北進に横槍を入れるための拠点造りが始まるのでござるな」
「そうですけど……やけに張り切ってますね?」
車両側面に並ぶ黄緑色の扉が一斉に開き、二人の男が降り立った。一人は壮年、一人は中年。両者ともにエメラルド色の甲冑を着込んでいる。
天正大戦国出身の旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)と、彼を『御先祖』と呼ぶ旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・g11216)だ。
「いつもの御先祖は絵に描いたような昼行灯ですけれど、今日は闇夜のサーチライトといった感じですよ」
「サーチライト並みにハッスルしたくなる気持ちも判るわぁ」
と、嘉内の言葉を受けて車両から降りてきたのは一蝶・信志(シンディ・g04443)。浅黒い肌をした長身の男なのだが、手の込んだメイクと煌びやかな衣装によって、遠目には美女に見える(当人は『近くから見ても美女よ!』と強く主張するかもしれない)。
「天魔武者なんかの縄張りにしておくにはもったいない場所だもの。雲が掴めそうなほど空が近いし、遠くの山々も綺麗だし、空気はとっても美味しいし……ねえー?」
車両の扉に向かって、信志が同意を求めると――
「そうだな」
――緑の陣羽織の上に戦艦級海戦装を背負った娘が降りてきた。長く伸ばした髪もまた陣羽織と同じく緑色。所謂『緑の黒髪』ではなく、本物の緑である。
信志に太鼓判を押された空気をたっぷり吸い込み、ゆっくりと吐き出した後、緑尽くしの娘――エスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)は皆に言った。
「さて、我々の拠点を築くため、始末するとしようか。この美味い空気を吸う資格のない奴らを……」
「うむ。参ろう」
清政が真っ先に応じ、歩き出した。
●一蝶・信志(シンディ・g04443)
高原の駅なき駅よ、さようならー。
パラドクストレインを後にして緩やかな斜面を登り、パラドクス効果『光学迷彩』を発動させて適当な草むらへと身を伏せる(ワタシ以外の三人の装備は緑一色だから、『迷彩、必要なくなーい!?』ってツッコみたくなっちゃう)。後は巡回中の敵を待つだけ。
今は暦の上では夏だけど暑すぎないし、ここは高標高だけど寒すぎないし、ぽかぽかと日光浴してるみたいで気持ちいいわ。草と土の香りで鼻がちょっとムズムズするけどね。ところで、『光学迷彩』を使ってる時でも肌って焼けちゃうのかしら? それによってUV対策のレベルが変わってくるから、どうしても気になるー。
……なんて呑気なことを考えていたら、お目当ての連中がやってきた。亀の甲羅の上に人型の上半身をくっつけたようなトループス級よ。安直に名付けるなら、カメタウロス?
そいつらはワタシに輪をかけて呑気だった。『見回りばかりでつまらない』だの『新しい戦場に行きたい』だの『こんな殺風景な場所からおさらばしたい』だのとダベっちゃって、緊張感ゼロよ、ゼロ。
「随分と腑抜けておるな」
と、清政が呆れた調子で呟いた。もちろん、奴らに聞こえないように小声でね。
「まったくだ。薩摩隼人の名が泣くぜ」
これまた小声で同意したのは嘉内。荒事モードのスイッチが入ったのか、口調が変わってるわ。
「新たな戦場に赴きたいと言うのなら、赴かせてやろう。今、ここでだがな」
と、殺る気満々の宣言をしたのはエスメラルダよ。
「そして、おさらばしたいと言うのなら、おさらばさせてやろう。この世そのものからだがな」
こんな具合に三匹の気高き野獣と一人の美女(内訳は言うまでもないわよね?)が牙を研いでるっていうのに、トループス級たちはなにも気付かずにダベり続けてる。
「さぁーて、それはどうかな? 今もそこらの草むらに身を潜め、我らの話に聞き耳を立てておるやもしれぬぞ」
「ぶはははははっ! 埒もないことを!」
ところがどっこい、埒はあるのよねー。
その非情な現実を叩きつけるべく――
「まずは、それがしが……」
――清政がすっくと立ち上がった。
次の瞬間、鏃みたいな形の光が彼の周囲にいくつも現れ出て、『しゅびーん!』と飛んでいった。『光王刃』とかいうパラドクスかしら? 光の鏃はどれも一直線の軌跡を宙に刻んだから、何条ものレーザーが斉射されたかのように見えるわ。
で、水平のレーザーシャワーの先にいたカメタウロスたちは――
「な、なにごとだ!?」
「くせものじゃあーっ!」
「えーい! 不意打ちとは卑怯なりぃーっ!」
「おのおのがた、お、お、おちちゅきなしゃるれっ……」
「おぬしが落ち着け! 噛みまくっておるではないか!」
――てんやわんやの大騒ぎ。
だけど、腑抜けているとはいえ、兵士としての最低限の対応はできるみたい。レーザーの直撃を受けた三体は清政の姿を捉えて(攻撃した時点で『光学迷彩』の効果は消えてるわ)、右の拳を次々と突き出した。
●旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・g11216)
トループス級たちはアシンメトリーな姿をしていて、右側の腕が異様にデカい。前面で右手を広げれば、体の大部分を覆い隠すことができるだろうな。
そんな特大サイズの拳から放たれたのは、同じく特大サイズのエネルギー弾。どれも拳と同じ形をしている。
「貴様ら、『不意打ちとは卑怯なり』と抜かしたか? 武士道どころか人道さえも踏み外した奴儕に卑怯と謗られるは心外の極みよ……と、言いたいところだが、甘んじて受けよう」
御先祖はそう宣ったが、反撃までも『甘んじて受け』るつもりはないらしく、ビームシールドを展開した。
「日向国も大隅国も……島津が蹂躙した地の惨状はそれはもう筆舌に尽くし難きものであった。同様の苛政と辛苦を肥後の民草に味合わせぬためならば――」
エネルギーのパンチがエメラルド色のビームシールドに次々とぶつかっていく。
一発目でシールドに歪みが生じた。
二発目でシールドはガラスのように砕けた。
その残滓である無数の光点が飛び散る中を三発目が通過し、甲冑に守られた土手っ腹に命中。甲冑の被害は少しのへこみだけだが、衝撃は本体に伝わっただろう。
にもかかわらず、御先祖は倒れなかった。
よろめきさえしなかった。
「――それがしは卑怯にも卑劣にもなろう」
「右に同じ!」
と、エスメラルダが立ち上がった。彼女は御先祖とともに日向や大隅の復興に尽力したから(大隅のほうは俺も手伝ったぜ)、かの地の酷い有様をよく知っている。だから、島津軍への怒りはデカいはず。
「あの惨状を肥後にもたらさせてなるものか!」
「やーん! 二人とも、カッコよすぎるぅーっ!」
エスメラルダの大音声に黄色い叫びを重ねて、信志もまた立ち上がった。
「日向や大隅の人たちの困窮振りを直に見たわけじゃないけれど、この魔法少女シンディも黙っちゃいられないわー!」
訂正。信志じゃなくて、シンディだった。
「アナタたち、この辺りが殺風景とかなんとか嘆いてたわよね? だったら、絶景を拝ませてア・ゲ・ル💕」
流し目を送るような所作でトループス級たちを睨み据えるシンディ。その眼光からはいわく言い難い迫力が感じられる。しかし、真に注目すべきは脇にたばさまれたパラソルだ。俺の見立てでは、そのパラソルはパラドクスに用いるための武器。刀か槍のごとく扱って敵を討つに違いない。
「どんなに殺風景な地であろうとも、この美シンディが降臨すれば、サイ&コーな絶景になっちゃうのよ!」
……いや、違った。パラソルは飾りに過ぎなかったらしい。
シンディ改め美シンディは敵に視線を向けたまま、片膝を高く上げてみせた。脛どころか太股の一部までもが剥き出しになるほど。
●旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)
「そう、ワタシは性別を超越したカンペキな存在! 見なさい、この美脚! ジムにエステ、脱毛サロン! 人類の叡智とワタシの努力のすべてを注いだ美の結晶よ!」
叡智の無駄遣いのような気もするでござるが……それはさておき、シンディ殿の『美の結晶』を前にして、トループス級どもは呆気に取られるばかり。
否、パラドクスの標的となったと思わしき四体だけは呆気に取られるだけでは済まず、苦しげに体を痙攣させているでござる。そのうちの三体(それがしの『光王刃』を受けた奴儕)は浮遊能力を失い、草に覆われた地面に落ちている始末。
数秒も経たぬうちに三体の痙攣は止まりましたが、それは回復の萌しにあらず。生命活動そのものが止まってしまったのでござる。
「お、おのれぇーっ!」
残された一体は痙攣を続けながらも、ねじれた錐のような飛び道具(『みさいる』なるものか?)を甲羅型の下半身から発射。その飛び道具は地面へと潜り込んだかと思うと、シンディ殿の足下から飛び出したでござる。死角からの不意打ち。
もっとも、シンディ殿にとってなによりも耐え難かったのは、みさいるの風圧で衣服の裾をまくり上げられたことであるらしく――
「いやーん!? えっちぃー!」
――野太いのか甲高いのかよく判らぬ悲鳴をあげて、片手に持った南蛮日傘をぶんぶんと振り回しているでござるよ。反対の手で必死に裾を抑えているものの、さして効果はなく。なんともはや……シンディ殿のおみ足の美しさは認めるに吝かではないが、直視するには色々と辛い光景でござるな。
「こ、これはひどい逆セクハラ……てか、『逆』をつける必要はあるのか?」
シンディ殿の狂態から目を逸らしつつ、嘉内が呻いているでござる。
「そもそも、今の攻撃で露わになった肌の面積は、さっき足を上げてポーズを決めた時とたいして変わらないよな」
「いや、雲泥の差がある。自分の意思で見せつけるのと、意図せずに他者に見られるのとでは……」
と、シンディ殿に代わって女心(?)を説くエスメラルダ。
その緑色の海戦装に取り付けられたすべての大筒がガチャガチャと音を立てて一斉に動き出し、砲口をトループス級どもに向けたところで一斉に止まったでござる。
そして、一斉に発射!
シンディ殿の一連の行動で呆然としていたトループス級どもにとっては青天の霹靂。躱す余裕など、あろうはずもない。シンディ殿の衣服の裾をめくった者(いや、本人はめくるつもりなどなかったであろうが)を含む四体が砲撃の嵐に晒されたでござる。
「おさらばしたいと言うのなら、おさらばさせてやろう」
先程も口にした言葉をエスメラルダは改めてトループス級どもに告げたでござる。
「この世からな」
●エスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)
海戦装『肥後』に備わった四基の砲塔と二基の機銃。それらから撃ち出された砲弾と銃弾を浴びて、三体のトループス級が半壊し、一体が全壊した。
「パラドクスであっさり逝けるとは……貴様らには過ぎた最期よ」
残骸となった一体に向かって、清政殿が言い捨てた。
「日向国や大隅国の民草が味わった辛苦はその比ではないのだからな」
「やかましい! 地を耕すしか能がない虫ケラどもの辛苦など知ったことかぁーっ!」
半壊組のうちの一体が怒鳴った。盗人猛々しいとはこのことか。
他の二体の『盗人』も見苦しく居直った。
「すべての虫ケラは我らの家畜も同然ぞ! 家畜を生かそうと殺そうと、責められる謂れなどないわ!」
「むしろ、生殺しや半殺しに留めていることを感謝せい!」
怒声の後に砲声が続いた。三体ともに左肩の大砲を発射したのだ。標的はこの私。
念動式防御隔壁『緑の大楯』を前面に移動させ、砲弾を防ぐ。息つく暇もなく、第二の砲弾が飛来。着弾点は私の真横。横殴りの爆風に煽られ、弾殻の破片に傷つけられながらも、私は第三の砲弾を『緑の大楯』で受けた。
三回連続の爆発音のせいで耳が馬鹿になりそうだが――
「人間様を『虫ケラ』呼ばわりした挙げ句、家畜扱いかよ」
――地に伏せている嘉内の声は聞き取れた。
「虫ケラを嗤う者は虫ケラに泣くってな」
彼は立ち上がった。
その動きに呼応するかのように緑の旋風が巻き起る。もちろん、『旋風』は比喩に過ぎない。その正体はイナゴの群れ。小さき者で構成された大きな軍団。
それらは、砲撃を終えたばかりの三体のトループス級に群がり、そして、貪った。虫ケラごときが何百何千と集まったところで、鋼の体を持つ天魔武者には文字通り歯が立つまい……などと思うのは浅はかだ。トループス級の体のそこかしこからは灰色の煙が噴き出している。イナゴたちは装甲の隙間から内部へと潜り込み、獅子身中ならぬ機器身中の虫となって蹂躙の限りを尽くしているらしい。
「聞いたところによると、おまえらは日向や大隅だけじゃなくて、沖縄の人たちも苦しめていたらしいな? 一日二十時間もの重労働を科したりとか……マジで許せないぜ!」
『重労働』という言葉を口にした瞬間の嘉内の苦々しい表情といったらもう。引きこもりだった彼にとって、それは忌み言葉も同然なのかもしれない。頭に『重』がつかなかったとしても。
三体のトループス級は一日二十時間労働について反駁も弁解もしなかった。できるわけがない。イナゴの群れにとどめを刺され、労働のない世界へと旅立ってしまったのだから。
「アナタたち、偉そうに『感謝せい』とか言ってたけどぉ――」
まだまだ残っているトループス級たちに向かって、シンディが美脚を披露した。例のパラドクスだ。
「――ワタシたちは感謝を求めたりしないわよ。だって、生殺しや半殺しに留めるつもりはないから」
「そう。皆殺しでござる」
清政殿が頷き、光の刃を次々と飛ばした。
私も『肥後』の全砲門を発射した。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV2が発生!
【先行率アップ】LV2が発生!
●幕間
大きな門といくつかの銃眼が設けられた丸太製の塀の上から四基の物見櫓の頭が覗いている。
なにやら山賊のアジトめいているが、歴とした天魔武者の城砦――島津軍が築いた偵察拠点だ。
その頼りなき砦の前にいくつかの人影が並んでいた。
巡回偵察を終えたトループス級たちではない。
その偵察部隊を全滅させたディアボロスたちである。
城砦から人の気配は感じられない。しかし、アヴァタール級の天魔武者『高森柏姫』がいることは判っている。
守備の要たるトループス級たちは既に亡く、城砦そのものの防御力もあってないような物なので、一進一退の攻城戦/籠城戦が繰り広げられることはないだろう。
そう、やることは簡単だ。
塀を破って突入し、柏姫を打ち倒すか。
あるいは柏姫を外に誘い出し、迎え撃つか。
旗楽・清政
おお、文月殿! 助勢、誠にかたじけなし!
百人力を得た心持ちにござる!
さて、高森柏姫とやら、史実では島津に抗い死んだ、阿蘇家の家臣高森氏の姫なのでござるな。
それが島津軍として日向に来て、撤退に取り残され此処に居るとは、
如何にその名を騙っている存在に過ぎぬとは言え、
史実の本人が聞けば何と言うでござろうか。
――まぁ、不本意に思うことは間違いあるまい。
なれば、本人に成り代わりて、此奴を討ち果たしてくれん。
文月殿とは共に突入し、高森柏姫を発見したらばこう告げるでござるよ。
「天魔武者よ! その名を騙って島津に属するは、許されぬ事と知るがよい! 故に、成敗致す!」
で、成敗の手段でござるが、ここは離間の計を仕掛けると致そう。
島津の天魔武者共が、彼奴を攻撃せんとする幻を見せてくれる。
史実的には、正しい幻なのでござるがな。
反撃は、実態のある悲劇を差し向けると?
如何な悲劇を見せられようと、それがしにとって
旗楽領が滅ぼされた以上の悲劇はなし!
万一それを見せられるのならば、逆に怒りの炎が心の中で燃え上がるまで!
旗楽・嘉内
高森柏姫……島津に抵抗した肥後阿蘇家の家臣で、島津と戦って戦死、ねぇ。
その天魔武者が、何で島津軍にいるんだか。
今に始まったことじゃないが、相変わらず史実と比べると無茶苦茶だぜ。
御先祖ほどカリカリするつもりはねぇが、もう少し史実にリスペクトってものをだな……。
まぁ、いいや。
御先祖のように本人に成り代わってなんて言わねぇが、この脳がバグる状況は早く終わらせよう。
この後は拠点造りが控えているんだし、何時までも邪魔な天魔武者に居座らせる気はねぇよ。
御先祖の戦友との連携は、意識していくぜ。
オレからは、タイミングを見てエメラルドの翼で攻撃だ。
全方位からのビーム砲とビーム刃による攻撃で、一気呵成に攻め立てるぜ。
反撃は、悲劇の歴史を実態のある幻像として差し向けるのか。
原爆、ホロコースト、文化大革命と、歴史上極めつけクラスの悲劇は既に識ってる。
そんなオレに、何を悲劇として見せるんだ? 何にしても、だ。
悲劇を見せて精神を痛めつける気なら、逆効果だ。
むしろその悲劇への怒りが、オレの心の中で燃え盛るぜ!
エスメラルダ・リベロ
(常時軍人モード)
ふふ、信頼している戦友が助っ人に来てくれたとあって、
清政殿は随分と嬉しそうだな。喜色満面、と言うべきか。
見ていて、微笑ましくさえあるよ。
さて、相変わらず、清政殿と嘉内が史実と比べてこのクロノヴェーダが
此処にいるのがおかしいとか何とか言っているな。
むしろ、史実にリスペクトがないからこそ、その時代を侵略するのでは?
と言う気がしなくもないのだが、まぁ、いいさ。
二人の拘りはさておき、私はトループス級に続いて
このアヴァタール級のクロノヴェーダを討つまでだ。
せっかく【パラドクス通信】を敷いてもらっているのだ。
3人との連携は十分意識した上で、ここぞ!と言うタイミングを見計らって、
私もパラドクスを発動して攻撃に参加するぞ。
十二門の大口径砲からの、ビームの集中砲火、その身に受けるがいい!
奴からの反撃は、力を以て制しようとする者を焼き尽くす強力な光、か。
では、緑の大盾を遮蔽として防ぎ、もしもそれを抜けてくるようならば
オーラフィールドと、何より私自身の生命力で耐えるとしようか。
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
助っ人に来たよー!
まあね、清政は九州出身だもんね
色々と気になってしまうのも頷けるよ
ここが矢岳高原か、成程なかなかの絶景だ
そしてこれが島津が使っていた砦だね
防御よりも監視性の確保を優先したというのは興味深い
何より島津軍が残していった砦だから
新築よりも警戒される可能性は低いし
排斥力の影響を受けずに済むのは利点かなと
簡単に壊せる辺りクロノオブジェクトではないらしいし
後に【建物復元】で再利用する事を想定しつつ
砦としての弱点の調査も兼ねて、どどーんと攻め入ってみよう!
【パラドクス通信】で仲間と連携して行動
『光明一閃』のパラドクス使用
砦の中の柏姫を倒すべく、砦の構造を見極めて
攻め易く守り難い場所を見出しつつ、攻撃を重ねていこう
ふむ、敵は鏡を使って視線の通る範囲が攻撃範囲
監視性の高い砦とは相性が良さそうだね
ならば砦の壁の一部をわざと先に壊しておいて
死角に回り込んで鏡の分体の動きを誘導しつつ
突如【建物復元】で壁を修復させて視線の通りを遮断して
生じた隙を狙って死角からの攻撃を狙ってみよう
一蝶・信志
突入しながら砦の構造をチェックするのはグッドアイデアだと思うわ
砦に改造するときのヒントやとっかかりは多い方がいいもの
ワタシもお手伝いしましょ
知り得たことは常時パラドクス通信で共有ね、オッケー🌟
ただし、センパイ方のお邪魔にならないようにだけは気を付けなくっちゃ!
(同様の行動をしている人と場所等が重複しないように注意します)
光学迷彩の力を借りてコソコソ侵入
防御力には特化してない簡素な砦らしいから、
隠し部屋とか罠とかはあんまりなさそうだケド…、
念のためチェックはしておこうかしら
……?
何か視線を感じる……キャッ!(八咫の鏡門被弾)
あ~ん、見つかっちゃった💦
んもう、そんなに見つめちゃ、イ・ヤ♡!(バチーン)
熱烈な視線には熱烈な視線でお返し💕
鏡を通して反応を直に見られるかしら
シンディを覗く時、シンディもまたアナタを覗いているのよ✨
八咫の鏡門は集中力を使うらしいからそう何度もは襲ってこないでしょ💦
もしめっちゃ狙われるなら逆に接敵してる仲間の援護になるから
わりきってチョロついてやるわ!
※シンディ
●エスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)
天魔武者の砦の前に立つ我らがチームに――
「やあ! 助っ人に来たよー!」
――狩衣姿の青年が加わった。
平安鬼妖地獄変を生まれとする陰陽師の雪人だ。
「おお、文月殿!」
清政殿が顔を輝かせた。二回りも年下のこの戦友に並々ならぬ信頼を寄せているらしく(私もまた雪人のことは信頼している)、大変な喜びようだ。その笑顔は、思わぬところで遊び友達と会った子供を彷彿とさせて……ふふっ。なんとも微笑ましいことだ。
「助勢、まことにかたじけなし! 百人力を得た心持ちにござる!」
「いいえ。プラス五十人力よ」
と、シンディこと信志が文月の足下を見やった。
そこにいるのはクダギツネの『クダ吉』。シンディの視線を受け、『五百人力ですが、なにか?』とでも言いたげな澄まし顔を決めている。本当に五十人力もしくは五百人力に匹敵するかどうかは知らないが、可愛さという点では千人力を軽く超えているな。
「令震の話によると、この砦を守るアヴァタール級は『高森柏姫』と名乗ってるんだってな」
和気藹々としたやり取りが一段落ついたところで、嘉内がそう言った。
「柏姫ってのはアレだろ? 肥後阿蘇氏の家臣の娘で、島津が攻め込んできた時に戦死したっていう悲劇の姫さんだろう? その名を持つ天魔武者がなんで島津勢に属しているんだか……史実と比べると、無茶苦茶だぜ。今に始まったことじゃないけどよ」
「うむ」
と、清政殿が頷いた。先程までとは打って変わって、険しい顔をしている。
「史実の柏姫がこのことを知ったら、なんと思うであろうか? いや、不本意に思うことは間違いあるまい。なれば、本人に成り代わりて、其奴を討ち果たしてくれん!」
「まあ、御先祖ほどカリカリするつもりねえが……クロノヴェーダには、史実に対するリスペクトってものをもう少し持ってほしいところだな」
それは無理な相談だ。クロノヴェーダが史実へのリスペクトを忘れぬ殊勝な連中だったとしたら、そもそも刻逆を起こしたりしないだろう。
リスペクトを知らぬ敵が待ちかまえているであろう砦の中に私たちは足を踏み入れた。砦の門は簡単に開いた。閂などを設けても無駄だということは敵もよく判っているのだろう。パラドクスを使えば、塀を簡単に破るなり飛び越えるなりできるのだからな。
その脆弱な塀に囲まれた内部をぐるりと見回してみる。地面は舗装どころか除草すらされていない。四隅に建てられた物見櫓はなかなかしっかりした造りのようだが、中央にあるいくつかの兵舎はお粗末なもの。ちょっと大きめの掘っ立て小屋にしか見えない(あの重量級のトループス級たちの体格に合わせたから、大めになったのだろう)。
「……あっ?」
誰よりも真剣な眼差しで周囲を観察していた雪人が声を発し、掘っ建て小屋のうちの一軒を指さした。
見ると、その小屋の陰から天魔武者が顔(らしきもの)をひょこっと覗かせている。
私たちの視線に気付いたのか、そいつは陰から進み出て、折り紙の雛人形のごとき異形の姿を現した。
●一蝶・信志(シンディ・g04443)
門をくぐってすぐに皆とは別行動を取らせてもらったわ。隠し部屋とか罠とかの有無をチェックしておこうと思ったの。そんなものあるわけないってことは判ってるけどね。念のためよ、念のため。
で……案の定、そんなものはなかった。そもそも、隠し部屋の類を用意できるような複雑な造りをしてないのよね。伐採してきた木を適当に組み合わせただけって感じ。きっと、この砦は永続的な拠点じゃなくて『野営地に張ったテント』的なレベルのものに過ぎないんだわ。いざとなったら、あのカメタウロスたちが防壁と砲台を兼ねられるわけだし。まあ、いざとなる前にワタシたちに全滅させられちゃったんだけど。
なにはともあれ、チェックは終了。兵舎(とは名ばかりのボロ小屋)の近くで皆が敵と遭遇したみたいなので、ワタシはそっちに駆けつけた。
「あれが柏姫だな」
奇妙だけどもちょっと素敵なフォルムの天魔武者を前にして、エスメラルダが誰にともなく確認してる。
「うん」
と、頷いたのは雪人。
「同じアヴァタール級を前にも見たことがあるよ」
そのやり取りが聞こえたのかどうか判らないけど、柏姫は叫び出した。ぴょんぴょん跳ねながらね。
「何者ですか、あなたたちは! ここは妾(わらわ)の城ですよ! 何人たりとも土足で踏み入ることは許されません! 出て行きなさい! 出て行きなさい! 今すぐに出て行きなさぁーい!」
ものすごく甲高くて大きな声。近くにガラス製の物があったら、粉々に割れてるかも。こんなに甲高い声はワタシには出せないし、他の皆も無理じゃないかしら。
でも、大きさのほうは――
「黙れぇーい!」
――清政の声の勝ちぃー。
「天魔武者よ! よりにもよって島津に討たれた者の名を騙って島津に属するとは厚顔無恥にも程がある! 決して許されぬことと知るがよい!」
「誰の名を名乗ろうと、妾の勝手ですぅーっ!」
開き直って怒鳴り返す柏姫。
彼女の逆ギレに対して、清政は順ギレで応じた。え? そんな言葉はない? じゃあ、もっと判りやすく言うわね。
パラドクスを発動させたのよ。
「我らディアボロスが成敗いたぁーすっ!」
清政の叫びに反応して出現したのは天魔武者たちの幻影。全員、肩の装甲に島津家の家紋が記されてるわ。
そいつらは同胞であるはずの柏姫を取り囲み、罵声や怒号をぶつけまくった後、煙のように消え去った。実体を持たない幻影ゆえに相手には指一本触れなかったけれど、柏姫は明らかにダメージを受けてる。
「パラドクス『離間の計』でござる」
腰をやや落として身構える清政。反撃に備えて身構えているんでしょうね。
「島津の兵たちに柏姫が攻められるというのは史実的には正しい絵面でござろう」
「御先祖なりのリスペクトってわけだ」
嘉内がニヤリと笑った。
●旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・g11216)
「よくもやってくれましたね! そちらが幻影で攻めるなら、こちらも幻影を返させてもらいます!」
戦場に響くは柏姫のキンキン声。幻影系のパラドクスを発動させたようだが、それらしきものは見えない。たぶん、標的となった者にしか視認できないんだろう。
その『標的となった者』が御先祖であることは間違いない。幻影から攻撃を受けたらしく、体のそこかしこに傷ができてるぜ。
しかし、精神的にはノーダメージのようだ。
「ふむ。これは悲劇の歴史に基づく幻影でござるな。しかし――」
御先祖はカッと目を見開いた。
「――それがしにとって、旗楽領が滅ぼされた以上の悲劇はなし!」
「ひっ!?」
と、御先祖の気迫にビビって身を竦ませる柏姫。
その隙を見逃すことなく、クダ吉が動いた。
「こぉーん!」
もとい。動いたのは雪人だった。クダ吉は鳴いただけ。
雪人は死角から回り込むようにして柏姫へと迫り、白銀の光線を発射した……ように見えたが、それは錯覚。光線が迸ったんじゃなくて、刃が抜き放たれたんだ。そう、日本刀による神速の斬撃。
「あっ!?」
右腰から左肩を逆袈裟に斬り上げられ、柏姫は大きく仰け反った。天魔武者にしては華奢なその体からいくつもの破片が四方八方に飛び散っていく。キラキラと光を照り返しながら……と、見えたが、それもまた錯覚。破片が飛び散ったんじゃなくて、鏡がばら撒かれたんだ。そう、パラドクスの布石。
飛び散った鏡はどれも地に落ちることなく、ふわりと宙に浮かび、それぞれが異なる高さで停止した。
「開けよ、繋げよ、八咫の鏡門!」
鏡のうちの一枚を柏姫が振り仰ぐと、彼女の顔面(に相当するであろう部位)から一筋の光が真っ直ぐに伸びた。『視覚化された視線』とでも呼ぶべきそれは鏡にぶつかって弾き返され、別の鏡へと向かい、その鏡にも弾き返され、また別の鏡へと……反射、反射、また反射。直線のみで構成された文様を宙に描きながら、雪人へと迫ってゆく。
しかし、雪人は危機感など微塵も抱いていないような顔をして駆け出した。
「鬼ごっこは得意だよ。鬼だらけの世界で生まれたからね」
傍の掘っ建て小屋に飛び込んだかと思うと、すぐに走り出て別の掘っ建て小屋の裏に回り、また別の掘っ建て小屋の陰へと……疾走、疾走、また疾走。
「ふむ。事前に各小屋の位置をしっかり確認し、敵の死角となる場所などを頭に叩き込んでいたのだな」
遮蔽物を利用した雪人の回避行動にエスメラルダも感心しきり。バトル漫画の解説キャラめいた台詞を吐いてる。
一方、意外と負けず嫌いっぽい柏姫はザコ寄り中ボスキャラ的みたいに躍起になって雪人を更に追撃――
「むむっ!? そこにも曲者がいますねっ!」
――するかと思いきや、攻撃対象を変更した。
またもや視線が宙を走り、複数の鏡を介して、新たな標的に命中。
「きゃっ!?」
悲鳴をあげたその標的はシンディだ。やや離れた場所から戦いの様子を伺っていたらしい。
●旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)
「あ~ん、見つかっちゃったぁ」
柏姫(本物の柏姫ではござらぬが、便宜上そう呼ばせてもらうでござる)の視線を受け、シンディ殿はだめーじを被ったようでござる。
しかし、実はわざと見つかったのではなかろうか? 文月殿に向けられるはずだった攻撃を代わりに受けるために……。
その真偽はさておき、シンディ殿が転んでもただでは起きぬ御仁であることだけは確かでござろう。すぐに反撃のパラドクスを繰り出したのでござるから。
そのパラドクスとは――
「んもう、そんなに見つめちゃ……イ・ヤ😉」
――なんと、目くばせでござる。新宿島では『ういんく』と呼ばれていると聞き申した。
「うわー……ハート付きの『ばちこーん💕』っていう擬音が聞こえてきそうな濃ゆいウインクだな。てか、ウインクに『濃ゆい』なんて形容詞をつける日が来るとは思わなかったぜ」
と、嘉内が感心(?)している間にシンディ殿のういんくの力は先程の視線を逆向きに辿るかのように鏡から鏡へと流れ行き、そして、視線の主たる柏姫のもとに届いたでござる。
「ひぇっ!?」
と、おぞましげに体を震わせる柏姫。失礼極まりない態度ではあるものの、ういんくを送ったシンディ殿は気を悪くした様子も見せず、婀娜っぽい仕草で指先を口元にやり、笑っているでござるよ。
「うふふ。アナタがシンディを覗く時、シンディもまたアナタを覗いているのよ」
「もし、シンディが深淵を覗いたら――」
なんともいえぬ顔をして、エスメラルダがぽつりと漏らしたでござる。
「――深淵のほうが目を逸らすかもね」
と、後を引き取ったのは文月殿。
深淵ならぬシンディ殿を覗いてしまった柏姫はまだ体を震わせているでござる。その姿は実に哀れ。しかし、クロノヴェーダにかける情けなどなし。
そんな心の内を読み取ったのか、嘉内がそれがしを一瞥したでござる。子孫が先祖を覗く時、先祖もまた子孫を覗いている……いや、戯言はさておき、嘉内の凝視あくまでも一瞥どまり。すぐに柏姫に目を向けたでござるよ。
「まあ、俺は御先祖のように『本人に成り代わりて云々』なんて大上段を構えるつもりはねえけど――」
嘉内はパラドクスを発動させた模様。翡翠色に輝く翼がその背に現れ出たでござる。
「――史実に即してない奴ばっかりが幅を利かせているような状況にいると、脳がバグりそうになるんでな。さっさと終わらせてもらうぜ」
ばっさばっさと翼を扇ぎ、舞い散らせるは無数の羽根。それらから糸のように細い光線が放たれ、あるいはそれ自体が光を帯びた刃と化して、柏姫の体を撃ち抜き/斬り裂いていくでござる。
「んあぁぁぁーっ!?」
銃創(光創?)と刀創だらけとなって、童のように泣き喚く柏姫。しかし、アヴァタール級がただ泣き喚くだけで終わるはずもなし。胸に下げた鏡を光らせて、嘉内に反撃を見舞ったでござる。
●文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)
柏姫が嘉内への反撃に用いたパラドクスは、清政に対して使ったものと同じようだ。清政が口にした言葉から察するところ、『悲劇の歴史』とやらに関係した幻影を見せるパラドクスらしい。
清政の時と同様、嘉内もまた(標的となった者にしか見えない)幻影に攻撃されて、たちまちのうちに傷だらけになった。
だけど、これまた清政の時と同様、心までもは折れなかったみたいだね。元引きこもりとは思えない剣呑な目で柏姫を睨みつけている。
「現代人を舐めるなよ、天魔武者。歴史の長さという点ではこっちが四百年以上もリードしてるんだ。テロに戦争にジェノサイド――極めつけクラスの悲劇は既に知ってるぜ」
悲劇に免疫があるというのもある種の悲劇かもね。そして、それは嘉内に限ったことじゃない。ディアボロスの大半は(とくにディヴィジョンからの漂着組は)悲劇や惨劇をよく知っている。知らされている。
「だから、悲劇を見せて精神を痛めつけようって気なら、逆効果だ。むしろ――」
嘉内の眼光がより鋭くなった。
「――その悲劇への怒りがオレの心の中で燃え盛るぜ!」
「ひっ!?」
柏姫が身を竦ませた。清政に気圧された時の再現だ。
その隙をついて誰かが動くという展開も再現めいていたけれど、今回の『誰か』は俺じゃない。
「こぉーん!」
いや、クダ吉でもないから。
「全砲塔、エネルギー充填完了!」
それはエスメラルダだった。たぶん、ここぞという瞬間を狙っていたんだろう。
「この一撃で仕留める! ヴェルデ・フィナーレ!」
彼女の海戦装に備わった四基の砲塔から翡翠色の光線が同時に放たれた。
どの砲台にも三本の砲身が並んでいるから、光線は合わせて十二条もあるのだけれど、エスメラルダの『一撃』という表現は間違っていない。それらは縒りをかけられたかのように捻れながら、太い一本の光線にまとまり、柏姫に命中したのだから。
「イヤです! イヤです! 誰の手にも渡しません! ここは妾の城! 妾だけの城ぉぉぉーっ!」
光線に胸を刺し貫かれて絶叫する柏姫。こんな貧相な砦を『妾だけの城』と見做して執着する心情を哀れと取るか滑稽と取るかは迷うところ。
で、俺が迷っている間に光線が弾け、柏姫の体は木っ端微塵に吹き飛んだ。
念のために柏姫以外の敵が残っていないのかを確認。
それが済むと、清政が皆に言った。
「ようやくにして、今回の任務の核と言える作業に取りかかれるでござるな。さて、いかがいたそうか?」
「ちょっと思ったんだけど――」
と、挙手したのは俺だよ。
「――可能なら、ここを俺たちの拠点として再利用したいな。防御力は心許ないけど、雨風を凌ぐくらいのことはできそうだし、排斥力に引っかかることもないだろうし……まあ、あくまでも一案だけどね」
「なるほど」
信志……じゃなくて、シンディが頷き、全員の顔を見回した。
「どうする? 雪人の提案通り、ここもリフォームしちゃう? それとも、まっさらなやつを一から築いてみる?」
さて、皆の答えは……。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV2になった!
【建物復元】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV3が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
●マスターより
幕間は設けておりませんが、①のプレイング募集中でーす。
一蝶・信志
メイクを落として力仕事向けの装いにお着換え✨
建設業界のオニーチャン風な辛口コーデ
日焼け止めは塗り直しておかないと😩
「やあ、よろしく~
ユキって呼んでね!」
(何食わぬ顔で新規参加っぽく振舞うわ
魔法少女は「正体不明」が鉄の掟ですもの!)
元の砦を活かして改築するんだね、了解
作りの甘い箇所の補強、櫓の昇降等の導線の改良はしつつ、
外観の変化に気づかれて怪しまれるかもだから
偽装できそうなところはしたいかも
新しい材料のエイジング加工とか
矢岳高原は見晴らしがいいけど、周りに山も多いから
櫓からの視界範囲はしっかり確認しておこう
新しい櫓を増設するなら、視界を補強できそうな位置がいいと思う!
地図とスーパーGPSを照らし合わせ
既存の各櫓から見える範囲を地図に書き込む
少しでも死角を補強できそうな新規櫓の位置を割り出すよ
薩摩の北征が起こるとしたら、どのあたりを通るかなあ
歴史的・地理的には海岸沿いルートが定石っぽいけど
内陸側や大隈との境界でも動きが出るかな?
※言動は男性
でも時々「きゃっ」「痛~い💦」とか言っちゃう
文月・雪人
さて、愈々拠点の設営だね。
シンディも準備ばんた…(色々と察し)…ユキも宜しくだよ!
出来れば【建物復元】で直した既存の砦も活用しつつ
監視機能の充実を念頭に、問題のない範囲で機能を拡張して行ければと
仲間と相談協力して、よりよい施設に出来たらいいね
櫓に登り【完全視界】で眺望の確認を
島津的には、肥後方面と日向方面に向けた監視拠点だったのだろうか
だが俺達としては、薩摩と大隈方面の動きも監視したい
今ある櫓で全方向を見渡せるなら、その櫓をメインに建物を補強
もし見えない方向があるなら、より見える位置を探して、見張り台を増設したい
監視機能の充実が大丈夫そうなら、兵舎の方も補強して整備しよう
休憩中に雨漏りとかは嫌だしね
外観は変わらずとも内部の快適性が上がるように改装する
清政の【怪力無双】を借りて作業に当たろう
工具やエスメラルダの資材で足りないものはトレインで運び込む
嘉内が【飛翔】を使うなら
上空から周囲の地形を動画に撮って貰えないかな
新宿島に持ち帰って地形図を作成すれば
今後の作戦行動にも役立つかもしれないしね
旗楽・嘉内
急ぎ新宿島に戻り、工具と後述の望遠鏡用の材料、
それとデジタルビデオカメラを調達。
望遠鏡用の材料については、排斥力の影響に注意します。
これから拠点の設営ですが、新しいディアボロスが参加ですか。
って、同じ旅団のユキさんですね。よろしくお願いします。
シンディさんなのは知ってますが、流石にそれをバラすような心ないことはしませんよ。
変身ヒーローあるいはヒロインの正体が秘密なのは、絶対のお約束ですからね。
ともあれ、原始的な造りの望遠鏡を備品として制作です。
工具で木を良い感じに削って外枠を半分ずつ造り、
その内側にレンズをそれぞれ固定出来るようにして、
半分ずつの外枠同士を合わせてニカワで固めれば、
原始的な造りの望遠鏡の出来上がり。
材料はまず排斥力の影響は受けないですし、
史実で望遠鏡が日本に持ち込まれたのは1613年なので、
概念としてもギリセーフ、だといいなぁ。
えっと、上空から周囲の地形を動画撮影ですね。わかりました。
では【飛翔】し、エメラルド・タブレットとデジタルビデオカメラの両方で、撮影しておきます。
旗楽・清政
これより拠点の建設でござるが、一蝶殿がここから参戦でござるな。
先程それがしらと共に戦っておったシンディ殿に特徴が似て居るような気は致すが、
一蝶殿がああ振る舞っておる以上、そこに触れるのは野暮というものでござろう。
さて、まずは今ある拠点と物見櫓で何処まで確認出来るかの確認でござるな。
何と言うても、出水から海沿いに水俣を経て八代、あるいは人吉へ向かう軍勢を
此処から確認出来ぬようでは話にならぬ。
まずはそれが出来ることを大前提として、文月殿の申されるように
薩摩大隅の方も確認出来るように、既存の建物を補強するなり、
あるいは新たに見張り台を増設すると致そう。
それがしも【怪力無双】で、文月殿に合力致すよ。
そして、拠点が出来上がったならば、嘉内が造った望遠鏡を手にして覗き込みつつ、
それぞれの方面にて動きがあった際に、各物見櫓、見張り台からそれを視認しうるかを入念に確認するでござるよ。
万一視認出来ぬところがあるならば、【飛翔】すれば視認出来るかどうかも合わせて確認しておくと致す。
エスメラルダ・リベロ
(常時お姉さんモード)
邪魔なアヴァタール級との戦闘は終わって、ようやく拠点の設営ね。
アタシも嘉内クンと一度新宿島に戻って、伐採用の斧を調達しておくわ。
それで、戦闘が終わってシンディちゃんがいなくなったと思ったら、
入れ替わりにユキクン? が参加してきたわけだけど、
身長とか肌の色とかから言って……そう言うことよね?
嘉内クンの「余計なことを言わないで」って視線を感じるから、
アタシもそこには触れないでおくけど。
それはそれとして、このまま此処を活用するにしても、
新しく見張り台を増設するにしても、材料としての木材は必要よね。
それじゃ、調達した斧と、清政クンが敷いてくれた【怪力無双】を使って、
必要なだけ木を次々と伐って、【飛翔】も使って運んでいくわ。
木の伐採が終わったら、雪人クンやユキクンのお手伝いをメインにやっていくわ。
それにしてもユキクン、普通にそうしていたら嘉内クンより格好良いイケメンだと思うんだけど、
(「きゃっ」「痛~い💦」と声が漏れるのを聞いて)……なるほど。本質はそっち側なのね。
●文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)
全員の意見をすり合わせた結果、この砦をディアボロスの拠点として再利用することになった。
「じゃあ、始めようか。皆、準備万端だよね? 清政もエスメラルダも嘉内もシン……」
言葉が途切れてしまったのは、先程までそこにいたはずのシンディがいつの間にか消えていたから。
だけど、人数は減ってない。シンディに代わって、浅黒い肌をした長身の男の人が立っている。
「やあ、よろしくー。俺は信志。ユキって呼んでね!」
歯をキラリと光らせて、彼は名乗った。ポケット多めのミリタリーベストとバルーンなカーゴパンツ(最終人類史の各種文化のことは日々勉強しているから、これくらいのカタカナ語は知ってるよ)というダブダブ系の衣装を着ているにもかかわらず、立ち姿はスラッとして見える。着こなし力が高いのかな? さすが、変装というか変身に慣れているだけのことは……いやいやいやいや! 変装も変身もない。彼は信志以外の何者でもないんだ。そういうことにしておこう。うん。
「よろしくお願いいたす」
清政がユキこと信志に一礼した。心の中で当惑しているのかもしれないけれど、態度には一切表していない。たいしたものだ。
「こん!」
クダ吉が短く鳴いて挨拶した。清政と同様、泰然自若たるもの。でも、ことの真相に気付いてない可能性もなきにしもあらず。挨拶する前、『あれ? シンディはどこ行ったの?』みたいな顔できょろきょろしてたから。
「この件にはツッコんではいけませんよ。『変身ヒーローもしくはヒロインの正体はヒミツ』というのは絶対にして不可侵のお約束なんですから」
「言われてなくても判ってるってば。アタシだって、その程度の空気は読めるよ」
嘉内とエスメラルダが小声でやり取りをしている。
もっとも、この二人もシン……じゃなくて、信志に通じるところがあるんだよね。戦闘が終わった途端に牙がすっかり抜け落ちて、口調が完全に変わってるし。いや、変わったのではなく、本来の状態に戻ったということなのかな?
なんにせよ、本当に個性的な面々だ。それに比べて、俺は普通もいいところ。平安鬼妖地獄の出身で、クダギツネを連れていて、色違いのネコの着ぐるみを何着も所有している陰陽師兼私立探偵なんて、ちっとも珍しくないもんね。
ないもんね?
●エスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)
こーん!
こーん!
こーん!
ここは砦の近場の森林。一定のテンポで響いているのはクダ吉クンの鳴き声じゃない。木の幹に斧を打ちつけている音よ。
「倒れるぞぉーっ!」
最後の一振りを見舞い、アタシは叫んだ。全員が安全に距離を取っているから、警告する必要なんてないんだけども、やっぱり叫ばずにはいられない。お約束みたいなもんだから。
メキメキメキッと木が傾き、ドッシーンと倒れた。
お次は枝払い。斧を鉈に持ち替えて、木を丸太に変える。
その作業を何度か繰り返して、必要充分な素材を森林から分けてもらった後、それらを砦に運んだ。重機どころか荷馬車さえないので、自力でえっちらおっちらと持って帰るしかなかったのだけれど、それほどキツくなかったよ。清政クンが『怪力無双』付きのパラドクスを発動させてくれたからね。感謝、感謝。
運び終えたら、最終加工。丸太のまんま使うやつ以外は切り刻んで、板状や棒状の木材へ。
そして、リフォームの準備完了! ……と思いきや、ユキクンだけは手を止めてない。木材のそこかしこを削ったり、軽く炙ったり、雑とも丁寧とも見えるやり方で塗装したりしてる。鼻歌まじりでね。
「なにをされているのですか?」
嘉内クンが尋ねると、ユキクンは鼻歌独演会を中断して答えた。
「エイジング加工ってやつだよ。元からある部分と継ぎ足す部分がうまく馴染んで見えるよう、ちょっと年季が入ってる感じを後者に施してるわけ」
「なるほど」
ユキクンって、よく気が回るね。それにイケメンだし、器用だし、おまけに高身長(そう、シンディちゃんからヒールの分を引いたくらいの身長よ)と来たもんだ。普通にしていたら、嘉内クンを始めとする他の男子勢にもカッコよさという点では引けを取らないな。
わざわざ『普通にしていたら』と条件をつけたのは――
「やだー! 付け爪が割れちゃったー💦」
――時々、普通っぽくない声(文字に起こしたら、確実に絵文字がつくやつ)を出しちゃったりするから。まあ、ユキクンの場合はこれが普通ってことなんだろうけど。
「改装の主軸となるのは物見櫓だろうけど、兵舎も補強したほうがいいんじゃないかな?」
ユキクンの作業が終わったところで、雪人クンがそう提案した。
「常駐を前提とした拠点でないとはいえ、居住性を疎かにしちゃいけないと思うんだよね。ほら、雨漏りする中での休憩とか嫌だろ?」
「確かに」
清政クンが頷き、兵舎に目をやった。
兵舎とは名ばかりの掘っ建て小屋群なんだけどね。
●旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)
改装作業完了。重量級浮遊型天魔武者用の兵舎がディアボロス用のそれとして生まれ変わったでござる。もっとも、外見はさして変化なし。力を入れたのは内装でござるよ。
「うんうん」
何度も頷きながら、文月殿が室内を見回しているでござる。自分たちの仕事振りに満足している模様。
「まるで、どこかのお城の城主の間か高級な旅籠の一室のよう! ……というのは流石に大袈裟だけど、そこそこ快適になったな。これくらいで充分だよね?」
「充分でござるとも」
心から同意。雨漏りや隙間風を防げるのであれば、それで文句なし。むしろ、多くを望むことは避けるべきでござろう。最終人類史の技術を取り入れて豪奢かつ現代的(それがしにとっては『未来的』でござるが)な仕様にすると、排斥力に撥ねられてしまう恐れがある故。
「いい雰囲気だね。キャンプ場のバンガローに泊まっているような気分になるよ」
「校外学習の野外活動を思い出しますね」
一蝶殿と嘉内にも大好評の様子。このディヴィジョンの生まれであるそれがしには共感しづらい感想でござるが。
嘉内の足下には何本かの筒が転がっているでござる。それらは嘉内が砦の備品として拵えた物なのだとか。
「これって、もしかして――」
エスメラルダが筒のうちの一本を手に取ったでござる。
「――望遠鏡なの?」
「はい。木製の枠を半分ずつ作り、片方の枠に二枚のレンズを固定してから、もう片方の枠を合わせて膠で固ました。単純な構造ですし、望遠鏡が発明されたのも日本に伝来したのも十七世紀頃らしいので、排斥力にはギリギリ引っかからないと思うのですが……」
「まあ、排斥されちゃっても問題ないんじゃない? ここに来る都度、望遠鏡を持参すればいいだけの話よ」
「それはそうなんですけど……せっかく作ったからには皆さんに役立ててもらいたいですよ」
「うんうん。気持ちは判る」
そう言いながら、文月殿も望遠鏡を手に取り、それを覗き込んだでござる。
「では、嘉内のこの力作を役立てるための施設――物見櫓の改修に取りかかるとしようか」
●一蝶・信志(シンディ・g04443)
清政ってば、パラドクストレインに乗り込んだ時から熱量高めだったけれど、物見櫓の改装の段になると、更に熱量が上昇したわ。熟練の建設現場監督さながらにてきぱきと指示を出しつつ、自分も率先して働き、三面六臂を通り越して六面十二臂くらいの大活躍。
「清政、すごく張り切ってるね」
エスメラルダに話しかけると、彼女は訳知り顔で頷いた。
「うん。島津勢に支配されてる地を奪回することが悲願だからね。そもそも、今回の作戦を攻略旅団で提案したのも清政クンだし」
「悲願かー。そう聞いたら、俺も張り切らずにはいられないな」
ええ、張り切りますとも。及ばずながら、この漢(おとこ)信志&乙女シンディ、一肌でも二肌でも脱いじゃうわ!
馬力をアップして皆と一緒に作業続行! 物見櫓を隅から隅までチェックしてー、作りが甘いところを補強してー、昇降もよりスムーズに出来るように改良してー、他にも色々やってー……はい、できあがりー。
新生版の物見櫓のてっぺんにワタシたちは登ってみた。視点が上がった分だけ、絶景度もマシマシ。でも、この櫓は風光明媚を愛でるためにあるわけじゃないのよね。
そのへんのことを誰よりも理解しているであろう清政は早速、眺望の具合をチェック。メイド・バイ・嘉内の単眼鏡を目にあてがい、北から西へ、西から北へと、首を動かしてる。
「ここからの眺めはどんな感じですか?」
嘉内が尋ねると、清政は『ふーむ』と一唸りしてから答えた。
「薄い雲はパラドクス効果の『完全視界』で見通すことはできるものの、山に遮られたところまでは見えないでござるな。まあ、当たり前の話でござるが……」
「とはいえ、敵方の様子がまったく伺えないわけじゃありませんよね?」
「うむ。人吉の辺りは比較的見やすいし、それに島津勢が常に山の死角だけで動くとは限らぬでござるからな。なんにせよ、この拠点が有用であることは間違いなかろう」
新宿島に帰ったら、その有用性の活かし方をじっくり考えましょう。敵が北上もしくは南下の気配を見せたら即阻止するか、あるいは少し進ませてから横撃して分断するか、あるいは相手の動きなんか待たずにこっちからグイグイ行っちゃうか、あるいは……あーん! 選択肢が多すぎて迷っちゃーう。まあ、すべては攻略旅団での提案と投票次第よね。
「できれば、もう少し上からの眺めも確認したいところでござるな」
「うん。俺もそう思ってた」
と、雪人が清政の言葉に頷いた。
そして、嘉内に声をかけた。
「ねえ、空飛ぶカメラマンになってくれない?」
●旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・g11216)
柏姫との戦闘時、私は緑色の翼を顕現させましたよね?
実を言うと、あの翼は飛行能力を有していないのです(付随している効果は『飛翔』ではなく、『アイテムポケット』なんです)。
しかし、今は本当に飛べます。飛びます。飛んでいます。『ダイブアンドフルファイア』というパラドクスを発動させましたから。
砦の上空約五十メートルを旋回しながら、私はタブレット(当然、カラーはエメラルドですとも)やデジカメを用いて地表の様子を動画に収めました。
「撮影完了」
と、パラドクス通信機越しに報告して櫓まで降下。
「お疲れさま」
労いの言葉をかけてくれたディレクターならぬ雪人さんにタブレットとデジカメを渡すと、彼はその場で動画のチェックを始めました。
隣ではADならぬ信志さんがなにやら難しい顔をして地図とにらめっこしています。パラドクス効果の『スーパーGPS』を使っているようですね。
「よし。この動画を使えば、より精密な地形図が作れそうだ。ところで――」
チェックを終えた雪人さんが新たな話を持ち出しました。
「――俺としては薩摩と大隈の方面も監視したいんだよね。既存の櫓では無理のようだから、南方監視用の新しい櫓を建ててみない?」
「残念ながら、それはちょっと難しいんじゃないかな」
信志さんが地図から顔を上げました。どうやら、彼も新たな物見櫓の建設箇所を模索していたようです。
「霧島連峰がどうしても邪魔になるから、砦から大きく離れた場所に建てざるを得ない。でも、大きく離れちゃったら、管理下に置けないんだよね。とはいえ、物見櫓を増やすこと自体は悪くないと思うな」
「うむ。増やした分だけ、監視範囲の死角が減らせるかもしれぬ」
御先祖が同意すると、それを受けて、エスメラルダさんが元気な声を出しました。
「じゃあ、もう一仕事か二仕事といこうか!」
「こーん!」
尻尾をピンと立てて高らかに鳴くクダ吉。
それを合図にして、私たちは新たな物見櫓の建設に取りかかりました。
●終幕
こうして、監視拠点という名の楔が日向国の西端に打ち込まれた。
決して大きな楔ではないが、そこから生じた亀裂はどこまでも広がっていくだろう。
九州全土から天魔武者が一掃される時まで。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【スーパーGPS】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!