リプレイ
ラキア・ムーン
どうにもヤ・ウマトは陸地が少ない分、攻略をやってる感が掴めんが……
まあ敵の戦略が反攻作戦中心になっている程度には、進んでいるのだろう
足を止めて考えても仕方ない事か、此方が打てる最善の手は最速で此処を攻略する事
時間は無駄には出来んな
水中適応を使用し、水中より進もう
基地自体は内陸部、だがそこに通じる水路があるというなら利用させて貰う
深く沈み上から見付からないよう進もう
硫黄島が落ちているのは知っているだろう、であれば監視もそちら方角が強いか?
海中を進み一端島を通り過ぎるように南方面へ
念には念を入れて、南側から内陸部へ繋がる水路や河を捜索しよう
発見したらそこから遡り、基地方向へ移動
潜れる間は水中に潜って進み、敵からの発見確率を下げよう
水位が浅くなったら熱帯雨林に紛れ込みながら進もう
木の陰を利用したりしつつ、利用してきた水路等に沿って進み可能な限り接近
基地を視認出来たら、一端停止し基地の警戒状況を観察
此方への警戒が少しでも薄いタイミングで一気に突入し仕掛けよう
時間は掛けんさ、早々に攻略する
一角・實生
勢いのある今こそ足元や背後には注意して行かないと、だね
玉砕覚悟の相手なら尚更だ
素早く、焦らず、確実に。胸の内で繰り返し作戦地域へ
【光学迷彩】を使い、水路とその周辺を伝って敵地へ侵入するよ
残留効果を使っても発見される可能性がゼロになったわけではない
熱帯雨林に身を隠し、先ずはグラナトゥムのスコープや持ち込んだ双眼鏡で偵察・観察して情報収集
侵入ルートを粗方決めてから行動開始といこう
視界をはじめとした悪環境には方向感覚を狂わされないよう気を付ける
途中途中でも分析を行い、開けた場所や見張りの巡回を避けながら進んでいくよ
貯水池をはじめとする、自然音や騒音が途絶えがちな場所では特に足音や気配に注意を払う
『隠れる』こと
残留効果を最大に発揮する為にも常に念頭に置いていく
基地を発見したら改めて周辺を見張るトループス級の巡回ルートを確認しよう
仲間が近くにいるようなら連絡を取り合い、敵を奇襲するタイミングを計るよ
●待つのは機か、敵か
まだ六月の頭だと言うのに、マリアナ諸島の空気は日本以上に熱く湿り気を帯びていた。島の外周部へ降り立つと同時にむっと全身を包み込む湿気に眉を顰めつつ、一角・實生(深い潭・g00995)は注意深く周囲へと視線を巡らせてゆく。敵戦力の大半は内陸部の基地に詰めているのだろうか。今のところ周囲に不審な気配はない。
「勢いのある今こそ足元や背後には注意して行かないと、だね。玉砕覚悟の相手なら尚更だ。素早く、焦らず、確実に……一つ一つ地歩を固めていこうか」
「地歩、か。どうにもヤ・ウマトは陸地が少ない分、攻略をやってる感が掴めんが……まあ敵の戦略が反攻作戦中心になっている程度には、進んでいるのだろう」
青年の言葉に相槌を打つのは同じタイミングで島に到着したラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)である。確かに彼女の言う通り、この改竄世界史の大半は海が占めており、幾つかの島々や沿岸基地が飛び地になっていると言って良い。それ故に分かり易い制圧感が乏しいのは確かだが、相手が後手に回りつつあるのは間違いなく良い傾向だろう。反攻作戦とは即ち、追い詰められた者が逆転を狙う策なのだから。
「足を止めて考えても仕方ない事か、此方が打てる最善の手は最速で此処を攻略する事。拙速過ぎて詰めを誤るべきでは無いが、さりとて時間も無駄には出来んな。ここは手分けして侵入した方が良いだろう」
どちらかが基地に辿り付けさえすれば、それを起点にもう一方も駆けつける事が出来る。その提案を受けて實生は数瞬思案すると、彼は海へと流れ出る小川、その周囲に広がる熱帯雨林を指し示す。
「オーケー、それじゃあ俺は水路とその周囲を伝って進むつもりだ。可能であれば、監視網から敵の布陣を割り出したいかな。そちらはどうする?」
「なら、私は水中から侵入を試みよう。基地自体は内陸部だが、そこに通じる水路があるというなら利用しない手はない。お互いに基地内で合流できればベストか」
一方、対するラキアは島の周囲に広がる海へと向き直る。島の中央から伸びる水路は幾つもある筈だ。別々の方向から挑めば、万が一見つかった際も被害を最小限に抑えられるだろう。そうして両者は手短に各々の侵入経路をすり合わせた後、二手に分かれて行動を開始するのであった。
(……警戒網に隙がある、と言うのはどうやら希望的観測ではなかったらしい。よほど潜伏が露見する事を嫌っているのか、やはり陸上だと海と勝手が違うのか。なにはともあれ、こちらにとっては好都合だ)
鬱蒼と茂る緑の中に身を隠しながら、狙撃手は油断なく周囲へ注意を払いつつ進んでゆく。時折立ち止まっているのは、狙撃銃のスコープや持ち込んだ双眼鏡によって遠方の様子を窺い、侵入経路の策定と偵察を行っているらしい。見通しは決して良いと言えないが、それでも今のところ哨戒中の兵士などには出会さずに済んでいた。
ただ一方、鳥や小動物は抜け目なく排除したのだろう。周囲は風に木の葉が擦れる音が響くばかりで、獣の鳴き声一つ聞こえない。不自然過ぎる静寂さが、却ってこの場所に人為的な手が入っている事を如実に示している。
(方向感覚を狂わされない様に注意しないと。ぱっと見、景色の変化なんてほぼ無いようなものだからね。堂々巡りするような事態だけは避けたいな)
人はまっすぐ歩いている様に思っていても、視界による補正を失えば左右に片寄り始め、その果てに同じところを何度も通ってしまう事も珍しくはない。ちらと定期的に頭上を見上げるのは、太陽の位置から進むべき方角を確かめているのか。
そんな折、ふと實生の耳朶が微かな水音を捉えた。川のせせらぎとはまた異なる音に、復讐者はそっと足音を殺しながらそちらへ近づき様子を窺う。その先に在ったのは貯水池。一見すると何の変哲もない濁り池だが、よくよく目を凝らせば黒い影が時たまヒレを覗かせている。あれこそ、警戒中のトループス級に他なるまい。
(貯水池は哨戒兵の詰所の様なものなのかな。ともあれ、敵が居ると言う事は基地も近いはずだ)
此処であれらを相手取るのは得策ではない。いまは奇襲前の情報収集に専念すべきだ。斯くして狙撃手はそっと息を顰めながら、敵部隊の動きを注視してゆくのであった。
一方、時は暫し遡り。水路からの侵入を企図していたラキアは経路に適した場所を探すべく、一先ず迂回する様に島の外周から海へと繰り出していた。海中に身体の殆どを沈めつつ、頭の上半分だけを海面から覗かせ視線を巡らせてゆく。
(硫黄島が落ちているのは知っているだろう。相手からすれば、そこを足掛かりに攻めて来ると考える筈。であれば監視もそちら方角が強いか? 念には念を入れて、南側から内陸部へ繋がる水路や河を捜索しよう)
このマリアナ諸島制圧作戦も、硫黄島を押さえていた翔鶴の撃破を踏まえた上での一手である。である以上、敵の注意がそちら方面に向いていたとしてもおかしくはあるまい。そう読んだ悪魔は相手の裏を掻くように、大きく迂回しながら硫黄島とは逆方向へと回り込む。
果たして、そんな予想はどうやら正しかったようだ。緑の中にチラと、何かが動くのを視界の端で捉える。恐らく、偵察のトループス級だろう。露見を恐れてはいても、最低限の監視要員くらいは割いているらしい。
(今ので発見された可能性は低いだろうが、念のため水深は深めに見ておくべきか。水が濁っているか、水量の多い水路があれば一番だが……っと?)
ラキアは発見されぬよう全身を水中へ沈めつつ進んでゆくと、微かな水の流れを感じ取る。そちらを見れば海へと流れ込む水路が一本あった。流れの勢い的にも丁度良さそうだと、彼女はそれを経路として見定める。
そうして河口から川底すれすれを這う様に遡上してゆく。幸い、冥海機からすれば自分たちの領域である水中から侵入して来るとは思っても居ないのだろう。特に不審な兆候も無く、島の奥深くまで進むことが出来た。またその過程で、復讐者はこの水路に手が加えられている事にも気付く。
(幅や深さを広げられているのか? となれば、このまま基地まで繋がっていてもおかしくはない。だが、痛し痒しだな。時間は掛けたくないが、無為無策で突っ込むのも得策とは言えん)
パシャリ、と。ラキアは一旦水路から地上へ上がると、周囲の梢に身を隠す。ちらと流れの先を見やれば、簡素な鉄条網に覆われた拠点が見えた。十中八九、あれが目的の基地とみて相違ない。
(暫し様子を窺った後、此方への警戒が少しでも薄いタイミングで一気に突入し仕掛けよう)
上手く事が運んでいれば、仲間もそろそろ潜入に成功しているはずだ。異変を察知すればきっと上手く立ち回ってくれるだろう。無論、その逆も然りだ。斯くして彼女もまた青年同様、一先ず敵陣を窺いながら機を探ってゆくのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
●奇襲の優位
復讐者たちは無事に熱帯雨林や水路を潜り抜け、島内中央部に設けられた冥海機側の基地へと辿り着く。周囲は鉄条網に覆われており、兵舎や武器庫と思しき幾つかの建物が見える。また、それらの間を縫うように水路が張り巡らされており、開けた場所には点々と貯水池が存在していた。
本来の用途としては拠点から速やかに島外へ出撃する為のものだろうが、いざこの場を戦場とする場合には海原ほどではないにしろ、冥海機たちの機動力を底上してしまう可能性が高い。とは言え、動ける場所は限定的だ。冷静に立ち回れば相手の居場所を把握する事も不可能ではないだろう。
「定時報告……ディアボロスはまだ来ないでありますな」
「来ないに越したことは無し。我らの役割はいずれ発動される反攻作戦時の攪乱戦力でありますから」
ちらと周囲を窺えば、基地内に詰めているトループス級の姿が見える。アヴァタール級はどこかの建物内にでも籠っているのだろうか。どうやら復讐者の存在には依然として気付いていないらしい。これならば奇襲で先手を取る事も容易なはず。
さて、どう仕掛けるべきか。息を潜めながら、復讐者たちは静かに臨戦態勢を整えてゆくのであった。
水蓮寺・颯
水路に、溜池。
流石は冥海機達の拠点、僕達には動きづらく、彼らには有利に整えてありますね。
でも海の上で囲まれるのに比べればずっと浅く狭いのですから、やりようはあるはずです。
光学迷彩を纏い、水路に近付く。
敵は…見えるところにはいないかな。それなら。
『其は――』
音を出してはせっかくの奇襲が台無しです。
可聴域外へ調整して…
水中では音の振動は空気より早く伝わると聞きました。
ならば音の刃も、疾く敵に届くはず。
指先をそっと水路に浸して、現れた絃を弾く。
『――指切れ、“金屋小鞠太夫十三絃”』
出てきてくれればこちらのもの。
潜まれれば厄介ですが、手傷を負わせれば発見にも有利に働くはずです。
しまっ……うぐ…っ!
水の中に引き摺り込まれたら手も足も出ない――いえ、指先だけなら!
手繰り寄せた筝の絃を引き絞る。
組み付くその手首を傷付けられれば上々、然らでもこの場所が仲間に伝われば…!
アドリブ、連携 歓迎です
一角・實生
引き続き【光学迷彩】の効果を使い熱帯雨林に身を潜め、陸地側から奇襲準備
仲間もどうやら基地へ辿り着いたらしい
タイミングを合わせ同時に奇襲を行いたいな
仲間のパラドクス発動に合わせる形で【通信障害】を使おう
ディアボロスの襲撃だと分かっても、人数や位置が把握できないうちは基地内が短時間であれ混乱するはず
色めき立つのならその気概ごと吹き飛ばす
パラドクスを発動し、鉄条網ごとクロノヴェーダをなぎ倒すよ
【ダメージアップ】の効果ものせて一気に攻め入りたいな
グラナトゥムで敵の機関砲を破壊し反撃を封じながら、或いは建物を遮蔽物にしながら仲間との合流を目指そう
敵は死兵だという
ならばその決意を圧倒的な火力で捻じ伏せるだけだ
武器庫には火薬もあるだろうから序盤は極力近づかない
爆発・炎上した場合、俺の位置が容易に特定されてしまう
一対多数の状況を長時間つくらないよう、規模の大きな貯水池や水路を避けながら戦闘していくよ
仲間の姿が見えたら援護射撃を行い合流を伝えよう
……時間稼ぎは阻止できただろうか
残すは一体のみだ
●誰にとっての予想外
(……水路に、溜池。流石は冥海機達の拠点、僕達には動きづらく、彼らには有利に整えてありますね。飽くまでも水辺で戦いたがるのは種族的な性でしょうか?)
先行した仲間の切り拓いた経路を辿り、冥海機の基地へと辿り着いた水蓮寺・颯(灼がて白く・g08972)は周囲の一種異様な光景に合理性を見出していた。陸で海の様に動く為にはどうするか、と言う問いに対する一つの答えだろう。或いはもしも地形的条件や水量に余裕があれば、より巨大な湿地帯でも作り上げていた可能性もある。その前に奇襲できたのは正に僥倖と言っても良い。
(でも海の上で囲まれるのに比べればずっと浅く狭いのですから、やりようはあるはずです。肝心の敵は……見えるところにはいないかな。それなら)
ちらと周囲を見やれば、幸いにもトループス級の姿は見当たらない。奇襲は最初の一手が肝心だ。まだ見つかる気配が無いのであれば、必要以上に焦る理由もない。述師はそっと手近に流れる水路へと近づき、指先を川面へ浸す。
土地柄と季節故に温いと呼べる温度だったが、別に涼を求めていた訳では無い。これから発動せんとしている述は水と相性が良かったのだ。そうして乙女は古書を開き、目的の頁を捲り始めてゆく。
「…………?」
そこでふと、彼女は不意にある気配を感じ取り小首を傾げた。恐らくは先行した復讐者なのだろうが、どこかなじみ深い既視感を覚えたのである。しかし、今は隠密行動中。不用意に連絡を取っては此方の存在が露呈しかねない。颯は気を取り直すと、改めて古書を開き紙面へと視線を走らせてゆく。
「其は嘗て傾国の太夫が爪弾きし十三絃筝。手練手管に身を委ね、響く音色は琴線震わし情を紡ぐ。今ひとたび目を醒まし、その呪禍を示し給え」
祝詞に合わせ、スゥと実像を結ぶは長方形の木塊。その正体は十三の弦を持つ箏であった。彼女は実体化したそれへと手を伸ばし、各弦を張っている柱の位置を調節してゆく。筝は楽器であり、当然ながら音を出す物。だがそれだと今は少しばかり具合が悪いと、彼女は音域を可聴域外まで引き上げる。
(水中では音の振動は空気より早く伝わると聞きました。ならば音の刃も疾く、かつ遠くの敵に届くはず。わざわざこんな手の込んだ工事を行ったのですから、まさか利用していないという事はないでしょう)
水は空気よりも早く、かつ遠くまで音を伝達するというのは有名な話だ。鯨の発する唄は数百キロ先まで伝わり、会話を成立させるとも言う。況や、この狭い範囲でどうして届かぬ道理が在ろう。
「――指切れ、“金屋小鞠太夫十三絃”」
斯くして乙女が弦を弾いた瞬間、不可視不知の音刃が水路を伝い疾走してゆくのであった。
(……基地内の空気が変わった。どうやら辿り着いた仲間が先に仕掛けたらしい。出来れば、奇襲効果が薄れないうちにこちらも動くべきだろうね。取り敢えず通信は妨害しておくとして、だ)
別の場所で術師が仕掛けたのとほぼ同時刻。潜伏していた一角・實生(深い潭・g00995)もまた周囲の異変を敏感に感じ取っていた。慌ただしく冥海機たちが駆け回り、水路には黒い影がひっきりなしに行き来している。
「ディアボスの襲撃であります!? 監視の目が不十分だったとはいえ、潜入された事にも気付かなかったのでありますか!?」
「各分隊はそれぞれの人員掌握を! こんな有り様ではまともに対処など出来ないでありますッ!」
浮足立つ敵軍に立て直す余裕を与えぬため情報共有手段を阻害しながら、彼はそっと相手の様子を窺う。どうやら無線が使えなくなった結果、襲撃して来た復讐者の位置や戦力配置などの指示が入り乱れている様だ。取り敢えず各個撃破されぬ様、まずは小集団ごとに纏まろうとしているらしい。
(敵は死兵だという。そのせいか、混乱状態なれども戦意は十分……ならばその決意を圧倒的な火力で捻じ伏せるだけだ。色めき立つのならその気概ごと吹き飛ばす)
分散した戦力を集結させんとする判断は正しい。尤も、それには『基本的には』という但し書きがつく。こちらの存在が露呈しておらず、かつ多数を打ち倒せる攻撃手段を持っていれば、その行動は単なる一網打尽の好機でしかないのだ。
「……昏冥のちから。其れは時に渥地へ誘うものとなる」
ふわりと、音もなく青年の背に生えし一対の翼が開かれる。一見するとそれはなんの異常も無いが、よくよく目を凝らせば陽炎の如く周囲を歪ませているのが分かるだろう。實生は翼を大きく翼を撓めるや、勢いよく敵陣目掛けて打つ。
すると不可視の衝撃波がまるで砲弾の如く放たれ、密集していたトループス級を一息に吹き飛ばした。運悪く直撃した者はそのまま沈黙し、吹き飛ばされた者とて無傷とはいかぬ。
「が、あ……!? 別動隊、でありますかッ! 不味い、弾幕を張って牽制を……」
「ッ!? 動きが鈍いであります! おのれ、もう一方のディアボロスは包囲したらしいというのに!」
襲撃者の存在を察知し腰部の搭載機銃で反撃を試みるも、思う様に身体が動かない。衝撃波は濃密な昏冥、即ち闇そのもの。それが敵を蝕み、麻痺にも似た症状を発生させているのだ。
そんな状態でもなんとか機銃射撃を行うものの、照準の甘い弾丸に当たるほど青年も甘くはない。愛用の狙撃銃を器用に操り、トドメの弾丸を叩き込んで無力化してゆく。近くには武器庫もあるだろうが、それを吹き飛ばせばこちらの位置が割れてしまう。せっかく通信を阻害したのにそれでは意味が無い。加えて、先程のトループス級が気になる事を言っていた。
(もう一方のディアボロスは包囲した、か。窮地に陥っているようなら、助けに行かないとね?)
斯くして狙撃手は貯水池や水路を避けつつ、建物を利用して仲間の元へと向かうのであった。
(うぐっ!? 油断していたつもりは、ありませんでしたが……正に死兵ですね)
一方、その頃。先に仕掛けていた颯は敵の言葉通り、思わぬ苦戦を強いられていた。水路を伝わせた斬撃波で数体の敵を倒す事には成功したのだが、我が身を犠牲に吶喊して来た個体が乙女を水中へ引きずり込み、そのまま水路を流れて戦場を貯水池に移行させたのである。
水中適応の残留効果こそあるものの、パラドクスはそれに優越する。極めて限定的ながらも海と同じ地の利を得て、トループス級たちは犠牲を度外視した戦い振りで復讐者を溺死させんと駆り立てていたのだ。
(水の中は冥海機、それも潜水艦型の独壇場。一度引き摺り込まれたら手も足も出ない――いえ、例えそうでも、指先だけなら!)
口の端から空気の泡が漏れ、思考が鈍り始める。だが述師は不明瞭な視界の中、指の感覚だけを頼りに顕現させた箏を探り、果たして張り詰めた糸に触れた瞬間、それを渾身の力で爪弾いた。
前述の通り、水は空気よりも音を早く遠くへ伝播する。況や、海と比べて遥かに狭い貯水地内でそれから逃れる事など不可能に等しい。果たして、復讐者に殺到していたトループス級は一瞬にして鉄と油の残骸と化して更に水を濁らせていった。
「っ、ぷは……!」
そこで漸く、颯は水面から顔を出して肺腑へ空気を取り込むことが出来た。だが水中と窒息、二重の危機から逃れてほんの僅かに警戒が緩んだのか。彼女の背後から瀕死のトループス級が飛び出し、死に際の道連れを目論んだ、のだが。
「成る程、ここか……って、もしかして水蓮寺さん?」
「えっ、あれ、實生さん!? あ、ありがとうございます!」
その狙いも眉間に叩き込まれた弾丸によって呆気なく潰える。鳴り響いた銃声に驚いて乙女がそちらを見やると、その先には同じような表情を浮かべる青年の姿があった。恐らく、当初彼女が感じていた気配の正体が彼なのだろう。
一方、狙撃手もてっきり潜入時に顔を合わせた仲間が窮地に陥っているのかと思っていたらしい。互いに詳細は分からねど、二人は共にクスリと笑みを零す。斯くして狙撃手は手を差し伸べ、術師はそれを取って貯水池から引き上げて貰うのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
●孤高の指揮官
「……電光石火とは正にこの事か。異変を察知し押っ取り刀で駆けつけたら、まさか部下が全滅しているとは。業腹だが、逆にそれでこそと喝采している自分が居る。全く、難儀な事だ」
復讐者たちの奇襲により、基地に詰めていたトループス級は瞬く間に鎮圧された。無人となった基地には海戦装の残骸が転がり、流れる水は漏れ出た油で化学的な色彩を放っている。そんな惨状の中を、指揮官たるアヴァタール級が歩いてゆく。
部下の成れの果てを一瞥しながらも、その声音に怒りの色は無い。元より彼女らは死を覚悟した者。戦いの中で散るならば任務を果たしたと言えるだろう。惜しむらくは時間を稼げなかった事だが、裏を返せばそれほどの強者という事でもある。その事実にアヴァタール級は獰猛な笑みを浮かべていった。
「本来であれば私が真っ先に先陣を切るつもりだったのだがな。まぁ、こうなってしまっては最早詮無い事だ。重巡洋艦『那智』、死出の餞別にディアボロスの命を頂こうか」
宣戦布告と共に周囲へ浮かぶは氷で出来た梶木の群れ。それを引き連れたアヴァタール級は、真っ向から復讐者たちと相対するのであった。
月鏡・サヨコ
マリアナ諸島の攻略にかけられる時間は長いとは言えない
それでも、大反攻作戦の阻止以降の戦線を進める上で制圧は必須
ここからは私も助力させてもらう
……往こう、桂
綿密に連携を練ってきた者達がいるようだから、決定打は彼らに任せて私は先鋒を務める
撹乱的な攻め方で敵に隙を作り、その後に放たれる技に回す注意力を奪おう
『人狗一心・怪力光線砲』を仕掛ける
最初に見せるのは、《巡洋戦艦海戦装『黒姫』》から放つ機銃の弾幕と炸裂する砲弾
だがそれは牽制であり、本命は桂の《『怪力光線砲『狗號』》から放つビーム砲撃だ
私自身の攻撃が敵の目を引き付けている内に、桂を基地内の荷物や壁、或いは冥海機の残骸の影に隠れさせる
あとは身を伏せながら精密に狙いをつけた桂が、機を見て獲物を撃ち抜くだろう
……後でおやつを買ってあげないと
召喚された連装砲は、発砲される前に海戦装からの砲撃で出来るだけ破壊
阻止しきれず放たれた弾を《海戦装用増設防盾》で受け止め、身体への直撃を防ぐ
命を費やした時間稼ぎ。貴様達はいつもそうだな
……速やかに終わらせよう
●伏兵の立ち回り
復讐者の後背を脅かす潜伏兵力と言う役割は既に瓦解した。如何に強力な戦闘力を持つとはいえ、戦いとはやはり数だ。アヴァタール級単騎で戦況を覆す事など最早不可能。だが、眼前の重巡洋艦は獰猛な笑みを浮かべて相対している。そんな敵の前へと歩み出ながら、月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)は油断なく思考を巡らせてゆく。
(マリアナ諸島の攻略にかけられる時間は長いとは言えない。徒に時間を与えれば、冥海機は間違いなく体制を立て直すだろう。それでも、大反攻作戦の阻止以降の戦線を進める上で制圧は必須だ)
レイテ方面ではジェネラル級四体との戦端が開かれつつあるという情報も入っており、対ヤ・ウマトの攻略状況は目まぐるしく変化が続いている。尤も、それは復讐者にとっては良い流れだ。故にこそ、このまま手を緩める事無く歩を進めたいところだった。
「ここからは私も助力させてもらう。綿密に連携を練ってきた者達も居るようだからな。決定打は彼らに任せて、私は先鋒を務めよう……往こう、桂」
彼女は友たる軍犬を引き連れ、スラリと腰に佩いた身の丈ほどの刃を鞘走らせる。それに呼応するかの如く、那智も軍刀を手に構えてゆく。その姿勢は『試合に負けても勝負に勝つ』と言った所か。戦略・戦術で敗れようとも、この場における戦闘では一矢報いる、と。
「逆境を覆してこそ華、強敵を切り伏せてこそ誉れ。ディアボロス、相手にとって不足なし!」
果たして重巡は勢いよく踏み込むや、大上段に構えた刃を振り下ろす。それを手にした得物で受け止めながら、サヨコは身に纏いし巡洋戦艦型海戦装を起動。機銃弾で弾幕を形成しつつ、砲弾を織り交ぜる事で相手を引き剥がす。
(相手は死兵だ、端から自殺に付き合ってやる気なぞ毛頭ない。まずは撹乱的な攻め方で敵に隙を作り、その後に放たれる技に回す注意力を奪おう。死狂いの類だ、煽れば煽るだけのめり込んで来るはず)
彼女の狙いはこの後へ続く者たちに向けた下準備。どうやらこのアヴァタール級は直情的な性格で小細工を弄せるような手合いではなさそうだ。である以上、注意を惹き付けてやればそれだけ視野が狭くなる可能性が高い。果たして、無数の砲弾を浴びた相手は呵々と大笑し始めた。
「はははは、そうこなくてはな! もう事此処に至れば隠密も何も無いッ! さぁ、最期くらい派手に行かせて貰うぞ!」
重巡が手にした得物を横薙ぎに払うと同時に、虚空へ無数の連装式主砲が展開。お返しとばかりに、照準もそこそこに一斉砲撃を敢行してゆく。点ではなく面での制圧射によって基地内部は濃密な火力で塗り潰される。
サヨコも応射し幾つかの連装砲を破壊するが焼け石に水だ。咄嗟に防循を展開して身を守るも、立て続けに炸裂する衝撃が少女の痩躯を強かに打ち据える。捨て石同然の境遇だが、それ故にある種吹っ切れているのかもしれない。
「この身は既に死体も同じ。ならば、どうして戦いを恐れ、後塵を拝す道理があろうか!」
「命を費やした時間稼ぎ、か。貴様達はいつもそうだな。そんなもの、窮余の策に過ぎない……速やかに終わらせよう」
「大言壮語はいったいどちらが……ッ!?」
苛立ちと呆れの入り混じった表情を浮かべる復讐者へ、アヴァタール級が反駁しかけた瞬間。半ば直感的に身を捩る冥海機目掛け、一条の光線が撃ち込まれた。身を焼く激痛に顔を顰めながら振り返った先に居たのは、背部の砲から残煙を立ち昇らせた軍犬の姿。そう、サヨコは自らを囮とし、砲撃に紛れて回り込ませたのだ。
「伏兵とは本来、こう使うものだ……さて、後でおやつを買ってあげないと」
斯くして、少女は自らの役目を果たした軍犬へと労いの言葉を掛けてやるのであった。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【動物の友】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
一角・實生
水蓮寺さん(g08972)と
お眼鏡に叶ったようで良かった
……とはいえ、こちらも楽勝で辿り着けたとは言い難いな
敵と刺し違えてもという思考は好きじゃない
けれどそれ程の覚悟なら、こちらも全力でいかねば敵の思惑通り時間稼ぎをさせるだけ
【水面走行】と【水中適応】を使い、敵の地の利を可能な限り無効化して挑もう
時間稼ぎを防ぐにはこちらから攻める必要がある
水蓮寺さんの提案には了解、とひとこと
幸いここは十分な水に満ちている
敵を侵蝕する己の力を水に行き渡らせたパラドクスを発動するよ
敵の勢いに怖気づく水蓮寺さんを見れば前へ出よう
【反撃アップ】の効果をのせた水壁で斬撃と梶木本体を弾き飛ばしながら敵へ進む
多少の負傷は織り込み済みだよ
一秒でも奴らに時間稼ぎをさせたくない
覚悟と気迫に怖気づくなよ、分かっていただろ
そう彼女に発破をかけて
アヴァタール級へ【ダメージアップ】の効果をのせ狙いすました攻撃を
制圧のために障害となる施設は破壊してしまいたいな
肩……肩は身長差を考えると却ってお互い負担になるような
背中を貸そうか?
水蓮寺・颯
實生さん(g00995)と
あれは氷の…魚?
全身ずぶ濡れの上、周囲も先程までの戦闘で水浸し
袖や足元を凍らせられるだけで致命的ですね
ならば……
古書を読み上げる毎に顕現するのは、柄も弦も白い弓
實生さん、敵の防御を削ってくださいませんか?
あの魚の攻撃は僕が、……絶対に当てさせませんから!
實生さんが攻撃を担ってくれるなら、僕は敵の動きにだけ集中すればいい
着弾の瞬間に結界を張れば、冷気からも實生さんを守れるはず
本物の魚以上に素早い魚雷の動きを見逃すまいと、神経を研ぎ澄ませます
ぅくっ!!……間に、合った…
とはいえ、目前に魚雷が迫るのは怖くて膝が震える
でも……生憎僕たちは我慢強い方なんです
貴方の防御が崩れるまで待つくらい…造作もありません!
『――射返せ、“土岐田弎十郎”!』
實生さん、お見事で…っ、すみません…集中が途切れて
肩、貸していただけると嬉しいです
せな、え?そ、それってつまり…お、おんぶっ!?
恥ずかしすぎて周りを見られなくなりながら、實生さんの指示してくれた方向へ建造物分解を放って施設を破壊します
●背を預け、身を任せ
「っ……!? もし戦場が海だったなら、なんて愚痴るのは泣き言か。やはりディアボロス、侮りがたし」
主従連携による強烈な一撃を受けたアヴァタール級は、身体をよろめかせながら歯噛みする。陸上でも活動可能とは言え、やはり本領は大洋でこそ発揮されるもの。増設した水場を以てしてもトループス級が敗れた今、より有利な戦場を求めるのも無理はない。だが、今さら背を向けて移動する事そのものがそれこそ自殺行為であると相手も理解していた。
「お眼鏡に叶ったようで何よりだ……とはいえ、こちらも楽勝で辿り着けたとは言い難いな。あの限られた水量でも手古摺ったんだ。海になんて行かせるつもりは無い」
そんな直感を裏付ける様に、一角・實生(深い潭・g00995)は槓桿を引いてこれ見よがしに射撃済みの薬莢を排莢して見せる。後ろを見せれば狙い撃つという言外の圧力だ。この至近距離で外す事など万が一にもあり得ないだろう。一方、その横では先ほど合流した水蓮寺・颯(灼がて白く・g08972)が注意深く相手の様子を観察していた。
(あれは氷の……魚? いまは全身ずぶ濡れの上、周囲も先程までの戦闘で水浸し。袖や足元を凍らせられるだけで致命的ですね)
貯水池に引きずり込まれた影響で乙女の全身は依然として濡れ鼠であり、湿度の高い熱帯性気候も相まって渇きも悪い。もしも重巡が周囲に侍らせている氷の梶木に触れられれば、余り愉快でない状況になる。なればと、彼女は腰に吊った古書を開く。
「其は嘗て百鬼夜行を祓いし破魔の弓。鳴弦、邪鬼を退けん。今ひとたび目を醒まし、その御業を成し給え」
紡がれる祝詞に顕現するは、然る寺に報じられし一張の弓。古来より弦の鳴り響く音色は邪なるものを祓うとされる。況や、害意脅威と相対するならば最適の護りと言えよう。軽く指先で爪弾けば、澄んだ音が響く。と同時に、まるでソナーに当てられたが如く梶木が微かに身を震わせていた。
「實生さん、敵の防御を削ってくださいませんか? あの魚の攻撃は僕が……絶対に当てさせませんから!」
「……了解」
敵に悟られぬ様、術師の提案は蚊の鳴く様な囁き声。対する狙撃手はただ一言肯定を返しながら、敵へと一歩踏み出し距離を詰めてゆく。敵は好戦的だがそれでも指揮官だ。死兵であっても、否、死兵だからこそ最期まで足掻いてくるだろう。
(敵と刺し違えても、という思考は好きじゃない。けれどそれ程の覚悟なら、こちらも全力でいかねば敵の思惑通り時間稼ぎをさせるだけか。時間稼ぎを防ぐにはこちらから攻める必要がある……だが幸い、ここは十分な水に満ちている)
地の利を得る為の一手だったのだろうが、それは復讐者が利用できないという事を意味しない。ちらと周囲を横目で一瞥した後、實生は徐に手にした狙撃銃の銃口を頭上へと向けて見せる。
「む、誘っているのか? 罠であろうと構わん、乗ってやろう!」
そんな仕草が引き金となり、アヴァタール級もまた動き出す。主の命令に従い、氷で出来た梶木たちが一斉に突撃を開始する。大きく伸びた剣状の吻に冷気を纏わせ、復讐者を串刺しにせんと殺到してゆく。貫かれれば血が零れ落ちる間もなく氷と化すだろう。
迫り来る脅威を前にし、颯の膝へ無意識に震えが走る。そんな小さな乙女を背に庇いながら、青年は狙撃銃のストックで地面を叩く。瞬間、周囲に満ちた水が激しく唸り始める。何事かと重巡が眉根を顰めた刹那、一帯の水が寄り集まり巨大な壁を形成した。
「水を利用した防壁か。良い手だ。しかし忘れたか? 我らは冥海機で、コイツラは魚だぞッ!」
「多少の負傷なら織り込み済みだよ。一秒でもお前たちに時間稼ぎをさせたくないからね」
深海を思わせる闇色の海水壁に対し、梶木たちは意に介せず吶喊。見た目以上の圧力に幾つかが圧壊しながらも突破に成功、そのまま實生へと殺到してゆく。しかし素早く得物を銃剣に持ち替えていた青年は襲い来る攻撃を切り捨てる。
無論、無傷とは言えぬ。砕け散ってもなお破片すら切れ味鋭く、引き裂かれた傷口が瞬く間に霜で覆われてしまう。併せて颯が弦を鳴らしているも、その指使いはたどたどしい。だが距離を詰めるべく踏み込む青年は、敢えて気遣いではなく挑発的な物言いを背後へと投げた。
「……相手の覚悟と気迫に怖気づくなよ。分かっていただろ?」
「っ!?」
だが、それは信頼の裏返しでもある。その位置を悟った乙女は、小さく息を吐いて心を落ち着かせてゆく。
(實生さんが攻撃を担ってくれるなら、僕は敵の動きにだけ集中すればいい。着弾の瞬間に結界を張れば、冷気からも實生さんを守れるはず……!)
距離が詰まるにつれ、相手の攻撃から着弾までの間隔も短くなる。實生が展開する海水壁も散らされ、凍てつき、徐々に体積を減少させてしまう。故にこそ、鳴弦による結界の重要性が増すのだ。
自らの為でなく、仲間の為に。そう思えば恐怖と混乱は波が引くように遠退いてゆく。徐々にだが、防御タイミングの歯車が噛み合い始め、そして。
「ぅくっ!! ……間に、合った……ッ!」
「まさか、ここまで肉薄されるとはな!」
青年はアヴァタール級を必殺の射程圏内へと捉えた。正に魚群と呼べる猛攻を凌ぎ切った復讐者の姿に焦燥交じりの笑みを浮かべる重巡。対して己の役目を果たした述師が汗を散らしながら叫ぶ。
「……生憎、僕たちは我慢強い方なんです。だから、貴方の防御が崩れるまで待つくらい…造作もありません!」
――射返せ、“土岐田弎十郎”!
咄嗟に軍刀を振るう那智だが、寸分の狂いもなく形成された結界によって弾かれ、切っ先は虚しく虚空を断つのみ。そうして生じた攻撃後の隙へと、狙撃手はトドメの一撃を叩き込む。
「せめてもの手向けだ……最期は海に沈めてやる」
銃剣が相手の心臓部を穿ち貫くと共に、解放された膨大な水量が溢れ出す。それはアヴァタール級も、トループス級たちの残骸も纏めて押し流してゆく。波が引いた時、戦場からは全ての冥海機が消失していたのであった。
斯くしてマリアナ諸島制圧作戦、その内の一つは此処に成功した。後は基地施設も破壊し、再度の軍事転用を不可能にすれば完了だ。戦闘の疲労に加えて高温多湿な環境も相まって過ごしやすい場所とは言い難い為、手早く終わせるべく實生は仲間に声を掛けようとした、のだが。
「實生さん、お見事で……っ!」
「水蓮寺さん!?」
「すみません。ちょっと、集中が途切れて……肩、貸していただけると嬉しいです」
ふらりと、乙女の小さな体躯が崩れかけてしまう。咄嗟に抱き留める青年に対して、颯はバツが悪そうな苦笑を浮かべていた。彼女の照れくさそうな申し出にふむと實生は思案すると、不意にその場へ屈んで背を向ける。その意図が分からず小首を傾げる仲間へ、彼は事も無げにこう宣った。
「肩……肩は身長差を考えると却ってお互い負担になりそうだからね。背中を貸そうか?」
「せな、え? そ、それってつまり……お、おんぶっ!?」
両者の身長差は二倍近く、その申し出も合理的ではある。だが、それはそれとして思う所があるのだろう。乙女は大きな背中を前にして数瞬逡巡した後、おずおずとそこへ体重を預けた。
それを受けて青年が立ち上がれば、普段よりも遥かに高い場所へと視点がある……のだが、どうやらそれどころではないらしい。顔を見られない態勢で良かったと颯は心底安堵する。
斯くして二人は残った基地施設を解体し終えると、パラドクストレインに乗って新宿島へと帰還を果たすのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水面走行】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【アヴォイド】がLV2になった!