リプレイ
旗楽・清政
【翠緑の師弟】
やむを得ず御味方を捨石や犠牲にしたりして勝利を得るのならば、
乱世の将として理解せぬでもない。
されど、冥海機を増やすために味方の零式英霊機を自ら手にかけると言うのは、
聞くに業腹な話よ。斯様な企み、やらせるつもりはなし。
さて、此度は常より連れ回しておるエスメラルダと共に、
ディアボロスに覚醒して程ない子孫、嘉内も連れてきておる。
嘉内にとっては初めての戦場なれど、パラドクスを用いて戦うわけでは無い故、
場数を踏むには丁度良いでござろう。
さて、それがしは【水中適応】を敷いたらば、嘉内の【飛翔】によって
高度を取って飛行し、敢えて敵の砲火の的になると致そう。
その砲火はどうせ通じぬし、平然としておる様さえ見せ付けてくれる。
何なら、敵艦艇の砲塔を片鎌槍で斬り払うなり、ビームガトリングで潰すなりもしてくれよう。
その間にエスメラルダと嘉内が敵の艦艇を航行不能にしたならば、
「退けい! 最早貴様等がこの戦場に居っても、何ら役に立てることはなし!」と
あらん限りの【大声】で告げて、撤退を勧告すると致そう。

エスメラルダ・リベロ
【翠緑の師弟】
(常時軍人モード)
戦闘艦艇が撃沈すれば、零式英霊機や人間の乗員が死んで
新たな冥海機が生まれると言うのは既に聞いているが、
よもや自分達の手で彼等を殺めようとはな。
そんな企み、やらせる気はないさ。
さて、今回はディアボロスに覚醒したての清政殿の子孫、嘉内が参戦している。
やや頼りなく見えるのは新人故か育った時代故かは不明だが、
いずれにしてもかつての私がそうであったように、
復讐者として鍛えてやろう。弟弟子が出来た気分だな。
「今回は私達がダメージを受けることは無い。気楽に、かつ慎重にな」
嘉内にはそう声をかけておこう。
さて、私は清政殿が敷いた【水中適応】と【光学迷彩】で
嘉内と共に水中を隠れながら戦闘艦艇へと進むぞ。
そして、艦艇自体は撃沈しないよう射角を調整した上で、
スクリュー目掛けて主砲を撃つ……としたいが、
それでも威力が過大かも知れない。
もし射角を調整しても撃沈の危険があるなら、
緑の大盾でスクリューをぶん殴って、物理的に破壊してやろう。
膂力で既に清政殿を超えているのは、伊達ではないよ!
旗楽・嘉内
【翠緑の師弟】
御先祖様がディアボロスとしてこの時代に流れ着き、
その御先祖に出遭ったら私までディアボロスに覚醒して、
さらにはパラドクストレインで連れ出されと、
そんなありのままを話したら何を言ってるのかわからねー、な状況には
困惑するのですが、それはさておき。
冥海機を生み出すために味方の戦闘艦艇を沈め、
零式英霊機や人間の乗員達を殺めようとは……!
「統率の外道」と言われた特攻さえ、これに比べたらまだマシだ。
直接、味方を手にかけるわけじゃないんだから。
ともあれ、今は令和だ。生命を簡単に喪わせるような真似は、させはしねえよ!
(熱血かつ好戦的な部分が徐々に表に出てくる)
さて、御先祖が囮になるための【飛翔】を敷いたら、
エスメラルダさんとともに【水中適応】【光学迷彩】で戦闘艦艇に接近だ。
エスメラルダさんにも言われたように、慎重に、射角を調整して
マギア・アステールでスクリューだけを狙い撃つ。
……つもりだけど、もしそれでも撃沈の危険があるようなら、
縛封鎖をスクリューに絡ませて無理矢理動きを止めてやる。
「……おい、何だあれは?」
冥海機ヤ・ウマト、レイテ沖を進む随伴艦隊。
海戦の熱狂に包まれた艦艇で、零式英霊機はふいにその言葉を洩らしていた。
事実、彼が見遣る先には不可思議な光景が見て取れる。海の上、艦艇と対峙する程の高さに一人の男が浮いているのだ。
男が身に纏うのは軍服ではない、鮮やかな緑色を帯びた甲冑である。手に持つ一本の槍と、その穂先よりもなお鋭い視線が向く先は、英霊機たちが搭乗する艦艇であった。
「何者だ、一体……」「まさか、あれが……!」
人智を越えた光景に、艦上に生じるざわめき。
それが次第に海戦の熱気に取って代わり始める中、誰が言うともなく英霊機たちは理解する。
あれこそが、これから自分たちの戦う相手――すなわち『復讐者』であることに。
「ふむ。どうやら、敵も気づいたか」
一方、そんな艦艇の様子を海上で見遣りながら、緑色の甲冑を帯びた復讐者は呟いた。
彼の名前は旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)。レイテ沖海戦の随伴艦隊を無力化するべく戦場へ駆けつけた彼は、今、飛翔の力を利用して海上を飛んでいる最中なのだ。
「敵の艦艇は二隻、三隻……成程、さほど多くは無し。これならば、苦戦の恐れは無いでござろう」
そうする間にも、見遣った先の艦艇は次々と砲塔を動かし、清政に狙いをつけ始めていた。
対する清政は獲物の槍を軽く構え、その穂先を最も近い戦艦へと突きつける。今回の清政の行動が敵への挑発を目的とする以上、パフォーマンスは多少派手なくらいで丁度よい。本気を出して撃沈しないよう、攻撃はパラドクスを用いずに行うことも無論忘れてはいない。
艦艇の攻撃準備が次々と整う中、清政は更なる挑発を浴びせるように海上をひらひらと舞い始めた。
見様によっては愚弄とも取られかねない行動。だがその実、清政の心に満ちるのは余裕ではなく怒りの感情だった。
(「冥海機どもめ……このような戦に零式英霊機を駆り出すとは、許せぬ」)
そう、清政は今大いに怒っている。冥海機たちの卑劣な振舞いに。
勝利のため、時として味方を切り捨てざるを得ない局面もあることは、乱世の将である彼も理解はしている。だが、冥海機の行う其れは、全く別のものだ。戦力を増やすために自身の味方を手にかける企みは、復讐者として、武将として、とうてい許せるものでは無かった。
そんな彼の前方、艦艇の砲撃が次々に開始される。
飛来して来る砲弾を難なく躱しながら、清政は眼下の海にちらと目を向けた。今頃は、別働隊の二人も行動を開始していることだろう。
「パラドクスを使えぬ相手なら、場数を踏むには最適。……期待しておるぞ」
後は機を見誤らぬよう、冷静に行動するのみ。
何も知らずに挑んで来る零式英霊機たちを戦場より逃がす為、清政は再び飛翔に集中し始めた。
「……頃合いだ。行くぞ、嘉内」
海上の戦闘が始まった丁度その頃。
清政の動きと併せるように、静寂に満ちた海中を水中適応で進んでいく二人の復讐者の姿があった。エスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)と旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・g11216)である。
先導を務めるのはエスメラルダ、嘉内はその後続だ。戦闘中の艦艇を底部から攻撃し、艦の戦闘能力を奪うこと――それが二人の目的であった。
幾多の死線を潜り抜けて来たエスメラルダは、光学迷彩を駆使した隠密行動も慣れたもので、すいすいと難なく艦隊の方に接近して行く。今回が初陣である嘉内とペースを合わせての行動だが、それでも遅れは一切感じられない。
「今回は私達がダメージを受けることは無い。気楽に、かつ慎重にな」
「あ、はい。頑張ります」
淡白な返事と共にぺこりと頭を下げる嘉内だが、それもある意味では仕方ない。少し前まで一介の一般人であった彼自身、まさか自分が復讐者になるとは思ってもいなかったのだから。
(「私の御先祖様だとかいう清政って人に出遭って、ディアボロスに覚醒して、そうして此処に連れ出されて……いやいや、我がことながら訳が分からない」)
嘉内自身、未だに困惑がないと言えば嘘になる。
だがそんな彼であっても、クロノヴェーダへの怒りは、他の仲間に何ら劣るものでは無かった。彼の心を満たすのは清政と同様、卑劣な手段で零式英霊機を殺めんとする冥海機への強い憤りであった。
(「『統率の外道』と言われた特攻さえ、目の前のこれに比べたらまだマシだ。生命を簡単に喪わせるような真似は、させはしねえよ!」)
嘉内の中で、熱き血潮が滾り始める。
冷たい海中を満たし始める、若き復讐者の熱気をエスメラルダは感じ取り、その顔に微笑みを浮かべた。
初陣に臨む新米は、どうやらやる気満々らしい。ならば此処から先、弟弟子をフォローするのは自分の仕事であろう。
(「とは言え、時折頼りなさが垣間見えるのは、新人故か育った時代故か……」)
いずれにしても、しっかり鍛えてやらねばなるまいとエスメラルダは思った。
初陣は誰しも通る道であり、誰もが初めはヒヨッコから始まるものだ。かつての自分がそうであったように。
どうやら、これからまた忙しくなりそうだ――頼もしさと嬉しさの入り混じった感情を胸に、エスメラルダは戦闘中の艦艇を射程に収めようとしていた。
エスメラルダと嘉内の二人が海中で接近を終える頃、海上では激しい砲撃戦が展開されていた。
いや、其れは最初から戦と呼べるものでは無い。
復讐者である清政と、一般兵器だけを頼りに戦う零式英霊機たち――両者の間には、パラドクス能力の有無と言う絶対的な力の有無が、壁となって立ちはだかっているのだから。
「むん!」
清政の片鎌槍が一閃する度、敵艦艇の砲塔が斬り落とされていく。
一方、先程から清政を狙って放たれている弾の嵐は、パラドクスの力に阻まれて毛一筋程も掠ることは無い。海上を飛び、接近しては砲塔を斬り落とし、そうしてまた海上を飛んでは挑発し。すでに零式英霊機たちの意識は、完全に清政に釘付けとなっている状況だ。
(「しかし……何とも、一方的な流れであるな」)
開始当初に意識した通り、艦艇を撃沈しないよう十分に注意してこの結果である。
とは言え、あくまで目の前の光景が一般人だからこそ可能な展開であることは、当然ながら清政も承知していた。
冥海機からの集中砲火を受けないよう飛翔の高度を常に調整しながらの行動は、相応に注意力を使う行動である。もうじき始まる冥海機との戦いでは、同様の行動は相応のハンデを強いられるであろう――そう確信する。
(「水中適応は発動済み故、加えるならば水面走行か……とは言え、まずは目の前の戦いが最優先にござる」)
なおも絶えず降り注ぐ砲火の中を、清政は平然と飛び続ける。
そうして1分と経たぬうち、攻撃を浴びせて来る艦艇から一隻、二隻と異変が生じ始めた。
どうやら、二人がやってくれたらしい。流れが大詰めを迎えつつある手応えに、清政の顔に力強い笑みが浮かんだ。
叩きつけるような衝撃が、二度、三度と海中に走る。
装着する緑の大盾で、標的のそれを跡形も無く破壊したことを確認し、エスメラルダは嘉内に合図を送った。
「よし、こっちは完了だ。次に行くぞ」
「分かりました。これで艦艇も、直に戦闘が不能になりますね」
そう言って嘉内が見遣ったのは、艦艇の船尾に取り付けられたスクリューであった。
一隻に複数あるそれらのうち、離脱に必要な最低限の数を残して全てを破壊。万が一にも英霊機たちが戦場へ戻らぬよう、二人は舵を含めて念入りに破壊していく。
舵を失った艦艇は進む方向を変えられない、言わばハンドルの効かない自動車のようなもの。艦の砲塔も清政の手で軒並み破壊された今、零式英霊機たちの艦は辛うじて鈍足での移動が出来るだけの状態だ。
「二隻目、完了。次……!」
新たな標的に定めた艦艇のスクリューが、嘉内のマギア・アステールから射出された星光の魔力で脆くも溶断される。それに合わせ舵を盾で叩き壊したエスメラルダの姿に、嘉内は思わず舌を巻いた。
「凄いですね。金属製の舵が、紙細工も同然に……」
「ふふ。膂力で既に清政殿を超えているのは、伊達ではないよ」
程なくして嘉内とエスメラルダは全ての舵を破壊し終え、無言でサムズアップを交わし合う。
これで、後は最後の仕上げを残すのみだ。それがもうじき成功で終わることを確信しながら、二人の復讐者は海上に浮かぶ艦艇を見上げるのであった。
そんな嘉内とエスメラルダの動きに、阿吽の呼吸を合わせるように。
艦艇の上では、今まさに其処へ降り立った清政の口から、零式英霊機たちへの勧告が行われていた。
「退けい! 最早貴様等がこの戦場に居っても、何ら役に立てることはなし!」
艦の砲塔は、すでに悉くが清政の手で破壊され使用不能に陥っている。スクリューの多くや舵まで失われた今となっては、戦場を満足に移動することも叶わない。そして何より、激しい砲撃戦を続けてなお傷一つない姿の清政は、零式英霊機たちの戦意を挫くに十分なものであった。
「繰り返す! 無駄な抵抗は止め、直ちにこの戦場より退け!」
なおも抵抗を試みようとしていた英霊機たちも、清政の放った言葉がとどめとなって、手の銃を次々に床へと置いた。
かくして艦艇で清政が勧告を行う度、英霊機を乗せた艦艇は戦闘海域から離脱していく。一人の犠牲者を出すことも無く、全ての艦艇が戦場から居なくなったことを確かめて、清政は海中の二人へ合図を送った。
――艦艇の無力化は成功だ。
その合図を受けて、程なくしてエスメラルダと嘉内が海上へと浮上する。
「よし、緒戦の結果は上々だな」
「そうですね。……とはいえ、次は中々に手強そうです」
そう言って嘉内が見遣ったのは、戦闘海域の中央付近に展開する冥海機『アストリア』と『松』の一団であった。
敵の一団には、ジェネラル級による砲撃支援という強力な援護がある。それを相手にした戦いは、間違いなく熾烈なものとなるだろう。
「……でも退く訳には行かない。全力で戦ってやる!」
「うむ。嘉内よ、その意気や良し。ではいざ参らん、準備は良いかエスメラルダ!」
「無論だ。この戦い、必ずや勝つ!」
休む間もなく始まる新たな戦い。それに勝利すべく、復讐者たちは次なる戦場へと向かっていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
玖珂・藤丸
ジェネラル級の砲撃が飛んでくる中での戦闘ですか。
厳しいものになるとは思いますが、次に繋げるためにも前線に立たなければなりませんね。
ここは仲間を信じて、砲撃の的となりましょう!
現場には【水面走行】を活用して向かいます。
まずは魚もどきたちの前に立って……。
冥海機であるはずですが、魚ではなく木ですねコイツら。初めて見ました……。
まぁそれは置いといて、《大声》で注目を集めましょう。
砲撃を行っているジェネラル級たちにも、存在が気づかれるとベストです。
「木を模した冥海機とは変な連中ですね。魚ですら無いのなら、“海の漢”の敵ではありません!」
このくらい言えれば良いでしょう。
挑発できればさっそく攻撃です。
【玖珂式想起術"火喰い鳥号の着水"】!
敵群の頭上から『火喰い鳥号』を模したエネルギー塊を生み出し、落下させます。
爆弾の散布による反撃に対しては、あえて敵群に突っ込み、自分で撒いた爆弾を喰らわせてやりましょう。
またジェネラル級の砲撃が私を狙って行っているようであれば、砲撃にも巻き込むことを狙います
随伴艦隊の無力化が完了した丁度その頃、戦闘海域では早くも戦いが始まろうとしていた。
待ち受ける冥海機は、『アストリア』率いる艦隊である。
指揮官を護衛する駆逐艦『松』の一隊を手始めに撃破すべく、襲撃を開始する復讐者たち。その嚆矢と為るのは、今まさに海面を疾駆していく海の漢――玖珂・藤丸(海の漢・g09877)であった。
「成程、ジェネラル級の砲撃が飛んでくる中での戦闘ですか」
前方に展開したトループス級の群れを見定めながら、藤丸は不敵に笑ってみせた。
発動した水面走行の効果は抜群だ。これから冥海機との戦闘を行う上でも、大いに役立ってくれることだろう。
とは言え、今回の戦場ではジェネラル級の砲撃援護を受けた敵を相手に戦わねば為らない。厳しい戦いになることは確実、それで尚、海を駆ける藤丸の速度は健在だ。次に繋げる為に戦うこと――其れこそが、彼が前線に立つ理由なのである。
「相手にとって不足なし。ここは仲間を信じて、砲撃の的となりましょう!」
そうして藤丸の前方、行く手を塞ぐように現れた駆逐艦『松』の群れに、彼は思わず目を見開いた。
艦隊の上に鎮座するのは、幾本もの巨大な松の木。その一本一本に存在する黄色い双眸が、一個の例外もなく藤丸を睨んでいるのだ。
『来たなディアボロス! ここで沈めてくれる!』
「冥海機であるはずですが、魚ではなく木ですねコイツら。初めて見ました……と、まぁそれは置いといて」
敵の奇怪な姿に目を丸くしたのも一瞬のこと、藤丸は気を引き締めて松の部隊へと突撃していった。
かくして戦いの火蓋を切ったのは、藤丸の一声であった。
「木を模した冥海機とは変な連中ですね。魚ですら無いのなら、“海の漢”の敵ではありません!」
己の存在を敵に誇示するように、堂々たる声が木霊する。と――その声に誘われたように戦場外から飛来する『それ』を、藤丸の目ははっきりと捉えていた。即ち、三体のジェネラル級による援護砲撃を。
「どうやら、来たようですね……!」
呟いた刹那、戦場に降り注ぐのは砲弾の嵐であった。
同時、藤丸の挑発に乗った松の群れが、怒りの咆哮を上げて突撃を開始する。
敵が上手く狙いに嵌まった手応えに、藤丸はにやりと微笑んだ。この戦闘は、砲撃の観測を行う上でも重要となるだろう。ここから先は攻撃を行い、松たちを一体でも多く沈めるのみだ。
「では、始めましょうか!」
砲弾降り注ぐ青空に、突如としてパラドクスの煌めきが凝縮していく。
それは藤丸が発動する『玖珂式想起術"火喰い鳥号の着水"』の一撃だ。かつて乗っていた漁船をイメージしたエネルギーの塊が勢いよく宙を跳ね、海水めがけて飛んで行く。真下に展開する松の一団を、跡形も無く圧し潰すように――!
「火喰い鳥号、着水です!」
巨大な質量が海水を叩く音が、戦場に木霊する。
巻き込まれた松が一体、二体と千切れ飛んで絶命して行く中、難を逃れた個体は即座に反撃を開始。逆説連鎖戦の力で水面を滑りながら、藤丸めがけ殺到していく。
『我らに恐れるもの無し!』
援護砲撃の猛攻が降り注ぐ中、松のグレネードが次々に藤丸の周囲で炸裂した。
敵の猛反撃を藤丸は踏ん張って耐え抜くと、いまだ多勢を誇る松の一団を眺め、呟く。
「……成程。同士討ちは生じない、ということですか」
果たして彼の言葉通り、グレネードや援護砲撃で敵が負傷した様子はない。
どうやら、思ったより敵もしぶとそうだ――そう思いながら、藤丸は戦場の彼方から駆けつける仲間を見遣る。
「さあ行きましょう。勝負はここからです!」
全ては、この戦に勝利する為に。
敵を沈め、観測の手掛かりとなる一戦を積み上げ、海の漢は次なる仲間へとバトンを託すのだった。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【水面走行】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
旗楽・清政
【翠緑の師弟】
既に御味方が始めたようでござるな。
それがしらも、遅れを取るまいぞ。
――この戦、ここからが本番よ! しかと、気を引き締めよ!
松だか梅だか識らぬが、クロノヴェーダならば斃すのみ。
ジェネラル級の援護砲撃も、トループス級が相手なら丁度良いハンデよ。
その程度では、それがしらは止められぬぞ!
さて、此度は、エスメラルダと二人がかりで嘉内をディフェンス致す。
まだそれがしらに比べれば成長途上なのもござるが、この後やってもらう事がある故に。
お主への攻撃は、極力それがしらが食い止める。その意味、しかと心得よ。
それがしはエスメラルダの絶海砲戦で彼奴等が乱れた所を衝き、
家臣団突撃にて殲滅にかかると致す。
援護砲撃が降り注ぐ中の戦闘は楽ではござるまいが、
それがしらに援護砲撃が降り注ぐならば、その分嘉内が
その攻撃を「見」る事が出来る。
それは、必ずや弾道を見切るに役立つはず。
敵の攻撃にせよ、ジェネラル級の砲撃にせよ、
ビームシールドと五枚胴具足、闘気にて防ぎ止め、
ダメージは可能な限り軽減するでござるよ。

エスメラルダ・リベロ
【翠緑の師弟】
(常時軍人モード)
かつて松と言う名の駆逐艦があったとは聞くが、
その名を騙ると松の木の如くなるとはな。
まぁ、それはいい。問題は、このジェネラル級の援護砲撃だ。
何とかせねばならないが、清政殿は、その分析を嘉内に任せる様子。
ならば私は、清政殿と共に嘉内をディフェンスだ。
もちろん嘉内が私に比べれば成長途上なのもあるが、
何よりも援護砲撃の軌跡・弾道をより確実に見定めさせるためにだな。
先に戦った者の分も含め、私達が的となったのを、無駄にしてくれるなよ?
実際の松との戦闘では、まず私が絶海砲戦で仕掛けて、奴等を乱すぞ。
その後、清政殿が家臣団で追撃を仕掛けると言う段取りだ。
いくらジェネラル級の援護砲撃があるとは言え、
駆逐艦のトループス級に、火力と装甲に特化した戦艦級の海戦装を纏う私が
砲撃戦で撃ち負けるなどと言うわけにはいかんのでな。
多少の被害は厭わずにいくぞ。
敵の攻撃、ジェネラル級の援護砲撃、いずれにしても
まずは緑の大盾で防ぎ、それでも防ぎきれぬなら肥後の装甲と
オーラフィールドで耐え抜こう。
旗楽・嘉内
【翠緑の師弟】
駆逐艦なのに、松?
まぁ、植物の形をしているならオレのこのパラドクスで、と言いたいが、
エスメラルダさんと御先祖が二人がかりでオレをディフェンスしつつ、先に仕掛けるようだ。
もちろん、その意味はハッキリと分かってる。
ジェネラル級とやらの援護砲撃を「見」るのに出来るだけ専念した上で、
分析をより確実に行えるようにするためだ。
いきなり責任重大な役割をぶっ込まれた気はするが、悪い気分じゃない。
ジェネラル級の援護砲撃、その軌跡や弾道は目に焼き付けながら、
エメラルド・タブレットにデータとして入力するぞ。
先に仕掛けた人の分も含め、敢えてこんなキツい砲撃に身を曝すことで
得られた情報は、絶対に無駄にはしない!
と、やはりこの援護砲撃の中だからか、
エスメラルダさんと御先祖を以てしても討ち漏らしが出たか。
なら、オレのこのパラドクスで決めてやる。相手が植物の姿なら、丁度良い!
災厄の蝗よ、あの松を喰らい尽くせ!
ディフェンスから漏れた攻撃とか、あと反撃とかには注意して、
マジックシールドや翠緑天鎧で防御するぞ。
砲弾の炸裂で海が抉れ、夥しい水柱が屹立する。
滝の如き海水に紛れて降り注ぐ砲弾は、ジェネラル級冥海機たちが繰り出す援護砲撃によるものだ。
戦場の彼方から行われる強力な支援を武器に、復讐者を葬らんと迫るのは駆逐艦『松』の群れ。上空と海上から牙を剥いて迫る猛攻を前に、復讐者たちは退くことなく立ち向かっていく。
「既に御味方が始めたようでござるな。それがしらも、遅れを取るまいぞ!」
急ぎ戦場へと駆けつけた旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)が、後続の二人を鼓舞するように告げた。
随伴艦隊を無力化した今、残すは敵部隊の撃破のみ。先行した仲間の奮闘によって、『松』の群れは着実に頭数を減らしている状況である。
とは言え、復讐者たちにとって状況は依然として厳しい。ジェネラル級の行う援護砲撃は、『松』の戦闘能力を大幅に強化しているからだ。1秒たりとも気を抜くことの許されない戦場に飛び込む覚悟を胸に、清政は後続の二人へ檄を飛ばす。
「――この戦、ここからが本番よ! しかと、気を引き締めよ!」
「承知した、清政殿!」
「……が、頑張ります!」
果たして、戦場に重なって響くのは清政の弟子たちの声。
エスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)と、旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・g11216)であった。
前方から迫り来る『松』たちを狙い、エスメラルダは早くも海戦装を展開。その砲口を敵群に向けて、清政に合図を送る。今回の戦闘で二人が取る、コンビネーションの最終確認だ。
「では清政殿、先行は私が」
「うむ。援護で強化されておる敵のようだが問題はない、残さず撃沈しようぞ」
「え?」
エスメラルダと清政の会話に、嘉内は耳を疑った。
彼の眼前には駆逐艦の群れが未だ多数。それも、絶え間なく降り注ぐ砲撃の中を潜り抜けて戦わねば為らないのだ。先行の仲間による攻撃で手負いになったとは言え、『松』を全滅させるイメージなど嘉内の脳内には絶無であった。だが、
(「……本気だ、この人たち」)
清政とエスメラルダの眼差しには、不安の色は微塵も無い。
何より、嘉内は理解してしまった。彼ら二人の其れに、自分への信頼が既にあることを。敵を全滅させる戦力のひとりに、自分もまた数えられていることを。
それを知った瞬間、一切の弱気は消え失せた。代わって旺盛な戦意を瞳に宿した嘉内が、はっきりと頷きを返す。
「……よし、分かった。やろうぜ!」
「うむ。お主への攻撃は、極力それがしらが食い止める。その意味しかと心得よ、嘉内」
「私達が的となったのを無駄にしてくれるなよ? 先に戦った味方の分も含めてな」
清政とエスメラルダ、二人の言葉が意味するところを嘉内は既に理解していた。
ジェネラル級の援護砲撃に対処するには、復讐者側も観測支援と言う形で対抗することが必須となる。その一助となる動きを、自分は求められているのだ。
「いきなり責任重大な役割をぶっ込まれた気はするが、悪い気分じゃないな。必ず勝たないとな!」
「良い覚悟だ。では、清政殿」
「うむ、クロノヴェーダならば斃すのみ。いざ参らん!」
清政の檄を鶴の一声に、三人は攻勢へ入る。
全てはこの戦いに勝利し、レイテを、フィリピンを取り戻すため。
かくして――エスメラルダが海戦装で放つ怒涛の如き砲撃が、いま戦いの火蓋を叩き切った。
逆説連鎖戦の開始と同時、敵もまた復讐者への攻撃を開始せんとしていた。
駆逐艦『松』の群れがジェネラル級三体の援護砲撃を受け、海を滑るように突き進む。その身に取り付けられた高角砲が、一つ、また一つと復讐者たちに向けられ始めた。
『ディアボロスなど、これで粉微塵よ!』『仲間の仇討ちだ! 受けるがいい!』
序盤戦で仲間を撃沈されてか、『松』たちの戦意は極めて旺盛だ。
援護砲撃がある今、自分たちが敗北することは無い――彼らの言葉には、トループスとは思えぬ程の強烈な自負が滲む。
だが次の刹那、そんな彼らのプライドを粉砕するように、猛烈な攻撃が次々と飛来してきた。エスメラルダの『絶海砲戦』による一斉砲撃であった。
「捉えたぞ、そこだ」
ズン、ズンと空気を震わす音が立て続けに戦場に響く。
エスメラルダが展開した海戦装『肥後』は、重装型戦艦級――火力と装甲に特化した其れだ。太い轟きと共に放った一撃はどこまでも勢いを増して、パラドクスの輝きを放ちながら『松』の群れに食らいつく。衝撃で弾け飛ぶ海面。その衝撃に耐え切れず、前列を進む『松』が爆散して砕け散っていった。
「駆逐艦のトループス級に、撃ち負けるなどと言うわけにはいかんのでな!」
『おのれぇ! 受けよ、マジカル高角砲!!』
刹那、『松』の砲台が轟きを響かせ、エスメラルダへと反撃を放って来た。
砲弾は魔法で軌跡を自在に変えて、援護砲撃と共に戦場を蹂躙する。トループス級の其れを遥かに凌ぐ猛攻に耐えながら、肥後の装甲を展開したエスメラルダが清政へと合図を送った。
「今だ、清政殿!」
「うむ」
簡潔な返事を返し、清政が迫る敵を狙い定める。
未だ援護砲撃が続く戦場での戦いは、決して楽ではない。だが、これまでの戦場で、幾度となく激戦を潜り抜けてきた清政は、砲弾の嵐の最中にあっても冷静さを失うことは無かった。
(「ジェネラルどもの援護は未だ熾烈。されど――」)
復讐者の攻撃に晒され続け、『松』の部隊は着実に数を減らしつつある状況だ。
残る敵は、当初の半数をやや割った程度か。しからば今こそ好機とばかり清政はパラドクスを発動、『家臣団突撃』の一撃をもって『松』の群れへ追撃を叩きつけていく。自分とエスメラルダの猛攻で、少しでも嘉内をフォローする――その決意を胸に抱きながら。
「松だか梅だか識らぬが、その程度では、それがしらは止められぬぞ!」
戦場に、大きな旗が音を立ててたなびく。
砲雨の只中、清政が掲げた其の旗に導かれるように海の彼方から現れたのは、武装した武者の幻だ。
一人、また一人――先頭に立つ清政の勇気に応えんと、刀槍を構えた武者たちが次々に敵陣へ突撃を開始していく。
「レイテの海を取り戻すため! いざ、かかれぇー!」
砲撃をかき消す程の鯨波が響く中、家臣団の突撃は止まらない。振るう刀槍は『松』を叩き斬り、突き刺し、ジェネラル級の援護に怯むこと無く『松』たちを海の藻屑に変えていった。
反撃で降り注ぐ砲弾の直撃を、展開したビームシールドで防ぐ清政。いまだ敵群から片時も離れない双眸で、彼が見据えるのは勝利のみだ。援護砲撃で迫る砲弾の嵐に屈することなく、彼は尚も耐え続ける。自分とエスメラルダ、そして嘉内が同じ勝利の光景を見ていることを確信しながら――。
「……っ、なんて激しい攻撃だ……!」
一方その頃、清政とエスメラルダのやや後方では、嘉内もまた敵の猛攻に晒されていた。
彼が手にするエメラルド・タブレットには未だデータの入力された形跡はなく、一貫して戦闘に用いられている状態だ。
援護砲撃の軌跡と弾道に関わるデータを収集せんと動いていた嘉内だったが、残念ながら流石の『松』も、それを見逃す程の弱兵では無かったようである。
逆説連鎖戦による応酬は彼我の距離を無視し、先程からグレネードの嵐となって援護砲撃ともども嘉内を襲い続けている。清政とエスメラルダも嘉内を守るように動いているものの、それとて敵のパラドクスを完全に防ぎ切れる類のものではない。敵との戦闘中に情報収集の並行は不可能――そう判断した嘉内は、早々に情報収集を断念することにした。
「ああくそ、しつこい……っ!」
『逃がさぬぞ、ディアボロス!』
度重なる攻撃によって、『松』の群れは既に壊滅に近い状態だ。
残った数体は嘉内を標的に、先程から執拗な攻撃を仕掛けている。せめて復讐者の一人だけでも道連れする気なのだろう。
だが、そんな相手に怯む嘉内ではない。清政やエスメラルダに比べ経験こそ乏しくとも、彼とて立派な復讐者。何よりも、あの二人の信頼に応えるためにも、絶対に退く訳にはいかなかった。
「相手が植物の姿なら、丁度良い! こいつでとどめだ!」
嘉内の全身から溢れるパラドクスの光が、戦場の空へと散布されていく。
青空に舞い散る光はたちまちエメラルド色の其れへと変わり、次いで無数の昆虫へと姿を変え始めた。
『緑翠蝗』――目にする全てを喰らい尽くす、恐るべきイナゴの大群。それが、嘉内のパラドクスによって召喚された存在の正体であった。
「災厄の蝗よ、あの松を喰らい尽くせ!」
嘉内が放った一声と同時、魔法によって顕現した蝗が一斉に『松』へと襲い掛かる。
蝗の群れはエメラルド色の濃霧さながら、捉えた『松』の樹皮を、葉を、根を、残すことなく食い尽くしていく。全身を蝗に覆われた敵の断末魔が援護砲撃の只中に木霊し、そうして濃霧が晴れた後――其処には残骸となった木の枝が僅かに浮かぶのみであった。
「よし。撃破完了だ!」
初めての戦いに成功を収め、嘉内が高々と拳を上げる。
激闘の果て、トループス級の敵は全滅し、残すはアヴァタール級の指揮官のみ。
復讐者としての階段を一つ登った彼の姿に、彼の師匠と姉弟子は、会心の笑顔を送るのだった。
かくして復讐者たちは砲撃の降り注ぐ海域を一旦離れ、次なる行動に移ることにした。
護衛のトループス級たちを全滅させた今、取れる行動は二つ。援護砲撃の観測と、指揮官『アストリア』の撃破だ。
出来ることなら、すぐにでもアストリアを攻撃したいところではある。だが、ジェネラル級の援護砲撃は未だ健在であり、戦闘を行えば苦戦は必至だろう。
故に、先に観測支援を成功させて決戦に臨む――これが最もリスクの少ないアプローチであることは間違いない。だが同時に、嘉内の心には、決断を躊躇わせる要素が一つ存在していた。
(「援護砲撃は、既に相当な数と範囲で行われている状況。観測を行えば、かなり良い結果が出せそうだが……」)
今までに戦った復讐者は嘉内を含めて四人、すなわち四回分の戦闘が行われた計算となる。
他の戦場でも似た条件で観測を行った所はあるが、それらの結果を踏まえて考えると、一度きりの挑戦で確実に観測が成功すると断言するには、現状は少々心もとない。
二人で行えば観測は確実に成功するだろう。だが、一人となれば恐らくは厳しい。アストリアの撃破は大前提として、これからどう動くか――彼の悩みとは、即ちそれであった。
(「もう一押し戦えば、観測の精度は更に上がるだろうが……さて、どうしたものか」)
清政やエスメラルダと共に準備を進めながら、嘉内は思考に眉を寄せる。
諸々を承知で観測に挑むか、それとも激戦覚悟でアストリアに挑み、援護砲撃の更なるデータを得るか。
復讐者たちへ選択を迫るように、海域に降り注ぐ砲撃の響きはいよいよ激しさを増そうとしていた。
善戦🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【水面走行】がLV2になった!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV2が発生!
旗楽・嘉内
【翠緑の弟子達】
四回……! 四回分も戦闘を行っていながら、未だオレだけで観測を成功させるのは厳しいとは!
ギリ、と歯を軋らせながら、口惜しさを滲ませるぞ。
だが、口惜しさに囚われてばかりもいられない。
観測を成功させるためにと、御先祖がエスメラルダさんを補佐に寄越してくれたんだ。
ここまでやってもらったなら、さすがに観測を成功させないとな。
ひとまず、【光学迷彩】で目立たないように身を隠しながら、
先程までに見てきた援護砲撃の情報をエメラルド・タブレットに入力だ。
砲撃の発射音、着弾までの時間、発射煙の有無と濃さ、砲撃が来た方向、砲撃の軌道、
その他何らかの規則性……些細な情報も、見落とさないぞ。
あとは……確か、三者が拠点を移動しながら、なんだよな。
と言うことは、援護砲撃は最低三種類、あるはずだ。
心は熱く滾ったまま、頭はクールに保って、入力したデータから観測と分析を進めていくぞ。
出てきた結果に、エスメラルダさんの助言を加えて補正をかければ
……観測と弾道予測は完了だ!
これでもう、奴らの好きにはさせないぞ!

エスメラルダ・リベロ
【翠緑の弟子達】
(常時軍人モード)
確かに、嘉内が口惜しがる気持ちは分かる。私達も、プレッシャーをかけすぎたかもしれん。
だが、戦いながらのデータ入力は無理だったのだから仕方が無いし、
戦いの中に限らず、全てが思いどおりに行くとは限らんのだ。
むしろ、想定外の事態が起きても上手く対応するぐらいでないと……最悪、死ぬぞ。
さて、それはともかく私は嘉内が行う観測の補佐だ。
【光学迷彩】を使って共に目立たないよう身を隠すが、
それでももし援護砲撃が嘉内に飛ぶようなら、
ディフェンスして身を盾にし、代わりに攻撃を受けてやるさ。
嘉内が分析をある程度まとめたなら、【砲撃】に長けた身として
助言を行い、その分析に補正を入れるぞ。
あと、嘉内は必死になっているし、それ自体は良いことなのだが、
それ故に見落としていることもあるかも知れん。
俯瞰的な視点も、少しは必要だろう。
そうして観測と予測が完了したら、【パラドクス通信】を用いて、
その内容を清政殿に伝えるとしよう。
これで、今までよりもある程度は戦いやすくなるはずだ。
砲弾降り注ぐレイテ沖の海域。
指揮官『アストリア』との決戦を控えた戦場の外れで、新たな行動を開始した復讐者の姿があった。
ジェネラル級冥海機たちの援護砲撃を観測し、決戦を復讐者の有利に進めること。それが『彼』――旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・g11216)の目的だ。
「四回……! 四回分も戦闘を行っていながら、未だオレだけで観測を成功させるのは厳しいとは!」
自らの奥歯を噛み砕かんばかりに噛み締めて、嘉内が口惜しさに呻きを洩らす。
彼が見遣る先、戦闘海域の中央では、ジェネラル級たちによる砲撃が今も降り注いでいる最中だ。その只中で決戦に赴いた一人の復讐者の決意を想い、嘉内の心を焦がす無念はいよいよ強い。
「もう少し。もう少し、オレが上手くやっていれば――」
「その辺にしておけ、嘉内」
そんな嘉内の苦悩の言葉は、しかし鋭い一喝に遮られた。
声の主はエスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)。彼女は先のトループス級との戦いから引き続き、嘉内と共に観測の作戦に参加している最中なのであった。
「ここから先は、観測に全神経を集中しろ。他のことに余力を割いている余裕など、無い筈だ」
「……っ」
未だ無念を滲ませつつ、嘉内が辛うじて口を閉じる。
エスメラルダはそんな彼の姿を見遣り、着々と観測の準備を進めて行った。
彼女とて、嘉内の気持ちは十分理解できる。先の戦闘でプレッシャーをかけすぎたかも知れないという意味では、反省するところも大いにあった。だが、
「今、何かを言った所で結果は覆らん。戦いの中に限らず、全てが思いどおりに行くとは限らんのだ」
「……」
「むしろ、想定外の事態が起きても上手く対応するぐらいでないと……最悪、死ぬぞ」
今回の戦いでは、冥海機勢力も死に物狂いの攻勢に及んでいる。それだけに、僅かな油断も命取りに為り兼ねない――そう告げるエスメラルダの言葉に、嘉内はしばし沈黙を保ち、そして――。
「…… ……ふんっ!」
激情を込めた手で、自分の頬を思い切り叩いた。
想定外の事態にペースを乱し、気づかぬうちに視野が狭くなっていたことを、嘉内は否が応でも自覚する。この戦場で戦うのは、けして自分一人ではないというのに。
忘れそうになっていた初心を今一度取り戻し、嘉内はエスメラルダを見た。彼女がここに居るのも、清政が補佐として彼女を寄越してくれたからだ。である以上、その意思を裏切る訳には行かない。
「……腑抜けるのは此処までだ。必ず観測を成功させよう、エスメラルダさん!」
「それでこそだ。ぐずぐずするな、始めるぞ。私はあくまで補佐で来ていることを忘れるな」
「ああ、勿論。頼りにさせて貰う!」
そう言って準備を終えた嘉内にエスメラルダは頷きを一つ、砲撃援護の観測を開始する。
例え口には出さずとも、弟弟子である嘉内の双眸に再び宿った戦意の炎に、確かな頼もしさを感じながら。
砲弾の嵐が、戦闘海域に降り注ぐ。
嘉内とエスメラルダは戦闘海域の外れに近い場所へ移動しながら、その光景を前に観測の準備を終えた。
「ここまで来れば十分だろう。エスメラルダさん、補佐は頼んだ!」
「任せて貰おう。いざとなれば、我が身を盾にしてでも攻撃を防いでやるさ」
戦場の彼方からは、今もなお援護砲撃が行われている最中だ。
三体のジェネラル級が行う砲撃に対し、嘉内は手にしたエメラルド・タブレットへすぐさま入力していく。
先程までに見た情報を可能な限り入力し、眼前で行われている砲撃の新たな情報と突き合わせ。どんな些細な点も見逃すまいと、あらゆるデータを入力していく。
出発前の情報通り、敵は複数の拠点を移動しながら砲撃を行っているらしい。砲弾の飛来する方角は巧みに変化し続け、発射煙も視認は困難だ。だが、砲撃の軌道と発射音、そして着弾までの時間は極僅かだが規則性を伴っている。果たして、それを嘉内は見逃さず、的を絞って更なる分析を進めて行った。
「エスメラルダさん。今からオレが挙げる情報に助言が欲しい」
「承知した、砲撃に関することなら出来る限り応えよう。何が知りたい?」
「まずは砲弾の軌道。それから発射音と、着弾までの時間。後は……」
嘉内は努めて冷静を保ちながら、エスメラルダに情報を伝えていく。
心に滾る熱い思いは、これから始まる戦いでぶつければいい。今は頭をクールに保ち、観測と分析を進める時だ。
そんな彼の想いに応えるように、エスメラルダもまた嘉内の情報に補正を入れていった。
「ふむ。それであれば、ここは……」
俯瞰的な視点に基づく助言を与えつつ、エスメラルダの顔にふっと微笑が浮かぶ。
目の前の少年は何事にも我武者羅で、それが実に好ましい。その反面、突っ走り過ぎて視野が狭くなることは今後の課題と言っていいだろう。
それを導くのは、姉弟子たる自分の役目でもある――そう思わずにはいられなかった。
「よし。どうだ、嘉内?」
「あと十秒で着弾するはず。五……二、一……ビンゴ!」
そして。二人の奮闘で、砲撃の観測は早々に完成を見た。
嘉内のカウントから一秒のずれもなく、敵の砲弾が戦闘海域に着弾する。それは即ち、復讐者が冥海機の砲撃を見切ったことを示すものだ。今迄に行われた四度に及ぶ戦闘、そして嘉内のデータとエスメラルダの補正は、完璧な観測支援を行うのに十分なもの。掴み取った成果に、嘉内がグッと拳を握った。
「……観測と弾道予測は完了だ! これでもう、奴らの好きにはさせないぞ!」
「よくやった。また一つ経験を積んだな、嘉内」
ジェネラル級の砲撃は、もはや脅威たり得ない。後は只、指揮官『アストリア』との決戦に勝利するのみ。
エスメラルダはパラドクス通信を発動すると、一足先に戦場へと向かった清政に連絡を送る。伝えるのは観測の成功と、そして――またひとつ成長した、嘉内のことだ。
「エスメラルダだ。……やったよ、清政殿」
そこに多くの言葉は必要ない。
簡潔な連絡のみを師匠である復讐者へ送ると、エスメラルダは嘉内と共に決戦の場へと向かっていく。
この戦いは遠からず、自分たちの勝利に終わるだろう。そのことを、彼女は早々に確信していた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
旗楽・清政
エスメラルダから【パラドクス通信】が届いたら、その内容を頭に叩き込み、
二人が戻る前に一当てすべく動くと致そう。
それがしの見立てでは、3人がかりで一度攻撃しても、アストリアの撃破にはわずかに足りぬはず。
まずは、【大声】でアストリアに告げん。
「アストリアよ! それがしの嫁にならぬか!?」
クロノヴェーダは滅すとは言え、この見目麗しさは海の藻屑とするには惜しい。
アストリアがこれを良しとすれば、それがしは嫁を娶れる、此処の指揮官は不在となる、アストリアは海の藻屑とならずに済むでハッピーエンド。
――だが、アストリアはおそらくそれを良しとすまい。
そも、この問いはそれに如何な反応を示すかで、彼奴の為人を探るものでもある。
ともあれ、拒絶されたならばやむを得ぬとして、翠緑の疾風を発動致そう。
ああは言うてはみたが、討つ覚悟は出来ておる。
さらに言えば、この一当てで嘉内らが立てた予測が当たっているかが分かろう。
敵の反撃と援護砲撃は、二重の【ガードアップ】、ビームシールド、五枚胴具足、闘気で防ぎ止めるでござるよ。
二人の復讐者によって援護砲撃の観測が完了した丁度その頃、渦中の戦場では最後の決戦が始まろうとしていた。
敵は、冥海機の指揮官である『アストリア』。
彼女の撃破こそ、復讐者たちが果たすべき最後の目標である。
ジェネラル級たちが行う援護砲撃は、もはやさしたる脅威とは為り得ない。護衛を撃破し、観測支援を得たことで、戦況は復讐者の有利へと傾きつつある状況であった。
「エスメラルダだ。……やったよ、清政殿」
「うむ。一切承知した」
通信機から届いたエスメラルダの言葉で、旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)は全てを理解した。
どうやら、二人は観測を見事に果たしてくれたらしい。となれば、彼らに応えるのは師匠としての務めであろう――清政はそう考える。
エスメラルダたちが戦場に合流するのも、恐らくはもう間もなくだ。それ迄に指揮官に手傷を追わせれば、後の戦いは更に復讐者たちに有利となるだろう。
(「さて、次は……あの冥海機の反応次第にござるな」)
彼が見澄ました先では、復讐者を沈めんと待ち構えるアストリアの姿があった。
劣勢に置かれて尚、その凛とした佇まいには些かの陰りも無い。自分は最後までヤ・ウマトの為に戦い抜くのみだと、その佇まいが雄弁に語っている。
そんなアストリアに向かって清政は深呼吸を一つ、戦場に響く大声で告げた。
宣戦布告にはおよそ似つかわしくない、冥海機の彼女が想像もしなかったであろう『その言葉』を。
「アストリアよ! それがしの嫁にならぬか!?」
『……っ!?』
自分の耳を疑うように、たじろぐアストリア。そんな彼女へ、清政の畳みかけるような言葉は更に続いた。
曰く、復讐者である自分にとって冥海機は敵だが、その見目麗しさは海の藻屑とするには惜しい。
曰く、この申し出が受け入れられれば、自分は嫁を娶れ、此処の指揮官は不在となり、万々歳である……と。
話を聞くにつれ、アストリアの眉はつり上がり、全身に殺気が満ちていく。そんな彼女の様子に、一方の清政は会心の笑みを内心で浮かべていた。
(「ふむ。思った以上に効いておるな」)
そう。アストリアが拒絶を示すことなど、清政は端から織り込み済みだ。
彼の真意は、即ちアストリアの為人を探ること。もしも彼女が攻撃で応じたなら、復讐者の観測支援が援護砲撃との連携をどの程度無効化できるか測れると考えての行動である。この手応えなら、恐らくそろそろ攻撃が来る筈――そう清政が思った正にその矢先、
『戯言に貸す耳は持ちません。……沈みなさい、ディアボロス!』
果たして、アストリアが返したのは承諾の言葉では無く、三連装砲による砲弾の連射であった。
口を利くのも汚らわしいとばかり、敵意に満ちた眼で猛攻を繰り出すアストリア。先んじて放たれた其の反撃に続き、飛来する援護砲撃は、しかし清政に僅かな傷を刻むのみだ。ガードアップで固めた守りと、何より観測支援を受けている清政に、もはや冥海機の援護砲撃は脅威となり得ない。
ここからは、待ちに待った反撃の時間。飛来する砲撃を凌ぎ切り、清政は緑玉の片鎌槍を構えた。
「……どうやら、話は破談のようにござるな」
そう語る清政の表情に、悲しみの色は一切ない。
誘いの言葉こそ向けたが、討つ覚悟は最初から出来ている。
かくして――先程とは一変した復讐者の表情で『翠緑の疾風』を発動し、闘気を帯びた清政が疾風さながら戦場を駆ける。敵である冥海機を、海の藻屑に変えるために。
「それがしの槍、馳走しよう。遠慮は要らぬ!」
エメラルド色の光を帯びて、清政が放つは片鎌槍の一閃。
その一撃は復讐者と冥海機、彼我の形勢逆転を物語るように強烈な威力を帯びて、アストリアを切り裂くのであった。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
旗楽・嘉内
【翠緑の師弟】
御先祖の奴への問い、理解出来なくはない。
奴の外見はオレも好みだし、血なのかね。
それより、奴には次の2つを問うぞ。
・伊一六八が天使や悪魔に出した戦闘艦艇撃沈の指示を、現場指揮艦として識っていたか。
・戦闘艦艇が撃沈され零式英霊機や人間達が死んだら、哀悼の礼送の「友軍」に、彼等は含まれるか。
御先祖の問いへの対応を見るに、奴は潔癖な軍人気質と見た。
伊一六八の指示を識らなかったなら、この問いで動揺を誘えるはず。
識っていたなら、オレの怒りで、エメラルドの翼がより激しく暴れ狂うまで。
奴の答えが如何であれ、まずは【先行率アップ】でオレから仕掛けるぞ。
エメラルドの翼の羽根は、ビーム砲、ビーム刃、両方織り交ぜて奴を【攪乱】してやる。
「食らえよ! これがオレの復讐者としてのだけじゃない――人間としての、怒りだ!」(※最初の問いの答えが是の場合のみ)
奴の攻撃は、二重の【ガードアップ】、翠緑天鎧、マジックシールドで耐えるぞ。
特に二番目の問いの答えが是なら、なおさらそんなパラドクスには負けられねえ!

エスメラルダ・リベロ
【翠緑の師弟】
(常時軍人モード)
※嘉内をディフェンス
清政殿が何処まで本気かは分からないが、突然突拍子もない言葉を
向けられた奴には同情するぞ。すっかり、清政殿の掌の上ではないか。
それよりも、だ。嘉内の問いへの答えの方が、私としては気になるな。
それが如何であれ、私としては容赦する気は無いが。
奴が名を騙っている艦は、重巡であったと聞く。
ならば、火力と装甲に特化した戦艦級の海戦装を纏う私としては
砲撃戦で撃ち負けるわけにはいかんのだよ。奴がアヴァタール級と言えどもな。
嘉内と奴の会話にしっかりと耳を傾けて、それが終わるタイミングを計るぞ。
嘉内の気質からして、問答が終わればすぐに奴に仕掛けるはずだ。
その直後に、攻撃を受けた隙を衝く形で私もヴェルデ・フィナーレを撃ち込むぞ。
奴の攻撃は、三連装砲による砲撃だな。
では、【ガードアップ】、緑の大盾、肥後自体の装甲で耐え抜くぞ。
戦艦の装甲を、その程度の砲撃で抜けると思うな!
私を沈めたければ、せめてビッグセブンでも連れてくるのだな!
さて――後は任せたぞ、清政殿。
旗楽・清政
【翠緑の師弟】
※嘉内をディフェンス
アストリアの為人、斯様であったか。
となれば、アストリアが嘉内の問いに如何に答えるか、興味深きところ。
伊一六八の指示を是とするような為人とは思えぬが、何らかの理由で是とするやもしれぬな。
何にせよ、問答が終わり嘉内とエスメラルダが仕掛けたならば、それに続くと致そう。
嘉内の敷いた【ダメージアップ】も用いて、翠緑の疾風を放つでござるよ。
「破談となりし以上は、これがそれがしらの宿命――覚悟!」
元よりそれがし乱世の将にして、復讐者とクロノヴェーダとして対峙しておる以上、
差し出した手を振り払われたならば、アストリアを討ち果たすに一切の躊躇は無し。
もしこの翠緑の疾風に耐えて反撃してくるようなれば、
二重の【ガードアップ】、ビームシールド、五枚胴具足、闘気にて耐え抜かん。
そしてアストリアを討ち果たしたならば、嘉内の問いへの返答の如何を問わず、
「貴殿のその忠義、勇戦に敬意を表する――御美事でござった」と告げて、
その忠勇を称えつつ、冥福を祈り黙祷を捧げると致そう。
『敵ながら見事な戦いぶりと言わざるを得ませんね。これが、ディアボロスの力……』
冥海機『アストリア』が洩らした呟きには驚嘆と、そして幾許かの悲哀が含まれていた。
随伴艦隊は早々に海域を離脱し、護衛の配下は全滅。更にはジェネラル級の援護砲撃も、今や弾道の観測を果たされ、その効果は大きく下がっている。
更には――手負いとなったアストリアの前には、武装した復讐者が三名。
それら全ての状況が、彼女に示す事実は只一つ。即ち、彼女の命運は此処で尽きるであろうことだ。
『ですが、恥ずべき戦いは出来ません。ヤ・ウマトの為、力を尽くさせて貰いましょう』
自らの最期を悟って、なお戦意を露わにするアストリア。
そんな彼女の前に進み出たのは観測を果たした復讐者の一人、旗楽・嘉内(フルアーマーウィザード・g11216)であった。
(「自分の嫁にならないか……か。御先祖の奴への問い、理解出来なくはないな」)
先の戦闘で行われた問答の一幕を思い返しながら、嘉内はアストリアに視線を向けた。
序盤の攻防によって彼女が負ったダメージは、純白の軍服と、流れるような金髪にも些少の傷となって表れている。だが、其れはアストリアという冥海機の美しさを何ら損なうものではない。
(「奴の外見はオレも好みだし、血なのかね。さて……」)
嘉内は気を取り直し、アストリアに向き直る。
戦いの前に、彼には問うておきたいことがあったのだ。その気配を察してか身構えたまま言葉を待つアストリアへ、嘉内は堂々とした声で告げた。
「アストリア。お前は、伊一六八が天使や悪魔に出した戦闘艦艇撃沈の指示を、現場指揮艦として識っていたか?」
これまでの戦いから嘉内がアストリアに感じ取ったのは、彼女が潔癖な軍人気質だということ。
故に、伊一六八の指示を識らなかったなら動揺を誘うことが出来る筈。そんな目論見で彼が投げた問いに、しかし目の前の
冥海機は一切の動揺を示さないままだ。
まさか、指示を識っていたのか――そんな疑念と共に込み上げる怒りを押し殺し、嘉内はなおも問いを投げる。
「聞きたいことはまだある。戦闘艦艇が撃沈され、零式英霊機や人間たちが――」
『逆に問いましょう。敵である貴方に、それを答える理由がありますか?』
だが、そんな嘉内の言葉は、アストリアの冷たい声に遮られた。
炎に浴びせる冷水のような、それは明白な怒りと拒絶に満ちたもの。此処は戦いの場であって、問答の場ではない――そう示すように海戦装を展開しながら、アストリアは会話を打ち切った。
『話は終わりです。これ以上、貴方たちに語る言葉は無いと知りなさい』
「そうか……いいだろう!」
その返事に不動の覚悟を感じ取り、嘉内の背中にエメラルドの翼が展開されていく。
此処から先は、力を以て決着をつけるのみ。そんな両者のやり取りの一部始終を見ていた旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)も片鎌槍を構え、引き続き戦いに参加する構えである。
「取りつく島も無い様子にござるな。最早、討ち果たすに一切の躊躇は無し」
冥海機を討つ復讐者の其れへと表情を一変させ、清政は嘉内にそう告げた。
イエスかノーか以前に、問いに答えるか否かはアストリア自身が決めること。相手が返答を寄越すことを前提とした嘉内の問いかけは、その点において欠けていたものがあったのだろう。
「……つくづく、突然突拍子もない言葉を向けられたアストリアには同情するぞ。すっかり、清政殿の掌の上ではないか」
一方、清政と嘉内の二人を横目に、エスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)は早々に準備を終えていた。
敵の回答如何に関わらず、冥海機は容赦せず撃破すると彼女は決めている。海戦装『肥後』を展開し、いつでも攻撃を開始できる状態だ。
(「アストリアか……奴が名を騙っている艦は、重巡であったと聞くが」)
だとすれば猶更、砲撃戦で負ける訳にはいかないとエスメラルダは考える。
彼女の駆使する肥後は、火力と装甲に特化した戦艦級の海戦装だ。たとえアヴァタール級の冥海機と言えど、力負けしては海戦装姫の名折れであろう。
「先手は任せる。準備は良いな、嘉内」
「ああ、勿論! 全力で叩き潰すぜ!」
「いざ参らん――覚悟せよ、アストリア!」
レイテ沖を巡る決戦の一つに終止符を打たんと、海面を駆ける復讐者たち。
ジェネラル級の援護砲撃が今なお続く中、三人の背中を押すように一陣の風が吹き抜けていった。
エメラルド色の光が双翼を為して、砲弾降り注ぐ海域を舞う。
嘉内の『エメラルドの翼』で顕現した光が、パラドクスによって姿を変えているのだ。
質量を持たぬ魔法の翼が羽ばたきと共に散布するのは、羽の姿を取った無数の光。それが今、先行率アップの効果を受けた嘉内の手で、アストリアの周囲を包み込んでいく。
「答える気が無いなら仕方ない。アストリア、勝負だ!」
言い終えるや、嘉内の羽が一斉に武装へと変じた。
標的を射抜くビーム砲、更には切り裂くビーム刃。それら全てが、包囲するアストリアめがけ一斉に殺到する。さながら、エメラルドの輝きを帯びた光の雨のように。
「此はクロノヴェーダの闇を祓い、人類の未来を導く希望の翼――その羽ばたきは、何人たりとも逃しはしない!」
ダメージアップを込めた猛攻は、しかし復讐者へ優勢をもたらすには至らない。
悪足掻きのように降り注ぐ援護砲撃と、何より標的であるアストリア自身の旺盛な戦意がそうさせているのだろう。同時、死者を悼む思念を波動に変えて、嘉内を反撃が襲う。
『散った者たちの為にも……私が戦わねば為らないのです!』
「……っ!!」
パラドクスを帯びた波動が嘉内のマジックシールドをすり抜け、直撃する。
突如として視界が暗転する中、渦巻く思念で割れそうになる頭を抑え、必死に呼吸を整える嘉内。ガードアップの防御強化で意識を繋ぎ止め、荒い息で攻撃を凌ぎ切ると、彼の背後に新たなエメラルド色の輝きが灯る。その源を知ると同時、反射的に嘉内は叫んでいた。
「今だ、エスメラルダさん!」
「ああ、よくやった。このまま仕掛けさせて貰う」
嘉内の猛攻によってこじ開けた、アストリアの僅かな隙。絶妙の機でそこを狙い済まし、エスメラルダのビーム砲が一斉に発射されていく。
「全砲塔、エネルギー充填完了! この一撃で、仕留める! ヴェルデ・フィナーレ!」
四つの試製大口径三連装砲、計十二門の砲口から放つは、網膜を焼くような光を帯びた巨大ビームだ。
十二発のビームはパラドクスで軌道を変えて、援護砲撃にも劣らぬ威力を帯びて一斉に降り注ぐ。嘉内のパラドクスが光の雨ならば、エスメラルダの其れはさながら滝の如く。命中アップに導かれた光の濁流に全身を焦がされながら、アストリアの三連装砲が負けじと轟音を轟かせ始めた。
『く……まだ、まだ……っ!』
援護砲撃と共に飛来する砲弾を、肥後を展開した体勢でエスメラルダが受ける。
ガードアップの効果をもって尚、敵の火力は圧倒的であり、刻まれるダメージも浅いものでは無い。
だが――戦う理由ならエスメラルダも持っている。悲鳴を上げる体を叱咤しながら、彼女はその意気を示して見せた。砲撃をかき消すような、アストリアにも負けぬ凛とした声で。
「その程度の砲撃で肥後の装甲を抜けると思うな! 私を沈めたければ、せめてビッグセブンでも連れてくるのだな!」
砲弾とビームが交錯する中、互いの体に負傷が蓄積されていく。
三人の復讐者による攻撃を浴び続けたアストリアにとって、その傷は甚大なものだ。
積み重なったダメージが既に限界に達しつつあることを、果たしてエスメラルダは見逃さない。最後に加えるべき一撃を、彼女は己が師匠に託す。
「――後は任せたぞ、清政殿」
「うむ。これにて幕引きと致す」
そして――清政は、構えた片鎌槍の穂先をアストリアに突きつけると、一気に海面を踏み込んだ。
復讐者とクロノヴェーダ、ついに交わることの無かった両者の因縁。それを今、自らの手で断つ為に。
「破談となりし以上は、これがそれがしらの宿命――覚悟!」
そう告げると同時、『翠緑の疾風』のパラドクスを発動した清政が、神速の速度を帯びてアストリアへと突撃。両者の視線が交錯した次の刹那、片鎌槍の鋭刃は冥海機の心臓を穿ち、永久にその機能を停止させる。
『皆様……レイテの海を、どうか……』
消え入るような言葉を遺し、アストリアを散華の炎が包む。
後に残されたのは、海戦装の僅かな残骸のみ。
冥海機の全撃破から程なくして援護砲撃が止むと、其処には復讐者の勝利を示す静寂だけが残されるのだった。
かくして戦いを終えた後、復讐者たちは帰途に就いた。
冥海機の大反攻作戦が着々と進む今、レイテを巡る戦いもまた佳境を迎えつつある。
フィリピンを巡る冥海機との激戦は、間もなく幕を開けることだろう。今回の勝利が其の一助となった手応えを胸に、清政は最後に戦場を見遣る。
彼が捧げるのは、冥海機アストリアへの哀悼。最後まで己の生き様を貫いた敵への、忠勇を称える言葉であった。
「貴殿のその忠義、勇戦に敬意を表する――御美事でござった」
冥福を祈る言葉を、一陣の風が空の彼方へと運んで行く。
その先でアストリアの魂が安らかに眠れるよう祈り、清政は戦場を後にした。振り返ることは無い。取り戻すべき大地が、討つべきクロノヴェーダたちが、復讐者である彼にはまだ残されているのだ。
「これにて作戦は完了。皆の衆、いざ帰還の時!」
勝利を告げる鬨の声と共に、復讐者たちは最終人類史へと帰還する。
奪われた世界がかつての姿を取り戻す時が、一日でも早く訪れることを願いながら――。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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