断層碑文研究白書

 攻略旅団の提案により、最終人類史の各地で発見された『断層碑文』の研究を行います。
 断層碑文に書かれていた内容については、ディアボロスならば誰でも知る情報ですが、断層碑文そのものには、まだ謎があるかもしれません。
 最終人類史の学者の方々を協力者として、調査研究を行ってください。
 断層碑文を研究する事で、《刻逆》をはじめ、世界の謎に迫ることが出来るかもしれません。

断層碑文は語らない(作者 えむむーん
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#最終人類史(新宿島)  #断層碑文研究白書  #断層碑文 


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●未だ明かされぬ『謎』
 『断層碑文』。《刻逆》の後から最終人類史で発見されるようになった石碑群は、何もわからないまま混乱する最終人類史の人々とディアボロス達の道を指し示す灯となった。
 そこに刻まれた内容はディアボロスならば知らぬ者は無い……しかし、断層碑文そのものが何であるか、どうして現れるのか知る者は、今この最終人類史には誰もいない。
 断層碑文。正体不明の語らぬメッセンジャーは、今日も静かに佇んでいる。

●断層碑文研究
「皆さんお集まりありがとうございます」
 新宿駅グランドターミナル。出現したパラドクストレインの元……ではなく、会議室に集ったディアボロスを前に真月・真心(道産子田舎娘・g03219)は頭を下げる。
「攻略旅団からの提案により、改めて『断層碑文』の調査を行う事になりました」
 提案を受けて調査することで、これまでに判明した事実の整理だけでは無く、新たな着想や閃きを得られるかもしれない。また、ディアボロスが『仮説』を思いついた場合も、正しいかどうか精度の高い予測をする事も可能だ。
「調査は三つの段階に分けていただきます」
 まずは、世界中で発見された『断層碑文』を確認し、情報を整理。
 その後、気になった点を精密に調査して、新たな情報を得られるようにする。
 最後に、整理した情報と新たに得た情報から、断層碑文についての『推論』などを披露だ。
「調査を始める前に、これまで確認された断層碑文について改めて説明しますね」

●新宿断層碑文
「《刻逆》発生直後、新宿島の露出した断層部に現れているのを発見された、もっとも有名な断層碑文ですね」
 新宿断層碑文は新宿島の各所で確認されたが、クロノヴェーダの侵略や《七曜の戦》の発生をはじめとした様々な情報が記載されていた。
「この情報と、漂着したディアボロスの皆さんの情報を合わせる事で、私達は短期間で状況を把握し、歴史と大地の奪還の為に動き出すことができましたね……さて、そんな新宿断層碑文の現状ですが。地中の中です」
 『新宿断層碑文』は掘り出すのに工事が必要なほどの大きさで、また移動させて良いものなのかも不明だった。そのためそのままの場所にあり、現在は周辺地域の奪還により地中に埋まっている。
「当時のデータや写真はこちらにあるのでいつでも確認できます。また、必要があれば掘削も可能です」

●追加で現れた断層碑文
「初期に現れたもの以外は、最終人類史各地の海岸に漂着する形で発見されていますね。各奪還戦の発生を知らせる碑文や、《七曜の戦》発生の日を示す断層碑文、《七曜の戦》直後に発見された《戴冠の戦》の発生を知らせる碑文などがこれに当たります」
 これらはほぼ同じタイミングで最新の内容のものが各地で複数発見されている。ただ、『新宿断層碑文』ほどに大量の情報がまとまったものは、今の所発見されていない。
「持ち運べる小型のものは全て実際にこちらに持ってきています。記念碑くらいのサイズのもの等は、新宿断層碑文のように写真やデータを用意しています。ですが必要ならば現地に移動してくださって構いません」

●調査の手順
 会議室の机に並べられた小型の碑文や、新宿断層碑文をはじめとした大型の写真などを前に真心は告げる。
「まずはこれらを調査して情報を集めてください。漫然と全て調べるよりも、『こういう点が怪しいと思うので集中的に調べる』という風にした方が精度が高まると思います」
 事実の確認を行った後は、それを踏まえたより精密な調査を行える。
「最終人類史の学者さんや技術者さんのお力も借りられますし、多くの協力者による人海戦術も可能です。『何を調査したいのか』を明確にして方針を示してください」
 最後に、全ての調査結果を踏まえた推論などを披露する事で、今回の研究は完了となる。

「《刻逆》が起きたあの日から、断層碑文は『そういうものだ』って受け入れていましたが……改めて考えるととても謎が多いですよね。出現には何者かの意思が介在しているようにも思えますし……皆さんの調査で何がわかるのか、私も凄く楽しみにしています! 皆さんけっぱって……頑張ってください!」


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【未来予測】
2
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【修復加速】
1
周囲が、破壊された建造物や物品の修復が容易に行える世界に変わる。修復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」する。
【操作会得】
1
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【書物解読】
3
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【クリーニング】
1
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV2 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV2 / 【ダブル】LV2

●マスターより

えむむーん
 閲覧頂きありがとうございます。えむむーんと申します。

●シナリオの概要
 最終人類史にて『断層碑文』に関して調査を行っていただきます。戦闘は一切発生しません。今回は内容の都合上、選択肢①→②→③と展開していきます。

『碑文の状態』
 最初に発見された『新宿断層碑文』は巨大で断層に埋まったままにしていたので、奪還により全て埋没しています。
 漂着し追加で発見された碑文は、小型のものは全て運び込んでいて、大きい物は現地にあります。

『選択肢①』
 持ち込まれた小型の碑文や大型のものの写真で調査を行います。希望があれば各地に保管されている碑文の元へ移動も、地中に埋没している新宿断層碑文の掘削も可能です。プレイングにでご指定ください。
 全体的に調べる、ではなく何か狙いを付けて集中的に調べた方が良さそうです。

『選択肢②』
 ①で得た情報を基により精密な調査を行います。最終人類史の技術や人手を使えますので、希望があればプレイングにてご指定ください。

『選択肢③』
 調査を踏まえた断層碑文に関する推論を発表します。

 それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております。よろしくお願いいたします!
13

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


レオアリア・フォルシオン
まず最初に不思議に思ったのだけど――『こんなちょっと不思議な場所に現れた碑文の、異能無き世界において空想染みた言葉』の内容を、ディヴィジョン出身のディアボロスがいたとはいえ……どうして『全員が全員』『書かれた内容全てが真実だと確信した』のかしらね?

恐らく、これは復讐者や時先案内人等の情報に関する本能等に働きかける効果があるのではないかしら?
だからこそ調べるのは『碑文の情報の確証性』を『ディアボロスがなぜ確実に真実だと思えるのか』についてよ
……下手をすれば、ディアボロスの真実の一端について暴けるかもね

これまでのディヴィジョンでの調査記録を纏めたアーキビストと相談しながら、断層碑文の情報の確証性についてディスカッションやプロファイリングをしていくわ
この根源を暴ければ、刻逆が起きた際『なぜディアボロスは生まれたのか』について分かる事もあるかもしれないわ
イレギュラー2……それ以上の何かを、わたくし達は持っている筈だから


文月・雪人
※アドリブ連携歓迎

正体不明の語らぬメッセンジャーか。
断層碑文、分からない事ばかりだね。

一先ず碑文が出現する状況については整理しておきたいかな。
可能なら埋まった碑文も発掘して、
初期のものと最近のもので形や材質に違いがないか、
また役目を終えた碑文に対して物体としての風化や変化が無いかも確認できればと思う。

刻逆後、多くのディアボロスが漂着した新宿断層の海岸線
最初の碑文もそこで発見されたのだったね
今でこそ奪還によって海岸線の位置は大きく変わっているけれど
その後も碑文が発見されたのは、最終人類史の海岸沿いだけという認識で良いのかな
流れ着く場所や方角に何か法則はあるのだろうか
誰かが状況に合わせて意図的に送っているのだとしたら
送り元はどこなのだろうね

念のため【操作会得】【無鍵空間】【強運の加護】も使って、
碑文のメッセージ以外にも、何か隠された機能がないかを確認しておきたい。
もし可能なら、製作者の残留思念と会えたら嬉しいけど、流石に難しそうだよね。
まあものは試しという事で、可能な範囲で試せればと思うよ。


八千草・実
こないな作業は好奇心がくすぐられますわ
うちは、断層碑文に現れた文字の『言語』を解析したいと思うんよ

日本語で刻まれてたら、うちらが読むには問題なさそうですけど……
ディアボロスの翻訳能力や書物解読で解析できるだけで、
本当は違う言語で書かれてたりしません?

調査には、専門家さんのお力をお借りしましょ
どこの言語かわかりませんやろか?
言語学とか、そっちのほうから……何やわかりませんやろか?
これはやっぱり、人間の使う言語なんですやろか

言語いうんは、長い歴史がありまして……
人間が発達させてきたもんやからねぇ
もし未知の言語でも、その体系や文法や文字を調べてみたいんよ
何に似てるかていうんは、重要な意味があるんやないかなぁ

もし、新宿断層碑文が日本語やったら……
オーストラリアで出て来た碑文は、英語にはなりませんやろか?

アドリブ、連携歓迎


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
兼ねてより気になっていた断層碑文……
研究の機会があるのは、ありがたいことだな
よろしくお願いします

「断層碑文の素材」の解析を行いたい
意図は、「碑文がどこから来たか」を探るため
調査方法は、「組成・年代の解析」を主に
専門家や学者の力をお借りしたい

漂着した小型の碑文から……
まずはクロノ・オブジェクトか否か
そして「最終人類史や、地球上に存在する素材かどうか」

化学組成・結晶構造・不純物などの特徴を調べることで……
地球上のものであれば、地理的な産出地の情報と照合したい

日本のものでなければ、ディヴィジョンの地域にあたるのか
最終人類史にない要素があれば、未来なのか……
機械や、未知の素材が含まれていないか?

素材は均一なのか、碑文ごとに特徴があるのか
同一でなければ、たとえば奪還戦の直前など、漂着した時期とあわせて、関連が見えてこないだろうか

科学的手法のほか、年代測定には考古学的手法も使えないか
有機物があれば放射性炭素年代測定や、カリウム-アルゴン法、ウラン-鉛法等
新宿断層碑文は、もし掘削が可能なら併せて調査を


イシュア・アルミゴス
そういうものって流してきたけどそうだよねえ。
改めて考えると誰が何のために、って話だよね。
これがクロノ・オブジェクトなのかすら知らないし。
慣れは怖いね、ここはしっかり調査していこう。

改めて見ると結構あるんだね。ふーん…刻んでいる以上は誰かに伝えるのが
目的なんだろうけど、新宿断層碑文はルールで、各地の碑文は報告書って感じ。
最終人類史の為だったらあまりの親切心に感動しちゃうよ。

そもそもこれってどうやって文字を刻んでるんだろ。道具とか使って?
それともレーザーか何かで刻み込まれてるの?漂着してるものもある以上
破損して読めませんでしたじゃお話にならないよね。絶対伝えたいんだから
何か処置は施してる、はず。技術が分かれば時代もある程度は推測できるよね。
碑文本体を触ったり、碑文自体を少し削ってみたり加工できるものなかを
調べれば技術力の推測の助けになるかな。

単純なことでも疑問点はつぶしていくことに意味がある。
何がきっかけになるか分からないから一つ一つしっかり調べていこう。


●素材
 会議室に集ったディアボロス達。同じく募集をかけて集められた一般人の研究者たちを前に、最初に口を開いたのはエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)だった。
「兼ねてより気になっていた断層碑文……研究の機会があるのは、ありがたいことだな。よろしくお願いします」
「こちらこそ! ディアボロスの皆さんの助けになれるなら光栄です!」
 人柄を表すようなエトヴァの穏やかな挨拶に、研究者が笑顔で応える。銀の煌めきを秘めた蒼穹がその姿を映し、次いで他のディアボロス達に移る。
「俺は、『断層碑文の素材』の解析を行いたい。意図は、『碑文がどこから来たか』を探るためだ」
 組成・年代の解析を主に行うことで、断層碑文が何処で生み出されたのかを探る、それがエトヴァの思惑だった。研究者たちは彼に頼まれ、早速ここに現物がある小型の断層碑文の素材の解析を始める。
「正体不明の語らぬメッセンジャーか。断層碑文、分からない事ばかりだね」
「そういうものって流してきたけどそうだよねえ。改めて考えると誰が何のために、って話だよね」
 エトヴァの説明を聞き、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)イシュア・アルミゴス(守護星蟲・g00954)は顔を見合わせて首肯する。
「一先ず碑文が出現する状況については整理しておきたいかな」
 断層碑文そのものの素材を解析すると共に、発見されるまでの経緯も調べる事でより真相に近づけるかもしれない、と雪人は発掘も視野にいれて行動を開始する。
「これがクロノ・オブジェクトなのかすら知らないし。慣れは怖いね、ここはしっかり調査していこう」
「あぁ、まずはクロノ・オブジェクトか否か……」
 手近な断層碑文の刻まれた文字を指でなぞりながら、琥珀色の瞳を細めるイシュア。エトヴァはイシュアの言葉に賛意を示す。
「これを見てください」
 しばらくして研究者が、解析結果の表示されたモニターを指さす。
「『通常の物質ではない』か……つまり断層碑文は『クロノ・オブジェクトか、或いは、クロノ・オブジェクトに類するものであるのは間違いない』ようだな」
 調査により紐解かれるメッセンジャーの謎。だがそれは同時に調査の限界も意味するものだった。
「しかし、クロノ・オブジェクトということは」
「はい、すみません、これ以上の事は私では……」
 化学組成や結晶構造等を調べて、素材が既知のものと同じように見えたとしても、クロノ・オブジェクトかそれに類する物であるのならば性質の違いはわからない。この方向の調査をこれ以上行うのは難しいだろう。
「気を落とさないでくれ、それもこの先の精密調査の方向性を考える上で大事な参考になる」
 自分の分野では力になれないと肩を落とす研究者を優しく励ますエトヴァ。実際調査はこれ一度ではなく、この後精密調査を控えている。避けた方がいい調査方法がわかることは決して無駄ではない。
「こっちは……違いは無しか」
 材質を調べる上で雪人も研究者に一つオーダーを出していた。初期の物と最新の物など、発見時期が違う断層碑文の違いや変化がないかだ。
 材質に関してはクロノ・オブジェクトの性質故に比べる事も出来ないが、少なくとも劣化の兆候は全くない。最も最初に発見された最古のものでも3年たっていないので、これが5年経過で消える、といった法則が存在するかどうかは不明のままだ。
「……こちらのデータも見てもらえますか?」
 次にエトヴァを呼んだのは、断層碑文に付着していた土などを解析した地質の研究者だった。
「『発見された場所に、長期間存在してた』かのような痕跡が見受けられた、か……」
「ふむ? どの断層碑文に付着していた土だい?」
 エトヴァの言葉に反応したのは雪人だった。研究者からの言葉に、手元に並べた発見場所の資料を確認する雪人。
「……いや、それはおかしいね。その断層碑文があった場所は、断層碑文発見前に、その場所に何も存在していなかった事が確認されている」
 抜き出した資料をエトヴァに差し出す雪人。偶然ではあったが断層碑文が発見された場所を、それ以前に撮影した写真などが残っていたのだ。
「これは……そうか。『その場所にあったというように、歴史が改竄された』と想定できるか」
 確定ではなくあくまで想定。けれどまた一つ謎のヴェールが剥がされる手応えをディアボロス達は感じる。

●出現の法則性
「刻逆後、多くのディアボロスが漂着した新宿断層の海岸線。最初の碑文もそこで発見されたのだったね」
 一方雪人は、発見時の報告に関する資料を読みながら、発見された場所と時期をまとめていた。ディアボロス達が大地を取り戻していく度に、最終人類史の世界地図は更新され海岸線の位置も大きく変わっていく。
「でも、その後も碑文が発見されたのは、最終人類史の海岸沿いだけという認識で良いのかな」
 時系列に合わせて色を変えて多重に引かれた海岸線。そこに発見された時期と場所が書き込まれていく。流れ着く場所や方角に何か法則性はあるのか、海洋や気象の専門家と意見を交わしていく。
「誰かが状況に合わせて意図的に送っているのだとしたら、送り元はどこなのだろうね」
「確かな事は言えませんが、どこに着くか構わず海流に任せて……という感じはしないですね」
 情報をまとめて浮かび上がってきた事実。断層碑文は最終人類史の境界のどこかに漂着している。そしてそれは、必要なタイミングで最終人類史の誰かが発見できる場所に漂着している可能性があった。
「少なくとも古い情報が未発見のまま放置されて、後から発見されたというものはごく少数のようだね」
「誰かが発見していたけれど報告せず放置していたんじゃないかい?」
 研究者と一緒に断層碑文を触っていたイシュアが声をあげる。異物を恐れて、あるいは重要なものだと認識せずにそのままにしてしまった者たちもいたのかもしれない。
 それでも、断層碑文は必要とするタイミングで必ず人の目に着くところに漂着していて、発見されなかった断層碑文が殆ど無いのだとしたら。
「『発見される場所に現れるクロノ・オブジェクト』……もしくは『期間中に発見されなければ消滅するクロノ・オブジェクト』という可能性がありそうだね」
 可能性。現状、証明する事はできなさそうだ。だがそれは確かに、謎を照らす一筋の光に成り得るだろう。


●文字
「これがクロノ・オブジェクトなのかすら知らなかったし、慣れは怖いね、ここはしっかり調査していこう」
 明らかになった事実、立てられる推測。徐々に紐解かれている断層碑文をイシュア・アルミゴス(守護星蟲・g00954)は眺めていた。
「改めて見ると結構あるんだね。ふーん……刻んでいる以上は誰かに伝えるのが目的なんだろうけど……」
 独り言ちながら、イシュアの指先は断層碑文に刻まれた文字をなぞっていく。かすかにひんやりとした、硬い感触。
「新宿断層碑文はルールで、各地の碑文は報告書って感じ。最終人類史の為だったらあまりの親切心に感動しちゃうよ」
 それは断層碑文にメッセージを刻んだ者の意思だろうか、そこでふとイシュアは根本的な疑問が浮かんでくる。体を曲げて、己が這わした文字の溝をまじまじと見つめる。
「そもそもこれってどうやって文字を刻んでるんだろ」
 クロノ・オブジェクトかそれに類する物である以上、本質的な部分は不明だが、断層碑文は固い。少なくとも指でなぞった程度で溝が掘れるようなものではない。ならば、このメッセージはどうやって掘られたのか。
 原始的な道具によるものか、はたまたレーザーか何かで刻み込まれたのか。
「漂着してるものもある以上、破損して読めませんでしたじゃお話にならないよね」
 絶対に伝えたいんだから。イシュアはメッセージを刻んだ者の意思をそのように推測した。正確な内容を伝える為に、文字が解読不能にならないように、何らかの処置を施しているのではないか、と。
 イシュアの疑問を解明するために彫られた文字を重点的に検査が行われる。そうして導き出された結論は……。
「刻んだ痕跡が無い?」
 技術的な痕跡を探った結果、全く無かった。断層碑文は最初から文字がある状態で生成されたか、或いは『魔法的な方法で文字がある状態に変化した』可能性が高いことがわかったのだ。
「だからなのでしょうか、筆跡などに特徴もありませんでした」
 証明は出来ないが強いて言えば、『その言語を使う人間の筆跡を平均化したものではないか?』と調べた学者は予測を告げる。
 尋常ならざる手段で記されたメッセージ。その送り主は未だ全容を見せようとはしない。


●言語
「こないな作業は好奇心がくすぐられますわ……うちは、断層碑文に現れた文字の『言語』を解析したいと思うんよ」
 八千草・実(温室の管理者・g05182)は柔和な笑みを浮かべ断層碑文を撫でる。帰郷の瞳が宿すのは好奇心の光。それは断層碑文に刻まれた文字に向けられていた。
「言語いうんは、長い歴史がありまして……人間が発達させてきたもんやからねぇ」
 ディアボロスには異なる言語も理解し、会話や読み書きが可能な能力が備わっている。仮に未知の言語であっても問題なく理解が出来るが、その言語の体系や文法、文字などの知識は流石に実の中にはない。だが、それが何かに似ていれば、そこに重要な意味があるのかもしれない。彼女はそう考えた。
 そこで実は言語学の専門家に声をかける。
「どこの言語かわかりませんやろか?  これはやっぱり、人間の使う言語なんですやろか?」
 実が手に取ったのは、新宿断層碑文の写真。《刻逆》やクロノヴェーダの存在など、ティアボロスたちが正しく現状を理解する助けになったはじまりのメッセンジャーだ。
「そうですね、私には日本語に見えます」
 言語学者はディアボロスではない。その彼は新宿断層碑文を日本語であると答えた。その他の漂着した断層碑文の写真や現物も一つ一つ答えていく。大多数は日本語、しかし時に別の言語もの物存在した。日本語だけということはないようだ。
「新宿断層碑文が日本語やったら……オーストラリアで出て来た碑文は、英語にはなりませんやろか?」
「英語が多いです……ですが、日本語や別の言語のものあります」
「そうどすか。でもこれ、書いている内容は同じやねぇ」
 それはある奪還戦の時期を告げる断層碑文。同じオーストラリアで発見されたものだが、英語と日本語で書かれていた。
「もしかしてこれ、最初に発見した人によって変わるのかも」
 イシュアがハッと顔をあげる。彼の疑問から始まった調査で、断層碑文の文字が刻まれたものでは無い可能性が高まった。であればどの言語になるかは発見者がトリガーかもしれないと思いいたったのだ。
 実は首肯し、すぐに資料を紐解く。断層碑文が発見された時、その報告者はについてもきちんと記録が残されていた。
「うん、第一発見者の母国語になるみたいやねぇ」
 日本語が母国語の発見者が提出した断層碑文は日本語に、英語が母国語の発見者が提出した物は英語に……殆どがそのようになっていた。一部例外もあったのだが……。
「それも、やっぱり本当の第一版権者が名乗り出なかったパターンなのかもね」
 どの言語を用いる人物であっても、必ずメッセージが読まれるようにしたのだろうか。実はメッセージの送り手に想いを馳せるのだった。

●はじまりからの疑問
「みんな、ちょっといいかしら?」
 ディアボロスと研究者たちが調査や意見を交わす中で一人様子を見守っていたレオアリア・フォルシオン(フォルシオン統一王朝初代皇帝『征龍帝』・g00492)が口を開く。
「まず最初に不思議に思ったのだけど――」
 最初、それはレオアリアが敗北し、最終人類史に漂着し、仲間となるディアボロス達と出会って断層碑文の情報を共有した。その時からだ。
「『こんなちょっと不思議な場所に現れた碑文の、異能無き世界において空想染みた言葉』の内容を、ディヴィジョン出身のディアボロスがいたとはいえ……どうして『全員が全員』『書かれた内容全てが真実だと確信した』のかしらね?」
「……」
 レオアリアの言葉に、会議室は静まり返る。確かにそうだ。最終人類史は21世紀という時代に在り──知られないだけで裏の世界に神秘が実在していたとしても──魔法や超能力などというものはオカルト空想として片づけられる。多くの人々が信じていない社会だった。彼女が新宿島で暮らし、最終人類史の文化や価値観を知っていく度に、その疑問は膨らんでいった。
 それが、何故。歴史の侵略者や、彼らによって改竄された時間、奪われた大地という荒唐無稽な『物語』を『事実』として受け止められたのか。
「それは……」
 神妙な顔をする他のディアボロス。レオアリアは静かに見つめる。その『答え』は彼らの中にある。そして外ならぬレオアリアの中にも。そう、それは。
「直感的に、『情報が正しいと感じた』……アナタもそうよね?」
 レオアリアが見つめるディアボロスも、その他の者も首肯し同意を示す。そう、ディアボロス達は断層碑文のメッセージを読んだ時、その内容の正しさを感じ取ったのだ。
「俺はこれは、攻略旅団の提案による調査の場合に得る直感に似ているように思う」
 己の胸の内に湧き上がるものを確かめるように、噛み締めるようにエトヴァが告げる。
「確かにそうね、似た感覚だわ……ねぇ、アナタ方はどうなのかしら?」
「え? ええと、はい。最初はディアボロスの方々がそう感じるならば、そうなのかな、と……その後は結果的に正しかったので信憑性が高いのだなと判断しました」
 水を向けられた学者の一人が語る。
「ディアボロスではない方は直感を得ていないのなら、これはディアボロスの能力の一つなのかもしれませんね」
「恐らく、これは復讐者や時先案内人等の情報に関する本能等に働きかける効果があるのではないかしら?」
 己が兼ねてより抱いていた疑問に一つの仮説が与えられた事に、レオアリアは笑顔になる。
(「……下手をすれば、ディアボロスの真実の一端について暴けるかもね」)
 この情報だけで、ディアボロスがどこから来たかは判らない。もう少しいろいろ考察を進める必要があるだろう。だが、断層碑文とディアボロスの能力について新たな想定が発見された事は事実だった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【書物解読】LV2が発生!
【操作会得】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!

●調査結果
 ディアボロスと学者たちによって断層碑文に関する調査は進んでいった。
 現在までに判明したのは、以下の通り。
 断層碑文はクロノ・オブジェクトか、或いは、クロノ・オブジェクトに類するものである。その為科学組成や結晶構造等の調査は難しい。
 付着している土に、そこに長期間存在していたような痕跡が認められたが、元々そこに無かった事が確実な場合でもそうなので、存在していたように歴史が改竄されたと想定される。
 断層碑文は最終人類史の境界線のどこか、必要なタイミングで最終人類史の誰かが発見できる場所に漂着している可能性があり、『発見される場所に現れるクロノ・オブジェクト』である可能性と、『期間中に発見されなければ消滅するクロノ・オブジェクト』である可能性があるが、証明は出来ない。3年たった現時点での劣化は見られない。
 断層碑文の文字は刻まれた痕跡が無いことが判明。最初から、文字がある状態で生成されたか、或いは『魔法的な方法で文字がある状態に変化した』可能性が高い。その筆跡に特徴は無く、しいて言えば『その言語を使う人間の筆跡を平均化したものではないか?』と予測されるが証明は出来ない。
 断層碑文の文字は日本語が多いが多言語もあり、オーストラリアで発見された物には英語が多い。同一時期に発見されたものは言語が違っていても同じ内容。第一発見者の母国語で書かれている、という仮説が有力。
 断層碑文に対してディアボロスは直感的に『情報が正しいと感じることが出来る』。攻略旅団の提案による調査の場合に得る直感に似ている。ディアボロス以外の人々は特にそのような直感は得られない。

●さらなる精密調査へ
 ここからは、新事実を元にして、さらなる調査へ突入する。研究者や人員は変わらず借りることが出来るし、必要ならば掘削も行えるのは変わらない。
 ディアボロス達はまとめられた資料を片手に、さらなる謎の解明に勤しむのだった。
シル・ウィンディア
ルールと報告書…。
それなら、実際どれだけ違うものなんだろ?
ほかの碑文と共通されていること、そして、新宿断層碑文で違う所、そこを調べてみたいかな?
わざわざ、ルールを提示するってことは、誰かが、何かの為にってことだろうしね。

あ、出来れば新宿断層碑文を掘り出したいので力を貸してください。
力を借りつつ、怪力無双で採掘のお手伝いだね。

データや写真だけじゃなくて、現在の新宿断層碑文の状態も確認。
現在は埋まってるってことは、そこから先は直接見れてないってことだろうしね。

実際に新宿断層碑文に書かれていることを確認して、ほかの碑文と見比べるよ。
ほんとに新宿島のルールだけが追記されているのか。それともほかに重要事項の見落としがないのかをだね。
効果がありそうなら、港区のオベリスクみたいに無鍵空間も使ってみたいかな?効果があるかは別として。

ディアボロスが正しいと感じることができる。
それって何かの意志を感じるよね。
そして、その意志が何かしらの方法で最終人類史にディアボロスを呼び寄せた。

さて、その存在は何だろうね。


トロワ・パルティシオン
第一発見者の言語になるとか、必ず見つかる場所に現れる?とか、確実に伝えるって意思を感じるね。
碑文がクロノ・オブジェクトならどんな仕掛けがあっても不思議じゃないか。
だけど歴史改竄はちょっと毛色が違うようにも思えるな。
ただ情報を伝えるだけだったらそんな機能はいらないよね?
この辺を詳しく掘り下げてみようか。

碑文が長期間存在していた痕跡についてだけど、より詳しく分析してもらえるかい。
具体的に何年頃からあったって改竄されたのか知りたいんだ。埋まっていた地層が出来た頃と同じかな?
それと、その年代はどの碑文でも同じなんだろうか。
もしも必ず一致しているんだったら、そこには何か理由があるはず。
情報伝達とは別の目的があったのか、それともこうせざるを得ない事情があったのか……。
道具の仕様には、仕様を決める人の考えや事情が反映されるものだよね。
そこを突けば、送り主の正体に迫る手がかりになるだろうか。

地層の調査に必要なら新宿断層碑文を改めて掘り出そう。【照明】など残留効果をフル活用して手伝うよ。


八栄・薙鳥
断層碑文は歴史が改竄によってよって出現している、これは恐ろしい話ですね、なんとも
ディアボロスを取り巻く戦況は流動的で、しかし、ディアボロス・ウォーに関する碑文の情報は必ず攻勢をかけるに適切なタイミングで現れます
これはつまり、現在のディヴィジョン間の戦況を把握して、今も一定以上の自由度をもって歴史改竄が可能な何者──もしくはそうしたシステムが存在しているということでしょう、推定するに
ならば、わたくしはそうした存在について調査を行います、はい

方法は単純、"それ"が世界を把握していると仮定するのなら、どこからでも言葉でもって語りかければ良いでしょう、ええ

もし、断層碑文をわたくし達に授けし方
聞こえているのなら返事をください
声を持たないなら、新しき断層碑文を生み出し届けてくれるでも構いません
わたくしは貴方が刻逆を起こした張本人ではないかと予測します
ですが、だとしたら、刻逆の目的から外れると予測されるイレギュラーたるわたくし達に情報支援を行うのでしょう?
貴方はなぜわたくし達に碑文を授けるのですか?


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
興味深いな……
様々、思うことはあれど今は調査を進める段階
さらなる情報と手掛かりを得よう

新宿断層碑文を、掘削しようか
これが発見される場所に現れるクロノ・オブジェクトであった場合
断層と一体化しているならば
新宿島が切り離されることが見越されていたのではないか?

調べたい事は
「碑文が、ディアボロスでも扱えるものかどうか」
碑文がクロノ・オブジェクトなら、稼働状態があるのではないか?
オベリスクや他のオブジェクトを参考に、パラドクスや残留効果への反応を見たり、断層碑文に地獄変等のエネルギーを注いで、何らかの反応が起きないかを調査
次は巨大神像を参考に、触れて意思や感情、祈りの力を注ぎ込む
……起動に足るエネルギーは何か?
駄目元で操作会得を

我々でも稼働が可能ならば……
何らかの共通する摂理を見出せるかも
そこから使用方法や用途など、閃きや解読できないかな

専門家の方々に、微量の変質や反応でも見落とさないよう、様々に計測して頂こう
直感も働かせ観察

未来予測と悲劇感知し、危険を避ける
新宿断層が危険な場合は小型の方で試験を


文月・雪人
成程、『断層碑文が存在していたように歴史が改竄された』と。

ずっと気になっていた事があるんだ。
俺達は違和感なくこの時代の事を『最終人類史』と呼んでいるけれど、
これはまるで『人類滅亡後の歴史』もまた、別に存在するかのような言い回しだよなと。

滅亡と言えば、平安鬼妖地獄変奪還戦の時、
安倍晴明は俺達の事を『滅びの未来の生き残り』だと推測した。
年代の誤認と思われた部分もあったけど、
もしあの表現がただの誤認ではなく、
今の最終人類史とは別の未来、
刻逆による大地の消失も起きていない、
『本来辿った筈の未来で起きた人類の滅亡という歴史』
の存在を意味していたとしたらどうだろうか。

そんな仮説も立てつつ、
碑文が未来から送られて来た可能性や、
或いは『刻逆の起きていない本来の時空』から送られてきた可能性について、
専門家や皆の意見を聞きながら検証を進めたい。

そういえば海から流れ着く碑文ってさ、ボトルメールみたいだよね。
ならば此方からも、碑文の文字をパラドクスで書き換えたものを、
送り元に向けて送ってみる事は出来ないのかな?


●姿定まらぬ送り主
「成程、『断層碑文が存在していたように歴史が改竄された』と」
 ここまでの調査をまとめた資料を読みながら文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は独り言つ。その胸の内には以前から彼の中に宿る疑問が湧き上がっていた。
「ずっと気になっていた事があるんだ。俺達は違和感なくこの時代の事を『最終人類史』と呼んでいるけれど、これはまるで『人類滅亡後の歴史』もまた、別に存在するかのような言い回しだよなと」
「それは……」
 雪人の脳裏に蘇るのは、平安鬼妖地獄変奪還戦。断片の王だった安倍晴明は雪人達ディアボロスの事を『滅びの未来の生き残り』だと推測していた。
 それは年代の誤認と思われた部分もあったが、もしその表現がただの誤認ではないとしたら。
 今の最終人類史とは別の未来、《刻逆》による大地の消失も起きていない世界。
「『本来辿った筈の未来で起きた人類の滅亡という歴史』
の存在を意味していたとしたらどうだろうか」
 既に滅んだ安倍晴明の真意を探ることは難しい。故に雪人は考察の土台に仮説を積む。
「つまり雪人は、断層碑文は未来からあるいは、《刻逆》の起きていない本来の時空から送られてきた可能性を考えているんだな?」
「そう、仮説に仮説を重ねるような話で決定的な事実とは言えないけどね」
 雪人の語る可能性をオウム返しするエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)に、雪人が苦笑しながら返す。
「でも……それ聞いてわたしちょっと思ったのだけど」
 シル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)は己の唇に指をあてながらふと浮かんだ推測を紡ぐ。
「『事件が発生する前に、その事件の内容を知らせる』という流れって、時先案内人の感知する情報に似ていない?」
「奪還戦を告げる断層碑文だね?……確かに、『その情報と共に、多数のパラドクストレインが出現する』……ファーストアタックへ向かうための」
 雪人は己が仮説に仮説を重ねた所にかぶせられた推測を深く考える。前提があくまで仮説である以上、その先に見える光景はあくまで推測で決定的な事実とはいえない、だが、もしそうであるならば……。
「『パラドクストレイン』と『関連』している可能性は低くはないかもしれない。つまり『パラドクストレイン』を創造した存在と、碑文の送り主は同じ存在かもしれない」
 決してヴェールが剥ぎ取られたわけではない。それでも輪郭から
その中に在る姿を思いめぐらせることはできる。

●歴史改竄
「第一発見者の言語になるとか、必ず見つかる場所に現れる?か、確実に伝えるって意思を感じるね」
 トロワ・パルティシオン(新時代の音色・g02982)は調査報告を読みながらメッセージの送り主について思索を巡らせる。
 断層碑文がクロノ・オブジェクトならどんな仕掛けがあっても不思議ではない。だけど。
「だけど歴史改竄はちょっと毛色が違うようにも思えるな。ただ情報を伝えるだけだったらそんな機能はいらないよね?」
 トロワは判明した、あるいは想定された断層碑文の機能の中で、歴史改竄をして出現する可能性について違和感を覚えた。送り主がそれを除法伝達の手段として用いる意義を考える。
「情報伝達とは別の目的があったのか、それともこうせざるを得ない事情があったのか……」
 道具の仕様には、仕様を決める人の考えや事情が反映されるものだ、とトロワは考える。ならば、断層碑文の仕様にも事情があるはずだ。と。
「碑文が長期間存在していた痕跡についてだけど、より詳しく分析してもらえるかい? 具体的に何年頃からあったって改竄されたのか知りたいんだ。埋まっていた地層が出来た頃と同じかな?」
「可能な限りやってみます」
 クロノ・オブジェクトであるため成分分析などで計測する事は出来ない。だが、ヒントは別の資料から立ち上がってきた。
「……これ、クロノヴェーダのディヴィジョンが成立した時に、過去に遡って『もとからそうであったような歴史が捏造される』という現象に似ていませんでしょうか?」
 端末で資料を探っていた八栄・薙鳥(世界拡張どこまでも・g09872)が声をあげる。
 薙鳥は最初にこの想定が導きだされた時から、歴史改竄に関する資料をあさっていた。ディヴィジョン出身である彼女にとってそれは他人事では決してないもの。
「見せて?……うーん、つまり『実際に、マル年前に石板が漂着』し、その後、その場所にマル年放置され、今この瞬間に発見された……というのでは無く。発見される瞬間か少し前にいきなり石碑が出現する」
 トロワは端末を借りて資料を読み込み、断層碑文の情報と合わせて考察を行っていく。
「……でも『もとからその場所にあったかのように、歴史が改ざんされた状態』で出現するので、現れる瞬間を見る事は出来ない、ってことかぁ……うーん、でもそれってさぁ」
 組み立てた考察が導き出す一つの推論。それは。
「送り主は、歴史の改竄を使いこなせてる、つまり《刻逆》に関連する存在の可能性が否定できないってこと、だよね?」
 送り主の正体、その全貌は未だ幾層に連なるヴェールの向こう。それでもトロワの紫の瞳はうっすらとしたシルエットを見出そうと、断層碑文と資料に没頭するのだった。

●新宿断層碑文、再び
「そういえば海から流れ着く碑文ってさ、ボトルメールみたいだよね」
 ふと雪人はそんな思い付きを口に出す。ならば此方からも碑文の文字で書き換えて送り元に向けて送ってみる事は出来ないのか、と。
「興味深いな……俺も『碑文が、ディアボロスでも扱えるものかどうか』は考えていた」
 思いつきに食いついたのはエトヴァだった。
 ディアボロスが装備している武器もクロノ・オブジェクト、ディアボロスにとって特別なものではない。故に、クロノ・オブジェクト或いはそれに類する物と思われる断層碑文も自分たちで使用できないか、と考えるのは自然な成り行きだった。
「新宿断層碑文を、掘削しようか」
「あ、私も出来れば掘り出したいので力を貸してください」
 エトヴァの提案にシルも賛同する。彼女は現在の新宿断層碑文の状態を調べたいと告げる。
「現在は埋まってるってことは、そこから先は直接見れてないってことだろうしね」
 もし仮に、最初に発見された状態から新宿断層碑文が変化しているとするならば、何らかの外部要因で変化を加えられる可能性がある。それはエトヴァの調べてみたいことと一致するだろう。
 善は急げと一行は会議室を出る。連絡済みの技術者たちと重機がすでに準備をしており、かつて新宿島の海岸だった場所に陣取っていた。
 掘削作業は特に問題なく順調に進む。ディアボロス達も各々のできる事で協力し、ほどなく新宿断層碑文が再び白日の下にその姿を現す。
「ルールと報告書……」
 かつて見た、そして今また目の前に現れた新宿断層碑文を前に、シルは独り言つ。先ほどの調査の折、あるディアボロスが口にした感想。そのディアボロスが感じた新宿断層碑文と漂着した断層微分の中身の違い。
「それなら、実際どれだけ違うものなんだろ?」
 記述されている内容は、当然異なる。そうではなく他の部分で、はじまりのメッセンジャーたる新宿断層碑文と他の断層碑文との違いが存在するのか。シルの疑問は其処に在った。
「……特に、変化はしてないかな?」
 シルの手の中にあるのは、まだ大地が奪還されていなかったころ、むき出しになっていた新宿断層碑文を撮影した写真と、その時調べられていたデータ。記述されている情報が変化していたり、追加されているような形跡は一切無く、石碑自体の様子も変化はないようだ。
「クロノ・オブジェクトだから劣化しにくい、とかはあるかもしれないけれど……特別な魔法的な効果は失われているのかも」
 精霊術という魔法を扱う者として、シルが実際の新宿断層碑文を見て浮かんだ推測がそれだった。
「それにしても大きいですねぇ」
 新宿断層碑文と持ってきた小型の断層碑文を見比べる薙鳥。
「うん……でももし最初の碑文が『小さな碑文が沢山流れ着く』ものだったとしても、情勢に変化は無かったよね」
 断層碑文がその時必要になる情報を伝えるための物であるならば、どのような形であれ、一番最初に新宿島で発見されるであろう内容に違いは無かっただろう。《刻逆》やクロノヴェーダの歴史侵略を知り、戦いの準備を始めるのに十分な情報が得られたはずだ。
 新宿断層碑文がことさら巨大であることに、情報的な意味はなさそうだ……であれば何故。
「単純に『最終人類史』の範囲が非常に狭かった為、大きさが大きくなった?」
「或いは、『最初に送りつける碑文は巨大でなければならない』みたいな、魔法的制約があった可能性もあるかも」
 エトヴァの推測にシルは魔法を嗜む視点からの推測を加える。

●白紙の可能性
 地中に没していた新宿断層碑文を掘り出し、その内容に見落としや変化が無かった事が確認できた。
 その事実は、断層碑文をディアボロスも扱えないかと考えていたエトヴァにとっては、好ましいものでは無かった。
「そうか、俺達が発見した断層碑文は『使用済み』ということになるのか」
 これまでディアボロスはいくつかのクロノヴェーダが使っていたクロノ・オブジェクトを手に入れ、解析し、利用してきた。地獄変のエネルギーを利用したり、祈りの力を注ぎ込むなど、多岐に渡る手段とノウハウがある。
 だが、その上で、それらのクロノ・オブジェクトはあくまで本来の使用用途と変わらぬ稼働をさせてきた。
 断層碑文というクロノ・オブジェクトまたはそれに類する物を稼働させるという事が『何も書いていない碑文を、どこかの時代に送り、その時代に必要な情報を記す』という事であると想定されるならば、最終人類史にて発見された全ての断層碑文は、その通りの機能を果たし終えた後ということになる。新しい変化も起きていないのならば、恐らくこれら『使用済み断層碑文』を稼働させることは出来ないのだろう。
 だがしかし。それは逆に言えば。稼働前の『使用前の断層碑文』は別であるともいえる。
「……最終人類史に漂着する前、情報が記載される前の『碑文』を手に入れることが出来れば、そこにエネルギーをつぎ込む事で『最終人類史の未来を占ったり、別ディヴィジョンに漂着させて、その他の大事件を予知する』事が出来るかもしれないな」
 現状、そのような断層碑文がどこにあるのか、どうやって手に入れるのか、手に入れたとして本当に想定通りにいくのかは、何のヒントも確証も無い。言ってしまえば夢物語である。しかし。
「もしも、未使用の碑文を発見する事があれば、是非試してみたいな」
 それは絶望を意味しない。白紙という可能性を、エトヴァの瞳は静かに見つめていた。

●呼びかけは届いたか
 調査が続く間も、新宿断層碑文は静かに佇んでいる。
「ディアボロスが正しいと感じることができる。それって何かの意志を感じるよね」
 新宿断層碑文のメッセージを眺めながらシルは独り言つ。推定ではあるが歴史改竄を行い幾度も最終人類史に必要な情報を送ってきたメッセージの送り主。
「さて、その存在は何だろうね」
その詳細も、動機も、未だヴェールの向こうで姿を見せはしない。
「わかりませんが……」
 シルの呟きに薙鳥が応える
「断層碑文は歴史が改竄によってよって出現している、これは恐ろしい話ですね、なんとも」
 薙鳥は続ける。ディアボロスを取り巻く戦況は流動的で、しかし、ディアボロス・ウォーに関する情報は、必ず攻勢をかけるに適切なタイミングで現れると。
「これはつまり、現在のディヴィジョン間の戦況を把握して、今も一定以上の自由度をもって歴史改竄が可能な何者──もしくはそうしたシステムが存在しているということでしょう」
 薙鳥の推論。つまりメッセージの送り主は観察者でもあるのではないか、というものだ。
 もし"それ"が世界を把握していると仮定するのなら。どこからでも言葉でもって語りかければ良いのではないか、と。
「もし、断層碑文をわたくし達に授けし方。聞こえているのなら返事をください」
 薙鳥は大きく両手を広げて天に掲げ空を見上げる。そこに『誰か』の瞳が、耳があるとでも言いたげに声を張り上げる。
「声を持たないなら、新しき断層碑文を生み出し届けてくれるでも構いません。わたくしは貴方が《刻逆》を起こした張本人ではないかと予測します」
 人類史改竄術式《刻逆》。人類史そのものを改竄する禁忌の外法。全てはこれより始まった。歴史改竄で断層碑文を漂着させられる能力を持つと考えられる送り主との類似性を見出す事は、左程不自然ではない。
「ですが、だとしたら、刻逆の目的から外れると予測されるイレギュラーたるわたくし達に情報支援を行うのでしょう?」
 だがそうなれば別の不自然な疑問点が浮かび上がる。
「貴方はなぜわたくし達に碑文を授けるのですか?」
 切なる問いは、空へ放たれ溶けて消えていく。
 薙鳥の黒い瞳が、雲一つない最終人類史の空を見つめ続ける。そこに、そこに問いの答えが、何らかの反応があるのではないかと、見逃すものかと、瞬きさえする暇など無いと、じっと。
 三分、五分、十分。静かに時は過ぎる。遠く街の喧騒がかすかに聞こえる。変化は、『返事』は、無い。
「だめ、でしたか」
「送り主が、過去の断層碑文を通じて情報を集めている可能性は、高くはないだろうね」
「ただ、相手が何らかの方法で最新情報を得ている可能性はあるよ」
 シルとトロワが薙鳥に寄り添って慰める。
「そうだね、例えば……」
 もしそうであるならば、と雪人はコンタクトを図る可能性を羅列してみる。
 ──例えば『最終人類史に奪還した土地に、万里の長城のように宇宙からでも視認できるような大きな建築物で、文字を書いてみる』。
 ──例えば『全ての都市で大音量でメッセージを流す』とか、『いろいろな周波数で海中、地中、宇宙その他、考えられる可能性のある場所に電波を流し続ける』。
「……といった方法もあるかもしれない」
「もっとも、行うならば個人では不可能だ。攻略旅団で提案する必要があるだろうな」
 雪人の推論を現実的な物にする手段を、エトヴァが考える。
 未来へ繋げる可能性を考えながら、ディアボロス達は調査を終えるのだった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【未来予測】LV2が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【書物解読】がLV3になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【ドレイン】LV2が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!

●調査結果
 続く精密調査。ディアボロス達は得られた事実から様々な推論や仮説を組み立てていく。
 新宿断層碑文は、発見当初と現在で変化はない。クロノ・オブジェクトなので劣化しづらいという事はあるかもしれないが、魔法的な特別な力は失われている可能性が高い。また新宿断層碑文だけが巨大である事に情報的な意味は無さそう。単純にその時点での『最終人類史』の範囲が非常に狭かった為、或いは『最初に送りつける碑文は巨大でなければならない』みたいな魔法的制約があった可能性がある。
 クロノ・オブジェクトとしての断層碑文の稼働が『何も書いていない碑文を、どこかの時代に送り、その時代に必要な情報を記す』という想定ならば、発見された物は既に使用済みであり、行えないだろう。どこかで情報が記載される前の碑文を手に入れることが出来れば、『最終人類史の未来を占ったり、別のディヴィジョンに漂着させて、その他の大事件を予知する』事が出来るかもしれない。
 断層碑文の送り元については仮説に仮説を重ね、何か決定的な事実を得ることは出来ない。だが、『碑文が事件発生の前にその内容を知らせる』という流れは、時先案内人の感知する情報に似ているのではないかと推測できる。更に情報と共に多数のパラドクストレインが出現する事を考えると、何か関連がある可能性は低くないだろう。『パラドクストレイン』を創造した存在と、碑文の送り主は同じ存在かもしれない
 断層碑文の歴史改竄は、発見される瞬間か少し前にその場所に『もとからその場所にあったかのように、歴史が改ざんされた状態』で出現すると思われる。これはクロノヴェーダのディヴィジョンが成立した時に、過去に遡って『もとからそうであったような歴史が捏造される』という現象に似ている。送り主は、歴史の改竄を使いこなしている事から、《刻逆》に関連する存在である可能性は否定できない
 その送り主が何らかの方法で最新情報を得ている可能性はある。送り主とコンタクトを取る為に、最終人類史に奪還した土地に、万里の長城のように宇宙からでも視認できるような大きな建築物で、文字を書いてみる』とか、『全ての都市で大音量でメッセージを流す』とか、『いろいろな周波数で海中、地中、宇宙その他、考えられる可能性のある場所に電波を流し続ける』といった方法もあるかもしれない。実行するためには攻略旅団提案が必要になるだろう。勿論、反応や返事がある確証はない。

●そして最終考察へ
 断層碑文研究はいよいよ最終段階へと進む。ディアボロス達がこれまで行ってきた調査で得られ整理した情報を元に、断層碑文に関わる考察や推論を発表するのだ。
 これまでの成果により情報の精度が高まっている事で、発表した考察や推論の考え方の方向性が正しいかどうかなど、直感的に知ることが出来る状態にある。
 世界の謎を覆うヴェールは未だ厚く多い。ディアボロスの手にする考察という刃がそれを斬り裂き、一歩でも近づけるのか、それがわかるのはこれからだ。
レオアリア・フォルシオン
まず一つ
間違いなく碑文の送り主は少なくとも『最終人類史の復讐者がディヴィジョンを奪還するのを望んでいる』上で『情報伝達という形で支援している』のは確実
理由はともあれ、クロノヴェーダに利する者の行動では絶対に無いわ

そしてもう一つ…ここから刻逆発動時の状況がある程度分かるわ
『刻逆は特定の一人の個人しか使えない物ではない』
状況証拠から『歴史改竄で改竄世界史とクロノヴェーダを生んだ者』と『最終人類史支援の為碑文を作成した者』の二勢力が、刻逆を使用…
少なくとも人類史改竄と碑文作成
明確に歴史改竄使用者間の対立構造が存在する

この事から察するに…刻逆発動時に『クロノヴェーダを生み出そうとした者』と『やがて碑文を作り出すその対立者』が少なくともいたんじゃないかしら?
『目的』が何かは分からない
だけど『クロノヴェーダの王の擁立』と『最終人類史の支援』で手段が分かれている
もしかしたら、他のイレギュラーもそうなのかも
イレギュラーとは、クロノヴェーダとは異なる刻逆の使い手の駒なのかも
なら刻逆使用者は、四人か二人?


●考察
「まず一つ。間違いなく碑文の送り主は少なくとも『最終人類史の復讐者がディヴィジョンを奪還するのを望んでいる』上で『情報伝達という形で支援している』のは確実」
 今回の断層碑文調査研究の締めとして、レオアリア・フォルシオン(フォルシオン統一王朝初代皇帝『征龍帝』・g00492)は己の考察を口にする。
 周囲には幾人かのディアボロスと研究者。誰も彼も口を挟まず静かに聞いている。まずはレオアリアの考察を語ってもらい、その考え方の方向性が正しいかと直感で判断するためだ。
「理由はともあれ、クロノヴェーダに利する者の行動では絶対に無いわ」
 断層碑文の情報があったから、ディアボロス達は《刻逆》という異常事態に即座に対応が出来た。という事実を前提に、レオアリアはそのように仮定した。すると、その仮定を土台に一つの仮説が立ち上がる。つまり。
「そしてもう一つ…ここから刻逆発動時の状況がある程度分かるわ……『刻逆は特定の一人の個人しか使えない物ではない』」
 2021年8月に新宿区以外の大地を消滅せしめた人類史改竄術式《刻逆》。その一方でやはり歴史改竄を行うディアボロス達への情報提供を行う断層碑文。立場の違う二つの歴史改竄案件は、そのまま立場の違う二者が行ったものだ。とレオアリアは考える。
「少なくとも人類史改竄と碑文作成。明確に歴史改竄使用者間の対立構造が存在する」
 2021年の夏から、世界の裏側で二つの意思の対立があったのだ、と。

●直感
「……」
 レオアリアの考察を聞いたディアボロス達は静かに己の胸の内に問いかけていた。レオアリア自身もまた、赤い瞳を閉じて直感の導きを探る。
「……多分方向性は合ってる」
 誰かが口を開いた。そして他の誰かも、レオアリア当人も首肯し同意を示す。
「つまり、ここよね?」
 レオアリアはホワイトボードに向かってペンを走らせる。自身の組み立てた考察の、その中に組み込まれた思考の方向性。推測や仮説の部分を切り取った骨子。その二つ。
「『ディアボロス』でも『ディヴィジョンを支配しているクロノヴェーダ』でもない『第三者』が断層碑文の送り主。そして……」
「送り主が歴史改竄できるのならば『《刻逆》を使用した存在は少なくとも2陣営以上に分かれていた』」
 振り向くレオアリアに、ディアボロス達が首肯する。断層碑文を調査し、露わになった事実と考えられる推論から組み立てた考察。高められた情報制度がディアボロス達に正しき直感をもたらし、二つの真実がヴェールの向こうから取り出された。
 『ディアボロス』でも『ディヴィジョンを支配するクロノヴェーダ』でもない『第三者』が断層碑文の送り主である。
 《刻逆》を使用した存在は少なくとも2陣営以上に分かれていた。 


(「察するに……刻逆発動時に『クロノヴェーダを生み出そうとした者』と『やがて碑文を作り出すその対立者』が少なくともいたんじゃないかしら?」)
 調査の最終的な結論が出て、会議室は撤収の運びとなっていた。ディアボロスと研究者たちが協力して片づけを行う中、同じく片付けに手を動かしながらレオアリアは更に思索を巡らせていた。
 《刻逆》を使用できる存在が少なくとも2陣営存在する。一方が2021年8月の事件を引き起こした側でもう一方が対立する者。その推測は、現時点においては否定すべき根拠はない。真実かどうかはわからないが推論としては問題ないものだろう。今後さらなる調査や、ディヴィジョン攻略の中で新たな事実が発見されていけば、真実と確証が得られたり、逆に否定すべき材料が見つかることもあるだろう。
(「『目的』が何かは、わからないわね……」)
 会議室の窓からは夕日が差し込み始めている。今回の調査で再び地上に姿を現した新宿断層碑文も、久方ぶりの夕日を浴びる。
 物言わぬメッセンジャーは、沈む太陽を眺めながらただ静かに佇んでいた。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ダブル】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2024年05月28日