リプレイ

今咲・栄華
出張してきましたお目当ての復讐者、アタシですよー
こいつの態度は顔も覚えてない常にキレてる昔の上司みたいだわ。
【操作会得】が使えるンだッけ、仕掛けになりそうな壁や荷物を良い感じの位置に移動させておいてェ。いざ戦闘開始!
戦うフリって言っても相手も強いから普通に戦うよアタシは。
でもさりげなくパラドクス、使えるものは以下略を使用!
見えない所で玉を転がして、操作会得の物達を巻き込んでそれが巡り巡って、まるでトループス級の誰かから攻撃を受けた、もしくは不慮の事故のように戦いの最中にアタシに何か当たって持ッてるイヤリングの爆弾が混ざって派手に自爆!
【誘導弾】技能で確実にアタシに当てるよォ。
敵は当然アタシが粉微塵になッたと思うじゃん。死体すら残らないッて。
操作会得の適当な物たちが盾になりーの身代わりになりーので、
アタシ本人は【温熱適応】で耐える。
だから大丈夫でしょ、多分。
…ギャーーッ!クソあッつ!!
…声を出しちゃ駄目だ、爆発に紛れて撤退するゥ。

ミシェル・ロメ
※アドリブ、連携歓迎
後のネメシス形態のための赤丸OK
僕の敬愛する「救国の乙女」ジャンヌ・ダルクの名を奪い
理不尽な逆恨みで罪なき人々を苦しめるキマイラウィッチ
決して許すことは出来ない
特にこのコーションは、クロノヴェーダとしての名前だけでなく
史実の悪辣な性格をも受け継いでいる
この時代は今や僕の第二の故郷、大切な居場所
こんな奴らに二度と踏み躙らせはしない……!
あえて敵のSPD攻撃を受けて精神攻撃の影響下に
思い出すのはグランダルメの断頭台
神父様は自らの正義を貫いたがために敵に目を付けられ処刑された
抵抗した多くの市民、そして僕自身も捕らえられ暴力の果てに……
脳裏によみがえる惨劇と悪意の連鎖
苦悶に喘ぐ僕を見下すコーションの嘲笑が聞こえる
普段ならば心の傷を乗り越え再起することも出来るだろう
でも今は、敵の卑小な復讐心を満たすために
あえて「己の罪」と向き合い受け入れる
この悲しみを決して忘れない
怒りも復讐も越えて、その先にある「救済」の道をいつか見出すために

アマネ・モルゲンシュバルツ
相手をいい気分にさせるってのはなんだかいい気分がしないわね。
まぁ、後で一気に突き落とせるっていうならそれでもいいかもね。
手を抜かれてると思われないためにもある程度雑魚を攻撃して
何体かに深手を負わせないと行けないかな。
「…どうなってる!?以前は余裕だったのにどうして…!」
とまぁ、いかにも全力出してますアピールをしてみようかしら
相手は復讐の念でディアボロスを超えたと思い込むでしょうね。
そして敵の攻撃もあえて食らう。
と言っても致命傷は喰らわないように程よく回避しつつ食らってね。
そんでもって相手がとどめを刺しに来るところで…!
紙一重で回避しつつ
「Schei…sse…!こんな奴らに…」
いかにも心臓を貫かれたような演出をするために
前もって仕込んでおいた輸血パックを破って激しい流血を演出。
そしてあえなく倒れ込む。
「うぅっ…ごめんなさい…赦してください…っ」
とまぁ情けなく命乞いもプラスして倒れ込めば満足でしょ。
案外磔で晒し者にしてやろうとか思うかもしれないわね。
●序幕
バルセロナ某所。古風な建物に挟まれた裏通りに、JR山手線の車両に似た列車が停まっていた。
異様な光景ではあるが、その列車がパラドクストレインとなれば、話は別だ。
「こうやって電車で気軽に海外出張できるのは、有限会社・新宿島の社員だけの特権だよねぇ」
車両側面に並ぶ黄緑色の扉が一斉に開き、そのうちの一つからスーツ姿の女が降り立った。
今咲・栄華(ゲットワイルド退職・g00910)。前職はブラック企業の勤め人である。
「いつから新宿島が会社になったんだい?」
と、二人目の降客――眼鏡をかけた少女が問いかける形で指摘した。
サイボーグのアマネ・モルゲンシュバルツ(憤怒のドラッヘリッター・g00313)。その身に纏っているのは継ぎ接ぎだらけの学校制服……のように見えるが、実際は『継ぎ接ぎだらけ』どころか『継ぎ接ぎだけ』である。襤褸を縫い集めて制服に仕立てた代物なのだ。
指摘へのリアクションを待つことなく、アマネは言った。
「まあ、しかし……新宿島が本当に会社だとしたら、かなりホワイトな気がするな」
「福利厚生も充実してるしね。もっとも、仕事の内容は3Kを通り越して5Kくらいあるけどぉ」
「そうですね」
と、栄華の軽口に頷きながら、白い翼を有した金髪碧眼の少年が降車した。同じく翼を有した少女とともに。
少年は天使のミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)。少女はオラトリオの『リリコ』。
「ミシェル、ノリ悪すぎぃ」
栄華が唇を尖らせて抗議した。
「今のは『追加の2Kはなんなの?』って返すところでしょ」
「あ、すいません……」
苦笑混じりの謝罪を返すミシェル。
しかし、緩やかな空気が流れていたのはそこまで。
天使の少年は表情を厳しいもの(同時に悲しさも帯びていた)に変えて、歩き出した。
同じく厳しい表情をつくった少女と、唇を尖らせたままの元OLと、目を隠したオラトリオも後に続いた。
●アマネ・モルゲンシュバルツ(憤怒のドラッヘリッター・g00313)
あたしたちは大通りに出た。
パラドクストレインが停車していた場所と違って、この辺りはモダンな建物が多めかな。霧の向こうにうすぼんやりと浮かんでいる(『完全視界』が働いてなかったら、うすぼんやりとさえ見えなかっただろうね)一際大きなビルのシルエットも葉巻かトウモコロシみたいで近代的というか未来的な感じがするし、一周回ってレトロフューチャーって感じがしないでもない。
断頭革命グランダルメ出身のミシェルにとっては(新宿島の摩天楼を見慣れているとはいえ)レトロじゃなくて普通にフューチャーな光景だろうけども、おのぼりさんみたいな振る舞いはしてない。真剣な顔で周囲を警戒してる。
一方、栄華はというと、なにやらヘンな作業をしていた。新聞販売用のスタンドの位置を変えたり、そのスタンドにガラクタの集合体みたいな機械をくっつけたり、機械から伸ばしたワイヤーを街路樹に括り付けたり……。
「なにやってるの?」
「パラドクスの準備よ」
あたしの問いに栄華はそう答え、聞き慣れない言葉を付け加えた。
「所謂『ルーブ・ゴールドバーク・マシン』ってやつ」
「……は?」
「判りやすく言うと、『ピタゴラ装置』かな」
「あー、はいはい」
あたしは納得したけれど、ミシェルは理解できなかったらしく――
「ぴたごら?」
――目をテンにして、首をかしげてる(ちなみにリリコの首も同角度逆方向に曲がってる)。
でも、すぐに真剣な表情に戻り、首もまっすぐに直して、大通りの奧を指し示した。
「来ましたよ!」
そちらを見やると、霧の紗幕をかきわけるようにして進んでくる者たちが見えた。
そう、クロノヴェーダの群れ。
一体を除いた全員が半人半蛇の女だった。所謂『ラミア』ってやつだけれど、下半身だけじゃなくて髪や両手までもが蛇の形をしているという異形ぶり。おまけにそこかしこの肉が剥げ落ち、骨が露出してる。
除かれた一体は、高僧の格好をした豚っぽい獣人。キマイラウィッチだけど、蹂躙戦記イスカンダルから迷い込んだゴブリンだかオークだかが聖職者のコスプレをしているようにも見える。
「ピエール・コーション……」
コスプレ獣人の名をミシェルが口にした。声は小さいけど、感情はたっぷり。どんな感情なのかは言うまでもないよね?
「見て! 獲物がいるわよ!」
「ディアボロス? それとも、ただの人間?」
「どちらでもいいわ! どうせ殺すんだから!」
ラミアたちが口々に叫んだ。ミシェルと同じく、感情たっぷりに。
そんな彼女たちよりも更に感情マシマシにコーションが怒鳴り散らした。
「そうだ! 殺せ! 消し去れ! 焼き尽くせ! 灰一粒とて残すでないぞぉーっ!」
顔を歪めて血管を額に浮かべてる様の見苦しいことと言ったらもう。
死んだ振りまでして、こんな奴を良い気分にさせなきゃいけないなんて……任務の特性上しかたないとはいえ、精神的にキツいものがあるなあ。
だけど、まあ、いいか。
ほんの一時だけ良い気分にさせた後で、奈落の底に突き落とせるんだからね。
●今咲・栄華(ゲットワイルド退職・g00910)
「救国の乙女たるジャンヌ・ダルクの名を奪い、理不尽な逆恨みで罪なき人々を苦しめるキマイラウィッチ……決して許すことはできません」
迫り来る豚男&蛇女たちを見据えて、ミシェルが怒りの呟きを漏らした。
「とくにあのコーションは史実のコーションの悪辣な性質をしっかり再現しているようですから――」
「――絶対に許しちゃおけないよねェ」
と、アタシは後を引き取った。
「あいつを見てると、かつての上司の姿がダブって、ふつふつと怒りがわいてくる。ホント、あのクソ上司と来たら……どンな顔してたのかも覚えてないけど、パワハラセクハラアルハラ三昧の言動は忘れたくても忘れらンないわぁ」
なンか、アタシの怒りとミシェルの怒りって、ベクトルが違いすぎるような気がしないでもないけれど……まあ、どうでもいっか。怒りに貴賤なーし。
さて、その怒りを行動に移すとしようかな。
敵を睨みつけて啖呵を切り――
「来るなら来いっての! この爆弾でブッとばしてやっから!」
――手にしていたスイッチをポチッとな。
途端にパラドクスが発動。ピタゴラ装置に仕込ンでいたビー玉が転がり、シーソーが跳ね上がり、ワイヤーが巻き取られ、バネが弾け、歯車が回り、そして――
ドッカァァァーンッ!!
――と、来たもんだ。
大爆発が起きた場所は敵の足下じゃなくて、アタシのすぐ真ン前。
もちろン、誤爆したわけじゃないよ。すべて計算通り……って、熱っ!? クソ熱っ!? 一応『温熱適応』は使ってるけども、業火の前では無力! 焼け石に水ですらない! それでも悲鳴とかをあげちゃうのはNGなンだよね。アタシは声を押し殺し、激しい爆炎を隠れ蓑にして素早く退避した。なぜか、リリコも一緒についてきてるし。
「グフフフフッ! 愚か者が自滅しよったわ!」
豚男の笑い声が聞こえてきた。アタシが爆発に巻き込まれて粉微塵に(そう、『灰一粒とて残すでない』というリクエスト通りに)なったと信じ込ンでいる模様。愚か者はどっちだっての。
ビルの陰に隠れて、リリコと一緒に戦場の様子をそっと伺ってみると――
「栄華の無念、あたしが晴らす!」
――片腕を前方に突き出しているアマネの姿が見えた。
機械仕掛けの腕がガチャーンと展開し、光に包まれた槍っぽいものがシュバッと飛び出す。それは一体の蛇女に突き刺さったけども、いまひとつ効いてない感じ。まあ、アマネはわざと手を抜いたンだろうけどね。
「ど、どうなってる!? 以前は余裕で倒すことができたのに……」
キリリとした表情を絶望のそれに変えるアマネ。役者やのう。
「グフフフフ」
と、豚男がまた笑った。
「生温い怒りしか知らぬクロノヴェーダならば、余裕で倒すこともできたであろうな。しかし、吾輩たちは違う! この魂を燃え上がらせる怒りの炎は世界のなによりも熾烈にして苛烈にして激烈なのだぁーっ!」
はいはい、よかったね。
●ミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)
「この程度の力しか持ち合わせていない奴らが復讐者を気取っているなんて――」
アマネさんに攻撃を受けたトループス級が右半身を引くようにして体を撓めた。
そして、右腕を突き出した。
「――とんだお笑い種だわ!」
腕から槍を飛ばしたアマネさんと違って、トループス級は腕そのものを飛ばした……じゃなくて、伸ばした。
蛇の骨格の形をしたそれはこの世の理を無視して一瞬のうちに普通の腕の何本分もの長さとなり、アマネさんの左肩に牙を突き立てた。
「あぁーっ!?」
悲鳴をあげるアマネさん。もちろん、それも芝居のはず。
肩に手をやり、深い傷口(と見せかけているだけで、実際は致命傷には程遠いだろうけどね)を押さえながら、彼女は芝居を続けた。
「……ご、ごめんなさい……許してくださいっ!」
その命乞いに耳を貸すことなく、トループス級は蛇の攻撃を再び繰り出した。
「覚えておくことね! 『復讐者』を自称する資格があるのはキマイラウィッチだけだってことを!」
「あぁぁぁぁぁーっ!?」
先程よりも大きな悲鳴が響き渡る中、アマネさんの胸の辺りから血が噴き上がり、宙を赤く染めた。血糊の類じゃなさそうだけど、アマネさん本人の血でもないと思う。たぶん、輸血用の血液とかを事前に用意していたんじゃないかな?
やがて、悲鳴が途切れて、アマネさんはばたりと倒れ伏した。
さあ、今度は僕が芝居をする番だ。
「許さないぞ!」
でも、この叫びは芝居じゃない。この怒りは嘘じゃない。
僕はパラドクスを仕掛ける素振りを見せた。あくまでも素振りだけ。標的はトループス級たちではなく、ピエール・コーションだ。
「図に乗るでないわ! 貴様らこそが許しを乞う立場であろうが!」
コーションが先手を取り(こっちが取らせてあげたんだけどね)、パラドクスを放った。
見えない圧力が僕にしかかってくる。左右の膝が地面に落ちたかと思うと、次の瞬間には体全体が倒れていた。
「どうだ、虫ケラよ? 神罰にして厳罰にして劫罰のパラドクスの味は?」
コーションの憎々しい声が聞こえてきたけれど、横倒しになった視界に奴の姿はない。代わりに見えるのは断頭台。僕が生まれたディヴィジョンの呪わしき象徴。
「己が罪と向き合い、絶望感と罪悪感に打ちのめされ、打ちひしがれ、打ち砕かれるがいいわぁーっ!」
パラドクスがもたらした幻覚は断頭台だけじゃない。人々が次々と処刑されていく光景も展開された。圧政に抵抗した市民たち、僕を救ってくれた神父様、そして……僕自身。
コーションの言葉通り、僕は『己が罪』と向き合い、喚起された絶望感と罪悪感に打ちのめされ/打ちひしがれ/打ち砕かれた。普段なら、この程度(と呼ぶにはあまりにも重すぎるけど)のことは乗り越えられる。いや、乗り越えなくちゃいけないんだ。怒りや復讐の先にあるだろう救済の道を見出すために……。
でも、今回は乗り越えずにいよう。コーションの卑小極まりない復讐心を満たしてやらなくちゃいけないから。
僕は目を閉じ、受け入れた。
二度目の死を。
偽りの死を。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
●幕間
「グゥーフフフフフフフッ! 『復讐は冷めてこそ美味い』とはよく言ったものよ! ああ、なんと甘美であることか! 彼奴らの死に様を思い出すだけで力が漲る! 昂ぶる! 迸るぅーっ!」
ピーター・コーションは勝利に酔いしれていた。実際のところは漲る/昂ぶる/迸るどころか、何人かのディアボロスたちを倒した(と思い込んだ)ことで復讐心は少しばかり弱まっているのだが、自覚症状はないらしい。
「だが、これはほんの手始め! この奇妙な地に隠れたすべてのディアボロスを狩り立て、狩り込み、狩り尽くしてくれるわ! いくぞ、グリーディラミアども!」
トループス級たちとともにコーションは大通りを歩き出した。
新たな獲物を求めて。
自分たちこそが狩り立てられ、狩り込まれ、狩り尽くされる獲物であることも知らずに……。
今咲・栄華
ワタシの態度を社畜の鑑モードで進行させていただきます。
また、装備をまだまだいけるヤツ、つまり誕生日に悪友にいただいたセーラー服に変更。
キッツとか言わない。言っておりませんね。
とはいえ顔をガッツリ変えている訳ではないので離れて戦いましょう。境界の霧があれば可能でしょうか。こちらは完全視界で敵を確認いたしますね。
顔が割れないよう戦闘は遠距離攻撃にいたしましょう。
パラドクスで剣を連続で投げ敵に近づかれないようにします。
泥濘の地で相手の移動速度を下げればなお安心。
攻撃は伸びてくる手が脅威でしょうか。こちらも銃剣のナイフでの薙ぎ払い技能で対抗。手を弾いて差し上げましょう。
「お客様、お手を触れないようお願いします」
お客様に呪詛を吐かれるのは窓口の仕事、しかしよく考えたら貴方は招かざるお客様。
甘んじてお受けする謂れはございません。
※アドリブ大好き
●幕間(承前)
ディアボロスたちを倒した(と思いこんだ)キマイラウィッチの一団が進軍を再開してその場から去ると、ビルの陰から二人のディアボロスが姿を現した。
一人は、ピンクの髪をツーテールにしたサイボーグの少女。
ユーク・エメラブリント(サイボーグのガジェッティア・g03498)である。
もう一人はルーブ・ゴールドバーク・マシンのパラドクスで自らの死を偽装した今咲・栄華(ゲットワイルド退職・g00910)だが――
「芝居はおしまい。ここからは本気で戦わせていただきます」
――先程までとは口調が違う。当人が言うところの『社畜の鑑モード』のスイッチが入っているのだ。
変化したのは口調だけではない。敵に面が割れているため、変装の一環として衣装も変えている。
ビジネススーツからセーラー服へ。
「ところで、ユーク様」
三十路を目前に控えたセーラー服姿の元OLは現役の十代の前で読者モデルめいたポーズを決めてみせた。
「この格好はどうでしょう? まだまだいけてると思いませんか?」
「……はい」
にっこり笑って頷くユーク。返事をする前に三点リーダー二つ分のタイムラグが生じたし、笑顔も少しばかり引き攣っているが、そのことで責めるのは酷というものだろう。むしろ、『少しばかり』に留めることができた精神力(?)を褒めるべきだ。
その反応に満足したのか、栄華は更なる感想を求めることなく、ユークを促して歩き出した。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい」
ユークもまた歩き出した。
今度はタイムラグは生じなかった。
●今咲・栄華(ゲットワイルド退職・g00910)
大通りをぞろぞろ歩く豚男&蛇女たちの後ろ姿が見えてきました。
「まずはボクが敵の注意を引きつけます」
ユーク様が歩調を速めてワタシの前に出ました。その手にあるのは自動小銃型のガジェットウェポン。レシーバーに相当する部位にはキーボードが仕込まれ、銃身には奇妙な機械が取り付けられています(『セーラー服姿のアラサー女のほうが奇妙だろ』などというツッコミはスルーさせていただきます)。
「では、お願いします」
ワタシは大通りの横の歩道へと移動しました。
車道に残ったユーク様のほうを見てみると、膝撃ちの姿勢を取って例のガジェットウェポンを構えています。
そして、斜め後方を振り返ってワタシの位置を確認すると、すぐに視線を前に戻し――
「いきますっ!」
――攻撃開始。
件のガジェットウェポンは実弾系の銃器には見えませんでしたが(熱線銃や光線銃のような印象を受けました)、蛇女たちに向かって撃ち出されたのはミサイルでした。
ただのミサイルではありません。それは轟音とともに弾け散ると、火の粉と爆風と赤黒い爆炎の代わりに雹と寒風と青白い冷気を放射して、何体かの蛇女の背中を氷結させたのです。ガジェッティアお得意のパラドクス『フリージングミサイル』でしょうか? だとすれば、銃身に取り付けられていた機械の正体は『凍結弾精製装置』なる物だったということですね。
「きゃあぁぁぁーっ!?」
「な、なにが起こったの!?」
「新手のディアボロスだわっ!」
「小癪なぁーっ!」
一斉に振り返る蛇女たち。怒りの咆哮や驚きの叫声には『パリパリッ!』という小気味よい音が混じっていました。凍りついた体から氷片が砕けて剥がれ落ちる音です。
その音の発生源たる三体の蛇女――フリージングミサイルを食らった連中がユーク様めがけて反撃のパラドクスを放ちました。
●ユーク・エメラブリント(サイボーグのガジェッティア・g03498)
フリージングミサイルの洗礼を浴びたトループス級たちが、蛇と化した髪を蠢かせ、同じく蛇と化した手を突き出すと、それらの口から牙状のものが撃ち出されました。
ボクは立ち上がってダッシュ! 飛んできた牙のいくつかを受けながらも、いくつかを躱しつつ、車道を横切り、ガードレールを飛び越え、歩道(栄華さんがいるのとは反対側の歩道です)に着地しました。
そして、ガッジェットウェポン『サウンド・ヴォルテクス・ブラスター』を再び構えた時――
「お待たせしました、お客様」
――向かいの歩道にいる栄華さんが『お客様』ことトループス級めがけて三本の剣を続けざまに投擲しました。ちなみに合体パラドクスであるらしく、十数人もの幻影が周囲に出現しています。圧巻の光景ですね。
投げられた剣はそれぞれ別のトループス級を刺し貫きました。三体ともに絶命。どの敵もフリージングミサイルで既にダメージを受けていましたから。
もちろん、他のトループス級たちが黙っているわけがありません。『おのれ!』だの『許さん!』だのと怒鳴りながら、パラドクスを仕掛けました。蛇化した腕を伸ばして噛みつかせるというパラドクスです。
しかし、栄華さんは慌てず騒がず、片手に持った自動小銃を振るい、先端に装着されたナイフで蛇/腕を薙ぎ払いました。
「お客様、お手を触れないようお願いします」
すべての攻撃を防ぎ切ることはできず、少しばかり傷を負ったようですが、その程度のことで動じる栄華さんではありません。
「こうしてお客様のクレームを引き受けることもまた窓口係の仕事。しかし、よく考えてみたら――」
自動小銃を保持してないほうの腕を振り上げて、パラドクスの剣を手中に実体化させては投げ、実体化させては投げ、実体化させては投げ……と、反撃を加えていきます。
「――あなたがたは正当なお客様ではなく、招かれざる客でしたね。つまり、これはカスハラですらない営業妨害。そんなものを甘んじて引き受ける謂れはございません」
腕/蛇を伸ばしていたトループス級たちは皆、剣で串刺しになりました。
そのタイミングでフリジーングミサイルを再び発射! 串刺し組のうちの三体があっという間に凍りついて砕け散りました。
優秀な『窓口係』たる栄華さんもまた再攻撃。十数人の幻影を伴って、三本の剣を投げつけていきます。
セーラー服の赤いスカートをたなびかせるその勇姿……御本人が仰ったようにまだまだいけてると思います、はい。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
ミシェル・ロメ
※アドリブ、連携歓迎
ネメシス形態発動(大人の姿に成長した、三対六枚の翼持つ熾天使)
受けたダメージはまだ少し響くけど、大丈夫。十分戦える
ネメシス化したことで見た目は若干変わってるけど、
コーションはもう少し油断させておきたい
奴に気取られないように、まずは配下を静かに沈めてしまおう
長い蛇身を生かした攻撃は思いの外リーチがありそうだ
こちらも遠距離攻撃で対処しよう
【完全視界】で敵の動きを察知しつつ、少しずつ距離を取りながら
【光学迷彩】も併用して隠れられそうな物陰に隠れる
【泥濘の地】を利用しての足止めも忘れずに
麻痺呪文の影響を警戒して直視は避け、【未来予測】で敵の攻撃モーションを事前に察知
浄化の祈りを捧げながら、天空から聖なる花を降らせよう
雪のように、雨のように、光のように降り注いで
穢れた魂を静かに埋め尽くして
断末魔の叫びを上げる暇もない程に
邪眼も口も清浄なる花弁で塞いでしまおう

花塚・夜壱
(トレインチケット)
●幕間
霧に染まる大通りに男が立っていた。
金色の前髪が揺れる額の片側から一本の角を伸ばした鬼人――花塚・夜壱(月下鬼人・g00016)。
彼の足下にはミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)が倒れていた。
そう、ここはコーション率いるキマイラウィッチの一党とディアボロスとの最初の戦いが……いや、戦いに見せかけた偽りの敗北劇が繰り広げられた場所なのだ。
「大丈夫か?」
「はい。ダメージはまだ残っていますが……問題ありません。充分、戦えます」
夜壱の言葉に答え、ゆっくりと立ち上がるミシェル。ビルの陰から現れたオラトリオのリリコがその傍らに寄り添った。
有翼の少年少女が霧の中で並んでいる光景は聖画を彷彿とさせる。
しかし、聖画のごとき印象だけはそのままに、『少年』たるミシェルに変化が生じた。ほんの数秒のうちに肉体が急成長し、成人の姿となったのだ。背中の翼も増えた。一対から三対へ。
これが彼のネメシス形態である。
「充分、戦えます」
戦意の高さを示すかのようにミシェルは同じ言葉を繰り返した。
一オクターブほど低くなったその声(急激な成長に伴う声変わりだ)を聞いた夜壱は――
「……」
――無言で頷いた後、大通りの先に顎をしゃくった。
ミシェルもまた頷き、リリコとともにその方角に歩き出した。
●ミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)
ほどなくして、キマイラウィッチたちを発見。他のディアボロスたちと戦っている。
コーションに気付かれぬようにトループス級たちを静かにかたづけたい……と、思っていたのだけれど、既に交戦中となると、それは無理だろう。いや、交戦の有無は関係ないか。攻撃に対する反撃がほぼ常に生じる逆説連鎖戦において、相手に気付かれないように仕留めるというのは(一撃で倒さない限り)不可能だ。
それでも、なるべく気配を殺して近付こうとしたのだけれど――
「さっさとかたづけよう……」
――夜壱さんは僕とリリコを追い抜き、堂々と進んでいく。
当然、トループス級たちは彼の接近に気付いた。
「また新手が来たわよ!」
「何匹増えようと同じこと! 全員、殺してやる!」
「ええ、殺してやるわ! 殺してやるわ! 殺してやるわぁーっ!」
霧のせいではっきりと視認はできなくとも、敵だということは悟ったらしい。
喚き立てる彼女たちに向かって、夜壱さんは歩き続けた。金属製の長い棒を前面に構え、両手を使って風車のように回転させて霧を払い飛ばしながら。気配を殺そうとしている僕の意を汲み、敵の注意を引きつけているのかもしれない。
「蛇とも人間ともつかない連中に――」
夜壱さんは棒を片手だけで持ち直し、水平に薙いだ。
だけど、それはフェイントだったらしい。
空いたほうの手から四条の菫青色の光線が伸びた。
「――『匹』で数えられるのは心外だ」
光線の正体は投げナイフが残した軌跡。
四体のトループス級がのけぞり、悲鳴をあげた。胸や腹からナイフの柄が伸びている。軽傷ではなさそうだけれど、さすがにその攻撃で死に至ることはなく、すぐに悲鳴を怒号へと変えた。
そして、反撃を繰り出した。牙みたいな刃物を飛ばすパラドクスだ。
夜壱さんは、真横に突き出す形となっていた棒を咄嗟に両手で持ち直し、先程と同じように高速回転させた。謂わば、プロペラの防壁。
『キンッ!』という甲高い音を置き土産にして、いくつかの牙が弾き返された。そう、残念ながら『いくつか』どまり。残りはプロペラをすり抜けた。
●花塚・夜壱(月下鬼人・g00016)
右肩と左腿に牙が突き刺さった。しかし、傷は浅い。誰かの言い様じゃないが、充分に戦える。
その『誰か』ことミシェルが動いたらしい。四体のトループス級に新たなパラドクスが浴びせられた。花の形をした光が降り注ぐパラドクス。『聖花光臨』って言うんだっけか?
ミシェルは俺の後方で気配を絶っていたから、トループス級にとっては不意打ちみたいなものだろう。まして俺のパラドクスで既にダメージを受けているとあっては一溜まりもない。反撃する暇もなく、光の花に埋もれて死んでいった。四体まとめてな。
ただし、代償もあった。残されたトループス級たちがミシェルの存在に気付いたんだ。
そのうちの一体が奇声を発しながら――
「きぃえ゛ぇぇぇぇぇーっ!」
――俺の横を通過し、ミシェルに突っ込んでいった。
反射的に振り返る。視界に入ったのは、長い蛇身に絡みつかれて締めあげられているミシェルの姿。
「死ね! 死ね! 死ね! 自分の骨が砕かれる音を聞きながら、死ね! 自分の内蔵を潰される音を聞きながら、死ねぇーっ!」
下半身でミシェルを拘束し、上半身を鎌首さながらにもたげて、トループス級は狂ったように喚き散らした。あるいは本当に狂っているのかもな。なにせ、復讐心を糧とするキマイラウィッチだ。狂気に転じるほどの怒りを持っていたとしても不思議じゃない。
「その邪悪な眼も凶悪な口も――」
体を締め上げられたままの状態でミシェルは呟いた。トループス級の喚声と違い、そこに狂気は含まれていない。しかし、怒りは伝わってくる。トループス級のそれよりも激しい怒りが……。
荒波が躍る海よりも静かな凪の海のほうに恐怖を感じる時がある。
今がそうだ。
「――清浄なる花片で塞いでしまおう」
ミシェルは目顔で合図を送った。
少し離れた場所にいたリリコがそれを受け、片手を掲げる。
再び、光の花が降った。
「……っ!?」
反撃のパラドクスを浴びたトループス級が声にならぬ声を吐き、苦しげに身をよじる。
その拍子に拘束が解け、ミシェルは蛇身から解放された。ほんの一瞬、彼の体が膨らんだように見えた。六枚の白い翼を大きく広げたからだ。
「耳も塞ぐ。なにも聞かずに逝くがいい」
反撃の次は追撃。三度、光の花が降り注ぐ。標的となったのは、ミシェルを締めあげていた奴を含む四体。三体はなんとか耐え抜いたが、残りの一体(言うまでもなく、締めあげていた奴だ)は火葬ならぬ花葬に処された。
それはとても静かな死に様だった。先程までの狂態振りが嘘だと思えるほど……。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【植物活性】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
●幕間
ほんの一瞬、戦場に静寂が降りた。
トループス級が全滅し、彼女たちの金切り声が途絶えたからだ。
そして、一瞬しか継続しなかったのは――
「なんたることだ! 天より授かりし軍団がぁーっ! 吾輩の崇拝者たちがぁーっ!」
――ピエール・コーションが健在だからだ。
心を広く持てば、『天より授かりし軍団』などという大言(虚言?)は修辞的な表現として見逃すこともできよう(『崇拝者』扱いされたトループス級たちは納得できないだろうが)。
しかし、その後に続く言葉は心の広さを更に要求するものだった。
「貴様らはまだ判っておらぬのか!? 神の代行者にして代言者にして代理者である吾輩に刃向かうことの罪深さを!」
虎の威を借る狐ならぬ神の威を借る豚。『吾輩が借りることで神の威はより高まるだろう』と本気で思っている節もある。
「よく聞け、悪魔ども! 吾輩のこの曇りなき瞳は神の瞳である! 吾輩を介して神が貴様たちを見つめているのだ! 吾輩のこの力強き声は神の声である! 吾輩を通して神が貴様たちに語りかけているのだ! そして、吾輩の怒りはぁーっ! 神の怒りであーる!」
ゆっくりとディアボロスに迫るコーション。
血走った黒い瞳孔からは怒りだけではなく、悦びも見て取れる。嗜虐と悪虐と暴虐の悦び。罪なき者たちを(罪がないと知った上で)罰する者が味わえる悦び。
「これ以上の抵抗は無意味だ! 座して神罰を受け入れよ! 穢れた魂に吾輩の聖なる名を刻み、地獄の底で悔恨して悔悟して悔悛せよぉーっ!」

本郷・夏深
(トレインチケット)

ジュリオ・ヴェント
(トレインチケット)
●幕間(承前)
「神罰を受け入れよ、か……」
気炎をあげるコーションを前にして平然と呟いたのは、扇を手にしたデーモンの青年。
本郷・夏深(逢魔が夏・g00583)である。
「確かに私は罰を受けてしかるべきです。そう、少なく見積もっても懲役五億年クラスの大罪人ですよ。他者より優れていることが罪であるならね」
「……は?」
さすがのコーションも毒気を抜かれた顔をしている。尊大な言動を取ることには慣れているが、取られることには慣れていないのかもしれない。
「ジュリオさんもそう思いますよね?」
と、横に立っていた少年に夏深はいきなりパスを送った。
くたびれたトレンチコートにキャスケット帽という取り合わせのその少年はジュリオ・ヴェント(人間のレジスタンス諜報員・g03277)。情報収集に長けたレジスタンス諜報員にして時先案内人となれば、人あしらいもよく心得たものだが――
「え? えーっと……」
――夏深の問いかけに対しては目を白黒させるばかり。
見るに見かねたのか、夏深のサーヴァントである柴犬型パンツァーハウンド『えだまめ』がジュリオの足を鼻先でつついた。『しっかりして!』とでも言うように。
「と、とにかく!」
ジュリオはなんとか気を取り直し、コーションに指を突きつけ、凛とした声を発した。
「おまえは絶対に許さない! 手加減なしでいくよっ!」
●本郷・夏深(逢魔が夏・g00583)
「笑止千万!」
コーションが叫びました。なにやら気後れした様子でしたが(私のオーラにあてられて萎縮していたのでしょうか?)、ジュリオさんの勇ましい発言に触発されて本来のペースを取り戻したようです。
「手加減しようがするまいが、卑小にして矮小にして弱小な貴様らごときの力では吾輩の髪の毛一本傷つけることさえできぬわ!」
やれやれ。いったいどんな教育を受けたら、これほどまでに高慢になれるのでしょうね。私の慎ましさを分けてあげたいです。
「髪の毛一本傷つけるもなにも……そもそも髪なんか生えてないじゃないか」
的確なツッコミをしつつ、ジュリオさんがコートの懐から拳銃を取り出しました。威力よりも携帯性(あるいは隠匿性?)を重視したであろう小さな拳銃ですが、なめてはいけません。ディアボロスの手にかかれば、どんなにちっぽけな道具も最強かつ最凶の武器になるのですから。
「な、なにを言うか! こう見えて、吾輩の頭髪はフサフサなのであーる! 司教冠に隠れて見えないだけだぁーっ!」
と、コーションがどうでもいいことを必死に抗弁している隙にジュリオさんは動きました。
「……むっ!?」
当惑するコーション。彼の目には、相手が『動いた』のではなくて『消えた』ように見えたのでしょう。ジュリオさんは死角へと回り込んだのですから。
そして、次の瞬間――
「……うっ!?」
――コーションは呻きを漏らし、よろめきました。
『むっ!?』と『うっ!?』との間に挟まったのは一発分の銃声。
そう、ジュリオさんがパラドクス『アサシネイトキリング』を用いて弾丸を撃ち込んだのです。
●ジュリオ・ヴェント(人間のレジスタンス諜報員・g03277)
「よくも! よくも! よくもぉーっ!」
コーションが振り返り、睨みつけた。
背後に回り込んで銃撃した、このオレを。
「貴様らのような卑劣下劣低劣な虫ケラごときがぁーっ! 吾輩に血を流させるとはぁーっ! 不埒不遜不敬極まりなぁーい!」
ホント、やかましいなあ……。
オレはなにか言い返そうとしたけれど、口を開く前にコーションの姿がなにかに遮られた。
その『なにか』の正体は夏深おにいちゃんの背中。さっきのオレと同じように素早く回り込んできて、オレとコーションの間に立ったんだよ。
「言葉が日々変わりゆくものだということはよく判っていますが――」
夏深おにいちゃんはコーションに語りかけた。
「――私ほどの人間であっても、その変化についていけない時があります。教えてください。『卑劣下劣低劣な虫ケラ』というのはいつから誉め言葉になったのですか?」
「誉めてなどおらんわ!」
「え? では、貶したということですか? なに一つとして欠点のないこの私を? もしかして、今日はエイプリルフールでしたっけ?」
続けざまに問いかける夏深おにいちゃんの体から霧のようなものが流れ出していく。周囲に漂っているディヴィジョン境界の霧とはまた別物っぽい。
「……うっ!?」
コーションがまたもや呻いた。そして、夏深おにいちゃんの背中に遮られていた姿がオレの視界に戻った。夏深おにいちゃんがその場から動いたわけじゃないよ。コーションのほうがたたらを踏んで体勢を崩してしまったんだ。霧のパラドクスにダメージを受けたみたい。
「喜んでくれていいんですよ。私のパラドクスを受けることは何物にも代え難い栄光でしょうからね」
夏深おにいちゃんが当たり前のようにそう言ってのけると――
「わん!」
――えだまめも当たり前のように相槌を打った。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【完全視界】がLV2になった!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
今咲・栄華
ネメシスモードでは装備を変え髪を切っております。口調はそのまま。
勉強不足で申し訳ございません。
ワタシはコーションという歴史上の人物を存じ上げておりません。何をした方なのかお聞きしてもよろしいでしょうか。
返答に、さすがです。知りませんでした…と仕事のさしすせそで適当に相槌。現代人が見れば適当なのがバレてしまいますね。
死すべきお方だと理解しました。
一撃離脱の爆撃槌で吹っ飛ばしてさしあげましょう。
これまで遠距離でばかり攻撃していたので近づくのは初めてですね。
死神に会った気分はいかがですか?
私が貴方に死をデリバリーいたします。
仕事の6Kめ、キマイラウィッチ討伐、完了です。
※他の2Kは結局不明
お支払いはちっぽけな復讐心でどうぞ。
※アドリブ大好き
※再送も可
ミシェル・ロメ
※アドリブ、連携歓迎
ネメシス形態(大人に成長した熾天使の姿)を継続
今の姿が先刻倒した「か弱き少年」と同一人物だとは敵も思わないだろう
否、たとえ薄々感づいていたとしても恐れることは何も無い
堂々と、そして粛々と、奴の欺瞞を打ち砕く
神の威光を騙る偽聖者よ
裁きを受けるのはお前だ。ピエール・コーション。
傲慢、強欲、嫉妬、憤怒……あらゆる大罪を犯してきた
悪魔よりも悪辣なお前になど、断じて神の加護が届くものか
足元から燃え上がる地獄の業火は【飛翔】し回避
上空への回避は狙われやすくなったというけど、元より敵とは真っ向勝負だ
天使の輪が光輝き、後光を背負いて背徳者を見据える
口ずさむはあの日教会で聞いた聖なる調べ
成長した喉から紡ぎ出されるカウンターテナー
いつものボーイソプラノとは異なる歌声はより威厳と神秘性を増して
すぐ傍にあるささやかな幸せを願う人々の魂を乗せて
浄化の力を一条の光の槍と変え解き放つ
己の欲望と欺瞞の為に無実の罪を背負わされ
火刑台に消えた無辜の人々の無念
今こそ煉獄の焔に灼かれ、思い知れ
ジョルジョ・ストレッポーニ
味方が上手いこと負け戦を演じてここまできたんだ
バルセロナを守る為に私もその演技に乗らせてもらうよ
(演技の為に本当に辛い事を思い出したのかもしれないが詮索しないでおこう)
悪辣な者も史実の人物であれば、後世の者にはわからぬ事情があったかも知れないが、目の前の豚ならそれはないな
コーションが力尽きるまでは負の感情を前面に押し出した《演技》
「若い仲間が何人も…ここで…」
仲間を殺された怒りに震えながら駆けつける
「しかも醜さと卑しさで有名な豚司教、コーションにか!名誉ある勇敢なディアボロスがなんということだ…」
怒りと嘆きと挑発をこめて【Sangue e Vendetta】で歌って脳天からぶった斬ってやろう
肉切り包丁じゃなくて残念だったな
反撃の精神攻撃は内心のせせら笑い(騙されてる豚は惨めだ…)でダメージを抑えるが
昔の出来事を思い出して大いに怒り狂う《演技》だ
(某歌劇場のシーズン初日に共演者と一緒に凄まじいブーイングを喰らった
もしあの時ディアボロスに覚醒してて飛翔を使えたなら天井桟敷まで飛んで殴ってた)
一蝶・信志
白い衣装に身を包んで、オルレアンの乙女ならぬバルセロナの乙女が降臨よ✨
高名な聖職者を騙るブタちゃんだなんて、クロノヴェーダらしい人類への冒涜ね
…あらっ? 保身や我欲のために無実の少女を焼き殺してるんだったら再現度高〜い!すご〜い!!って褒めるところなのかも…(一瞬だけ考える)
見るからに俗物っぽいから、彼はきっとワタシの出立ちを非難するでしょう
いいわ、バルセロナの乙女として“聖”少女シンディがこの“裁判”、堂々と受けて立つ!
ニセモノだとわかっていてもこの罪悪感、イヤ〜なカンジ💦
ティーンの頃の心の傷が開いちゃうわ
今だって皆に正体を隠している(※と本人は思っている)のもどこか後ろめたさがあるから…
ワタシのせいで、みんなが……!
(って呻いてみたけど女装ごときで人類がどうなるって言うのよ?)
悪夢に苦しむ演技で豚ちゃんの溜飲を下げさせてア・ゲ・ル💕
優位を錯覚して油断したところへパラドクス
でも!
ワタシに告白するべき罪などないのよ!
だってカミサマはワタシたち一人一人を完璧にお造りになったのだから!
●幕間
「ぐぬぬ……」
「痛みを知り、悔い改める気になったか? ……などと訊いたりはしない」
ディアボロスのパラドクスを受けて苦しげに呻くピエール・コーションの前に、三対の翼を有した異形の影がゆらりと立った。
ネメシス形態を維持したミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)である。
「悔い改められるような精神構造をキマイラウィッチが持ち合わせているわけありませんからね」
今咲・栄華(ゲットワイルド退職・g00910)がミシェルの横に並んだ。髪が少しばかり短くなり、身に着けているものがアームドフォートか海戦装のごとき重装備へと変わっている。彼女もまたネメシス形態になったのだ。
「ぐぬっ……グフフフフ!」
コーションは呻き声を笑い声に変えた。半分は強がりだろうが、残りの半分は本心からの笑いかもしれない。
なぜなら、この哀れなキマイラウィッチは――
「ほざいていられるのも今のうちよ。最後には貴様らのほうが地獄で悔い改めることになるのだ。先に逝った連中と一緒にな」
――既に何人かのディアボロスを死に至らしめたと思い込んでいるのだから。目の前にいるミシェルと栄華こそが『先に逝った連中』であることも知らずに。
「くそっ!」
と、救援機動力で駆けつけた初老の男が無念の声を吐いた。
彼はジョルジョ・ストレッポーニ(Il Voce Grande・g10013)。イタリア出身のオペラ歌手である。
「若い仲間が何人もここで死んでしまったというのか……しかも、こんなに醜くて卑しい豚司教に!」
怒りを交えて嘆くジョルジョであるが、仲間たちが殺されたと本気で思っているわけではない。先行組の敗北劇を補強しているのだ。
一方、コーションの顔からは笑みが消えていた。『豚司教』という悪態を聞いたからではない。ジョルジョとともに現れたもう一人のディアボロスを見て、呆気に取られているのだ。
「オルレアンの乙女ならぬバルセロナの乙女、ここに降臨!」
と、そのディアボロスはポーズを決めて宣言した。
風にたなびく白い衣装は確かに乙女らしいものだと言えよう。
しかし、衣装の中身は色黒の偉丈夫である。
呆気に取られたままのコーションを冷ややかに見据えて、その偉丈夫――一蝶・信志(シンディ・g04443)は鼻を鳴らした。
「ふん! 高名な聖職者を騙るブタちゃんだなんて、クロノヴェーダらしい人類への冒涜ね」
●一蝶・信志(シンディ・g04443)
「史実のピエール・コーションは『高名な聖職者』なんかじゃありませんよ」
と、大人モードのミシェル(ステキ!)が異を唱えた。
「むしろ、悪名のほうが高いです。ジャンヌ・ダルクを火刑台に送った人物なのですから」
「あー、保身や我欲のために無実の少女を焼き殺した悪徳坊主なんだっけ? だったら、こっちのコーションは逆に再現度がめちゃくちゃ高いってことかしら? すごーい!」
あら、いけない。思わず感心しちゃったわ。
そんなワタシと違って、重武装モードの栄華は落ち着き払ってる。
「勉強不足で申し訳ございませんが……史実のコーションだけでなく、キマイライウィッチ側のコーションである貴方様のこともワタシは存じあげておりません。いったい、なにを成されたのかお訊きしてもよろしいでしょうか?」
栄華がそう語りかけると、ちょっと呆けていたコーション(ワタシに見惚れてたのかしら。やーねえ)は我に返り、ぼこっとお腹を突き出して……もとい、ぐいっと胸を張ってみせた。
「吾輩が成したことを語り出せば、とても一日や二日では終わらぬぞ。足跡の一つ一つが壮大な神話に等しいのだからな」
「さすがですね」
「にもかかわらず、その功績に見合った評価を吾輩は得ていない!」
「しりませんでした」
「いや、無論、吾輩を信奉して信頼して信仰している者は数多いるぞ。しかし、吾輩の偉大さを鑑みれば、『数多』でもまだ足りぬ!」
「すごいですね」
……ちょっと待って。栄華ってば、ビジネスマンの『営業さしすせそ』で対応してなーい? 感心している風を装いつつ、右から左へ聞き流してなーい?
まあ、聞き流したくなる気持ちも判るけどね。話の中身、空っぽだもの。
「これだけ言葉を費やしているのに、本題である『成したこと』とやらを一つも語っていない……」
と、呆れ果てた顔をしてジョルジョが呟いた。ミシェルはガン無視を決め込んでるし、リリコに至っては暇そうに一人でケンケンパッしてる。
だけど、コーションは皆の塩対応に気付いてないらしく――
「……というわけだ」
――満足げに語り終えた。一日や二日どころか、一分弱で済んじゃったんですけどー?
「なるほど」
と、栄華が頷いた。
「お話を聞いて、よぉーく理解できました。やはり、貴方様は死すべきであると」
「なぜ、そんな結論に至るのだぁーっ!」
目を剥いて怒鳴るコーション。
でも、栄華はお構いなし。ごっつい爆撃槌を振りかぶると――
「ワタシの見解に対する疑問点については当社のカスタマーセンターにお問い合わせください」
――パラドクス効果の『飛翔』で以て舞い上がった。ゴーゴー♪
●ジョルジョ・ストレッポーニ(Il Voce Grande・g10013)
栄華さんはロケットさながらに急上昇し、そして、隕石さながらに急降下した。
もちろん、その降下地点にいるのはコーションだ。
「死のデリバリーに参りました。お支払いは――」
司教冠が乗っている頭めがけて爆撃槌をお見舞いしたかと思うと、再び隕石からロケットに転じて急上昇。
「――ちっぽけな復讐心でどうぞ」
「んごぉーっ!?」
と、頭を押さえて悶絶しながらも、コーションは反撃のパラドクスを発動させた。
「同重量の黄金にも匹敵する吾輩の脳に損傷を加えるとは不届き千万! 残酷なる残虐なる残忍なる悪夢に身悶えするがいいわぁーっ!」
その言葉から察するところ、酷い幻覚を見せつけるパラドクスなのだろう。
でも、栄華さんは華麗に舞って――
「悪夢は見慣れています。地獄のデスマーチを幾度となく体験しましたから」
――それを躱したようだ。デスマーチの苦い記憶を思い出したか、顔を少ししかめているけれど。
彼女の動きをコーションは目で追っていたが、すぐに視線を地上に戻さざるを得なくなった。
新たな攻撃手である信志君がずんずんと……否、しゃなりしゃなりと接近していたからだ。当人は『バルセロナの乙女』と言ってたけど、その独特の雰囲気や立ち居振る舞いは、ベルカントの名手たるレジェンド級オペラ歌手とコラボしたこともある不世出のロックスターを思わせる。バルセロナ繋がりということで。
だが、オペラもロックもない時代に生きていたコーションには信志君の美意識は理解できないようだ。まして――
「今更だが、貴様のその破廉恥な格好はなんなのだ!? 道徳への冒涜、汚涜、褻涜ではないか! ここが異端裁判の場であれば、有罪を宣告されること間違いなし!」
――彼の立派な体躯を包む『乙女』な衣装を許容できるはずもない(なかなか似合ってると思うけどね)。
「図らずも言動が一致しましたね。ジャンヌ・ダルクの異性装を糾弾した史実のコーションと……」
ジャンヌ・ダルクを敬愛してやまないというミシェル君が苦々しい顔をしてる。
一方、糾弾された信志君は余裕たっぷり。
「クロノヴェーダが道徳を持ち出すなんて、ちゃんちゃらおかしいわね。でも、いいわ。バルセロナの乙女として、この聖少女シンディが異端裁判を受けて立ってあげる!」
「なにが聖少女だ! 『聖』と『少』と『女』、すべての字が事実に反しているだろうが!」
切れの良いツッコミを返しつつ、コーションは司教杖を一振りした。
途端に信志君の様子が一変。がくりと膝をつき、苦悶の声をあげた。
●ミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)
「ああっ!? 心の傷が開いちゃうぅーっ!」
信志さんは胸をかきむしるような動作をしながら、上体を反らして天を仰いだ。コーションが用いたパラドクスは、ネメシス形態になる前の僕に向けて放った(そして、栄華さんにも放った)それと同じものだったらしい。
「ワタシのせいで! 皆がっ……!」
だけど、パラドクスの生み出した悪夢を信志さんが本当に見ているかどうか(見ていたとしても、本当に苦しんでいるかどうか)は怪しい。言葉も仕草もわざとらしく、芝居がかっているから。
もっとも、コーションはそう思っていないらしく、醜悪な笑みをこぼしている。
「グフフフフ! 己が罪科を、罪悪を、罪状を告白せよ! さすれば、吾輩が処断という名の赦しを与えてやろう!」
その隙を衝くように――
「なーんちゃって💖」
――信志さんはまたもや豹変。先程の栄華さんと同じように跳躍した。
「ワタシには告白するべき罪などないわ!」
逞しくも美しい足を真っ直ぐに伸ばして急降下。装甲ブーツ(にしては華美な代物)の靴底がコーションの顔面にめり込んだ。
「だって、神サマはワタシたち一人一人を完璧にお造りになったんだから!」
「いや、そうとも言い切れないよ」
と、否定したのはジョルジョさん。でも、信志さんに議論を吹っかけるするつもりはないみたい。挑発の相手はコーションだ。
「神も手を抜くことがあるんじゃないかな。現に手を抜かれた当人が私たちの前でみじめに泣き喚いている」
「泣き喚いてなどおらぬわ!」
コーションが怒鳴った。信志さんの蹴りなどまったく効いてない……みたいに振る舞っているつもりなのだろうけど、顔面に刻印された足跡がすべての努力を裏切っている。
「お言葉ですが、あれもまた完璧な製品だと思います」
と、今度は栄華さんがジョルジョさんに反論した。コーションを『あれ』呼ばわり。
「商品コンセプトが『最低最悪のゲス』ならばの話ですが……」
「なるほどね。それにしても、この『最低最悪のゲス』を見ていると――」
ジョルジョさんが毅然とした足取りでコーションに近付いていく。
「――ジャンヌ・ダルクが豚に裁かれるシーンがある有名なオペラ・オラトリオをどうしても想起せずにいられないな。それと同じ結末にするつもりはないけどね」
そして、朗々と歌い出した。
●今咲・栄華(ゲットワイルド退職・g00910)
「Vendetta, Vendetta, Vendetta!」
自身の歌声と腰から下げた小さな機器(ボイスレコーダーの類と思われます)から流れる伴奏に合わせて、ジョルジョ様はコーションを攻め立てました。
その手にあるのは槍。穂先が跳ね上がり、弧を描き、突き出され……コーションはたちまちのうちに血塗れになりました。豪奢な僧衣も襤褸雑巾のようになり、見る影もありません。それでも司教冠が頭から落ちていない(ワタシの攻撃でひしゃげていますが)のは驚きであり、そして、滑稽にも思えますね。
「えーい! 愚鈍で愚劣な愚物の分際でぇ! 神に寵遇され、寵恩を受け、寵愛を浴す吾輩に楯突くとは!」
傷だらけになりながら、コーションは喚き散らしました。
「己の分限とういものを知れ、この痴れ者がぁーっ!」
「……うっ!?」
ジョルジョ様の口から呻きが漏れ、槍が止まりました。どうやら、コーションの暴言はパラドクスだったようです。
呻きに続いて漏れ出たのは呪詛めいた恨み言。
「クソッ……なんだ、このブーイングは? ……やめろ、やめろ……演者の心を抉るのがそんなに楽しいか?」
パラドクスの作用で心を乱され、嫌な記憶が蘇ったのでしょうか?
とはいえ、実は深刻な状況ではないようです。ジョルジョ様はワタシにウインクを送り、コーションに聞こえないように声を潜めて、こう言いました。
「心配御無用。これは敵を油断させるための芝居だよ」
ほほう。オペラ歌手だけあって、迫真の演技ですね。
「だけど、ブーイングを浴びた際の怒りは忘れたことはない。もし、あの時にディアボロスに覚醒していたら、天井座敷まで『飛翔』で飛んでいって冷やかし客たちを殴っていただろうし、プレス席でふんぞり返っていた業界の寄生虫どもに『傀儡』で土下座させていただろうね」
……いえ、すべてが演技というわけではなかったようです。
なんにせよ、コーションは演技を見抜けなかった模様。再び調子に乗り始めました。
「お遊びはここまでだ! 改めて覚悟しろ、ディアボロスども! 貴様らの悪行に激怒し、震怒し、赫怒している神に代わり、この吾輩が裁きを下す!」
しかし、その鼻をくじくべく――
「神の威光を騙る偽聖者よ。裁きを受けるのはおまえだ」
――ミシェル様がコーションへと迫りました。ケンケンパッに飽きたと思わしきリリコ様を連れて。
「神の威光を騙る、か……ホント、神サマの威光を笠に着るのは悪徳坊主の十八番よね」
ミシェル様とコーションを交互に見ながら(前者は頼もしげな目で、後者は蔑むような目で)、信……いえ、シンディ様が肩をすくめました。
「まるで、地元の怖い先輩の名を持ち出してイキってる半グレ未満のワルガキだわ」
「例えが細かすぎます」
と、ワタシがシンディ様にツッコミを入れている間にミシェル様は六枚の翼を大きく広げ、パラドクスを発動させました。
それは歌声のパラドクス。
「信じる人よ、夜空に星は輝けり♪ 楽園は己が胸にありて、神は愛し児を見守りたもう♪」
聴く者を暖かく包み込み、胸に染み入り、魂を癒してくれる――そんな歌声。私とシンディ様はもちろんのこと、その道のプロたるジョルジョ様もうっとりと聞き入っています。
●終幕
ミシェルの歌声は確かに美しかったが、攻撃対象となったコーションにとっては地獄から響く亡者の叫喚も同然であった。
「ぐあぁぁぁーっ!?」
目と鼻と口と耳から薄汚い血を流し、苦悶に打ち震えながら、彼は司教杖の石突きを地に突き刺した。
次の瞬間、ミシェルの足下から炎が噴き上がった。ジャンヌ・ダルクの最期を再現するかのようなパラドクス。
しかし、ミシェルはジャンヌように火系台に拘束されているわけではない。身を灼かれる寸前にナナコとともに飛び立ち、攻撃を躱した。
空に昇った二人の姿は神々しかった。下方で踊る炎や飛び散る火の粉が皮肉にも演出効果になっている。
「威光を騙ってなどおらぬわ! 吾輩は神の声を聞く者!」
コーションが叫んだ。霧の空に浮かぶミシェルを見上げ、両手を高く掲げて。傷だらけの聖者が天使になにごとかを訴えかけている宗教画のように見えなくもない。
「そう、この世の誰よりも神の加護を受けるに相応しい存在なのであーる!」
「黙れ」
と、オルレアンの乙女が幻視したという天使と同じ名を持つディアボロスは傷だらけの聖者ならぬ咎人の訴えを退けた。
「傲慢、強欲、嫉妬、憤怒――あらゆる大罪を犯してきた悪魔よりも悪辣なおまえになど、断じて神の加護が届くものか」
「吾輩は罪など犯していない! 神から授けられた才能を活かし、神から認められた権利のもと、神から与えられた使命を果たしてきたのだ!」
「その手の妄言を吐いてると、異端審問官に火炙りにされちゃうわよー」
信志がミシェルと同じ高さまで飛び上がり、急降下してコーションに蹴りを放った。
「お手隙の審問官がいらっしゃらないようですから、ワタシたちがかたづけるしかなさそうですね」
栄華もまたミシェルの横に上昇し、急降下してコーションに爆撃槌を叩きつけた。
「だけど、火炙りはやめておこう。せめてもの情けだ」
ジョルジョがまた槍を振るった。バリトンの歌声に乗せて。
それはすぐにカウンターテノールとの二重唱になった。
ミシェルが再び歌い出したのだ。
「ぬ゛お゛ぉぉぉぉぉーっ!?」
前方と上方から同時に歌声を浴び、コーションはのたうち回った。司教冠がついに頭から落ちたが、司教杖はまだしっかりと握られている。権威の象徴にして自己の存在証明でもあるそれだけは決して手放したくないのだろう。
やがて――
「ぉぉぉ……」
――絶叫が途切れ、霧の町に流れるのは二重唱だけとなった。
杖を握りしめたまま、烙怨の司教は逝った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV2になった!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【エイティーン】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV4になった!