【断頭革命グランダルメ奪還戦】黄泉還れ、栄光(作者 秋月きり)
#断頭革命グランダルメ
#【断頭革命グランダルメ奪還戦】獣神王朝の残滓
#断頭革命グランダルメ奪還戦
#③ラー・ホルアクティ
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「ねえねえ。聞いた聞いた? ホルアクティ様が言ったこと。ディアボロスの攻撃を撃退できれば、皇帝陛下は無限の力を手に入れるんだって」
改竄世界史断頭革命グランダルメ。ベルンの守りを固めるトループス級淫魔『暴かれ待つ膜中の淫魔』は、そんな噂話を口にしていた。
「オベリスクの力で、既に滅びたディヴィジョンから力を得ることが出来るんだって」
「つまり……」
「つまり……?」
「何れ、新たな『淫魔大樹』を蘇らせることが出来るんじゃないかな?」
「マジ?!」
「マジマジ! ナポレオン陛下こそ、獣神王朝エジプトを再興するファラオになったり、淫魔大樹を再建する皇帝になったりするんだよっ!」
女三人寄れば姦しい。それ以上に淫魔女子が集まれば、騒がしい。
ともあれ、ベルンの戦場にはそんな巷談が飛び交っていた。
そして、処変わって最終人類史新宿島新宿駅ターミナル。
到着したパラドクストレインを背景に、時先案内人マリー・アントワネット(人間のサウンドソルジャー・g09894)は……思いっきり頭を押さえていた。
所謂『頭痛が痛い』ポーズであった。
「あ、えっと、集まりましたわね」
ようやく立ち直ったのだろう。一呼吸した後、彼女は言葉を紡いだ。曰く。
「《七曜の戦》後に姿を消していた断片の王ナポレオンは、スイスを最終拠点とし、オベリスクの力を利用して、起死回生の策を講じていたようですの」
攻略旅団の作戦により、この事実をいち早く察した復讐者達によってナポレオンの目論見は打破。追い詰めることに成功した。
だが、追い詰められたナポレオンもまた、それを良しとしていない。復讐者への復讐心を利用し、火刑戦旗ラ・ピュセルのキマイラウィッチ達を誘うと共に、グランダルメの豊富な人口を餌に、蹂躙戦記イスカンダルの亜人を引き入れ、復讐者達との決戦を戦い抜こうとしているのだ。
「もし、この戦いに生き残ったならば、ナポレオンはオベリスクの力を使い、北アフリカに疑似ディヴィジョンを創造、その力を取り戻してしまうでしょう」
疑似改竄世界史との言葉に目を伏せたマリーは、ゆっくりと息を吐く。為すべきことを為す。彼女は使命感の強い女性でもあった。
「世界史に名を残す英雄の名を持つナポレオンとイスカンダルと言う、2体の断片の王との戦いとなりますわ。激しい戦いが予想されますが、それでも、お願いします」
勝利を成すため、皆様の力をお借りしたい。
彼女はきっぱりと言い放った。
「人形皇帝ナポレオンは、疑似ディヴィジョンの創造により、淫魔を戦力化して配下に組み込んでいました」
この力は、他の歴史侵略者種族は有していない物だ。『イレギュラー』扱いされていないのが、おかしいのではないかと思うほど、反則的な能力である。
「ナポレオンは確かに追い込まれた状態です。ですが、ここで取り逃がせば、力を取り戻して再び、皆様の前に立ち塞がるでしょう」
故に、ここで全ての禍根を断つべく、彼の断片の王を討つべきだ。
時先案内人の勝利を願う言葉に、復讐者達は是と頷き、そしてパラドクストレインへと向かっていくのだった。
リプレイ
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
グランダルメの奪還は悲願ですが、それは故郷の消滅と同義
ここまで来たのですから、迷っている暇はありません
ですが、やはり、少し
難しいですね…
などと黄昏ていたら、淫魔は通常運転でした
ある意味、安心します
いえ、全く嬉しく無いのですけど
とりあえず、ベルンは落とします
姦しい淫魔もさくっと倒されてください
宙に展開した鍵盤でヒロイックシンフォニーを演奏
筋骨隆々の幻想の英雄を呼び、手にした剣で斬りかかれと指揮します
願わくば、筋骨隆々な英雄の方が彼女達の好みでありますように
仲間と声を掛け合い攻撃対象を揃え
体力が低い者から各個撃破
突出は避け敵陣の辺縁から削っていきます
囲まれぬよう、常に周囲は警戒し
体力や戦況に応じ、程々の所で撤退
反撃には魔力障壁を展開して凌ぎます
私を真に魅了するのは美しい音楽のみ
それに慎み深い女性の方が好みですので、お引き取り下さい
滅びたディヴィジョンを蘇らせる力があれば
奪還戦で消滅したディヴィジョンの人々を平和な異世界として顕現させたり出来るのでしょうか
…いえ、詮無き事ですね
エヴァ・フルトクヴィスト
疑似ディヴィジョンの創造……。
マリーの様な奇跡もありましたが、あのような様々なディヴィジョンの可能性をオベリスクを通じて想像されては堪りませんね。
そういう意味では獣神王朝エジプトのクロノ・オブジェクトを作る能力が高かったとも取れますが。
何はともあれ、その技術を引き継いでいるのがこのグランダルメ。
奪還戦でエジプト世界復活などさせずにきっちり潰させて貰いましょう!
緊張感に欠けますが、貴方達淫魔との戦いもこれで終わりにしますよ!
敵の攻撃は神速反応にジャンプやダッシュを組み合わせたフェイント、残像交えて攪乱。
出来うる限り当たらないようにしながら、距離を詰めますよ。
当たらなければどうということはありません。仮に当たったとしても。
掠っただけで溶ける程、私の理性は弱くはありませんよ?
接近戦になったら更に加速しつつ、浄化の斬撃を見舞います!
ディアボロスの攻撃を撃退出来ればと言いますが。
ここまでグランダルメを追い詰めたからには私達は弱くはありませんよ?
撤退時には殿を努めて。叩き潰す事を改めて誓いますよ!
一里塚・燐寧
全身の細胞が久々に味わうエジプトの風を求めてたのに、ここにいるのは淫魔ばっかりかぁ
まぁいいや。あのトンチキ人形しか知らない連中に、本物のエジプト勢の力を見せてやろーじゃん!
市街地の壁や建物の影に隠れ≪DCブラスター≫に高速詠唱で怨念のエネルギーを蓄積
十分に溜まった所で身を乗り出して、すぐさま『闇雷収束咆・死疾風』をブッ放そう!
復讐者に淫魔大樹を破壊され、未来を絶たれたことから来る殺意……
その感情の色を赤外線センサーのように見極めて襲いかかる、無数の誘導弾を連射するよぉ!
幾つもの弾が的確に敵の体に突き刺さるようにして、容赦なく仕留めていこう
きみ達は知らないだろーけど……これがエジプトで戦い抜いた復讐者の力だよぉ!
反撃の精神侵食に対しては物陰に隠れつつ、とにかく大好きなカノジョのことを考えて対応
いやー、女の子がそーやって自分を安売りしちゃ駄目だよぉ?
大好きな気持ちってのは、じっくりと時間をかけて温めていかなくちゃ~
ま、きみにそんな暇はあげないけどね
深手を負う前に適当なとこで切り上げて帰ろっか
フィーナ・ユグドラシア
※アドリブ、連携ok
疑似ディヴィジョンを創造出来るからこその奇手、ということですか。
ですが此方のやるべき事は変わりません。
護るべきもののため、そして少しでも敵の策を防ぐため、本丸に続くこの道の敵を削りましょう。
ユリウスも手伝って下さいね。
戦闘方針は『氷槍』での遠近両用の攻撃。
精霊達の力を具現化した氷の槍で、敵を討ちます。
また、雪の衣を纏い、攻撃に備えます。
初手は接敵前に氷槍を投擲し、先手を狙います。その際、他に敵に接近する味方が居れば、其方に誤射せぬよう注意。
投擲後は、再度『氷槍』を手元に具現化しつつ突撃し刺突の一撃、接近戦に移行。
突撃時や接近戦の際には、なるべく孤立または少数で固まる敵か、近くに居て味方と連携し易い敵を狙います。敵の数を減らす事を最優先です。
敵の操る風は雪の衣や魔力障壁で防御、魅了には道を切り開く意志を強く持って抵抗です。
敵将が増援に来るか、此方が攻勢限界を迎えるなどして、敵の勢いが増してきたら、周囲の味方に警告しながら撤退を提案。味方の撤退に合わせて戦場から離脱です。
ミシェル・ロメ
※アドリブ、連携歓迎
ついにナポレオンとの決戦か……
「本当の歴史」を取り戻す戦いに一つの区切りがつくんだ。
ディヴィジョン消失後に神父様や「本来の僕」がどうなるのかは分からない
最終人類史でも「あの時代」は、決して綺麗なものではなかったけれど……
それでも、僕は今こうして生きている
全ての人と事象はどこかで繋がっている
せっかく助けたエジプトの大地と人々だって
疑似ディヴィジョンで再び消失の危機に陥れることがあってはいけないんだ
グランダルメがなくなっても、歪んだ支配と理不尽を終わらせ
あるべき姿を取り戻すまで、僕の歩みは止まることはない
神父様や他の孤児たちと共に教会で過ごした幼い日々を心に強く描き
祈りを捧げ聖歌を紡ぐ
これまでにも芸術を悪用し人々を翻弄し続けた淫魔の所業は
決して許すわけにはいかない
敵の誘惑と精神攻撃には聖なる光を宿した花を降らせ
気を強く持って浄化
リリコ、共に往こう
平和を祈る心は、いつもこの胸に
白臼・早苗
アドリブ大歓迎です
淫魔大樹の復活……
冗談のつもりかもしれないけど、そんな事をされたらたまったものじゃないよ
そんな事が考えられなくなるように、このファーストアタックからきっちりと勝ちへの布石を作っていきたいね
淫魔大樹の事を知っているなら、……かつてのウィーンの学園の獄彩のバーバラについても知っているのかな?
なら、私の【描かれる玉虫色の獄】にも反応があるかもね
どんな反応であってもそれが動揺であるなら、精神対決の魅了戦では致命的になるはず
大樹再建なんて夢は夢のまま、そのまま果ててもらうとしようかな
「ついにナポレオンとの決戦か……」
パラドクストレイン降車前、ミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)はそう呟く。
改竄世界史断頭革命グランダルメ出身の彼にしてみれば、此度の争奪戦こそが『本当の歴史』を取り戻す戦いだ。そこに感慨深い想いが巡るのも、致し方ないだろう。
断片の王たる『人形皇帝ナポレオン』を討ち取り、改竄世界史を最終人類史の物と奪還すれば、彼自身の世界はどう変わるのか。彼が見てきた物、彼を育ててきた物、その全てが無かったことになるのか、それとも、存在だけは残り、現代に至るようになるのか。それは判らない。
それでも、とミシェルは思う。
それでも、彼は生きている。全ての人と事象は何処かで繋がり、彼を支えている。
たとえば既に奪還を果たした改竄世界史獣神王朝エジプト。改竄世界史消滅と共に、そこに住まう人々は消失した。だが、その繋がりは消えなかった。あの時代を生きた人々はそのまま時代を真っ当に生き、子孫を残し、それが最終人類史に繋がっていることを、ミシェルは知っている。
「そんな人達を疑似ディヴィジョンで利用し、再び消失の危機に陥らせることなんて、あってはならないんだ」
断頭革命グランダルメが無くなっても、全ては終わらない。
歪んだ支配と理不尽を終わらせ、世界があるべき姿を取り戻すまで、ミシェルの歩みは留まることは無いだろう。
「ええ。そうですね」
仲間の独白を聞き、エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)は是と頷く。
他の『あり得たかもしれない』改竄世界史に繋ぎ、そこから兵力を用いるのは彼の獣神王朝エジプトの専売特許だった。故に彼らは幅広い年代のファラオを抱き、戦力として運用していたのだ。
その技術を引き継いだ存在こそ、人形皇帝ナポレオンであり、この断頭革命グランダルメだ。
ならば、この世界には引導を渡すべきだと、エヴァは断言する。
「奪還戦でエジプト世界復活などさせずにきっちり潰させて貰いましょう!」
その強い決意と共に、彼女は戦いへと身を投じていく。
「断頭革命グランダルメの奪還は、私の悲願です。それは、間違いありません」
そして、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)は嘆息と共に微苦笑を浮かべた。
「ですが、それは……」
それは、故郷の消滅と同義だ。
断片の王人形皇帝ナポレオンの死と共に、断頭革命グランダルメと言う改竄世界史は終焉を向かう。奪還が完了した刹那、そこに生きた人達は正しい歴史に還ることになる。即ち、彼らこそが過去の人――最終人類史の歴史になるのだ。
虐殺など起きない。消滅など起きない。正しい歴史に還った彼らは真っ当に人生を歩み、最終人類史に繋がる歴史を歩むだろう。
だが、それでも、ソレイユに取っては異なる。
断頭革命グランダルメにディアボロスとして生まれ、敗れた彼はその瞬間より、生きる場所が219年後の最終人類史となった。
確かに断頭革命グランダルメは彼の故郷。だが、もはや戻ることは出来ない場所だ。
「ここまで来て迷っている暇はありません」
その故郷を手に掛け消滅させることを良しとするか悪しきとするかは判らない。
だが、その事を思い悩むのもまた、彼の生きる理由であった。
復讐者が向かう先は、最終人類史で言うところのスイス首都ベルンである。正確に言えば、その手前となるだろう。
そこに群れるのは、ジェネラル級自動人形『ラー・ホルアクティ』が配下、トループス級淫魔『暴かれ待つ膜中の淫魔』達である。姦しくも騒がし彼女達は、そのまま防御陣形を張り、復讐者達の到来を今か今かと待ち受けている。
――此度の目的はその切り崩し。
断頭革命グランダルメ奪還戦そのものの火蓋が切って落とされるのは幾分先でも。
その戦いは、既に始まっていた。
「怨み募りし魂よ、群がり集いて荒れ狂え。汝ら、敵を見逃すこと無し。地獄の果てまで追い詰めよ……な~んてね、ダダダダーっていくよぉ!」
群れる淫魔達に文字通り切り込んで行ったのは復讐者が一人、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)であった。
文字通り轟音唸らせるチェーンソー大剣を振りかざした彼女は、叫びと共に詠唱を開始。ミサイル状の光弾を発し、視界に広がる淫魔達へと解き放つ。
「ってか、全身の細胞が久々に味わうエジプトの風を求めてたのに、ここにいるのは淫魔ばっかりってどういうこと?!」
言いがかりも甚だしい台詞に、帰ってきたのは唾をも飛ばしそうな非難と、そして、情欲の風であった。
「襲ってきていてその台詞はないでしょ?!」
「まぁ、それもそっかぁ」
慌てて身を隠しながら、更なるパラドクスを淫魔達へと放つ燐寧は、ふふんと鼻で笑うと、更なる言葉を重ねた。
「まぁいいや。あのトンチキ人形しか知らない連中に、本物のエジプト勢の力を見せてやろーじゃん!」
「と言うか、トンチキなのはアンタも変わらないじゃん!」
巨大なチェーンソー剣とミサイルを携え、戦場を走り回るリターナー少女を何と捉えるのか。まさかネメシス形態をも看過しているわけではあるまい。
むっと唸り、しばし沈黙する燐寧。
そんな彼女の傍を、氷の槍が奔っていく。
「トンチキ……不可思議……奇手。成る程。疑似ディヴィジョンを創造出来るからこその奇手、ということですか」
精霊の力を借りて具現化させた氷槍を飛ばすフィーナ・ユグドラシア(望郷の探求者・g02439)は、得心と頷く。半ば強引な連想ゲームのような思考であったが、しかし、その考えは本質を突いていた。
疑似改竄世界史を作成できるからこそ、断頭革命グランダルメを捨てる選択肢が生まれる。
断頭革命グランダルメを捨てる選択肢があるからこそ、それを蹂躙戦記イスカンダルへ売り渡す選択肢が出来上がる。
蹂躙戦記イスカンダルにとっても魅力的な提案は、人形皇帝ナポレオンだからこそ生み出すことの出来た妙案でもあったのだ。
「ですが、此度、やるべきことは変わりません」
如何に奇手であろうと、妙案であろうと、真っ当に打ち砕く。
それはこれまで復讐者達が歩んで来た道そのものだ。
そして、フィーナもまた、復讐者の一員である。ならば、やることは決まっている。
「氷の精霊達、雪の精霊達、白雪姫の誓いの下、我と共に悪意を祓う力とならんことを……!」
誘惑の邪風を氷槍で吹き飛ばし、淫魔達の勢いを押し返していく。艶めいたそれは、おそらくどれ程、気を強く持っても、フィーナの精神を侵し、魅了の瑕疵を植え付けるだろう。ならば、答えは一つだ。
「誘惑される前に倒します!」
「力業?!」
フィーナの導き出した結論に淫魔達は驚愕の言葉を放ち、そして燐寧はぷっと噴き出した。
「そうだね。そうだよね。『女の子がそーやって自分を安売りしちゃ駄目だよぉ?』とか説得しようと思ったけどぉ……そんな暇、無いしぃ上げる意味、ないよねぇ」
再びミサイルを召喚した燐寧は、自身等に接近しようとした一団にそれを叩き付ける。
怨念塗れの派手な爆風が舞い、共に、淫魔達のコート――もとい、淫魔達が吹き飛んでいった。
「淫魔大樹の復活……?」
淫魔達の話題に上ったそれを、聞き流すことは出来ないと白臼・早苗(深潭のアムネジェ・g00188)は眉尻を上げ、パラドクスを紡ぐ。
極彩色の絵の具は艶めかしげな女性を実体化させ、それが淫魔達を薙ぐよう、戦場を駆け巡る。
そこに叩き付けられるのは、早苗による面罵だった。
「淫魔大樹の復活なんて、冗談のつもりかもしれないけど、そんな事をされたらたまったものじゃないよ!」
人形皇帝ナポレオンさえ、厄介なのだ。その上でイスカンダルやジャンヌ・ダルクの共闘もある。そこに淫魔大樹が復活すれば、最悪のシナリオまっしぐらだ。
そんな事は認められない。嘗てのウィーンの学園の再現など、まっぴら御免だ。
淫魔達の精神を蝕みながら走り回る早苗に、しかし、淫魔達の攻撃もまた襲い掛かってくる。
放たれるそれは、極彩色の悪夢。情欲の風は早苗の鼻腔を、脳裏を擽り、そのまま精神を侵してくる。
だが――。
「リリコ、共に往こう。平和を祈る心は、いつもこの胸に」
「世界を駆けるその力、時の侵略者を退けし、時奪われし怒れる者に宿り、言の葉の如く滑らかな瞬きを!」
既に乱戦となった戦場へ聖なる光が降り注ぎ、魔術の馬が駆け巡る。
一つはミシェルのオラトリオによる浄化の光。そしてもう一つはエヴァの召喚した神馬だった。早苗を狙うパラドクスの主は、その双方に中てられ、悲鳴と共に消し飛んでいく。
「淫魔大樹がどうとか言うつもりはありませんが、これまでにも芸術を悪用し、人々を翻弄し続けた淫魔の所業は決して許すわけにはいきません」
「そして、余り私達を見くびらないでください。貴方達はディアボロスの攻撃を撃退出来れば、と言っていますが、ここまでグランダルメを追い詰めた私達は、それを許す程、弱くはありませんよ?」
挑発の言葉に、罵倒の言葉が重なった。
「五月蠅い五月蠅い五月蠅い! したり顔で言うなっ! とりあえず逝っちゃえ!!」
再び誘惑の風が流れ、情欲の炎が辺りを覆う。
それらを受け、しかし、復讐者達の歩みは止まらない。更なるパラドクスが重なり、淫魔達を梳って行く。
それは侵蝕の風で、浄化の光で、全てを凍て付かせる氷槍で、殺意の塊のようなミサイルで、躍動的な神馬の疾走で、そして、耳穿つ音楽であった。
「――もしも、と考えたことがあります」
筋骨隆々の英雄を創造しながら、ソレイユは独白する。
「もしもナポレオンの力が滅したディヴィジョンを蘇らせる力であるならば、それを奪えたのならば、もしかしたら、と……。でも、それは詮無きことですね」
首を振った彼は、そして、淫魔達に視線を向け、くすりと笑った。
「ある意味、貴方達は私を救ってくれた。通常運転は素晴らしい。――いえ、全く嬉しくないのですけど」
淫魔達の姦しさは終始一貫している。
それは戦いの始まった過去より、今に至るまで、変わらない。色々な物を変えて生きてきたソレイユに取って、それは或る意味救いであった。
当然、或る意味でしかないのだが。
「だから、遠慮無く、滅させて頂きますね」
「少しは遠慮しろばーかー」
涙声が、辺りに響いていた。
「さて、このくらいでしょうか」
周囲の淫魔達の全滅を確認し、エヴァが嘆息と共に呼び掛ける。
この戦いはあくまで前哨戦だ。敵の壊滅までに至らない。このまま留まり戦い続けても、消耗は免れず、やがて、復讐者達の勢いを歴史侵略者達の勢いが呑み込んでしまう。
何事も適度な所で終結させることが、肝要なのだ。
「そうだねぇ。深手を負う前に適当なとこで切り上げて帰ろっか」
今がその適当なところだと、燐寧は笑う。
それで方向性は決まった。
「撤退します。皆さん、着いてきて下さい!」
フィーナの呼び声を受け、復讐者達は頷く。そして、思い思いに走り出した。
「大樹再建なんて夢は夢のまま、そのまま果てて貰うとしようかな」
早苗の言葉が置き土産のように戦場に木霊し、そして解けるように消えていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【コウモリ変身】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【現の夢】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV2が発生!
【ガードアップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!