最終人類史の未来を語る大会議

 ワイルドカードの提案により、最終人類史の人々と復讐者で、未来を語る大会議を行ないます。
 会場は、東京ドーム。
 会場には、新たに帰還したオーストラリアの人々も含む多くの参加者がディアボロスの言葉を聞こうと集まっています。
 また、この大会議の模様は、中継で、最終人類史の各地に配信されるので、最終人類史の人々の全てにディアボロスの言葉を伝えることが出来る筈です。

『ワイルドカード』で提案された、最終人類史の未来については、最終人類史の人々に対して行った世論調査の結果が伝えられています。
 それを踏まえ、ディアボロスの考えを発信すると良いでしょう。
 最終人類史の人々はディアボロスの言葉を尊重してくれるので、今後の彼らの考え方などに大きな影響を与える事が出来る筈です。

 また、この大会議の場を利用して、ディアボロスが依頼していた、最終人類史の専門家への調査活動の報告も行われています。
 多くの専門家が一堂に会している会場ですので、ディアボロスの疑問や質問にも迅速に対応してくれます。なにかあれば積極的に発言してください。

最終人類史の未来を語る大会議(作者 一本三三七
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 新宿駅グランドターミナルで、綿抜・カスミ(サイボーグのサウンドソルジャー・g01177)が、ディアボロス達に呼びかけた。
「皆さん、最終人類史を語る大会議を開きます」
 カスミ曰く、この大会議は、特殊案件攻略旅団ワイルド・カードの提案によって開催されるものだそうだ。

「開催地は、東京ドームです。更に、会議の模様は最終人類史全土に配信される予定です。
 最終人類史の未来を語るという目的を果たすため、事前に、最終人類史の人々にアンケート調査を行っていますので、調査結果を踏まえて、未来について考えてみてください。
 最終人類史において、ディアボロスの影響力は非常に大きなものとなっています。ディアボロスが呼びかけた内容は、今後の最終人類史に大きな影響を与える事でしょう」

 そう言うと、カスミは、事前のアンケート結果をまとめた資料を示して、ディアボロスへの説明を開始したのだった。

「まずは、攻略旅団から新宿島の専門家に依頼していた調査の報告書を確認してください。
『千早城の水陸両用改造について』
『アルタン・ウルクの声や目の明滅の規則性について』
『ゴルディアスの結び目の再利用について』
 の3つの報告書があります。
 報告書を読めば、状況を掴む事はできると思いますが、疑問や質問があれば、専門家の皆さんも東京ドームに集まってくれているので、遠慮なく聞いてあげてください。
 報告書や、質問の結果などは、来月以降の攻略旅団提案に生かすことが出来るでしょう」

「報告書の確認の次は、最終人類史の未来についてですね。
 ディアボロスがどう考え、どのように訴えかけるかで、最終人類史の未来に大きく変わるでしょう。
 『一般人の自主性に任せて、ディアボロスは関与しない』という事もできますが、この決断も、ディアボロスの決断の一つとなり、未来に影響を与えるのは間違いありません。
 ワイルド・カードの提案によって得られた貴重な機会ですので、有効に利用できるように考えて頂ければと思います」

 そう言うと、カスミは資料を、集まったディアボロス達に配る。
 ディアボロスのスマートフォンなどからも閲覧可能な資料だが、紙媒体の方が、理解しやすいという配慮のようだ。
 その資料の内容は……。
 

●最終人類史アンケート調査結果
 ワイルドカードの方針に従い、最終人類史の人々への世論調査などを実施し、最終人類史に暮らす人々の未来への思いについて調査を行いました。
 結果は、以下のようになっています。
==================
【1】世界の全てをクロノヴェーダから奪還するべき
 現在も、最終人類史の人々の84%が、この意見を肯定しています。

「世界と歴史が奪われたという事実が許せない」
「クロノヴェーダが許せないという衝動が、押さえられない」
「田舎で暮らしていた両親の土地は、今もクロノヴェーダに支配されている。早く奪還して、家族と再会したい」

 などという意見が多いようです。
 クロノヴェーダによる侵略直後は、この意見が限りなく100%に近い割合であったので、比率としては下がっています。ですが、それでも圧倒的多数の人々は『世界の全ての奪還』という未来を志向しているのは間違いありません。
 ただし、今後、奪還した地域が増えていけば、この比率が低下していく事が予測されています。

【2】復讐よりも、現在までに奪還した最終人類史の防衛を重視すべき
 9%の人が支持しているのが、現在よりも防衛を優先するという穏健的な意見です。
 日本及び太平洋地域の奪還を目指すのは良いとして、アフリカや中南米、中東などに対して、最終人類史の命運をかけてまで争う必要は無いという意見が多く集まりました。
 『歴史の奪還戦』は、勝利すれば、クロノヴェーダに奪われていた地域を奪還することが出来ますが、敗北すれば、最終人類史が滅びかねない危険なものだというのが、意見の根本となっているようです。

「新宿島だけが取り残された初期とは、状況が変わっています。当時は、勝利しなければならない追い詰められた状況だったでしょう。しかし、今は違います。世界を奪還する事が重要なのは判りますが、そのために、今を生きている、最終人類史の人々の命を賭けるのは、おかしいのでは無いでしょうか」
「降りかかる火の粉を払う必要はあるかもしれません。しかし、攻撃を仕掛けて戦争を引き起こすべきでは無いのでは無いでしょうか」

 などという意見が多いようです。
 この意見は、最終人類史に新宿島だけが残された絶望的な状況を知らない、帰還が遅かった地域に多い傾向があるようです。
 勿論、帰還が遅かった地域の人々でも『世界の全てをクロノヴェーダから奪還するべき』という意見が最多数なのは変わりません。
 なお《戴冠の戦》について、『帰還』した全ての人々が認識しているわけではないという点にも留意する必要はあるでしょう。

【3】『帰還』を行なっていない地域の利用法を考えたい
 奪還したが、住民が『帰還』していない地域について、『帰還』を行わずに土地を利用できるような方法を考えるのはどうかという意見が出ています。
『帰還』を行っていない地域は、時間が停止している為、有効利用できていませんが、それをどうにかする事が出来れば、最終人類史の力を増すことが出来るでしょう。

 また、付随する意見としては、
「ヨーロッパの国々は良いとして、独裁色の強い軍事大国である中国を『帰還』させた場合、最終人類史が混乱する可能性が高い」
「ディアボロスが活動している『ロシア』や『中東』についても、奪還後に『帰還』を行うと、戦争やテロ、紛争といった事態を引き起こしかねない」
「『帰還』を行う国については、民主主義が成熟しており平和主義への賛同を得られる地域に限定し、それ以外の地域は『帰還』せずに土地だけ利用するべきだ」

 といった意見が多いようです。
 現在の支持率は5%程度ですが、複数の市民団体が推奨しており、支持者は増加傾向にあるようです。無視は出来ないかもしれません。
(現在『帰還』しているのが日本とオーストラリアだけである点は考慮する必要があります)

【4】宇宙開拓を開始したい
 クロノヴェーダの侵略が地球に対して行われている事から、宇宙への脱出を行うべきという意見も出ています。
 ディアボロスには【水中適応】の発生を促した実績がありますので、宇宙に対応するようなパラドクス効果を前提とする事で、スペースコロニーの建設や、月への移住についても実現性が格段に高くなっています。

「戦いを望まない人々が、安全に暮らせる場所を作って欲しい」
「敵が侵略してきたからと言って、戦わなければならないという事は無い筈」
「逃げるのは決して恥では無い。相手が殴りかかってきたからと言って、こちらが殴り返す必要は無いのです」

 など、戦いを忌避する人々や、宇宙へのロマンをもつ人の支持を得ているようです。
 支持率は1%未満と少数ですが、今後、宇宙での生活が可能になるようなパラドクス効果や、宇宙でも活動できる移動拠点などを手に入れた場合は、この意見が大きくなる可能性があるかもしれません。
==================
 これらの調査結果は、最終人類史の人々の偽らざる本音と言えます。
 尊重しつつも、ディアボロスとして、訴えかけるべき言葉を考えてください。

●大会議の意義
「現時点で、最終人類史の未来を語る事は難しいかもしれません。
 しかし、今回の調査を行う事で、最終人類史の人々の気持ちを知る事が出来ました。
 それだけでも、大きな成果だと思います。
 大会議では、現在の最終人類史の人々の思いを理解しつつ、ディアボロスが志向する未来への展望を語ってもらえればと思います」
 と、大会議の意義を説明する。

 そして、最後に、

「ただし、これまで私達は、歴史と大地の奪還を目指して活動して来ました。
 新たな文化を強いれば、『最終人類史』ではなく、新たなディヴィジョンと化してしまう危険もありえます。今回の会議だけで、そこまで至る可能性は低いとは思いますが……念の為、その点には気をつけてください」

 と注意を促して、説明を終えたのだった。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【勝利の凱歌】
2
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【スーパーGPS】
1
周囲のディアボロスが見るあらゆる「地図」に、現在位置を表示する機能が追加される。効果LVが高ければ高い程、より詳細な位置を特定できる。
【無鍵空間】
1
周囲が、ディアボロスが鍵やパスワードなどを「60÷効果LV」分をかければ自由に解除できる世界に変わる。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
2
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【ガードアップ】LV2 / 【反撃アップ】LV2 / 【リザレクション】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

一本三三七
 シナリオでは初めまして。トミーウォーカーの一本三三七です。
 今回は、ワイルド・カード提案の特別シナリオを担当する事となりました。

 最終人類史の専門家にお願いした調査の結果などについて質疑応答などを行いながら、最終人類史の未来にも思いを馳せてください。

 選択肢『④最終人類史の未来を語る』の結果は、ただちに影響が出るものではありません。
 ただし、最終人類史が目指す未来を示す事になるので、時間が経てばたつほど、大きな影響が出てくる事になります。

 人々の意志を一つにまとめるような呼び掛けを行えば、最終人類史の人々の心を一つにまとめられるかもしれません。
 逆に、一人一人が未来について考えて欲しいと訴えれば、人々の考えに多様性が生まれ、未来の可能性が増えていくかもしれません。

 何が正解で、何が間違いという事はありません。
 ディアボロスの率直な思いを伝えられれば、それが一番良いものとなるでしょう。

『チェインパラドクス』の未来は決まっておらず、全てが流動的です。
 ワイルド・カードでこの提案が行われ、シナリオで、こんな呼び掛けをしたからこそ辿り着く未来、そんな未来に向けた、皆さんのプレイングを、どうぞよろしくお願いします!

!シナリオ運営に関する連絡!
 攻略旅団の調査報告に関するプレイングは『3月22日(金)朝8時30分』までのプレイングを有効として、リプレイを執筆します。
 また、『最終人類史の未来を語る』の選択肢については、『3月25日(月)朝8時30分』までのプレイングを有効として、リプレイを執筆します。
 このシナリオの結果を参考に、4月分の攻略提案が可能なスケジュールで運営を行って参りますので、ご協力をよろしくお願いします。

 採用するプレイングは、期日までに投稿された全てのプレイングを判定した上で、バランス良く採用させて頂きます。
 全てのプレイングが採用される事はありませんが、全てのプレイングが結果に影響を与える事になるので、よろしくお願いします。

 ただし『〇〇さんの意見を支持する』という記述だけのプレイングや、あからさまな多数派工作などがあった場合、判定の対象外とさせていただきますので、ご了承ください。
※なお、各選択肢のイラストはそれぞれの提案者となっていますが、特に判定への有利不利はありません。
102

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


ラウム・マルファス
分野は違うケド研究者の端くれとして、解析してくれた専門家には敬意を表するヨ。
「まずは少ないデータと期間でこれだけの解析をして頂きありがとうございマス」
ペコリと1礼。

「ボクからは2つ質問させてくだサイ」

「1つ目は【2】の情報伝達において具体的な内容を解読・再現できる可能性はあるカ。あるとしたらどれくらいのサンプル・期間が必要か知りたいデス。陽動や撹乱への利用を想定していマス」
正解が分からない状態だから、かなり厳しいと思うけどネ。

「2つ目は【3】の長距離情報伝達において、該当の光を可視光に変換することは可能かを聞きたいデス。例えばゴーグルのようなもので視ることができれば、現地で伝達先を追うことができるかもしれナイ。複数個所で行えば、伝達先の方向の特定が可能になるのではと推察しマス」
境界付近のアルタンをどうにかしないと実行は難しいケド、役には立つんじゃないかと思ウ。通信が見えれば通信障害の効果で止められるかどうかも検証できるしネ。

答えてもらったら、お礼を言って質問を終えるヨ。


トロワ・パルティシオン
3つの傾向か。でもそれだとあの光景は……

ちょっといいかな、少し質問させてほしい。
ええと、知られてないかもしれないから、まず前提を説明させてもらうね。

僕らディアボロスは時々、遠く離れた場所の出来事を予兆として受け取るんだ。
以前の予兆で、アルタン・ウルクに漂着して食われたクロノヴェーダの様子を見たことがあるんだよ。
彼は食われる直前、何かに気付いてアルタン・ウルクの目を見つめていたんだけど……
今回の話と合わせると、目の明滅の仕組みに気付いたんだね。

それで、だね。その短い時間の中で、彼はアルタン・ウルクの意志らしきものを理解したようなんだよ。
確か『それ』が強さの根源とも言っていたかな。
アルタン・ウルクの信号って、そんなに簡単に分かるほど単純なんだろうか。
専門家の人に聞きたいんだけど、今回の解析でそれらしい物は見つかったかな?
情報伝達に限らなくて、例えば食欲とか怒りとかの特定の反射が多かった、とかさ。

あるいは、今後ディアボロスが現地で解読することは出来そうかい?


 最終人類史の人々には、可能な限りアンケートへの協力を求めるということもあり、また多くの人々の注目を集められるイベントにしなければ意味がないこともあり、大会議はイベントとしての盛り上げも行われていた。
『最終人類史の未来を語る大会議』が開かれている東京ドームの周囲は、研究者だけでなく、多くの市民も集まり、賑わっていた。少し離れた場所にはキッチンカーや大道芸人のような人々も集まっている。
 ディアボロスが呼びかけて行う事なので、みんなで協力して盛り上げよう! という最終人類史の人々の意気込みが感じ取れなくもない。

 そんな賑やかな、東京ドームシティで、子供達に大人気のエリアといえば、アルタン・ウルクエリアに間違いない。
 いつの間に用意したのか、エリアの中央には、ふわふわアルタンウルクの滑り台が鎮座し、原寸大アルタン・ウルクの模型と記念写真を撮る事も出来るようだ。
 かなり不気味な外見なのだが、怖いもの見たさなのか、子供達はキャッキャと騒いだり、女子高生たちが「キモかわいい」と写真をとったりしている。
 子供達だけでなく、大人も勉強になるアルタン・ウルクについての研究内容なども展示され、アルタン・ウルクから逃げるVRゲームなどにも行列ができていた。
 ディアボロスやクロノヴェーダが繰り広げる逆説連鎖戦は時空が歪むため、常人が観測していても理解不能な動きになりがちだ。

「まあ流石にそこまでの理不尽ゲームじゃないのカナ」
 おそらく、何の手がかりもなく《七曜の戦》に挑むよう放り出されるよりはマシだろう。
 そんなイベントエリアを横目で見つつ、ラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)は研究者の代表に挨拶をして手を差し出した。
「どうも、今日はよろしくお願いしマス」
「アルタン・ウルクと戦った経験を持つディアボロスさんと直接話をさせて頂いて光栄です」
 研究者代表は、キラリと光る頭頂部を見せるように頭を下げると、ラウムの手を握って握手に応じる。
「まずは少ないデータと期間でこれだけの解析をして頂きありがとうございマス。同じ研究者として、尊敬しマス」
 と、ラウムもペコリと一礼。
 和やかな雰囲気で研究者とディアボロスの話し合いが始まった。

 まずは、代表者とスタッフが、展示物の説明を行ってくれた後、場所を移してディアボロスの疑問についてのディスカッションとなる。
「まずは、情報伝達において具体的な内容を解読・再現できる可能性はあるのでしょうカ?」
 ラウムの質問に、代表者はうーむと腕組みするも難しい顔をして、
「犬や猫の鳴き声から、その気持ちを汲み取ろうという研究は長く行われています。ですが、完全に成功したとは言い難い状態です。アルタン・ウルクについては、現状でもサンプル数が少なく、不可能では無いとしても、長い時間が必要になるでしょう」
 と答える。
 しかし、この代表者の返答に疑問を持った、トロワ・パルティシオン(迷子のコッペリア・g02982)が、
「アルタン・ウルクの声からは意志のようなものを感じたんだ。だから、犬猫の気持ちとは違うベクトル……言語として検証する事が可能じゃないのかい?」
 と発言する。
「残念ですが、我々は、意志のようなものを感じ取る事は出来ません。おそらく、ディアボロスが持つ翻訳能力に依存したものだと思われますが……」
 トロワの疑問について、代表者は、うむむと唸りつつも、残念そうにそう答えた。研究者も一般人でしかないので、ディアボロスの力に依存した事はわからないのだろう。

「ただ、人間同士の会話のような複雑な言語としては機能していないのは間違いありません。
 なんらかの意志があったとしても、現時点では、言語としての解析は難しいと考えられます」
「ならば、そうだネ。狼の遠吠えや、イルカの警戒音のような、信号だけでも解析できないカナ? 可能ならば、陽動やかく乱などに役に立ちそうダ」
 ラウムの話に、代表者は理解を示し、優先的に研究する事を約束したが、
「音自体は再現できると思います。ただ、アルタン・ウルクがそれを仲間の言葉として理解してくれるかは別問題です。あまり期待はしないで下さい」
 と、付け加えた。
 例えるなら、日本語を解析して、音声合成ソフトで『日本語の会話』を再現することが出来ても、その音声合成ソフトの発した言葉を、ディアボロスが『仲間の言葉だと認識するかどうか』は別……という事だろう。
 ラウムも研究者として、それは理解できるので、こちらにも理解を示しつつ、音だけでなく光についても質問をぶつけてみた。

「長距離伝達を行っている光を、可視光に変換する事は可能だろうカ。複数地点で、光の向かう先を計測する事で、伝達先を特定できるかもしれナイ」
 この質問を受け、代表者はキラリと目を光らせた。
 どうやら、代表者の専門分野であったようだ。

「長距離伝達信号ですが、全方位に対しての放射状に行われている事が判明しています。
 指向性は無く、人間でいえば『まわりに誰がいるかわからない状態で、声をあげて叫ぶ』ような状態ですね。
 信号の中に『情報を伝達しろ』という命令、あるいはパルティシオンさんがいうところの意志が含まれているため、信号を受信できたアルタン・ウルクは、同様に信号を発して周囲に伝える行動を繰り返すのです。
 この信号のやり取りについては、信号を受け取った個体が必ず完全に同じ信号を発する訳ではないので、なんらかの法則性がある筈ですが、現時点では解析できていません」

 ただし、と代表者は一度そこで言葉を区切った。

「『伝達先となる司令塔の個体程、多くの情報が伝達される』筈である事から、地域ごとの、アルタン・ウルクの生態を観察して比較する事で、どちらの場所が、より『司令塔』に近いかを類推する事は可能と思っています」
「ホホウ、つまり……」
「ラウムさんが仰った伝達先の特定は、『おそらく可能』ということです」
 ニヤリ、とラウムと研究者は笑みを交わす。
「ただ、この場合も、その司令塔が必ずしもイコールで『断片の王』とは限らない点には留意して下さい」
「そうダネ。『司令塔がそういうクロノ・オブジェクトである』ケース、『司令塔』となるジェネラル級アルタン・ウルクが複数存在するケース……まあ、色々考えられるヨ」
 とはいえ、やってみなければ分かるまい。
 その後も更に早口で専門知識を垂れ流す代表者を、ラウムは「研究者アルアルダネ」と苦笑気味に制止するのだった。

 結論を言えば、現時点では、アルタン・ウルクの情報伝達方法から、敵の中枢を特定するのは難しい。
 だが、サンプル数が増えれば、より多くの情報が得られるだろう。
 例えば、朝鮮半島海域だけでなく、吸血ロマノフ王朝のシベリア南部、最終人類史の中国西部、蹂躙戦記イスカンダルとの境界である中央アジアなどから、アルタン・ウルクのディヴィジョンに潜入するなどがあるだろう。
「とはいえ、アルタン・ウルクの動きの速さを考えると、逆侵攻を招く可能性もあるカナ……慎重さが求められソウだ」
 研究者のラウムとしては、調査を行いたいとも思う部分はあるが、ディアボロスとしては、学術的興味と安全保障との兼ね合いを考えねばならないと、考えざるを得なかった。

 早口で語った代表者が、お茶で喉を潤していると、今度は、トロワが再び質問をする。
「僕らディアボロスが見た予兆で、アルタン・ウルクに漂着して食われたクロノヴェーダの様子を確認した事があるんだ。
 彼は食われる直前、何かに気付いてアルタン・ウルクの目を見つめて何かに納得していたようなんだけど、これは、アルタン・ウルクの中枢とやり取りしたのだと思っていたんだ」
 そう前置きした上で、
「ただ、これまでの結論から考えると、アルタン・ウルクの中枢の意志が、末端のアルタン・ウルクから伝達される事は無さそうなので、そのあたり、専門家の視点から検証して貰えないかな?」

 トロワの質問に、代表者は、ふぅむとうなりながら、ハンカチで頭の汗を拭うと、「これは私の推論になりますが」と前置きして、早口で語り出した。

「そのクロノヴェーダは、アルタン・ウルクに喰われたのですよね。
 アルタン・ウルクは、喰ったクロノヴェーダを同化する力があるとも推測されていたかと思います。
 クロノヴェーダはディアボロスの皆さんと同じ、時間と空間を歪める存在です。
 この事から考えると、『アルタン・ウルクに喰われて同化する事が確定的な未来』となった段階で、『アルタン・ウルクとなった後に得られるアルタン・ウルクの基礎知識』的なものを、理解する事が出来た……という可能性があるかと思います。
 確証は全くありませんが、喰われる直前のクロノヴェーダが、アルタン・ウルクとは何者であるかを理解して納得したのならば、この推測が最も可能性が高いでしょう」
 推論ともいえませんが、そういう可能性もあるのかなと思っていただければと言いつつ、専門的な用語を交えて更に詳しい説明を行い始める研究者。
 難解な話をどうにか理解しようと努めていたトロワに、研究者はこう付け加える。
「ただ、最も単純な意志の発露は、ディアボロスの皆さんが『声』として認識している内容かもしれません。
 私達にはただの轟音としか聞き取れませんので」
「あの唸り声……。そういえば、あれが翻訳能力の結果だとすると……?」
 トロワは記憶を掘り起こす。垣間見た予兆の中で、魏延は最期に何と言っていたか。

「……そうか、『それ』こそがお前達の意志、お前達の強さの根源。だが、何故……」

 魏延はおそらく、アルタン・ウルクの強大さを支える『感情エネルギー』の源たる『感情』あるいは『行動』を理解したのだ。
「シュゴ……か。それに同化能力の存在を考えると……」
 アルタン・ウルクの『イレギュラー性』の本質が見えて来たように思い、トロワはドームの天井を仰ぐのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【無鍵空間】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!

エイレーネ・エピケフィシア
初めまして、わたしはエイレーネと申します。蹂躙戦記イスカンダル攻略旅団の一員です
まずは『ゴルディアスの結び目』の研究を引き受けて下さった皆様に、心よりの感謝を申し上げます

皆様の見立てによれば、結び目とゴルディオンの街は密接に結びついているとのことでしたね
故に、もし再びゴルディオンに持ち込んで結び目の再生が成ったとしても、他の場所では機能しない
そういった認識で間違いないでしょうか?

さて、ここまでの話を踏まえてお伺いしたいのは……
「任意の都市に結びつく形で、結び目を改造して修復するか、類似した効果を持つ品を新たに作ることは可能か」ということです
もし可能であれば。最終人類史の防衛に役立ちますし……アルタン・ウルクの脅威に晒されるヤ・ウマトの舞鶴において、長期的に敵の侵入経路を封鎖する手段にもなり得ます

現時点では困難だとしても「このような情報やクロノ・オブジェクトが追加であれば出来るかもしれない」という案があれば、お聞かせ願えますでしょうか
学術に長じた皆様のお考えが新たな指針となるかもしれません


逆叉・オルカ
おお、こんなに色々な情報がわかったんだね。
研究してくれた人々に感謝するよ。ありがとう。
復讐者だけではわからない事もあったことだろう。

自己紹介をした上で、専門家達に尋ねたいことがある。
『クロノオブジェクトを持ち帰ることで、今後、新宿島になんらかの影響は出ないか』
と言うのが気になってね。
ゴルディアスの結び目以外にも関わることだが……持ち帰ったクロノオブジェクトは本来なら現代史にはない機能を持ったものが多い。
それは便利でもあるが、同時に本来の歴史から離れていく原因にもなり得るかも知れない。
敵のクロノオブジェクトが新宿島に与える影響について、懸念していることがあれば教えて欲しいんだ。
小さな切欠でも、新宿島の力が弱まったり、ディヴィジョン化してしまえば本末転倒だからね。

このままゴルディアスの結び目の機能を研究できるかも知りたいな。本来の効果や類似品の開発は研究できそうなのか?
専門家も研究に乗り気なら良いのだが、実はそうでもないなら知っておきたい。
せっかくの機会だからね、相互理解は大事だからさ。


 ゴルディアスの結び目についての研究者のブースは、アルタン・ウルクの展示エリアから少し離れた場所にあったが、見た目の派手さは少なかった。
 ゴルディアスの結び目についての研究自体が始まった直後である為、大掛かりな準備は出来なかったらしい。
 その代わりというのか、最終人類史のゲーム会社と提携して、東京ドームシティを歩き回って謎を集めて、ゴルディアスの結び目を解く! という、スタンプラリー的な謎解きゲームを行っているらしい。
 ディアボロスが謎解きによって、古代都市ゴルディアスへ辿り着いたという冒険譚をうまい具合に、イベントに昇華させているのだろう。

 そんな研究者達の前で、上品な礼を披露したエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)は、『ゴルディアスの結び目』の研究を引き受けてくれた研究者達に、心より感謝を捧げた上で、自分の推論について、話を聞いてもらう。

「研究成果によれば、結び目とゴルディオンの街は密接に結びついているとのこと。であるならば、ゴルディアスの結び目が完全に修復したとしても、他の場所では機能しないという認識で間違いないでしょうか?」
 そのエイレーネの言葉に、研究者の一人が、膝を打って同意する。
 その様子は、優秀な学生の意見を聞いて嬉しがる大学教授のようであった。
「全く持ってその通りなのだが、ニュアンスが少し違うのですよ」
 満足そうににんまりしながら話し出した研究者は、やはり、早口で説明を開始するのだった。

「実は、ゴルディアスの結び目の『本来の効果』には、ゴルディオンの街でしか機能しないような制限があるわけではありません。
 ゴルディオンに設置する事で『本来の効果』に必要なエネルギーを大幅に減少させる効果が発揮されているのです。
 ですので、理屈上、他の場所でも機能させる事ができるのですが、現時点の研究結果から、ゴルディオン以外で起動させるならば、ゴルディオン設置時の100倍以上のエネルギーが必要になると算定されている訳です」
「100倍ですか……。仮に1000のエネルギーで動くとしても、必要エネルギーが10万となってしまう計算ですね」
「はい。現状、難しいエネルギーだと思います」
 エイレーネの言葉に頷いて、研究者は続ける。
「ゴルディアスの結び目の『本来の効果』を機能させているエネルギーは外部から供給されています。これまで得られた情報を勘案すると、『断片の王』イスカンダルが、そのエネルギーの供給元である可能性が高いでしょう。
『断片の王』イスカンダルにとっては、ゴルディアスの結び目は弱点となるので『持って逃げられる』方が望ましい。
 ですが、防衛についていたケルベロスがそれを行わなかった点から考えて、古代都市ゴルディオンに設置しなければ、『断片の王』でも運用不可能なエネルギーとなってしまうのでしょう」

 その言葉に、エイレーネは思わず嘆息した。
「アルタン・ウルクの脅威に晒される、ヤ・ウマトの舞鶴などに設置したかったのですが……」
「いや、それはまた別問題みたいだよ。諦める必要は無いんじゃないかな?」
 待ったをかけたのは、逆叉・オルカ(オルキヌスの語り部・g00294)であった。
「今のエネルギー100倍の話って、ゴルディアスの結び目の『本来の機能』……イスカンダルを護る『結界兵器』としての効果だけについてなんだろう?」
 オルカの言葉に、エイレーネは思い返す。
「……なるほど、確かに。ではゴルディオンの周囲に霧を発生させたり、謎を解かなければ近づけないようにする効果だけの運用であれば……?」
 2人の言葉に、研究者達も大いに頷いた。
「いいですね。ディアボロスというのは、身体能力だけでなく、知性も強化されるのですかね?」
 そう言いつつ、研究者は説明する。霧の発生や謎解きの力は『ゴルディアスの結び目を護るための外付け機能』なので、それだけでの運用は不可能ではないようだ。
 なお『本来の機能』……『結界兵器』としての機能自体は、現状、止まっていると見て良いらしい。

「追加機能は、ゴルディアスの結び目からのエネルギーを利用する事が前提となっています。なんらかの、エネルギーを蓄えるクロノ・オブジェクトと組み合わせる必要がありますし、必要なエネルギーを供給し続ける必要もあるのです。
 それが出来れば、期間を限定とはなるが、舞鶴全土を護る事も可能でしょうけれど……。
 24時間365日防衛し続けるには、エネルギーがいくらあっても足りないので、恒常的な防衛には現時点では不可能といえるかもしれません」
 そう注意点を語る研究者に、「もし利用する前提で研究を進めるのであれば、攻略旅団に提案しなくては」と考えつつ、エイレーネは少しうれしそうな顔で感謝を述べる。

 エイレーネが満足した所で、今度はオルカが少し深刻そうに、研究者達に話を振った。
「少し、気になっていたんだ。俺達ディアボロスがクロノオブジェクトを持ち帰ることで、今後、新宿島になんらかの悪影響は出る可能性はあるんだろうか?
 他ディヴィジョンのクロノ・オブジェクトは、正しい歴史に存在していないものであり、その結晶のようなものだ。
 これを最終人類史に集める事で、最終人類史のディヴィジョン化の可能性などは起きないだろうか」
 そう懸念を示すオルカに、先程とは別の研究者が口を答えた。
「現状、君達ディアボロスがかなり気を遣ってくれていることもあり、明確なディヴィジョン化の兆候と思われるような異常は確認されていない。故に、問題はないと判断している」
 遠く、スタンプラリーに興じる子供達に一瞬視線を向け、研究者は続けた。
「クロノ・オブジェクトによる影響が、真に皆無であるかを検証することは極めて困難だ。だが、そもそも、これまで私達の暮らしは、君達ディアボロスのパラドクスによって支えられて来た」
 ディアボロスは《刻逆》が起きた直後から、一般人が、本来の歴史に近い生活が出来るよう、残留効果を用いて奮闘して来ている。それによって最初期の混乱状況ですら、『災害を受けた時の避難生活』程度で乗り切れたのだが。
 一方、異なる歴史を歩んでいる一般人達からも、現状は『本来の歴史』の延長、何者かに狂わされた状況であるという正確な認識が保たれている。
「単純に、『歴史にないものを用いている』というだけではディヴィジョン化には繋がらない、と?」
「『結果として、一般人が本来の歴史での生活から逸脱しないような暮らしを続けること』が、ディヴィジョン化を防ぐ鍵であると考えられる。
 例えば、ゴルディアスの結び目の追加機能を研究し、最終人類史を護る防衛結界を張るというのは、最終人類史の暮らしを護るものとなる。問題となる可能性は極めて低いだろう」
「そうか、なら良かった」
 安堵の息をつきかけたオルカ。だが、彼は研究者が続けた言葉に眉をしかめることとなった。
「ただ、私見だが、先日持ち帰られた『ファロスの光』は、その意味では危険性を秘めていると言えるだろう」
「『ファロスの光』が?」
 オルカは思わず鸚鵡返しに問い返す。
 蹂躙戦記イスカンダルの『大灯台』で確保され、現在は日本一深い場所にある地下鉄六本木駅の地下に保管されている、クロノ・オブジェクトだ。
「あれにはアラビア半島全域などの超広域に対し、亜人の繁殖や成長を促進する効果があると聞いている。その影響で最終人類史の子供達の成長が早まったり、生まれて来る子供の体が頑健になるといった影響が出た場合……一般人の生活が変わらなくとも生物学的な理由で、最終人類史がディヴィジョン化するきっかけになる可能性は否定できない」
「……管理はしっかり行わせてもらうよ」
 強大なクロノオブジェクトを奪って新宿島に置いているだけでも蹂躙戦記イスカンダルの攻略上では影響を与えられているのだが、扱いについては、良く検討する必要があるかもしれない。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
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無堂・理央
千早城海上拠点化は難しいかぁ。
技術者の皆さんが来てるし、色々突っ込んだ話が出来るのは助かるよね。


聞きたい事は主に二つ。
一つは海底移動は出来るとあるけど、一時的でも良いので海底に足をつけない海中移動や海中での跳躍機能は改造難易度としてはどうなのかだね。
海溝みたいに海底移動だと危なそうな地形が通過出来るか否かで戴冠の戦開始後の天正大戦国以外での運用が変わりそうだし。

もう一つは海底移動の改造に使うエネルギーに対して水上に浮かせる為の改造に必要なエネルギーとの差が知りたい。
海底移動分を基準にざっくり何倍位とかでも良いから差が分からないと思い切って改造すべきかどうかの判断もしずらいからね。
ボクが先に挙げた海中移動関連のように大会議で出た水上浮揚以外の改造案も海底移動を基準にざっくり改造に必要なエネルギーが分かるなら答えてくれると嬉しいな。

っとこれは一通り質問してから思いついたんだけど、千早城に対する改造案は千早城と同じエネルギー消費でサフィーナ・ミウやミウ・ウルにも施す事は可能なのかな?


文月・雪人
先ずはこの場を借りて、技術者の皆さんにお礼を言わせて頂きたい。
千早城については今回の調査検討だけでなく、前回の修復と起動の際にも本当にお世話になりました。
皆さんがいなければ、あの城に現代技術を融合させて動かすなんて、到底成し得ない事でした。
俺は皆さんの事を、共に困難に立ち向かう戦友だと思っています。
ありがとうございます。
そしてこれからも、どうぞ宜しくお願いします。

そして成程、水上移動は難しくとも海底歩行は可能なのですね。
千早城が海や湖を渡れる見込みがあるのは有難い、
これで戦略の幅も広がるというものです。

しかし敵地への上陸は危険との事ですが、
例えば『岸和田城』の装甲や機能を合体させたり、
『不破の関』や『忍城』の防衛機能を調査して応用を試みたり、
他のクロノオブジェクトの力を借りる事で、
防衛力や攻撃力を強化して対策する事は可能でしょうか?

また現状は困難であるとしても、
舟の様な水上移動や、潜水艦の様な水中移動を試みる場合についても、
改造に必要なエネルギー量を、目安として教えて頂けると有難いです。


 東京ドームシティで行われている、様々な催し物の中で、まるで科学館の科学実験のような事をしているのが、千早城の水陸両用改造の研究を行っていた実験チームだ。
 巨大な水槽が用意され、その水中を『72分の1』サイズの、千早城が動き回るアトラクションが用意されている。
 見学に来た小中学生が、リモコンで、千早城を動かす事も出来るようなので、好きな人にはたまらない見物となっている。

 その実験ブースを興味深げに見学していた、無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)と文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は、チームリーダーの女性に声を掛けられて振り向いた。

「ディアボロスの方々ですよね、良ければ、私がご説明しますよ」
 彼女は、刀剣好きの趣味が高じて、城フェチになり、日本中の城を巡って研究を重ねてきたという異色の経歴の研究者であるようだ。

「ありがとうございます。さっそく、質問したいのですか」
 理央は、そう前置きすると、
「海底移動が可能という事だけど、一時的でも良いので海底に足をつけない海中移動や海中での跳躍機能は可能かな?」
 と、最初の質問を投じる。

 チームリーダーは、その言葉に我が意を得たりと、巨大水槽に向かうと、隠された秘密スイッチをポチっと押した。

「こんなこともあろうかと!」

 このスイッチに連動していたのか、水中を移動していた『72分の1千早城』の下部から、ゴムかビニールのようなものが出現、急激に膨らむと、その浮力で『72分の1千早城』を浮上させたのだった。
 浮上した『72分の1千早城』は、脚が地面についていないので移動不能となってしまったようだが、これこそが、理央の問いへの答えなのだろう。

「沈没船の引き上げは、基本的にはクレーンで行いますが、補助的に、今回のような『浮力』も利用します。
 ぺちゃんこにした状態で、千早城に装備し、浮上したい場合に、液体窒素を気化させたもので膨らませる事で、一気に浮力を得るという理論です。
 これならば、パラドクストレインの貨物車両で運び込める資材で、可能ですよ」

 城を浮かせられるくらいの大きな浮き輪があれば城も水に浮かせられる……という、力技の解決方法だが、実現可能であるのは間違いなさそうだ。液体窒素は時間さえあれば【液体錬成】で無尽蔵に増やせるので再充填も出来る。

「海上迄出ずに、海中を跳躍する場合などは、浮力が必要なくなれば、浮きを切り離してしまえば、再び海底に降りる事も可能です。水中の落下速度なども、コントロール可能なので、実用性もあると思います」

 そう大きな胸をはるチームリーダーに、「これが実現できれば、運用法が広がりそうだね!」と、理央はうんうんと頷いてから、率直に尋ねた。
「でもこれ、物凄い危険じゃない?」
「う”っ」
 この浮上方法は、慎重にバランスをとる必要があるので、周囲の地形の状況などを確認した後、新宿島のコンピューターで計算を行い、その計算に従って浮きを再配置するといった手順が必要となる。
 また、浮きの防御力など無きに等しいので、戦闘になれば簡単に破壊されてしまう。
 浮上中に攻撃された場合、浮上できなくなるだけでなく、場合によっては千早城がひっくり返った状態で海底に落下するなど、致命的な結果を招いてしまうだろう。
 そういった危険を確認したところで、理央は話を続ける。

「現代技術での浮上方法については、すごく良く分かったよ。目に見えるので、本当にわかりやすかったね。それはそれとして、クロノ・オブジェクトの機能として、水上を移動させる方法が無いか知りたいかな?」
 理央の言葉に、チームリーダーは「まぁ無理ですね」と、あっけらかんと手を振った。

「千早城は天魔武者……要するに全身金属の種族が使う地上要塞で、海に浮くようには出来ていません。水上を動く城が欲しいのであれば、一から作った方が良いですよ。
 例えば、冥海機ヤ・ウマトの台湾島で、造船するクロノ・オブジェクトがあったそうですが。
 台湾島に残されていた施設は、小型の艦しか造船できないようですが、冥海機ヤ・ウマトなら、最大級の『戦艦』を作るような規模の設備もあるんじゃないでしょうか?
 冥海機ヤ・ウマトから別のディヴィジョンに移動させる方法など、考える事はたくさんありますが、千早城を水に浮かせるよりは、実現性があると思います」

 チームリーダーの説明は、ある意味、とても理解しやすかった。
 だが、城でなければ『城取合戦』による攻略短縮が出来ないので、戦艦を持ち込んでも意味がない。
 理央は少し残念に思いつつも、成果もあったので、笑顔でチームリーダーと握手をかわす。

 代わって、雪人が、チームリーダーとの会話を引き継いだ。

「クロノ・オブジェクトである千早城と、現代技術を融合させて稼働させた皆さんに感謝を。
 そして、水上に浮上させるアイデアもまた、とても興味深く見させてもらったよ」
 研究を褒められたチームリーダーの表情が綻んだところで、雪人が、本題に入った。

「『千早城』は、最前線で戦う為の移動拠点だよね。だから、できるだけの強化をしておきたいんだ。
 例えば『岸和田城』の装甲や機能を合体させたり、『不破の関』や『忍城』の防衛機能を調査して搭載する事はできるだろうか?
 『千早城』を運用する為には、こういった強化が必須だと思うんだ」

 それを聞いた、チームリーダーは、曖昧な表情で「理論上、出来ない話ではありませんが……」と歯切れ悪そうに雪人の言葉に答える。
 歯切れの悪かった理由は、
「ですが、その場合、『千早城』の改造というレベルでは無くなってしまいます。新規で用意した別の『クロノ・オブジェクト』の効果を、『千早城』に搭載するという手順になる筈ですから」
 というものだった。

「たとえば、新宿島を護っている『ラムセスの黄金アンク』を取り外して、『千早城』にとりつける為の研究を行うというのならば、可能だと思います。ですので、まずは、搭載したい機能を持つクロノ・オブジェクトの研究を行って、活用可能になってから、改めて千早城への搭載を考える方が確実です。
 ただ、新宿島は、クロノ・オブジェクトの機能の再現という意味では非常に理想的な環境ですので、『新宿島で活用できた』からといって『千早城にそのまま使える』という事にはならないですので、その点は注意が必要だと思います」

 チームリーダーの返答は、雪人にも納得できるものだったので、その通りだねとうなずきつつ、最後に、研究に必要なエネルギー量の目安について、教えてもらえないかと尋ねる。
 チームリーダーは「クロノ・オブジェクトのエネルギーは、現代科学では説明できませんので……」と、難色を示しつつ、説明をしてくれた。

「まず、私達研究者は検証を重ね、経験則から研究を進めてはいますが、『クロノ・オブジェクトや魔法的なエネルギーについて、初歩的な理論すら解明できていない』という点を理解してください」
 雪人は思わず目を瞬かせたが、どうやら相手は真剣に言っているようだった。
「え? いや、それは謙遜とかでなく?」
「でも、今までも、そして今回も成果を出してくれているよね?」
 理央も思わず声をかける。チームリーダーは軽く首を振って言った。
「初期は判明していませんでしたが、数年間の経験から、私達は『研究成果を出せているのには、攻略旅団の提案の存在が大きく影響している』と考えています」
 明確な方向性を持って攻略旅団に提案された研究については、チームの誰かに天才的な閃きが起きるなどして、一足飛びに短期間でディアボロスに役立つ研究成果を導ける……そうした現象がたびたび起きているのだという。
 例えば雪人や理央も提案に関わり、戦争での新宿島防衛の根幹ともなっている『新宿島大結界』の研究は、当初見込みよりはるかに短い期間で実現できたそうだ。これには、複数の攻略旅団の攻略提案があった影響が大きいのだろう。
「パラドクス効果の【操作会得】に似ているのではという推測もあるようですが、推測の域は出ていません」
 おそらく他の用途に使えば『特別なパラドクストレイン』を出現させるに足る強大な意志のエネルギーが、『研究期間の短縮』のために働いているのではないか、とチームリーダーは語った。
「必要なエネルギーの目安が分かるのも、この現象によるものなので、攻略旅団で提案される前に、事前の見積もり等は非常に難しいのです」

 ただし、研究面において、経験則的に分かっていることがあるという。
「クロノ・オブジェクトは『本来の機能の強化』は広く受け付ける傾向にありますが、『全く新たな機能を発揮させる』ことは事実上不可能であると思って下さい」

 今回の千早城も、水中を歩行移動は可能だが、浮くことは出来ない。
 たとえば、砂上船サフィーナ・ミウにエネルギーを大量に注いだとしても、単独飛行可能にするような改造は不可能だろう。

「なるほど……今後の攻略提案の参考にさせてもらうよ」
 雪人は少し、残念に思いながらも、最終人類史の技術者達の限界が知れたのは収穫だったと満足し、チームリーダーに挨拶をして話し合いを終わらせたのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
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ソラ・フルーリア
(杖兼マイクの『レゾネイト』を口元に構えて、元気よく挨拶するわ!)
アタシはソラ・フルーリア!
シルバースカイ・プロダクションのアイドルよ!
……だけど、今日は一人のディアボロスとして、個人の意見を語らせてもらうわ!

アタシの意見は、「世界の全てをクロノヴェーダから奪還すべき」!
これは2年前から変わらないわ!
アタシ達の生きた土地、触れ合った人々、そしてその歴史すらも消し去られるだなんて冗談じゃないもの!

防衛を重視するべきっていう皆の意見もわかるわよ!
皆の命が一番、それにはアタシも同意したいわ!
……けど、だからこそ!アタシは奪還を優先したい、そう思っているの!

「皆の命」、そこに未だ帰還できていない人達は入っていないのかしら!
彼らの歴史を尊重する、そのためにアタシ達は戦い、そして取り戻していく必要がある!
アタシはそう思っているわ!

《戴冠の戦》を勝ち抜いて本当の世界を取り戻すためには皆の応援が必要なの!
だから皆、アタシ達に力を貸して!たった一言の声援だけで、アタシ達は無限のパワーを貰えるんだから!


 東京ドーム内は、ディアボロスが語る言葉を聞き逃すまいと多くの一般人が集まり、ディアボロスを応援する熱気で大きく盛り上がっていた。
 ディアボロス達が、姿を見せる度に、すかさず、そのディアボロスの経歴などがアナウンスされ、人々が暖かい拍手で迎え、大会議の準備が整っていく。

 逆に、表情を強張らせているのは、反戦派市民団体の論客として有名な女性議員、著名な政治アナリスト、最近、宇宙進出に関する電子書籍を出版したJAXA職員など。
 彼らは、この機にディアボロスを論破して、あわよくば自分達の意見を通そうと目論んでいたのだが、会場の熱気に、自分達への逆風を肌で感じてしまっていた。
 彼らの意見は、決して無視できる少数意見では無い筈だが(宇宙進出は微妙)、全体の比率で言えば少数派であり、全市民が等しく集まる大会議の場では、肩身が狭くなるのは、理の当然であった。

 まずは、多数派意見として、老若男女様々な立場の一般人達が、クロノヴェーダとの戦うディアボロスを称賛し、最終人類史に全ての地域を奪還するべきと気勢をあげた。
 圧倒的多数意見である事から、会場も大きく盛り上がる。

 彼らの熱意に答えるように、ソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)が、杖兼マイクの『レゾネイト』を手に、皆の前に立った。

「アタシはソラ・フルーリア! シルバースカイ・プロダクションのアイドルよ!」
 そのソラの言葉に続いて、オタクっぽいコールが続くと、ソラは、そのコールに手を振りつつ、
「……だけど、今日は一人のディアボロスとして、個人の意見を語らせてもらうわ!」
 と続ける。少しだけしょんぼりしつつも、大人しくコールするのをやめたようだ。

「アタシの意見は、世界の全てをクロノヴェーダから奪還すべきだってこと!
 アタシ達の生きた土地、触れ合った人々、そしてその歴史すらも消し去られるだなんて冗談じゃないもの!
 防衛を重視するべきっていう皆の意見もわかるわよ!
 皆の命が一番、それにはアタシも同意したいわ!
 ……けど、だからこそ!アタシは奪還を優先したい、そう思っているの!」

 そう呼びかけたソラの言葉に、彼女のファンだけでなく、多くの人々が惜しみない賛意で大きな拍手を送る。
 命がけで世界を救うために戦い続けるディアボロスを否定する人など、本当に少数意見なのだ。
 だが、ここで、その少数意見代表の女性議員が発言を求める。
 ソラが、それを認めると、女性議員は、マイクを受け取って、声を張った。

「私は、最終人類史を護ってくださっているディアボロスの皆さんの活躍に感謝を忘れた事は一度もありません。
 更に、私たちの意見を聞いてくださる場を用意して頂いた事にも感謝が絶えません。
 ですが、『奪還を優先したい』という事には心から賛同することが出来ないのです」

 彼女は、そう言うと、一息いれて、言葉を紡いだ。

「私も、『奪還戦』では新宿島で、皆さんの勝利を願った者の一人であります。
 ですから、『奪還戦』の戦いが、100%安全に勝利できるような戦いでは無い事を理解しているのです。
 もし、ディアボロスの皆さんが『奪還戦』に敗れれば何が起こるでしょう?
 新宿島が両断され、新宿区に集まった人たちが死ぬ……それだけですむのでしょうか?
 前例が無いので確たることは言えませんが、可能性としては、新宿島の破壊と同時に、最終人類史の全ての土地が、クロノヴェーダに強奪されるような可能性もあるのでないでしょうか?
 全ての人類を救いたいという意志は理想であり、尊いものだと思います。
 ですが、その理想の為に、最終人類史の全ての人々の命を『賭ける』べきでは無い。そうではありませんか?」

 彼女の意見は、一面の真理ではあるだろう。
 新宿島以外がすべて失われた初期は、全てを賭けた乾坤一擲の勝負をせざるを得なかった。
 しかし、現在の最終人類史の領域は、有力なクロノヴェーダのディヴィジョンと比べても勝るとも劣らない広さがあるのだ。これまで同様に『オールオアナッシング』な戦いを続けるべきでは無いのかもしれない。

 しかし、ソラはそれでも、戦う事を選び、人々に訴えかけた。

「最終人類史の皆の命を護る! それは当然よ。
 でも、奪還していない地域の住人もまた、『最終人類史の皆』じゃない?
 最終人類史に暮らす人々の安全の為に、クロノヴェーダのディヴィジョンの奪還を諦めちゃダメよ!
 それは、クロノヴェーダに奪われた地域にいる人々を『見捨てて殺す』事になる。
 私たちディアボロスは、最終人類史の皆を決して見捨てない!
 そして、その為には、戦い続け勝ち続けなければならない。
 その為には、皆の応援が必要なの!
 だから皆、アタシ達に力を貸して!たった一言の声援だけで、アタシ達は無限のパワーを貰えるんだから!」

 ソラの熱の籠った言葉に、聴衆たちは、盛大な拍手で答える。
 中には、感極まって涙するものもいる程だ。
 意見を述べていた女性議員も、つきものが落ちたような表情で、ソラの言葉を受け入れる。

 クロノヴェーダに奪われた地域を全て奪還する方針に、反対する者は少なくともこの場ではいなくなった。
 今後、さらに多くの一般人が『帰還』し、この大会議に参加していない人々が多数派になるまでは、奪われた地域を全て奪還するという方針が覆される事は無いだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【勝利の凱歌】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!

小沢・真理
日本の新宿生まれの小沢真理です。

ディアボロスは全世界の帰還を決して諦めません!
全世界が関わりあって私たちの日常があったからです!
現実の戦いはゲームや物語と違って一方的に攻めて勝ち続けられるものではありません。
残念ながらクロノヴェーダに再奪取された地域もあり、侵攻を警戒して帰還を行えていない地域もなお多くあります。
ですがこれまでの教訓を活かし防衛を徹底して着実に全世界を奪還そして帰還させます!

宇宙開拓は夢物語ではありません。
私たちの日々において宇宙利用は日常的な光景でした。
月はおろか火星移住の話すらありました。
そう宇宙開拓は私たちの日常を取り戻す道でもあるのです。
中国大陸には米ロを凌ぐ勢いの宇宙開発技術と施設があります。
国内にはJAXAがあり、早期帰還が見込める種子島が目の前にあります。
着陸先としてまた宇宙開発の一翼を担っていたオーストラリアが健在です。
みなさん!
みなさんの日常を奪ったクロノヴェーダを赦せますか!
今こそ手を取り合い私たちの日常を取り戻しましょう!


 ソラの歌が終わったあと、マイクを握ったのは、JAXAの職員であった。
 彼は、手汗をマイクをベトベトにしながら、ハンカチでバーコード頭の汗をぬぐいつつ、宇宙進出についての話を論じていく。

「以上の事から、クロノヴェーダが、過去の歴史から力を得ているのは明白でございます。
 つまり、過去の歴史の無い宇宙には、クロノヴェーダは存在しないのです。
 ディアボロスの皆さんの力があれば、我々人類は、月を第二の地球とする事もできる筈です。
 クロノヴェーダに襲われない、安全な場所が確保するためにも、宇宙開発に是非、理解を示していただきたいのでございます」

 JAXA職員の意見は少数意見だったが、この意見を好意的に受け取るディアボロスは少なくなかった。
 その中の一人、旅団『航空宇宙同好会』の団長もしている、小沢・真理(夢の続き💫・g10299)が、暖かい拍手をJAXA職員に贈ると、聴衆たちも、「おっさんは頑張った」「感動した」など、彼を誉めるようにヤジを飛ばして拍手を贈る。
 彼の主張を引き取った真理が、こう続ける。

「宇宙開拓は夢物語ではありません。クロノヴェーダの侵略が無ければ、今頃は、火星の探査が行われ、月への有人飛行計画なども行われていた筈です。
 宇宙開拓を行う事は、失われた最終人類史の日常を取り戻す事にも繋がるのです。
 中国大陸には米露を凌ぐ勢いの宇宙開発技術と施設があります。
 国内にはJAXAがあり、早期帰還を見込める種子島が目の前にあります。
 着陸先としてまた宇宙開発の一翼を担っていたオーストラリアが健在です。
 いまこそ、宇宙開発を再開すべき時なのです!」

 と宇宙開発への熱意を示せば、ドーム中の人々が、その考えに賛同するように、拍手と真理コールを響かせた。

「勿論、現代の技術だけで、一足飛びに月への移住などは難しいでしょう。
 ですが、私達には、ワイルド・カードがあります。
 ワイルド・カードの提案があれば、宇宙開発に適したパラドクス効果の開発や、ディアボロスの力を前提にした、宇宙船の開発なども行えるでしょう。
 クロノヴェーダと戦い過去を取り戻すだけが、最終人類史の戦いではありません!
 宇宙と言うフロンティアに、新たな一歩を踏み出す事も、最終人類史の戦いになるでしょう」

 その声援に答えるように、真理は、未来への道筋を示すが、懸念事項についても、説明を加える事を忘れなかった。

「幻想竜域キングアーサー奪還戦では、イレギュラーと呼ばれる敵が『UFO』を利用していました。また、クロノヴェーダ以外の敵が外宇宙より現れる可能性も否定できません。
 ですので、宇宙開発は『逃げる為の手段』とはならないでしょう。
 私たちは、クロノヴェーダと戦い勝利し、そして、未知の敵からも最終人類史を護るための手段として、宇宙開発を考えなければならないのです。
 ですが、私は信じています。
 最終人類史の皆さんであれば、必ずや、未来と勝利を得ることが出来るのだと」

 最後に、真理は、意見を述べてくれたJAXA職員(スタッフがエチケットシートを渡して手汗を拭ってもらいました)と握手を交わし、宇宙進出の未来を約束したのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!

リブシェ・レッドスケイル
方針:理想を喪う愚かさを、自分の体験にからめて話す

いいこと。これから話すのは「こうなって欲しくない」という元人間の転落話よ。
わたくしだってそりゃ理想に燃えてた時代があったわよ。十六世紀ヨーロッパなんて女の力が弱いときに、理想を叶えるには力を得るしか無かった。様々な知識を手に入れ、世界をよくしよう、っていう理想を叶えるにはね。

でも、いつの間にか目的と手段は入れ替わる。理想は卑俗な欲にとって変わられた。他者の支配、蹂躙、強欲。そういったものに。
いつのまにか冷笑と安っぽいリアリズムで悪を行うことを正当化し始めた。
悪いことって魅力たっぷりに見えるけど、突き詰めると味気ない。わたくしの偽物の金のようにね。

多分ね、最終人類史のディヴィジョン化は、こうやって理想を喪ったときに起きると思うのよ。
「目的のためなら手段は正当化出来る」
「シビアな選択の方が正しい」
そんな風に思ううちに、人の魂は簡単に偽の金に堕ちるわ。ええ、ほんとに。

せめて、この時代は理想を喪わずにいて欲しいわ。
強欲な竜のおせっかいだけど。


 宇宙開発という最終人類史の未来への希望に湧く、東京ドーム。
 だが、その希望に冷や水を浴びせるように、著名な政治アナリストでもある大学教授が発言の許可を得た。

「全てのクロノヴェーダを撃破し、大地の全てを奪還するという方針に異論は無い。
 宇宙開発も誠に結構。
 ですが、それと、最終人類史への人々の帰還をどうするかは、また、別の問題だ」
 そう前置きした政治アナリストは、大きな地図を広げ、主に、中国大陸を指さして持論を展開していった。

「本来の最終人類史において、地球上の全人口のおよそ半分が、ユーラシア大陸東部に居住している。
 仮に、既に大地を奪還している『人口15億人を有する某人民共和国』の人々を帰還させたとしよう。
 最終人類史の意思決定が『民主主義』で動くのであれば、最終人類史の意志は、この国の人々が決める事になるのでないか?
 国民の一人一人が自由な意思をもって判断するのであれば、問題は無いかもしれない。
 だが、これが一党独裁的な政治に慣れた国の人間であれば、上の意見に逆らわずに従うだろう。
 つまり、最終人類史が『民主主義』の原則をとるのならば、その国の国家元首の意向が、最終人類史の方針となってしまうという事だ」

 政治アナリストは、更に、
「某国は、日本やオーストラリアと完全に友好的とは言い難い。
 少なくとも、日本が主導権を握っている現状を認める事は無いだろう」
 と冷静に指摘して見せた。その上で、こう述べる。

「これを阻止するためには、ディアボロスが、某国の体制を転覆させるような政治活動を行う必要があるだろう。
 だが、それは、ディアボロスの本意では無いはずだ。
 こういった危険性のある地域については、少なくとも、全てのクロノヴェーダを撃破するまで、帰還を延期すべきではないか?」

 中国大陸での『帰還』作戦により、極少人数だけ『帰還』している専門家達が、顔をしかめる。
 圧倒的な無神経さと思われても仕方のない直言であり、これを全世界の人々が見守る前で発言できる政治アナリストには、相当な勇気があると言わざるを得ないと、ディアボロス達は思う。

 だが、この政治アナリストも、ディアボロスの戦いを否定しよう等とは全く思っていない。
 先程の発言をするに至ったのは、それが彼が知る『最終人類史の現実』に基づいたものであるからだ。
 むしろ自身の主張は、ディアボロスの障害を前もって排除し、最終人類史の勝利に貢献するものであると堅く信じ、彼の中にある正義と善意に基づいて発言を行っているのである。

 だが、彼の知る『現実』は、絶対的に変えられないものなのか?
 発言を求めたのは、リブシェ・レッドスケイル(愚者の緋金・g09919)であった。

「いいこと。これから話すのは『こうなって欲しくない』という元人間の転落話よ」
 そう前置きして語ったのは、リブシェの昔語り。

「わたくしだってそりゃ理想に燃えてた時代があったわよ。十六世紀ヨーロッパなんて女の力が弱いときに、理想を叶えるには力を得るしか無かった。様々な知識を手に入れ、世界をよくしよう、っていう理想を叶えるにはね」
「でも、いつの間にか目的と手段は入れ替わる。理想は卑俗な欲にとって変わられた。他者の支配、蹂躙、強欲。そういったものに。
 いつのまにか冷笑と安っぽいリアリズムで悪を行うことを正当化し始めた。
 悪いことって魅力たっぷりに見えるけど、突き詰めると味気ない。わたくしの偽物の金のようにね」

 政治的に危険がありえるという理由で、助けるべき人を選別するのは『最終人類史が理想を喪う』ことに他ならない。
 リブシェは、そう断じて、政治アナリストの言葉を否定して見せた。

「『目的のためなら手段は正当化出来る』『シビアな選択の方が正しい』は、理想を喪った者が好む言葉よ。
 クロノヴェーダから全ての歴史を奪還するという、崇高な使命を、理想を喪った者が果たす事は出来るの?」

 彼女は、政治アナリストに……そして彼と同じ意見を持つ現在の最終人類史の約4%、何百万人という人々へ問いかける。
 ディアボロスは確かに現在、最終人類史において主導的な立場を取っている。
 だが、本来、そうした国家間の問題を解決すべきは、ディアボロスでなく最終人類史の人々であるはずだ。

 パラドクス能力を持たぬ者にとって絶対的な存在であるクロノヴェーダは、ディアボロスが戦うしかない。
 だが、《刻逆》以降の世界の状況は最終人類史に集った者たちの全てが力を合わせて立ち向かうべきもの。
 そこで戦うべきは、ディアボロスだけではない。
 クロノヴェーダとの戦い以外の、最終人類史の人類同士の揉め事くらい、人類の叡智で切り抜けることが出来ないようでは、世界の全てを救う事など出来ないのだ。
 リブシェの言葉は、最終人類史の全ての人々が、全てをかけた戦いの当事者として、理想と覚悟を示す時であると促していた。

 政治アナリストは苦悩するかのように、顔を真っ赤にして押し黙る。
 彼の中で『そんなことは無理だ』という現実主義的な冷笑と、非現実的な状況とが戦いを繰り広げていたのだろう。
 だが、最後には、リブシェの言葉の正しさを認めざるをえなかった。
《刻逆》以前は、もはや『過去』であり、新たな方向性を見出さねばならないのだ。

「ディアボロスの戦いは、国際政治の力関係を超越する……という事か。
 青臭い理想論と言いたいところだが、そのくらいはしてみせねば、人類には未来は無いのだろう。
 分かった。私も、奪還した全ての地域の帰還に同意させてもらおう。
 ただ、その為の技術的な部分については、私たち学者や政治家にも相談してもらいたい。
 混乱を最小限に抑え、ディアボロスを支援できる体制を整えるべく、全力で協力させて貰おう」

 政治アナリストのその言葉に、リブシェは、この時代の人類が理想を喪っていない事を確信し、微笑んだのだった。
 既に過去に為されたワイルド・カードでの提案を通じ、食料確保等の面において、技術的・数量的な面の問題は解決できている。
 今後、他ディヴィジョンと接していない奪還済地域では、段階的に『帰還』が行われていくこととなるだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
一礼して、語りかける
ディアボロスのエトヴァだ
最終人類史の皆の、日頃の応援と協力に、心から感謝を
そして、親愛を伝えたい

ディアボロスの目標の一つは、世界すべての奪還だ
それはゴールではなく……最終人類史は、《戴冠の戦》という脅威を超え、古い人類を「滅びの未来」へと導いた、未知への恐怖を克服しなければならない
その先こそが、最終人類史の未来だと考える

それらの脅威を乗り越えるには、皆の応援と、緩やかな連帯が必要だ
あなた方、一人ひとりに、できることがある
奪還した最終人類史の大地は、いまだ多くの問題を抱えているだろう
不安も、恐れも、伝えてほしい
その困難に屈することなく、皆で知恵と力を合わせ、解決策を探し続けよう
その歩みの先に、未来がある

未来は、最終人類史の皆で作るもの
俺たちディアボロスはその一員として、共に未来を描きたいと思う
これからも、皆で語りあい、手を携えていこう

復讐者は、怒りと復讐を糧として戦ってきたが――
いずれ、最終人類史の応援と連帯こそが、共に未来を切り拓く、新しい力になるのだと
そう願っている


 特殊案件攻略旅団ワイルド・カードの提案から始まった、『最終人類史の未来を語る大会議』は、多くの議論を経て、ディアボロスと最終人類史の一般人達の意識を統一するという最良の結果で幕を閉じようとしていた。
 エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は、会議の成り行きの全てを確認しつつ、ワイルド・カードへの提案の正しさを深く噛み締める。
 オーストラリアの『帰還』から、そう時間が経っていないうちであったのは幸いだっただろう。
 この大会議が行われたのが、半年後であったならば、決戦を忌避する反戦派の勢力や、一般人の『帰還』を政治的に判断しようという勢力が大きくなり、説得は不可能になっていたかもしれない。
 今、このタイミングで人々と語り合い、そして、説得する事が出来た事は、最終人類史の未来を明るく照らす光明となることだろう。

 会議を締めくくるべく、エトヴァは演台に立つ。
 東京ドームの全ての聴衆、そして、配信の向こうにいる、最終人類史の全ての人々に対し、彼は感謝の一礼と共に言葉を紡いだ。

「最終人類史の皆の、日頃の応援と協力に、心から感謝を。そして、親愛を伝えたい」
 その言葉から始められた、エトヴァの言葉は、最終人類史の人々の心に染み入り、そして、新たな決意を呼び起こしていく。

「ディアボロスの目標の一つは、世界すべての奪還だ。
 それはゴールではなく……最終人類史は、2025年8月からの《戴冠の戦》という脅威を超え、人類を『滅びの未来』へと導くであろう、未知なる脅威を克服しなければならない」

《戴冠の戦》という、再度の大戦の発生は、ディアボロスから最終人類史の人々へ伝えられた。
 エトヴァの言葉は、ディアボロスと、そして最終人類史が進むべき未来を示す。

「それらの脅威を乗り越えるには、皆の応援と、緩やかな連帯が必要だ。
 あなた方、一人ひとりに、できることがある。
 奪還した最終人類史の大地は、いまだ多くの問題を抱えているだろう。
 不安も、恐れも、伝えてほしい。
 その困難に屈することなく、皆で知恵と力を合わせ、解決策を探し続けよう。
 その歩みの先に、未来があると信じている」

 そして、続く言葉は、その為に、一人一人がすべき事を明確に指し示す。

「未来は、最終人類史の皆で作るもの。
 俺たちディアボロスはその一員として、共に未来を描きたいと思う。
 これからも、皆で語りあい、手を携えていこう」

 彼の言葉は、ディアボロスと最終人類史の人々の連帯を促す。
 東京ドームに集まった人々、この配信を固唾を呑んで見守る人々、配信終了後にアーカイブで確認する人々、あるいは切り抜きやニュースを見て、だいたい理解したつもりになる人々……。
 そのいずれもが、最終人類史の未来に向けて、心を一つにする事だろう。

 そして、人々の心が一つになる事こそが、怒りと復讐だけでない、ディアボロスの新たな力となるに違いない。
 エトヴァは確信と共に、大会議の閉会を宣言する。
 かくして、最終人類史初の大会議は、万雷の拍手の中で幕を下ろしたのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【液体錬成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2024年03月25日