リプレイ
旗楽・清政
いよいよ、美濃へのパラドクストレインが出発でござるな。
普段は働きとうないと言うておるそれがしなれど、さすがに美濃、信濃、甲斐と打通する案を出したのが通ったとなれば、此度ばかりは意気も天を衝こうというもの。大いに働いてみせるでござるよ!
とは言え、まずそれがしの不得手な忍び働きをせねばならぬとは。
しかも、パラドクスも残留効果も使えぬと来ておる。
だが、泣き言ばかりも言うておれぬ。
武器も具足も全て外し、夜闇に紛れるための黒き衣を纏い、浮来渡出配須のみ着け、一方向にのみ光を放ちいざとなればその方向への光も遮断出来るようにしたランタンを手に、パラドクストレインを下車。
絶対に光源が必要な場合のみ最低限ランタンを使うが、その光が見つからぬように留意。
基本的には、しかと夜闇に目を慣らした上で動くでござる。
そして、出来るだけ門に近く、高く飛ばずとも塀を越えられそうな位置を探すと致そう。
さすればそこで【飛翔】し、塀を飛び越えて砦の中に潜入。
そして、【忍び足】にて足音を殺しつつ移動し、門を探すでござる。
天正大戦国、美濃国。
国境に聳える養老山地、その北方に広がる景色を旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)は一人見下ろしていた。
「此処が美濃の地にござるか。まさに打通の第一歩でござるな」
星々が瞬く夜空の下、地上を包む全き暗闇。
その中を、遮光用リフレクターを取り付けたランタン片手に、清政は目的地目指して歩きだす。普段の具足に代わって全身を覆う黒装束は、夜闇に紛れて砦へ潜入する為のものだ。不得手な潜入工作、おまけに残留効果も使えない――厳しい条件に零れそうになる溜息を、清政は呑み込んだ。
(「泣き言ばかり言うてはおれぬ。美濃、信濃、甲斐と打通する案を出したのは、それがしゆえ……な」)
此処ばかりは意気も天を衝こうというもの。ここは一番槍として大いに働いてみせよう。
星明りの下、遠方に聳える砦の偉容を見遣りながら、清政の瞳が静かな戦意に燃え立ていた。
光の消えたランタンを手に、暗闇に慣れた目で進むこと暫し。
目的地である不破の関を守る砦の一つに、程なくして清政は辿り着いた。
頑丈な資材で作り上げたと思しき堅牢な石壁は周囲を深い堀に囲まれて、復讐者の襲撃を拒むように聳え立っている。抜けられるものなら抜けてみろ――そんな義龍の高笑いが、今も聞こえてくるようだ。警戒中の敵が辺りにいないことを確かめ、清政は足音を殺しながら堀へと近づいていく。
堀の傍には門へと繋がる道もあったが、其方には複数体の敵が見張りを行っていた。
敵の眼に着かずに侵入するには、堀からの方が確実だろう――清政はそう判断する。
(「敵が砦の造りに慢心しているというのは、誠のようでござるな。ならばその隙、遠慮なく突くといたそう」)
いちど堀を突破すれば、後続の仲間は救援機動力を利用できる。
清政は大きく息を吸い込むと、その身を静かに堀の水中へと潜らせていった。
砦は未だ静寂に包まれていた。
天魔武者が守る砦の足元、そこに広がる堀を清政は無事に泳ぎ抜くと、土台に突き刺した斬鉄剣を足場に堀を登り切った。息を潜め周囲の様子を暫し伺い、敵が侵入に気づいた様子がないことを確かめた後、清政は砦の壁に沿って進んで行く。砦内に侵入できそうな場所を探し出す為だ。
(「飛翔でも使えれば楽なのでござるが……使えぬものは致し方なし、抜けられそうな場所を探す他ござらんな」)
砦の門は今も固く閉ざされており、その周囲には相変わらず敵の姿も見て取れる。
潜り抜けられる場所があればベストだったが、どうやら付近にそのような穴はなさそうだ。
此処から先は、壁を越えて中へ忍び込み、裏側から門を開けるのが確実であろう。清政は忍び足で足音を殺しながら、周囲の壁面を慎重に見遣りながら進む。足場になりそうな凹凸、登攀に使えそうな出っ張り等――それらを探して進む彼の眼は、やがて、辛うじてよじ登れそうな場所を見出した。
清政が見つけたのは、砦の壁にある僅かな隙間だった。
壁の高さはおよそ十数メートル程か。何らかの道具を使って昇れば、辛うじて越えられそうな高さである。此処から先は、どうやら次の者に任せる頃合いのようだ。先程彼が通って来た夜闇の彼方、救援機動力で駆けつけて来る仲間の気配を、既に感じ取っていた。
(「もう一息にござる。後は頼み申す!」)
門を破るまであと少し。清政は信頼を宿した瞳で仲間を見遣り、後を託すように頷きを送った。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
下弦・魔尋
※連携・アドリブ歓迎
こういう侵入任務はまさにボク向きだねー
パラドクスが封じられるのは中々の縛りだけどそこは忍者としての技術、そしてディアボロスになって得た技術でなんとかしちゃおう!
まずは遠くから身を潜めて魔導潜望鏡で警備状況や砦の作りを観察して偵察
魔導潜望鏡には機械知識で発明しておいた暗視ガジェットのオプションパーツを装着
これでパラドクスを使わずに暗視しつつ情報収集できるね
撮影した画像は可能なら味方と共有
手薄な所や侵入しやすい所を把握したら潜入開始
淫魔忍装束『乱れ風』を着て潜入用に機動力を重視
暗視ガジェットを目元に装着して遮蔽に適宜身を潜めて
忍び足で足音を立てずに素早く移動
高い窓からの潜入や塀の乗り越え等が必要な場合は忍魔導機械蜘蛛『蜘蛛の囲』を使うね
強度自在の糸を縄のように使って登攀や移動に使用
どうしても警備が離れない所に来たら氷遁忍機『雪催』を使用
投擲したのを更に脳波で動かし
自分たちの反対側で物音を起こす
警備が確認しに行ったらその隙に忍び足でそこを通過
門に着いたら周囲に警戒して開ける
阿嶋・影章
勝ち鬨をあげるは結構。
よく響くその高笑い、首と胴が繋がっている内に堪能しておけ。
闇夜に紛れ、砦への潜入を試みる。
パラドクス、残留効果が使えないのは悩み所だが、他の者らと協力しこの関門を突破しよう。
最も高い【POW】の能力値で、主に筋力や体格が必要な協力をする。
重い扉や物をゆっくりと動かしたり、壁や塀を乗り越える際の足場代わりも、私の体格であればやれないこともあるまい。
特に砦の門ともなれば大きさはそれなりと見る。
さすがに勝手口のように、片手で楽々といった気の利いた造りではなかろう。
反面、繊細な動きが必要な部分は、他に得意な者がいるならば任せたい。
苦手という程ではないが、潜入という状況を考えれば四面楚歌の危機もあり得る。
相手に油断があるならば、大きな物音さえ立てなければ付け入る隙はあるはずだ。
基本、暗さに目を慣らした上で行動する。
敵に見つかる危険を考えれば、多少の不便に目は瞑ろう。
砦周辺の堀を突破した復讐者の前に立ちはだかった次なる障害は、高さ十数メートルの石壁であった。
石壁には僅かな凹凸こそあるが素手での登攀は到底望めそうにない。上部に敵の見張りが居ないことはまだ救いだったが、登攀に失敗して地面に落ちれば、間違いなく侵入は敵に気づかれるだろう。
「つまり、ボク向けの任務ってわけだねー」
周囲の闇に気配を溶け込ませ、下弦・魔尋(淫魔導機忍・g08461)は呟いた。
魔導忍者である彼にとって潜入や潜伏は元よりお手の物だ。『魔導潜望鏡』を装着し、壁の周辺に敵影がないことを改めて確認すると、壁の上部を『蜘蛛の囲』で狙い定める。
「パラドクスが封じられるのは中々の縛りだけど……そこは技術で何とかしちゃおう!」
魔尋の蜘蛛の囲は、彼が発明した蜘蛛型魔導機械である。
発射する糸は魔力を流し、硬さや粘着力も調整可能。パラドクスや残留効果を用いずとも、壁を登るくらいの用途であれば何の問題も無い。間を置かず糸が石壁の淵に接着されると、魔尋は強度を確かめた後、スッ、スッ、と軽い身のこなしで壁を登っていく。
程なくして壁の上部にひらりと飛び乗ると、魔尋は地上の仲間が登るための準備を始めた。
「待ってて。今、そっちにロープを下ろすから」
「……承知した。助かる」
そう言って魔尋が垂らした縄を、阿嶋・影章(鬼面の襤褸侍・g11012)の分厚い掌が握りしめた。
暗闇に目を慣らしておいたこともあり、縄の一本を視認する程度は造作もないことだ。頭上から送られてくる魔尋の合図を確認すると、影章は縄を頼りに壁の凸凹を足場にしながら上部へと登って行く。身の丈六尺を越える巨体ながら、その動きは驚くほどに機敏なものだ。
次第に上部との距離を縮めながら、影章はふと、この砦に守られた不破の関へと思いを巡らせる。
正確には、関を守っているジェネラル級天魔武者――斎藤義龍へと。
(「俺たちの襲来を予期し、随分と細工を重ねているようだが……それも、もうじき無為に帰す」)
首と胴が繋がっている今の内に、せいぜい高笑いでも何でも堪能しておくがいい。
クロノヴェーダへの殺意を宿した瞳を、影章は鬼面の奥で音もなく煌めかせる。復讐者となる以前、優しく面倒見の良い男であった彼の面影は最早そこにはない。敵を斬るための憎悪を静かに研ぎ澄ましながら、更に壁を蹴って進むと、程なくして彼は上部へと到達する。
そこでは魔導潜望鏡を装着した魔尋が、地上に居る敵の所在を先んじて把握している最中だった。
「お疲れ様。降下する周辺に敵は居ないから、このまま下りて門を開けちゃおう」
「そうだな。……時間が経つほど、潜入が露見する可能性も高まる」
影章は呟くような声で頷くと、そのまま魔尋と共に砦の内側へと下りて行った。
砦の機能に頼り切り、警戒の緩んだ敵の膝元を、二人の復讐者が静かに進んでいく。
内部に潜入を果たした以上、後戻りは出来ない。ここから先は時間との勝負だ。程なく目当ての場所を見つけると、魔尋は魔導潜望鏡ごしに目を凝らし、閉ざされた門の開閉装置を探り当てる。
「見つけた。あれだ」
そう言って指差したのは、門の脇に取り付けられた大型のレバーだった。
周囲に装置らしきものは一切見えないことから、あれを操作して門を上げるのだろう。大人の腕ほどもある頑丈なレバーは先端が下に向いており、切替には相応の力が必要そうだ。その傍に、警戒と思しき大筒入道の姿を二体ほど認めると、魔尋は氷遁忍機『雪催』を装着しながら影章を振り返る。
「警備はボクが引き付けるよ。その隙に門の方、頼んでいい?」
「任せてくれ。……力仕事なら、多少は自信がある」
影章が頷きを返すと、魔尋は雪催に魔力を送り始めた。
氷結輪を改造した機械戦輪は、魔尋の思念によって彼の手足さながらにふわりと宙を飛ぶと、そのまま二人の潜む反対側へ飛んで行き、傍にあった壁を叩き始める。
『……ん? 物音がするな』『侵入者か? ……念のためだ、見て来るか』
侵入者がとっくに入り込んでいるとは夢にも思わず、雪催の立てる物音の方へ入道たちが向かって行く。
それを確認すると同時、影章は風のような素早さでレバーに取りつくと、渾身の力を込めて其れを上へと切り替えた。
「ぬん……っ!」
ゴウン、と重々しい音が響く。
そして――硬く閉ざされた扉が、大きく開け放たれた。
『門が開いただと!?』『馬鹿な、一体だれが!』
砦が俄かに大騒ぎとなる中、魔尋と影章は得物を手に戦闘の準備を完了する。
復讐者を迎え入れる様に開かれた砦に、もはや天魔武者を利する機能は残っていない。後は内部の敵を撃破し、不破の関を守る砦の一つを陥落させるのみだ。
『いたぞ、侵入者だ!』『ディアボロスか……くそ、生かして帰すな!』
「さあ、ここからが本番だね。頑張っちゃうよ!」
「そうだな。……クロノヴェーダは、一体たりとも逃がさん」
もうパラドクスを使えない状況に我慢する必要はない。
戦闘態勢を整えて駆けつけて来る天魔武者を前に、完全視界で視界を確保する魔尋と影章。
美濃国は不破の関を守る砦のひとつを舞台に、いま復讐者の戦いが始まろうとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】がLV2になった!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
下弦・魔尋
※連携・アドリブ歓迎
イヒヒ、慌ててる慌ててる
ああいうの見れるとまさに忍者の仕事したなーって感じするね!
ま、勿論まだまだ仕事するけどね!
フフン、さっきはこっちが困ってた闇だけど今度はこっちが利用させて貰うよ!
まずは戦闘態勢って事で機忍装束『黒南風』に着替えてと
【完全視界】で夜の視界を確保してから魔影分身術を発動
影でできた分身を夜闇かつ敵の視界外れに潜ませて
ボク自身はあえてまっすぐ突進しフェイントをかける
敵がボクの攻撃に集中した隙にすかさず分身が闇から飛び出して攻撃
怯んだところを黒南風の刃や手裏剣射出機構で攻撃
魔導忍者得意の連係攻撃、夜闇だと更に映えるのさ!
反撃の霹靂撃ちは残像を残すくらいのスピードで動き被弾を減らす
急所に命中しそうなのは分身を盾にして直撃を回避しダメージ軽減(【ガードアップ】)
分身にはこういう使い方もあるんだよね!
スピードを活かして動き回ることで包囲はさせないようにするよ!
敵への攻撃や反撃、味方の援護も機会があればしとくね
門が開いた砦と今の君たち
どっちも役立たず、お役御免だ
阿嶋・影章
よし、これで味方も自由に攻め込める。
ここからが本番だ。
覚悟しろ、クロノヴェーダ。
既に【完全視界】のおかげで暗闇は大きな問題ではないな。
見越して残留効果を発動させてくれた味方に感謝をしつつ、攻勢に出る。
隙を突いたとは言え砦は相手の牙城。
その上で裏をかけるほど器用ではない為、正面突破といく。
怨みの太刀で斬り付け、仕留められずとも無傷では帰さん。
クロノヴェーダへの憎悪を滾らせ、ゆっくりと間合いを詰めながらも、攻撃と防御の際は素早く動く緩急をつけた行動で威圧する。
奇しくも夜とあれば、怨念で戦う私はさながら怨霊のように見えよう。
僅かでも相手が怯めば、他の仲間との連携も可能になる。
せめて注意を引くくらいは出来るか。
敵の反撃は、刀と武者鎧で急所を守る。
機先を制する攻撃ならば一撃必殺の類いではない。
油断は出来んが、多少の手傷では怒りと憎しみで動く私は止まらん。
怯まぬ姿を見せつけ、逆に相手の手鼻を挫いてやろう。
手向かうもよし、逃げるもよし。
どちらにせよ、必ずや追い詰め斬ってくれる。
『門が開放されただと!?』『閉門は間に合わん! ディアボロスの迎撃準備を整えろ!』
(「イヒヒ、慌ててる慌ててる」)
砦の内部が俄かに慌ただしさを増していく中、下弦・魔尋(淫魔導機忍・g08461)は暗闇の中でほくそ笑んだ。完全視界を発動した今、彼には大筒入道たちの間抜け面が良く見える。こういう時は、まさに忍者の仕事をしたと実感できる最高の瞬間であった。
「ま、勿論まだまだ仕事するけどね!」
機忍装束『黒南風』に着替えた魔尋は、戦場に展開する敵の居所を出来得る限り把握していく。
門の付近には、迎撃を行うべく集まり始める入道たちが大勢見えた。恐らくは集団で復讐者を迎撃するつもりなのだろう。とはいえ突然の襲撃を受けたことで、その足並みはお世辞にも整っているとは言えない。あちこちからバラバラと駆けつけて来る入道たちの姿は、少なからぬ個体が砦内に少数で散らばっていることの証左でもあった。
「となると、今すべきは――寡勢への闇討ち! これで決まりだね!」
「では私は正面から行こう、多少は敵の注意も引き付けられる筈だ。……ここで完全視界が使えるのは、実に有難い」
静かな声で、阿嶋・影章(鬼面の襤褸侍・g11012)が同意の頷きを返した。
魔尋同様に完全視界を発動したことで、影章は夜の闇を克服している。少なくとも、視界の悪さが原因で不利を強いられる恐れは、これで無くなったと言って良いだろう。
後は後続の仲間が有利になるよう、敵を一体でも葬るのみ。抜き放った刀を手に、殺気を込めた声が鬼面の下から漏れる。
「ここからが本番だ。覚悟しろ、クロノヴェーダ」
夜闇に包まれた砦を舞台に、いま、静かな戦いが始まろうとしていた。
『いたぞ、ディアボロスだ!』
混乱に包まれる砦の中を、疾駆する影がひとつ。
それは、刀を構えて駆ける影章であった。たちまち降り注ぐ光弾の嵐を相手に、影章は一振りの刀を頼りに応戦する。得物と武者鎧で急所を守りながら戦う彼の姿は、傍目から見ればあまりに無謀な戦いに映った。門の前に合流しようとした数体の入道たちは、大筒を構えて執拗に逆説連鎖戦を仕掛けて来る。
『愚かな奴め! たった一人で侵入して来るとは!』
入道の一体が好機とばかり、影章を狙いながら叫ぶ。
だが次の瞬間、正面脇の物陰から現れた魔尋が、入道めがけ風のような速さで突進して来た。
「残念、一人じゃないよ!」
『くっ、二人だと!?』
闇に紛れた奇襲に、入道たちはすぐさま大筒の狙いを魔尋へ切り替えようとして、
「違うよ、三人だよ?」
『なっ――』
背後からも敵の気配がすると思った次の瞬間、混乱した彼らの隙を突くように繰り出された黒南風の刃が、分身の一撃と共に入道の頭蓋を立て続けに突き刺した。断末魔を上げる暇もなく絶命する入道たち。その亡骸を見下ろして、魔尋はフフンと笑ってみせる。
「魔導忍者得意の連係攻撃、夜闇だと更に映えるのさ!」
影法師の分身体と一緒に放つ、パラドクス『魔影分身術』の連携攻撃。闇に包まれた戦場において、漆黒の影法師は闇討ちに最適だ。敵の撃破を告げる合図を魔尋が送ると、砲撃を引き付けていた影章が合流して来る。かくして二人は、新たな敵を探して砦の中を駆け始めた。
「いい感じで撃破出来てるね。この調子で、どんどん始末していこう!」
「ああ、そうだな。……油断は出来んが、多少の手傷では私は止まらん」
ますます混乱を増していく戦場の中、影章は魔尋と共に駆ける。
クロノヴェーダへの尽きること無き怒りと憎しみに、その背中を押されながら。
正面から攻撃を仕掛ける影章と、影に紛れて刃を振るう魔尋。
二人がパラドクスを行使するたび、攻撃を受けた入道たちが骸となって転がっていく。
『いたぞ、そこだ!』『くそっ、生かして帰さんぞ!』
だが、敵とて無論やられてばかりではない。仲間の仇討ちとばかり、霹靂撃ちの弾が光雨のごとく降り注ぐ。敵を挑発するように影分身がひらひらと躍る中、魔尋はガードアップを発動しながら被弾のダメージを抑え続けていた。
「ふふん、分身の使い方は一つじゃないんだよね!」
魔尋と影章の働きが奏功して、砦の敵は着実に数を減らしている。いまだ全滅にこそ至らないが、孤立した少数の敵はほぼ撃破された状況だろう。後を後続の仲間に託す前に、少しでも敵を討ち取る――そんな執念に突き動かされるように、影章が一秒も途切れることなく刀を振るい続ける。
「『生かして帰さん』、か。俺の台詞だ、それは」
入道たちは大筒を構えて包囲攻撃を試みんとするが、それが実を結ぶことは無い。
闇に紛れた魔尋の援護で行う撹乱が、包囲を巧みに妨害しているからだ。そして、
「楽に死ねるとは思うな――クロノヴェーダ」
『ぐわっ!』『ぎゃあぁっ!!』
パラドクス『怨みの太刀』。魂を灼くような憎悪と怨念を込めて振るった刀は、ダメージアップの効果と相まって、非凡な威力を帯びて入道たちを斬り裂く。絶命した入道が一体、また一体と鉄屑に変えるほどの呪いは、使い手たる影章にも苦痛を与えるものだ。
「……どうということはない。どうという、ことは……」
流水のように間合いを詰め、風の如き緩急をつけた斬撃で、身を焼く苦痛を怒りと憎悪でねじ伏せて刀を振るう影章。その姿はさながら夜の闇に浮かぶ怨霊にも似て、入道たちを葬り去って行く。一方、敵の撹乱を続けていた魔尋は、砦の門付近に新たな仲間たちの姿を見て取ると、切上げる頃合いを悟った。
「そろそろだ。後は味方に任せよう」
「……ああ。本番はこの後だ」
影章もまた、魔尋の合図を受け取ると、未練を残すことなく次の仲間たちへ後を託すことにした。
残る敵は門の奥に集まった入道のみ。周囲に散らばっていた個体は、魔尋と影章の攻撃で殆どが合流できずに討ち取られ、大群とは到底呼べない数である。すでにトループス級との戦いは復讐者の圧倒的優勢といって良い。である以上、指揮官との決戦を前に無用な消耗は避ける方が賢明だろう。
かくして影章と魔尋、二人の復讐者が勝利を宣言するように入道たちへ告げる。
「手向かうもよし、逃げるもよし。どちらにせよ、必ずや追い詰め斬ってくれる」
「門が開いた砦と今の君たち。どっちも役立たず、お役御免だ!」
復讐者たちの猛攻は業火のごとく。更なる激しさをもって、入道たちを呑み込もうとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【壁歩き】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
旗楽・清政
【翠緑の師弟】
門を開いてくれた御味方の忍び働きに、まずは感謝でござるな。
ここからはそれがしの本領を発揮出来る戦働きの時間なれば、その働きに見事報いてみせるでござるよ。
それがしが新宿島で面倒を見ておるエスメラルダも、手伝いに連れて来ておる。
一気呵成に、攻め立てると致そう。
では、まずはエスメラルダに攻撃させるでござる。此度連れてきたのは、エスメラルダに実戦経験を積ませるためでもある故に。
されど、まだエスメラルダはパラドクスを使う技量には慣れておらぬ故、万一がないようにディフェンスはしておくでござるよ。
エスメラルダの攻撃によって敵が乱れたところで、それがしが家臣団突撃を発動し、突き崩すと致す。
「かかれぇ! かかれぇ! 敵は乱れておる! 今が好機ぞ!」
当然、それがしも先頭切って突撃するでござるよ。
反撃の入道赤射に対しては、ビームシールドを展開し、これに加えて闘気や五枚胴具足の守りによって防ぎ止めると致そう。
広域破壊用の光線であれば、一人の受けるダメージは低いと見た。耐えきれるはずでござるよ。
エスメラルダ・リベロ
【翠緑の師弟】
妙にやる気な清政クンに、天正大戦国の美濃まで連れて来られたわけだけど。
まぁ、清政クンがやる気な事情はわかるし、アタシとしても実戦経験を積むのはやぶさかじゃないわ。
今はこうして保護者付きでトループス級の相手が精々だけど、いつかは清政クンに頼らずとも
アヴァタール級を相手出来るぐらいには強くなりたいもの。
で、今回もアタシから仕掛ければ良いのね?
(モードチェンジ)
「では、行くぞ。全砲門、砲撃開始! この『肥後』の火力、思い知らせてやろう!」
【絶海砲戦】のパラドクスを発動し、四つの試製大口径三連装砲による、計十二門の砲からの砲撃で大筒入道共を攻撃だ。『肥後』の火力、伊達ではないぞ。
しかし、火力自体はともかく、砲撃戦の技量自体は向こうが上か。むむむ。
清政殿がディフェンスに入ってくれるとは言え、そればかりに頼っているわけにもいかん。
私の方は私の方で、緑の大盾を遮蔽にして敵の破壊光線を防ぎ止めるぞ。緑の大盾で防ぎ止められなかったとしても、海戦装『肥後』の装甲で少しでもダメージを軽減だ。
不破の関を守る天魔武者の砦。
そこは今、蜂の巣を突いたような大混乱に陥っていた。
閉ざした扉が開放されたと思う間もなく、忍び込んだ復讐者による襲撃を受けた大筒入道たち。砦の機能に頼りきったことが災いし、彼らは既に敗北の瀬戸際まで追い詰められつつある状況だ。
そんな彼らを、開け放たれた砦の門前では、二人の復讐者が見澄ましていた。
旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)とエスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)。戦闘準備を完了して、今まさに突撃を敢行せんとする、翠緑の師弟である。
「門を開いてくれた御味方の忍び働きに、まずは感謝でござるな」
仲間たちの鮮やかな手並みに、清政が惜しみなき賛辞を送る。
砦へ潜入し、門を開き、疾風のごとき速さで敵を撹乱した活躍は、まさに獅子奮迅と言うに相応しい。清政は翡翠色の具足に装備を改め、戦意を昂らせていった。ここからは戦の時間であり、自分の本領を発揮できる場所。ならば、その働きに見事報いてみせねばなるまい。
「一気呵成に、攻め立てると致そう。参るぞ、エスメラルダ」
「はーいはい。まぁ、アタシとしても実戦経験を積むのはやぶさかじゃないわ」
清政の言葉に、エスメラルダが飄々とした態度で返す。
復讐者として駆け出しの彼女は今回の作戦において、師たる清政の同伴付きでトループス級を相手取ることになっている。いずれ力をつけた暁には、独力でアヴァタール級を相手取れるくらいには強くなりたい――そんな理想を密かに抱きながら、エスメラルダは敵の砦を見遣った。
「ほんと、混乱の渦中って感じ。天魔武者の奴ら、よほど油断してたみたいね」
完全視界を発動した彼女の目には、砦の様子が良く見える。
やはり門さえ開放すれば、残留効果を使用しても警報は発動しないようだ。それは同時に、復讐者たちが全力で暴れられることと同義でもある。エスメラルダは海戦装を展開して攻撃の準備を完了すると、後方の清政を振り返り、最後の確認をするように問いかけた。
「で、今回もアタシから仕掛ければ良いのね?」
「左様にござる。遠慮は無用ぞ」
信頼を湛えた笑みを浮かべ、清政が頷いた。
大筒入道との戦闘で、もはや復讐者の勝利が揺らぐことは無い。今回の戦いで積む経験を糧に、更に腕を磨いて欲しい――清政が向けた無言の意思を感じ取ると、エスメラルダもまた頷きを返した。ここは一つ、思い切り行くとしよう。
「では、行くぞ。全砲門、砲撃開始!」
戦闘モードに入り、エスメラルダの纏う空気が一変する。
海戦装『肥後』の砲門から轟音を立てて発射されるパラドクスの砲弾が、殲滅の響きを帯びて砦に降り注いで行った。
『敵襲、敵襲だ!』『新手だと!? くそ、ディアボロスめ……!』
エスメラルダの砲撃が開始されると、砦は更に騒然となった。
魔尋と影章の襲撃で混乱する入道たちに、もはや迎撃の余力は殆ど残っていない。そんな彼らを嘲笑うように、次々と迫る砲弾がとどめを刺すように砦を揺さぶり、生き残った入道たちを着実に葬り去っていく。試製とはいえ四つの大口径三連装砲から成る計十二門の砲が誇る火力は伊達では無かった。
「この『肥後』の火力、思い知らせてやろう!」
『絶海砲戦』の一斉発射は、いまだ止まることを知らない。
敵軍を殲滅する勢いでエスメラルダが砲撃を続ける中、清政は慢心することなく冷徹に戦況を俯瞰していた。
入道たちは、はもはや組織的な抵抗が不可能なレベルまで追い詰められつつある。時折、悪足掻きのようにエスメラルダへ反撃の破壊光線が飛んでは来るが、脅威には程遠いレベルだ。万が一、劣勢に陥りそうな際はディフェンスで助け舟に入れるよう心掛けながら、清政もまた着々と攻撃の支度を進めて行った。
「エスメラルダ、敵の状況は如何でござるか?」
「問題無い、こちらが優勢ではある。だが……」
一瞬、唇を噛んでエスメラルダが押し黙る。
無言のまま清政に先を促され、彼女はしぶしぶといった様子で口を開いた。
「火力はともかく、砲撃戦の技量は向こうが上だ。むむむ……やはりまだ、一人前には遠いか」
「誰しも最初は未熟なもの。焦りは禁物にござる」
淡々とした口調で、清政は言った。
潜入した仲間が発動したガードアップを利用し、直撃を避けるべく緑の大盾を構えて戦うエスメラルダ。攻撃と同時に防御を意識し、彼我の力量差を把握しながら着実に敵を撃破して行く彼女は、すでに立派な戦力といって差し支えない。いずれ、彼女は立派な復讐者になる――そんな確信めいた思いを胸に、清政もまたパラドクスを発動した。
(「うかうかしては居られぬでござるな、これは」)
気づけば数える程まで減った入道たちを清政が見遣る。
その背後に展開するのはパラドクスで召喚した家臣団の姿だ。エスメラルダの砲撃で乱れた敵を一網打尽に討ち取るべく、『家臣団突撃』の号令が夜空の下に轟いた。
「かかれぇ! かかれぇ! 敵は乱れておる! 今が好機ぞ!」
『くっ……敵の突撃だ、食い止めろ!』『む、無理だ! 砲撃が……ぐわぁっ!』
入道とエスメラルダが砲撃の応酬を行う只中へ、家臣団を従えた清政が先頭切って突撃して行く。
命中アップの光に導かれ敵陣へ切り込むと、僅かに残った入道たちは家臣団の猛攻を浴びて一体残らず爆発四散。まともな反撃も出来ぬまま、戦場の露と消えていった。
「さて……残るは、彼奴等の指揮官のみにござるな」
「うむ。ここまで来た以上、新宿島に吉報を持って帰りたいものだ」
清政の言葉に頷いて、トループス級の全滅を確認したエスメラルダが合流してきた。砲撃が止んだ戦場は不気味な静けさに満ちている。だが、それが未だ復讐者たちの勝利を意味していないことは、この場に居る誰もが理解していた。
「……お出ましのようだな」
果たしてエスメラルダが見遣る先、カシャン、カシャンと具足の音を響かせて、闇の奥より一体の敵が現れる。
アヴァタール級天魔武者『高橋鎮種』。砦を預かる指揮官であった彼の、怒りに満ちた視線を真正面から睨み返しながら、エスメラルダと清政は各々の得物を構えて戦闘態勢を取る。
不破の関を落とす作戦の序盤戦、ここで敗北することは許されない。
クロノヴェーダへの怒りを胸に燃え上がらせて、今、復讐者たちは戦いの火蓋を切ろうとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
下弦・魔尋
※連携・アドリブ歓迎
来たね、指揮官アヴァタール
しかし倒すのは当然だけど美濃の情報も聞き出さなくちゃなあ
さてどうしよっかな
まずはやはり姫様、かな?
「イヒヒ、出てくるのが遅いねえ指揮官
それとも義龍の命令だから嫌でサボってたのかな?
だよねえ、アレだもんねえ義龍」
と軽口で馬鹿にする演技で少しずつ精神攻撃してく
全身の淫呪紋も光らせて精神を揺るがしにかかり口を滑らせやすくする
「いや君も大変だね、て心から同情してるから言ってるの
あ、でもそうか
キミはアヴァタールでアレは一応とりあえず仮にもジェネラルだもんね
仕方ないよね、キミも嫌々だったんだろうね可哀想本当
あーほら来て来て
アレの為だけに尽くすのだーてどうぞ来て来て」
突いてるのは『完全に嫌でも義龍に従っている』の点。義龍も完全に嫌いではないみたいだし馬鹿にして揺さぶりをかけて、そして『義龍に今従っている他の理由』を引き出す。それは姫様ってのに繋がる筈だからね。
予期しない情報方向に行っても対応できるよう挙動の観察と情報収集は欠かさないでおく
復讐者たちは対峙する。
門を開け放たれた砦の中、すべての兵を失った指揮官と。
『何たることか。まさか、迎撃の暇すら与えられぬとは……』
深緑の甲冑に身を包んだ天魔武者が、無念の呻き声を漏らす。
一振りの剣を手に、復讐者たちを睨み据える武者の名は『高橋鎮種』――不破の関を防衛すべく、砦の一つを預かっていたアヴァタール級の個体であった。
護衛を悉く討ち取られ、戦場に孤立した今、鎮種の命運は風前の灯火だ。
そんな彼を前にして、下弦・魔尋(淫魔導機忍・g08461)は胸を張って挑発の言葉を投げ始めた。
「イヒヒ、出てくるのが遅いねえ指揮官! それとも義龍の命令に従うのは嫌だからサボってたのかな?」
無論、この挑発には理由がある。
復讐者にとって美濃国の状況は未だ分からないことが多い。撃破するにしても、ある程度は敵側の情報を集めてからの方が得策だろう。魔尋の行動も、全ては鎮種に揺さぶりをかけて『ある情報』を引き出すことが目的だった。
――やっぱり、気になるのは『姫様』に関することだよね。
復讐者の知る情報を総合する限り、鎮種が義龍に従っているのは『姫様』と呼ぶ者から頼まれたのが理由のようだ。
加えて鎮種は、『姫様』と義龍を秤にかけ、今後の身の振り方を案じるような素振りも見せていたという。
――姫様からの命令以外で、鎮種が義龍に従っている理由があるのか、ないのか。それも出来れば確かめたいね。
かつて天海との和平交渉の折に天海が語ったところによれば、有力な天魔武者たちも一概に仲が良いわけでは無く、中には蛇蝎の如く憎み合う者もいるという。それを踏まえて考えるなら、『姫様』と義龍の間柄は悪くは無いようだ――そう魔尋は考える。もし『姫様』が義龍を嫌っているなら、配下である鎮種の態度や言動に、それが現れない筈は無いからだ。
(「とはいえ、それだけじゃ推測の域を出ない。よし、矛先を変えてみるか」)
鎮種本人への挑発が効果薄と感じた魔尋は、その対象を義龍へと向ける。
「それにしても義龍……いや、呼び名は『アレ』で充分かな? アレは一応、とりあえず、仮にもジェネラル級だよね?」
『……貴様。愚弄するか、義龍殿を』
本人へ挑発を行った時とは打って変わり、明白な殺意を帯びた声が魔尋に突き刺さる。
同時に魔尋は確信する。『姫様』と義龍は、少なくとも敵対するような間柄ではない。手応えを感じ取った魔尋は、さらに畳みかける様に挑発の言葉を投げる。
「えー正直になっちゃいなよー。キミも嫌々だったんでしょ? アヴァタールの君は逆らえないし仕方ないよね、可哀想!
あんなのに付き合わされて大変だね、心から同情するよ!」
『…… ……もはや我が命の先も見えた。だが名誉の為にこれだけは言っておこう、よく聞け』
いずれ貴様らも知るであろうことだ――そう付け加え、鎮種は鋭い視線を魔尋に向けながら告げた。
『嫌々など有り得ぬ! 義龍殿は『姫様』の兄にあたるお方、この状況は全て私の力が至らなかったが故だ!』
「……成程、そういうことか。ようやく合点がいったよ」
挑発に用いた口調を一変させ、魔尋は得られた情報を反芻する。
鎮種が仕えるジェネラル級の『姫様』が、斎藤義龍の妹であること。そして、両者の仲は――少なくとも、立場が上である『姫様』は、義龍のことを大事に思っているであろうこと。いずれも美濃の状況を知る上では手掛かりとなる情報だ。
(「けど、まだ足りないな。せめて『姫様』の名前が分かれば……」)
とはいえ、敵もそう軽々と魔尋に情報を漏らすほど間抜けではないだろう。
ここから先は仲間に託す頃合いだ。そう判断した魔尋は続く復讐者を振り返り、後を任せるように頷きを送るのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【過去視の道案内】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
阿嶋・影章
ようやく姿を現わしたか、『高橋鎮種』。
本心としては問答無用で斬り掛かるところだが、生憎とこれは私一人の戦いではない。
少しでも口を割らせるよう、問答を試みるとする。
とは言え、私は弁も立たねば、演技の心得もない。
ならば、等身大の自身をぶつけ、口を開かせる他あるまい。
問いは一つ。
「何の為に、あるいは誰への忠義で此処にいるのか」。
問答の行方がどうであれ、互い相容れぬことは百も承知。
ならば、仮にここで私達に敗れれば、斎藤義龍とやらに忠を尽くしたと判断される。
誰かに仕えているならば、その忠義を示す所は明確でなければなるまい。
これは、高橋鎮種――お前の名誉に関わる話しだ。
「俺は俺の怒りと憎しみに誓って、クロノヴェーダと戦っている。それを偽ることは、死よりも耐えられん」
駆け引きでもなく揺さぶりでもなく、真正面から本心をぶつける。
後は、相手の出方次第だ。
当然、他に対話をする味方がいるならば、連携を取る。
先に相手の心中を掻き乱す事が出来ていれば、良い結果に繋がるはずだ。
(「ようやく姿を現わしたか、『高橋鎮種』」)
敵の指揮官を前にして、阿嶋・影章(鬼面の襤褸侍・g11012)は憎悪の心が自身を焦がすのを鮮明に感じ取っていた。
出来るなら今すぐ戦闘を仕掛けたいのが本心だったが、ここで勝手な行動は取りたくない。これは自分一人の戦いではないことも、影章は十分承知だからだ。
今は敵の情報を得ることに集中すべし――そう自らに言い聞かせ、彼は鎮種に問いを投げる。
「高橋鎮種。お前は何の為に、あるいは誰への忠義で此処にいるのか」
『……』
鎮種からの答えはない。
敵であるお前に答える必要があるのかと、無言のうちに告げて来る彼の態度は、ある意味当然のものだ。この程度で情報を出す相手でないことは、先程の魔尋とのやり取りを見ていた影章とて、無論百も承知である。故に彼は、諦めることなく更に言葉を紡ぐことにした。
元より気の利いた言葉などは喋れない。己の内にあるものを、正面からぶつけるのみ。
刃だろうと言葉だろうと変わらない、それが影章という復讐者の戦い方なのであった。
「鎮種。先刻承知だろうが、俺たちはお前を討つ。今日この場でだ」
影章の言葉に、天魔武者は未だ言葉を返さない。
敵である鎮種もまた、それは百も承知なのだろう。構わず、影章は更に言葉を続けた。
「そして、ここで俺たちに敗れれば、お前は義龍とやらに忠を尽くしたと判断される」
鎮種の忠を尽くす相手が『姫様』――義龍の妹であることは、影章もすでに承知している。だが、これはそういう問題ではないのだ。名誉を重んじる天魔武者ならば、本当に『姫様』に仕えているならば、その忠義を明確に示せる筈だと、影章は暗に告げている。
義龍の臣下として死ぬか、『姫様』の臣下として死ぬか。
影章が言うのはそういう話であり、鎮種という天魔武者の名誉に関わる問題なのだ。
(「とはいえ、上手く行くかは賭けになる。天魔武者といえど、全てが名誉に殉ずる者ばかりではないからな」)
いまだ無言を貫く鎮種へ、影章はなおも重々しい声で告げた。
「俺は俺の怒りと憎しみに誓って、クロノヴェーダと戦っている。……それを偽ることは、死よりも耐えられん」
敵の腹を探るなら、己の腹も晒すべし。
そんな覚悟を胸に影章が言葉を放ち、僅かに間を置いた後。
鎮種は夜空を仰ぎ、ぽつりと零した。もう二度と会うことの叶わぬであろう主君を、遠く仰ぐように。
『私が戦う理由。それは主たる『濃姫』様と、姫様が預かりし美濃国のため。だが、断片の王が代替わりしたなら……』
「王が代替わりしたなら? ……どういう意味だ」
影章の投げる問いに、鎮種からの答えはない。
もはや語ることは無いとばかり刃を構えて殺気を研ぎ澄まし始める姿に、影章もまた問答の終わりを悟る。
(「美濃国を預かるのは義龍の妹『濃姫』……成程、覚えた」)
魔尋と共に得られた情報は、今後の美濃攻略においても有効な情報と鳴るだろう。とはいえ――影章の心には小さな疑念がひとつ残っていた。それは、
(「濃姫から義龍に主を変えるべきか迷っていた理由。そこまでは、分からず仕舞いだったな」)
鎮種の濃姫に対する忠誠心が高いことは疑いの余地がない。少なくとも、軽々しく主を鞍替えする理由があるようにも思えない。一連の問答を通じて影章が抱いた、それが敵への率直な印象だった。単なる欲得絡みか、或いは全く別の何かなのか。その理由は未だ不明のままだ。
(「『断片の王が代替わりしたなら』か……いや、考えても仕方がない。今は戦いに集中せねば」)
ここからは、いずれかの死をもって戦いを締め括る時だ。鬼面の奥、憎悪を宿した双眸で鎮種を睨みながら、影章は仲間と共に戦いの火蓋を叩き斬るのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
旗楽・清政
【翠緑の師弟】
なるほど、面白き話を聞けた。
それがし、七曜の戦の経緯を知らぬ故に斉藤義龍が美濃の国主より降格した経緯も知らねど、新たな国主が現断片の王織田信長の妹濃姫と言うことなれば、義龍と交代するだけの格は十分以上にあったと言えよう。
そしてそれがし、高橋殿の高名は旗楽領が在りし時より聞き及んでおるし、新宿島にてその死に様も聞いておる。
故に、その名を騙る天魔武者であれど「断片の王が代替わりしたなら……」の後に主を変える高橋殿など、想像したくもないところ。
なれば、貴様は此処で討つ。
なお、エスメラルダはアヴァタール級との戦闘は初めて故、引き続きディフェンスでござる。
「断片の王の交代後など、貴様が考える必要はない! 此処で、討ち果たされる運命なれば!」
此度はまず、それがしが翠緑の疾風で突撃。
その後、エスメラルダに追撃させると致そう。
反撃の仁王三郎清綱に対しては、全身に漲らせし闘気と五枚胴具足による守りでダメージを軽減し、耐え抜くと致そう。
うむ、やはり高橋殿の名を騙るだけのことはある!
エスメラルダ・リベロ
【翠緑の師弟】
清政殿は、このアヴァタール級に何か思うところがあるようだ。
その詳細は私にはわからないが、クロノヴェーダである以上ここで討ち果たすと言うなら、やるべき事は変わらんな。
何より、清政殿の事情に構っている場合ではない。
トループス級とは何度か戦ってきたが、アヴァタール級とは初めて戦うのだ。
いくらこれまでと変わらず清政殿がディフェンスに入ってくれるとは言え、やはり緊張してしまうな。
だが、将来の理想と現在の差を識るいい機会だ。清政殿を頼りにしつつ、全力で当たっていくぞ。
ふむ、今回は清政殿から仕掛けるのか。では、私はそれに続こう。
「これで、終わらせる! ヴェルデ・フィナーレ!」
対アヴァタール級戦用に新しく会得したパラドクスの御披露目でもある。派手に行くぞ。
十二の砲門からの、翠緑のビームによる集中砲火、耐えられるものか!
……とは言え、耐えられる事は想定しておかなくてはな。
反撃の仁王三郎清綱を発動されたら、すかさず緑の大盾を私の前へと動かして、その一撃を少しでも妨害するぞ。
問答が終わり、砦内の戦場を殺気が満たしていく。
抜剣して戦闘態勢を取る天魔武者『高橋鎮種』を前に、エスメラルダ・リベロ(蒼海に輝く翠緑・g10981)は肥後を展開し後列へと移動。鎮種と対峙する旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)の背中を見遣った。
砲撃は何時でも開始できる状況だが、仕掛けるにはまだ早い。師匠である清政の背が、無言でそれを止めていたのである。
(「ふむ……清政殿は、このアヴァタール級に何か思うところがあるようだ」)
エスメラルダは最終人類史に流れ着いて日が浅く、過去の歴史についても色々と疎い。
そんな彼女も、清政が天正大戦国の出身であることは無論知っている。恐らくは自分の与り知らぬ事情があるのだろうと、両者のやり取りを見守ることにした。
そうして――間を置かず、口を開いたのは清政だった。
「……なるほど、面白き話を聞けた」
片鎌槍を手に鎮種と対峙しながら、清政は訥々とした口調で語り始める。
義龍の妹である濃姫が、最終人類史の史実では織田信長の正室であったこと。天正大戦国における両者の関係は不明だが、もしも天魔武者の『濃姫』が断片の王と深い関係にあるとするなら、美濃国の国主を義龍と交代するだけの格を持っていても不思議ではないことを。
「それだけに非ず。貴様が名を奪いし高橋殿の名も同様ぞ」
一呼吸おいて、鎮種を睨む清政の視線が鋭さを増した。
「本来の歴史における死に様も新宿島にて知った。だからこそ、それがしは貴様を許せぬ」
高橋鎮種の名を騙る天魔武者であれど、主を変える姿など想像したくもない。
故に。目の前のクロノヴェーダに復讐者たる清政が取り得る道は、ただ一つしか存在しなかった。
「貴様は此処で討つ。覚悟せよ!」
『返り討ちにしてくれる。来い、ディアボロス!』
仁王三郎清綱を構え、鎮種が吼える。
それは天魔武者と復讐者の、討つか討たれるかの死闘が始まったことを告げるものであった。
「いよいよ始まったか……! 清政殿、援護させて貰う!」
「うむ。頼りにしておるぞ、エスメラルダ!」
戦闘開始と同時、攻撃を仕掛けていく清政に続いて肥後の砲門が一斉に開き、砦を砲撃で満たしていった。
清政の事情は気になるが、それに構えるだけの余裕は彼女には無い。この作戦はエスメラルダにとって、アヴァタール級を相手取る初めての戦いなのだ。
絶え間ない砲火が降り注ぐ中、清政が先陣を切って猛攻を浴びせていく。エメラルド色の闘気で全身を包み『翠緑の疾風』を発動。片鎌槍の刺突が風のように自在の軌跡を描いて、鎮種へ襲い掛かる。
「それがしの槍、馳走しよう。遠慮は要らぬ!」
『成程、口だけの威勢ではないようだな……だが!』
清政の槍が一閃するたび、鎮種の機体には傷が刻まれていった。
負けじと振るう仁王三郎清綱を、ガードアップで硬化した体で防ぐ清政。両者の息もつかせぬ攻防から片時も目を離さず、エスメラルダも砲撃による援護を続行する。海戦装の操作に緊張で強張る手を無言で叱咤し、飛んで来る反撃で直撃を浴びぬよう緑の大盾を構えながら。
初陣で無様な戦いは許されない。自然と生じる焦りを懸命に宥め、そして、
「……くそ。逸るな、逸るな――っ!?」
『――捉えたぞ』
そんな隙を、当然のように鎮種は見逃さなかった。
先程まで見えた姿が消えていたと思った次の刹那、鎮種はエスメラルダの眼前に移動を終えていた。仁王三郎清綱を大上段に振りかぶり、その刃で狙うはエスメラルダの頭蓋である。
『動くな。今、楽にしてやる』
「――!!」
直撃だ。
そう思い動こうとしても、トループス級とは比較にならない重圧が、エスメラルダに瞬時の対応を許さない。
果たして次の刹那、仁王三郎清綱が振り下ろされ――突如、眼前で止まる。頭蓋に直撃するはずの刃が代わって切り裂いたのは、ディフェンスを行った清政の肉体であった。
「……そうはさせぬ。いまだ未熟なれど、それがしの大事な弟子ゆえ」
「清政殿……済まない、助かった……!」
「礼は後にせよ、エスメラルダ! 敵は待ってはくれぬ!」
闘気で全身を包み、片鎌槍を手に反撃の刺突を繰り出す清政。
即座に矛先を清政へ切り替えた鎮種を相手に、両者の槍と剣がたちまち激しい火花を散らし始めた。
鎮種の抵抗は想像以上に熾烈だった。
清政の片鎌槍とエスメラルダの砲火、いずれも命中させた次の瞬間には容赦なく反撃が飛んで来る。着実にダメージは与えているが、敵の執念深い粘り腰は、未だに致命傷を与えることを復讐者たちに許さない。紛れもない難敵――それが、鎮種に対する清政の評価であった。
「うむ、やはり高橋殿の名を騙るだけのことはある……!」
刃を受けるたび、闘気を漲らせる清政の全身には、焼き鏝を当てられたような激しい痛みが走った。ガードアップの助けもあって守りはある程度固められているが、1秒たりとも気は抜けない。なおも嵐のごとき勢いでパラドクスの応酬を繰り返しながら、鎮種は清政へ静かに言葉を投げる。
『……まだ余力を残しているようだな。貴様、何か切札があるのか』
「ふむ。半分正解であるな」
傷だらけの顔で飄々と笑みを作り、清政は言った。
「余力を残しているのは事実。されど、切札はそれがしに非ず」
『なに……?』
「それがしは待っておった。今この時、彼女が動く瞬間を!」
そうして――ふいに鎮種が視線を向けた先では、今まさにエスメラルダが攻撃の準備を完了したところだった。
肥後が誇る十二の砲門が狙う先を、命中アップの導く光に合わせ。
ありったけ発動したダメージアップと共に、砲塔に充填を完了し。
今、彼女は鎮種めがけて発射する。対アヴァタール級戦用に新しく会得した必殺の一撃、その名も――。
「全砲塔、エネルギー充填完了! 放て、ヴェルデ・フィナーレ!」
其れこそが、エスメラルダが会得した新パラドクス。
鮮やかな十二連ビームが夜闇を翠緑の輝きで照らしながら、恐るべき威力と精密な狙いを秘めて降り注ぐ。対アヴァタール級戦用の図抜けた火力は鎮種の装甲を容易く穿ち、その身に派手な傷を刻み込んで行った。
「十二の砲門からの、翠緑のビームによる集中砲火、耐えられるものか!」
『ぐ……ぐううぅ!!』
砲撃の只中、鎮種の口から苦悶の呻きが漏れる。
それは正に、難敵のアヴァタール級をエスメラルダが一歩追い詰めた証であり、彼女が抱く将来の理想へ繋がる第一歩。
(「うむ。見事にござる、エスメラルダ」)
華々しい翠緑の輝きが煌めく中、弟子の成長を喜ぶように。
佳境へと向かい行く戦場で、清政は満ち足りた笑みを静かに浮かべるのであった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
下弦・魔尋
※連携・アドリブ歓迎
(なるほど、美濃国領主は濃姫か。となると斎藤道三も控えてるかもしれないかな…ま、ここではここまでか。まだまだ攻める必要がある砦は多いし、残りの情報は次の機会にして…)
ふん、じゃあいいよ
本来の歴史から奪った名誉をいつまでも誇れば良いさ
引き続き【完全視界】を使って戦闘
残像を残すくらいのスピードで接近
近距離で黒南風備え付けの刃で斬りかかる
ってフェイントをかけて直前でジャンプ
防御か迎撃した高橋の背後側の空中に飛び上がったら
徹甲手裏剣を発動
「魔導忍者もう1つのとっておき!天魔武者の装甲も砕く特製手裏剣、受けてみな!」
高橋に徹甲手裏剣を黒南風の連射機構から連射
鎧に風穴開けてあげるよ!
反撃の乱世の華はもう精神で耐えるしかないよね
気迫と共に攻撃を放ってきても意地でも体は動かして急所だけは避けて刀で受け止める
「生憎ボクは復讐者の前に忍者だ。いくら心が震えても刃は決して下ろさない。怯んでなんていられるか!」
機械があれば再攻撃
パラドクスの効果を精神でねじ伏せて攻撃の勢いは絶対緩ませないよ!
阿嶋・影章
聞くべきは聞いた。
お互い、これ以上の言葉は不要だな。
ならば……後は己の信念を貫くのみ。
【完全視界】で視野を確保しつつ、居合いの構えで挑む。
反撃の仁王三郎清綱とは、奇しくも同じ流れを感じる。
鞘に収めていようと抜き身であろうと、紫電一閃で両断する必殺の類いか。
間合いはお互いの射程圏内まで詰め、後はタイミングの勝負だ。
既に他の仲間との交戦が始まっていれば、自然とその隙を狙う形となろう。
そうではなく、まだ互いに睨み合う場合は私が口火を切る。
どちらであれ、目的は確実に手傷を負わせること。
胴体、四肢どこでも構わぬ。
ひとたび刃を抜いた以上は無傷では終わらせない執念で肉薄しよう。
相手の反撃に対しては、紙一重の戦いになるだろうな。
こちらの居合いが先に達すれば、その威力でもってねじ伏せる。
同時であれば、武者鎧で受けて歯を食いしばりながら踏み止まる。
相手の技量が上をゆくならば、覚悟を決めて相打ちに持っていく。
居合いで勝負をかける以上、下手な防御は隙になる。
命の張り時だ。
この瞬間に全身全霊を傾ける――!
天正大戦国、美濃国。『不破の関』攻略を巡るひとつの戦いが、いよいよ佳境へ至ろうとしていた。
闇夜に乗じた砦への潜入、門の開放と兵の撃破、そして指揮官からの情報取得――復讐者たちの果断かつ迅速な行動は見事に奏功し、天魔武者『高橋鎮種』を敗北の際まで追い詰めつつあった。
「聞くべきは聞いた。お互い、これ以上の言葉は不要だな」
そんな鎮種へ、阿嶋・影章(鬼面の襤褸侍・g11012)が決意を秘めた声で告げる。
鬼面で顔を隠した彼の双眸は、今再び天魔武者への怨念に燃えていた。此処から先は、己の信念を貫くのみ。憎き敵を討ち果たすべく、納刀した鞘に手を添えた居合の構えで臨む。
対する鎮種もまた、仁王三郎清綱を構えて応戦の態勢を取った。その体に刻まれた無数の傷は、彼の窮地を雄弁に物語っている。だが、その姿に影章が油断を覚えることは無い。向けられる殺気の鋭さから、いまだ鎮種が勝利を諦めていないことは明白であった。
(「鞘に収めていようと抜き身であろうと、紫電一閃で両断する必殺の類いか。……私の其れと、同じ流れを感じる」)
偶然か否か、似通る技で相手を討たんと無言で対峙する影章と鎮種。
一方、下弦・魔尋(淫魔導機忍・g08461)は無言を保ったまま、先の会話で得た情報を反芻していた。
(「美濃国の領主は濃姫か。となると後ろには斎藤道三も控えてるかも……」)
最終人類史における史実通り、濃姫は義龍の妹だという。
ならば父親である道三が、同様にジェネラル級の個体として存在している可能性はある。あくまで推測であることを承知の上で、魔尋は想像を巡らせた。
(「とはいえ、現状ではまだ情報が足りないね。もう少し手掛かりが欲しいけど……ま、今回はここまでか」)
気になる情報の全てを得られたわけではないが、不破の関を守る砦は未だ多い。そちらは次の機会に回し、今は戦いに集中しよう――そう気を取り直し、魔尋は装束の刃を煌めかせる。
「ふん、じゃあいいよ。本来の歴史から奪った名誉をいつまでも誇れば良いさ」
『……やはり、どうあっても美濃を盗る心積もりか、ディアボロスよ』
対する鎮種もまた覚悟を決めたように、全身に気迫を漲らせながら告げた。己が殉ずるもののため、指一本でも動く限り、最後の一秒まで戦い続ける――そんな決意を秘めて。
『美濃国を侵す者、濃姫様を害しうる者……生かす訳にはいかん!』
鎮種と復讐者、対峙する両者の視線がかち合う中、最後の決戦が幕を開ける。影章と魔尋は静かに頷きを交わし合い、鎮種を討つべく駆け出していく。
不破の関を突破する作戦はいまだ序盤。ここで止まっている時間など、自分たちには無いのだから。
序盤とは打って変わったように、戦闘は静寂の中で開始された。
影章と魔尋、二人の復讐者がパラドクスを煌めかせ、鎮種の首級を挙げんと刃を振るう。魔尋は攻勢を強めるように速度を上げると、一気に鎮種へと肉薄していった。
「グズグズしてると、穴だらけにしちゃうよ!」
残像を生むような速度で駆け回り、動きと言葉で鎮種を翻弄にかかる。
戦闘前に印象付けておいた装束の刃でフェイントを交え、跳躍と同時に本命の手裏剣を叩き込む魔尋。装甲を貫く鈍い音が断続的に響き、鎮種へじわりと傷を刻む。魔導忍者である魔尋にとって、戦いとはあくまで相手を葬る為の手段。その為なら闇討ちもフェイントも、あらゆる要素を利用するのだ。
そして――葬るという一点に注力しているのは、影章もまた同じ。
「命の張り時だ。この瞬間に全身全霊を傾ける――!」
『む……!』
魔尋の攻撃と息を合わせ、抜刀した影章が肉薄する。
影章の目的は、憎きクロノヴェーダに確実な手傷を負わせること。敵の意識が自分以外に向いているなら、利用しない手はない。その絶好の瞬間を、果たして彼は見逃さなかった。
「出来るならば八つ裂きにするところだ。――故に、一太刀で逝けるならば慈悲と取れ」
言い終えた時には、渾身の一閃が鎮種を捉えていた。
刀身を鞘に収めたまま、間合いへ踏み込んで放つ『居合い斬り』の一撃。視認すら困難な速度で放たれた刀は、使い手たる影章の憎悪を帯びて、ダメージアップの火力増加と共に鎮種の胴を横一文字に斬り裂く。そして、そのままねじ伏せようと刀に力を込めようとした次の瞬間、
『……まだ、まだぁぁっ!!』
「……っ!」
反撃の仁王三郎清綱が、即座に影章を襲う。
思考を上回る速度で反射的にガードアップを発動し、武者鎧で刃を受けながら踏み止まる影章。歯を食いしばり渾身の一撃を辛うじて耐え凌ぎ、そうして全身を叱咤して見遣った先、鎮種の周囲を照らす鈍い灯りが見えた。その正体は、居合い斬りを浴びた胴から飛び散る激しい火花である。今までの傷とは明らかに一線を画す、紛れもない深手だった。
「どうやら、全力で仕掛けた甲斐は在ったか……」
尽きることの無い怨念を瞳に燃やし、影章が呟く。
戦場を照らす朧な火花――それは復讐者たちにとって、今まさに尽きんとする鎮種の命運にも思えるものであった。
『行くぞ、ディアボロス……! 死にたい者からかかって来いッ!』
戦いが更なる激しさを増す中、鎮種は持てる力の全てをパラドクスに注ぎ込み、嵐のごとき猛攻を繰り出し始めた。もはや残された時間が幾ばくも無いことは明らかだ。仁王三郎清綱を振るい、気勢を挫く気迫を漲らせ、鎮種は復讐者たちへ攻撃を浴びせ続ける。
「只では死なん気か。……だが、そうはさせん」
負けじと刃を振るいながら、影章はぼそりと言う。
この場で死ぬのは天魔武者のみ。どれほど傷を受けようと、自分たちは倒れはしないと無言のうちに鎮種へ告げる。
無論、それは魔尋にとっても同じだった。気迫と共に放たれる攻撃に晒され続け、体は僅かに動かしただけで激痛が走る。だが、それでも倒れる訳にはいかないのだ。
「生憎ボクは復讐者の前に忍者だ。いくら心が震えても刃は決して下ろさない。怯んでなんていられるか!」
刀を手に、誇りは胸に。
幾度目かも分からぬパラドクスの応酬を繰り返し、そして――ついにその時は訪れた。
傷を重ね、影章との応酬で生じた僅かな隙。その一瞬を捉えると同時、魔尋の身体が宙へと跳ぶ。見下ろした先、敵の背後めがけて放つのは『徹甲手裏剣』のパラドクスだ。黒南風の連射機構から連射された対装甲加工手裏剣が、命中アップの光に導かれ、鎮種めがけて降り注ぐ――!
「魔導忍者もう1つのとっておき! 天魔武者の装甲も砕く特製手裏剣、受けてみな!」
『……無、念……!』
手裏剣を浴びた次の刹那、全身から火花を走らせ爆発四散する鎮種。
戦場に燃え上がる炎は死闘の終わりを告げるかの如く、陥落した砦を明々と照らすのであった。
かくして敵の全滅を確認すると、復讐者たちは帰途に就いた。
「まずは一つ、だね。お疲れ様!」
仲間に労いの言葉を送り、魔尋は背後の彼方を見遣る。そこに在るのは、不破の関への侵入者を阻むべく、未だあちこちに設けられた砦であった。かたく扉を閉ざしたそれらを眺め、影章はぼそりと呟く。その双眸に、いまだ尽きることの無い憎悪の炎を燃やしながら。
「……いずれ、この地も取り戻す」
不破の関を守る義龍も、美濃国を治める濃姫も、けして逃がしはしない。
奪われた歴史と土地を再び人類の手に奪還する決意を秘めて、影章は仲間と共に最終人類史へ帰還していった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
【一刀両断】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV2になった!