スイス方面に向かう大陸軍

 ブローニュ=シュル=メール練兵所の生き残りを含め、断頭革命グランダルメの自動人形達が、スイス方面に向けて移動を開始しているようです。
 移動の目的地は、断片の王・人形皇帝ナポレオンがいる『ベルン』を含む、スイス方面と想定されます。
 これまで、大軍の移動を行っていなかったのは、『ベルン』の拠点をディアボロスの目から隠す為だったと思われますが、その必要が無くなった為、大軍を呼び寄せようとしているのでしょう。

 この移動途中の大陸軍に襲撃を仕掛け、来るべき断頭革命グランダルメ奪還戦における、敵戦力を減らしていきましょう。
 今回移動している部隊は、精鋭とは言えない『数合わせ』のような集団ですが、『戦いは数』という名言もあるので、撃破しておく事に及くはありません。

※補足
 この事件の成功数に応じ『断頭革命グランダルメ奪還戦』における大陸軍の敵残存率が減少します。
 該当する戦場の敵残存率が、合計で「『この事件の成功本数×10%』÷『大陸軍の戦場数』」だけ減少します。
(例)8シナリオ成功し、大陸軍の戦場が4つであれば「8✕10÷4」で各戦場の敵残存率が20%減少します。

堕落へ誘うアル・フィーネ(作者 志羽
8


#断頭革命グランダルメ  #スイス方面に向かう大陸軍  #スイス 


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 藤臣・明鶴(白雷・g03329)はひらりと手を振って、またひとつ向かってもらわねばならぬところがあるのだと告げる。
「皆の活躍で、断頭革命グランダルメの断片の王、人形皇帝ナポレオンの拠点を特定する事が出来た。ナポレオンはスイスのベルンで、決戦の準備を行っている、ってのはもう知ってるか」
 フランス全土の大陸軍は、ナポレオンの居場所をディアボロスの目から隠す為に、敢えて、ベルンに集結せずに各地に留まっていたようだ。
 しかし、この情報をディアボロスが掴んだ事でその必要が無くなったということなのだろう。
「そんなわけで、フランス各地の大陸軍がスイスに向かって進軍を開始してる。大陸軍の中核となる精鋭部隊はもうスイスに集結済みなんだよな」
 だから動き出した大陸軍は精鋭とは言えない部隊のようだ。
 しかし精鋭では無いと言っても戦争では数の力は侮れない。来るべき戦争において、敵の力を削るためにも、この合流しようとする大陸軍を可能な限り叩いて欲しいとのことだ。

「スイスに向かう大陸軍は、行軍速度を優先して周囲への警戒などはほとんど行っていないようなんだよな」
 常ならパラドクストレインで先回りする位置に向かい、進軍して来る大陸軍を迎え撃って撃破するのを進めるところ。
 しかし――此度戦うことになる一団は動きが鈍い。というのも、移動式劇場を共に運んでいるようなのだ。
「なんか進む先で近くの町から人々をさらってその劇場に招き音楽を奏でているようなんだよな」
 だから今回は、かわりに攫われて敵の懐に入ればいいと思うと明鶴は告げる。
「攫われるのは多分簡単だぜ」
 攫う者を物色している人形音楽隊の前でちょっと歌を口ずさめばいい。音楽が好きであったり、音楽の教養のある人間を求めているようだからだ。攫われる間は大人しくしていれば疑われることもないだろう。
「移動式劇場に連れていかれたら、そこで戦いになる」
 あとはトループス級『人形音楽隊』、そして『堕落のマエストロ』ガブリエルとの戦いだ。
 人形音楽隊は指揮棒ふれば体に繋がる楽器で音を生み出したりなどさまざまな攻撃をかけてくる。
 そして『堕落のマエストロ』ガブリエル――その下肢を黒き二角獣の四肢とし、鉄蹄踏み鳴らし悪夢が生んだ軍馬の群れを嗾け蹂躙を。
 短鞭の指揮棒で奏でるは素晴らしいその演奏。それは最も適切な負の感情で深く心を満たし、淫蕩や堕落へと誘う音。
 そしてもう一つ、熱く蕩けた金の眼差しに見初められたなら、黒き幻夢へ捕らわれる。その行く先は彼の舌の上、耐えがたき苦痛を魂に刻む悪夢――その解放は絶命と共に。
「戦えばきっと、嫌なものも見せられると思う。それでもきっと皆なら大丈夫だって信じてるぜ」
 明鶴はそういってパラドクストレインへとディアボロスたちを誘う。

 ベルンの拠点を突き止められた事はナポレオンにとって誤算であったはず。兵力を集結させようとしているが、それを思うままにさせるわけがない。
 ――話を聞いて、己の中で何かがさざめいた気がした。その理由わからぬままに、四葩・ショウ(After the Rain・g00878)はパラドクストレインへと、向かう。
 そのさざめきの理由を知っているのは、彼女に意志託した――過去を生きたディアボロス。

●堕落へ誘うアル・フィーネ
 トループス級を引き連れ、『堕落のマエストロ』ガブリエルはスイスへと向かっていた。しかしその足並みは他の隊よりもゆるやかだろう。
 移動式劇場――ガブリエルのそれを共に運んでいるのだから。
「戦いにも無聊が必要であろう。それに我が音を腐らせるわけにはいくまい」
 士気をあげるならば、音楽での鼓舞も必要であろう。ガブリエルはナポレオンの元へ馳せるべく彼なりに急いで、しかし己を満たすことも忘れずに進んでいた。それに音楽は、一日奏でなければ腕が落ちてしまう。ただ奏でるだけでは満たされない。やはり聴き手は必要なのだ。
 通りすがりの街で己の心を燻るような、堕落させたいと思わせる者との出会いも求め人形音楽家たちを向かわせる。
 しかし簡単に堕ちてしまうものがこの道程では多く。もっと堕としがいのあるものを彼の心は求めていた。
 己の移動式劇場で、人形音楽家たちでは満足せず。我が音楽で以って堕ちる、魂の絶頂を見せてくれるものを。
 街で歌うものがいれば、音楽奏でるものがいれば連れてこいと人形音楽家たちへと命ずるガブリエル。
 さて、此度はどのような音楽を奏でることができるか――楽しみだと、彼の口は弓ひくように笑みを象っていた。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
1
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【悲劇感知】
2
「効果LV×1時間」以内に悲劇が発生する場合、発生する場所に、ディアボロスだけに聞こえる悲劇の内容を示唆する悲しみの歌が流れるようになる。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【照明】
1
ディアボロスの周囲「効果LV×20m」の空間が昼と同じ明るさに変化する。壁などで隔てられた場所にも効果が発揮される。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【託されし願い】
2
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【パラドクス通信】
3
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
3
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【水中適応】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV8 / 【ガードアップ】LV1 / 【凌駕率アップ】LV1 / 【反撃アップ】LV3 / 【アヴォイド】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。
 このシナリオは四葩・ショウ(After the Rain・g00878)さんの宿敵との【復讐召喚戦】となっています。
 どなたでも参加可能ですのでご遠慮なくどうぞ!
 また、シナリオ状況などについては、マスターページでお知らせ予定ですのでご確認いただけると幸いです。

●選択肢
 ①→②&③の順となります。

 ①敵に誘拐される囮作戦(👑5)
 移動式劇場へと招かれるべくさらわれてください。
 街中で歌を口ずさんだりと簡単な事でかまいません。音楽に興味がある、素養があると人形音楽家たちが思えばさらわれます。

 ②👾大群のトループス級『人形音楽隊』(👑11)
 『堕落のマエストロ』ガブリエルの前座として曲を振る舞う――といいつつも、実質は戦闘です。
 人形音楽隊との戦いを、ガブリエルは見ています。この戦いを抜けた者達が己の手で堕ちる事を望んでいるがゆえに。

 ③👿クロノス級復讐召喚決戦『『堕落のマエストロ』ガブリエル』(👑11)
 アヴァタール級と入れ替える形でクロノス級がこの場に現れます。ここに至るまでの四葩・ショウさんの行動や戦いによって反応何かあるかもしれません。
 ②の戦闘で残ったものたちなら堕としがいがあると、ディアボロスたちをみればご機嫌。
 POW Grande=Armée《グランド・アルメ》 では『あなたの悪夢』を。
 SPD Grand=Guignol《グラン・ギニョール》 では『あなたの負の感情』を。
 WIZ Gourmandise《グルマンディーズ》 では『あなたの悪夢と苦痛』を。
 使用するパラドクスが対応する内容をプレイングに記述をお願いします。特になければ当たり障りない感じになります。
 ご自分の過去など抱えているもの、どう感じるのか、それにどう対するのかなどご自分の事をどうぞ存分に詰め込んでくださいませ。

 以上です。
 皆様のプレイングをお待ちしております!
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ



 そこそこ大きな街にて――人形音楽家たちは連れて行くべきものたちを探していた。
 それは隊を率いる『堕落のマエストロ』ガブリエルに命じられたから。
 移動式劇場に客を招いてこい。なるべくなら音楽の素養があるものがいいと言われている。
 だから、人形音楽家たちは町の中で招くものを見定めていた。
 先程歩きながら少し音程ずれた鼻歌を歌う少年がいた――あれにしようと動く一体。
 金持ちらしき大きな屋敷からも、つたないながら音楽が聞こえてきた。あそこからも連れてこようと動く一体。
 招くのは簡単だ。捕まえて運べばいい。暴れるのなら、静かにさせるだけ。
 他にも数体、それぞれがばらばらに、目当てを見つけて動き始めていた。
 しかし目をつけた者達よりも、もっとよさそうな者がいれば人形音楽家たちはすぐに矛先を変えるだろう。
 人形音楽家たちの目に留まるべく、ディアボロス達も動く。
 音楽に素養があることがわかるように。
イツカ・ユメ
ナポレオンに合流されちゃうのも大変だし、町の人々が攫われちゃうのも大変だよ!
…でも、ここでぼっこぼこにしちゃえば敵の戦力も削れるし、町の人が被害に遭うのも防げるんだよね。
よーし、気合い入れて頑張るよ!

念の為、怪しまれないように現地の人達と同じような服装で行くよ。
キットは鞄の中に隠れていてね?

鼻歌混じりに町を歩いて、人形音楽隊の近くではお気に入りの歌を口ずさんで注意を惹くよ。
もし、周りの一般人の中に歌や音楽を奏でている人がいたら、
一般人が攫われないように大声で歌って自分に注目を集めるようにするね。

そのままわざと人目のつかない路地を通ったりして、上手い具合に攫われたら、目的地に着くまでは大人しくしているね。
不安や恐怖に負けないように、心の奥に勇気の歌を忘れずに。
…歌や音楽は、心に希望を与えて、人を幸せにするものだもの。
淫蕩や堕落に誘ったり、誰かを不幸にする為の音楽は、わたしは、嫌い。
この移動式劇場も、音楽隊も、全部全部、潰してあげる。


●歌口ずさんで歩めば
 この地に住まう人々に似せた服装纏って、イツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)は斜め掛けの鞄を。
「キットは鞄の中に隠れていてね?」
 その鞄の中にはモーラット・コミュ『キット』が。
 鼻歌交じりにイツカは歩む。
(「ナポレオンに合流されちゃうのも大変だし、町の人々が攫われちゃうのも大変だよ!」)
 だから、敵の懐へ――そうすれば、機会は巡ってくるのだから。
(「……でも、ここでぼっこぼこにしちゃえば敵の戦力も削れるし、町の人が被害に遭うのも防げるんだよね」)
 ふと、イツカの歩みは止まる。
「よーし、気合い入れて頑張るよ!」
 ぐっと拳握って小さな声で気合い入れ、イツカは再び軽やかに歩み始めた。
 人形音楽隊がまっすぐ進む先に行く。
 お気に入りの歌を口ずさみながら横を通れば――人形音楽隊がついてくる。
(「来た!」)
 周囲に歌や音楽を奏でている人はいない様子。
 このまま、寂しげな路地に入っていけば、後ろからの足音が一気に近づいてきてイツカを捕まえる。
 ばさっと何か、袋をかぶせられそのまま抱え上げられた。
「わわっ!?」
 驚いた声を上げ、わたわたとするけれど本気の抵抗ではなく。
 目的地に着くまでは大人しく。
 真っ暗な中でイツカは瞳閉じる。不安や恐怖に負けないように、心の奥に勇気の歌を忘れずに。
「……歌や音楽は、心に希望を与えて、人を幸せにするものだもの」
 淫蕩や堕落に誘ったり、誰かを不幸にする為の音楽は、わたしは、嫌い――イツカは胸の内で紡ぐ。
 この移動式劇場も、音楽隊も、全部全部、潰してあげる。
 そう、誓って――ぎゅっと鞄抱けば、中でもそりとキットが動く。一緒にいると安心させるように。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【通信障害】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!

近衛・千歳
人を陥れる為の音楽、ね。私は専門の音楽家ではないけど、名家に仕える者とし社交の場でクラシックな音楽も良く聞いたし、年頃の弟妹を持つものとしてポップな音楽も聴いてきた。子供と一緒に童謡も聞いたしね。


聞いた話ではこの世界を支配している断片の王の軍勢がこの街に攻め寄せようとしているようだ。ナポレオンの事は聴いているよ。こいつに手が届く距離までの苦労を知ると軍勢が大きくなるのは避けたいし、何よりこんな奴らに罪なき人々が殺戮される理不尽は許せないね。



現地の人に溶け込むような服装をするよ。初めての世界だからしっかり調べていくね。

音楽を多く聴いてるから歌は上手く歌える自信あるよ。ちょっとアルト気味だけど、流暢に歌を歌って人形音楽隊の気を引く。一般人が音楽や歌を奏ていたらオペラのように芸術的に声を張り上げて気を引く。

色んな音楽を聴いてきた。どれも気持ちがこもって楽しみを与えて幸せな気分になるものだった。音楽ってそういうもの。

人を不幸にする音楽は間違ってるね。容赦無く潰そうか。


●降りかかる禍を払うべく
「人を陥れる為の音楽、ね」
 改めて、口にしてみるとそれは受け入れられないという感しかない。
 近衛・千歳(暁紅のチェルカトーレ・g10944)はその金瞳に確固たる意志を巡らせる。
 この町の人が攫われるような事はあってはならないと。
 千歳は専門の音楽家ではない。けれど、名家に仕える者として社交の場でクラシックな音楽も良く聞いたし、年頃の弟妹を持つものとしてポップな音楽も聴いてきた。
 それに、子供と一緒に童謡もとその時の事を思いだせばわずかに口端は笑みを象る。
 だがその思い出も胸にしまって、千歳は戦いに赴くべくこの地にいるのだ。
 この世界を支配している断片の王。ナポレオンの軍勢の元へ集う軍隊――ナポレオンの事は千歳ももちろん、聞いている。
 断片の王に手が届くまでの距離まで、追い詰めてきた。それまでの数々の苦労があったことを千歳は知っている。
 だから、軍勢が大きくなるのは避けたいところ。そして何より。
「こんな奴らに罪なき人々が殺戮される理不尽は許せないね」
 この町の人々が突然不幸に見舞われるなんて千歳には受け入れがたい。
 それならば自分が囮になって、その不運を貰い、降りかかる禍を打ち砕くべく。
 沢山の曲を今まで聞いてきた。歌は上手く歌える自信がある。
 その声は、アルト気味だが響かせれば人形音楽隊の気を引くには十分。
 通りの人々が気儘に奏でている音が聞こえた――そちらへと向かわぬよう、千歳は芸術的に声を張り上げる。
 人形音楽隊の足は間違いなく千歳の方へ向いていた。
 千歳はその気配を感じながら、歩む。
(「人を不幸にする音楽は間違ってるね」)
 そんな音楽は、容赦無く潰そうか――今は、人形音楽隊の手を甘んじて受け入れる。
 敵の懐へと入るために。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

シチリアでも似たようなことがあったな
音楽を利用した悪巧みなど、看過できるものではないが……
音楽には力がある、だからこそ……人に寄り添うものであってほしいと願う

移動式劇場か……
歌……歌劇……その響きはただ、懐かしくて……心惹かれる

彼の演目はわからないが
街に紛れて違和感のないように
時代にあった黒の正装に身を包み、綺麗に見える外套に翼を隠し
背筋を正し、ケースに収めた楽器を携えていれば、それだけでわかるのかもしれない

道を歩きながら、さりげなく口ずさもう
少しだけ、思い出す、少年の頃の気持ち
切なくも、純粋で
歌は祈りだった
街角に立ち、声を響かせた日を思い
空気に溶かすように、透明な歌声をのせる
瞼を閉じれば溢れる想い
歌は、言葉でもあった
鼻歌で済ます自信はないが、快く、手慰みがてらに歌おう

敵の視線や気配には気づかずに
拐われる間はおとなしく、怯えた演技をしていよう

攫われるのは機械化ドイツ帝国以来か
あの頃に比べ、全然か弱くなくなってしまったな
……まあそういうものだ。戦いの日々と、歩んできた道程は


●音の葉と共に
 シチリアでも似たようなことがあったな、とエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は思い返す。
「音楽を利用した悪巧みなど、看過できるものではないが……音楽には力がある、だからこそ……」
 人に寄り添うものであってほしいと、エトヴァは願う。
 そのためにも、この後起こることを挫かなければならない。この町の人々を守るためにも。
「移動式劇場か……」
 これから向かう場所――エトヴァはその言葉を自分の内側で反芻する。
(「歌……歌劇……その響きはただ、懐かしくて……心惹かれる」)
 エトヴァの心の内はたださざめく。これから戦うべき相手の演目はわからないが――音を担うものとして。
 街に紛れて違和感のない、この時代にあった黒の正装に身を包み、綺麗に見える外套にその翼を隠す。
 背筋を正し、ケースに収めた楽器を携えていれば、それだけで音楽を嗜むものとわかる。
 人形音楽家たちが町を徘徊している。エトヴァもその視界の内にはいり細くされるように歩みすすめる。
 さりげなく口ずさむ歌。
 そうすると――少しだけ、思い出す。少年の頃の気持ちを。
 それは切なくも、純粋で。歌はただただ、祈りだった頃。
 街角に立ち、声を響かせた日を思う――あの時の空はどんな姿だっただろうか。
 今、見上げるこの空と同じだっただろうか――いや、やはり違うと見上げた先。
 空気に溶かすように、透明な歌声をのせる。
 瞼を閉じれば、溢れる想い。
 エトヴァにとって歌は、言葉でもあった。
 鼻歌で済ます自信がないな、と小さく笑い零す。けれど、その表情に迷いも何もなく。
 快く、手慰みがてらに歌おうと音の葉紡いでいく。
 すると――人形音楽家たちが近づいてきて取り囲まれるまで気付かないふり。
「な、なんだ?」
 驚き、怯えた演技をしている間に麻袋かぶせられ運ばれ連れていかれる。
「攫われるのは機械化ドイツ帝国以来か」
 その麻袋の中でエトヴァはこっそりと落す。
 そして、ふと息吐いた。
「あの頃に比べ、全然か弱くなくなってしまったな……まあそういうものだ。戦いの日々と、歩んできた道程は」
 しばしの間、運ばれるままに。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【通信障害】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

捌碁・秋果
※連携アドリブ歓迎!

念のため現地の服装で行動しよう
動きやすいボーイッシュなパンツスタイルで!

カスタネットをタンタンしながら歌うよ!
歌はうまくも下手でもないけど…
歌ってて楽しいって気持ちをこめて笑顔で。弾むような足取りで。私の想いを込めた芸術賛歌を!

アッア~、歌も~絵っ画も~表ッ現~
譜面に~色に~理っ想を乗せって~
ヘイ!(タンタン!)
完ッ成を恐れずに~かきあげるその姿ッが~………尊い!(タンタカタンタンタン!)

どっからどう見ても歌を愛する若者!
どこかで見ている人さらいたち。ターゲットが!ここにいますよ!?
…来ませんねぇ
なるほど。まだまだお歌が聴きたいと、そういうことですね?
もーう、欲しがり屋さん
こんなこともあろうかと5番まで準備しました。フルで歌ってさしあげますね!特別ですよ?
5番まで歌ったら?1番に戻るんですよ
攫いに来るまで人通りの多い大通りと少ない道を交互に練り歩いてリサイタルです!

歌いながら歩く私を町行く人がどんな目で見ても構わない
好きなものを想っていれば、私はひとりでだって楽しい!


●どこまでも楽しく
 足取りは軽い。この町に馴染む、動きやすいボーイッシュなパンツスタイルで捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)はカスタネットをタンタンと鳴らし歌う。
 心地よいリズムと共に歌う秋果。
 歌はうまくも、下手でもない。けれど楽しいと、その気持ちを込めて笑顔で歌う。
 弾むような足取りで、秋果の想いを込めた芸術賛歌を。
「アッア~、歌も~絵っ画も~表ッ現~」
 秋果はくるりと回って楽し気に。
「譜面に~色に~理っ想を乗せって~」
 リズムも心地よく楽しく響かせて。
「ヘイ!」
 タンタン! とカスタネットを鳴らす。
「完ッ成を恐れずに~かきあげるその姿ッが~………尊い!」
 タンタカタンタンタン! とカスタネット響かせてぴたっと止まる。
(「ばっちり……どっからどう見ても歌を愛する若者!」)
 秋果はふふりと笑む。
(「どこかで見ている人さらいたち。ターゲットが! ここにいますよ!?」)
 声を大にしていいたい。けれどそうすると逆にバレてこないだろう。だから心内で思うだけ。
 こんなに楽しく音楽響かせているのだから、すぐとんでくるのでは? というところ。
 しかし。
「……来ませんねぇ」
 なるほど、とふっと秋果は笑む――まだまだお歌が聴きたいと、そういうことですね? と。
「もーう、欲しがり屋さん」
 でもこんなことになっても準備万端で秋果はここにきている。
「こんなこともあろうかと5番まで準備しました。フルで歌ってさしあげますね! 特別ですよ?」
 5番まで歌ったら? 1番に戻るんですよと秋果は楽しく奏でる。
 人の多い大通り、そして少ない道を交互に練り歩きながらのリサイタル。
「おかあさん、あのひと」
「ほら、いくわよ」
 楽しそうだねと言おうとした幼子の背を母親が押し楚々と離れていく。
 町行く人がどんな目で見ても構わない。秋果は歌うことをやめず軽やかに。
 好きなものを想っていれば、私はひとりでだって楽しい! とそれを目一杯に。
 そして、人の少ない通りに入った瞬間――暗転。人形音楽家たちの手に秋果も捕まる。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

四葩・ショウ
聖歌隊のひとりにみえるような
この時代の衣装に身を包んで
少年と少女、どっちにみえるのかは
機械仕掛けのかれら次第

耳をすませながら街を歩こう
きこえてくる歌が、音楽があるなら
自動人形に吟味されている様子はどう?

仲間が気を惹いてくれてたら先へ
堕落させがいがある人物をもとめるなら
たとえば街の教会、聖歌隊の少年少女、とか
ターゲットになりそう?
鐘の音もたよりに
わたしはそういった場所に足を運んでみるね

もし、自動人形が
一般人のだれかを攫おうとしていたら
どうかおやめください!と跪いて、或いは背に庇って
どのような罪を犯したのでしょうと請い
代わりを命じられるのなら、歌って

だれもターゲットになってなければ
教会近くで聖歌を歌い、自動人形の興味を惹いてから
攫いやすいようにひと気のない場所へいこう

高らかに歌唱するのは
わたしがいちばん得意な、聖歌
静謐なる祈りが花開くよに
こころを籠め、のびやかに歌う
ひかりあれと希いながら、手を伸ばしてみせて

ふるえるばかりで声も出ない――なんて演技で
かれらの思い通りに
大人しく攫われてあげよう


●聖なるかな
 この時代において、聖歌隊のひとりのように――四葩・ショウ(After the Rain・g00878)は装いをあわせて歩む。
 はたして、少年と少女、どちらに見えるかは見た者次第、機械仕掛けのものたち次第。
 耳をすませて、ショウは歩む。
 きこえてくる歌が、音楽があるなら――自動人形の、人形音楽家たちが近くにいるかもしれない。
 吟味されている様子はどう? とショウは見かけたそれに視線向ける。
 同じディアボロス相手――後ろをついていく様子にそちらはお任せ。
 人形音楽家たち。堕落させがいがある人物を求めるなら――たとえば、とショウは教会へと視線向けた。
 たとえば、聖歌隊の少年少女。ターゲットになりそうとショウはそちらへ。
 教会の金の音が聞こえて、そちらへとショウは足を向けた。
 丁度、教会から出てくる少年少女たちの姿があった。練習が終わり、帰るのだろう。大通りから細い道へ――そしてその後ろを追いかける人形音楽家。
 その手が何もしらぬ少年少女たちに伸びようとした時――ショウは駆け、割って入る。少年少女たちへ、その手が及ばぬように。
「どうかおやめください!」
 その背に少年少女たちを庇って、逃げてと視線一つ。
 どのような罪を犯したのでしょうと請うように。
 人形音楽家たちの前で、歌ってみせて――その興味を少年少女たちから自分へと向けさせる。
 ぱたぱたと遠ざかっていく少年少女たちの足音。
 高らかに響かせる――その歌は、ショウがいちばん得意な、聖歌。
 静謐なる祈りが花開くよに、こころを籠め、のびやかに。
 ひかりあれと希いながら、手を伸ばしてみせて。その声はどこまでも響いていく。
 人形音楽家たちの意識は少年少女たちからショウへと向いていた。
 囲まれていく。その様子にふるえるばかりで声も出ない――というのは、演技。
 けれど人形音楽家たちの思い通りに、大人しく。
 運ばれていく先はもちろん、移動式劇場へ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【強運の加護】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!

一角・實生
移動式劇場を伴っての進軍……軍楽隊かな
敵の士気にも関わるしここで叩くべきだね
宿縁を持つ仲間のためにも

俺は開き直っていい位に歌が下手だ(※超弩級の音痴です)
だから歌い続けるのは色々とまずい
それ以外の行動を駆使して何とか劇場へさらわれないと

現地の人々に準じた服装になり、更に楽器ケースを持ち裏路地を移動
中身は新宿島に流れ着いてから譲り受けたトロンボーン
上達して今はそれなりに楽しめるようになった

……けれど、傷が付くのは嫌だから今回はケースの中に仕舞ったまま
このケースを見れば楽器が入っていることに気付く人形音楽家もいるだろう

好きな歌を、お気に入りの曲を思い浮かべる
自然と上向く視線に足取りもこころ軽く
――ここなら人も少ないしいいか、と
そんな体で、僅かに途切れがちにワンフレーズ……の、半分のみ口ずさむよ
ご機嫌に開きかけた翼と揺れ動く楽器ケースが彼等の目に留まりますように

敵に囲まれたら戸惑いつつも冷静な態度を取ろう
うまい話には乗る主義のしたたかな人物に
へえ。今よりもっと音楽を楽しめる場所に行けるのかい?


●ただしたたかに
「移動式劇場を伴っての進軍……軍楽隊かな」
 それはきっと敵の士気にもかかわることだろうと一角・實生(深い潭・g00995)は思う。
 なおさら、ここで叩くべきだねと零す――けれど、だ。
 實生にはある一点、今回敵を誘き寄せるにあたって問題があった。
 しかしすでにそれについて實生は開き直っている。
 歌が――下手なのだ。超弩級の音痴なのを理解している。
 だから歌い続けるのは色々とまずい、と實生が一番よくわかっているのだ。
「それ以外の行動を駆使して何とか劇場へさらわれないと」
 實生は悩み、そしてその方向性を決めた。
 町の人々と似たような服装を纏い、楽器ケースを持って裏路地を移動する。
 その楽器ケースの中身は、新宿島に流れ着いてから譲り受けたトロンボーン。
 歌は兎も角、演奏は別だ。上達し、今はそれなりに楽しめるようになっている。
 けれど、今日それを奏でる気はいまのところない。
 傷が付くのは嫌だから今回はケースの中に仕舞ったまま。ケースを見れば楽器が入っていることは一目瞭然。きっと気付く人形音楽家もいるだろう。
 それを持って、實生は歩む。歩みながら好きな歌を、お気に入りの曲を思い浮かべる。
 心の中で流れていくその曲。自然と上向く視線になり、足取りにもこころ軽くというのが現れる。
 歩調は軽やかで、しかし何か――ついてくるものの気配は確り逃さず。
「――ここなら人も少ないし」
 いいか、と小さく零して。實生は僅かに、途切れがちにワンフレーズ……とまではいかず。その半分を口ずさむ。
 ご機嫌に開きかける翼。そして揺れ動く楽器ケース。
 實生を追ってきていた人形音楽家が、忙し気に距離詰める足音が聞こえた。
 人形音楽家たちに囲まれたなら、戸惑いつつも冷静に、何だいいきなりと實生は問い返す。
 聞けば、移動式劇場へのご案内とのことで。
「へえ。今よりもっと音楽を楽しめる場所に行けるのかい?」
 それは面白そうだと、うまい話には乗る主義のしたたかな人物を装う。
 そして誘われる――此度戦うべき相手の、懐へ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【通信障害】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

●開幕
 ディアボロスたちが連れていかれた先は――移動式劇場、その舞台の上だった。
 視線を巡らせれば、周囲には人形音楽家たちが控えている。
 そして客席――舞台が一等よく見える席に『堕落のマエストロ』ガブリエルは座っていた。
「俺の劇場へようこそ、諸君!」
 大仰に身振り手振り。ガブリエルは新たなる観客の訪れに上機嫌だ。
 しかし――と、笑う。
「俺の演奏をよくよく理解できるのか、それは試させてもらおう」
 理解できぬものに俺の音楽を与えてやるほど、俺は優しくないのだと。
 では、と指揮棒かわりに鞭を振る。
 まずは、そこにいる人形音楽家たちと奏でて、俺を満たしてくれと。ガブリエルの瞳はディアボロスたちを捉え、楽し気に歪んでいる。ここに俺の期待したものがいるだろうかと値踏みも含んで。
 その声と同時に人形音楽家たちが、動き始めた。
近衛・千歳
へえ、敢えて懐に飛び込んでやったのに随分余裕だねえ。まあ、指揮官ってのは慌てない事が大事なんだけど流石に不気味。

前座ね。・・戦友を袋に入れて連れ去るような配下の頂点の奴の舞台の前座なんて不服だけど、敢えて乗ってやるか。・・・ただ、死と引き換えにだけどね。

発動させるのは【士気高揚】まあ、効果あるのは一般人だけみたいだから有効じゃないけど、気分的には糧にはなる。救援が到着したみたいだから【パラドクス通信】で状況の確認を。

音楽の素養?実は周りの身近な人に音楽のプロ結構いるんだよね。それに比べるとねえ?あの酷すぎるやり方からするとセンスの欠片もないね。音楽の専門家じゃなくてもでも流石にわかる。

お望み通り思いっきり豪快にやっちゃおう!!不意の致命傷に備えて【残像】の致命傷逸らしと【グロリアス】の効果も得て、戦覇横掃の豪快な【薙ぎ払い】やカスタム手榴弾を【投擲】して敵の音掻き消すほど爆発させちゃおうか!!

本当に性質悪いねえ。これぐらいやらなきゃ満足しなそう。戦友の皆、やりすぎてごめん!!


●開幕は派手に
「へえ、敢えて懐に飛び込んでやったのに随分余裕だねえ」
 まあ、指揮官ってのは慌てない事が大事なんだけど――流石に不気味、と近衛・千歳(暁紅のチェルカトーレ・g10944)は思う。
 そして周囲を囲む人形音楽家たち。
 ガブリエルの言葉とこの状況――千歳はその視線を巡らせる。
「前座ね。……戦友を袋に入れて連れ去るような配下の頂点の奴の舞台の前座なんて不服だけど、敢えて乗ってやるか」
 けれどそれは、と千歳は静かに笑う。
「……ただ、死と引き換えにだけどね」
 幕開けに相応しく。ここにその影響を受ける一般の人々はいないけれど――士気高揚を。
 ディアボロスたちに影響があるわけではないが、気分的には糧になる。千歳もパラドクス通信で味方の到着を感じて。
 そして周囲の人形音楽家たちへと不敵に笑う。
「音楽の素養? 実は周りの身近な人に音楽のプロ結構いるんだよね」
 それに比べるとねえ? と、千歳は肩を竦める。
「あの酷すぎるやり方からするとセンスの欠片もないね。音楽の専門家じゃなくてもでも流石にわかる」
 その手に千歳は暁の鎌を握る。燻すような赤銅色の、仇なすものの命を刈り取る大鎌――ひゅっと空を切る音は鋭く。
「お望み通り思いっきり豪快にやっちゃおう!!」
 人形音楽家たちへ、遠慮なく。その持てる力の限りをもって千歳は大鎌を振り抜いた。
 豪快な薙ぎ払いは士気も高揚させるもの。景気よく大きく――それは戦いの幕開けのように。
 人形音楽家たちは薙ぎ払われてもなんとか立ち上がり指揮棒をふる。
 放たれる衝撃を千歳は文堪えて、カスタム手榴弾投げてその音かき消すほどの爆発を。だがダメージはやはり、届いてしまう。
「本当に性質悪いねえ。これぐらいやらなきゃ満足しなそう」
 まだまだ人形音楽家たちはいる。手に手榴弾遊ばせて、後何個いるかなと千歳は考えつつ。
「戦友の皆、やりすぎてごめん!!」
 重なる音と爆風の中、千歳が薙ぎ払う一動が人形音楽家たちの奏でる音を吹き飛ばす。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【士気高揚】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!

九重・古安
イツカが誘拐された……もとい、囮役を買って出たと聞いて救援機動力で駆け付けたぞ。
俺がこうして突入できているということは作戦は無事に成功していると見て良さそうだな。励ましも込めて【パラドクス通信】で援軍に来たことを伝えて合流しよう。
無論、俺が心配するまでもなく切り抜けられるだろうというのは分かっているが、それはそれだ。
さて、クロノヴェーダに娯楽を提供してやる義理は無いが……ここが劇場だというのなら、飛び入りの即興が演目に加わっても無粋とは言うまい。

しかし……音楽の素養を問うという話だったな。歌にも楽器にも疎い俺が言うのも何だが、試験代わりの人形たちの演奏は音楽と呼ぶには乱暴すぎるだろう。普段聞くイツカの歌と比べれば、なおさら。

ならこちら遠慮なくいこう。大音量には大音量、衝撃波には衝撃波で、真正面から残響の嘆奏で対抗してやる。
若干私怨が混じりだが、イツカを攫ったことへの怒りも込めて全力で振り抜くぞ。
観客席で見物を決め込んでいる敵への宣戦布告もかねて、な。


イツカ・ユメ
人手が必要になるかもしれないし、念の為こっそりと【パラドクス通信】で外部に移動式劇場の場所を伝えておくね。

囚われのお姫様気分で、このまま白馬の王子様の助けを待つのも悪くはないけれども……
わたしの魂には、いつだって歌が響いているから。
敵の懐とは言え、大舞台で歌える機会を見過ごすことなんてできないよ!
ダンスのリズムで軽やかに飛び出して、お気に入りの歌を唇に乗せて、ご機嫌な音楽を奏でたら、ここはもうわたしのステージ!
さぁ、最前列で楽しんでいってね♪

時に静かに、時に荒々しく。
たまには速く、だんだん遅く。
優美に、情熱的に。
激しい戦闘音や、周りの皆の音や声に合わせて、表情豊かに奏でて。
隙を見せたらキットにもきゅもきゅしてもらうよ!くらえ、可愛いは正義アターック!(モーラットをぶん投げる!)

…あの、ガラスを引っ掻いたような音は、正直苦手だけれども。
通信から古安くんの声が聴こえたら、元気もやる気も100倍だよ!
だって恋する乙女ですもの。
好きな人には、可愛いところも、かっこいいところも見せたいもん。


●待ってるだけのお姫様じゃいられない――王子様はそれを知っている
 幕が上がる――そのしばし前に、イツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)はこっそりとパラドクス通信で移動式劇場の場所を伝えていた。
 そしてそれを受け取った九重・古安(巻き戻り路逸れる針・g02347)の足はまっすぐ、その場所へと向けられていた。
「イツカが誘拐された……」
 実際は囮役を買って出たということはもちろん、わかっている。そして勿論、自分が心配するまでもなく切り抜ける強さを持っていることもわかってはいるが――それはそれ。
 古安は全力でイツカの元へ向かうだけ。
「あれか……!」
 移動式劇場の姿を見つけ古安は突入する。正面の入り口から――それを守るものたちの姿が見えた。
 援軍にきたことは、すでに仲間に伝えてあるが容易く突入はさせてくれないようだ。
「さて、クロノヴェーダに娯楽を提供してやる義理は無いが……ここが劇場だというのなら、飛び入りの即興が演目に加わっても無粋とは言うまい」
 彼らのいるホール前に立ちふさがる人形音楽家たちの姿に試されているのだったかと古安は思う。
「音楽の素養を問うという話だったな」
 歌にも楽器にも疎い俺が言うのも何だが、と古安は人形音楽家たちをみる。
 彼らが指揮棒を振るう――大音量の衝撃波が古安を正面から殴りつけるように響く。
「っ……! 音楽と呼ぶには乱暴すぎるだろう」
 これは音楽ではないと古安は紡ぐ。
 普段聞くイツカの歌と比べれば、なおさら――なら、こちらも遠慮なくいこうと古安は鉄鎚を握る。
「大音量には大音量、衝撃波には衝撃波――そろそろ黙る時間だ。……いや、黙らせるとも!」
 真正面からその衝撃波を吹き飛ばすように古安いは渾身の力を込めてそれを振るう。
 強力な音波は物理的な衝撃となって人形音楽家たちを打ち倒す。
 若干、本当に若干かどうかはおいといて。
 イツカを攫ったことへの怒りを込めての全力で振り抜き入口ごと、人形音楽家を吹き飛ばした古安。
 それは観客席で見物を決め込んでいる敵への宣戦布告もかねて。
「おや、飛び入り参加かな」
 悠々と構えていたガブリエルはちらと、古安の方を見て笑う。それもまた面白いとガブリエルは、さぁ舞台へ上がると良いと上機嫌。
 そして――駆けつけた古安の姿を目に、イツカは笑む。
 来ているのは知っていた。パラドクス通信で声は聞こえていたのだから。このまま待っていたならきっとここにいる敵を倒して傍に来るという事も。
「囚われのお姫様気分で、このまま白馬の王子様の助けを待つのも悪くはないけれども……」
 けれど――イツカの魂には、いつだって歌が響いているから。
 不敵に可愛く笑って見せる。敵の懐とは言え、ここは舞台。舞台の上なのだから。
「大舞台で歌える機会を見過ごすことなんてできないよ!」
 ダンスのリズムで軽やかに飛び出して、お気に入りの歌を唇に。
 ご機嫌な音楽奏でたら――そこはもう。
「わたしのステージ! さぁ、最前列で楽しんでいってね♪」
 時に静かに、時に荒々しく。たまには速く、だんだん遅く。
 優美に、情熱的に――戦いの音も響いている。その音や声に合わせて、表情豊かにイツカは奏でる。
 人形音楽家が指揮棒を振るえばガラスを引っ掻いたような非常に不快な音。それは精神を蝕み崩壊に導く音の響きだ。
「っ! その音は、苦手だけど……!」
 イツカ! と自分を呼ぶ声が聞こえる。それだけで、元気もやる気も100倍。
 だって恋する乙女なのだから――だから、ステップ踏んで一番の自分でいたい。
「いつか叶う、夢はきっと叶う……可愛いは正義で無敵だよ♪」
 可愛いところも、かっこいいところも――彼に見せたくて。
 そして敵に隙があったなら一緒に踊っていたモーラットのキットをむんずと掴み。
「キット! くらえ、可愛いは正義アターック!」
「もきゅー!!!」
 不意打ちの一撃。その一撃にぐらりと体傾いだ人形音楽家は――続けざまにもう一撃。
 強力な音波が物理的な衝撃となってその身が崩れおちる。
 その衝撃が放たれた方向見れば――イツカは花咲く笑み浮かべる。
 舞台に上がって来た古安がそこにいたから。ここからは、一緒に戦う時間。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水中適応】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!

四葩・ショウ
こんなことを強いていたのか
攫われたのがわたし達で、よかった

望むとおりに囀ってあげるよ

頼もしい仲間と連携して
いちばん深く傷付いた敵を
いなければ、いちばん近くの敵を見染めて
敵の数が多い序盤ほど
囲まれたり集中攻撃されないよう、気をつけて立ち回るよ

凛と立って披露するのはさっきとおなじ
わたしがいちばん得意な聖歌
――そういえば、復讐者に覚醒して
はじめて使ったパラドクス、だったっけ
幻影の天使をひらりゆびさきで導いて、ひかりの雨で貫く

かえるのは耳を劈くような三重の音
悲鳴をあげるよりはやく、
頭上に戴く硝子めいた天使の輪が
雨をふらせて和らげてくれるから
――授けてくれた聖歌の恩師を思い浮かべ、目を細め

ううん
わたしはだいじょうぶ
そう微笑んでみせるのは
強がりじゃなくて、こころから

傷付くばかりの硝子のこころ、それでも
けっして砕けない魂の煌めきを瞳に宿して
今度は掻き消してしまうくらいに歌声を奏であげ
反撃のこえを――貴方に、あげる

わたし達のショー
気に入って貰えたかな、マエストロ

ああ、まただ
さざめきがきこえる

これって――


捌碁・秋果
※連携アドリブ歓迎!

演奏に対する理解ですか
すみませんが、私はあなたの求める理解に辿り着けないでしょう
音楽は好きですが、知識も経験も乏しいもので

それにしても、せっかくの劇場にお客さんがいないのは寂しいですね
ふふっ、私が賑わせてさしあげます!
パラドクスを使い、満員御礼の観客…のパネルをここに!
観客のパネルで敵の移動を阻みつつ、その陰から飛び出して『藍色の槍』で薙ぎ払って攻撃
手痛い攻撃になるように【ダメージアップ】を重ねます

反撃の超音波の刃はパネルを盾に、さらに『額縁』を重ねてダメージの軽減を図ります
そしてそして。芸術讃歌(三番)も歌っちゃう!
百年前の~譜面が~絵っ画が~
今日も誰かの心を灼っくの~…美しい!
歌う意味があるかって?無いよ
無くていいの。無くていいものが有るのが素晴らしいんだから

…ガブリエル。私はあなたの演奏を、あなたの望むようには理解ができない。あなたにとって程度の低い観客でしょう
でも、表現者の意図しない解釈や感想が生まれるのも芸術の美しさだと思いませんか?
私はそう信じています


一角・實生
移動式劇場の舞台の上なんて
恐らく俺の記憶が全て戻っていたとしても、初めて立つのではないだろうか

自分から懐に飛び込み、したたかな人物を装ったのなら
手にするのは楽器トロンボーンではなく狙撃銃グラナトゥム
こちらの方があなたのお好みのようだからね

仲間と連携していくよ
音楽はひとりで奏でるのもいいけれど
仲間がいるからこその重なり合う演奏でいきたい――なんてな
仲間の攻撃の隙を補い、敵の攻撃の隙を看破する

仲間の攻撃という演奏を引き立たせ、時には俺も主旋律になるような
……グラナトゥムの銃撃音を演奏に例えるには、些か暴力的だけれど

この場所に漂うものたちの力を借りパラドクスを発動
呪詛のちからで増幅し敵へと放つよ
倒せそうな敵や仲間に迫ろうとしている敵を【ダメージアップ】のちからをのせて狙おう
指揮棒を振る動きは反撃の合図
グラナトゥムにパラドクスの余韻で残る呪詛を纏わせ、盾代わりにして耐える

……俺はあなたの演奏を理解できそうだろうか
真直ぐに彼を見つめ問うよ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

ずいぶん、手荒な勧誘だったな
舞台に立たせるなら、貴方も聴衆
観客を喜ばせる舞台を演じよう

研ぎ澄ました一音、のびやかに
Wandervogel(ヴァイオリン)に弓を引き、演奏しPD攻撃
刻む情熱の律動、切なく歌い上げる絶唱の如き旋律にのせて、火焔を生み、操り敵を包むように飲み込む
ダメージアップ込めた炎は、活き活きと踊り、獣の如く襲いかかり
奏であう音色の応酬は、舞台を超えて、世界を彩るだろう
奏者が楽し気なら、聴衆にも伝わるものだ

戦況を観察し、敵味方の動きを把握
仲間と連携を取り、狙いを合わせ
一撃で倒せる個体>消耗した個体を目安に優先して狙い
確実に倒して戦場の有利を引き寄せよう

音楽隊の不快音波には、耳のピアスの音色を聴き忍耐し
己の演奏に集中しよう
指揮棒を振るわせないよう、腕のタワーシールドを掲げるか念動させ指揮そのものを妨害
演奏を重ね、敵の注意を乱し、より激しい火焔で呑みこもう

戦闘後には
ご静聴感謝の仕草で、優雅な一礼を


●観客はただ一人
 移動式劇場の舞台の上なんて恐らく俺の記憶が全て戻っていたとしても、初めて立つのではないだろうか――一角・實生(深い潭・g00995)は初めてだなと思いながらその手に楽器、トロンボーン――ではなく、狙撃銃グラナトゥムを手にする。
「こちらの方があなたのお好みのようだからね」
 ガブリエルが向かわせる人形音楽家たち。
 こんなことを強いていたのかと、四葩・ショウ(After the Rain・g00878)はその瞳に苦さをにじませる。
「攫われたのがわたし達で、よかった」
 ほとりと零された言葉。望むとおりに囀ってあげるよと、その身を翻すショウ。
 捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)はうーんと唸る。演奏に対する理解ですか、と零して。そして考えてみるものの――妥協点は導けなさそう。
「すみませんが、私はあなたの求める理解に辿り着けないでしょう」
 音楽は好きですが、知識も経験も乏しいものでと秋果は笑ってみせる。
「それにしても、せっかくの劇場にお客さんがいないのは寂しいですね」
 客は、今は俺ひとりと言わんばかりのガブリエル。
 けれど、いえいえ、勿体ないと秋果は紡ぐ。
「ふふっ、私が賑わせてさしあげます!」
 満員御礼の観客――きっとそれが今ここでの至高。
 客の描かれたパネルが舞台の上に、観客席へと立ち並ぶ。
 そうすると、人形音楽家たちはそれを避けながら向かってくることに。
 動きを制し、秋果はその陰へ。それを追いかけてくる人形音楽家。だが裏から飛び出し藍色の槍で秋果は薙ぎ払う。
 振り向きざまに人形音楽家が指揮棒振って放つ超音波の刃。耳に響くその音をパネルの裏に、そして『額縁』重ねてダメージの軽減を試みる秋果。
「芸術讃歌も歌っちゃう!」
 歌うのは、三番から。秋果は戦いを仕掛けながら歌う。
「百年前の~譜面が~絵っ画が~」
 人形音楽家に、ガブリエルにその歌は届くだろうか。
「今日も誰かの心を灼っくの~……美しい!」
 歌う意味があるのかと問われたら、秋果はあっけらかんと無いよと答えるだろう。
 でも、笑って続ける。
「無くていいの。無くていいものが有るのが素晴らしいんだから」
 だから歌う。それが絵画でも、音楽でも――素晴らしいを知っているから。
 秋果の歌を耳にしつつ、實生はその通りだと口端緩ませる。
「音楽はひとりで奏でるのもいいけれど」
 仲間がいるからこその重なり合う演奏でいきたい――なんてなと小さく笑い零し實生は秋果の生み出したパネルの裏に転がりこんだ。
 仲間の攻撃という演奏を引き立たせ、時には自信も主旋律になるような。そんなことを思いながら實生は構える。
 この場に漂う残留思念は――ここで試された者達のものだろうか。
 五感で映す世界から意識を少しだけずらし、實生が見るもの。その感情の残滓の力を借り受ける。
 呪詛のちからで増幅し、敵へ。人形音楽家が迫るショウの姿が見えて、實生は構え、その力を乗せて放つ。
「……グラナトゥムの銃撃音を演奏に例えるには、些か暴力的だけれど」
 響くは白色のいかづちが奔る音。
 人形音楽家は感電しその動きはおぼつかない。それでも、指揮棒を振り實生への反撃を。
 甲高い音と共に放たれた超音波の刃がくる。
 グラナトゥムに残る呪詛を纏わせ己の前に構えた實生は、その刃を受け止める。衝撃はあるが堪えて耐える。
 そしてまた次の一音を仲間と共に。
「ずいぶん、手荒な勧誘だったな」
 肩を竦めてみせるエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は、ここへ招いたものへと視線を向ける。
「舞台に立たせるなら、貴方も聴衆」
 観客を喜ばせる舞台を演じようとエトヴァはWandervogelへと弓をあてた。
 研ぎ澄ました一音、のびやかに――そのヴァイオリンは古色艶めく、人の手から手へ、時代を超えて歩んできた音色を紡ぐ。
 刻む情熱の律動、切なく歌い上げる絶唱の如き旋律。
 それは煌めく炎が生まれ、情熱の儘奏でられる旋律でもって、嵐のごとく猛る火焔が踊り人形音楽家たちを包み込む。
 炎は活き活きと踊り、獣の如く襲い掛かる。それは奏でる音の思うままに。
 奏であう音色の応酬は、舞台を超えて、世界を彩る――奏者が楽し気なら、聴衆にも伝わるものだとエトヴァは演奏しながらガブリエルへと視線向ける。
 楽しそうに笑っている――それは演奏に、この場に満足しているからか。
 しかしエトヴァの意識はそちらから引き戻される。
 エトヴァが奏でる音をかき消そうとするかのようにガラスを引っ掻いたような音を人形音楽家が燃え盛りながらたてる。
 その音に捕らわれぬ様、エトヴァは耳元へと集中する。
 震えるように繊細な音を奏でる白銀の紋章閉じ込めたセレクトグラスの涙。その音に意識向ければ、敵のもたらす音も耐えられる。
 そして銀のタワーシールドを念動力で動かし、その指揮そのものを邪魔するように。
 演奏を重ね、一層激しい火焔を起こすエトヴァ。
 高らかと響く音――その音へと声が重なる。
 ショウは敵の数はまだ多いと状況を見、囲まれたりしないよう注意して――けれど機は逃さず炎に抱かれた人形音楽かたちへと向かう。
 凛と立って披露するのは、先程と同じ。それはショウがいちばん得意な聖歌。
「せいなるかな――」
 幻影の天使が舞い降りる。ひとつ、ふたつ――無邪気に吹き鳴らすラッパは福音ではない。
(「――そういえば、」)
 と、ショウは思い出す。何故、今なのかはわからないけれど。戦いの最中に思い出したのはこのパラドクスが、復讐者に覚醒しはじめて使ったパラドクスであったこと。
 ショウの指先が天使たちを導く。そのひかりの雨で貫く先を。
 降り注ぐのは雨にも似た、悪逆を刺し貫く光の嚆矢。
 人形音楽家たちを捉えたならその身は崩れていくだけ。
 けれど一体がどうにか耐えてその指揮棒を振るう。
 耳を劈くような三重の音が響く――不快な、精神を蝕み崩壊に導く音。
 しかしショウが悲鳴をあげるよりはやく、頭上に戴く硝子めいた天使の輪が雨をふらせて和らげてくれる。
 ――それを授けてくれた聖歌の恩師を思い浮かべ、ショウは瞳を細める。
「ううん、わたしはだいじょうぶ」
 その表情に笑みが浮かぶのは、強がりではなく、こころからのもの。
 傷付くばかりの硝子のこころ、それでも。
 けっして砕けない魂の煌めきを瞳に宿して――そのひび割れたようにも聞こえるその音を。
 今度は掻き消してしまうくらいに歌声を奏であげるショウ。
 反撃のこえを――貴方に、あげる。
 人形音楽家にその歌はどう響くのだろうか。相変わらず指揮棒ふるい奏でる音は、美しい音とは言えない音ばかり。
 人形音楽家をなぎ払い、観客席で悠々と過ごすガブリエルへと秋果は向き直る。
 その視線を感じて、言いたいことがあるのだろうとガブリエルはその言葉を聞く余裕を見せる。
「……ガブリエル。私はあなたの演奏を、あなたの望むようには理解ができない。あなたにとって程度の低い観客でしょう」
 人形音楽家の新手がやってくるのを視界の端に、パネルで遮って。
「でも、表現者の意図しない解釈や感想が生まれるのも芸術の美しさだと思いませんか?」
 私はそう信じています――そう告げて、秋果は観客のパネルの中へと身を投じる。
 では、そう信じる所以を見せてみろと、ガブリエルは笑っていた。
 一体ずつ、確実に倒されていく。
 最後の一体までもが倒れ――エトヴァは優雅な一礼をガブリエルへと向けた。
 實生は真直ぐにガブリエルを見つめ問う。
「……俺はあなたの演奏を理解できそうだろうか」
 ショウも、静かに言葉を向ける。
「わたし達のショー気に入って貰えたかな、マエストロ」
 ショウが告げれば鷹揚に満足だとガブリエルは頷き、ディアボロスたちへと拍手を送る。
「あっという間の見事な演奏。そうだな、次は俺と共に奏でてみせるがいい」
 と――まただ。また、ショウの心の内で何かがさざめく。
 この『堕落のマエストロ』ガブリエルと対した時からそれはさらにつよく、はっきりと。
「これって――」
 ショウの内にあるものが何かを伝えようとしてくるかのように。
 上機嫌のガブリエルは己の持つ鞭を指揮棒代わりに振って、ああ、思い出したと紡ぐ。
「お前の歌は、そう――そう、あの聖歌だ」
 その聖歌は聞いた覚えがある、と。
「嘗て、堕落させ滅ぼした復讐者を思い出す。そう、あれは――甘美なる音の余韻、とても良き時間だった」
 うっとりと紡がれた言葉。それと同時にショウの中で一層、さざめきが強くなった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV3になった!
【水中適応】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【命中アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!

●時空を超えて
 突然、それは起こった。
 ガブリエルの姿が揺らぐとともに、もうひとり現れ、もといたものが掻き消えた。
 ガブリエルはアヴァタール級であった――だが今、ディアボロスたちの前にいるのはクロノス級たる『堕落のマエストロ』ガブリエル。
「どこへ引きずり出されたかと思えば舞台の最中ではないか」
 慌てることなく、状況を即座に飲み込むのはアヴァタール級の記憶も引きつげたからだろうか。ディアボロスたちをゆるりと視線で撫で、ガブリエルは笑み浮かべる。
 このガブリエルにとって、ディアボロスたちは楽しき時間をもたらすもの。嘗て、ディアボロスたちを滅ぼした――その時の記憶が、体験がガブリエルに自信と余裕を持たせる。
 目の前にいるディアボロスたちをまた堕落させ滅ぼしてしまおうと。
「それでは諸君、開演だ!」
 高らかと響くガブリエルの声に緊張が走る。
 そんな中で、囀るように柔らかな声が不思議と聞こえた気がする。

 気を付けて――不利を悟ると全力で逃走するよ。

 それはきっとかつて、このガブリエルと対したディアボロスからのメッセージ。
 淡い少年のような声がディアボロスたちへそっと告げる。それが彼ができる精一杯だったのだろう。
 その声がディアボロス全員に聞こえたのは何故なのかはわからないが――確かなことはひとつ。
 あの『堕落のマエストロ』ガブリエルを倒してと、今ここに過去からの因縁が託されたこと。
九重・古安
いよいよ本命のお出ましか。大物らしく構えていただけはあるようだな。
しかしあの声……不利を悟ると全力で逃走する、か。だが裏を返せばそれまではこの舞台を楽しもうとする。油断や慢心ではなくそういう性質と見た。
故にここは相手の趣向に乗ることで奴を舞台に引き留めつつ、機を見て攻めに転じよう。

……そうだな。大事なものがあるということはそれを失うことの痛みと恐怖があるということ。
過去も記憶も亡くした俺が再び失うのであれば、後に残るものなどないだろう。
現にそれが怖くてイツカの元に駆け付けたわけだしな。その弱さを否定はすまい。

……だが、最初から全て無くして楽になるなどと甘えたことを言うつもりは無いぞ。
大事な相手と寄り添うことでこそ喪失と向き合える。失いたくないからこそ立ち向かえるのだから。
それをイツカに示すためにも……貴様がくれた負の感情、【断迷の大祓】で倍返しにして叩きつけてやる!
逆転劇の盛り上がりも舞台の華というやつだろう? 仲間が退路を塞いで、宿縁を断てるように味方のいる方に敵を押し込むぞ。


近衛・千歳
立場としては露払いが相応しいからねえ。最高の舞台をありがとう。

でも本当に口だけの奴みたいだけど本当に捻くれた奴だねえ。散々楽しんでおいて不利を悟ると全力で逃走すると。こういう天邪鬼タイプは本当に厄介。極めて不本意だけど乗ってやるか。

私はある意味守護者としての立場で究極の立場だけど、裏を返せばなんでも殺すって訳だね。本当に正反対だよ。だからこそ戦える。失うくらいなら全て消えた方がいいもんね。

本当に厄介だよね?でも失くしたくないこそ戦えるんだよ?全て守れるなんて有り得ない。だからこそ手の届く限り守りたい。

本当に目の前の物しか見えないなんて本当に役者らしいねえ。戦友に続いて味方の方へ押し込むように黎明の導きで最高の【高潔の誓い】銃弾で追撃してやろう。流石に急所は無理だけど、肩とか足一本ぐらいは撃ち抜いてやりたい。

そうだね、王道通りの舞台なんてつまらない。どんでん返しの盛り上がりこそ相応しい。お前、役者として大根だよ。さあ、宿縁を断つ舞台の幕開けと行こうか!!


イツカ・ユメ
……声が、聴こえたの
願いを託されたのなら、舞台を降りるわけにはいかないね
さぁ、フィナーレまで楽しんでいってね♪

いつもの歌を口遊みながら、ふと、思う
わたしはいつから、この歌を歌っていたんだろう、って
…時々、夢を見るの
知らない場所、知らない人達、それから、知らないわたし
それが、踏み躙られて、壊される、悪い夢を
大切なものを奪われる怖さも、失う痛みも、もう味わいたくないから
ずっとひとりでいいって、思ったこともあった
でも……また、大好きな居場所や友達が、大切な人が、できたの
今のわたしのいつもの日常を、いつかみたいに失くしてしまわないように
わたしも立ち向かえるよ!
大丈夫、古安くんが示してくれたもの

震える脚と心に気合いを入れて、悪夢も痛みも跳ね飛ばす大声で
叫べ!歌え!
誰かの幸せを、わたしの大好きを、蹂躙させてたまるか!

逃走しようとしたら、退路を塞ぐように【防衛ライン】を展開
ほんの一瞬でも足を止められたら、一気に斬り込んで仲間の方へ押し戻す!
舞台はここから盛り上がるんだから、
途中で席を立つのはダメだよ?


捌碁・秋果
…ありがとう、メッセージは確かに受け取ったよ
皆と連携して敵を逃がさないようにするから

宿縁主の四葩ちゃんをディフェンスするよ!
私は逃走しようとする敵を捕縛することを第一に立ち回ります
パラドクスを使うのも敵が逃走を図った時
それまではレースリボンテープで敵の動きを邪魔したり四葩ちゃんをディフェンスして行動

ガブリエル、残念ですが私に負の感情なんて…
えっ
違う、私は本当にひとりでも大丈夫だから。好きなこともあるし
一人で考えて決める、自立した人間が目標で…
…だって、だって
一度誰かに頼ったら抜け出せなくなりそうで
依存して
そうしたらきっと鬱陶しいって、疎ましく思われて
…嫌われる
やめてよ、やめて…やめろ
(ポケットの美術館の半券に触ろうとする。私の情熱の源泉、拠りどころ)(その時に零れ落ちたダイスの音が私を引き戻す)
…芸術でも情熱でもなく人から貰った『幸運』に守られるなんて

敵が逃走しようとしたらパラドクスを使用
あなたが芸術を愛する同士でも、逃がさない!
葡萄蔓で締め上げて攻撃しつつ皆が攻撃しやすいように捕縛する


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

声を、メッセージを……受け取った
そちらへ一礼し、正装にて対峙
仲間たちと包囲して逃走阻止しよう
戦況を常に観察し
特に、ガブリエルが不利になるタイミング、挙動や視線配りの微細な変化を演技含めて看破する
PD通信にて共有と連携を

俺は舞台の演奏家
音色にて舞台を彩り、奏で続けよう
チェロSeraphimを奏で、仲間と連携しつつPD攻撃
包囲のまま、隙を作りあうように
特にショウさんを援護する

悪夢と苦痛は
仲間たちのいた街が焼けた日なのだろう
苦痛は悲嘆は何よりも、慟哭しか出来ない無力な俺自身のもの
……実のところ記憶は朧
ゆえに悪夢に見る
覚えているのに、気づかぬふりをしているのだと
もうどこかで気づいている
ならば――

耳のピアスの音色に耳を澄まし、正気を保ち忍耐を
そして、味方を勇気づけるよう演奏

音色に奏でるは、透き通る生命讃歌
ならば、この舞台に、世界にひかりを、光を
どこまでも人らしく
弱さも、醜さも、痛みも、苦しみも
悪夢さえ、包んで蕩かす光であれ

悪夢を晴らし、フィナーレに光を


一角・實生
余裕に満ちた敵の振る舞いは先程までの姿と何ら変わりなく――いや
首筋と羽根の生え際がぴりぴりするな
勿論、態度には出さずに

荘厳なフルオーケストラに思い出すのは
血の繋がらない妹の記憶
彼女は歌がうまかった
俺の持つ呪いによく似たちからとは逆の、幸せを運ぶちから

同時に心を蝕み支配するのは
……逃げ出してしまいたい、終わりにしていいんじゃないか
希死念慮にも似た諦念と悲しみ

かつての世界で
血の繋がらない妹は俺の身代わりとなり、望まぬ末路を辿ってしまったというのに
臆病者の俺はのうのうと生きてここにいる

おままごとの関係だったのは分かってる
この背の翼は彼女から奪ったものではなく、ただ種族が変わっただけなのだとも

――けれど、まだ全部飲み込み切れていなくてさ
やるなあ
自嘲しつつ手が震えるよ

それでもグラナトゥムを構えるのは共に立ち向かう仲間がいるから
痛みを抱えているのは俺だけじゃない
パラドクスを発動し自らを奮い立たせよう
大丈夫、いける

逃げない、逃がすつもりもない
牽制の銃撃と共に敵の退路を塞ぐよ

駄目だよ、まだ終わっていない


●前奏
 不思議な事だと、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)も感じる。
(「声を、メッセージを……受け取った」)
 エトヴァはそちらへ一礼し、そして正装にてガブリエルへと対峙する。
 その挙動や視線配り、微細な変化を演技含めてエトヴァは見逃さぬ様観察を。そしてパラドクス通信で皆へと共有を。
 立場としては露払いが相応しいからねえと近衛・千歳(暁紅のチェルカトーレ・g10944)は、最高の舞台をありがとうと笑ってみせる。
「本当に捻くれた奴だねえ」
 口だけの奴みたいだけど、と千歳は思う。散々楽しんでおいて不利を悟ると全力で逃走する。
 聞こえた声が告げた事――こういう天邪鬼タイプは本当に厄介と、千歳は今までの経験から思っていた。
 だから――
「極めて不本意だけど乗ってやるか」
 その思惑に乗る事を千歳は了承するかのように零した。
 そして捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)もその言葉を受け取って改めて、意識をガブリエルへと向ける。
「……ありがとう、メッセージは確かに受け取ったよ」
 逃がさないように――ゆるりと舞台へあがってきたガブリエルから視線を離さない秋果。
 そして、ちらとショウを見る。彼女だ。彼女が何か感じている様に、きっと――と、察して。
「いよいよ本命のお出ましか」
 大物らしく構えていただけはあるようだなと、九重・古安(巻き戻り路逸れる針・g02347)はガブリエルへ向ける視線を細めた。
(「しかしあの声……不利を悟ると全力で逃走する、か」)
 だが裏を返せば――それまではこの舞台を楽しもうとする。油断や慢心ではなくそういう性質と見たと古安は胸中に。
 古安はそうであるならばと自分の動き方を定める。
(「ここは相手の趣向に乗ることで奴を舞台に引き留めつつ、機を見て攻めに転じよう」)
 そしてその隣でイツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)はそっと周囲に視線向けていた。
 先程の声は――気のせいではない。皆にも聞こえていたのだとわかる。
(「……声が、聴こえたの」)
 託された。このクロノヴェーダの最後を紡ぐことを。
「願いを託されたのなら、舞台を降りるわけにはいかないね」
 イツカは、だから表情を引き締め笑み浮かべる。これから舞台で本番迎える演者の笑顔だ。
「さぁ、フィナーレまで楽しんでいってね♪」
 皆へと余裕に満ちた振舞いを見せるガブリエル。その様子は先程までの姿と何ら変わりなく――最初は、そう思っていたが一角・實生(深い潭・g00995)はいや、と瞳を僅かに眇める。
(「首筋と、羽根の生え際がぴりぴりするな」)
 首筋をさすりたくなる。實生はそれを我慢して、グラナトゥムを持つ手を強めた。
 クロノス級クロノヴェーダ、『堕落のマエストロ』ガブリエルが上機嫌に、笑う。

●負が満たす
「それでは開幕だ。御機嫌よう、諸君!」
 ガブリエルがが短鞭の指揮棒ふれば荘厳なるフルオーケストラが現れて演奏を。
 その音楽は――淫蕩に堕落。堕ちることの心地よさを紡ぐ音。
 時に荘厳に、時に柔く。波のように、風のように曲は自由気侭に曲調を変えて揺さぶりをかける。
 聞いた者の心を撫で、時に潤し浸し満たしていく。
 しかしその心を満たすのは負の感情によって。

●諦念と悲しみに苛まれ
 フルオーケストラの奏でる音が實生に告げる。
 軽やかな音は、まるで彼女の歌のようにだろうと。
 彼女――血の繋がらない妹の記憶を思い出せと、まるで彼女がなぞったかのような旋律を實生へ振舞う。
 彼女は歌がうまかった。それは、實生の持つ呪いによく似たちからとは逆の、幸せを運ぶちからだと、思い出させる。
 けれど、同時に心を蝕み支配する感情――それは、何か。
(「……逃げ出してしまいたい、終わりにしていいんじゃないか」)
 その感情を言葉にするなら希死念慮にも似た諦念と悲しみだろうか。
 實生は覚えている。
 かつての世界で、血の繋がらない妹は實生の身代わりとなり、望まぬ末路を辿ってしまったというのに自分は生きている。
 臆病者の俺はのうのうと生きてここにいる――實生の心の中でうずくまる様にその感情はずっとあった。
 彼女との関係が、おままごとのような関係だったのは分かっている。
 實生の背にある翼は、彼女から奪ったものではなく、ただ種族が変わっただけなのだとも――わかっている。
 わかっている。けれど、それを飲み込めているかどうかといえばそれはまた話は別なのだ。
 そう、自分は。突きつけられている。
 わかってはいる。理解はしている。
「――けれど、まだ全部飲み込み切れていなくてさ」
 やるなあ、と。
 實生は自嘲する。その手の震えを感じながらグラナトゥムを構えてみせる。
 狙いは――定められる。
 共に立ち向かう仲間がいることを知っている。
 そして痛みを抱えているのは、自分だけじゃないこともわかる。
「大丈夫、いける」
 自分に言い聞かせるように。そして周囲一体に溶け込ませていた己の呪いの力を、凝縮する。
 狙う――あとは、いつも通りだ。

●依存を厭う
 音楽が奏でられる――彼女に届かせてはいけないと秋果は前に立ってその音を受ける。
 余裕の表情で、その音を受けた。
「ガブリエル、残念ですが私に負の感情なんて……」
 その音を受けても、自分には負の感情なんてないと秋果は思っていたから。
 けれど――
「えっ」
 その音楽が秋果の何かを掻き立てる。
 孤独、嫌悪、己の在り様を否定と肯定を重ねていくように音が乱れて、秋果へ響く。
「違う、私は本当にひとりでも大丈夫だから。好きなこともあるし」
 ふるりと首を横に振る。
 違う、違うと。
 一人で考えて決める、自立した人間が目標で……そうじゃなければいけないのと。
「……だって、だって」
 その先の言葉を、紡がぬようにしたかった。それを言うと堰切って零れ落ちてしまう何かがあるのがわかっているから。
「一度誰かに頼ったら抜け出せなくなりそうで」
 依存して――一番駄目な秋果が表へと出てきてしまう。
 そうしたらきっと鬱陶しいと、疎ましく思われて。
 感情のいきつくさきがどこになるか。
「……嫌われる」
 嫌われる、と零してしまった。その想いがあふれでて心を軋ませる。
「やめてよ、やめて……やめろ」
 秋果はポケットの、美術館の半券に触ろうとする。それは秋果の情熱の源泉であり拠り所。
 ポケットの中から取り出す――けれどそれより、先に。
 舞台の上にかつんかつんと、硬い音たてて転がったもの。
「――あ……」
 転がった三つのダイスに視線が縫いとめられる。そしてふと――それまで抱えていたものが消え去った。
「……芸術でも情熱でもなく人から貰った『幸運』に守られるなんて」
 天に見放されたなら、幸運は自ら作ってしまえ――彼がくれたダイス。
 本当に、その言葉のとおりねと秋果は音を振り払った。

●喪失
 その音楽が古安に改めて、突きつけてくる。
 華やかな曲調から崩れ落ちていくように流れていく音の洪水。
「……そうだな。大事なものがあるということはそれを失うことの痛みと恐怖があるということ」
 その意味を古安は知っている。
 過去も記憶も亡くした古安。もし、再び失うのであれば――後に残るものなどないだろうと。
 喪失。大事なものを失う事。現に、それが怖くてイツカの元に駆け付けた。
 その、自分が持つ弱さを古安は認め、否定はしない。
 オーケストラの演奏が不安をあおる様に震える音を小刻みに。心をささくれ立たせるような音だ。
「……だが、最初から全て無くして楽になるなどと甘えたことを言うつもりは無いぞ」
 大事な相手を寄り添うことでこそ、喪失と向き合える。失いたくないからこそ、立ち向かえる。
 古安はもうそのことを知っている。だからどんなにこの演奏が喪失の不安をあおろうとも、喪失の未来を思わせようとも折れることはない。
 喪失とはもう向き合った。古安には、イツカがいるからそれができた。
 その事をイツカに示すためにも――古安はガブリエルを射抜くように見る。
「貴様がくれた負の感情、【断迷の大祓】で倍返しにして叩きつけてやる!」
 ぐっと握りこむフルスィンガー。
 古安はそれに、今まで与えられたその感情全てをのせた。ここに迷いはないというように――ガブリエルへと振り下ろす。
 人形音楽隊だけではやはり、足りない。
 古安が、イツカが攫われたときいて抱えた想い。そして、喪失を喰らわされたのだ。
 これはもう八つ当たりでは足りないし、八つ当たり以上に真っ当な理由。
 やはりガブリエルにも直接向けておかなければ、気がすまない。

●守護者
 その演奏は荘厳――それは千歳を現すかのよう。何よりも強く、何からも守るような頑強な響きさえある。
 その響きを耳に、千歳はある意味守護者としての立場で、究極の立場だけどと思う。
 けれどそれは、裏を返せば。
「なんでも殺すって訳だね」
 鼻で笑うように零して、本当に正反対だよと思う。
 けれど、だからこそ戦えることも知っている。
 失うくらいなら全て消えた方がいいもんねと笑った途端に曲調が変わる。
 千歳の心を浸す様に、テンポはあがり急いた様子で不安をあおり、崩れていくように音がしぼみ低い音がどろどろと低迷を示すように響き続けていた。
「本当に厄介だよね? でも失くしたくないこそ戦えるんだよ?」
 それは自分にも改めて問う様に千歳は零す。
「全て守れるなんて有り得ない。だからこそ手の届く限り守りたい」
 零れ落ちるものがあることも、理解している。
 負の感情が、千歳の中に沸き起こる。それは精神を削るが――それで折れるほど、千歳は幼くはない。
 だから、と拳を握り千歳は駆ける。その音を振り払い、ガブリエルへと。

●悪夢を映す馬
 ディアボロスたちは簡単に落ちない。
 その事にガブリエルはいいぞと笑う。そして続けて、また仕掛ける。
 次はそう、悪夢を見せてみよというように。
「聞かせてやろう。俺を称賛する喝采を!」
 驪馬の耳をあらわにし、ガブリエルの下肢が、黒き二角獣の四肢へ変貌を遂げる。
 舞台を踏鳴らす鉄蹄は喝采のスタンディング・オベーション。
 勇ましく、何よりも強く響かせるそれが生み出すは悪夢。
「悪夢を見せろ、お前の悪夢を!」
 それを俺が群れとして、嗾けてやろうと高らかに。
 鉄蹄が打ち鳴らす。その音が――悪夢を、呼び起こす。

●夢に浸されず
 戦うべく歌う。それがイツカの戦い方だから。
 でも、ふと。何時もの歌を口遊みながら、ふと、思う。
 わたしはいつから、この歌を歌っていたんだろう――そして耳につく鉄蹄が地を打ち鳴らす音が、それを思い起こさせる。
 時々、見る夢を。
 知らない場所、知らない人達、それから、知らないわたし。
 知らない、どれもこれも知らないというのに。
 それが。踏み躙られて、壊される。
 そんな悪い夢。
 イツカの知らない世界。でも、大切なものを奪われる怖さも、失う痛みも、何度もその夢で味わった。
 でも、もう味わいたくないから。
 だから、ずっとひとりでいいって、思ったこともあった。
 あったけれど、今は違う。
 思い起こされる悪い夢にくらりと世界が回るような感覚。
「でも……また、大好きな居場所や友達が、大切な人が、できたの」
 だから、とイツカは顔を上げる。この夢を写し取り悪夢の馬と為す男へと対する強さを見せて。
 今のわたしのいつもの日常を、いつかみたいに失くしてしまわないように――さっき古安が、彼を苛む音を振り払ったように。
「わたしも立ち向かえるよ!」
 大丈夫、古安くんが示してくれたものと、震える脚と心に気合をいれて。
 悪夢の馬の嘶きが聞こえる。イツカへと向かい暴れる馬脚の音が聞こえてきても真っ向から対して。
 叫べ! 歌え!
 イツカは自分を叱咤して、鼓舞して大きく息を吸い込んだ。
「誰かの幸せを、わたしの大好きを、蹂躙させてたまるか!」
 いつかどこかで聴いた歌。心を燃やし大声で歌う。
「いつか叶う、夢はきっと叶う……こんなところで、諦められるかぁああっ」
 倒れそうになっても気合で踏ん張って、その魂を震わせてやるために。
 あの余裕を見せる淫魔の魂を揺らしてやると、叫び歌う。
 描ける悪夢の馬の群れ。その前足が振り下ろされるのを避けて、避けて。ぶつかってもイツカは立ち上がる。
 描ける馬たちの中に悪夢を見ても、振り払う。
 うしなう夢を、現実にはしたくないから。

●皿の上へ誘う
「メインディッシュは そう、諸君だ」
 とても良いと熱く蕩けた金の眼差しが向けられる。
 黒き幻夢へ捕らえて、悪夢で浸して味付けを。
 しかし素材の味を損なわず調理して、皿の上に出来上がるそれを磨き上げたカラトリーがガブリエルの口へと運ぶ。
 絶命と共にその悪夢が終わる。耐えがたき苦痛を魂に刻んで、ガブリエルは嗤う。

●覚えているかと問う様に
 エトヴァは舞台の演奏家――音色にて舞台を彩り、奏で続けようとチェロを奏でる。
 艶やかな光沢を帯びるチェロより情熱秘めたその音色が奏でられる。弦の上を撫でるように弓が踊る賛歌。
 その曲は確実にガブリエルに痛みを与えている。けれどそれもご機嫌で受け止めて、ガブリエルはその眼差しを向ける。
 熱く蕩けた金の眼差しを――途端、暗転しエトヴァの周囲が焼ける。
 それは仲間たちのいた街が焼けた日の光景なのだと、エトヴァにはすぐわかった。
 苦痛は、悲嘆は。何よりも、慟哭しか出来ない無力な俺自身のものとエトヴァは僅かに表情を硬くする。チェロの音は響いている筈なのに、聞こえてこないような感覚。いやに、その声が響き渡る。
 その声は、本当に俺のものなのだろうか、なんて思う。
 それは実のところ、記憶が朧であいまいだから。だから、ゆえに――悪夢に見る。
 覚えているのに、気づかぬふりをしているのだと――もうどこかで気づいている。
 その事を改めて知らしめようとしているのだろう。
 ならば――と、慟哭に耳を傾けず。エトヴァが意識を向けるのは耳にあるピアスの音色。
 この悪夢も、苦痛も――己を正しく持ち耐えればと。
 そして、この演奏がすべてのエトヴァの気持ちなのだ。味方を、皆を勇気づけるよう演奏を。
 悪夢が消え去り体へと走る痛みは、ガブリエルの持つカトラリーが与えるもの。
 痛みが走る。舌の上で食べられる感覚は死と痛みを受け付けて。
 けれどそれに屈しはしない。エトヴァの耳元で、その音が響く限り。
 ただ静かに響く。それはエトヴァを守る音。

●悪夢も苦痛も何もかも、越えて
「本当に目の前の物しか見えないなんて本当に役者らしいね」
 千歳はその手に黎明の導きを持つ。真紅の望遠鏡兼銃のそれは大切なものを導けるように。
 そして今は――共に戦う戦友たるディアボロスたちと共に戦いを終わりへと導くために放たれる。
「全ての願いに誓って!! 仇なす者を討つ!!」
 千歳は守護者の一族を守るもの。血縁も義理も立場も、全て込めた6人きょうだいの長姉である千歳は、3人の尊敬している親代わりの為に、一人の子の母でもある。
 だから害あるものを討つ必要がある――そんな誓いを込めた強烈な必殺の一撃を銃弾として撃ち放つ。
 狙うは急所だが、肩や足、一本ぐらいは撃ち抜いてやりたいと。
「おっと! ああ、痛みもまた甘美なれば」
 ガブリエルは撃ち抜かれても、この位では楽しみにしかならぬというように笑う。最高の舞台の上では己が身を切ることも必要というように。
「そうだね、王道通りの舞台なんてつまらない」
 どんでん返しの盛り上がりこそ相応しいと千歳は言い放つ。
「お前、役者として大根だよ。さあ、宿縁を断つ舞台の幕開けと行こうか!!」
 千歳は仲間たちの動きをみつつ、ガブリエルを自由にさせ過ぎないように攻撃かけ抑えていく。
 最後が導けるように。
 その戦いの場に奏でられる音。それは透き通る生命賛歌だ。
 エトヴァが奏でるチェロの響き――この舞台に、世界にひかりを、光を。
 どこまでも人らしく。神でなく人へ、生きとし生けるものへ捧ぐ曲。気高く光降りそそぐような旋律を歌う。
 弱さも、醜さも、痛みも、苦しみも。
 悪夢さえ、包んで蕩かす光であれと想いを超えて響く音はこの場を満たす。
 それは悪意を喰らう者の根源さえ照らし、影を溶かし晴らすように。
 悪夢を晴らし、フィナーレに光を。
 エトヴァは自身を苛んでいた悪夢を振り払い、そしてガブリエルへと受けたものを返すように響かせ続ける。
 ガブリエルがははと声上げて笑う。このように心に染み入る音楽――よきものだと、自分が傷を負っても愉快だと。なるほど美味たるのも納得というように。
 その演奏は仲間たちも勢いづかせて。
「もう、一発!!」
 前に進むための、そのための力と古安がフルスインガーでガブリエルを殴りこむ。古安の動きとエトヴァの演奏の盛り上がりが重なった。
 その勢いのまま、押しこんでその動きを制する。
「逆転劇の盛り上がりも舞台の華というやつだろう?」
 退路は塞いだ。
 ガブリエルの動きが一瞬とまる。それは逃げるか、それとももう少し戦うかを天秤にかけていたから。
 しかしその思考の一瞬も隙。
「舞台はここから盛り上がるんだから、途中で席を立つのはダメだよ?」
 わたしの歌をもっと聞いていって! とイツカが歌えば、そのダメージにガブリエルの足が止まる。
 追い込まれている――最上の一口が味わえそうであるのに。
 それは惜しくはあるがここで滅んではこの先の堕落も味わえなくなる。
 出口、とガブリエルの視線が撫でた。
 逃げることも叶うと判断したか足がそちらへ向く。けれど――響いたのは銃撃の音。
「駄目だよ、まだ終わっていない」
 出口へと向いたガブリエルの背に猛禽の鉤爪状の呪いが振り下ろされた。グラナトゥムでの銃撃。牽制もかねたそれは腿を貫いて呪いを抉りこませる。
 呪いがその場に縫い付ける。しかし執念か、ガブリエルは動いた。
 だが、その先に秋果がいる。
 音楽とは違うけれど同じ芸術である美術。新たな絵画を求める欲が形になる。
 心に響く、新しい一枚――尽きぬ絵画への飢えが葡萄の樹となり貪欲に蔓が伸びる。
「あなたが芸術を愛する同士でも、逃がさない!」
 絡めとる。ガブリエルを捕まえて歓ぶように実をつけていく葡萄の樹。
 今、と思うと同時に秋果は彼女を呼ぶ。
「四葩ちゃん!」
 聖歌が響く。それはショウの歌でもあるが、かつての誰かの歌でもあった。
 終曲の、終局を迎えるために。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【腐食】LV1が発生!
【託されし願い】LV2が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV7になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV2になった!

四葩・ショウ
※アドリブ歓迎

ああ、そうか――
そうだったんだね

きかせてよ
貴方の、最期の音楽を

響いたものに旋律を重ねるよに
聖歌を奏であげるけど

くらやみの中、動けなくて
わたしが踠くほど抗うほど
苦しみ続ける家族を
みせつけられる悪夢
なにも出来ないのはもういや、いやなのに

どうして
どうして
ぜんぶ、わたしのせい?

――身の程知らずで愚かな
小鳥(わたし)に似合いの、罰

こころを裂かれてしまったすえ
グラスいっぱいの涙のジュレ

囚われるたび
悪夢ははじめから繰返し、おなじ結末
魂が砕け散るのを望まれて

対峙する指先が
声がふるえる、でも
皆の様子に、誰かのこえに
……わたしが弱気になっちゃ、ダメ
立ち向かうんだと自分を取り戻して

このまま堕ちたら
くるしまないですむとしても
わたしは、あきらめない

敵の負傷が嵩んだら
或いは誰かが痛手を与えたら
敵の退路を断つ位置取りにかえる
まだ、ショーの途中だよ

牽制で冷静さを奪い
仲間と連携して、包囲するように動きたい

託された『復讐劇』を演じきったなら
わたし達の手で
悪夢におわりを
運命さえ変えてしまうよな、真のフィナーレを


●悪夢におわりを
 聞こえた声――四葩・ショウ(After the Rain・g00878)は突然、理解する。
「ああ、そうか――そうだったんだね」
 舞台にあがってきて、他のディアボロスたちも共に戦って。
 ガブリエルの力を削る。そして彼は悪夢を、負の感情を、苦痛と共に再度悪夢をふるまって高らかに笑っていた。
 少しずつ、少しずつ料理するように悪夢の度合いは色濃く深くなっていく。
 それを振り払うように奏でる聖歌。痛手は負っているはずがこれもまた良いとガブリエルは凌ぐ。
 過去に聞いた、この聖歌。これを歌っていたものを堕落させ、貶めて舌の上で転がして。その甘美さに弓引くように瞳細めて笑うのだ。
「ひとりくらいは、頂いていかねばつり合いがとれぬだろう」
 この人数に囲まれたなら自身も危ないことは理解しているが、まだ大丈夫だと嗤っている。
 金の瞳で見定める。そう、やはり一人いただくならば――あれがいいと。
「メインディッシュは そう、君だ」
 君にしよう、その覚えのある歌を再度頂こうと熱く蕩けた金の眼差しでショウを見初める。このような体験は初めてでとても、高揚する、楽しみだと。
 再びこの舌で味わうその聖歌の果てはもっと甘美なものだろうと。
 今までで一番深く味わい深い悪夢を、苦痛を与えてやろうとガブリエルは告げる。
 そして、ショウの目の前はまっくらになる。
 くらやみ――その中で、動けなくなる。
 踠くほど抗うほど苦しみ続けるのは、ショウの家族。
 いつまでも続くその苦しみにどんな顔をして、どんな、声をと――その姿を見ていられなくなる。その声に耳を塞ぎたくなる。
 何も出来ないのはもういや、いやなのに。なにもさせてくれない、することをゆるしてくれない、できないここは悪夢の内とわかるのに振り払うことが赦されない。
 どうして。
 どうして――ぜんぶ、わたしのせい?
 その想いがショウの心を黒く染めて、浸していく。

 ――身の程知らずで愚かな――それは誰の声か。
 小鳥(わたし)に似合いの、罰――その言葉はショウが零したか。

 こころを裂かれてしまったすえ、その見えぬ傷から零れていく。
 ガブリエルがグラスを手にすればいっぱいになる涙のジュレ。
 それをひとすくい、口に運びガブリエルは深き味わいよと舌鼓。しかしまだ、まだもっと深き味わいになるのではないかとその時を待つ。
 悪夢に捕らわれたなら、はじめから繰り返して、同じ結末を迎える。
 何度も、何度も――その魂まで砕け散って、皿の上に乗るのをガブリエルは切望する。
 けれど――ショウの心は、魂は砕け散らない。
 対峙する指先が、声が震える。歌う声が微かに途切れ――歌えなくなる。
 聖歌の響きが途切れ、歌えない一瞬に喉がつまった。
 しかし、声が聞こえる。音が聞こえる。曲が聞こえる。
「舞台はここから盛り上がるんだから、途中で席を立つのはダメだよ?」
 それは仲間たちからの響き。ガブリエルを共に追い詰める仲間たちの、声だ。
 チェロの音色が、曲を思い出させるように聞こえてきた。
 視界の中に、倒すべき相手の姿が入ってくる。銃撃の音で目が覚める想い。
「四葩ちゃん!」
 それは、わたしの――ショウは瞳を開く。
「……わたしが弱気になっちゃ、ダメ」
 立ち向かうんだとショウは自分を取り戻す。
 このまま歌えなくなるのは望むところではなく。
 このまま堕ちたら――くるしまないですむとしても、それは望みたくない。
 だって――聖歌が、聞こえているから。
「わたしは、あきらめない」
 彼の歌声は、ショウに響く。
 己と同じ終わりを迎えてはいけないと、立たせるために。
 そしてここで、己の命奪った相手を、倒してほしいとずっと言っている。
「まだ、ショーの途中だよ」
 己がくらやみに、悪夢に捕らわれている間にも、仲間たちは戦って、追い詰めて。
 ガブリエル自身もきわどいタイミングだとわかっているのだろう。
 ガブリエルは逃げるか、それとももう少しで完成しそうな一皿を味わってから逃げるかを今、天秤にかけていた。
 だから、正面へ――ここにいるよと、示してみせた。皆が導いてもくれたのだから。
「きかせてよ。貴方の、最期の音楽を」
 それはガブリエルに対しての言葉か――それとも、共にと願ったか。
 うたが、きこえる。
 それは自分の内から零れていく聖歌だ。それはショウだけに聞こえている聖歌。
 響くものに、旋律をあわせてショウも、奏でる。
 手を伸ばし、微笑んで。やさしく口遊む聖歌は、ララバイのように。
 こころに暗闇を、堕としきるまでもう少しかと。そこまで追い込んだはずであったのに、目の前でショウはそれを一切感じさせずに響かせる。
 他者へと捧げる献身が、ひらり花開くように。身に纏う光は、ちからを与え、花心たる乙女を護り揺蕩うドレスそのもの。
 その唇から零れる静謐なる歌声がその心を抱擁し、慈しみ、はなさない。
 それが、たとえクロノヴェーダであっても。
 その慈しみに抱かれたガブリエルは、その場に膝をつき、おおと感嘆の声を零す。
 あの聖歌と同じ響き。いや違う響きかと――感じたことのない感覚に聞き入って、そうっと瞳伏せ思うままに感じる。
 芸術、これは芸術たる音楽であるとその心を満たすように。今までガブリエルの心を満たしてきたものとは違う幸福感。
 けれど、だからこそ気付かない。破滅に――終わりに。
 満たされた表情をしている。そう在る事はクロノヴェーダに与える最後として正しいのかどうかはわからない。
 だが嘗て――このガブリエルが屈服させた聖歌に、今度は満たされ終わりを迎える。
 それはきっと、託した誰かにとって――復讐たるものと思えた。
 ガブリエルの最後はあっけなく。しかし、嘗ての誰かにとってはきっと大事な、一瞬。
「悪夢におわりを」
 幕が下りる――『堕落のマエストロ』ガブリエルの、終わり。
 誰かの未練、復讐も同時に終わるのだ。そしてショウが感じていたさざめきは消えていく。
 終わりをありがとう――そうさいごに、紡いで。
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効果1【悲劇感知】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV8になった!

最終結果:成功

完成日2024年04月04日
宿敵 『『堕落のマエストロ』ガブリエル』を撃破!