リプレイ
ハーリス・アルアビド
各地でディアボロスの進攻が続き、強力なジェネラル級も討ち取られていると言うのに呑気なものです。
【アイテムポケット】で酒と食糧、そして板を合わせて作る簡易的な台車を持ち込み、台車に酒を乗せて向かいましょう。
アヌビスの頭飾りを被り、その上から砂避けの目立たぬ外套とフードをまとってウェアキャットに見目を寄せます。
もし、こちらがアリストテレス様がいらっしゃる駐屯地でしょうか?私は行商をしている者なのですが、この度は光栄にもシトリー様より駐屯地にいらっしゃる皆さんの慰めにと、酒や食べ物を届けに参りました。どうかお受け取りください。
皆さんにお届けしたいと駐屯地を回りながら周辺を【偵察】し、敵の配置や巡回が行われているか、その順路は決まっているかなど【情報収集】を行います。
芸事などを用いて潜入される方がいらっしゃれば私が神事や慰みに使っていたハープでの【演奏】など、協力を申し出ます。
羅・犹龍
(連携アドリブ歓迎)
賑やかで可愛らしい子たちですね
とはいえ、えぇ、えぇ、斃さねばならぬ敵である以上油断は出来かねるというのはわかっておりますよ。
さて、旅芸人に扮し野営地を訪れさせていただきましょうか
衣服は最寄りの街で用立てておきましょう、地域に溶け込む努力は必要ですよね
このような荒野にて任務を行う兵の方々がいらっしゃると聞き、その御身の無聊を癒しにまいりました。どうか、私の芸を買ってはいただけませんか?
さる東方より流れ着いた世にも珍しき絡繰りの大鷲の舞をご覧くださいませ。
駐屯地へ入ることができたのであれば仙騎『碧雲』を操り、芸を見せるとしましょうか。
風を操り、篝火の光に舞う翡翠の大鷲はさぞ物珍しいものとなるでしょう
一匹でも多くのオタマジャクシが此方へ引き付けられてくれたのであれば
他の皆様の助けになるでしょうからね
●序幕
レールなど敷かれていない荒涼たる大地の片隅に、JR山手線の車両に似た列車が停まっていた。
異様な光景ではあるが、その列車がパラドクストレインとなれば、話は別だ。
「令震さんの話によると、敵のトループス級はだらけきっているのだとか……」
「はい。呑気なものですね」
車両側面に並ぶ黄緑色の扉が一斉に開き、二人のディアボロスがそのうちの一つから降り立った。
女性的な顔立ちをした鬼人の青年――羅・犹龍(仙薬・熠雲・g10977)。
琥珀色の肌をした長身の男――ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)。
「呑気なものですね」
先程の言葉を繰り返しながら、ハーリスは彼方に目をやった。夜の闇の中にあっても地平線を視認することができる。ごく一部が橙色に染まっているからだ。それは亜人たちの駐屯地の灯り。
「各地でディアボロスの進攻が続き、強力なジェネラル級も討ち取られているというのに……」
「しかし、我々にとっては好都合です」
と、犹龍が言った。
「敵のだらけ振りに付け入らせてもらいましょう」
●羅・犹龍(仙薬・熠雲・g10977)
私とハーリスさんは敵の駐屯地に向かって歩き出しました。
真夜中の荒野を行く二人連れ――そう聞くと、静寂に包まれた情景が思い浮かぶかもしれません。しかし、私が置かれている状況はそこそこ賑やかです。駐屯地からは喧噪が風に乗って流れてきますし、すぐ横からはガタゴトいう音が絶え間なく聞こえてきますから。
『ガタゴト』の発生源は、ハーリスさんが押している台車です。そこに積まれているのは、アイテムポケットに詰めてきた大量の酒。
ハーリスさんの出で立ちは蹂躙戦記イスカンダル風の頭巾と外套です。犬の頭を模した被り物を頭巾の下につけているので、頭頂には一対の突起が生じています。ウェアキャットの耳のように。
私の衣装もイスカンダルの文化に即したものです。ディアボロスの外見がディヴィジョンの住人に違和感を与えることはないのですが、今回の相手はクロノヴェーダなのですから、こういった工夫は必要ですよね。
ほどなくして、駐屯地である天幕群の前に到着しました。
「そこで止まれっ!」
緊迫感のある警告が緊張感のない声で発せられたかと思うと、オタマジャクシを戯画化したような姿のトループス級たちが姿を現しました。数は三体。
彼らは私とハーリスさんの前に立ち塞がりました。だらけきっていると聞いていましたが、最低限の警備活動はしていたようです。
「やいやいやい! おまえら、ここをどこだと思ってる!」
「『まじめ』『物知り』『メンタルつよつよ』の3Mな大賢者アリストテレス様が指揮する駐屯地だぞー!」
「ヘボい民間人は立ち入り禁止! さっさと立ち去れーい!」
つぶらな瞳で我々を睨みつけ、ぴょんぴょんと飛び跳ねています。本人たちは凄んでいるつもりなのかもしれません。
「ここにアリストテレス様がいらっしゃることは存じております」
そう言って、ハーリスさんが恭しく一礼しました。
「私は行商を営んでおりまして……皆様が仰ったとおりの『ヘボい民間人』に過ぎないのですが、この度は光栄にもシトリー様より命を受け、駐屯地にいらっしゃる皆様のお慰めに酒や食べ物を届けに参りました」
それを聞いたトループス級たちは――
「差し入れだー! やっほぉぉぉーい!」
「さっすが、シトリー様! 気が利くぅ! 器が大っきい!」
「『めんどくさい』『モラハラ常習』『マウント取りたがり』の3Mなアリストレテス様にも見習ってほしいよねー!」
――あっさり信じて大はしゃぎ。
とはいえ、それは一時のこと。興奮の波が過ぎ去ると、彼らは口々に不満を述べました。
「でも、お酒だけでは意味がなーい!」
「亜人は酒のみにて生くるものにあらず!」
「どうせなら、僕たちの推し様を派遣してほしかったー!」
どうやら、私の出番のようですね。
「その点なら、御心配なく。私は芸事を売りにしている者です」
先程のハーリスさんに倣い、私は恭しく頭を下げてみせました。
「このような荒野にて任務に従事されている方々がいらっしゃると聞き、無聊を癒すために参りました」
すると、トループス級たちは――
「やったー! 癒して、癒してー!」
「無聊よ、さらば! グッバイ、退屈!」
「れっつぱーりぃ!」
――またもや狂喜乱舞。
なんとも賑やかで可愛らしい子たちですね。とはいえ……ええ、斃さねばならぬ敵であるということはよく判っております。油断をするつもりも慈悲をかけるつもりもありませんよ。
●ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)
「じゃあ、こっちに来てよー」
私と犹龍さんを促して、トループス級たちは歩き出しました。正確には歩いているのではなく、飛び跳ねて移動しているのですが……。
彼らの後についていきながら、私は駐屯地内の様子を観察し、またなにげない調子で話しかけて警備の状況を聞き出しました(実に容易でした。三体とも口が軽かったので)。
もっとも、得られた情報を活かす機会はないかもしれません。
駐屯地の中心の辺りに到着するやいなや、そのトループス級たちは――
「おーい! 全員集合!」
「シトリー様からの陣中見舞いだぞー!」
「お酒がいっぱい! それに芸人もいるよー!」
――大声で仲間たちに呼びかけたのですから。
あっという間に人だかりならぬオタマジャクシだかりが出来ました。駐屯地のすべてのトループス級が集まってきたようです。こうなると、警備もなにもあったものじゃありませんね。この時点で目的の半分は達したも同然です。
私は、台車に積んできた酒を配りました。
それらをちびちびと舐めながら、期待と値踏みの眼差しを犹龍さんへと向けるトループス級たち。黒目がち(というか、全体が黒目です)な丸い瞳だけで表情豊かに『値踏み』や『期待』を示せるですから、たいしたものです。
彼らの視線の収束地点にいる犹龍さんが行動を起こしました。目的の残り半分を果たすために。
「芸と呼ぶには拙すぎるかもしれませんが――」
翡翠色の大きな鷲の像を掲げ、その場でぐるりと回って皆によく見せた後、地面に置きました。
「――東方より流れ着いた世にも珍しき絡繰りの大鷲の舞を御覧に入れましょう」
言い終えると同時に鷲の背に乗る犹龍さん。
すると、翡翠の鷲はふわりと舞い上がりました。どうやら、火刑戦旗ラ・ピュセルの魔法の箒に相当する道具のようです。
淡い星の光を上から浴び、篝火の灯りに下から照らされて、鷲は皆の頭上を悠々と飛び回りました。
トループス級たちは酒を飲むのも忘れ、口をあんぐりと開けて、その様子を見上げています。有翼の亜人やハングライダー等で飛ぶ亜人を見たことはあるでしょうが、このような形での飛行を目にするのは初めてなのかもしれません。
これだけでも充分ですが、私も少しばかりお手伝いしましょう。神事や慰みに用いている小型のハープを取り出して……演奏を開始。
弦の調べが流れると、それに合わせるように犹龍さんは鷲の動きを次々と変化させました。大きな翼を傾けて旋回し、嘴を空に向けて上昇し、獲物に襲いかかるように急降下。
そうしているうちにトループス級たちは放心状態から脱しました。
そして、やんややんやの大喝采。
「すごーい! この飛び方は推せる!」
「BGMもサイコー!」
「僕も立派なカエルに変態した暁には、あんな風にカッコよく飛びたいなー」
いえ、蛙は空を飛べませんよ?
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
●幕間
犹龍を乗せて舞う大鷲を眺めながら、ハーリスの奏でる音楽を聴きながら、オタマジャクシ歌劇団は飲酒を再開していた(未成年者はいないらしい)。この見世物が始まる前は舐めるように飲んでいたが、今は違う。浴びるように飲んでいる。『ように』ではなく、本当に頭から浴びている者までいる始末。
一方、アヴァタール級のアリストテレスは天幕に籠もったままだった。バカ騒ぎに興じる部下たちを戒めるつもりはないらしい。もちろん、バカ騒ぎに加わるつもりもないだろう。
「ひゃっほー!」
「シトリー様、ばんざーい!」
「踊りたくなってきちゃったー!」
陽気にはしゃぐ歌劇団の面々。さながら、戦勝祝いである。バビロンを奪回できたわけでもないのに。それ以前に出撃すらしていないのに。
しかし、この偽りの戦勝祝いも長くは続かないだろう。
駐屯地に潜入したディアボロスたちが牙を剥こうとしているのだから。
六條・真冬
(トレインチケット)
●幕間(承前)
浮かれ騒ぐオタマジャクシ歌劇団。
その様子を二人の男が後方から窺っていた。
ドミノマスクで目元を隠した三十がらみのデーモン――クルエント・パトゥミエーラ(紅いゴミ箱・g03495)。
銀色の瞳を有した二十歳前後の青年――六條・真冬(ペンギンつき時先案内人・g03491)。
両者ともにサーヴァントを伴っている。クルエントはメーラーデーモン、真冬はダンジョンペンギン。
「ふふっ……」
クルエントが静かにほくそ笑む。
「ハーリスちゃんと犹龍ちゃんのおかげで、簡単に忍び込むことができたわね」
「……お、おう」
真冬は頷いた。反応が少し遅れたのは当惑のせいだ。愚直なまでに男らしさにこだわる真冬からすれば、『オネエ言葉で話す中年男(仮面つき)』という存在は異星人も同然なのである。
彼の戸惑い振りを気にする様子も見せず、クルエントは言った。
「それにしても、可愛いオタマジャクシたちね。攻撃の手が鈍っちゃいそう」
「あんなもん、可愛くもなんともねえよ」
強い調子で否定する真冬。先程と違って、タイムラグはない。
「可愛くもなんともねえよ」
真冬は同じ言葉を繰り返した。
自分に言い聞かせるように。
●クルエント・パトゥミエーラ(紅いゴミ箱・g03495)
「きゅいきゅいー!」
ボンボン&フラップ付きニット帽が似合うダンジョンペンギンのマナトちゃんが真冬ちゃんの足下で鳴いた。御主人様に同調して『そうだ、そうだ! 可愛くないぞー!』とか言ってるつもりなのかしらん?
「めぇー」
私の頭の上でメーラーデーモンの黒い子山羊ちゃんも鳴いた。『本当は可愛いって思ってるくせにー』なんてことを言ってると見た。
「まあ、百歩ゆずって、あいつらが可愛かったとしても――」
真冬ちゃんは体をぐっと沈めた。
「――俺は容赦しないぜ」
そして、ダッシュ! 宴会を続けてるオタマジャクシちゃんたちに向かって一直線に進んでいく。言っとくけど、『一直線』っていうのは誇張じゃないわよ。本当にまっすぐ走ってるの。進路上に篝火があったんだけど、思い切り蹴倒してるし。
篝火が倒れた音を耳にしたのか、それとも真冬ちゃんの殺気を感じ取ったのか、敵のうちの二体が――
「……ん?」
「どったの?」
――と、振り返った。
ほぼ同時に真冬ちゃんが金属の棒を力いっぱいスイング! 宣言通り、容赦なし……って、どこから棒を持ち出したの? 走り出した時は徒手空拳だったはずだけど?
まあ、それはさておき、その攻撃は見事に命中。
「きゃいーん!?」
「どひぃーん!?」
哀れな二体のオタマジャクシちゃんは悲鳴のエコーを残してフッ飛んだ。
それが戦いの合図となり、他のオタマジャクシちゃんたちは宴会気分から覚め、真冬ちゃんに攻撃を――
「うぇぇぇーっ!? 誰かがいきなり飛んでちゃったぞー!」
「いったい、なにが起こったのぉーっ!?」
「地震!? 雷!? 火事!? カエル!?」
――仕掛けるかと思いきや、皆そろってパニくってるわ。
だけど、攻撃を受けた二体のオタマジャクシちゃんは別よ。どこかにフッ飛ばされたにもかかわらず(逆説連鎖戦の不条理なる条理に従って)真冬ちゃんのすぐ目の前に再出現して、反撃のパラドクスを繰り出した。
「なにすんだよ、こんにゃろー!」
「さてはおまえ、ディアボロスだなー!」
それは相手にのしかかるパラドクス。『のしかかる』と言っても、ちっちゃなボールみたいな体をしてるから、ちょこんと乗っかってるようにしか見えないけどね。
「めぇーっ!」
「きゅいーん!」
黒い子山羊ちゃんとマナトちゃんが翼をパタパタさせて声援を送ると――
「おらぁーっ!」
――それに応えるかのように真冬ちゃんは棒を振るい、二体のおたまじゃくしちゃんたちを体から叩き落した。
あ? 今になって判った。あの棒の正体は、篝火を支えていた脚だわ。蹴倒した時に手に取ったのね。そこらへんにある物を武器にする『ストリートストライク』ってやつかしら?
●六條・真冬(ペンギンつき時先案内人・g03491)
俺は鉄だか銅だかの棒で以て、二匹のオタマジャクシをかたづけた。
慌てふためいていた他のオタマジャクシどももさすがに事態を把握することができたらしい。だが、そいつらが戦闘態勢を取るより先に――
「アタシも暴れさせてもらうわよー」
――クルエントが戦場に乱入してきた。
目についたオタマジャクシを棒で殴りつつ、俺はクルエントのほうをチラリと一瞥……したつもりだったんだが、一瞥では済ませられなかった。思わず二度見しちまったぜ。
だって、奴の傍には大きなコピー機が存在感たっぷりに鎮座していたんだから。パラドクスで召喚したのか? アイテムポケットで持ち込んできたのか? ……なんにせよ、戦場には不釣り合いな代物だ。
「おい、クルエント。なんだ、そりゃ?」
「ドットちゃんよ」
答えになってない答えを返して、クルエントはコピー機をぴしゃりと叩いた。
「さあ、ドットちゃん! ぶちかまして!」
『PI,PI,PI,攻撃開始』
コピー機が電子音声を発したかと思うと……いきなり、爆発した!
あ? 違った。爆発したように見えたのは、小型のミサイルをやたらめったら撃ち出して、発射煙に包まれたからだ。
ミサイル群の標的となったのは、たった一匹のオタマジャクシ。すべてのミサイルを小さい体に受け、そいつは粉微塵になっちまった。悲鳴を発する間もなく。
「よくもやったなぁーっ!」
と、何匹かのオタマジャクシどもが悲鳴の代わりに怒声を発した。
そして、クルエントを素早く取り囲み――
「押忍、押忍、押忍♪ 推して参るぞ、歌劇団♪」
「どんなに道が暗くても♪ 僕らは決して迷わない♪」
「推し様という名のお星様♪ 光を灯してくれるのさ♪」
――元気に歌い出した。
それはパラドクスだったらしい。四方から歌声を浴びたクルエントの体のそこかしこに傷が生じた。
にもかかわらず、クルエントは余裕綽々。
「あら、素敵な歌声だこと。ドットちゃん、この子たちにおひねりをあげちゃってー」
『PI,PI,PI』
コピー機がまたミサイル群を吐き出した。さっきみたいに一点集中じゃない。歌っていたすべてのオタマジャクシに反撃、反撃、また反撃。それにしても、歌うオタマジャクシとか、ミサイルを撃つコピー機とか……カオスってレベルじゃねえぞ。
「ほらほら、真冬ちゃん」
と、カオスの権化みたいなクルエントがウインクを送ってきた。
「アタシの華麗な戦い振りに見とれてないで、しっかり手を動かしなさい。敵はまだまだ残ってるんだから」
見とれてねえよ! あと、ちゃん付けで呼ぶな!
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【修復加速】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
●幕間
戦場に新たなディアボロスが現れた。
無双馬に乗った人型ドラゴニアンの青年――時先案内人のロナルド・ハーキュリー(ドラゴニアンの撃竜騎士・g03319)。
トタンのバケツを左手に下げた小柄な少女――零式英霊機のチムチム・ベイチモ(Ghost ship of the Arctic・g09860)。
「やってるな」
馬上から戦場を見回し、ロナルドはニヤリと笑った。
「やってるね」
チムチムの顔に笑みはない。オタマジャクシの亜人たちに向けられた眼差しも物憂げなものだった。
「このトループス級たちはちょっと可愛らしい姿をしているけれど、色々とめんどくさそうな相手だね」
「いや、べつに可愛くないだろ」
ロナルドは即座に否定した。少し前に別の時先案内人が同じような言葉を口にしたことは知るまい。
「仮に可愛いとしてもだ……馬の可愛さには敵わないぜ! 馬ってのは宇宙一可愛い存在だからな!」
「ふーん」
ロナルドの熱弁を右から左へと受け流すチムチムであった。
●チムチム・ベイチモ(Ghost ship of the Arctic・g09860)
ぼくは荒事があまり好きじゃない。めんどくさい上に危険だし……今すぐ回れ右して逃げ出したい気分だよ。
でも、ロナルドくんは違うみたい。
「覚悟しろ、オタマジャクども! 一匹残らず蹴散らして、蹄鉄の錆にしてやるぜ!」
闘志の炎をめらめらと燃やしてる。彼を乗せてる無双馬も文字通り鼻息を荒くしてるね。
もっとも、鼻息の荒さではオタマジャクシの亜人たちも負けてない。
「おまえごときに蹴散らされたりしないよーだ!」
「逆にこっちが蹴散らしてやらい! いや、圧してやらい!」
「圧して、押して、推しまくっちゃうぞぉーっ!」
いや、敵を推しちゃダメだよね? ……と、ツッコミをいれる間もあらばこそ、何匹かのオタマジャクシが一列横隊をつくった。
そして、ロナルドくんめがけて――
「押忍、押忍、押忍♪ 過激に参るぞ、歌劇団♪」
「どんなに道が遠くても♪ 僕らは決して止まらない♪」
「推し様という名のお日様が♪ 未来を照らしてくれるから♪」
――合唱のパラドクスをぶつけた。
ここに来るまでの間にも同じような歌が聞こえてきたけど(先行したディアボロスにぶつけていたんだろうね)、歌詞がちょっと変わってるような気がする。もしかして、いろんなヴァージョンがあるのかな。
集中砲火ならぬ集中咆歌を浴びたことによって、ロナルドくんの体にいくつもの傷が生じて、血が流れ出した。でも、怯む様子はない。闘志のめらめら度はキープ……どころか、更に上昇してるかも?
「うっ! せぇ! わぁーっ!」
「ひひーん!」
ロナルドくんは無双馬と一緒に叫び、歌声を吹き飛ばした。
そして、歌声の主たちも吹き飛ばすべく、反撃のパラドクスを繰り出した。
「秘技! 嵐鳥・ウミツバメェーッ!」
無双馬を駆り、合唱隊めがけて疾走。一列横隊の中央を突き破ったかと思うと、すぐさま方向を転換して右から左へ、馬首を翻して左から右へ……といった具合に動き回り、オタマジャクシたちを次々と撥ね飛ばしていった。
●ロナルド・ハーキュリー(ドラゴニアンの撃竜騎士・g03319)
「続けて行くぞぉーっ!」
珍妙な歌を聴かせてくれやがった連中を蹂躙した後、俺は再び『嵐鳥・ウミツバメ』で以て吶喊した(さっきのは反撃だが、これはこっちからの攻撃だ)。結果、三体ほどのオタマジャクシが愛馬『ペペ』に弾き飛ばされ、くたばった。きっと、人の恋路を邪魔したことがあるんだろう。
別のオタマジャクシたちがまた合唱のパラドクスをぶつけてきたので、『嵐鳥・ウミツバメ』で反撃し、続けざまに攻撃し、また反撃して……ってなことを繰り返しつつ、チムチムの様子を伺ってみた。
「言っとくけど、ぼくに手出ししないほうがいいよ」
と、奴はオタマジャクシたちに語りかけていた。
「ちっとも面白い結果にならないからね。そう、ぼくがやられるだけ」
本気でそんなことを言ってるのかどうかは判らないが、オタマジャクシたちは真に受けたらしい。チムチムのことを思い切り嘲笑し、次々に挑発した。
「そりゃあ、確かに面白くないねー! でも、見逃してやんないよーだ!」
「一方的にやられたくないのなら、抵抗してみろっての!」
「へいへい! ディアボロス、ビビってるぅー!」
そして、チムチムを取り囲み、囃して立てるように踊り出した。丸っこい体に似合わぬとも似つかわしいとも言えるキレッキレの激しいダンス。もちろん、それはただのダンスじゃなくて、パラドクスだった。歌を聴かされた時の俺と同様、中心にいるチムチムはダメージを受けているようだ。
だけども、ちっこい零式英霊機は痛みに呻く代わりに――
「やれやれ……」
――めんどくさそうに溜息をつき、反撃に転じた。
ゆっくりと右手が動く。腰に差した軍刀の柄へと……あら? 柄を素通りして、左手に下げていたバケツの中に突っ込まれたぞ。
「ごめん。やっぱり、『ぼくがやられるだけ』という予言は外れそうだ」
そう言うなり、チムチムはバケツからなにかを取り出し、オタマクジャクシのダンサーたちに投げつけた。
その『なにか』はダンサーの一匹に命中し、物凄い勢いで跳ね返ってチムチムの手に戻ったかと思うと、また別のダンサーに向かって投げられ、そいつに命中して跳ね返り、今度は三匹目のダンサーめがけて……と、新宿島で売っているナンタラボールとかいうゴム製玩具もビックリの反発力を見せてくれた。
だが、真に注目すべきは反発力よりも破壊力だ。『なにか』を食らったダンサーたちは一匹残らず弾き飛ばされた。ペペに蹴飛ばされた時よりも激しく。
「ご苦労さん」
一通り反撃を終え、チムチムは労った。
手の中に返ってきた『なにか』――アクアスライムを。
そう、奴は自分のサーヴァントをブン投げたんだ。
なんつうか……すげえパラドクスだぜ。俺には真似できそうもない。心情的にも物理的にもな。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【落下耐性】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【先行率アップ】がLV2になった!
ハーリス・アルアビド
幼体の姿ゆえにでしょうか。あどけない様に毒気が抜かれてしまいそうですが、亜人の生は蹂躙された人々の上にあるもの。逃す理由にはなりません。
道を切り開くものウプウアトよ、お力添えを。矢よりも鋭く駆ける足と鋭い牙にて、勝利へとお導き下さい。
祈りを捧げ仲間達への【幸運】を願い、この戦の勝利を誓いましょう。
【不意打ち】で仕留められるだけ仕留めます。【残像】を生み出す速度で駆け、近くにいる敵を片付けた後は一旦その場から離れ物陰へ。【忍び足】で追ってきた敵の死角へ回り込み【不意打ち】します。
仲間の行動を阻害せず連携できるよう状況を見ながら敵を仲間の罠や攻撃、または物陰に誘い込み始末して行きましょう。
●幕間
喊声や悲鳴や怒号が飛び交う乱戦の中にあって、ただ一人、静かに佇んでいる者がいた。
ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)である。
ディアボロスと激闘を繰り広げている(といっても、歌ったり踊ったりしているようにしか見えないが)オタマジャクシ歌劇団の面々もハーリスには手を出さずにいた。彼のことをただの行商人だと思い込んでいるからだ。
「道を切り開くものウプウアトよ、お力添えを……」
ハーリスは目を閉じ、神に祈りを捧げた。当人にしか聞こえぬほど小さな声で。
「矢よりも鋭く駆ける足と鋭い牙にて、勝利へとお導きください……」
祈りを終えて目を再び開いた時、彼の顔付きは変わっていた。
行商人のそれからディアボロスのそれへと。
●ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)
私は、獣爪籠手を左右の腕に装着しました。それはアヌビス神の頭部を象った籠手であり、口吻の両脇から伸びている爪は牙のようにも見えます。古の時代に生きていたという剣歯虎のそれのごとき長大な牙。
「ふっ……」
と、小さく息を吐き、私は走り出しました。
標的に定めたのは二体のトループス級。どちらも他のディアボロスたちとの戦いに集注しているため、私の接近には気付いていないようです。
後方から迫り、左右一対計六本の爪/牙で無防備な丸い背中を斬り裂くと――
「んきゃ!?」
「ひぎっ!?」
――短い苦鳴がこぼれ、血飛沫が散りました。反撃はありません。この攻撃で息絶えたのですから。
おそらく、彼らが死ぬ瞬間を捉えた者もいないでしょう。それほどまでに私の動きは素早いものでした。まさに飛ぶような速さ。このような人間離れした力が出せるのも、『道を切り開くもの』たる軍神ウプアウトへの祈り(によって発動したパラドクス)のおかげです。
天幕の陰に駆け込み、呼吸を整えた後に再出撃。またもや二体のトループス級を仕留め、先程とは別の天幕の陰に隠れ、三度目の奇襲……を仕掛けようとしたところで、何体かの敵に気付かれてしまいました。
「わわっ!? あの行商人が物騒な爪なんか付けちゃってるぞー! 戦いの空気に当てられて乱心しちゃったのかー!」
「でも、正気に戻してあげる余裕はないよー! かといって、放っておくのは危険だしー!」
「かわいそうだけど、ディアボロスもろとも倒すしかなーい!」
この期に及んで、私のことをまだ行商人だと思っているようです。しかも、『かわいそう』などと同情までしています。うーむ……こちらとしては複雑な心境ですね。
もっとも、トループス級たちの戦意が同情のせいで鈍ることはありませんでした。瞬時に私の前に並んだかと思うと――
「カエルに変わるにゃ、まだまだかかる♪」
「それでも僕たちは奮い立ち、独り立ちして仁王立ち♪」
「オタマジャクシと侮るな♪ おったまげるほどパワフルだ♪」
――歌いながら、パラドクスの舞踏を披露しました。実に見事な踊りっぷり。つい数分前まで飲酒していたとは思えないほど切れのある動きです。
しかし、オシカツとやらで鍛えられたであろうその技術もウプウアトの恩寵には及びませんでした。舞踏がもたらす謎の力を私は難なく躱すことができました。
そして、剣歯虎の牙のごときアヌビスの爪で反撃。
先程までのように背中からではなく、正面から。
そのあどけない姿と改めて対峙した時……ほんの一瞬ですが、殺意が萎えそうになりました。
しかし、爪は止まりませんでした。
そう、あどけない姿をしていることも、名もなき行商人に同情したことも、彼らを見逃す理由にはなりません。
亜人たちの生は、蹂躙された人々の上にあるものなのですから。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【狼変身】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
幕間
駐留地内の喧噪に対して我関せずという態度を取り続けていたアリストテレス。
しかし、ついに堪忍袋の緒が切れたのか、天幕越しに叱責の声を飛ばしてきた。
「静かにしないか! やかましいのは毎夜のことだが、今夜の騒ぎは度が過ぎるぞ! さっさと寝床に入れ!」
修学旅行の夜に生徒たちの部屋の見回りをしている教師のごとき言動である。天幕の外で戦闘が繰り広げられていることに気付いていないらしい。
「な゛っ!?」
「に゛っ!?」
「ぬ゛ぅぅぅーん……」
と、何体かの生徒ならぬオタマジャクシが声を発したが、教師ならぬアリストテレスの言葉に反応したわけではない。それは断末魔の呻き。ハーリスの獣爪籠手や他のディアボロスのパラドクスでとどめを刺されたのだ。
そのオタマジャクシたち個人だけでなく、部隊そのものがとどめを刺された。生きているオタマジャクシはもういない。
戦いに一区切りがついたため、駐屯地に静寂が訪れた。
誰より静寂を求めていたアリストテレスであるが、この状況に違和感を覚えたのか――
「……なにかあったのか?」
――天幕の入り口を開け、亜人らしからぬ理知的な顔を覗かせた。
そして、累々と転がるオタマジャクたちの死体と返り血にまみれて立つディアボロスたちの姿を認め、暫し絶句した。
もっとも、この『暫し』は一秒にも満たない。その短い時間のうちに彼はすべてを理解したらしい。
「ディアボロスの襲撃か……」
そう呟くと、『『まじめ』『ものしり』『メンタルつよつよ』の3M』とオタマジャクシたちに評されたアヴァタール級は天幕の外に出た。
「なんと不甲斐ない連中だ」
『『めんどくさい』『モラハラ常習』『マウント取りたがり』の3M』という評に相応しい冷ややかな眼差しでオタマジャクシたちの死体を見回す。
「自業自得だな。オシカツなどという非生産的な道楽にうつつを抜かし、自らを磨き高めることを怠ったから、こんな最期を迎えることになったのだ」
その眼差しがディアボロスたちへと向けられた。
「しかし、諸君は同じ轍を踏まないだろう。碩学たる私と戦えるという貴重な機会を得たのだからな。この戦いによって、諸君は多くのことを学び、魂の糧を得て、成長できるはずだ。故に私への感謝を忘れるな」
アリストテレスの声音や表情に挑発の意図は感じられなかった。冗談を言っているようにも思えない。
そう、この男は本気で感謝を求めているのだ。
ディアボロスとしては迷うところである。この傲岸なアヴァタール級の下に配属されたオタマジャクシたちに同情するべきか? あの間抜けなトループス級たちの指揮を任されたアリストテレスに同情するべきか?
「とはいえ、成長したところで無意味だがな。この戦いは諸君らの敗死という形で終わることが運命づけられているのだから。しかし、たとえ死ぬと判っていても、成長の機会を放棄してはいけない。明日の死を想定して生き、永遠の生を想像して学ぶ――それが人の正しい在り方なのだ」
力説しながら、アリストレスは腰に手を伸ばし、そこに下げていた武器を取った。
革の鞭である。
「さあ、復讐者という名の生徒たちよ! 大いに学べ! そして、死ね!」

ニキ・ルンワール
(トレインチケット)

天竜・なの唄
(トレインチケット)
●幕間(承前)
十代半ばの少年少女がアリストテレスと対峙していた。
両者ともに救援機動力で駆けつけたディアボロスである。
片目を前髪で隠した少年――ニキ・ルンワール(デーモンのデストロイヤー・g03710)の背には、魔力で構成された小振りな翼があった。
和風にアレンジされた洋服を纏った少女――天竜・なの唄(春告小唄・g03217)のほうは翼など持っていない。その代わり、有翼の相棒を伴っている。『はな』という名のボブテイルタイプのスフィンクスだ。
「いけすかねえ……」
ニキがぼそりと漏らした。隠れていないほうの目でアリストテレスを真っ直ぐに見据えながら。
「まったくですっ!」
なの唄が力いっぱい同意した。帯に差していた懐剣を抜きながら。
「にゃあ」
二人に合わせるかのように、はなが鳴いた。耳掻きの梵天のごとき小さな尻尾を必死に立てながら。
●ニキ・ルンワール(デーモンのデストロイヤー・g03710)
このアリストレテスとかいう野郎、本当にいけすかねえ。いや、『いけすかねえ』という言葉でもまだ足りない。偉そうなことを抜かし、他人様を見下して……こんな大人は大嫌いだ。まあ、こういう奴に限らず、大人全般が嫌いなんだけど。
それにしても、ほんわかした感じのなの唄までもが俺と同じかそれ以上ってくらいに怒りを燃やしてるのは意外だな。
「これだけは言わせてもらいますっ!」
ダガーサイズのカタナを構えて、なの唄はアリストレスに叫んだ。
「推し活は『非生産的な道楽』なんかじゃありませんっ!」
あー、勘違いしてたかな? なの唄の心で燃えているのは怒りじゃなくて、推している(けれど、刻逆で消えてしまった?)誰かに対する想いなのかもしれない。
でも、その想いが込められた叫びを聞いたアリストテレスは――
「ふっ」
――鼻で笑いやがった。文字通り一笑にふすってやつ。
奴は右手に鞭を持ったまま、左手で本を取り出し、なにやらごちゃごちゃと語り出した。
「私はオシカツを全否定しているわけではない。表現者を応援するのも大いに結構。ただし、応援することで自身が成長できるならばの話だ。成長と無縁の行為にはゴブリンの耳垢ほどの価値もない。芸術の送り手がそうであるように受け手もまた求道者でなくてはいけないのだ。与えられたものを無批判かつ無節操に貪る消費者ではなく!」
聞くに耐えない御高説だけども、それを垂れ流すことがパラドクスを発動させるために必要な行動だったらしい。最後の『消費者ではなく!』のところで奴の本から光弾が撃ち出された。
なの唄はそれをもろに正面から食らった……が、吹っ飛ばされなかったし、倒れ伏すこともなかったし、よろめきさえしなかった。
それどころか――
「てぇーいっ!」
――果敢に反撃した。
光弾が描いた軌跡を逆向きになぞるように一直線に突進して、アリストレテスに体ごとぶつかり、奴の太股にカタナをグサリ! ……いや、『グサリ』じゃなくて『ぷちっ』て感じかな? なの唄が非力だったのか、太股の筋肉が厚かったのか、突き刺さったのはカタナの切っ先だけだ。
にもかかわらず、アリストレスは態勢を崩した。
「……う゛っ!?」
と、無様に呻きを発して。
「にゃん!」
自分が攻撃を決めたわけでもないのに、スフィンクスが得意げに鳴いた。
●天竜・なの唄(春告小唄・g03217)
「鈴蘭の毒が効いたようですねっ」
アリストテレスに刺さった守り刀『花守』を引き抜くと同時にわたしは後方へと退がりました。
「い、いや、効いていない……」
アリストテレスはそんなことを言ってますけど、声と表情が言葉を裏切っていますよっ。
「負けず嫌いかよ。大人のくせして大人げない野郎だ」
うんざりした調子でニキくんが言いました。
「にゃん」
はなも呆れ顔。
そんな一人と一匹の反応など無視して、アリストテレスは強がり続けています。
「効かなかったが、色々と参考になった。おかげで我が著書の一つ『植物総体論』に鈴蘭の毒性についての文章を追記することができそうだ」
「いや、なにも追記できやしないぞ」
即座に否定するニキくん。いつの間にか、彼の手には武器が握られていました。バールのようなものです。
「あんたはここで死ぬんだからな」
「ふっ……」
あ? また鼻で笑いましたねっ!
「少年よ。成長したくば、年長者に敬意を払え。知恵と経験を持つ先人を蔑ろにする青二才はどれほど年を経ても青二才のままで終わるのだ」
偉そうに語りながら、アリストレスは右手に持っている鞭をびゅんびゅんと鳴らしました。聞くだけで背筋が寒くなっちゃうような音です。
でも、ニキくんは怯む様子を見せません。
「大人なんぞに敬意を払ってたら、そもそも年を経ることができない。すぐに食い物にされちまうからな。そういう街で俺は生きてきたんだ」
「なるほど。弱肉強食はこのディヴィジョンに限ったことではないか。ならば……肉として強者に食われる覚悟は出来てるな!」
アリステレスが叫んだ直後、鞭の音が『びゅんびゅん』から『ビシリッ!』に変わりました。
ニキくんの左肩に叩きつけられたんですっ。
でも、彼はやっぱり怯んだりせず――
「……」
――無言で反撃しましたっ。
魔力の翼を光らせて高ぁーく舞い上がり、アリストテレスの手元へと引き戻される鞭を追いかけるように急降下っ! そして、相手の頭めがけてバールのようなものをブンッと振り下ろしましたっ! これはたぶん『デストロイスマッシュ』ですね。
唐竹割りっ! ……とまではいきませんでしたが、アリストテレスの額は大きく裂けて、血がどくどくと流れ落ちています。
「その痛みもチョショとやらに追記しとくか?」
「ぐぬぬっ……」
問いかけるニキくんに対して、アリストレテスは悔しげな呻き声を返すことしかできませんでしたっ。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
ハーリス・アルアビド
死ぬ最期の時まで私を生かしたのは命を懸けて戦った方々。あなたとの戦いもまた私の学びとなり、この三度蘇った命の糧となるのは確かでしょう。
砂漠の守護神にして戦の神セトよ、お力添えを。
祈りを捧げ仲間への【幸運】を願い、この戦いに勝利を誓います。
【肉体改造】により両足を鋭い爪のある獣の足に【肉体変異】させ、より鋭く地を蹴り【残像】を生み出す速度で駆け、舞い上がる砂塵を【砂使い】でより巧みに操り砂の幕とし、【残像】と合わせて狙いを【撹乱】する。そう見せかけます。
死角からの不意打ちを狙うと思わせ【フェイント】を仕掛け、その実正面からセト神の御力による【怪力無双】を乗せた【セトへの請願】で打ち破ります。
クロエ・アルニティコス
魔女の当然の嗜みとして。
哲学者ソクラテスより始まる学問の流れ、最終人類史で植物学の祖と謳われるテオプラストスや万学の祖と言われるアリストテレス。
彼らの著作には目を通しています。
その名を奪っただけのお前には微塵も関係はありませんが。
それでも実地で学ぶことをお前が重視するというならば。
彼らが生涯体感することのなかった毒を身をもって学べることを喜ぶといいでしょう。
アマランサスの種を触媒に【ヒュドラ・アマランサス】を使用。毒の牙を持つヒュドラを象った怪物を作り出します。
下らない……いえ、お前に相応しい技ですね。
神殿の学舎も、お前を慕う者も、全てが虚構でしかない。
偽りの学舎も幻も薙ぎ払い、多頭のヒュドラによる噛みつきでアリストテレスに毒を注入します。
先ほど死んだ亜人を見てお前は言っていましたね。自業自得だと。
ならば今、お前が苦しんで死ぬのもまたそういうこと。亜人にしては理性的だと亜人にしては真面目だのとどうでもいいことです。亜人は亜人。それに相応しく……死んで下さい。
伊波・ユウカ
いけ好かないかはよく分からない。
ただ、亜人には言葉を喋れる割には少し野性的なクロノヴェーダって印象を抱いてたからこれだけ賢い亜人もいるのはすごい、ね。
多分勉強頑張ったのかな?えらいえらい。
まぁ、どれだけ偉い子でも敵ならば普通に倒すのだけど。
シンプルな作成でいく、敵の前に出て自分に注意を向けさせたあと、近くに隠れさせたサーヴァントのマロちゃんからの攻撃
相手の攻撃には捕獲出来る鞭や幻覚とか、こちらの動きを止めようとするものが多い気がする。
1度でも捕まると面倒くさそうだから自分の番はすぐに終わらせよう。
●ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)
背後で人の気配。
振り返ってその姿を確認する必要はありませんでした。気配の主たちはすぐに歩を進めて、私の両隣に並びましたから。
右側に立ったのはクロエさん。魔女を自称する妖狐の娘さんです。
左側に立ったのはユウカさん。クロエさんよりも幾分か若い(というよりも幼い?)零式英霊機のお嬢さんです。
「ふむ。新たな学徒か……」
アリストテレスがクロエさんとユウカさんに目を走らせました。いつの間にやら余裕を取り戻したらしく、もう唸り声は発していません。超然たる態度を取り繕っているだけにも見えますが。
「学徒ではありません」
と、クロエさんが言いました。
「魔女の当然の嗜みとして、私は様々な書物に目を目を通してきました。真に『大賢者』と呼ぶに相応しいソクラテスの薫陶を受けた諸哲人の著書も、最終人類史で植物学の祖と謳われているテオプラストスの著書も、そして、同じく万学の祖と謳われているアリストテレスの著書も……」
「故に今更なにも学ぶべきものはないとでも?」
「いえ、己の知性をそこまで過剰に評価することはできません。しかし――」
クロエさんは何歩か前進し、相手との距離を少しばかり詰めました。
「――アリストテレスの名を奪っただけのおまえから学べることがあるとは思えませんね」
「奪ってなどいない!」
大声で否定するアリストテレス。取り繕っていた仮面が剥がれかけています。
「私こそが真のアリストテレス! アリストテレスは唯一無二! 私の前にアリストテレスはなく、私の後にもアリストテレスはない!」
「ちょっと待ってください」
と、私は思わず口を挟みました。
「唯一無二というのは有り得ないのでは? アヴァタール級はクロノス級の分身なのですから」
「だけど、唯一無二じゃなかったとしても――」
そう言いながら、ユウカさんもまたクロエさんのように前進しました。
「――結構、すごいよね。亜人っていうのは言葉を喋れる割には野性的というか動物的なクロノヴェーダだなあって思ってたんだけど、このアリストテレスとかいう亜人はとても賢そうだし。きっと、勉強をいっぱい頑張ったんだろうね。えらい、えらい」
「……」
アリストテレスは無言。しかし、眉間の深い皺が百万言よりも雄弁に感情を示しています。ユウカさんは決して愚弄の意を込めて『えらい、えらい』などと言ったわけではないでしょうし、アリストテレスもそれは判っているとは思いますが……いえ、判っているからこそ、我慢ならないのでしょう。
彼の激しい怒りに気圧されることなく(あるいは怒りに気付いていないだけでしょうか?)、ユウカさんはどこかのんびりとした足取りで前に進み続けました。
●クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)
ユウカは私を追い抜き、自称アリストテレスへと近付いていきます。
『大賢者』なる称号に釣り合うだけの知性を有しているとは思えない自称アリストテレスですが、いつまでも怒りに震えているほど愚かではなかったようです。ゆっくりと迫るユウカに対処すべく、鞭を振り上げようとしました。
しかし、鞭の唸りに先んじて――
「今だよ、マロちゃん!」
――ユウカが叫びました。
次の瞬間、横手で轟音が響き、アリストテレス(真のアリストテレスに失礼だとは思いますが、面倒なので『自称』は省きましょう)が爆発に巻き込まれました。
轟音の正体は砲声。そう、何者かがアリストテレスに砲弾を撃ち込んだのです。
私は視線を走らせ、その『何者か』の姿を確認しました。
それはアクアスライム。パンツァーハウンンドさながらに小型の火砲を装備しています。
「いいよ、マロちゃん。うまい、うまい」
「な、なんと奇っ怪な生き物だ……」
スライムを誉めるユウカの声に重なったのはアリストテレスの呻き声。砲撃で吹き飛ばされながらも一命は取り留めていたようです。
「その生態を調べ上げ、我が著書『夷狄通鑑』に追記しておきたいところだが――」
著書をアピールしながら(聞いたこともない書名ですが)アリストテレスはなんとか立ち上がりました。
そして、反撃のパラドクスを発動。
「――そんな余裕はない!」
今度こそ、鞭が小気味よい唸りを発しました。
しかしながら、その鋭い一薙ぎによって断ち切られたのは空気のみ。標的たるユウカは咄嗟に飛び退りましたから。
「次の一撃はお任せするね」
「承知しました」
と、ユウカに答えたのはハーリスです。
「砂漠の守護神にして戦の神セトよ、お力添えを……」
祈りの言葉を呟き、ハーリスはアリストテレスに向かって走り出しました。
「天佑神助を願っても無駄だ!」
鞭を構えて迎撃の姿勢を取るアリストテレス。
「万物の趨勢を決定づけるのは天に遊ぶ神の恣意ではなく、地に生きるヒトの意思なのだから!」
「クロノヴェーダが『ヒト』の範疇に入るとでも?」
ハーリスのその言葉は容赦のない指摘(最終人類史では『ツッコミ』と呼ばれているそうです)でしょうか? それとも、素朴な疑問に過ぎないのでしょうか?
どちらであれ、彼は答えを待つことなく、素早い動きで相手の死角へ……回り込むように見せかけて、正面から懐へと飛び込みました。
そのフェイントに気を取られたのか、アリストテレスの反応は一瞬だけ遅れました。
その『一瞬』が命取り。ハーリスの掌底が左胸に命中。
「……っ!?」
アリストテレスはよろめきました。倒れこそしませんでしたが、両足が力なく震えています。生まれたての子鹿もしくは強風に曝されている老木といったところ。ハーリスの一撃は見た目以上に強烈だったようですね。おそらく、筋力強化系のパラドクスを使ったのでしょう。
●伊波・ユウカ(深海で眠る・g09814)
「最期の時まで私を生かしたのは命を賭けて戦った方々です」
腰から下がガクガクのヨレヨレになっているアリストテレスに向かって、ハーリスさんが淡々と語りかけた。先生に質問する真面目な生徒みたいに。あるいはダメな生徒に根気よく説いて聞かせる先生みたいに。
「あなたとの戦いもまた私の学びとなり、この二度蘇った命の糧となるのは確かでしょう」
「いい心がけだ、蘇りし者よ」
アリストレテスはニヤリと笑ってみせた。でも、両足はまだガクガクヨレヨレ状態。無理して頑張ってるんだろうね。えらい、えらい。
「しかし、どれほど豊かな糧を得ようとも、三度目の生はないと知れ! 私の授業料は死だ!」
風を切る音が叫び声に被さり、鞭が垂直に振り下ろされて、ハーリスさんの体が縦に真っ二つ! ……になったように見えたけど、それは残像だった。本体は真横に飛び跳ねて回避してる。
「むっ……」
悔しそうに呻きつつ、追撃の構えを見せるアリストレテス。
でも、ハーリスさんに手出しすることはできなかった。
クロエさんが立ち塞がったから。モフモフな銀毛の尻尾をふわりと揺らしながらね。
「実地で学ぶことを重視しているおまえにとって、これほどの喜びはないでしょう」
クロエさんは植物の種らしきものを足下にパラパラと蒔いた。
その行動の意味も言葉の意味もよく判らないのか、さすがのアリストレテスもちょっと戸惑ってるみたい。
「これほどの喜び……とは?」
「ソクラテス、テオプラストス、真のアリストテレス――彼らが生涯体感することのなかった毒を身を以て学べることですよ」
「なるほど。それは楽しみだ。だが、その前に――」
両腕を横に広げて胸を反らすアリストレテス。どうやら、パラドクスを発動させたみたい。
「――そちらが私の授業を受けろ! そして、己がいかに無知かつ無礼であったかを知るがいい!」
彼の後ろに大理石の建物の幻影がうすんぼんやりと現れた。パラドクスの標的となったクロエさんの目には『うすぼんやり』じゃなくて、はっきりと見えているかもしれない。
建物の中から亜人の群れが躍り出てきた。もちろん、その亜人たちも幻影だけどね。
「行け! 篤実な学徒たちよ! 忠実なる信徒たちよ!」
アリストテレスが命じるまでもなく、亜人たちの幻影はクロエさんに襲いかかった。
でも――
「実に下らない技ですね」
――クロエさんは幻影たちの攻撃を次々と躱した。
いえ、クロエさんだけじゃない。いつの間にか、彼女の横にはウェアキャットのお姉さんがいた。きっと、そのお姉さんも幻影。召喚者はアリストレテスじゃなくてクロエさんだろうけど。
「しかし、ある意味ではおまえに相応しい技だとも言えます。神殿の学舎も、おまえを慕う者たちも――」
そう言いながら、クロエさんは幻影とお姉さんと一緒にポーズを決めた。
「――すべてが虚構に過ぎない」
種が蒔かれた地面から、何本もの頭を持った緑色の竜が出現して……ん? よく見ると、本物の竜じゃないね。多頭竜みたいな形をした植物だよ。
その多頭竜モドキは長い首(蔓?)をびゅんびゅん動かして亜人の幻影を薙ぎ払い、頭(蕾?)にある牙でアリストテレスに噛みついた。
「うぐぇーっ!?」
苦しそうに絶叫するアリストテレス。
でも、『篤実なる学徒』にして『忠実なる信徒』であるところの亜人たちには彼を助けてあげることができない。
クロエさんが言うとおり、『虚構に過ぎない』からね。
●終幕
その後もディアボロスは容赦なく攻撃を加え続けた。
対するアリストテレスは鞭を振るい、あるいは幻影を召喚して抵抗したものの、劣性を覆すことは叶わず――
「な、なんということだ……我が生涯がこんなところで終わってしまうとは……」
――敗北が避けられぬと悟り、ついに弱音を吐いた。
「嗚呼、これは悲劇だ! いや、滅びへと至る惨劇だ! 比することなきエートスとロゴスとパトスを揃い持った私の死によって、蹂躙戦記イスカンダルの未来は絶たれるであろう!」
「うーん」
と、ユウカが首をひねった。
「一体のアヴァタール級を倒したくらいでディヴィジョンの未来が絶てるなら、なんの苦労もないと思うなあ。ねえ、マロくん?」
それは問いかけは攻撃の合図も兼ねていたらしい。アクアスライムが火砲が火を噴いた。
「……ぐぁっ!?」
直撃を受けて倒れ伏すアリストレテス。
すぐにまた次の攻撃者が迫ってきた。
ハーリスである。
「本来の歴史を簒奪して築いた未来など――」
強化された膂力にものを言わせて、相手の顔面に拳を叩き込む。
「――絶たれて当然です」
「げふっ!?」
またもや、アリストレテスは倒れ伏した。
そして、またもや立ち上がった。
しかし、無様に転倒した。
足を取られてしまったのだ。
地面に転がっていた丸い物体に。
そう、オタマジャクシ型亜人の死骸に。
「そのトループス級たちの死に様をおまえは自業自得だと言っていたそうですね」
立ち上がる力すら残っていないアリストレテスに語りかけながら、クロエがパラドクスを発動させた。
「ならば、今、おまえが苦しんで死ぬのもまたそういうこと。比することなきエートスだのなんだのを持っていようが、亜人は亜人。亜人に相応しい、苦しみに満ちた死を……」
ヒドラ型の植物が瀕死の大賢者に襲いかかり、骨も残さずに食い尽くした。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
【動物の友】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!