蒼海コンチェルターレ(作者 小鳥遊彩羽
7


#黄金海賊船エルドラード  #盗んだ海賊船で行く大西洋横断作戦  #大西洋  #海賊船 

●蒼海コンチェルターレ
「やあ、お疲れ様。今回は黄金海賊船エルドラードで船旅を楽しんできてほしい」
 新宿駅グランドターミナルの一角、いつものようにディアボロスたちを迎えたアレッサンドロ・カリオストロ(人間の錬金術師・g08632)は、笑顔でそう切り出した。
 ――ポルトガルのポルト港から強奪した中型海賊船は、現在大西洋上を南米カリブ海に向けて航行中であり、このまま大西洋を横断してカリブ海へと到達することが出来れば、アビスローバーの拠点である『海賊島』を発見出来るかもしれない。
「だが、当然のことながら、アビスローバーたちはディアボロスの船となった海賊船を狙って来ている。今回は船旅を楽しみながら、この追っ手であるアビスローバーを撃退して欲しい」
 追っ手の海賊船にはアビスローバーの漕ぎ手が多数乗船しているだけでなく、風や波を読む航海術や帆の操り方なども本場の海賊である彼らのほうが数枚上手だ。追いつかれて戦闘になることは避けられないだろう。
 ゆえに、可能な限り速度を上げて距離を稼ぎつつ、追っ手のアビスローバーを撃退し、大西洋の横断を目指してほしいとカリオストロは続ける。

 ディアボロスが確保している中型海賊船には、パラドクストレインで近くまで移動した後に乗り換えることになる。
「航海に必要な羅針盤などの航海機器は、米海軍横須賀基地からの支援によって、最新技術の物が既に搭載されている。海賊船にはディアボロスが入れ替わりで常駐しているから、排斥力の影響で故障するような事態も少ないだろうし、万が一故障があっても、その箇所を新しいものに取り替えることも容易になっている。そもそもこの海賊船自体がクロノ・オブジェクトだから、多少の損傷は自己修復するので、修理なども必要ない――とのことだよ」
 つまりは、そういった心配はせずに船旅を楽しみつつ、全力でアビスローバーとの戦いに臨むことが出来るということだ。
「海賊船は漕ぎ手がいなくても櫂が動いて進んでくれるけれど、ディアボロスが櫂を漕げばその分だけ早く進むことが出来る。また、風の状況に合わせて帆を操作したり、海流や天候などを考慮して進路を設定したり、色々と試してみるのもいいかもしれないね。……とは言え、ずっと船を漕いでいては疲れてしまうだろう? だから、時には手を休めてのんびりと潮風に身を委ねてはどうだろう」
 避けられぬ戦いを控えている以上、文字通り、束の間の休息だ。だが、新宿島では感じられない大西洋の海風を感じてみるのも悪くはないだろう。
 いずれにしても、海上を進んでいれば――必ずアビスローバーたちがやってくる。
 敵の海賊船と接触した後は、斬り込んでくる彼らを撃退し、撤退する海賊船に一撃を喰らわせれば今回の航海業務は完了となる。
「彼らにはどうやら、海賊船を傷つける意図はないようだ。だから船上で迎え撃ってもいいし、海上で戦ってもいい。でも、海上で戦うのであれば最低限、【水面走行】を持っていくのを忘れないように」
 敵の海賊船と接触した後は、斬り込んで来るを撃退し、撤退する海賊船に一撃を喰らわせば、今回の航海業務は完了となる。
「追撃は遠距離パラドクスが主になるとは思うけれど、【飛翔】などを使えば直接乗り込むくらいの勢いで攻撃することも出来るだろう。ただ、あくまでも追撃であり、当然ながら敵の反撃もある。だから、……少しくらいやりすぎる分には構わないけれど、くれぐれも深追いはしすぎないようにね」

 このまま海賊島に向かうことが出来れば、敵の中枢を一気に突くことも不可能ではないかもしれない。
 だが、行く先は敵の領域内だ。たった一隻の海賊船では、無事に目的地まで到達するのは至難かもしれないだろう。
「もしも今ある海賊船の放棄や、目的地の変更など、状況に応じた新しい提案があるならば、作戦旅団で提案してみてほしい。さて、そろそろ出発の時刻だ。今回も宜しく頼むよ。――良い旅を」
 最後にそう言い添えて、カリオストロはディアボロスたちを送り出した。

●大西洋上にて
「海賊船はアタシらの誇りだ! アタシら海賊船乗りは功績を立てて、海賊船を与えられることを夢見てきた!」
 アヴァタール級のアビスローバー、コーラルレディが、部下たちの前で演説を始める。
「――その海賊船を奪った、盗人はどうしてやろうか?」
「――殺しちまいやしょうや、お頭!」
「海賊船を盗むなんてふざけた野郎どもなんぞ、生かしておくワケにはいかねェ!」
 コーラルレディの声に、トループス級の海賊半魚人たちが口々に騒ぎ出す。
「そうさ、生かしておくわけにはいかない。さあ野郎ども、船を漕ぎな! 不届きな盗人共をぶっ殺しに行くよ!」
 アビスローバーたちの船が、速度を上げて動き出す。
 彼方の洋上を往く、ディアボロスたちの船を――奪い返すために。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【エアライド】
2
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【トラップ生成】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【水面走行】
2
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【操作会得】
2
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV3 / 【ガードアップ】LV1 / 【反撃アップ】LV2 / 【ドレイン】LV1 / 【ダブル】LV1

●マスターより

小鳥遊彩羽
 ご覧くださいましてありがとうございます、小鳥遊彩羽です。
 今回のシナリオは、『黄金海賊船エルドラード』よりお届けします。

 シナリオの流れは①→③&④→②となります。全面的に情報収集をメインとした行動は出来ませんので、ご了承ください。
 ①は海賊船で大西洋を渡る選択肢となります。この選択肢のみのご参加も問題ありません。
 船を操縦する他にも、お弁当やおやつを持ち込んでのんびりピクニックをしたり、広い海を眺めたりなど、船の上で出来そうなことでしたら大体出来ますので、お好きなようにお過ごしください(船の操縦がメインでも、船上でのんびり過ごすのがメインでも、どちらでも大丈夫です)。
 また、こちらで後々必要になりそうな残留効果を発生させておくのもおすすめです。
 ①のクリア後、③と④で海賊船を奪い返しに来たアビスローバーたちを撃退し、最後に②で撤退する敵海賊船への追撃を行ってシナリオは完結となります。

 以上となります。どうぞ宜しくお願い致します。
153

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブOK

甲板に立ち、海風を読み、帆を手繰ろう
風向風速計をみて、雲の流れや湿度も頼りに天候予測
コンパスで針路をみて調整を
海流を利用できるよう、潮流計などで海流を測定し、地図に落とし込んで海流図を作ろう
地道に続ければ何かわかるかも
操船の合間に、船上の旅を楽しもう

船に乗るのは何度目だろうな
お弁当を持たせてもらったので……船上でピクニックだ
甲板で大洋を眺めながら、時折、帆の様子をうかがって
髪に肌に潮風を感じ
風翔けるまま、順風満帆だ

薫り豊かな珈琲を味わい、趣向を凝らしたサンドイッチをほおばろう
卵に、BLT、カツサンド
……美味いな
笑み零して、幸せな休息をとろう

ディアボロスになってから、色んな海を見てきたな
新宿の海から……初めてロマノフへ至る極寒の海……美しい南国の海
地中海に、大西洋に、太平洋……海底や海上の行軍も
こんな時だけど、大西洋を横断するのはわくわくする
まだ見ぬ色彩の海に出会いに……
願わくは、そこが平和な海であればいい

航海の間にチェロを演奏
軽やかに伸び翔る音色で、船の道行きを祝福しよう


 どこまでも澄み渡る蒼穹の下。
 燦々と照りつける太陽の光を浴びながら、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は眩しげに彼方の地平線を見やる。
 天気は晴れ、風は良好。敵襲の予知さえなければ――という前置きがついてしまうのが惜しいくらいには、絶好の航海日和だ。
 甲板に立って海風の流れを読みながら、エトヴァは帆を手繰る。
 それだけでなく、風向風速計が示す雲の流れや湿度も頼りに天候を予測し、都度コンパスで針路を確かめつつ、更に細かい調整を行っていく。
 こういったことも隨分と手慣れた手慣れたように感じるのは、それだけエトヴァがディアボロスとして長く戦い続けてきている証だ。
 正しい歴史から切り離された黄金海賊船エルドラードの領域は、おそらく海流も元の地球のそれとは異なっているのだろう。
 だからこそ、地道に積み重ねていけば何かわかることもあるかもしれないと、エトヴァは潮流計なども活用して海流を測定し、地図に落とし込んで海流図を作っていく。
「そろそろ休憩にするか……」
 操船の合間にふ、と息をつき、作業の手を休めて。
 エトヴァはパラドクストレインに乗る前に持たせてもらったサンドイッチのお弁当を広げ、船上のピクニックと洒落込むことにした。
 卵にBLT、それから、カツサンド。趣向を凝らしたサンドイッチの数々は、見た目も華やかでついつい食欲が掻き立てられるよう。
「……美味いな」
 思わず笑みを零す、幸せな休息のひととき。
 香り豊かな珈琲と共にひとつひとつ頬張ってはゆっくりと、幸せごと味わうように噛み締める。
(「船に乗るのは……何度目だろうな」)
 時折帆の様子を確かめながら、エトヴァは海へと視線を移す。
 見渡す限り広がる、吸い込まれてしまいそうなくらいに鮮やかなオーシャンブルー。
 大洋を眺めながら、髪を掬い、肌を撫でていく潮風の心地よい息吹に目を細めて――。
「……ん、順風満帆だ」
 ディアボロスとなってからこれまでに見てきた、様々な海を思い出す。
 新宿島の外に広がっていた、はじまりの海。
 初めてロマノフへと至った極寒の海や、美しくも鮮やかな南国の海。
 地中海や太平洋、海底や海上を行軍したこともあったし、勿論――今進んでいる大西洋だってそのひとつだ。
 どの海の景色も鮮やかな色彩を伴ってエトヴァの裡にあるし、海と共に得た経験は、確かな力となっている。
 大西洋の横断を目指している今回も、この後に避けられぬ戦いを控えてこそいるけれど、実のところわくわくしているのだ。
 この海を超えた先には、未だ見ぬ色彩の海が広がっていると、知っているから。
(「……願わくは、そこが平和な海であればいい」)
 サンドイッチを食べ終えたエトヴァは、願いと祝福を籠めて、チェロの音色を響かせる。
 海を翔けゆく風に乗り、旋律はどこまでも軽やかに伸び翔けていった。
 
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

シエルシーシャ・クリスタ
アドリブ・連携歓迎

よーし、舟を漕げばいいんだね。
ここまで大きいのは経験無いけど、鬼人になった今は力なら一杯あるからね。
思いっきり漕ぐよ。
……天候とか星を読むのもそんなに得意ってわけじゃないし、外洋ってほとんど出たことないし……
機械の複雑な操作とかはよく分からないから【操作会得】頼みだしね。
基本は漕ぐのだけ考えて、他は何か言われたら手伝うくらいにしようっと。

あ、妖精さんたち、周り見に行くのはいいけど船からおいていかれないように気を付けてね?
あと、どうせなら追っかけてくる船が無いかとか気を付けててくれると嬉しいな。
見つけてくれたらあとでお菓子を上げるよ。


四葩・ショウ
海賊船での航海、だなんて
いつかみた映画のストーリーみたいで
こんなに速く進むんだ、なんて
初めての経験に心が躍る

【操作会得】のちからも使って
わたしもちょっとだけ……やってみたいな
常駐する復讐者のひとにおしえて貰いつつ
頑張って櫂を漕ぐよ

頑張った後にはお楽しみ、だよね
お気に入りのサンドイッチを頬張ってひと休み
すこしだけ伸びてきた前髪を、
ふわりと擽る風が心地好い

新宿島が新宿区だけだったころは
どこからか潮風をかんじてたけど
奪還する大地が増えていくたび
感じなくなってたっけ

大西洋の潮風は、日本で感じるものとはちがうのかな?
それとも、海は果てしなくて
けれどどこかで繋がっているから
しってる気配もするものなのかな?

どこまでも広がる水平線を
なぞるように視線で追いながら
海洋知識はからきし、だけど
天候予測も味方につけて
雲の流れの変化とか嵐が近付いてないかくらいなら
きっと、わたしにもわかるから
そういった変化にも気をつけておくね

追いかけてくる海賊船がみえてきたら
あ、熱烈な『ファン』が来たみたい、と
仲間達にしらせよう


「よーし、舟を漕げばいいんだね」
 広大な洋上を進む海賊船の一角で、いくつも並ぶ櫂のひとつに手を添えながら、シエルシーシャ・クリスタ(水妖の巫・g01847)は気合いも新たにこくりと頷く。
 船を漕ぐのは初めてではないが、海賊船ともなればその櫂も大きなものだ。
「ここまで大きいのは経験無いけど、鬼人になった今は力なら一杯あるからね」
 シエルシーシャは思いっきり力を籠めて、櫂を海中に潜らせるように動かした。
 ぐん、と、それだけで心なしか、海賊船の速度が上がったような気がする。
 小さな窓から見える、青い空と青い海。今は晴れているけれど、いつ天気が変わるかもわからない。
 天候や星を読むのはそれほど得意ではないし、何より、シエルシーシャ自身はこうして外洋に出たこともほとんどない。
 この船のために新宿島から運び込まれた様々な機械類は興味こそあったものの、シエルシーシャが操作をするならば【操作会得】頼みだ。
 だが、幸いにして、この船には多くのディアボロスたちが入れ替わり立ち替わり訪れているという。
 ならばそういった――シエルシーシャが苦手なことを得意とする仲間もたくさんいるだろう。
 ゆえに、シエルシーシャはひとまず、船を漕ぐのに専念することにした。

 ――翔け抜ける風を帆に受け、海賊船は速度を上げながら進んでいく。
「……こんなに速く進むんだ」
 いつか見た映画のストーリーを思い出しながら、四葩・ショウ(After the Rain・g00878)は初めての経験に心を躍らせていた。
 陽光に煌めく水面は、まるでたくさんの宝石を散りばめたかのよう。時折遠くで上がる大きな飛沫は、クジラだろうか、あるいはイルカだろうか。
 ――なんて取り留めもなく思考を泳がせながら、このまま潮風に身を委ねるのも悪くはなかったけれど。
 折角こうして船に乗ったからには、ショウとしてはひとつ、やってみたいことがあった。
「お疲れ様、わたしも手伝わせて」
 船の下部に降りたショウはそうシエルシーシャに笑いかけ、並ぶ櫂のひとつに手をかける。
「えっと、これは……」
「ん、体を大きく動かしながら、ぐるっと回すようなイメージ、かな。……こんな感じで」
 シエルシーシャの言葉を聞きつつ、見様見真似でぐるりと回してみれば。
 先程までよりも更に少し、速度が上がったような気がした。
「……わ、わ、……進んだ?」
「うん、その調子」
 声を弾ませるショウに、シエルシーシャもこくりと頷いて――二人で力を合わせて船を漕ぐこと、暫し。
「ね、一緒にひと休みしよう?」
「そうだね、いっぱい漕いだし」
 一息ついて立ち上がったショウは、シエルシーシャも誘って再び甲板へ。
 頑張った後のお楽しみに、サンドイッチを分け合ってのひと休みを。
「……美味しいね」
 表情こそあまり動かないけれど、シエルシーシャの瞳が輝いたように見えて、ショウは笑みを深める。
「でしょう? お気に入りのサンドイッチなんだ」
 甲板の向こうからは、風に乗ってエトヴァが奏でるチェロの音色が聴こえてくる。
 少しだけ伸びてきた前髪を、おひさまと海の香りがする風がふわりと擽っていく。
 何気ないその瞬間が心地良くて、ショウは柔らかく目を細める。
 ――新宿島が新宿区だけだった頃は周りが全部海だったから、どこにいてもこうして潮風を感じていたものだけれど。
 奪還する大地が増えていく度に、いつしか感じなくなっていった。
 懐かしいとか、そういったものとは違う、不思議な心地が胸を満たす。
 大西洋の潮風は、どこか、日本で感じるものとは違うような気がするし、知っている気配がするような気もする。
 場所も時代も違っていても、世界がどこかで繋がっていることを――感じさせてくれるようで。
 果てしない海の向こう、どこまでも真っ直ぐに伸びる水平線をなぞるように視線で追いかけながら、ショウは思案する。
 その視界を、煌めきの尾を連れてふわりと羽ばたく小さな影があった。
「あ、妖精さんたち、周り見に行くのはいいけど、船から置いていかれないように気を付けてね?」
 シエルシーシャの言葉を聞いているのかいないのか、妖精たちは自由気ままに楽しげに飛び回っている。
「あと、どうせなら追っかけてくる船が無いかとか気を付けててくれると嬉しいな。見つけてくれたら、あとでお菓子をあげるよ」
 お菓子、の言葉にぱっと振り向いた妖精たちはまかせて!とばかりに翅を大きく震わせて、追っ手を探すつもりなのか、やけに張り切った様子でどこかへ飛んでいった。
 シエルシーシャの妖精たちを微笑ましげに見送って、ショウは空へと視線を移す。
 海洋知識はからきしだけれど、天候予測の知識を活かして。
 真っ白な雲の流れに変化がないか見ていたショウは、ふと、目を瞬かせた。
 それとほぼ同時に、シエルシーシャの妖精たちも戻ってくる。
「……嵐より前に、熱烈な“ファン”が来たみたい、だね?」
「どうやら、そうみたいだね」
 ショウとシエルシーシャは、互いに顔を見合わせて頷く。
 ――彼方の海から近づいてくる影。
 それは紛れもなく、ディアボロスたちの海賊船を追ってきた、アビスローバーの海賊船に違いなかった。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【操作会得】LV2が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

 どこからともなくやってきたアビスローバーの海賊船は、こちらの海賊船を捉えるや否やより速度を上げて、あっという間に距離を詰めてきた。
「――随分と“のろま”なんだねぇ、ディアボロス」
 海風にマントを靡かせて、アヴァタール級――コーラルレディが、不敵な笑みを浮かべながら高らかに声を上げる。
「さあ、お前たち! この不届きな盗人共をぶっ殺して、アタシたちの船を取り返すんだ!!」
「ウオオオオッ――!!」
 コーラルレディの号令を受けて、トループス級の海賊半魚人たちが一斉に海を渡って襲いかかって来る。
 船を取り返すと言うくらいだ。アビスローバーたちは敢えて船を傷つけるような攻撃をすることはないだろう。
 ディアボロスとしてはこのまま船で迎え撃つのも良いし、【水面走行】を用いて海上戦に持ち込んでも構わない。
 この海賊半魚人の群れとコーラルレディを撃破すれば、追っ手の海賊船はすぐに撤退を始めることだろう。
 
四葩・ショウ
かろやかに手摺を跳び越えて
【水面走行】で海上を駆け、迎撃しにいくよ

さぁ、目当ての復讐者はここだ
海賊船には近づけさせない
護ってみせるよ、と笑みを咲かせて

漣立つ、銀の波濤を駆け抜ける
硝子のレイピアの切っ先で海をなぞったなら
いちばん傷付いた敵を貫き、確実に数を減らして
復讐者の海賊船へ向かった敵は
仲間に任せてもいいかな?

波間を、襲い来る敵を
攪乱するよに疾駆して
つかまえてみせてよ、なんて
惹きつけながら相手しよう

好戦的なかれらに囲まれないよう
気をつけて動くけど
勢いに圧倒されたり、もしもの時には……

とぷんと海中からとびだす
わたしの軽巡級海戦装は――チャーミングな双子のラッコ型
パラドクスじゃないこの子達の
お気に入りの石(魚雷)では傷をつけられないけど
気を惹いてくれた一瞬の内に
敵の巨躯を間をすり抜けるようにして、はなれて

近づいてくる敵の攻撃からは
急所を護るようにレイピアを構えて痛手を避け
その心臓へとふかく、ふかく 爪立てる反撃を

船の上か、或いは海の上か
相対する海賊へ切っ先を向け

船はとり戻させないよ、レディ


間桐・ホロウ
新宿島での暮らしにも慣れてきた頃合いですが
こうして此の地で船旅をする事になるとは
巡り合わせというのも在ったもので
…っと、追っ手の海賊船も迫っている様子
海賊とは奪ったり取り返したり…と
最近の経験で得た知識ではありますが
俺もお役目を果たすと致しましょうか
敢えて海賊船を傷つけるような
襲撃は無さそう…とはいえ
このまま船で迎え撃つ構えを取って

雷鳴の力よ此処に、と
七剣星に電光の輝き宿し
アビスローバー達の影を遠目からでも
見つけ次第に先んじて光の矢を放てば
牽制にはなったでしょうか
海上等で戦う仲間の援護にも少しばかりは
役立てれば良いのですけれど
船に乗り上げようとする魚のヒレ等は
此方で速やかに切り落としませんと

敵の残数や動きなどの情報を共有
通信や声掛け等でなるべく連携を図るように
孤立と死角を防ぐよう立ち回り
体力の低いものから攻撃の手を集中
各個撃破を心掛けながら
輝き増した七剣星と共に
連射するよう光の矢を振るいましょう

連携・アドリブ歓迎


シエルシーシャ・クリスタ
アドリブ・連携歓迎

のろまかぁ。そりゃあ船の専門家じゃないものね。
追いつかれるのは当然って思ってるけど……むしろそののろまな船に追いついてくるの、随分遅くなかった?
まあ、こっちとしては一隻で突っ込んできたならいっそその船も奪っちゃおうかって思うけどね。
船が惜しいならさっさと逃げると良いよ?
……とか、挑発しておこう。さすがに奪うまでは無理だけど相手にはどうせ分からないし。

斬り込むのは任せちゃおうか。
こっち奪われちゃっても困るし、防衛しておくよ。

乗りこんで来る間際で斬りつけて船から叩き落とす、もぐら叩き方式で行ければいいんだけど、頭数は多いからその内乗り込まれるかな?
どうせ雄叫び上げてくるだろうから位置は読みやすいだろうし、基本はそれ狙いで動こう。
でもこっそり上がってくるのも当然いるはず。そういうのは妖精さんに上から警戒してもらって、教えてもらうなり仕留めてもらうなり。こういうのも連携だよね。


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

よし、船は任せた
視野を広く偵察、観察しつつ敵の動きと位置を把握
海から迫る敵へ、ライフルで狙撃を仕掛けPD攻撃
水面を掠め撃ち、水飛沫と雷撃を跳ねつつ攻撃
周囲に雷撃を放ちつつ銃弾を穿ち、斬り込む味方を援護しよう
それにしても、海は戦いでさえ解放的だ
必要に応じ水面を移動し、狙撃に有利な立ち位置を取る

敵の幻惑するような動きの攻撃には、距離をとって重心の移動を観察しつつ、攻め手を看破してタワーシールドでガード
魔力障壁で合わせて防御を

味方とは声を掛け合い連携を
腿の付け根を狙って動きを止めたものへ連携攻撃
狙いを合わせつつ、一撃で倒せる個体>消耗した個体を優先
仲間を狙うか、囲む動きの敵があれば一弾はそちらへ向ける

アビスローバーも、同僚の海賊さんに比べたら、可愛いものだよ
……と言ったら怒られそうか
数が減ってきたら攻勢に切り替え、胴や頭部を狙っていく

船を奪ったのを宣戦布告に変えて
港へ帰れたら、そっちの総督にでもよろしく伝えてよ

そろそろ船に愛称がほしくなるな
楽しい旅の途中でな
悪いが、お帰り願おう


「オラ! とっとと船を返しやがれ!」
 そう叫びながら、次々に船に乗り込もうとやってくる海賊半魚人たちの前に、軽やかに手摺を跳び越えて、四葩・ショウ(After the Rain・g00878)が降り立った。
 同時に広がる【水面走行】の力で、海面は瞬く間に凪いでいく。
「さぁ、目当ての復讐者はここだ。――わたしたちの船は、護ってみせるよ」
 それ以上は近づけさせないと、挑発的な笑みを咲かせながら――。
 硝子のレイピアの切っ先を凪いだ水面に滑らせて、ショウは一気に漣立つ銀の波濤を駆け抜けた。
 仕掛けるのはこちらの方が早かった。
「があっ……!!」
 波間を裂いた切っ先に深々と心臓を貫かれ、為す術もなく沈んでいく海賊たち。
 その隙にショウの脇を抜けた別の海賊たちが船へと迫る――が、ショウは振り向くことなく更に眼前に迫る海賊たちへレイピアを振るう。
 ――大丈夫。
 ひとりではないと、仲間が居ると、知っているから。
「よし、船は任せた」
【パラドクス通信】の通信機越しにエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)がそう告げた直後、響く銃声がひとつ。
「――疾く、閃け」
 水面を掠めて跳ねたライフルの弾が、稲光を放出しながら今まさにショウへ仕掛けようとしていた海賊たちの只中で炸裂した。
「ぐあっ!?」
 水飛沫を伝って広がった雷撃の力は瞬く間に海賊たちを感電させ、海の底へと沈めていく。
 ちらとショウから送られた柔らかな目配せに頷いて、エトヴァも水面へと馳せる。
 果てを感じさせぬ海原は、戦いの時でさえ解放的で。
 だからこそ、視野を広く保つことを念頭に置いたエトヴァには、敵の動きが良く見えた。
 例えば、ショウとエトヴァでは止められなかった海賊半魚人たちが今まさにこちらの海賊船へ至ろうとするのを見て、コーラルレディが勝ち誇ったような笑みを浮かべるのも――そして、その笑みが、すぐに歪むことになるのも。
「残念だったね。こっちの船には上がらせないよ」
 妖精たちと共にシエルシーシャ・クリスタ(水妖の巫・g01847)が乗り込もうと上がってきた海賊半魚人たちをすかさず辰砂の剣で叩き落とし、更に間桐・ホロウ(虚・g10795)が七剣星の名を冠する短刀に電光の輝きを纏わせながら紡ぐ。
「――雷鳴の力よ、此処に、」
 パラドクスの力が巡ることで七剣星はより一層の輝きを帯びて、まばゆい光の矢が星のように敵群へと降り注いだ。
「……のろまかぁ。そりゃあこっちは船の専門家じゃないものね」
 コーラルレディを見つめながら、シエルシーシャは言った。
「追いつかれるのは当然って思ってるけど……むしろその“のろま”な船に追いついてくるの、随分遅くなかった?」
「なっ……!」
 コーラルレディの表情が俄に険しくなるが、シエルシーシャは構わずに続ける。
「まあ、こっちとしては……一隻で突っ込んできたなら、いっそその船も奪っちゃおうかって思うけどね。――船が惜しいなら、さっさと逃げると良いよ?」
「このっ……言わせておけば!! ――お前たち、やっちまいな!!」
 シエルシーシャの“挑発”にあっさりと引っかかったコーラルレディの声は、明らかな怒りに満ちていた。
 さすがに敵の船をここで更に奪うのは、こと今回の作戦では難しいだろう。
 けれど、どうせ相手にはこちらの言葉が本当か嘘かなどわかりやしないのだし、どの道彼らをここで倒すことに変わりはない。
「……見事に引っかかりましたね」
「ん、見るからに単純そうだからね」
 思わず感嘆の息をつくホロウに、こくりと頷くシエルシーシャ。
 そうして、更に迫るアビスローバーたちを前に、ホロウは七剣星を構え直す。
 ――海賊とは奪ったり取り返したり、とは、最近の経験で得た知識だ。特にこの黄金海賊船エルドラードというディヴィジョンにおいては、アビスローバーは『略奪』により力を得るというから尚更だろう。
 それはそれとして、巡り合わせたこの船で船旅をもう少し楽しんでいたいという気持ちも、ホロウにはあるけれど。
 こちらとしても広大な海を渡る足掛かりとして得たこの船を、みすみす奪い返させるわけにはいかないから。
 まだ戦いの経験は浅く、ようやく新宿島での暮らしにも慣れてきた頃合いとはいえ、ホロウもまた時代を超えてきた復讐者のひとりだ。
「……さて、俺もお役目を果たすと致しましょうか」
 ディアボロスたちにとっての大西洋の足であるこの海賊船を守り抜き、次へと繋いでいくために。

「お前たち、何やってんだい!!」
 コーラルレディの怒号と海賊半魚人たちの雄叫びめいた声が飛び交う中、海上と、船上と、ふたつの場で戦いは巡っていく。
 数の上ではアビスローバーたちのほうが有利であるはずなのに、果敢に、そして華麗に立ち回るショウとエトヴァを沈められず、そして船に乗り込むことさえままならず、コーラルレディの怒りは更に増していくばかりであった。
 ショウとエトヴァが惜しみなく力を振るいながら海を駆けられるのも、ホロウとシエルシーシャが船の護りについているからこそ。
 船に乗り上げようとする半魚人のヒレに七剣星を突き立てながら、ホロウは更に剣に宿した雷光の輝きを解き放つ。
「――海上の敵、残り、あと三体です!」
 船上から見える敵の数を、ホロウはパラドクス通信でショウとエトヴァに伝える。
 シエルシーシャも妖精と共に、乗りこんで来る間際で斬りつけることでさながらもぐら叩きのように次々と叩き落していたけれど、どうやら敵も少しは頭が回るようだった。
「残念だったな! 船は返してもらうぜ!」
 乱戦に紛れ、いつの間にか死角に回り込んでいたらしい半魚人がひとり、こちらの船の甲板を踏んでいた。
「しまっ……!」
 焦りを滲ませるホロウに、にやりと笑みを歪ませる海賊半魚人。
 だが――乗り込んだ直後に声を上げたのが、運の尽きと言えよう。
「さあお前ら、どうしてくれよう……ぐああっ!?」
 後方を警戒していたシエルシーシャのもうひとりの妖精がすぐさま急襲を仕掛け、更にもうひとりの妖精も続く。
「黙ってたら気づかなかったかもしれないのに、――残念だったね」
 妖精たちの纏わりつくような攻撃に怯んだ半魚人へ、シエルシーシャは渾身の力を籠めて呪詛纏う廃剣ウォルズを叩きつけた。

 波濤が舞い、稲光が爆ぜる。
 ショウとエトヴァは互いに狙いを合わせ、深く傷付いた敵を貫くことで確実に数を減らしていった。
「どうしたの? わたしはここだよ。――ほら、つかまえてみせて」
 波間を撹乱するように疾く駆けながら、ショウは微笑んで囁く。
「この……ッ!」
 力任せに殴りかかってくる海賊の前に、レイピアを構えるショウ。
 その時、不意にとぷん、と水音を跳ねさせて――チャーミングな双子のラッコたちが飛び出してきた。
 ぎゅっと手繋ぐかれらは、ショウの軽巡級海戦装で、放たれる魚雷はかれらのお気に入りの煌めく石だ。
 無論、パラドクスではないその力は海賊に傷ひとつつけることさえ出来ないけれど――僅かな一瞬でも気を惹いてくれたら、それはショウにとっての最大の好機。
 海賊たちの巨躯の間をすり抜けるように離れながら、ショウはすぐさま硝子のレイピアを閃かせた。
 エトヴァは冷静に距離を取り、巧みな足捌きによるフェイントを交えながら踏み込んでくる半魚人の動きを観察する。
 そうして繰り出された曲剣の斬撃を魔力障壁を重ねたタワーシールドを掲げて凌ぎ、エトヴァはすかさずライフルの引き金を引いた。
「アビスローバーも、同僚の海賊さんに比べたら、可愛いものだよ」
 ――なんて言ったら当人に怒られるだろうか。
 ふとそんな思考を過ぎらせながらも胴を狙って放たれた弾丸は寸分の狂いもなく突き刺さり――更に封じられた雷撃の力により、海賊の動きが縫い留められたかのように止まる。
 そして、その機を逃すことなく。
 心臓へと深く――ショウが硝子の切っ先を突き立てた。

 襲いかかってきた海賊半魚人、その最後の一人が海に沈む。
 ショウはそのままレイピアの切っ先を、相対する船の上――険しい顔で歯軋りをするコーラルレディへと向けた。
「船はとり戻させないよ、レディ」
 この船を奪ったこと、それ自体がディアボロスからの宣戦布告だ。
「港へ帰れたら、そっちの総督にでもよろしく伝えてよ」
 そのつもりで、幾分か気さくな様子でエトヴァは告げる。
 長い旅の伴には、そろそろ愛称も欲しくなる頃合いだろうか。
 けれど、今は――。
「こちらは楽しい旅の途中でな。……悪いが、お帰り願おう」
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水面走行】LV2が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【命中アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!

ヌル・バックハウス
(連携アドリブ歓迎)

「いやぁ、敵さんが結構な美人だとはなぁ……だからって油断する道理にはならないんだけど」

両手に携えた二振りの斧をゆるく携えながら、相手を捉える
……獲物は剣か。こっちも斧だし、距離を詰める必要はあるかな
そんなことを考えながら足に力を込めて、一歩を踏み込む。そして距離を詰めたところで両の斧が振るわれる

回避されたならその地を叩きつけるように、相手を捉えたならそのカラダを地面に叩きつけるように
その衝撃で地に破片が現われる

「――そら、散らばった破片を踏みしめなぁ!!」

そのまま畳みかけるように斧で連撃を仕掛ける
片方が捌かれてももう片方が当たるだろ。アタシが斧を二つ持ってるのはそういう理由なんだよな
まぁどっちも捌かれたってしても、周りが何とかしてくれるだろと楽観しよっと


「いやぁ、敵さんが結構な美人だとはなぁ……だからって油断する道理にはならないんだけど」
 両手に携えた二振りの無骨な斧を緩く構えながら、ヌル・バックハウス(名も無き自由・g10747)は興味深げな眼差しをアヴァタール級――コーラルレディへと注ぐ。
 美しい珊瑚に彩られた相手の獲物は、どうやら剣であるらしい。対するこちらの獲物も斧とあれば、距離を詰める必要があるだろう。
 そう思考を泳がせながら、ヌルは足に力を込めて一息に空間を飛び越えた。
 時間と空間、そして世界法則までもを書き換えながら、刹那の間に繰り広げられる逆説連鎖戦。
 一瞬で距離を詰めたヌルは渾身の力を籠めて、両の斧を地に叩きつけた。
「――そら、散らばった破片を踏みしめなぁ!!」
 海面に爆ぜた飛沫がパラドクスの力を帯びて無数の破片となり、それがコーラルレディの足元を瞬く間に埋め尽くす。
 ヌルはそのまま畳み掛けるように両の斧で連撃を重ねていく。
 コーラルレディも禍々しい風合いの黒の曲剣で応戦してくるが、二撃目に確かな手応えをヌルは感じていた。
 片方が捌かれたとて、もう片方が当たるだろう。そういう理由で二振りの斧を持っているヌルだが、どうやら今回も功を奏したようだ。
 破片に足を取られ、二振りの斧を捌ききれなかったコーラルレディに確かな斬撃が刻まれる――が。
「――舐めんじゃないよ!」
「……っ!」
 コーラルレディの全身を彩る珊瑚が輝きを帯びて、ヌルの精神を眩ませる。
 僅かに動きを鈍らせた一瞬にお返しとばかりに繰り出された曲剣の刃を受け止めながら、ヌルはすぐさま距離を取った。
 鮮やかな血が凪いだ海面に吸い込まれていく。
 だが、決して浅くはない傷を負いながらもヌルの表情は余裕さえ窺わせるもの。
「……生憎と、アタシ一人じゃねぇんだよなぁ」
 わかってると思うがな、と不敵な笑みを深めながら。
 更なる一撃に繋ぐべく、ヌルは確りと斧を構え直した。
 
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!

四葩・ショウ
――そうだね
貴女の相手は、『わたし達』

一人じゃないの言葉に微笑んで
先行する仲間のもとへと
船の上なら【エアライド】の跳躍を交えての翻弄を
海の上なら【水面走行】での
得意のヒットアンドアウェイを、使い分けて

仲間と連携をはかって、攻撃の手を止めずに
だめ、返してあげない

ぱちり、指を鳴らしたなら
どこからともなく現れる
魔法のケルピーの、キミの背中に身をまかせて

コーラルピンクのいろをした
レディの珊瑚はきれい、だけど
貫かれる前に硝子のレイピアで狙いを逸らしたり
ふかく貫かれるのを防いだりしよう

貴女も、貴女達の海賊船も
逃がすわけにはいかないからさ
不利を悟られる前に
退路を断つように動いておくね

……ねぇ、
わたしの宝物、みせてあげる
場違いな言葉で注意を惹けるかな

それは妹がくれたクリスマスプレゼント
手紙が添えられた
雨上がりのロゼット

貴女にはわからないよね、でも
わたしにとってのなによりの、宝物
もう二度と、うばわれたくない――だから

揺らめく水の鬣をたなびかせて
魔法のケルピーがとびかかるまま一撃を
わたし達の邪魔を、しないで


間桐・ホロウ
船の上での戦闘というのも中々に
足腰が鍛えられそうで…おっと、
海賊半魚人たちは最後のひとり残らず
海へと沈んだようですね

残るはアヴァタール級のコーラルレディ…
彼方の海賊船の船長と言ったところでしょうが
俺たちディアボロスにとっての大西洋の足である、
此の海賊船を次へと繋いでいくために
奪い返させる訳にはいきませんので
……愛着の湧いてきた船の愛称、というのも
楽しそうには聞こえてきますが其れは後程
ことが上手く運んでからのお楽しみ

宝箱や輝くサンゴは目眩しでしょうかね
厄介そうな動きなどの情報を共有
声掛け等でなるべく連携を図るように
孤立と死角を防ぐよう立ち回り
【エアライド】や【飛翔】も活用し
サンゴの動きを躱しながら
疾風の力を我が身に、と
Procyonの名を持つ弩に疾風を乗せて
狙撃による貫通撃を重ねましょうか

しぶとく在るのが海賊かもしれませんが
此の船という宝を略奪させたりは致しませんよ
配下のあとでも追うように
此処で沈んでもらいましょう

連携・アドリブ歓迎


シエルシーシャ・クリスタ
アドリブ・連携歓迎

せめて、小さくても船団を組んで来るべきだった……とは言っておくよ。
だってお前たちは一番乗りじゃない。
私たちはもう何隻も撃退してるんだもの。
反省がないのか、横のつながりがないのか。どっちかな。
まあ、決着は海賊の流儀でいいよね。
殴って撃って、勝った方の総取り。お前達に合わせてあげるんだ、もちろん逃げないよね?

少し、相手の出で立ちには共感はある。私も両腕がこんな風だしね。
でもまあ、潰す相手には変わりはないけど。

珊瑚が伸びてくるなら、体のバランスは乱れそう。上手く払えば体勢崩せるかな?
相手の姿勢の変化から狙いやタイミングも図れるかも。
……まあその辺全然気にしないケンカ殺法の可能性も高いから、そこばかり見るつもりはないけどね。思い込みでの戦いは危険。
まともに貫かれたくはないし、私自身は守りに専念かな。
攻撃は、呪詛の『手』に任せよう。
幾つも幾つも、いくらでも。密かに忍び寄り縋りつき命を啜る。
ナックラヴィーは海から来たる禍の名。深い水底へ連れていく。
珊瑚は水底に沈むのが相応しいよ。


「あなたがそちらの海賊船の船長、ですか」
 波に揺れる船上での戦闘というのも、なかなかに足腰が鍛えられそうなもの。
 こちらの船へ強襲を仕掛けてきた海賊半魚人たちが沈んでいくのを確かめてから、間桐・ホロウ(虚・g10795)は残留効果が敷かれた海面にふわりと降り立った。
「……だから何だって言うんだい?」
 配下たちを悉く倒されただけでなく、先んじて仕掛けた復讐者による手痛い一撃を受け、コーラルレディの表情は険しさを増していた。
「――そうだね、貴女の相手は、“わたしたち”」
 一人じゃない。紡がれたその言葉に柔く笑んで、四葩・ショウ(After the Rain・g00878)は先駆けた同胞と入れ替わるように前へ出る。
 そう、ディアボロスは一人ではない。今この瞬間だって船にいる者や、ともすればディアボロスとしての力で新たに駆けつけられる者だっている。
 対するアビスローバーは――少なくとも戦場に立つのは、コーラルレディただひとりだ。
「せめて、小さくても船団を組んで来るべきだった……とは言っておくよ」
 ホロウと同じく凪いだ海面へ降りたシエルシーシャ・クリスタ(水妖の巫・g01847)が、こともなげに続く。
「だってお前たちは一番乗りじゃない。私たちはもう何隻も撃退してるんだもの。……反省がないのか、横のつながりがないのか。どっちかな」
「……ッ!」
 それは、こちらからすれば事実でしかないのだが――ただ淡々と紡がれるシエルシーシャの言葉を、はたして、コーラルレディはどのように受け取っただろう。
「まあ、決着は海賊の流儀でいいよね。殴って撃って、勝った方の総取り」
 新宿島に流れ着き、復讐者としての力を得た時に“混ざった”辰砂の鮮やかな朱色の腕と角を持つシエルシーシャとしては、珊瑚の彩を宿すコーラルレディの出で立ちに共感がないわけではない。
 けれど、シエルシーシャにとってそれは何らかの意味があるようなことでもなかった。
 何故なら。相手がどのような姿をしていたとしても、クロノヴェーダならば――潰すことに、変わりはないのだから。
「お前たちに合わせてあげるんだ、……もちろん、逃げないよね?」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよッ!」
 激昂したコーラルレディがシエルシーシャへと狙いを定める。
 直後に伸ばされた珊瑚を辰砂の腕で力任せに払いながら、シエルシーシャもまた“手”を伸ばした。
 不意を狙った一撃に対応できたのは、冷静に守りに徹したからこそ。
 反撃として放つのは、呪詛帯びる深紅の宝玉に封じられた水妖――海辺の死を象徴するナックラヴィー。
「ナックラヴィー、呪え、縋れ、啜れ――」
 凪いだ海面が揺らぎ、いくつもの水溜まりが生み出されて。
 そこから伸びる“手”の群れが、瞬く間にコーラルレディを抱き締めた。
 シエルシーシャの反撃を受けたコーラルレディへ、畳み掛けるようにホロウが続く。
 元はアビスローバーたちの船とはいえ、今はもうディアボロスたちの大事な船であり、大西洋を渡るための大切な足だ。
 ――海賊とは、奪ったり取り返したりが常ではあるけれど。
「残念ながら、この船はお返しするわけにはいきませんので」
 お引き取り願いましょうと微笑みを浮かべながら、ホロウは弩を構える。
 この船に愛称をつけるという楽しそうな話も聞こえてきているが、今は迫る脅威を退けるのが先だ。
「楽しみというものは後に取っておいたほうが、やる気が出ますからね」
 海賊船を守り抜き、次へと繋いでいくために。
「――疾風の力を、我が身に」
 翠の疾風を纏い、空高く舞い上がって。
 天に輝く星の名を冠する弩で狙い定めるは、眼下のコーラルレディただひとり。
 風雲月露(シルフィード)の一矢が寸分の狂いもなく貫いた直後、瞬時に空間を超えたコーラルレディが薄紅の珊瑚を槍のように鋭く伸ばしてくる。
 咄嗟に身を捻ったホロウの肩口を、尖ったサンゴが掠めていった。
 ――“いかにも”な宝箱も、珊瑚の美しい輝きも。どちらも厄介なものではあるが、こちらの目を惹きつけるには到底至らない。
 コーラルレディがホロウと刹那の攻防を繰り広げた直後。
「そう、だめだよ。……返してあげない」
 ぱちりと、軽やかに指を鳴らしながらショウが告げる。
 合図と共にメロウブルーの空と海から躍り出るのは、煌くひかりを帯びた魔法のケルピー。
 水の鬣揺らめくその背に身を任せれば、悪戯っこなケルピーはつぶらな瞳を輝かせながらじゃれつくように飛びかかった。
 コーラルピンクの珊瑚は綺麗だけれど、こちらに向けられる研ぎ澄まされた切っ先が心臓を狙っているのがわかるから。
 硝子のレイピアで僅かに軌道を逸らすことで深く貫かれるのを防ぎながら、ショウはケルピーと共に海を駆ける。
 ちらりと、敵の海賊船を見やる。
 当然のことながらコーラルレディが生きている限り、彼らは逃げ出すようなことはしないだろう。
 だが――コーラルレディが倒れたならば、話は別だ。
「貴女も、貴女たちの海賊船も。……逃がすわけにはいかないから、さ」
 言いながら、ショウはコーラルレディに悟られぬようにさりげなく、退路を塞ぐような位置に回り込んでいった。

 場に満ちる残留効果の加護を纏い、伸ばされる無数の珊瑚を受け止めながら、ディアボロスたちは刹那の好機を逃さずコーラルレディを追い詰めていく。
 幾度かの攻防を経て確かな手応えを得たディアボロスたちはみな、戦いの終わりが近づきつつあることを察していた。
「……ねぇ、わたしの宝物、みせてあげる」
 ケルピーと共にふわりとコーラルレディの眼前に降り立ったショウは――唐突に、告げる。
「……?」
 それは、あまりにも場違いな言葉であったかもしれない。
 事実、コーラルレディは訝しげにショウを見つめていて、言い換えるならば、ショウにすっかり気を取られていた。
 ちらりと、シエルシーシャとホロウに目をやって。
 ショウが取り出したのは、燕が運んだ手紙――折り紙のハートが添えられた、雨上がりの花と虹が咲くロゼット。
 それは大切な妹から贈られた、クリスマスのプレゼントだ。
「何を……」
「貴女にはわからないよね、……でも、わたしにとってのなによりの、宝物」
 ますますもって意味がわからないと言わんばかりのコーラルレディに、ショウは微笑んだままロゼットを仕舞い、続ける。
「もう二度と、うばわれたくない――だから」
 揺らめく水の鬣をたなびかせ、水飛沫を弾けさせながらケルピーが飛びかかる。
 微笑みを隠した硝子のように透き通る眼差しは、射抜くようにコーラルレディを見つめて。
「――わたしたちの邪魔を、しないで」
 衝撃に後方へ吹き飛ばされたコーラルレディの前に、シエルシーシャが回り込んでいた。
「ナックラヴィーは縛る招き手。海から来たる禍の名。深い水底へ――お前を連れていく」
 執拗なまでに縋り付く異形の手。海面に揺らいで広がる幾つもの水溜まりは、呪詛のみを通す“門”だ。
 幾つも、幾つも――いくらでも。ナックラヴィーは密かに忍び寄り、縋りつき、貪るように命を啜る。
「珊瑚は水底に沈むのが、相応しいよ」
 ぽつりと、シエルシーシャが吐き捨てる。
 コーラルレディはナックラヴィーの腕から逃れることも叶わぬまま、己に終焉を齎す“風”を見た。
「しぶとく在るのが海賊かもしれませんが、此の船という宝を略奪させたりは致しませんよ」
 ――此処で沈んでもらいましょう。そう短く言い捨てて、弩を構えたホロウが幾度目か、パラドクスの力を巡らせる。
 翠の風がホロウを遥かな高みへと導いて、輝き光る一条の矢がコーラルレディを貫き――そして。
「か、は……ッ、」
 力を失くした人形のようにその場に崩れ落ちたコーラルレディは、ナックラヴィーの腕に抱かれたまま――。
 導かれるように静かに、昏く深い水底へ沈んでいった。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水中適応】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【トラップ生成】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
【ドレイン】LV1が発生!

「――お頭ァ!!」
 響いた声は、敵の海賊船に残るトループス級のものだ。
 コーラルレディの敗北を目の当たりにした彼らは、すぐに船を動かし始めた。
「畜生! ここは一旦退くぞ!」
 ディアボロスの海賊船から距離を取り、逃走を図る敵の海賊船。
 これに打撃を与えれば、追撃の手を緩めさせることが出来るだろう――。
 
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

敵船長とやりあった仲間達へ会釈と御礼を

良い風が吹いている
そんなに慌ててどちらまで……
せっかくだ。土産を持っていくといい

双眼鏡で観察し、敵船との距離をはかり捕捉
仲間とパラドクス通信でタイミングを合わせ、PDで追撃を仕掛けよう
クロスボウ»Paradiesvogel«に矢を番えて、距離と風速風向を加味し、船に狙いを定めて放つ、二連射
命中アップで研ぎ澄まし、ダメージアップのせて射貫こう

船体を目掛け、一射で黄金の塗料を撒き船体へ貫通させ、二射で着火し爆破
爆破で直接船体に穴をあけつつ、爆風や火花でマストや周囲を巻き込んで大破を狙う
まるで風景の青をキャンバスにするようだと思いつつ
仲間の攻撃とも相乗を狙おう

反撃は油断せずに、魔力障壁で身を護りつつ
半魚人たちの斬り込みや飛来する攻撃には、銀色のタワーシールドを構えて全身をガードする

これに懲りて、二度と邪魔されないといいのだが……まあ、何度でも追い返そう
大西洋は、彼らにとっても重要な航路なのだろうな
この先の海に、何が待ち受けるのか――楽しみだ


シエルシーシャ・クリスタ
アドリブ・連携歓迎

ああ、船足に自信があるだけあって逃げ足は速そうだね。
考えなしに敵討ちだって突っ込んでこない分、状況が見えてるって言うべき?
でも本気で逃げたいなら、船を捨てて身一つで逃げた方が……いくら半魚人でもそこまでは無理なのかな?

さ、最後の仕上げだね。
ある程度壊せればノルマは達成なんだけど、どうせやるなら船ごとお頭の後を追わせられるとこまでやりたいよね。
最初から近づいてれば船底と竜骨を斧で刻んであげる所なんだけど、少し遠いか。なら……
ボコッと鈍い音を立てて左肩から生えてる一際巨大な結晶塊を折り取る。
それを思いっきり、砲弾のように、敵艦の喫水線の辺りを狙って斜め上から突き刺さるように投げつけよう。
上手く刺されば船底も破ってくれるかもだし。
そこからは船を壊すのはみんなに任せて、小さめの結晶をバンバン投げてトループスを迎撃する方に回ろうかな。
船員を削った分、船足も鈍るし皆が壊しやすくなるはず。


四葩・ショウ
愛らしいティンカー・ベルは、いなくても
信じるこころのままに靴裏でとびだす
敵の船が動き出したと気づいたなら、すぐに
最高速度の【飛翔】で追いかけよう

そのまま襲いかかるんじゃなくって
すこし距離をあけ追い抜けてから――くるり、つばめの急旋回
進行方向に立ち塞がって
仲間が狙いを定めやすいように

似たようなガレー船なら
たぶん追いつけるとおもうけど
追いつけなかったり危険なら、
船の横合い方面とかから攻撃しようかな

前(わたし)ばかりみてると危ないよ
タイミングを合わせて
召喚した硝子のレイピアに手にかけ、投擲していく

敵を狙ったかにみせかけて
櫂をなるべく多く壊せるよに狙いすまして
マストや縄を貫くよに、レイピアを差し向けてあげる
次々くるだろう反撃には
召喚したレイピアを盾にして尾の勢いを削いで
目眩くラスト・ダンスを披露したなら
瞳が映す青とおなじ彩にそまった
白のペリースを翻して、皆のところへ

わるい海賊船を追いはらう
いつかのストーリーのエンディングを胸に擁くけど
それでもまだ、この航海は続くから

バイバイ
もう追ってこないでね


「……良い風が吹いているな」
 アビスローバーという嵐を無事に乗り切ったディアボロスたち。
 コーラルレディと戦った仲間たちへ会釈と礼を告げてから、俄に慌ただしく撤退を始めた敵の海賊船と、船を追って翔け出したショウを双眼鏡で見やりつつ、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は呟く。
「そんなに慌ててどちらまで……といった所かな」
 その隣で、シエルシーシャ・クリスタ(水妖の巫・g01847)が続けた。
「……ああ、船足に自信があるだけあって、逃げ足は速そうだね」
 多くの仲間たち、そして船長であるコーラルレディまでもが倒されて――それでも考えなしに敵討ちだと突っ込んでこない所を見ると、どうやらそれくらいの冷静さと判断力はあるらしい。
「でも本気で逃げたいなら、船を捨てて身一つで逃げた方が……いくら半魚人でもそこまでは無理なのかな?」
 ディアボロスたちに撃退され続けているとはいえ、次から次へと本気で取り返しに来るくらいだ。
 言わばアビスローバーにとっての海賊船は、それほどまでに重要な存在だということなのだろう。
「とにかくここまで来たし、あとは最後の仕上げだね。どうせやるなら船ごとお頭の後を追わせられるとこまでやれないかな……」
 最低限、すぐには再び追ってこられなくらいの損傷を与えられれば言うことはないのだが、やるからには徹底的にとシエルシーシャは考えていた。
「船底と竜骨を斧で刻んであげたいところだけど、少し遠いか。なら……」
 敵船が動き出すと同時、四葩・ショウ(After the Rain・g00878)は凪いだ水面を蹴って舞い上がっていた。
 ――愛らしいティンカー・ベルはいなくても、信じるこころのままに。
 はためく白のペリースを翼に変えて、風を切り、空を翔けて。
 最高速度の飛翔で、逃げる海賊たちを追いかける。
 追いつくのはそう難しいことではなかった。
 いかに彼らのほうが操船技術が優れているとはいえ、ディアボロスとの戦いを経た今、船には最低限の人員しか残っていない。
 それでも船を動かすだけならば問題はなかっただろう。――ディアボロスたちによる追撃さえなければの話だが。
 海を翔けるショウはあっさりと敵船に追いついて、けれど、そのまま襲いかかるのではなく。
 まるで風と遊ぶように少し距離を開けて追い抜いてからくるりとツバメのように急旋回し、海賊たちの行く手を塞ぐように、彼らの前に立ちはだかった。
「なっ……!」
 逃げるのに夢中で追いかけて来ていることに気づいていなかったらしい海賊たちへ、ショウは悪戯っぽく微笑みかけて――。
「――前ばかりみてると、危ないよ。……さあ、」
 それが、合図。
 パラドクス通信の通信機越しにショウの声を受け取ったエトヴァとシエルシーシャも、すぐさま追撃に移った。
「折角だ。……土産を持っていくといい」
 クロスボウ――»Paradiesvogel«に矢を番え、敵の海賊船へと狙いを定めるエトヴァ。
 呼吸をひとつ。エトヴァは心を研ぎ澄ましながら、魔力媒体の塗料を籠めた鏃にパラドクスの力を乗せて解き放った。
「――Blühe.」
 距離と風速風向を加味しつつ、連続して放たれる二本の矢。重ねた残留効果の加護を纏い、一本目の矢が黄金の塗料で敵船を彩った直後、間髪をいれずに二本目の矢が炎を纏いながら突き刺さる。
「うわあああっ!!?」
 火は塗料を伝って瞬く間に燃え広がり、すぐさま轟音を響かせながら盛大に爆ぜた。
 船体に大きな穴が開き、爆風がマストを吹き飛ばして――まるで空と海のふたつの青のキャンバスに黄金の薔薇の油彩画が咲き乱れるかのように、鮮やかな色彩が散りばめられていく。
「思いっきり、いくよ」
 続くシエルシーシャはおもむろに左肩に生える一際大きな結晶塊を折り取った。
 ぼこっ、と響いた鈍い音。硬く鋭く、そして冷たいその結晶塊を、シエルシーシャはそのまま渾身の力を籠めて投げつける。
 狙いは水上に浮かぶ船の船体と海面が交わる喫水線。
 鬼の剛力を得て瞬く間に空間を超えた結晶塊は砲弾の如く狙い通りの場所に命中し、凄まじい音を立てながら呑み込まれていった。
 衝撃に敵船がガクンと大きく揺れたのを見るに、もしかしたら船底まで突き抜けたのかもしれない。
「うわあああっ、み、水がーーー!!」
 海賊半魚人たちの悲鳴じみた声を聞きながら――ぱちりと指を鳴らせば、まるで手品のように。
 ぐるりと咲いた十二の煌めく硝子のレイピアを、ショウは次々に手に取っては投げつける。
 披露するのは目眩い連撃のラスト・ダンス。幾つもの煌めくプリズムのつるぎでで敵を攻撃するように見せかけて、狙い澄ますは船そのもの。
 櫂を壊し、マストや縄を貫いて、ショウの攻撃もまた確実に船としての機能を削ぎ落としていく。
「やめろーーーッ!!」
 堪らず飛び出してきた海賊半魚人が振り抜いた尾の勢いを、残るレイピアを盾にして払ったショウは、すぐさま距離を取る。
 すると――。
「ぐあっ……!?」
 次の瞬間にはシエルシーシャが放った結晶片が、今しがたショウを襲った海賊半魚人の急所を寸分の狂いもなく貫いていた。
 反撃に備えエトヴァは銀色のタワーシールドを構えつつ魔力障壁を展開するが――どうやら敵はもう、それどころではなさそうだった。
「くそーっ、覚えてろーーー!!」
 マストや櫂が折れ、所々から火の手を上げながら、敵の海賊船は更なる追撃から逃れるように撤退していく。
「さすがに沈められなかったか……残念」
 シエルシーシャが零した通り、船ごと沈めることこそ出来なかったものの、彼らの船は母港に戻り、本格的な修理のための入渠を余儀なくされることだろう。
 今回も無事に任務を遂行できたことにほっと安堵の息を吐き出して、エトヴァは呟く。
「これに懲りて、二度と邪魔されないといいのだが……」
 だが、たとえまたやって来たとしても、何度でも追い返すだけだ。
 ――船が大事なのもあるが、大西洋は、彼らにとっても重要な航路なのだろう。
 なればこそ、より“期待”も大きくなるというもの。
「……この先の海に、何が待ち受けるのか――楽しみだ」
 それははたして宝の山か、それとも――。
 海賊たちの襲撃を退け、再びゆるりと動き始めた船へ、ショウは瞳が映す青とおなじ彩にそまった白のペリースを翻しながら帰還する。
 ――わるい海賊船を追い払ったら、夢から覚める時間。
 思い浮かんだいつかの物語のエンディングを胸に抱きながら、ショウは彼方の海をまぶしげに見やり、そして去りゆく敵の船へひらりと手を振った。
「――バイバイ。もう追ってこないでね」
 
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
【エアライド】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2024年03月24日

盗んだ海賊船で行く大西洋横断作戦

 ポルト港海賊船奪取作戦により、大西洋を横断可能な中型海賊船の1隻を強奪、ポルトの港から出航する事に成功しました。
 攻略旅団の方針により、中型海賊船は南米カリブ海にあるという『海賊島』を目指します。
 しかし、一定以上の大きさを持つ海賊船の強奪は、アビスローバーにとっては許されない大罪のようです。
 広い大西洋上ですが、多くの海賊達がディアボロスの奪った中型海賊船を追い、襲撃を掛けてきます。

 この襲撃を凌ぎ切り、海賊島を目指して航海を続けてください。

※特殊ルール
 この事件は、攻略期限がありませんが、航海に時間を掛ければかけるほど、敵の海賊船の襲撃が増え、余計な遠回りをさせられてしまいます。
 毎月1日の朝8時30分に、この事件の成功に必要なシナリオ数が『3』増加します(初期12)。

【24/05/01:必要シナリオ数の増加はありませんでした(現在14)】
 選択肢「敵海賊船への追撃」により24/5/1の増加を阻止できています。
【24/04/01:必要シナリオ数の増加はありませんでした(現在14)】
 選択肢「敵海賊船への追撃」により24/4/1の増加を阻止できています。
【24/03/01:必要シナリオ数の増加はありませんでした(現在14)】
 選択肢「敵海賊船への追撃」により24/3/1の増加を阻止できています。
【24/02/01:必要シナリオ数が2増加しました(現在14)】
 選択肢「敵海賊船への追撃」により24/2/1の増加数は1減少しています。

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#黄金海賊船エルドラード
🔒
#盗んだ海賊船で行く大西洋横断作戦
🔒
#大西洋
🔒
#海賊船


30




選択肢『海賊島への航海』のルール

 海賊船を操船して、海賊島に向けて航海を行います。
 海賊船はクロノ・オブジェクトなので、漕ぎ手がいなくても櫂が動いて進みますが、ディアボロスが櫂を漕げば、その分だけ早く進む事が可能です。
 また、風の状況に合わせて帆を操作する事でも、速度を上げることが出来るでしょう。
 他にも、海流や天候などを考慮して進路を設定するなど、航海に必要と思われる行動を行ってみると良いかもしれません。

 詳しくは、オープニングやリプレイを確認しましょう。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【🔑】この選択肢の🔵が👑に達しない限り、マスターは他の選択肢のリプレイを執筆できない。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『敵海賊船への追撃』のルール

 襲撃してきた敵を一掃すると、敵海賊船は撤退していきます。
 撤退する海賊船に対して、攻撃を仕掛ける事で、敵海賊船にダメージを与える事が出来るでしょう。
 反撃があるので、不用意な攻撃をすべきではありませんが、海賊船に打撃を与える事で、追撃の手を緩めさせることが出来るかもしれません。

 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。

※特殊ルール
 この選択肢の『🔵』が10以上であった場合、海賊船は大きな被害を受け、母港に帰還せざるを得なくなります。
 海域の海賊船の数が減る事で、ディアボロスの海賊船への襲撃が減少します。
(毎月1日に増加する必要シナリオ数の数が『1』少なくなります。3シナリオで特殊ルールを達成すると、毎月1日の必要シナリオ数の増加が無くなりますが、4シナリオ以上で達成しても、必要シナリオ数が減少する事はありません)


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、シナリオは成功で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾ディアボロスを狙うトループス『海賊半魚人』のルール

 ディアボロスを発見した途端に、ディアボロスを狙って攻撃して来るトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 ディアボロスに攻撃を仕掛けてくれるので、敵の捜索を行ったり、周囲の被害を減らす為の行動などは必要ありませんが、戦意が高い傾向にある為、油断は禁物でしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との戦闘『コーラルレディ』のルール

 事件解決の為に、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破するだけでは事件を解決できないので、戦闘終了後、必要な行動を行ってください。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※このボスの宿敵主は「シメオン・グランツ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。