リプレイ
ア・ンデレ
リューロボロス様(g00654)とおデートいたしますわ。
「リューロボロスさん、今日は傘作りでバトルですわ!」
私が作るのは二人用のドラゴン傘。
ドラゴンの大きな二枚の翼で雨を防ぐ、画期的な傘ですのよ。
持ち手はドラゴンの尻尾になっておりますの。
ドラゴンの鱗の質感や、顔の造形にもこだわって最高のドラゴン傘にしてみせますわ。
(出来た後)
「できましたわ!どうですか、リューロボロスさん。最高の傘ができましたわよ!」
(出来た傘はまさに芸術品と呼ぶべき美しきかっこいいドラゴン傘。しかし傘としての性能は普通の傘の方が高い。)
「この傘で、雨の日にデートしたら、きっと楽しいですわ。皆の視線も独り占め、いや二人占めでしょうね。」
(リューロボロス様の傘を見て)
「美味しそうなクッキーの傘になっておりますわね。すごいですわ。
でもリューロボロスさん。クッキーは濡らさずに食べる方が美味しいですわ。
傘には不向きかもしれませんわね。」
リューロボロス・リンドラゴ
アンデレ(g01601)と共に。
アンデレよ。
また口調が七変化しておるのだが!?
七どころではないと思うが!
う、うむ。受けて立つぞ?
ぬしが我に因んだドラゴン傘を作ってくれるというのなら、我もぬしに因んだ傘にするかの。
ぬしと言えばクッキー、スライム、笑顔。
……2/3程、ぬしの顔だの。
いっそぬしの顔型クッキーを模した傘にするかの。
……ぬしのディアコレで見たことあるデザインになってきたの!?
う、うむぅ。
中々に難しいの。
我の中にあるぬしを形にしてゆくというのは。
開いた傘の丸をぬしの顔と思って、クッキーっぽい色にデコ。
おっきな目と口、角っぽいものを飾って……。
もうちとそれっぽく。
もう少し愛嬌を……。
ぬううう。
ぬしほど器用にはいかぬが、楽しいの!
おおおお!
な、なんと!?
めちゃくちゃカッコイイ傘ではないか!
浪漫特化、我好きぞ!
だがその視線はもっぱら傘の方に向けられそうな気がするのだが!?
我のも悪くないかの?
……床が特大クッキーになっておる家に招待してきたことのあるぬしに普通のクッキーを説かれるとはのう。
「今日は傘作りでバトルですわ!」
ア・ンデレ(すごいぞアンデレちゃん・g01601)は燃えていた。
静かに――ではなく、わりかし分かり易くハイテンションに燃えていた。だって今日はリューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)とのおデートなのだ。
燃・え・な・い・わ・け・が・な・い。
「リューロボロスさんは、どんな傘を作られます? 私は二人用のドラゴン傘にいたしますわ」
9歳にしては大柄な体躯を活かし、アンデレは両手をうんっと大きく広げる。どうやらドラゴンの翼を模しているらしい。
「このような大きな二枚の翼で雨を防ぐ、画期的な傘ですのよ」
持ち手はドラゴンの尻尾にして、鱗の質感や顔の造形にもこだわるのだと、アンデレは息巻く。
「最高のドラゴン傘にしてみせますわ!」
ドヤっと息巻くアンデレに、ツッコミを入れる隙なぞありはしなかった。
「アンデレよ……」
既に作業に没頭している背中を目に、リューロボロスは燐光が煌めくような緑の眼差しを遠くする。
アンデレが『ドラゴン傘』と言い出したのは、おそらくリューロボロスがドラゴニアンだからだろう。その気遣いは嬉しく思う。
が、それ以前に。アンデレの口調が気になった。
(「また七変化しておったのだが!? いや、そもそも七どころではない気がするのだが!?」)
孤高な竜たるリューロボロス(8歳)の思考では、あれこれ若干、追いつかない。
いったいアンデレは、どの傘をベースに、どういうアレンジをしてドラゴン傘に仕立てるつもりだろう。それってもうデコレーションの域を脱してる気がしないでないが、アンデレがやるというのだ、やりきるのだけは確かだ。
「……むう。挑まれたからには、受けてたたねばの」
むむむ、っとリューロボロスの眉間にしわが寄る。
アンデレがリューロボロスにちなんだ傘を作るのだから、リューロボロスはアンデレにちなんだ傘を作るのが良いのだろう。
リューロボロス、考える。
アンデレは鬼人だ。そして魔喰いだ。ミニドラゴンのトロも連れている。
だが、モチーフとしてはピンと来ない。
「ぬしと言えばクッキーよの。あとは、スライム。そして笑顔……む」
思い浮かべて、リューロボロスはますます眉間のしわを深くする。
三つのうちの二つが直球ど真ん中でアンデレだった。ちなみに笑顔とスライムだ。なお、スライムの方は道具一覧でも、ぴょんぴょん跳ねまくっている。
「となればクッキー……いっそ、ぬしの顔型クッキーを模した傘に――――んんんんん」
あまり悩んでいても埒が明かない。そう割り切り作業に着手したリューロボロス、気付く。気付いてしまう。
なんかこれも見た気がする。具体的に言うと、春先のコレクションなあれで。
行く先々を、既にアンデレによって封じられている気分だ。しかしまあ、アンデレだから仕方ないのかもしれない。きっとそうだ。
「それにしてもなかなかに難しいの。我の中にあるぬしを形にしてゆくというのは」
開いた傘の『円』を顔に見立て、シールで大きな目と口を作る。
「もう少し愛嬌を……」
内側からの作業だから、時折ひっくりかえして確認するのも忘れない。
おおまかが出来上がったら、クッキー色へと塗って行く。
「あとは、角っぽいものを飾って……」
大作を仕立てるアンデレのように器用にはいかないけれど。思い浮かべて形にしていく笑顔につられたように、リューロボロスの顔もいつの間にか笑顔になっていた。
「できましたわ! どうですか、リューロボロスさん。最高の傘ができましたわよ!」
――アンデレが作り上げた傘は、もはや傘ではなく、芸術品であった。
いや、確かにドラゴンだ。立派にドラゴンだ。看板に掲げでもしたら、人目をぐいぐいひくこと間違いなしのドラゴンだ。
浪漫特化に実用性はない。なれどリューロボロスは大いにツボを刺されまくった。
「めちゃくちゃカッコイイ傘ではないか! 我好きぞ!」
ぴかぴか輝くリューロボロスの笑顔に、アンデレは「そうでございましょう」と胸を反らす。
「この傘で雨の日にデートしたら、きっと楽しいですわ。皆の視線も独り占め、いや二人占めでしょうね」
「――ん?」
多分、心は既に飛んでいるのだろう。ほんのりうっとりモードのアンデレを前に、またしてもリューロボロスは気付いた。
この傘を差して歩いた場合、視線がいくのはもっぱら傘の方ではないだろうか。
とは言え、バレンタインデーにツッコミは無粋かと、リューロボロスは一先ず口を噤み、己が作った傘を渡すことを優先した。
「ぬしほど上手くはないが……」
「まあ! 美味しそうなクッキーの傘になっておりますわね。すごいですわ」
傘を受け取り表情を華やげたアンデレの様子に、リューロボロスもほっと胸を撫で下ろす。
よかった。頑張った甲斐があった。そんな風にしみじみしかけた――直後。
「でもリューロボロスさん。クッキーは濡らさずに食べる方が美味しいですわ。傘には不向きかもしれませんわね」
「………………床が特大クッキーになっておる家に招待してきたことのあるぬしに普通のクッキーを説かれるとはのう」
今日一番のツッコミ所に、ついにリューロボロスは声に出して「ううん」と唸る。
流石アンデレ、終いまでサプライズだらけだ。だが結局、これも楽しいばかりの思い出になるのだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
レジーナ・ネイサン
《灰桜》
アドリブ◎
本当、傘と一言で括っても様々だ
花が咲いてるみたいだね
お、デコレーション!
世界で一つだけの、とかって言葉に目が無くて
今日はルリラに向けたひとつを作りたいな
どうしようか…
選ぶのは透明の晴雨兼用長傘
無し色の中心から外側に向けて夜明け空のような赤紫のグラデーション
縁は教会を思わせる、彩豊かなステンドグラス柄
コマ毎に僅かにポーズを変えた黒兎のシールを張っていこう
彼女と友人の兎はいつも一緒だからね
背景に雲や星をシールで足し
くるりと回せばゾートロープの様に仲間たちと共に兎が駆けている様に見える様に
留め具はボタンの代わりに小さな砂時計のチャームへ
それから…最後は金色の防水インクで『L』、赤花の飾り文字付
これで完成!
私に?ありがとう!――わ、内で雨が降ってる
美しい雫…この雨は私、好きだな
青い花の中に羊や兎を見つけて、思わず笑む
折り畳みなのも嬉しいね
私からも
いつでもあなたの世界がより楽しく
美しく彩られていくように、って
ふふ…そうか
よかった
うん
とっても良い想い出ができたよ
心からの笑みを向けて
ルリラ・ラプソディア
《灰桜》
アドリブ◎
傘が、いっぱい…
こんなに種類が、あったのね
デコレーション…あっちみたい
なにがいいかな…?
沢山の傘を眺め
レジーナさんへとびきりの傘を作るの
彼女はいつも色んなところでアートを描いているから
選ぶのは持ち運び便利な折りたたみ
色は白地に外縁が黒
装飾は主に傘の裏側
傘の中心に雲と
雲から零れ落ちる煌きのある雫のシールで彩る
陽の加減で雫が内側に光を魅せてくれるように
黒縁沿いには青花咲せる透明シールと
1枚の駒に黒羊と黒兎が歩くシルエットワッペンを縫う
あとは
いそいそ…お裁縫
白の傘袋の留め具近く
”R”の文字を金糸で刺繍をして――できた
イメージは…和やかな、雨のお散歩
楽しいアートの旅ができますように
あなたへ贈るわ
完成した傘を彼女の近くにさしてみせ
…ふふ、喜んでもらえて…よかった
!…わたしにも?
ステンドグラスの幾重に彩る優しい輝き…
お友だちもこんなにたくさん
雨の憂いを感じる間もないほど
心が弾むようで
…わたしも好き
楽しい時の巡りを感じるわ
また想い出…1つできあがり、ね
花が綻ぶように嬉しそうに微笑した
「ルリラ、こっち」
人ごみに尻込みしかけたルリラ・ラプソディア(Ⅻの子守歌・g00784)は、レジーナ・ネイサン(灰色キャンバス・g00801)に手を引かれて不規則なステップを踏む。
転ぶことはなかった。その代わり、開けた視界に広がる光景に呼吸を忘れる。
「傘が、いっぱい……」
「本当、傘と一言で括っても様々だ。花が咲いてるみたいだね」
彩や数、種類に圧倒されかけたルリラは、手をつないだレジーナの言葉に「本当に、そう」と吐息に感嘆を混ぜた。
まるで虹の袂にたどりついたようだ。
異世界へ不意に放り出された感覚に、ルリラはちらりと背後を見遣る。そこには変わらずバレンタインデーの賑わいがあった。
安心とも残念ともつかぬ心地でルリラは視線を戻す。その途中で、手作りの看板に気付いた。
「レジーナ、さん。デコレーション……あっちみたい」
握っていた手を解き、くいっと袖を引くと、途端にレジーナの二色の眼に光が灯る。
「本当だ! 私、世界で一つだけの、とかって言葉に目がないんだよね」
――そうだと思っていたの。
呟く代わりに、ルリラは跳ねた帽子頭に目を細めた。
レジーナは知る人ぞ知るウォールペインターだ。鮮やかに彩られた架線下やコンクリート壁は、SNSで話題になることがある。
だからきっと、こういうのも好きなはず。
果たしてルリラの予想通り、レジーナはもう傘の波間の人だ。ベースになる傘を選んでいるのだろう。
しかしルリラもゆっくりレジーナの後姿を眺めている場合ではない。
(「レジーナさんへ、とびきりの傘を作りたいの」)
ドキドキと胸を高鳴らせながら、ルリラも傘の世界へ歩み出る。
レジーナはいつもいろいろな場所でアートを描いているから、贈るのは持ち運びに便利な折り畳み傘と決めてきた。
(「……和やかな、雨のお散歩」)
灰色のコンクリートが、レジーナの手でカラフルに生まれ変わる瞬間を想像する。
雨が降っていたら、寒いだろう。でも、そんな雨の中でも楽しいアートの旅が出来るような――。
(「……これが、いいかしら」)
見止めた白地に外縁が黒の傘をルリラは手に取る。
広げたら、真白いカンバスだ。
(「傘を差して、初めて気付くの」)
中心に雲を描こう。そして雲からこぼれ落ちる雫で華やかに彩るのだ。
(「きらきらのシール……大丈夫、ある」)
外は雨。けれど内側には、光の加減で煌めく雫が魅せてくれる。
ひとたび羽搏き始めたルリラの想像力は、曇天を覆って余りあるほど広がりゆく。
(「黒縁沿いには、透明シールで青い花を咲かせましょう」)
(「傘を回したら、黒羊と黒兎が歩くように見えるのも素敵。シールワッペンはあるかしら……」)
ちくちくちく。
いつの間にか、ルリラは裁縫に夢中になっている。
背中合わせで作業していたレジーナは、ルリラの横顔に首を傾げてから、手元の傘に改めて向き直った。
選んだのは透明の晴雨兼用の長傘だ。シンプルな分、彩り甲斐があるのは言うまでもない。
ウォールペインターなレジーナの腕の見せ所である。
彩色が雨に流されてしまわないよう、意匠を凝らすのは内側だ。だから作業手順は、完成像の逆になる。
最初に貼ったのは、黒兎のシールだ。その周囲に、雲や星のシールを散りばめた。
それから縁に、教会を思わす色彩豊かなステンドグラス柄を描き上げ、中心から外側へ向け赤紫のグラデーションになるよう、得意のスプレーを薄く吹きかけた。
くるり。
「うん、いいね」
仕上がりを確認するよう傘を回すと、ゾートロープのように兎が駆ける。誰かと共にある時にこの傘を差したなら、きっと仲間たちと共に兎が走るように見えるだろう。
「最後は留め具を小さな砂時計のチャームに変えて――と、え? わあ!」
「……はい、あなたへ」
「私に?」
今まさに作業を終えようかというタイミング。
ぱっと傍らに開いた傘と、気恥ずかしそうにしているルリラに、レジーナは大きく目を瞠った。
「すごい、内で雨が降ってる」
傘を手に取り、間近で眺めて、レジーナは目尻を下げる。
「私、この雨は好きだな」
美しい雨に魅せられた。青い花の中に、羊や兎をみつければ、堪らず笑顔になる。
「折り畳みなのも嬉しいね。ありがとう!」
「……それだけじゃ、ないの」
「すごい、すごい!」
手渡された白い傘袋の留め具近く、金糸で縫い取られた“R”の文字にレジーナは声を跳ねさせた。
なるほど、先ほどの針仕事はこれだったらしい。
だとしたら、レジーナの傘の完成もまだだ。
「いたれりつくせり、ありがとう――ちょっと待ってて、私も仕上げるよ」
「え?」
ルリラの目の前で、夜明けを思わす傘に、さぁと金色の防水インクの陽が射した。
それは“L”の文字になって傘に留まり、赤花の飾り文字を添えられる。
「はい」
「!」
わたしにも? という言葉を喉に閊えさせたルリラは、ほう、っと円い吐息を小さく零す。
そして見つけた兎に、琥珀色の頬に薄紅を刷く。
「お友だちも……こんなにたくさん……」
ルリラの荷物の中、ひょいと顔を覗かせている眞紅の宝石を瞳に宿した黒兎のぬいぐるみを見て、レジーナはサプライズの成功を頷く。
「ルリラはいつも友人の兎と一緒だからね」
「……ありがとう。これならきっと、雨の憂いを感じる暇もなさそうね」
隠し切れない歓喜を満面に表すルリラに、レジーナも嬉しくなる。
「いつでもあなたの世界がより楽しく、美しく彩られていくように、って思いを込めたつもり」
「……ええ、ええ。十分に受け取らせてもらったの」
感じる時の巡りは、ルリラも好む楽しさに満ちていた。
「また、想い出……ひとつ、できあがりね」
「うん、とっても良い想い出ができたよ」
花が綻ぶようなルリラの笑顔に、レジーナも心からの笑みを向ける。
今は二つ並ぶ傘は、いつか別々の所で咲き開いても、この時の幸福な感情を二人へもたらすだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
四十万・八千代
【青花】
バレンタインに傘というのも珍しい
友チョコならぬ友傘もいい思い出になるだろう
今回互いに選んで贈ろうと、まずは土台の傘選び
一口に傘と言っても色んな種類があって迷う
先に決めたのは相手
夜明けの少し前の空の色をした和風の傘に目を移し
それを選んだ理由を耳にすればむず痒い気持ちで口の端を僅かに動かす
そんなにいいもんじゃないんだが君の目にはそう映っているんだな
俺の方は新緑の色をした傘を
理由は大それたものじゃなく
日の光に透ける青々とした葉が俺の中の彼のイメージだから
デコは白い光沢のあるリボンを使って
簡単な巻き薔薇を大小作って付けていく
ラルムが付けた沈丁花
俺の名と同じ意味というと永遠とか?
色々考えて作ってくれて……その、有難う
此方の傘は明るい緑に白い花が乗って
参ったな、まるでクリームソーダの様だ
だが確かに君と初めて出会った日の
思い出の飲み物だからこれもいいかもしれないな
さて、友傘ならもう一人贈りたい相手がいるな
折角だ二人で協力して作ろうと
赤く染めた紅葉の形の和紙を手にし
悪戯っぽく口の端を僅かに上げ
ラルム・グリシーヌ
【青花】
雨が唄う優しい音色と共に
お出掛けできる傘を贈れるなんて心躍るよね
ずらり並ぶ色形に模様を見比べ乍ら
友人と互いの傘選びするひと時は楽しくて
迷いに迷って選んだのは
宵と暁のあわいの世界に滲んだ彩に染まる番傘
君は朝を連れる優しい色
黎明の空を思わせる人だから
笑んで告げた一言に
傘を見遣る藍の視線は何処か擽ったそう
購入後は持参した飾りでデコっていくよ
慎重に傘の軒爪に銀古美の沈丁花を一輪垂らせば
友人に贈る傘の完成
ね、八千代
鈍く光る花が抱く言の葉は
君の名と同じ想いが籠められてるんだ
どんな空模様の下でも
ずっと笑顔で在れる様に俺も願ってるよ
傘飾る隣の手元を見れば
リボンから薔薇咲かせる様に
魔法みたい!と瞳輝かせて
彼の呟きには
八千代と俺の想い出の彩だね
また一緒に飲みに行こうなんて
思い馳せるは出会いの日
紅葉の姿を視界に映すと名を呼んで
良ければ君にも傘を贈らせて欲しいな
2人で選んでデコったんだ!
裏に緋色の和紙の紅葉躍らせ
水引細工の傘マーカーにも
紅葉揺蕩う蜻蛉玉を結わえた一つの朱の番傘
雨を迎える為の傘の花を、君に
ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)は雨が唄う音色を煩わしいとは思わない。
おそろしさを覚える激しさは時々あるけれど、もっぱらは地を潤し、命を育む優しいものだ。
とはいえ、鈍色の外出を彩ることには興味がある。
「お出掛けできる傘を贈れるなんて心躍るよね」
きちんと畳まれた傘たちが整然と陳列されている様は、真新しい色鉛筆セットのようだ。
自然と顏を綻ばせつつ、ラルムはペリドットの眸を傍らへ遣る。
連れ立った四十万・八千代(悪食ハッカー・g00584)も同じ心持ちなのかもしれない。いつもは気だるげな八千代の目も、興味の光を帯びている。
「なあ、ラルム。バレンタインに傘というのも珍しいよな?」
「うん。珍しいね」
熱心に傘を選びながらも、物珍しさは消えないのだろう。向けられた水にラルムが笑むと、「だよな」と八千代は短く頷く。そこに否定の色はない。
「友チョコならぬ友傘もいい思い出になりそうだ」
「そうだね」
せっかくの友チョコ代わりだ。互いに互いの傘を贈る話は既にしてある。
贈るからには、喜んでもらいたい。そういう想いがあるからこそ、最初の選択は重要だ。
「一口に傘と言っても色んな種類があるもんだ」
「どれにしようか迷うよね。けど、迷うのも楽しい」
日頃は催事に使われているらしいショッピングセンターの一角は、それなりに広い。
両サイドに傘が配された通路を、八千代とラルムは一本一本歩いて、戻って、歩いて、また戻る。
会話は途切れがちだ。しかしその無言さえ、今は愉しい。
そんな中、先に“とっておき”を見止めたのはラルムだった。
「これなんか、君に似合いそう」
手に取った傘をラルムは目線の高さまで掲げて、八千代と見比べる。
「君は朝を連れる優しい色。黎明の空を思わせる人だから」
「――そ、そんなにいいもんじゃないんだが」
萎む言葉尻に合わせて、八千代の唇もすぼむ。でも気分を害した顔ではない。どちらかというと、ラルムの目に己がそう映っていることを、擽ったく感じている顔だ。
「俺はこれにするよ。八千代はどうする?」
宵と暁のあわいの世界に滲んだ彩に染まる番傘の柄を握り、ラルムは八千代の横顔を窺う。
「俺は――もう少し選ぶ」
「うん、ゆっくり行こう。こんな機会、滅多にないからね」
銀古美の沈丁花を一輪、軒爪に垂らす。
手先に意識を集中させていたラルムは、持参した鈍く光る花が思い描いた通りに咲いてくれたことに、ほっと安堵の息を吐く。
「八千代、できたよ」
くるり、と傘を回すと、ころり、と沈丁花が唄う。
その音色につられて顔を上げた八千代は、白いリボンを手にしたままパチリと瞬いた。
「沈丁花?」
「そう、沈丁花。ね、八千代。この花が抱く言の葉は、君の名と同じ想いが籠められているんだ」
「同じ意味……永遠とか?」
――千代に、八千代に。
謎解きの答え合わせをすることなく、ラルムは目を細くする。
「どんな空模様の下でも、ずっと笑顔で在れるように俺も願ってるよ」
す、と閉じた傘を丁寧に畳むラルムの言葉に、八千代の口の端が僅かに動く。
「あー……色々考えて作ってくれて――その、有難う」
照れ隠しか、それとも感極まってか、或いはそのどちらでもなくか。
いずれにせよ、不意に八千代の手の動きが慌ただしくなる。リボンで花を作っているらしい。
「すごい、八千代。魔法みたい!」
唐突な褒め言葉と、言葉に嘘が無いのを示すラルムの目の輝きに、ますます八千代の手捌きが早まる。
光沢のあるリボンでくるりくるりと形作られているのは、大小様々な白い薔薇だった。
それを八千代は新緑色の傘に飾って行く。
「俺の方は、大それた理由がないんだが――」
一輪、一輪、丁寧に傘に咲かせていきながら、八千代は語る。
八千代の抱くラルムのイメージが、陽の光に透ける青々とした葉なのだと。
だが完成形に近付くにつれ、八千代の顔は強張りだす。そして最後の一輪を飾ったところで、八千代の肩が落ちた。
「すまない、ラルム。なんというか……クリームソーダになった」
緑の傘に白の花。成る程確かに、しゅわりと泡立つクリームソーダだ。
完全な目論見外に、八千代はがくりと項垂れる。
けれどラルムの反応は、大いに違う。
「八千代と俺の想い出の彩だね」
ラルムの弾む声に八千代は顔を上げる。
クリームソーダは、八千代とラルムが初めて出会った日の思い出の飲み物だ。
「また一緒に飲みに行こう」
過日に思いを馳せるラルムの笑顔に、たまらず八千代も破顔する。
滑稽な傘を作ってしまったかと焦ったが、これはこれでいいか、と思い直せたのだ。
「そうだな。また飲みに行こう――その前に」
「うん、その前にだね」
出来上がった傘を、八千代とラルムが同じタイミングで傍らに置く。
彼等の元には、手つかずの傘がもう一本――。
「え、俺に?」
「そう。俺と八千代でデコったんだ。雨を迎える為の傘の花を、君にもと思って」
元にしたのは朱の番傘だ。その内に、緋色の和紙で紅葉を躍らせ、傘マーカーの水引細工にも紅葉が揺蕩う蜻蛉玉を結わえた。
「友傘だろう?」
ラルムから傘を受け取った紅葉――植物ではなく、人物の方――が目を白黒させているのを眺めながら、八千代も悪戯っぽい笑みを口元に描く。
「あ、ありがとう」
盛大にまごついた紅葉は、荷物の中から引っ張り出した銀細工の桜を返礼の品にするのだが。それが手作りの品であるのを明かすのは、紅葉にとってのラルムと八千代へのサプライズ返しだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【迷宮化】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
オズワルド・ヴァレンティ
嘗て居た世界……現在のイギリス辺りでは
強い風と霧雨のような天気が多く
傘を差す機会もなかったものだが
新宿島の気候に慣れてしまえば
習慣というのも、変わるものだな
折角のイベント事ではあるし
僕も花ひらく様な光景に、
足を運んでみるとしようか
雨の日に色とりどりの花咲くような
光景を眺めること自体は好ましくもあるが
いざ自分用の傘を選ぶ…となると
中々に難しいものがある様にも思えて
外から眺めるか、内側を見るか
視点の違いを知れたのは
新たな発見にはなったようだ
アレやコレやと手に取り確かめて
結局、手元にのこったのは
差した向こう側の空まで見える
薄青色の透明傘であって
蒼穹を連れている……もしくは、
春告げの花を想わせるのなら
僕にはきっと此れが良いのだろう
世界にひとつだけのモノとするならば
護符でも付けるか…は後でやるとして
目印代わりな翠のリボンを
持ち手に飾るので此の場は良しとしよう
役立つ季節が訪れるのを
楽しみながら待つとするかな
最終人類史においても、イギリスは雨の多い国だと知られている。
しかし新宿島に暮らす多くの人々が知る『雨』と、イギリスの『雨』は趣が違う。
ざあと音を立てて降ることは稀で、だいたいが霧雨なのだ。つまり、雨粒が霧のように細かい。であるからして、往々にして傘は役立たずだ。たまに勢いよく降ることもあるが、そういう時は強い風を伴うことが多い。またしても傘の出番ではない。
オズワルド・ヴァレンティ(砂塵の・g06743)は嘗て、現在のイギリス辺りで暮らしていた。おかげで傘の世話になった記憶がとんとない。
けれど不思議なもので。新宿島の気候に慣れた今では、習慣そのものも様変わりした。
「郷に入っては郷に従え――だったか」
魔術を組み立てる時と同じ調子で呟きながら、オズワルドは人造の香りが濃い箱庭の中に咲く傘の花を眺めて歩く。
鈍色の雨模様を傘たちが彩る景色を眺めることを、オズワルドは好ましく思っている。
丹精込められたガーデニングを楽しむのにも通じる気分だ――が、己がその中の一輪になることを考えると、なかなかに悩ましい。
そもそも傘に種類があり過ぎだ。外から眺められるのに主眼をおくか、自分が愛でるために内側に重きを置くかでも随分と違う。
(「視点の違いを知れたのは、いいことかな」)
思考の中に、油断が滲む。それくらい、一本の傘を選ぶことにオズワルドは心を傾けていた。
そんな折、一人の女性の姿がオズワルドの目に留まる。
その腕には幾本もの傘がかけられていた。もしや全部を買う気だろうか、とオズワルドが思った直後、女性は一本の傘を棚に戻す。
そうして女性は一本、また一本と傘の数を減らしていく。
(「なるほど。ああして実際に手に取って考えるのか」)
本日二つ目の新たな知見を、オズワルドはさっそく試すことにする――。
結局、オズワルドの手元に最後に残ったのは、シンプルな薄青色の透明傘だった。
けれど薄青は蒼穹の色だ。春告げの花を彷彿させる色でもある。
曇天さえも蒼穹に変える傘。いつでも花と歩める傘。
「そうだとすれば、僕にはきっと此れが良いのだろう」
納得に頷きながら、オズワルドは取り出しかけた護符を、何かに気付いた顔でそっと仕舞う。
世界に唯一の傘への最終仕上げは後で良い。今はそれより、翠のリボンを結ぶのが先だ。
「これで目印代わりになるな」
他愛ない傘のまま、なれど持ち手のリボンが主を示すだけで、不思議と心は上がる。
「役立つ季節が待ち遠しいな」
2024年2月14日。
それは、嘗て知らなかった楽しみをオズワルドが知る日となった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
朔・彗藍
リビト(g00145)と
雨は少し憂鬱ですけど
雨上がりの匂いや露に濡れる花
青空に架かる虹の景色は好きなのです
でね、雨の日が楽しくなるかな、って
世界にひとつだけの傘、一緒に選びませんか…!
デコも出来るみたいです
私は…この水面が映る透明傘に
持ち手や水面の周りに魚は勿論
サメさん、イカさん、クラゲさん
海の仲間をたくさん描いて
仕上げに持参の青空色の魚型傘マーカーを装飾し
リビト、こっちこっち!
傘の中へ手招いて
……ね、上を見て
海の中から空を見上げてるみたいになるのです
雨の日も晴れの日も、リビトが自由に
広い海を泳げますように!
ずっと、笑っていて欲しいから
――受け取って、くれますか?
喜んでくれる貴方に笑顔綻ぶ
名を呼ばれ好奇心と共にそっと傘の中
夜空に星屑、夢見る猫の可愛い星座たち
…!!雨雫で完成するのですね、素敵!
ふふ、持ち手まで猫さん!
これでいつでも大好きな星が空に在って
もう寂しくないですよ
有難う、リビト。大切にします
宝物また一つ増えました
胸の中へ抱きしめて
今度はリビトと一緒にこの傘を広げて
お出掛けしたいな
津・リビト
彗藍(g00192)と
雨の日も嫌いではないが
青空が見れないのは少し寂しい
ふふ、そうだな
釣りをしている時に香る雨の匂いや音
虹が見えた時はわくわくしてしまう
だが、それ以上に雨の日が楽しめるのなら
世界にひとつだけの傘を彗藍と選びたい
――でこ、か。やってみよう
可愛らしい海の傘だ
色んな魚が泳いでいる
中に入れば目を瞬かせ
! これは、凄いな
手を包み込むようにそっと傘を受け取り
もちろん
大事に使わせてもらおう
早く雨の日になってほしいな
次は俺の番だ。と言って傘を広げる
星空が煌めく黒の傘
よぉく探せば星の中に白のマーカーで
小さく描いた魚の星や猫の星、月の星が
見つかるかもしれない
そして、横で黒猫が大人しく座って星を眺めているのが伺えるだろう
持ち手の部分は猫の尻尾のようになっている
彗藍。と、名前を呼び
同じように傘の中へ
雨に濡れれば星と星が線を結び
魚や猫の形、色んな星座が見れるみたいだ
雨の日でも彗藍の好きな星が見れますように
何時でも楽しい気持ちでいてほしい
良ければ、俺のも受け取ってくれるか?
ああ、今度お出掛けしよう
足を運んだのは虹の展覧会だったろうか。
そんなファンタジックな想像をしてしまうほど、数多の傘が取り揃えられた景色は目に鮮やかだ。
「雨は少し憂鬱ですけど、雨上がりの匂いや露に濡れる花。それから青空に架かる虹は好きです」
朔・彗藍(ベガ・g00192)の声は弾んでいる。薄紫の華咲かす眸も瑞々しさを増すよう。そのことを我が事のように感じながら津・リビト(釣人・g00145)は目を細めた。
雨天の方が釣りやすい魚もいるくらいだ。リビトとしても雨の日も嫌いではない。
釣り糸を垂らしながら聞く雨音や、広がる水紋、ほのかな香も好ましい。そして――。
「そうだな。俺も虹が見えた時はわくわくしてしまう」
意見の一致に、傘に挟まれた通路でリビトと彗藍は視線を交わし、笑みも交わす。
望めない碧天を寂しく思う気持ちはある。が、これから挑む試みは、鈍色の空さえ楽しみに変えようというものだ。しかも創造するのは、世界に一つだけの傘。心弾まぬわけがない。
「デコもできるんですよね?」
「やっていくだろう?」
「もちろんです」
人の流れに逆らわず、リビトと彗藍は傘の小道を逍遥する。
何事も最初が肝心だ。つまりどの傘を選ぶかが、出来上がりを左右すると言っても過言ではない。
そこでふとリビトは、自分の目が己の好みでなく、傍らの人に似合いを追いかけていることに気付く。
「ちょっと相談」
「なんでしょう?」
小声で語りかけると、小鳥のように彗藍が首を傾けた。
「俺は彗藍の傘を選んで作りたいんだが」
「私もリビトの傘を作りたいと思っていました!」
海の青と、花の薄紫。カチリと合った目と目に、二人は揃って小さく吹き出す。
「どんな傘になるだろう?」
「出来上がるまでナイショですね」
サプライズの為には、二人並んでデコレーション作業をすることはできない。
隣が空いているのは雲に青空が隠される以上に寂しいが、贈る瞬間を思い浮かべながらの手仕事は愉しい。それに集中してしまうと、時間が流れるのは存外に早かった。
「――これで、出来上がり」
「リビト、リビト」
頃合いを見計らっていたのか、それともタイミングが重なっただけかは判然としないが、肩を下ろしたタイミングでかかった声に、リビトは傘を手に椅子から腰を上げる。
招かれたのは、既に差された傘の下。
「……ね、上を見て」
「!」
身長差を補うために、腕をうんと伸ばす彗藍の努力が可愛らしい。けれどそれ以上の感動に、リビトの瞳は釘付けになった。
ゆらりと揺らぐ水面を模した透明傘に、色々な魚たちが泳いでいる。いや、魚だけではない。サメやイカ、クラゲ――彗藍が思い付き、描くことができる海の仲間たちがたくさん。
「――これは、凄いな」
「持ち手の部分にも、お魚さんたちがいるんです」
しばし言葉を忘れたリビトのまろい吐息に、ふふ、と彗藍はやわらかく微笑む。
「海の中からも空を見上げられるようにしたかったんです」
雨の日も、晴れの日も。リビトが自由に広い空を泳げますように。ずっとずっと笑っていられますように。
それが彗藍の願いであり、祈り。
「――受け取って、くれますか?」
応えるより先に、リビトは彗藍の手を包み込むよう海の傘を受け取った。
「もちろん」
大事に使わせてもらうと約束し、リビトは改めて傘を見上げ、気持ちを逸らせる。早くも雨天が待ち遠しくて仕方ない。
そして同時に、彗藍にも同じ心地になって欲しいと思う。
「ありがとう――今度は俺の番だ」
喜んでくれるように作った。きっと喜んでくれる。そう信じながらも、不安はゼロではない。でも彗藍も辿った道だと思えば、躊躇いは姿を消す。
「……!」
海の傘をそっと畳んだ手で、リビトは自分が作った傘をゆっくりと前へ押し開く。途端、彗藍は息を飲んだ。
星空が煌めくが如き黒の傘だ。でも、それだけじゃない。
「お魚、お星さま、お月さま――」
「その横は?」
「! 猫さんが、たくさんの星座を見上げています」
白のマーカーで足された点を結ぶと、たくさんの小さな星座たちが現れる。それらをきちんと座って眺めているのも、猫の星座だ。
「雨に濡れると星と星を結ぶ線が浮かぶ仕掛けもしてある」
「雨雫で完成するのですね、素敵!」
はしゃぐ彗藍の頬に、うっすらと桜の花の色が咲く。予想以上の大成功に、リビトは知らぬ間に詰めていた息を「ふぅ」と吐いた。
彗藍は星を好む。その星たちを雨の日でも見られるようにと願い、リビトは傘を仕上げた。
何時でも楽しい気持ちでいて欲しいから。
「良ければ、俺のも受け取ってくれるか?」
「はい……あら、持ち手まで猫さん!」
手から手へ、受け渡されて初めて知る一工夫に、彗藍の笑みが蕩ける。くるりと曲線を描く持ち手が、猫の尻尾になっていたのだ。
「有難う、リビト。大切にします。宝物がまた一つ、増えました」
大好きな星空を両手で抱き込むように、彗藍は惜しみながらも傘を閉じる。それから改めて、星たちがさざめく傘をそっと抱き締めた。
「これがあれば、もう雨の日も寂しくないですよ。でも、今度はリビトと一緒にこの傘を広げてお出掛けしたいな」
抱いた歓喜と、想う期待に、彗藍の口調がほんのり弛む。
無論、心を許された誘いにリビトが持つ応えは、『是』の一択だ。
「ああ、今度お出掛けしよう」
増えた悪天の楽しみに、リビトと彗藍は春を待つよう雨の日を待つ――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【未来予測】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
薬袋・明莉
【銀プロ】
黒の洋傘にペイント
銀空から連想して宇宙空間をイメージした絵を傘の内側全体に広がるように描く
銀のラメ塗料で満月を描いたりスパッタリングして星を表現したり
外側はシンプル、ワンポイントでシルバースカイプロダクションのロゴを書き入れて
いいのができたらグッズとして売り出せないか申請しようかね?
アルマニア・シングリッド
【銀プロ】
傘のデコレーションですか
滅多にない体験なので、嬉しいです
明莉さんはお誘いありがとうございます
さてさて
実は、傘は雨傘・日傘とか含めて
それなりに持っているんですよね
猫や桜とかのデザインに惹かれて、衝動買いで(ぉぃ
流石に和傘は持ってないですけど
よし、今日はサフェルの傘をデコレーションしよっか
あっ、こーら
デコるのはビニール傘じゃなくて和傘!
こっちの方がサフェル、似合うし
角とかで穴が開いても修理して何度でも使えるでしょ
(説得されて渋々受け入れるサフェル
と云う訳で、そこそこ良いお値段な鶯色の番傘を1つ買いまして
レッツらアレンジ!
外側のペイントは
縁部分に四葉のクローバーを黒の線画や緑のグラデーションになる様に描いて彩を鮮やかに
ワンポイントに赤いテントウムシも描こう
内側は……
中央辺りの骨組みの合間に少しだけ桜の花びらを散らそうかな?
うるさくならないように、しっかりバランスを見てっと
うん、良い感じにできたかな?
おー、明莉さんの傘もソラさんの傘も綺麗っ
傘をさすときが楽しみですね
アドリブ
絡みOK
ソラ・フルーリア
【銀プロ】の皆と一緒に!
※アドリブ歓迎します。
明莉、お誘いありがとね!
傘のデコレーションなんて、面白そうじゃない!
こういうバレンタインのイベントが有ってもいいわよね!
オリジナルの傘っていうのもテンションアガるし、素敵な傘作っちゃいましょ!
そうね、アタシは……この透明な傘にペイントしようかしら!
内側全体を水色の塗料で塗って、白色を筆で描き込むわ!
オレンジで丸を描いて、仕上げに七色の絵の具でアーチを描けば……雨でも傘の中は快晴の傘の出来上がり!
外側は内側の水色が透けてるから、傘の骨と骨の間に流れ星を描いて……うんうん、アタシらしい傘になったんじゃないかしら!
アイドルたるもの、傘でもオリジナリティ出していかなきゃ!
あら、明莉もアルマニアも素敵な傘になったわね!
紅葉が良い事言ってたわ!「明日の自分の笑顔の種は、自分で蒔く」!
芸能事務所の銀プロとしては、皆の笑顔の種もどんどん撒いていきたいところよね!
「よし、ここで間違いないな」
エスカレーターを降りた薬袋・明莉(情熱のアーティスト・g02002)は目当ての会場を見つけ、伴ったアルマニア・シングリッド(魔術センスは未だに壊滅的な元一般人兼空想召喚師・g00802)とソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)を振り返った。
三段分を遅れて地上階へ至ったアルマニアとソラも、「へえ」とか「わあ」とか到着の声を上げて、ぐるりと周囲を見渡す。
見るからに、ショッピングセンター内の催事場だ。
遠くからでも目を引くよう、吹き抜けの造りの小広場になっていて、二階の通路が観覧席のようにも見える。
「ちょっとしたライブも開催できそうです」
「出来る気がする!」
アルマニアが口にした思い付きに、ソラの瞳に星が瞬く。
自らを「大アイドル時代のスーパースター」と言って憚らないソラだ、満員の観客が振るペンライトを想像したのかもしれない。
おかげでテンションは爆上がりである。
「明莉、お誘いありがとね!」
傘をデコレーションする機会はそうそうあるものではない。しかもバレンタインのイベントだ。イメージとしては結び付きにくいが、期待に胸を躍らせるソラは、旗振り役の明莉へアイドルスマイルを輝かせる。
明莉への感謝があるのはアルマニアも同じだ。滅多にない体験な上に、クラフト系とあって、創作活動を好むアルマニアの興味も擽られっぱなしである。
「私からもお礼を。明莉さん、ありがとうございます」
「こっちこそ、誘いに乗ってくれてありがとな」
年下の少女二人に改まられ、明莉は密かに胸を撫で下ろす。とはいえ、お楽しみはこれからが本番だ。
「オリジナルの傘っていうのもテンション、アガるし。素敵な傘、作っちゃいましょ!」
いちばーん、と駆けるソラの背中を追いかけ、アルマニアも会場内へ踏み入る。
遠目にも華やかだったが、間近で見るとなかなかの圧巻ぶりだ。
「これは目移りしますね……」
その実、アルマニアはそれなりの傘を持っている。雨傘、日傘、兼用傘。猫や桜などのデザインに惹かれると、ついつい衝動買いしてしまうのだ。
そんなアルマニアも和傘ばかりは持っていない。
「……今日は和傘にしましょうか。明莉さんは――いませんね」
気付けば明莉も傘の海に姿を消している。
イメージするもの、つくりたいものは三者三様それぞれだ。ならば過ごす時間もそれぞれで好い。
「あっ、こーら。今日デコるのはビニール傘じゃなくて和傘!」
いつの間にか、アルマニアのメーラーデーモンであるサフェルは、ビニール傘を持っていた。
もしかすると「これをデコって欲しい」なんて思っているのかもしれない。が、モノクルをかけ、自分と同じサイズの万年筆を携えるサフェルは、アルマニアの目にはシックな方が向いて見える。
「ね、サフェル。こっちの方がサフェルに似合うって。角とかで穴が開いても修理して何度でも使えるでしょ」
ほら、とアルマニアが鳶色の番傘を広げてみせると、サフェルの横長の瞳孔が、不満を訴えるように右へ左へと揺れた。それでも抱えていたビニール傘を元あった場所へ戻しに行くので、納得はしたのだろう。多分。
「まずは外側……」
作業にとりかかったアルマニアの仕事ぶりは、慣れているだけあって流石に手際が良い。
縁部分に四つ葉のクローバーを、黒の線画や緑のグラデーションになるよう描く。これだけで鳶色が途端に華やかになるから不思議だ。
添えた赤テントウムシのワンポイントは、サフェルのウエストポーチの釦飾りともお揃いだ。
内側には、中央辺りの骨組みの合間に、桜の花びらを幾らか散らすことにする。
「うるさくならないよう、バランスを見てっと……」
丁寧に、丁寧に。
サフェルも喜んでくれるよう、アルマニアは作業を進める。その気持ちが伝わったのか、アルマニアの傍らに戻ったサフェルは、ちょこんと大人しく座っていた。
ソラがベースに選んだのは、透明な傘だった。
そして何はさておき、ソラは傘の内側を水色に塗り上げた。
ならば最初から水色の傘を選べばよかったのではないか――などというのは無粋の極み。
だってソラが想像するのは、一面の空。既製品の空より、一から描き上げる方がずっと素敵に決まっている。
「アイドルたるもの、傘でもオリジナリティ出していかなきゃ!」
モチーフのアウトラインは白い筆で取り、そこに色を重ねていく。
丸はオレンジ、アーチは七色。出来上がる傘の中は、どんな雨模様など気にならない快晴だ。
もちろん、外側へのアイドルらしい一工夫も忘れない。
透ける水色をキャンバスに、傘の骨と骨の間に流れ星を描く。
「うんうん、アタシらしい傘になったんじゃないかしら!」
まさにご機嫌な『空』と『スター』な傘の出来上がりである。
「あ、明莉さん」
「明莉はどんな傘にしたの?」
一足先に傘を作り終えた二人は、少し遅れてやってきた明莉の手元を興味津々で眺めやる。
持っているのは黒い洋傘だ。
もちろん、それだけじゃない。何故なら明莉もアルマニアに負けず劣らずの創作好きなのだ。
きちんと畳んでいた傘を、明莉がゆっくり開いたところで少女二人は息を飲む。
「これって、もしかして」
「シルバースカイ・プロダクションの?」
シルバースカイ・プロダクション。それはソラが設立したディアボロス専門の芸能事務所だ。ロゴは、五線譜に見立てた翼に、ト音記号と星の音符が煌めいている。
明莉が作った傘の外側には、まさにそのロゴが描きあげられていた。そして内側には、銀のラメ塗料で描かれた満月や、スパッタリングされた星たちが煌めいている。
「いいのが出来たら、事務所のグッズにどうかなと思ったんだが」
「いいんじゃないでしょうか」
「うん、いいと思うよ。すっごく素敵!」
アルマニアと一緒になって高らかに是を唱えながら、ソラはふと思い出す。
明日の自分の笑顔の種は、自分で蒔く――そう時先案内人の男は言っていたが、シルバースカイ・プロダクション――通称銀プロは、芸能事務所である。
ならばもっと欲張ってしかるべき。
「アタシたちは、皆の笑顔の種もどんどん蒔いていかなくちゃね!」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【勝利の凱歌】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
オード・レヴニ
ベガ(g06232)と
ベガは雨の日って、好き?
チョコな日のバレンタインだけど、たまには趣向を変えるのも楽しいよね
チョコもお気に入りの傘も、気持ちが晴れるのは一緒だから
お互いの傘を選んで交換とかどう?
雨の日もベガの気持ちが明るくなるような
ステキな傘を贈りたいな
ベガに似合いそうな傘…
並んだ傘をじっくり吟味
手に取ったのは桃色のグラデーションがかわいい透明傘
春の花みたいな甘い色が透けて、白い髪に映るときれいだろうな
…それにちょっとクリームソーダみたいでおいしそうじゃない?
ピンクゴールドの持ち手は華奢で、ベガのピュアなイメージにきっと似合う
このままでも可愛いけど、もう一工夫
透明な所に様々な色の半透明シールをランダムにカットして貼れば
雨空も宝石や琥珀糖みたいに、キラキラ輝いて見えるかなって
日頃の感謝を込めてアレンジした傘を渡すよ
ベガが選んでくれた傘は…この緑の色、明るい季節を感じてすごくいいね
小鳥と星の物語を秘めた傘、特別な感じがする
春に小雨が降ったら、傘を並べて
クリームソーダでも飲みに行こう
雲母・ベガ
オード様(g01759)と
雨の日は…雨音を聴くのが好きですね
びしょ濡れになってしまうのは流石に
しょんもり気分にもなりますけれど
新たな過ごし方を知れるようで
互いの傘を作っての交換、ぜひ喜んで
オード様に合いそうな傘…と
自分の好む透明傘の辺りに
つい目を向けてしまいがち
ひとつ手に取り開いた透明傘は
頭上に花びら散りばめた様相で
…閃いたものがあり此れにしましょう
色違いな淡いグリーンの小花咲くのを選び、
花見も良いですが想像したのは木漏れ日
新緑の季節に止まり木で休む小鳥と
此のままでも充分ステキですが
青いペンを手に取り目線の高さに
デフォルメされた小鳥の絵を添えて
くるりと一回転、反対側には…むむ…
悩んだ末に金銀星の色で
アスタリスクに似た導きの星を
交換タイムは僅かにどきどき
春の花のような傘…!
此処で開いて差してみても良いものでしょうか?
ひとつひとつアレンジ見つけて嬉しくなって
わたくしも何時も楽しいひと時を
共に頂いて有難う御座います
傘並べても歩く並木路を思い浮かべて
…クリームソーダも飲みたくなって来ましたね
「ベガは雨の日って、好き?」
オード・レヴニ(頌歌・g01759)からの問い掛けに、雲母・ベガ(胡蝶の夢・g06232)は手に取っていたホワイトオパールめく光沢を有す透明傘を棚に戻しながら、青い視線を彷徨わせた。
「そうですね……雨音を聴くのは好きですね。びしょ濡れになってしまうのは流石にしょんもり気分にもなりますけれど」
語るに合わせ、ベガの背にある胡蝶の翅がゆるゆる揺れる。気鬱具合をよくよく表すその動きに、オードもなんとはなしに光輪型ナビAIを見上げながら「だよね」と頷く。
雨の日に、気鬱になってしまうのはしょうがない。
だからこそ、気持ちを『晴れ』に変える傘は大歓迎だ。バレンタインデーといえばチョコレートの日だが、たまにならば趣向を変えるのも『あり』である。
何より、チョコレートもお気入りの傘も、気持ちが晴れるという意味では同じだ。
そこへさらに、オードは刺激的なエッセンスを加えることをベガへ提案する。
「せっかくだし、お互いの傘を選んで交換とかどう?」
わたし、雨の日もベガの気持ちが明るくなるような、素敵な傘を贈りたい。
誘い文句に続いたオードの殺し文句に、ベガは目をぱちくりとさせた後、破顔した。
「ぜひ喜んで」
新たな過ごし方を知れた心地に、既にベガの胸裡は晴れもようだ――。
――と、思ったのだけれど。
「オード様に合いそうな傘……」
むぅと唇をすぼませ、ベガは悩みに悩む。
選びたいのはオードの為の傘だ。だのに目はつい己が好む透明傘にばかり寄せられがちになる。
これでは花蜜の香につられる蝶のようだ。
されどその自責が思わぬ出会いを呼び込む。
(「……花?」)
ひらいた透明傘には、花びらが散りばめられていた。刹那、閃きが芽生える。
「此れに――此れにしましょう」
重ねて呟き、ベガは差した傘とは色違いの、淡いグリーンの小花が咲く傘へ手を伸ばした。
春の花見が如き傘も好いが、ベガが思い浮かべたのは新緑の木漏れ日だ。
(「止まり木で休む小鳥と――」)
そのままでも十分素敵な傘を買い求め、ベガは足取り軽くデコレーション作業用のスペースを目指す。
「どう、ベガに似合うと思うんだ」
「まあ! 春の花のような傘……!」
迎えた交換の時に、いつもより心臓を早く打ち鳴らしていたベガは、渡された桃色のグラデーションが可愛らしい傘に目尻を下げた。
「春の花みたいな甘い色が透けて、ベガの白い髪に映るときれいだろうなって思ったんだ。それに、ほら……ちょっとクリームソーダみたいでおいしそうじゃない?」
ひとつひとつを説明しながら、オードは自分の選択が正しかったことを、密かに噛み締める。
華奢なピンクゴールドの持ち手は、ベガのピュアなイメージにぴったりだと思ったが、実際にベガの指が添えられてみると「まさに、まさに!」だ。
「此処で開いて差してみても良いものでしょうか?」
「もちろん!」
だから遠慮がちなベガの背を押すつもりで、オードは勢いつけて首肯する。
「じっくり吟味して、日頃の感謝を込めてアレンジしてみたよ」
「……すごい、すごいです。オード様」
透ける春色の天に、宝石や琥珀糖のような煌めきが瞬く。それらの正体が、敢えてランダムにカットされた半透明なシールであることに気付くのに、ベガは少し時間を要した。
だってそれくらい、溢れる色が、光が、美しかったのだ。
「ありがとうございます、オード様」
なれど感激の高揚も、礼を告げてしまうと、途端に緊張にすり替わってしまう。
「わたくしが選んだ傘は、こちらです」
おず、とベガはオードへ傘を差し出す。気に入ってもらえるだろうか――暗雲が立ち込めるのにも似た不安が、ベガの胸に広がる。しかしそれらは、オードの歓喜の声で瞬く間に払拭された。
「この緑の色、明るい季節を感じてすごくいいね。開いていい?」
「ええ」
表情を見なくても気持ちが分かるオードの弾んだ声に、ベガは顔をあげて頷く。
事実、琥珀色の眼に輝いていた好奇心が、キラキラの喜色へと変貌を遂げるのは一瞬だった。
「小鳥がいる! 反対側は……星だ!」
ちょうどの目線の高さに、デフォルメタッチで描かれた青い鳥がいた。くるりと回した反対側には、形はアスタリスクに似た金銀星の色の導きの星。
「これは小鳥と星の物語を秘めた傘だね。すごく特別な感じがする」
うっとりと酔い痴れるみたいに、オードは指先で傘の縁を撫でる。
仕草を真似たベガは、ふと傘を並べて歩く並木道を脳裏に描く。
新緑の並木道に滴る雨の雫。けど、あいにくの曇天とは裏腹に、オードの顔も、ベガの顔も、今のままの春爛漫な笑顔だ。
「……なんだか、わたくし。クリームソーダが飲みたくなって来ました」
「そう、それ! わたしも同じ事を考えてたとこ」
オードとベガは、視線を交わして笑い合う。うずうず芽吹いた心じゃ、とうてい緑が鮮やかな季節までは待ちきれない。
「ね、春に小雨が降ったら。傘を並べてクリームソーダでも飲みに行こう」
本日二度目のオードの誘い文句に、ベガは一も二もなく「はい」と応え、翅を大きく羽ばたかせた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】がLV3になった!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】LV1が発生!
永辿・ヤコウ
大切な人へ贈る傘選び
冷たい雨が甘い飴に変わるような
心晴れる傘を咲かせたい
沢山の傘たちが並ぶ中
目的の一本を迷わず手に
ゆっくり丁寧に開くのは
白の透明傘
しなやかで繊細ながら、風雨に耐え抜くだろう丈夫な骨組み
玻璃細工めいた覆いも透き通って綺麗
傘を通して見る照明は淡く幻想的で
ガラスドームの中にいるような心地
弾く雨音の軽快さ、雨粒たちの遊び心まで感じ取れるかも、と
笑みで肩を揺らして
この子にします、と
連れ帰る傘を決定
少しおめかしさせてね
受け骨を黄のテープで色変えし
露先には雫型のチャームを揺らす
雨に濡れると透明になる花、
サンカヨウをイメージしてアレンジ
雨の日に差す透明な傘みたいだと、
共に語り合ったことを形にして贈りたくて
喜んでくれると良いな、と
尚いっそうの真心を籠め
仕上げに緑のリボンを結ぼう
ハンドルを飾るリボンの
瑞々しい葉のような色合いが
雨天の憂いを爽やかに晴らしてくれますように
雨音を聞きながらの読書時間もとても好きだけれど
世界に一つだけの傘を持って散歩に出かける、
そんな心弾む一日もきっと素敵に違いない
おそらく、あまりに迷いがなかったのだ。
傘の吟味に時間をかける人が多いせいで、永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)の澄んだ動きは、それだけで余人の目を引くのに十分だった。
そんなヤコウに逡巡の気配が現れたのは、決める間際のほんの一瞬。
「そのこでいいデス?」
かけられた声にヤコウは「はい」と答えた後、「念の為に」と手に取った傘をそろと開く。
大切な人へ贈る傘だ。
冷たい雨が甘い飴に変わるような、そういう心晴れる傘を咲かせたい。
胸にある想いは確固だ。故にこそ、運命は一本の糸で結ばれる。
「……ああ」
前へと押し開いた白の透明傘に、ヤコウは円い感嘆を零す。
一般的な傘より、骨が多い。だがそのぶんだけしなやかな繊細さと、風雨に耐え抜く丈夫さが融和している。
だからだろうか、透んだ傘布が玻璃細工めいてヤコウの目には見えた。
これで間違いない――そう確信しながら、ヤコウは飾り気の少ない傘を頭上へ翳す。
途端、人工の照明光が、幻想の世界を作り出した。
淡く滲んだ光は、かすみがかった月とも、雲越しの陽ともつかず、さらに揺らぐ水面を思わす陰影を足元へと落とす。
ガラスドームの中にいるような心地だ。
ここでなら、弾く雨音の軽快さや、結んで滑る雨粒たちの遊び心まで感じ取れる気がして、ヤコウは肩を揺らす。八を欲すも一しか持たない尻尾も、ふさふさと機嫌良さげだ。
「どうかしたデスカ?」
「いいえ、この子にします」
口振りは穏やかなれど、わずかのくすみもないヤコウの是は、凛と響く。
綺麗な子に手を入れるのは少し気が引けたが、周囲の賑わいがヤコウの背を押す。
誰も彼も『とっておき』を選んだろうに、喜色を頬に傘を彩っている。きっと誰もが、『世界に一つ』を歓ぶ顔を想像しているのだろう。
その気持ちはヤコウも同じだ。
「少しおめかしさせてね」
一言かけて、受け骨に黄のテープを巻いていく。露先には雫型のチャームを飾った。
(「うん、思った通り」)
――雨の日に差す透明な傘みたいだ。
いつか共に語り合ったサンカヨウ。雨に濡れると透明になる花を、そのまま大きくしたような傘が出来上がった。作業椅子からはみ出し右へ左へゆらゆらしている尻尾が、ヤコウの満足を物語る。
(「これなら、きっと」)
喜んで欲しい。
喜んでくれるといいな。
喜んでくれる。
願いが期待へ変わり、再びの確信へと移ろう。
『すごい。とてもきれいだねぇ』
聞えた気がした聲に、ヤコウは傘を閉じて畳み、仕上げにいっそうの真心を込めて、緑のリボンを結わう。
雨音を聞きながらの読書時間も好ましくて捨て難い。
けれど世界に一つだけの傘を手に出かける散歩も、素敵に違いない。
脳裏に描く、二人で過ごす雨天に心を弾ませ、ヤコウは柔らかく目尻を下げた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【迷宮化】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
咲樂・祇伐
🌸樂祇
傘をデコレーションなんて、楽しそう!
雨の日も晴れの日も咲かせられる花のような…
心配なのは私があまり器用でない事
お兄様の笑顔をみれば何とかなる気がして
…笑みが咲く
交換こね!いいわ
お兄様にぴったりの傘、私も選んでみる!
……其れはわたしも同じ
雨音よりも小さく呟き桜の頬を見られる前に傘を探すわ
お兄様のだからシンプルだけど上品で、綺麗な…けれどお兄様らしいものがいい
あ…この透明な傘…綺麗
そうだ、蓮の花のような形の傘がいい
鈍色の空も綺麗に染まる、柔らかい逢魔が時色の蓮の傘…柄の部分にシマエナガと桜の飾りを付けて……
うんと悩みつつ思い浮かべるのは…傘をさして笑うあなたの姿
頬が自然と弛んでしまう
わぁ……!
お兄様はどんな傘に…すごい、綺麗……!
ふんわりと咲く桜のような…和洋折衷にも感じられる可愛い傘!わたしも宝物にするわ
ねぇどう?似合うかしらと早速さしてくるりとまわり
並んでさすのが楽しみね
──想像して、頬に熱がのぼる
其れは、偶になら…
もう少し大きな傘にすれば良かったかしら?なんて
あなたには言えない
咲樂・神樂
⚰️樂祇
桜雨に備えて今年の傘も新調しなきゃね
あら、祇伐ったら…少し心配そうね
大丈夫、手伝うわよ
器用さには自信があるの
折角だから…祇伐はあたしの
あたしは祇伐の傘を飾り付けして交換こしましょ
そしたら晴れの日も雨の日も、倍楽しくなるはず
……傘をさすたびにあなたを想うから
日傘にもなるのがいいかしら
祇伐には番傘のような和風なものが似合いそう
桜の花を象った和の傘に…かぁいらしい花弁のようなレースとリボンを飾り付け
色は白と赤、桜色…そう、白無垢をイメージして
内側には、枝垂れるような桜花の飾りをつけたら…より祇伐の美しさが際立つかしら!
想えば心がハレて幸せになる
雨に桜を散らさせないそんな傘に
どう?祇伐のも──ふふ!随分とかぁいらしく飾り付けてくれたわね
蓮のような傘!あたしが手伝うまでもなく上手で綺麗だわ!
少し歪んだところも愛嬌
愛しい子が頑張った証と誇らしい
宝物にする
ありがとう!
くるりと回る姿は桜の精のよう
嬉しくなるわ
……二人、並んでさすのもいいけれど
ひとつの傘に二人で入りたくもなるから──難儀なものね?
「傘をデコレーションなんて、楽しそう!」
(「あら、まぁ」)
眸に咲かす桜を現実にまで溢れ零さんばかりの咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)の様子に、咲樂・神樂(離一匁・g03059)は兄の貌で微笑んだ。
「ねえ、お兄様。雨の日も晴れの日も花を咲かせられるようだと思わない?」
よほど期待が大きいのだろう。無邪気に囀る様子が、たまらなく可愛らしい。
しかし咲いた花が萎むように、不意に祇伐の表情が曇る。口には出さないが、己があまり器用でないことを思い出し、気にかけているのだろう。
察するに余りある心情に、神樂は「いつものこと」と助け船を出す。
「大丈夫、手伝うわよ。あたしが器用なこと、祇伐はよぉく知っているでしょう?」
「お兄様!」
案の定、今泣いた烏が何とやらだ。再び満開になった桜の笑顔に、神樂はもうひとつの提案を、囁くように唇に乗せる。
「折角だから……祇伐はあたしの、あたしは祇伐の傘を飾り付けして交換こしましょ」
「交換こね! いいわ!」
(「ほんと、かぁいらしい」)
頷きの早さに吹き出しそうになるのを、神樂はぐっと堪えた。ここで拗ねさせてしまうのは勿体ない。何より期待に胸を躍らせている祇伐の隣に在るのは、とても楽しい。
『楽しい』は、幸せだ。だからちょっぴり調子に乗ってみたくもなる。
「まかせて。お兄様にぴったりの傘、わたしも選んでみる!」
「ありがとう、祇伐。そしたら晴れの日も雨の日も、倍楽しくなるわね……傘をさすたびに、あなたを想うから」
神樂が語尾を掠めたのは、意図的だ。すると春風にあてられたように、祇伐の柔い白膚の頬にも桜が咲いた。
「……其れは、わたしも同じ」
呟きは、雨音よりもかそけく。
そして新たな桜を隠すように、祇伐はぱっと身を翻して傘の海へ飛び出していく。
(「ああ、かぁいらしい。とんでもなく、かぁいらしい」)
かくてうっとり見送る神樂は、祇伐にやや出遅れて、虹めく傘たちの元へ歩み出す。でも、これくらいでちょうどいいのだ。だって祇伐は器用でなくて、神樂は器用なのだから。
神樂はどんな装いもそつなく着こなすし、似合わせ方を知っている。
それでも祇伐は、数多の傘のなかから一本を選び抜いた。
「やっぱりお兄様らしい」
一目惚れしたといっても過言でないその傘は、蓮の花を彷彿させる傘だ。普通の傘より親骨の数が多く、それに長短をつけることで、花のシルエットが作り出されている。
創意工夫の結晶でありながら、シンプルで上品で、とびきり綺麗な傘は、ぜったいに神樂に似合う。
得た確信に、祇伐は透明な空を柔らかな逢魔が時へと塗り換えた。
「鈍色の空も綺麗に染まりそう」
傘をさす神樂の伸びた背筋を瞼の裏に描き上げ、祇伐は頬を弛ませる。
そして――。
「これで、完成!」
「あら、あたしが手伝うまでもなかったわね」
「っ、お兄様!?」
柄の部分にシマエナガと桜の飾りを付けてたところで不意にかかった声に、祇伐は肩を跳ねさせた。
悪戯な犯人は問うまでもない。だが振り返り様に差し出されたレースとリボンで彩られた和傘に、祇伐は言葉を失くして息を飲む。
「ちょうど桜を模った傘があったのよ。レースとリボンは……白無垢をイメージしてみたの」
「――」
手に取ってちょうだいな、とせがまれて、祇伐は白と赤、桜色の花弁をリボンとレースで施された傘をそっと持つ。
「開いてみて?」
「……わ、ぁ!」
促されるままに傘を差した祇伐は、内側に降り来た枝垂桜に目を瞠る。
「こうすればより祇伐の美しさを際立たせられると思ったの」
想えば心がハレて幸せになる。雨に桜を散らせない。そして咲かせた桜は、祇伐をより輝かせるように。
「ちなみに日傘にもなるのよ」
「……すごい、綺麗……」
説明よりも、全身で浴びる神樂の思惑に、祇伐は魅せられっぱなしだ。
可愛らしい、美しい、堪らない。
「ありがとう、お兄様。宝物にするわ――ねぇ、どう? 似合うかしら」
裡に収まりきれない歓喜に祇伐は、神樂が手ずから咲かせた桜花をなびかせくるりと回る。さんざめく花たちが奏でる音色も、また美しく耳に楽しい。
「ええ、ええ。とっても似合うわ――で、祇伐はあたしにくれないの?」
「そう――そう、ね」
すっかり舞い上がっていた祇伐は、神樂のおねだりに、大切なことを思い出す。なれど差した傘の可憐さに圧倒されたばかりだから、どうしたって躊躇いが先に立ってしまう。
「すこし、色がまだらなの」
「祇伐が頑張った証でしょう? 誇らしいばかりよ!」
受け取る前から胸を張る神樂に絆されて、祇伐はおずと蓮花の傘を、自分より大きな手にゆだねる。
「ふふ! 随分とかぁいらしく飾り付けてくれたわね」
取っ手のシマエナガと桜の飾りに、神樂の目元が蕩けた。それだけで祇伐は嬉しくて、またくるくると回ってしまう。
「ありがとう、あたしも宝物にするわね。ところで祇伐、そうしているとまるで桜の精ね」
風に攫われないでちょうだいね、と笑う神樂へ、祇伐はふわりと微笑み返す。
「大丈夫よ、攫われたりなんかしないわ。だってこの傘を、お兄様と並んでささないといけないもの」
祇伐は雨の日の待ち遠しさに、心を逸らせていた。だから続いた神樂の告白は完全なる不意打ち。
「二人で並んでさすのもいいけれど。ひとつの傘に二人で入りたくもなるから――難儀なものね?」
かわいらしく神樂が小首を傾げる。しかし言の葉の持つ音は、至極まじめなそれだった。
「其れは、偶になら……」
想像した二人の雨模様に、祇伐は頬に熱をのぼらせる。
「なあに、祇伐」
細すぎた声に神樂が問い掛けてきたが、祇伐は枝垂桜に顏を埋めて逃げた。
だって、言えない。
(「もう少し大きな傘にすればよかったかしら、なんて」)
――あなたには、言えない。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
ノスリ・アスターゼイン
自分が濡れる分には余り気にしていなかったけれど
濡れ鼠ならぬ濡れ野良猫を
懐に入れて雨避けになってあげた日のことを思えば
雨に打たれる寒さは
やはり憂鬱にもなるのだろうと思い至って
それに
色とりどりに並ぶ傘は画材道具みたいでわくわくする
雨天に絵を描くみたいだな、と思ったら
『雨模様』という言葉が一気にカラフルに感じるね
選んだのは長傘
外側は夜空
内側は夜明けのマジックアワー
骨の先端には小さな星飾り
そのうち一つだけ、一回り大きな金色の星――明星
パッと開くと星空が咲く
歩調に合わせて鳴るしゃらしゃら瀟洒な響きは
星々の囁きか歌か
雨音とのハーモニーが
きっと優しく心地好い
どう?
開いた傘と共にくるりと回り
紅葉に見て貰おう
褒めて貰えたらドヤァと上機嫌
手にしたもう一本をプレゼントするよ
一見して黒の蝙蝠傘だけど
内側は青空、快晴
骨の先端には青紅葉や染まる紅葉、黄楓を飾った、錦秋仕様
イベントに案内してくれた礼!
サプライズになったかな?
紅葉の顔にも晴れ空が咲くと良いね
傘と傘の柄をこつんとぶつけ合って
ハレルヤ!と笑い合えたら嬉しい
腕に掛けた傘の重みに、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)は首を傾げる。
覚えのある質量だ。なんだったろうと脳裡を探ると、曇天の記憶がひとつ思い浮かぶ。
「あの子は元気かな」
呟きに、口角が上がる。
濡れ鼠ならぬ濡れ野良猫へ、雨除けとして懐を提供したのはいつのことだったか。
ごろごろと喉を鳴らされ、そこでようやくノスリは雨に打たれる寒さの気鬱さに思い至ったのだ。何せノスリは、自分が濡れることに関して、とんと無頓着であったから。
(「うん。やっぱり傘は必要だ――それに」)
律儀に「にゃー」とお礼を鳴いていった背中を見送った時と同じに、ノスリは蜜色の眸を細めた。
虹めく景色が、目に眩しく、心を弾ませる。
(「画材道具みたいでわくわくする」)
狭いとはいえない一角にずらりと傘がならぶ姿は壮観だ。一本一本、丁寧に立てて陳列されている様は、専用ケースに収まる色鉛筆や絵具を彷彿とさせる。
ならば傘は、雨天をキャンバスに描き出される絵だろうか。
想像した途端、『雨模様』という言葉が持つ印象が、劇的に変化した。
(「さっきまでは鈍色。けれど今はカラフル」)
くつりとノスリは喉を鳴らす。
首に鈴でもついていたら、チリンチリンと鳴らしてまわりたい気分だ。ついでに、悪戯心もむくりと沸く。
幸い、仕掛ける相手には大いに心当たりがあった。
「ちょっといいかい」
見つけて声をかけると、熱心に作業台に向かっていた紅葉が顏を上げる。何か小物を作っていたらしい。イベントの発起人の仕事かもしれない。随分と肩が凝っていそうだ。
(「処方箋代わりに、サプライズをひとつ」)
弛みたがる頬を捻じ伏せ、ノスリは腕に掛けていた黒い傘をおもむろに開く。
「――」
「外側は夜空」
「……じゃあ、これは明けの明星か」
内側は夜明けのマジックアワー。露先にはそれぞれ小さな星飾りが揺れている。その中で唯一、一回り大きな金色を、感嘆に紛れさせて紅葉が指さした。
「ご明察」
当てられたご満悦に、ノスリは差した傘ごとくるりと回る。しゃらりと響く音色は、星々の囁きとも、雨音のハーモニーともつかないが、心地よさは格別だ。
「惹かれる世界観だ」
率直な褒め言葉に、ノスリは上機嫌を隠さない。そしてドヤ顔のまま、腕に掛けたままだったもう一本を紅葉へ差し出す。
「へ?」
「イベントに案内してくれた礼!」
ほらほらと肩を揺らして促すと、遠慮がちに受け取った紅葉が、興味に負けて傘を開く。
一見は、ただの黒の蝙蝠傘だ。だが内側は快晴。しかも露先に青紅葉や、染まった紅葉、黄楓がさざめく錦秋仕様。
「……参った、やられた」
何に降参したのか、紅葉が天を仰ぐ。生憎、紅葉に贈り返す傘の仕度はない――しかし。
「紅葉の顔にも晴れ空が咲くと良いね」
「すまない、ありがとう――つか、ちょっと待ってくれ。ああ、これだ」
やおら荷物を漁った紅葉は、引っ張り出した翼を広げる鳥のチャームをノスリの鼻先へ突き出した。
「傘の礼」
「ひょっとして手作り?」
「シルバーアクセを作るのが趣味なんだ。それにほら、鳥も飛ぶなら青空の方がいいだろ?」
――ハレルヤ!
――晴れる哉!
サプライズの応酬に一花咲かせ終えた頃、青年二人は傘の柄で祝杯をあげる。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【勝利の凱歌】がLV3になった!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
ラヴィデ・ローズ
ぱっと色とりどり咲き乱れる傘の花
高いとこから眺めるのが雨の日のちょっとした楽しみなんだよね
けれど自分が持ち歩くのは忘れがちで、風邪引きかけたことも……
この機会にお供を探そうか
わぁ、オシャレな蝙蝠傘だ
この透明傘の透かし彫りもすごいな、地面に柄が映り込んで…
中でも目に留まったのは、古風な蛇の目傘
深い紫檀色地に渦状に和紙で花吹雪と蝶の柄
桜の季節の花吹雪を連想する、はっと息を呑む美しさ
贈りたい人の振り返る笑顔も浮かぶ
…綺麗だなぁ
想像に見惚れ手に取る頃には
自分用を探す目的はすっかり吹っ飛んでいそう
既に完成されてて手を加えるか悩ましい
腕を組み悩むうち
閃いたのは、雨上がりの水滴の煌めきめいたスパンコール
縫い付けたらもっとステキかも
小花状に、まばらに、いっぱい…うん、いい
ちくちく刺繍中の話し相手に
居合わせた紅葉くん、なってくれるかな?
何か手は加えるんだろうか
キミの傘もいいね
紅葉くんの雨の日の楽しみ方は?
オレはねー、雨音を聞きながら
こんな風に時間を忘れて手を動かして…
等と、静かで豊かなひとときを過ごしたい
深い紫檀色の厚い和紙へ、一針一針、丁寧に刺してゆく。
縫い留めるのは、光に煌めくスパンコールだ。
「ねえ紅葉くん」
「はい」
輝く小花を一輪咲かせたところで、ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は隣で黙々と作業をしている紅葉へ話しかける。
「雨の日って、どういう風に過ごす?」
「あー……割と今と同じことをしてる気が」
傘は貰い物があるらしく、紅葉の手元にあるのは銀粘土だ。傘のデコレーション用に提供してあるチャーム類にも、幾つか手製のものがあるらしい。
「アクセサリーとか作ったりするの?」
「っす。これとか、そうすね」
顔を上げた紅葉が、ラヴィデへ向けて右手を遣る。そこには燻し加工を施されたチェーンブレスレットが巻かれていた。
「へぇ、すごいね」
す、と視線を動かし、鈍い銀を見止めて感嘆を呟いたラヴィデは、また手元へ視線を戻し針を刺す。
ちくちく、ちくちく。
ちくちく、ちくちく。
傘を選び始めた時は、「わぁ、オシャレな傘がたくさんだ」と年甲斐もなくはしゃいでいたのだ。
透かしの入った透明傘を手にとっては、床に映る柄に目を楽しませた。
ベランダや屋上、歩行者デッキや歩道橋。それらの上から傘の花を眺めるのが、ラヴィデにとって雨の日のちょっとした楽しみだ。
色とりどりの傘たちが行き交う様は、なかなかに風情がある。なれどラヴィデは自分が傘を持ち歩くのを忘れがちだ。小雨くらいなら翼がいい雨除けになるが、本降りとなるとそうはいかない。おかげで風邪をひきかけたこともある。
だからこの機会に、忘れようにも忘れられない自分用のお気に入りを探すつもりでいた。しかし一本の古風な蛇の目傘に出会った瞬間、思惑も目論見もきれいさっぱり消し飛んだ。
地は深い紫檀。ぐるりと渦を巻くのは和紙の花吹雪と蝶。
連想したのは桜の季節だ。呼吸を忘れてしばし見入った。贈りたい人の振り返る笑顔も思い浮かぶ。
「……綺麗だなぁ」
傘か、想い人の笑顔か。はたまた双方の織り成す景色か。
いずれにせよ、ラヴィデの目にはもうその傘しか映らなくなっていた。
ちくちく、ちくちく。
ちくちく、ちくちく。
「その小花、水滴みたいっすね」
「うん、こうしたら雨上がりの滴っぽくなるかなって」
一輪、また一輪と水滴の小花が針先に咲いて行く。地道な作業だ、話し相手を確保しておいてよかったと、つくづくラヴィデは思う。そうでなければ、理想の景色を作り上げる前に、妥協をしてしまっていたかもしれない。
いや、贈る相手の笑顔を糧に、根性で踏ん張れたかもしれないけれど。
「そういやラヴィデさんは、どんな風に雨の日を過ごすんです?」
「あー、オレはねー。雨音を聞きながら、こんな風に時間を忘れて手を動かして……」
既に完成されている傘に手を加えることは、正直悩ましかった。
けれど閃いたより鮮やかで瑞々しい景色を、繕ってみたい気持ちが勝った。
「紅葉くん、こっちのバランスどう思う?」
「うー……俺なら、もうちょい離すかな」
ちくちく、ちくちく。ちくちくちくちく。
雨上がりの桜吹雪が仕上がるまで、益体も無いようで、存外に豊かな時間はゆるりと流れる――。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
花塚・夜壱
シャルロット(g00467)と
雨の日は、女の子もモーラットも大変なんだな
普段の2人の努力に頷きつつ
雨の憂鬱を吹き飛ばすような、そんな傘を作ってしまおう!
俺はこの、藍色の番傘にしようと思う
元々、和風なものは好きだからな
…藍色の、意味…!?
完全に無意識だった、いや、その…
…気になる人のイメージカラー、と言うか
いや、いやいやいや忘れてくれ(必死)
お、シャルロットはすでにイメージが出来てるのか
これは負けていられないな
俺も頑張って作らないと
そうだな…この和風のイメージを崩さないようにしよう
白い紐でタッセルを作って、それを傘の露先にそっと
ふふ、てるてる坊主に見えるだろうか
似合ってると言われると嬉しいな
お…!シャルロットは雨の日も楽しめる晴れの空か
モラさんとの傑作だな
青色と白のコントラストがまた爽やかだな
こんな素敵な傘ができると、雨の日が楽しみになってしまう
空を飛ぶ?さすがシャルロット、良いアイディアだ!
折角作ったからな、広げて使いに行こう
シャルロット・アミ
花塚さん(g00016)と一緒に
雨の日って確かに憂鬱
モラさんの毛もへんにょりしちゃうものね
(「もきゅー…」同意顔のモラさん)
浅野さんははじめまして
素敵なお誘いをありがとう、とご挨拶して
さあ、心浮き立つような傘をつくっちゃいましょうか!
花塚さんは番傘なのね
藍色なのはなにか意味があるのかしら
いつも花塚さんっていうと紅色のイメージがあるもの
(必死の花塚さんにほっこり)
私はね、作ってみたい傘があるの
青のビニール傘を購入して、デコレーションに白のインクを
ビニール傘に少しだけ白のインクを落として
雲の形にするわ
モラさんも手伝ってくれる?(「もきゅっ」)
ほら、こうすると晴れの日の空のようでしょう?
雨でも雲の上は晴れているから
いつでも私たちの頭上に晴れ空を
花塚さんの傘はふふ、てるてる坊主みたい
藍色の番傘に白のタッセルが映えていて素敵
不思議と花塚さんに似合ってるわ
そうだ、花塚さん、【飛翔】を使って
傘を持って飛んでみない?
こんな素敵な傘なんですもの、やっぱりさしてみたいの!
アドリブ歓迎です
――素敵なお誘いをありがとう。
言い出しっぺの紅葉への礼を済ませたシャルロット・アミ(金糸雀の夢・g00467)は、傘の展示場へ戻る。
なかなかの賑わいだ。数え切れない傘のお陰で色にも溢れていて、少し視界がチカチカする。けれどそんな中にあっても、長身の花塚・夜壱(月下鬼人・g00016)は目立つ。
「いたいた、花塚さ――」
連れ合いに小走りで駆け寄りかけたシャルロットは、夜壱が手にした傘に気付いて歩を緩めた。
(「藍色?」)
「番傘を選んだんですね」
背後から声をかけると、気配に気付いていたらしい男が自然体のまま振り返る。
「元々、和風なものは好きだからな」
「でも藍色は珍しいですよね。何か意味が――」
「!?」
あるのかしら、と続くはずだったシャルロットの語尾を遮るように、夜壱の肩が勢いよく跳ねた。
「……あ、あ、藍色の、意味
……!?」
訊ねた時点で、シャルロットに他意はなかった。全くもって、なかった。しかし顕著すぎる夜壱の動揺ぶりには、シャルロットの口角も上がらざるを得ない。
「ええ、花塚さんっていうと紅色のイメージがあるもの」
「い、いや……その、なんだ。完全に無意識だった――あー……気になる人のイメージカラー、というか……いや、いやいやいや忘れてくれ」
言葉通り、夜壱は無意識だったのだろう。傘に藍色を選んだのも、つい『気になる人のイメージカラー』なんて口走ってしまったことも。
その後の必死さからも『推して知るべし』だ。しかもシャルロットは相思相愛の相手がいる身だ。限りなく事実に近い想像ができるくらいの経験値はある。
(「そういうことね」)
ふふとシャルロットは内心で笑む。とはいえ、夜壱は『敵』ではないので、苛める対象外だ。それに柔らかい蕾めく心は、まさにバレンタインデーに相応しい宝物。悪戯につついてよいものではない。
「話は変るけど、雨の日って本当に憂鬱なの。モラさんの毛もへんにょりしちゃうものね」
助け舟代わりの話題転換は、実際にシャルロットにとっては気鬱な悩みでもある。それまで大人しくシャルロットの腕の中に納まっていたモーラット・コミュも、「もきゅー」と同意顔だ。
「そうなのか」
一度、二度と瞬いた夜壱の肩が、そこですとんと落ちる。
ここであからさまに安堵されると、それはそれで心配なのだ。が、これも初々しさだと思い、引き続きシャルロットは様々を胸の裡に収めることにする。
「雨の日は、女の子もモーラットも大変なんだな」
しみじみと頷く夜壱へ、シャルロットは「そうよ、大変なの」と実感を籠めて重ねた。
すると大いに伝わるものがあったのか、夜壱が奮起する。
「ならなおさら、雨の憂鬱を吹き飛ばすような、そんな傘を作ってしまおう!」
夜壱は完全に常態を取り戻したようだ。ならばとシャルロットも本日の本懐を果たすことへ気持ちを傾ける。
「そうしましょう。ちなみに私はこれ」
モーラット・コミュは抱いたまま、シャルロットは体を捻って、腕にかけた傘を夜壱へ示す。
購入済みのシールが貼られたそれは、青いビニール傘だ。
「早いな。シャルロットはもうイメージが出来てるのか」
「そうね。作ってみたい傘は決まっていたから」
挨拶へ行きがてら買っておいたとシャルロットが告げると、夜壱の対抗心に火が点く。
「これは負けていられないな。俺も頑張って作らないと」
「ほら、こうすると晴れの日の空のようでしょう?」
「もきゅっきゅ!」
白のインクを落とすのを手伝ったモーラット・コミュが鞠のように跳ねた。ご機嫌なように見えるその仕草に、シャルロットも相好を崩す。
青空に見立てた傘に描き加えたのは、幾つかの真っ白な雲。
雨の日でも雲の上は晴れているのを思い出し、シャルロットはそれを再現したのだ。
「いつでも私たちの頭上に晴れ空を――ね、いいでしょ?」
シャルロットの快晴の笑顔に、モーラット・コミュがぽふんぽふんと跳ねまわる。
「花塚さんの傘は……てるてる坊主みたい」
ちょうど夜壱も仕上がったらしい。並んで作業していた男が、うんっと背伸びしたので、手元を見遣ると、白い紐で作られたタッセルが藍色の傘の露先に揺れていた。
「わかってくれるか?」
「うん。藍色の番傘に白のタッセルが映えていて素敵。不思議と花塚さんに似合ってるわ」
「そ、そうか――ありがとう」
得られた理解に、夜壱の表情がゆるむ。そこに『似合う』と言ってもらえたことへの歓びが含まれているのを、シャルロットはちゃんと気付く。
だが敢えて指摘する不粋はしない。
「シャルロットは雨の日も楽しめる晴れ傘か。モラさんも頑張ったんだな」
青色と白のコントラストの爽やかさに夜壱は目を細め、思ったままを口にする。
「こんな素敵な傘ができると、雨の日が来るのが楽しみになってしまう」
「あ」
楽しみになってしまう、という夜壱の一言に、シャルロットが得たのはスペシャルな天啓だ。
傘が必要になるのは雨天だが、別に雨降りでないと傘をさしてはいけないという約束はない。
つまり、お行儀よく雨の訪れを待つ必要はない、ということだ。
「花塚さん、傘を持って飛んでみない?」
新宿島でならば、飛翔の力の発言は容易い。シャルロットの謂わんとすることを察した夜壱の顔も輝く。
「さすがシャルロット、良いアイディアだ!」
せっかく作った傘を雨の日待ちでお蔵入りさせるなんて勿体ない。
素敵に仕上がったのなら、なおさらに。
2024年2月14日。
夏を思わす蒼天と、てるてる坊主をぶら下げた藍の和傘が、新宿島の空を飛ぶ。
ご機嫌なサプライズに気付いた人々の顔もまた、ご機嫌な笑顔だった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
【完全視界】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV3になった!
朔・冥夜
小鳥(g01304)と
雨の日か……
静かな雨音だけ響く世界は悪くない
それから花にとっては恵みの雨にも成るだろう
小鳥が話す好きな理由も、一寸解るな
傘のデザインを気にしたことが無かったが
形も様々なんだな
小鳥の選んだ刺繍の傘は愛らしい、が
……模様はオレンジで良いと思うぞ
何かとネタにされるみかんはさて置いて、と
白黒も小鳥に映える色合いだが
雨模様に咲かせるなら華やかな橙色はどう?
パッと広げてみせくるくるり
きっと雨でも晴れの日だって楽しくなりそうだ
俺は……和傘が慣れているし此れかな
雪色に牡丹華、羽ばたく鶴を描いたもの
柄は内側だから、見上げるだけで綺麗だ
よし、互いに気に入りを見つけたし
買って行こうか?
こうして贈り合うというのも良いものだな
……!と、これはチョコ…か?
用意してくれてたのか。ああ、有り難く頂くよ。
シンプルながら小鳥らしいラッピングの箱を
丁寧に受け取って御礼を告げる
傘のおかげで次の雨が待ち遠しい、なんてね
花喰・小鳥
冥夜さん(g06409)と
「冥夜さんは雨の日は好きですか?」
傘を物色しながら問いかけて、その答えは彼らしいと頷く
小鳥は? 問い返されたなら、
「私は好きです。雨音が何もかも掻き消してくれる気がして」
傘を差さずに歩いたり、雨の中に身を置く日があってもいいと思う
「この傘が可愛いです」
スカラップレース刺繍の長傘で、刺繍はオレンジ模様、色は白と黒と橙の三色
「オレンジというより今回はみかんでしょうか?」
冥夜さんはみかんにこだわりがあるらしい
色を迷う私に彼が勧めてくれる
橙色に白のオレンジの刺繍はやはり可愛い、これにしよう
彼が選んだ傘はやはり和傘だ
「風流なデザインです」
傘は当人が選んだものをお互いが買ってプレゼントする
そして、
「ハッピーバレンタインです。冥夜さん受け取って貰えますか?」
ラッピングはシンプルに黒い箱に白いリボン
私なりに気持ちは込めたつもりです
「渡さない理由がありません」
冥夜さんならきっとたくさん貰うと思う
でも、気持ちは形にしてこそだから
「はい。雨になったらまたお出かけしましょう」
色、色、色、色、色。
ビビット、パステル、名も無き色。
彩という彩を集めたような催事場には、人の彩まで豊かに賑わっている。
とは言え、他者の邪魔をする無粋な者はいない。だって今日はバレンタインデー、皆が皆それぞれの想いに忙しいのだろう。
だから傘の小道の逍遥の傍らには、周囲の喧騒とは裏腹な静穏が在った。
「冥夜さんは雨の日は好きですか?」
一本、また一本と傘を手にとっては戻すを繰り返しつつ、花喰・小鳥(空虚のナハティガル・g01304)は何気なく尋ねる。
「雨の日か……静かな雨音だけ響く世界は悪くない」
応える朔・冥夜(星朧・g06409)も同様だ。片肘を張らず小鳥と並び歩き、傘の吟味に余念がない。
「ああ、それから。雨は花にとっては恵の雨にも成るだろう」
ふと、傘をディスプレイへ掛け戻していた小鳥の手が止まる。あまりに冥夜らしい答えに聞き入ってしまったのだ。
「そういう小鳥は?」
「私は好きです」
深い得心に頷いた先で跳ね返された尋ねに、小鳥は間を置かずに言い切る。
「雨音が何もかも掻き消してくれる気がして」
傘を差さずに歩いたり、雨の中に身を置く日があってもいい――そう感じ、考えるのが小鳥の性(さが)だ。
そのことを知ってか知らずか、冥夜は小さく笑う。
「それも一寸解るな――にしても、傘のデザインは気にしたことが無かったが、形も様々あるもんなんだな」
ゆるく耽溺していたい会話のリズムから、不意に冥夜が抜け出す。雨天を語らうのもいいが、本日の主題は『傘』にある。
無数に思えるほど並ぶ傘も、この人入り具合だ。僅かの差で運命のトキメキが、他人の手へ渡ってしまうおそれだってある。
「そうですね。これだけの傘にお目にかかるのは、そうあることではない気がします」
僅かに歩幅を広めた冥夜を追って、小鳥も少し足を速めた。
――かつん。
「あ」
セラミックタイルの床に一際高くヒールが鳴った瞬間、小鳥は整列した三色に目を留める。
白、黒、橙。オレンジ模様のスカラップ刺繍が施された、レースの長傘だ。
「――オレンジと言うより、今回はみかんでしょうか」
「いや、どうしてみかんよ」
小鳥の小声を聞きつけた冥夜が、すかさず鋭く切り込む。
「冥夜さんはみかんにこだわりがあると思いましたので」
「……オレンジのままで良いと思うぞ」
ここで顔色のひとつでも変えてくれたなら、漫才もどきの掛け合いに持ち込むこともできるのだが。小鳥の平らな口振りに、何かにつけ『みかん』をネタにされる冥夜は肩を落とす。
こういう時は、話を進めてしまうに限る。
「白と黒も小鳥に映える色合いだが、雨模様に咲かせるなら華やかな橙色はどう?」
小鳥が選んだ刺繍の傘は愛らしい。ならば、と冥夜は、その愛らしさがより際立つよう、橙色の傘を手にとり、勢いよく開いてみせた。
「ほら。きっと雨でも晴れの日だって楽しくなりそうだ」
くるくる、くるり。
冥夜が傘を回す。橙色に白で縫い取られたオレンジも回る。やはり可愛い。
「――それにします」
色に悩んだ小鳥は、冥夜のプレゼンに乗ることにする。閉じて畳まれても、瞼に焼き付いた可愛さはそのままだ。
「冥夜さんは決めたんですか?」
小鳥の傘は決まった。残るは冥夜の傘だ。今日の目的は、相手が選んだ傘を自分が買い求め、贈り合うことにある。つまり冥夜の傘が決まらないことには話が進まない。
しかし。
「俺は……此れかな」
どうやら道々、選りすぐりの一本を決めていたらしい冥夜は、迷いのない足取りで一度通り過ぎた和傘のコーナーへ戻ると、躊躇なく手を伸ばした。
「見上げるだけで、綺麗だろう?」
ばさ、と。慣れた手つきで冥夜が傘を押し開く。
そこには飾り気のない表が嘘のような、雅な世界が広がっていた。
雪色に牡丹華。羽ばたく鶴に小鳥も暫し見入る。
「……風流ですね」
「だろう。じゃあ、買って行こうか」
気に入りを自分で購入するのはいつもの事だが、贈り合う事により、格別さが増す気がするから不思議だ。
「こういうのも良いものだな――っと、これはチョコ……か?」
受け渡すのは傘だけだと思っていた。故に冥夜は、傘に添えられた小箱に目を瞠る。
黒い箱に白いリボンをかけたそれは、時節柄チョコレートで間違いないだろう。
「ハッピーバレンタインです。冥夜さん受け取って貰えますか?」
「用意してくれていたのか」
種明かしはあっさりしているが、小鳥なりに気持ちを込めた品であるのは間違いない。
「渡さない理由がありません」
なおも小鳥は淡々と言う。
冥夜のことだ、沢山のチョコレートを貰うに決まっている。だからとて、気持ちは形にしてこそだ。
「ああ、有り難く頂くよ」
シンプルでありながら小鳥らしい箱も、傘と共に冥夜は丁寧に受け取る。
一瞬、そこで会話が途切れた。
なれど嫌な沈黙ではない。多分、傘を探して歩いた時と、同じような――。
「傘のおかげで次の雨が待ち遠しい、なんてね」
「はい。雨になったらまたお出かけしましょう」
贈り合った傘を理由に、次の約束を結ぶ。
それが新たな思い出へ繋がるものかはまだわからないけれど、冥夜と小鳥の手元には、今日の傘が確かに残る。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
三苫・麻緒
莱くん(g04625)と傘づくり
考えてみると戦っているときは傘を持てないから、傘を差している時間って案外穏やかな時間なのかも
雨は髪の毛が跳ねて苦手ーって思ってたけど、そこに楽しさが加わるのなら案外悪くないよね
…もう、莱くんってば、食べ物食べ物って言いすぎだよ?
今回は透明だけど色付きの傘にしよっか
私も莱くんもあまり傘を持ち歩くタイプじゃなくて、特に莱くんは傘そのものもあまり使ったことないもんね
洋傘は居候先のカフェにあるけど、こういう綺麗な傘もあるんだよって見せてあげたいな
ベースの色は私の目と羽根の色と同じミント色
露先側にミントの葉のシールをやりすぎない程度に貼っていこうかな
留め具や露先はチョコ色で、ハンドルはミント色とチョコ色の斜めストライプにしちゃう!
完成したら、どこか広いところでお試しで傘を差してみたいところ
ビニールの上から光が降り注いで、足元がミントと藤の色に
影までお気に入りの色になったら、気分が上がらないわけがないんだよなぁ
ね、莱くん
次に雨が降ったら、この傘を差してお散歩しようね
葉古森・莱
麻緒さん(g01206)と傘づくり
バレンタインに、かさ…?
あまり聞いたことがない組み合わせだけど、たしかにチョコじゃなきゃ駄目って決まりもないよね
でも麻緒さんは食べ物じゃなくなっちゃうけどいいの…?
今回は色付きの透明なかさにしてみるね
漂流前はかさを使うことはほとんどなくて、使うのは新宿島でってことがほとんど
ビニールのかさも居候先のカフェにはあまり置いてないから、傘の向こう側が透けて見えるのはちょっと不思議な感覚
全体は藤を思わせる紫色
本当はお花や植物も模様にいれたいけど、女の子っぽくならないようにするにはどうすればいいか、ちょっと相談したいかも
持ち手のところにけだま…モーラットの小さな飾りをつけられたらうれしいな
麻緒さんに誘われて、お披露目をかねて完成したばかりの傘を差してみるよ
足元まで麻緒さんと僕の色になって、本当にきれい
麻緒さんはこれを見せたかったの?
気分が上がるの、ぼくもわかっちゃった
…えへへ、お散歩の約束、すごく楽しみ
ずぶ濡れになって寒くなるだけの憂鬱だった雨が、今は待ち遠しいの
両側にずらりと傘が並ぶ小道を、三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)はゆっくり歩く。歩幅の違う葉古森・莱(迷わし鳥・g04625)も、周囲を見渡しながらついて来られるように、だ。
その心遣いを年下の友人に気取らせない程度には、麻緒もしっかりお姉さんである。
「考えてみると戦っている時は傘を持てないから、傘を差している時間って案外穏やかな時間なのかも」
春先の獣道を行く心地でいた莱は、麻緒の言い様に一滴の納得を得た。
正直なところ『バレンタインに、かさ……?』という疑問は未だ莱の胸にある。
新宿島に暮らして長いわけでもない莱でも、あまり聞いたことのない取り合わせであるのは知っていた。
同時に、誰が言い出したことかも識らないので『バレンタインデー=チョコレート』である必要もないようにも思う。
何より麻緒が気にしていないし、楽しそうだから、良いのだろう――とは言え、だ。
「雨の日ってさ、髪の毛が跳ねて苦手ーって思ってたけど、そこに楽しさが加わるのなら案外、悪くないよね」
世間話の口調で語る麻緒が、柔らかな癖のある前髪を摘まんでいる。その髪色は甘いチョコレート色だ。
だからこそ、莱は唯一の気掛かりを捨てきれずにいる。だって、だって――。
「麻緒さん。食べ物じゃなくなっちゃうけどいいの……?」
ぴたり。
足を止めた麻緒が膝を折り、ミントグリーンの視線を莱に合わせた。
「ん、もう。莱くんってば、食べ物食べ物って言い過ぎだよ?」
ぷくり。
わざとらしく麻緒は頬を膨らませてみせる。
確かに麻緒が纏う色味はチョコミントだが、チョコミント味のお菓子にそこまで興味があるわけではない。それに麻緒はかわいいものが大好きな女子だ。これだけの傘が一堂に催しを楽しめないわけがない。例え、食抜き、でもだ。
そして麻緒にはもう一つ、大事な理由がある。
新宿島に流れ着く以前の莱が、傘を差したことがほとんどないのを麻緒は知っている。
莱は平安鬼妖地獄変の生まれだ。家族以外からは忌み嫌われ、蔑まれ、一人ぼっちだった子供だ。
傘を使うようになったのも、新宿島の生活に馴染んでからのこと。故に莱は、野花と同じように、傘にも種類があることを未だ知らない。
居候先のカフェにも傘は置いてあるが、数は知れている。たまに客が忘れていくものもあるが、好きに扱ってよいものでない。
(「だから、見せてあげたかったんだよ。こういう綺麗な傘もあるんだよって」)
「ほら見て、莱くん」
止めた足はそのままに、麻緒は二本の透明傘へ手を伸ばす。
先に莱へ示す一本の色味は、麻緒の眸と翼と揃いのミントグリーンだ。
「きれい!」
どうやら『食』云々は頭から消え去ったらしい莱が、声を上げる。
喜色が明らかな音色に、麻緒は小さく笑って、もう一本をその場で差す。
「莱くんにはこんなのが似合うんじゃない?」
開いた傘を、麻緒は莱へ握らせた。
藤を思わす紫色の傘に、莱の大きな瞳がますます大きくなる。
透けて見える傘の向こう側まで、色付いている。そのことが、莱にはちょっぴり不思議で堪らない。
感嘆の息が莱の唇を吐く。綺麗な色だ。見入ってしまう。それでいて、何かが足りない気もする。
「……ねえ麻緒さん。これにお花や草の模様をいれたいんだけど、女の子っぽくならないようにするには、どうしたらいいかな?」
「それなら、ね――」
すっかり買う気になっている莱へ秘訣を授けるべく、麻緒は藤色に色付く三角の狐耳へ、とっておきを囁く。
吹く風は冷たいが、空は澄んで晴れ渡っている。
足元に落ちる色付きの影も鮮やかだ。
「影までお気に入りの色になるんだもん、気分が上がらないわけないと思わない?」
「そうだね」
弾む莱の是を耳に、麻緒はミント色とチョコ色の斜めストライプにしたハンドルをご機嫌に握る。
留め具や露先をチョコ色に変え、ついでに露先側の傘布へミントの葉をさり気なく配した傘は、文字通り世界に一つの麻緒だけの傘だ。
「ね、莱くん。綺麗でしょ?」
「うん、うん!」
白のシルエットで藤の花を一房添えた紫の傘を高く掲げ、莱も笑む。
持ち手の所につけたモーラット飾りは、もちろん初めてできた友達である『けだま』をイメージしてのものだ。
指先から爪先まで、好きな色に染まる。それは『きれい』と感動するだけじゃ物足りない。
「麻緒さんはこれをぼくに見せたかったの?」
「そういうこと」
ぱちんとウインクする麻緒につられて、莱もくしゃりと破顔する。
「ありがとう、麻緒さん。気分が上がるの、ぼくもわかっちゃった」
ふさりふさりと揺れる莱の尻尾は、主の今の気分の証左。そこにもう一つ、胸の高鳴りを加えようと麻緒は莱を誘う。
「ね、莱くん。次に雨が降ったら、この傘を差してお散歩しようね」
「――!」
もちろん、莱は一も二もなく頷いた。
お散歩の約束が、凄く楽しみだ。ずぶ濡れになって寒くなるだけだった憂鬱な雨の記憶が、紫とミントグリーンの期待に染め変えられてゆく。
「麻緒さん。早く雨が降るといいね」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【エアライド】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!

紫空・千景
和月(g06070)と共に
以前は「暁」と名乗り交わした文の数々
其の先は、今紡ぎ繋ごう
いつか綴った傘の話
今日はお気に入りを隣で
天が覗く外側は夜に舞う薄紅の宵桜
内側から見上げれば、眸に同じく夜明け空
変わらず『次』を招く、約束の穹
そう在りたい私の姿の傘と出会いたい
会えたら、迷わず手に
会えぬなら、目に止まった『空』を
傘の種類はどれでも構わない
デコレーションエリアで
氷の様に澄んだリボンを傘の持ち手に飾る
渡す相手が迷わず空を見つけられる様に
ふふ、改めて
Happy Valentine.
空のお裾分け、傘の贈り物だ
私からは此れだと氷彩が揺れる夜色が薄紅抱えて眠る傘
贅沢?
良いだろう、幸が在るのなら
代わりに貰った傘を開いても好いか?と訪ね
自身が選んだリボンと同じ色の傘開けば
広がるは星月夜
ふふ、盈月の巡りも堪能できるのか
いつでも寄り添う優しい色の佳い傘だ
大切にする
噫、喜んで
晴の日に陽光の恵みを
雨の日に雨雫の恵みを
夜には月光の加護も
共有し逢いに行こう
私達の穹傘が数多の出会いに
互いの穹に繋がってると信じて
柔く、咲う

霧崎・和月
千景さん(g01765)と共に
かつて「月」の名で交わした文通の続き
あの時は各々でお気に入りを語り合い
今日は共に探しましょう
天から見る花は己の瞳の氷彩
下から見上げれば星月夜広がり
月が浮かぶのは生地の先
傘を回せば月は満ち欠けを繰り返す
叶うならば、そんな傘を
叶わずとも近い、月夜の傘を
自分を重ねたお気に入り、その一つを手に
デコレーションエリアで
宵色のリボンを傘の持ち手に飾り付け
唯一選び抜いた空だと示すように
ハッピーバレンタイン
俺の選んだとっておきをお裾分け
いえ…今回はプレゼント、でしょうか
代わりに受け取った薄紅に頬を緩めて
…千景さんといると贅沢を覚えてしまっていけませんね
肯首と、俺も是非と続けて
彼女の大切な桜を天に広げたならば
自身の目の前に映るは夜明けを告げる空
…長い夜もいつかは明ける
とても、あたたかい傘
うれしいです
こちらこそありがとうございます
よければ、いつかこの傘を差して
色んな経験を共有しに行きませんか?
ええ、晴れも雨も…陽光も月光も
この傘が互いへ繋がる穹であればいいなと
願う言葉はそっと心に
一口に『傘』といっても、種類は様々だ。
軽さと丈夫さを重視したもの、持ち歩き易さを最優先したもの、雨の日の視界確保を重要視したもの。或いは、所有者の心を躍らせることを目的としたものもある。
意匠をこらした傘は、雨天の気鬱を晴れ空へと変える最有力候補だ。その分、値が嵩張るものが多いのだけれど。
でも、出逢った瞬間、何物にも代えがたい価値が生まれる。
「ああ、まさにこれだ」
天が覗く表は、夜に舞う薄紅の宵桜。差して見上げる裏空は、己が眸に同じ紫に赤が混じった夜明け彩。
風雅な傘は和傘に多いが、見つけた絹張りの舞傘に紫空・千景(夜明の導べ・g01765)は感嘆以外の言葉を忘れた。
廻り来る夜明けは、変わらず『次』を招く約束の穹だ。そして千景が『そうありたい』と願うものでもある。
叶うなら、そういう傘と出逢いたいと思っていた。足らずば、類似でも構わないとさえ思っていた。
だのに思い描いたままの傘に出逢えたのだ。ならば迷いは僅かもない。
(「千景さん、良かったです」)
歓喜の横顔を隣に、霧崎・和月(彷徨う器・g06070)はひそかに胸裡を温める。
羨む心は一分とてない。親愛の情を交わした相手の歓びは、我が喜びも同じだ。
そして和月もまた、望む傘との邂逅を果たしている。
欲していたのは、自らの瞳と彩を同じくする傘だ。
重い鈍色の空に咲かすのならば、冴え冴えとした氷の花を。それでいて見上げた先には、美しい星月夜が欲しかった。
然して手に取ったのは、14本という親骨の数にしては随分と軽い洋傘だ。
親骨が14ということは、小間もまた14ある。その一面一面には、月齢をなぞるように大きさを変える月が描かれていた。
縁に近いところに白く輝く月は、傘をくるりと回すことで、満ちて欠けてを繰り返す。
「欲しいと思っていましたが、こんな傘もあるんですね……」
こうも見事な傘ならば、和月も息を飲むより他にない。
かつて千景は「暁」と名乗り、「月」と名乗る和月と文を交わした。
文ゆえに、一方通行だ。
各々の好きを語り、相手を慮る言葉を連ねる。
無論、応えがすぐあるはずもない。相手のあれやこれやを伺えるのは、送った文への返しがあってからだ。
そうして幾通、重ねたろう。
傘の話も綴ったこともあった。
故に今日は、その続き。ただし綴るのは文字ではなく、互いの顔を眺め遣りながらの言の葉たち。
「改めて『Happy Valentine.』、空のお裾分け、傘の贈り物だ」
「ハッピーバレンタインです。俺の選んだとっておきもお裾分け――いえ、今回は『バレンタインプレゼント』ですね」
流暢な発音で時節を祝った千景へ、和月も笑みで返す。
そうして交換された傘の柄には、千景の手元のものには宵色のリボンが、和月の手元のものには氷彩のリボンが結わえられている。
シンプルな自己主張だが、唯一選び抜いた傘だという証明であり、持ち主を示すそれは、贈るために欠かせぬ粧飾だ。
「……千景さんといると贅沢を覚えてしまっていけませんね」
自分だけの傘をそろりと抱える和月の頬が、薄紅に緩む。そんな和月へ、千景は清々しく笑いかける。
「贅沢? 良いだろう、幸が在るのなら」
鷹揚に構えた千景の佇まいは、竹を割ったようで小気味好い。屈託もてらいもない語り口には、和月の肩からも自然と力が抜けようというもの。
これらはいずれも、文では知る術のなかった千景のリアルな生き様。
「和月、開いてもいいか?」
「是非に」
得た許しに、千景は傘を開き、広がる星月夜に「ふふ」と口角を上げた。
「盈月の巡りも堪能できるのか。ありがとう、大切にする」
いつでも寄り添う優しい色の佳い傘だ、と続いた満足に、和月も相好を崩す。
「こちらも開いていいでしょうか?」
「もちろんだとも」
千景が大切にする桜の傘を解き刹那、和月は長い夜へも終焉を告げる空に見入る。
(「とても、あたたかい傘」)
喩えて、春暁。凍てつく冬と、光り無き暗闇の終わり。
「うれしいです、こちらこそありがとうございます」
感銘に喉を閊えさせそうになりながら、礼を返しきったところで、和月はふと思いつく。
せっかく雨をも恐れぬ傘を手にしたのだ。ならば使ってみたくなるのも世の倣い。
そして使うならば――。
「千景さん。よければいつか、この傘を差していろんな経験を共有しに行きませんか?」
贅沢に過ぎるやもしれぬ願い。なれど先ほど、千景は『幸が在るなら』『良い』と言った。無論、それを翻す千景ではない。
「噫、喜んで」
――晴の日に陽光の恵みを。
――雨の日に雨雫の恵みを。
――夜には月光の加護も。
「大いに共有し、逢い行こう」
数多を含んだ千景の是に、和月はこの上ない贅沢を噛み締める。
「ええ、晴れの雨も……陽光も、月光も」
遠くに在りて文を交わすのではなく、隣を歩む二人はそっと祈る。
手にした傘が、幾千の出逢いと、互いへ繋がる穹であればいい、と。
時に、多くを語るもまた無粋。然して千景と和月は、柔らかく咲い合う。
既に約束は交わした。
あとは何物にも代えがたい互いの傘を手に、交わり重なりし路を歩んでゆくだけだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】がLV4になった!
【過去視の道案内】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
伊吹・祈
いつだって僕は降りしきる雨の中に在る
幼い迷い子を捜し歩き続けた『記憶』も
過去の時代の中で肉体と存在さえ奪われたあの『夜』も
しとどと降る雨の冷たい感覚が……ずっと消えない
あなたの胸に――果たしたい祈りはありますか
声かける先は鬼人の青年(浅野くん/g03177)
なぜ、を問うのはタブーなのかな
僕にはあるのです
ずっと希っていた、祈りが
その為に生かされていると言っていい程の……
今度こそ、子供達の未来を絶やさぬ為に――僕は
呟き、吐露する言葉と共に
傘選ぶ視線がひたと止まる
艶のある黒い長傘は手に取ると重く
開いた翼のその羽根先をクロスさせる様な姿を描く
宛ら革命のブラックスワン――と呼べるのだろうかと
所感を胸に抱きながら
どうぞ、お持ちください
あなたにこそ相応しい
選び取り、購入した傘を手渡そうとして
今の僕には此れがある
示す先は僅かに動かしてみせる天使翼
有難うございます
名も知らないあなた
見えない傘を得た様に
晴れやかなる胸は口角だけで笑む癖が映すから
見上げた空がどんな顔をして出迎えようと
ハレルヤ、の祈りを口にして
『家族を――幼い弟妹を取り戻すことです』
――あなたの胸に、果たしたい祈りはありますか。
伊吹・祈(アンヘル・g10846)の問いに、最終人類史生まれの青年は、鬼人化した体躯を揺らしながら答えた。
口振りに躊躇はなかった。同じようなことを望む者は五万といる。何も自分だけではないと、ありふれた悲願だと理解しているからだ。
だがからといって、痛みが伴わないわけではないことを祈は知る。
「僕にもあるのです。ずっと希っていた、祈りが」
左右で僅かに色差のある青の双眸を、祈は降り止まぬ雨を眺めるように遠くした。
「その為に生かされていると言っていい程の……」
冷たい雨の只中にあるかの如き告白は、寂かに――。
祈の在処は、いつだって降りしきる雨の中だ。
幼い迷子を捜し歩き続けた『記憶』も、過去の時代の中で肉体と存在さえ奪われた“あの”『夜』も、祈は雨の中に在った。
ずっと。
ずっと。
ずっと、ずっと。
篠突く雨にしとどとなる、冷たい感覚が。
(「……ずっと消えない」)
「今度こそ、子供達の未来を絶やさぬ為に――僕は」
そこでふと、傘の小道を歩んでいた祈の足が止まる。
世界中の色という色を集めたような華やかさの中、祈の目に留まったのは夜闇よりなお濃い漆黒だ。
「気になる傘がありましたか?」
話し相手と連れ立つ青年の尋ねに、祈は「ええ」と短く応えて、一本の長傘を手元に引き寄せる。
黒は黒でも、艶やかな黒だ。当たる光に白を錯覚させるほどの。
「これに、します」
刹那、雲間から伸びた天使の梯子の御許を目指すように、或いは迷図を抜ける解を得たかのように、祈の足取りが変わる。呟きと同じにゆるやかなものが、明確な意図をもって動き出したのだ。
傘の購入を終えた祈は、そのまま作業スペースへ向かうと、傘の生地とは彩度の違う黒のペンを手に取ると、躊躇なく線を引く。
描くのは、翼に見立てた開いた傘の小間の先――羽根先をクロスさせるような文様。
裡に抱いた言霊は、革命のブラックスワン。
(「――と呼べるのだろうか」)
「どうぞ、お持ちください」
「え?」
作業を終えるや否や渡されんとする傘に、燃える眼が円く瞠られる。こうしてみると、体格の割には幼げだ。過ぎた季節に心を留め置いているのかもしれない。
「この傘は、あなたにこそ相応しい」
「でも、それじゃ」
青年の憂いを先読みし、祈はかつての己は持ち得なかった天使翼を、僅かに動かしてみせた。
「今の僕には此れがありますので」
「翼が傘代わりですか? あ、なら。ちょっと待ってて下さい」
祈としては、望んで得たものではないかもしれない。そこに在ることを意識する都度、負った業を噛み締めるものかもしれない。
しかしそれらを推し量る術を持たない出逢ったばかりの青年は、晴れ空のように笑ったかと思うと、どこかへ駆けて――瞬く間に舞い戻った。
「傘のお礼です。翼を傘代わりに使ったら濡れるでしょう? あ、リボンは雨上がりの虹のつもりです」
屈託なく、虹色のリボンをかけたスポーツタオルを青年が差し出す。新品であることは、手触りとわずかも褪せぬ鮮やかな青の色で知れた。
「有難うございます、名も知らないあなた」
「紅葉です。浅野紅葉。あなたは?」
「僕は――」
二月にしては気持ちの良い風が吹く晴天だ。
けれど空はいつも気紛れに人々を翻弄する。とは言え、心に傘を得たならば、空色に揺らがされることはない。
「ハレルヤ」
祈は、歓喜と感謝の聖句を口にする。
――ハレルヤ。
――晴れる哉。
晴れやかなる胸は、癖づいた口角だけの笑みが映す。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】がLV2になった!
効果2【グロリアス】がLV2になった!