モスクワ市街地解放作戦

 モスクワ市街地の解放を行い、モスクワを支配するジェネラル級ノーブルヴァンパイア『死妖姫カーミラ』を撃破する準備を行います。
 現主流派の幹部である『死妖姫カーミラ』を撃破し、モスクワを解放できれば、サンクトペテルブルクに集まっている現主流派に大打撃を与えられます。

 解放後のモスクワの扱いについては、ボロジノ会談の結果などを踏まえ、攻略旅団で提案を行ってください。

※24年3月1日:『最終人類史のバレンタインデー2024』により、攻略期限が40日延長されました。

死妖姫カーミラ

怪僧ラスプーチン

サディストとシリアルキラー(作者 砂浦俊一
4


#吸血ロマノフ王朝  #モスクワ市街地解放作戦  #モスクワ  #死妖姫カーミラ 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#吸血ロマノフ王朝
🔒
#モスクワ市街地解放作戦
🔒
#モスクワ
🔒
#死妖姫カーミラ


0



●1917年モスクワ、クレムリン宮殿
 瀟洒な調度品で彩られた浴室の豪華な浴槽で、『死妖姫カーミラ』は湯浴みをしていた。
 しかし浴槽を満たすのは湯ではない。
 美女の鮮血だ。
 天井には血を搾り取られた美女の死体が釣り下がっており、凄惨極まりない。
 この鮮血の湯浴みをカーミラは好んでいたが、その表情は晴れない。
「ダリヤは倒された。拷問館は燃やされた」
 むしろ彼女は鬱屈としたものを溜めているように見えた。
「ディアボロスがここに攻め入って来るのも、時間の問題ね……」
 それがカーミラの悩みの種だった。
「失礼いたします。カーミラさま、ワインをお持ちいたしました」
 浴室へヴァンパイアノーブルのメイドが入り、カーミラへワインを給仕する。
 メイドの前では鬱屈とした顔は見せず、カーミラは優雅な所作で血のように赤いワインを口へと運ぶ。
 空になったグラスへメイドが2杯目を注ごうとするが、カーミラは片手で静止した。
 ふと、策が閃いたからだ。
「ディアボロスはモスクワ市民の窮状を放っておけないでしょう。市街地を見張り、彼奴らのモスクワ市内での活動の兆候があれば、すぐに迎撃して退治するよう伝えなさい」
 カーミラの指示に、メイドは一礼して浴室を出ていく。
 閃いた時は良い策な気がしたが、指示してみると凡庸に思えてきて、カーミラの表情は曇る。
 ディアボロスの情報を調べていた『ダリヤ・サルトゥイコヴァ』が倒されたのは、痛手だった。
 なにしろ情報が入ってこないので、場当たり的に動くことしかできないのだ。
「とはいえ、ラスプーチンを倒したディアボロスを撃退すれば、私の地位も盤石となることでしょう」
 いかにして今の地位を守るか。
 今のカーミラの頭にあるのは、それだけだった。

●市民の窮地を救え
「ラスプーチンとのボロジノ会談では、様々な情報を得ることが出来たようだな。この情報を元に、今後の『吸血ロマノフ王朝』攻略を進めていくことになるだろう」
 集まったディアボロスたちへ、戌亥・辰巳(人間のデストロイヤー・g03481)が話を切り出した。
「さて、まずはジェネラル級ヴァンパイアノーブル『死妖姫カーミラ』が支配するモスクワの解放が先決だ。この前段階の作戦として、モスクワ市民の窮地を救って欲しい」
 物流が止まったモスクワ市街地は、食料不足により窮乏しているという。
 これもカーミラが一般人の飢えなど全く気にしていないためだ。ラスプーチン派閥が最低限の支援を行っていたが、目立った活動ができないため市民の飢餓状態の解消には至らないようだ。
「皆には市民への食糧支援を行い、それを察知して駆けつけてくるカーミラ配下の迎撃部隊を撃破してほしい。敵は場当たり的に戦力の逐次投入をしてくるので、それを各個撃破していけば、カーミラの拠点であるクレムリンの戦力も低下する。つまりカーミラに決戦を挑む下準備を整えることができる、という寸法だ」

●敵はサディストとシリアルキラー
 辰巳の話は作戦の詳細な説明に移り、ディアボロスたちには資料が配布される。
「モスクワ市内では、ラスプーチン派閥のトループス級が支援活動をしている。末端の構成員なのでラスプーチンの生存までは知らないが、上からの指示に従って様々な工作を行ってくれる」
 ディアボロスの食糧支援の場所を市民に知らせる、その情報をクレムリンに伝えてカーミラ配下の迎撃部隊を派遣させる、ディアボロスと迎撃部隊の戦闘時には市民の避難を手伝う、そういった裏方仕事を担当するようだ。
「ラスプーチン派の支援を利用すれば、カーミラ派の戦力を削るのも難しくはない。ただ、ラスプーチン派のモスクワでの影響力が強くなりすぎるのも問題と言えば問題だな……今後の方針次第では、ラスプーチン派の戦力を削る必要も出てくるな」
 状況によっては、作戦行動中のラスプーチン派のトループスの撃破を考慮する必要があるかもしれない。
「今回現れる迎撃部隊だが、アヴァタール級は『刻空のミンコフスキー』だ」
 配布された資料には、『じわじわとなぶり殺すのを好むサディスト』『パラドクスで空間を操る快楽殺人者』など、物騒な言葉が並んでいた。
「トループス級は『蚊』だ」
「蚊?」
 と、思わず集まったディアボロスの1人が聞き返した。
 資料には、『鷹や鷲くらいのサイズ』『蚊という生物は病原体を媒介して最も人類を殺してきたシリアルキラー』など、これまた物騒な言葉が並んでいる。
「蚊ではあるが、立派なヴァンパイアノーブルだ。人間を口吻で串刺しにしたり、脚で持ち上げることもできる。これの大群だ。虫が苦手な者は……我慢して戦ってほしい」
 敵の親玉は残忍なサディストで、配下はシリアルキラー。
 物騒極まりない組み合わせだと、ディアボロスたちは思った。

●ラスプーチンの思惑
「サンクトペテルブルクのラスプーチン派は壊滅状態だが、モスクワでの影響力は侮れないようだ。カーミラ派閥は一般人を顧みていないのに、市民がまだ生活できているのはラスプーチン派の尽力によるものであるのは間違いない」
 おそらくラスプーチンは、この内政手腕をディアボロスに認めさせて、モスクワの支配権を得たいと考えているのだろう。
 しかしラスプーチン派の一般人への対応は、『殺すのではなく、エネルギーを絞り取るために生かすべき』というクロノヴェーダの都合なので、全面的な支持はできない。
「モスクワの統治方法などは攻略旅団で決めることになる。意見があれば、攻略旅団で発言して欲しい」
 そして西暦2024年の新宿島から、西暦1917年モスクワへ、パラドクストレインが出発する。

●窮乏
 薄汚れた服装のモスクワ市民たちが、どこからか見つけた廃材を重ねて、路上で焚火をしていた。
 いずれも痩せ細っており、顔には生気がない。
 食事は水のようなスープのみ、それが一日に一回食べられるかどうか、という有様だった。
「ココツェフ様が暗殺されてから、暮らしは悪くなる一方ね……」
「クレムリンの貴族様は、若い女を攫って連れて行くだけで、まともに政治をしやしねえ」
「昨日は隣の家の婆さんが餓死した。今日は向かいの家の爺さんだ。明日は……俺かもな」
 声を潜めての雑談だが、出てくるのは暗い話題ばかり。
「そう言えば……ココツェフ伯爵の配下だった人たちが、食料を配っているなんて話を聞いたわ」
「そりゃ本当かい?」
「本当だったら嬉しいね。ついでにクレムリンの貴族様も追い出してくれないもんかね」
 市民たちが渇いた笑いを漏らし、燃える廃材がパチっと火の粉を飛ばした。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る



POW  ナカーザニエ

技能:突撃/発明/忍耐力 (各19LV)

傷も恐れぬ突撃で敵に接近し、銃剣で串刺しにすると同時に銃弾で撃ち抜きます。攻撃中は血液がすぐに傷を修復し、敵への攻撃を完遂するまで死ぬことなく動き続けます。
(元パラドクス:ボルテックチャージ)

SPD  ブィートカ

技能:念動力/精神攻撃/捕縛 (各19LV)

血の影で敵の動きを封じ込め、連続射撃によって敵を撃ち抜きます。攻撃中は血液がすぐに傷を修復し、敵への攻撃を完遂するまで死ぬことなく動き続けます。
(元パラドクス:トラジディウェーブ)

WIZ  カーズニ

技能:貫通撃/挑発/騎乗 (各19LV)

血の影から生み出した騎馬に跨り、銃撃と共に敵へ突撃します。攻撃中は血液がすぐに傷を修復し、敵への攻撃を完遂するまで死ぬことなく動き続けます。
(元パラドクス:関帝青龍破)

特殊ルール この選択肢には、特殊ルールはありません。
👑7

→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【動物の友】
1
周囲の通常の動物がディアボロスになつき、意志の疎通が可能になる。効果LVが高い程、知能が高まり、友好的になる。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【光学迷彩】
1
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【建造物分解】
2
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【水面走行】
1
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【寒冷適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、摂氏マイナス80度までの寒さならば快適に過ごせる世界に変わる。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【ダメージアップ】LV4 / 【ガードアップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

砂浦俊一
 皆さんこんにちは、砂浦俊一です。
 雪が降ったかと思ったら、急に温かくなってきた気がします。
 花粉症なのでこの先しばらく生き辛いです、嗚呼。

 さて今回はモスクワ市民に食料支援を行い、カーミラ配下の敵部隊を迎撃する作戦です。
 以下は補足の説明になります。

●攻略順について
 ①→②→④と進行の予定です。
 ③はクリアせずともシナリオは完結します。攻略するかどうかは参加者さまの判断次第、になります。

●①『一般人への食糧支援』について
 モスクワ市民への食糧支援をする際に、必要であれば『革命軍』を名乗ることもできます。
 これをクリアすると、カーミラ配下の敵部隊が襲来します。

●②民衆を鼓舞する為の戦い『蚊』について
 カーミラ配下のトループス級です。鷹や鷲ぐらいのサイズのある、巨大な蚊です。
 これの大群が襲ってくるので、映画のジャンルで例えるなら動物パニックホラーです。
 モスクワ市民を鼓舞するように戦って撃退することで、モスクワ市街地の解放に繋がります。

●③作戦行動中のトループス『婦人血死隊』屍兵について
 ラスプーチン派閥の、末端の構成員たちです。
 市民に食料配給の場所を教える、炊き出しの行列に並ばせる、食糧支援が終わる頃に敵を誘導する、戦闘で市民に被害が出ないよう避難させる、などの裏方仕事を担当してくれます。
 戦う必要はありませんが、戦って撃破することも可能です。
 ここで撃破するのが妥当な判断である、というプレイングが来た場合、採用いたします。

●④アヴァタール級との決戦『刻空のミンコフスキー』について
 カーミラ配下の迎撃部隊を率いるアヴァタール級です。
 殺しを楽しむサディストです。配下が『蚊』なのは、その不気味な見た目や残虐な攻撃な手段が気に入ったからでしょう。そういう趣味と性格の個体のようです。
 このミンコフスキーを撃破することで、シナリオ完結となります。

 それでは参加者さま、お待ちしております!
22

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


レイラ・イグラーナ
【奴崎組】
末端とはいえ、動員できる者はほぼいない、としていた一時期からすればかなり持ち直しているようですね。
しかしそれも断片の王の目に留まるまで。
生き延びていることが露見し、ニコライ二世からモスクワの人民を虐殺せよと命令が下ればラスプーチンは逆らえないはず……まだ企みの全貌は見えませんね。

えぇ、まずは皆様のご支援です。
ラスプーチン派閥の者に人民を集めてもらい、【寒冷適応】を使用。まずは寒さを和らげます。
リューロボロス様が【アイテムポケット】で持ち込んだ食材を用い、炊き出しを行います。

冬は暖かいスープ、というのが定番ですね。
具材もふんだんに使い、温かいボルシチや、食べやすく薄く切った羊肉の香草焼きを作り、【口福の伝道者】を用いて皆様にいきわたるように。

いえ、私たちはココツェフ伯爵の配下ではなく、その協力者です。
私たちは革命軍。
人民が窮状にあればこうしてお助けし……その元を断つのが使命。
はい、きっと暮らしは良くなります。
ですから明日への希望は忘れず……どうか生き続けて下さい。


リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】
ふん。猫の手も借りたいと言うが。
クロノヴェーダの手を借りねばならぬとはな。
もっともラスプーチン的にもお互い様であろうが。

何はともあれ民達の窮状は見過ごせぬ。
幼子達が飢えに苦しんでおるというのなら尚更よ。
我が加護による【アイテムポケット】にて組員達と物資を届けようぞ。
名乗るは革命軍よ。
子どもや赤子、老人も食べやすいものを用意しておきたいが……。
遅きに失しておらぬことを祈るしか無いのが歯がゆいの。
この時代のロシア《料理》に詳しいわけではないが、キエフ出身の友より習ったカーシャなら問題なかろう。
離乳食として今も食されておる。幼子や老人も食べやすいはずだ。
無論、持ち込んだきのこや野菜、ひき肉など具材も入れて栄養面とボリュームをアップよ。
鍋は大人用・子ども用・老人用・赤子用などに分けて具材の内容や量も調整してやりたいの。
友より借りた【口福の伝道者】で増やしてゆこうぞ。
【寒冷適応】の範囲も我らが手分けするなりして広げたいの。

幼子達よ。美味いか?
であらば良かった。
我らはぬしらを見捨てはせぬ。


パルサティラ・ブルガリス
【奴崎組】の皆様と
#アドリブ歓迎

ラスプーチンの思惑が結果として今の生活を支えているとしても、善意の無い施しであれば先は無いでしょう。怪僧への支持を減らすためにも革命軍を名乗って支援を行いましょう…純粋に困窮者を見て見ぬふりをするのは良くないですしね。

PDの能力によりアフターヌーンティを開催し、温かい紅茶とスコーンやケーキといった食べ物を饗していきます。
開催時には堂々と革命軍主催であることと、マナーを正確には求めないことを喧伝します。
何か妨害を受けた際には、鉛玉によってマナーがなんたるかを教示します。

「礼節が人を作るといいますが、東洋では衣食足りて礼節を知るという言葉もあるそうです。ならばせめて、ここで食だけでも満たしていただければと思います」


●革命軍を名乗って
 モスクワは寒い。
 冬将軍が冷気を緩和してはいるが、市街地の活気の無さが寒々しさを感じさせているのだろう。
 外を出歩く人々も生気がなく痩せ細っておおり、街全体が死に瀕しているかのようだ。
 このモスクワの市街地を、奴崎組のディアボロスたちが歩いていた。
 現地ではラスプーチン派閥の構成員が協力してくれる手筈になっている、
 さて、それらしき者は……と一行が周囲を見渡すと、厚手の外套を纏った女性が近づいてきた。
「ディアボロスの方々ですね。協力するよう指示されています」
 トループス級、『婦人血死隊』屍兵の青白い肌と赤い目が、そこあった。
 カーミラ配下に市民への支援活動を知られぬようにするためか、彼女は一般人と変わらぬ服装だ。
 ディアボロス側が協力してほしいことを伝えると、彼女は生真面目な敬礼を返し、仲間へ伝えるためその場を離れた。
「ふむ。猫の手も借りたいと言うが。クロノヴェーダの手を借りねばならぬとはな。もっともラスプーチン的にもお互い様であろうが」
 リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)が嘆息する。
 構成員は終始表情は氷の如くで愛想の欠片もなかったが、本来は敵同士なのだから当然と言えば当然、ラスプーチンとの協力関係がいつまで続くかはわからないが、現状ディアボロス側に不都合はない。
「末端とはいえ、動員できる者はほぼいない、としていた一時期からすればかなり持ち直しているようですね」
 しかしそれも断片の王の目に留まるまで、生存が露見し、ニコライ二世からモスクワの人民を虐殺せよと命令が下ればラスプーチンは逆らえないはず……というのが、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)の推測だった。
 それとも、そうなった場合でもラスプーチンには何か策があるのだろうか?
 怪僧ラスプーチン、その企みの全貌は未だ見えない。
「思惑が結果として今の生活を支えているとしても、善意の無い施しであれば先は無いでしょう。ラスプーチンへの支持を減らすためにも支援を行いましょう……困窮者を見て見ぬふりをするのは、良くないですしね」
 今は市民の窮乏を救うのが先決、そのために自分たちはここに来たのだと、パルサティラ・ブルガリス(感情豊か系無表情メイド・g08376)は思う。
 彼女たちは早速炊き出しの支度に取り掛かる。
 じきに『婦人血死隊』屍兵から食料の配給を聞いた市民がやってくるだろう。
「民たちの窮状は見過ごせぬ。幼子たちが飢えに苦しんでおるというのなら尚更よ」
 リューロボロスは【アイテムポケット】から食材や調理道具を取り出しては並べていく。
 炊き出しの料理に何を作るか。
 彼女が選んだのはカーシャ、蕎麦の実を使ったお粥。
「この時代のロシア料理に詳しいわけではないが、キエフ出身の友より習ったカーシャなら問題なかろう。離乳食として今も食されておるし、『シチーとカーシャ、日々の糧』という諺もある。日本人にとってのご飯と味噌汁のようなものかの」
 もちろんきのこ類や野菜、ひき肉などの具材も入れて栄養面とボリュームのアップも図る。
 鍋は大人用・子ども用・老人用・赤子用などに分けて、具材の内容や量も調整する徹底ぶりだ。
「冬は暖かいスープ、というのが定番ですね」
 レイラが作るのは具材をふんだんに使った温かいボルシチ。
 彼女は同時進行で羊肉の香草焼きも作っていく。食べやすいよう羊肉を薄く切ることも忘れない。
 たちまち周囲に料理の匂いが立ち込め、これに気づいた人々が徐々に集まってきた。
 しかしディアボロスたちが見慣れぬ顔だったせいか、人々は遠巻きに見ているだけだ。
 出来上がった料理を彼女たちは【口福の伝道者】で増やしていき、少しでも快適に食事ができるよう【寒冷適応】で周囲の空気の寒さを和らげる。
「皆さま、私たちは革命軍です。本日は食糧支援の炊き出しに参りました。どうぞ、お食べください」
 パルサティラが一声かけると、腹を空かせた人々がどっと押し寄せてきた。
「ほ、本当に食べてもいいのかい……?」
「嗚呼、温かい食事なんて何日ぶりだろう……」
「歩けない祖母が家にいるんだ。祖母の分も貰っていいだろうか?」
 人々が殺到し、途端にディアボロスたちは忙しくなる。
「ここで炊き出しをやっているって聞いたんだが……あんたたちかい?」
 ラスプーチン派閥の構成員から食糧支援の話を聞いたらしき者もやってきた。
 それだけでなく、先ほどの『婦人血死隊』屍兵が大勢の市民を連れてきた。
 忙しいどころか人手が足りなくなる。
 先に腹を満たした人々の中から、ディアボロスを手伝う者が何人か出たが、それでも足りないほどだ。
「行列の整理はこちらが受け持ちます」
 その『婦人血死隊』屍兵の申し出を、ディアボロスたちはありがたく受け取った。
 彼女は数名の同族も連れてきており、手分けして列の整理や案内を始めたのだが……。
「配給の列はここだ」
「充分な量がある。騒がず待つように」
「貴様、割り込みは禁止だ。最後尾へ並べ」
 威圧感が凄い。
 そもそもがクロノヴェーダであり、末端の兵士なので仕方がないのかもしれない。
 人々が行列に静かに並んでくれている分には問題ないが、せっかく食事ができるのに怖い思いをする必要はない。
「では皆さま、革命軍主催のアフタヌーンティーは如何でしょうか」
 温かな紅茶や、甘い菓子類で、今日だけでも怖い思いを忘れることができるように。
 パルサティラのパラドクスにより、路上の一角にティーパーティー用のセットが出現する。
「こういう時ですから、マナーが正確でなくとも構いません」
 テーブルの上には雪のように真白な陶磁器のティーカップにティーポット、スコーンやケーキと言った菓子類が美しく並んでいる。
「礼節が人を作るといいますが、東洋では衣食足りて礼節を知るという言葉もあるそうです。ならばせめて、ここで食だけでも満たしていただければと思います」
 優雅な所作でパルサティラはカップへ紅茶を注いでいく。
 甘い物に飢えていた人々が、こちらにも列を成した。
 人間、生きていくには腹を満たすだけでなく嗜好品も必要だ。
 食うや食わずの暮らしをしていた人々だから、ケーキを見るのも久々だったろう。
 饗された紅茶や菓子類に、市民たちは頬を綻ばせる。
「あんたたちはココツェフ様の関係者か何かなのかい?」
 食事を配っていたレイラは、市民の1人からそう質問されていた。
「いえ、私たちはココツェフ伯爵の配下ではなく、その協力者です。私たちは革命軍。人民が窮状にあればこうしてお助けし……その元を断つのが使命」
「革命軍……。オレたちの暮らしを良くするために、かい?」
「はい、きっと暮らしは良くなります。ですから明日への希望は忘れず……どうか生き続けて下さい。こちらは、お夕飯にでも」
 レイラが微笑み、羊肉の香草焼きを包んだものを彼に手渡した。
「幼子たちよ。美味いかったか? であらば良かった。我らはぬしらを見捨てはせぬ」
 リューロボロスは食事のお礼を伝えに来た子供たちを励まし勇気づける。
(ここへ来るまで、遅きに失しておらぬことを祈るしか無かったのは歯がゆかったが……間に合ったのは本当に良かった)
 子供たちの笑顔に、リューロボロスも胸を撫でおろす思いだった。
 ディアボロスたちが革命軍を名乗り、食糧配給やティーパーティーで市民の歓心を得ていく様は、『婦人血死隊』屍兵たちの目にはどう映っただろう。
 彼女たちの氷のような表情から、それは伺い知れない。
 だがディアボロスたちの言動に目くじらを立てる様子もなかった。
(もし何か妨害を受けた際には、鉛玉によってマナーがなんたるかを教示するつもりでしたが、その心配は無さそうですね。やはり上からの指示には忠実に従う兵たちなのでしょう)
 もし苦言でも出ていたら、ティーパーティーという憩いの場が台無しになっていた。
 そうならずに済んだのは、饗した側のパルサティラにも幸いだった。
 とはいえ、気を抜くことはできない。
 邪魔をするであろう存在は他にいる。
 カーミラ配下の迎撃部隊だ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【寒冷適応】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

●蚊柱
 集まってきた人々におおむね食事が行き渡った頃だった。
 遠くから、散発的な銃声が聞こえてきた。
 食後の会話を楽しんでいた市民たちは、恐れ慄く顔で身を強張らせた。
 ディアボロスたちに緊張が走り、視線は鋭く銃声の方向へ向けられた。
 表情ひとつ変えず、『婦人血死隊』屍兵たちは外套の内から銃を出す。
「カーミラ配下の迎撃部隊です。仲間が誘導しています」
 1人の『婦人血死隊』屍兵がディアボロスたちにそっと耳打ちする。
 ディアボロスたちが赤黒い竜巻のようなものを見たのは、その直後。
 竜巻の正体は蚊柱、迎撃部隊のトループス級である『蚊』の大群だ。
アーリィ・ウォンマー
【奴崎組】【ミンコフスキー宿敵主】
アドリブ連携◎
●心情
待たせたわね、今襲ってきているのは…蚊…。
モスクワの皆は私達「革命軍」が護るわ
●行動
「"制圧の"レクイエム」を動きの鈍い右腕に構えて撃つ
これはあくまで牽制で、本命はパラドクスの力を籠めた「結界術」で消滅させる事
消え失せろ…Radieren!!

●鼓舞
この右腕はあるカーミラ配下のヴァンパイアノーブルに潰された腕…それでも私はその男に対抗する為にこうしてここで戦っている!
貴方達モスクワの市民達にも一切被害は出させない!
怯える事はない、貴方達は生き延びられる!それを、証明してみせる!
私は革命軍が一人、アーリィ・ウォンマー!
窮地を脱するまで…耐え抜くのよ!!

心臓に攻撃が来そうになれば「フェイント」もまみえて「防護の籠手」及び「動線上のアリエッタ」で防御・回避を試みるわ


奴崎・娑婆蔵
【奴崎組】
●参戦時
血を吸い運ぶ蚊が、吸血鬼の手勢だァ……?
うまい用兵もあったモンでござんすねえ

●参戦理由
組の面子が揃ってここいらのカタギの衆の世話を焼きに来たそうじゃァありやせんか
であれば当座ケツまで面倒見るのが筋ってモンよ
この喧嘩、助太刀致しやすぜ

●パラドクス
墜ちなせえ、羽虫共
八ツ裂きにしてやりまさァ
・【殺人領域「逆サ剣山刀輪処」】発動
・選択理由:でかい虫の大群を相手取るならば、己の手札の中では「空から攻撃を複数対象目掛けて落とす」この技で畳み掛けるのが適解と踏んだ

●連携
・仲間が敵に包囲されぬよう、対処が追い付いていない方角を生じさせないよう、敵の到来ペースを視野に広く納めてからパラドクスを撃つ

●パラドクス発動迄の動き
そら各々方、足元にゃ気ィ付けて達者で逃げなせえよ
またぞろうまいモンが喰える機も巡って来やすぜェ~
・市民を鼓舞

●戦闘方針
・敵個体に対し己の攻撃で一射一殺を見込み、敵勢を勢い付かせない

●敵攻撃対処
・降らせる刃を掴み取り、心臓を狙って来るものと割れている口吻を手動で叩き斬り返す


リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】
ふん、せっかくの料理が不味くなるであろうが。
水を差すでないわ。
安心せよ、幼子達よ。
竜は約束を違えぬ。
言ったであろう。
我らはぬしらを見捨てはせぬと。

人々の護りと避難は婦人血死隊達(とフレーバー的には戦闘非参加の組員)に任せる形となり、その分奴らにも名声は生ずるが構わぬ。
元より我は人命第一なのでな。
とはいえクロノヴェーダに任せっきりにするつもりも無ければ、長引かせるつもりもない。
人々を巻き込まぬためにも【ダメージアップ】も積み重ね、狙うは早期決着よ!
早々と倒してしまえば婦人血死隊達の見せ場もなかろうよ!

吸血串刺し何するものぞ!
貴様たちが血を吸うというのなら、我は息を吐きだしてやろう!
竜の吐息、受けるが良いわ!
――三千界よ、我が前に跪け。覇を唱えしは竜である。
ルゥオオオオオオオオオ!
我が超重圧殺ブレスにて一掃してくれる!
我は龍、我こそはドラゴン。リューロボロス・リンドラゴなり!

幼子達よ。人々よ。
我らの声を、この光景を目に耳に焼き付けよ。
希望はある。ここにあるのだ!


パルサティラ・ブルガリス
【奴崎組】
アドリブ歓迎

予想通りやってきましたね、招かれざる客が。
現れた敵は排除するまでです。

PD『CAS』を使用し、空中に浮遊し上空から敵の位置を確認して《空中戦》《制圧射撃》によって仲間の援護をしながら、1匹残らず駆逐するよう追い込んでいきます。また《誘導弾》により可能な限り周囲の建物に被害を与えないようにします。
「上空からの援護はお任せください。『モスキート』ではジェット戦闘機には勝てないってことを思い知らせてやります」

数ばかり揃えても我々の敵ではないのです。
「塵は塵に、灰は灰に…墜ちろ、カトンボ!」


●民衆を鼓舞せよ
 それは巨大竜巻が街を呑むディザスター映画か。
 それとも野鳥の群れが人々を襲う、古典的動物パニックホラー映画か。
 あるいは、その両方か。
 それがトループス級『蚊』の大群が、巨大な蚊柱となって迫り来る光景だった。
 蚊は恐るべき病魔の媒介者にしてシリアルキラー。
 運んできた病原菌によって、最も人類を殺してきた生物だ。
 近くにいたモスクワ市民は逃げ惑い、数名の『婦人血死隊』屍兵たちが蚊柱の前に立ち、散発的に銃撃しては後退をかけていた。銃撃で挑発することで、『蚊』の群れを誘導しているのだろう。
「市民はこちらで避難させます。後はお任せしてよろしいですね?」
 先程耳打ちしてきた『婦人血死隊』屍兵が、ディアボロスたちに確認を求める。
 無論、返事は決まっている。
「人々の護りは任せた。荒事は我らが受け持つ」
 リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)の返答に『婦人血死隊』屍兵は敬礼を返すと、仲間たちを連れて市民の避難誘導を開始した。
「予想通りやってきましたね、招かれざる客が」
 パルサティラ・ブルガリス(感情豊か系無表情メイド・g08376)がリューロボスの隣に立つ。
「現れた敵は排除するまでです」
 両手で多銃身機関銃を携え、彼女は蚊柱を見つめる。
 敵はただの蚊ではない。猛禽類ほどのサイズを持つ、異常な蚊のヴァンパイアノーブル。
「ふん、せっかくの料理が不味くなるであろうが。蚊トンボ風情が水を差すでな……うん?」
 リューロボロスは、いくつかの視線に気づいた。
 不安げな顔で、子供たちがリューロボロスと蚊柱を交互に見ていた。
「安心せよ、幼子たちよ。竜は約束を違えぬ。言ったであろう、我らはぬしらを見捨てはせぬと」
 恐怖心を和らげ、勇気づけるために微笑むと、彼女は子供たちに避難するよう促した。
「お、お姉ちゃんたち、がんばって!」
「あんなのに負けないでね!」
 親とともに避難する中、子供たちは何度も振り返り、そう叫んだ。
 子供たちの声援。
 ディアボロスたちには何よりも心強い。
 蚊柱は目前まで来ていた。
 ディアボロスの姿に、蚊の群れは標的をそれと定め、一直線に向かってくる。
 ここまで蚊柱を誘導してきた『婦人血死隊』屍兵たちも、今は市民の避難誘導に移っていた。
「避難を担う分、ラスプーチン派閥の奴らにも名声は生ずるが構わぬ。元より我は人命第一なのでな」
 とはいえ、リューロボロスはクロノヴェーダに任せっきりにするつもりも無ければ、長引かせるつもりもない。
「人々を巻き込まぬためにも、狙うは早期決着ただ一択よ!」
「上空からの援護はお任せください。『モスキート』ではジェット戦闘機には勝てないってことを思い知らせてやります」
 地上ではリューロボロスの超重圧殺ブレス。
 上空からは飛翔したパルサティラの、多銃身機関銃による制圧射撃。
 両者のパラドクスが唸りを上げ、蚊柱へと叩きつけられた。

 リューロボロスとパルサティラが蚊と交戦を開始した、その頃。
「血を吸い運ぶ蚊が、吸血鬼の手勢だァ……? うまい用兵もあったモンでござんすねえ」
「とんでもない数……これが全部、蚊?」
 パラドクストレインで現地に降り立った奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)とアーリィ・ウォンマー(元一般人・現吸血の復讐鬼・g08274)は、避難する人々とは逆方向、すなわち蚊柱へと駆けていた。
「貴様ら! 逃げる方向が逆だ! 蚊に血を吸われて死にたいのか!」
 すぐに1人の『婦人血死隊』屍兵が駆け寄ってきたが、娑婆蔵はニヒルな笑みを見せる。
「お初にお目にかかります。手前、姓は奴崎、名は娑婆蔵と申します、しがなきディアボロスにござんす。火急の事態ゆえ短い挨拶の御無礼御免なさんせ。聞けば組の面子が揃ってここいらのカタギの衆の世話を焼きに来たそうじゃァありやせんか。であれば当座ケツまで面倒見るのが筋ってモンよ。この喧嘩、助太刀致しやすぜ」
 独特な口調の、歯切れの良い名乗り。『婦人血死隊』屍兵の耳には聞き慣れないものだったろう。
 これを全身包帯グルグル巻きの男が言うのだから、挨拶された彼女は声も出せずにたじろいでしまう。
「ディ、ディアボロスであるのなら、あいつらの相手は任せる」
 どうにか言葉を絞り出すと、彼女は市民の避難誘導へ戻っていった。
「待たせたわね、今襲ってきているヴァンパイアノーブルは必ず倒す! モスクワの皆は私たち『革命軍』が護るわ!」
「そら各々方、足元にゃ気ィ付けて達者で逃げなせえよ。またぞろうまいモンが喰える機も巡って来やすぜェ~」
 逃げていく人々へアーリィが励ましの声をかけ、娑婆蔵も手を振って見送る。
 振り返り、2人は改めて敵群を見据えた。
 濃密な蚊柱の向こうには、奮戦するリューロボロスとパルサティラの姿がある。
 敵も娑婆蔵とアーリィをディアボロスと認識したか、蚊柱から分かれて飛来する群れがあった。
「デケェヤブ蚊がいたもんでござんすねェ」
 娑婆蔵は拳の骨を鳴らし、身構える。
(ミンコフスキーめ……悪趣味なっ)
 因縁の相手への感情を抑えつつ、アーリィはガトリングガン『"制圧の"レクイエム』を右腕に装着する。
 迫り来る蚊へ、両者がパラドクスを繰り出した。

 見覚えのあるパラドクスに、リューロボロスとパルサティラは仲間の合流を知った。
 心強い援軍だった。
 ディアボロス側が前後から敵群を挟む形になり、蚊の群れは2つに分かれてこれに対抗する。
 蚊柱は2本になったが、その分密度は薄くなる。
「助力、感謝するぞ! 早々と倒してしまえば『婦人血死隊』たちの見せ場はなかろうよ!」
 リューロボロスのブレスが勢いと熱量を増す。
「塵は塵に、灰は灰に……墜ちろ、カトンボ!」
 パルサティラは上空からの射撃で仲間の援護に努める。誘導弾で可能な限り周囲の建物への被害を抑え、反撃に出てきた蚊とは空中戦を演じつつ逆に追い立てる。追い込まれた蚊が飛んでいった先に待つのは、リューロボロスのブレスだ。
「1匹残らず駆逐して差し上げますよ」
 殺到する蚊の群れへ彼女はパルサティラの雨を降らせる。
 弾丸の雨を降らせるのはアーリィも同様だった。
 心臓を狙ってくる蚊の口吻は、フェィントを交えて防護の籠手で守り、彼女はパラドクスを放つ。
「消え失せろ……Radieren!」
 鈍い右腕で撃つ『"制圧の"レクイエム』は牽制、アーリィの本命はパラドクスの力を籠めた結界術で敵を消滅させること。眼前の敵の消滅を確認すると、アーリィは右腕を高々と掲げた。 
「この右腕はあるカーミラ配下のヴァンパイアノーブルに潰された腕……それでも私はその男に対抗する為にこうしてここで戦っている!」
 民衆を鼓舞するべくアーリィが叫ぶ。
 蚊を恐れて物陰に隠れていた人々の視線が、彼女に集中する。
 アーリィを邪魔するように蚊が襲来するも、即座に娑婆蔵がカバーに入った。
「ウチの組のモンにゃ手出し無用。お引き取り願いまさァ」
 羽を掴み取り、口吻を手刀で叩き斬り返す。
「墜ちなせえ、羽虫共。八ツ裂きにしてやりまさァ」
 殺到する蚊に繰り出される、殺人領域『逆サ剣山刀輪処』。
 デカい虫の大群を相手取るならば、己の手札の中では『空から攻撃を複数対象目掛けて落とす』この技で畳み掛けるのが適解と踏んだ、娑婆蔵のパラドクス。
 仲間が敵に包囲されぬよう、対処が追い付いていない方角を生じさせぬよう、敵群を視野に広く納めて娑婆蔵は戦う。
 敵個体に対し己の攻撃で一射一殺、彼は敵の勢いを削いでいく。
「貴方たちモスクワ市民にも一切被害は出させない! 怯えることはない、貴方たちは生き延びられる!」
 アーリィの叫びは続く。
 逃げていた人々も振り返り、彼女に目を向けてしまう。
「それを、証明してみせる! 私は革命軍が一人、アーリィ・ウォンマー! 窮地を脱するまで……耐え抜くのよ!」
 締めると同時にアーリィが数体の蚊をパラドクスで消滅させ、人々が一斉に歓声を上げた。
 人々の視線が集中した今こそ、畳みかけるように鼓舞する絶好のタイミング。
「吸血串刺し何するものぞ! 貴様たちが血を吸うのなら、我は息を吐きだしてやろう! 竜の吐息、受けるが良いわ!」
 パルサティラが追い立ててきた敵群を狙い、リューロボロスが大きく息を吸い込んだ。
「三千界よ、我が前に跪け。覇を唱えしは竜である。我がブレスにて一掃してくれる!」
 ルゥオオオオオオオオオ!
 轟く竜の咆哮を、人々は聞いた。
 鼓膜とともに魂をも震わせた。
「我は龍、我こそはドラゴン。リューロボロス・リンドラゴなり!」
 超重力のブレスは全てを圧し潰す。
 竜の槌は塵一つ残さず、空と大地に還ることを許さない。
 巨大な蚊が、【ダメージアップ】を積み上げたパラドクスによって粉微塵に吹き飛んでいく。
「幼子たちよ。人々よ。我らの声を、この光景を目に耳に焼き付けよ。希望はある。ここにあるのだ!」
 わっ、と人々の歓声が上がった。
「革命軍が俺たちを救ってくれるんだ!」
「私たちには心強い味方がいるんだ!」
「革命軍、万歳!」
 人々の革命軍を讃える声、声、声。
 これらの声に、『婦人血死隊』屍兵たちは戸惑いを隠せなかった。
 これでは手柄をディアボロスに総取りされる、そんな考えが頭をよぎっていた。
「お姉さんたちも革命軍なの?」
「すごいんだね、革命軍って!」
 さらには小さな子供たちからも、『婦人血死隊』屍兵たちへ感動の眼差しと感謝の言葉が注がれる。
「いや、私は、その……」
「は、早く避難しなさい。ここはまだ危険だ」
 彼女たちは言葉を濁してしまう。『婦人血死隊』屍兵は末端の構成員であるため、革命軍のフリをするべきかどうか判断できなかったのかもしれない。そういう判断は、もっと上位の構成員がすること、と認識しているのかもしれない。
「これではお祭り騒ぎだ……」
「ディアボロスめ、市民を避難させるこちらの身にもなれっ」
 興奮した人々を避難させるのに、『婦人血死隊』屍兵たちは躍起になる。
 その間にもディアボロスたちは蚊を次々と墜としていく。その度に市民の歓声が上がる。
 竜巻じみた蚊柱は今や見る影もなく、戦闘は掃討戦に移っていた。
 残りの蚊をディアボロスたちは包囲、弱った個体から確実に潰していき……そして。
「付近に敵影を認めず……殲滅完了です」
 上空を飛翔していたパルサティラは、敵群の全滅を確認すると地上へと舞い降りた。
 巨大な蚊柱、蚊の群れを退治しきったことに、市民がこれまで以上に大きな歓声を上げた。
 しかし勝利に湧くには、まだ早い。
 この後に大物が控えている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
【動物の友】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV3が発生!

●出現 
 何処からか拍手の音が聞こえてきた。
 拍手ならば、蚊を退治したディアボロスへ大勢の群衆が惜しみなく送っている。
 しかし人々の賛辞とは異なる、どこか耳障りな音の拍手だった。
「お見事だねえ、ディアボロスの諸君」
 その声は、はっきりと聞こえた。
 大勢の群衆に紛れて、1人の男が立っていた。
 声がするまで、周囲の群衆は誰も彼に気がつかなかった。
 彼は、いつから其処に立っていたのだろう。
 彼は、いつの間に其処へ現れたのだろう。
 人々の拍手と歓声が瞬時に止まる。
『婦人血死隊』屍兵たちには、これまでにない緊張が走った。
 人々は、そこにいるのが恐ろしいヴァンパイアノーブルであることを知っていた。
『婦人血死隊』屍兵たちが知っているかどうかは、言うまでもない。
 近くの人々は慄きつつ後ずさりしていく。
 彼の周囲に、誰もいない空間が広がっていく。
「何やら騒がしいので来てみれば。諸君らディアボロスだったとはねえ」
 そこに立っているのはアヴァタール級ヴァンパイアノーブル。
 刻空のミンコフスキー。
 恐怖が限界に達した若い女性が悲鳴を上げた。
 それが引き金となり、群衆は脱兎の如く逃げ出した。
アーリィ・ウォンマー
【奴崎組】【ミンコフスキー宿敵主】
アドリブ連携◎
●心情
現れたなミンコフスキー!!
(アヴァタール級はクロノス級から生まれている…故にお前を倒しても第二第三のミンコフスキーが現れる可能性は否めない、だがこの「ミンコフスキー」はここで確実に倒す…覚悟しろ!!)
●行動
「銀血の鋭刃」を左手に持ち、パラドクス使用
【未来予測】で先を見据え、行動を読み回避や防御を試みる
効果2の主に【ダメージアップ】を存分に活用(他の効果も)
引き寄せられた瞬間が好機、パラドクスを籠めた「斬撃」を当て確実に傷をつける
「もしお前が知らなくとも…この右腕の負傷は『刻空のミンコフスキー』が作った物!覚悟しろ!!」

一度でもミンコフスキーの体を地に付けさせ倒せれば構わない、その為に腕を磨いてきたのだから
連携しながら仲間達と止めを刺しに行く
終曲(フィナーレ)だ、ミンコフスキー!!


奴崎・娑婆蔵
【奴崎組】
なんでえ、テメエも斬撃使いでござんすか?
成る程『空を刻む』ってェ二つ名は伊達じゃァねえらしい

よござんしょ
であればあっしも名乗って返すに限りまさァ

手前、姓は奴崎名は娑婆蔵――人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』
どっちの方が上手に斬れるやら、腕比べと行きやしょうぜェ?


●パラドクス【殺人技芸「抜刀術・罪咎百八」】
懺悔せよ、拭い切れぬ業からは何人たりとも逃れられぬ――八ツ裂きにしてやりまさァ

・鞘中の妖刀『トンカラ刀』を居合腰で構える
・「抜いてどう斬り掛かって来るか」というイメージを殺気の投射により敵に108パターンから幻視させる
・その108パターンの幻を精神を苛む攻撃として扱うと共に、その中に「実際に斬りに行く一撃」を交え、釣り出すように当てる

そちらさん、どうも先を読んで――『未来』に斬撃を置いていやがるらしい
であればあっしは『現在』を斬撃で埋め尽くしてさせてやりまさァ

・また、幻の投射をアーリィがミンコフスキーへ致命打を見舞えるよう、その布石として撒きもする


パルサティラ・ブルガリス
【奴崎組】
アドリブ歓迎

アーリィさんの宿敵ならば私も微力を尽くしましょう。
奴崎組のハウスメイド、パルサティラが援護させていただきます。

かのアヴァタール級は空間を抉って殺すサディストだとか。多少の銃弾では効果がないかもしれません…。
しかし、百の弾丸が意味をなさないのであれば千の弾丸を撃ち込むまでです。なにより私は援護ですから、きちっと『カタ』に嵌めるお手伝いをできればいいのです。

PD『CAS』を使用し、徹底的に銃弾の雨を叩き込みます。ダメージは勿論狙いますが、一番の目標は対応力を奪うことです。眼前を覆い尽くさんばかりの弾幕を撃ち込むことでアーリィさんたちの攻撃を当てやすくします。

「悪は滅びる定めにあるのです。そう、他でもない我々が滅ぼすのです。」


リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】
ふん。我らを誘い出したのは貴様であろう?
お望み通り来てやったのだ。感謝せよ。
もっとも貴様が呼ばずとも我らは来たがの。
貴様はアーリィの敵であり幼子の敵。
我らが見逃す道理無し!

アーリィよ。
ぬしの背を押すのはこの場におる我らだけではない。
数多の組員がぬしの味方だ。
このようにの。
来たれ、友よ。
――瞠目せよ、憧憬(ユメ)纏うは竜である。
友より授かりし舞踏と炎にて、アーリィと我らを護る加護(ガードアップ)を此処に。
その力にて空間圧縮と解放も乗り越えてみせようぞ!
引き寄せ吹き飛ばし何するものぞ!
ヨーヨーでもしておるのか?
いや、幼子にも大人気、ヨーヨーに失礼か。
くはははははは!
この舞踏、護りのためだけの技ではないぞ?
我らが焔にて焼き払ってくれるわ!

さあ、存分にやれ、アーリィ!

然り。
我らディアボロス。我ら奴崎組。我ら復讐者。
貴様たちの滅びと知れ!
せいぜい本体も首を洗って待っておるが良いわ!

我らのことは忘れようともこの勝利が幼子たちの救いとならんことを。


●奴崎組vsミンコフスキー
「何やら騒がしいので来てみれば。諸君らディアボロスだったとはねえ」
「ふん。我らを誘い出したのは貴様であろう? お望み通り来てやったのだ。感謝せよ。もっとも貴様が呼ばずとも我らは来たがの」
 いけ好かない敵の態度に、リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)は虫酸が走る気分だった。同時に、蚊の大群とは比較にならないプレッシャーも肌で感じていた。
 刻空のミンコフスキー、アヴァタール級ヴァンパイアノーブルにして、人をじわじわとなぶり殺すのを好むサディスト。
 そのことを知る人々は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
 彼らの家族が、恋人が、友人が、ミンコフスキーの毒牙にかかっていた。
 逃げ惑う人々を避難させるために、『婦人血死隊』屍兵たちも走り回る。
 ラスプーチン派閥末端の構成員といえど、カーミラ配下のアヴァタール級に顔を知られるのはマズイのだろう、彼女たちはマフラーで口元を覆い隠す。
「くっくっく。ネズミ風情がうろちょろしているようだねぇ」
 ミンコフスキーにはラスプーチン派閥の地下活動はお見通しのようだ。
 知っていて、あえて泳がせている可能性もある。
「ま、ネズミを炙り出すのは後でも構わんさ」
 今、獲物と定めたのはディアボロス。
 彼は手を後ろで組み、悠然とディアボロスたちへ近づいていく。
 アーリィ・ウォンマー(元一般人・現吸血の復讐鬼・g08274)は全身の毛が逆立っていくのを感じた。
 そこにいるのは因縁の相手のアヴァタール。 
 決して忘れることのできない、敗北時の記憶。鈍い痛みがアーリィの右腕に走る。
 彼女は鋭くも激しい眼差しでミンコフスキーを睨みつける。
「おや? 熱い眼差しをくれるお嬢さんがいるねぇ。貴女とどこかでお会いしたかな? 覚えがあるような、無いような。お嬢さんくらいの年頃の娘さんとは大勢、楽しんで来た。すぐには思い出せないな」
 サディストの言う、楽しむ。それが意味することはひとつしかない。
 その言い草に、アーリィの体は考えるより早く動いていた。
「ミンコフスキィィィィィ!」
 アーリィはミンコフスキーめがけて突進する。
(アヴァタール級は分身……故に倒しても第二第三のミンコフスキーが現れる可能性は否めない、だがこの『ミンコフスキー』はここで確実に倒す……!)
 銀血の鋭刃を左手に持つアーリィは、【未来予測】で先を見据え、ミンコフスキーの行動を読みつつ駆ける。
「お嬢さんの方から私の胸に飛び込んできてくれるとは。本当に情熱的だ」 
 ミンコフスキーが耳まで避けるような不気味な笑みを浮かた。
 それもアーリィの記憶から消えることのない忌まわしい笑みだ。
「お前が知らなくとも……この右腕の負傷は『刻空のミンコフスキー』が作った物! 覚悟しろ!」
「ほう、右腕に傷が。では不自由な腕なら肩から落として差し上げよう。お嬢さんの愛らしい悲鳴を聞けば、何か思い出すかもしれないねえっ」
 未来を予測して繰り出すアーリィのパラドクスと、数秒後の未来へ斬撃を放つミンコフスキーのパラドクス。
 アーリィは右肩に斬撃を喰らい、さらに蹴り飛ばされた。
 ミンコフスキーは、頬に一筋の傷。
 先を読むことに一日の長があるのは、ミンコフスキーか。
「浅かったかな? まあ、じわじわといこうじゃないか!」
 ミンコフスキーは空間を跳躍したかのように、一瞬でアーリィとの距離を詰めた。
「なんでえ、テメエも斬撃使いでござんすか? 成る程『空を刻む』ってェ二つ名は伊達じゃァねえらしい」
 肩掛けの、桐紋を背負った黒の羽織をはためかせ、奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)がミンコフスキーとアーリィの間に割って入る。 
「アーリィさんはお任せを」
 その間にパルサティラ・ブルガリス(感情豊か系無表情メイド・g08376)はアーリィを抱えて跳躍、敵と距離を取る。
「空を刻む、ね。その通り。『刻空のミンコフスキー』と名乗らせてもらっているよ」
「よござんしょ。であればあっしも名乗って返すに限りまさァ。手前、姓は奴崎、名は娑婆蔵、人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』。どっちの方が上手に斬れるやら、腕比べと行きやしょうぜェ?」
 名乗った娑婆蔵、鞘中の妖刀『トンカラ刀』を居合腰で構える。
「君、面白いねえ。私に斬られる前から全身包帯グルグル巻きとは用意が良い」
 ミンコフスキー、両手を後ろで組んでいる。左右どちらの手で斬撃を繰り出すか、娑婆蔵には見せない。
 もし一般人が見たなら、両者は静止して動かないように見えただろう。
 だが高速で回転する独楽は静止して見える、逆説連鎖戦は既に始まっている。
 一般人には知覚できない領域で、周囲の時間と空間が歪んでいく。

「あれはアーリィさんと因縁のある相手ですか?」
 パルサティラの問いに、右肩の傷を左手で抑えるアーリィは頷いた。
「宿敵のアヴァタールならば私も微力を尽くしましょう。奴崎組のハウスメイド、パルサティラが援護させていただきます」
 パルサティラが多銃身機関銃を両手で持つ。
「アーリィよ、忘れるでないぞ。ぬしの背を押すのはこの場におる我らだけではない。数多の組員がぬしの味方だ」
 リューロボロスがアーリィの隣に立ち、娑婆蔵とミンコフスキーの戦いを見つめる。
「このようにの。来たれ、友よ」
 我こそは龍。
 我こそはドラゴン。
 我が舞いは憧憬と知れ。
「瞠目せよ、憧憬纏うは竜である」
 焔竜舞踏、リューロボロスの竜の翼が焔を纏う。 
 自分には心強い味方がいる。
 それが自分と傲岸なミンコフスキーの決定的な差なのだと、アーリィは思った。
 彼女たちは共に娑婆蔵の加勢に駆ける。

 歪んだ時間と空間の中で、娑婆蔵とミンコフスキーは互いに手を読み合う。
「そちらさん、どうも先を読んで……『未来』に斬撃を置いていやがるらしい」
 自分が一手先、二手先、十手先まで読んでも、相手はさらに先を行く。そういう敵だと娑婆蔵は悟った。
「ご推察の通りだよ、ミイラ男くん。君がどれだけ先を読んでも無意味だ」
「であれば、あっしは『現在』を斬撃で埋め尽くしてさせてやりまさァ」
 パラドクス、殺人技芸『抜刀術・罪咎百八』。
 刀を抜いてどう斬り掛かって来るか。
 殺気の投射によってそれを敵に幻視させる、108種の斬撃イメージ。
 敵が108手先まで読むのなら、こちらは最初の一手に108手分を注ぎ込むまで。
 108種の幻は相手の精神に負荷を与えて苛むだけでなく、実際に斬りに行く一撃が混ざっている。
「本命は、そこかなっ」
 ミンコフスキーの右手が数秒後の未来へ斬撃を放つ。
 両者は交差して立つ場所が入れ替わり、同時に振り返れば、互いの体には斬撃の傷。
「……面白い。ミイラ男くん、君の四肢を落として動けなくして、一番最後に殺すとしよう。君の仲間が無惨に殺されていくのをたっぷりと見物させた後で、殺して差し上げるよ」
 傷から流れる血を手で拭うと、ミンコフスキーは笑いながらそれを舐めた。
「反吐が出らァ。組のモンにゃ手出しさせねェ」
 瞳を見開き、再び娑婆蔵はミンコフスキーへ108種の殺気を投射する。
 同時に、空中からパルサティラが仕掛けた。
(かのアヴァタール級は空間を抉って殺すサディスト。多少の銃弾では効果がないかもしれません……)
 しかし百の弾丸が意味を為さないのであれば、千の弾丸を撃ち込むまで。
「私は援護ですから。きちっと『カタ』に嵌めるお手伝いをできればいいのです」
 パラドクスによる銃弾の雨を、パルサティラはミンコフスキーへ徹底的に叩き込む。
 さらに左からリューロボロス、右からアーリィがミンコフスキーへ仕掛けた。
「貴様はアーリィの敵であり幼子の敵。我らが見逃す道理無し!」
 踊るような華麗な動きと共に繰り出される、翼に纏った焔による一撃。
(一度でもミンコフスキーの体を地に付けさせ倒せれば構わない、その為に腕を磨いてきたのだから……っ)
 続いてアーリィもパラドクスを繰り出す。
「3人まとめてお相手して差し上げよう」
 なぶり殺しを楽しむミンコフスキーの残虐性が発露する。
 彼の左右の手が斬撃を繰り出し、直後にその場の空間が圧縮される。
「そして弾けてお終いだ」
 標的を引き寄せた上で一気に圧力を解き放って吹き飛ばす。
 ディアボロスたちの体が木の葉の如く舞い、さらに未来へ放たれた斬撃が襲いかかる。
 急激な圧縮と解放にディアボロスたちの肉と骨が悲鳴を上げ、斬撃が血飛沫を舞わせる。
「友より授かりし舞踏と炎はアーリィと我らを護る加護!」
 吹っ飛ばされたリューロボロスだが、空中で態勢を立て直して気炎を吐く。
「この力にて空間圧縮と解放も乗り越えてみせようぞ!」
 負傷はしたが深手ではない、ディアボロスたちは連携して立ち回り、ミンコフスキーと激しいパラドクスの応酬になる。
(直撃弾は勿論狙いますが、一番の目標は対応力を奪うことです)
 娑婆蔵とミンコフスキーの戦いから、パルサティラはそのヒントを得ていた。
 自分がやることは、敵の眼前を覆い尽くさんばかりの弾幕を展開する。
 娑婆蔵が投射する108種の斬撃パターンに、弾丸の雨を上乗せする。
 斬撃と銃撃で今この瞬間を埋め尽くしていく。
 さしものミンコフスキーも、徐々に負傷と被弾が積み重なっていく。
(向こうが時間と空間を弄ろうとも、仕掛ける一瞬、仕留める好機は……必ず来るっ)
 アーリィは戦いながらも敵味方の動きを見極める。
「引き寄せ吹き飛ばし何するものぞ! 貴様、ヨーヨーでもしておるのか? いや、幼子にも大人気、ヨーヨーに失礼か。くはははははは!」
 放たれる焔は三尾の狐の姿、加えてリューロボロスはミンコフスキーを挑発して煽りに煽る。
「この舞踏、護りのためだけの技ではないぞ? 我らが焔にて焼き払ってくれるわ!」
「口の悪いお嬢さんだ。これは躾が必要、だねえ!」
 ミンコフスキーのパラドクスにより空間が圧縮される、その瞬間だった。
「懺悔せよ、拭い切れぬ業からは何人たりとも逃れられぬ」
 その声と殺気はミンコフスキーの背後から。圧縮と共に迫り来る。
「八ツ裂きにしてやりまさァ」
「そこかね、ミイラ男くん!」
 振り向きざまにミンコフスキーが斬撃を放つ。
 だが背後のそれは娑婆蔵が投射した幻、撒いた布石。
「読み違えたが命取り、でさァ」
「さあ、存分にやれ、アーリィ!」
 仲間たちに背中を押され、圧縮で引き寄せられた勢いも乗せ、アーリィは隙の生じたミンコフスキーへ肉迫する。
「終曲だ、ミンコフスキー!」
 それは聖域の名を持つパラドクス。
 生命の終わりを告げるファンファーレと共に、ワルツを踊るかの如く敵を斬り裂いていく。
 彼女の剣は敵の生命の終曲まで止まることはない。
 無数の斬撃に空間を操るミンコフスキーの両腕は落とされ、両脚も落とされる。
「……そうか! お嬢さん、貴女は……っ!」
 目を大きく見開き、ミンコフスキーが口から血の塊を吐き出した。
「とんでもない種を撒いていたものですねえ、私の本体は。おかげで私はこの有様だ。ははは、あはははははははは!」
 四肢を失い、歪んだ笑みを見せ、ミンコフスキーが狂乱の叫びを上げる。
「黙れ分身。いずれ本体も私が葬る……!」
 地面へとミンコフスキーの体を叩きつけるように、アーリィの剣が彼の心臓を貫いた。
 ミンコフスキーの絶命と同時に、圧縮されていた空間は再び解放される。
 剣が引き抜かれると、その死体は空間の解放と共に虚空へと放逐された。 
「悪は滅びる定めにあるのです。そう、他でもない我々が滅ぼすのです」
「然り。我らディアボロス。我ら奴崎組。我ら復讐者。貴様たちの滅びと知れ! せいぜい本体も首を洗って待っておるが良いわ!」
 パルサティラとリューロボロス、ミンコフスキーが散った空へ目を向けた。
 モスクワの空、凍てつくような青がどこまでも広がっている。
 アーリィは剣の付着した血を丁寧に拭うと、鞘に収めた。
 刻まれた忌まわしい記憶は消えない。
 もちろん、右腕の痛みも。
 今回倒したのはあくまでも分身……だとしても自分はやり遂げた。
 間違いなく仇敵に一発やり返した、それを彼女は実感していた。
「お疲れさん」
 そんなアーリィに娑婆蔵が声をかける。
「ありがとうございます。組の皆のおかげで倒すことができました」
「腹が減ってきやしたねェ。新宿島に帰って、皆でメシにしましょうぜ」
 優し気な眼差しの娑婆蔵に、アーリィは微笑み、はい、と答えた。
 やがて迎えのパラドクストレインがモスクワ上空へ現れる。
 新宿島へ、我が家へ帰る時間だ。
(我らのことは忘れようとも、この勝利が幼子たちの救いとならんことを)
 リューロボロスはこの地の人々のために祈り、停車したパラドクストレインへと仲間たちと肩を並べて歩いていく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【未来予測】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【建造物分解】がLV2になった!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2024年02月27日