鶴と龍が交わるとき(作者 秋月きり)
#冥海機ヤ・ウマト
#硫黄島攻略前哨戦
#硫黄島
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改竄世界史冥海機ヤ・ウマト。
小笠原諸島の南端に位置する硫黄島の軍港で、二者のジェネラル級冥海機が応対していた。
一体は翔鶴。台湾は海軍基地『高雄警備府』の責任者だった冥海機、そしてもう一体はここ硫黄島基地司令官、飛龍であった、
「翔鶴様には、遠路はるばるようお越しくださいました」
その挨拶が心底からの歓迎なのか、それとも異なるのかはおくびにも出さない。飛龍もまた、翔鶴に勝るとも劣らない女傑である事は、言うに及ばなかった。
「飛龍さんには迷惑をかけますね。すぐに今後の作戦について話し合いたいのですが……」
微笑と共に口にした翔鶴の台詞は、最後まで紡がれなかった。
飛龍と呼ばれた女人がそれを遮ったからだ。
「必要ありません。この海域を不遜にも侵そうという愚か者、『飛龍様』の艦隊だけでも、蹴散らすには充分と『飛龍様』は仰せです。翔鶴様は、硫黄島の基地で、旅の疲れをいやしてくださいまし」
聞く耳持たぬとはこのことか。
「いや、お待ちなさい。ディアボロスは……」
それでも、と進言しようとした翔鶴はしかし、口を紡ぐと、己の首を横に振る。未だ、飛龍は今の復讐者を理解していない。それは、多くの冥海機と同じである。
ならば、その危険性を知って貰うのも手だろうか。その思いが、翔鶴の口を閉ざす結果となった。
そして零れたのは嘆息。そして。
「分かりました。武運を祈ります。ですが、ディアボロスは手強い相手です。想像以上に強いという場合は、すぐに退いて下さい」
どうにか絞り出した言葉に、反応したのは飛龍――先程まで会話していた女人の背後に立つ、巨大なタツノオトシゴであった。
その首肯を見遣り、女人は更なる言葉を重ねる。
「『飛龍様』も、忠告に感謝すると仰せです。『飛龍様』の艦隊が敗れるような事があれば、すぐに帰島いたします。ですが、……勝ってしまっても宜しいのですよね?」
「ご随意に」
それが翔鶴に出来た、唯一の返答であった。
「攻略旅団の提案による小笠原諸島の制圧は完了した様です。その中で得られた情報によると、ジェネラル級冥海機『翔鶴』は硫黄島に向かった、とのことです」
そして、最終人類史新宿島新宿駅ターミナル。到着したパラドクストレインを背景に、時先案内人、クリス・ルトゥーチ(吸血鬼のダークハンター・g07182)は、そう語り出す。
「という訳で、皆さんにはその『翔鶴』を追って頂きたい訳です」
その大目的を口にしたクリスは、「それでは」と背後のホワイトボードを指差す。其処に広げられたのは、太平洋を中心とした海域の地図であった。
「現在まで、僕達ディアボロスは、横須賀鎮守府を奪還。更に、台湾島、舞鶴鎮守府を制し、東南アジアに侵攻している状況です」
それに加え、東メラネシア海域では、復讐者と黄金海賊船エルドラードの侵攻を受けて、冥海機戦力は撤退している。即ち、オーストラリア近郊のニュージーランドも含め、多数の海域の制海権を失っていると言うのが現状だ。
翔鶴が向かった『硫黄島』は、そんな冥海機陣営にとって失えない重要拠点なのだろうと言う推測は充分に成り立つ話だ。
その『硫黄島』を復讐者達が制圧すれば、太平洋の勢力図は大きく塗り替わり、冥海機の勢力をミッドウェー島付近まで後退させることが出来る筈。
「勿論、クロノヴェーダ達もそれを是とするつもりは無いようですが」
それだけに、硫黄島の守備は固い。復讐者達が追う翔鶴の戦力だけでなく、硫黄島の基地司令であるジェネラル級冥海機『飛龍』の戦力も現存している。それらを相手に、正面からの攻略は難しいだろう。
「と言う訳で、まずは、『飛龍』の艦隊を硫黄島から引き離す作戦を実行して下さい」
事を優勢に運ぶため。
所謂、急がば回れ、という話のようだった。
「と言う訳で、今回の作戦ですが、飛龍率いる艦隊に戦いを挑んだ上で、わざと負けた振りをして撤退。敵を釣り出して、硫黄島から引き離す事が目的となります」
所謂釣り野伏ですね、との言葉に微苦笑が混じるのは、これまでの経緯を思っての事か。
「とは言え、簡単に負けすぎては偽装撤退を疑われるでしょう。その為、ある程度激しく戦った上で、撤退してみせることが必要になります」
さて、その手段だが、難しい話では無い。
硫黄島に近付けば、迎撃の艦隊が出撃してくるのだから、索敵の必要すらない話だ。
「迎撃に出てくるのはアヴァタール級冥海機『龍鳳』とその配下『ラピッドデストロイヤー』です。これらと交戦しつつ、敗北を装って撤退――まあ、つまり、上手く騙くらかして下さい」
また、撤退前に龍鳳と会話し、復讐者達が望む情報を、彼女に伝えることも可能だ。
全てを鵜呑みにすることも無いだろうが、情報を伝え聞いた『飛龍』の思考を誘導し、彼女の次の作戦行動に何らかの影響を与えることが可能かも知れない。
「全ては皆さんの心積もり次第、と言った所でしょうね」
そこに形成されたのは、陰謀術数を是とする吸血鬼の微笑であった。
「《七曜の戦》時、飛龍は戦闘に不参加、硫黄島基地の整備を行っていたようです」
故に、復讐者との戦闘経験は無い。当然《七曜の戦》の結果を知っている筈だが、復讐者達の力を理解しきれず、侮っている様子だ。
「それを上手く利用出来れば、勝利で勢いに乗った飛龍と、その艦隊を硫黄島から引き離すことが可能やもしれません」
冥海機ヤ・ウマトの本拠地がハワイの真珠湾だと言う情報もある。硫黄島を制圧することは、ハワイを攻略する上でも大きな意味を持つ筈だ。
「皆様の御武運、お祈りしています」
斯くして、時先案内人は復讐者達をパラドクストレインへと送り出すのであった。
「異な事。私達に敗北したディアボロスが強いなどありえませんわ」
翔鶴からの忠告が届くや否や、龍鳳はそれを一笑に付す。彼女は自身の主たる飛龍同様、復讐者という存在を侮っていた。
彼女もまた、《七曜の戦》の内容を肌で感じ取っていないが故に。
「彼の《七曜の戦》で瑞鶴を始めとした冥海機が敗北したとは言え、あの力なきディアボロスが真っ当に対峙出来たとも思えませんわ。何か卑怯な手段を用いたに決まっています」
故に、龍鳳は誓う。卑劣な復讐者達に本当の海戦を知らしめ、海の果てに逃げようとも追撃し、滅ぼしてやる、と。
「飛龍様にこの勝利を捧げますわ!」
面倒臭がりと定評のある彼女がここまでやる気になっているのだ。部下である『ラピッドデストロイヤー』達に否定する謂れは無い。
「ええ! 必ずや!」
「龍鳳様に、飛龍様に、冥海機ヤ・ウマトに勝利をもたらしますわ!」
彼女達の士気は、物凄く高かった。
リプレイ
百鬼・運命
【心情】
さて翔鶴の行方がようやく掴めたか…
あの程度の不意打ちで一般人を巻き込むほど余裕をなくしはしまいと翔鶴を過大評価してしまった自分の見込みの甘さ、そしてそれ以上に仕留め損ねた後悔はある
今度は確実に仕留めよう
【作戦】
配下を倒さずに龍鳳に挑み、また単体攻撃にむく1体や2体攻撃ではなく攻撃対象の多いパラドクスを使って戦って苦戦を演出しよう
とはいえダメージを負いすぎてはその後の撤退に支障が出る
【ガードアップ】で敵の攻撃はしっかり防いでおこう
【行動】
単に正面から行っては龍鳳にまともに攻撃もできないし、あまり歯ごたえが無くても怪しまれる
【水中適応】を使って水中に適応
敵に対して海流の上流から接近
ジャケットのポケットから大量の呪術符をばら撒いて「クラゲ型爆雷」に変じさせ、【海月爆殺結界】を使用
「クラゲ型爆雷」を海流に乗せて流し、範囲攻撃でトループス級を攪乱しつつ龍鳳を攻撃して行こう
相手のWIZパラドクスは基本頭上からの攻撃
頭上にも「クラゲ型爆雷」を展開しておき、迎撃や身代わりにして攻撃を防いでいこう
硫黄島、近海。
そこに陣取るたるはアヴァタール級冥海機『龍鳳』と、トループス級冥海機『ラピッドデストロイヤー』の一団。ジェネラル級冥海機『飛龍』を主に持つその一団は今や、交戦状態へと陥っていた。
「くっ!」
零れた呻き声は、彼女達を襲った不遜の輩――復讐者と思わしき青年から零れた物だ。クラゲ型爆雷を擁する彼奴は、しかし、その動きに精彩はない。龍鳳の雷撃を受け、悲鳴と共に距離を置く。その身体に走る火傷が、そして衣服の汚損が、相応の損害を出していることを指し示していた。
「他愛もないね。ディアボロス。こんなクソ雑魚を翔鶴様は怖れていたと言うの」
「手応えなんて、無いじゃない」
「翔鶴様はもしかして、台湾を失った己の失点を隠そうとしているんじゃない?」
ふふりと木霊する揶揄の声は、龍鳳の取り巻き、ラピッドデストロイヤーが零した物だ。きゃははと高音域に達する笑いは、復讐者の耳朶を打ち、更なる言葉を誘導させる。
即ち――。
「ああ、そうだな。翔鶴なんぞ、俺が過大評価していただけ。実際は――」
「おや? まだ口を利きますの? 面倒臭いので早く沈んで頂けませんこと?」
復讐者の放つクラゲ型爆雷は龍鳳の肌を焼き、しかしと返す刀の雷撃は復讐者を穿つ。雷に打たれ、後退した復讐者が取り出したのは、新たな呪術符だった。数度に亘る龍鳳のパラドクスを受けた彼は、諦めだけは悪いと言い放つように、再度クラゲ型爆雷を召喚。龍鳳へと差し向けて来た。
「我らが硫黄島の客人を語るなら、もう少し実力と思慮深さを身につけてからにして下さいませ」
復讐者が苦し紛れに紡ぐ攻撃――三方に広がるクラゲ型爆雷の群れを、鼻で笑った龍鳳は更なるパラドクスを放つ。
敵の選択したパラドクスは、本来であれば多数を吹き飛ばす物である事を、龍鳳は悟っていた。
(「そんなパラドクスを私だけに向けて使用するなんて――」)
口元に讃える微笑は、明らかな嘲笑だった。やはり復讐者は弱い。歴史の敗北者たる彼奴らに怖れる理由など何処にも無い。
再び吹き荒れる雷撃は、破砕音と悲鳴、そして焦げた臭いを立ち上げる。その全てにウンザリした表情を浮かべながら、龍鳳は嘆息した。
(「――流石はアヴァタール級か。普通に戦っても強かったな」)
痛む全身に顔を顰めながら、百鬼・運命(ヨアケの魔法使い・g03078)は内心を吐露する。
八割方は演技と言え、攻撃を受ければ損害は出る。残留効果【ガードアップ】によって幾分かは軽減できているが、実の処、その効果値を言い表せば、たかだか5%程度だ。数度、龍鳳のパラドクスをまともに受ければ危ういと、冷静な自身が何処かで警鐘を鳴らしていた。
(「だが、これで油断は誘えたか」)
先の龍鳳の言葉を思い返し、運命は内心のみで笑う。表情は痛みの為、苦痛を形成していたのは、偽装に丁度良かった。
運命の演技した攻撃に、龍鳳は慢心している。よもや、これが演技とは見抜けないだろう。そもそも、時先案内人の弁を借りれば、彼女は復讐者達を舐めている様子だった。そこに運命の演技が重なれば、彼女の態度は、当然の帰結であった。
再度放たれた龍鳳のパラドクスが、運命の身体を撃ち抜く。海すら焼く電撃は、運命の身体を穿ち、そして多大な悲鳴を周囲に木霊させていった。
苦戦🔵🔴🔴🔴
麗・まほろば
さぁ、接待をはじめようか!
まほろばはいつだって全力だからね。手加減はとてもじゃないけれど苦手だ。
だけど全力で敵の懐に飛び込めば、クロノヴェーダたちを欺瞞することもできるんじゃないかな?
『将を射るならまず馬から』だってことくらいまほろばだって知ってる。きっと危険だけどこれくらいのリスクを背負わないでなにが復讐者か!
【飛翔】を借りつつ急速接近!
やあクロノヴェーダ。まほろばのことは覚えてるかな?
あの顔はまほろばが零式英霊機になる原因となったクロノヴェーダのものだ
アヴァタール級だから別人のものだと理解はしている、だけど『顔を見ただけで平静を保っていられなくなった復讐者』の【演技】ならうまくできる!
ふふん、まほろばはおとなだからね。姿が似てるくらいであわてないのさ!
適当に『めちゃくちゃ怒ってる』風に装いつつ【まほろば式罐】を燃やし、そしてある程度近づいたところでまほろばは爆ぜよう!
なっ――。まほろばの……一世一代の特攻でも敵わないなんて……っ!
所詮これまでかって失望させられたら成功かな?
「やあクロノヴェーダ。まほろばのことは覚えてるかな?」
戦いの最中、麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)は龍鳳に問う。言葉は憤怒、悲哀、憎悪。様々な感情を押し殺したのっぺりとした声で紡がれていた。
まほろばは龍鳳を覚えている。あの顔を一度たりとも忘れたりはしない。アレとの遭遇は、彼女の転換期となったが故に。
だが。
「――どちら様ですか?」
にべも無い言葉だった。むしろ、欠伸混じりだった感もある。
まほろばなど知らない。全く覚えていない。そんな風に紡がれた返答に、まほろばは――。
「龍鳳ぅぅぅぅぅぅっ!!」
狂乱じみた叫びと共に手榴弾を投擲。それらは全て龍鳳の周囲で破砕し、爆風が彼女の髪を、衣服を揺らしていた。
「まったく、訳の判らない言動はいつも通りですね、ディアボロス」
電撃で応戦しながら、うんざりとした様子で零れた龍鳳の言葉。
それを耳にし、まほろばは内心でのみ、にんまりと笑みを浮かべていた。
対峙する龍鳳はアヴァタール級冥海機だ。まほろばに縁あるクロノス級とは姿形は似通っている物の、目の前の彼女を始めとしたアヴァタール級全てが別個体である事を、彼女は理解している。
故に、先程の反応は当然の事。それに怒りを覚えるほど、まほろばは道理を知らない少女では無かった。
だが、逆を言えば、道理を知らない少女を装う事は出来る。
(「ふふん、まほろばは大人だからね。姿が似てるくらいで慌てないのさ!」)
「ねえ、まほろばといっしょに、昏い昏い海の底。行こ?」
冷静な思考とは真逆の熱い想いは、まほろばの内燃機関を多大に燃焼させる。燃やす。燃やす。刻限まで破壊する。
叫びと共に行われたまほろばの吶喊はしかし――。
「訳の判らない言葉の後はただ、ぶつかるのみですか。――面倒なので、そのまま沈んで下さい。自分だけ、で」
龍鳳の雷撃が、そして、ラピッドデストロイヤー達の砲撃がまほろばを包み、刹那の踏鞴を踏ませた。
それは、時間にして数秒も無かっただろう。或いは一秒すらも無かったかもしれない。だが、その隙に龍鳳は後退。更なる雷撃を放ち、まほろばそのものを牽制しながら距離を置く。
「なっ――。まほろばの……一世一代の特攻でも敵わないなんて……っ!」
黒く焦げた己の装甲や衣服を引き剥がしながら零れたまほろばの言葉は、悔悟に満ちあふれていた。
端から見れば、まほろばが吶喊を敢行し、龍鳳やラピッドデストロイヤーに僅かばかりの痛痒しか与えられていない。そのように見えるだろう。龍鳳やラピッドデストロイヤー達もそう理解している筈だ。
ただ独り、まほろばを除いて。
(「なーんて」)
哄笑すら浮かべそうな敵に対し、まほろばはただ、怒りで震える。怒りで震える演技を続ける。
(「いまだ、接待の時間だからね」)
全ては歴史侵略者達を欺瞞するために。
その為だけに、彼女は全身全霊で道化を演じるのだ。
「愚かしい。実に愚かしいですわよ。まあ、それがディアボロスらしいと言えばそうですが」
失望の台詞は、おそらく本心からだろう。龍鳳の嘆息とラピッドデストロイヤーのクスクスとした笑いが木霊し、まほろばの耳朶を打っていた。
苦戦🔵🔴🔴🔴
ラキア・ムーン
さてと……あまり芝居は得意では無いのだがな
故に、少し無茶ではあるが体を張って全力で行かせて貰おう
何、少し痛いだけだ
万一があっても新宿島に漂着するだけ、どうとでもいけるさ
トループス級は健在、遮蔽物の無い海だ
存分に集中砲火されるとしよう
海上スレスレを飛翔し、龍鳳の元へと『突撃』しよう
《RE》Incarnationを構えて突撃態勢
槍を突き出し、さながらミサイルの様に一直線での一撃を狙う!
下手な演技なんぞ……出来ん!
それなら馬鹿正直に突撃するだけ!
突撃しながら【Call:Breaker_Lance】起動
穂先を拡張、拡張した穂先に体を隠しながら最大速度で突き進む!
半端に軌道を変えるくらいなら、勢いを乗せた槍でトループス級の砲撃を少しでも弾きながら龍鳳目掛けて進む
貴様等なら、この戦術も覚えがあるんじゃないか?
所謂……特攻さ、この一撃に全てを賭ける!
攻撃後は、そのままの勢いで離脱
距離を取りつつ龍鳳からの攻撃も受けて、飛翔を解除
海中へと墜落しようか
ふん、負ける戦いなんぞいつもの事さ
アドリブ連携等歓迎
(「あまり、芝居は得意では無いのだがな」)
仲間達と交戦する龍鳳を一瞥し、ラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)は嘆息する。
故に、と彼女は腹を括った。芝居は苦手だ。だが、痴態を、そして愚者を演じる方法は知っている。愚かしい攻撃を繰り出すことで、龍鳳の油断を誘えることを、彼女は理解している。
それは己が身体に龍鳳の反撃が刻まれるのと同義だったが、それもまた覚悟の上だ。
(「何、少し痛いだけだ。万一があっても新宿島に漂着するだけ。どうとでもいけるさ」)
そしてラキアもまた、欺瞞溢れる交戦の中へと身を投じていくのだった。
「クスクスクスクス。愚か。ディアボロスは実に愚か」
木霊する笑いはラピッドデストロイヤーから放たれる物だった。砲撃、魚雷、そして斬撃。幾多の集中攻撃を受け、ラキアは空中で踏鞴を踏んでいた。
そう。トループス級達が健在の中、何の策も無く【飛翔】することは、それらからの集中砲火を誘う結果へと繋がる。これも普段であれば、愚かしいの一言に尽きる行動だ。
だが、ラキアは敢えてそれを選択した。
下手な演技など出来ない。馬鹿正直に突撃するだけ。
それが彼女の取った策であり、そして、その策を龍鳳達は下策と判断した。
――それが、ラキアの思惑通りとは、露にも思わなかっただろう。
「廻り紡ぐは破壊者の槍……」
ラキアの詠唱は二重螺旋に回転する炎と風を喚び、彼女の突撃槍を強固な兵器へ格上げしていく。それを構え、吶喊するラキアの姿を見据え、そして龍鳳は、一笑に付した。
「やれやれ。こちらも破れかぶれの特攻ですか。過去と言い今と言い、本当、ディアボロスって」
呆れの言葉は、完全にラキアを見誤っていることを意味していた。
炎と風の切っ先を僅かな動作で受け流した龍鳳は、そのまま淑女の細腕をラキアへと叩き付ける。流れ出る血は、僅かに斬り裂かれた龍鳳の物か、それとも激しい殴打に噴血したラキアの物か、或いはその双方かと龍鳳は嘆息を零し、激しく彼方へ流れ行くラキアの姿を見送った。
そう。外した特攻が何をなすか、龍鳳は知っていた。それは当然――。
「くっ」
勢いそのままに遙か彼方の海に飛び込んだラキアは、おそらく水の衝撃をその一身に浴びたのだろう。呻くような悲鳴と激しい水音、そして爆発にも似た破砕音が周囲へと木霊していた。
速度があれば、水は超硬度の岩肌にも匹敵することを龍鳳は知っている。超高速の自身の推進力そのままに海に飛び込んだラキアがどの程度の衝撃を受けたのか。それを思い、ただ、愚かしい、と短い感想を口にするのみであった。
「ふん。負ける戦いなんぞいつもの事さ」
少し離れた海域で浮上したラキアは、仲間と交戦する龍鳳を再度見遣り、言葉を口にする。
先の吶喊によって海中へと墜落した彼女だが、被害はさほど見受けられない。歴史侵略者達と違い、海面に墜落するという常識的な出来事に多少の損害はあったものの、しかし、それは己の身体能力でカバーした。口から零れる血は、その殆どが龍鳳の殴打――即ち、彼女のパラドクスによるものだった。
(「さて、何処まで通じただろうか」)
対価は充分に払ったつもりだが、まだ不足しているようにも感じる。あともう一押しあれば充分だろうが、もしかしたらそれは、ただの希望的観測に過ぎないのかもしれない。
耳障りな歴史侵略者達の哄笑を聞きつつも、今のラキアに出来た事は、悩ましげな嘆息を零すことのみであった。
苦戦🔵🔴🔴🔴
大鳥・直雅
(トレインチケット)
「ああ、愚か。愚かしい。動きは精彩さに欠け、全ての攻撃は矮小。これほど醜く足掻くだけの存在を、翔鶴様は気をつけろ、と言ったのですの?」
龍鳳の哄笑が響く。
その言葉を受け、大鳥・直雅(人間の傾奇武者・g08448)は唇を噛みながら表情を歪めた。
――表向きは。
(「奴さんは、上手く騙されているみたいでござるな」)
笑みは、内心でのみ紡がれていた。
直雅の放つ空前絶後の攻撃は龍鳳を掠め、遙か後方の海面を爆発させる。海面から上がった飛沫は、龍鳳達を、そしてラピッドデストロイヤー達を濡らしていた。
(「やはり、皆と違い、俺の演技は下手だなぁ」)
龍鳳を油断させる攻撃は、演技上手で戦闘強者な彼らだからこその所業なのだろう。流石と唸ってしまう。
そして、それらを受け、龍鳳達は慢心しきっていた。
その手腕ときたら確たる物や! もはや賞賛の言葉以外、直雅には浮かばなかった。
「想像以上に強い場合とか! 想像以下じゃん!」
「ねえ、教えてよ。どうやって私達の仲間を倒したの? なんか物凄く狡くて卑劣で、そんな手段があるんでしょう?」
上司の慢心は部下に伝播し、嘲笑として発露する。彼女達の耳障りな笑いも、復讐者達の引き出した産物だ。
「そうですね。殺すだけも面倒ですし、命乞いすれば見逃して上げますわよ? ただし……」
龍鳳に浮かんだのは、妙案を思いついた、との笑みだった。
それは直雅にとって見るに堪えない酷笑だったが、とりあえず飲み込む事にする。皆の演技を繋げるため、我慢の時だ。
「拙者等が命惜しさに取り引きに応じると思うか……?」
零れ出でた言葉は、わなわなとした震えと共に。それを屈辱と受け取ったのか、龍鳳の笑みはより深く、より濃い物へと転じていった。
「お好きなように。ただ、少し。ほんの少しばかり、その卑怯な手段を口にすれば、命が助かるだけのお話ですのよ。面倒なのは嫌いなのでここで死ぬか、哀れに命乞いして生き恥を晒すか、早く選んで下さいませんこと?」
それはまさしく弱者を食い物とする強者の台詞だった。
故に、直雅はぐっとくぐもった声を上げる。
即ち――。
(「釣れたでござるな」)
今ならば、苦戦の末の逃亡も十二分に装えるだろう。或いは、欺瞞情報を龍鳳に渡し、硫黄島内情の混乱を引き起こすことも可能かも知れない。
復讐者達の苦労が実を結んだ刹那、直雅の零したそれは呻き声ではなかった。
それを装った笑みであったのだ。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
ラキア・ムーン
さて、これで此方を侮ってはくれるか
後は硫黄島から1メートルでも遠く
1秒でも長く離れて居て貰わねばな
相手も情報が増えればそれだけ判断に時間を掛ける
おびき出す……とまでの贅沢は言わんさ
少しでも長く、考えて貰おう
ボロボロな体を庇いながら、左程気にした様な感じを出さず軽口でいこう
……流石に敵地のディヴィジョンで、しかも後方支援も無ければいつもの戦術は通じんか
少し先走り過ぎたな、やはり小笠原諸島を制圧した戦力だけでは足りん……か
それに小笠原の拠点化もまだ進んでいないしな
今は勝ちを譲ろう、だが次に会う時は今日の我等では無いと思えよ?
ああ、そうだ
貴様等は随分と良い物を使っているんだな?
台湾島の置き土産、利用させて貰ったぞ
あれほど簡単にそして自動化の進んだ船が手に入るとは思わなかった
お陰で此方もこのディヴィジョンで戦力の輸送手段が手に入ったよ
次に会う時は台湾の戦力も合わせて戦う事となるだろう
その時こそ、雌雄を決する時だ!
と負け惜しみじみた発言をして離脱準備を開始しよう
アドリブ連携等歓迎
(「さて、これで此方を侮ってくれるか」)
息切れを装い、ラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)は龍鳳から距離を取る。対峙する龍鳳は、しかし、そんなラキアに歪んだ笑顔を見せるのみ。定石ならば再度間を詰めて徒手空拳による撃撲になるのだろうか。それを行わない時点で、舐め腐っている内心が透けて見えるようであった。
そう。龍鳳の慢心は今や、物凄く膨れ上がっていた。度重なる復讐者達の演技が、作戦が、今の彼女を引き起こしたのだ。ラキア達の狙い通りであった。
(「それでは、仕上げと行こう」)
此度の主目的は、彼奴の主たる飛龍を硫黄島から引き剥がすこと。それに連なる情報を植え付けるのが、彼女達の作戦だ。
すぅっと一呼吸する。龍鳳の攻撃を受け続けた身体は満身創痍。それらを庇いながら、ラキアは言葉を口にした。
「……流石に敵地のディヴィジョンで、しかも後方支援も無ければいつもの戦術は通じんか」
零れた言葉は、独白の様に響く。
通常の戦闘ならば、聞き逃されていたであろう呟きは、しかし、慢心の龍鳳が聞き取るには充分な台詞へと変化していた。そして、打ったのは彼女の耳朶のみではなかった。
「ほう」
整った愁眉がピクリと動いたのは、心にすら届いた為か。
――冥海機に心があれば。そんな胡乱な事がラキアの胸に湧いては消える。
「少し先走り過ぎたな、やはり小笠原諸島を制圧した戦力だけでは足りん……か。それに小笠原の拠点化もまだ進んでいないしな」
ラキアの言葉は絵空事だ。
特に小笠原諸島の拠点化など、復讐者達は手を付けていない。小笠原諸島制圧からの電撃攻略でここまで進出していることを考えれば、ブラフだと受け取るのは難しくない内容だ。
だが。
「……」
龍鳳の表情から笑顔が消える。
(「成る程。面倒臭がりで高慢ちきだが、莫迦ではない……と言うところか」)
可能性を否定出来ないが故、信憑性高いと認識しているのか。その程度には頭が回るようだ。まあ、ラキアの欺瞞情報を真摯に受け止めている時点で、『馬鹿』の単語に当てはまるのだが、しかし、それは復讐者達が一枚上手だっただけのこと。
「今は勝ちを譲ろう。だが次に会う時は今日の我等では無いと思えよ?」
「待ちなさい!」
逃げの体勢を整えるラキアに、しかし、逃す物かと龍鳳は吼え、ラピッドデストロイヤー達がラキアの行く手を塞ぐべく陣形を展開する。
だが、遅い。
「ああ。そうだ」
更なる動揺を誘うべく、ラキアはその文言を口にした。――捨て台詞。完璧なまでに負け犬を演じる彼女は、物凄く輝いていた。
「貴様等は随分と良い物を使っているんだな? 台湾島の置き土産、利用させて貰ったぞ。あれほど簡単にそして自動化の進んだ船が手に入るとは思わなかったな。もし次があるとするならば……その時は台湾の戦力も合わせて戦う事となるだろう」
「――置き土産? ま、まさか、貴方達は『アレ』を?!」
その一言で通じたのか。龍鳳が目を丸くする。成る程。あの薪ストーブは、彼女を動揺させるには充分な物だったらしい。
「破壊が不十分だった施設が残って居たと言うのですか? ……い、いや、だとしても、随伴艦を生産できる程度でしょうに! 戦力にもならぬ随伴艦で、粋がる姿など、滑稽甚だしいですね!」
震え声は、動揺か。それとも怒りか。どちらでも良いか、とラキアは結論付けた。
「その時のお楽しみと言う奴だ。次こそ、雌雄を決しよう!」
「負け犬の遠吠えとは見苦しいですわ!」
歯噛みの音が聞こえて来そうなほどの絶叫に、ラキアはふふりと微笑を零した。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
百鬼・運命
🔳心情
さてと作戦は上手くいったようだ
あとは欺瞞情報を流して撤退するとしよう
🔳行動
「なるほど、情報をよこせばという事か。なら此方にとっても知ってもらたほうが都合のいい情報を。貴様ら相手に戦力が足りていないのはよくわかっているのでな。足りない戦力を補うためにも、アルタン・ウルクを利用させてもらうつもりだ」
龍驤なき今、俺達がアルタン・ウルクを迎撃しているが、それなりに手間だ
なら俺達がその対処をしないという情報を流して、冥海機にもアルタン・ウルクを迎撃してもらおう
アルタン・ウルクと冥海機の戦いの漁夫の利も狙えるだろうしな
敵も馬鹿な事をと思うだろうが、翔鶴から俺達が一般人の被害を気にしないのは言われているだろうし、俺達を卑怯だと思っている
また龍驤がアルタンを引き込もうとしていたのが伝わっているなら、俺の発言の説得力が増すだろう
龍驤が倒された事だけ伝わっていれば、アルタンを利用したと言えば、弱い俺達が龍驤を倒した理由になるし、倒された事も知らなければ、確認してみればいい事だときり返せばいいだろう
「ふ。見苦しいな」
徒手空拳に砲撃と、敵の攻撃から逃げ惑う仲間を庇うよう、ずいっと進み出る男の姿があった。
百鬼・運命(ヨアケの魔法使い・g03078)である。
口元に薄い笑みを貼り付けた彼は、呆れたとばかりに嘆息を零し、そしてふふりと笑った。
「成る程。俺達の事を知りたいというワケか」
挑発の言葉に、龍鳳の動きがピタリと止まる。主に倣ってか、ラピッドデストロイヤー達も動きを止め、二人の挙動を観察していた。
無事逃げおおせていく仲間を視界の端で追いつつ、運命は再度言葉を紡いだ。
「ならば教えてやろう。確かにお前の見立て通り、俺達は戦力が足りない。それは外ならない俺達がよく理解している。だから、俺達は……」
敢えて置かれた一呼吸に、ゴクリと唾を呑み込む音が重なった。
それが龍鳳の物なのか、取り巻くラピッドデストロイヤー達の物なのか判らなかったが、まあいいと、運命は捨て置く。彼奴らの関心を引いたのは間違いないのだから。
「俺達はアルタン・ウルクを利用させて貰うつもりだ」
「――なっ!!」
アルタン・ウルク!
改竄世界史融合世界戦アルタン・ウルクの住人にして、全てを蹂躙する歴史侵略者! 否、全てを砕き、呑み込む黒い災厄!!
その名称に龍鳳の赤い目が大きく開かれる。
「まさ……か……」
彼奴らからの脅威の防衛に舞鶴鎮守府――ジェネラル級冥海機『龍驤』が対応していたことを龍鳳が知るのかどうか、それは運命の知る所ではない。そして、それを問うつもりもない。
今は、アルタン・ウルクの力を復讐者達が利用しようとしている。その欺瞞情報を掴ませることのみが大切なのだ。
「馬鹿な……」
零れた呟きは、全否定。だが、動揺を見る限り、一抹はその可能性があるのでは、と疑っているのかも知れない。
ならば、その想像力を刺激するのみだ。
「ほう。出来ないとでも? 翔鶴から何も聞いていないのか? 俺達は一般人の犠牲など気にしないぞ。卑怯で矮小な存在だからな」
実際、改竄世界史内外でも一般人の存在は復讐者達の足枷となる傾向にあったが、それはおくびにも出さない。表明する利点など、何処にもないからだ。
運命の言葉に、龍鳳はぐぬぬと唸り、唇を噛む。それはむしろ、何も知らないと告げる様でもあった。
(「……あ、そうか。そう言えば飛龍は翔鶴の話、聞いてなかったな」)
時先案内人の言葉を思い出せば、確かにその説明を切り上げたのは飛龍だった。まあ、これを口にすれば、翔鶴の『未来を予知しているとしか思えない精度』云々に更なる情報を与えるだけだから、言わぬが花であるのは間違いない。黙っておこう。
「そんな、改竄世界史の壁を……しかし、ディアボロス達はそれを乗り越え……ならば、アルタン・ウルクも……いえ、ですが、そんな……」
伝えた情報の重さに、龍鳳はただ唸るのみ。故に、運命の言葉を素直に受け止めている。何故その情報を明かしたのか、そこに思考が辿り着かないようだ。
だが、説得力は充分にあったようだ。
「それが……貴方達のやり方ですか!」
「今更気付いたのか?」
勘の鋭い翔鶴ならば一笑に付しただろうな、と思いつつ、運命はにぃっと挑発的な笑みを形成するのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
麗・まほろば
さぁ、【飛翔】を展開して逃げるよ!
ここからは追っかけっこだ! 鬼はクロノヴェーダね! やったね!
【まほろばの水筒】で重油を補給して、【まほろば式罐】を全力で噴かせる! その熱量で水蒸気を沢山まき散らすよ!
これは旧世代、レーダーがなかった時代の艦船が敵を撒くために使っていた方法を真似たものだ!
もちろん最新の兵器、ましてや一般常識の通じないクロノヴェーダに煙幕なんて通じない手だ。いや、通じないからいいのさ!
下手な煙幕はまほろばが進んだという波跡になる。ほら、わざわざここだといってるんだからせいぜい追いかけてくるがいいさ!
攻撃を仕掛けてくるようならまほろばもパラドクスで対抗だ!
ただで怪我を負うのもいやだけれど、必死に抗わないと必死に逃げてる、とは思わせられないからね!
【15.5センチまほろば砲】でがむしゃらに砲撃!
もう、しつこいな! いったいどこまで追いかけてくるつもりなんだよ! しっつこいぞ!
んべー、嘘。どこまでも、どこまでもサメのように追いかけておいで。
あとでまとめて陥落してあげるからさ。
欺瞞情報は流した。小笠原諸島の拠点化とアルタン・ウルクの煽動と言う欺瞞情報を得た龍鳳がどうするのか。それは判らない。
だが、今はそれを見届ける場面ではない、と言うのが、麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)達の見立てであった。
ならば、今行うべきことは一つである。
「ここからは追っかけっこだ! 鬼はクロノヴェーダね! やったね!」
(「そう言えば、まほろば達はいつも逃げているなぁ」)
益体無しにそんな言葉が思い浮かんだが、当然、それは表に出さない。以前は命を賭けた逃走だったが、今は作戦の上の快走的な敗走だ。重みは違った。
主砲を盾とし、副砲でがむしゃらに砲撃して、弾幕を形成。【飛翔】を用いて海の上を滑るように突き進む。慌ててラピッドデストロイヤーや龍鳳達が追撃に切り替えるが、しかし、それは後の祭りという奴であった。
だが。
「逃がさない! ディアボロス!」
「あんな恐ろしいこと言って、逃げおおせるなんて思ってないでしょうね?!」
目聡いラピッドデストロイヤー達の一部が、まほろばに追い縋り、魚雷を乱射してくる。それらを叩き落とし、或いは受け流しながら、まほろばは叫んだ。
「もう、しつこいな! いったいどこまで追いかけてくるつもりなんだよ! しっつこいぞ!」
「何処までもに決まっているでしょう!!」
斯くして、超々々々弩級戦艦と人魚による追跡劇が、繰り広げられていく――。
結構な距離を走った。
流石にまほろばも直線的に逃げた訳では無い。流石に180度逃げれば敵の本領に突っ込むわけだから、それだけは避けたが、しかし、結構な距離を走ったように思う。喉は空気を求めて喘ぎ、全身の毛穴は汗を拭きだして、身体を濡らしている。湿った潮風に翻弄された衣服が肌に張り付き、直ぐにでもシャワーを浴びろと、訴えてくるような錯覚にも陥ってくる。
ようやく足を止めたまほろばは、くるりと背後を見やる。
既に居なくなった敵影を確認すると、彼女は深い嘆息を零した。
「よーやく居なくなったか」
鮫のように追っかけてこいと思いながら逃げたが、ここまでしつこいとも思っていなかった。後で絶対陥落してやる! との意気込みを吐息に変え、盛大に口元から零していく。
ともあれ、作戦は成功した。
今頃、慌てふためく龍鳳は、復讐者達が告げた欺瞞情報を飛龍に報告でもしているのだろうか。
それが次への布石になれば良いと、ただそれだけを小さく願う。
「ま。作戦成功の為なら、まほろば達の怪我は名誉の負傷。安い代償だよ」
龍鳳とラピッドデストロイヤー達に刻まれた火傷の跡を見た。少し痛むそれに、苦笑いが込み上げてくる。結果、作戦は成ったが、多少の怪我をした。その負債に対する利益は十二分以上にあった。それだけの話だ。
「よし。超々々々弩級戦艦、麗・まほろば。帰投するよ!」
直ぐにパラドクストレインが迎えに来るだろうか。
その際に語るべき土産話を想起しながら、まほろばは小さな胸を張り、得意げな笑みを浮かべるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!