リプレイ
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ積極歓迎
レイさんと共に。仲間と協力を
鍋と調理器具と食材と少しの薪を持参
前回調査の村人のものに似せた衣裳に外套を羽織り、旅人を装う
予め当時の地図をみて参考程度に、道程を把握し
ポルトまでの道中は【平穏結界】を展開し、迷彩コートと消音靴で忍び足
方位磁石を頼りに、なるべく開けた場所や街道を避け、森の中や陰を移動
双眼鏡で行く手の安全確認
ポルト外周の少し離れた場所に森や岩陰など隠れやすい場所を幾つか確保して、結界を一旦解除
焚き火に鍋をかけて
持参したタコとカニを包丁でダーン!とぶつ切りにして鍋に放り込んで煮込む
スパイスで味付けしブイヤベースを作ろう
お味はどうだい?
焚き火の灯り、料理の香り、かすかな物音が届くくらいの位置で、巡回の海賊が好奇心を向けるまで、美味しそうに味見
周囲には高級ワインをたくさん転がしておく
無知な旅人とでもみられれば良い
接近されれば驚いた振りで逃げる
ああ、超高級ワインがっ……!
美食の誘惑を残そう
【平穏結界】を展開し逃走、二人で見つけておいた物陰や潜伏地を経由し姿をくらます
シル・ウィンディア
エルドラード本格攻略までにできることはしないとね。
うん、どうやっておびき寄せようかしら?
よし、それならこれで…
新宿島から品物を持ち込みます
イミテーションの宝石(鉱石等)をアイテムポケットに入れて持っていくよ。
それと、遠方を覗ける双眼鏡も用意。
現地に到着したら、フード付きマントで体を覆って隠れるようにして動くね。足音は立てずに注意して…。
入口に近づくまでに所々に、宝石を何か所かに置いておくね。
この宝石たちを相手が見つけた時に奥に奥に誘導できる位置に配置していくよ。
遠方から双眼鏡で相手を確認していくね。
あまりじっと見ずに、程よく隠れたりして隠密行動を重視するよ。
さっと配置を見たら…。見張りに見つかるか見つからないかの場所に、フードを深くかぶった姿でちらっと姿を見せて、宝石の置いている場所に誘導していくよ。
その時に、わざと宝石を落として興味を惹くようにしていくね。
あとは、追ってくる人達から逃げるようにして動きつつ、置いている宝石の方向へ誘導だね。
誘導が終わったら、急いでかつ隠密に街へ入ります。
レイラ・イグラーナ
この拠点の攻略は飛び地であるポルトガル、そして大西洋を抑えるためにも重要事項。
本格的な攻略はもう少し先ですが、準備は進めておきましょう。
やはり鍵は「宝」でしょうね。
「金銀財宝だけならば宝じゃない。だが、宝が金銀財宝でもあるなら、生活に彩を与えてくれる」そして私が「戦いにとって価値があるとは思えない」と口にした時の海賊の反応。
おそらく「宝」とは特殊な力を持つクロノ・オブジェクトのことで、金銀財宝とは限らない……それはそれとして金銀財宝は好むようですが。
【光学迷彩】と迷彩服で素早く山間を駆け、ポルトの街へと接近します。
身を潜めてまずは巡回ルートの把握。
その後は一旦巡回が去ったところでルート上に私の武装であり、クロノ・オブジェクトでもある銀の針を落とします。
そこから誘導するように街から離れる方角へと点々と銀の針を落としていき、しばらく行ったところで少し多めに針を撒いておきましょう。
準備ができたら再び巡回ルートへ。
銀の針に気が付き、拾い集めに動いたら町へと侵入いたします。
●
ポルト――世界地図の上では、サラマンカを経由して西、大陸の突き当たり……最終人類史では、ポルトガル第二の都市と歌われる観光都市。
とかく高名な港町であろう。果たして、黄金海賊船エルドラードではどうなっているのだろうか。
海を遠景に、一目散に山を越えてきたディアボロス達は、ポルトを眼前に足を止め、小休止していた。
「此所までは順調だったな」
ポルトの入り口を守る海賊どもを観察し終え……エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が双眼鏡をおろした。
平穏結界を展開しているが、見つかるときは見つかってしまう――此所からは、慎重に動かねばならぬ。
「しかし……とうとうポルトに辿り着いた、か」
茂る木々の間に身を潜めても、風に混ざる潮の気配に、エトヴァはしみじみ呟く。
レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は、そうですね、と双眸を細めた。
「この拠点の攻略は飛び地であるポルトガル、そして大西洋を抑えるためにも重要事項――本格的な攻略はもう少し先ですが、準備は進めておきましょう」
「エルドラード本格攻略までにできることはしないとね」
静かなレイラの言葉に、シル・ウィンディア(薄明殺し・g01415)は深く頷く。
そのために――視線を向ける先は、ふらふらと適当に周囲を見渡している海賊達だ。やる気があるような、ないような……そこまで本気で警備に当たっているようには見えぬ。
ひとりふたりがばーんと正面から飛び出して「ディアボロスだぞ!」とでも名乗れば、恐らくは追いかけてくるかもしれないが……。
できる限り、引き離し、スマートに侵入したいところだ。
「うん、どうやっておびき寄せようかしら?」
シルは小首を傾げると、レイラは目を伏せ、告げる。
「やはり鍵は『宝』でしょうね」
彼女が思い出すのは、前回の調査――アヴァタール級アビスローバーとの問答。
「『金銀財宝だけならば宝じゃない。だが、宝が金銀財宝でもあるなら、生活に彩を与えてくれる』――おそらく『宝』とは特殊な力を持つクロノ・オブジェクトのことで、金銀財宝とは限らない……それはそれとして金銀財宝は好むようですが」
「確かに、海賊のお宝といえば、金銀財宝だもんね……」
「あの海賊の特別な趣味、という可能性も否定はできませんが……何分、情報が少ないですから」
七曜の戦いを含めても、アビスローバーとの接触はまだ少ない。
「このディヴィジョンの常識を測るためにも、色々試してみるべきだろう」
微笑み言って、エトヴァは荷物を担ぎ直すと、見定めた地点へと歩き出す。
個々の工夫を成功することを願いながら、シルは、マントを羽織ると、フードを深く被った。
「よし、それならこれで……」
●
「早く警備の時間終わらねぇかな……」
などと嘯き、退屈そうに警備しているクラヴィアンは、不意に何かに気付いたように目を動かした。ちらちらと動く影が、見えた気がする。
「ん?」
暫し、気になった辺りをじっくり眺めてみると……、フードを被った人物が、半端に身を隠し、周囲を窺っているではないか――クラヴィアンは一歩踏み込み、鋭い警句を放つ。
「おい、お前、そこで何をしてる!」
「あっ」
フードの人物は、しまった、というように声をあげ、身を翻す。
フードの合間から、ころりと転がる宝石の輝き。
「親分っ」
クラヴィアンは、咄嗟に振り返る。仲間と……親分も、なんとそれを見ていたらしい。
「おう、怪しいな……追え!」
フードの人物が街とは反対に駆け出す――手下にそれを追わせ、オクトキャプテンは不審者が落としたものを眺める。
「ただの石コロか……?」
宝石のような輝きはある。だが、それだけならば、興味を惹かれることはない――自分達の姿を見て逃げた不審者。彼の直感が「何かがある」と告げていた。
手下らが呼ぶ声に、オクトキャプテンは蛸足で地を蹴った。
●
さて、一方……エトヴァは焚き火を起こし、鍋で何やら調理をしていた。
敵に見つからぬよう慎重に周囲を探索し、念入りに場所を見定めた彼は、腰を据えて煮炊きをする。平穏結界は解除している。
ここからは、いつ見つかっても、問題ないからだ。
周囲にはこれ見よがしに高級ワインを転がして、のんびりと身体を休めているように振る舞う。
――まあ、鍋の方も、本気で美味しいブイヤベースを作っているのだ。
香りを楽しみながら、味見をして、出来映えに微笑む。
丁度、そんな頃合い。
茂みが激しい音を立てて、何者かがエトヴァを発見した。
「こっちです、親分!」
フードの人物――即ち、シルを追いかけてきたオクトキャプテンとクラヴィアンらが、次々に茂みを掻き分け殺到すると、エトヴァに鋭い声を放つ。
「おい、お前、ここで何してやがる!」
「!」
エトヴァは顔色を変え――怯えたように振る舞って、逃げ出す。料理や、荷物が持ち出せない、という状況を惜しむように振り返るも、アビスローバーらと見比べ、
「ああ、超高級ワインがっ……!」
わざと大きく嘆きながら、彼は予め決めておいたルートをあっという間に駆けて逃げていく。
クラヴィアンが残された料理や酒をじろじろと眺める。
「特に変わったものはなさそうっすね」
ふん、とオクトキャプテンは鼻を鳴らし――周囲に散らかった荷物のひとつを、無造作に掴む。
「……ふむ、宝石らしきものと、街を目の前にしながら、人目を忍んだキャンプか」
「親分?」
くくく、と突然肩を震わせたオクトキャプテンを、クラヴィアンらがきょとんと振り返る。
「バカか、俺達を見て逃げたって事は、密輸商人あたりだろう」
叱りつけられたクラヴィアンらの表情は一様に「!」と称すべきものであっただろう。
親分は手下どもに、一喝する。
「お前達は奴らを追って殺せ、お宝は略奪だ!」
「なるほど、合点了解っす!」
「親分の勘、珍しく冴えたんですね~」
「略奪だ!」
クラヴィアンらは口々に歓声をあげると、それぞれ道を分けて茂みに入っていく。アビスローバーらにとって、そこに転がる料理やワインには一切興味がないらしく、エトヴァや、シルの後を追い始めた。
略奪となれば、今まで碌に見向きもしなかった不審者らが置いていった荷物も、ひとまず回収する――シルが用意したイミテーションの宝石に混ぜられた、レイラが仕込んだアイテムを見て、オクトキャプテンは、ほう、と思わず声を漏らした。
それを、クロノ・オブジェクトであるかどうかを見抜いたかはわからぬ。
「特別報酬、あるかもな――」
果たして、海賊らは、ディアボロスが仕込んだ仕掛けを、ひとつひとつ見極めるようなのんびりとした捜索をしなかった。
殺して奪うのも、また海賊の流儀。
道に落とした態とらしい誘導には掛からぬだろう――しかし、海賊が追跡を諦めて引き返すまでの時間で、充分に情報は集められるだろう。
(「お二人のことです、巧くやり過ごして戻ってくるでしょう」)
身を潜めていたレイラは、きっちり警備が離れた事を確かめ、しかし細心の注意を払って、茂みから出る。
そして、銀の髪を靡かせ――悠然とポルトへ歩き出した。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
●港町ポルト
ポルトは、静かな街だった。平穏、といって差し支えない。
大航海時代の街並みは当世のものとは趣が違うが、街として統率がとれており、端正であった。
治安が大いに荒れているとか、建造物の大半が破壊されている……といったような様子は無い。
まったく綺麗というわけでもなく、海賊が暴れただろう名残は、ところどころに刻まれているが、それが侵略時のものかと言われると疑問がある。
街にはそれなりに活気もあった。酒場はいくつも確認でき、様々な商店などもあって、店主がアビスローバーということもなく、一般人同士で取引も行われている様子だ。実際、人々は街に出て、自由に振る舞っているように見える。
――しかし、海賊の気配が、薄いわけでもない。
広大な港を埋める船は、すべて海賊船であること。そして、ポルトの周囲を警備していたのがアビスローバーであることからも、その影響は強いはずなのだ。
此所は敵の拠点。
その只中に跳び込んでいるのだ、ということは忘れず、情報を集めねばなるまい――。
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
海賊達が門を離れた隙に素早く街の中へ潜入します
もっと荒れ果てた街かと思っていましたが、意外と形は保っているのですね
それにも何か意味があるのでしょうか…?
友情催眠を発動
目立たぬ色の外套を纏い、旅の商人として振る舞いましょう
人と物が行き交う市場なら、よそ者がブラついていても珍しくはない筈
干した海産物をいくつか仕入れ、店の主人と買い物ついでの雑談感覚で探りを入れます
私はポルトへ仕入れに来るのは初めてで、人も物も多く良い街であることに驚きました
海賊が支配していると聞いていたのですが、ここを治める海賊はさぞや分別を識る立派な方なのでしょうね
聞き込みたいのはこの街を支配する海賊(ジェネラル級)について
海賊の話を振った時に、店主が嫌な顔をしたら声を落とし
私はまだこの街に着いて日が浅いので、気をつけたほうが良い事があれば教えて頂けませんか?
と、頼みます
無料では…という雰囲気なら、苦笑しつつ情報料として追加で買い物を行い舌の滑りを良くしましょう
情報を得られたら礼を言い
門に海賊が戻る前に撤収
●商い
警備が外れた機を窺って、素早く街へと潜り込んだソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)は、周囲を見渡し、そっと呟く。
「もっと荒れ果てた街かと思っていましたが、意外と形は保っているのですね――それにも何か意味があるのでしょうか…?」
ポルトは広い。
仲間と手分けをしても、街の隅々まで見て回る時間はないだろうが――目立たぬ色の外套を羽織り、旅の商人のように市場を歩く。
市場はそれなりに賑やかで、商人達も様々いる。店を構える者から、小さく商品を広げる者。皆、それなりの商いをしているようだ。
海の幸、山の幸、酒に、諸諸の雑貨……ポルトの外に出ねば仕入れられなさそうなものもある。
「――こちら、いただいても?」
ソレイユは干した海産物を売る店で脚をとめ、店主に話しかける。
「おう、いらっしゃい」
気のよさそうな中年男性は、代金を提示する。支払いは貨幣で行うらしい――。
「まあ、旅人だというなら、貴金属でも構わないが……うちは、きっちり貰うよ」
「はい、勿論です」
言って、いくつかの商品を真面目に見極め、取引をしながら、雑談を続ける。
「私はポルトへ仕入れに来るのは初めてで、人も物も多く良い街であることに驚きました……海賊が支配していると聞いていたのですが、ここを治める海賊はさぞや分別を識る立派な方なのでしょうね」
「ポルト……というか、リスボンともども、ポルトガル総督は『ヴァスコ・ダ・ガマ』様だ。海賊達はおっかないが……税金さえキッチリ納めれば、海賊さんらは俺達を殺す事は無いよ」
てらいもなく、店主はそう教えてくれた。
ポルトガル総督と名乗っているならば、なるほど、この二都市を押さえていても不思議はない――思いながら、彼は更に問いかける。
「……私はまだこの街に着いて日が浅いので、他に気をつけたほうが良い事があれば教えて頂けませんか?」
「商人なら、兎に角、海賊さんらにきちんと税金を払うことだな」
「払わないと、どうなるんでしょう?」
即座に返ってきた解へ、ソレイユが無知を装い、小首を傾げて詳細を促すと、店主は苦笑いする。
「脱税がバレると、海賊さんらに家を潰されちまう。商品も家財も全部没収だ。そんで、街から追放さ……」
「追放……処刑されるわけではないんですね」
「ああ、そうだ。でも、兄ちゃん、そんなバカなことしちゃなんねぇぜ」
脱税なんてしても得はないのに、ちょくちょく逮捕者が出るんだよ……儲けが出ると目が眩むんかねえ、と彼はぼやいた。
「こないだも、真面目で通してた商家の旦那さんが、脱税で捕まったな――ったく、欲目が出るんかね?」
じろりと値踏みするような視線を受けたソレイユは、さらりと微笑みを返す。
「懲罰含め、掟は確りと把握しておきたい性分なので……お話をきけて助かりました。ご丁寧に、ありがとうございました」
「おう、酔っぱらいでもなけりゃ、出会い頭に殺されるこたぁねえが、海賊さんらが危なっかしいのは変わらないからよ、気をつけろよ」
出会い頭に殺されるこたぁねえ……一般人ならば。
ソレイユはそう心の中で付け加える。ディアボロスとなれば、きっと問答無用で追い回されることになるのだろうな――と考えながら、神妙な表情で首肯してみせるのだった。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
レイラ・イグラーナ
この地の総督はヴァスコ・ダ・ガマ……
リスボンも治めていることをポルトの人民がご存じということは、ある程度ポルトとリスボンの交流はありそうですね。
あちらもこの町と同じような雰囲気でしょうか……?
町の外に追放、命までは取らないという話でしたが、以前に見たアビスローバーの血気盛んな様子を見るにどこまで信用したものか。
ひとまず、ヴァスコ・ダ・ガマを討つことがポルトガル解放のために重要になりそうですね。
旅人を名乗り、店で買い物をしつつヴァスコ・ダ・ガマの所在を店の方に聞いてみます。
海賊の方々もいる中、治安が保たれているのはヴァスコ・ダ・ガマ総督の手腕のおかげです。
直接は会えずとも、総督が駐在している建物に赴き、お礼を伝えたいのですが……総督は普段はこのポルトにおられるのでしょうか?それともリスボンに?
●其は何処
(「この地の総督はヴァスコ・ダ・ガマ……」)
レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は裡で呟く。
これをさらりと一般人が告げたことも驚きで、ポルトばかりかリスボンもそうだ、と断言されたことも驚きだ。
(「リスボンも治めていることをポルトの人民がご存じということは、ある程度ポルトとリスボンの交流はありそうですね。あちらもこの町と同じような雰囲気でしょうか……?」)
きっと、そうなのだろう――しかし、レイラは犀利なる眼差しを街に向け、そっと呟く。
「町の外に追放、命までは取らないという話でしたが、以前に見たアビスローバーの血気盛んな様子を見るにどこまで信用したものか」
この街の様子とて、にわかには納得できぬが――何か意味があるのだろう。
いずれにせよ、ポルトガルをアビスローバーより解放するためには、ヴァスコ・ダ・ガマの討伐と、ひとつ定まった。
ならばその所在も、ある程度、目算をつけたいところだ……街の人々がそれを識っているかは、わからぬが。
レイラは流れ着いた旅人風に、街を見物しながら歩いていると、
「お嬢さん、おひとつ如何かい」
装飾品を並べた露天商から、そう声を掛けられた。気付かれぬよう相手を見定めるように薄く双眸を細め――刹那、穏やかな微笑みを浮かべて、レイラは商品を見る。
彼女から見れば、いささかチープすぎるガラスの工芸品だが、好感触を装って頷く。
「綺麗ですね」
「海賊の持ってるみたいな貴重品じゃないけどな」
自虐的に露天商は笑う……合わせてレイラも軽く笑い、商品を買った。
「ポルトが思っていたより平和で驚きました」
そのやりとりの中で、自然に己が旅人であるようなことを匂わせて、彼女は続ける。
「海賊の方々もいる中、治安が保たれているのはヴァスコ・ダ・ガマ総督の手腕のおかげです」
「らしいなあ。俺からしたら、酒飲んで暴れたりするのも止めて欲しいもんだが、そいつは無理難題かねぇ」
露天商は苦笑いを浮かべた。そこまでヴァスコ・ダ・ガマに親しみを持っているわけではないらしい――それはそうだろう、思いながら、レイラは嘯く。
「直接は会えずとも、総督が駐在している建物に赴き、お礼を伝えたいのですが……総督は普段はこのポルトにおられるのでしょうか? それともリスボンに?」
「さてねぇ、俺が聴いた話じゃ……総督は普段はカリブ海にいるらしいぜ」
レイラは、目を瞬かせる。
「カリブ海に、海賊の島があるらしい……なんでも、ヴァスコ・ダ・ガマ様をはじめ、世界の海を支配する大海賊が、そこに集まって、世界のかじ取りをしているとかなんとか」
露天商はむにゃむにゃと曖昧に語る。
情報を渋っているのではなく、聞きかじった話だからであろう。
「カリブ海の向こうにゃ、インカやマヤ……? の原住民がいて、お宝がなんとかかんとか……? 悪いな、酔っ払った海賊とかの話とかをつなぎ合わせただけでな」
「いいえ、興味深い……しかし、御礼に伺うのは難しそうですね」
そう、答えながら。
裡では再び、『海賊の島』と唱えていた。いずれ必ず、向かわねばならぬ手がかりゆえに――。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
敵を惹きつけてくれたおかげで無事に来ることができたな
ひとまず旅人として接してみようかな
【行動】
旅人のような格好をして侵入
少し古ぼけたマントに時代に合わせた服を着て荷物を背負う
長手袋とブーツを履いて機械の手足を誤魔化そう
海賊達が離れた隙に侵入
海産物、特に生の魚を扱うお店を見ておすすめの魚を買い付けよう
港に海賊船がいっぱいなら海の魚はどうやって獲ってくるのか気になった
まさか海賊自身が魚を卸しているわけじゃないだろうしな
もしかしたら納税やらの何かの条件で優遇されている家もあるのかもしれない
その店主に友達催眠を使いながら話を聞いてみたい
「先ほどチラリと港の方を見たら漁船じゃない船がたくさんありました。どうやってこんな質のいい魚を獲れるんですか?」
みたいな感じで小さめの声で丁寧に話かけ
少し怯えたような小心者の旅人のように演技をして情報収集する
もしも干物を買わない理由を聞かれたら
「その土地で獲れた魚を自分で干物にするのが好きなんです」と答える
必要なら臨機応変に対処する
●海賊と魚と
少し古ぼけたマント、大航海時代を意識した衣服を纏い――荒田・誠司(雑草・g00115)は長手袋とブーツで機械部分を隠し、ポルトの市場を進む。
(「魚……売っているな」)
干物や燻製などの加工品もよく見かけるが、鮮魚の類も店を賑わせている。鮮魚がなければ加工されたものもないのはそうなのだが――ましてや、この時代……長期保存できる食料とて、環境や衛生の問題で最終人類史には及ばぬだろう。
(「やはり近郊で魚が採れなければ、成立しないだろうな――いや、何処であれ、海はアビスローバーの領域だろうしな」)
誠司は海をちらりと窺う。
幾度見ても、停泊しているのは、どれも海賊船である。靡く海賊旗、対峙する相手を威圧するような雰囲気の船ばかりで、大型漁船のようなものはない。
それならば、人々は、これらの鮮魚を何処で入手しているのだろう。
彼の疑問はそこにあった。
(「まさか海賊自身が魚を卸しているわけじゃないだろうしな」)
考えて、口の端が歪む。
可笑しいとも、皮肉ともつかぬ曖昧な表情は、刹那に解け、消える。
(「もしかしたら納税やらの何かの条件で優遇されている家もあるのかもしれない……」)
彼は、魚を扱う店をひとつひとつ確認しながら歩いて行く。
商人や客はそれぞれやりとりをしていて、やはり、アビスローバーの姿は見かけない。
暫し品定めをした後、誠司は、魚売りに声を掛けた。
「あの、すみません」
声を潜め、おどおどとした様子で、問いかける。
「先ほどチラリと港の方を見たら漁船じゃない船がたくさんありました。どうやってこんな質のいい魚を獲れるんですか?」
「これかい? 自分で……もっと大店の旦那なら人を使うだろうが、まあ、自分で捕ってくるんだよ。届けを出して許可を得れば釣れるんだ」
だから、うちの商品は新鮮だよと、朗らかな表情で商人は笑う。
「海賊は怖くないんですか?」
怖い怖くないという話は、曖昧に笑って、誤魔化しつつ。
「まあ、危ないこともあるだろうが……今のところ、大丈夫だよ」
なるほど、ポルトの住民は魚を採るために、程度はともかく海に出ることができるらしい……思って、誠司が街の海岸線を眺めた時。
異質なものが目に入って、誠司は僅かに目を瞠った。
遠く見える屋敷に、うねる触手が生えているような気がする――。
「ああ、あれは海賊の根城だよ」
誠司が見たモノに気付いたらしい商人が、そっと囁く。
「海沿いには、ああいう建物が幾つもあるはずさ……俺はあんまり近づかないようにしてるがね」
一般人が守られているといっても、敢えて海賊に近づきにいく必要は無い……そんな商人の雰囲気を見て、誠司はただ首肯した。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【友達催眠】がLV2になった!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
街の人に似せた服を着て、外套に翼を隠し、街に紛れ込もう
平穏結界を展開
俺は海賊船について情報収集
攻略にはいずれ船が必要になる
ダッチマン号以外にも、取れる手立てを探ろう
港の海賊船がどこまでクロノオブジェクトなのか
可能な範囲で、海賊から船を奪える余地があるのか調査
港の方角へ向かい
船の手入れや修理をする職人、荷下ろしの人足や清掃人など、船に関わる仕事をしている人を探そう
プラチナチケットで関係者を名乗り、友達催眠で
海賊船の手入れについて尋ねる
あの船は見事だな
俺は故郷で船大工をしてたんだけど、あの船の修繕や清掃をやらせてもらえないかい
海賊船に修理が必要かどうか、通常の木造船の手入れと違う所はないか
普通の船でなく、特別に手入れがいらなかったり、傷つかない船があるかを確認
海賊さんは、普段どこでどうしているんだい?
船の中には海賊さんがいるのかい
仕事を探しに挨拶しに行っていいかな?
周囲を警戒し、警備が厳しい所、海賊の多い所には近づかず
危険を感じれば、光学迷彩で建物や物陰に潜みやり過ごす
外の警備が戻る前に脱出
●海賊四方山話
さて、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は更に海賊船に接近できるかと試みていた。
(「攻略にはいずれ船が必要になる。ダッチマン号以外にも、取れる手立てを探ろう」)
海賊船はどこまでクロノ・オブジェクトなのか。
奪取する余地はあるのか……。
今はアビスローバーの手勢に見つかるわけにはいかないため、海賊船に関わる機会がありそうな人々を掴まえるべく、港へ近づいていく。
木箱に腰掛け、休憩している屈強な体つきの者達を見つけ、これは、と思いエトヴァはおもむろに近づく。
彼らは茶などを飲みつつ、談笑している……近辺に大工道具も見える。船大工かどうかは解らぬが、彼の知りたいことに関して全く知らぬということもないだろうと判断する。
「あの船は見事だな」
「ん? ああ――」
突然話しかけてきた者だが、何となく親しく感じられたため、男達は驚きつつも、首肯した。
エトヴァは微笑みを浮かべて、続けて問う。
「俺は故郷で船大工をしてたんだけど、あの船の修繕や清掃をやらせてもらえないかい」
「お前さん、知らんのか。海賊船にゃ、仕事はないよ」
「荷運び仕事がないわけじゃあないが、必ず仕事があるわけじゃねえし。船大工はお呼びじゃねぇなぁ」
特に不審げな反応もなく、のんびりと応じる。
海賊船の内情に詳しい者も居なさそうだ、エトヴァは判断して、質問を変える。
「ふむ、頑丈な船なのか……海賊さんは、普段どこでどうしているんだい?」
彼の言葉に、男達は表情を歪めて、首を振る。
「いやいや、仕事申し込むつもりなら、やめときな。あいつらに変に関わるもんじゃねぇよ」
「ポルトじゃ外みたいに暴れることはないだけで……奴ら、俺達を殺すことを、何とも思ってねえというか、人間を何とも思ってねえんだからよ」
男達は、エトヴァの身を案じてそう引き留めてくる。
それはそうだな、と思い、残念そうな表情で「仕事はなさそうか」と肩を落としてみる。
「海賊どもは外に『働き』に出てるか、酒場で飲んでるやつもいるぜ」
働きというのが、略奪なのか、宝探しなのか、そのどちらもなのか――兎角、ポルト外での事らしい。
「海賊相手に稼ぎたいなら、酒場とかで働くのが一番だろうな」
「酔っ払いに殺される確率も上がるけどな」
彼らの口ぶりから、アビスローバー達は酒場などでの金払いは悪くないらしい。
「金を使うことも大事だとかなんとか、酔っ払ってご高説垂れやがるからな」
そう呟く男の表情は、嫌悪感と言うよりは、恐怖や不安。得体の知れぬ海賊らと共存する不穏さが滲んでいるように、エトヴァには見えた。
ただ、海賊らに街を支配されながら、ポルトの人々は平和に過ごしていることに変わりない。
「話を聞かせてくれて、ありがとう。俺は出直すとするよ」
「おう、海賊に気をつけろよ」
礼を告げたエトヴァに、男達はそう声をかけてきた。
彼らは知るよしもない――彼らの言葉に曖昧な微笑を湛えたエトヴァが。そして、その仲間が、実際、海賊とやりあって撤退せねばならぬ――ということなど。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
●戻ってきた海賊達
「逃げ足の速い奴らでしたねぇ」
クラヴィアンが暢気に言うのを、オクトキャプテンは不機嫌に蹴飛ばす。
「バカ野郎、街に入られたかもしれねえんだぞ!」
「だとして親分のミスですし」
「あーあ、特別報酬、夢の夢っすか」
項垂れるクラヴィアンらに、親分は更に苛立ち、怒鳴りつける。
「うっせぇ、兎に角配置に戻って、不審者がいないか調べ直す! 怪しい奴は容赦なく殺しちまえ!」
「はーい」
おざなりな返事ではあったが、彼らはアビスローバー。
いざ荒事となれば、退屈な警備から解き放たれるのだから楽しみだと残忍な感情を共有し、街の入り口へと戻ってくる。
――果たせるかな、撤退するディアボロス達と鉢合わせる頃合いに。
レイラ・イグラーナ
予測通りですね。
粗方の情報は手に入れましたし、彼らをここで撃破しても騒ぎが起きれば町にもう一度の潜入は難しいでしょう。
情報という観点では相手をする必要はございません、が。
戦力としては、ここで削らない理由がございません。
正面からの戦闘では不意を突くのは困難ですね。
両手に銀の針を携え【手製奉仕・爪】。こちらにつかみかかろうとする蟹足の節や甲殻の隙間を【命中アップ】で狙い、切り裂いていきます。
セオリー通り他の復讐者と連携して狙いを合わせ、数を減らしていくことを重視します。
えぇ、先ほど発見された針は私の持ち物です。
役目を疎かにする程度にはご興味を引けたようで、嬉しく思います。
反撃の蟹足での掴みかかりは、多少の傷は許容して強引に抜けることで離脱できぬほどに捕まり引き裂かれるのを防ぎましょう。
一見共存しているように見えても、貴方がたの本質はどこの世界でも同じです。
貴方がたと人民の皆様は違う生物であり、貴方がたは人民の命を何とも思っていない。
そのような者たちが支配者であること、認められません。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
海賊の行動、街の様子……それに遠い地の様子まで、色々と興味深い話が聞けたな
あとは情報を持ち帰るだけ
エルドラードのヴェールを一枚剥げたなら、本格攻略にも弾みがつくだろう
速やかに街を抜け、【平穏結界】を展開し戦闘
二足歩行のカニとは愉快なことだ
ブイヤベースの材料にはならなさそうだが
戦況を観察しつつ、敵味方の位置と動きを把握
羽搏きに乱気流を巻き起こし、PD攻撃で切り刻む
仲間と狙いを合わせ、倒しやすい敵、消耗した敵から確実に倒していく
連携の指示を出す個体がいれば優先して倒す
変則的な動きに注意し、危険を察知すれば仲間と注意喚起しあう
敵の攻撃には、魔力障壁を張り身を守り
銀のタワーシールドを構えて泡の放射を防御し、全身を包みきられないように凌ぐ
悪いが、特別報酬とやらにはなってやれないな
海賊の戦いぶりや言葉にも耳を澄ましておこう
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
こいつらを倒してとっとと帰るとしましようか
これが本当の蟹焼きかな?食べようとは思えないがな
【行動】
仲間とは声を掛け合い積極的に行動する
まずはパラドクスを使用して少しの摩擦でも燃える網の罠を地面に設置
敵からの攻撃は盾のフェイク・プリドゥエンや電光警棒で防ぎ
追い詰められたように演技をして静かに罠へ誘導
敵が縄を踏んで少し擦れるだけで燃えるから
走ってきたりすれば燃え盛ることになるだろう
固い甲羅があっても外側から燃やされたらただでは済まないはず
仲間には罠がどこにあるのか分かるし
踏んだとしても罠は発動しない
仲間に伝えて利用してもらうのもありだろう
必要なら臨機応変に対処する
シル・ウィンディア
情報は取ったらあとは帰るだけ。
持ち帰って初めて生きるものだからね。
さて、それじゃかにさん退治といきましょうかっ!
フード付きマントを被って入口の方へ物陰に隠れながら移動していくよ。
同時に平穏結界も展開して、少しでもばれにくくするようにしてだね。
かにさんを発見したら…。
隠れながら様子を見るけど、封鎖されそうなら一気に行くよっ!
高速詠唱で隙を減らしてから、六芒星精霊速射砲!
手近なところから撃ち抜いていくよ。
こちらの攻撃で目を惹けたなら、味方が有利になると思うしね。
それに…。
警戒しているなら、こっちの警戒度が甘くなるし、どちらに転んでも問題なしっ!
攻撃対象は、初撃以降はダメージが積み重なっていそうな敵を中心にまとめて撃ち抜いていくよ。
ほらほら、油断していると焼きがににしちゃうからねっ!…残らなさそうだけど。
敵パラドクスは、マントで体を覆って被弾面積を少しでも少なくするような体勢に。
まぁ、致命箇所に喰らわなければいいんだけどね。
倒し終わったら、そのまま走り抜けるっ!
…ボス出てくると思うけどね。
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
さて、そろそろ頃合いですね
仕入れを済ませた商人らしく、門までの帰路を急ぎます
このまま素通りしてすれ違えれば一番なのですが…
問答無用で追い回される前に此方から仕掛けた方が良いでしょう
平穏結界と光学迷彩でできるだけ接近し
門を封鎖しようとした所を奇襲します
宙に展開した鍵盤でヒロイックシンフォニーを演奏
カットラスにマスケット銃を携えた幻想の英雄を喚び
ダメージアップの加護を込めてカニ人…クラヴィアンへの攻撃を指揮します
なんというか、凄い見た目ですね、カニ…
色々な外見の侵略者は見てきましたが、その中でも群を抜いたインパクトです
とはいえ、外観に気を取られてはいけません
仲間と攻撃対象を揃え、門を突破できるよう各個撃破します
時間をかけすぎて増援を呼ばれぬよう少々前のめりに行きましょう
反撃には魔力障壁を展開しガードアップの加護も使い負傷を軽減
短期突破を優先し、多少の負傷は必要経費と割り切ります
まずはここを抜けて、情報を持ち帰ることが一番大事な事ですから
そこは通して貰いますよ
●脱出するには……
「さて、そろそろ頃合いですね」
見るべきものは見た――そんな体で、自然な足取りで市場を離れ、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)は入り口へと引き返す。
(「このまま素通りして、すれ違えれば一番なのですが……」)
アビスローバーらとかち合い、戦闘になったら。
否、それはやむを得ぬにしても。
しかし、願い空しく、入り口には先に翻弄してきた海賊達が戻りつつあった。
建物の影に身を潜めたソレイユがそれを観察していると、背後から落ち着いた声が響く。
「予測通りですね」
ゆっくり振り返れば、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)が同じように物陰に身を潜めていた。
彼女はソレイユに倣って海賊達を鋭い眼差しで見据えると、
「粗方の情報は手に入れましたし、彼らをここで撃破しても騒ぎが起きれば町にもう一度の潜入は難しいでしょう……」
そう囁く。
懸念を吐き出す表情は、しかし、いつもと変わりなく、落ち着いたものだ。
「情報という観点では相手をする必要はございません、が――戦力としては、ここで削らない理由がございません」
大きな騒ぎとなって、他のアビスローバーの知るところとなれば、警戒を高められ――街に侵入するのが難しくなるだろうと、危惧する。
できるだけ迅速に、片付けたい……というのは、その通り、とソレイユも頷いた。
しかし、今必要なことは大雑把にだが手に入ったと思う――エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が言う。
「海賊の行動、街の様子……それに遠い地の様子まで、色々と興味深い話が聞けたな。あとは情報を持ち帰るだけ」
振り返る二人に、目配せ、鷹揚に頷いてみせる。
「エルドラードのヴェールを一枚剥げたなら、本格攻略にも弾みがつくだろう」
「情報は、持ち帰って初めて生きるものだからね」
うんうんとシル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)がにっこり笑って同意を示せば、
「こいつらを倒してとっとと帰るとしましようか」
荒田・誠司(雑草・g00115)が戦闘に向け、隠していたサイボーグ部分を解放するように変装を解き、最後にゴーグルを装着して、そう応じる。
「さて、それじゃ、かにさん退治といきましょうかっ!」
フード付きマントを被り直したシルの朗らかな声で――ディアボロス達は思い思いに散開した。
●帰ってきた門番
「……なんだ?」
クラヴィアンが、違和感に目を眇める――自分達が持ち場を離れた間に、何かが変わったような……。
些細な違和感を見極めるよりも早く。
「おい!」
別のクラヴィアンが、警告の声を投げた。正確には、そうするので精一杯、であった。
何処からか響くは、雄々しき旋律。力強いピアノによって描き出された、カットラスにマスケット銃を携えた幻想の英雄達が一斉に突撃してきた。
「て、敵襲ゥ、……ってェ、内側から!?」
驚愕するクラヴィアンは、銃弾と斬撃に押し戻される。
咄嗟に、頭を庇う防御姿勢をとって攻撃を凌ぐクラヴィアンの姿をまじまじ見つめたソレイユは――宙に展開したヴァーチャルの鍵盤に指をのせたまま、
「なんというか、凄い見た目ですね、カニ……色々な外見の侵略者は見てきましたが、その中でも群を抜いたインパクトです」
胡乱そうに呟いた。
なんというか、他のアビスローバーと比べても、名状しがたい雰囲気がある。
彼の率直な感想に、エトヴァは確かにな、と口元を緩める。
「二足歩行のカニとは愉快なことだ――ブイヤベースの材料にはならなさそうだが」
言うや、蒼穹を映したような翼を大きく羽撃かせた。
「集い、踊れ、青き風よ」
どんと風の壁が、クラヴィアンを引っ叩く……次いで、鋭く渦巻く風の刃がその硬質な身体を切り刻む。
「くそ、何人いやがる!」
叫びながらも、クラヴィアンは泡を吐く――口から、ではなく、全身から一気に放出された泡がソレイユとエトヴァの身体を押しつぶす。
泡の形ではあるが、凄まじい水圧としてぶつかってきた。盾を手に凌ぐエトヴァと、身体に帯びる魔力障壁で受け止めるソレイユ――両者とも、この程度であれば、無理矢理押し通せると踏んで、前進する。
それを前に、うっ、と息を呑んだクラヴィアンは周囲の仲間を呼び寄せる。
「囲め囲め、入り口さえ詰めちまえば応援も……」
後ろから一気に駆け寄ってくる敵の姿を認め、シルは今しかないとばかり飛び出す。
「一気に行くよっ! ――世界を司る六界の精霊達よ、六芒星に集いてすべてを撃ち抜く力となれっ!!」
詠唱と共に白銀の長杖を突き出せば、先端で六芒星の陣が輝く。六つの輝き……火・水・風・土・光・闇の六属性エネルギーを束ね、一点に収束させて、放つ。
畳みかけるように連射された光の帯が、クラヴィアンらを次々穿ち、吹き飛ばす。
「あ、あいつ!」
フード姿のシルに、クラヴィアンが鋏を向けた。あの時の怪しい奴、と気付いただろうか。それとも、ただ、敵があそこにもいるぞ、という意味だったか。
自分に注目が向くならば、それもよしとシルはフードの内で微笑む。不敵で軽やかな、笑み。
「どちらに転んでも問題なしっ!」
クラヴィアンの泡から逃れるよう後ろに飛び退くシルの向こう側――。
「待ちやがれ!」
さっと街を抜けようとする誠司に気付いたクラヴィアンが、似合わぬ速度で背中に迫る。「逃がすかよ!」
怯え遁走する相手と思ったか、海賊らしい低い声で一喝しながら、それは鋏と腕……蟹脚を繰り出す。
誠司は足を止め、ぱっと振り返ると電光警棒を手に、クラヴィアンが繰り出す脚を受け止める。大きい蟹脚は、確かに触れれば何でも掻き切れそうな凶刃だ。
押し込まれるように後退しながら――不意に、立ち止まった誠司がじろりとゴーグル越しに、クラヴィアンを見た。
「燃え尽きろ!」
彼の声が響くや、クラヴィアンの身体は炎に包まれていた。
「な!」
炎は、足元から出ている――誠司が作った罠を踏み抜いたのだと、気付いた時には遅い。ごうごうと身を包む炎に焼かれながら、クラヴィアンは膝を突く。
硬質な身体を持とうと熱は堪えるだろうと、誠司は囁く。
「これが本当の蟹焼きかな? ……食べようとは思えないがな」
突き放すような声音に、屈辱を覚えたか。
海賊は、命を焼き尽くすような覚悟で一歩を踏み込んだ――が。
「明月の龍、貪食の蛇。忿怒の腕が虎狼を削ぐ」
背後で、冷徹な声音が響く……奔るは幾重もの、銀の軌跡。
両手に銀の針を携えたレイラが、腕を振るい、炎で弱った関節へと容赦なく針を振るう。
撃つのでも穿つのでもなく、断つ。
何とか立ち上がった状態だったクラヴィアンは――レイラの一閃の直後、「痛え……」という短くも率直な言葉を残し、胸と腰で真っ二つになって崩れ落ちる。
銀の髪を艶やかに靡かせ、彼女は振り返る。
「一見共存しているように見えても、貴方がたの本質はどこの世界でも同じです」
レイラは、淡淡とクラヴィアンに――海賊、アビスローバーらへと告げる。
「貴方がたと人民の皆様は違う生物であり、貴方がたは人民の命を何とも思っていない――そのような者たちが支配者であること、認められません」
凜と言い放ち、靴底で地を蹴り、再び駆ける。
ぐんと突き出された脚を、彼女は無理には躱さず、突破する方向で受け流す。
そこに浅い傷痕が残ろうとも、捕らわれ深手を与えられなければ、無傷と変わらぬ、と。
「クソ、親分はまだか――!」
形勢不利を悟ったクラヴィアンが、思わず零す。別の者がすかさず無理だ、と首……らしきものを左右に振った。
「必ず『宝』の手がかりがあるはず、とかいって、遠くに行っちまったからな!」
或いはクラヴィアンらは、手がかりのなさに諦めて、親分より先に戻ってきてしまった、とも言える。
「えぇ、先ほど発見されたのは私の持ち物です。役目を疎かにする程度にはご興味を引けたようで、嬉しく思います」
レイラが微かな笑みを湛え、針で斬りつける。
節を狙った鋭いそれは、脚を斬り飛ばすほどの斬撃――脚を失わなくとも、どれほどの痛みと衝撃にぐ、と身を竦ませた瞬間。
すべてを消し飛ばすような、光閃が襲いかかってくる。
それは恐ろしく早く、横並びのクラヴィアンらを射貫いていく。
「ほらほら、油断していると焼きがににしちゃうからねっ! ……残らなさそうだけど」
ぼそっとシルが付け足した通り。
光が去れば、影も残さず、クラヴィアンは蒸発していた。
仲間の穴を埋めるよう、前へと跳びだしてきた次の一体は、苛立ち悪態を吐きながら、シルへと泡を飛ばす。
小柄な身体を掠う水圧に、彼女は外套をぐっと握って身体を守りながら、流れに逆らわずに横へと跳ぶ。
「くそ、ちょこまかと……」
クラヴィアンは仲間の数が減ってきたことに焦り出す。
「やっぱり、地上戦は苦手なのかい」
浮き足だった敵へ、エトヴァが挑発を向けながら、大きく翼で風を叩く。
突風の刃がクラヴィアンの硬質な身体を容赦なく斬り裂き、血霞が風に舞い上がる。
食いしばり、踏み止まった海賊が、泡を吹きつけた直後。小さく息を吐きながら、誠司が踏み込んだ。
く、と短く呻いて横へと蹌踉めいたそれの足元で、小さな閃光が起こる――摩擦による着火、全身から発火したクラヴィアンは苦しみながら倒れ込む。
「固い甲羅があっても外側から燃やされたらただでは済まないということだ……お前らでもな」
「ッるせぇ、死にさらせェ!」
猛々しい声をあげ――その屍を踏み越えた者が、誠司の背を目掛けて蟹脚を伸ばす。
カン、と金属音がそれを弾く。伝う衝撃は、誠司に負荷を与えるものの、掴みかかるそれが滑れば、威力は半減以下だ。
たん、と清らかなピアノが空気を揺らす。曲につられるように、ソレイユの表情はどこか不敵な笑みを湛え。ダイナミックに腕を動かし演奏すれば、金の髪は一緒に踊る。
「そこは通して貰いますよ」
ソレイユが紡ぐ、雄大な旋律。英雄達の行進を表現するような演奏に従い、幻影はクラヴィアンに容赦なく躍り掛かる。
カトラス振り下ろす者がいれば、マスケット銃が轟く。その行進もまた曲の一部と言わんばかりに、猛々しく。
幻想に滅多打ちにされた最後のクラヴィアンは「親、分……」と何かを訴えながら、息絶えた。
●遅参の海賊
「……よし」
誠司が最後のクラヴィアンが確かに動かなくなったことを確認すると、その視線を受けたレイラは軽い首肯を返し、涼しげな眼差しで周囲を眺める。海賊達が騒ぎ出す気配はない――あっては困るのだが。
「急ぎましょう」」
ソレイユが促す儘に、頷いたシルが前を向く。
「このまま走り抜けるっ!」
「はん、させるかよ」
――出た、シルの内心で呟いた。
そこには、ポルト内外の境界線を示すように、オクトキャプテンが立ち塞がっている――。
「おいおい、俺の手下どもが全滅じゃねえか。どうしてくれんだ」
その表情に悲しみや憂いはなく、こめかみをひくつかせ、怒りを顕わに仁王立ちしている。
なれど、それに怯むディアボロスではない。
「悪いが、特別報酬とやらにはなってやれないな」
エトヴァが挑発するように、そう告げて……最後の戦いが、始まる。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【温熱適応】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
【プラチナチケット】がLV2になった!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
最後はお前だけだ。突破させてもらうぞ
この腕と脚を持っていけるなら持って行ってみろ!
タコって案外毒を持っていたり背景と同化したりして厄介なんだよなぁ
【行動】
仲間と声を掛け合い積極的に連携していく
効果2は全て使用
まずは盾のフェイク・プリドゥエンを背中に背負って不意打ちを防ぐ
それから両腕を機械の刃に改造して迎え撃つ
出来れば背中は壁に向けておきたい
そうすれば攻撃する方向をある程度は絞れる
敵からの攻撃は神速反応を使い機械刃で受け止め切り裂こう
両腕が刃になっているなら敵も迂闊には触れないだろうし
触ろう物ならすぐに反応して切り裂いてやる
タコは日本で初めて食べたのは美味しかったが
こいつのは願い下げだな
必要なら臨機応変に対処する
シル・ウィンディア
どうしてくれるって言われても…。
襲われたら抵抗しちゃうじゃない?なので、正当防衛?後、特別報酬のネタにもなりたくないしね。
ま、おしゃべりはここまで。
それじゃやりましょうかっ!
たこさん、色々手段もってそうだけど先手必勝っ!
高速詠唱で隙を減らしてからの七芒星精霊収束砲!
虹の光をプレゼントですっ!
撃ったら敵の周りを円を描くようにして動き回るよ。
少しでも撹乱になればいいんだけどね。
以降は撃っては移動しての繰り返しで動いていくよ。
敵の攻撃に対しては、マントで顔をカバーするようにしてタコ墨を防御。
ダメージは仕方ないけど、顔は汚れたくないっ!!
べたつきそうだしね。
敵がわたしの方に注意を向けているのなら、パラドクス通信で呼びかけを。
わたしの注意を向けているなら、そのほかの人への警戒は少しは下がっていると思うしね。
逆なら、押せ押せでパラドクス砲撃を撃っていくよ。
ふぅ、厄介なたこさんだったね。
さて、情報は手に入れたし、ここから早く脱出しようね。
しかし、海産物な敵が多いなぁ、この世界…。
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
まあ、当然出てきますよね
ここでの遣り取りに時間をかけるつもりはありません
揺動にかかり、持ち場を離れたのが運の尽きと思ってください
宙に展開した鍵盤で「凱歌」を演奏
場上槍を構えた白馬の騎士を喚び、正面から真っ直ぐ海賊へと駆け抜けよと指揮します
槍には命中アップとダメージアップの加護を乗せ
脱出路を拓くべく、正面からの刺突攻撃を行い
攻撃後は即反転し次撃へと備えます
先程のカニに続き、出来るだけ速攻で突破したい相手ですから
冷静に此方の攻撃を見極めさせる暇を与えず、仲間と攻撃タイミングを合わせ一気呵成に攻めます
包囲するように布陣して、出来るだけ海賊を挟んだ対角線上の仲間の攻撃と同時に動き
海賊の意識を散らして、此方への攻撃の一点集中を避け戦局が有利に傾くよう仕向けたい所です
反撃のインクには魔力障壁にガードアップを纏わせて凌ぎ、アヴォイドの幸運を祈りましょう
それにしても、そのタコ足で器用に陸上を動けるものですね
今は平和に見えるポルトも、いずれ略奪に晒されるのでしょう
その前に、戻ってこなくては
レイラ・イグラーナ
エルドラードでの戦いも本格的に開始されました。
今回の偵察の結果を元に、ポルトガルの攻略も始まっていくことでしょう。
その時のため、指揮官は可能な限り排除しておくに越したことはございません。
銀の針を手に【手製奉仕・千】。オクトキャプテンへ多数の銀の針を投擲し、貫きます。
これまでの偵察や戦いで積み上げた【ダメージアップ】にさらに【命中アップ】も加え、攻撃に用いる残留効果を高めて可能な限り速やかな撃破を狙います。
敵の銃による連射は避けるのではなく、正面から銀の針の投擲で撃ち合いを行い、敵を狙った針の投擲で銃弾を撃ち落とし、相殺するようにして被弾を抑えましょう。
略奪のために人を生かし、泳がしておいて、育ってきたところで刈り取る。
そのようなやり方、正当な統治とは認められません。
この戦いはこの町を解放する、そのための最初の一歩。
どうぞお覚悟を。
●キャプテンとディアボロス
立ち塞がり、睨めつけてきたオクトキャプテンへ――。
「まあ、当然出てきますよね」
ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)も肩を竦め、薄く笑って、溜息を吐いた。
「どうしてくれるって言われても……」
シル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)は、きょとんとして、首を傾ぐ。
「襲われたら抵抗しちゃうじゃない?なので、正当防衛? 後、特別報酬のネタにもなりたくないしね」
当然、とばかりに言う――。
ああ、荒田・誠司(雑草・g00115)は構えながら、海賊へと言い放つ。
「最後はお前だけだ。突破させてもらうぞ」
「ちっ、そうはいかねえ」
状況については、まだ僅かに混乱しているが、なすべきことは理解している――オクトキャプテンはフリントロック式拳銃を手に、距離を取り直す。
判断が速い――思い、ソレイユも表情を改め、宙に指を置けば、ヴァーチャルの鍵盤がぽうっと光り出す。
「ここでの遣り取りに時間をかけるつもりはありません――陽動にかかり、持ち場を離れたのが運の尽きと思ってください」
告げるや、鍵盤に指を滑らせる――どんと空間を支配する豊かな音質、とりどりの音階で、勝利の凱歌を知らせる早馬を表現する。
直後、白馬の騎士が駆けつける。
槍構え突撃してくる幻想を、オクトキャプテンは舌打ちとともに受け止める。
拳銃を振り下ろし、蛸めいた重心移動で斜めに跳躍し、深手を避ける。
同時に、ソレイユの頭上へ放り投げた小壺を撃ち抜くことで、呪われしタコ墨を振りまく。
彼は魔力障壁で衝突を和らげようとしたが、それを突き抜けた飛沫は、灼けるような痛みをもたらす。
蛸墨の攻撃性を示したような、煙幕では終わらぬそれを見やり――、
(「ダメージは仕方ないけど、顔は汚れたくないっ!!」)
シルは、むむっ、と表情を引き締め、白銀の長杖を強く握り直す。
「それじゃやりましょうかっ! ――六芒星に集いし世界を司る6人の精霊達よ、過去と未来を繋ぎし時よ…。七芒星に集いて虹の輝きとなり、すべてを撃ち抜きし光となれっ!!」
詠唱するや、巨大なエネルギー砲が戦場を一閃する。普段活性化する六属性に、時の力も乗せた七色の光だ。
「虹の光をプレゼントですっ!」
オクトキャプテンの姿が光に呑まれる。
「ぐっ、この!」
身を焼き焦がす力の奔流の中、海賊はデタラメに壺を投げつける。光の中に放物線を描く異物……それはシルの肩口で破裂した。
「っ!」
腕で貌を庇いながら。青髪を靡かせ、彼女は墨から逃れる――汚したくない乙女心と同時……それが、焼け付くような毒であることは、既に解っている。
宙を軽やかに舞うような跳躍で離れると、敵を挟んだ対角線上に、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)がいた。
オクトキャプテンの正面に立ち。凜と、睨めつける。
「略奪のために人を生かし、泳がしておいて、育ってきたところで刈り取る。そのようなやり方、正当な統治とは認められません」
告げ、敵の喉元へと剣の鋒を突きつけるように、ゆっくり――優雅に腕を伸ばすと、指で挟んだ幾つもの銀の針を輝かせた。
「この戦いはこの町を解放する、そのための最初の一歩――どうぞお覚悟を」
刹那、互いを無数の銀線が結ぶ。それは逃れられぬよう性格に真っ直ぐに飛ぶ、銀針……。
レイラの長い銀髪がふわりと浮かび、背に触れるまでの間。
海賊は移動しながら、それすら計算にいれたように飛来する針を叩き落とした。それでも全身くまなく撃ち込まれた針に、顔をしかめる。
「いってェ! このアマ――」
オクトキャプテンが、撃鉄を幾度も弾き、拳銃を連射する――その銃弾は、肉食魚の如く、意思を持っているかのごとく、レイラに追い縋る。
迫る銃弾を前にしても表情一つ変えず、彼女は再び構えた銀針を投じて、相殺を図る。
激しい応酬を繰り広げるオクトキャプテンに向かい――誠司は冷静な観察を向ける。ディアボロス側の作戦として、包囲するような形で次々と仕掛けているが、反応で遅れることがないように見える。
(「腐っても海賊の親分……先程のアビスローバーよりはやるようだな」)
舌を巻くのは、結局、蛸足での移動だ。
筋力の塊であるそれは、予想以上の脚力、膂力を誇る。
(「タコって案外毒を持っていたり背景と同化したりして厄介なんだよなぁ」)
しみじみ、蛸の生態を思い出し――、
「タコは日本で初めて食べたのは美味しかったが、こいつのは願い下げだな」
嘆息一つ。
誠司は力強く地を蹴って、一気に距離を詰める。
「自己改造完了、斬り伏せる!」
彼が振り上げた機械の両腕は、片刃の剣に変じ、海賊の両肩を強か殴るイメージで、真っ直ぐ下ろす。
「はぁ!? 腕が剣だぁ? テメエ、デタラメだろう!」
「そちらにいわれたくないな」
ぎょっとした様子で、ぶんと蛸足を振り回したオクトキャプテンへ、誠司は冷静に告げる――。
目の前に、血がぱっと散る。誠司の腕を埋めたのは仕掛けた上半身ではなく、ぬるりと滑る蛸足だった。
「この腕と脚を持っていけるなら持って行ってみろ!」
「言ったな!」
不敵に、海賊は笑う――巻き付くように力任せに捻じ伏せるは、変幻自在の八本脚。どれも強く――刃物の腕を、臆すことなく、誠司の首を狙ってくる。
ぐ、と引き千切るような圧力を感じても、彼は動じず――ただ、両腕の刃で首を庇いながら、脚の中から脱出する。
そんな敵の動きに、ソレイユは青の瞳を眇めた。
「そのタコ足で器用に陸上を動けるものだと思いましたが、なるほど――ですが」
呟き、やや強めに、鍵盤を押さえる。
こちら側の攻撃姿勢は変わらぬ――仲間と共に、囲い込み、間隙を置かず仕掛け続けるまで。
「高らかに謳え、その歌を」
曲に合わせ感情を昂ぶらせながら、奏でる勝利の凱歌。細やかなテンポを巧みに操れば。再び召喚された白馬の騎士は、うんと加速し、馬上槍を構えオクトキャプテンへと突撃する。
「一回見たもんを、そうそう喰らうか!」
吹き飛ぶほどの衝撃を、それは脚を振り上げ迎え撃つ――果たして、それは身体の一部であり武器でもある脚をクッションに、受け止めきったように見えたが。
「痛ってェ!」
全身を駆け抜ける痛みに、大いに顔をしかめる。
「呆れた丈夫さですね」
しみじみ零したソレイユだが、表情は真剣そのもので。
アヴァタール級であれば油断ならぬと、再確認する呟きである。
それに気を良くしたのかどうか。
「ケッ、数だけで口ほどにもねぇ――特別報酬はオレのもんだな」
わざと舌を出し嘲り、オクトキャプテンはディアボロス達を煽ると、目を殺意にぎらつかせた。
「ってなわけで、ブッ殺してやる……!」
吼えるや、真っ直ぐに、拳銃を突き出す。
銃口を向けられたレイラは――それを無表情で受け流す。
迫り来る銃弾に、肩を抉られようとも、何事もなかったかのように――痛みなど感じぬように。
ただ汚れを払うかの如く、彼女は腕を薙ぐ。
「縮む獣皮、深海の礫。戦ぐ花房が羽虫に猛る」
奔る無数の銀針が、今度こそ、海賊の全身を穿つ。
「がッ……!」
調子に乗った代償であろうか。深々と撃ち抜かれたオクトキャプテンは血を吐き、屈み込む。
機を逃さず、片腕を前に、誠司が駆ける。蛸足の動きを牽制しながら、鋭い刺突――重ね、もう片腕を薙ぐことで、横に引き裂く。
ぱっと、朱が散る――苦痛と屈辱に、海賊が顔を歪め、傷だらけの脚で、誠司をぐっと抱え込もうとする。
オクトキャプテンも疲弊しているが、ディアボロス達も連戦で、若干疲労している――図らずも蛸足に叩かれれば、破裂するような衝撃がある。
もっとも、そのまま完全に搦め捕られ、引き千切られるような状況にはならぬよう、素早く敵との間合いを取り、それ以上のダメージを回避する。
直後、目の眩むようなシルの魔力砲撃が命中し、海賊は吹き飛んでいく。
なれど、油断なく敵の姿を見据え、彼女は馳せる。反撃の狙いを定めにくくするために。
進路の低い地点で、小壺が炸裂する――破片、タコ墨どちらも振り払う。
「いっけー!」
シルが叫ぶのは、仲間達に報せるため。
背中がおろそかだと聞いたレイラが、限りない銀の針を投擲し、それが応酬するために身を返すことで、無防備になった側面に、ソレイユの旋律が騎士を呼ぶ。
怒濤の波状攻撃に、オクトキャプテンは、少しずつ身を削られ――地には真っ赤な血が染みこんでいた。
「くそ、くそ……どうしてこうなった!」
自慢の一張羅がぼろぼろになって。帽子も何処かに落とした――悔しさに歯がみしながら、海賊は銃口をディアボロスへと突きつける。
最早、誰でも良い……道連れにしてやる、と血走った目で睨み。
「テメェだ!」
畳みかけるは今だ、とばかり、距離を詰める誠司の腕が、一文字に薙ぐ。
蛸足をこれ以上無く広げて、頭上から張り倒さんと跳び上がったオクトキャプテンは――違和感に目を瞠る。
ほぼ破壊されるはずがない、自分の脚が斬り飛ばされた……それが意味することは。
「オレの、オレの、特別報酬が……ッ!」
譫言のように、愕然と吐き出すも……激しい痛みが全身を支配し、地面に崩れ落ちる。
それでもまだ命が尽きたわけではない。
振り絞るように身を起こせば、正面には、両手で握った杖を、差し向けるシルが立っていた。
「あなたが賭け事に負けちゃうのは……引き際を間違っちゃうからだと思うよ!」
今みたいに!
高らかに敵の敗因を叫んだシルが、力を解放する。
――そして、渾身の七芒星精霊収束砲は、オクトキャプテンを、鮮やかに……灰と消し飛ばした。
●
「これで全部片付いたな」
やれやれと腕を回しつつ、誠司は軽く服の埃を払う。すっかりその機械腕は、元の腕に戻っている。
「ふぅ、厄介なたこさんだったね」
シルは胸を撫で下ろす――髪や顔が汚れていないか確かめるのは、やはり乙女心である。
簡単に確かめ、大丈夫だと確信すると、彼女はにこっと皆に笑いかける。
「さて、情報は手に入れたし、ここから早く脱出しようね」
「ああ」
ゴーグルも外して、誠司は首肯する。
そして、ディアボロス達は、何となく――ポルトの街並みを軽く振り返る。
騒ぎの気配はない。アビスローバーも、民衆も、今は何も知らず。街はいびつなれど平穏な日常を継続している。
「今は平和に見えるポルトも、いずれ略奪に晒されるのでしょう――その前に、戻ってこなくては」
目を伏せ、ソレイユは囁き。
「ええ――アビスローバーからポルトガルを取り戻さねば」
静かに。しかし力に充ちた一言とともに、レイラは前を向く。
次なる戦いを見つめ、ディアボロス達は急ぎ、帰投するのであった――。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【神速反応】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【防空体制】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV6になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV2になった!