リプレイ
青天井・イカス
アー…見ルに堪エねェぜ、こリャ
だガ、“死ンじゃイねェ”“元に戻ル可能性が残ッテる”ッてナァ不幸中の幸イだナ
冥海機だト死ンで英霊機(スタート)だカラな
ま、クロノヴェーダ化に良シ悪シなんザねェ、目クソ鼻クソだガ
本来なラ襲撃者ノ掃討とクロノヴェーダ化の解除、両面で進めテぇトコなンだロがバランス良くっツーのモ難シイな
ナら、リミットが分かラねェ“こっち”を優先スるゼ
【身ノ程知ラズ】は牽制
可能な限リ直接攻撃はシたクねェ
スるとシてモ手足等、生命活動に影響ガねぇ部位デ
【フライトドローン】には俺の声ヲ拡声スるよウ指示を出ス
ナるベク広範に
一人でモ戻っテ来ラれる奴がイるよウに
オイ!確りシロ!!
手前等の島、手前等の手デ潰す心算カ!?
此の小セぇ島で、見渡セば見知ったツラしカいねェ場所で、不便がアってモ暮らシて来たンだロウがヨ!!
家ヤら暮らシの復興は、何とカなル!
俺等が何とカする!!だガ、其処に手前等ガイなけリャ復興になンねェ!!
戻れ!戻っテ逃げロ!!
そンな水底じゃァなク、手前ガ生マれテ生キて来た方へ!!
白尾・真狐
ええー……もうホラーじゃんこれ!!
ゾンビ映画とかとかだとこうなったらもうだめだけど、
この人たちはまだ戻れるみたいでよかったー!
うわ、なんか泡みたいなの出してきた!?触りたくないなーあれ絶対触ったらゾンビなったりするやつじゃん!
よーし、ここは必殺!真狐ちゃんビーム!ビームで泡を狙って薙ぎ払っちゃうよ!
ほら皆、こんなことはもうやめようよー!
この僕のすーぱーなかわいさに免じて、元に戻ってよー!
それに皆、島にお友達や家族だっているんでしょー!
襲っちゃいたくないよねぇ、だから皆戻っておいでー!
君達を狙った悪い奴は、僕達がやっつけてあげるからさー!
さあ、僕らの胸に飛び込んでおいでー!かもん!
あ、でも元の姿に戻ってからにしてね!クロノヴェーダのままはだめよ!
冥海機ヤ・ウマト、フィジー諸島。
島の片隅に滑り込んだパラドクストレインを一歩踏み出すと、そこには地獄のような景色が広がっていた。
「放してくれ! 娘が奴等に……!」「よせ、逃げろ! 手遅れだ!」
『シャアァッ!』
復讐者が駆け付けた浜辺で、島民たちが逃げ惑う。
それを襲うのはアークデーモン『深きものども』。そして、彼らの手でクロノヴェーダへ変えられた島民たちであった。
殺された者は異形と化し、異形に殺された者もまた異形と化し。このままでは、すべての島民がクロノヴェーダと化すのにそう時間はかからないだろう――。
「アー……見ルに堪エねェぜ、こリャ」
眼前の光景に絶句して、青天井・イカス(このうえなく・イカス・g02133)は思わず顔を歪めた。
つい先程まで平和であったろう浜辺は、今やエルドラードの侵略によってクロノヴェーダの巣に変じつつある。鱗の生えた足を引き摺り、異形化した島民が復讐者の方へと向かって来る。覚醒したばかりの人々を見つめ、イカスは希望とも皮肉とも言えぬ色を瞳に浮かべ、呟いた。
「だガ、“死ンじゃイねェ”“元に戻ル可能性が残ッテる”ッてナァ不幸中の幸イだナ」
「うんうん。ゾンビ映画とかとかだと、こうなったらもうだめだけど……まだ戻れるみたいでよかったー!」
白尾・真狐(まったり狐娘・g05562)は微かな希望を帯びた声で、異形化した島民たちを見遣る。
最初に彼らを元に戻し、然る後にアークデーモンとアビスローバーを始末する――それが復讐者たちの行動方針だ。浜の奥に視線を移せば、アークデーモンの群れへ向かう復讐者の姿も見えた。これならば横槍を入れられる心配もない。島民たちへの対応に集中出来るだろう。
「初めようか。時間もないし」
「ダな。リミットが分かラねェ“こっち”が最優先ダ」
かくして、二人の復讐者は動き出す。
異形と化した島民たちを、此方側へ引き戻す為に。
飛翔体の群れが、戦場に次々と展開していく。
それはイカスが発動したフライトドローンだ。一斉に注がれる異形たちの視線。そこへ拡声装置を搭載したドローンの一機を介して、イカスは大音声を響き渡らせた。
「オイ! 確りシロ!! 手前等の島、手前等の手デ潰す心算カ!?」
『ア……?』
イカスの呼びかけに、異形たちの足が僅かに鈍った。
同時、濁った瞳がほんの刹那、理性の光を取り戻す。
そこに確かな手応えを感じ取って、イカスは更に言葉を投げかけていった。
「此の小セぇ島で、見渡セば見知ったツラしカいねェ場所で、不便がアってモ暮らシて来たンだロウがヨ!!」
『アァ……』『……あ……』
「皆、島にお友達や家族だっているんでしょー! 戻っておいでー!」
ドローンを駆使した大音声という注目を集めやすい行動も手伝って、異形たちの視線はたちまちイカスに注がれた。
それを好機とばかり真狐も続けて呼びかける。異形たちからは、時折パラドクスの攻撃も飛んで来るが、攻撃で生命を奪うことのないよう注意を払うことも忘れない。
二人の行動が奏功し、程なくして異形の中から一人、二人――その場に力無く膝をつく者が出始めた。
其の様子に真狐は微かな安堵を覚えつつ、異形の島民たちを一箇所へと誘い込んでいく。
「効いてるみたい。……けど、戻れそうな人はまだ少しだね」
「あア、決めンのは、まダ後だナ」
中途半端なタイミングで戻してしまえば、再びクロノヴェーダに襲われるリスクを負いかねない。
時折浴びせられる攻撃に牽制を返しながら、二人は島民たちへの呼びかけを尚も続けるのだった。
それからも、イカスと真狐の説得は懸命に続けられた。
イカスの呼びかけに僅かずつ応える者が出始める中、真狐は未だ異形のままである島民の注意を引きつけるように、彼らの周りを駆け回る。
「ほら皆、こんなことはもうやめようよー! この僕のすーぱーなかわいさに免じて、元に戻ってよー!」
『あ……アア……』
「うわ、なんか泡みたいなの出してきた!?」
触ったら絶対ゾンビになるやつだ――そんなことを考えられる位には、真狐には余裕があった。異形たちは覚醒したばかりとあって、元より脅威となるほどの戦闘力を持っていない為だ。
誤って殺さないよう注意しつつ、ビームを乱射する真狐。そこへ、イカスのドローンが拡声器で合図を送って来る。
「頃合いダ。変わッちまッタ姿、元に戻しテやロウぜ!」
真狐はサムズアップで応えると、大きく息を吸い込んだ。
直後、異形の呻き声漂う浜辺に、凛とした声が響き渡る。
「皆、よく聞いて。君達を狙った悪い奴は、僕達がやっつけてあげるよ」
『ア……?』
「家ヤら暮らシの復興は、俺等が何とカする!! だガ、其処に手前等ガイなけリャ意味ねェだロ!!」
そこへ加わるのはイカスの声だ。
懸命の呼びかけを続ける際も、異形の攻撃が止むことは無い。
だが、そんな彼らにイカスは直接の攻撃を極力抑え、なおも続ける。自分が敵ではないことを示しながら、人間としての生を再び歩み出すようにと願いを込めて。
「戻れ! 戻っテ逃げロ!! そンな水底じゃァなク、手前ガ生マれテ生キて来た方へ!!」
イカスの声が響くと同時、浜辺の異形たちが次々に動きを止めていく。
彼らの身体が、もはや人を傷つけることは無い。二人の復讐者を見つめる目は、僅かに涙に濡れていた。クロノヴェーダはけして見せることの無い、それは彼らが『心』を完全に取り戻した瞬間であった。
『ア……う』『エ、ぇ……』
「もちろん。さあ、僕らの胸に飛び込んでおいで!」
「ちょイと我慢ダ。すグ終わル」
異形たちの口が、助けて、と動く。鱗に覆われた手が、救いを求めるように伸ばされる。
そんな彼らに、真狐とイカスは心強い頷きを返し、パラドクスを発動した。島民に巣食うクロノヴェーダを滅し、ふたたび人間へと戻す為に。
「いくよ! 必殺真狐ちゃんビーーーーーーム!!」
「落ちナ。コノ世界はオ前等の手に余ル」
真狐のビームと、イカスの熱い想いを込めた一撃。
二人の振るった力を浴びて、島民たちは次々とその場にへたり込み、呆然とした表情で自分の手足を見遣った。異形の証である鱗が残った者は、もう一人もいない。真狐とイカスはすぐさま彼らに駆け寄ると、その眼に人としての理性が再び戻っていることを確かめた。
「大丈夫? 怪我はない?」
「……え、あの、私は一体何を……?」
「悪ィが話は後でナ。今は浜かラ離れロ、早ク!」
老人と子供がいれば大人に担がせ、急ぎ避難を済ませると、イカスと真狐は浜辺に戦場の視線を戻す。
異形化した島民の救助は完了した。次は、島を襲った黄金海賊船エルドラードの勢力を撃破する番だ。
「さテ、奴等に遠慮はいらネェな」
「島の人たちが巻き込まれる心配もないし、さっさと片付けちゃおう!」
深海より現れたクロノヴェーダを撃破する為。災厄に見舞われた島を再建する為。
いまだ戦いの続く浜辺へ、二人の復讐者は急ぎ駆けて行くのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
【防空体制】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
秋風・稲穂
ふむ、エルドラードも厄介な事をしてるみたいだね
戦力を現地調達して侵攻……か
ま、確かに自分の所から大軍を率いて来るよりは、ヤ・ウマトの住民を使って増やして行くんだから効率的だね
ディヴィジョン同士の戦いだけど、そんな悪趣味な事介入しない訳にはいかないね
成り立ての奴は任せて、後腐れ無い敵を相手しようか
Burn the darkとL・デルフェスを抜刀
深きものどもへと攻撃を仕掛けよう
アークデーモンの配下か、実にシチュエーションにあったおあつらえ向きだ
だからと言って、好き勝手はさせない
雷波一閃を発動
雷を両剣に纏わせて……大きく【薙ぎ払い】!
雷を飛ばして奴等に攻撃を仕掛ける
纏めて感電させてあげようじゃない
攻撃後は剣を構えて防御体勢
突撃してきた敵を【斬撃】で迎え撃ち、斬り付けて少しでも勢いを削いでダメージをコントロール
少しでも威力を殺せるように立ち回ろう
ディープワンズ
物語じゃないんだ、後味の悪い結末なんて必要ないよ
君達の目論見はご破算にさせて貰おう
アドリブ連携等歓迎
異形と化した島民たちの救出が完了した、ちょうどその頃。
浜辺に到着した秋風・稲穂(剣鬼・g05426)は、魚人型アークデーモンとの戦いに火花を散らしていた。
魚の頭部に青い肌、水かきのついた手足。『水底の悪夢』深きものどもと呼ばれるトループス級の群れである。
『シィィアァッ!!』
「悪いけど、先には進ませないよ」
敵意を露に威嚇を飛ばす魚人たち。そこへ稲穂は二刀流の構えで問答無用とばかり斬りかかる。
Burn the darkとL・デルフェス――彼女が振るう愛剣の冴えは、ここフィジーの戦場においても健在だ。雷の力を秘めた一閃を振るうたび魚人は直撃を浴びて、全身を黒焦げにして斃れ伏していく。
「もう遠慮する必要はない。君たちは、後腐れ無く斬り捨てさせて貰う!」
戦場から島民が避難を終えた今、一般人が巻き込まれる恐れはゼロだ。
一秒でも早く戦いを終わらせるべく、刃を振るい続ける稲穂。
怒り狂って魚雷さながらに突進して来る魚人たちの反撃にも、その剣筋はまるで衰えることを知らなかった。
魚人を相手に刃を振るいながら、稲穂はふと彼らの後方に視線を向ける。
(「戦力を現地調達して侵攻……か。ふむ、エルドラードも厄介なことをしてるみたいだね」)
見遣った先、深きものどもの後方で指揮を執るのは、アークデーモンとは異なる種族のクロノヴェーダであった。
アビスローバー『ツインカトラスマーマン』。
二刀のカトラスを得物とする、黄金海賊船エルドラードのアヴァタール級。その効率的な兵力補充の方法は、稲穂も思わず舌を巻かざるを得ないものだ。
「ヤ・ウマトの住民を使って増やす……確かに、自分の所から大軍を率いて来るよりは楽だろうね」
もっとも、その目論見も、復讐者が駆け付けた今となっては水泡に帰した。たとえディヴィジョン同士の戦いであっても、こうも悪趣味なものを傍観することは出来ない。
「好き勝手はさせない。クロノヴェーダは残らず滅ぼす!」
滾る復讐心を刃に込めて、稲穂は苛烈に剣を振るい続けた。
雷鳴が轟く。その度、直撃を受けた魚人が消し炭と化して斃れ伏す。
稲穂の振るう二刀は、今や『雷波一閃』のパラドクスによって夥しい雷の力を纏っているのだ。
海を棲家とする魚人にとって、その一撃は浴びれば感電からの絶命を免れぬ、いわば死神の鎌に等しい。
「力を込めて……薙ぎ払う!」
『ギャァァ!!』『ジャァァァッ!』
網膜を焼くような閃光と共に、剣が薙ぎ払われる。
同時、放出された一条の雷は大樹の如く枝を分かち、捉えた敵を残らず炭化させていく。
斬り刻み、薙ぎ払い、焼き焦がし――嵐の如き猛攻を続ける稲穂の前に、魚人の群れは既に半分も残っていない。二振りの剣から放たれる雷鳴が、稲穂の怒りを代弁するように、高らかに浜辺へ鳴り響く。
「後味の悪い結末なんて必要ないよ。君たちの目論見はご破算にさせて貰おう!」
この島に、クロノヴェーダに渡す命は一つもない。
稲穂の言葉を証明するように後続の復讐者が浜辺へ駆け付けたのは、正にその時であった――!
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
月鏡・サヨコ
……敵影確認
TOKYOエゼキエル戦争が存在した当時から記録されている種だけど、アビスローバーの陣営についたか
外観や能力からすると最適の取り合わせなのだろう
獰悪な性質を持つ者たちの合流は看過できない
これ以上の被害が出る前に殲滅する
浜辺を【泥濘の地】に変え敵の足を鈍らせる
そして敵が移動の感覚の変化に順応する前に、『零式弾・広域砲撃』を仕掛けよう
≪巡洋戦艦海戦装『黒姫』≫の砲撃により榴弾を放ち、敵群の只中で爆破
爆発の衝撃波と四散する砲弾の破片によって破壊を撒き散らす
断片の王を失った貴様たちの戦いに、もはや勝利はないはず
……潔く散れ、悪鬼ども
反撃の水は≪海戦装用増設防盾≫で受け止めたり
≪電気投擲鞘『斗號』≫から素早く抜刀した≪対艦軍刀『銀鉤』≫の薙ぎ払いで弾き飛ばすことで対処
体に触れてしまう水の量を極力少なくして、継戦能力を維持する
これで後は貴様だけだ、アビスローバー
海軍軍人が海賊の首に縄をかけに来てやった……神妙に頂戴しろ
篠村・蓮十郎
数は残り僅かだな。これより加勢する
人々を殺し合せ、挙句手勢にしようなどと悪辣な連中だ……見過ごせはせん
周囲の敵位置を観察
地を踏み抜き舞い上がる砂礫と瞬く残像を伴うダッシュを行い接近
重心移動を用いた進行方向の変化によるフェイントと合わせて撹乱する
不規則な軌道を以て狙いを絞らせぬよう敵群へ接近し駆け抜け様に[剣技・乱刃]を放つ
奴等の胴目掛け試製鉄刀を振り抜き、一刀の元に両断する
これ以上の狼藉は許さん、此処で全て斬り伏せる
単純な突撃ならば対処はそう難しくは無いだろう
先のフェイントによる歩法で突撃を誘導
その軌道上から逃れるように移動し被弾を抑える
背面へ皮鉄を配置して不意打ちへの備えとする
一般人の救援がいち早く完了したことで、戦闘は早くもクロノヴェーダの掃討に移りつつあった。
襲うべき人間を探し出そうと、なおも諦めず島の内地へ向かわんとする魚人型アークデーモンたち。
それを阻むように二人の復讐者が駆け付けたのは、正にその時だった。篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)と月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)である。
「敵影確認。魚人型アークデーモン、『水底の悪夢』深きものどもに間違いない」
迫り来る敵群を見澄まして、サヨコが言った。
魚の頭に人間の四肢という悪趣味な出で立ちは、識別もまた容易である。《七曜の戦》において滅亡したディヴィジョン、エゼキエル戦争出身の水棲型悪魔たち。魚の体を有する彼らにとって、海を縄張りとするアビスローバーに付いたのは、ある意味必然だったのかもしれない。
ディヴィジョンを追われてなお一般人を襲い続けるアークデーモンの振舞いに、サヨコの声音が嫌悪の色を帯びる。
「……獰猛なクロノヴェーダ種族の合流は看過できない」
奴等を放置すれば、行く先々で悲劇を撒き散らし続けることは間違いない。ここで確実に排除すべき相手だった。サヨコは巡洋戦艦海戦装『黒姫』を操作し、砲門を敵群が迫る方向へと向けていく。
「敵は残り少ない。これ以上の被害が出る前に殲滅する」
「ああ。人々を殺し合せ、挙句手勢にしようなどと悪辣な連中だ……見過ごせはせん」
戦場を把握をあらかた終えて、篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)が同意を示した。
砂浜には身を隠す場所も無く、敵の居所を把握することは容易だ。先行した稲穂の攻撃によって、魚人たちが頭数を大きく減じている今、島の内地へ潜り込む前に殲滅しておきたかった。
「いつでも行ける。始めて構わんな?」
「残留効果の発動も完了した。……問題ない」
簡潔なやり取りの後、戦闘は開始された。
地を踏みぬいて先陣を切った蓮十郎が、砂礫を舞い上げて疾駆していく。
エルドラードの走狗と化した魚人を殲滅し、クロノヴェーダたちの目論見を挫くために。
蓮十郎を先鋒に、アークデーモンへの攻撃は開始された。
対する魚人たちは、常人離れした脚力でダッシュしてくる蓮十郎を標的に定めたらしい。自身を魚雷に見立て、迎撃態勢を取り始める。
腰を落とし、地面を踏み込もうとした次の刹那――体重を乗せた魚人たちの足が、ふいにズブリとめり込み始めた。
サヨコが発動した泥濘の地による妨害である。
「……捕まえた」
次の瞬間、巡洋戦艦海戦装『黒姫』の砲撃によって、榴弾が雨霰と降り注ぎ始めた。
零式弾を用いた広域砲撃がパラドクスによって爆破され、魚人たちを木っ端微塵に粉砕していく。
砲弾の爆炎が浜辺に咲き乱れる中、次々と降り注ぐ砲撃の中を蓮十郎は疾駆し、フェイントを混ぜながら魚人たちへの距離を詰めていった。
狙うは、サヨコめがけ反撃の極低温水を発射している魚人だ。その後方にも、更に三体。
「これ以上の狼藉は許さん、此処で全て斬り伏せる!」
『シャッ!?』
踏み込む足に力を込めて、跳んだ。
泥濘の地に動きを妨害された魚人たちなど、今の蓮十郎には木偶人形と同じ。
爆炎を突き破り、更に加速。速度を乗せた『剣技・乱刃』の一太刀が、地表を駆ける稲妻の如きジグザグの軌跡を描いて、目にも留まらぬ速さで魚人の群れを駆け抜ける。
「紫電の如く……!」
速度、体重、遠心力、パラドクス――その全てを極限まで込めた試製鉄刀の前には、魚人の太い胴体など柔い豆腐とさして変わらない。群れを駆け抜けた後には、一刀両断された魚人の骸が四つ。疾駆の速度をなおも緩めず、蓮十郎は余裕を残したまま。今や数を減らした魚人による魚雷めいた突撃を、余裕を持って捌いていった。
浜辺に砲撃が轟けば、その都度に魚人が砕け散る。
全方位に撒き散らされる榴弾の破片は、元よりトループス級の大群を一掃するのに適した攻撃だ。
為す術なく斃れていく魚人の中で、健気にもサヨコを狙おうとする個体がいれば、次の瞬間には蓮十郎が振るう試製鉄刀の乱刃に両断され、骸となって砂浜に転がっていた。
「残りは後僅かだな。このまま一掃するぞ!」
「了解。……纏めて、焼き払う」
サヨコは黒姫に榴弾を装填、砲口を一箇所に向ける。
その先では、またも標的を両断した蓮十郎めがけ、お返しとばかり突撃を繰り出す魚人の群れが見えた。
恐らくあの魚人たちの目には、仲間の仇である蓮十郎しか映っていないのだろう。自分たちがサヨコの砲撃範囲へと巧みに誘導されていることにも、気づいては居まい。
愚かなことだ、とサヨコは思う。
「断片の王を失った貴様たちの戦いに、もはや勝利はないはず……潔く散れ、悪鬼ども」
極低温水の被弾が軽微であったことも幸いし、五体五指の感覚は鮮明だ。
濡れた前髪をかき分け、視界を確保。次の瞬間、誘導を完了した蓮十郎が合図を送る。
――今だ。
同時、海戦装の砲門から零式弾が発射される。
命中アップに導かれた榴弾は放物線を描いて敵群へと吸い込まれ、最高のポイントで炸裂。
僅かに残った魚人を、パラドクスを帯びた破片で一体残さず肉片へと変えていった。そうして砲撃の爆炎が消え去った後、サヨコは浜辺を見回し、告げた。
「……アークデーモンの全滅を確認。これで後は貴様だけだ、アビスローバー」
かくしてトループス級の撃破に成功すれば、残されたのは彼らの指揮官のみである。
対艦軍刀『銀鉤』の切先をツインカトラスマーマンへ突きつけて、サヨコは厳然と告げた。
「海軍軍人が海賊の首に縄をかけに来てやった……神妙に頂戴しろ」
『成程、多少は腕が立つって訳か』
海賊と呼ばれたアビスローバーは大きく裂けた口で笑うと、カトラスの切先を突きつけ返して言う。
『首に縄? やってみな。それまでお前たちの首と胴が繋がってたらなぁ!!』
浜辺を覆っていく濁った殺気。
地上を浮遊するように泳ぎながら、手下を殺された怒りにツインカトラスマーマンが吼える。
それが黄金海賊船エルドラードより訪れし敵との、決戦開始を告げる合図と為った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV2になった!
青天井・イカス
オッと、アッち(トループス級)にャ増援が来タらシイな
有難ェ
そンじャ俺は一足先に手前ェの相手買ッテ出よウかネ
っツー事で、アヴァタール級の前へ打ッて出ルゼ
よォ、鬼なラぬ冥海機のイぬ間に好きにシよウってェ腹だッタみたイだガ、世の中そウ上手クは回らネェよウだゼ
陸じャ呼吸シ辛そウな形シやガッて、のこのこ地上に攻メてンじャネぇ
サッさと楽にシてヤるヨ
来な
敵のカトラスの乱舞、ドウせ避けル手はネェんダ
向こウガ手数でッてンなラ、こっチは一手で奴サンの勢イ丸ごト纏めて熨斗付けテお返シシてやラァ
【スコルピオンスティング】発動
敵目掛ケて全力の一撃ヲ叩き込ム
俺ァ刻遡で痛覚失くシちゃイるガ、手前の攻撃の重サは分カるゼ…だガネ、俺ァ究極、手前を打チのめスのト、其の後ノ復興に使エる手足一本が残ッてリャ問題ガねェのヨ
死体の手足ジャ宝にャなラねェカイ?
デも、盗っタかラにャお代はキッちリ払って貰ウゼ
勿論、手前の命デな
復讐者の活躍によって一般人は救助され、アークデーモンの殲滅も完了した。
残るはツインカトラスマーマンただ一体。このアビスローバーを撃破すれば、島はひとまず平穏を取り戻すだろう。
敵に猶予など与えないとばかり、青天井・イカス(このうえなく・イカス・g02133)はマーマンを睨みつけながら、挑発の言葉を投げつけた。
「よォ、鬼なラぬ冥海機のイぬ間に好きにシよウってェ腹だッタみたイだナ?」
『ふん。こうも手荒な歓迎を受けるとは思わなかったがな』
ぎょろりと見開いた眼でイカスを睨みながら、マーマンが太々しい笑みを洩らす。
島民のクロノヴェーダ化に失敗し、配下の魚人も残らず討たれた今、彼の目論見は潰えたと言って良い。それで尚、退くという選択肢は彼には全く無いようだ。ここで逃げては海賊の名折れとばかり、得物のカトラスを構え、じりじりと攻撃の機を伺っている。
そんな相手に、イカスは更なる挑発を投げた。
「揃いモ揃っテ、陸じャ呼吸シ辛そウな形シやガッて。のこのこ地上に攻メてンじャネぇ」
幾ら来ようが、クロノヴェーダの思い通りにはさせないと、無言のうちに告げる。
こんな事件は二度と起こさせてはならない。イカスは斬鉄剣『火天』を抜き放ち、決戦の始まりを宣言した。
「サッさと楽にシてヤるヨ。来な」
開始と同時、浜辺の景色がぐにゃりと歪む。
それは復讐者とアビスローバー、両者のパラドクスが時空へ干渉を始めた証だ。
世界の理を書き換えて行う逆説連鎖戦では、時として時間の流れそのものが変わることがある。代表的なものでは、攻撃に先んじて放たれる反撃がそれだ。
そして、イカスの眼前では、まさにその現象が起ころうとしていた。
『泣き叫べやぁッ!!』
パラドクスで転移したマーマンが、カトラスの乱舞をイカスに見舞う。
一撃の威力よりも手数を重視した猛攻だ。着実にダメージを蓄積させ、じわじわといたぶった末にとどめを刺す気だろう。果たして乱舞を浴びたイカスは、みるみる全身に傷を刻まれ始めた。
精神を苛む、焼けるような感覚。だが、イカスは意に介さず、どころか笑みさえ浮かべてみせる。
「……手前ガ手数でッてンなラ、こっチは一手ダ」
そう言って、ますます不敵にイカスは笑う。
避ける手が無いなら暴れさせればいい。
肉も皮も、好きなだけ斬らせればいい。
此方が放つのはただ一手、全力で叩き込む一撃さえあればいい。
かくして――その瞬間は訪れる。
「お返シシてやラァ。ソの勢イ、丸ごト纏めて熨斗付けテな!!」
『……っ!?』
火天の刀身が妖しい輝きを帯びた。
乱舞を続けるマーマンへ叩き込むのはスコルピオンスティングの一撃だ。
衝撃。捨て身の全力攻撃に斬られ、傷口に猛毒を注ぎ込まれ。宙を浮くマーマンの体が衝撃で地に転げ落ちる。
『ぐっ、が……!』
「俺ァ刻遡で痛覚失くシちゃイるガ、手前の攻撃の重サは分カるゼ。だガネ……」
すぐさま立ち上がりカトラスを構え治すマーマン。
そんな敵を前に、足元の砂を流血で染めながらイカスは言う。
「俺ァ究極、手足一本が残ッてリャ問題ガねェのヨ。手前を打チのめスのト、其の後ノ復興に使エる分だケな」
死体の手足では宝にならないか――そんなことを、冗談めいて言う。
痛いだの死にたくないだの、そんな人間臭い思いは自分には贅沢過ぎるのだ。眼前の敵を殺す為ならば、幾ら傷つこうとも構わない。それが、イカスの覚悟なのだった。
「盗っタかラにャお代はキッちリ払って貰ウゼ。――勿論、手前の命デな!」
『ハッ。奪ったからには俺の物、そいつが俺等の流儀よ!』
斬鉄剣とカトラスが、激しさを増して斬り結ぶ。
決着を見ぬ決戦の舞台、そこに今、新たな復讐者が加勢に駆けつけようとしていた。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
白尾・真狐
あれー、イカス君ったら先に行っちゃった?
まあでもー、トループス級は皆何とかなったみたいだしー
あとは、アヴァタール級の子だけだねぇ
よーし、まだまだ元気みたいだけど、ここは僕が相手をしてあげよー
その内他の人が応援に来てくれるでしょ!
【フォックスシール・ナインテイル】でカトラスを振り回してる手を含めて
相手の動きを止めて、その隙に近接戦闘用ブレードでグサーっとしちゃうよ!
反撃いくらかは喰らっちゃうかもしれないけどー、連撃ってことは
一撃はそんな鋭くないとみた!
情報収集は得意じゃないしぃ、後のことは他の皆に任せて
ここはあのアヴァタール級の子に、島の人たちの分のお返しをしないとね!
連携とかアドリブも歓迎だよー
秋風・稲穂
おや、奇しくも同じく二刀流……似た得物を使うのなら尚更負けるわけには行かないね
なら純粋に、技比べといこうか
もちろん、勝ちを譲る気は無いけどね
Burn the darkとL・デルフェスを構えて【ダッシュ】
距離を一気に詰めて、斬り合おう
そっちが手数でくるならば、こっちは一撃の威力を高める!
天雷覇断、発動
両剣に雷の刃を付与
更に2剣を束ね重ねて一撃の威力を上げ、雷刃の一閃で敵を断つ!
狙うはカトラスの【両断】
上段からの一撃で一気に攻めて攻撃
相手の得物に正面から斬り勝つ!
攻撃後は相手のカトラスの動きに集中
剣を構えて防御体制、未来予測で剣の軌跡を見て合わせてこちらも【斬撃】を放つ
連続攻撃全てを受けてあげるつもりは無いよ
奴は手数で来るんだ、斬撃に当たる未来は変えられなくとも幾らか斬り結べればダメージコントロールは出来る
急所に当たりそうなカトラスの攻撃へと集中して斬り結び、攻撃が止んだ後に即座に行動出来るよう備えよう
気になる事はあるけど、まずはここを切り抜ける
アドリブ連携等歓迎
手負いとなったツインカトラスマーマンが、得物の二刀を手に暴れ回る。
マーマンの振るうカトラスは、彼の意思の延長線上として、今や目につく全てを切り刻み続けていた。岩も、木も、魚人の骸も、乱舞に巻き込まれれば即座に微塵切りだ。
『うおおおおオオオオォォォォッ!!』
浜辺に響き渡る、マーマンの咆哮。
一般人が聞けばたちまち竦み上がるであろう雄叫びに、しかし二人の復讐者は怯むことなく向かって行く。得物は近接用の刀剣――すなわちマーマンと同種だ。
復讐者と海賊、剣戟による真っ向勝負。浜辺が舞台の大立ち回りが、いま始まろうとしていた――!
「あれー、イカス君ったら先に行っちゃった?」
先陣を切ったイカスに続いて戦場へ現れたのは、白尾・真狐(まったり狐娘・g05562)であった。
イカスと彼女が人々を救出した甲斐あって、悲鳴と絶叫は今やすっかり静まっている。
代わって浜辺を席巻するのは、マーマンが放つ濃密な殺気だ。今や完全に孤立し、手負いとなった敵を見遣り、真狐は元気いっぱいに叫ぶ。
「まだまだ元気みたいだけど、ここは僕たちが相手をしてあげよー!」
その手に構えるのは黒色の小太刀『近接戦闘用ブレード』。
カトラスに比べ小ぶりだが、切れ味では決して引けを取らない、真狐が愛用する武器の一つだった。
『ほう……新手か、面白ぇ!!』
望むところとばかりカトラスを構えるマーマン。その眼前、真狐に続き駆けつけたのは秋風・稲穂(剣鬼・g05426)だ。
Burn the darkとL・デルフェス、漆黒と白銀の二振りを武器とする二刀流の剣士。魚人との戦いから引き続きの参加となる彼女は、マーマンの得物を凝視しながら不敵に微笑む。
「おや、奇しくも同じく二刀流……似た得物を使うのなら尚更負けるわけには行かないね」
微笑みの底に挑戦的な光を湛えながら、稲穂は悠然と告げる。
彼女にとって、これは対クロノヴェーダの戦いであると同時に、剣士としての戦いでもあるのだ。
「純粋に、技比べといこうか。もちろん、勝ちを譲る気は無いけどね!」
高らかに宣戦を告げる稲穂。
アビスローバーとの第二戦は、かくして幕を開けるのだった。
稲穂と真狐、若き妖狐の復讐者たちがマーマンめがけて疾駆していく。
一方のマーマンは此れを真正面から迎え撃つ気らしい。二刀のカトラスで、取ったのは『双刃連魚撃』の構えだ。
『跡形も残さねぇぞ!!』
「手数で勝負と言うことか。ならば、こっちは……!」
ダッシュで速度を上げた稲穂が、彼我の距離を一気に詰めた。
『天雷覇断』発動。パラドクスで降り注ぐ雷によって二振りの剣が刃に雷を帯びる。そうして叩きつけるのは漆黒と白銀、束ね重ねた雷刃の一撃であった。
「天雷一閃、我は世界を断ち斬る者也」
『ぐおおおおっ!』
網膜を焼く光を放ち、上段から放つ斬撃はカトラスのガードを突き破り、マーマンを深々と切り裂く。
手数など無用、叩き込むは最高火力の一撃のみ――これが稲穂の剣だ。
即座に反撃で襲い来るカトラスの乱舞へ、稲穂も二振りの剣を手に剣戟の火花を散らす。敵の振るう刃の一撃一撃が重い。ガードアップで威力は多少殺せているものの、気を抜けば即座に膾切りだろう。敵も流石に大口を叩くだけのことはあると、猛攻に稲穂は舌を巻いた。
「けど……連続攻撃全てを受けてあげるつもりは無いよ」
「そうそう。僕がいる限り、好きにさせるつもりだって無いし?」
稲穂の言葉を継いで、真狐が飄々と笑いかける。
彼女はいま小太刀を手に、パラドクスで生成した狐の尻尾を駆使しながら攻撃を行っていた。小さいながらも精緻な剣閃はマーマンが稲穂を攻めるチャンスを巧みに妨害し、けして決定打を打たせない。
「随分と暴れてくれたみたいじゃない? 島の人たちの分、お返しをしないとね!」
反撃の刃にも、まるで戦意は衰えることなく。
真狐と稲穂は更なる攻撃を、マーマン目掛けて浴びせていった。
復讐者が振るう剣と小太刀、かたや海賊が振るうカトラス。
パラドクスを介した両者の斬撃が、いまだ互いに一歩も譲らず火花を散らし続ける。
(「何ともしぶとい相手だ。……個人的に気になる事はあるけど、まずはここを切り抜けないとね」)
激しい剣戟を演じながらも、稲穂の動きは未だ衰えを知らない。
フェイントを交え、真狐と歩調を合わせ、残留効果を駆使して……一つ一つは小さい要素でも、それらの積み重ねは時間が経つ程に効果を発揮していく。
『ちっ、しぶとい奴等だぜ……!』
真狐が発動するロストエナジーの効果は、マーマンが攻撃を行うたびに彼の生命力を奪った。
じわじわとダメージが蓄積され、否が応でも募る焦燥。その心を、復讐者たちは見逃さない。
いち早く好機を察知した真狐は、妖狐の魔力を展開。ふさふさの尻尾を8本生成する。パラドクスの力で標的を追尾する、
『フォックスシール・ナインテイル』だ。
真狐の一声で尾は一斉に宙を飛ぶとマーマンの身体に絡みつき、即座に体の自由を奪っていく。
『ぐ……っ!?』
「つーかまーえた♪ ねえねえ何されたい?」
動きを封じられたマーマンに、真狐は一息で距離を詰める。
その手に構えた近接戦闘用ブレードの切先で、動きの獲れぬマーマンの急所を正確に狙い定めて――!
「爆破? 銃撃? 斬撃? 僕は仲良くハグでもいーんだけどなー♪ ……えいっ!」
鋭い刺突が、マーマンの胸板を穿つ。
渾身の力を込めて放つ刃は、正に一撃必殺と言うに相応しい。分厚い筋肉を断ち、鋭い切先が臓腑を抉る。激痛に悶絶するマーマンの反撃にも真狐は飄々と斬り結び、まるで動じる風はない。彼女もまた歴戦の復讐者の一人、けして可憐なだけの少女では無い。
「反撃いくらかは喰らっちゃうのは仕方ないねー。でも、このくらいなら全然平気!」
「さあ、もう一息だ。このまま一気に決着と行こう!」
『ち……! だが、まだまだぁ……っ!!』
真狐と稲穂の猛攻は尚も止まらない。
疾風迅雷の如き剣と変幻自在の小太刀の前に、エルドラードの海賊は今や窮地に追い詰められつつあった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【水中適応】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【ドレイン】LV1が発生!
月鏡・サヨコ
……今だ!
【泥濘の地】で敵の動きを鈍らせ、《巡洋戦艦海戦装『黒姫』》から牽制砲撃を放つ
ここまでの動きは先ほどの攻撃と似通っているけれど、今回は本命に先立つ牽制
砲弾が着弾して反撃を誘発する前に、本命の一撃を叩き込もう
――『月鏡流抜刀術・迅雷風烈』
一瞬のうちに、電磁加速された神速の居合斬撃を放つ
パラドクスによる攻撃は距離を超越する……
牽制による砲撃より先に、刀による攻撃を届かせることも可能だろう
敵が射撃を警戒させたところで虚を突き、一気に斬り伏せる
奪ったものが自分のものになるとしても、貴様の命は不要だ
……海の藻屑と消えて行け
敵の技に対しては《対艦軍刀『銀鉤』》を抜刀したまま
刃同士で打ち合って切っ先を剃らすことで対応しよう
それにしても……冥海機の対エルドラード戦線には、イースター島という最前線があったはず
イースター島はポリネシアの東端だ
それなのに、ポリネシア西端、メラネシアとの境界あたりでアビスローバーが現れるとは……
冥海機の前線はかなり押し込まれているのか?
篠村・蓮十郎
まずは遠隔攻撃を警戒しつつ接近
味方との挟撃となるよう都度回り込むなど位置取りを臨機応変に対応
カトラスの合体、その僅かな隙を狙う
結合の瞬間に胴体へ前蹴りを放ち強打
体勢を崩すと共に前蹴りの勢いを踏み込みの力に変え、[剣法・七胴]を放つ
『崩し』から即座に繋げる渾身の一刀を以て、カトラス諸共両断する
海賊行為とは感心せんな
悪いが貴様等にくれてやるものなど何も無い
深海へと還るが良い
攻撃後は試製鉄刀と壱號機械腕を交差させ受けの構えに
反撃を受ける、逸らす等で対処とする
剣を振り回すのなら、それ相応の間が必要になる
不用意に退がらず、剣の間合いの更に深くへ肉薄する事で圧力を掛け
取り回しを悪化させ斬撃の威力を減衰させよう
天魔武者に続き、今度はアビスローバーか
全く厄介な相手ばかり増えるものだ
マーマンの咆哮が、悲鳴めいて木霊する。
それは、もはや敗北が逃れ得ぬものとなったアビスローバーの断末魔でもあるのだろう。
だが、そんな敵に慈悲を与えるほど、復讐者たちは甘くない。月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)の海戦装による砲撃は、今や勝利の号砲さながらに響き渡ろうとしていた――。
「……今だ!」
ドン、ドン、と重々しい轟音が空気を震わせる。
それはサヨコの巡洋戦艦海戦装『黒姫』が放つ、砲弾の炸裂がもたらす響きであった。発射された弾が間断なく降り注ぎ、マーマンの逃げ道を塞ぐように赤黒い爆炎となって花開く。
パラドクスを介さぬ砲撃は、本命を叩き込むための牽制を意図したものだ。併せて用いる泥濘の地で、サヨコは敵の足下を泥濘に変え、その速度を着実に封じていった。
「ふむ、残留効果が効いているな。あの程度の浮遊なら泥濘の地は有効か」
速度を落とした敵の様子を観察し、篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)は呟いた。
飛行する敵には無効な泥濘の地だが、地上数センチ程度を浮かんで移動するような個体はその限りでは無いのだろう。
警戒していた遠隔攻撃は、幸いにして飛んで来ない。蓮十郎は一息でマーマンの懐まで飛び込むと、得物の『試製鉄刀』を手に接近戦を仕掛けていく。
「海賊行為とは感心せんな。――叩き斬る!」
勢いよく踏み込んで放つは、『剣法・七胴』。
大上段から渾身の力で振り下ろす試製鉄刀はマーマンのガードを突き破り、勢いをそのままに胴を縦に切り裂いた。
次の瞬間、マーマンは衝撃で毀れるカトラスの刃を掲げ、奇声を上げた。パラドクスで融合させたカトラスに力を込めて、反撃とばかり一息で振り下ろす。
『キイイィェェェェェェェェッ!!』
サヨコの砲撃を上回る大音声が砂浜に響いた。
即座に鉄刀と壱號機械腕を交差させる蓮十郎。刹那、略奪剣ツインカトラスの衝撃が戦場の空気を揺さぶる。身体の芯まで響く一撃にも、しかし蓮十郎は屈することなく。激痛を訴える筋肉を叱咤し、冷徹にマーマンへ告げた。
「悪いが貴様等にくれてやるものなど何も無い。深海へと還るが良い」
この程度で斃れる程、自分は、復讐者は柔ではない。
なおもカトラスと火花を散らしながら、蓮十郎の猛攻は更にマーマンを追い詰めていった。
戦いの終わりが近いことを告げるように、響き渡る砲撃と剣戟の響きが俄かに旋律を変える。
激しく打ち鳴らされたカトラスのそれが、次第に力を失い始めたのだ。
刃を介して伝わる衝撃が次第に弱まって来た手応えを、蓮十郎は鋭敏に感じ取ると、更に深くへと肉薄。圧力を掛けて押し切りにかかった。
「貴様が孤立した時点で勝敗は決まっていた。此方の力を見誤ったな」
『……ぐ……!』
歯軋りを漏らすマーマンの顔に、もはや余裕の色はない。
対する蓮十郎は位置取りを変えながら死角へ回り込み、マーマンの動きを巧みに誘導していく。
狙いは、挟撃を行っているサヨコに有利な状況を確保するため。もはや勝敗を決する段階を通り越し、如何に勝つかと言う段階へ復讐者の戦いは移っているのだ。
(「……敵は、斬撃と砲撃に意識を向けている。今こそ好機」)
砲撃の勢いを強めながら、サヨコの手が電気投擲鞘『斗號』を取った。
続けて、そこに収まる対艦軍刀『銀鉤』の柄に、音もなく手をかける。
そう――彼女の本命は砲撃ではなく、斬撃だ。今まで行って来た砲撃も、全てこの一瞬のためだ。
「奪ったものが自分のものになるとしても、貴様の命は不要だ……海の藻屑と消えて行け」
目くらましの砲撃と、積み重なった負傷と、眼前で刃を振るい続ける蓮十郎の猛攻。それらは今やマーマンの心から確実に余裕と判断力を奪っていた。
仕掛ける機は、今。果たしてその一瞬を、サヨコの居合斬撃『月鏡流抜刀術・迅雷風烈』は逃さない。
「──屍を戦野に曝すは、固より軍人の覚悟なり。……悪く、思わないで」
ふいに止む砲撃音。異変に気づき、マーマンが背後を振り返った刹那、その眼前にはサヨコの姿があった。
パラドクスで間合いへ踏み込み、鞘に内蔵された電磁誘導加速機構を起動。銀鉤の一閃がマーマンの首を真横に薙ぐ。
その一撃が、とどめ。
『な――……?』
自分が斬られたことを認識できず、呆気に取られた表情で。
斬り飛ばされて転がったツインカトラスマーマンの首が、戦いの決着を告げていた。
かくして死闘は終わり、島々に訪れたのはひと時の平穏だ。
クロノヴェーダの骸は間を置かずに塵と化し、フィジーの浜辺から跡形もなく失せることだろう。
蓮十郎は海の彼方を見遣りながら、勝利の喜びもそこそこに、憂いの吐息を漏らす。
「天魔武者に続き、今度はアビスローバーか。全く厄介な相手ばかり増えるものだ」
広大な海を領地とするヤ・ウマトは、それだけ外敵も多いのだろう。
クロノヴェーダ同士の潰し合いはまだしも、それで一般人が巻き添えを食うことは容認できるものではない。被害を受けた村も、復讐者による手助けがあれば、じきに元の日常を取り戻す筈だ。
「……さて、行くか」
蓮十郎の声に頷いて、復讐者たちは被害を受けた村へと歩き出した。
破壊された建物の再建、怪我人のフォロー、当座の食料や物資の支援……すべきことは数多い。脅威となる敵がいない今、必要な物があれば、新宿島から運んでくるくらいの余裕もあるだろう。
サヨコもまた仲間とともに浜辺を後にしながら、今一度、海を振り返る。その胸に去来するのは、水平線の彼方に存在する島々の存在であった。
(「……冥海機の対エルドラード戦線には、イースター島という最前線があったはず」)
その地は、かつて《七曜の戦》秘境発強行偵察で調査された地の一つ。
其処に他ディヴィジョンを警戒する基地が存在することは、サヨコを始め多くの復讐者が知るところだった。
(「イースター島はポリネシアの東端。それなのに、ポリネシア西端、メラネシアとの境界あたりの島々でアビスローバーが現れるとは……」)
冥海機の前線が押し込まれているのか、何らかの方法でアビスローバーが前線を潜り抜けているのか。
それとも、全く別の原因があるのか――。
答えは未だ分からない。だが、住民たちから話を聞ければ、有益な情報の断片を入手できる可能性はありそうだ。
「……敵勢力の撃破を確認。住民の救援を開始する」
そうして、戦いの終わった浜辺を振り返ることなく。新たな作戦の地へとサヨコは向かって行った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV3になった!
嶋瀬・翠市
(トレインチケット)
「……よし。必要な救援物資は、これで全部ですね」
新宿島から運んで来た物資をえり分けながら、嶋瀬・翠市(描くは未来を・g09696)は村を回り始めた。
怪我人に用いる薬、当座の食料品や飲料水、更には衣料品、などなど……。アイテムポケットが使用出来たことが幸いし、配れる物資は相応の量を用意出来ている。
「幸い、村はそれ程大きく無さそうですし……復興にもそう手間はかからなさそうですね」
翠市は助けが必要な村人を見ては物資を渡し、人手が必要なところがあれば手を貸し、村の復興を手伝っていく。
ヤ・ウマトは最終人類史と時代が近いこともあり、他ディヴィジョンよりも持ち込める品物が多いのは有難い。未だ物資の届かない場所を村人から聞き出し、翠市はそうした場所を重点的に回っていった。
それから暫くすると救援物資が行き渡ったことも手伝って、村人にも幾分か心の余裕が出来たようだ。
異形化した人々を元に戻し、加えて復興にも奔走したことで、翠市は行く先々で村人たちから感謝の言葉を送られた。
「化物から守って頂き、ありがとうございます」
「とんでもない。それより、不足している物はありませんか?」
村人と会話を交わしながら、翠市は村の状況が分かる情報をそれとなく集めていく。
化物とはアビスローバー勢力のことだろう。人々を襲い異形に変えていく彼らは、現地の者からすれば確かに化物そのものに違いない。
「……それにしても、冥海機様は来て下さらなかったな」
「うむ。一体何があったのか……」
別の場所では、不安そうに言葉を交わす村人たちの姿もあった。
恐らく、この島は冥海機とも多少の交流があるのだろう。とはいえ、流石にそれだけでは収集する情報としては足りない。翠市は救援を続行しつながら、今の状況を整理することにした。
村人が復讐者に感謝の念を抱いている今、知る範囲の情報を教えてくれる可能性は高い。
ただ、村人たちは突然の事件に遭遇し、誰もが忙しい状況だ。質問できる回数は一回が限度だろう。
(「冥海機かアビスローバー。この二つに関してなら情報を得られる可能性は高そうですが……」)
問うのであれば、どちらか片方に的を絞って聞いた方が良さそうだ。無論、あえてそれ以外の質問を向ける手もある。情報収集ではなく復興に専念する選択肢もあるだろう。
(「……さて、どうしたものでしょうか」)
続く仲間の選択を待ちながら、翠市は再び村人たちの救援に戻って行った。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
青天井・イカス
ま、オ疲れ様サン
ンじゃ、後はサクッと支援シて
おサらばスるとシよウかネ
【アイテムポケット】を借用
物資の提供ト、後は適当な残留効果がネェんデ、適当に肉体労働でモシてくゼ
何のカんの、怪力無双は無クてモ、多少の力仕事なラ問題ねぇダロ
瓦礫の撤去ダの、再建物資の運搬ダの、現地民と力ヲ合わセテ
ンー、後は余計ナ世話カもシれネェが、村の再建位置ヲもっト海際カラ離すヨウ提案シとクかネ
此処はモウ冥海機の領土ジャねェ
海賊共は海かラ来るカらナ
気休めダが、成るべク海かラ遠イ方が良いダロ
アる程度作業が一段落シて、現地のヤツ等と打ち解ケたラ、ちィと情報収集シてみルカ
俺モ聞きテェのハ冥海機の事かネ
冥海機の領分だシ
っテモ、一般人にデけェ情報落とサねェのハ何時もの事ダ
此処らノ頭ダった冥海機の名前ッつーのハ良イかモな
誤魔化シにクくて、此方デ他の情報とノ擦り合ワセがシ易い
此レで大方片付イたかネ
そンじャ、引き上ゲるカ
じゃアナ、お前サン等
また何カあリャ来るガ、折角拾ッタ命ダ
もシモの時は手前等デ守るンだゼ
秋風・稲穂
さて、それじゃあアイテムポケットを利用させて貰って修繕物資を持ち込んで……壊れた家屋の修復作業もやっていこうかな
建物復元でイケるかな?
大丈夫そうなら段取り良く復元しつつ、一応補強用の資材とか各家に置いていこうかな
元通りに戻るけど、壊れたって恐怖は消せないからね
はい治りました、じゃ安心出来ないかもしれないし一応ね一応
ま、お守りみたいな物だと思ってくれればいいや
一通り復元出来たら、ちょっとだけ話を聞いていこうかな
折角だしこの辺りの冥海機について聞いてみようか
例えばこの辺りで活動する冥海機のトップについて聞いた事は無いかな?
トップが直接来なくても、その配下の冥海機が誰某の命令で~とか言ってた記憶とかない?
何かしら手掛かりを教えて貰えれば、何があったか調べられるかも
という建前で、この付近で活動する指揮官クラスの冥海機について聞いてみよう
流石に基地の所在までは知らないだろうし、いつもどの方角から来るかとかも聞いておけば今後の参考になるかも
アドリブ連携等歓迎
「さて。それじゃあ、こっちも始めようかな」
救援を求める村人たちがあちこちに溢れる中、秋風・稲穂(剣鬼・g05426)は村の中を回り始めた。
生活物資の配給は、先行した仲間が行ってくれている。そうなれば次に必要となるのは家屋の修復だ。稲穂は村のあちこちを回り、破壊された家を見つけては建物復元で修復を行っていく。
「幸い、家の数はそこまで多くなさそうだし……何とか全部対応出来そうだね」
「だナ。んジャ、俺は補強ヲ手伝うゼ」
青天井・イカス(このうえなく・イカス・g02133)は新宿島から持ち込んだ再建物資をアイテムポケットから取り出すと、稲穂によって修復された家々の住人たちと協力して、補強の作業を行い始めた。柱、窓枠、屋根……多少の衝撃ではびくともしないよう、その作業は細部まで手抜きがない。
「有難うございます。何から何まで……」
「このくらいはお安い御用さ。気にしないで」
「おねえさん、おにいさ~ん! ありがとー!」
「おウ。頑丈な家にしテやルから、待っテろヨ」
作業の途中も、助けられた村人たちが笑顔で挨拶を送ってくる。
再び戻りつつある日常の空気を味わいながら、稲穂とイカスは彼らに笑顔を返すのだった。
家々の修復と補強を続けながら、二人は村人の心のケアにも心を砕いた。
壊れた家は残留効果で元に戻せるが、人の心はそう簡単には行かない。稲穂はアイテムポケットで持ち込んだ補強用の資材に加え、簡単な医薬品や保存食量も各家庭に配っていく。
「ま、お守りみたいな物だと思って。危ない時は遠慮なく使ってね」
稲穂の手厚い救援に、村人たちが示すのは心からの感謝だ。
大事に使わせて貰います――そう言う村人たちの瞳に宿っている希望の光を見て、稲穂も安堵に胸を撫で下ろす。復讐者が新宿島に帰還した後も、これで当面は大丈夫だろう。
「ンー、出来たラで構わネェが……村の家ヲもっト海際カラ離したラどウだろウナ」
補強作業を一段落させたイカスは瓦礫の撤去や物資の運搬を手伝い、すっかり村人たちと打ち解けたようだった。
万が一、津波が襲ってきた時に備え、被害が少なく済むようにと村の男たちに案を寄せる。気休めではあるが、海から遠い方がアビスローバー勢力の被害も多少は減らせるだろうと考えてのことだ。
「ま、スグにとハ言わねェが。考えテおイテくれルと嬉しいゼ」
「そうします。この様子では、冥海機様も来てくれるか分かりませんし……」
村人が何気なく口にした一言に、イカスと稲穂は視線を合わせる。
この村――或いはフィジーの島々では、冥海機との関わりがあるらしい。復興も既に一段落し、後はすぐに帰還しても良い状況ではあったが、
(「気になるね。少しだけ話を聞いていこう」)
(「アあ、ちィと情報収集だナ」)
頷きを交わし合い、二人は何気ない風を装いながら村人に会話を持ちかけた。
稲穂とイカスが焦点を当てたのは、フィジー周辺の冥海機に関することだった。
具体的に言えば、冥海機勢力を統率する個体――ジェネラル級に関する情報である。帰還前に村人たちと暫しの歓談を行いながら、まずは稲穂がさりげなく問いを投げた。
「ねえ。この辺りで活動する冥海機のトップについて、知っていることは無いかな?」
「トップ……? ああ、指揮官様のことかい」
稲穂の言葉に思い当たりがあるのか、村人は合点がいったようにポンと手を打った。
「それなら、あのお方しかいないよ。なあ?」
「ああ。USSヨークタウン様さ」
特に口止めされている風もなく、村人はあっさりと其の名を口にする。
USSヨークタウン――それが、フィジー方面を指揮するジェネラル級の名前なのだ。
稲穂は村人の告げた名前を記憶しつつ、過去の情報を洗い出しながらイカスをちらりと見遣る。
(「ヨークタウン……たしか、アヴァタール級にも同じ名前の個体がいた気がするけど……」)
(「恐らク、同ジ名前の別個体、っテ奴だろウな」)
同名別個体のクロノヴェーダは、多くは無いが珍しい程では無い。
他ディヴィジョンの例を挙げれば、TOKYOエゼキエル戦争のサンダルフォンや、天正大戦国の本多忠勝などがそうだ。
村人が二人に嘘を言うとも思えないことからも、情報の確度は高いと考えて良いだろう。イカスは折角ならばと、指揮官に関して、もう少し踏み込んだ質問を投げることにした。
「なア、ヨークタウン様っテのはどンな御方なンダ? 良かッタら、もウ少し詳しく知りたイんダガ」
「いいとも。あのお方は美しくて、とても歌が上手でね」
「そう。我々のような下々の者にも優しく接してくれる御方だったんだが……」
ふいに顔を曇らせる村人たちの様子に、イカスは首を傾げた。
だった、ということは、今はそうではないということだ。恐らくは、何かの異変があったのだろう。
「アー、ひょットしテ……何かあッタのカ?」
「その……実はここ最近、全く御姿を見なくなっちまってね」
「きっと、お忙しいんだ。そうに違いないさ……」
不安から目を背けるように言い合う村人たちの様子に、稲穂とイカスは顔を見合わせた。
島の人々は思った以上に冥海機と接触しているようだ。復讐者が先に立ち寄ったバヌアツと此処フィジーでは、もしかすると状況が違うのかもしれない。
(「ここから先は、改めて調査する必要がありそうだね」)
(「あア。ココらの『頭』が分かッタだけデモ、収穫ダ」)
復讐者たちは、調査の頃合いを見て取った。
復興にも成功した今、長居しての調査は望まれない。二人は得られた情報を胸に刻み、村人たちに別れを告げる。
イカスは何かあればまた来るがと伝え、彼が生かした村人の一人一人と握手を交わしていく。掌から伝わる温もりは、彼らが再び人間に戻ったことを、何よりも雄弁に物語るものだった。
「折角拾ッタ命ダ。もシモの時は手前等デ守るンだゼ」
「どうか元気で。皆、体には気をつけて下ね」
かくしてイカスと稲穂は別れの挨拶を送り、新宿島への帰路に就く。
別れを惜しむ大勢の村人たちに手を振りながら、稲穂は遠ざかっていく村と、その彼方に広がる海原を見遣った。
(「冥海機、USSヨークタウン、そしてアビスローバーか……中々に大変な状況なようだね、フィジーは」)
復讐者たちの戦いによって島は危機を脱したが、クロノヴェーダの脅威はいまだ去った訳では無い。
この島に本当の意味での平和が訪れるのは、もう少し先のことになるだろう。
叶うなら、それまでに村人たちの平和な日々が脅かされることのないように――そう願いながら、復讐者たちは最終人類史に帰還していった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【建物復元】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!