武蔵鎖国砦攻略戦
最終人類史から天正大戦国の『武蔵国』への逆侵攻を成功させたディアボロスは、武蔵国の制圧に向けて侵攻を開始しました。
武蔵国は東京都と埼玉県に当たる地域ですが、史実における中心部(江戸東京)は最終人類史に属しており、『江戸城』などは存在していません。
そのため発展に乏しいようですが、ディアボロスへの対抗策として多くの『鎖国砦』が建設されています。
『鎖国砦』の地下には、生贄用のヒルコ達が多く囚われており、全ての『鎖国砦』が完成した後は、強大な儀式により排斥力を高め、ディアボロスの侵入を阻止しようとしているようです。
ですがディアボロスが迅速に武蔵国へ侵攻したことで、『鎖国砦』の建設はいまだ途上にあります。
建設中の砦に攻め込み、敵を撃破して、囚われているヒルコ達を救出してください。
松平信康
忍の一字に籠めたるは(作者 唐揚げ)
#天正大戦国
#武蔵鎖国砦攻略戦
#武蔵国
#鎖国砦
#ヒルコ
⊕
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
|
🔒
#天正大戦国
|
|
🔒
#武蔵鎖国砦攻略戦
|
|
🔒
#武蔵国
|
|
🔒
#鎖国砦
|
|
🔒
#ヒルコ
|
●天正大戦国:武蔵国某所、武家屋敷
朝の陽射しに照らされた板の間に、不釣り合いな厳しい巨体が胡座をかいている。
右腕は盾付きの巨砲、左腕は破城槌じみて剣呑極まりない棘付きの丸鋸。
その名を『松平信康』と呼ばれる、ジェネラル級天魔武者である。
微動だにしないその巨体の前に、いつの間にか一機の天魔武者が跪いていた。
「して、武蔵鎖国砦の建設はどうなっている」
「は」
跪いた天魔武者が身動ぎする。
「やはり、あと半月はかかる見込みかと」
「……圧制のためとはいえ、人間仕込みではそうそう縮まらぬか」
信康は嘆息した。
「ディアボロスどもの耳目は聡い。すでに計画は悟られ、動いていると考えるべきだ」
「は」
信康の脳裡に、東京北部での一幕が去来した。
「奴らは油断ならぬ戦士だ。あれから3ヶ月余、さらに力をつけているはず。
父上から献策された『鎖国砦』も、奴らにかかれば瓦解は容易かろう。絵に描いた餅で終わらせるわけにはいかん」
「存じております」
配下は顔を上げずに続けた。
「……その上で恐れながら、『跳び加藤』様より嘆願が」
「また人足の追加か」
「は」
信康は再び嘆息した。
「まあよい。いくら死のうが代わりは送る。たが、どうせ死なせるなら労役で使い潰してもらいたいものだ。
あやつほどの古参とて、ディアボロス相手では危うかろう。ゆめ注意するよう、加えて言付けておけ」
「御意」
配下は音もなく姿を消す。板の間には信康だけが残された。
「油断するなよ、加藤段蔵……ディアボロスは、手強いぞ」
張り詰めた空気の中、朝の陽射しだけが平和だ。屋敷の周りには、虫一匹の鳴き声さえ転がっていなかった。
●新宿駅グランドターミナル
「天魔武者の奴ら、またしてもヒルコの人たちを犠牲にした儀式をしでかそうとしてるみたいッス」
七田・ナナ(エンジョイガール・g05125)は憤懣やるかたない表情で告げた。
「それが、『武蔵鎖国砦』。
儀式が成功すると、武蔵国の排斥力がハイパー強化されて、ウチらが入れなくなっちゃうッス!
でも、今ならまだ間に合うッス。砦が出来上がる前に、捕まってるヒルコの人たちを助けてあげてほしいッス!」
と、集まったディアボロスたちに呼びかけた。
ナナは、持参したタブレット端末(ビビッドな色合いだ)を操作し、関連資料を表示した。
最初に映し出されたのは、山間部の地図だ。
「一応説明しとくと、武蔵国っていうのは今で言う関東の下っ側……埼玉・東京、それと神奈川県の一部に当たる地方ッス。
この画像は、今回行ってもらう場所をウチのほうで割り出して、現代版の地図をもとに編集したものッス。
ディヴィジョン化してるからこの地図まんまってワケじゃないッスけど、肝心なのはこの砦の中なんで問題ないと思うッス」
親指と人差し指でピンチアウトして、マーキング地点を拡大する。三方を山々に囲まれた険しい地形だ。
「砦が建設中なのは、ここッス。見ての通り、出入り口以外の方角から忍び込むのはまずムリな形になってるッス。
空からなら入り込めるかもしれないけど、そんなことしたら間違いなく天魔武者に見つかるからやめといたほうがいいッス」
ナナは2つ目の画像を表示する。両手足がバネ仕掛けになった奇妙な風体の天魔武者だ。
「こいつが、砦を見張ってるアヴァタール級天魔武者の『加藤段蔵』ッス。たしか、ハイパー有名な忍者ッスよね。
見ての通り飛び跳ねるのが得意で、山から山を跳び回って侵入者がいないか見回りしてる抜け目ないヤツッスよ。
山に住んでる動物も、こいつが全滅させちゃったみたいッス。信康の部下だけあって、ウチらのことを警戒してるッスね」
《七曜の戦》以降、クロノヴェーダは空からの侵入を非常に警戒している。
かの『跳び加藤』の名を冠する名うての忍者の目を掻い潜って忍び込むのは、不可能に等しい。
「だから、あえて真正面から入るッス」
3枚目の画像は、建設中の砦の立体図だ。新宿島の人々の協力で作られたものである。
「砦を作ってるのは、天魔武者じゃなくて普通の人たちッス。だから紛れ込むのは簡単だと思うッスよ。
けど、資材に隠れてこっそり入り込むのもオススメッス。今回は、誰にも姿を見られないのが一番ッス」
ナナは顔を顰めた。
「……なんでかっていうと、捕まってるヒルコの人たちは、働いてる人たちから目の敵にされてるッス。
自分たちは死にそうなぐらい働かされてるのに、仕事もしないでご飯を食べるなんて……とか、そんな感じに。
そうやって苦しめるのも、『圧政』の一環ってワケッスね……ホント、ろくでもない奴らッス」
虐げられるヒルコたちに想いを馳せ、頭を振る。憤懣はこのためだった。
一言詫び、気持ちを切り替えたナナは、また新たな画像にスワイプした。
映し出されたのは、水晶のような鋭い一本角を生やした、強靭な鱗を持つ大蛇、『闇尾咬(くらおがみ)』だ。
その巨体は恐ろしいが、一見すると要所の守りにはそぐわないように見える。
「砦の一番厄介な守りが、こいつらッス。
何が厄介かっていうと……まずこいつらは、地面の中を泳ぎ回る能力を持ってるッス。
おまけに、ちょっとした揺れとか音に反応するよう、特別に育てられてるんスよ。
そして、こいつらがいるのは……ヒルコの人たちが捕まってる牢屋の真下ッス」
ナナは厳しい表情を見せた。
「牢屋に辿り着くまでは簡単ッス。問題はそこから、どうやってヒルコの人たちを脱出させるか……ッス。
砦を壊すにしても、働いてる人たちはほっといても勝手に逃げてくけど、ヒルコの人たちはそうもいかないッス。
脱出の準備が整ってない状態でトループス級と戦闘を始めたら、ヒルコの人たちも巻き込まれかねないッス」
空を飛べば敵に見つかる。
さりとて、牢屋に踏み入れば『闇尾咬』に気取られる。
いかにして脱出を手引きし安全を確保するか。この作戦の要と言えよう。
「……無事にヒルコの人たちを逃がせたら、最後にヒルコの人たちが暮らすための『隠れ里』を作ってあげてほしいッス」
ナナは最初の地図画像に画面を戻し、砦から離れた2つ目のマーキング地点を拡大した。
「見つからなさそうないい感じのとこは目星がついてるんで、先輩がたには食べ物とか住むところの整備をお願いするッス。
これが出来てないと、天魔武者に見つかって捕まっちゃったり、お腹が空いて死んじゃうかもしれないんで、大事ッスよ」
と、人差し指を立てて強調した。
「排斥力を強化されたら困るし、ヒルコの人たちが苦しめられるのも見てられないッス」
ナナはタブレットをしまい、真剣な表情で言った。
「だから、絶対に儀式を叩き潰してほしいッスよ。
ウチの分も、カッケー先輩がたにお任せするッス!」
そしてグッと握り拳を突き出す。最後に浮かべるのは、希望に満ちた明るい笑顔。
その信頼に応えられるかは、ディアボロス次第だ。
●再び天正大戦国、武蔵国山間部:建設途中の鎖国砦
トンカンと槌の音が響く砦の構内で、唯一静まった一角がある。
頑丈な木製の牢屋に囚われているのは、それと分からなければ見目麗しい少年少女にしか見えない5人のヒルコたち。
彼らの片足には錆びた鉄の枷が嵌まっていて、鎖は牢屋の壁に打ち込まれた鉄輪に括りつけられている。
四寸角の木格子も、頑丈な鉄枷も鎖も、人間の力で破壊すること叶わぬ代物だ。
唯一木格子の閂部分だけは脆弱だが、それを抜くことは人足にも固く禁じられている。
実際、ヒルコの存在は儀式に欠かせない。堅牢さはその証左である。
「なんだよ、まだくたばってなかったのか……まあ死なれたら俺らが困るんだけどよ」
世話役の人足が舌打ちする。手には粥の入った椀。
ヒルコたちは憔悴しきっており、剣呑な視線に震え上がる元気もないようだ。
「おら、飯だぞ穀潰しども」
人足は木格子の中に腕を突っ込み、椀を放り投げた。
椀は空中で逆さになり、べしゃりと中身をぶちまけながら地面に落下する。
すると土の下で巨大な何かが身動ぎし、かすかに牢を揺らす。
「ぁ、あ……ごは、ん」
逆さに落下した椀を前に、痩せ細ったヒルコの女が呻いた。
「文句言ったら痛めつけるぞ……っと、んなことしたら前の世話役の二の舞か」
「然り。気をつけろよ、これ以上労役以外で人手を失うと信康様が五月蝿いのだ」
人足は蒼白の表情で振り返る。いつの間にか、そこにはバネ仕掛けの奇妙な天魔武者がいた。
「ひ、ひぃ……」
「前にも言ったな? 大蛇どもは、牢に足を踏み入れた者あらば例外なく貪り食らうと」
金魚めいて口をぱくぱくさせる人足に、加藤段蔵は囁いた。
「これでも苦労して仕込んだのだ。でないと、物音一つに反応して守りには到底使えんのでな」
「へ、へい」
「繰り返し言っておくぞ。牢の外から中に足を踏み入れれば、大蛇は必ず反応する。絶対にだ。俺がそう仕込んだのだ」
忍の鋭い眼光がぎらりと瞬いた。
「わかったらさっさと去ね。些事で命を捨てるな、阿呆が」
「は、はひぃ!」
人足はこけつまろびつ逃げ出した。段蔵は弱りきったヒルコたちを一瞥する。
「さあ、飯は食っておけ。お前らには生きてもらわねば困るのだ」
その姿が霞の如く消える。見上げれば、砦の骨組みを機敏に飛び跳ね去る姿が見えただろう。
「……う、飢え死になんて絶対やだ」
ヒルコの青年が、おずおずと屈みこむ。そして地面に飛び散った粥を、犬のように啜った。
「死んだらおしまいだぞ。みんなで生きて、ここを出よう!」
「「「……」」」
4人はためらいがちに頷き、嗚咽を漏らしながらその姿に倣う。
彼らがここまで虐げられる謂われなど一切存在しない。
だがそんなことは、天魔武者にとっては些事にも等しいのだ。
リプレイ
野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎
大和国でも爆弾にされたりとヒルコの人たちは天正大戦国の中でも辛い立場にありますね。
生かさず殺さずの『圧政』とて許せはしませんが生きることすら出来ない儀式の生贄などもっと許せはしません、必ず助けましょう。
隠れ里の予定地を記した地図と食べて貰うおにぎりを用意。
物陰に隠れ人の動きを観察しながら見つからないように忍び込みます。
問題はヒルコの人たちをどうやって牢屋から救い出すかですけれど……『闇尾咬』は牢屋の真下の地中にいてちょっとした揺れとか音に反応するのでしたね。
恐らくは牢屋への出入りを足音で判別しているのだと思います、それならば足音がしないように動くのが一番でしょう。
牢屋へ到達したら【浮遊】を使用して牢屋の中へ。
おにぎりを食べて貰いながら脱出することを話して枷を解いていきましょう。
念のため隠れ里予定地の地図も渡しておきます。
手を繋いで一緒に浮遊することで牢屋から出る時もヒルコの人たちを含め足音を聞かれることは無いはず。
絶対に生きてここから脱出させます、だから諦めないで。
篠村・蓮十郎
連中のやり口は、つくづく気に食わん。
戦に犠牲は付き物なれども、それを前提になどと……
到底許容出来るものか。
まずは助言通り、搬入物資に紛れての侵入を図る
紛れる際はすぐに動ける様、屈んで入れる程度の広さと深さの箱や荷車などを選ぶ
侵入後は記憶した砦の立体図を頼りにヒルコ達が囚われている牢へ向かう
発見されぬ様周囲の観察を行い、ダッシュで物陰を伝って潜伏しながら進んでいく
牢へ辿り着き次第、ヒルコ達に名乗り脱出の為に来た事とその算段を立てる
外から中へ……だったか
接地さえ避ければやり過ごせそうだ
閂を外しフライトドローンを使用
まずはドローンに乗り牢内へ
彼らを繋ぐ枷を破壊した後、ドローンにそれぞれヒルコ達を乗せ牢から脱出させる
彼らがドローンに乗れぬ程消耗していたならば、こちらが担ぎ上げ運び出す
行動は慎重に、くれぐれも地面に触れぬ様用心しておこう
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
あんな事があっても生きようとしてくれて良かった
この砦にことは任せておけ、見つからないように出来る限りのことはしよう
【行動】
まずはこの時代の一般人の服に着替えて手足は布を巻いて隠しておく
姿を見られないようにはするが
もしも一般人に指摘されれば
こうしたほうが暖かいんだよと理由をつけておこう
資材に紛れつつモブオーラを使って侵入
そのまま砦の中を隠れながら移動して内部構造を把握する
怪しまれないように演技をしながらでも観察と情報収集は出来るだろう
構造を把握できれば持ち込んだ紙と筆で簡単に内部構造の地図を製作
主に作業している場所や人通りが多い場所には地図に印をつけておいて
その場所を通らないほうがいいと伝えよう
逃げている姿を一般人に見られたら騒ぎが大きくなってしまう
そうすると逃げる時に大変だろうからな
外に出るまで見つかってほしくない
ヒルコ達を見たらよく耐えた。あとは任せておけと声をかけておこう
必要なら臨機応変に対処する
●囚われた者たち
鎖国砦の守りはそう堅くない。むしろ、「砦」という言葉から想像されるイメージに比べるとザルすぎるぐらいだ。
(「建造途中なのもあるのでしょうが、どこか不気味ですね……」)
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は近くの物陰に身を潜め、行き交う人足の様子を窺う。
観察してみると、肝心の人足たちにも、不審者を見張るような素振りはほとんどなかった。
理由はふたつある。
「まったく、いつまで働いても終わらねえ……」
「おい、無駄口はよしとこうぜ。体力を使うだけだ」
ひとつは、砦の建造そのものが過酷なこと。
簡単に言えば、周りを気にする余裕がないのだ。彼らは彼らに与えられた仕事をするので手一杯で、中には今にも倒れそうな者もいる。
(「……辛い立場にあるヒルコの人たちも、気の毒でなりませんが……」)
裕樹は奥歯を噛みしめる。
ふたつめの理由――それは、この砦の重要なリソースはヒルコである、ということ。
人足はいくら使い潰してもいい。むしろ、過酷な労役で苦しんでくれたほうが、天魔武者にとっては都合がいいのだ。
これもまた、圧政である。
(「やはり、こんな圧政は許せません。ヒルコの人たちを必ず助け出して、砦を破壊しなければ」)
今はこの状況を利用するべきだ。裕樹はそう思い直し、影のように密やかに砦へ近づいた。
「……ん? 今、誰か見かけない奴が通らなかったか?」
重そうな荷車を運んできた人足が、きょろきょろと周りを見渡す。
「まさか。わざわざこんなところに来たがる奴なんていないだろ」
「それもそうだな。働き口がほしいったって限度があらぁ」
見間違いだと思い直し、人足は再び歩き出す。こんな重い荷物はさっさと所定の位置に運んで、少しでも休みたいところ。
そんな思いでへとへとの両脚を突き動かし、多少乱暴に資材置き場に荷車ごと資材を放り込むと、次の作業に取り掛かっていった。
まさか、その重たい荷物の中に侵入者が潜んでいたなどとは、どうやら夢に思わなかったようだ。
「……ふう。気付かれずに済んだな」
気配が去っていったのを確認し、篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)はするりと荷車から這い出した。
見つからないよう長時間身を縮こまらせていたというのに、苦痛に顔を顰める素振りもない。この程度は朝飯前といった様子。
「ああ、よかった。そちらも問題なく入り込めたんですね」
そこへ裕樹が外からやってきた。注意深く行動したおかげで、人足に見咎められることはなかったらしい。
「そっちもな。ともかく、これで……」
「ああ。3人とも侵入成功だ」
最後の一人、荒田・誠司(雑草・g00115)が資材の山から立ち上がる。
「とはいえ、油断は禁物だぜ。ここからが本番とも言える」
誠司の装いは、万が一発見されたときに備えた一般人めかしたもの。
サイボーグであるがゆえの手足の鋼鉄は、布を巻きつけることで隠匿されている。その布の中から、かすかにキュインという駆動音が響いた。
「そうだな。連中のやり口は、つくづく気に食わん。さっさと片付けてしまおう」
同じサイボーグである蓮十郎の右腕が、強く握りしめたことでぎしりと異音を発する。
「私も同じ思いです。脱出の前に、せめて少しでも体力を回復させられればと思い、おにぎりも持参しましたが……」
裕樹は懐の包みに手をやった。
「それは、こちらとしても助かるな。ヒルコたちの脱出用に、内部構造のメモも取っておく」
さらに誠司が筆と紙を取り出すと、蓮十郎は感心した様子で頷いた。
「なら、補給とマッピングは頼んだ。代わりに、周りの警戒は俺に任せてくれ」
「「わかった(わかりました)」」
潜入行動において必要とされるのは、スピードと慎重さ。相反するふたつの要素をひとりで賄うのは、歴戦のディアボロスといえども簡単なことではない。
しかし3人はそれぞれの役割を自ら担い分け合うことで、ほとんど最短かつ最速の工程で砦内部を進むことが出来た。
●
砦の片隅。
物々しい内部にあって、さらに不釣り合いな頑丈そうな木格子の牢屋が鎮座する。
人足たちもヒルコたちを倦厭して――正確には「させられて」――いるせいなのか、あたりは冷たく感じられるほどに静かで、そして物寂しい。まるで人の手を離れた荒れ寺のような雰囲気だ。
「……これは、ひどいですね」
立ち込める臭気に、裕樹は顔を顰める。木格子の周囲には腐った食料と思しきシミなどがこびりついていて、ヒルコたちの置かれた環境の凄まじさを物語っていた。
「う、ぅ……」
「おい、聞こえるか? まだ気は確かか」
か細いヒルコの呻きに、蓮十郎が呼びかける。
すぐにでも木格子の扉を開いて彼らを助け出したいところだが、3人は決してそんな蛮行を冒さない。
「どのぐらい地下かわからないが、そう深くないところに気配を感じる。間違いないな」
膝を突き地面に手を置きながら、誠司が言う。
集中してようやくわかるほどの微かな地面の揺れ……定期的な振動は、巨大な物体が地中で身動ぎしている証だ。
「あ、あなたたちは……助けに来て、くださったんですか?」
そこで、比較的正気を保っているヒルコが口を開いた。
「そう、なんです。僕らの足元には、恐ろしい大蛇が……!」
「大丈夫です。そのための対策は考えてきましたから」
裕樹は安堵するよう笑顔で宥め、二人に向き直る。
「これは私見ですが、闇尾咬は牢屋への出入りを足音で判別しているのだと思います。
ですから、足音がしないように動く……つまり、地面に足をフレなければ問題ないのではないかと」
「俺も同意見だな」
蓮十郎が頷いた。
「接地を避けるなら、ヒルコたちをドローンに乗せればいいはずだ。ドローンなら俺たちも足をつかずに中に入れる」
「なるほどな……しかしそれだと、ピストン輸送するにしても出入りだけで大幅に時間がかかるな」
誠司は蓮十郎の案に感心しつつ、懸念点を客観的に指摘する。
「となれば、私の案の出番ですね」
裕樹は片目を瞑って、少しいたずらっぽく言う。
そして軽く地面を踏みしめると、ふわりとつま先が地面を離れた。【浮遊】のパラドクス効果だ。
「こうして手を繋げば、ドローンと並行してヒルコの人たちを牢から出せるはずです」
「なら、すぐにでも取りかかろう」
誠司は素早く木格子の閂を引き抜き、音を立てないよう慎重に扉を開いた。
「ほ、本当に助かるの?」
「もう諦めかけていたのに……」
憔悴しきったヒルコの少女たちも、希望に目の光をかすかながら取り戻す。
「ここまでよく耐えたな。もう少しの辛抱だ」
「本当にその通りです。ご飯も持ってきましたからね」
誠司の言葉に同意しつつ、裕樹はゆっくりと牢屋に踏み込む。その後ろから、ドローンに飛び乗った蓮十郎が続く形だ。
二人のアイデアは功を奏した。そもそも足を地面にフレさせなければ、牢屋に入ろうと気取られることはない。
最初は恐る恐る様子を窺っていたヒルコたちも、大蛇が反応しないことにほっと安堵のため息をつく。
「あとは、この鎖だけか……」
「……思ったよりも頑丈そうだな」
男二人は、ヒルコの足に嵌められた枷と、そこから繋がる鎖を手に取り苦み走った。
「時間がない。少し荒っぽくなるが、無理やり壊すしかないだろう。構わんな?」
「はい。これまで十分稼げていますし、脱出に差し障ることはないと思います」
蓮十郎の目配せに、裕樹が頷く。
「万が一誰かが近づいてきたら、俺が足止めする。ここは時短優先だ」
「よし。なら……ふん!」
蓮十郎の右腕が鎖を握りしめる。キュイン、という駆動音のあと、ミシミシという鋼鉄の軋み音が響いた。
頑丈な鎖がゆっくりと引き伸ばされ……限界を迎えた瞬間、ばきん! と砕け散る。当然、それで地下の敵が反応することもない。
(「やはり、反応の引き金は足音だったようですね」)
裕樹は密かに胸をなでおろし、僅かに緊張を解いた。ここからは如何に迅速に次の行動に移るかが鍵だ。
多少の時間をかけて鎖の拘束を解き放った3人は、ヒルコたちを牢屋の外へと連れ出すことに成功する。
「あ……っ」
「おっと」
ふらついた少女めいたヒルコの肩を、片膝を突いた蓮十郎が支えてやる。
「その様子じゃ、牢屋の中を歩くだけでもヒヤヒヤしたんだろう。もう、足元に気をつけたりする必要はない」
「……っ」
少女めいたヒルコは、顔をくしゃりと歪めた。嗚咽を噛み殺し、流れる涙をぐしぐし拭う。
「さあ、おにぎりをどうぞ。急がなくても、まだ余裕はありますからね」
裕樹は手製の握り飯を振る舞う。ヒルコたちは久方ぶりのまともな食事に頬張りつきたい思いだったが、まだ油断してはいけないと気丈にも自らを戒め、噛みしめるように咀嚼した。
「お、おいしい……!」
「ほらな、諦めなくてよかっただろ」
泣きじゃくりながら握り飯を食べるヒルコを、少年めいたヒルコがどやす。苦笑いめいた表情だが、その目端には光るものが滲んでいた。
「私たちが、皆さんを絶対に生きてここから脱出させます。だから……」
「あとは俺たちに任せて、もう少しだけ諦めずに頑張ってくれ」
誠司が継いだ言葉に、裕樹は一瞬きょとんとしてからはにかんだ。思いは同じなのだ。
しかしその安寧も長くは続かない。
「……人の気配だ。さっきの音を気取られたか?」
周辺に気を張っていた蓮十郎が、二人に囁く。
「あるいは、食事を運んできたか……いずれにしても、ちょうどいい頃合いかと」
「これを持っていくんだ。印をつけた場所を避けて、この出入り口を目指してくれ」
再び緊張するヒルコたちに、誠司が手製の地図を渡す。
「あっ。そうだ、地図といえばこちらも」
裕樹は包みからもう一枚の地図……隠れ里の建設予定地点を記したものを手渡した。
「あ、ありがとうございます」
「皆さんは……?」
当惑しつつもそれを受け取ったヒルコは、おずおずと問いかけた。
「言っただろう。あとは任せておけ」
誠司はそれだけ言って、ヒルコたちの背中を送り出した。
足元からは、かすかな揺れの感覚が徐々に早まっている……さすがの大蛇どもも、地上の異変をわずかに感じ取ったか。だが、もはやヒルコは牢から脱出に成功している。奴らに与えられた役割の大半は潰えたと言っていい。
「向こうもやる気のようですね。……望むところです」
ちゃき、と鯉口を切る音が剣呑に響く。
覗いた刃と同じように、裕樹の双眸は鋭く勇ましくぎらついていた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【浮遊】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
――ずどぉん!!
「「「うわあああっ!?」」」
突然の轟音、そして地響きに人足たちは慌てて逃げ惑う。
すわ大地震かと早合点し、皆が道具を放り捨て砦から飛び出す有様。
命あっての物種である。皮肉なことに、死さえ強いる過酷な労役ゆえに、彼らは仕事に対する責任感や執着など欠片も持ち合わせていなかった。これもある種の、天魔武者どもの因果応報といえる。
それはさておき、地響きの正体は当然クロノヴェーダである。
「オオオオオオオ――!!」
土煙をあげて表出した大蛇が、すさまじい雄叫びを響かせた。
それだけで、あちこちに積み上げられたままの資材がガタガタと崩れ、砦を揺るがす。
どうやら、闇尾咬の膂力と頑丈さは、見た目から想像される以上のようだ。手強い敵となるだろう。
だがまたしても、ここで因果が巡ることとなる。
巌の如きフィジカルと引き換えに、闇尾咬は知性に乏しい。加藤段蔵をして、半ば自動的な見張りの役目を与えるので精一杯だったほどだ。
当然、周囲への影響を考慮して力を操作するなど、この野蛮な妖怪どもには出来るはずがない。
奴らを暴れ回らせれば、その被害は砦に向かう。つまり、砦の破壊はより楽になるというわけだ。
一方で、荒れ狂う大蛇の攻撃はディアボロスにも牙を剥く。リスクとリターンは等価である。
「む!?」
同じ頃、付近の山間を跳ねていた加藤段蔵も、木霊する咆哮を気取った。
「この感じ、人足どもではないな。さてはディアボロスか! おのれ!」
裏をかかれた屈辱への怒りは、一瞬で腹の底に鎮める。今なすべきは、砦が破壊される前に奴らを叩きのめすこと。
跳び加藤の名を示すが如く、色つきの影じみた速度で段蔵が跳梁する。向かう先は鎖国砦――否。
ディアボロスと闇尾咬が相対する今、そこはもはや戦場というべきだろう!
大蛇どもは地中に潜り込み、うねるような動きで這い回る。その機動を予測し対処するのは易いことではない。
施設破壊と敵の撃破、いずれを優先しどう行動するか。それが、復讐者自身の明暗を分けることとなる!
野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎
ヒルコの人たちが巻き込まれる心配は無さそうですね、ならば存分に暴れるとしましょう。
それはもう砦を破壊し尽くす程お互いに、です。
施設破壊を優先して行動します、砦の骨組みを足場に《雷光刀『雷花』》で砦を破壊していきます。
砦の破壊が進み足場が無くなっても問題ないように【フライトドローン】を緊急時の足場として待機させておきましょう。
地中に潜った闇尾咬を捕捉するのは難しいかもしれませんけれど誘き寄せることで何とか出来ないか試みます。
砦を破壊していけば揺れや音に反応して闇尾咬はこちらの位置も掴んでくるはず。
そして攻撃が来るのは恐らく真下から……私を攻撃するのと同時に砦も破壊してもらいましょう。
攻撃の威力は大きそうですが攻撃が来る方向を誘導し見当を付けることで直撃だけは避け、【グロリアス】で傷を癒すことで施設破壊を完遂出来るように戦います。
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
これで安心して戦いに臨めるな!
こいつと一緒に砦をぶっ壊してやろう!
【行動】
仲間とは声を掛け合い積極的に連携していく
まずはパラドクスを用いて銛撃ち銃を製作し装備
銛は幾つか製作して持っておく
敵からの攻撃で地面が陥没する前に壁歩きやフライトドローンを足場にして抜け出すことを試みよう
盾:フェイク・プリドゥエンのジェットや電光警棒も使って生き埋めは回避したい
敵の姿が見えれば銛撃ち銃で攻撃する
貫通力が高いとはいえ硬そうだから
当てるのは目や口の中などあまり硬くなさそうな部分を狙おう
外れたとしても施設の破壊も同時進行で進めてみようか
今まで作ってきた人達には申し訳ないが圧政から解放する為だから許して欲しい
必要なら逃げ遅れた一般人の救助など臨機応変に行う
●地より来たる恐怖
砦を破壊しかねない化け物を、砦の真下に仕込んでおく。
防衛戦力としてはあまりにも手落ちに思える――いや、思え「た」と表現すべきか。
「……もしも脱出支援が遅れていたら、ヒルコの人たちは確実に全滅していましたね」
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は聳えるような巨大な大蛇を睨み、呟いた。
闇尾咬は、いわばフェイルセーフ。
厄介なディアボロスを、最悪の場合は諸共に滅ぼすために用意した諸刃の剣というところか。
事実、上方の警備は加藤段蔵一体で事足りていた……ヒルコの脱出が間に合ったのは、その警戒心と油断のない戦力分析を、ディアボロスがさらに裏切ってみせたおかげである。
「そうだな。これで安心して戦いに臨める」
荒田・誠司(雑草・g00115)はゴーグルを戦闘モードに切り替え、身構えた。
「こいつと一緒に、砦をぶっ壊してやろう!」
「はい!」
妖怪の雄叫びが空気を震わせる――巨大な暴力そのものの怪物が、怒涛の勢いで二人に襲いかかった!
「グオオオオ!!」
鎌首を擡げた大蛇は、まず真上から雪崩を打つような勢いで地面を穿ち、潜り込む。空気の次は足元が大きく振動し、二人の体勢を崩さんとした。
「なんて地響き……! 足を取られないよう、気をつけてください!」
舞い上がる土煙が、仲間との連携を分断する。
掘削の余波で降り注ぐ土塊を避けるため、同じ場所にいたはずの蓮十郎や誠司とは離れてしまった。この声が届いているかどうかも、立て続けの沈下による轟音で判別がつかない。
(「まずは、この砦を壊さなければ!」)
裕樹は振動に足を取られる前に、滑るように移動した。向かう先は、建造途中の骨組み部分だ。
「はあっ!」
鋭い呼気とともに、『雷花』を抜き放つ。しゃりん、と澄んだ硝子細工のような清らかな音が響き……人足たちの手で急拵えされた外壁が、真っ二つに両断された!
ズズズズ……地面の振動が明らかに変化する。いかにしてか砦の破壊を感じ取り、狙いを裕樹に絞ったか?
「そうです。私を放っておいたら、あなた達の住処は台無しですよ!」
裕樹は一瞬たりとも足を止めず、また腕を動かして目につく場所手の届く箇所を斬り裂き、叫んだ。
ズゴゴゴ……震源は複数に別れている。地中から四方を包囲し、同時攻撃で圧殺するつもりか!
「――あそこか!」
一方誠司は、激しく隆起する地面と土埃を波代わりに、フェイク・ブリドゥエンを滑空させていた。
その右腕に腕部装着型のハープーンガンが生成される。即席で作り出したものなので連射は効かないが、その分一撃の威力は非常に高い。
(「どうやら、緊急時の足場用にドローンを使うつもりのようだな。となると、俺がそこに逃げ込むのは得策じゃないか」)
誠司は裕樹の思考を読み、フライトドローンではなくまだ無事な砦の外壁内側部分を足場に利用した。
フェイク・ブリドゥエンを巧みに制御して地面を離れ、三角跳びの要領で壁を蹴るのだ。低知能の闇尾咬も、当たらない攻撃をするほど馬鹿ではない。こちらもこちらで、攻撃の一瞬を狙い定めているのが殺気で感じ取れる。
(「撃ち込める回数はそう多くないぞ。一撃で仕留める……!」)
同時に誠司は、この騒ぎに逃げ遅れている人足がいないかをチェックしていたが、幸い彼らはすでに砦を離れているようだ。
過酷な労役で人々が作らされてきた砦を破壊するのは、彼らの労働を否定するようで心苦しくもあった。しかし、人足たちも働かされるのは厭で厭で仕方なかったのだろう。
「なら、そちらも盛大にやらせてもらうか……!」
誠司は再び壁を蹴る。向かう先は、当然裕樹の方だ!
土煙を飛び越えた誠司の姿が、裕樹の視界にも入った。
無事を喜ぶ余裕はない――裕樹の前後左右を取り囲んだ闇尾咬が、メキメキと地面を隆起させ、噛みつき攻撃の予備動作に入ったからだ!
「……来る」
裕樹は、この攻撃を砦に命中させるつもりでいた。ゆえに、多少の被弾は覚悟の上。回避を意図的に放棄し、鞘から抜いた雷花の柄を両手で強く握りしめる……バチバチと雷光が刀身を覆い、その光は数倍以上のリーチを誇る刃と化した!
「「「グオオオッ!!」」」
ボゴォ!! と地面を砕き、4体の闇尾咬が迫る! 裕樹は大きく息を吸い、眇めていた目を大きく見開いた!
「ふっ!」
キィン! と、邪気を払う玄妙なる太刀音が響いた。
剣閃は、満月の如き真円を描く。瞬間的に音を超えた斬撃の軌道に、一瞬遅れて火花がぽっ、と生じた。
「燃え上がれ」
否。
それは炎だ。
「――百合車」
狐百合の如き、栄光の炎花がごうっ!! と大気を灼いて燃える!
「「「グガアアッ!?」」」
大きく開いた口蓋を真一文字に斬り裂かれ、さらに一拍遅れての爆炎じみた火炎攻撃を浴びた闇尾咬は、空中でもんどり打ち軌道を変えてしまう。
そのせいで裕樹を噛み砕くことは出来ず、お互いに衝突してさらに苦悶し、巨体を振り回したことで周囲の地形に甚大なダメージを与えた! 砦がズズンと大きく鳴動!
「ギャギイイ!!」
だがそのうち、背後の一体は血を噴き出しながら裕樹に食い下がる! 牙が掠める形で被弾した裕樹は、空中で防御姿勢を取っているため対処できない!
「そこだ!」
バシュウ――圧縮空気が銃身から吐き出され、ワイヤーで連結されたハープーンをまっすぐ射出した。
開かれた口蓋を、矢の如き銛が串刺しにし、ひび割れた背後の壁にズシン! と縫い留める。
「ゲ、ガ……ッ!!」
その一撃がとどめとなり、激突した大蛇を中心にクモの巣状のヒビがバキバキと広がると、誠司から見て向かい側の外壁はガラガラと崩れ落ち、大蛇を飲み込んでしまった。
「お見事です!」
「連打は出来ないんだがな。所詮は即席だ」
誠司はハープーンに腕を持っていかれる前にワイヤーを切り離し、同時生成した次弾を装填した。
ゴーグルが、土煙の向こうで新たに出現する敵影を捉えている――ぶうん、と降ってきた巨大な尾を、フェイク・ブリドゥエンの機動力で直撃回避! 先端部が脇腹を打ち据えるが戦闘継続には支障なしだ。
「さあ、この調子で瓦礫の山を積み上げてやるぞ……!」
苦痛を堪え、敵を睨む。破壊と殲滅の二面作戦は順調に進んでいた!
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【通信障害】LV1が発生!
【壁歩き】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
篠村・蓮十郎
天秤はこちらへ傾いている、このまま畳み掛けるぞ!
大蛇を動かすのは砦の破壊にも有用だな、精々使わせて貰おう
原型を留めているであろう残りの箇所へ移動しながら敵を誘導
攻撃に巻き込んで更なる破壊を狙う
振動の強弱から地面の陥没を察知
飲み込まれる前に瓦礫を蹴り上がり空中へ躍り出る
万一足場が足りなければフライトドローンを用いるとしよう
この砦も大蛇も圧政の一部
ならば完膚無きまで叩き潰すのみ
上空から真下へ向き直り、陥没した地面目掛け
試製鉄刀を突き出し[剣技・岩破]を放つ
例えその鱗が堅牢であろうと、激しい衝撃には耐えられまい
刺突と共に巻き起こる衝撃波を叩き付け
大蛇を砦ごと圧殺、破壊する
●形勢
山が揺らいでいる。
地中を自在に動き回る大蛇の暴虐だ。戦いが激しくなればなるほど、その鳴動は砦の基幹部にダメージを与える。
……だが膠着はディアボロスにとってもうまくない。ダメージが蓄積し、このあとの戦いに響きかねないからだ。
(「戦いの天秤はこちらへ傾いている……ここが畳み掛ける頃合いと見た」)
土煙と落盤によって分断された戦場で、篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)は冷静に戦況を分析していた。
戦いには趨勢が一転する分水嶺というものがある。それを読み、流れを掴むものが勝利を制するのだ。しかしてそれは一瞬であり、かつ、機を読み損なえば相応の代価を己の命で支払うこととなる。
蓮十郎の、戦士としての地力が試されようとしていた。
「――オオオオッ!!」
一方、知性を代償に暴を備えた妖怪どもは、腹に響く低い雄叫びを上げた。
蓮十郎は五感でなく第六感と経験からくる判断力に賭け、跳んだ。直後、彼の立っていた場所がぼぐん、と異様な音を立てて沈む!
「貴様らが暴れ回ったおかげで、地面の振動から動きを読ませてもらったぞ!」
「グルルル……!?」
蓮十郎は蟻地獄じみて凹み陥没する地面の流れから逃れ、瓦礫を蹴り上がる。一瞬でも跳躍するタイミングを間違えれば、瓦礫もろとも飲み込まれていただろう。しかし!
「この砦も、その下でぬくぬくと育った貴様らもまた圧政の一部……ならば」
ずるり、と試製鉄刀が不穏に唸った。大蛇は己の頸を断たれる幻視を得た――それは本能がもたらす危険の予兆。人で言うところの虫の知らせ。生存しようとする脳がはじき出した、ほとんど確実な未来の結果だ。
奴らに、それを避ける地力はない。
「完膚なきなまでに、叩き潰すのみ――!」
空中に躍り出た蓮十郎は、類まれな体重移動によってそのまま真下に向け反転。
すり鉢状に陥没した地面の中心――大顎を開けて獲物を待ち構えていた大蛇に鋒を向ける。ここが分水嶺だ!
「一切合切、突き! 穿つッ!」
瞬間、男は一条の彗星となり、垂直に地を劈いた。
風切りの音が暴乱の騒音を切り裂いて、一瞬の静寂が訪れる。
さながら真空に風が吹き込むかの如く、遅れて衝撃波と爆音が荒れ狂う。放射状に吹き荒ぶ岩破の激甚たる衝撃!
「グ、ガ……!!!」
一の剣にて二の屍を生む。地中という絶対有利のはずの閉所は、結果的に逃れようのない監獄と化して大蛇を弄んだのだ。
刀の突き立った地点を中心に八方向に亀裂が生じ、それは雪の結晶じみて無数の破砕となる。
ミシミシと致命的な破壊の余波が壁に、天井に骨組みに木格子に及び、この世の終わりのような轟音を立てて全てが崩れ落ちた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
「馬鹿な……」
盛大な土埃と、轟音の残響。そしてうず高く積み重なった、砦であったものの残骸。
己が手ずから躾けた大蛇が、建造途中の鎖国砦もろとも滅んだことに、加藤段蔵は愕然とする。
無論、一網打尽の危険は承知の上だった。自ら上方の警備を担い、いつでも動けるようにしていたのはそのため。
端的に言えば、奴はディアボロスの機を見るに敏たる韋駄天ぶりを侮っていたのだ。結果としてはそうなる。
「……もはや俺に残された道は一つ」
土煙が晴れる。復讐者と怒りの忍は、円形状に吹き飛ばされ積み重なった瓦礫の闘技場で相対することとなる。
「貴様らを皆殺しにし、その首級を持ち帰ることで不始末を片付けることだけだ……」
跳び加藤が身構えた。撥条仕掛けの手足を用いた跳梁跋扈は、変幻自在の動きでもって復讐者を翻弄するだろう。
その間隙を縫い、必殺の一撃を叩きつけろ。
野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎
砦の破壊は成りました、しかしこれで終わりではありません。
ヒルコの人たちがもう二度と虐げられることの無いように……ここで討たせてもらいます、天魔武者『加藤段蔵』。
相手は確かに『跳び加藤』の名に相応しい跳躍力を発揮するための姿をしているようです。
バネ仕掛けによる変幻自在の動きは脅威、しかしその跳躍の前には必ずバネをたわませる……地に足を着ける必要があるでしょう。
狙うのは動きが止まる一点、着地の瞬間です。
《雷光刀『雷花』》を手にし着地の瞬間を狙って最速の一撃を『加藤段蔵』に見舞いましょう。
【先行率アップ】と【命中アップ】の導きに従い着地の好機を逃さず斬り込みたいですが、もし狙い通りにいかない時は『加藤段蔵』が飯綱落としをしようと私を捕まえて跳び上がる前を狙います。
飯綱落としを完全な形で受けるのは避けたいです、私を捕まえようとする腕に攻撃を加えましょう。
連携できる仲間がいれば【パラドクス通信】で変幻自在の動きを見失わないように『加藤段蔵』の居場所を知らせ合います。
篠村・蓮十郎
不始末か……その点は考えずとも良い。
砦と同じく、貴様はここで潰えるのだからな。
奴は跳んでいるだけ……飛んでいる訳では無い
空中で跳ばぬ限りはどれだけ高速であろうと、軌道も速度も一定だ
狙いを付ける事は不可能では無い
皮鉄での防御も含め、味方と死角を補い合い敵の出方を窺う
跳躍の速度、軌道、最高高度、動きの癖を観察し
一撃を撃ち込むための機を待つ
パラドクス通信もある、声掛けは適宜行い極力隙を見せぬように努めよう
跳躍には着地と溜めが必要だ、狙うのならばそこになるが……
奴とて愚かでは無い、自身の弱みも把握している筈
ただ狙うだけでは足りないか
移動から攻撃に移る際の跳躍、その瞬間に仕掛ける
跳躍軌道を追いつつ味方からの情報と合わせ襲い来る位置を把握
試製鉄刀を構え、胴体へ目掛け渾身の刺突[剣技・八咫]を放つ
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
ようやくお出ましか、ご覧の通り砦は見事な様になったぜ
そう簡単に殺されるほど甘くはないぜ
お前はここで倒させて貰う!
【行動】
仲間と声を掛け合いながら積極的に連携していく
敵の攻撃は盾のフェイク・プリドゥエンを背中に背負い
電光警棒を構えて前方・後方からの攻撃に備えておく
それからパラドクスを使用した広範囲の動く物を凍らせる爆弾を製作
中の水は敵以外にはただの水として作用するから投擲して仲間が困らないように配慮する
バネ状の手足の一部でも凍れば動きにくくなるだろうから
仲間が攻撃するための隙を作ることもできるだろう
必要なら臨機応変に対処する
●跳梁跋扈
瓦礫の山ならぬ、山に舞う瓦礫。
「けええっ!!」
怪鳥音を後に引き、すさまじい速度で跳梁する加藤段蔵のスピードが、もはや見る影もない砦の残骸を舞い上げる。
右、かと思えば左、と思えば後ろ、はたまた前方・頭上・またしても右。
目で追うには疾すぎる。
肌で感じるだけではまだ足りない。
五感を研ぎ澄まし、培った経験と第六感を全力で働かせてようやく捉えられる、人外の速度だった。
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)、篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)、荒田・誠司(雑草・g00115)の3人は、背中を合わせて死角を殺す。
一瞬でも隙を見せれば、その瞬間に首級を獲られかねない。互いに一撃一撃が必殺の極限状態だ。
「たとえどれだけ素早かろうと、飛ぶのではなく跳んでいるだけだ。軌道も速度も一定のはず」
蓮十郎は、半ば己に言い聞かせるように呟いた。
「狙いをつけるのは、不可能ではない。そうだな?」
「ええ。バネ仕掛けの動きは、まさに変幻自在ですが」
祐樹はすでに一分以上も瞬き一つせずに見開き続けていた。
動きの全てが見えているわけではない。しかし一秒を数十に割ってなお一瞬一瞬を認識出来るほどの動体視力は、視界に焼き付いた跳び加藤の姿を決して忘れない。
「跳躍である以上、どこかで地に足をつけるはず。狙うべきは着地の瞬間です」
「しかし、それはあちらも承知の上……か」
誠司はゴーグルの視界を微調整する。敵のスピードに自動補正してるようでは、先にシステムエラーを起こしかねない。
「それなら、俺に考えがある」
誠司の言わんとすることを、蓮十郎と祐樹は説明されるまでもなく肌で感じ、理解した。
……二人は無言で頷いた。互いの覚悟を示すには、それで十分だった。
●
敵の動きは加速に加速を重ね、もはや3人を台風の目とし嵐のように渦巻いている。
風に舞い上げられた瓦礫が横殴りに吹き荒び、脱出不可能の死の牢獄めいていた。
「さあ、誰から死ぬかは決まったか!」
さながら天地を揺るがす鬼の咆哮じみて、加藤段蔵の大音声が轟く。
「貴様か? それとも、貴様か。俺に手向かい死ぬのは誰だ!!」
「そう簡単に殺されるほど、こちらは甘くないぜ」
誠司は腰を深く落とし、電光警棒を身構えた。
「お前はここで倒させてもらう。この見事な瓦礫の山を、お前の墓標にしてやるよ!」
「なるほど――どうやら貴様から死にたいようだなあ!!」
「「!」」
風向きが変わった。攻撃が来ることを二人は感じ取る!
「そうだ、かかってこい!」
同時に誠司は駆け出していた。
ただの囮ではない。その手の中には、すでに一瞬で生成された爆弾が握りしめられている。
中にはさらに小さな爆弾が複数内蔵されていて、外殻の爆裂によって拡散、連鎖爆発によって特殊な水を撒き散らし、一瞬で凍結させるものだ。
(「こいつでバネ足を止めれば、二人の攻撃が当たりやすくなるはず」)
誠司は極度緊張で鈍化した時間の中、冷静に思考する。
逆説連鎖戦において、攻撃と反撃は等価である。加速を重ねた敵の高速斬撃は確実に誠司に命中するだろう。
まるで無数の軍勢に囲まれているような錯覚を感じる。現実では一瞬の間に、原形もないほどに切り刻まれる『はず』だ。
スローモーション映像めいた主観時間の中でさえ、嵐のなから飛び出した加藤段蔵は分身していた。正しくは分身したかのように認識してしまうスピードで動いているのだ。
回避はもとより不可能。誠司は、己を交差点として急速に窄まる刃の牢獄の只中にいる――牢獄? 牢獄……!
劇的な一瞬が、訪れた!
「おおおっ!!」
「なあっ!?」
勇猛な叫びと困惑の絶叫が同時に響いた。その時、すでに祐樹と蓮十郎は動いている。
二人をして全てを知覚出来ない、刹那をさらに寸刻みにした瞬きのこと。
何が起きたのかを脳で咀嚼するより身体を動かす。鍛錬というルーチンワークは、こうした分水嶺に己を動かすためにこそある!
「もらった!」
「そこです!!」
二人は離人症めいて、X字を描くように交錯した自分たちを俯瞰した。己の叫びが、駆け抜けたあとに背中を叩く。
脳から電気信号を下しているのでは遅すぎる。筋に、骨肉に、魂に刻み込んだ剣筋を、ただ愚直になぞったのだ。
……時計の針を止め、一秒分巻き戻そう。
誠司は敵の初撃が己に到達した瞬間、身を捩った。人体でもっとも頑丈な背中で、かつフェイク・ブリドゥエンを重ねることで刃を受けたのだ。
当然、その時には二撃目が別角度から到来している。しかしこのとき、誠司は手に持っていた爆弾を真下に投擲していた。
先述の通り、凍結爆弾は二度の爆発によって初めて効果をもたらす。面制圧効果は高いものの、ただ闇雲に投げただけでは小型爆弾を回避されかねない。
だが、自分自身を爆心地としたならば。
誠司の足元に叩きつけられた爆弾が一度目の炸裂を起こし、小型爆弾を撒き散らす。
(「小賢しいことを!」)
跳び加藤は嘲笑い、そのすべてを一瞬で見切り、爆発範囲さえ読んだ上で跳ぼうとした。
(「肉を切らせて骨を断つてか? その覚悟には敬意を表すれど愚かなり!」)
しかして嘲笑はすぐに絶える。誠司自身は、凍結に巻き込まれていなかったからだ。
(「馬鹿な」)
直下での炸裂。それは考えうる中で最短かつ最速の一撃だ。
加えて地面という障害物で反射した小型爆弾は、放射状ではなくほぼ垂直に跳ねる。氷結嵐の結界は、噴き出す間欠泉めいて直上に昇り、以て高度アドバンテージを封殺したのだ。
跳躍という上方向への移動を主とする加藤段蔵では、この嵐から逃れることはできない!
かくて、パキパキと空へ伸びた氷の中に、加藤段蔵は囚われた。
(「ならば、手を使えばよい!」)
加藤段蔵はバネ仕掛けの腕を伸ばし、適当な障害物を掴んでバネを縮めることで、囚われの状態から収縮によって離脱しようとした。
だが伸ばしてから気付く。己の体重を支えうる堅牢な障害物など、この場にはもう残されていないことを。
……迂闊と断じることはできない。極限速度では、彼らのような歴戦の戦士でさえ当然の事実を見落としてしまうこともあるのだ。
付け加えれば、これは砦の破壊を成し遂げたディアボロスらの功績だった。
徹底的な破壊は、以て加藤段蔵が有利となりうる閉所アドバンテージを文字通り真っ平らにし、この結末を齎したのだ。
かくて、伸ばした手は虚しく空を切る。この時点で奴の運命は決した。
時間が再び現実に追いつく。
「雷花が覚醒の一」
ばちり、と荒れ狂う稲妻の刃が身を捩る。しかしてそれは残滓に過ぎぬ。
「――迸雷爪」
納刀する祐樹の背後には、神速かつ超高熱のプラズマ斬撃によって斬り裂かれ、局所的に生じた真空の軌跡がある。
空気そのものが熱を孕み、真一文字の空がパチパチと紫電を纏っていた。その只中に段蔵の胴体。
「あいにく流派はない。だが銘はある」
対して蓮十郎。
「"八咫"だ」
地上に降りた星めいて、8つのきらめきが段蔵の正中線をなぞった。
一瞬の内に、8の刺突。
通常、腕を引かねば次の刺突は繰り出し得ない。威力を生むには相対距離が必須だからだ。
この剣技は尋常の道理を貫く。常軌を逸した踏み込みが、「引かずして突く」という矛盾の術理を現実となす。
ばかりと、天魔武者の五体が四つに割れた。
「見、事……!」
純粋なる感嘆が断末魔に代わる。直後、跳梁の忍は爆発四散!
「……これでもう、この地のヒルコの人たちを脅かさせはしません」
「不始末のことは、これで考えずともよくなったな」
ぱきんと割れ砕けた氷が、一陣の風に吹かれて舞う。それは風花を思わせた。
「死して屍拾う者なし、か。忍びらしい最期じゃないか」
誠司は振り返る。
そこには砦も天魔武者も、忌まわしき牢獄も跡形もない。
ただ寂々とした、何もない山野だけが広がっていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【先行率アップ】がLV2になった!
●隠れ里
戦いを終えたディアボロスは、追手が現れぬうちにしめやかにその場を離れ、隠れ里の建設予定地へ向かった。
道中、ほうぼうの体で逃げ延びたヒルコたちと合流し、彼らを鼓舞して連れゆくことも忘れていない。
「……今日から、ここで暮らすの?」
候補として選ばれたのは、肥沃な土に恵まれた名もなき山の麓だ。
周囲に村落はなく、唯一の路は深い木々に囲われる。あえて目指さねば迷い込むこともない立地である。
「ようやく、安心できる」
肩の荷が降りたのか、少年めいたヒルコはほっと胸をなでおろした。
牢屋の中で見せた絶望や憔悴は薄れている。しかし彼らが味わった辛酸はそう簡単に拭い去れるものではない。
共に土を耕し小屋を建て、汗水垂らしながら言葉を交わすことで、日常という慰みを分かち合えるだろう。
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
食料もだが住むところがないとなると大変だよな
あとは敵が来た場合の備えをしよう
鳴子の変則バージョンとか作ってみるか
【行動】
一日で立派な家とかは無理だろうがテントに近い簡易住宅ならいけるんじゃないだろうか
せめて屋根のある場所で寝泊まりしてほしい
怪力無双で真っ直ぐな建材があればそれを中央に立ててそこから建材を組み合わせて三角錐のようなテントを作ってみる
被せる布には持ってきた蝋を塗り防水し雨にも備える
一緒にやって作り方を覚えてもらいたい
あとは敵への備えも必要か
相手は一般人が太刀打ちできる存在じゃない
なら、いち早く襲撃に気づいて避難経路してもらおう
集落から少し離れた場所に網を敷いて鈴や木片などの当たると音が鳴るものをつける
そうしておけば敵の足に引っ掛かれば大きな音が鳴って周囲に知らせてくれるはずだ
一目で分からないように仕掛けは地面と同じ色に塗った上で砂を被せておこう
俺たちがいなくなっても問題ないように
その場所にあった材料と技術を使う
野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎
ヒルコの人たちが暮らしていけるように生活基盤を整えないとですね。
【アイテムポケット】に入るだけ持って来た必要な物を提供していきます。
当面の食事のための排斥されない保存のきく食料。
土を耕すためにヒルコの人たちでも使いやすいサイズの農具。
畑で育てる食料の種や苗。
食料は干し飯の他に栄養も考えて野菜の漬物があると良いかもしれません。
干した果物などもあれば嬉しいでしょうか。
ヒルコの人たちにとって力仕事は負担が大きいかもしれませんけれど、農具を使えば農作業の負担は減らせるはず。
私たちが帰った後も生活に支障のないように一つ一つ確認しながら土も耕して種や苗を植えていきましょう。
時間が許すなら山菜を探して採り方についても伝えましょう。
改竄世界史でどこまでアテに出来るか分かりませんけれど、今の時期ならナズナやユリ根など採れるでしょうか?
もしフユイチゴがあれば狙いたいですね。
篠村・蓮十郎
砦から彼らを救ったは良いが、これから生き延びられねば元の木阿弥と言うものだ
まだ果たすべき事は多いな
家事や炊事に農作業……十分な水が必要になる
周囲を探索し水源を見つけておき
里の近辺へ水を引いておこう
加えて食用になりそうな果実などの群生地帯も確認しヒルコたちに伝えておく
万一に備え可能な限り身を隠しかつ迅速に退避出来るよう、脱出経路を確立しておいた方が良い
どこから敵襲があろうとも対応するため、経路は複数欲しい
背の高い草の密集具合を見て経路を構築
時間があれば演習……と言うほどでは無いが、実際に経路を辿って貰おう
●忍の一字に籠めたるは
当面の飢えを凌ぐための保存食。
よく手入れされた、使いやすい農具。
耕した土に植えるための種や苗……。
「す、すっげぇ」
少年めいたヒルコは、ひょいひょいと出てくる生活必需品に目を剥いた。
「あんた達、こんなものまで出せるのか!」
「仏様の使い……いえ、仏様だわ」
「皆さんを助け出したのなら、このぐらいは当然のことです」
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は眉をハの字にして苦笑する。
もはやこの手のリアクションは慣れたものだが、そこで「いかにも我こそ救いの仏なり」とふんぞり返って慢心しない謙虚さが、彼女を彼女たらしめるものといえよう。
なお、そんな裕樹が持ち込んだ食材は、干し飯やドライフルーツ――もちろんこの時代の日本にあって然るべきものを選んでいる――だけでなく、野菜類の漬物も用意していた。抜かりなし、だ。
「食事もだが、住むところがないとなると大変だよな。というわけで俺が用意したのはこれだ」
荒田・誠司(雑草・g00115)が取り出したのは、ちょっとしたテントのような簡易住宅の材料だ。
それそのものを持ち込むのは他の準備物との兼ね合いなどもあったため、この時代で再現しうる物資をバラして持ってきた、というのが正しいが。
「まっすぐな建材があれば、それを中央に立てて三角錐のような形に出来るだろう。一緒に探してくれるか?」
「もちろんです! 私たちの住まいになるんですから!」
と、目に輝きを取り戻した少女ヒルコが云う。
見かけで誤解しそうになるが、彼女らは立派な大人。ここまでされて、その義に報いないわけにはいかないという、力強い生への欲求を取り戻してくれたようだ。
「私も、持参した品々を取り分けたらお手伝いしますね」
裕樹の言葉に、誠司は頷く。
共に手を取り合い、一つの作業に従事する……その行為がなによりも、彼らに明日を目指す活力を与えてくれるはずだ。
一方、篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)はというと。
「ふむ……ここなら十分な水源になるか」
近くの木々や草むらをかき分け、水源になりうる池を探していたようだ。
「できれば井戸がほしいところだが、掘るのにはまた時間がかかる。まずは当座を凌ぐための水がないとな」
家事や炊事、農作業。それに、人間として生きるなら最低限の清潔を保つ必要だってある。今まで囚われていたヒルコたちは、それさえ許されない状況に置かれていたのだ。
人間として、あるべき当然の生活。新宿=最終人類史の常識は、この時代……いや、このディヴィジョンでは叶えるのが遥かに難しいとは言え……。
「ねえ、あそこに果物が生ってたよ! お兄さんの言ってたとおりだ!」
と、少年めいた別のヒルコが駆け寄ってくる。
水源とともに、それらの食用になりうる群生物も見つけてもらうよう、蓮十郎から頼んでいたのだ。
「それは助かる。俺だけでは、さすがに手が足りないからな」
こうしてヒルコにも仕事をしてもらうことで、一方的な施しではないという意識を与えれば、自立に大きく繋がる。
(「砦から救っても、生き延びるためにやることは多い。どれが欠けても元の木阿弥だ……」)
ただ救って終わりなどと、無責任な真似はしたくない。蓮十郎なりのけじめであり、ある種の信念ともいえる。
果たすべきことは多いが、笑顔で喜ぶヒルコたちとともに探検して励むのは、苦ではなかった。
道具を用意してもらえたおかげで、農作業の準備は驚くほど早く進む。
ヒルコたちも、囚われるまでは彼らなりの暮らしがあった。必要なのは場と手段、そしてなにより生きる意思だ。
「おかえりなさい。果物が生っていたそうですね?」
「ああ。ただ、俺たちのほうだと山菜までは見つからなかった」
水源確保から戻ってきた蓮十郎の言葉に、裕樹は少し嬉しそうに微笑んだ。
「なら、私の知識も役に立つかもしれません。今の時期ならナズナやユリ根も採れるかもしれませんし……フユイチゴとかも」
「詳しいな」
誠司の素直な言葉に、裕樹は「とんでもないです」と恥じ入った。
「改竄世界史で、どこまでアテにできるかわかりませんから、あくまでも気持ち程度のものです。それよりも……」
「防衛についてだな」
誠司は裕樹の言わんとしていることを察した。
衣食住の充実は、パラドクス効果を使えばそう難しいことではない。
しかし隠れ里の警備や、安全については100%を望むのは困難だ。
この里自体が見つけづらく、また自然の要所として高い防御力を有するが、ディアボロスとして万全を期したいのは当然のことだろう。
「さきほど、簡単な鳴子のようなものを仕掛けておいた。ないよりはマシのはずだ」
「手早いな。住居を設営していたんだろう?」
そう言われて、誠司はニヤリと笑う。
「そこはさすがはこの時代の住人、だな。俺が思っていたより、ヒルコたちが手際よく働いてくれたんだよ」
そう言って、農作業やその他の仕事に励む、子供めいた見た目の彼らを見やる。
その姿は、もう、牢屋の中で垣間見た死に瀕する憐れで痛々しいものではなかった。
それも、ディアボロスたちの言葉と献身があったからこそ取り戻せたもの。彼らは仕事を十二分に果たしたのだ。
「それじゃ、腹ごしらえをしたら、あとは避難経路の構築と確認だな。手を貸してくれるか?」
「任せてください。なんだかんだいって、私たちも働き詰めでしたもんね」
裕樹は「そうと決まれば、もう一息頑張りましょう」といい、襷を締め直した。
こんな圧政の中でも、復讐者を見習い生き延びようとする力強い人々がいる。
ヒルコたちの見本になれるよう、3人は隠れ里を離れるその瞬間まで、彼らに寄り添い懸命にこれからのための手助けをした。
その忍耐の心は、共同作業を通じてヒルコたちに伝わっただろう。彼らが、これからを生きていくための原動力として。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!