リプレイ
鳩目・サンダー
【避難勧告】を鳴らしながら臨場。
「バケモンどもがやってくるぞー!」
人々を墓地から退散させる。
避難先は教会の中、小屋の中、丘の下の平地。
「森から連中がやってくる。鎌を持った死神と黒猫の魔女だ。キマイラウィッチっていう連中の話は聞いたことがないか。」
悪いが弔いは中断だ、重い荷物はあたしが抱えてやるから早く森から離れろ。
信じてもらえなきゃ森の方に目を向けさせる。
言った通りの化け物が来ただろう、とっとと走ってくれ。
老人には肩を貸し、転んだ子は引き起こす。
一人も残らずこの場から。
一刻も早く逃がさなくては。
アドリブ、連携歓迎です。
不知火・紘希
アドリブ・連携歓迎だよ
僕たちと違って村の人たちは普通のひとたち。ただでさえ人生には別れもあるのに、想像するだけで心が痛くなる悲しみは起こさせないよ。
敵が来る方向が大体わかっているなら、そちらの方向は特に注意して観察しておかなきゃだね。
できれば敵が現れる前に、みんなを少しでも安全な場所に誘導したいけど……状況しだいで臨機応変に対応したほうがいいかな。
仲間が避難勧告をしてくれたら一緒に大きな声で呼びかけるよ。危機せまった表情で、死神さまがくるんだ!なんて言いながら、走れる人は早く平地に戻るように伝えよう。
おとなのひと、特に男の人には女の人や子ども、ご老人を連れて丘の下へ。仲間の影を追って早くね!
どうしても平地への避難が難しいひとたちは小屋や教会に隠れてじっとしてるように誘導するよ。
ダフネさんやお母さんが心配。悲しみはひとを鈍くさせてしまうから。
でも僕たちが必ず守る。大切なひとが眠るこの場所もきっと。
だから誰ひとり、悲しまないように。苦しまないように。
僕たちが戦うから、君たちは生きのびるんだ!
●
死者を弔う鐘の音がする。
憎らしいほど澄みきった青空の下、冷たい風が褪せた木々の葉を散らしていく。
小ざっぱりとした場所だった。森を背にした小さな教会の前に、村へとつながる一本の道が伸びており、その左右の敷地に様々な形をした墓石が並んでいる。
半円状の墓石の前で白百合を抱えた痩せた女が佇んでいた。吹けば飛ぶような儚さを滲ませる女の背中を支えるように、恰幅のよい中年女性が寄り添い、何か言葉をかけているのが遠目からでも分かる。葬儀用の衣類に身を包んた村人たちは、そんな二人から少しだけ距離を取ったあたりで、皆一様に沈痛な面持ちで項垂れていた。
現場に到着した矢庭に視界に飛び込んできた悲しい光景に、不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)は思わず唇を噛み締めた。
(「僕たちと違って村の人たちは普通のひとたち。ただでさえ人生には別れもあるのに、想像するだけで心が痛くなる悲しみは起こさせないよ」)
共に駆けつけた鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)は、そんな紘希の横顔を一瞥したあと、
「行くか」
力強く、駆け出した。
「バケモンどもがやってくるぞー!」
突如赤い光が明滅し、村人たちの周囲でサイレンが鳴り響く。空気を裂くような大声にビクリと肩を震わせた村人たちが、一斉に二人のほうを振り返った。
「死神さまがくるんだ!」
みなによく聞こえるようにはっきりとした口調で端的に告げると、場所が場所なだけにすべての感情が恐怖へと塗り替えられていくのが手に取るようにわかるほど、村人たちは震えあがった。
「悪いが弔いは中断だ。森から連中がやってくる。鎌を持った死神と黒猫の魔女だ。キマイラウィッチっていう連中の話は聞いたことがないか」
年嵩の村人たちに呼びかけながらも、サンダーがまだよくわかっていない子どもたちへ「村まで競争だ」とちいさな背中をポンと押して走るきっかけを作った。その傍ら、紘希は体が丈夫そうな若い男衆に、幼子を抱えた女性たちを連れて丘から下るように優しく指示を出す。
「早く森から離れろ」
腰を抜かしかけているお年寄りに肩を貸してやり、発破を掛けるサンダーが村人たちを連れて丘から下っていく。
早く。一刻も早く――。
気持ちが焦るほど、舌を噛んでしまいそうになる。
紘希が森を警戒しながら、みながきちんと村へと逃げ込むのを確認していると、背後で鋭く叫ぶような呼び声を聞いた。
「ダフネ、何してるんだい、行くよ!」
瞠目して振り返ると、胸の前で白百合を抱いた女性が、未だ墓のそばで立ち尽くしていた。そんな彼女の腕を、中年女性が引っ張っている。紘希はすぐに彼女がダフネだと気がついた。そして彼女を連れて逃げようとしているのが、故人の母親なのだと。
(「きっと、強い人なんだな」)
息子を亡くして辛いに決まっているのに、彼女はその恋人を死なせまいと今必死になっている。
(「でも僕たちが必ず守る。大切なひとが眠るこの場所もきっと」)
――だから誰ひとり、悲しまないように。苦しまないように。
やわらかな芝を軽やかに蹴り、二人の元へと駆けつけた紘希は、自分よりうんと背の高い女性を、俯いたその視界に映るように下から仰ぐ。
迷子になって泣きはらした子どものような目をした人だった。
虚ろな瞳に、やさしい色をした紘希の瞳が映りこむ。
「僕たちが戦うから、君たちは生きのびるんだ!」
ビク、と涙で濡れた瞳が揺れる。なくしたものを見つけたように、視点が定まる。そうしてゆっくりと、かすかな光が灯るのを見た。
一回り以上歳の離れた紘希の言葉に思うところがあったのか、あるいは何か別の理由か。ダフネはよろよろとした足取りで動き出した。中年女性はそんなダフネをやや強引に引っ張りながらも、けれど確実に逃がそうという強い意思を感じられる足取りでズンズン村へと進んでいく。
ちょうど、二人が下り坂に差し掛かる辺りで、村からサンダーが戻ってきた。すれ違いざま中年女性が小さく頭を下げて、ほどなく下で待っている村人たちと合流する。最も離れた、村の奥にある集会所に避難していくのが墓地から見えた。
そうして、まるで嵐が過ぎ去ったあとのように、丘から村人はいなくなった。
否、嵐はまだこれからだ。
風を切る音が、森から近付いてくる――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【過去視の道案内】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
ルリラ・ラプソディア
《甘唄》
他の方と連携◎
嵐が去った静けさ
村人達がいない事を確認
よかった…
みんな、無事に逃げられたのね
ここからはわたし達も共に戦うわ
氷のような薄紅の眼で敵を見据える
悼む人の祈りを邪魔しないで
隣でわたしの名を呼ぶ音
千景の方へ眸を向ける
冷たい眼は一瞬と柔らかく
だいじょうぶ、と伝う
翳り帯びた薄紅は地にSalut Épéeを刺し
ハープの弦に指を添えた
――生ける者の幸せの為に
どうか、いま一度の目覚めに赦しを
…あなた達の力を貸して
奏でる歌う音は地底から響く
其は深淵より奏でる昏き闇曲
死者の魂を震わせる呪歌
祈るは人々を守りたい願い
歌で敵を引き付け捕縛を試みる
千景や仲間の刃が確実に届くよう
絶対に、離さない
千景…彼女の剣を信じて
地に伏せ
祈りへの冒涜に罰を
敵の反撃にも気を配り
千景や仲間に攻撃が迫れば防御も視野に
結界術…音の鳴り響きが生む魔力の障壁を展開
…深淵の底で眠りなさい
悲劇は何人もおこさせない
この場所に在るのは
鎮魂歌…魂癒す安寧の調べと
やがて来る暁でいい
あなたが死神というなら
死者の眠りを妨げるものじゃないわ?
紫空・千景
《甘唄》連携◎
風切る音が来訪者の到来を告げるだろう
合流が遅れた分は此処より
いつもは綻ぶ薄紅が花氷を宿すのには因果も有るのだろう
…ルル、紡ぐ音は隣の彼女にだけ
相手に認識される前に迷彩に自らを溶け込ませ
可能ならば隠れておこう
夜の中に未だ夜明けは身を隠し
消した足音、呼吸さえ殺して
捕縛に合わせ敵の死角から
――仕掛ける
暁の刃を抜き呪と共に虚無の空間を裂き叩き落とす一閃
刹那が如き斬撃を振り抜いて
死神には深淵がお似合いだろう?
自らへの斧撃は先程から眺めた相手の動きと
忍ぶ足音の情報を察知しては暁の刃を持って勢いを削ぎ
――ルリラへ、届くとでも?
大鎌に滑らせ受け流しす夜明けの刃
勢いで吹き飛ばしたなら近付かせはしない
防ぎきれぬ猛撃は暁色の結界を音の障壁に重ねて
独りでは為せぬ事も複数居れば
其処に穴は無い
空間ごと一閃し虚無を何度でも開いて
何度でも、何度でも葬ってやる
居場所は此処ではないのだと
あんたらの命を刈り取るのは私達
死神への鎮魂歌は、無いな
魅せる朝焼け
けれどあんたらに明日はない
噫――凡て喰らう深淵がお似合いだ
不知火・紘希
アレンジ・連携は歓迎だよ
ちゃんと、みんな避難できたね。
ひと安心なところへ仲間も合流して
森の方からくる黒い靄だって、僕はひとりじゃないから怖くない
君たちが悲しませたいのは僕たちなんでしょう。ちゃんと知ってるよ。
だけどこれ以上、ここで好きにはさせない。戦うって約束したから。
君たちが連れた黒い悲しみを塗り変えて、幸せの景色を見せてあげる。
近くでお姉さんが紡ぐパラドクスを感じながら、死神たちが無闇にこの場所を荒らさないよう、祈りを重ねながら緑のクレヨンを選ぶよ。
魔法のクレヨン『リアライズ・グリーン』を発動して、敵をよく観察、仲間の攻撃が通りやすいよう足止めしながらダメージを与えていこう。
僕がいる限りずっと描き続けるよ、刈り取られても景色は終わらない。
ひとつ、ひとつ幸せで塗り替えていくように。
――悲しみを招く君たちはいらない。この場所にいちゃだめ。
柔らかだった緑の芝も、風も。
君たちはこの先に入ったらだめだって怒っているもの。
この村にも、村の人にも、そして仲間にも傷つけさせない。
ここでサヨナラだよ。
鳩目・サンダー
避難は間に合ったか。
初めましてクロノヴェーダ。
悪いが質問には答えない。要望を聞くつもりもない。
どうしてあたし達が此処にいるのか?
どうしてお前達と敵対するのか?
そうしたあたし達ディアボロスの情報を、欠片も漏らしてやるつもりはない。
対3体用パラドクス、エコーチェンバー を使用。
出来るだけ複数の敵を巻き込んで戦えるように立ち回る。
特に人が避難した方面には近づけさせない。
……とりあえず、今回は間に合ってよかった。
キマイラウィッチと聞くとどうしてもね、現場に到着した時点で助けようもなかった、あの火炙りの現場を思い出しちまうから。
アドリブ、連携歓迎です。
●
「間に合ったか」
すれ違ったとき、どこか後ろ髪を引かれる思いを捨てきれないような、虚ろなダフネの横顔を目にして一抹の不安を覚えたが、その姿ももう見えなくなったことに安堵して、鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)は小さく息を吐いた。
「うん。ちゃんと、みんな避難できたね」
もしダフネがもっと抵抗していたら――彼女たちの大切な人が眠る墓石を見つめていた不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)は、視界の端でこちらへと駆けつけてくる紫空・千景(夜明の導べ・g01765)とルリラ・ラプソディア(Ⅻの子守歌・g00784)の姿を見つけて、パッと表情を明るくさせた。
「よかった……みんな、無事に逃げられたのね。ここからはわたし達も共に戦うわ」
嵐が去った静けさ満ちる墓地を見渡し、ルリラはその唇に淡い笑みを浮かべてみせた。
けれど、いつもは綻ぶ薄紅が、転じて花氷を宿す眼差しで森を――否、未だ見えぬ敵を見据えたことに、千景は気がついた。
「……ルル」
何か、因果も有るのだろう。そう思いはしたが、千景は幽かに、彼女の名を紡ぐだけにとどめた。
己の耳朶にだけ触れた音。千景の方へと眸を向けたルリラが、ゆっくりと瞬きする間に、その冷たい眼は一瞬と柔らかくなる。
だいじょうぶ。
言葉にしなかった気持ちが、沁みるように胸の内側に拡がっていく。ひとつ頷いた千景は、相手に認識される前に迷彩に自らを溶け込ませると、墓地に陰りを落とす針葉樹の中に身を隠した。
風が鳴る。
空気を裂くように、鋭く細いうねりが近付いてくる。
木々の隙間を埋めるような黒い靄は、すぱりすぱりと梢を削ぎ、滑るように木立を抜けて、ついに白日の下にさらされた。地の底から湧き出る暗黒の影から生まれ出ずるような肢体。目深に被った黒衣で表情は読み取れぬが、細い指先が握る得物は、確かに命を刈り取る形をしていた。
(「僕はひとりじゃないから怖くない」)
死神兵グリムダムド。
紘希が己を奮い立たせる傍ら、翳り帯びた薄紅で敵を視認したルリラが、時を刻みて啓く、奏での剣『Salut Épée』を地に突き刺す。
「――少ないな」
先頭に居たグリムダムドが、三人を見て独語のように呟いた。
「初めましてクロノヴェーダ」
サンダーの言葉によって、グリムダムドたちの間でわずかに揺れたさざ波が、ぴたりと凪いだ。
「お前、――お前たちはディアボロスか」
「悪いが質問には答えない。要望を聞くつもりもない」
まだ何か話そうとしていたグリムダムドを遮って、サンダーはきっぱりとそう、断言した。
「どうしてあたし達が此処にいるのか? どうしてお前達と敵対するのか? そうしたあたし達ディアボロスの情報を、欠片も漏らしてやるつもりはない」
言うなり。
サンダーは、問いかけてきた先頭のグリムダムドが身じろぎするより早くエコーチェンバーを展開。
村人たちが避難した村を背に庇うようにして、進路をふさぎ、三体のグリムダムドたちをエコーチェンバーの空間に閉じ込める。
「ぐ、ぅ……」
電磁波、音波、あるいは己自身の攻撃といった様々なものを反射、増幅しいつまでも残響させる攻撃に、たまらずグリムダムドの唇から呻き声が漏れる。膝を突きかけたグリムダムドであったが、翼に密集した髑髏が身を寄せ合い、深遠を纏う大鎌となって、サンダーの躯体を斬り付ける。大気ごと裂くような一撃は、まさに『刈る』そのものだ。
反撃を喰らい、それでも動じずに敵の意識を村へと逸らせないように立ち回るサンダーの意思を察し、ルリラはハープの弦に指を添えた。
――生ける者の幸せの為に。
「どうか、いま一度の目覚めに赦しを。……あなた達の力を貸して」
奏でる歌う音は地底から響く。其は深淵より奏でる昏き闇曲。
死者の魂を震わせる呪歌、祈るは人々を守りたい願い。
「悼む人の祈りを邪魔しないで」
ルリラの歌声によって、死者の呪詛が伸びる手として具現化する。昏い地の底から這いあがってくるそれらは、死神の影纏う足元に絡みつき、容赦なく引きずり倒す。大地に頬を寄せるように、二体のグリムダムドが倒れ込み、沈黙する。
地に伏せ。
祈りへの冒涜に罰を。
は、と短く呼気が漏れた。息つく暇もないとはこのことだ。
紘希はそばでルリラが紡ぐパラドクスを感じながら、死神たちが無闇にこの場所を荒らさないよう、祈りを重ねながら緑のクレヨンを選んだ。
「君たちが悲しませたいのは僕たちなんでしょう。ちゃんと知ってるよ。だけどこれ以上、ここで好きにはさせない。戦うって約束したから。君たちが連れた黒い悲しみを塗り変えて、幸せの景色を見せてあげる」
魔法のクレヨン『リアライズ・グリーン』を発動。
緑のクレヨンで植物を描くと、それらが実体化し、具現化された蔓はグリムダムドたちに絡みついて、身動きを阻害する。繁った枝葉は死神の躯体に打撃を与え、咲いた花は見る者の心を惑わせる。
寂しさと悲しみに満ちていた墓地に、鮮やかな緑が咲く。まるでそこにだけ、春が芽吹いたように。
「僕がいる限りずっと描き続けるよ、刈り取られても景色は終わらない」
ひとつ、ひとつ幸せで塗り替えていくように。
「――悲しみを招く君たちはいらない。この場所にいちゃだめ」
「……戯言を」
グリムダムドもただ黙って攻撃を喰らうだけではなかった。
地に伏しても、十字架に張り付けにされたように身を固められようとも、死神の意思に応じて髑髏たちが集まり、 暗滅の髑髏鎌となって紘希の華奢な身体に襲いかかる。
「いずれ死ぬ。ただ早いか遅いか、それだけの話だ」
得物をくるりと翻し、空を切ったグリムダムドの挙措に、小さく息を飲んだのは誰だったのか。
静かに。
消した足音、呼吸さえ殺して、ただその瞬間を待っていた。
(「――仕掛ける」)
針葉の葉が揺れるより早く暁の刃を抜き、呪と共に虚無の空間を裂き叩き落とす一閃が、囀るグリムダムドを斬り伏せる。
刹那が如き斬撃を振り抜いて、
「死神には深淵がお似合いだろう?」
その存在ごと虚無の底へと突き落とす。
どこぞから現れた千景によって、亡き者とされた同胞を見やり、別のグリムダムドが頸を目掛けて御霊刈りの斧を薙ぐ。相手は千景ではなく、並び立ったルリラであった。
迷いのない、まるでそうするのが当たり前とすら思うほど流れるような動きで寄越された一撃を、千景は暁の刃を持って勢いを削ぐ。
「――ルリラへ、届くとでも?」
大鎌に滑らせ受け流しす夜明けの刃。勢いで森の方まで吹き飛ばすと、グリムダムドは木の幹に背を打ち付け沈黙した。
風が吹いた。
死神が呼ぶ不吉の風ではない、大地を、生きる人々をやさしく撫でる風が。
「柔らかだった緑の芝も、風も。君たちはこの先に入ったらだめだって怒っているもの。この村にも、村の人にも、そして仲間にも傷つけさせない」
直接肌で感じる風の、なんと心地の良いことか。
まるで『頑張れ』と応援されている気持ちになる。風に背を押されるようにして、紘希は敵の猛攻に反撃するサンダーと一緒にグリムダムドに立ち向かっていった。
「空間ごと一閃し虚無を何度でも開いて、何度でも、何度でも葬ってやる」
「……深淵の底で眠りなさい。悲劇は何人もおこさせない。この場所に在るのは鎮魂歌……魂癒す安寧の調べとやがて来る暁でいい」
瀕死が生み出す猛撃は、音の鳴り響きが生む魔力の障壁を展開したルリラの結界術に千景の暁色の結界を重ねて受け止めて見せた。たとえ防ぎきれずとも、独りでは成せぬことも仲間がいれば、小さな穴すら作りはしない。
一人、また一人。確実に、的確に、どんな些細な隙も逃さず追い詰めていく。
「あんたらの命を刈り取るのは私達」
居場所は此処ではないのだと。
突き付けられた言葉に思わず漏れたのは言葉ではなく、生温かい『何か』。こふ、と這い上がってきたソレを吐き出すと、乾いた土がどす黒い液体で濡れ、じわりと滲んでいく。
どんどん、どんどん。溢れてくる。零れてくる。この光景を、知っていた。この感覚は知らなかったけれど。
命が――。
「ここでサヨナラだよ」
紘希の憐みの一声だった。
倒れ込む間際に見えた世界に立っているのはディアボロスの四人だけであった。あんなに居た同胞は、皆とうに尽きている。立っていたのは、自分だけであったのだ。
目先のことしか頭になくて、ひとりきりとなったグリムダムドの元へと歩み、
「あなたが死神というなら、死者の眠りを妨げるものじゃないわ?」
その黒衣に隠れた顔を窺うように小首を傾げたルリラが、ちいさく囁いた。
「死神への鎮魂歌は、無いな」
傍らに寄り添い、風に紫鴉の髪を揺らし、紫に赤が混じった夜明空の視線で朽ちていく死を眺める。
「けれどあんたらに明日はない。噫――凡て喰らう深淵がお似合いだ」
「……とりあえず、今回は間に合ってよかった」
完全に消滅したグリムダムドを見届けて、詰めていた息を吐き出すようにサンダーが零した。
「キマイラウィッチと聞くとどうしてもね、現場に到着した時点で助けようもなかった、あの火炙りの現場を思い出しちまうから」
「火炙りなんて、面白味に欠けると思わない?」
思わぬ言葉に、ギュッと心臓を鷲掴みにされたような思いがした。
気配を感じて背後を振り返ると、森の小道からとんがり帽子を被った少女がゆっくりと歩いてくる。死の匂いが充満する空気を胸いっぱいに吸い込んで、無垢な子どものようにきゃらきゃらと笑っている。
「猫焼き祭りなんて、どう?」
黒猫が青空の下で、にゃあと鳴いた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水源】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
【能力値アップ】LV2が発生!
鳩目・サンダー
魔女と黒猫ならぬ魔女で黒猫かい。
初めまして魔女さんよ、ポートレートはいかがかな。
使うパラドクスはリアライズペイント。
敵自身の姿を描く、格上相手の常套手段だ。
猫を肉体から生み出す魔女……なるほど、絵画と言う一瞬を切り取る手段じゃあ、中々その有様をギャラリーに伝えるのは難しい。
こんな風に動く絵じゃなきゃあな。
WIZ同士のぶつけ合いなら百万回死んだ猫があたしの相手となるだろうか。
生傷を埋めるように生える猫、そこから千切れ落ちる猫、突撃する猫、そして不可解に倒れ死ぬ猫。
参ったね、動画どころかト書き付きの漫画でもなきゃ説明しきれん。
なればあたしに出来るのは見た儘を描くのみ。
……いや、もっと傷を生臭く、残虐で痛々しいものに出来るはずだ。
てめえらクロノヴェーダの死に様にはげっぷが出る程付き合ってきた。
身の毛もよだつような「傷口」とそれを象徴する猫を走らせてやろうかい。
アドリブや連携 歓迎です。
●
(「魔女と黒猫ならぬ魔女で黒猫かい」)
蝋燭の火で膚をゆっくりと炙られているような、じりじりとした殺気を覚え、鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)は思わず目を眇めた。
少女の躯体に絡みつく幾匹かの黒猫が、月のような瞳でこちらを真っすぐに見据えているのは、己を獲物だと認識してのことだろうか。ゆったりと気ままに体をしならせ、少女――ソルシエール・デュ・シャノワールの首裏に回り込んで肩口から顔を出してみせたり、足元にすり寄りながらも尻尾の毛をふわりと広げてみせたりしている。
サンダーは詰めていた息を吐くと、
「初めまして魔女さんよ、ポートレートはいかがかな」
スタイラスペン型のペイントツールを手に取った。
刹那、双眸を大きく見開いて口元の笑みを一層深めたソルシエールが、右手に握った木杖を滑らせた。紫色の怪しげな光が軌跡を描いて、サンダーを捉える。
(「猫を肉体から生み出す魔女……なるほど、絵画と言う一瞬を切り取る手段じゃあ、中々その有様をギャラリーに伝えるのは難しい」)
まるで踊るような滑らかさで、空中にソルシエールと黒猫の姿を描いたサンダー。
「こんな風に動く絵じゃなきゃあな」
ペンの切っ先を敵に向かって突き付けると、絵が実体化しながらソルシエールに向かっていく。
「わぁお」
おどけた様子で描かれた自分を眺めるソルシエール。その華奢な身体に、飛び掛かった猫たちが噛みついた。白皙に牙を突き立てられ、つぷりと破けた皮膚の下から赤い血がぷっくりと溢れてくる。ソルシエールは噛みつく猫たちを見て「うふふ」と笑い声を漏らした。
「痛ぁい、ね」
鈍い音がした。
サンダーが描いた絵のソルシエールが、瞬く間に掻き消える。まるで何かに引き裂かれたような衝撃音に気付いたとき、すでに『ソレ』は己の懐に潜り込んでいた。
「にゃッ」
短い鳴き声がサンダーの頬を掠めた。
黒い一塊が、空いた懐から跳ねるようにして飛び上がってきたのだ。反射的に頸を逸らして、突撃を交わしたサンダーは、それが黒猫だと気がついた。
背後でくすくす笑う魔女の囁きが聞こえる。
「ざぁんねん」
振り返ると、猫が喰らいついたばかりの傷口から、黒猫が『生えて』いる。それらが傷口から飛び出してきて、サンダーに襲い掛かってきたのだ。では先ほどの黒猫は――塊が飛んで行ったほうを見やると、小さな黒猫が地に伏して倒れていた。死んでいるらしかった。
「生傷を埋めるように生える猫、そこから千切れ落ちる猫、突撃する猫、そして不可解に倒れ死ぬ猫。――参ったね、動画どころかト書き付きの漫画でもなきゃ説明しきれん」
勘弁してくれとばかりに、思わず疲れた笑みを滲ませる。
「なればあたしに出来るのは見た儘を描くのみ」
すぐに唇の端を吊り上げるようにして強気に笑ったサンダーは、ペンを握り締める五指に力を籠める。
この指先は、ペンは無力ではない。
「……いや、もっと傷を生臭く、残虐で痛々しいものに出来るはずだ。てめえらクロノヴェーダの死に様にはげっぷが出る程付き合ってきた。身の毛もよだつような「傷口」とそれを象徴する猫を走らせてやろうかい」
不敵に笑うサンダーの闘志に、魔女がにんまり微笑んだ。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【液体錬成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
紫空・千景
《甘唄》
アドリブ、連携◎
黒猫に魔女とはよく聞くが何方もとは、又
無垢な笑い、無惨な猫達
…悪趣味だ
此れが復讐だと謂うのなら、尚更
夏の祭りで焔猫を向けるのなら私も――魅せよう、夏の雨を
抜いた暁の刃が転じて辺り一面が水面となる
四季の祝福がひとつ
祝・蓮雫
雫が弾幕となり降り注ぐ水の戯
私もルリラも連なる睡蓮の途に立つ
降り注ぎ穿て、軌道は私の思うが侭に
そうして迫る焔猫には相手の号令タイミングを読み
相殺する様にぶつけ、燃え尽きる前に祈り拾う
焔に雨、二色の彩は綺麗だろう?
雫のひとつ落つる音が聞こえたなら
次はルリラの舞台
断頭台の幕開け
呪を断つ様に暁の結界を展開し
届かせる気は今も無い
形を戻した暁で薙いだならば吹き飛ばそう
祭りの否定
繋ぎて守り
或いは合わせての連鎖
重ねとは
繋ぐとは
矢張り独りでは成せぬ物
噫、では
雫の終わりに私も一閃しようか
復讐と祭りの夜は終い
其の先に在る暁を、夜明けの空を餞に
昏き夜の幕は今、降りる
…さあ、おやすみの時間だ
鎮魂歌の傍ら夜明け色の刃を地に突き立てる
死して眠る者へ
やさしい朝焼けが巡り廻る様に
ルリラ・ラプソディア
《甘唄》
アドリブ
他の方と連携◎
猫の死が大地に満ちる
千切れた命…無慈悲なる光景
魔女の…無邪気に笑いながら放つ刃に
どんな復讐心が乗せられているのだろう?
死に絶える黒猫を撫でて思う
次はわたし達と踊りましょうか?魔女のお嬢さん
Salut Épéeの弦を奏でて紡ぐは
魔女の行進を止める終止符
――音よ、終焉を導いて
復讐に濡れた者を在るべき処へ帰す為に
蝶のように刃を躍らせ断頭刃が如く鋭く落ちるように
演奏は敵の精神を蝕む調べ
音による攻撃照準を乱す呪詛を織る
共に戦う紘希さんにも目を向け
【未来予測】で少し先を読み
彼に敵の刃がゆくなら臨機応変に自らの剣で攻撃防ぐ盾と成る
――だめよ。彼の色は血になんて染めさせない…
…千景、わたしが敵を惑わせるわ
どうか最期の一太刀を共に
魔女の復讐がどんなに心を掻き立てようとも…
…ここから先に、往かせることはできない
昏き夜は…ここで、裂く…
断頭フォルテッシモ
あなたの復讐は此処で終わり
安らかに眠りなさい
戦が終わったその時は死せる者にわたしは等しく歌う
終焉が為の鎮魂歌
不知火・紘希
アドリブ連携歓迎
漂っている悲しい色の根源は
全部鮮やかな色に変えてしまおう。
敵の魔女から生まれて死んでいく猫をみて、転生を幸せと思っていた死者の間の人たちをまた思い出す
心が痛んでも、僕はそれだけで終わらせたりしないよ。
―あのときとは違う。
君のそれは希望の色がない幻覚だ。
ルリラお姉さんや千景さん、先行した仲間の気配に支えられて
幸せのガラスペンで描くは繊細な幸せの黒猫。戦場を駆けて死にゆく猫が天から降りて味方になったような、転生して更生したような猫。
猫を生やす傷口が追いつかないくらい、生えたあとの一瞬を看破するように猫には猫で、傷のない夜明け色の幸せ猫で対抗しよう。
観察すればするほどわかる、君がどう僕らを傷つけようとするのか、その隙にうまれる余裕はどこか。
幸せ猫と虹色のオーラでキレイに飾りつけしてあげるよ。絶望を生む魔女さんに永遠のサヨナラの準備。
ダフネさんの、そしてここのみんなの大切なひとたちが眠る場所に、君の色は遺さない。復讐心はこの地に似合わないもの
戦い終わったら心から、
白百合の祈りを。
●
地に伏したままであった黒猫が、塵となってさらさらと風に煽られ消えていく。
塵埃が舞っただけ――さほど気にした様子もない魔女へと視線を戻した不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)は、悲し気に目を細めた。
ソルシエールの肢体から生まれて死んでいく猫を見ていると、転生を幸せだと思っていた死者の書の間の者たちのことを、思い出してしまう。胸の内側の柔らかいところを細い針で突くような、鋭い痛みがぶり返してくる。
「心が痛んでも、僕はそれだけで終わらせたりしないよ」
クレヨンを仕舞い、ペイント箱から新たに取り出したのは幸せのガラスペン。
「――あのときとは違う。君のそれは希望の色がない幻覚だ」
漂っている悲しい色の根源は、全部鮮やかな色に変えてしまおう。
陽の光を通してきらきらと輝くガラスペンを握り、空をキャンパスにして紘希が描いたのは黒猫であった。繊細な美しいラインによって生み出された黒猫は、まるで戦場を駆けて死にゆく猫が天から降りて味方になったような、あるいは転生して更生したような猫の姿に思えてくるほど、眩しく目に映る。
「今度は、なにするのぉ?」
光を灯す杖の先端をこちらに向けて、トンボの目を回すようにぐるぐる空気を掻き混ぜて遊んでいるソルシエールに問われ、紘希は唇を引き結ぶように笑った。
「幸せ猫と虹色のオーラでキレイに飾りつけしてあげるよ。絶望を生む魔女さんに永遠のサヨナラの準備」
ガラスペンを滑らせると、幸せの黒猫がにゃあと鳴いた。あらかじめ先ほどの戦いで敵が受けた傷口の箇所を確認していた紘希は、『アート・オブ・ウォー』により、さらに彼女のあちらこちらをつぶさに観察する。
(「君がどう僕らを傷つけようとするのか、その隙にうまれる余裕はどこか」)
ソルシエールへと跳ねた幸せの黒猫が、色取り取りの光と色を帯び放ちながらその肢体に攻撃を仕掛けてみせた。ソルシエールが猫を生やす傷口が追いつかないくらい、生えたあとの一瞬を看破するように。猫には猫で、傷のない夜明け色の幸せ猫で対抗する。
「んふふ。うちのにゃあと全然違うね」
芸術的な一撃に目を眇め、受けた右腕をちらりと見やる。杖を構えた手で、咄嗟に顔を庇うような仕草をしたところへの攻撃だった。肘から下に新たな傷口が生まれ――そこからぬるりと、猫が生えてくる。
「ほーら、行っちゃえ!」
ぶん、と杖ごと腕を振ったソルシエールの動きに伴い、傷口から生えた黒猫が牙を剥き、勢いをつけて真っ直ぐ紘希に向かって突進する。
「ダフネさんの、そしてここのみんなの大切なひとたちが眠る場所に、君の色は遺さない。復讐心はこの地に似合わないもの」
その牙が紘希に届く前に、幸せの黒猫が間に入って攻撃を弾いた。
乾いた音を立てて、また一匹黒猫が伏す。
猫の死が大地に満ちる。千切れた命――無慈悲なる光景。魔女の――無邪気に笑いながら放つ刃に、どんな復讐心が乗せられているのだろうか。
草も生えぬただの道ばたで瞬く間に死に絶える黒猫を撫でながら、ルリラ・ラプソディア(Ⅻの子守歌・g00784)は思う。
ルリラの傍らに立つ紫空・千景(夜明の導べ・g01765)は、その淡い光彩の髪に秘された横顔を見、それから大地に横たわり残滓すら許されず消えていく黒猫を見、そうして最後に、ただあどけなく楽し気に笑っているだけの魔女へと視線を向ける。
無垢な笑い、無惨な猫達。
「……悪趣味だ」
此れが復讐だと謂うのなら、尚更。
五指で掴む『暁』の柄が、小さく軋む。
「次はわたし達と踊りましょうか? 魔女のお嬢さん」
ふいに、ルリラが立ち上がった。『Salut Épée』を地に突いて、白魚のような指先を弦に添える。
「夏の祭りで焔猫を向けるのなら私も――魅せよう、夏の雨を」
抜いた『暁』の刃が転じて、辺り一面が陽光融かした水面となる。
「四季の祝福がひとつ」
刹那。
雫が弾幕となりソルシエールの頭上から一斉に落ちてくる。
「降り注ぎ穿て」
軌道は千景の思うが侭。
「にゃ、あ、あ、!」
美しい水の戯とは裏腹に、膚を、肉を潰して落ちてくる苛烈に魔女と黒猫が悲鳴を上げる。
揺れる睡蓮から静かな波紋が広がり水跳ねて雫舞う。
連なる睡蓮の途に立つ千景とルリラのふたりを、魔女が目を眇めて見つめている。は、は、と短く呼気を漏らして、息を整えた魔女は、おのれの肩口にいた黒猫へ、ちらと視線を向けた。魔女の眼差しを受けたその黒猫が、肩を蹴って空へと跳ね上がる。
瞬間。
ボッ、と全身に火が点いた。
文字通り、燃えているのだ。
黒猫は途中、墓石を踏み台にして千景たちの方へと跳ねると、やはり己の身を使い突進を繰り出した。
こちらへと迫る焔猫に対し、一挙一動を見逃さなかった千景は雨を相殺する様にぶつけ、燃え尽きる前に祈り拾う。
「焔に雨、二色の彩は綺麗だろう?」
千景の雨によって炎が掻き消され、草地に落ちた黒猫が水に洗い流されるように消えていく。
水滴ひとつ落つる音がした。
まるでそれが合図であったかのように、ルリラは『Salut Épée』の弦を奏でて紡ぐ。
それは、魔女の行進を止める終止符。
「――音よ、終焉を導いて」
復讐に濡れた者を在るべき処へ帰す為に。
ルリラは蝶のように刃を躍らせた。舞うように、羽搏くように。断頭刃が如く鋭く落ちるように――魔女を斬る。
演奏は敵の精神を蝕む調べ。
「ああ、痛い、いたい」
ソルシエールが前屈みに俯き、ふらりふらりとたたらを踏む。けれど、魔女は大きくスリットの入ったドレスから覗く白い脚や、斬り付けられた腹から猫を生やし、その首根っこを掴んだかと思えば、ボールのように投げつけてくるではないか。
しかし、流麗なる剣技で斬り裂かれたソルシエールの攻撃はルリラを捉えることが出来なかったようだ。投げつけられた黒猫はルリラではなく――。
「――だめよ。彼の色は血になんて染めさせない……」
少し先を読み、共に戦う紘希に黒猫が向かうのを見て、ルリラは自らの剣で攻撃を防ぐ盾となった。
またもや邪魔をされてしまったソルシエールは、むっと頬を膨らませる。彼女の気配に応じてか、杖の光が激しく明滅する。まるで、ゆらゆらと燃え盛る夏至祭の炎のように。
千景もまた、呪を断つ様に『暁』の結界を展開。
(「届かせる気は今も無い。形を戻した暁で薙いだならば吹き飛ばそう」)
祭りを否定する。
「……千景、わたしが敵を惑わせるわ」
ふと聞こえた言葉に夜明空の視線がルリラに落ちる。
「どうか最期の一太刀を共に」
「噫、では――雫の終わりに私も一閃しようか」
魔女の復讐がどんなに心を掻き立てようとも。
「……ここから先に、往かせることはできない。昏き夜は……ここで、裂く……」
握り締めたルリラの『Salut Épée』に音色が纏い、千景の『暁』の刃が翻る。
魔女が、踊っている。くるくる、くるくるステップを踏むように、肉体と魂を斬り裂かれて、ふわふわと行き場を失ったかのように。そのさまを間近で見ていた紘希は思わず息を飲んだ。
「すごい……」
繋ぎて守り。或いは合わせての連鎖。
重ねとは、繋ぐとは。矢張り独りでは成せぬ物。
千景のそんな囁きが、聞こえてくるようだった。
「ああ、痛い、いたぁい。ねえ、にゃあたち、痛いねぇ」
魔女の言葉に、猫はもう鳴かない。
「痛いねぇ。悔しいねぇ。恨めしいねぇ。楽しい、ねぇ」
けほ、と咳ひとつ。
真っ赤な血が乾いた土の上に飛び散った。不思議に思って手のひらで拭うと、それは生温かい。けれど、もう、黒猫は生えてこなかった。すでに魔女の身体は、もう朽ちかけているから。黒猫ももう、眠っている。
「……さあ、おやすみの時間だ」
これで復讐と祭りの夜は終い。
「あなたの復讐は此処で終わり。安らかに眠りなさい」
木に背中を預けるようにしてずるずるとその場に崩れ落ちたソルシエールは、何かを言おうと唇を開いたが、それはまともな言葉にならず、ただ無意味な音となって吐き出された。それに自分自身気がついたのか、何だか少し悔しそうに双眸を歪めて、それから糸が切れた人形のように首を大きく落として、沈黙した。
戦いが終わった。
死せる者にルリラは等しく歌う。
終焉が為の鎮魂歌の傍ら、千景は夜明け色の刃を地に突き立てた。死して眠る者へ、やさしい朝焼けが巡り廻る様に。
猫たちが倒れて消えていった全ての場所、そして墓石の下で眠る彼らを思い、紘希は心から祈った。ダフネが抱きしめていた白百合の穢れ無き純白を、瞼の裏に思い描きながら。
――鐘の音が聞こえる。死者を思う生者からの、弔いの鐘の音が、響いている。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水面走行】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!
【ドレイン】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!