🚊宿縁を断ち切る戦い

 クロノス級クロノヴェーダは「自分の存在を保ったまま、その時代に転移してくる」事が多いですが、稀に「その時代の生物や概念などに寄生して転生する」事もあるようです。
 後者の場合、一定期間、転生した生物として成長し、充分に成長した所で覚醒する事で、対象の能力などを奪い、より強い力を得るようです。

 この事件では、上記の方法でクロノス級に覚醒したクロノス級クロノヴェーダと戦い、決着をつける事になります。
 そのため、宿敵であるクロノス級クロノヴェーダは、自分、或いは、自分に意志を託してくれた過去の時代のディアボロスの血縁者や恋人など、親しい相手の姿をしています。

 クロノス級クロノヴェーダは、覚醒時に『悲劇的な事件を引き起こす』事で、より強い力を得られるため、様々な悲劇を引き起こします。
 ですが、覚醒する前の人格に訴えかける事で、行動を制限したり、クロノヴェーダ撃破後に寄生された対象を救出したりできるかもしれません。

御手より受けよ歓びを、雨夜にうたう楽園を(作者 志稲愛海
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 それは、雨が降る夜のことだった。
 煌めくイルミネーションが、落ちる雨粒にもキラキラとした彩りと耀きを与えて。
 見つめる光に照る人達の顔は、子どもも大人も皆、楽しそうに笑んでいた。
 大きく歴史を歪めるほどの変化がこのあと起こることも知らずに。
 この、決して悲しみが消えることのない残酷な世界で。

 そう……潰えた希いが萠芽したその時、彼はアダムと成り果てたのだ。
 正気を失ったブラックオパールの左瞳は赤き光を放ち、それでもいまだ、希い歌う。
 誰もが幸福な世界をと――『子供達を護る為に』と。
 だがそこの在るのは、潰えた祈りの成れの果て。
 罪の意識に苛まれながらも、大天使へと変じた彼は甘言をうたう。
 ……歓びしか感じなくなれば、幸福だろう? って。
 そう静かに嘻笑しながら、甘やかな果実の如き言の葉とミダスの手を差し伸べて。
 これから幕を開けんとするのは、歪んだ終焉――或る過去の時代の、おわりの序曲。

●宿縁を断ち切る刻
「新宿駅グランドターミナルに、特別なパラドクストレインがあらわれたの。その行き先は、TOKYOエゼキエル戦争のディヴィジョンなの」
 花宮・小乃香(ヒルコの修験覚者・g08451)によって告げられた行き先に、一瞬だけ集まった皆の瞳が瞬く。
 そこは、ディアボロスによって大地の奪還が成されたはずのディヴィジョンであるから。
 そして小乃香の傍らには、四葩・ショウ(Rupert's Drop・g00878)の姿があった。
 そう……今回の行き先は、TOKYOエゼキエル戦争の、過去の時代。
 因縁が結ばれた先は、いずれ滅ぼされる未来が訪れる、過去の復讐者達が在った場所。
 だが彼らに託された意志が時空を繋ぎ……或るクロノス級との決着をつける糸を手繰り寄せることができたという。
「クロノス級を撃破すれば、新たなアヴァタール級の出現をおさえられるだけでなく、敵ディヴィジョンを弱体化させることも期待できるの。今回は、クロノス級が、この時代で覚醒する最初の事件に介入する事が可能になっているの」
 そして、そのクロノス級とは。
 ショウにとって縁のある人物の面影が垣間見える存在――『ジョン・ドゥの御使い』アダム。
「クロノス級に存在を奪われた人が、クロノヴェーダに覚醒してしまうのを止める事は出来ないのですが……でも、その魂に呼びかける事で、クロノス級の行動を阻害することが出来るかもしれないの!」
「その魂に、呼びかける……そして、わたしたちの手で、過去を変えられる。そうだよね、小乃香さん」
「はい、ショウさまのおっしゃる通りなの! 覚醒したばかりとはいえ、クロノス級の戦闘力は侮れませんので、慎重に戦っていただきたいのですが……でも時を超えて過去へと赴ける列車が現れたのは、過去を変えられる機会が訪れたということだとおもうの」
 以前、ショウは仲間と共にそれを成し、過去を変えることができると証明した。
 だから……特別なパラドクストレインが現れたことの意味、それがディアボロス達にはわかっているし。
 自分達が今回成すべきことであると。小乃香の語る、事の詳細に耳を傾ける。

「行き先は先程もお伝えした通り、過去の時代のTOKYOエゼキエル戦争なの。雨が降っている夜の、イルミネーションが煌めく公園が現場なの。みなさまは、クロノス級『ジョン・ドゥの御使い』アダムが来る少し前に到着できるの。なので、雨が降っているので幸いそれほど多くはないのですが、そこにはイルミネーションを見ている親子連れやカップル、偶然通りかかった人などの住民の方々がいらっしゃるので、まずは危険な場所にいる住民の方を避難させてください。そしてそれが完了しましたら、護衛のトループス級との戦闘と、クロノス級との決戦に臨んでほしいの」
 クロノス級『ジョン・ドゥの御使い』アダムが望むその目的は――誰もが幸福な世界。
 けれどそれは、潰えた祈りの成れの果て。子供達を護る為にと、彼は大天使へと変じたのだ。
 だから罪の意識に苛まれながらも、アダムは目的の為ならば犠牲を問わない。
 人類を洗脳し、苦痛も悲哀も消し去ってでも……歓びしか感じなくなれば、それが幸福だと。
「なので、戦闘になりましたら、アダムや配下はみなさまのことも洗脳しようとしてくるの。それはみなさまの、過去の歓びの思い出だったり、望む理想の歓びの未来だったり……歓びしか感じられなくなる光景を見せて、その甘言におぼれさせてしまう……そのような幻惑にとらわれますので。強い意志でそれを振り払い、配下と、そしてクロノス級を撃破して、過去の因縁を断ち切って欲しいの」

 そして、そこまで語られた小乃香の説明を聞き終えて。
「過去の、因縁……」
 ショウはそう呟きを落とし、思い返す。
 懐かしいその声を、その歌声を聴いた、少し前の時のことを。
 その姿が『誰のもの』なのか、それが何を意味するのか……わかってしまった、あの時のことを。
 そのときは、どうして、なんで……そんな想いが駆け巡って。いまだって、まだそう思いはするのだけれど。
 ……でも。
「どうか、力を貸して。わたしと一緒に、過去を変えて欲しい」
 ショウははっきりとそう集まった皆へと紡ぐ。
 まだあの時は、ミダスの手をふり払うことが出来なかった。
 でも、いまなら――。
 そうぐっと、微かふるえる手を握り締めるショウの姿を見つめた後。
「クロノス級を撃破すると、クロノス級の支配する歴史が崩壊するので、すぐに脱出する必要があるの。そして、その心に響けば……もしかしたら、みなさまの働きかけ次第では、元人格の救出も可能になるかもしれませんが。クロノス級を撃破すること、これをまずは成さねばならず、相手はかなりの強敵……心して臨んで欲しいの」
 小乃香はそう紡ぎながら、皆を案内する。
 雨が降る或る夜の、過去のTOKYOエゼキエル戦争へと向かう、パラドクストレインへと。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【友達催眠】
2
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【熱波の支配者】
1
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【冷気の支配者】
3
ディアボロスが冷気を自在に操る世界になり、「効果LV×1km半径内」の気温を、最大で「効果LV×10度」低下可能になる(解除すると気温は元に戻る)。ディアボロスが望む場合、クロノヴェーダ種族「アルタン・ウルク」の移動速度を「効果LV×10%」低下させると共に、「アルタン・ウルク」以外の生物に気温の低下による影響を及ぼさない。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【ハウスキーパー】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。
【アイスクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が3mの「氷の立方体」を最大「効果LV×3個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。出現させた氷は通常の氷と同様に溶ける。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV3 / 【反撃アップ】LV2 / 【先行率アップ】LV2 / 【ドレイン】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV2 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

志稲愛海
志稲愛海です、よろしくお願いいたします。
当シナリオは四葩・ショウ(Rupert's Drop・g00878)さんの宿縁邂逅シナリオです。
宿敵主様のご希望で【誰でもご自由にご参加可能】となっております。

●各選択肢について
 リプレイの進行は、①→③→④の予定です。
 ②は宿敵主専用の選択肢となり、呼びかけるタイミングはお任せします。

①住民の避難誘導
 危険な場所にいる住民を避難させる選択肢です。
 この選択肢が成功すると、このシナリオで一般人が危険にさらされずに済みます。
 色々言いくるめたり、帰るよう仕向けたりなどすれば、容易に誘導できるかと思います。
 イルミネーションを見た楽しい気分のまま、危険が及ぶ前に、帰宅させてあげてください。

②覚醒前の人格に呼びかける
 宿敵主専用の選択肢です。
 この選択肢にて、申請時のご希望の状態で戦闘が臨めるよういたします。
 クロノス級は敵ディヴィジョンの情報を持っていない上、非常に知性が高いため、会話から情報収集は出来ませんが。
 お気持ちのまま、呼びかけていただければです。

③👾護衛するトループス級『クピド』
 配下のトループス級の群れとの戦闘になります。
 戦場では、アダムの望みの影響で『自分にとっての、歓びの光景』の幻惑を必ず見ることになります。
 それは、過去の歓びの思い出だったり、あなたが望む歓びの光景であったりなど。
 溺れてしまうほどの歓びの幻影を見せ洗脳せんとし、攻撃を仕掛けてきます。
 皆様の『歓びの記憶や、望む歓びの光景』、そしてどう向き合い溺れず振り払うかを、プレイングにて記載ください。
 そんな幻を振り払って乗り越え、敵の群れを撃破してください。心情重視で構いません。

④👿クロノス級決戦『『ジョン・ドゥの御使い』アダム』
 クロノス級との決戦です。
 この戦闘に勝利すれば、シナリオ成功となります。

●クロノス級の元人格について
 子供達に聖歌を教えていた人物。
 潰えた希いが萠芽し『子供達を護る為に』、彼は全ての悲しみを消し去るべく大天使へと覚醒してしまう。

●他
 シナリオの進行状況の詳細などは、マスター個別ページにてお知らせします。
 どうぞお気軽に思いのまま、皆様らしく挑戦して頂ければと!
208

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


有栖川宮・永遠
彼の方の願い、祈りはどんなものだったか思いを寄せます。それは人を偽りの幸福を齎すものではないはず。


彼の方を願いを歪めるクロノヴェーダの行為は許せません。まずは皆様の命をお救いし、不幸を防ぎましょう。幸福は生きているからこそ得られるものですから。宿敵主様の願いを彼の方に届ける手助けを。私は守護者の一族の当主です。思い出を、命を守り抜きましょう。

【友達催眠】を使ってイルミネーションを眺めている方々に話しかけます。こんばんは、良い夜ですね。イルミネーションが眩いです。でもこの雨、しばらく経つと本降りになりそうですよ?冷たい風が吹いてきてますし、土の匂いがします。それにいつまでも雨の中にいると風邪をひきます、と話しかけます。

雨の中に居続ける不都合を説明し、穏やかに帰宅を促します。雨の中のイルミネーションも風流な物ですが、暗い中での雨の中にいるのは足元が滑る危険性があります。イルミネーションの美しさの思い出を台無しにしないよう
に。そして惨劇の犠牲にならないように配慮を。聖なる歌に血は似合いません。


四葩・ショウ
透明な傘をひらけば
弾む雨音が、滲むイルミネーションの灯りが煌めくけど
ふるり頭を振って、伏せた視線をあげる

今ならまだ、間に合うんだ
自分に言い聞かせるように呟いて
だいじょうぶ――いこう

【完全視界】を灯し、公園内を見渡して
集う人びとの位置と数を把握する

わたしは家族連れをターゲットに
パラドクスで喚び出すのは
ふかふかきらきらの魔法の仔ポメラニアン達
よろしくね、とウインクして
なるべくひと目を惹くように
イルミネーションが特に賑わう場所を中心にパレードさせようか

こんばんはと微笑み
家族連れの大人に声をかける
そういえば……これからイルミネーションの点検をするみたいですね
早く帰るように、って言われちゃいました
困った風に笑ってみせ

子供達へと目線をあわせたなら
明日になったら、もっとすてきになってるんだって
たのしみだね

仔ポメ達を統率して導きながら
さぁ、出口までいっしょに歩こう
バイバイ、またね

楽しい気持ちが煌めくまま
繋ぐ手がはなれることなく、帰れるように

彼方より来る御使いに、その面影に
……せんせい、と
呟くのが精一杯で


捌碁・秋果
雨のイルミネーション、濡れた地面に光が映って綺麗。見に来ている皆も楽しそう
でも、そろそろ避難しないと…
作戦を実行しよう。その名も『寒いしそろそろお家に帰ろっか~作戦』!
名前通り、寒さで自主的にお家に帰ってもらう作戦だよ
冬、夜の雨、寒くなるのは道理
自然な流れで帰ってくれる…はず!

【冷気の支配者】で気温を下げる
下げすぎたら風邪ひいちゃうから加減して
まずは3℃下げて…。うん、寒がってる人が帰る話を始めたかな?
でも、子どもはまだ元気そう
不本意だけどさらに4℃下げよう。これで最初から-7℃
…これでもまだ帰り渋ってる子がいたらプランB発動!

家族の近くで携帯端末で通話するフリ
お母さん、今日の晩御飯なに? 
…やった! 寒い日はやっぱり鍋だよね!
えっ、今日からこたつ出すの!?
暖かいこたつでぬくぬく鍋…!
やっぱり冬はお家が天国だね、すぐ帰るよ!

どうだ!
寒空の下でこんな話を聞いたらお家に帰りたくなっちゃうでしょ?
家族団らんのぽかぽかお家に、気をつけて帰ってね

…お母さん、か
私の母親ってどんなひとだったのかなあ


標葉・萱
悲しみ一つなく、歓びの夢だけ
浸れるのならという気持ちを、
分からないといえば、嘘に、なるけれど
そろりと撫でたのは傘持つ左手
手袋の下、薬指の上

そんな優しい願いを抱いた人の祈りが
歪んで巻き込む、その前に
雨に滲んだ灯りに目を細め歩き出そう

ともに誘導する彼女たちの誘いにつられてくれるならよし
園内の端や、誘導に気づいていない方々に声をかけて回りましょう

こんばんは、予報ではこの後雨もひどくなるそう
冷えてしまわないうちに、戻ったほうが良いですよ
くるりと傘回して視線合わせて
お戻りの道中、パレードで送ってくれるそうですし
ね、と、そう四葩さんがよんだ仔らが誘う先を示して

まだ遊び足りないなら――
そろりとカード一枚取り出して、
パラドクスで夕星の星をよぼう
砕ければ散っていく星は人を傷つけぬように
ただ滑る星の光を帰路の灯に

どうか悪い夢のきざはしだと気づかぬまま
暖かな場所へと、戻れるように
吐く白い息も、憂いとともに、消えるよに


 しとしとと降るその様は、小降りといった程度のものではあるけれど。
 でも――雨はまだ、止みそうにないから。
 四葩・ショウ(Rupert's Drop・g00878)が雨空へとパッと咲かせれば。
 開いた透明な傘に雨音が弾むと同時に、目映いイルミネーションの灯りが煌めき滲んでゆく。
 けれどショウの視線は、雨粒が弾けては消えてゆく地へと自然と落とされて。
 そっと伏せられた瞼の裏に蘇るのは、自分の知っているはずのものとは違った、知らないあの時の彼の色。
 だって、きっともうすぐ此処に――。
 だが刹那、ふるりと頭を振って。
 ふと伏せた視線を上げれば、ピンクの彩りにも輝く、雨に滲む光たち。
 そしてショウはひとしずくの呟きを落とす。
「……今ならまだ、間に合うんだ」
 だいじょうぶ――いこう、って。そう自分に言い聞かせるように。
 それから確りと周囲を見通せるようにと完全視界を灯してから。
 公園内を見渡して把握するのは、集う人びとの位置と数。
 雨は降っているものの、イルミネーション灯るこの場には、疎らながらに人の姿も見えるから。
 標葉・萱(儘言・g01730)も雨粒煌めく夜の公園へと足を踏み入れ、そしてふと思い返す。
 話に聞いた『彼』が抱いているのは、誰もが幸福な世界をという願い。
 悲しみ一つなく、歓びの夢だけ浸れるのならという気持ち。
 今は潰えてしまったというそんな希いに、萱は思うから。
(「分からないといえば、嘘に、なるけれど」)
 そして、そろりと撫でたのは傘持つ左手。手袋の下、薬指の上の――。
 それから雨に滲んだ灯りに目を細め、歩き出す。
(「そんな優しい願いを抱いた人の祈りが歪んで巻き込む、その前に」)
 因縁が結ばれた過去を変える。萱はそのために、仲間と共に今、此処に在るのだから。
 ――彼の方の願い、祈りはどんなものだったか。
 同じ様に雨の中を行きながらもそう思いを寄せるのは、有栖川宮・永遠(玲瓏のエテルネル・g00976)。
(「それは人を偽りの幸福を齎すものではないはず」)
 だから、話を聞いた永遠も、この場へと向かう刻の列車で過去へと飛んだのだ。
(「彼の方を願いを歪めるクロノヴェーダの行為は許せません。まずは皆様の命をお救いし、不幸を防ぎましょう」)
 ……幸福は生きているからこそ得られるものですから、と。
 そう思うし、それに何よりも――思い出を、命を守り抜きましょう、と。
 因縁が結ばれたショウの願いを彼の相手に届ける手助けをと、永遠はやって来たのだ。
 だって彼女は、守護者の一族の当主なのだから。
 そのためにも、まずはこの場から人々を遠ざける必要があるから。
「こんばんは、良い夜ですね。イルミネーションが眩いです」
 友達催眠を使って、イルミネーションを眺めている人達へと話しかける。
 それから、生憎の雨だけど綺麗ですよね、と友好的に返す人達へと永遠はこう続ける。
「でもこの雨、しばらく経つと本降りになりそうですよ?」
「え、そうなんですか?」
「小降りだし、じきに止むかと思ってましたが……」
「冷たい風が吹いてきてますし、土の匂いがします。それにいつまでも雨の中にいると風邪をひきます」
 雨の中に居続ける不都合を説明し、そう穏やかに帰宅を促せば。
 確かに急に寒くなってきた気が……なんて、ふるりと身震いしながらも。
 今日のところはと人々は顔を見合わせ、帰路につき始める。
 そして、雨が降っているにも関わらず、眺めれば心が躍るような光が輝く中。
(「雨のイルミネーション、濡れた地面に光が映って綺麗。見に来ている皆も楽しそう」)
 捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)は眩い煌めきやそれを楽しむ人々の姿を見れば、柔く瞳を細めるけれど。
 でも、そろそろ避難しないと……と、練ってきた作戦を実行する。
 その名も――『寒いしそろそろお家に帰ろっか~作戦』!
 名前通り、寒さで自主的にお家に帰ってもらう作戦である!
 何せ、冬、夜の雨、寒くなるのは道理だから。
(「自然な流れで帰ってくれる……はず!」)
 ということで、下げすぎたら風邪ひいちゃうから加減して……と。
 秋果が冷気の支配者を使って、周辺の気温を下げれば。
(「まずは3℃下げて……。うん、寒がってる人が帰る話を始めたかな?」)
「いきなり冷えてきたなぁ、寒っ」
「う、寒くて冷えちゃうわ……もう帰りましょうよ」
 カップルや学生らしき集団は、身体を縮こませるようにして、そそくさと帰り始めたけれど。
「寒いから帰るわよ?」
「まだ帰らない! キラキラをもっと見るの!」
(「でも、子どもはまだ元気そう」)
 子どもは風の子とはよく言ったもので。
 イルミネーションに大興奮の子ども達はどうやら、まだ帰りたがらない様子だから。
(「不本意だけどさらに4℃下げよう」)
 これで最初から-7℃……ぐっとさらに凍えるほど寒くなったのだけれど。
 震えながら帰宅を促す親に、首をなかなか縦に振らない子も。
 でもそれも、秋果の想定の範囲内であるから。
 これでもまだ帰り渋ってる子がいたらと――さらに用意していた、プランB発動!
 そんな皆と手分けして、ショウも人々をさり気なく帰宅させるべく。
 まだ帰る素振りを見せない家族連れをターゲットにして、煌めく雨の公園に喚び出す。
「わ、ママ見て! もふもふな犬さんがいっぱい!」
 ――Ready? と指笛吹いて高らかに、ふかふかきらきらの魔法の仔ポメラニアン達を。
 そんなまるまるふわふわな仔たちに、ぱちり――よろしくね、って。
 そうウインクすれば、とことこぴょんぴょん。
 ひかる首輪をカラフルにエレクトリカルに煌めかせながら、なるべくひと目を惹くようにと。
 イルミネーションが特に賑わう場所を中心に、ご機嫌にもふキラパレードし始める、ふわもこの仔たち。
「もふもふでキラキラで、かわいい!」
 そんな、てくてくでほわほわでキラキラな可愛いパレードに、子ども達も大興奮!
 そしてショウはその姿に瞳を細めながらも――こんばんは、と微笑んで。
 声を掛けるのは、家族連れの大人の方。
「そういえば……これからイルミネーションの点検をするみたいですね」
「えっ、そうなんですか?」
「早く帰るように、って言われちゃいました」
 そう、困った風にショウが笑ってみせれば。
 不意に響くのは、携帯端末へと向けた秋果の弾むような声。
「お母さん、今日の晩御飯なに? ……やった! 寒い日はやっぱり鍋だよね! えっ、今日からこたつ出すの!? 暖かいこたつでぬくぬく鍋……!」
 それから、そわりとし始めた家族連れを後目に、こうダメ押しを。
「やっぱり冬はお家が天国だね、すぐ帰るよ!」
 いや、これは実は携帯端末で通話するフリ、であるのだけれど。
 秋果は、ぽかぽかぬくぬくな家に帰りたくなるような誘惑を口にしつつも。
(「どうだ! 寒空の下でこんな話を聞いたらお家に帰りたくなっちゃうでしょ?)」
 そうそっと近くの家族連れを見遣ってみれば。
「そろそろ、あったかい家に帰るわよ?」
「うちにもこたつ、出してね!」
 どうやら、秋果の作戦大成功の模様!
 そんな順調に誘導する様子を見つめながら……彼女たちの誘いにつられてくれるならよし、と。
 萱が足を向けるのは、園内の端。
 イルミネーションの全体が映るようにと引きの映え写真を撮ろうとしている、誘導に気づいていない少女達を見つけて。
「こんばんは、予報ではこの後雨もひどくなるそう。冷えてしまわないうちに、戻ったほうが良いですよ」
 声をかけつつ、傘をくるりと回して。
 視線合わせれば、こう続ける。
「お戻りの道中、パレードで送ってくれるそうですし」
「え? あっ、もふもふがいっぱいいる!」
 ……ね、と示したのはそう、ショウが喚んだ仔らが誘う先。
 勿論、それに少女達がつられないわけはなく。
 きゃっきゃと魔法のふわもこポメラニアンパレードへと駆け寄る背中を見送った後。
 今度は、ひとり離れた場所でイルミネーションを眺めている男性を見つけ、そんな人達へとくまなく声をかけて回るべく歩み出す萱。
 そしてショウは、エレクトリカルなもふもふパレードにはしゃぐ子供達へと目線をあわせたなら。
「明日になったら、もっとすてきになってるんだって」
 ――たのしみだね、って。
 そう微笑みと共に告げれば。
「わ、明日はもっとすてきに? 楽しみ!」
「明日は天気も晴れるって、ママも言ってた!」
「だから、風邪をひいたらたいへん。明日のすてきを見れなくなっちゃうから――さぁ、出口までいっしょに歩こう」
 明日また、この子達が煌めく景色を楽しめるように。
 ……バイバイ、またね。
 ショウは仔ポメ達を統率して、公園の出口まで導いた子達を見送る。
 楽しい気持ちが煌めくまま――繋ぐ手がはなれることなく、帰れるように、と。
 そんな皆で行なう避難活動の成果で、もう公園には数えるほどしか人の姿はなくなっているけれど。
 名残惜しそうにイルミネーションをまだ眺めている人の視線の先へと。
「まだ遊び足りないなら――」
 萱がそろりと一枚カードを取り出せば、ひとつ。
 夜に溶かした硝子のカードを砕けば鏤められる、星屑の如き煌めき。
 そして砕ければ散っていくそれは、夕星でよばれた星。
 人を傷つけぬように、ただ滑る星の光を帰路の灯にと。
(「どうか悪い夢のきざはしだと気づかぬまま、暖かな場所へと、戻れるように」)
 雨夜に瞬き導くかの如く、光の憧憬を抱かせながらも。
 萱は改めて、輝く雨夜の空へと向けた瞳をそっと細め、思う。
 見つめる雨模様の空に吐く白い息も――憂いとともに、消えるよに、と。
 秋果も、寒さに身を震わせながらようやく帰り始めた親子を見送って。
「家族団らんのぽかぽかお家に、気をつけて帰ってね」
 小さくなっていく後ろ姿にそう紡ぎつつも、ふと。
(「……お母さん、か」)
 微か首を傾けつつ、失った過去を思ってみるのだった。
 ……私の母親ってどんなひとだったのかなあ、って。
 永遠も、帰路につく人達の様子を確りと見遣って。
(「雨の中のイルミネーションも風流な物ですが、暗い中での雨の中にいるのは足元が滑る危険性があります」)
 ……イルミネーションの美しさの思い出を台無しにしないように、と。
 そう安全面にも目を配り、そして今夜のこの風景が楽しい思い出として彼らの記憶に残るように、誘導して。
 周囲の人々をひとり残さず帰宅させることができれば。
 ただ、しとしとと雨が降る公園に今在るのは、煌めくイルミネーションと復讐者だけ。
 だが、そんな雨の静寂の中――突如響くのはそう、歌声。
 永遠は、人々が惨劇の犠牲にならないように引き続き配慮しながらも。
 煌めく雨夜の公園にやって来た、うたう大天使へとはっきりと紡ぐ。
「聖なる歌に血は似合いません」
 そしてショウも、溢れる様々な想いとは裏腹に。
「……せんせい」
 そう呟くのが精一杯で。
 よく知っている歌声を聴きながら、知っているけれど、知らないいろを湛えるその姿を見つめる。
 彼方より来る御使いに、その面影に。
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV2が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV2が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!

●歓びしか感じない世界
 イルミネーション輝く雨夜の公園に予知通り、仮面の大天使は現れた。
 此処を選んだのは、子ども達が喜ぶような場所だからか。
 単純に今の時間でも本来ならば、沢山の人の姿があるだろうからか。
 それは彼――『ジョン・ドゥの御使い』アダムしか知らない。
 でも、大天使へと変じたのが『彼』であるということを、ショウは知っていて。
 響き渡る歌声を聴けば、それが『誰のものか』が、わかってしまう。
 そう、それは『せんせい』の――。
 瞬間、煌めく雨粒を纏った翼をばさりと羽搏かせて。
 煌めく光の雫を夜空に舞わせながらも、ショウの知る彼の面影を垣間みせる御使いは、少女の姿をした配下の天使たちにうたうように告げる。
『いきなさい。苦痛も悲哀も消し去って、人々が、子供達が、歓びしか感じなくなれば』
 ――幸福だろう? と。
 アダムは静かに嘻笑する。
 正気を失った、赤い光を放つブラックオパールの左瞳を細めて。
 眼前の仮面の大天使は、潰えた祈りの成れの果て。
 罪の意識に苛まれ、目的の為なら犠牲を問わず、潰えた希いが萠芽した今も彼は望み続ける。
 全ては悲しみを消し去る為に――誰もが幸福な世界をと。
 そして人類を洗脳し、苦痛も悲哀も消し去ってでも、歓びしか感じなくなれば……そんな幸福の世界へと導ける。
 そう、『子供達を護る為に』大天使は祈り、口遊むのだ。
 歪んでしまったうたを。
 けれど彼は、まだ知らない。
 この場所に一般人はひとりもおらず、己を待ち構えている復讐者しか、もういないことを。
 だから『彼』へと声を、刃を、届かせるために。
『承知しました、アダム様』
『さぁ、歓びしか感じない世界へ今、導いてあげますね』
 人々に信仰を促すような、一見穏やかな微笑を絶やさぬ少女型の天使たちを、まずは退けなければならない。
 けれど響く歌声が、この場にいる者たち全てを、問答無用に導く。
 それは、過去の歓びの思い出であったり、あなたが望む歓びの光景であったり――溺れてしまいそうになるほどの、歓びの幻影が広がる世界へと。
 だから、トループス級『クピド』を撃退するためには、そんな歓びしかない各々の幻惑世界を打ち払い、乗り越えなければならない。
 ――あなたはどんな歓びしかない世界をみるの? と。
 そう穏やかに問う、酔い痴れるような声色を耳にしながら。
 ゆれる視界の先にみえるのは――。
 
 しとしとと降る夜の雨はまだ、止みそうにない。
四葩・ショウ
わたしの胸は晴れやかで
くもりなき歓びに満ちていて

せんせい――イブせんせい
思い出から連れてきたような『憧れ』に駆寄る
きっと
硝子のレイピアを取落したことさえ、わからない

特別な愛称で今のわたしを呼んで
口角だけで笑む恩師(ひと)は
なかったことにされた思い出を分け合っていて

乞われるまま囀るだけの
甘美な幸福の鳥籠に、溺れてしまう

でも、解るんだ
どこかで雨が、ふっている
かなしみが、まだ どこかで―――

あの人が遮るように囁くけど

『この世界は残酷だ、でもとても美しい
だから、あなたの見た世界を、いつか僕に見せて』と
この青のピアスをくれた声で
どうして
もう何も知らないでいいなんて言うの?

仮面の大天使の奥底の
かなしみに気付いてしまったから
歓びの檻へはもう、戻れなくて
こんな世界はダメだよ
……間違ってる

あの人は
わたしを救って、導いてくれた人じゃ、ないけど

ねぇ、せんせい
わたしはあの人を救いたいの
貴方がしてくれたみたいに

……だから

歌声を、最初に編み出したパラドクスを響かせたなら
このあまやかな嘘に、さよならを
(アドリブ歓迎)


 ――歌が、響いている。
 聴く者の心に揺さぶりをかけてくるそれはまるで、蛇の甘言のようで。
 雨空に咲かせていた傘だって、いつの間にかいらないくらいに。
 四葩・ショウ(Rupert's Drop・g00878)の胸は今とても晴れやかで、くもりなき歓びに満ちていた。
 だって、眼前に在るのは、黒髪眼鏡の『彼』の姿。
「せんせい――イブせんせい」
 湛える両の青がふっと自分へと向けられれば、ショウは嬉しくなって。逸るように駆け寄ってしまう。
 思い出から連れてきたような『憧れ』に……硝子のレイピアを取落したことさえ、わからないままに。
 そしてうたうように耳に聞こえるのは、甘やかな呼び声。
 特別な愛称で今の自分のことを呼んで、口角だけで笑む恩師は、なかったことにされた思い出を分け合っていて。
『知るのは歓びだけでいい。歓びしか感じなくなれば、幸福だろう?』
 紡がれる誘惑に溺れてしまいそうになる。
 乞われるまま囀るだけの、甘美な幸福の鳥籠に。
 鳥籠に囚われれてしまえば確かに、苦痛も悲哀も感じることなく、知る必要だってないだろう。
 外の世界の空から、雨が降っているかどうかなんて。
 けれど……でも。
(「かなしみが、まだ どこかで――」)
 ショウには解るのだ。
 どこかで雨が、ふっているということを。
 だが、傘など不要だと言わんばかりに、ミダスはその御手をすかさず伸ばす。
『手をとりなさい。歓びしか存在しない世界、それこそ、誰もが幸福な世界なのだから』
 かなしみさえも黄金に変えるかのように錯覚しそうになる、甘い夢の如き囁きと共に。
 その手をとって、甘言を享受すれば、苦痛も悲哀も消し去ってくれるかもしれない。
 ……でも。
「――どうして」
 今、向けられている眸のいろは、その言葉は。
「どうして、もう何も知らないでいいなんて言うの?」
 違うって、解るから。
 自分を見つめるその左瞳は、己の左耳を彩るサフィールの青ではなくて。赤い光を放つブラックオパール。
 それに、わすれるなんてわけ、ないから。
 ――この世界は残酷だ、でもとても美しい。だから、あなたの見た世界を、いつか僕に見せて。
 触れた青のピアスをくれた声が、そう確かに紡いだことを。
 そして、気付いてしまったから。
 仮面の大天使の奥底のかなしみに……隠れているサファイアブルーのいろに。
 だから、戻れないのだ。
「こんな世界はダメだよ……間違ってる」
 歓びの檻へは、もう。
 そして、月長石色の髪の大天使を見つめれば。
「あの人は、わたしを救って、導いてくれた人じゃ、ないけど」
 ショウは、己の『望み』を言の葉にする。
「ねぇ、せんせい。わたしはあの人を救いたいの。貴方がしてくれたみたいに」
 彼自身はそれを知らないかもしれないけれど。
 でも『彼』の希いの全てが潰えたわけではないことは、ショウ自身がよく知っているから。
 ……だから。
 せいなるかな――口遊むのはそう、聖歌。
 刹那、舞い降りた天使が無邪気にラッパを吹き鳴らせば。
『……なっ!?』
 偽物の微笑を湛える天使『クピド』へと降り注ぐ。
 雨にも似た、悪逆を刺し貫く光の嚆矢が。
 だって、ひとつ、ふたつ――その音色は、福音なんかじゃ、ないから。
 このあまやかな嘘に、さよならを。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

有栖川宮・永遠
妹の永久(g01120)と参加

私と永久の望みの世界。それは、別れのない世界。永遠に、永久に大切な人が共にいられれば。

目の前に姿を現すのは幼い頃死に別れたお祖父様とお祖母様。そして周りには色々薫陶を受けた叔父様や伯母様など親戚の方々。

長い歴史を誇り、守護者の任を負ってきた有栖川宮の一族の人生は困難です。クロノヴェーダ関連は勿論、災害で避難誘導をした後、自らは避難できなかったり、自らも災害に巻き込まれたり。重傷が元で命を落としたり。

お祖父様やお祖母様、親戚の皆様も災害救助の際に命を落としました。ああ、お祖父様、お祖母様、親戚の皆様。こうして、ずっと一緒にいられたら。

でも傍に永久がいます。私には守るべき世界や人々がいます。身内の皆様が命をかけて成し遂げた我が一族の使命を、継ぐのが生きている私たちの役割です。

繰り出すのは攻性式神結界。復讐者として歩み出して初めて身につけた技。永久と共に幻を打ち破る一撃を。

お祖父様、お祖母様、親戚の方々。見ていてください。私と永久は、必ず使命を果たしてみせます。


有栖川宮・永久
姉の永遠(g00976)と参加

私とお姉ちゃんは思うことがある。永久に、永遠に大切な人達が共にいられればと。お別れってとても悲しいこと。

目の前にいるのはお爺さんとお婆さんや親戚の人々。皆小さい時に死に別れた大切な人たち。

有栖川宮は長い年月、守護者として人々を守ってきた。クロノヴェーダとの相対ももちろんだけど、災害救助や避難誘導なども含まれる。当然、避難誘導で自分だけ逃げ遅れたり、災害に巻き込まれたり、死に至るほどの怪我もする。

目の前にいるお爺さんやお婆さんも災害救助で命を落とした。親戚の皆さんも同様。本当にずっとここに一緒にいられたら。

でもお姉ちゃんはいうんだ。先達が命をかけて人々を守ったように、生きている私たちが志を継ぐことが成すべきことなんだと。

私たちは前に進むよ。魔弾砲を構えて撃つのは復讐者として初めて身につけたフリージングミサイル。決意の弾で幻を打ち破る。

お爺さん、お婆さん、親戚の皆。私達はいくよ。きっと命を守るから。見守っていてね。


 先程まで聞こえていたのは、傘を打つ冷たい夜の雨音だったはずなのに。
 いつの間にかいるこの場所は、響く聖歌がとてもやさしくて、心地良い世界。
 そんな歓びに満ちた世界の只中で。
(「私とお姉ちゃんは思うことがある」)
(「私と永久の望みの世界。それは、別れのない世界」)
 有栖川宮・永遠(玲瓏のエテルネル・g00976)と有栖川宮・永久(燦爛のアンフィニ・g01120)は、改めてその心に想いを抱く。
 ――永遠に、永久に大切な人が共にいられれば。
 その望みが叶う世界、それが姉妹の『歓びの世界』だと。
 だって、知っているから……お別れってとても悲しいことだということを。
 目の前に現れた、大切な人達の姿を見れば、尚のこと思うのだ。
 お祖父様とお祖母様、そして周りには色々と薫陶を受けた叔父様や伯母様などの親戚の人達。
 彼ら彼女らは皆、ふたりにとって、小さい時に死に別れた大切な人たち。
 長い歴史を誇り、守護者の任を負って人々を護ってきた有栖川宮の一族。
 永遠は当主として、永久は当主を支える者として、わかっている――そんな一族の人生は困難なものだと。
 クロノヴェーダ関連の案件は勿論のこと。
 災害で避難誘導や救助を行なって人々を守った後、自らは避難できずに災害に巻き込まれたり、重い怪我を負って命を落としたり。
 現に、目の前にいる皆だって。
(「お祖父様やお祖母様、親戚の皆様も災害救助の際に命を落としました」)
 そう……命を賭して、守護者たる一族の運命を辿った人達。
 それが一族の任だと、ふたりにはよくわかっているのだけれど。
 でも、だからこそ、やはり思うのだ。
(「こうして、ずっと一緒にいられたら」)
(「本当にずっとここに一緒にいられたら」)
 苦痛も悲哀もなくなった歓びだけの世界であれば、こうやって、大切な人達とずっと一緒にいられるかもしれない。
 心地良い喜びに身を任せれば、困難な人生ではなく、穏やかで幸せに過ごせるかもしれない。
 ――けれど。
 ふたりが、伸ばされた誘惑の手を取ることはない。
 だって、今もそうだから。
(「でも傍に永久がいます。私には守るべき世界や人々がいます」)
 永遠の隣には永久がいて、永久の隣には永遠がいる。
 だから、永久も迷わない。
「でもお姉ちゃんはいうんだ。先達が命をかけて人々を守ったように、生きている私たちが志を継ぐことが成すべきことなんだと」
 耳を傾け信じるのは、大天使の甘言などではなく、永遠が紡ぐこの言の葉。
 そして永遠も、改めて口にする。
「身内の皆様が命をかけて成し遂げた我が一族の使命を、継ぐのが生きている私たちの役割です」
 自分達が在る理由を、一族の使命を、そしてその志を。
 だから誘惑の言葉を囁き誑かし、心凍らせ精神を破壊せんと矢を番える少女天使達へと、ふたりは繰り出し放つ。
 攻性式神結界――復讐者として歩み出して初めて身につけた技を。
 魔弾砲を構え撃つ――復讐者として初めて身につけたフリージングミサイルを。
 放つ式神と決意の弾を以って、幻を打ち破る一撃を共に。
『なっ、何故、歓びに溺れないの……、っ!』
『アダム様の描く、歓びだけしか感じない世界こそ幸福なのに……ぐっ!』
 歓びだけしかない世界に溺れるのはきっと、簡単で楽なのだろうけれど。
 でもそれは、これまで運命を全うした大切な人達の志を無にすることで。
 そしてそれこそ、大切な人達との完全なる別れになるだろうから。
(「お爺さん、お婆さん、親戚の皆。私達はいくよ」)
(「お祖父様、お祖母様、親戚の方々。見ていてください」)
 その意志を継ぐべく、永遠と永久は立ち向かい、歩み続けることを選ぶ。
 ――私と永久は、必ず使命を果たしてみせます。
 ――きっと命を守るから。見守っていてね。
 たとえ困難の運命だとしても、これからも一緒に。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
【冷気の支配者】がLV3になった!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!

標葉・萱
白い翼に飾られた夜
祝福に満ちた、景色のよう、なんて

瑕疵のないしあわせな夢
目瞬きひとつで満ちるよ
君が今も、僕の隣にいて
手を取り笑ってくれて
揃いの銀の指環を嵌めて、薔薇色の唇で名前を呼んで
指先がもう一度触れてくれるなら
そんなひどく甘く、しあわせな夢
けれど、それでも、君を呼べない

力を貸してくれと告げた少女の
とうに錆ついて色褪せた景色の中で
眩しいほどに鮮やかに、笑って
友人のように接してくれた四葩さんの
彼女の信頼を裏切ったなんて知ったら
きっと君は呆れるだろう

何より、降る雨よりなお冷たい肌のまま
この傷を知らない振りするために
笑って君の最期を忘れるなんて
私が私を、ゆるせない

朽ち損ねた身にまだ為せるなら
君に、まだ相応しくあるように
押し流すように銀の波濤を
甘い幻想をカードと砕いて、呼んだなら

一時の夢には、礼を言っても良いかもしれませんけれど


 夢など見ずに在ると、そう在ろうとしているはずなのに。
 標葉・萱(儘言・g01730)は、眼前の白い翼に飾られた夜に思ってしまう。
 ……祝福に満ちた、景色のよう、なんて。
 そして響く聖歌が視せるのは、魅せられるほど瑕疵のないしあわせな夢。
 それは目瞬きひとつで、いとも容易く、やさしく満ち溢れる。
(「君が今も、僕の隣にいて。手を取り笑ってくれて。揃いの銀の指環を嵌めて、薔薇色の唇で名前を呼んで」)
 そっと伸ばした指先がもう一度触れてくれるなら、なんて――そんなひどく甘く、しあわせな夢。
 溺れてしまいたくなるような、呼んで触れて、君を感じられる……まさに、歓びだけしか感じない世界。
 けれど、それでも、萱にはやはり。
(「君を呼べない」)
 左手の薬指に嵌まっている円環が、手袋の下に密やかにあるように……君のことを、呼べないのだ。
 それに、思うから。
 力を貸してくれと告げた少女の、とうに錆ついて色褪せた景色の中で、眩しいほどに鮮やかに、笑って。
(「友人のように接してくれた四葩さんの、彼女の信頼を裏切ったなんて知ったら」)
 ――きっと君は呆れるだろう、って。
 そして何より、降る雨よりなお冷たい肌のまま、この傷を知らない振りするために。
 笑って君の最期を忘れるなんて――。
(「私が私を、ゆるせない」)
 苦痛も悲哀もなくなった歓びだけの世界に溺れれば、確かに幸福であると言えるかもしれない。
 それが分からないなんてことだって、言えないのだけれど。
 でも……この傷の痛みを感じなくなれば、あの時のことをなかったことにすれば、もう君を想うことさえもできないし。
 目を背け忘れて笑って、甘くしあわせな夢を享受する自分をゆるすことなんて、萱には決して出来やしないから。
 だから、朽ち損ねた身にまだ為せるというならば。
 ――君に、まだ相応しくあるように。
 刹那、ふたつ。月に透く硝子のカードを、冷たく煌めく雨夜に溶かして。
 押し流すようにゆらりと揺らぐ銀の波濤を甘い幻想をカードと砕いて、呼んだなら。
『どうして!? 歓びしか感じないという幸福に、身を委ねないなんて……ぐぅっ!』
 精神を破壊するべく矢を射放たんとする少女の天使を穿き、海市のみせる幻揺らめく銀の底へと沈めてゆく。
 そして、まだ降り止まない夜の雨の冷たさが再び戻ってくれば。
「一時の夢には、礼を言っても良いかもしれませんけれど」
 萱は手袋の上から触れて、そっと撫でる。
 忘れることなどできない君と揃いの、左手の薬指を。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【平穏結界】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

捌碁・秋果
あの春に観た企画展。ここが私の歓びの光景
あの絵と再会するために、誰もいない館内を歩く

この企画展は私の忘れたくない思い出
あれから5年経って、認めたくないけど記憶も感動も日毎に薄くなっている
私も成長して、当時の感性をしていない
一番感動したあの絵を観ても、きっとあの時と同じ想いを抱けない

感動した油絵の前に立つ
象徴主義に分類される画家の、神秘的な絵
ひとつひとつのモチーフは分かるのに、絵の中で起こっている現象はちっとも分からなくて
知りたいとあなたを見ているうちに、その色彩の虜になった
ひとつの絵と向き合うこと
良いと思う気持ちに何故と問い、漠然とした感動を言葉でつまびらかにしていくこと
そんな鑑賞の歓びを教えてくれたのはあなただったね

この空間にずっと佇んでいたい
でも
私は他にもやりたいことができたから

パラドクスを使う
あの感動をずっと繋ぎ留めておくために作ったもの
光景も感動もあの時とまったく同じ
満たされる、豊かになる
でもその歓びを踏み越えてでもこの先に行く
思い出だけじゃもう満足できない
私は欲張りなんだ!


 半券を握り締めながら、躍る心のまま、逸るように向かう先。
 そんな己が歩む気持ちの行方を、捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)は知っている。
(「あの春に観た企画展。ここが私の歓びの光景」)
 誰もいない館内を秋果が歩くのは――あの絵と、再会するため。
 あの時に浴びた衝撃はきらめきそのもので、この企画展は忘れたくない大切な思い出。
 けれど同時に、秋果はこうも分かっているのだ。
(「あれから5年経って、認めたくないけど記憶も感動も日毎に薄くなっている」)
 時の経過によって成長した自分は、当時の感性をしていないことを。
 だから、一番感動したあの絵を今の自分が観ても……きっとあの時と同じ想いを抱けない、って。
 でもそれでも、秋果は静かな館内を歩み進んで。
 辿り着けばその足を止めて、感動した油絵の前に立つ。
 幻想の世界を描き続けた、象徴主義に分類される画家の、神秘的な絵の前に。
 そして改めて見つめてみれば、あの時と同じように、今だって全然分からない。
 いや、ひとつひとつのモチーフは分かるのに……見つめる絵の中で起こっている現象はやはり、ちっとも分からなくて。
 だからあの時、こう思ったのだ――知りたい、と。
 そしてきらめきが心を彩ったのだ。
(「あなたを見ているうちに、その色彩の虜になった」)
 目の前の絵が教えてくれたのはそう、ひとつの絵と向き合うこと。
 良いと思う気持ちに何故と問い、漠然とした感動を言葉でつまびらかにしていくこと。
 それが、心に満ち溢れるきらめきの所以だと、秋果は知れたから。
「そんな鑑賞の歓びを教えてくれたのはあなただったね」
 見つめる眼前の、この絵のおかげで。
 あの時と同じ感性や感動をもう抱くことは、今の自分にはやはりできないけれど。
 でも、今だからこそ抱ける気持ちや感覚が間違いなくあるから。
 だから――この空間にずっと佇んでいたい。
 歓びの彩りに染まって、きらめきを全身で浴びて、良いと感じる想いで塗りつぶされたいと。
 そしてそれはきっと幸福なことであるだろうって、そうは思うのだけれど。
 ……でも、と。秋果は呟きを落とす。
 だって、あの時と今は、違うのだ。
「私は他にもやりたいことができたから」
 だからこそ秋果は、葡萄色に染めた見果てぬ秋で、褪せぬ歓びのままに感動を去来させる。
 集中と没入、昂揚と充実感――これは、あの時の感動をずっと繋ぎ留めておくために作ったもの。
 故に発動させれば、光景も感動も、あの時とまったく同じで……満たされる、豊かになる感覚。
 でもそれは決して、甘く誑かしてくる少女の天使が溺れさせようとする夢とは、全く違うもの。
 だって――私は欲張りなんだ! って。
 あれから沢山のことを描いてきた時間が秋果を成長させ、日々感性も変化していって。
「でもその歓びを踏み越えてでもこの先に行く」
 もっともっとと、欲するようになったから。
 ……思い出だけじゃもう満足できない、って。
 だから、苦痛も悲哀もない、歓びしかない世界は、確かに幸福なのかもしれないけれど。
『歓びしか感じない世界に、溺れてしまえば幸福のに、なんで……ぐぅっ!?』
 秋果は皆と共に少女の天使達を全て討って、この幻を終わらせる。
 これ以上何も新しく得ることがない、つまらない世界を。
 眼前の絵を見たあの時の感動を心に描きながら、まだ知らない沢山のきらめきと出会うために。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【液体錬成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!

四葩・ショウ
【完全視界】と【飛翔】で大天使の許へ、迫る
呼び水として歌唱するのは
わたしが初めて教わって、覚えた聖歌

きこえますか、伊吹(いぶき)先生
わたしはショウ
正しい歴史の貴方に救われた一人です

貴方に何があったのかは解らないけど
わたしが知ってるせんせいも
同じように願う人だった
けど、わたしは
こんなの間違ってると、おもうから……!

だって、貴方は
かなしんだまま、くるしんだまま奪われて、消えてしまう
そんなの、幸福な世界じゃ、ない
誰かのために願う人を犠牲にしてまで
倖せになんて――なりたく、ない!
感情のまま頬伝う涙を、一滴落として

わたしはそんなのゆるさない
……認めるなんて、
見過ごすなんて、出来ません……
だから……!

見ててください
皆と、示してみせます

悼みを擁いたままでも
わたし達は、生きていけるって

くるしみに絶望にこころが罅割れても
やさしさが、歓びがそれを埋めてくれること
目を逸らしたくなるような残酷な世界の中で
出逢ったたくさんの美しいものを

ねぇ、イブせんせい
貴方に歓びある未来を
わたしは、諦めたく、ない
(アドリブ歓迎)


 皆のおかげで、少女の姿をした天使たちもいなくなった今。
 これできっと、1対1で向き合える……そう思ったから。
 視界を明確に確保すれば、四葩・ショウ(Rupert's Drop・g00878)は雨夜の空へと飛翔する。
 眼前の大天使の許へと、迫るために。
 そして彼に届くようにと、呼び水として響かせる。
 歌唱してみせるのは、そう。
(「わたしが初めて教わって、覚えた聖歌」)
 大天使へと成り果てる以前の彼に……正しい歴史で、せんせいに教わった聖歌。
 だからか、ふと……知らないいろの瞳が自分へと向く。
 知っている青の双眸ではなく、赤い光を放つ正気を失ったブラックオパールの左瞳が。
 けれどショウは目一杯、彼へと声を届ける。
「きこえますか、伊吹先生。わたしはショウ、正しい歴史の貴方に救われた一人です」
 自分を見つめる『ジョン・ドゥの御使い』アダムへ……いや、伊吹先生へと。
 そんなショウの言の葉に、大きく首を傾けつつも。
『あなたにそう呼ばれる覚えはありません』
 そうはっきりと告げるアダムであったが。
 最初に聴いた聖歌と、己のことをアダムとは違う名で呼ぶ眼前の少女を改めて眺めれば。
 だが……と、落とす呟きひとつ。
 そしてショウは、自分を見つめて何かを思う様子のアダムへと、続ける。
「貴方に何があったのかは解らないけど。わたしが知ってるせんせいも、同じように願う人だった」
 今のアダムの思考は歪んではしまっているけれど。
 でも、『子供達を護る為に』――誰もが幸福な世界を願う人。
 それは、せんせいだってそうだったから。
 ただ、ショウはふるりと大きく首を横に振る。
「けど、わたしは、こんなの間違ってると、おもうから……!」
 ショウが知っているせんせいは、アダムとは違う。
 時に己の無力さに打ちひしがれながらも、彼は寄り添っていた。
 悲哀や苦痛を全て消し去るのではなく、その心に寄り添って癒さんと、子供達に聖歌を教えていた。
 それに、全然幸せそうになんか、見えないから。
「だって、貴方は。かなしんだまま、くるしんだまま奪われて、消えてしまう」
 誰でもない幸福な世界を望むアダム自身が、歓びではなく、 罪の意識に苛まれているようにしか。
 だから、ショウはアダムを見て思うのだ。
 ――そんなの、幸福な世界じゃ、ない、って。
「誰かのために願う人を犠牲にしてまで、倖せになんて――なりたく、ない!」
 本当は、すぐに泣いてしまうような……そんな本来の自分を隠すことは止めて。
 感情のまま頬伝う涙を、一滴落として。こころの声を、彼へとうたう。
「わたしはそんなのゆるさない……認めるなんて、見過ごすなんて、出来ません……」
 だから……! と。
 目を逸らさずに真っすぐと、ショウは彼を見つめ、告げる。
「見ててください。皆と、示してみせます」
 ――悼みを擁いたままでも、わたし達は、生きていけるって。
 だって、教えてくれたのは……くれた青と同じ両の目をした、せんせい自身だったから。
 この世界は残酷だ、ということを。
 でも、とても美しいと。
 だからショウは、あの時の彼との約束を、今こそ果たすのだ。
 ――あなたの見た世界を、いつか僕に見せて。
 そう自分に言った彼へと。
 くるしみに絶望にこころが罅割れても、やさしさが、歓びがそれを埋めてくれることを。
 目を逸らしたくなるような残酷な世界の中で出逢った、たくさんの美しいものを。
 歓びだけじゃない、時には心挫けそうになることもあるけれど。
 でもそれ以上に、苦痛や悲哀をしってるからこそ、寄り添うことができるあたたかさを。
 響く聖歌が心を震わせ、共に乗り越えんと差し出された手のような、希望の煌めきを。
 だから、ショウは彼を呼んで、語り掛ける。
「ねぇ、イブせんせい」
 貴方に歓びある未来を――わたしは、諦めたく、ない、って。
 ……そして。
『あなたの言いたいことは、これで終わりかな?』
 ショウの言葉を、これまで何か考えながらも聞いていた彼が、そう口を開いて。
 そして――赤き光を放つブラックオパールの瞳をふっと細める『ジョン・ドゥの御使い』アダム。
 初対面のはずの少女へと、執着の色を湛えた視線を向けて。
 だって、アダムにとってはお誂え向きなのだ。
 歓びしかない世界こそが幸福だと……伊吹へと声を懸命に向ける存在に、思い知らせられるのだから。
 だからアダムは見せしめに洗脳するべく、ショウへと狙いを定めて雨夜にうたう。
  罪の意識に苛まれながら――目的の為ならば、犠牲を問わないと。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!

四葩・ショウ
ネメシス形態となって羽搏く
幸福の王子のふりをした『燕』の姿
オールドローズとサファイアブルーの瞳で
まっすぐにアダムを見据え

ひき続き【完全視界】を使って
仲間の攻撃を支援して、背を預けて立ち向かうよ

救いたいと
つよくひかる想いを囀り、揮う

貴方の悲哀も、苦痛も――受けとめてみせる
狙われるなら視線を惹き付け
【飛翔】で空中戦を交え派手に立ち回り、時に攪乱して

萱さんが砕くカードを
追いかけるように切先を揮い
秋果さんの齎すちからに、想いに重ねて聖歌を口遊んで
護りの花のように咲く
永遠さんと永久さんが頼もしいから、迷いなくとびこめる

擲って、ピンチの仲間をディフェンスする
防具で威力を削ぎ
青色硝子の片翼で雨よけになろう

誰かを傷付けるくらいなら
硝子のレイピアを突き立てるのは、わたし自身

ねぇ、イブせんせい

きこえるんだ
貴方の祈りはきっとまだ消えていない
望みをなくさなくていいんです

彼のミダスの手を
ふり払うことだっていまなら出来る、でも
手を伸ばして――その腕を掴んで、離さない

迎えにいくって
わたし、約束したから
(アドリブ歓迎)


標葉・萱
真っすぐな飛翔を視線が追って
その切っ先が届くように援けを

引き続き周囲の様子に気を配りながら
気づける目は一つでも多い方が良い

優しいご友人が多い様子で、和むような
そんな為人も、人望だろうかなどとふと
貴女を導いたのはそんな方だったのだと
知る機会が今でなければ尚良かったのに

けれど手向けるのはカード一枚
夜の紗幕をひいて圧し留めよう
四葩さんが裂いてくれるだろうから
誰かの一手へ、重ねるように
一矢が届くようにと合わせよう

修練の足りなさはあるけれど
せめて足はひかぬように
黄金に浸されようと引鉄は自身へ

雨のように絶え間ない祈りのおとに
どうか、その手が届くようにと祈るように見据えて
いつか、遠く、下を向いた私にも
触れた熱をまだ、憶えているから


捌碁・秋果
※アドリブ歓迎

皆で連携して戦いたいな

四葩ちゃんのことをディフェンス
アダムの攻撃を藍色の槍で薙ぎ払ったり額縁を展開して軽減したりするから、安心して前に出てね!

アダムが仲間に攻撃をしようとしたらパラドクスを使用
僅かな時間だけど、アダムの衣装を変化させます
その衣装を、黒の立ち襟シャツと白のチノパン姿にコーディネイト! 黒縁眼鏡を掛けて聖書も携えて、これでばっちり
この格好が何かって? 電車のなかで四葩ちゃんから聞いた「伊吹先生が聖歌隊の指導をしていたときに来ていた服装」だ!

肉薄し、槍で薙ぎ払いながらアダムのなかの伊吹先生に問いかける
眼鏡越しの視界はどう?鳥籠から変わった聖書の手触りに覚えはないですか?
…伊吹先生!
先生はひとの心に寄り添えるひとなんですよね!?
じゃあ、お願いだから四葩ちゃんの心に寄り添ってよ!

反撃の黒茨は槍で薙ぎ払って刈る
激痛毒には奮戦する皆を見て自分を奮い立たせる
体と心とが痛くても、皆の頑張る姿を見たらもう少し頑張れる
もう少し、あと少しだけ。きっと伊吹先生は帰ってくるから…!


有栖川宮・永遠
妹の永久(g01120)と参加しますが出来れば皆と連携したいですね。

彼の物がアダム。なるほど、思わず引き込まれそうな姿をしています。

気を抜けば術に引き込まれ、なす術もなく地に伏せるでしょう。奏、気をつけて。

前に私を庇うようにでた永久が敵の目についたのか一瞬私の方に剣を向けるも自ら腕を刺して止めたのに叫び声を上げます。ありがとう、痛い目にあってまで正気を保ってくれて。

永久の左手の剣はもう振るえません。なら私が最大の得手とする氷の式神で対抗しましょう。

式神「六花」。どこか私と永遠に似た着物姿の式神を敵に。性格は違えと、顔と背丈は良く似ている私達、反撃で飛んでくる攻撃に耐えつつ絆の証をアダムに。

伊吹先生、貴方が語る言葉は誘惑と堕落の言葉ではなく聖歌と人に寄り添い導く言葉。

私と永久がいつまでも教え寄り添ってくれた身内を忘れないように貴方の姿
はショウさんの心に残っている。たとえその姿が変わり果てても。

祈りが届くことを願って、永久と攻撃を続けます。大丈夫、その声はきっと届きます。


有栖川宮・永久
姉の永遠(g00976)と参加するが出来れば皆と連携したい

この人がアダム。うん、思わず引き込まれそうな姿とオーラを放ってる。

その鳥籠と瞳は敵を捉えるのに特化してる。お姉ちゃん、気を付ける。一瞬で捉えられて地に伏せないように。



本能的に右手に燦爛の剣、左手に蒼穹の剣を持ってお姉ちゃんの前に出る。いつも一緒にいる顔も背丈も似ている二人組の一人が前に出たのが目に通いたのが繰り出してくる攻撃を左手の剣で受けるも黄金と化した左手の剣が後ろにいるお姉ちゃんの方へ向くも右手の剣で腕を刺して止める。

大丈夫、お姉ちゃんを刺しちゃう痛みに比べればこれぐらいの痛みは耐えられる。右手の剣だけでとびきりの極光の剣を振り下ろすよ。たお姉ちゃんをいつまでも一緒にいたい思いそのままに。

この剣とお姉ちゃんの式神が姉妹の絆の証だよ。

伊吹先生、どんな姿になってもショウさんが貴方から教えてもらった聖歌と暖かい言葉は心に残って消えることがない。絆ってそういう物。

私達がもういない家族を思うように、ショウさんの思いが届きますように。


 歓びしか感じない世界、それに溺れてしまえば、幸福なはずなのに。
 何故、どうして、苦痛や悲哀に涙するような、この残酷な世界に生きようとする?
 どうやっても、己の無力さに打ちのめされるばかりであったこの世界に。
 歓びしか感じない世界に皆が、子どもたちが、溺れてくれれば。
 それで幸福を感じてくれれば、僕は――。

 まだ降り止まない冷たい雨夜の空で……いや、潰えた祈りの成れの果てへと堕ちたその時から、ずっと。
 正気を失った仮面の大天使は罪の意識に苛まれている。
 だから自分自身の命なんかよりも、目的の為――幸福の世界を創り上げる為ならば、犠牲など問わない。
 人々を洗脳し、 歓びしか感じられなくなれば、全ての悲しみを消し去ることができるはず。
 子供たちを、苦痛や悲哀な残酷な世界から、護れるはず――。
 でも、赤き光を放つブラックオパールの左瞳が捉えるのは、それに抗う輝きたち。
 何故、どうして……でも、だけれど。
『歓びしか感じなくなれば――幸福だろう?』
 そう、そんな眼前の光を宿す者たちを見せしめに洗脳すれば、きっと証明されるだろう。
 苦痛も悲哀も消し去ってでも、歓びしか感じなくなれば――それこそ、誰もが幸福な世界であるということを。
 そんな、『ジョン・ドゥの御使い』アダムの姿を真っ直ぐに捉えるのは、歓びの甘言を共に乗り越えた姉妹。
 いや、歪んでしまっているとはいえ……望みを叶えるべく歌われる声を聞けば、その大天使たる姿を見れば。
(「この人がアダム。うん、思わず引き込まれそうな姿とオーラを放ってる」)
(「彼の物がアダム。なるほど、思わず引き込まれそうな姿をしています」)
 ふらりと心が揺らぎそうになってしまうけれど。
 でも、有栖川宮・永久(燦爛のアンフィニ・g01120)は、有栖川宮・永遠(玲瓏のエテルネル・g00976)と共に並び立ち、敵の姿を見据える。
 事前に新宿駅で聞いた話によれば、その鳥籠と瞳は敵を捉えるのに特化していると。
 そして実際に目にした仮面の大天使から感じるのは、強力なクロノス級の力。
 けれど永遠もそんなアダムから目を逸らさずに、隣の永久へと紡ぐ。
「気を抜けば術に引き込まれ、なす術もなく地に伏せるでしょう」
 ……気をつけて、と。短い言の葉に思いを乗せて。
 その声に永久も頷いて返して。
「お姉ちゃん、気を付ける」
 相手が強敵であることを確りと心に留めながら戦いに臨む。一瞬で捉えられて地に伏せないようにと。
 そして雨夜にばさりと羽搏くのは、硝子の青き翼。
 それは、まっすぐにアダムへと向かって羽搏く、四葩・ショウ(Rupert's Drop・g00878)のもの。
 オールドローズとサファイアブルーの瞳で、ひらけた視界の中、彼を見据えて。
 雨夜を飛翔する今の彼女は、そう――幸福の王子のふりをした『燕』の姿に。
 それに、ネメシス形態となったショウが真っ直ぐに彼へと立ち向かえるのは、背中を預けられるから。
(「気づける目は一つでも多い方が良い」)
 ……その切っ先が届くように援けを、と。
 引き続き周囲の様子に気を配り、彼女を援護するために。
 真っすぐな飛翔を視線で追う、標葉・萱(儘言・g01730)の姿があるし。
「四葩ちゃん、安心して前に出てね!」
 皆と連携を取りながら、ショウが彼と向き合えるように。
 藍色の槍を握り、額縁を展開し、身を挺して彼女を支えんとする、捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)だっている。
 そしてショウだって、そんな仲間の攻撃を支援しつつ共に支え合いながらも、囀り、揮う。
 つよくひかる想いを――救いたいと。
「貴方の悲哀も、苦痛も――受けとめてみせる」
『歓びしかない世界に溺れてしまえば、幸福で在れるというのに……だが、いいでしょう。今からでも遅くはありません』
 そう己へと特に執拗に向けられるブラックオパールの視線から目を逸らさずに。
 むしろ惹き付けるように、ショウは雨夜の空をひたすらに翔ける。派手に立ち回り、時に攪乱するべく。
 そして刹那、本能的に右手に燦爛の剣を、左手に蒼穹の剣を握り締め、姉の前に出て。
 ショウへと視線が向いている眼前の仮面の大天使へと、永久は真正面から振り下ろす。
「全力の一撃だ!! 喰らえ〜!!」
 キラキラしたオーロラの剣……極光の剣を、言葉通り全力で。
 萱も繰り出されたその一手へと重ねるように、仲間が生み出した煌めきと、羽搏く彼女と彼の行先を見つめながらも。
(「優しいご友人が多い様子で、和むような」)
 ふと思う……そんな為人も、人望だろうか、などと。
 それと同時に、こうも感じてしまう。
 貴女を導いたのはそんな方だったのだと……知る機会が今でなければ尚良かったのに、なんて。
 けれど手向けるのは、ひとつ。
 夜に溶かした硝子のカードを一枚、砕けば。
 暁の淵、地平の底、星のない夜――溢れ出て垂れ込める暮明は檻となって。
『……!』
 空に羽搏く大天使を閉じ込め、圧し留めんとひかれるは、夜の紗幕。
 萱は、煌めき振るわれる永久の刃に合わせて重ねる。
(「四葩さんが裂いてくれるだろうから」)
 だから、その一矢が届くようにと、夜に蕩ける幽冥を。
 けれど雨夜に瞬間響き渡るのは、大天使が口遊むアンセム。
 そしてすべてを支配する黄金の御手が、楽園へと誘うべく伸ばされる。
『手をとりなさい。それが最善だ』
 いつも一緒にいる、顔も背丈も似ている二人組のうちの一人に……目についた、姉の前に出ている永久へと。
 それを咄嗟に、永久は左手の蒼穹の剣で受けるも。
『選びなさい。あなたの手で彼らを傷付けるか、それとも――』
 黄金と化した彼女の手が次に振るわんとする刃の矛先はそう、ミダスの意のままに。
「……!」 
 後ろにいる、永遠へと向けられる。
 そして刹那戦場に上がるのは、永遠の叫び声。
 だがそれは、一瞬自分に向けられた妹の剣にではなく。
「永久……!」
 自分を庇うように前に立つ永久が、自らの腕へと突き刺したから。
 右手の燦爛の剣を、己へと向かんとした左の刃を止めるために。
 皆で合わせて攻撃を繰り出していくも、相手は強大な力を誇るクロノス級。
 執拗に執着するショウをはじめ、皆纏めて洗脳してしまわんと。
 向けられる攻撃に対し、歌声を響かせ、甘やかに囁き、強烈な反撃を解き放ってくる仮面の大天使。
 けれど、アダムが仲間に攻撃をしようとするその動きを察し、秋果は展開する。
 僅かな時間ではあるけれど……アダムの衣装を変化させて、黒の立ち襟シャツと白のチノパン姿にコーディネイト!
 いえ、それだけではなく。
「黒縁眼鏡を掛けて聖書も携えて、これでばっちり」
『! これは……?』
「この格好が何かって?」
 アダムへと施されたセツナコーディネイトは、そう!
「電車のなかで四葩ちゃんから聞いた「伊吹先生が聖歌隊の指導をしていたときに来ていた服装」だ!」
 誰かの御使いなんて存在ではなかった頃の、在りし日のショウの記憶にある『せんせい』の姿。
 その変化はごく短い間であるけれど、思わぬ己の変化にアダムが一瞬気を取られれば。
「ありがとう、痛い目にあってまで正気を保ってくれて」
「大丈夫、お姉ちゃんを刺しちゃう痛みに比べればこれぐらいの痛みは耐えられる」
 永遠は、そう右手の剣だけでとびきりの極光の剣を振り下ろす永久の姿を目にしながらも。
(「永久の左手の剣はもう振るえません」)
 ……なら私が最大の得手とする氷の式神で対抗しましょう、と。
 アダムへと示すべく戦場へと解き放つ。
 ――さあ、行っておいで!!
 雪の如く白い着物を来た氷の式神『六花』を。どこか自分達に似た着物姿の式神を、眼前の敵に差し向ける。
 性格は違えど、顔と背丈は良く似ている姉妹ふたりで、反撃で飛んでくる攻撃に耐えつつも。
(「私達の絆の証をアダムに」)
 いつまでも一緒にいたい思いそのままに。
「この剣とお姉ちゃんの式神が姉妹の絆の証だよ」
 絆の証を、アダムへとぶつけて。
『絆? 分け合うだけでは、苦しみや哀しみが消えるわけではないだろう? それは僕が望む、幸福な世界ではない』
 呼吸の合ったふたりの異なる攻撃に微か揺らぎながらも。
 ふるりとアダムはそう、ふたりの絆を否定せんと首を横に振らんとするが。
『!』
 肉薄し槍で薙ぎ払いつつ、秋果も問いかける。
「眼鏡越しの視界はどう? 鳥籠から変わった聖書の手触りに覚えはないですか?」
 アダムのなかの伊吹先生に。
 そして、ぴくりとほんの僅か反応を示したような気がする『彼』へと続ける。
「……伊吹先生! 先生はひとの心に寄り添えるひとなんですよね!?」
 ――じゃあ、お願いだから四葩ちゃんの心に寄り添ってよ! と。
 それに、永遠と永久も思いの言の葉を重ねる。
「伊吹先生、貴方が語る言葉は誘惑と堕落の言葉ではなく聖歌と人に寄り添い導く言葉」
「伊吹先生、どんな姿になってもショウさんが貴方から教えてもらった聖歌と暖かい言葉は心に残って消えることがない。絆ってそういう物」
 祈りが届くことを願って、仲間と共にアダムへとふたり向け続ける。想いを込めた声と衝撃をもって。
 そして再び黄金の手が、すべてを支配し眼前の者達を洗脳せんと、刹那伸びるも。
『手をとり、選びなさい。あなたの最善を』
(「修練の足りなさはあるけれど、せめて足はひかぬように」)
 たとえ、大天使の意のままに動いてしまうとしても。
 萱は迷わずに選ぶ。黄金に浸されようとも、引鉄は自身へと。
 そしてまた、ひとつ――彼女の思いが届くようにと、硝子のカードを夜に砕く。
 ショウは雨夜を翔け、前だけを見据え切先を揮う。そんな萱が砕くカードを追いかけるように。
「もう少し、あと少しだけ。きっと伊吹先生は帰ってくるから……!」
 彼から教えてもらった聖歌を口遊む。そう紡いでくれる秋果の齎すちからに、想いに重ねて。
 そして迷いなくとびこめる。
「私達がもういない家族を思うように、ショウさんの思いが届きますように」
「大丈夫、その声はきっと届きます」
 護りの花のように咲く、永遠と永久が頼もしいから。
 けれど、黄金に支配された手によって己を傷つけることを選び続け、全身を駆け巡るブラックオパールの黒茨がもたらす激痛毒。
 そんな強烈な攻撃を受ければ当然、体と心に感じる激しい痛み。
 でも、秋果は地を踏みしめ、槍で薙ぎ払って黒茨を刈り続ける。
 ……皆の頑張る姿を見たらもう少し頑張れる、って。
 そしてショウも支えられるだけでなく、翼を羽搏かせ、己の身を躊躇なく擲つ。
 自分を守らんとしてくれる皆を自分も守るために、纏う護りで威力を削ぎつつ、青色硝子の片翼で雨よけになろうと。
『何故、どうして……苦痛も悲哀も消し去ってでも、歓びしか感じなくなれば、幸福だろう?』
 望んだのは、誰もが幸福な世界。
 洗脳してでも、歓びだけを人類が甘受するようになれば、それが叶うはず。
 たとえその為なら犠牲を問わない、それが自身の命であろうとも。
 だが、先程まで静かに嘻笑していたアダムの表情に強くにじむのは、苛まれる罪の意識。
 苦しさや哀しみを抱え受け入れ分け合いながらも、見せしめに洗脳せんとした復讐者達は傷だらけになっても尚、輝きを失わず。
 むしろ、挫けることなどなく声と攻撃を幾度も重ね合わせ、大天使である己を追い詰めている。
 その事実に、アダムのブラックオパールの左瞳が放つ赤の色も揺らいで。
 潰えた祈りの成れの果てであるはずの存在が、己の抱くものと同じ想いをまた、目の当たりにする。
 意のままに操って、絶望させて、見せしめに洗脳しようと、黄金の手を伸ばしたのに。
 誰かを傷付けるくらいなら……硝子のレイピアを突き立てるのは、わたし自身、と。
 やはりショウも皆と同じく迷わない。躊躇なく自分の身に刃を立てて。
 そして、紡ぐのを決してやめない。
「ねぇ、イブせんせい。きこえるんだ、貴方の祈りはきっとまだ消えていない」
 ――望みをなくさなくていいんです、って。
 潰えたはずの希いを幾度だって、諦めずに口にし続ける。
 ショウも、秋果も永遠も永久も。
 そんな雨のように絶え間ない彼女達の祈りのおとに、萱も祈りを重ねる。
 どうか、その手が届くようにと――祈るように見据えて。
 ……だって。
(「いつか、遠く、下を向いた私にも」)
 触れた熱をまだ、憶えているから。
 そしてショウは、痛いほど感じるのだ。
 歓びしか感じない世界を創らんとしているアダム自身が、誰よりも苦痛や悲哀に囚われていることを。
 だからこそ、ショウは迷わずに。
(「彼のミダスの手をふり払うことだっていまなら出来る、でも」)
 だがそれを選ぶことはしない。
『……!』
 手を伸ばして――その腕を掴んで、離さない。
「迎えにいくって、わたし、約束したから」
 ――させない。
 なかったことにされた思い出達を想うこころや希う感情が、歌声となって。
 白い喉が奏であげる聖歌が、虹のひかりの軌跡を齎す。ぐっと握り締める、硝子のレイピアに。
 この世界は残酷で、でもとても美しい。
 だからこそ約束通り、自分の見た世界を、彼に見せるために。
 揺るぎないプリズム弾けるショウのそのひとつきが、今――アダムを断つ。
 苦痛や悲哀に寄り添い、時に自分達の無力を嘆くこともきっと何度だってあるだろう。
 でもそれでも、子供達や沢山の人々に聖歌を届けて、希望の光を見出しつつも共に歩めるような……そんな世界へと、彼を導くために。
『! 僕は、誰もが幸福な世界を……、ッ!』
 クロノス級『ジョン・ドゥの御使い』アダムを討ち、歪なこの世界を終わらせる。
 皆のちからと想いを乗せた、虹のひかりのきらめき迸る硝子のレイピアで、彼の身を貫いて。
 そして、ぐらりと揺らいだ大天使の身体が地へと崩れ落ちれば。
「!! せんせいっ」
 オールドローズとサファイアブルーではなくなった瞳を向け、彼へと駆け寄るショウ。
 皆も彼女に続けば……思わずその目を見開いて、顔を見合わせる。
 先程まで月長石色であった髪は黒へと。
 赤い光を放っていたブラックオパールの左瞳は、隠れていた右瞳と同じサファイアブルーへと。
 その彩を変えていたのだから。
 そしてそれは、ショウのよく知る、憧れのせんせいのもので。
「う……これは? 僕は、一体……」
 ゆっくりと身を起こした彼――息吹は、自分を見つめる皆を見回した後。
 視線を留めたショウのことを呼ぶのだった。ショウの記憶に刻まれた通りの、懐かしい呼び名で。
 そして、いつもはできるだけ零さないようにしているのだけれど。
 今だけは……ぽろぽろと、本当は涙もろい少女にショウは戻るのだった。
 そんな姿をあたたかくそっと見守りながらも。
「四葩ちゃんの気持ちが伝わったみたいで、よかった!」
「伊吹先生がこれからどうされるかは、先生ご自身が決めることでしょうけれど。でも、よかったです」
「ショウさんと伊吹先生が一緒に歌う聖歌、お姉ちゃんと聴きたいな」
 そう心からの歓びを紡ぐ、秋果と永遠と永久の声を耳にしながらも、萱はふと夜空を見上げる。
 夜空から舞い降っているのは、雪。
 冷たい雨がいつの間にか、雪へと変わっていて。
 きっともうすぐ崩壊するだろう最後の空を、純白に染め上げる。
 そして皆で、歪んだこの世界を後にするのだった。
 ――いざ聞け 御使い歌う 妙なる天つ御歌を めでたし きよし今宵
 何処かから響く、クリスマスキャロルを聞きながら。
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【未来予測】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【友達催眠】がLV2になった!
【アイスクラフト】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【先行率アップ】がLV2になった!
【ダブル】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2023年12月28日
宿敵 『『ジョン・ドゥの御使い』アダム』を撃破!