敗走するイタリア蹂躙戦団追撃戦

 ローマでの決戦で、イタリア侵攻軍の最高指揮官『砕城者・デメトリオス』を撃破した事で、蹂躙戦記イスカンダルのイタリア戦線は重大な転機を迎えました。
 多くの蹂躙戦団の亜人達を撃破された上、最高指揮官を失ったイタリア侵攻軍は周章狼狽し、イタリア侵攻時の拠点『港町バーリ』へと敗走しています。
 攻略旅団の提案に基づき、この敗走する軍勢を追撃しつつ、バーリ方面へ進軍していきましょう。
 バーリからは、撤退を支援する為の部隊が派遣されていますので、その部隊の撃破も行なえば、港町バーリの解放も可能となるでしょう。

起源王ロームルス
魔女キルケー

逃走者と放流者のドリフト(作者 baron
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「どうやら、デメトリオスが敗北したようだな」
 ローマ風に改装された大灯台の一室。
 そこで狼の如き勇猛さと知性の共存、そして威厳をまとった男が居た。
「口ほどにもない。だが、これはこの地域を我が物にするチャンスと言える」
 その男の名はロームルス。
 起源王ロームルスと人は言う。
 この地が亜人たちに侵入された時に生じたジェネラル級であり、出現の理由や面識の問題もあって帰属意識は薄いのだろう。
「キルケー。お前には、敗残兵の撤退を支援して、我が軍勢に組み込む役割を与えよう」
 ロームルスは幾つかの目的の為に動くことにした。
 そこに野心もあろう、理想もあろう。
 だが、その為には戦力も居る。イスカンダルの勢力がどうなるかは分からないが、ずっと継続するならば功績と、勢力を伸張させる大義名分も必要であった。
「デメトリオスの配下であった亜人の軍勢を麾下に加える事ができれば、我が支配は盤石となる。頼んだぞ」
 と、傍らの女に語り掛けた。
 そこには翼持つ魔女が一人。
 その名をキルケー。彼と同じ様に進軍後に生れたジェネラル級で、魔女キルケーと言う。
「このイタリアは、狼の子たるロームルス様のもの。必ずや、命令を果たして見せましょう」
「デメトリオスの亜人は下品で我が君の配下に相応しくはありませんが……」
「たっぷり調教して理解らせてあげましょう」
 キルケーは恭しく返事を行う中で、言葉に起伏を生じさせた。
 デメトリオスやその配下に言が及んだ段階で少しトーンが荒くなる。
 新参であり、さらには女性型亜人だ。さぞ侮られたと思えばこそ、その怒りの理由も察せられるだろう。


「ローマ決戦で、ジェネラル級亜人『砕城者・デメトリオス』を撃破した事で、イタリア蹂躙戦団を壊滅させる事に成功した。
 壊滅したイタリア蹂躙戦団は、イタリア侵攻の最後の拠点である『港町バーリ』へと撤退している。
 そこで速やかに追撃を行い戦果を拡大して欲しい」
 アウグスト・エステルブリッツ(人間の思想家・g08506)が地図とメモを手に説明を始めた。
 敗走した軍勢がバーリに到達して再編成されれば、港町バーリの攻略が難しくなってしまうという。
 逆に、敗走した軍勢を撃破した上で、撤退を支援する為にやってくる、バーリの部隊を撃破すれば……。
 バーリ到着と同時に、港町バーリ攻略戦を開始する事もできるだろうとか。
「港町バーリには、《七曜の戦》後に新たな『大灯台』が建設されているようだ。
 既に知っている者も多いだろうが、『大灯台』は、亜人が数を増やす上で必要不可欠なものとなっている。
 バーリを攻略して大灯台を破壊する事ができれば、イタリア支配の野望を大きく挫くことが出来るだろう」
 そう言ってアウグストは地図を皆に示す。
 大灯台はイスカンダルの支配に欠かせない物であり、これを破壊するのは重要だと言えた。

「敗走する蹂躙戦団の進路上に、一般人の街が存在するようだ。
 この町には、蹂躙戦団によって滅ぼされた集落の生き残りなどが集められている。
 そして彼らを守るべく、ローマ軍の兵士や市民の義勇軍が戦いの準備を整えている。そこまでは良いのだがな」
 義勇軍は、敗走する蹂躙兵団を見つけ戦いを挑もうとするが……一般人がクロノヴェーダに攻撃を仕掛けても、その瞬間に反撃されて全滅するだけだ。このままでは、彼らは全滅し、街の住民にも大きな被害が出てしまうだろう。
「流石に死ぬと判って暴走させると気分が悪いし、エネルギーとさせる訳にもいかんだろう。
 敗走する亜人達は、一般人が攻撃を仕掛けるような事が無ければ撤退を優先するので、まずは町に向かってくれ。
 無謀な戦闘を仕掛けないように、兵士や義勇兵たちを説得し、市民の避難などを行ってもらうようにして欲しい」
 市民については、蹂躙戦団の進路から離れるように避難してもらうのが最善だが、それが難しいならば、建物の中に籠って亜人達を刺激しないように息をひそめてもらうだけでも、被害を避ける事が出来る筈だ。
 その上で、住民の避難が終了した後は、撤退して来る亜人の群れと戦って撃破、戦闘中か戦闘後に現れる、撤退を支援しようとする部隊の撃破も行うという作戦であるという。

「港町バーリを支配しているのは、ローマ帝国の始祖の名を持つ、新しく生まれたジェネラル級亜人であるようだ。
 亜人戦力の多くは、デメトリオスに従ってイタリアの蹂躙に向かった。その為に配下には獣神王朝や機械化ドイツから漂着したクロノヴェーダが多いようだ」
 どうやらロームルスは状況を把握し、自らの能力を把握しつつ、配下を鍛えていたらしい。
 これは暴力に対してまだまだ未成熟ながらも、知性に関しては他の亜人の比ではないことを示している。
 そして何より、未成熟と言うのはこれから成長するという事でもあるのだ。侮れる相手ではあるまい。
「撤退を支援する部隊の指揮は、同じくイタリア強奪によって新たに生まれた『魔女キルケー』がとっている。
 攻略旅団の作戦があれば、この作戦と同時に、指揮を取っている『魔女キルケー』の撃破を狙う事も出来るかもしれないな」
 イスカンダルは広く、攻略旅団の作戦も多岐に渡る可能性がある。
 そこで一概にどう動くとは言えないが、選択肢自体は無駄に成らないだろう。
 アウグストはそう言ってメモや地図を皆に渡すのであった。


 そこは人々が集う場所であった。
 後方から派遣された防衛用の部隊も居れば、蹂躙された町からの避難者も居る。
「化け物なんている筈が無い。恐怖から見間違えたのだろうさ」
「おおかたおそらく敵の正体は、ペルシャから流れてきた盗賊や傭兵団……、ならば、充分に勝てる」
 後方からやってきた兵士たちは、そんな風に認識しているようだ。
 彼らはあくまで暴力的な連中としか考えておらず、奇襲であったり、個人の強さで敗北したと考えているらしい。
「……そんなんじゃねえ。俺の町は……一瞬で燃え尽きたんだ……あんなの人間に出来る筈がねえ」
 一方で、逃げて来た町出身の者はどこか怯えている。
 勇ましい事を言っている兵士たちに懐疑的どころか、悲観的な目で見ていた。
 彼の町を襲ったのが何人か分からないが、逆連鎖戦は一瞬であり一般人では対抗も不可能。
 それこそ本当に一瞬に見えていたとしても、不思議ではないだろう。
 そんな風に人々の心は、入り乱れていたという。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【水源】
1
周囲に、清らかな川の流れを出現させる。この川からは、10秒間に「効果LVトン」の飲用可能な水をくみ上げる事が出来る。
【飛翔】
2
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【神速反応】
2
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【泥濘の地】
1
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV1 / 【ガードアップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【先行率アップ】LV2 / 【ダブル】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

baron
baronと申しますね、よろしくお願いいたします。
今回はイタリアを取り戻す戦いの一環になります。

●流れ。
最初の選択肢は、仮に初日からプレイングがあったとしても、14日朝分が出るまで執筆いたしません。
もちろんプレイングが無ければお待ちしますね。
また、14日中に全ての選択肢があり、負える事が可能であったとしても、最後の締めである指揮官戦は16日朝まで待ちます。

①町での説得。
人々を説得し、避難を呼び掛けます。
一般人ではクロノヴェーダには叶わないので、説得が必要です。
なお、敵が逃走を優先しますので、極論を言えば町の中で家に閉じこもるだけでも問題ありません。
敢えて言うならば、説得内容によっては、その後の説得や迎撃戦でも楽になるかもしれないくらいです。

②追撃戦。
逃げる敵を倒します。基本的には慌てふためいているので、一般人を殺しには行きません。
しかし義勇兵や兵士が立ち塞がれば殺そうとするでしょう。
集団が多いので👑が有象無象よりも多いですが、指揮系統や疲労によって、プレイング次第で大成功が出易くなっています。

③回収部隊の護衛。
回収部隊の護衛兵です。
逃走者を回収するつもりですが、訓練されているので指揮官の護衛任務を忘れたは居ません。
よってクリアせずに指揮官を狙うと、大成功が出難くなってしまいます。

④回収部隊の指揮官。
部隊錬成が終わり、自らの兵士を意のままに操れる模様。
傲岸不遜ではあるが、自らの意思を部隊に浸透させるまでに至っていると言える。
③をクリアせずに戦い場合、大成功が出難くなりますが、プレイングによっては出ることもあります。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


有栖川宮・永久
脅威に対抗したい気持ちは物凄く良くわかるんだけど、相手が悪すぎるなあ。この勇敢さは無駄に失いたくない。


待って!!これから先は行かせる訳には行かないよ。これから皆が立ち向かおうとしているのは普通の武器では倒せない亜人という化け物なんだ。普通の武器なんてものともせず容赦無く蹂躙する。特別な異能の力でしか対抗できないんだ。


言葉では説得力が薄いと思うので六花の舞を発動。氷の結晶の華をキラキラ舞わせ、自由自在に優雅に空を飛び回るよ。これが異能の力。普通の人では空を飛んで氷の結晶の華を舞わすことなんて出来ないでしょ?

この異能の力は炎で街を焼き払うことも可能なんだよ。避難してきて皆さんのお話通りだね。亜人達を攻撃しにいくなら空飛んでみて?無理だよね。

だから、亜人達は私達異能の力の持ち主が倒すよ。安全なところに避難して貰えると。手伝うよ。ここを動けないなら・・・家で待機して貰えると。亜人は少し刺激するとすぐ怒って暴れちゃうんだ。対抗しようとする人達がいれば強い刺激になるのは間違いない。お願いできるかな。


ハーリス・アルアビド
実際に被害に遭っていなければ亜人の存在は信じ難いでしょう。しかしここで信じて頂けなければ彼等の勇敢なる行いは破滅に繋がります。

この地に御座す神々よ、この地に生きる人々を守るためお力添えを。
神々に祈りを捧げ、これより神の名をお借りすることへの許しを請い、私達が為すことへの【幸運】を願います。
【友達催眠】の力で警戒心を和らげ、神託を受けた者として振舞います。

私達は神託を受け、戦うべくこの地に遣わされました。
英雄や神々の名すらも騙りこの地を破壊と殺戮によって支配しようとする敵は人の身で倒すことは叶いません。彼の者と戦えるのは神より力を授かった私達ディアボロスのみ。

そのように語った上で神託を受けた証として【砂使い】の力と【風使い】の力を使い周囲の砂を操り風を起こし、その上で信じられぬのであればこの身を槍で貫き、剣で切裂いてみるよう促しましょう。
パラドクス以外の攻撃は効かぬところをお見せすれば神託を受けた者、少なくとも人知を超えた力が存在することを信じて頂けるでしょう。



「脅威に対抗したい気持ちは物凄く良くわかるんだけど、相手が悪すぎるなあ」
「実際に被害に遭っていなければ亜人の存在は信じ難いでしょう」
 有栖川宮・永久(燦爛のアンフィニ・g01120)の言葉にハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)は頷いた。
 この先にある町では、駐留する部隊が亜人たちを迎撃に出ようとするのだ。
「しかしここで信じて頂けなければ、彼等の勇敢なる行いは破滅に繋がります」
 ハーリスたちが緊張するのも仕方あるまい。ただ敵を倒すよりも説得と言うのは難しい。
 だが、このまま座して見過ごせば、何が起きるかは考えるまでも無い。
 さらに言えば、襲われて逃げ場がなく避難の時間を稼ぐのならまだしも、亜人たちは素通りするつもりなので犬死でしかない。
「この勇敢さは無駄に失いたくないよね。色んな意味でね」
 迂闊に押さえつけるのも問題だろうと永久は言う。
 郷土の為に恐るべき相手へ立ち上がる勇気自体は良い事だからだ。
 恐怖に負けて動けないとか、誰かの言う事をハイハイ聞くようなのも避けたいところである。
「ではその志を正しき方向へ向けるべきですね。……この地に御座す神々よ、この地に生きる人々を守るためお力添えを」
 その言葉にハーリスは微笑むと、片膝をついて目を閉じた。
 そしてイタリアの地に座す神々に対して祈りを捧げたのである。
 この時代では神々の加護はまだ信じられている。その名を用いて説得するという非礼を詫び、その行為に幸運がある事を祈ったのだ。

 そして二人は人々が出発する前のタイミングを狙った。
「待って!! これから先は行かせる訳には行かないよ。これから皆が立ち向かおうとしているのは普通の武器では倒せない亜人という化け物なんだ」
「はっ? 何言ってんだコイツ?」
「……っ」
 集合中の軍人たちの元へ永久が現れると騒然となる。
 これから出撃だというのに邪魔者が現れればこうもなろう。
 しかも自分達を役立たずだと言っているも同じなのだ。だが、その中にハッと息を飲む者もいる。
「普通の武器なんてものともせず容赦無く蹂躙する。特別な異能の力でしか対抗できないんだ」
「彼女の言う事は本当です。私達は神託を受け、戦うべくこの地に遣わされました」
「むむ。神官殿か……」
 永久が説明を続けると、ハーリスは静かに現れた。
 友達催眠を設置しているが、神官と言うものはこの時代で信用されている。
 信じる神々は違えども、このイタリアは文化の結節点でもある。また、ディアボロスは装束や言動では違和感を持たれ難いので、問題なく話すことが出来た。
「まず、コレを見て。判り易く説明するからね! 氷の華の乱舞、ご覧あれ!!」
「おお! 空を舞う天女であると!?」
 そして永久は空を飛んで見せた。
 煌く氷の華自体は攻撃のみだが、神秘的な光景に見えるのは間違いない。
 何より空を飛ぶという、一般人には不可能な事が人々を驚かせたのである。
「これが異能の力。普通の人では空を飛んで氷の結晶の華を舞わすことなんて出来ないでしょ?」
「亜人たちは英雄や神々の名すらも騙り、この地を破壊と殺戮によって支配しようとします。そんな敵は人の身で倒すことは叶いません。彼の者と戦えるのは神より力を授かった私達ディアボロスのみ」
 永久の言葉を引き継いでハーリスは静かに諭していく。
 敵が英雄や神々の名前を偽ると言い、そして自分たちはそれを否定する。
 超常の力と言うものは、神と魔物のどちらをも名乗れるのだ。それなのに予め警告するというのは、自分たちは騙す気が無いという裏返しでもあった。
「では、私の方も神託を受けた証しとしての力をお見せしましょう。まずはあの輝きに似た物をお見せしますが……その上で信じられぬのであればこの身を槍で貫き、剣で切裂いてみるのがよろしいでしょう」
「な、なんと。剣で……だと?」
 ハーリスは風を操り、そして砂を空に舞わせた。
 それだけではなく、手招きして遠慮なく攻撃して見せるが良いというのだ。
 面食らったのは兵士たちの方で、鎧を身につけているならともかく、長衣を纏っただけの彼を斬れとは思いもよらなかったのだろう。
「き、効かない?」
「まるで英雄ヘルクレースのようではないか!」
「今の私は神託を受けておりますので、ただ人の攻撃は効きませぬ。同時に、神託に寄りて行動する間は、亜人たちを退けることが可能です」
 ローマを中心として、戦神信仰の強い地域なのでヘラクレスの逸話は良く知られていた。
 文明の力では傷つかない獅子の皮の話も伝わっており、ハーリスに攻撃が効かない事も受け入れられたようだ。神官であるハーリスは元から敬われているが、永久も同じように見られている模様。
「この異能の力は炎で街を焼き払うことも可能なんだよ。避難して来た人が居るでしょ? その皆さんのお話通りだね。だから、亜人達は私達異能の力の持ち主が倒すよ。安全なところに避難して貰えると嬉しいな。手伝うというならそうだね……」
 永久も攻撃するならば、空を飛んでみろと伝えた上で声を掛けた。
 パラドクスなあば瞬時に町を焼き払う事が可能と言い、対抗すべきではないと締めくくる。
「もし何かをしたいなら避難誘導をお願い。体調とかの問題でここを動けないなら……家で待機して貰えるとありがたいかな。亜人は少し刺激するとすぐ怒って暴れちゃうんだ。対抗しようとする人達がいれば強い刺激になるのは間違いない。なので刺激しない様に、お願いできるかな」
「わ、判りました」
「誓ってその様に」
 対抗したら殺されるが、避難したり隠れて居たら問題ない。
 そう伝えることで、何かをしたいという者は避難誘導を頼み、そうでない者は隠れている様に伝えたのである。
「これで大丈夫かな?」
「そうですね。では、亜人たちをこの地から排除しに参りましょうか」
 少し離れて見守っているが、街を離れることはあっても対抗しようとはしていない。
 こうしてディアボロスたちは人々を説得し、クロノヴェーダを倒しに向かったのである。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!

有栖川宮・永久
弟分のミシェル(g03431)と参加

説得は上手くいったかな。約束したので、ちゃんと亜人達を退治しないとね。あ、ミシェル、来てくれたんだ。正直手に余る集団だよ、この威勢。


この集団、確実に敵対者を殺すのに特化してるみたい。原始的な戦闘民族っ
て純粋に強いんだよ。気を抜くとこちらが潰される。心して挑もう。


お互い対処が大変だけど、頑張ろう!!原始的武装ということは凄く硬くで当たると痛そうなハンマーとか棍棒とかかな?石でできた斧剣とか弓矢もありそうだけど、まずまともに直撃するとダウンしそうだから【残像】で致命傷を回避しながら【ダッシュ】【撹乱】【ダンス】でヒラヒラ動きながら走り回って打撃を回避!!

回避できなかったら両手の剣で受ける。うう、重い。攻撃のチャンスができたら都牟刈の太刀を発動!!一気に薙ぎ払う!!正直接近されたくないので、容赦無く全力で振り切るよ!!

ミシェルは大丈夫?本当に厄介だよね、この世界の亜人の軍勢。だからこそ確実に潰して住民の方々を守らないとね。


ミシェル・ラークリーズ
姉貴分の永久お姉さん(g01120)と参加

永久お姉さんはそうそう遅れを取ることはないと思うけど、心配になってきた。(目の前の亜人を見て)うん、来て良かった。色んな意味でお姉さんを
一人で戦わされない。

本当に敵を倒すのに特化してるみたいだね。構えてる武器痛そうだし、余計な事考えない分、ストレートに強力な攻撃してきそう。うん、気を付ける。お姉さんも気をつけて。

急に天啓を得て覚醒した個体!?気をつけないと地の果てまで吹っ飛ばされそう。でもこいつ倒さないと戦況に確実に悪影響及ぼしそうだから、【残像】で急所を外す。剣で受けられればいいけど。うう、重い。でも永久お姉
さんの目の前で無様に地に伏せてられない。男の意地で踏ん張る。

たとえ吹っ飛ばされても詠唱は出来る!!【高速詠唱】でデビリッシュチェイサー発動!!敵の正面に踏ん張れたら零距離で撃ち込む!!敵が回避してもこの弾は追尾するよ!!確実に仕留める。

うん、こういう凶暴な亜人から無辜の人々を守るのが僕たちの使命だし。お姉さんこそ大丈夫?


ハーリス・アルアビド
人々の説得が叶いましたが、万が一と言う事もあります。手早く亜人を倒し、周辺の安全を確保しましょう。

天空の神ホルスよ、お力添えを。異郷にあれど共に同じ空に生きる民を守るため、大いなる翼をお授け下さい。
【祈り】を捧げて【幸運】を願い【結界術】を施します。どうかこの地に生きる人々が脅かさぬよう確実なる勝利を。

撤退している敵は逃走を優先するはず。最高速度で【飛翔】して敵の注意を引きつけましょう。集中する攻撃を【残像】と不規則な軌道での飛翔により【攪乱】し、四方八方から飛来する武器を隼の幻影で撃ち落とします。

味方とも連携し、仲間を囮に逃げようとする者を優先的に狙い【ホルスへの嘆願】で仕留めていきます。落ち着いて対処しようとする者は残しておき、敵が混乱し過ぎて周辺に被害を出さないよう調整しながら戦いましょう。



 遥か彼方から地響き立ててやって来る。
 吼える怪獣、大怪獣? いいや、あれはディアドコイの巨人たちだ!
「説得は上手くいったかな。あの人たちに約束したし、ちゃんと亜人達を退治しないとね」
 有栖川宮・永久(燦爛のアンフィニ・g01120)は軽くストレッチをしていた。
 やって来る敵を迎え討つためであり、言葉での仕事から体を動かしての仕事に意識を切り替える為だ。
「あ、ミシェル、来てくれたんだ。正直手に余る集団だよ、この威勢」
「うん、来て良かった」
 永久が靴をコンコンやって足に合わせていると、ミシェル・ラークリーズ(彩光のグレイス・g03431)がやって来た。
 家族付き合いしている弟分であり、気の良い仲間である。
(「永久お姉さんはそうそう遅れを取ることはないと思うけど……心配になったからね。色んな意味でお姉さんを一人で戦わせられない」)
 ミシェルは離れた位置からでもわかるくらいに巨体の敵と、華奢な永久の体を見比べた。
 殴られたら大変だし、亜人たちは増え方がアレなので捕虜に成ったら大変だ。
 色んな意味で男としては放っておけないだろう。
「人々の説得が叶いましたが、万が一と言う事もあります。手早く亜人を倒し、周辺の安全を確保しましょう」
 そんな二人の様子を眺めハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)はホッコリとした。
 若人たちが人々の為に立ち上がる姿からは未来を感じさせる。
 こう書くとまるでハーリスが老人のようだが、神官ゆえにそこは仕方あるまい。
「さて、そろそろ街へと分岐する辺りです。ここらで止めるとしましょうか」
「「了解」」
 そしてハーリス達は敵を迎え討つべく動き出した。
 敵が気を変えたり、最短距離を突っ走っても困るので、その前に止めに掛かったのだ。
「天空の神ホルスよ、お力添えを。異郷にあれど共に同じ空に生きる民を守るため、大いなる翼をお授け下さい」
 そう言ってハーリスは軽く空を舞った。
 この段階では高度を上げず、速度も出さない。
 だが敵が見えて来たタイミングを合わせて、少しずつスピードを上げていく!
「どうかこの地に生きる人々が脅かさぬよう確実なる勝利を。行きますよ!」
「敵だと!? 待ち伏せか!」
 ハーリスは速度を上げることで敵を引き付けた。
 飛翔の欠点として高度を上げたりスピードを上げると、目立って多数の敵に見つかるというものがある。だがこの時のハーリスは、あえて目立つことで敵の目を町から自分の方へ引き付けたのである!
「天空の神ホルスに奉る! はああ!」
 ハーリスは直線的な動きから、そのままジグザグに蛇行しながら接近して攪乱した。
 必要なのは初期の目線であり、また前衛の注意である。
 ゆえに高度を上げて後方の目は引かず、スピードのみを上げて前衛の目を引き付け、そこから攪乱しつつ隼の幻影を伴って攻撃をしかけたのである。
「しねい、おおおお!」
「わっ。混乱してたのに即座に反撃に出た! この集団、確実に敵対者を殺すのに特化してるみたい。
 敵が仲間へ目掛けて手に持つ武器を次々と投げつけていく。
 永久はその姿というよりは、反応の速さを見てゾクリとした。
「本当に敵を倒すのに特化してるみたいだね。構えてる武器痛そうだし、余計な事考えない分、ストレートに強力な攻撃してきそう」
「原始的な戦闘民族って純粋に強いんだよ。気を抜くとこちらが潰される。心して挑もう」
 ミシェルもそれに頷くと、永久は注意をしつつ自身も走り出した。
 仲間ばかりに戦わせる訳にはいかないし、負傷しているというならば途中から受け持つべきだからだ。
「うん、気を付ける。お姉さんも気をつけて」
「お互い対処が大変だけど、頑張ろう!!」
 ミシェルに手を振りつつ、永久は二本の剣を抜いて軌道を変える。
 ダッシュからステップに切り替え、踊る様に接近。
 刃に神剣の如きを纏わせて、薙ぎ払い始めたのである。
「うごごご!」
「ぴゃあ!? って、悲鳴上げてられないよね!」
 なお、もっとも原初的で何処にでもあり、無効化し難い武器。
 それは石であり、打撃武器であり、そして彼らにとっては大岩である。
 永久はその迫力に苦笑しつつも、身を傾斜させて剣を振り切った。ダンスの要領で体勢を立て直し、残像を残しながら回避できない岩は剣で受け止めつつ敵を切り裂いていく。
「ぬおおおお!!!」
「何か凄そう!? うう、重い。でも……こんな所でやられては居られないよ!」
 その時、敵の一体が急に筋肉を膨張させた。
 もしかしたら命の危機にナニカに目覚めたのかもしれない。
 ミシェルはそいつの拳を剣で受け止めるのだが、ただそれだけで吹き飛ばされそうになる。だが、永久の前で無様に地に伏せてはいられないと気合を入れた。男の意地を見せたと言える。
「ふん!」
「いっけー!」
 敵は強靭な筋力に物を言わせて吹き飛ばそうとするが、ミシェルは残像を残しつつ悪魔の描かれた弾丸を具現化させる。そして跳ね飛ばされつつも踏ん張り、残像を残しつつ敵を吹き飛ばすまでの間、耐え抜いたのである。
「ミシェルは大丈夫? 本当に厄介だよね、この世界の亜人の軍勢。だからこそ確実に潰して住民の方々を守らないとね」
「うん、こういう凶暴な亜人から無辜の人々を守るのが僕たちの使命だし。お姉さんこそ大丈夫?」
 地響きを盾、そして大地を割るかのような強烈な攻撃!
 それを見るだけではなく、自分の体で理解した二人。
 その攻撃が人々に向かわなくて良かったと思いつつ、残る敵を見て気合を入れ直した。
「問題無いようですね。その意気です。数が多いようですし、取りこぼしがないように確実に倒していきますよ」
「「了解!」」
 ハーリスは思い合う二人、そして町の方から遠ざかる敵を見て満足した。
 だが、てきはまだ一掃されたわけではないし、そして敗残兵でありながら原初的な奴らはその肉体だけで脅威なのだ。見逃すわけにはいかないと奮起したのである。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水源】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】LV1が発生!

一角・實生
憂いは可能な限り断ちたいね
この地の人々の命を守れたのならば、次は敵の戦力を削ぐ時だ

回収部隊は訓練されていると聞く
ならば敗走する軍勢と合流するために此方へ向かっているとはいえ、闇雲に進軍したりはしないだろう
俺は町へ至る道途中の遮蔽物などに身を潜めて奴らを待とう
敵部隊の合流阻止と分断を最優先目標に

仲間とタイミングを合わせてパラドクスを発動
先行率アップの効果も組み込み、対応する時間など与えず一気に畳みかけるよ
悪いな、ここから先へは行かせない
敗走する亜人達とお前達が合流することもない

蘇る死骸を操っての反撃はエアライドで最適な方向へ回避、或いはグラナトゥムを盾代わりに耐えよう
操る死骸はお前達が合流しようとした者達も含まれる
逃げて散って、その後もこうして甦らされ……戦いとはこういうものだったと改めて思うよ

己の護衛任務を忘れていないらしいね
指揮官を守るため動く者もいるだろう
グラナトゥムでそういった敵の足元へ牽制の銃撃を放ち、仲間へも伝えていく
奴らの目線の先、足の向かう先が指揮官の居場所だ



 これは少し前の事。
 敗走する亜人たちとディアボロスが戦い始めた頃の事だ。
「隠れるならこの辺りかな?」
 一角・實生(深い潭・g00995)は『港町バーリ』に向かう道で待ち構えていた。
 起伏のある場所に隠れ、己の姿を隠蔽して置く。
「憂いは可能な限り断ちたいね。この地の人々の命を守れたのならば、次は敵の戦力を削ぐ時だ」
 敗残兵を倒しに向かった仲間達を信じていない訳ではない。
 だが、回収に来た敵部隊が予定よりも早いとも限らないし、人々の命を守り、そして港町バーリだけではなくイタリア全土を奪還するために。
「……」
 やがて、その者、死の香りと共に現われる。
 黒き死者、黒の使者。金色の短衣、黒き長衣を身にまといたり。
 その名を、アタナトイと言う。
(「悪いな、ここから先へは行かせない」)
 實生は声には出さずにタイミングを見計らう。
 たった一人で挑むことに恐怖はない。回収部隊は訓練されていると聞く。
 ならば敗走する軍勢と合流するために此方へ向かっているとはいえ、闇雲に進軍したりはしないだろう。むしろ、指揮官を奇襲で狙われる可能性を考え、周囲を捜索するなり距離を保っているはず。数分くらいならば、時間的な余裕があると考えたのである。
(「狙うは合流阻止、そして分断だ。時間は掛けない」)
 たった数分の時間でも、パラドクスを用いた逆連鎖戦ならば一瞬だ。
 實生は恐れることなく敵へ奇襲することにした。
 逆連鎖戦では奇襲による優勢効果はあまりないが、今回の様に時間差で敵部隊を分断するには向いている。
「……っ」
(「ここだね」)
 敵が敗残兵の殲滅に気が付いた瞬間に、實生は躊躇なく引き金を引いた。
 大型の狙撃ライフルが発射され、狙いすました攻撃の後で連続で斉射。
 ただし隠れたままではなく、飛びのきながら位置を変えていく。どうせ逆連鎖戦では隠れ続ける意味は無いので、少しでも反撃を躱しつつ、相手を撹乱するためである。
「……」
 だが敵は軽くのけぞるだけでそのまま進軍。
 正確には傷など気にすることも無く、隊列を保っている。
 そして敗残兵たちの方ではなく、實生の方に向けて突撃し始めたのだ。
「もう気が付いただろう? 敗走する亜人達とお前達が合流することもない」
「……」
 實生はジャンプして敵の突撃をかわし、狙撃銃を斜に構えて剣を受け流そうとする。
 そして余裕を見ては弾丸を撃ち込み、弾倉を交換しつつ戦い続けた。
「数が減らないな……やっぱり死者を操る魔術か。操る死骸はお前達が合流しようとした者達も含まれ、お前たち自身も含まれる。逃げて散って、その後もこうして甦らされ……戦いとはこういうものだったと改めて思うよ」
 實生は苦笑しながら戦場を観察する。
 手は止めず、足も止めず、戦い続けつつ敵の動きを読む。
 やがて敵の陣形が、突撃している前列と、初期配置から動かない後列に分かれている事に気が付いたのである。
「奴らは己の護衛任務を忘れていないらしいね。指揮官を守るため動く者もいるだろう。今の内に横入りをして居て欲しいな」
 實生は戦いの途中で、こちらに来ない後列にも弾を撃ち込んだ。
 その一撃で仲間に情報を伝え、敵部隊が分離しつつあることを教える。

 そう、敵の指揮官が到着し、合流しつつあることを行動を持って告げたのだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【エアライド】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!

ジズ・ユルドゥルム
訓練された護衛兵か。
有象無象の亜人ならば、適当な挑発で簡単に引き付けられそうなものだが…
奴らにその手は通じないかもしれないな。
ならば、強制的に指揮官との断絶を狙おう。

救援機動で、イクリールと不死隊の間に割って入るのを試みる。
接敵と同時に二者の間に「防衛ライン」を敷いて分断しよう。
割って入るのが難しくとも、指揮官の方へ向かう敵の背後から攻撃を喰らわせられれば良し。

貴様らの指揮官は取り込み中だ。
無粋な邪魔をしてくれるなよ。

「地躍」を発動。
大地を隆起させ、近くの敵は鋭く尖らせた岩石で貫き、遠くの敵には岩の塊を飛ばして物理的に圧し潰す。
さらに地形を変形させ、不死隊達が防衛ラインへ辿り着きにくいよう妨害しよう。

敵が狂戦士となって襲ってきても、防衛ラインからは離れずにいる。
狂化した敵が護衛任務を捨ててこちらへ向かって来るなら都合がいい。
小手先の岩礫を止め、大地に力を集め、
殺到した敵の、防御を捨てた胴体に、特大の岩の槍をぶちこんでやろう。

死の恐怖が欠落した戦士など、生き残ることを諦めたも同然だ。


ハーリス・アルアビド
よくいる亜人とは佇まいが違いますね。多少の揺さぶりは効きそうにありません。正面から挑みこちらに引き付けましょう。

大地の神ゲブよ、お力添えを。異郷の地であれど大地はゲブそのもの。
祈りを捧げ戦う同志たちへの幸運を願います。

【ゲブへの請願】による【衝撃波】で敵群を分断し、同時に巻き起こる砂塵を【砂使い】でより巧みに操り視覚の面でも指揮官など味方の状況把握を困難にさせます。

死を恐れぬならば周囲の状況も問わず突撃してくるでしょう。砂塵の中で【残像】を生む速度で駆けて【撹乱】した上で足元を【泥濘の地】に変え、進行速度を緩めます。
いかに猛烈な速度と膂力を以てしても大地そのものからは逃れられません。
泥濘に足を取られた敵を優先的に狙いゲブの御手で冥界へと送りましょう。



 黄金の短衣と黒の長衣を身にまといて、死の香りと共にある者共。
 血で染められた赤き大地に佇み、死と生の契約を行う者共。
「訓練された護衛兵か」
 ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)はその姿を見て思わず身構えた。
 気が付けば口の中が乾くのを感じる。
「有象無象の亜人ならば、適当な挑発で簡単に引き付けられそうなものだが……」
「よくいる亜人とは佇まいが違いますね。多少の揺さぶりは効きそうにありません」
 ジズは急いで防衛ラインを設置し、戦うための準備を整えていた。
 残留効果を狙った位置に設置するには時間が掛かるからだが、その間にハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)がやって来たのだ。
 彼は一つ目巨人の亜人と戦い、傷の痛みもそこそこに駆けつけた様だ。敵部隊と敵指揮官の間を狙って横入りしたジズの様に。
「確かに奴らにその手は通じないかもしれないな」
 亜人たちは生まれた時から精強だが、その分だけ自制が効かない。
 訓練など嫌がる者が多数であり、そもそもその必要性すら理解して居ない者が多数なのだ。
 ジズはその精強さを理解しつつ、先行した仲間に遅れまいと態勢を整えた。
「正面から挑みこちらに引き付けましょう。幸いにも町との間には仲間が先行してくれているようですしね」
 ハーリスは頷いて傷を確かめたが、困るほどの傷はついていない。
 今のコンディションなら、このまま戦えると息を整え始める。
「ならば、強制的に指揮官との断絶を狙おう。私と君で先に出た方が遮断し、殲滅に掛かる」
「承知しました。どちらが先に出るかは風任せで」
 ジズの提案にハーリスは静かに頷いた。
 運任せではなく、自らが先陣を切ると決めて。
 彼にとって風に任せるとは全力を尽くし、神に委ねるという事なのだから。

 そして二人は時間を置かずに戦闘に突入した。
「敵が分断されている? そうか、先行した仲間を狙う者と、指揮官の護衛か。好都合だ、行くぞ」
 仲間が目の前の敵ではなく、後方に居る敵に銃を撃ち込んだのを見かけた。
 ジズはその事で敵の動きを悟り、先行し、情報を教えてくれた仲間がこれ以上窮地に陥らない内に攻撃を仕掛けるべく動いたのである。
「大地の神ゲブよ、お力添えを。異郷の地であれど大地はゲブそのもの」
 ここでハーリスは衝撃波を放ち、砂塵を巻き上げ敵を攻撃した。
 残念ながら大勲章でもなければ視覚面までは遮断できないが、泥濘の地に変えるならば十分である。地には裂け目が幾つも生じ、仮に敵部隊と敵指揮官が合流を目指そうとも即座には難しかろう。
「小賢しいな。殺せ」
「……」
 敵指揮官の声が聞こえるや、残っていた敵部隊は狂乱したかのように殺意を発する。
 金色に輝く剣を振り乱し、こびりついた血潮で赤黒く染めながら迫り来る!
「……」
「いかに猛烈な速度と膂力を以てしても大地そのものからは逃れられません。あなた方が不死だとならば、ゲブ神の御手で冥界へと送りましょう」
 砂塵を巻く風の中でハーリスは残像を砂に映し出しながら戦い続ける。
 手の籠手で刃を受け止め、肉を割く一撃を弾きながら籠手で突き立てていくのだ。
「さて。貴様らの指揮官は取り込み中だ。無粋な邪魔をしてくれるなよ」
 ジズは地面を撫でることで、大地を屹立させた。
 それは敵部隊と指揮官を阻む壁であり、同時に敵を飲み込む土石でもある。
 この事で事前に用意していた防衛ラインが狙い通りの位置に出現したと言えるだろう。
「大地よ躍れ。跳ねよ、地の礫たち」
 斬り掛かって来る敵に対し、ジズは手に付いた埃を拭う間もなく攻撃を仕掛けた。
 ふっと指先の埃に息を吹きかけると、埃は岩礫と成り敵を打つ。
「……」
「そう来るだろうな。まあ死人の悪い癖だ。私が言う事じゃないが」
 そいつらは命など要らないかの如く刃を振り下ろして来る。
 岩礫だと油断したのか? ならば本命をくれてやろうと岩で作った特大の槍を突き刺していったのだ。例え傷付くともジズは容赦せず、そいつにトドメを刺した。
「死の恐怖が欠落した戦士など、生き残ることを諦めたも同然だ。仲間と合流して、残りの敵を殲滅するぞ」
「了解です」
 そして二人は先行した仲間とも合流し、三人で敵の護衛部隊を叩き潰したのである。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!

ハーリス・アルアビド
後は指揮官のみ。宿縁を持つ方と彼と共に戦う方々が目的を果たせるように祈りを捧げます。

豊穣の神にして軍神たるセベクよ、お力添えを。強靭なる牙のごとき力をお授け下さい。
最高速度で【飛翔】して指揮官のもとへ。その勢いのまま【パラドクス】による強襲を仕掛け【両断】します。

反撃を受ける前に【残像】を残して背後に向かって【一撃離脱】を行います。敵からの反撃で捕らわれたならば【早業】で受け身を取れるよう身構、掴む腕をかわせたならば【エアライド】で飛び退く事で衝撃を和らげましょう。

こちらからの反撃は負傷が響いたように動きを止めて見せます。
それでこちらから意識を反らせばそのまま、隙を見せたと攻撃を仕掛けて来るなら【神速反応】をもって【パラドクス】で迎え撃ちましょう。



 配下の部隊が戦っているというのに、指揮官は特にペースを変える気はない。
 そこにメリットもデメリットもある。だが、その男は傲岸不遜に気にしないことを選んだ。
『ほう。余の前に立つ資格がある様だな』
 男は目の前に居る者ではなく、『ディアボロスが存在する』という光景を眺めた。
 個人を見ているのではなく、自分に立ち塞がる障害が有るのだと認識しているかのようだ。
(「後は指揮官のみ。あの男が……」)
 ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)はパラドクストレインですれ違った仲間を見た。
 一部のディアボロス達が狙っている敵がいた筈だ。
(「宿縁を持つ方と、彼と共に戦う方々が目的を果たせますように」)
 目を閉じる。すると目の前の刺激的な男から意識が途切れる。
 思い馳せるのはパラドクストレインで見かけた人々。
 好機を嚙みしめるように向かい、睨む男と、その仲間達。互いを思い合う彼らに祝福がある様にとハーリスは祈った。
「豊穣の神にして軍神たるセベクよ、お力添えを。強靭なる牙のごとき力をお授け下さい」
 もはや敵は一人、ならば目立つことを躊躇う必要はない。
 飛翔して敵の元に向かい、最大限の力を振って戦うだけだ。
 敵の力を我が身で確かめ、そして仲間達に勝機と人々の未来を繋ぐためにこそ、ハーリスは空を翔ける。

 やがて彼我の距離は縮まり、何時でもパラドクスを撃ち合える距離になった。
『余を見下ろすなど不遜である』
「っ!」
 その言葉だけでハーリスは身が縮こまりそうになった。
 だが勇気と志を持って己を振い立たせ、ファラオに対する攻撃を許容させる。
 奴らはクロノヴェーダだ、主人やファラオに対する反逆には当たらない、むしろ攻撃する事こそが重要だと気を引き締め直したのだ。
「豊穣の神セベクに請い願うっ!」
 以前と言葉に力が入る。格闘強化などは呪文の詠唱であれば不要な時もある。
 だが、今日ばかりは血を吐くように唱えるのだ。
 獲物でもあり防具でもある籠手を振い、川と鰐を象徴するセベク神の力を持って剛力をもたらした。
『頭が高い。首を垂れよ』
「くっ!」
 反撃として繰り出された掌から逃れるように残像を置いて離れる。
 一撃離脱のつもりだったので背後へ向けて飛翔しバックダッシュを行ったのだが、衝撃波がまるで見えない爪のように退路を塞ぐのだ。まるでそれが世界の意志であるかのように。
「はっ! ……ふう。流石はアヴァタール級、強くて当たり前とは言いますが」
 掴まれることは避けたが、それでも衝撃波の余波でふっ飛ばされた。
 その途中でエアライドを用いて跳ね、衝撃を和らげて着地する。
「祈りはしましたが……神々に頼る前に、動きくらいは止めて見せましょうか」
 ハーリスは飛びのきながら意識を集中させた。
 神速反応の残留効果は戦いには使用前に集中が必要なので使い難いが、相手が追い打ちを掛けて来るならば、そこを待ち構えて使用できる。そうすれば上手く避けることも出来るかもしれないし、仲間に意識を向けて隙を晒すならば手痛い反撃を喰らわせてやろうと身構えるのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【神速反応】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!

櫻田・結依
連携・アドリブ歓迎

一般人の避難をしてもらったのなら、後は周辺敵と頭を叩くだけ
さそり座のρ星と同じ名前の王様か、へぇ……
やりがい在りそうじゃん
姿がどことなく知り合いに似てる気がする……体の金のラインとか。
あぁ、そうか……
だけど、敵なら倒すだけ!!

相手の視界に入るか否かで、叫びにも似た雄叫びを上げ一気に距離を詰める
先制を取れれば良し、反撃も覚悟の先制攻撃だ
取れなければ持ちこたえて斬り返すだけ

はは……無礼者で結構。だって……間合いに入ったからね!!
叩きつけられてもニヤリと笑ってしまう
戦いになると怒りで何も感じない、痛くなんてない、怖くなんてない
取り返してやる、奪われたもの全部!ただそれだけ
それが獣だと言われればそうなのかもしれないけど、それでいい
油断してると……喉元喰いちぎってやる!!

私の頭を掴んでたら、片手が塞がってるね……今だよ!
囮にだってなってやる
一斉にかかったところで、私も転じて下から切りかかる
足元がお留守なんだよ!!

鮮烈に燃えて消えろ!花のように手折らない、燃え尽きて散れ!!


ケペシュ・ナージャ
アドリブ・連携歓迎

見つけたぞ
例えお前が本体ではないとしても、何も覚えていないとしても
この世に姿を現しただけ斬り刻んでやる
この剣から逃げられると思うな

護衛たちは味方に任せて
復讐心に駆られるように指揮官の方へ突っ込み、先制攻撃を狙います

先制が成功したならそのまま『暗夜』で急所に一撃を
そうでなければ一旦体勢を整えましょう
戦場にいくつか見知った顔を見付けたなら心強さを覚えて

正面からでは分が悪いことは痛い程よく分かっている
だから俺は俺の得意な戦法で
<一撃離脱>のヒットアンドアウェイを心掛け
素早さを活かして動き回り、敵の死角に入るよう立ち回ります
お前が一瞬でも隙を見せたなら、『暗夜』による<暗殺>の一撃で刺し貫く

ライオンの攻撃は予備動作を見て避け
避けきれない分は剣でいなしましょう
さながらマタドールのように

多少の負傷はお構いなしに<連撃>で攻め込みます
今は、今だけは無茶を許してください
クーガなら分かってくれるでしょう?

何処までも追いかける
お前を滅ぼすまで、何度でも


クーガ・ゾハル
……あれが、おまえの倒したいやつなんだな

いつもよりずっと鋭くて
凍りつくみたいな空気をまとった、友達
おれは、何も知らないけど
あいつが、あんなに捨て身で立ちむかうなら
すこしでもケペシュの背を守れるように
自由に戦えるように、動こう

うるさい剣を、武器として、盾として
ダンスのステップふむみたいに
でかい腕をかわして、はじいて
小さなキズは気にとめない
ちゃんと動けさえすればいい
捕まらないように、掴まれないように
そして、あいつが捉えられるように
動きのクセ、スキのできる瞬間の<看破>ねらう

あんまりムチャしすぎは、よくないぞ
なんて軽口、たたきながら
しかたないやつだな
じゃあゾンブンに、いってこい

うるさい剣での攻撃、と見せかけ
強化したおれの腕からの
<貫通撃>のせた『穿葬』おみまいだ
足でも、肩でも、かすめたり、つらぬければ
きっと攻撃の手をにぶらせてやれるハズ
おまえの顔、おぼえておくぞ

いつか、あいつの望みが、ちゃんとかなえばいい


ゼキ・レヴニ
知った顔をいくらか見かけて応援に来てみれば
ケペシュの奴、なんとまァ復讐者らしい顔しちまって
今から無茶しますって顔に書いてあるようなモンだぜ
思う存分戦れるように援護してやらねえとな

そんで、敵大将は――これまた尊大そうな御仁で
王の名を冠するぐらいだ、さぞ堂々とした戦いを見せてくれるんだろうなァ?
注意を引くため奴の言う「無礼者」を演じ
金属塊『躯』を大盾に変形させ展開、真正面から敵と対峙する

【神速反応】で敵の動きを見極め、拳を弾き返すように盾を押し込み
体勢を崩させてからの反撃を狙っていくぜ
幻体や言葉での術を使う素振りが隙になるなら見逃さず、邪魔する様に攻撃を叩き込む
避けずに防ぎ反撃を狙う戦法は消耗もしようが、仲間の攻撃の時間を作れるなら上々
ハッ、さすがに重いなァ
だが前ばっか見てっと――ホラ、死角がガラ空きだ

鷲掴み攻撃が防ぎきれない時は
【泥濘の地】で地面を泥にし、少しでも衝撃を和らげる
泥んこ遊びはこうやってやるんだぜ、陛下
目潰しに泥を散らしつつ盾で突き飛ばし、体勢を立て直す
不味い地面をご馳走さん!



「一般人の避難をしてもらったのなら、後は周辺敵と頭を叩くだけ」
 櫻田・結依(人間のカースブレイド・g01624)はパラドクストレインから降り立ち、敵指揮官に向かった。
 時間軸を合わせての緊急機動、まず間違えることはない。
(「資料によるとさそり座のρ星と同じ名前の王様か、へぇ……。やりがい在りそうじゃん。でもなんだか姿がどことなく知り合いに似てる気がする……体の金のラインとか」)
 結依は言葉には出さず、貰った資料を思い出していく。
 その中で何処か舌が乾き、水が欲しくなるような感覚を覚えた。
 遠目に敵の姿を見ただけで頭の中を何かがチラ付き、スパイシーな気分になる。
「見つけたぞ」
「「っ!」」
 同上したケペシュ・ナージャ(砂蠍・g06831)が口を開いた時……。
 彼を知る誰もが息を吞んだ。何があるわけではない、だが、それでも気圧される。
『誰が余に直答を許したか? まあ良い。シモベ共を倒したのである。余に立ち向かい、そして死する許可を与えよう』
 敵はそんな彼の言葉にフフンと鼻を鳴らして笑みを浮かべた。
 ディアボロスをただの景色扱いする中で、ケペシュの焦燥を面白そうに、個人としての尺度で見たのかもしれない。
「例えお前が本体ではないとしても、何も覚えていないとしても。この世に姿を現しただけ斬り刻んでやる。この剣から逃げられると思うな」
 ケペシュは鎌の様な双剣を握り締めた。
 褐色の肌が僅かに血を失って色合いを変える程にギュっと掴む。
 そして体は何時でも駆け出せるようにして、邪魔する護衛が居ないかだけを視線を向けて確認した。
(「知った顔をいくらか見かけて応援に来てみれば、ケペシュの奴、なんとまァ復讐者らしい顔しちまって」)
 ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)は口笛を吹きたくなった。それどころか言葉も出ない。
 いつもならばそうして、仲間の頭を冷やしている所だ。
 だが、不思議とそんな気分にはならない。口笛なんぞ吹いたら唇が切れてしまいそうな緊張がそこにある。
(「……あれが、おまえの倒したいやつなんだな」)
 クーガ・ゾハル(墓守・g05079)はただようこの緊張感をそう訳した。
 いつもよりずっと鋭くて、凍りつくみたいな空気をまとった、友達。
 冴え凍る様な冬の気配でありながら、同時に夏の砂漠を思わせる苛烈さを備える。
(「おれは、何も知らないけど、あいつが、あんなに捨て身で立ちむかうなら……」)
 クーガは思うのだ。すこしでもケペシュの背を守れるように。
 自由に戦えるように、動こう。言葉ではなく、背中で語ろう。
(「今から無茶しますって顔に書いてあるようなモンだぜ。思う存分戦れるように援護してやらねえとな」)
 ゼキは火を点けて無い煙草を咥えて駆け出す準備を固めた。
 ケペシュにクーガが今にも飛び出して、揃って無茶をやろうとしている。
 ならば止めるのではなく、露払いをして、何がヘマをやったら代わりに受けてやるのが良い軍人の役目だろう。

 そして戦いの時は来たれり。
 歩を進め、詳細な姿を視界へ入れた瞬間に動き出した。
「あぁ、そうか……。だけど、敵なら倒すだけ!!」
 結依は何かを察したように前に出た。
 彼女はこのメンバーの中でそれほど速くはないが、それでも最初だったのは単純だ。目に入ったら飛び出すと決めていたからに過ぎない。
『ディアボロスは無礼者ばかりか』
「はは……無礼者で結構。だって……間合いに入ったからね!!」
 結依は敵に接近し、その懐で短い刃を振った。
 捨て身同然でぶつかって行き、その間合いに相応しい武器を振う。
 そしてこの短さは間合いだけに合わせた物ではない。自らの心臓にそれだけ近い、ゆえに己の想念と生命力を呪焔として振うのだ。
『貴様も首を垂れよ。人の顔をした獣よ、それが道理である』
「だからどうした!」
 短い刃の間合いであるならば、格闘戦の間合いでもある。
 顔を掴まれて地面に叩き伏せられる。だが、そこに恐ろしさを結依は感じない。
 取り返してやる、奪われたもの全部! ただそれだけ! それが獣だと言われればそうなのかもしれないけど、それでいい。
「むぎぎ……片手が塞がってるね……今だよ!」
 油断してると……喉元喰いちぎってやる!!
 そんな意気で顔面を押し潰そうとする掌を跳ね除け声を掛けた。
 ただ攻撃して鉄砲玉になるのではない。囮にだってなってやるつもりだった。
 顔を塞がれて居るから何も見えない、だが、代わりに見える者がある! それは仲間達の未来だ!
「っ!」
 瞬間的にケペシュは間合いに踏み込んでいた。
 本当は彼も飛び出していたのだが、僅かに結依が早かった。
 そして暗殺者としての習い性か、死角を渡って首を狙ったのである。結依を押し倒している分だけ、頭は下がっているのだから。
『腕が塞がった? 注意を引いた? ははっ、貴様らの勘違いだな。王は孤独であるが、一人ではない』
「獅子かっ!? おおおおお!」
 ケペシュが貫いたと思った瞬間、そこに獅子が居た。
 召喚物が受けたダメージは本体に行くはずだが、そんな事を確認する余裕はない。
 咄嗟に一撃離脱で距離を空けつつ、ケペシュは態勢を整える。鋭い爪は甘んじて受け、牙で食いつかれぬようにだけ気を付けた。
「「ケペシュ!」」
「任せた!」
 仲間が二人、両脇から迫る。
 ケペシュは彼らに一度任せて仕切り直すことにした。
 見知った仲まであり友人である。ならば己の肉体と同程度には信頼もしている。自らが鍛えた技以上に、敵を追い詰めてくれるだろう。マタドールのように剣を振るって、今は獅子の猛攻を避けた。
「敵大将は――これまた尊大そうな御仁で。どっちが先に行く?」
「……どっちでも良い」
 ゼキが声を掛けるとクーガは感心なさ気に刃を構えた。
 ヴォンヴォンと煩い程に成る刃はクーガ以上に己を語る。
 鋸の様な刃が振動し、クーガの足はダンスを踊る様にステップを刻む。刃は敵の肉を刻んだ。
『まったく、無礼者を通り越して無頼の徒であるな』
「っく。流される……だけど!」
 敵は掌ではなく、裏拳で攻撃して来た。
 それだけで衝撃波の余波がクーガを襲い、指先の部分が彼を狙う。
 だが、これで両手は使った。片手はまだ結依を押し倒したままだ。クーガはあえてその攻撃を受け、己の五指で対抗する。指先を高質化させ、炎を熾して焼き払いに掛かった。
「王の名を冠するぐらいだ、さぞ堂々とした戦いを見せてくれるんだろうなァ?」
 本当にディアボロスの予定に合わせる気が無いらしい。
 ゼキはそのタイミングを狙って攻撃した。
 神速反応の残留効果は集中が必要なので戦闘では使い難い。
 だが、仲間たちが攻撃する間は様子見しつつ、仲間が拮抗する状態になった瞬間に動いたのだ。ゼキが意志を持って叩きつけると、金属が大盾に変形して敵を殴りつける。
『おのれ……余に両腕を使わせるとは……本当に死にたいようだな!』
 その時、初めて敵は両腕で構えた。
 先ほどまでは常に結依を捉えて離さず、それでいて隙のない態勢だった。
 中腰の筈なのに、王の決断ゆえか不思議と隙のない……そんな理不尽極まる剛力が……その瞬間だけ薄れたのである。
「ハッ、さすがに重いなァ。だが前ばっか見てっと――ホラ、死角がガラ空きだ」
 嘘だろ、おい!?
 ゼキは思わずそう言いたくなる衝撃を『両側』から感じる。
 両掌で押し込まれる強烈なプレッシャー! だが彼は地面へと転がり衝撃を殺した。
 本当はその瞬間に泥濘の地を使いたかったのだが、残留効果は基本的に事前に集中して使うか、さもなければ攻撃の代わりに新たに設置するものだ。目潰しと挑発を兼ねて泥でも投げつけたかったが、ここは我慢しておこう。
「今は、今だけは無茶を許してください。クーガなら分かってくれるでしょう?」
「あんまりムチャしすぎは、よくないぞ。しかたないやつだな、じゃあゾンブンに、いってこい」
 ケペシュとクーガは肩を並べて軽口を叩き合った。
 目線を合わしてアイコンタクト、タイミングを合わせて走り始める。
 その頃には、ゼキも立ち上がりながら砂を掴んでいた。
「不味い地面をご馳走さん! やるぞ!」
「――見えた。足元がお留守なんだよ!!」
 ゼキは土や砂を投げつけ盾を押し付けながら攻撃し、その瞬間に合わせて結依も上半身を起こしながら攻撃した。一斉攻撃に合わせて下から斬り掛かったのだ。
「貫け」
「眠りを」
 指先を硬質化させ炎の槍として、そして死角より暗殺を掛ける。
 仲間の放った呪焔が鮮烈に燃えては消える。
「花のように手折らない、燃え尽きて散れ!!」
「――奴が守りきれなかったのはただ一つだけだった、だから、この話は……此処までなんだぜ!」
 動けない所へ刃と呪いを突き立て、盾に寄るシールドバッシュで押し込んでいく。
 反撃に繰り出される衝撃波が、一同を吹き飛ばし……暴れる獅子が……獅子は、炎の中に消えて行った。
『馬鹿な。余の力が消え失せるだと? 王者である我が血を流し、朽ちていくとは! 不快である!』
 獅子が消えうせ呪いの炎が体を焼いていく。
 全身を炎で苛まれながらも、最後まで、自分の意志を通せない事の方が不快である様だった。
「偽者だろうと……何処までも追いかける。お前を滅ぼすまで、何度でも」
(「おまえの顔、おぼえておくぞ。いつか、その望みが、ちゃんとかなえばいい」)
 ケペシュが敵の姿を睨んでいる中、クーガは静かに見守った。
 そんな中で砂を払いながら立ち上がる二人が居る。
「あーもう! 酷い目にあったし!」
「なーに言ってやがる。最初から狙ってたろ? ディアボロスが本気で暴れたらちゃちな拘束なんぞ直ぐに解けるぜ」
 結依がバンバンと砂を払う中、その埃に塗れつつもゼキは風下に向かった。
 紳士的なヘビースモーカーとしては、未成年を巻き込まないように吸いたいものである。
「一息吐いたら戻りますか」
「ん。帰ったらシャワー浴びたい。パラドクストレインに設置できないかな」
「むり」
「ははっ。要望くらいなら出しても良いかもな。おれは喫煙部屋が欲しいぜ」
 そんな事を言いながら、一同は帰還を果たす。
 そしてイタリア奪還に向けて、また一歩踏み出したのである。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【隔離眼】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2023年11月20日