アンティオキア市街突入戦

 アンティオキア包囲作戦により、ジェネラル級亜人『勝利王セレウコス』の根拠地である、アンティオキアの防衛力を低下させることが出来ました。
 予定通り、脆弱化した防衛ラインを突破しアンティオキア市街地に突入、市街を制圧してください。
 市街地を制圧出来れば、セレウコスが拠る王宮を孤立させ、決戦に挑めるでしょう。

 セレウコスは、防衛戦で活躍できる有力な亜人達を王宮に集結させており、市街地に残されているのは、性格的に防衛戦の役には立たない知能が低く粗暴な亜人と、戦力外のウェアキャット達です。
 セレウコスは戦闘力だけはある粗暴な亜人達をぶつけてディアボロスを消耗させつつ、時間を稼ごうと考えているのでしょう。
 このセレウコスの狙いを阻止し、速やかに、市街地の制圧を行いましょう。


勝利王セレウコス

星望への天路を(作者 海鶴
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#蹂躙戦記イスカンダル  #アンティオキア市街突入戦  #アンティオキア  #セレウコス領  #勝利王セレウコス 


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●『勝利王セレウコス』
 アンティオキアの王宮は騒然としていた。
 ジェネラル級『勝利王セレウコス』は『ダレイオス』や『アンティゴノス』からの援軍を当てにしていたが、しかし連絡すら届かぬ状況に焦りを覚える。
 しかし、その焦りは彼に籠城という選択肢を取らせる要因でしかなかった。
 取れる選択肢が未だ残っている。
 その事実を正しく認識し、最良を呼び込むためには何をしなければならないのかを即座に決断することが出来るのもまた彼の強みの一つであるとも言えただろう。
「精鋭を王宮に集めさせろ」
「ハッ! しかし、市街地の守りは如何致しますか」
 彼の前に膝をつくアヴァタール級に『勝利王セレウコス』は告げる。
 簡単なことだ、と。

「暴れるしか能のなき者に防衛を行わせよ。少しでも王宮に迫るディアボロスの戦力を削げればよい」
 それによって時間が稼げるのならば僥倖というものであった。
 もしもこれが叶わぬというのならば……。
「精鋭部隊をぶつけてでも突破口を開き、離脱すれば良い――」

●パラドクストレイン
 レーネマクダ・デルトダウ(テト・カフ・g08563)は集まってきたディアボロスたちに一礼する。
「お集まり頂きありがとうございます。蹂躙戦記イスカンダルにおける都市、アンティオキアへの突入作戦が次々と行われております」
 彼女は史実であればセレウコス朝シリアの首都であるアンティオキアの市街地への突入作戦の準備が整ったことを集まったディアボロスたちに告げる。
 これまで行ってきたアンティオキア包囲戦が実を結んだ形となる。
 孤立無援となった『勝利王セレウコス』は王宮での籠城を決め込んだ形となるが、しかし市街地には未だ多くのウェアキャットと、防衛戦に向かぬがゆえに配置された捨て石の如き亜人戦力が残っている。
 これを排除することで市街地が制圧することができるだろう。
「そうすれば王宮における『勝利王セレウコス』と、その精鋭部隊との決戦を行うこともできましょう」

 とは言え市街地の守りは未だ硬い。
 防衛戦に向かぬが、しかし配置されているトループス級をはじめとする亜人たちの力は侮れない。
 それに市街地へと突入するためには城壁を乗り越えねばならないのだ。
「城壁の高さは約20mほど。乗り越えること事態は難しくはないはずですが……安易に【飛翔】に頼れば集中攻撃を受けて撃墜されることは必至でしょう」
 となれば、扱うべき残留効果は【壁歩き】や【エアライド】と言ったものになるだろうか。
 そもそも残留効果がなくともディアボロスの身体能力を持ってすれば、壁越え事態は可能であろうが、確実を期すというのならば残留効果の活用も視野にいれるべきであろう。

「市街地突入後は迫るアヴァタール級との戦いになります。護衛を持つアヴァタール級ですが、指揮能力はないようです。ただ純粋に力への渇望、それを満たすためだけに戦う敵のようです」
 強敵との戦い。
 力への渇望。
 そして流れる血への欲求。
 それを満たすためだけに力を振るう者を前にしてディアボロスたちは怒りを募らせるだろう。

「また流言飛語によって、『勝利王セレウコス』の隙を作ることもできるやもしれません。それが戦いを有利に運ぶための方策であるというのならば、それもまた視野に入れるべきでしょう。とは言え、市街地の戦力を正面から打ち破らねば、王宮に座す『勝利王セレウコス』との対決も、撤退を許さぬことも難しいことでしょう」
 ならば、とレーネマクダは集まったディアボロスたちの瞳を見据える。
 この戦いの勝利こそが蹂躙戦記イスカンダルにおける戦いへの大きな影響を及ぼすことは言うまでもない。
 このディヴィジョンにおいて五指に入るほどの有力なジェネラル級。
『勝利王セレウコス』を打倒すべく、果敢にも立ち向かう彼等ディアボロスをレーネマクダは全幅の信頼を持って一礼と為して送り出すのだった。

●市街地
 アンティオキアの市街地は荒れ果てていた。
 それは逃げ惑うウェアキャットたちを見ていればわかることであったが、配置されたアヴァタール級がどうにも成らぬほどの粗暴さを持っていたからだ。
「食事をもってこい!」
 そのアヴァタール級は怒りに満ちた瞳で酒場で給仕をするウェアキャットを睨めつける。
 鋭い眼光にすくみ上がったウェアキャットが動けずにいると、その剛腕が振るわれる。悲鳴を上げるまでもなくひしゃげ、潰れるウェアキャット。
 滴る血にアヴァタール級は更に苛立つように声を荒げる。
「食事をもってこいと言っているだろうが! 役立たず共め!!」
 膨れ上がる怒気。
 それは己が捨て石にされるかのようにディアボロス迫る市街地に配置されたことへの怒りだった。
 言うなれば、『勝利王セレウコス』から暴れる以外に能は無し、という烙印を押されたことと変わらぬからだ。

 故に怒り狂う。
 その様子を遠巻きに見ていたウェアキャットたちは、不穏なる空気を敏感に感じ取り、己だけは助からねばと逃げ出すべく準備を始めるのだった。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
2
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【友達催眠】
2
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【熱波の支配者】
1
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【壁歩き】
1
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV3 / 【ガードアップ】LV2 / 【反撃アップ】LV1 / 【先行率アップ】LV2

●マスターより

海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回は復讐召喚戦です。
 エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)さんの宿敵がアヴァタール級を介し、クロノス級として出現します。

 またこのシナリオは蹂躙戦記イスカンダルにおける『勝利王セレウコス』の本拠地、アンティオキア包囲戦の成功により、脆弱化した防衛網を突破し、市街地戦を行います。

 ①流言飛語(👑7)
 市街地へと突入したディアボロスたちを確認したウェアキャットたちは、逃げ出す好機を探っているようです。
 基本的に彼等が皆さんに敵対することもなければ、みなさんが避難誘導を行わなければならないということもありません。
 アンティオキアを逃れ、他の近隣の都市へと向かう者もいるでしょうし、『勝利王セレウコス』座す王宮へと逃げ込む者だっているかもしれません。
 彼等の見聞きした言葉は、流言飛語となって広まっていくはずです。

 ②👾取り巻きトループス級『アンティゴノス・テュポーン』(👑3)
 市街地に配されていたアヴァタール級の取り巻き配下たるトループス級です。
 取り巻きであったため、数は少なく脅威ではないですが、『復讐召喚』によって呼び出されたクロノス級に味方するため障害と言えば障害となるでしょう。

 ③👾トループス防衛ライン『ミミック』(👑7)
 市街地戦に突入するため、城壁を乗り越えようとする皆さんを迎え撃つトループス級です。
 壁面に擬態するようにして隠れ潜んで、壁超えをしようとする皆さんに不意打ちをしてくる敵です。
 壁を越える工夫もしなければなりませんが、この不意打ちにも対処しなればなりません。
 力押しで突破もできるでしょうが、消耗もまた相応に起こることでしょう。

 ④👿クロノス級復讐召喚決戦『ネメアーの獅子』(👑11)
 市街地にて配置されていた破れかぶれのアヴァタール級を介して『復讐召喚』されたクロノス級です。
『ネメアーの獅子』は突如として、この状況に呼び出されたにも関わらず、即座に状況を呑み込んで皆さんに襲いかかってきます。
 彼にとって必要なのは力と流血です。
 それを満たすことができれば状況など関係ないのでしょう。ただひたすらにディアボロスを屠るために力をふるいます。

 それでは時空すら越えて宿敵を呼び寄せる意志が見せる物語の決着となれますように、たくさんがんばります!
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


エイレーネ・エピケフィシア
ええ……キングアーサーの戦場には、かの地の解放に闘志を燃やす勇士達が向かっています
わたし達はこのイスカンダルの地で戦い続けましょう
市街地の突破に時間をかければかけるほど、セレウコスは思案の猶予を得てしまうでしょう
一日でも早く亜人どもの群れを打ち払い、王宮への攻撃を!

【壁歩き】を借り、自分では【エアライド】を配布
動きやすい状態を整えて壁面を登攀
敵の擬態を見破るため、≪神護の長槍≫の穂先で進む先の壁を擦りながら慎重に歩を進めます

穂先の手応えが壁のそれではなく、柔らかな肉を思わせるものであると感じたなら、即座に先制攻撃を
槍を振り回して『孫呉黒黄旋』を発動……敵を竜巻の如きオーラの渦によって吹き飛ばし、粉砕します
亜人どもの中でも、あなた達の姿はひときわ醜悪ですね
罪なき人々の命を愚弄した、悪行の報いを受けなさい!

反撃に対しては≪神護の輝盾≫を構えて防御しながら、死骸部分の足を槍で払って姿勢を崩し動きを鈍らせます
余りに多くの敵に囲まれて危険な時は、【エアライド】で飛び越えて距離を取り、仕切り直します


ハーリス・アルアビド
各地の決戦に挑む方々に御武運があらんことを。私も同志達の奮闘に負けぬよう力を尽くします。セレウコスの喉元に迫るこの機会、決して逃しません。

破壊の神にして殺戮の神セクメトよ、お力添えを。恐るべきお力の一端をお授け下さい。

【肉体改造】で手足の爪を獣の物に変えて壁の凹凸を捉え登攀します。【壁歩き】でより安定した登攀を行い、味方と協力して周囲の状況を【観察】し、無防備な状態で攻撃を受けないよう互いに警戒しながら戦います。
【未来予測】があればより確実に敵を捉えることができるでしょう。

敵の存在を察したら両手足で壁の凹凸を強く捉えて【残像】を生み出す速度の【ダッシュ】で間合いを詰め【パラドクス】の一撃を。
不安定な場所です。緊急時は【エアライド】の【一撃離脱】で距離を取りつつ回り込み、確実に仕留めていきます。


クロエ・アルニティコス
キングアーサーでは円卓の騎士との決戦の真っ最中……ですが。
こちらを疎かにはしません。
ここまで追いつめたのです。ここで斃れてもらいます、セレウコス。

他の復讐者から【壁歩き】を借りて壁面を上ります。
防衛の亜人は一見見当たりませんが、壁面に擬態するという情報でしたね。
そうと分かっていれば準備もできます。
【未来予測】で1秒先の未来を見通し、不意を突いた攻撃を受けないように。
必要があれば壁面から跳び、離れることで不意打ちを回避した後に【エアライド】の空中ジャンプで壁面に再着地を。

不意打ちを避けたら【トラジディウェーブ】。亜人に対する怒りを力に変え、ねじ切りましょう。
感情と意思を力に変える。それが私の魔術です。捻じ曲がりなさい。

反撃には耳を貸さず。亜人の命乞いになど何の価値もありません。
それは、お前たちに殺された者が最期に発したことばですか?
どうせその言葉の意味すら理解していないのでしょう。悍ましい。

まずは第一関門の突破、次は市街地の亜人ですね。


 ディアボロスたちの戦場は一つではない。
 多くを奪われたが故に、多くを奪い返さなければならない。そう叫ぶような怒りが胸のなかに渦巻いている。
 それを復讐と呼ぶのならば、真実なのだろうと思う。
 他のディヴィジョンにおいては奪還のための戦いが佳境を迎えようとしている。
 闘志が炎となって大気を揺らめかせ、気流を生み出して、天に登っていく。それは風となって走り、何物をも飲み込む竜巻へと変わっていく。
 アンティオキアの市街地における戦いは、誰かの頬を優しく撫でるそよ風でしかなかったのだとしても。
 それでも、紡がれた意志がうねりを生み出し、クロノヴェーダでさえも止められぬ旋風となることをディアボロスたちは知っているのだ。
「ここまで『勝利王セレウコス』を追い詰めたのです」
「ええ……彼の地の開放に闘志を燃やす勇士達に負けぬためにも。わたし達はこのイスカンダルの地で戦い続けましょう」
「各地の決戦に挑む方々にご武運があらんことを。私も同志達の奮闘に負けぬよう力を尽くします」
 クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)とエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)の言葉にハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)は同意を示す。

 そう、戦うこと。
 それだけが奪われたものを奪い返すただ一つの方法である。
 故に彼等は目の前にある城壁を見上げる。自分たちの侵入を阻み、また同時にディヴィジョンの奪還を防がんとしている城壁。これを駆け上がり、乗り越えることによって『勝利王セレウコス』の喉元に刃を突きつけることができるはずなのだ。
「この機会、決して逃しません」
「市街地の突破に次巻をかければかけるほど、『勝利王セレウコス』に猶予を与えてしまう。一日でも早く亜人どもの群れを打ち払い、王宮への攻撃を成さしめるためには!」
 エイレーネが壁を蹴り上げて壁面を上る。
 とは言え、敵であるクロノヴェーダ、亜人たちも一筋縄ではいかない相手であることは言うまでもない。
 この壁面は一見無防備に思える。
 ハーリスもまた同意見であった。

 壁面の凹凸を捉え、また手繰り寄せた残留効果を持って壁を床のように歩みながら登っていく。
 ここまでは順調であった。
 むしろ、この程度の城壁でディアボロスの身体能力をどうにかしようというのが無理な話であったのだろう。それ故にクロノヴェーダ、トループス級たちの姿が見えないのが気がかりであった。
 亜人共となれば、自分たちが登攀しようとする隙を逃さず城壁の上からパラドクスによる攻撃を仕掛けてくるはずだ。なのに、それがない。不気味なほどの静けさを感じ、エイレーネは手にした槍の穂先でもって壁面を叩く。
 石の硬い感触。
 そればかりが伝わってくる。
「……敵の攻撃がない、というのが不可解ですね」
「ええ、城壁を乗り越えようとするこちらの無防備さにつけ込んでくる、と思っていましたが……」
 見えない。
 敵が、いない、とハーリスは訝しむ。

 だが、次の瞬間、クロエが叫ぶ。
「来ます!」
 それは壁面に擬態したクロノヴェーダ、トループス級『ミミック』たちの襲来であった。
「――!!」
 声成らぬ声。
 ただ口腔らしき腐敗した死骸より放たれる呼気にも近い唸り声めいた音。その音と共に伸ばされる一撃がクロエの体を吹き飛ばす。
 壁面から空中に弾かれる彼女の体躯は、そのまま落下し大地に叩きつけられる――はずだった。
 手繰り寄せるは残留効果。
 未来予測でもって見た敵の襲来。そのパラドクスの一撃は不可避。されど、一秒先の未来であっても確定した未来を見たのならば、敵の襲来をいち早く仲間であるディアボロスに告げることができる。

 そして、クロエはさらに手繰り寄せる。
 ディアボロスのみが掴むことのできる残留効果の光。掴むは、エアライド。エイレーネの伸ばした手が彼女の手と繋がれ、その力を伝播させる。
 クロエは空気を大地のように蹴り上げ、隠蔽形態から出現した『ミミック』の姿を捉える。
「たす、――け、テ」
 命乞い。
 それがクロエの逆鱗に触れるものであったことは言うまでもない。
 心に満ちるのは怒りと悲しみ。それが念動力となって『ミミック』の死骸たる体躯を握りしめる。
「亜人の命乞いなどに何の価値もありません。それは、お前たちに殺されたものが最期に発した言葉ですか?」
 ねじりあげる。
 許せるものではない。怒りが悲しみを凌駕していくのをクロエは感じたことだろう。
 空中を蹴って、壁面に降り立ちながら、念動力はしかし緩まる所を知らなかった。許せない。その一念が怒りを彩っていくのを感じたことだろう。
 
 そして、それはハーリスたちにおいても同様であった。
 壁面を捉える足が蹴り上げ、一気に現れた『ミミック』たちへと距離を詰める。
 がくり、と体が揺れる。手繰り寄せた残留効果は壁を大地にて歩むのと同じ速度で可能とするもの。走り出した瞬間に、その残留効果は力を発揮しない。
 だが、エイレーネの腕がハーリスをつかみ、大気を蹴る力を伝播させながら彼の体を『ミミック』へと放り投げるのだ。
「ハーリス殿!」
「こちらは任さして頂きたい! エイレーネ様は!」
 その言葉と共にハーリスの瞳がパラドクスに輝く。
 大気を受けって飛び立つハーリスの体が、魔影分身術によって複数に分裂する。
 それは太陽の輝きを受けてなお、影の黒さを示し、同時に猛禽のように『ミミック』へと襲いかかる。

「破壊の神にして殺戮の神セクメトよ、お力添えを。その恐るべき力の一端をお授けください」
 その言葉と共にみなぎる力。
 影法師の分身たちと共に壁面に擬態していた『ミミック』たちをハーリスの一撃が打ち据え、己の急所へと迫らんとしてた顎を叩き潰すのだ。
 ひしゃげ、飛び散る腐敗した血肉。
 これが死骸に寄生する『ミミック』の本性だった。遺骸に取り憑いているのは、ただ己の体を傷つけられぬため。
 そのために寄生し、同胞を打ち据えるという気後れをも利用して敵を殺し、新たなる寄生先を生み出そうとする悪辣さ。
 故にハーリスは拳を振り抜く。
 許せるものではないからだ。これ以上、死者の眠りを妨げるような行いを。

「亜人共の中でも、あなた達の姿はひときわ醜悪ですね」
 エイレーネの槍が唸りを上げる。
 轟々と響く風の音。大気を切り裂き、旋風が生まれるほどの回転を生み出しながら、輝く盾でもって『ミミック』の肥大化した巨腕の如き死骸の一撃を受け止める。
 踏みしめた城壁の壁面が砕ける。
 それほどまでの一撃であったのだ。
 だが、それでもエイレーネは瞳をパラドクスに輝かせる。
 死骸に寄生するトループス級。
 それはあまりにもむごたらしいことであり、また同時にこのディヴィジョンに生きていた人々の尊厳を壊すものであった。
 故に、怒りの炎が胸より膨れ上がる。
「罪なき人々の生命を愚弄した、悪行の報いを受けなさい!」
 放たれるは旋風の如き槍の一撃。
 竜巻へと変貌したオーラが渦となって壁面に擬態した『ミミック』を舞い上げる。

 そして、その舞い上げられた『ミミック』たちを捉えるのが、クロエの念動力であった。
「た、たっ、タタ助け――テ」
「し、死ぬ、死にタ、く、ナ……」
 命乞いの声。
 それはただの音だった。感情乗らぬ声。それがただ『ミミック』の口腔より放たれた音でしかないことをディアボロスは知るだろう。
「悍ましい」
『ミミック』は、その言葉の意味すら理解していないのだろう。
 如何にして最期を迎えたか知らぬ人々の嘆きを知らぬ。故に、恥ずかしげもなくそのような言葉でもってこちらの関心をひこうとしている。

「許しがたい」
 念動力で持って握りしめた『ミミック』がひしゃげるようにして潰れ果てる。ハーリスの影法師が舞い上げられた彼等を瞬時に打ち据え、大地へと叩きつける。
 その遺骸は最早意味を成さないだろう。
 人の形すらしていない。
 弄ばれた生命。それに報いることができるのは、今此処において立ち止まることではない。
 駆け上がり、城壁の頂点にて三人は市街地を見下ろす。

 この先にある王宮。
『勝利王セレウコス』の喉元へと刃を突きつける、その日が一刻でも早く訪れるためには。
「征きましょう」
 三人は首肯し、市街地へと躍り出るようにして飛び出すのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【エアライド】LV1が発生!
【壁歩き】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

クロエ・アルニティコス
さて、セレウコスを殺すためにはあの王宮から出てきてもらうのが手っ取り早い。
そのために色々と噂を流してきましたが、あまりに王宮から出ることに利がある噂ばかりだと逆に警戒を招くかもしれません。
少し逆方向の噂も混ぜておきましょう。

市街地で戦闘が始まりそうなのを受け、王宮へと逃げようとしているウェアキャットを探し【友達催眠】を使用し、アンティオキアに住むウェアキャットの振りをしながら話しかけます。
急いでいる者には話しかけづらいですし、休憩中の者がいればそちらへと。

このアンティオキアが攻められるなんて、ひどいことになりましたね。
ですが、これも長くは続かないかもしれません。
先ほど攻めてきた者たちが話しているのを耳にしたのですが……「自分たちに王宮を攻め落とせる力はない、ある程度戦力を削ったらアンティオキアを避けて進むしかない」と言っていました。
セレウコスが王宮に籠っていれば、いずれ敵は去っていくでしょう。
もう少しの辛抱です。

話終えたら自分は少し休むと言って別れましょう。


エイレーネ・エピケフィシア
同胞達は、ただ生きるために亜人どもに従っています
彼らを利用する心苦しさは否めませんが、耐え抜きましょう
……全ての人々を救うため、避けられぬ仕事なのですから

わたし自身ウェアキャットですから、逃げだす現地民に溶け込みます
いっそこのまま王宮の方まで潜入できればよいのですが……
亜人どもには復讐者の見分けがつく以上、難しいでしょうね
今は今出来ることに集中しましょう

王宮側に逃げる他のウェアキャットに対して、焦った様子で声を掛けます
はぁ、はぁ……そこのあなた、どうかわたしの話を聞いてくださいませんか
侵入者どもの会話を盗み聞いて得た情報を、逃げた先の亜人の方々に伝えていただきたいのです

どうやら彼らは、アンティオキアへの攻撃を陽動とし、近隣の大灯台に攻め込もうとしているらしいのですよ
大灯台が陥落してしまえば、アンティオキアが無事であろうと厄介なことになるでしょう
あれが何のために建てられたのか、わたしは知りませんが……
亜人の方々が多くの兵を集め、大切に守っている以上、極めて重要な場所には違いないのですから


ハーリス・アルアビド
市街地にいらっしゃるのはウェアキャットばかりですね。ではアヌビスの頭飾りを目深に被り、ウェアキャットの耳の形に合わせた兜を装います。

知恵と魔術の神トトよ、お力添えを。私の言葉に人心を惑わす魔力をお授け下さい。
祈りを捧げ、私たちが為すことへの【幸運】を願いましょう。
周囲を観察し、この状況の中でもおしゃべりな方を選び【友達催眠】の力を使い話しかけます。

大変です。防衛に当たる亜人様が本拠地への攻勢を許したセレウコス様ではなく、他の亜人様に鞍替えをしようと去って行かれました。
嘘だと思うのであれば防壁の方をご覧ください。あの通り、守りに就かれたはずの亜人様が一人も…。

そうして不安を煽り、次々と市街地へ侵入者が入ってきているが、今ならば混乱に乗じて亜人に咎められず逃げ出す隙があるのではと誘導します。


 ウェアキャットたちは市街地へと戦いの気配が波及したことを機敏に察する。
 支配されることに慣れている。慣れてしまっている。故に、彼等は即座に立場を捨てることができる。
 それは多くのことを失ってきたからだ。
 亜人たちにおもねることも、躊躇いはない。誇りなど地に落ちた。拾うべくもない。
「敵が……!」
 来ている。逃げなければ。できるだけ目立たず。それでいて亜人たちに有用な存在であると思われるように城壁を乗り越えてやってきた敵の情報を欠片でも得ようと、耳をそばだてる。
 人の腕は二本しかない。
 多くのことが一度にできない。
 けれど、ウェアキャットたちは貪欲だった。生きることに。

 その様子を見やりエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)は心苦しいと感じた。
 今から己達がすることは流言飛語。
 あらぬ噂を立て、ウェアキャットたちの不安を掻き立てる。彼等の得た情報は必ずや亜人たちの元に届くはずだ。
「同胞たちは、ただ生きるために亜人どもに従っているすぎません。これは彼等を利用する行いであることは……理解しておりますが」
「『勝利王セレウコス』を殺すためには、王宮から出てきてもらうのが手っ取り早い。そのために色々と噂を流してきました」
 今暫くの辛抱だというようにクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)はエイレーネの言葉に頷く。
「あまりに王宮から出ることに利がある噂ばかりだと逆に軽快を招くかもしれません。少し逆方向の噂も混ぜておきましょう」
「なるほど。わかりました。とは言え、心苦しいことにはかわりありませんね」
 ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)はウェアキャットに寄せた兜を装いながら市街地へと駆け出していく。
 噂を流すのならば迅速。
 それでいて情報を求めている者に。
 それは砂漠に水を滴らせるのと同じことだった。すぐさま吸収される。水を得たのならば、貪欲になるものだ。
 故にディアボロスたちは各々の流すべき噂をウェアキャットたちに飲み干させるように市街地へと紛れ込んでいく。

 エイレーネは自身がウェアキャットであること利用し、市街地から王宮へと逃げ出す彼等に紛れて走る。
「はぁ……っ、はぁっ……!」
 息を切らす。
 無論、演技である。けれど、その演技は王宮へと我先に逃げ香本しているウェアキャットたちと何ら変わらぬように見えただろう。
 膝が折れる。地面にエイレーネは崩れるが、誰も駆け寄ってこない。
 誰も彼もが自分のことで手一杯なのだろう。
 だからこそ、彼女の演技が目を引くのだ。
「どうか、どうかわたしの話を聞いてくださいませんか」
 誰も止まらない。
 けれど、彼女の次なる言葉にウェアキャットたちは足を止める。彼等は情報を求めている。己達が亜人の庇護を受けるべき利益を。
「市街地へと侵入した賊どもの会話を聞いたのです。わたしは、もうダメです。どうか、この情報を亜人の方々に伝えていただけませんか……!」
「どういうことだ? 一体何を聞いたというんだ」
「早く言え! そうでなければ賊共がやってくる!」
 せっつかせるようにしてウェアキャットたちが地面に倒れ伏したエイレーネに駆け寄ってくる。

「ど、どうやら彼等はアンティオキアへの攻撃を陽動としているようなのです」
「陽動!?」
「はい、本当の目的は近隣の大灯台……あそこが陥落してしまえば、アンティオキアが無事であろうと亜人の方々にとって厄介なことになるでしょう」
 エイレーネは続ける。
 自分はそれがなんのためにあるのかを知らない。けれど、亜人たちが多く兵を集めているのならば、と集まってきたウェアキャットたちに説くのだ。
「た、確かにそれは一大事だな。わかった。必ず伝えよう」
「ああ、どうかお頼み申し上げます」
 任せておけ、とウェアキャットたちはエイレーネに肩を貸すことなく駆け出していく。まるで蜘蛛の子を散らすように駆け出していく。

 エイレーネがそうやって噂を流す最中、クロエは走るのに疲弊したウェアキャットへと近づいていた。
 息を切らしている。
 あまり体力がないのだろう。そんな彼等にクロエは近づいていく。
「はぁ……はぁ、くそ、どうしてこんなことに……!」
「ひどいことになりましたね」
「まったくだ……! 城壁を守られている亜人様たちは一体どうなっているんだ」
 彼等の言葉には焦りしかない。 
 己の生命が脅かされているという焦り。それをクロエはみやり、言葉を選んでいく。
「確かに。市街地に侵入した賊たちは手強いようです。ですが、これも長くは続かないかもしれません」
「どういうことだ?」
「先程攻めてきた者たちが話していることを耳にしたのです」
 彼女の言葉にウェアキャットたちは目を見開く。
 一体全体どういうことなのだと我先にクロエに群がる。少しでも情報がほしいのだ。自分が生き残るために。

「彼等には『王宮を攻め落とせるだけの力がない、ある程度戦力を削ったらアンティオキアを避けて進むしか無い』と言っていたのです」
 それは市街地へと迫った敵戦力が陽動であることの裏付けのように思えたかもしれない。
「『勝利王セレウコス』が王宮に籠もっていれば、いずれ敵は去っていくことでしょう」
「そ、それは本当のことなのか!?」
「ええ、そう確かに……私も少し休んだら王宮にこのことを伝えなければと思っています」
「い、一刻も早く伝えねばならないではないか、そのようなことは!」
 ならば、自分たちが、と彼等はクロエに先んじるように駆け出していく。
 それをクロエは追わない。
 彼等の役目は、この流言飛語を亜人たちに、『勝利王セレウコス』に届けることだ。そして、自分の役目は……これより市街地にて防衛する亜人を駆逐すること。
 故に、クロエは彼等を見送るようにして背を向けるのだった。

 そして、ハーリスは目深に被った頭飾りを揺らしながら、しばし祈る。
 彼が奉じるは、知恵と魔術の神トト。
 お力添えを、と彼は祈る。これより自らが行うことは、人心を惑わすことである。祈りは幸運を願うこと。己たちの行動が、少しでもこの地の開放に役立つようにと。
「もし、そこの方」
「ん? なんだ、俺は忙しいんだ。お前もこんなところにいないで、早く王宮に……賊が来てるんだぞ」
「わかっております。ですが、あまりにも賊の手並みが鮮やかすぎませんか?」
 ハーリスは呼び止めたウェアキャットに近寄る。
 その様子にウェアキャットは眉根を寄せる。どういうことだと。
「城壁を防衛する亜人様たちが少なすぎませんか?」
「……確かに。賊とは言え数は多くないはずだ。こうもあっさりと……」
「大きな声では言えませんが、どうやら防衛に当たる亜人様たちは『勝利王セレウコス』様から他の亜人様へと鞍替えをしようと去っていかれたようなのです」
「まさか!」
 そんなことはありえないというウェアキャットにハーリスは城壁を示す。

「ならば、あの城壁はどうご説明なされますか」
 あのとおり、とハーリスは城壁に亜人がただ一人もいないことを示して見せる。
 それは自分たちが撃破したからであるが、マッチポンプであったとしてもハーリスはウェアキャットたちの心のなかに疑心を抱かせるために言葉を弄するのだ。
「……! だ、だが、どうすればいい。何処に逃げれば。その分だと王宮に逃げても守りにつく亜人様がいないということなるぞ……!?」
「賊が攻め入ってきて市街地が混乱している今ならば、アンティオキアの外に逃げ出す隙もあるのでは?」
 その言葉にウェアキャットは頷く。
 今までは、このアンティオキアこそが最も安全な場所であると思っていたが、彼は考えを改めるようだった。
「な、なるほどな。ならば、こうしてはいられない。お前も算段があるのならば逃げ出すことだ」
「ええ、そうさせてもらいます」
 ウェアキャットは即座に駆け出していく。
 その背中をハーリスは見送って、目深に被った頭飾りを脱ぎ払う。

 これでディアボロスたちの流言飛語はアンティオキアのウェアキャットたちに浸透していくだろう。
 彼等の放った言葉が如何にして『勝利王セレウコス』に影響を及ぼすかはわからない。
 けれど、確実にその言葉は届くだろう。
 それを信じ、ハーリスたちは市街地から亜人たちを排除すべく、新たな戦いに身を投じるのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV2が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

エイレーネ・エピケフィシア
あれは……亜人、なのでしょうか?
こうも不気味で得体の知れない姿をしたものは、中々見たことがありませんね
尤も、相手が何であろうと、立ち塞がるのであれば全て討ち果たすのみです!

敵にどれだけの知性があるかは定かではありませんが、同族との連携攻撃は得意としているようです
『飛天旋舞斬』で槍によるすれ違い様の攻撃と一撃離脱を繰り返し、取り囲まれないように注意しながら戦います
状況に応じて、敵の頭上を飛び越えて離脱するために【エアライド】や短時間の【飛翔】も使いましょう

敵の技がもたらす畏怖に対しては、無辜の民のために都市を解放する使命を強く想い、自らを激励して耐えます
そして引け腰にはならずに力強く盾を構え、攻撃を受け止めてゆきましょう
凌いだ後は再び攻勢に転じて、着実に敵の数を減らしていきます
救いを待つ人々がいる限り、いかなる怪物にも臆しません
されど無謀な戦とならぬよう、心は静かに……!

ネメアーの獅子を騙る者よ、後はあなただけです
もう二度と、人々を脅かす無数の分身を産み出させはしません
――覚悟なさい!


 市街地を疾駆する。
 頬を風が打ち付けるように感じるのは、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)が戦いの場へと近づいていることを示していた。
 いつだってそうだ。
 戦いの場に赴く時は、己の頬を風が打ち据える。
 それは待ち受けるためではなく、己の槍の穂先が敵を穿つために走るが故。
 アヴァタール級の咆哮が市街地に迸る。
 それは怒りか。けれど、それは欺瞞である。
 捨て石扱いされたことへの怒りと、その事実を覆い隠すように市街地へと侵入したディアボロスに対する怒りにすり替えているのだ。

 その怒りに呼応するように闇色の怪物が蠢く。
 トループス級『アンティゴノス・テュポーン』は、獣とも人とも判別できない体を引きずってアヴァタール級の前に一歩を踏み出す。
「あれは……亜人、なのでしょうか?」
 あまりにも不気味。
 得体のしれぬ存在。エイレーネは、その存在を見たことがなかった。だが、彼女の意思は手にした槍の穂先のごとく鋭く顕然としていた。
 頬を風が打つ音が消える。
 次の瞬間、それは風を切り裂く音へと変わる。
「尤も、相手がなんであろうと、立ちふさがるのであれば全てを討ち果たすのみです!」
 膨れ上がる戦意。
 漲る力。

 己の信仰を信じる。
 それによって得られる加護の力が己の体躯にみなぎっていく。十全たる信仰は物理エネルギーへと変換され、エイレーネのな体を一矢と変貌させる。
 その苛烈なる加速による一撃が『アンティゴノス・テュポーン』の体を貫く。
「――!!!」
 悍ましい声が聴こえる。 
 それをエイレーネは敵のパラドクスであると知る。槍の穂先を引き抜こうとして『アンティゴノス・テュポーン』の不定形なる腕がつかみ上げる。頭上より迫る声。
 天を覆う闇色。
「どれだけ恐ろしげな声でわたしを嘲るのだとしても!」
 手にした盾が信仰に煌めく。
 打ち据えられるパラドクスの声が重圧となって盾構えたエイレーネの体を押しつぶそうとする。

 だが、その一撃を耐えきって彼女は瞳に走るパラドクスの残光と共に己の槍を掴んだ『アンティゴノス・テュポーン』ごと、横合いから迫る新たなる闇色の怪物を薙ぎ払うようにして打ち据える。
「――!?!?」
「救いを待つ人々がいる限り、いかなる怪物にも臆しません」
 苛烈なる意思がエネレーネには宿っている。
 怒りの炎だ。
 されど、その炎を包む外殻がある。それは信仰。そして、人を救うという意思。
 そこに無為無策なる無謀はない。
 燃える心を宿しながら、心は静かな湖面を見せる。

「天にも地にも、凶徒の居場所はないと知りなさい!」
 飛天旋舞斬(エナエリオス・エリグモス)はエイレーネの体を矢へと変える。しかして、この矢は飛来するものではなく、雷鳴のように敵の間隙を縫うようにして走るのだ。
 そして、その閃光の走った後に残るは彼女の金色の瞳が湛えるパラドクスの残光のみ。
 闇色の怪物たちが霧散していく。
 振るう槍の穂先が煌めく。

 それは示す。
「『ネメアーの獅子』を騙る者よ!」
 それは彼女の意思。
 意思が時空を越え、怒り狂うアヴァタール級を媒介にして、『ネメアーの獅子』を引きずり出す。
 
 復讐召喚戦。

 これより開幕するは、復讐の戦。
 …‥否。
「もう二度と、人々を脅かす存在を産み出させはしません――覚悟なさい!」
 これは守るための戦い。
 復讐を越えるエイレーネの使命が。
 信仰が。
 献身が。
 今此処に結実する。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

一里塚・燐寧
そーいえば、今って丁度しし座流星群の時期なんだよねぇ
ねぇねぇ、流れ星にどんなお願いするか決まってる?
夜まで耐え切れたら叶うかもしれないよぉ?
……ま、無理に決まってるけどねぇ

【トラップ生成】で市街地の建物の間に足を引っかけるワイヤーを張り巡らせたり
不規則に小さな落とし穴を仕掛けたりして、敵の動きを妨害するよぉ
まークロノ・オブジェクトじゃない以上効き目は僅かだろーけど、技を差し込む瞬間が一つ二つでも増えれば御の字だねぇ

攻撃を仕掛ける時は【エアライド】の二段ジャンプで頭上を取り、『屠竜技:衝破轟震撃』をぶちこむよぉ!
≪テンペスト・レイザー≫の分厚い刀身で鎧を粉砕し、その下の骨肉を回転鋸刃で直接切り刻んじゃおう
ここで問題、ヘラクレスはなんで獅子の皮を斬れなかったと思う?
こーたーえーはぁ……古代ギリシャにチェーンソーがなかったからだよぉ!

……なーんて言ってみたけど、流石にクロノス級は手強いや
反撃も考えると、これ以上の深入りは無理そう
あたしの技で隙を晒した敵へのトドメは、仲間にズバッと決めて貰うよぉ


菱神・桐梧
アドリブ連携大好き
戦闘中は適度に煽って【挑発】

紛いもんの方は当たり散らすような能無しだった様だが、お前ははどうかな?
気高い獅子らしさ……見せてくれよ。

偶には姑息なやり方でも試してみるか
市街地なら使えそうなもんは山程あるだろ
ダッシュで駆け回り家屋やら瓦礫やらを盾に
その辺にあるもんを適当に投擲
ついでに大太刀もぶん投げてちょいと警戒させとくか

この程度、効きゃしないのは分かってるしな
ここはガンガン投げつけて煽るのが目的だ
上手いことキレてくれると良いんだが

煽り続けて、奴が声を荒げるなり顔を真っ赤にするなり頃合いを見て更に挑発
手招きをし『打ち込んで来い』と大技を誘う

挑発に乗って来たら勝負所だ
ダイビングプレスを迎え撃つ対空戦と行こう
落ちて来る間にこっちもハンマーをぶん回し大回転
たっぷり勢いの乗ったコンクリ塊でぶん殴る

当たりさえすりゃ後はどうにでもなるってな
相討ち覚悟で捨て身の一撃をぶち込んでやるぜ!


「これがどういう状況かなんてことは知ったことじゃあねえが」
 クロノス級『ネメアーの獅子』は、己の鎧が音を立てる音を聞いた。そして、同時にディアボロスの復讐の意思によって己が引きずり出されたことに不快感を顕にしていた。
 この状況を理解するよりも早く、その不快感を抱かせた相手を八つ裂きにしなければならないと彼は理解していたのだ。
 己の肉体が躍動する。
 大地を蹴る。
 踏み割られた大地の破片が飛び散り、周囲に凄まじい衝撃を解き放つ。
「おっぱじめようじゃあねぇの! なあ、ディアボロス! テメエ等が引きずり出した者がなんであるのかを知り、絶望しながら死んで行けよ!」
 咆哮が空よろ轟く。
 空中に有りて『ネメアーの獅子』の姿は流星のようだった。
 きらめくパラドクス。
 その輝きは確かに凄まじい威力を秘めたものであった。
 
 だが、其の様を真正面から捉え、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)と菱神・桐梧(喧嘩屋・g05613)の二人はむしろ、笑う。
「そーいえば、今ってちょうどしし座流星群の時期なんだよねぇ。ねぇねぇ、流れ星にどんなお願いするか決まってる?」
「さぁな。どっちにしろ、やつは聞いちゃくれないだろうよ」
「それもそっか」
「ああ、そういうこった。だからよ、『ネメアーの獅子』だっけか。気高い獅子らしさ……見せてくれよ」
 桐梧はディアボロスが市街地に突入してから起こった戦いによって生み出された家屋の瓦礫を己の有り余る握力でもって掴み上げる。

 崩れた壁面を引っこ抜くようにして彼は、『ネメアーの獅子』へと投擲する。
 ついで、と言ってはなんだが己の手にした大太刀も投げ放つ。
「小賢しいんだよ! そういうのはなぁ!」
 流星のように迫るダイビングブレス。巨体と鎧。そして、空より飛来する圧力の一撃に寄って桐梧の体が吹き飛ぶ。
 だが、彼は笑う。
 パラドクスの一撃を受けながらも、笑って言う。
「はっ、其の程度でよ。よくまあ、その名を騙れるもんだな!」
「減らず口ってやつだな、煽るのに夢中で攻め手が疎かになってやがるぜ、ディアボロス!」
 その『ネメアーの獅子』の足に引っかかるワイヤー。
 足が止まる。だが、それも一瞬だた。『ネメアーの獅子』は燐寧のトラップ作成で張り巡らせた罠を一蹴する。
「あー、や……クロノ・オブジェクトでもない限り意味ないか」
「そういうこった! こんな小賢しい真似で俺を止められるものかよ! なあ! 小賢しいのはやめようぜ、つまんねぇよ! こんなのは!」
 吹き荒れる咆哮。

 それは怒りだった。
「一撃でこっちを倒せてねぇ以上、そりゃ情けねぇにも程があらぁな。どうしたよ」
 来いよ、と桐梧は笑って手招きする。
 煽りに煽り続ける。
 敵を挑発し、敵の冷静さを欠かせようというのだろう。燐寧もそうだった。罠での時間稼ぎなど、時間稼ぎにもならない。ダメージを与えるべくもない。
 けれど、それは刹那に満たないまでも『ネメアーの獅子』の意識を彼女から遠ざけるものだった。
 空中を蹴って彼女は『ネメアーの獅子』の頭上を取る。
 大地を割る強大な脚力と、其の鎧と圧力で持って流星の如き一撃を放つのが『ネメアーの獅子』のパラドクスだ。
 ならばこそ、彼女は残留効果を手繰り寄せる。

 空中を蹴って、『ネメアーの獅子』が跳躍する瞬間を狙ってお乗れての手にした呪詛と怨念を宿すチェーンソー大剣を駆動させる。
 回転刃の切削が唸りを上げるようにして飛翔しようとした『ネメアーの獅子』の背中から叩きつけられる。
 屠竜技:衝破轟震撃(スレイヤーアーツ・メイルストロームパルス)。
 それこそが彼女のパラどうす。
「ここで問題、ヘラクレスはなんで獅子の皮を斬れなかったと思う?」
 鎧と切削遷都する刃が激突して火花を散らす中、『ネメアーの獅子』がどうもうに笑って燐寧へと腕を伸ばす。
 しかし、その腕をへし折るようにして桐梧のハード・ブランディッシュの一撃が叩き込まれる。
「当たりさえすりゃ、後はどうにでもなるってな!」
 それは相打ちを覚悟した一撃だった。
 流星の如き重圧。
 その圧力は凄まじいものであり、燐寧の一撃を受けてなお『ネメアーの獅子』は咆哮する。

「俺が強いのと同じことよ! 生命までは奪えてもなぁ! 俺の体躯が傷つけられないのと同じことよ!」
 燐寧の問いかけに応えるようにして『ネメアーの獅子』は己の体躯、そして鎧の強靭さを誇るようにして叫ぶ。力がみなぎり、パラドクスの輝きを解き放つ。
 だが、次の瞬間、彼女の放った一撃……その回転切削の勢いがさらに増す。
 何故、と『ネメアーの獅子』は訝しむ。
 そう、桐梧が地上からハンマーの渾身たる一撃を叩き込み、燐寧が上から圧力を掛けるようにして大剣を押し込んだが故である。
 火花散らせる鎧が削れる音が聴こえる。
「ざーんねーん! こーたーえーはぁ……」
 燐寧が手にした唸り声を上げるようなチェーンソー大剣を振り抜く。
 瞬間、それは『ネメアーの獅子』の鎧を打ち砕きながら、その強靭なる体躯を切り刻む。
 鮮血が噴出し、さらには桐梧の一撃が『ネメアーの獅子』の顎を砕くように振り抜かれる。

「……古代ギリシャにチェーンソーがなかったからだよぉ!」
 強撃にして挟撃の一撃。
 それによって『ネメアーの獅子』の鎧は砕け、顎は撃ち抜かれる。
「ハ……ハハハハハッ! いいじゃあねぇか、やればできるじゃあねぇかよ! これだよ、これを求めていたんだよ、俺はぁ!」
 笑う。
 それは哄笑であった。
 これだけの手傷を追わせながら、なおも笑う余力を見せている。

 だが、桐梧は渾身の一撃で己の腕の筋繊維が引きちぎれながら、煽るように笑い飛ばす。
「なぁに言ってやがる。足に来てんじゃあねぇかよ!」
「ほんとだ、流石はクロノス級って言ってあげたかったけど……天に登った獅子のように夜まで耐えられたら、其の願いも叶うかもしれないと思ったけれど」
 其の様子じゃ無理そうだね、と二人は『ネメアーの獅子』の膝が揺れる様をみやり、己たちの背後から飛び出す三つの影を見送るのだった――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!

エイレーネ・エピケフィシア
クロエ様(g08917)をディフェンスし共闘

お力添えに感謝いたします、クロエ様
灯火があればこそ、わたしは闇に潜む敵を見定め、無辜の民を暗がりから救い出せるのです
ですから……此度も、あなたの灯を傍で護らせてください

クロエ様に続いて攻めかかります
≪神護の長槍≫と≪神護の輝盾≫を構え、≪天翼のサンダル≫を用いたダッシュで突撃を敢行
突進して槍で突き刺すものだと思わせ
切っ先から身を躱したり、手で柄を掴んで止めようとするのを誘うフェイントをかけます
その上で、本命の一撃――『城市護りし女神の盾』を!

顕現した光盾で敵に覆い被さるように飛び掛かり、地に伏せさせ
盾の力で圧し潰すと共に、クロエ様の地を這う炎が身を焼くように仕向け、二人分の威力を浴びせます
更に盾で押しやって反撃の助走距離を潰し、勢いを弱めて耐えます
偽りの獅子よ! 汝が去り行く先は、星々輝く天空にあらず!
冥府の深淵、奈落の底へと墜ちなさい!

この身には、ヘラクレス様の如き剛勇はありません
ですが……救いを待つ人々がいる限り、いかなる試練も越えましょう


ハーリス・アルアビド
残るは一体。セレウコスへの道に立ち塞がる障害は全て薙ぎ払います。

殺戮の神にして秩序の神セクメトよ、お力添えを。我等の道行きを切り拓くため、灼熱のごとき炎をお授け下さい。
祈りを捧げて【幸運】を願い、この戦いに勝利を。

【残像】を生み出す速度で駆け抜け巻き起こる砂埃を風と共に操り、残像と共に視界の【撹乱】を行います。
攻撃の直前に地面スレスレの【飛翔】で敵の読みを誤らせ、防御の暇も与えずセクメト神の炎で焼き切ります。

恐るべき殺傷力を持つ裂爪による反撃は【エアライド】も加えた【一撃離脱】で威力を削ぎ、危険であれば腕を盾代わりにして急所への致命傷を避けましょう。
腕の一本程度どうと言う事はありません。残る腕と足があればセクメト神の炎による反撃には十分です。


クロエ・アルニティコス
エイレーネ(g08936)をディフェンスし戦闘を行います。
あなたが敵から人々を守る盾となるならば、私は敵を焼く炎となりましょう。
私の魔術は、あなたと共に在ります。

三相の杖に【三界巡る冥府の火】を灯し、ネメアーの獅子に放ちます。
冥府の女神にして魔術の女神ヘカテーよ、どうかその御業をなぞる不遜をお許しください!
連続して冥府の火を放ち、また味方とも連携して敵に十分な魔力の溜めをさせないように。

反撃の破壊光線は守護の青薔薇の結界で軽減を行います。
敵の攻撃の閃光で一時敵の視界から身を隠せたら冥府の火を大地に這わせ、敵の足元を焼き、移動や回避を阻害するように炎を纏わりつかせエイレーネの援護を。

「ネメアーの獅子」を討つこと。それは試練の始まりにして英雄への一歩目。
あなたがその道を歩むとしても、私は共に在りましょう。


 クロノス級『ネメアーの獅子』に手傷を仲間のディアボロスたちが与えた様を見た。
 それはディアボロスの戦いが奪い返すための戦いであることを示すものであった。名を奪い、騙る者。それが『ネメアーの獅子』である。
 夜空の星にかたどられた姿。
 その名が示すにふさわしい威容と力であれど、しかして、それを認めるにはいかないのだ。
「もっとだ、もっと来いよ、ディアボロス! てめえらの力を食い破って、俺はさらなる頂まで上り詰めるのよ! それこそ、あの星空の……天の頂までな!」
『ネメアーの獅子』は叫ぶ。 
 それこそが己の宿命であるるというように。
 しかし、ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)は頭を振る。

 アンティオキアを巡る戦いは佳境を迎えようとしている。
 己達が戦場に飛び込んだのは、このアヴァタール級……いや、クロノス級たる敵を打ち倒すためである。
 故に彼は祈る。
「殺戮の神にして秩序の神セクメトよ、お力添えを」
 己の道を。
 己たちの道を。
 切り拓く道を、其の灼熱の如き炎。己たちの胸に宿る復讐の炎によって照らすことを望むように、戦いの勝利を彼は祈る。
 残像生み出す程の速度で持ってハーリスは戦場を駆け抜け『ネメアーの獅子』へと肉薄する。
「おっせぇんだよ! 其の程度で!」
 残像生み出すほどの速度で踏み込んだハーリスへと更に上回る速度でもって『ネメアーの獅子』は踏み込む。手甲から伸びる剣呑たる輝き放つ爪がパラドクスの輝きを伴ってハーリスの肉体位を切り裂く。

 それは彼の体を両断せしめるほどの威力を持ち、事実、現実としてそうなる未来を『ネメアーの獅子』に確信させていた。
 だが、それは相成らぬ現実である。
 ハーリスは、爪の一撃を手繰り寄せた暖流効果でもって腕を盾にしながら後方へと空中を蹴って飛び退ることによって致命傷を防いでいたのだ。
 とは言え、である。
 そのパラドクスの爪の一撃は鋭く、彼の腕を切り裂いていた。
 ぶらり、と揺れるようにしてハーリスの腕が落ちる。
 其のさまを見て『ネメアーの獅子』は獰猛に笑った……だが、次の瞬間、彼の体を包み込むのは、セクメトへの嘆願(セクメトヘノタンガン)によって得られたハーリスの炎であった。
「な、に……!?」
「破壊の神セクメトに奉る。それはこの戦いにおける勝利を願ったもの。そして、腕の一本程度どうということはありません」
 己が戦い続けること。
 そこに己の腕が喪われることは勘定に入れられているのだ。

 そして、其の炎は篝火であり、燈火でもある。
「あなたが敵から人々を守る盾となるならば、私は敵を焼く炎となりましょう」
 それは炎。
 ハーリスの炎に合わさるようにして、三界巡る冥府の火(ヘカテー・ダーロス)――冥府の炎が『ネメアーの獅子』を包み込み、立ち上る。
「私の魔術はあなたと共に在ります」
 クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)の言葉にエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)は力強く頷く。
「お力添え感謝いたします」
 彼女の瞳には灯火があった。
 それは闇に潜む脅威を、恐れを打ち払う輝き。

 ここに、この戦場に集った強者たち。
 ディアボロスという胸に復讐の炎を宿す傑物たちの放つ炎の輝きがある限り、エイレーネは穿つべき敵を見誤ることはない。
 無辜の民を暗がりから救うこと。
 それを為すために戦場にはいくつもの輝きがあることを彼女は知る。
「ですから……此度も、あなたの灯を傍で護らせてください」
 手にした大盾が輝く。迸るはクロエの炎。
 ハーリスの放った炎が『ネメアーの獅子』を包み込んでいる。しかし、その炎を貫き、クロエの放った炎さえも吹き飛ばすようにして破壊光線が彼の体から発せられる。

 凄まじい熱量。
 それは『ネメアーの獅子』が持つ力の発露であり、また同時に星の如き輝きを放つものであった。
「なんたる……冥府の女神にして魔術の女神ヘカテーの御業を……!」
「ヌルいぜ、ディアボロス! この程度で炎などとはなぁ! 俺は、星になる存在よ! この程度の熱に耐えられなくてなんとするものかよ!」
 迸る破壊光線と共に『ネメアーの獅子』が走る。
 青薔薇の結界が砕ける程の威力にクロエの体が吹き飛ばされる。その背中をハーリスが引き裂かれた腕でもって支える。

「腕が……」
「いいえ、構うことはございません。残る腕と足があれば」
 それで良いのだというようにハーリスの体からセクメト神の炎が噴出する。未だ彼の瞳はパラドクスに輝いていた。
 ならばこそ、クロエの瞳もまたパラドクスに輝く。
 閃光が迸っている。
 それほどまでに『ネメアーの獅子』が放つ光線の力は強烈にして鮮烈だった。
 しかし、それでもクロエは瞳を見開く。
 見定めるためではなく、見守るために。何を、と問われたのならば応えよう。

「『ネメアーの獅子』を討つこと。それは試練の始まりにして英雄への一歩目」
 嘗て、大英雄がそうであったように。
 大地走る炎は、ハーリスの炎と並走しクロエの一撃として『ネメアーの獅子』を打ち据える。だが、それさえもかき分けて、かの獅子は咆哮し突き進む。
 そうすることが自然であるというように。
 脅威として、その力を迫りくる勇士へと叩きつけ、己の存在が天の星に至ることを証明するように。
「その一歩目が俺だったことを後悔するがいいさ! てめえらの道は、此処で途絶える。そういうこった!」
 大地を割る程の脚力で持って『ネメアーの獅子』が飛翔する。

 その姿は確かに流星のようであったことだろう。
 天の星。
 頂かれるべき存在。
 そのように己を騙るに値する力であったことだろう。だが、クロエとハーリスは知る。
 大地を割るようにして空へと飛んだのは、己たちの炎を避けたからだ。
 ならばこそ、彼等は見るだろう。
 空より堕ちる流星ではなく。
 大地より天へと上る星を。

 その星の名を彼等は知っている。
「アテーナー様! 輝ける瞳の御方、城市護りし畏き女神よ! どうかこの盾に、無辜の人々を護り抜く力をお与えください!」
 突き出したエイレーネの槍の穂先を『ネメアーの獅子』は手で掴む。
 なんたる技量であろうか。いや、本能というべきであろう。
 獅子は咆哮した。
 この程度で星たる己を穿つことなどできはしないと。強烈なる重圧がエイレーネを失墜させる。大地が割れ、衝撃が走る。身に走る痛みは己の内部より血潮が噴出したが故。
 押しつぶされる。
 痛みが走り、エイレーネは『ネメアーの獅子』の咆哮する形相を盾の向こう側に見るだろう。

 容赦なく振るわれる圧倒的な暴力。
 己の身にヘラクレスのごとき剛勇はなく。
 迫る流星の如き強烈なる輝きもなく。
 されど、彼女の中にあるのは、救いを求める無辜たる人々の声。
「押し潰れちまいな! ディアボロス! てめえらを踏み越えて、俺は! あの天にまた舞い戻るんだよ!!」
 更に迫る圧力に膝が砕けそうだった。
 だが、己の背中を押すのは風であり、熱波であった。祈りの炎と願いの炎。ハーリスの炎とクロエの炎は、奪われたものを奪い返すために際限なくくべられる。
 膨れ上がる炎。
 大地を走った炎は彼女の背中を押す。
「あなたが英雄の道を歩むとしても、私は共に在りましょう」
 その言葉を聞いた瞬間、エイレーネは吹き荒れる炎と共に『ネメアーの獅子』を押しのける。

「偽りの獅子よ!」
 エイレーネの膂力が全ての関節の駆動部より満たされ、走り、パラドクスの輝きとなって迸る。
 己には守るべきものがある。
 人々の安寧を。
 故に、己の盾は輝く。

 城市護りし女神の盾(アテーナー・ポリウーコス)は此処に在りて。
 その意味を知らしめる。
「汝が去りゆく先は、星々輝く天空にあらず!」
「俺を謗るか、ディアボロス!」
「その身が無辜たる民を苦しみに、暗がりに叩き込むための恐怖しか生み出さぬというのならば!」
 救いを求める人々がいる限り、如何なる試練をも己は乗り越える。
 吹き出す血潮と共にエイレーネは『ネメアーの獅子』を押しのけ、輝く盾でもって巨体を大地に押し倒す。

「冥府の深淵、奈落の底へと墜ちなさい!」
「この、俺が……失墜する!? 大地に!? このまま……!?」
 エイレーネの輝く盾が大地へと『ネメアーの獅子』を叩きつける。
 それは確かに奈落へと続く道へと押し込む一撃。
 再び星輝く空へと上ることを許さぬ一撃。
 そう、ここに天路へと至る道程は喪われる。星よりも輝く人々を思う意志によって。

『ネメアーの獅子』が敗北したのは英雄にではない。
 救わねばならぬという祈りと願い、そして意志によって敗北したことを知らしめるように、天に掲げられた槍の穂先こそが、その最期を知らしめるのだった。
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効果1【飛翔】がLV2になった!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2023年11月16日
宿敵 『ネメアーの獅子』を撃破!