リプレイ
ハニエル・フェニックス
アークデーモン……ここでも生贄だの虐殺だの、酷い事やってるんだね。
私の生まれたディビジョンから逃げてきたヤツなんだから、放っておけないよ。
協力して、少しでも責任を取らさせてもらうよ!
とりあえず勇敢な少年達を陰ながら手助けしよう。
女の子達を助けてあげたいし、フォルネウスの力を削ぐ事が出来るんならそうしない手は無いよね。
私はなるべく人前に出ないように、こっそり動こう。
見張り役が何人いるか分かんないけど、他の仲間の陽動作戦があるにしても出来るだけ人数を減らした方が良いよね。
隠れるのはあんまりだけど、不意打ちなら結構得意!
見回ってる人を一人ずつでも【罪縛りの鎖】で縛って動けなくしていこう。
船の前とかで陣取ってる人には差し入れ攻撃!
差し入れだよーって物陰に呼んで、疑わずに近付いてくれるならそこを縛るし、つまみ出そうとして近付いて来るなら逃げて物陰に誘導してそれも縛っちゃう。
肝心の少年達がやってきたら急いで縛った見張り役を隠して、私も隠れよう。
さぁ行きなさい少年達、頑張ってね!
と心の中で応援だ!
篠村・蓮十郎
確かに準備も思慮も欠けているが……彼らの勇気はそれらを補って余りある。
穴は俺たちが塞げば良い。それだけだ。
お膳立てをするのなら、極力姿は見せぬ方が良いな
俺は裏方へ回るとしよう
少年たちを巻き込まぬよう、先んじて船の見張りと接触し【現の夢】の影響下に置く
見張りに姿を露見させぬよう行動するが、万一発見された場合は囮として立ち回り船から引き離す
彼らがどう立ち回るかは分からんが
見張りたちに夢だと思い込ませれば、多少大それた動きをしても誤魔化しは効く筈だ
少年たちの船出を見届けたのち退路の確保に当たる
引き続き船着場へ潜伏し周囲を警戒
見張りが増えるようであれば試製鉄刀の鞘で打突、殺傷は避け昏倒させる
現の夢と合わせしばらくの間、大人しくしていてもらおう
白石・明日香
う~ん、直接的な協力はあまりしない方がいいか・・・・となると隠れてやるか。
まずは女の子たちを監視している見張りをどうにかしないとね。
ダイビング用の装備身に着けて水中から接近して様子を窺い見張りがいる周囲を把握して一人ずつ物音立てて誘き出しそのまま水中に引きづり混んで気絶させよう。
気絶させた連中は少年達に気づかれないように別の場所に運んでおいて少女達には【活性治癒】を使って回復させようか。
後は少年達にお任せ。頑張りなさい
冰室・冷桜
他のとこに流れ着いて弱体化したジェネラル級なんて初めてですし、そもそも七曜の戦で地続きになったところで隣接ディビジョンに移動して衰弱するのかとか、色々気になるところはありますが
まずは目の前の問題からーってとこね
基本は少年たちの自主性で救出して欲しいってー方針で
私は港に向かってお仕事しますか
【水中適応】を使用して潜水しながら海の方から港に近づくわね
見張りはいるようだけれど……ただでさえ、海の悪魔にびびってんだから普通に見張っている分には海に近づきたがらないでしょ
一応光なんかには気を付けつつ、見張りを探しーの……見つけたら、水音を立てて気を引いたところにだいふくをこっそりけしかけて、気絶してもらいますか
気絶した見張りさんは物影に運んで、かるーくロープで縛っておねんねしてもらうわね
あとは少年たちの到着を待って、使う小舟が分かったら鎖破壊用のペンチとかをばれないようにこっそりと舟に放り込んで、後は成り行きを見守りましょ
あとは少年たちが来るのを窺っ
パラドクストレインを下車した復讐者たちは、村に面した場所に在るという港に向かって歩き始めた。
ソラ島は中央に戴く大きな山の麓に緑豊かな自然が広がり、四方を紺碧の海に囲まれた風光明媚な地だ。だが、そんな島内に漂う空気は、今やどんよりと濁っている。
程なくして、シンと静まり返った港に足を踏み入れると、冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)はそっと眉をひそめた。
「いやー……何つーか、静かだわね」
「人影はちらほら見えるけど、皆、元気がないね。まあ、仕方ないことではあるけど……」
白石・明日香(弔いの狩人・g02194)は辺りの様子を見回しながら、硬い表情で言った。
かつては活気に満ちていたのであろう港には、明日香の言う通り、島民の姿自体が殆ど見られない。フォルネウスを恐れ、海に出る者などいないのだろう。
「……早く何とかしねーと、ですね」
仲間たちの心情を代弁するように、冷桜が呟いた。
アークデーモンという未知の存在に村を襲われ、為す術も無く同胞たちを殺され、そのうえ生贄まで差し出している島民の恐怖は察するに余りある。だが、そうして得た仮初の平穏さえも、アークデーモン――海魔将フォルネウスの胸先三寸でいつ覆ってもおかしくないのだ。
「当のフォルネウスは何やら衰弱してるって話ですが……他所のディヴィジョンに流れ着いて弱体化したジェネラル級なんて初めてのケースじゃないですかね? ましてヤ・ウマトは隣接してるエリアなのに」
「そこは深く考えても仕方ないな。『フォルネウスは弱体化していて、その理由は一切不明』。現時点で判明している確かな情報はそれだけだ」
篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)の言葉に、ハニエル・フェニックス(第七の天使・g00897)が震える拳をグッと握る。
「アークデーモン……ここでも生贄だの虐殺だの、酷いことやってるんだね」
TOKYOエゼキエル戦争出身であるだけに、ハニエルはアークデーモンたちの悪辣さを嫌と言うほど理解している。
このままでは島の人々は畏怖と言う牢獄に囚われたまま、死ぬまで利用され続けるだろう。フォルネウスが力を取り戻す、只その為だけの餌として。
それは彼女にとっても、仲間たちにとっても、断じて許せることではなかった。
「パラドクスが使えない子たちが頑張ってるんだもの。協力して、少しでも責任を取らさせてもらうよ!」
そう言って、決意を新たにするハニエルに、蓮十郎と冷桜が頷きを返した。
フォルネウスの支配を由とせず、生贄の解放に動き出している少年たち。復讐者たちが彼らを手伝うのは、けして作戦成功の為という理由だけではないのだ。
「確かに準備も思慮も欠けているが……彼らの勇気はそれらを補って余りある。穴は俺たちが塞げば良い、それだけだ」
「だわね。じゃ、まずは目の前の問題からーってことで、生贄救出のお手伝いと行きますか」
そう言って冷桜が目を向けたのは、港に設けられた船着き場だった。
簡素な桟橋が幾つか設けられた其処には、民間用の小さな漁船が幾つか停まっている。その殆どは人が一人か二人乗れれば限界といった舟ばかりで、数人の少年と生贄を乗せて運べそうなものは、一つしかなかった。
人気のない桟橋に停まった少し大きめの舟。あれで生贄を入り江まで運んでいるのだろう。その証拠に、舟の周囲には数人の男たちが棒やら鉈やらで武装し、監視の目を光らせている。
「見張りは全部で六人……か。まずは連中をどうにかしないとね」
物陰から人数を把握すると、上着を脱いでダイビングスーツ姿になる明日香。その傍で、準備を終えた三人も頷いた。
「生贄のコたちが乗ってる小船には、別の仲間たちが行くでしょうし……私らは見張りの対処に専念しますか。裏方で」
「ああ。お膳立てをするのなら、極力姿は見せぬ方が良いな」
確認の言葉を交わす冷桜と蓮十郎の隣で、瞳に決意を宿したハニエルがグッと拳を握る。
「他の仲間の陽動作戦の前に、少しでも数を減らさなきゃ。人前に出ないように、こっそり動くね!」
今回の作戦では、別働チームとして他にも数名の仲間が参加している。
ハニエルらの行動開始に合わせ、そう間を置かずに彼らも動き出すだろう。
すべてはフォルネウスを討ち、アークデーモンの畏怖から島を解放するため。舟の見張りに対処するべく、四人の復讐者は行動を開始した。
入り江の小船に向かえる唯一の舟。
それが停められた桟橋で、六人の男たちは会話も交わさず黙々と見張りを行っていた。
時折警戒の視線を周囲にちらちらと送ってはいるが、その動きは兵として訓練された人間のものでは明らかにない。そんな見張りたちの一人が、ふと、桟橋の入口に立つ妙なものを目に停める。
「……ん?」
その男が視界に捉えたのは、二本足で立つ山羊のような『何か』だ。
むろん彼は知る由もない。それが冷桜のサーヴァント、メーラーデーモンのだいふくであることに。
「何だあれは……? おい、あっちに行け!」
男が追い払う仕草をしても、当然ながらだいふくは動かない。
それどころか見張りを邪魔するようにチョロチョロ動き回り始めた。見知らぬ侵入者に気を取られた男たちは、少し離れた別の桟橋の下に身を隠し、だいふくに合図を送っている冷桜の存在にも当然気づかない。
「わわっ、何だ?」
「おい、よせ! あっちへ行け!」
程なくして見張りの男二人がしびれを切らし、棒切れを振りかざした。同時、男たちを誘うように逃げていくだいふく。
すかさずそれを二人が追いかけて、傍の建物を曲がった先の桟橋でだいふくを追い詰めた瞬間であった。
「はい。まず二人確保、っと」
「大人しくして貰うよ。えいっ!」
「なっ……!?」「うっ……」
桟橋の下から飛び出た冷桜と明日香が、瞬時に男たちに当て身を食らわせ、気絶させた。
水中適応で海に潜み、だいふくが誘い出したところへ背後からの奇襲である。冷桜と明日香は、男たちが騒がぬよう猿轡を噛ませて拘束すると、予め見繕っておいた人気のない場所へ二人を引き摺って行った。
「悪いけど、かるーくおねんねしててもらうわね」
「生贄の子たちが救出されたら解放してあげるから、ちょっとの間だけ我慢して貰うよ……!」
残る見張りは、あと四人。
一方その頃。
残る見張りたちは仲間が捕えられたことなど露知らず、不機嫌も露わに愚痴を言い合っていた。
「あいつら、何をやってるんだ? 遅すぎるぞ!」
「どうせ何処かで手を抜いて、サボってるんだろう。ああ、何かあれば俺たちまで割を食うのに……!」
よほど不満と鬱憤が溜まっていたのか、四人の男たちが零す愚痴は更にエスカレートしていった。
曰く、あの悪魔が現れてからと言うもの、まるで良いことが無い。
曰く、漁に出ようにも船も出せないのでは、生活も先細る一方だ。
曰く、今は畑の作物で食い繋いでいるが、長く保つかは怪しい。
曰く、腹一杯とは言わない、腹五分でいいので食事を摂りたい……。
そうして溜息交じりに愚痴を男たちが零し合っていた、まさにその時だった。偶然にも桟橋に足を踏み入れた旅人といった風情のハニエルが、彼らへ声を掛けたのである。
「ねえ。おじさんたち、お腹空いてるのかな?」
ハニエルの問いに、見張りの二人――食い物の愚痴をこぼした男たちが不機嫌そうな顔をした。
「誰だ、見ない顔だな。旅行者か?」
「俺たちは忙しいんだ、あっちに行ってろ!」
けんもほろろに言い放つ男たちにも気後れすることなく、ハニエルは周囲の様子をそれとなく観察する。
その気になれば捕縛は容易だが、見張りはまだ四人いる。リスクを排して強硬手段に出るとしても、あと二人は無力化しておきたいところだった。
ハニエルは気を取り直し、男二人に笑顔で語り掛けた。
「おじさんたちに差し入れが届いてるの。村の人から、あんまり外に出たくないからって頼まれて……お腹減ってない?」
「何、差し入れだと?」「ほ……本当か!?」
不審な旅人をつまみ出そうと見張りたちの伸ばした手が、その瞬間にピタリと止まった。
ハニエルは元気よく頷いて、さっと踵を返すと、見張りの男二人を手招きしながら笑う。
「こっちこっち! 急いで!」
「……おい、大丈夫か? 持ち場を離れて」「なに大丈夫だ。二人で行ってすぐ戻ればいいさ」
男の一人は一瞬躊躇する様子を見せたが、それももう一人の男の言葉で消し飛んだようだった。
誘いの言葉を疑うことの無いまま、二人の男たちがハニエルの後をついて行く。そして彼女を追いかけて、人気のない建物をスッと曲がった次の瞬間、
「うわっ!」「ああっ!?」
「――よし。捕まえたぞ」
「これで残りは二人だね。急いで縛っちゃおう!」
蓮十郎とハニエルは罪縛りの鎖を発動し、男二人を瞬時に縛り上げた。
何が起こったかも分からぬまま目を白黒させる見張りに猿轡を噛ませると、合流していた明日香と冷桜に二人を引き渡し、蓮十郎は用意していた残留効果を発動させた。
「さて……最後の仕上げと行くか」
同刻。
差し入れを取りに向かった二人が戻って来ず、残された見張りたちは明らかな焦燥を滲ませていた。
「おい、なんで誰も戻って来ないんだ!?」「お……俺に聞かれても、分からねえよ!」
先程まで一緒だった相手が、僅かな間に四人消えたとあって、男たちは流石に平静を保つのが難しい様子だ。
自分たちのせいで生贄に何かがあれば、あの悪魔に喰い殺される――そんな恐怖に怯える二人の耳に、ふいに優しい歌声が流れて来た。
「……なんだ、この歌は?」「あれ……なんか、眠く……」
それは、蓮十郎が発動した現の夢。
歌を聞いた者を夢現の状態に落とし込む残留効果を浴びて、果たして男たちの精神からは次第に現実感が失われていった。虚ろになった視線の先から、蓮十郎ら四人の復讐者が歩いて来ても、彼らによって罪縛りの鎖で全身を拘束されても、二人は抵抗の言葉ひとつ上げることはない。
「抵抗しなければ手荒な真似はしない。少しの間、大人しくしていて貰おう」
「よし。これで見張りは全員捕縛完了っと」
「だわね。あとは少年たちの到着を待って、成り行きを見守りましょ」
蓮十郎が武器を取り上げ、そうして男たちを明日香が物陰に隠し。見張りの排除完了を確認して現の夢の歌が止むと、冷桜は改めて周囲に人影がないことを確かめた。
後はこの舟で、少年たちが入り江に向かえばいい。生贄の少女たちが囚われた小船も、恐らく今ごろは別働チームの仲間が対応を行っている筈だ。冷桜は最後の仕上げとして、鉄鎖を切る為の大型ペンチを舟の中にさりげなく置いておいた。
「ま、他の仲間のフォローもあるでしょーけど。万が一の保険ってことで」
「じゃ、ワタシも応援代わりに……っと」
明日香は後続の仲間たちのフォローに、活性治癒を発動した。
鉄製の鎖と枷に長いこと繋がれていれば、手足に傷を負っていてもおかしくない。回復に必要な時間が半減する残留効果があれば、少女たちの介抱も捗る筈だ。
「……む。どうやら、来たようだな」
船着き場に潜伏し、周囲を警戒していた蓮十郎から声が飛ぶ。
果たして港の先からは、生贄の少女を救わんと桟橋に向かって来る少年たちの姿が見えた。
最後尾には復讐者の姿も一人見える。恐らくは、万一のイレギュラーな事態に備えて同行するつもりなのだろう。少年たちの心から畏怖を取り去るため、目に見える形での手助けは原則行わない――その方針は、作戦に参加する復讐者の全員が共有するところだ。
「……大丈夫か?」「ああ、誰もいない。今のうちに舟に乗ろう!」
少年たちは小声を交わし合い、急ぎ足で舟へと乗り込んでいく。
程なくして入り江へと漕ぎ出していった舟を、蓮十郎ら四人の復讐者は、船着き場に身を隠しながら静かに見守った。
(「さぁ行きなさい少年たち、頑張ってね!」)
「後は彼らにお任せだね。……上手くいきますように」
「さて。こちらは周囲の警戒を続行するか」
「だわね。帰還するまでが作戦だ、ってやつですし」
ハニエルと明日香が少年たちの成功を祈り、蓮十郎と冷桜は周囲を警戒し始めた。
作戦はまだ始まったばかり。自分たちには、退路の確保と言う大事な仕事が残っているのだ。
かくして見張りを排除した四人の行動によって、少年たちの舟は無事に入り江を目指して進んで行く。囚われた生贄の少女を、フォルネウスの魔手から救う為に。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【現の夢】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
ラキア・ムーン
さて、手助けしなければ成功はせんが
手助けし過ぎても良くない……か
面倒な事だ
だがまあ、やってみるしかないな
工夫次第、限られた手の内で何を成すか……だな
先ずは浜辺に集まる若者達と接触し、旅人を装い協力を申し出よう
生贄等もってのほかだ、君達の勇気に感動した
手伝わせて欲しい
といった感じに若者の行動に賛同し、あくまで手伝うという体裁で接触しよう
港の船を使うのは良い案だ
だが先程通りがかった時に見張りのような者が居たが、どうするか…
と、それとなく問題提起
君達は同じ島民で知り合いだろう?
一瞬でも見張りの気を引けないか?
と、あくまで若者達が作戦の主導となりように提案しよう
また、助けに行く少女達が何時生贄として送り出されたかを確認
聞き出せたら
それなら喉も乾いているだろうし、腹も空いているだろうな気の毒に…
と若者達に気付かせるよう、呟いて思考を誘導
介法する為の物資を考えさせよう
舟を奪い生贄の下に辿り着けたら、腐食を使用
鉄製の枷を腐食させ、耐久性を下げて若者達の得物でも壊せるように対処しよう
アドリブ連携等歓迎
月鏡・サヨコ
フォルネウスはまだ冥海機と合流できていないのか?
弱体化の理由が単なる衰弱なのか、他の要因なのかは気がかりだけど……
いずれにせよ、いま発見できたのは幸運だ
TOKYOエゼキエル戦争の禍根を絶つために、往こう
少年たちとは直接接触せず、影から動く
敵の鎮圧と少年たちの誘導には仲間が向かっているようだから、私は小舟に必要な物資を積み込もう
ただ鎮圧に追加で人手が必要だったり、既に小舟に見張りが乗り込んでいるようなら
《トンファー》を用いた打撃で苦痛を与えたり気絶させることで、殺さず無力化する形の対応を行う
小舟に近寄る時は【水中適応】で潜水し、海側から入り江に入って物資を持っていく
小舟が唯一の移動手段だというなら、「生身で海を平然と移動できる存在」など盲点のはず
水中から上半身だけを出し、なおかつ地上からは小舟に隠れて影になるような位置から
《輸送用クーラーコンテナ》に入れた食料や医薬品と、鎖を切断するためのカッターを船内に投げ入れる
後は再び水中に戻り、不測の事態に即応できるように作戦の推移を注視していよう
文月・雪人
漂着の過程で弱体化を繰り返したとあるけれど、冥海機達と合流はしていないのだろうか。
気になる事は多いけど、先ずは救出作戦からだね。
今回は少年達に自力でやったと思って貰う事が重要であると。
ならば俺もこっそりと、陰からサポートする形で動くとしよう。
少年達に気付かれない様に誘導していくには、タイミングも重要だ。
仲間と予め相談し、連携して作戦を実行する。
見張りの対処は仲間が向かってくれている。
ならば此方は少女達へのケアの準備に向かおう。
少年達に先んじて、少女たちのいる入り江の様子を確認。
可能なら仲間の【水中適応】を借りて、(無理なら新宿島から持ち込んでおいた潜水道具一式を使って)
見つからない様に注意しつつ水中を移動して、少女達の乗る小舟の真下へと向かってスタンバイ。
少年達の船が近づくタイミングに合わせて、
船の下から【活性治癒】の効果を発動させて、少女達の体力回復を図る。
体力だけじゃなく気力の方も、
少年達が助けに来たという事実はきっと
生贄とされ傷ついた少女達にとって、大きな心の支えとなるに違いない。
百鬼・運命
🔳心情
やはりヤ・ウマトにもエゼキエルの残党が流れついているか…
しかしまあ生贄とは…エゼキエルでも大天使を崇拝して狂気的な行動に走った信者はいたが、どこの地域どの時代でも人やることはさして変わらないか…
その愚行、是が非でも止めねばな
🔳考察
さて少年たちの勇気は天晴だ
こっそりとその勇気の後押しをさせてもらうとしよう
救出を行うための問題点は
・見張り
・拘束する鎖
・飢えと渇き
・恐怖
この四点か?
他は対策を取っているメンバーがいるようだ。俺は恐怖に対する対策をしようかな?
🔳行動
少女たちの恐怖をどうにかする為に【士気高揚】の残留効果を使用するとしよう
とはいえ距離的な問題もある
出来れば【水中適応】を借りて(なければ持ち込んでおいたダイビング用の機材を使って)少女たちが拘束されている場所の近くの水中に潜んでおくとしよう
それに近くにいればもしもの際に救けにも入りやすい
一番は少年たち自身が救助する事だが、少女たちの身の安全を優先すべきだろう
とはいえ、出来れば少年たちの行動が無事成功してほしいものだな
ハニエルら四人に見送られながら、一艘の舟がゆっくりと桟橋を発っていく。
そこに乗るのは生贄救出の使命に燃える少年たちと、もう一人――ラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)であった。
彼女は万一のイレギュラーな事態に備え、旅人を装って少年たちに同行していたのだ。
(「手助けしなければ成功はせんが、手助けし過ぎても良くない……か。何とも面倒なことだ」)
もどかしさを覚えつつ、ラキアは桟橋での一幕を思い出す。
船着き場の見張りたちは、先行した仲間たちによって既に無力化されていた。恐らく、港に帰還する際の警戒も既に行ってくれていることだろう。無論、少年たちがそれに気づいた様子は全くない。
(「これで残るは鎖と枷、そして少女の介抱か。舟にはペンチも用意されていたし……有難いな」)
仲間の援護に心強さを覚えながら、ラキアは少年たちに視線を向ける。
彼らの表情は、一様に緊張で強張っていた。勇気を奮っているものの、そこには明らかな恐怖の色がある。突如として島に表れたフォルネウスの存在は島に住む人間にとって、それだけ畏怖の対象なのだろう。
(「逃げたい気持ちを必死に抑えているのだな……彼らの為にもフォルネウスを滅ぼさねば」)
そんなラキアの思いを知らず、少年たちは心を落ち着けると感謝の言葉を口々に告げた。
「協力してくれて有難う。旅人さん」「貴方まで危険な目に……」
「いいのさ、私は君たちの勇気に感動したのだ。生贄等もってのほかだ、手伝わせて貰うよ」
本心からの言葉を口にして、ラキアは視線を舟の進む先へ移した。
入り江への到着にはもう少し時間を要しそうだ。其の間に、別働チームの仲間たちも準備を整えていてくれることだろう。叶うならば全てが成功に終わった後、この少年たちに笑顔が戻ることを願うばかりだ。
(「……いざという時は、私も陰から動かねばな」)
限られた手の内で、成せることは限られる。
だが、それでもやるしかない。
ラキアは少年たちに怪しまれぬよう、自身の周囲にうっすらとパラドクスの霧を漂わせ始めた。
かくして、ラキアと少年たちが港を発った頃。
他の仲間たちとタイミングを合わせるように、入り江の小船に海側から接近する三人の復讐者たちがいた。
「……よし、もうすぐ着きそうだ。早いうちに準備を終わらせないとね」
凪いだ海面から顔を覗かせ、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)が眼の前に浮かぶ小船を見遣る。小船はシンと静まり返り、耳をすませば時折鎖を擦り合わせる音や、少女のすすり泣く声が微かに聞こえてきた。雪人は船に怪しい人影が見えないことを確かめると、後続の仲間たちへ合図を送る。
(「船に見張りはいないようだ。俺はこのまま船底に向かう」)
(「分かった。俺は少年たちが着くまで、船の周囲を警戒しておくよ」)
百鬼・運命(ヨアケの魔法使い・g03078)は了解の合図を返すと、雪人とともに小船の方へと泳ぎ出す。
そこへ、輸送用クーラーコンテナを抱えた月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)が続き、三人は小船との距離を次第に縮めていった。彼女が発動した水中適応は、事前に冷桜が発動した分も含め、水中での活動を容易なものへと変えている。この効果のお陰で、海側からの潜入は容易なものとなっていた。
(「しかし……この島には、本当に冥海機がいないようだね。フォルネウスは彼らと合流していないのだろうか?」)
(「私も其れが気になっていた。弱体化の理由が単なる衰弱なのか、他の要因なのかは気がかりだけど……」)
目前に迫りつつある小船の船底を見上げながら、雪人とサヨコが疑問を交わし合った。
アークデーモンのジェネラル級の中でも、海魔将フォルネウスは相応の実力を有する個体だ。かつて千葉県との境界調査で復讐者と行った戦闘でも、その能力の一端を見せている。そんな存在が知性を失うまでに弱体化したのは一体何故なのか――未だその答えが出ないことにもどかしさを覚えつつ、二人は再び作戦遂行に気持ちを切り替えた。
(「いずれにせよ、いまフォルネウスを発見できたのは幸運。TOKYOエゼキエル戦争の禍根を絶つために、往こう」)
(「ああ。気になることは多いけど、先ずは救出作戦からだね」)
そうして海面へと浮上していく二人を追いかけながら、運命はふと過去の出来事に想いを馳せた。
《七曜の戦》で滅びを免れたTOKYOエゼキエル戦争の残党は、今や各地のディヴィジョンで災厄を招く存在と化している。
それはここ、ヤ・ウマトも例外では無い。アークデーモンの恐怖から逃れる為に生贄を捧げさせる――その行為そのものに運命は強い嫌悪を覚えずにはいられなかった。
(「エゼキエルでも似たような行動に走った連中はいたが……こういうのは地域や時代を問わないな」)
ならばこそ、そんな愚行は止めねばならない。
島の人々を追い込んだフォルネウスへの怒りを胸に、運命もまた行動を開始するべく海面へ浮上していくのであった。
そこからの下準備は、流れるような速さで進んで行った。
運命は小船の周囲を警戒しつつ、少女たちが囚われている場所を凡そ把握すると、物資搬入に適した場所をサヨコに伝えていった。間を置かず、サヨコがコンテナに入れた食料や医薬品などを、目立たぬよう船に投げ入れていく。船内の少女たちは絶望と疲労の極みに在る為か、小さな物音程度に意識を向ける様子もない。
(「搬入完了まであと数分ほど必要。周囲の状況に変化は?」)
(「変化なし。……もうすぐ少年たちの舟が来るはずだ」)
(「生贄の少女たちも気づいた様子は無いな。首尾は上々、ってやつかな?」)
雪人と運命は周囲を警戒しながら、サヨコに合図を返した。
元より生贄の少女を始め、島民たちにとって入り江の小船に近づくことは容易では無い。生身の人間が入り江を泳いで大量の救援物資を運んで来るなど、元より想像出来るはずもなかった。その盲点を突いたサヨコの狙いは果たして奏功し、程なくして搬入は滞りなく終わった。
(「作業は完了。続けて警戒に移る」)
水中に戻り、不測の事態に即応できるよう態勢を整えるサヨコ。
次いで運命と雪人は、船底に身を隠すと最後の準備を始めた。少年たちの行動に合わせ、少女たちを陰から癒すという大役の重圧を、二人はその双肩に感じていた。
(「心意気の天晴な少年たちに、こっそり後押しをさせて貰うとしよう」)
(「そうだね。しっかりケアしてあげないと……おや、噂をすれば来たようだ」)
(「こちらでも確認した。見張りの排除は順調にいったようだ」)
果たして雪人とサヨコが入り江の入口に視線を向けると、そこには一艘の舟らしき影が見えた。
三人は小船の下に姿を隠し、時を待つ。少年たちも少女たちも一人も欠けず、笑顔で島へ戻れるように――。
「おお、これが生贄を乗せた船か。よし、私もついて行こう」
程なくして少年たちの舟が小船に辿り着くと、少年たちは次々と小船に乗り込んでいった。
ラキアもまた最後の一人として船へ乗り込む。その際、船底に身を隠した仲間から合図を受け取ることも忘れない。
(「物資類は舟の後ろに入れておいた。残留効果の準備も問題ない」)
(「了解だ、感謝する」)
サヨコの送るサインに頷きを返し、ラキアは少年たちを追いかける。
果たして其処には生贄の少女が数人、鉄鎖で囚われぐったりと項垂れていた。少年たちは拘束を解こうと舟にあったペンチを手に力を込めるが、思ったよりも頑丈で苦労している様子だ。
(「ふむ、少し時間がかかりそうか……では、これの出番だな」)
次の瞬間、鉄鎖を薄い霧が包んだ。
復讐者の指定する物だけを腐らせる腐食の残留効果だ。果たして鉄鎖は、鎖で繋がれた枷ともども瞬く間に朽ち果て、それを少年のペンチが鈍い音を立てて破壊する。次々と介抱されていく少女たちを前に、少年たちは快哉を叫んだ。
「やった、やったぞ!」「怪我は無いか? ああ、良かった!」
少年たちの足元、船底の板を隔てた海面下では、まさに雪人が活性治癒を発動している最中であった。
残留効果の力で、小船の周りが生命力に満ちた世界へと変わる。明日香が託した分も加わってその効果はさらに高く、疲労困憊した少女たちを癒していった。
同じく、士気高揚を発動する運命のエールもあって、少年少女たちの勇気は更なる鼓舞を受けていた。
二人の支援の甲斐あって少女たちの目にはみるみる生気が宿り、少年たちと口が効けるまでに回復を遂げていく。
「ありがとう……来てくれて」「もう駄目かと思った。ありがとう……!」
少年たちの勇気に涙を流す少女たち。
だがその声は飢えと渇きで未だ回復しきってはいない。それを見たラキアは少年の一人に声を掛け、船内を見回らないかと持ちかけた。もしかすると見張りが隠れているかも――そう言って少年を誘導する。サヨコが食料と飲料を積んでおいた場所へ、あくまでも自然体を装って。
「あれは……水? 食料まで……! 良かった。おい、これを皆に!」
果たして目論見通り、サヨコの準備した物資を少年は程なくして見つけ出してくれた。
復讐者たちの残留効果に加えて、若く健康な身体も手伝ったのだろう、飢えと渇きを癒した少女たちはみるみる元気を取り戻した。そうして無事を喜び合った少年と少女は、今度こそ喜びも露わに笑顔を交わし合う。アークデーモンに怯える畏怖は、もうどこにも無かった。
「やったぞ! 俺たち、皆を助けたんだ!」「生贄になる必要なんてない! 島に戻ろう!」
「良かった。どうやら、私の出る幕は無かったようだな」
奮闘した少年たちと、生還した少女たちに小さな祝福の言葉を送り、ラキアは共に舟で再び港へ戻って行く。
かくして若い命は救われたが、喜ぶのはまだ早い。復讐者たちの討つべき相手は、これから現れるのだから。
小船の底で援護をくれた仲間たちへ、ラキアは無言で合図を送った。
同刻、運命はラキアの合図を受け取ると、海中で待機する仲間たちに告げた。
(「ラキアさんから連絡があった。……大成功だ」)
(「良かった。救出作戦は完了だね」)
(「不測の事態が無かったのも幸い。これも全員の連携の賜物だろう」)
運命のもたらした情報に、雪人とサヨコは力強く頷きを返した。
少年たちの心から畏怖が払拭されたことで、フォルネウスは強化を阻まれた。じきに始まるであろう戦いで、今回の成功は間違いなく復讐者たちの有利に働くことだろう。
雪人は海面に浮上すると、入り江を出ていく舟を見送りながら、少年と少女の幸せを祈る。
少女たちの体力や気力を癒したのが、雪人や仲間たちの助力にあることは間違いのない事実だ。だが、同時に雪人は思う。生贄とされ、死に怯え、傷ついていた少女たちにとって、少年たちが助けに来てくれたのだという事実――それは間違いなく彼女たちにとって大きな心の支えとなるだろうと。
「再び島に平和が訪れたら、幸せな生活が待っていると良いね」
そうして雪人は運命とサヨコに合流し、島の上陸地点へ向かって泳ぎ出した。
フォルネウスと配下たちは、もうじき島に現れるだろう。のんびりしている暇はない。奴等が喰らって良い人間など、この島に一人たりとも存在しないのだから――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【腐食】LV1が発生!
【水中適応】がLV2になった!
【活性治癒】がLV2になった!
【士気高揚】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV3になった!
【ドレイン】がLV2になった!
【グロリアス】LV1が発生!
程なくして、少年たちが生贄の少女を救出したことが伝わると、海沿いの村は騒然となった。
捧げられるべき生贄を奪われたと知れば、フォルネウスは黙っていない。事情を知った村人の数人がその場にへたり込む。悪魔の怒りで自分たちは殺される――そう信じて疑わない彼らの表情には、深い恐怖と畏怖があった。アークデーモンであるフォルネウスに畏怖を刻まれた村人たちは、もはや現実を判断する力を失いつつあるのだ。
だが、本当の恐怖が人々を襲うのはここからだった。
「み、見ろ! 悪魔が来る!」
村人の一人が指さした先、入り江の方角からフォルネウスが泳いでくる。
目指す先は村に繋がる浜辺だ。引き連れる護衛の悪魔たちと共に上陸し、生贄代わりに島民を喰らおうと言うのだろう。
「ああ……あああ……」「終わりだ……」
かつてフォルネウスが現れた時の惨劇が、村人たちの脳裏に蘇る。どれほど戦っても歯が立たない、一方的に殺され、目の前で喰われていく家族や友人たち。あの光景がまた繰り返されるのだと、心に刻まれた恐怖が彼らに告げる。
逃げられない。抗えない。自分たちはもう死ぬしかない――と。
「ひ、ひいいいい!!」「悪魔だ! 悪魔がもうすぐこっちに来る!」
一度生じた恐怖はたちまち伝染し、村人たちはパニックに陥った。
このままではフォルネウスは村へ到達し、彼らを喰い殺すことだろう。
そして、取り戻した力をもって、さらなる惨劇をばら撒くことだろう。
だが、それを復讐者たちは許さない。
歴史を改竄し大地を奪った侵略者の存在を、彼らが認めることはない。
フォルネウスを討ち果たすため、村の平和を取り戻すため。各々の決意を胸に、復讐者たちは行動を開始するのだった。
マユラ・テイル
ふむ、救助は完了済みとなると後は住民の避難じゃな
時間も無い事じゃし、ちと強引じゃが残留効果でさくさく避難して貰うかの
海側から大声で悪魔が来るぞー!海から離れるのじゃー!と叫びながら島民に避難を促すのじゃ
同時に避難勧告の残留効果を使用しておくかのう
何処で戦闘になるかはまだ不明じゃが、少なくとも海沿いの村は危険地帯のはずじゃ
さっさと脱出して貰うかの
後は細かく避難方向を指示していくのじゃ
島の中央以外へ移動する可能性もあるからの、変な方向へ移動しようとする島民がおれば島の中央へ誘導じゃ
悪魔は海から来るのじゃ
海沿いへ居ったら襲われるぞ、早々に島の中央へ走るのじゃ
はりーはりー!
と細かく誘導し、逃げ漏らしが無きようにしっかり注意じゃの
ほれほれ、悪魔は海から来るぞ
海からとっとと離れい
大丈夫じゃ、少しの間内陸に居れば悪魔は居らんようになる
お主等は待っておればそれで良い
じゃから走れー走れー!
少しの間、海に近寄るでないぞー!
取り零しの無いよう、きっちり島民には避難して貰うぞ
ふぉるねうすとやらの歓迎準備じゃ
冰室・冷桜
うしうし、救出の首尾は上々
でー、こっからも引き続き、頑張っていきましょうか
最後までしっかりとやり遂げねーとですからね
とりま、【士気高揚】を発動しながら大きな声でパニック中の村人に声を掛けましょう
一緒に【友達催眠】を発動して多少でもこっちの声を聞きやすくなればよし
手を叩いて音を立てつつ
はい、ちゅうもーく! このままのんびりしてても今までと何も変わらないわよー!
喚く暇があるならとっとと逃げる! 目指すのは島の中心部、できるだけ高い場所を目指しましょう!
塞ぎ込んでる人が居れば、手を取って立ち上がらせながら避難を促すわ
子供やお年寄り、逃げるのが大変そうな人には直接手を貸して、一緒に避難していきましょう
西堂・千衛蔵
村人達はすっかり混乱してるな
いっそエゼキエルより酷い位だ
同じ村の者を生贄に差し出したのは褒められた事じゃないが、クロノヴェーダを倒すためにこの人達が逃げる手助けをしても、罰は当たるまい
「村人よ、聞け! 絶望するにはまだ早い」
頭に乗せた燈篭から光を発し「大声」で呼びかけて注意を惹く
そして【士気高揚】を載せて「演説」する
【友達催眠】効果も使えば話を聞いて貰えるだろう
「あの悪魔がなぜここに来たか知っているか?
奴はな、元居た土地での戦いに敗れ、ここまで逃げてきたのだ!
自分より弱い者を嬲ることで失った力を取り戻そうとしているのだ!
そんな奴に好き放題されて悔しくはないか?
家族の命を差し出してまで、言うなりになりたくないとは思わないか?」
一人ひとり腕を取って立ち上がらせ、肩を叩いて励まそう
「島の中央まで逃げろ、足の動く限り逃げろ
足の動かぬ者がいたら、腕の動く者がそいつを支えてやれ
悪魔にもう何も渡すな!」
最後に、赤煙が中空に炎の「ブレス」を吐いて景気づけ
「奴は、自分たちディアボロスが叩き潰す!」
文月・雪人
ここからもまた重要だね
誰一人犠牲になんてさせるものか
この島の地形についてなら、悪魔達より村人達の方がきっと良く知っている。
そして村中が恐怖に呑まれているこの状況でも、
救出活動を成功させた勇気あるあの少年達ならば、現実的な判断も可能だろう。
島の中央部に皆で隠れられる場所がないかを聞いて、そこに向け避難する様に促そう。
彼らの勇気が村人達にも伝わるように願いつつ、
少年達と協力して、村人達の避難誘導を行いたい。
仲間の【避難勧告】を有難く使いつつ、
恐怖に身が竦んで動けずにいる村人達には、【士気高揚】で勇気を奮い立たせて、
それでも動けぬ者は【怪力無双】で持ち上げてでも、強制的に避難させる。
悪魔達はまだ海にいる、攻撃だってすぐには届かない、
この村へ向かっているのだとしても、まだ少しだけ時間はある。
恐れて座り込んでる場合じゃないぞ、今すぐ立ち上がって走るんだ!
ほら、少年達の目を見てごらんよ、彼らは何も諦めてはいない。
今出来る事を今しよう、嘆くのはその後でいい。
さあ皆に声をかけて、島の中央部へ避難しよう!
百鬼・運命
🔳心情
…やれやれ次は一般人の救助か
状況的にそれもやむなしなのは理解できるが…
エゼキエルで大天使信者や悪魔信者に碌な思い出がないから、生贄を捧げるような連中にもいい感情がないんだが…
とはいえ、困った事に放っておくわけにもいくまいか
🔳行動
しかし…うーむ、どうしても顔がこわばるな
極限環境戦用電動型動力甲冑を召喚して搭乗することで顔は隠しておこう
装備は水上戦用の『クェイクパック』(自己紹介の参照参考)
それに大人の倍もある巨大な鋼鉄の鎧が出てきて戦うとなれば住人の恐怖も少しは休まるだろう
避難では先ほど活性化した【士気高揚】も使用するが、精神的なケアをしても動けない人やそもそも老人や子供は体力的に厳しい場合もあるだろう
そういった人々を動力甲冑と召喚したフライトドローンで抱えて避難させるとしよう
出来るだけ海から遠い場所がいいかな?昔からあるような祠とかに避難してそこの神様に住人が救いを求めればフォルネウスへの畏怖も弱まるかもしれない
先ほどの少年たちに聞いてみよう
ハニエル・フェニックス
あの女の子達を助けたらこうなるって、分かってはいたけどやっぱり大変!
とにかく全員助けるよ、アークデーモンの思い通りになんてさせるもんか!
そしたら皆も助けられるしアークデーモンも弱らせられる、一石二鳥だね!
うん、今ならそれに必要な残留効果は十分ある。
元気な人には避難勧告で十分だし、怪我してる人にはフライトドローンが使える。
私は逃げ遅れた人がいないか見回ろう。
万が一パニックになって海に行っちゃった人とかいたら水中適応を使って助けられるし、何かあって動けない人を見つけたら怪力無双で運んだり重いものをどけて道を作ったりくらいは出来るよね。
後はパラドクス通信で他のディアボロスと連絡を取り合いながら行動しようかな。
私の手に負えない事が起こっても助けを求められるしね。
避難場所も教えてもらっちゃおう。
とにかく私はあきらめないよ。
全員無事に助けて、アークデーモンも全部やっつけてやる!
ソラ島の海沿いに在る村は、村と言うのも憚られるような小さな集落だった。
人口は少なく、日々の糧は漁業と農業による自給自足。
冥海機も放棄したらしき土地ということもあり、賑わいや活気とは無縁の地であったが、それでも人々は慎まやかな暮らしを営んでいた。
しかし、いま、そんな平穏だった村は、悲鳴と絶叫が飛び交う地獄絵図と化している。
「あ、悪魔が来る!」「俺たちはお終いだ……!」
生贄を捧げ、ようやく得た仮初の安寧――その日々の終わりを告げるように、海の向こうから悪魔が向かって来る。
復讐者の助力によって救出された生贄を求め、村人を貪り食い、畏怖を得るために。海魔将フォルネウスとその配下である人魚の悪魔ウェパルら、TOKYOエゼキエル戦争の残党勢力による襲撃であった。
「う、うわああああああ!!」「嫌だ、死ぬのは嫌だ……!」
恐怖が、人から人へ伝染する。
残された猶予はもはや少ない。悪魔の毒牙から島民たちを護る為、いま復讐者たちが動き出す――!
「……ああ、此方からも見えたよ。フォルネウスに間違いない」
文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は、パラドクス通信機を介して届いた仲間の言葉にそう返した。
少年たちの生贄救出を見届けた後、雪人は仲間と合流すべく港へ急いでいる。同じ場所で救出に助力した、百鬼・運命(ヨアケの魔法使い・g03078)と共に。
「こんな時でなけりゃ、のんびりダイビングでも楽しめたんだけどな……!」
動力甲冑に身を包んだ運命が、冗談めかした口調で言った。
二人が走る海沿いの道からは、ソラ島の海が良く見える。
そして、入り江に向かう方角から向かって来る、海魔将フォルネウスの姿も。
護衛のウェパルを連れながらじりじりと島へ向かって来るその姿を遠目に見遣り、運命はふと首を傾げた。村を目指す悪魔たちの速度が、やけに遅いのだ。
「その気になれば、村までそう時間はかからない筈だが……フォルネウスのやつ、何を考えてるんだ?」
「多分だけど、わざと足を遅らせてるんじゃないかな。そっちの方が、島の人たちが畏怖を覚える時間も長くなるから」
通信機越しに聞こえてくるハニエル・フェニックス(第七の天使・g00897)の声に、雪人は唇を噛んだ。
「人間は死そのものより、死までの時間を恐れる……か。知性を失っても、そのことを本能が覚えているのかも知れないな」
「流石に十分、二十分のパニックで強化はされないだろうけど……のんびりしてる時間はないね。私は先に港にいるね!」
「分かった。俺たちも、もう間もなく到着する」
そう言って通信を切ると、雪人は後ろの運命を振り返る。
「行けそうかい? フライトドローンは」
「……だと良かったけど、無理だ。この距離で使えば確実に気付かれる。そうなったら間違いなく奴等は殺到して来る」
飛翔ほどの集中攻撃は受けないだろうが島民に被害が出るのは避けられないと、運命は苦り切った顔で言った。
元よりドローンで運搬できる人間は多くない。動けない島民は人力で運ぶしかないだろう。雪人がその旨を通信機で仲間に伝え終えると、目の前に港が見えて来た。そこには手を振るハニエルがいた。近くには、雪人と運命が小船の底から見送った少年少女の姿もあった。
港に着いた雪人は、すぐさま少年たちの下へ駆け寄った。
「君たち、無事だったか!」
「え? お、お兄さん誰?」
(「……そうか、彼らと面識があるのはラキアだけだった」)
面食らった様子の少年たちへ雪人は話せる範囲で事情を説明すると、自分がラキアの仲間であることを告げる。
幸い、既に使用可能となっていた友達催眠の力もあって、雪人の言葉を少年たちが信じるのに時間はかからなかった。
「教えてくれ。島の中央に、村の人たちが逃げられそうな場所はないか?」
「よ、よく分からないけど……畑とか小さな倉庫なら、山の麓にあるよ。ほら、あそこ……」
どうやら目印となる場所自体はあるらしい。ならば、避難を呼びかける際は其処を目指すよう伝えれば大丈夫だろう。
出来ることなら少年たちにも避難誘導の協力をと思った雪人であったが、救出された少女たちの中には助かった安堵からか意識を失っている者や、一人では歩けない者がいる状況だった。流石にこの状況で手を貸して欲しいとは言えず、ハニエルと運命は少年たちに手早く要件を伝えた。
「女の子たちを連れて、麓まで逃げて。村の人たちもすぐ合流するから」
「俺たちが迎えに行くまで、絶対に其処を動かないように。村にも港にも戻っては駄目だ。いいね?」
「う、うん、分かった!」
ハニエルと運命の真剣な様子に少年たちは頷くと、すぐに少女を担いで中央の麓へと向かって行った。
これで、彼らが戦闘に巻き込まれることは無いだろう。運命はすぐさま頭を切り替え、ハニエルに向き直る。
「島民は殆どが村にいるようだけど、そっちの方はどうかな?」
「他の仲間が向かってるよ。港はそんなに人がいないから、こっちの誘導を終わらせたら私たちも合流しよう!」
ハニエルの言葉に雪人は頷くと、通信機を手に取った。
パラドクス通信をハニエルが発動してくれたおかげで、仲間同士の連携は容易となっている。
同じ戦場に大勢の仲間が居る、その事実に頼もしさを覚えながら、雪人は運命やハニエルと共に避難誘導を開始した。
「ここからもまた重要だね。誰一人犠牲になんてさせるものか」
「うん。とにかく全員助けるよ、アークデーモンの思い通りになんてさせるもんか!」
「小さい港だったのは幸いだな。人手が必要な時は連絡をくれ、すぐに向かう」
復讐者たちにとって、作戦の本番は此処からだ。
三人は頷きを交わし合うと、すぐさま港へ散っていった。
「あの女の子たちを助けたらこうなるって、分かってはいたけどやっぱり大変! でも頑張るよ!」
港に多少なりとも土地勘の出来たハニエルは気合を入れなおすと、真っ先に見張りの男たちを叩き起こした。
男たちは村に迫るフォルネウスの姿を見て仰天したが、友達催眠を発動すると多少落ち着いたようだった。ハニエルは余計な挨拶は抜きに、すぐさま本題を切り出す。
「港の中に、あなたたち以外に人は居る?」
「え? ええと……今は、漁師の爺さん連中が数人だけ……」
「どこ? 時間がないの、急いで教えて」
通信機を手に問いかけるハニエルに、男たちは素直に場所を教えた。
ハニエルは得た情報をすぐさま運命と雪人に伝えると、男たちに向き直る。
「貴方たちは今すぐ山の麓まで逃げて! いい、今すぐだよ! 途中で逃げ遅れた人が居たら、一緒に連れて行って!」
「で、でも……」「このままじゃ俺たち、その……」
「返事っ!!」
「「は、はいいぃっ!!」」
ハニエルの一喝に男たちは飛び上がると、先を争うように麓へと避難して行った。
それを見送ると、ハニエルはすぐさま港の桟橋へ向かった。万が一、パニックを起こして舟で逃げようとする人間がいたら止めねばならない――そんな最悪の事態を想定していた彼女だが、幸いにもその心配は杞憂に終わったらしい。船着き場の舟に一艘の欠けも無いことを確かめて、ほっと胸を撫で下ろす。
(「全員助かれば、アークデーモンも弱って一石二鳥。この調子でどんどん行こう」)
ハニエルは通信機を手に、他の仲間を手伝うべく駆け出した。
喜ぶのはフォルネウスを討ってからでいい。今は只、すべきことを果たすのみだ。
一人一人の力は小さくても、力を合わせれば大きくなる。自分もその『一人』として、全力で戦ってやる。
「私はあきらめないよ。全員無事に助けて、アークデーモンも全部やっつけてやる!」
一方その頃。ハニエルの連絡を受けた運命と雪人は、漁師の老人たちが集まる場所に居た。
「間違いない。港に残っているのは此処の人たちで全員だ」
老人から話を聞き終えた運命が、そう告げる。
老人たちは白髪で顔に皺が刻まれた者ばかりだが、今も現役で働いている漁師だからか、その肉体は頑健そのものだ。
しかし、その眼には明らかな怯えの色がある。海で生きる男たちだけに、フォルネウスに抱く恐怖もまた底知れないものがあるのだろう。そんな彼らに、雪人は運命と共に熱意を込めた言葉で避難を呼びかけていった。
悪魔たちがまだ海に居て、その攻撃もまだ此処には届かないこと。
村の方角へ向かっているのだとしても、今なら逃げる時間はあることを。
「恐れて座り込んでる場合じゃないぞ、今すぐ立ち上がって走るんだ!」
「体力的に厳しい人がいたら言ってくれ。担いで連れて行くよ」
それは本来であれば、恐怖に囚われた老人たちには届く筈のない言葉だった。
しかし、友達催眠によって僅かなりとも心を開いた老人たちに、二人の熱意が士気高揚を介して伝わると、その場の全員がゆっくりと腰を上げる。中の一人が恐怖で立てないと知れば、運命はすぐさま動力甲冑で老人を担ぎ上げて、避難の手助けを買って出た。
「文月さんはフェニックスさんと先に村へ行っててくれ。爺さんたちを安全な場所まで送ったら、俺もすぐ合流する」
「……分かった。気をつけて」
それ以上の余計な言葉は挟まずに、雪人は村へと駆けて行った。
ぐずぐずしている時間は無い。運命は老人の一人を背に麓までの道を歩き出す。彼らの焦りを煽らぬよう、ゆっくりとした足取りを崩さずに。
「すまん……若いの」
「……感謝なら、生贄を救った少年たちに言うんだな。爺さん」
表情を悟られぬよう動力甲冑の面で顔を隠しながら、運命はそっけない声で言った。
今は無きエゼキエルのディヴィジョンにおいて、生贄を捧げる狂信者たちを運命は多く見て来ている。島民たちとて被害者なのは頭では理解しているが、かつて其処で見て来た人間の愚かさ醜さは、心からの労いを老人にかけることを、どうしても彼に許さない。
(「とはいえ、困った人を放っておく訳にはいかない。そこは譲れないんだ」)
自らが生き延びる為、他者を生贄を捧げる人間たち。
そうした連中を許せる時が、いつか自分に来るのだろうか――そんなことを考えながら、運命は麓に続く道を歩く。
彼が、老人たちを十分に離れた場所まで送り届けたのは、それから程なくしてのことだった。
同刻。港の避難を終えて合流したハニエルと雪人は、村へと辿り着いた。
そこでは先行した復讐者たちが、今まさに村人たちの避難誘導を進めている最中であった。港に比べて村人の数も多い為、隅々までは手が回り切っていない様子である。
だが、それも今この瞬間までだ。ハニエルらが応援として到着した今、誘導のペースは大きく上がることだろう。
「ごめん、遅くなった!」
「なに、港の方は終わったのじゃろう。なら、あとは全員で村の住民を避難させるだけじゃな!」
駆けつけたハニエルに、マユラ・テイル(みすてりあすじゃ・g05505)はそう返し、村の中へと視線を移す。
海沿いの小さな村は、今や村人たちの悲鳴と絶叫が響き渡る地獄と化していた。逃げられないと観念して泣き出す者、生贄に捧げた少女たちに己の愚かさを懺悔する者……その反応は様々だが、いま一人一人に寄り添っている余裕はない。マユラは深呼吸をひとつ、大きな声で彼らに呼び掛けた。
「悪魔が来るぞー! 海から離れるのじゃー!」
マユラの声に背を押され、浜辺に近い場所の村人たちが次々に離れていく。
村人を脱出させるにしても、バラバラに逃げさせたのでは危ない。無闇に避難勧告を使えば敵を刺激する恐れもあるため、村人たちを集団にまとめて麓まで向かわせる――それが復讐者の方針だ。
「ほれほれ、海からとっとと離れい! 大丈夫じゃ、少しの間内陸に居れば悪魔は居らんようになる!」
「よし、俺たちも手伝おう」
「まずは動けない人を優先的に、だね!」
幸い、それを行う時間的余裕は、辛うじてではあるが残されていた。逃げ遅れた老人や病人がいないか雪人とハニエルが村の家々を回るために駆け出す中、マユラは尚も呼びかけを続けていった。
一方その頃、村の山側でも、冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)が手を叩きながら村人の避難を誘導していた。
「はい、ちゅうもーく! グズグズしてても悪魔は待っててくれないわよー!」
冷桜はパニックを起こしている村人たちへ、友達催眠と士気高揚を利用しながら呼びかけを行った。絶望してふさぎ込んだ村人がいれば最優先で声を掛け、それでも動かないと分かればだいふくと協力しつつ半ば力ずくで立ち上がらせ、叱咤激励の言葉をかけていく。
「はいはい諦めない、落ち着いて行動すれば助かりますから。一旦深呼吸して、深呼吸!」
「……ああ……ああ、済まない……」
相手に寄り添った声掛けが奏功したのか、村人は直に落ち着きを取り戻した。
力強い言葉で、人々を安心させる情報を繰り返し伝える冷桜の対応は、友達催眠と士気高揚の効果を大きく後押ししてくれたらしい。村人の目に意思の光が灯ったことを確かめると、冷桜は背中をポンと叩いて行動を促し、村人たちが集まっている中央の広場を指さして言う。
「落ち着きました? んじゃ、他の皆さんが集まってるところに急いで下さいね、っと」
そうして恐怖から醒めた村人を送り出すと、冷桜はなおも村の中を回っていった。村人はなにも若くて健康な男女だけとは限らない。子供や年寄りの中には、自力で逃げるのが困難な者も居るはずだ。
果たして冷桜の予感は的中し、彼女が目にしたのは病で動けず、集会所らしき場所に伏せる老人たちだった。人数は十人。村人たちの集まる場所まで運ぶのに、冷桜一人では時間がかかり過ぎる――はずだった。
結論から言えば、その事態は免れた。
理由のひとつは、怪力無双が使用可能であったこと。理由のふたつは、それを発動した雪人が、ハニエルと共に応援で駆けつけたことだ。
「彼らを運べばいいんだね? 手伝うよ、急ごう」
「他の村人たちも、もうすぐ皆集まるって!」
「あー、助かりますわ。んじゃ、ひとつ行きましょうかね。……はいご老人の皆さん、動かないで下さいよっと」
かくして、独力で逃げるのが困難な人たちを担ぎ上げ、冷桜たちは村人の集まる場所へと向かうのだった。
程なくして、村に在る小さな広場には村人たちが集められた。
「村の者は、これで全員じゃな?」
「ああ、間違いない。確認も先程済ませた」
マユラの問いに力強い頷きを返したのは、西堂・千衛蔵(竜燈鬼・g01901)であった。
彼はマユラと冷桜が連れて来た村人たちをまとめ上げ、山の麓へ避難する為の最終準備を整えていたのだ。幾らか冷静さを取り戻したとはいえ、未だ怯えの色を隠しきれない村人たちを見て、千衛蔵はふむと小さな嘆息を漏らす。
「……村人たちはすっかり混乱してるな。いっそエゼキエルより酷い位だ」
自分が生きる為、同じ村の者を生贄に差し出したことは、まるで褒められたことではない。
だが、千衛蔵は同時に思うのだ。クロノヴェーダを倒すために彼らが逃げる手助けをしても、罰は当たるまい――と。
だからこそ、彼は力を尽くす。力無き人々を救い、彼らを唆したアークデーモンを滅ぼすために。
「村人よ、聞け! 絶望するにはまだ早い」
千衛蔵の大声が村中に響き渡る。
同時、村人たちのどよめきがシンと水を打ったように静まり、全員の視線が釘付けとなった。
頭に乗せた燈篭から光を発し、友達催眠を発動し、堂々たる声で語る千衛蔵。その力強い声は有無を言わさず、人々の耳目を引きつけながら、士気高揚を込めた演説となって村人たちの心へ染み渡っていく。
「あの悪魔がなぜここに来たか知っているか? 奴はな、元居た土地での戦いに敗れ、ここまで逃げてきたのだ!」
入り江の方角から迫るフォルネウスを指さして告げる千衛蔵の言葉に、村人たちの間でどよめきが生じた。
もしも、村人たちがパニックに陥る最中であれば、千衛蔵の言葉は届かなかったことだろう。
だが冷桜を始め、ハニエルや雪人の尽力によって助けられた人々は、その言葉を嘘だとはもう思えない。いまだ半信半疑の目を向ける者たちをまっすぐに見つめ、千衛蔵は一言一句を刻むように語り掛ける。その心から、フォルネウスを畏怖する心を少しでも取り除けるように。
「奴は、自分より弱い者を嬲ることで失った力を取り戻そうとしているのだ!
そんな奴に好き放題されて悔しくはないか? 家族の命を差し出してまで、言うなりになりたくないとは思わないか?」
千衛蔵の言葉が更に紡がれる中、マユラが、冷桜が、雪人が、ハニエルが、そして駆けつけた運命も、村人たちを励まして歩いて回っていた。それは決して気休めなどではない。士気高揚で励ませる範囲は、復讐者一人につき半径10m程度の範囲のみ。協力する仲間が多いほど、千衛蔵の、復讐者たちの熱意はより多くの村人たちに伝わるからだ。
「島の中央まで逃げろ、山の麓まで逃げろ、足の動く限り逃げろ。
足の動かぬ者がいたら、腕の動く者がそいつを支えてやれ。悪魔にもう何も渡すな!」
千衛蔵もまた仲間たちと共に村人を励ましていく。一人ひとり腕を取って立ち上がらせ、肩を叩いて励ましていく。
悪魔に抗うと決めたのなら、お前たちはもう生贄でも餌でもない。
犯した過ちは消えずとも、これから抗い戦うことは出来るのだと。
そして――ソラ島の晴れ渡る空の下、ミニドラゴン『赤煙』の吐き出すブレスが明々と炎を吐き出す。村人たちの萎んだ心に火を灯す、熱く力強い種火のように。
「奴は、自分たちディアボロスが叩き潰す!」
そうして千衛蔵の話が終わり、一瞬の静寂が流れた後――村人たちは気づかぬうちに胸に手を当てていた。
先程まで悪魔を恐れて早鐘を打っていた心臓は、今や嘘のように平静さを取り戻しつつあった。自分たちの心から、悪魔を恐れる畏怖が失せつつあることを、村人たちは理解する。
無論、これは奇跡ではない。
千衛蔵の演説、復讐者たち全員の連携、動けない村人へのフォロー、そして有効な残留効果の準備と活用。どれか一つでも欠けていたら、この瞬間が訪れることは無かっただろう。
行動を起こすのは今。そう見て取った冷桜は仲間たちと頷きを交わし合い、今一度村人たちへ呼びかけた。
「んじゃ、準備は良いですね? 目指すのは島の中心部、山の麓から出来るだけ高い場所を目指しましょう!」
「悪魔は海から来るのじゃ。戦いが終わるまで、海沿いに戻ってはならぬぞ! 早々に走るのじゃ、はりーはりー!」
続いて、マユラがパンパンと手を叩く。同時、村のあちこちに突如赤い光が明滅し、サイレンが鳴り響き始めた。
一般人をその場から立ち去らせる、避難勧告の残留効果だ。
それは避難誘導が今まさに完了したことを告げる報せであり、これよりフォルネウスを討つというアークデーモンたちへの宣戦布告の狼煙でもあった。
「村人たちよ、今一度言う! 少しの間内陸に居れば悪魔は居らんようになる、お主等は待っておればそれで良い!」
「あの悪魔たちはキッチリ始末しますんで。だから今は、逃げることだけ考えて下さいね、っと」
避難勧告のサイレンが木霊する中、マユラと冷桜の声がなおも響く。
村人の不安を取り除き、動けぬ人々を助け、千衛蔵の鼓舞で畏怖を大きく失った今、村人たちは冷静さを取り戻した足取りで村から避難していく。動けぬ者を背中に担ぎながら山の麓を目指して歩き出す村人たち。その背中に、復讐者たちは彼らの取り戻した人間性の一片を確かに垣間見る。
「走れー走れー! 少しの間、海に近寄るでないぞー!」
マユラの声に、小さな子供の一人が振り返る。そうして子供が手を振ると、村人たちも一人また一人とそれに倣った。
彼らの心からは、いまだ完全に恐怖が失せた訳では無いだろう。犯した過ちも、消えることはないだろう。だがそれでも、背を押されながらも、彼らは前を向いて動き出した。
ならば、これから復讐者の為すべきことは只ひとつ。全てを狂わせたあの悪魔を、今こそ討ち取ることだけだ。
「さて、避難誘導は大成功じゃの。お次は、ふぉるねうすとやらの歓迎準備じゃ!」
「うしうし、頑張っていきましょうか。最後までしっかりとやり遂げねーとですからね」
マユラと冷桜の言葉に頷いて、復讐者たちが走り出す。
迫り来る海魔将フォルネウスとその配下を撃破して、ソラ島に暮らす人々を守る為に。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【友達催眠】LV2が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV2が発生!
【先行率アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
秋風・稲穂
島民の皆は避難出来そうだし、それじゃ敵の迎撃に行ってこようかな
……んー、戦闘で浜辺を荒らして戦いの痕跡とか残ったら良い気分でも無いだろうし
海上で戦うとしようかな
まずは護衛から
本命との戦いの邪魔にならないように、確実に倒していこうかな
人魚の悪魔……か
狂ってしまった主人を見て、彼女達は何を思うんだろうね
水面走行で海上を駆けて接敵しよう
L・デルフェスとBurn the darkを抜刀
ウェバルに対して接近戦を仕掛けよう
【電撃使い】、稲妻を剣に込める
敵が海上に出てくるのを狙って、雷光閃脚で攻撃を仕掛けよう
稲妻を込めた【斬撃】、そして即座に回し蹴りで追撃
剣戟と蹴りで確実にダメージを重ねていこう
【精神集中】し意識を整える
精神を蝕む歌声から少しでも自意識を保つ
まあ、多少の自傷攻撃は仕方ないか
自滅する前にウェバルを倒し切るしかない!
厄介なコンサートは早々に中止して貰わないとね
それに後には大物が控えてるんだ
この程度で止まってあげる訳にはいかないよ!
アドリブ連携等歓迎
月鏡・サヨコ
……避難誘導には、十分な人員が揃った
私は可能な限り早く敵を処理すべく、入江の側に布陣しておこう
【パラドクス通信】で仲間と連絡を取り合い、住民の避難完了を確認すると同時に迎撃を開始
下手に敵を陸に上げさせて、建物や森林の中に逃げる状況を作りたくない
海戦を挑み、島の土を踏ませることなく殲滅する
仲間から【水面走行】を借用
自分は主に水面上で立ち回りつつ、桂を足下の海中に【水中適応】状態で忍ばせておく
敵が潜水して接近して来るようなら桂に索敵させ、私が応戦しよう
また索敵時は【パラドクス通信】も駆使し、協力して敵を見逃さないようにする
敵を捕捉したなら『高出力殺傷電波砲「Z」』を発射
標的を急激に熱する電磁波砲撃によって、敵を溶解せしめる
相手が水中にいる場合は周囲の水ごと体液を煮立たせて、生命活動を絶つ
……人魚の肉を口にするつもりはない、全て焼却処分だ
反撃の銛に対しては≪海戦装用増設防盾≫を用いてガードし、体に傷がつくことを極力防ぐ
機械に食いつく蛆虫……いるとは思えないし、彼らもここで全員沈めるけど、一応だ
ソラ島の村に生じた変化は、今や『人魚の悪魔ウェパル』の目にもはっきりと映っていた。
けたたましい警報サイレン。家々を照らす、炎よりも赤い光。
それらは村人たちが本来行使できる筈のない力――パラドクスが起こす現象に他ならない。かつて東京の地より悪魔を放逐した復讐者がこの地に現れたことを、アークデーモンたちは本能的に察する。
『……――!』
直後、悪魔たちは速度を上げて、矢の如き速さで村へと泳ぎ出した。
クロノヴェーダの直感が告げているのだ、このままでは拙いと。生贄の少女のみならず村人にも逃げられてしまえば、畏怖を得ることは叶わない。今すぐにでも村人を殺戮し、統率者たるフォルネウスの糧としなければ、と。
だが、ウェパルたちの見立ては余りに甘く、そして余りに遅すぎた。
何故なら彼女たちの行く手には、襲撃準備を終えた復讐者たちが牙を研いで待ち構えていたのだから。
「……村に向かった仲間より連絡。避難誘導は完了したそうだ」
今しがた齎された報せを、月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)はパラドクス通信を介して仲間に告げた。
彼女が見据える先、入り江の方角から迫るのは、人魚の悪魔ウェパルの群れ。海魔将フォルネウスに率いられた悪魔たちはソラ島の波を切り裂いて、今や波濤のごとき勢いで村を目指している。
そんな敵の進路上、浜辺へ到る海の上に、サヨコと秋風・稲穂(剣鬼・g05426)はいた。
「島民の皆が避難できて良かった。それじゃ、さっそく迎撃を始めようかな」
「異論はない。クロノヴェーダは一体も逃がさず排除する」
水面走行の力で凪いだ海上に立ちながら、稲穂とサヨコが言葉を交わす。
今回、彼女たちが海を戦場に選んだ理由は二つ。
ひとつは、上陸した敵が島に逃げる状況を阻止する為。
ひとつは、アークデーモンとの戦闘で島を汚さぬ為であった。
「……んー、浜辺を荒らして戦いの痕跡とか残ったら、良い気分でも無いだろうしね」
「同意。海戦を挑み、島の土を踏ませることなく殲滅する」
稲穂に頷きを返すサヨコの足元では、すでにパンツァーハウンドの桂も迎撃準備を終えて待機している。敵が潜水して接近してきた際の索敵要員だ。水中適応も発動されている今、海の上でも下でも悪魔相手に遅れを取ることは無い。フォルネウスを撃破すべく、まずは護衛を確実に排除する――それが今回の方針だ。
(「人魚の悪魔……か。狂ってしまった主人を見て、彼女たちは何を思うんだろうね」)
答えが返らぬことは承知で、稲穂はL・デルフェスとBurn the darkを抜刀。迫り来るウェパルの群れめがけて引き絞られた矢の如く疾駆していった。
剣に込めた稲妻の轟きが、戦いの火蓋を叩き切る。
凪いだ海を一直線に駆ける稲穂の襲撃を、悪魔たちもまた察知したようだ。海面に次々と浮上して、紡ぎ始めるのは自滅の歌声ローレライソングである。
「遅いっ!」
刹那、稲穂の振るう二振りの斬撃が、先頭のウェパルを捉えた。
切先が肉を裂くと同時、宿した雷を解放。全身を海水で濡らしたウェパルの体を、雷のエネルギーが荒れ狂う。全身を消し炭に変えられ、早くも一体が海の藻屑と消えた。
「失礼、足癖は結構悪くてね!」
『アァッ!』『ウウウ……』
仲間の仇討ちとばかり、憎しみに満ちた視線を投げつけるウェパル。
だが、稲穂の猛攻がその程度で怯むことなど無い。続け様に叩き込んだ蹴りの連撃をウェパルの腹にめり込ませ、全身の骨もろとも肉体を粉砕した。
斬撃と蹴撃の嵐で敵を葬るパラドクス、『雷光閃脚』。その勢いは正に電光石火の其れだ。僅かに距離を隔てた海上では、サヨコもまた熱線砲の狙いを悪魔に定め、更なる猛攻をウェパルの群れに浴びせていった。
『ララ……ルルル……♪』『シャアァァァ!!』
復讐者の奇襲によって出鼻を挫かれたウェパルたちも、ここに来て漸く攻撃を開始した。
ローレライソングの歌声で稲穂を捉え、カースハープーンの銛を構える。銛で受けた傷は腐敗を齎し、3日で人魚を仕留めねば蛆に食われて死ぬと言われる――悍ましくも恐ろしいパラドクスが、矛先をサヨコに定めた次の瞬間であった。
銛を放つはずの腕に、ひりつくような痛みが走る。ふと見ればウェパルの腕は赤く爛れ、それは腕から肩を伝って悪魔の全身を包もうとしていた。
「生憎だけど、3日は必要ない」
そう告げるサヨコは冷酷な視線を向けながら、ウェパルに向けてパラドクスを発動していた。
稲穂のような斬撃はおろか、砲撃の音すら聞こえない静かな一撃。それを為した兵器は、彼女の装着したアンテナめいた装置――≪試製型攻性電探≫が放つ指向性電磁波であった。
標的を電磁波で急速加熱する攻撃方法は、原理としては電子レンジに似る。しかし、端から殺傷を目的としたパラドクスとなれば、その威力は桁違いだ。
「今、ここで落とす。……人魚の肉を口にするつもりはない、全て焼却処分だ」
『アアアアアアアッ!!』
ウェパルの全身から、白い湯気がシュウシュウと立ち上る。
たとえ海中に潜ろうとも、冥海機の装甲すら溶解させる熱線砲からは逃げられない。たちまち全身の体液を沸騰させて、絶命したウェパルが海の藻屑と消えた。
反撃とばかり飛来する銛を、サヨコの海戦装用増設防盾が食い止める。多少の掠り傷など気にすることは無い。どの道、ウェパルの群れは一体残らず、自分と仲間たちが今日この場で葬り去るのだから。
「桂は索敵を続行。……次」
「この『後』の為にも、止まってあげる訳にはいかない。厄介なコンサートは早々に中止して貰わないとね!」
次々に討ち取られていくウェパルたち。その死骸を一瞥もせず、サヨコは新たな標的を狙い定めて攻撃を続行する。
稲穂もまた、反撃で浴びた歌声を物ともせず、稲妻を宿した斬撃を見舞い始めた。
復讐者ふたりの猛攻はなおも留まることを知らず、戦場を荒れ狂う。それはやがてウェパルが上げる悲鳴をも塗り潰し、新たなる復讐者たちの攻勢とともに、ソラ島の海を覆い尽くそうとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水面走行】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV2になった!
効果2【ダブル】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
白石・明日香
効果2はすべて使用
こいつらは正気を保っているかしら?いえ、どちらにしてもやるしかないね!
【水中適応】を使って水中戦で敵にダッシュで迫り敵の歌は精神集中して耐えて無視してなお迫る。
ハイハイ、いい歌声だねぇ・・・・・ワタシには通じないけどね!
間合いに入ったらこれ以上歌を聴かないように早業呪詛、捨て身の一撃で纏めて解体してあげる!
これで片づけた。後は・・・・・あいつだけね
篠村・蓮十郎
避難も滞り無く済んだようだな。
ではこちらの手番だ。
勤めを果たさねばな。
海上から対応する味方が多いか
ならば水中より奇襲を掛けよう
水中適応を用い潜水し岩陰に紛れて接近
奴らの意識が上方へ向いた隙を突き攻撃を仕掛ける
一気に浮上し敵陣へ突撃、壱號機械腕を振り払い[旋風]を放つ
拳圧に伴う衝撃波で諸共吹き飛ばしてやろう
水中で受ければ只では済むまい
奇襲後は水面走行を借り受け海上へ移動
奇襲後の状況を活かし一気呵成に攻め立てる
皮鉄で死角からの攻撃を警戒、防御
銛に対しては機械腕を振るい、弾いて逸らす形で同時に攻撃を加える
場を荒らせば荒らす程、他が有利に立ち回れるだろう
可能な限り多数を引き受け付け入る隙を作る
奴らの銛を受ければ三日で死に至るそうだが……気の長い話だ
脅威には違いないが、この戦況に適してはいないな
(「……始まったようだな」)
戦闘の熱気が席巻するソラ島の海。その海中で一人、篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)は静かに息を潜めていた。
岩陰に隠れて仰ぎ見る先では、ウェパルの群れが復讐者の攻撃を浴びては死骸となって沈んでくる。
どうやら島民の避難も無事に滞りなく済んだらしい。もはや遠慮は無用とばかり、先行していた仲間たちの猛攻はますます激しさを増して、海の上と下を問わずに荒れ狂っていた。
『……――!』『……――!!』
ウェパルの意識は、今や海上に釘付けだ。
無論、悪魔たちとて水中を意識していない訳では無い。だが、復讐者たちが加える猛攻は、彼女たちの意識を海の上に惹きつけるよう強いている。気を抜けば次の瞬間には海の藻屑と化す以上、是非もない。
それを見て、蓮十郎もまた攻撃の方針を決めた。
(「この機を活かさぬ手はない。……このまま、水中より奇襲を仕掛ける!」)
パラドクスを帯びた攻撃が海の上を荒れ狂う。
叩きつける衝撃が海中を走る中、蓮十郎は岩陰に張り付くようにして慎重に進んで行った。
折しも少し離れた先では、白石・明日香(弔いの狩人・g02194)がウェパル相手に水中戦を挑んでいる最中だ。敵の僅かな意識も其方へ釘付けとなり、いまだ蓮十郎の存在にウェパルたちは気づいていない。
(「水上の敵に奇襲を行う。もう少し時間を稼いでくれ」)
(「分かった、任せて」)
蓮十郎の合図に明日香は目線で応じると、ウェパルの注意を引きつけんと更なる猛攻を開始した。
暴れれば暴れるほど奇襲は有利となる。勝負を仕掛ける好機を彼女は決して見誤らない。
敵の注意を引きつけるべく、これ見よがしに刃を振り回してみせる明日香。と、すぐに二体のウェパルが、フォルネウスの元へは行かせぬとばかり仕掛けて来た。その挺身的な攻撃に、明日香は無言で眉を顰める。
(「こいつらは正気を保っているのかしら? いえ、どちらにしてもやるしかないね!」)
瞬歩・加速のパラドクスが、海中の理を書き換える。
瞬時に間合いを詰め敵を斬る其の技は、例え水中であろうと何ら速度を鈍らせない。次の瞬間、繋げた空間をワープしたかのように明日香の体が間合いを詰めた。
「……終わり……」
『――!!』
そして――呆然と口を開けるウェパルたちへ、一閃。
真っ赤な血潮が二筋迸り、断末魔の代わりに海を染めていった。
(「よし。いい具合だ」)
明日香がウェパルとの死闘を繰り広げる同刻、蓮十郎は浮上の準備を終えたところだった。
ある程度の頭数が纏まっており、かつ意識が水中に向いていない場所。その真下から、一気に奇襲を行うのだ。
陸地の方角へ意識を向ければ、新たな仲間たちが救援機動力で駆けつけて来る気配も感じ取れる。この攻撃が成功すれば、ウェパルの群れに壊滅的な打撃を与えられることだろう。
仕掛ける好機は、今。壱號機械腕に力を込めて、一気に浮上を開始した。
(「行くぞ。ケリを付けてやる」)
水底より、蓮十郎がウェパルの群れを強襲する。
加速からの浮上によって海に突き立つは、螺旋を描く大きな一本の水柱だ。その只中、台風の眼の如く拳を構える蓮十郎の姿に慌てふためき、ウェパルたちが一斉に銛を構えようとした次の瞬間であった。
「邪魔だ!」
全身に貯めた力を残らず解放し、蓮十郎が壱號機械腕を振り払う。
回転しながら放つ鋼鉄の義手による裏拳は、海を荒れ狂う大嵐よりも激しく、射程に捉えたウェパルの肉体を次から次へと変えていく。パラドクス『旋風』の拳圧が巻き起こす突風と打撃、それを前に絶命を免れる悪魔は一体も存在しない。
『ギィッ!?』『アガッ――』
絶好の機を狙って放つ渾身の一撃である。
其れは最早、吹き飛ばす等という生易しい威力では無い。衝撃波を浴びて砕け散るウェパルの残骸を突き抜けて、そのまま勢いを乗せて海上へと飛び出す蓮十郎。水面走行で海上を踏みしめると、今なお残る悪魔の群れ目掛けて、彼はそのまま尚も一気呵成に攻め続けるのだった。
襲撃で次々と同胞を討たれながら、ウェパルの群れは、それでも未だ自らの役割に忠実であった。
海魔将フォルネウスの首を狙う復讐者を通す訳には行かぬとばかり、傷を腐らせる銛を、自滅を誘う歌声を、襲撃をかけた蓮十郎と明日香めがけて繰り出していく。
だが、奇襲によって乱れた陣形から繰り出す其れは、もはや反撃とも呼べぬ程にお粗末なものだ。
「むん!」
急所を狙った一突きは、蓮十郎の振るう機械腕に易々と弾かれた。
傷を受けたが最後、使い手を殺さねば三日以内に死へと至ると言われる――そんな攻撃も空しく、銛を振るった悪魔は三分とかからず蓮十郎の旋風を浴びて砕け散っていく。銛によって与える傷も、今やさしたる脅威と為らない。機械腕がウェパルを砕くたび、蓮十郎の傷口はグロリアスの加護でたちまち塞がっていくのだから。
「三日で死に至るとは気の長い話だ。脅威には違いないが、この戦況に適してはいないな」
周囲のウェパルをあらかた討ち、水中に視線を向ければ、ちょうど其方でも明日香が戦闘を終えるところだった。
パラドクスを帯びて水中を伝う歌声も、今やさしたる脅威にはなりえない。反撃で放った斬撃で最後の一体を解体すると、明日香は絶命したウェパルへ餞がわりの言葉を投げた。
「ハイハイ、いい歌声だねぇ……ワタシには通じないけどね!」
水上へ浮上し、明日香が戦場を見渡した。
陸地に目を向ければ、救援機動力で駆けつける仲間の姿が見える。
着実に戦力を増しつつある復讐者たち。一方、彼らの攻撃に晒されたウェパルたちは、今や砂城が波を浴びたように陣形を瓦解させ続けていた。
護衛を排除する序盤の戦いは、もはや帰趨が明らかだ。間もなく訪れるであろう決戦の気配を、明日香は肌で感じ取る。
「トループスを片付けたら、後は……あいつだけね」
「ああ。絶対に、逃がしはしない」
この海を、必ずお前の墓場にしてやる。
蓮十郎と明日香、復讐心に燃える二人の眼は、今まさに護衛を失いつつあるフォルネウスを見澄ますのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【断末魔動画】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【ダブル】がLV3になった!
ハニエル・フェニックス
よーし、島の人達の避難は完了!
後はアークデーモンをやっつけるだけだね!
でも親玉の前にまずは前座がいるのかぁ……ちゃちゃっとやっつけて、先に行かせてもらうよ!
服を着替えて泳ぎやすくなった後は、兎にも角にも水中適応。
人魚と戦うには、こっちも少しは水中で行動できなきゃね!
銛で襲ってくるなら寧ろ都合がいいかも。
なんてったって相手ほど自由自在に泳げそうな気がしないもん。
敵が近くに来た所を、光の剣でやっつける!
銛の方が長いだろうけど、リーチの差は剣を投げつけたりして埋めて行こう。
私の剣は投げてもまた作っちゃえばいいからね、結構便利!
敵の攻撃で怖い所は三日で死んじゃうって所だけど……その分やる気が出るってもんだよね。
蛆が湧いて死ぬとか死んでも嫌だし、何としてでもやっつけてやる!
そうそう、水面走行を使うのもいいね。
追い詰められたら一旦水面に避難して走って距離を取るとか、何なら怪力無双も使って相手を水面に引き摺りだしてもいいかも。
そのまま味方の攻撃の範囲内に放り込むとか……色々出来るかもね!
西堂・千衛蔵
請け合ったからには、トループス級も余さず片付けるぞ!
傷を付けたウェパルを逃がすと傷口に蛆が湧くそうだし、何より一体でも生き残ってまた村を狙われるのだけは御免被るからな
【水中適応】を使って海に出て、ウェパルたちを「挑発」して引き寄せる
「遅かったな。貴様たちがゆっくり来てくれたお陰で、村人はみーんな逃げちまったぜ!
悔しかったら俺たちを畏怖させてみろ
弱い者いじめしかできない奴らには、どうせ無理だろうがな!」
海の中では武器として利用できるものがない?
いいや、武器ならそこら中にある
攻撃してきた敵の銛を掴んで体ごと振り回し、他の敵に叩きつける
直接尾鰭を掴んでもいいけどな
最初に言った通り、逃がさないように気を付けよう
不利を悟って逃げる素振りを見せる奴がいたら、そいつを優先して倒すぞ
「赤煙、回り込んで奴の動きを止めろ」
怒涛の如く、とは正にこの光景を言うのだろう。
復讐者たちの猛攻に晒されたウェパルの群れは、早々に劣勢に追い込まれつつあった。
海の上と下から攻められ続け、パラドクスを浴びるたびに悪魔が海の藻屑となって消えていく。対する復讐者は戦闘不能者どころか、傷を負っている者さえ殆どいない。ガードアップやグロリアスを始め、豊富な残留効果によって大幅に力を増しているからだ。
戦いの帰趨はもはや明白だった。勝つか負けるかではない、いかに早く、いかに少ないダメージで勝つか――復讐者の戦いは、既にそうした局面へと移り始めていたのである。
「よーし、避難は完了! 後はアークデーモンをやっつけるだけだね!」
戦場で駆けつけると同時、ハニエル・フェニックス(第七の天使・g00897)は自信満々の表情で宣言した。
見澄ました先、ウェパルの群れは今や大混乱に陥っている。先行チームの襲撃によって陣形は崩壊し、海の中と底を問わず討ち取られて漂う悪魔たちの死骸は、戦の激しさを物語るものだ。ウェパル側の劣勢は、もはや傍目にも明らかだった。ここで追撃をかければ、復讐者側の勝利は盤石となるだろう。
ハニエルは戦場を海中に選択し、水中適応を発動。西堂・千衛蔵(竜燈鬼・g01901)と共に攻撃の準備を完了する。
「先に行くためにも、前座はちゃちゃっと全員ぶっ飛ばすよ!」
「そうだな。奴等の力は危険すぎる。一体でも生き残って、また村を狙われるのだけは御免被るからな!」
ハニエルの決意に、千衛蔵は力強い頷きをもって返した。
悪魔どもが生きている限り、悲劇は幾度でも繰り返される。それを許す気など千衛蔵にはない。
何より彼は約束したのだ。悪魔どもは自分たちが滅ぼすと。だからこそ彼は今、こうして戦場に立っている。
「聞け、アークデーモンども! お前たちがゆっくり来たお陰で、こっちは十分に時間が取れたぞ!」
ウェパルの群れへ、千衛蔵は胸を張って大喝した。
村人は一人残らず自分たちが逃がした。悔しかったら俺たちを畏怖させてみろ――と。
「弱い者いじめしかできない奴らには、どうせ無理だろうがな! さあ、かかって来い!」
啖呵を交えた挑発が、ソラ島の海に響き渡る。
瞬時に水中適応を発動した千衛蔵は、余裕を見せつけるようにウェパルの前で堂々と飛び込むと、ハニエルともども海中に潜っていく。対するウェパルたちも銛を構えながら身を躍らせ、標的と定めた二人をつけ狙う。
復讐者とウェパル、両者のパラドクスが海中を舞台に冷たい火花を散らし始めた。
(「片っ端からやっつけて、先に行かせてもらうよ!」)
戦闘開始と同時、目も眩むような閃光が海中を照らす。
其れは、ハニエルの両掌から生じたパラドクスの光だ。銛を構えて迫り来るウェパルの群れをハニエルは狙い定め、一気に距離を縮めていく。スイム用ウェアを着用した泳ぎは、人魚の悪魔に引けを取らぬ程に速い。
(「銛で傷ついたら、3日以内に倒さないと死んじゃうって話だけど……その分やる気が出るってもんだよね!」)
両掌に生成した光を刃に変えて、ハニエルはウェパルたちを睨みつけた。
悪魔たちが振るうカースハープーンは、リーチにも優れる武器だ。間合いの概念が意味を為さない逆説連鎖戦においても、遣り難いことには変わりない――そう、ハニエルは見立てている。
敵は銛、此方は剣。そのリーチ差を埋める為に彼女が下した判断は至ってシンプルだった。
(「光の剣で、やっつける! ざぁぁぁん!」)
野球のピッチャーめいたフォームを取り、勢いを乗せて手を振るうハニエル。同時、掌に生成した二振りの刃がブーメランめいて投擲されていく。
剣戟から投擲まで、幅広いリーチに対応できるパラドクス――それがハニエルの『エンジェリック・ザン!』だ。放たれた刃は回転の勢いを増しながら自由自在な軌道を描いて、銛を構えたウェパルたちの眉間と心臓に次々と突き刺さる。断末魔の絶叫を示すように、血の混じった大きな泡が悪魔たちの口からゴポリと漏れた。
『……――!』
投擲された光刃が二体のウェパルを葬り去ると、ハニエルの両手にはもう新たな光刃が生み出されていた。
間合いは勿論、残弾という概念すらないのが逆説連鎖戦。ダブルの効果で時の流れを加速させ、猛攻は尚も止まらない。
(「私の剣は投げてもまた作っちゃえばいいからね、結構便利でしょ!」)
『……!!』
対するウェパルも、負けじと銛を振るう。
鋭い切先はハニエルの体を切り裂いて、水中を薄らと血の色が染めた。だが、元よりそんな攻撃に怯むハニエルではない。闘争心を燃え立たせ、銛を振るったウェパルへ刃を突きつける。
(「蛆が湧いて死ぬとか死んでも嫌だし、何としてでもやっつけてやる!」)
お前たちアークデーモンは一体たりとも残さない。
そんな激しい怒りを胸に振るうハニエルの刃は、ますます勢いを増してウェパルたちを切り刻んでいった。
一方、同じ戦場で、千衛蔵もまたウェパルと戦いの火花を散らしていた。
ウェパルの攻撃は執拗で、銛を構えてどこまでも狙って来る。その数は片手で数えられる程度で、海上付近には未だ護衛の為の戦力が残っている状態だ。
(「……思ったよりも、追って来る敵が少ないな。フォルネウスの護りを優先したか」)
微塵も揺るがぬ冷静さで、敵の動きをそう分析する。
ウェパルたちに知性が残っているか否かは不明だが、少なくともジェネラル級の護衛を完全放棄して仕掛けて来るほど愚かではないということだろう。
挑発は不発だったが、ある程度の頭数を切り離せたのも事実。ならばと千衛蔵は身を翻し、すぐさま攻撃に転じた。
(「仕掛けるぞ。赤煙、逃げる敵が居たら回り込んで動きを止めろ」)
ミニドラゴンに指示を出し、両手を広げる千衛蔵。
同時、一際大きな海流が戦場をゴウと荒れ狂う。『ストリートストライク』のパラドクスが時空を書き換えているのだ。
使い手にもたらす幸運と閃きをもって、戦場の手頃な物体を武器に攻撃を行う能力――果たして其の力に違わず、千衛蔵の手には、海流で流されてきた『あるモノ』が収まる。
棍棒のような大きさと重量、鞭の如き柔軟性を兼ね備えた武器。即ち、ハニエルが討ったウェパルの死骸であった。
『――!!』
(「さあ、覚悟は良いか!」)
驚愕によって僅かに鈍るウェパルの動き。その刹那を千衛蔵は見逃さない。
得物と化した死骸がブンと音を立てて、恐るべき勢いで襲い掛かった。
尾鰭を大剣の柄よろしく握りしめて振るう一撃が、千衛蔵の膂力に重さと勢いを乗せてウェパルの顔面に直撃。同胞の後を追うように息絶えた一体の尾鰭を千衛蔵は更に掴み、二刀流のごとく振り回し始めた。渾身の力で叩きつけるフルスイングに全身の骨を叩き潰され、二体目が絶命する。
千衛蔵とハニエルの猛攻は留まるところを知らず、襲い来る悪魔たちを残らず捉え、打ち砕き、切り刻んでいった。
「どうやら、水中の敵は粗方片付けたようだな。戻って来い、赤煙!」
「銛の傷の方も、心配いらないね。敵も結構粘ったけど、それももう終わりだよ!」
程なくして海中のウェパルを片付けた二人が浮上すると、もはや戦場に敵は両手で数えられる程度にまで減っていた。
戦況を覆す力も失い、フォルネウスの前で次々討ち取られていくウェパルたち。ジェネラル級を護衛するトループス級との戦いは、いよいよ決着を迎えようとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【温熱適応】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
マユラ・テイル
さてと、それではケリを付けに行って来るかのう
悪魔は居らんようになると言うたんじゃ、約束は守らなければの
戦場は海上か、確かに島から少しでも離れた方が良いからのう
ま、先ずは確実に取り巻きから始末するのじゃ
水面走行は借りさせて貰うとしよう
駆け出し、奴等の居る所へと向かうかの
冥海機からも見捨てられた島……か
でぃゔぃじょんでありながら、ある意味本来の人らしい生活を営む稀有な島じゃ
さっさとこ奴等を排除して、安心させてやりたいもんじゃの
魔力よ、妾の前に爆炎を
さあ、人魚の悪魔よしっかり火を通してやろう
爆炎爪!
海上に出てきた敵を探し、接近して両手の鉤爪で斬り裂き燃やす!
……悪いが流石に焼き魚として食べる気は無いのでの
燃やし尽くして、海の藻屑としてくれようぞ!
奴の銛の攻撃は攻撃を良く見て、足や胴を貫かれる等
後の行動に支障が出ないよう、受ける場所を逸らして耐えるかの
なあに、3日で死に至るというのなら逆に3日は大丈夫という事じゃ
汝らは今此処で倒れる、恐れる必要など何処にあろうか
連携アドリブ歓迎じゃ
呉守・晶
アドリブ歓迎
遅参すまねぇな。とはいえ、こっからが本番か?
間に合ってよかったぜ。遅れた分はしっかりは働かせてもらうからよ
ジェネラル級のフォルネウスが弱体化したんだ、トループス級のウェパル達はどうなんだ?
こっちも知能失われてんのかね?
その方が楽ではあるが、まぁどっちだろうとやることは変わらねぇな!
まずは邪魔になる護衛のこいつらを片付けるぞ
……ウェパルも知能失われてたとして、それでも護衛として付き従ってるのなら上位階級に従うクロノヴェーダの本能故ってことか?
【水面歩行】で海に出て迎え撃つぞ!
相変わらず、呪いが悠長に過ぎるんだよ。テメェらを斃すのに3日もいらねぇよ!
まぁそもそも、その銛で傷つけられなきゃいいだけの話だがな
ブラスフェミースラッジで無数の赤黒い液体の剣を飛ばして、銛の間合いの外から串刺しにしてやる!
さて、こいつはフォルネウスと同じ境界の守護者だったマスターテリオンが元になったパラドクスだが……まぁこれを見ても反応する知性なんか残っちゃいねぇよなぁ
これが片付けば後はフォルネウスか……
ソラ島の海上、復讐者の襲撃と共に幕を開けた死闘は早くも決着を迎えようとしていた。
フォルネウスを護衛する『人魚の悪魔ウェパル』たちは悉く討ち取られ、もはや両手で数えられる程度を残すのみ。如何に死力を尽くそうとも、この戦況が覆ることは最早ない。
為す術なく海の藻屑となって消えること――それが、未だ抵抗を続けるウェパルたちに許された全てだった。
そんな戦場へ今まさに駆けつけた復讐者が、二人。
マユラ・テイル(みすてりあすじゃ・g05505)と呉守・晶(TSデーモン・g04119)――若き少女たちはクロノヴェーダへの復讐心を胸に、ソラ島の海を踏みしめて最後の襲撃を開始する。
「悪魔は居らんようになると言うたんじゃ。約束を守る為にも、ケリはつけねばの!」
水面走行の発動によって、海はぴたりと凪いでいた。
硝子の床のように綺麗な平面を保つ水面を進みながら、マユラはふと足元を見下ろす。
透き通った海の青さは、飛翔しているような錯覚を一瞬覚えるほどだ。マユラたちが逃がした村人たちは、この美しい海に囲まれた島で、冥海機に脅かされることのない静かな暮らしを営んで来たのだろう。フォルネウスとウェパルたちが此の地に出現するまでは。
(「きっと……でぃゔぃじょんでありながら、ある意味本来の人らしい生活を営む稀有な島だったんじゃろうな」)
なればこそ、あの悪魔たちを許す訳にはいかない。
赤い双眸に宿す怒りが溢れ出すかのように、紅蓮の炎がマユラの全身から溢れ出す。業炎に照らされ輝くのは、両腕に装着した鉤爪だ。その得物は、小さな少女の身体には不釣り合いなほどに無骨で厳めしい。
「此処で止まる訳にはいかぬ。人魚共を片付ければ、後はふぉるねうすを残すのみじゃ!」
「だな。ちょいと遅れちまったが本番はこっからだ、遅れた分しっかり働かせてもらうぜ!」
晶もまた、内に秘めた闘争心を極限まで滾らせながら、狂暴な笑みを浮かべて言う。
周囲を侍るように漂う赤黒い液体は、目の前の悪魔たちに抱く彼女の復讐心が具現化したものだ。対するウェパルもまた、そんな晶を主には近づけまいと、銛を構えて迎撃態勢を取る。
『シイィィィッ!』
「この期に及んでまだ足掻く気か。いいぜ、全力で叩き潰してやるよ」
フォルネウスと同様に、ウェパルたちも弱体化しているのか否か――そんな疑問が晶の脳裏を一瞬よぎったが、彼女はすぐに疑問を振り捨てた。もはやトループス級の撃破は確定的であり、どちらであろうと大差はない。
今は意識を戦闘に注ぐ時だ。それが終われば、次はいよいよフォルネウスとの決戦が待っている。
「行くぜ! 護衛どもを片付ける!」
「うむ、一体も逃がさぬのじゃ!」
晶が高らかに宣言し、対ウェパル最後の攻撃が開始される。
疾駆していく二人の復讐者たち。それを迎え撃つのは、人魚たちの鋭い銛の切先であった。
「魔力よ、妾の前に爆炎を!」
水面から銛を構えるウェパルの群れを狙い、マユラは両腕を天高く掲げた。
同時、全身から溢れる炎が両腕の鉤爪を覆う。鉤爪の斬撃と業炎の燃焼を組み合わせた『爆炎爪』のパラドクスだ。水面を軽やかな足取りで蹴って敵群に肉薄するマユラ。鉤爪が真っ赤な二つの尾を引いて、ウェパルに猛然と食らいつく。
「さあ、人魚の悪魔よ。しっかり火を通してやろう!」
魔力でブーストされた肉体が、砲弾めいてウェパルの群れへと突っ込んだ。
ダメージアップを乗せて振るう爆炎爪は炎の嵐さながら、捉えた悪魔を片っ端から切り刻み、焼いていく。
元より数を減らした敵の群れに、複数の敵を纏めて攻撃することに適したパラドクスの直撃である。水面を踊るようにして放つマユラの斬撃を浴びたウェパルたちは全身を焼かれ、たちまち二体が消し炭と化した。周囲に漂う肉と髪の焦げる悪臭に眉を顰め、マユラは次なる一体へ襲い掛かる。
「悪いが流石に焼き魚として食べる気は無いのでの。燃やし尽くして、海の藻屑としてくれようぞ!」
『ガアアアッ!』
跳躍からの錐揉み回転で叩きつける横薙ぎの鉤爪が、ウェパルの構える銛を打ち払った。
次の瞬間、続けて薙ぎ払う炎の斬撃が、ウェパルの顔面に直撃。そのまま全身を焼き焦がし、三つ目の消し炭に変える。
息つく間もなく放たれる銛は、しかしアヴォイドの幸運によって鉤爪に止められ、そのまま無慈悲にも弾かれた。マユラはふんと鼻を鳴らし、告げる。
「3日だろうが3時間だろうが同じこと。汝らは今此処で倒れる、恐れる必要など何処にあろうか」
「そういうこった。相変わらず、呪いが悠長に過ぎるんだよ!」
もはや群れとも言えぬ程に数を減らしたウェパルを睨み、晶は吼えた。
そして、世界の理をパラドクスで書き換えると同時、周りに展開された液体が次々と脈動を開始する。復讐心を具現化した液体を武器に変える『ブラスフェミースラッジ』。その力で生成されたのは鋭い剣の群れだ。真っ赤な剣は晶の意思によって次々と回転し、その切先を一斉にウェパルへ突きつけた。
「テメェらを斃すのに3日もいらねぇよ! 片っ端から串刺しにしてやる!!」
剣の群れが一斉にググッと鈍い音を立てて、弓弦に番った矢のごとく引き絞られていく。
僅かに生き残ったウェパルたちの、頭と心臓と狙い定めて。
そして、晶が手を振り下ろすと同時――剣が、一斉に放たれた。
「これで終わりだ!」
ヒュン、と空気を切る音が響く。直後、放たれるのはパラドクスで生成された赤黒い剣の群れ。
復讐の念を具現化した剣群はウェパルの群れに一切の反撃を許すこと無く、その全身を断ち割り、貫き、切り刻み、捉えた標的のことごとくを肉塊に変えていく。
そうして晶の剣が残った全てのウェパルを葬り去れば、ソラ島の海に残るアークデーモンは、ただ一体のみ。
「トループス級は全て片付いたかの。後は、いよいよ大将との決戦じゃな」
「ああ、これで残るは奴だけだ。……覚悟してもらうぜ、フォルネウス!」
マユラと晶、そして戦場に居る復讐者たちの視線が、前方の彼方に向けられる。
ウェパルの死骸が浮かぶ先、トループスの血で染まった海を泳ぐのは美女の上半身を持つ大鮫のアークデーモンだ。
海魔将フォルネウス――かつて千葉と東京の境界において復讐者が遭遇したジェネラル級。《七曜の戦》の後、ヤ・ウマトに逃れた悪魔へ、ついに引導を渡す時が来た瞬間だった。
『オオオオオオォォォォ……!!』
空気を震わす悍ましい雄叫びが、ソラ島の全土を包むように轟く。
怒り、無念、憎悪、そして未だ満たされぬ畏怖への渇望。知性を失ってなお魂に残る執念が、フォルネウスの濁りきった瞳に滲んでいた。この悪魔は未だ勝負を捨てず、失われた力を取り戻す気なのだ。復讐者も、島民たちも、目に映る全てを喰い殺すことによって。
だが、そんな危機を前に復讐者たちは怯まない。
エゼキエル戦争を逃れた悪魔を討ち取る機会も、島の人々の命も、何ひとつ零す気はない。
かくして――復讐者とフォルネウスの決戦が、今ここに幕を開ける!
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】がLV3になった!
【水面走行】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
ラキア・ムーン
色々と任せてしまったな…
だが、そのお陰で後はフォルネウスを打倒するだけの状況に持ち込めた
かつての境界の守護者、弱体化したがそれでもジェネラル級だ
安心は出来んな
得られた機会は確実に利用する
此処で決着を付けよう、フォルネウス!
水面走行で水上を駆け戦場へ
動きの遅れた分は働きで返すさ
《RE》Incarnationを構えて戦闘態勢
フォルネウスの動きを良く見て、攻撃タイミングを計ろう
側面に回る様に位置取り、『突撃』
【Call:Breaker_Lance】起動
穂先を拡張、フォルネウスが近付いたら海を蹴り跳躍
そして跳躍し一気に飛翔で最大加速
そのまま高度を上げず加速した勢いを乗せた槍でフォルネウスを穿つ!
攻撃後即座に防御体勢
噛み付きも厄介だが……槍使いが敵の槍に負ける訳にはいかんからな
奴の槍の一撃を此方も槍で迎撃し、逸らす事に最大限注意を払おう
元より無傷で帰れるなど、思ってはいないさ
それに……貴様の恐怖へと抗う人が者が居る
彼らが根性を見せたんだ
私が簡単にやられたら……恰好悪いじゃないか!
アドリブ連携等歓迎
西堂・千衛蔵
アドリブ連携歓迎
遂に来やがったか
知能は下がったままのようだが、巨体と闘志は衰えず、か?
奴も命が懸かっていて後に引けないんだろうが、こっちも戦う力の無い者の命を背負った以上、引きはしないぜ
それに、一人で戦う訳じゃないしな
「年貢の納め時だ、海魔将!」
空舞破衝撃の効果で一時的に巨大化した赤煙に乗って、突撃する
これでとりあえず体重は互角だ
普段ならすれ違いざまに攻撃するんだが、今回は鮫の顔に体当たりする
噛みつかれても、パラドクスの勢いのまま止まらずに押し込んで敵の体勢を崩そう
「そのまま! もうちょっと耐えてくれ相棒!」
本当の狙いは奴の人型の上半身(?)だ
あるいは鮫の方が本体かも知れないが、全く効果なしってこともないだろう
赤煙の背中から【飛翔】で飛び出して更に加速しつつ、バトルオーラの紫煙と鬼火で拳の射程を伸ばして、敵の槍が届くより先に一発喰らわしてやる
どの道「捨て身の一撃」になるのは覚悟の上だ
余計なことは考えずに全力で拳を打ち込むぜ
冥海機ヤ・ウマト、ソラ島の海原。
畏怖を奪おうと襲来した海魔将フォルネウスは全ての部下を失い、今や復讐者に討たれる側の立場となっていた。
『グオオオオオァァァァァァァッ!!』
悪魔の咆哮が、戦場の空気を震わせる。
肌を叩くほどの重圧を帯びる咆哮に込めた感情は、怒りと憎悪。生贄を喰い殺し、村人から畏怖を奪い、かつての力を取り戻す――その機会を永久に奪った復讐者たちへの、尽きることの無い殺意である。
「ついに決着の時が来たな。海魔将フォルネウス!」
そんな敵を正面から見遣り、ラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)は決意を秘めた声で告げる。
彼女はまさに今、水面走行を駆使し、仲間たちの元へ参じたところであった。
「色々と任せてしまい、済まなかった。遅れた分は働きで返させて貰おう」
「なに、気にする必要はないぜ。こっちこそ宜しく頼む!」
西堂・千衛蔵(竜燈鬼・g01901)が力強い頷きをもって微笑んだ。
これはジェネラル級との決戦であり、本作戦の天王山。共に戦う仲間は多ければ多いほど心強い。
そうして千衛蔵とラキアが見澄ました先では、フォルネウスの下半身――獰猛な大鮫が、二人を喰い殺さんばかりの形相でガチガチと牙を打ち鳴らしていた。
『グオオオオオァァァァッ!!』
悍ましい雄叫びを上げ、大鮫の歯列が不気味に光る。
生贄を喰らい、罪なき島民に恐怖を植え付けた牙。それを残らず砕かんとばかり、ラキアは突撃槍の《RE》Incarnationの穂先を突きつける。
「弱体化したとはいえジェネラル級のアークデーモンだ。ここで確実に仕留めねば」
「ああ。知能は下がったままでも、巨体と闘志は衰えずか……厄介な相手だが、やるしかないな」
紫煙のオーラを拳に纏わせ、千衛蔵は気を引き締めた。
復讐者にもフォルネウスにも退く意思はない。この戦いに決着をつけるのは、いずれかの『死』だけだ。
「……始めるぞ。島民たちとの約束を果たす為に」
「そして、アークデーモンを滅ぼす為に!」
二人が凝視する先、悪魔の上半身たる美女が三叉槍を構える。
大鮫の放つ悍ましい咆哮が、決戦の開始を告げた。
千衛蔵とラキア、復讐者の先鋒を務める二人が水面を疾駆していく。
対するフォルネウスは殺意を帯びた視線で彼らを睨み、真っ直ぐに向かって来た。復讐者たちが自分を本気で仕留めに来ていることを本能で感じ取ったのだろう。
「たとえジェネラル級だろうと、退く訳にはいかん。此処で討たせて貰う!」
ラキアは疾駆の速度を上げながら、世界の理をパラドクスで書き換え始めた。荒れ狂う風と燃え盛る炎、そのふたつが螺旋の軌跡を描きながら《RE》Incarnationの穂先に宿っていく。
同時、千衛蔵はパラドクスで巨大化した赤煙の背中に跨ると、先陣を切るように突撃。オーラで包んだ拳をフォルネウスに向けて吼えた。
「年貢の納め時だ、海魔将ッ!!」
『グオオオッ!!』
ナイフのように鋭い牙を覗かせてフォルネウスが迫る。
あの大口に囚われれば鋭利な噛みつきと化物じみた咬合力で跡形も残るまい。だが、まさにその口めがけて千衛蔵と赤煙はなおも突撃して行く。水面を滑るようにして突っ込んで来る大鮫の顔面に、体当たりをかますように。
「噛みつき程度で止められると思うなよ。ラキア、先に仕掛けるぜ!」
「承知した!」
ラキアは頷くと、迂回の軌道を取ってフォルネウスの側面にポジションを移動する。
「こちらは何時でも行ける。存分に食らわせてやれ!」
「応! 滾れ、滾れ、強壮なる竜の血よ! 今一度その背に空を斬る力を!」
パラドクスの力で駆ける赤煙の突撃は、大鮫だろうと逃がすことは無い。
『空舞破衝撃』発動。赤煙と大鮫、両者の巨体が交差する刹那、すれ違いざまに千衛蔵の鉄拳が唸る。紫煙のオーラを帯びた渾身の一撃が鬼人の膂力を乗せ、フォルネウスの上半身たる美女の顔面めがけて――!
「ぬんっ!!」
命中アップの光に導かれた拳が、美女の顔面に直撃する。
意識を赤煙に向けた敵の虚を突く一撃は、一切のガードを許さない。フォルネウスは全身を激痛に悶えさせながら、反撃で即座に突進。鋭牙の咬合と三叉槍の刺突をもって粉砕せんと千衛蔵に喰らいついた。
「……っ!」
激突の衝撃と同時、千衛蔵が赤煙もろとも海中に引きずり込まれた。
即座に水中適応で呼吸を確保し、ガードアップを発動。硬化した身体で牙と槍の猛攻を防ぎながら、鉄拳に鬼火のオーラを纏わせる。
(「そのまま! もうちょっと耐えてくれ相棒……!」)
悲鳴を上げる肉体を叱咤し、大鮫と格闘する赤煙を励まし、千衛蔵は拳を握りしめた。
力を失って尚、フォルネウスの気迫は侮れないものがある。後には退けないことを本能的に察しているのだろう。
(「とはいえ、こっちも戦う力の無い者の命を背負ってるんでな。それに……」)
赤煙に跨ったまま、千衛蔵はふたたび空舞破衝撃を発動した。
ダブルで加速した時間に乗って水中を突撃しながら、鬼火のオーラを宿した鉄拳をまたも美女の顔面に叩きつける。
二度の殴打を浴びて苦悶の呻きを漏らすフォルネウス。そうして放たれた反撃にも千衛蔵はなお倒れない。負傷など元より覚悟の上だった。保身を排した捨て身の突撃――それを千衛蔵が躊躇なく選べる理由は只一つ。
「貴様と違って……俺たちは、一人で戦う訳じゃない!」
海上に浮上して告げる千衛蔵を追うように、フォルネウスが海面を見上げて身を翻す。
次の刹那、その眼前に煌めいたのは、ラキアによって発動された『Call:Breaker_Lance』のパラドクスが生み出す光だ。
浮上せんと海面を仰ぐフォルネウスの眼前から、突撃槍を構えたラキアが一直線に迫る。海面を蹴って跳躍し、速度と重量を乗せた渾身の一撃をもって。
「廻り紡ぐは破壊者の槍……これで貫く!」
槍に宿した炎と風の魔力は、今やその力を最大限に高め、二重の螺旋を描きながらフォルネウスの守りを突き破った。
パラドクスを帯びた突撃は海中でも一切の威力を減じること無く、紅蓮の矢めいて大鮫の脳天へと突き刺さる。全てを穿つ巨大槍、その拡張した穂先に裂かれた大鮫の口から絶叫が木霊した。
『グ、ギャアアアァァァァァァ!!』
悶絶しながら海原に飛び出すフォルネウス。
ソラ島の海原に、悪魔の絶叫が屈辱を帯びて響き渡る。
それから幾度もの応酬を経て尚、ラキアと千衛蔵は倒れること無く戦い続けていた。
牙と槍に切られた傷口は血に染まり、浅からぬダメージも受けている。だが、そんな程度で戦意は挫けない。
「槍をつかう者として、負ける訳にはいかないからな」
ラキアは不敵に笑うと、頬の傷から伝う血を拭ってみせる。
負傷を覚悟で臨んでいるのは千衛蔵だけではない。ラキアにも退けない理由があった。
生贄を救う為に立ち上がった人々の勇気を、ラキアは心から尊いと思う。たとえパラドクスを使えなくとも強敵に抗う彼らの意思に、自分は報いたいと。
(「ここで、私が簡単にやられたら……恰好悪いじゃないか」)
無論、ラキアの正体を彼らは知らない。この地を去れば、ラキアのことも排斥力で記憶の彼方に埋もれるだろう。
だが、それで良いと彼女は思う。彼らの勇気に報いる為なら、この身が如何に傷つこうとも構わない。
「貴様の牙も槍も、すべて私たちが砕いてやる。覚悟するがいい!」
邪なるクロノヴェーダを葬り去るべく、ラキアと復讐者たちの猛攻はなおも激しさを増していった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【飛翔】LV2が発生!
効果2【命中アップ】がLV4になった!
ハニエル・フェニックス
すっごい声……弱体化して、護衛がいなくなってもまだまだやる気って感じだね。
でもこっちだって負けらんない。
たった今助けた皆を守って、キミを倒して、もう二度と生贄を捧げるなんてさせないんだから!
行くぞぉーっ!
気合いを入れたら今回も水中適応。
泳いで水中から攻めよう。
今回狙うのは下のサメの方!
敵のその部位は結構大きいし、私の矢は誘導弾でもある。
つまり良い感じに当てやすい、って事!
向こうが攻撃するのに大口開けるならそこも狙ってやれ!
サメの巨体に比べれば小さな矢だけど、体の中に撃ち込まれたら結構痛いはず!
聖なる力の籠もった銀の矢で、紫のブレスだって射抜いてやるもんね!
その分サメの攻撃ももらっちゃうけど、そこはオーラを使って和らげる。
装備だけならともかく、体を腐食されるのはできたら避けたいなぁ……!ってちょっと嫌な気持ちはあるけど、そこはぐっと我慢。
出来る限り戦場に留まって、その牙よりいっぱい矢を撃ち込んでやるんだから!
篠村・蓮十郎
その執念は見上げたものだが……もう十分だろう。
殺戮を続ける貴様を、これ以上野放しには出来ん。ここで叩き潰させてもらうぞ。
水面走行を用いて海上から攻め込む
奴が理性を失っている以上、単純な思考で動く筈だ
中距離に陣取り、腕部内蔵型軽機関銃で制圧射撃を敢行し
あえて単調な動きを取る事で隙を見せ、突進を待つ
兆しが見え次第こちらも仕掛ける
フォルネウスを観察し、彼我の距離と突進の速度から動くべき機を見極める
狙うは喰らい付かんと口を広げたその瞬間
前方へ踏み込み虚を突き、噛み付きの拍子を狂わせよう
続けて側面へダッシュで回り込み攻勢に出る
踏み込みの勢いを乗せつつ上半身を捻り力を溜め、鮫の横面へ[肋砕]を放つ
殴り付けただけでは終わらんぞ
振り抜き——打ち抜く!!
攻撃後は壱號機械腕を前面、皮鉄を上方へ構え
噛み付きと槍への備えとする
どちらも受け止めるには不適だな
被弾の瞬間に防御の角度を変える早業を以て受け流しを試みよう
パラドクスの荒れ狂う海が、フォルネウスの血で染まる。
復讐者の攻撃で傷を負ってなお敵の戦意は健在だ。全身を血に染めて暴れ狂う様は、まさしく悪魔の二文字が相応しい。
その姿を島の者が見れば、恐怖のあまり立ち竦んでいただろう。
『オオオオオオオオオオオッ!!』
「すっごい声……弱体化して、護衛がいなくなってもまだまだやる気って感じだね」
空気を震わす咆哮に顔をしかめ、ハニエル・フェニックス(第七の天使・g00897)はフォルネウスを見遣った。
弱体化を克服する畏怖を得られなかったとはいえ、その実力は腐ってもジェネラル級だ。鮫型の下半身も美女の上半身も、その眼には爛々と輝く狂気が宿っている。邪魔する者を喰い殺し、かつての力を取り戻す――揺らぐことのない凶悪な意思がそこにはあった。
「その執念は見上げたものだが……もう十分だろう」
篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)はフォルネウスに鋭い視線を向けながら、告げる。
「殺戮を続ける貴様を、これ以上野放しには出来ん。ここで叩き潰させてもらうぞ」
「そうだよ。こっちだって負けらんない」
フォルネウスを見遣るハニエルの眼に、決意の炎が灯った。
彼女は決めたのだ、助けた島民たちを守ると。目の前のアークデーモンを倒すと。そして、勝利の為なら自分の身が傷つこうとも構いはしないと。
この戦いに、撤退や引き分けという結果は存在しない。やるか、やられるか――その一点のみだ。
そしてハニエルにも蓮十郎にも、やられる気などは微塵も存在しない。
「生贄を捧げるなんてこと、もう二度とさせないんだから!」
決意の炎がパラドクスの輝きを帯びて、攻撃開始の合図と為った。
先鋒の戦闘とは打って変わり、ハニエルと蓮十郎が選んだのは間合いを開けての遠距離攻撃だった。
中距離には蓮十郎、ハニエルはその後方。初期の立ち位置をそう定め、二人はフォルネウスに攻撃を開始する。
「準備オッケー! 行けるよ!」
「では始めるか。予定通り、このまま水上から攻めさせて貰う」
軽快な銃声が絶え間なく戦場に響く。音の源は、蓮十郎の腕部内蔵型軽機関銃が行う制圧射撃だ。
弾丸の生んだ水柱が次々と海に立ち上り、蛇行の軌跡を描きながらフォルネウスを挑発するように迫る。水面走行を発動しつつ、牽制の射撃を浴びせる蓮十郎。一方のハニエルは水中適応を発動、海の中へ潜行していく。
「私は水中から攻めるね! 行くぞぉーっ!」
水上と水中、二つのエリアから連携して攻める――これが二人の作戦だ。
対するフォルネウスはいまだ動きを見せない。端から見れば蓮十郎とハニエルのどちらを襲うかは五分と考えるだろう。
だがこの時、蓮十郎は確信していた。フォルネウスは間違いなく自分を先に狙うであろうことを。
(「知性も理性も失っている以上、奴は高度な思考では動けん筈だ。となれば――」)
彼我の距離が近く、牽制攻撃を取っている自分を最初の標的にする可能性が高い。
そんな予感は果たして的中し、フォルネウスの狙いは水上へと向いた。海上に身を乗り出した鮫と美女が蓮十郎を狙う。
煩い復讐者を噛み砕こうと、大きな口を開けて迫るフォルネウス。だが次の瞬間、もう蓮十郎は水面を蹴っていた。
タッ、タタタタタッ。
それは、あまりに静かで、あまりに軽やかな動きだった。
蓮十郎の頑健な肉体からは一見想像も出来ないような機敏さをもって、瞬時に彼我の間合いが詰まる。遠距離と思った相手の突如の肉薄――予想だにせぬ行動に虚を突かれ、フォルネウスが槍を構えた次の瞬間。
視界から、蓮十郎が消えた。
『――!?』
「ここだ」
声が飛んだのは、真横である。
フォルネウスが咄嗟に槍を向けるより早く、蓮十郎の義手が弧を描いて鮫の巨体にめり込む。
対象の懐へ踏み込み、拳打ちを浴びせる『肋砕』のパラドクスだ。踏み込みの勢いを乗せて、限界まで捻った上半身を鞭の如くしならせて、遠心力を込めた一撃はフォルネウスの横面を正確に射抜き、そして、
「振り抜き――打ち抜く!!」
『グアアアァッ!!』
命中アップで狙い済ました渾身の拳打が、破城槌めいた衝撃を伴いながらフォルネウスの巨体を吹き飛ばした。
身体の骨を砕かれた大鮫が、苦悶の叫びを上げて水上を滑る。反撃に失敗した無念を晴らさんと、大口を開けながら攻撃の機を伺うフォルネウス。対する蓮十郎は緊急時のガード用に壱號機械腕を構えながら、足元を踵でそっと叩いた。
「よし……そろそろだ」
踵から生じた波紋が、凪いだ海面に生じる。
それは海中に潜行したハニエルに送る、攻撃開始のチャンスを伝える合図だ。
果たして海中からそれを察したハニエルは、気配を殺しながら静かに弓を引き絞り始めた。番えるのは誘導性能を持つ矢。狙う先はフォルネウスの下半身――蓮十郎を噛み砕かんと狙う大鮫である。
(「絶対に、絶対に当てて見せるから……!」)
ハニエルが見上げた先、水上では蓮十郎ににじり寄るフォルネウスの姿が見えた。
その動きは先程よりも用心深く慎重だ。射撃からの接近攻撃という形で蓮十郎の不意打ちを喰らった所為だろう。ハニエルは逸る心を宥めながら、矢をゆっくりと引き絞っていく。
聖なる力を込めたオーラで生成した矢の狙う先には、今や命中アップの効果によって、光輝く線が鮮明に示されていた。
限界まで引き絞られ、そして――次の瞬間。ハニエルのパラドクスが矢に宿り、フォルネウスへ放たれる。
(「射抜いてみせるよ、キミのハート!」)
エンジェル・ムーンの弓弦から、光に導かれた矢が恐るべき速度を帯びて、水上へと飛び出した。
蓮十郎の背後から突如飛び出した矢は水面で直角に向きを変え、正面のフォルネウスに飛んで行く。悪しき心を射抜く銀色の矢、『ホーリー・シルバー・エンジェリック・アロー』。パラドクスで誘導性能を帯びた矢がハニエルの意思に従い、銃弾の如き速度と威力を帯びて迫る。蓮十郎を噛み砕こうと開かれた、大鮫の口めがけて――!
(「いっけえええええ!」)
『ガッ!? ゴアアアァァァァァッ!!』
光り輝く矢は、フォルネウスの口内を突き抜け、喉を貫き、体内の器官を滅茶苦茶に破壊する。
大口から腐食のブレスに代わって吐き出されたのは夥しい血だ。口を真っ赤に染めてのたうち回るフォルネウスの絶叫は、ハニエルと蓮十郎、そして復讐者たちが着実に悪魔を負い詰めつつあることを雄弁に物語っていた。
(「小さいからって、甘く見ないでね!」)
悶絶する巨体を見上げながら、ハニエルは胸を張って言う。
(「いくら来たって負けないよ。その牙よりいっぱい、矢を撃ち込んでやるんだから!」)
簡単に折れる一本の矢も、束ねれば侮れぬ強さを得る。矢だけではない、それはハニエルたち復讐者も同じこと。
それを示すように、今、新たな復讐者たちが正に矢のごとくフォルネウスへ襲い掛かっていく。
エゼキエルを逃れ、ヤ・ウマトに漂着し、なおも災厄を撒き散らすアークデーモンを、ここで葬り去る為に――!
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【寒冷適応】LV1が発生!
【怪力無双】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【能力値アップ】がLV3になった!
白石・明日香
効果2はすべて使用。
正気を失っているのなら周囲の状況を聴いても無駄か・・・なら、なおさら倒さないとね。
【水面走行】を使って残像で攪乱しながらダッシュで接近。精神集中しなが
ら噛みつきを見切って躱し繰り出される槍は結界術で耐え間合いに入り込み
威力重視で武器改造して早業呪詛、捨て身の一撃で解体してあげる!
何で正気を失って誰も迎えに来ないのか分からないけど貴方はここで終わりよ!
ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に
……これがマスターテリオンと同じ元境界守護者、ねえ
諸行無常というべきか。敵とはいえちょっと見ていられない
死と畏怖を積み上げ、力を取り戻される前にやっつけちゃおう
“魔槍”を手に、海中を進む
【パラドクス通信】は小声で利用しつつ
味方間でディフェンス・追撃など行いやすく包囲を整え討伐の助けとし
【水中適応】で水面下より進行
戦闘で生まれた波から波へと飛び移る【ジャンプ】だとか、
変わりゆく海をも庭とするような戦闘挙動で惑わしながら
時には【水面走行】へ切り替えて継戦する判断も頭に入れておこう
決戦兵器Ⅰ号(ファルス・ワン)、伝承、5種開放!
厳かな呟きに応じ、構えた槍頭の眼が剣呑な輝きを見せ
エゼキエルが生んだ業は、ここで輸出停止だっ!
戦闘機動が穂より漲るオーラが尾を引き戦場を彩るように
海に咲け!禍えり裂く赤棘の槍(ゲイ・ボルグ)ッ!
必殺の槍撃を放つ!
反撃の水流は無理に抗うよりは受け流す形がいいかな
Moon-Childを外骨格化させ衝撃に備えつつ、
流れが収まるまで確りと槍を手に我慢の子!
麗・まほろば
シャァァァク!
シャァァァァァァァク!
サメ語ならわかるかなって思ったけれどそんなわけないか!
知性も力も削がれたからと言って、油断してはいけない。
油虫(ゴキブリ)だって危険を感じたら羽根が使えるようになり、そして的確に弱いところをついて反撃や逃走をする。
知性がないことと、生存本能や戦闘能力が低いことはイコールではないってことだね! 油断せずに行くよ!
【水上走行】で海に立ち、【パラドクス通信】で皆と連携……いや、連携もしつつだけれどまずはヘイトコントロールをしようか!
【飛翔】!【避難勧告】!そして【大声】をあげながら接近して目立つ!
なんなら【13mmまほろば機銃】で威嚇射撃もしよう。アイテムによる射撃がダメージにならないことは分かっている、だけど皆の連携を取りやすくするためにまほろばがデコイを務めるよ!
突進や鉾による攻撃もあるだろう。それがかすり傷程度なら気にしない、直撃だけはなんとかギリギリで躱したいところだね!
そして改めて【水上走行】で体勢を整え直し、全門開花!
しずめ、クロノヴェーダ!!
ソラ島の海を舞台とした戦いの戦況は、もはや復讐者の優勢が明らかとなっていた。
力を失ったフォルネウスは、それを理解する知能も持たぬまま、本能のままに暴れ狂う。復讐者たちを皆殺しにして島民を喰らわねば力を取り戻す望みは叶わない。である以上、選択肢など端から存在しない。
そして、同時に――その望みを叶えさせる理由など、復讐者たちには存在しないのだ。
「シャァァァク! シャァァァァァァァク!」
『グシュルルルルルル!!』
「……んー。サメ語ならわかるかなって思ったけれど、そんなわけないか!」
可愛らしい咆哮をフォルネウスに向けながら、麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)が笑う。
かの悪魔が弱体化しているというのは、どうやら本当のことらしい。そうして自信を納得させながらも、彼女の瞳に油断の色は全く浮かんでいなかった。
「油虫だって危険を感じたら羽根を使うし、的確に弱いところをついて反撃や逃走だってするし……知性がないことと、生存本能が低いことはイコールではないってことだね! 油断せずに行くよ!」
「そうね。追い詰められれば、死に物狂いになってもおかしくないし」
着実に傷を増やしつつあるフォルネウスを前に、白石・明日香(弔いの狩人・g02194)が告げた。
フォルネウスの戦意はいまだ旺盛。しかし、それはもはや勝敗を覆しす脅威たり得ないことも明日香は承知している。
(「知性を失って、暴れるだけの怪物……なら、倒すしかないよね」)
人に害を為す獣は狩られるのが道理だ。それがクロノヴェーダのジェネラル級ともなれば、害の規模は天井知らずとなる。それを防ぐためにも、災いの芽は確実に摘まねばならなかった。
明日香はパラドクス通信機を手に取ると、海中のロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)に連絡を送る。
「こっちは準備オーケー。何時でも行けるからね」
「明日香さんはまほろばと一緒に水上! ロキシアさんは水中! 皆で連携すればジェネラル級も怖くないっ!」
「了解だよ、二人とも宜しく。……死と畏怖を積み上げ、力を取り戻される前にやっつけちゃおう」
魔槍を手に海中を進みながら、ロキシアが小声で言葉を返す。
彼が見上げた先には、海上を泳ぐフォルネウスの姿があった。水面下に晒した大鮫の下半身を見ただけでも、その全身は傷だらけで、追い詰められつつあることは一目瞭然であった。
「あれがマスターテリオンと同じ元境界守護者、ねえ……いやはや、諸行無常というべきか」
「ねー。残りの二体も、力とか無くしてるのかな」
ロキシアに相槌を打ちながら、明日香はいまだ消息の掴めない元境界守護者のジェネラル級たちを思い起こした。
サマエルとサキエル。あの連中は、どこで何をしているのか。漂着したディヴィジョンで現地のクロノヴェーダと合流し、人々を虐げているのか、それとも――。
「まあ、そっちを考えるのは後ね。まずはフォルネウスの撃破に集中しないと」
「そうだね。……あの有様は、敵とはいえちょっと見ていられない」
かつての威厳を失い、本能のままに暴れる獣と化したフォルネウスを見上げ、ロキシアは呟いた。
敵は知性を失い命を奪い続ける、災害に等しい存在だ。これ以上の災害をもたらす前に狩らねばならない。
魔槍を構え、深呼吸をひとつ。水上の二人に合図を送った。
「……じゃ、始めようか」
海の底を進みながら、ロキシアが魔槍の切先をフォルネウスに向ける。
息を合わせるように、明日香は水面走行を発動したまま海上を疾駆。狙い定める先、鮮血に染まった大鮫の悍ましい姿は、まるでホラー映画に出て来る怪物のようにも見えた。
「行くよ。――攻撃開始!」
明日香が言い終えると同時、まほろばの織りなす砲撃が、弾幕となってソラ島の海を覆う。
パラドクスを介さぬ攻撃は、その実、フォルネウスの気を引きつけることを意図したものだ。
「かかってこーいっ! シャァァァァァァァク!!」
弾幕に加えて、大声までも加えて挑発を浴びせるまほろば。その行動が今ひとつ効果を見せないことを理解すると、彼女はすぐにパラドクスを駆使する攻撃へと行動を切り替えた。
「むむむ、残念。これに引っかかるくらいの相手なら遣り易かったんだけど」
弱体化しているとはいえ、流石に敵もそこまで甘くは無いらしい。そう判断し、改めて気を引き締めるまほろばの隣では、明日香が先んじてパラドクスを発動。フォルネウス目掛けて疾駆していく。
「バラバラに解体してあげる!」
明日香がそう言って身体に妖刀『彼岸・此岸』を突き立てると、流れ出る血が刀身を覆い始めた。
戦いの知識を宿す血で武器を強化する『血の盟約』のパラドクスだ。ダメージアップの効果によって更なる凶悪さを増した斬撃は、残像を伴う明日香の加速によって不可視の刃と化して、フォルネウスの上半身たる美女を切り裂いていく。
速度を保ったまま、なおも撹乱するように斬撃を見舞い続ける明日香。その水面下、大鮫の腹を狙い定めながら、ロキシアは魔槍を握る手に力を込める。
「一接ぎのち咲き誇るは、紅い花――」
厳かな呟きと共に、決戦兵器Ⅰ号の力を開放すれば、魔槍の眼がギラリと剣呑に輝いた。同時、ロキシアの体を中心に展開されていくのは、パラドクスが因果律を書き換えていく光だ。彼が駆使する力、その名を――。
「海に咲け! 禍えり裂く赤棘の槍(ゲイ・ボルグ)ッ!」
持てる5種の機能を余さず解放し、ロキシアが水底を蹴ってフォルネウスめがけ突撃する。
繰り出す必殺の槍撃、穂より漲るオーラで尾を引いて描く軌道は、一筋の流星を思わせた。復讐心を込めて槍の刺突を放てば、穂先が大鮫の腹に深々と突き刺さる。溢れ出る夥しい血が、たちまち海を真っ赤に染めていった。
ロキシアと明日香、そしてまほろば。息を合わせた連続攻撃はフォルネウスを上から下から斬撃を見舞い続ける。
反撃で繰り出す噛みつきも、槍の刺突も、そして水流も、三人を止めるには至らず。怒りに燃える復讐者たちの猛攻は更に勢いを増していく。
『ギエエェァァァッッ!!』
「やっぱ、そう簡単にはやられないよね……でも、負けられないのはワタシたちも同じ!」
明日香とロキシア、水面を隔てて二人の刃が振るわれる度、フォルネウスの身体には深い傷が刻まれていった。
明日香は美女を間合いに捉えたまま、尚も残像を生みながら攻撃を続けている。その苛烈さたるや、フォルネウスにも全く引けを取らない。もしも眼前のアークデーモンに欠片ほどの知能でも残っていたら、その執念深さに舌を巻いたことは想像に難くなかった。
「エゼキエルが生んだ業は、ここで輸出停止だっ!」
フォルネウスが三叉槍から発射する水流を受け流しながら、ロキシアは尚も槍を振るい続ける。
外骨格化させたMoon-Childとガードアップによる肉体強化に守られ、彼の身体はいまださしたるダメージを負っていない。その戦いぶりは正に栄光の名にふさわしく、魔槍がフォルネウスを穿つたび、傷口はグロリアスの効果で塞がって行った。
『ギイィャァァァァアァァァァッ!!』
「うーん、うるさい。そろそろ黙って!」
まほろばは水上で態勢を整え直し、パラドクスを発動。『吾妻はや』で召喚した艦首をフォルネウスへと向けさせた。
今回の攻撃は、流石に挑発の言葉より効いたらしく、フォルネウスは大鮫の口を広げて攻撃態勢を取る。刹那、鮫の顔面を狙う砲塔が蕾のように開かれた。
「全門開花! しずめ、クロノヴェーダ!!」
超大口径の砲塔から、黒く輝くビームが照射される。
まほろばが発射した一撃は漆黒の槍にも似て、フォルネウスの上半身を穿ち、風穴を開けた。盛大に血を吐き出しながら、噛みつきと刺突の反撃を見舞うフォルネウス。明日香が駆使する幾度目かの『血の盟約』が振り下ろされたのは、まさにその瞬間であった。
「正気を失った理由も、誰も迎えに来ない理由も、ワタシたちには分からないけど……貴方はここで終わりよ!」
胴体を袈裟に斬り裂く一撃は、フォルネウスの上半身に深い傷を刻み、派手に血をしぶかせる。
繰り出す反撃の力はいよいよ弱い。エゼキエルを逃れた海魔将に引導を渡す時は、すでに目前まで迫っていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【断末魔動画】がLV2になった!
【浮遊】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【ガードアップ】がLV4になった!
松中・誠
ギリギリ間に合ったか。
…力を失い知性をなくし、それでもいまだ強大。
でも、あの日ほどの力もないか……悲しいんだぜぃ。
1年ぶりなんだぜぃ、フォルネウス。
前回はお前にやられたが、今度はそうはいかない。
…と言っても、わからないか。
【水面歩行】で海上に立って戦う。
来たれ報復からの、報復よ武装となれ。
…ん-。生身で使うのは負担が重い。
もちろん報復武装はメリケンサックの形状にする。
前回はその噛みつきで食いちぎられたけど、今度はそうはいかないんだぜぃ。
噛みつきも槍での攻撃も防御はするけど回避はしない。
受けたうえで、殴り返す。
ソラ島の海は濁った空気に覆われていた。
その源は、海魔将フォルネウスの全身から流れる血、そして溢れ出る殺気によるものだ。
体中を血に染め、生命力を削られていくフォルネウス。そこに境界の守護者であったかつての力は最早ない。
「ギリギリ間に合ったか。1年ぶりなんだぜぃ、フォルネウス」
そんなアークデーモンを前に、今、一人の復讐者が対峙していた。
松中・誠(ヤンキードラゴニアン・g03037)。かつて千葉県境界の海で、最初にフォルネウスと戦った男であった。
仲間を逃がすために殿を引き受けた時の記憶は、今も誠の記憶に鮮明に刻まれている。この礼は、いつか必ず――そうして訪れたのが、今日この場所だ。
「前回はお前にやられたが、今度はそうはいかない。……と言っても、わからないか」
もはや人語を解する知能さえ失い、咆哮を轟かせるだけのフォルネウスに、誠は微かな感傷を覚える。
あの日、一対一の戦いで自分を葬り去った力は、もはやこのアークデーモンには残っていないのだと。
(「全盛期の力は既に無い……けど、これも運命だぜぃ」)
自分は今日、この悪魔に引導を渡すためにここに来た。
参戦こそ他の仲間たちより遅れたが、その為の働きは此れから見せよう。
あの時と同じ1対1。戦いの続きがディヴィジョンを越えて――いま、幕を開ける。
「行くぜぃ。――来たれ報復よ、武装となれ!」
水面走行の力で、海面を誠が駆けていく。
発動するのは、招来した報復を武器化させる『報復武装化』のパラドクスだ。
形状はもちろんメリケンサック。重みを帯びた武装が、誠の利き腕にズシリと宿る。
「……んー。生身で使うのは負担が重い」
『グオォォォォォォァァァァァッ!!』
咆哮を上げて迫るフォルネウスに、誠は拳をグッと握りしめ、真正面から駆けて行く。
見る見る眼前に迫るのは、かつて己の腹を食い千切った大鮫の牙。誠の拳が、そこへブンと唸りを上げて食らいつく。
メリケンサックが悪魔の牙を砕き、そのまま顔面にめり込んだ。
「俺の報復、存分に味わうと良いぜぃ!」
血まみれの身体で海を泳ぎ、反撃で食らいつく大鮫の一撃を、誠はあえて腹で受ける。
ガードアップで硬化した肉体を捉えた鋭牙と、美女の刺突。かつて受けた一撃は、しかし誠の身体を食い千切るどころか、僅かに皮膚を切り裂くのが精々であった。
さして血も流れない傷跡に手を当てて、誠は悟る。――フォルネウスは、もう本当に後が無いのだ。
「今の拳は、この作戦の分。そして……こいつはエゼキエル境界で戦った時の分だぜぃ!」
同時、ダブルの効果が時間の流れを加速する。
心の底から溢れる復讐心が、ダメージアップの効果を帯びて、報復のメリケンサックに残らず宿る。そうして誠が渾身の力で叩き込むのは、目の前の悪魔への決別の一撃だ。
「お前は、此処で終わりだぜぃ。……あばよ、フォルネウス!」
『オオオオオオォォォォォォ!!』
大鮫の鼻を粉砕する、渾身のメリケンサック。
過去の因縁を打ち砕くように、悪魔の絶叫が木霊する――!
超成功🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【修復加速】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
弱体化したといっても相手はジェネラル級、勿論侮れるものではないだろう。
知性すら残さぬ状態といっても、本能的な部分は寧ろ増している可能性すらあるかもしれない。
それでも、少女達の生贄も、島中に広がっていた畏怖も、
奴に力を与えていたものは既にない。
代わりにあるのはこの手の中にある、彼らに【託された願い】の力。
この力と共に戦って、奴の最後を見届けたい。
戦場は海、フォルネウス側の領域だ
油断なく状況を読み取りつつ
【水面走行】で仲間と合流し
【パラドクス通信】で連携して戦いたい
可能なら先手を取りたいが、
無理でも三又槍の動きに特に注意し、敵の攻撃タイミングを読み取り、
水流の直撃を避けつつ【ガードアップ】で耐え凌ぎ、反撃の機を伺う。
仲間と共に重ねてきた効果2の力もまた活かしつつ、
『願いの矢』のパラドクスを使用する。
奴を倒してこの島を守りたい、その強き意思で大弓を成し、
番えた矢に込めるのは、島の人々に【託された願い】。
この島にあるべき平穏を、あるべき笑顔を取り戻すべく、
未来導く標の矢を放つ!
月鏡・サヨコ
……いつの時代、いかなる場所でも、人は共同体の為に個人を犠牲にする
だけどその行いは、人間の本性じゃない
破滅への恐怖が倫理を摩耗させ、狂気を呼び起こした結果だと……私は思う
奴を生かし続ける限り、同じ恐怖が蘇るはず
必ずここで終わらせよう
【水面走行】と【水中適応】を駆使して海戦を挑む
【パラドクス通信】で仲間と連絡しあって包囲し、敵に自由な位置取りを許さない
水中での運動性能を生かしづらい状況に追い込もう
敵の側面や背後に回り込むか、腹下に潜り込めたなら攻撃の好機だ
――『月鏡流抜刀術・迅雷風烈』
電磁加速された神速の居合斬撃で、敵を切り裂く
敵にまだ余裕があるうちはヒレの部分を傷つけて遊泳力を削ぎ
決着が近づいて来たなら、顎関節から刃を入れて横腹に斬り込み、横一閃の両断を狙う
敵の技に対しては【フライトドローン】に跳び乘って突進を躱した上で、槍を≪海戦装用増設防盾≫で防御
ドローンから敵の背後に跳び降り、攻勢に転じよう
貴様を恐れたのが人間なら、畏怖を乗り越えたのも同じ人間だ
私は――兵器として、人の意志に応える
呉守・晶
海魔将フォルネウス、TOKYOエゼキエル戦争の千葉県側の境界での一瞥以来だな
と言っても、この様子じゃ覚えてるはずもないか
今のお前を他の境界守護者が見たらなんというんだろうな?
どうして、こうも言葉すら失う程に弱体化したか分からないが、出来ればマトモなお前と決着を付けたかったよ
まぁだからといってこれ以上の犠牲者を出すつもりはないけどな
残念だが、今此処がお前の終焉の時だ!
くそっ、相変わらず上半身は目のやり場に困る姿をしやがって
だが、んなもん気にしてる余裕もねぇか!
巨大鮫の突進の、噛みついてくる瞬間に【飛翔】して飛び上がって鮫の噛みつきを回避するぞ
そのまま可能なら鮫の上に飛び乗ってやるが、無理だとしても上を取れば気を付けるのは槍だけで済む!
槍の突きは左手を盾にするか掴むかして受け止めてやる、そして右手に持つ魔晶剣アークイーターの封印を一部解除して巨大な牙と口のような異形の大剣に変異させて叩き斬ってやるぞ!
鮫と美女、どっちが本体か分からんがどっちにしろこれで終わりだ!
喰い千切れ、アークイーター!
マユラ・テイル
さあて後はふぉるねうす、貴様たけじゃの
些事は片付けた、後はしんぷるじゃ
……万全の状態の貴様を倒すのがきっと王道なのじゃろうが
この機会を逃す程、お人好しでも無いのでな!
水面走行で駆け出すのじゃ
同行する仲間との連携は忘れずに、動きをよく見て攻撃を畳み掛けられるようにたいみんぐを図ろう
竜爪【Dragon’s Blood】に魔力を回すのじゃ
炎と氷の魔力をそれぞれの手に込める
的は大きいからの、その大きな鮫を狙わせて貰うぞ
炎氷爪、鮫の横腹を斬り裂くように攻撃じゃ!
噛みつきと槍の2段攻撃かの……ちょっと欲張りな攻撃じゃの
竜爪に更に魔力込め、両手で上下に鮫の口を抉じ開けるのじゃ
槍の攻撃には無防備になるが、その槍の勢いを利用して口から脱出じゃ
食べられる趣味は無いのでな
それに鮫映画的なしちゅえーしょんは、あまり好かん
取って食われるひろいん役は御免じゃ
妾はぶん殴って撃退する側じゃよ
弱体化し、理性も失うのは気の毒に思うが……それでもしでかした事のつけは払って貰うぞ
此処で果てよ、ふぉるねうす!
連携アドリブ歓迎じゃ
復讐者とフォルネウスの戦いが佳境を迎え、ソラ島の海は夕焼けで赤く染まり始めた。
戦うたびに傷を増やし、満身創痍となったフォルネウス。
その命運は、復讐者たちが浴びせる最後の攻撃によって、今まさに尽きようとしていた――。
「さあて……後はふぉるねうす、貴様だけじゃの」
マユラ・テイル(みすてりあすじゃ・g05505)の鋭い眼が、真っ直ぐにフォルネウスを見つめた。
ここまで来た以上、すべきことはシンプルだ。全力をもって目の前の悪魔を倒す――それのみ。
「万全の状態の貴様を倒すのがきっと王道なのじゃろうが。この機会を逃す程、お人好しでも無いのでな!」
両腕に爪を装着し、マユラはいつでも戦える状態にある。
マユラだけではない。海上で、海中で、フォルネウスを取り囲むように展開するすべての復讐者と、そしてソラ島の人々も復讐者に願いを託していた。文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)の発動する残留効果によって。
「弱体化したといっても相手はジェネラル級、勿論侮れるものではないだろう。それでも……」
託されし願いが映す島民たちを一人一人見つめ、それでも、と雪人は言葉を継いだ。
少女たちの生贄も、島中に広がっていた畏怖も、フォルネウスに力を与えていたものは既に無い。彼らの心は、今や復讐者の力となって、雪人や仲間たちの手の中にあるのだから。
「この力と共に戦って、奴の最後を見届けたい。皆、宜しく頼む」
「……了解した」
端的な返事を返しながら、月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)は託されし願いに移された島の人々を見遣る。
(「……いつの時代、いかなる場所でも、人は共同体の為に個人を犠牲にする。だけどその行いは、人間の本性じゃない」)
そこに映っているのは、誰もが、どこにでもいる普通の人たちだった。
良いところも悪いところも、綺麗な面も醜い面も、どちらも併せ持つ『普通』の人々。そんな彼らが、悪魔に生贄を捧げてしまった理由に、サヨコは思いを巡らせる。
(「破滅への恐怖が倫理を摩耗させ、狂気を呼び起こした結果だと……私は思う」)
同時に、彼女は確信している。
フォルネウスを生かし続ける限り、同じ恐怖はいずれ蘇ると。
故に、必ずここで終わらせねばならない。あの悪魔を、討ち取らねばならないと。
この戦いで、フォルネウスを終わらせる。確固たる決意を胸に、マユラが、雪人が、サヨコが、次々と攻撃準備を完了していく。呉守・晶(TSデーモン・g04119)もまた三人と共に準備を終えると、目の前のアークデーモンへ言葉を投げた。
「海魔将フォルネウス、TOKYOエゼキエル戦争の千葉県側の境界での一瞥以来だな」
自分の言葉が届かぬことも、顔も覚えていないことも承知の上で、晶は言う。
今のフォルネウスを、境界の守護者だったジェネラル級たちが見たら何と言うだろう、と。
「どうして、こうも言葉すら失う程に弱体化したか分からないが……出来ればマトモなお前と決着を付けたかったよ」
その言葉を最後に、晶は微かな感傷を振り切った。
これ以上の犠牲者を出すつもりはない。事情がどうあれ、この悪魔はここで葬る。
晶と、三人の仲間たちと、この戦いに参加した全ての復讐者の、それは共有する想いだった。
「残念だが、今此処がお前の終焉の時だ!」
『グウゥォォォオォォォッ!』
晶が告げると同時、フォルネウスは命の炎を燃やし尽くすような咆哮を上げて迫って来た。
自身の死を受け入れることを最期の最期まで拒む気なのだろう。既に陣形を組み終えていた復讐者は、フォルネウスに有利な位置取りを許さぬよう、パラドクス通信機を携行しながら連携の攻撃を浴びせ始める。
水中を行くのは、サヨコ。水上を行くのは、雪人と晶、そして――真っ先に駆け出した、マユラだ。
「先鋒で暴れるのは妾の役目じゃな。フォルネウス、いざ!」
右手と左手、それぞれの手に込めるは炎と氷の魔力。
装着した竜爪【Dragon’s Blood】に魔力を注ぎ込み、マユラはフォルネウスへと肉薄する。
狙うは下半身を構成する大鮫、その横腹だ。パラドクスの力で瞬時に的の眼前に転移し、ブンと両鉤爪を振り被るマユラ。最後の戦いの始まりを告げるように、彼女は今『炎氷爪』の一撃を叩き込んだ。
「焼いて冷やす、急激な温度変化に耐えられるかの?」
紅と蒼の一閃が、横腹に十字の傷を刻む。
肉の焦げる悪臭と、凍結の冷気が立ち込める中、フォルネウスは激痛に絶叫しながらマユラめがけて突撃する。
噛みつきと槍の二段攻撃、シャークファングのパラドクスだ。度重なる攻撃で亀裂が生じ、もはや再生も間に合わない牙がマユラの身体を捉える。だが、
「取って食われるひろいん役は御免じゃ!」
魔力を込めた竜爪の一閃が牙を砕き、突撃の軌道を逸らした。
攻撃を無効化するアヴォイドの残留効果である。それでもなお執拗に降り注ぐ槍も、マユラへ傷を与えるには至らない。
「妾はぶん殴って撃退する側じゃよ。それに鮫映画的なしちゅえーしょんは、あまり好かん!」
『シャァァァッッ!!』
フォルネウスの上半身たる美女が、憎々しげにマユラを睨む。
炎氷爪を嚆矢に次々と攻撃が開始される中、晶は水上を駆けながら敵に毒づいた。
「くそっ。あの上半身、相変わらず目のやり場に困る姿をしやがって……!」
だが、流石にこの状況で、そんなものを気にしている余裕はない。
仲間たちと息を合わせながら、晶は魔晶剣アークイーターを手に攻撃を開始していった。
戦闘は、一貫して復讐者の優位で進んだ。
水上と水中に分かれた四人の復讐者たちは見えない檻のようにフォルネウスを捉え、自由な位置取りを許さない。
攻撃を浴びせる度にフォルネウスの動きは精彩を欠くようになり、決着が目前に迫りつつあるのは最早誰の目にも明らかとなっていた。
「……こちら月鏡。フォルネウスが潜ってくる気配は見られない」
サヨコは先程から水中に身を潜め、居合の斬撃をフォルネウスに見舞い続けていた。
尾部や胸部といったヒレを集中的に狙っての攻撃は、僅かに残る余力を徹底的にそぎ落とすことを目的としたものだ。
三人の復讐者が水上を主戦場としている為か、フォルネウスはいまだ水中へ攻撃して来る気配はない。サヨコはパラドクス通信機を手に、仲間たちへ連絡を送る。
「敵は動きが鈍って来ている。……このまま集中攻撃で撃破することを提案する」
「ふむ、異議なしじゃ。側面は妾が引き受けたのじゃ、一気呵成に攻めるのじゃ!」
「了解した。それなら、このまま押し切らせて貰おうかな!」
サヨコとマユラが通信機越しに伝えると同時、攻撃の機を見て取ったのは雪人だった。
フォルネウスを討ち、ソラ島を守る決意を胸に、体内を巡る意思をパラドクスで大弓に変換する。番えた一本の矢に込めるのは、託されし願いの力である。
残留効果に映し出された島民たちの顔に、最早フォルネウスへの畏怖はない。そんな彼らの姿を見て、雪人はパラドクスの弓弦を引き絞りながら誓う。ソラ島にあるべき平穏を、あるべき笑顔を取り戻してみせると。
「想いよ願いよ、未来を繋ぐ標となれ!」
大弓から、『願いの矢』が放たれた。
破魔と願いの力を込めた雪人の一矢は、未来導く標の矢となって、フォルネウス目掛けて飛ぶ。世界の理を書き換えながら変幻自在の軌跡を描き、美女を恐るべき勢いで刺し貫いた。小さな口から大きな血の塊がひとつ、ゴッと吐き出される。
『ギェ……ゴ、アァ……』
「弱体化し、理性も失うのは気の毒に思うが……それでもしでかした事のつけは払って貰うぞ」
もはや体内の血も流し尽くしたように、美女の肌はもはや蝋燭のように蒼白だ。
瀕死の体で尚も抵抗を続けるフォルネウス。その側面でマユラは鉤爪を振るい、巧みに大鮫の巨体を誘導していく。
「逃がしはせぬ。此処で果てよ、ふぉるねうす!」
そして。マユラの叩き込んだ炎と氷の一撃と、通信機を介して届いたフォルネウスの苦悶の呻きを合図として、大鮫の腹下よりサヨコが急襲をかけた。発動するのは、『月鏡流抜刀術・迅雷風烈』のパラドクスだ。
「──屍を戦野に曝すは、固より軍人の覚悟なり。……悪く、思わないで」
電気投擲鞘『斗號』と対艦軍刀『銀鉤』、鞘の電磁誘導加速機構によって射出される軍刀は超高速の居合抜刀技術をもって大鮫の腹を切り裂いた。
海戦装用増設防盾でフォルネウスの攻撃を凌ぎながら、サヨコの時間がダブルの効果で加速。そのまま勢いよく海上に飛び出すと、銀鉤を治めた斗號でふたたび大鮫を狙い済ます。
狙う先は大鮫の身体、その頭部。幾度も鋭い牙で噛みつきを繰り出してきた顎部分である。
ソラ島の人々を喰らい、畏怖を植え付けたであろう牙。今や見る影も無く砕かれ欠けた歯列の並ぶ大口を見遣り、サヨコは冷ややかな声で告げた。
「貴様を恐れたのが人間なら、畏怖を乗り越えたのも同じ人間だ」
託されし願いが映し出すソラ島の人々。雪人と仲間たちへ恩恵を齎した願いと祈りが、今、サヨコにも降り注ぐ。
全身に漲っていく強く熱い力に、ほんの刹那、サヨコの声が熱を帯びた。
「私は――兵器として、人の意志に応える」
起動した斗號の電磁誘導加速機構に射出された銀鉤が、フォルネウスの大口へと迫る。
心無い兵器には決して持ちえぬ、サヨコの復讐者としての意思を帯びた一閃だった。託されし願いと共に放たれた一撃は、大鮫の顎を寸分違わず切り裂いて、刃の切先はそのまま横腹へと滑り込む。
両断を狙う一撃に致命傷を負わされ、フォルネウスが絶叫を上げる。まさにその刹那、大鮫の背中へと飛び乗る影が一つ。魔晶剣アークイーターを構えた晶であった。
「鮫と美女、どっちが本体か分からんが……どっちにしろ、これで終わりだ!」
晶の声に応じ、アークイーターが変異を開始する。
コード捕食剣『貪リ喰ラウモノ』。封印を解かれた刀身は、巨大な牙と口を持つ異形に姿を変えて、喰らうべき『獲物』を狙い定める。全身を傷に覆われ血を流すフォルネウス。その肉体へ魔晶剣は文字通り牙を剥き、襲い掛かった。
「喰い千切れ、アークイーター!」
『ガッ……ギ……ギィャァァァァアアアアァァァァァァアアア!!』
パラドクスの力で変異した刀身が、フォルネウスの身体に牙を突き立てる。
断末魔の悲鳴が轟く中、晶の魔晶剣は飢えた獣さながらに、目の前のアークデーモンを噛み千切っていく。
美女の肢体も、大鮫の巨体も、その全てを一切合切――そうして血の一滴までも残さずに喰い尽くすと、アークイーターは再び元の姿へ戻された。
それが、人間を喰らい続けた凶悪なアークデーモン『海魔将フォルネウス』の最期。
黄昏が海を染める中、美女の振るった三叉槍だけが、戦いの終わりを告げるように海にぷかりと浮いていた。
「……目標の撃破を確認した。これでソラ島の脅威も去っただろう」
静けさを取り戻した海で、サヨコが作戦の完了を告げた。
フォルネウスと配下たちが海の藻屑と消えた今、島には再び平穏が戻って来るのだろう。
雪人は島民たちが避難した山の麓を見遣り、生贄救出のために戦った少年たちのことを思う。彼らと、彼らが救出した少女たちが、アークデーモンの脅威に怯える日はもう来ない。これからは村人たち平和な日々を過ごすことを願うばかりだ。
「帰る前に、村人たちへ伝えないとね。もう、悪魔はいないって」
「ああ。生贄を捧げるような日々も、これで終わりだ」
海に浮かぶ三叉槍に目をやりながら、晶は思う。
エゼキエル戦争から逃れたジェネラル級は、これでまた一体撃破した。如何にして力を失いバヌアツまで逃れたかは未だ謎だが、ソラ島を始めとする一帯の脅威が去ったことは紛れもない事実だった。
「島には平和な海が戻って、探索も続行可能になった。めでたしめでたし、じゃな!」
マユラは満足そうに笑顔を浮かべ、日の沈み始めた水平線の彼方を見遣った。
冥海機ヤ・ウマトに広がる太平洋、そこには如何なる未知と脅威が待っているのだろう。
この勝利で、新たな道への扉は開かれた。その先へ進むか否か、選択はすべて復讐者たちに委ねられている。
海魔将フォルネウス撃破、そしてソラ島の解放。
バヌアツを舞台にした復讐者たちの戦いは、かくして幕を下ろしたのであった。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【断末魔動画】がLV3になった!
【過去視の道案内】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV5になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ドレイン】がLV4になった!
最終結果:成功 |
| 完成日 | 2023年11月23日 |
| 宿敵 |
『海魔将フォルネウス』を撃破!
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