リプレイ
杏・紅花
おなかが空っぽのつらさも、どのみち死が見えるつらさも、吹き飛ばそっ
まずは邪魔な冥界機を蹴散らすぞお
数少ないとはいえ、射撃系の敵は近づくのが大変だし、むやみに土地に穴開けて厄介だっ
あたしが通る道をあけさせてもらうぞお〜
【寸鉄の羂】でワイヤーソーを素早く組んで敵を一斉に捕縛
敵のパラドクスは射程距離もあるし、あたしが近づく前に放たれるなら弾丸に向けてワイヤーソーの網を放つ
触れたそばから弾丸を切っていくぞお!
辺り一面に弾痕残されるのも嫌だし、被害は最小限に留めたいもんねっ
この土地は、この土地の人が、自分たちの力で、また耕していくの
おいしいトウモロコシが育って、サトウキビが育って、豚ちゃんもたくさん増えて、……そんで、あたしはオキナワの美味しいものを食べ尽くすんだあっ!!
冥界機じゃおいしいもん作ってくんないでしょお〜!だから、あんたら、ぜーんぶ倒してやらあっ!!
アドリブ、連携歓迎っ
シズ・ノウラ
アドリブ、連携歓迎ニャ。
戦争は終わったけど、なかなかのんびりは出来ないもんだニャア。
敵を殲滅した訳でもないし、困ってる人達はまだまだ一杯いるニャ。休んでる暇はないニャね。
まずは冥海機からニャ。
海中から奇襲を仕掛けるのが定石ニャけど、何時島津が来るか分からないニャ。速攻ニャ。
【水面走行】で海から突入するニャ。
敵に発見されたら【ブラスフェミースラッジ】で攻撃ニャ。
他人の領域を土足で踏みにじる連中は許せないニャ。怒りを赤い刃に変えて投射するニャ。
村に被害を出さない様に「誘導弾」で制御して、確実に敵に当てて切り裂くニャ。
そのまま水面を駆け回りながら遠距離戦ニャ。
敵は弾幕をばら蒔くタイプニャ。村に踏み込んで戦うのは被害が大きそうニャ。
遮蔽物が無いのは不安だけど、あえて海上に弾を撃たせるニャ。移動し続けて狙いを少しでも逸らせて、全身を覆う「スケイルオーラ」と射戦争上に展開する「マジックシールド」で受け流して、威力を削いで耐え抜くニャ。
村人を巻き込まない様に気を付けるニャ。
人外・狐
アドリブ連携歓迎っす。
七曜の戦が終わってもまだまだ忙しくなるっすね。
ひとつひとつ開放して行こうっす。
人外狐、本作戦に参加するっすよ。
自分、忍者なんで。できるだけ気配を絶って、不意打ちや騙し討ちを目論んで立ち回るっす。
最初の目標はスラッグ級戦艦っすね。
数が少ないとはいえ砲撃には注意しなくちゃならないっすね。
他の方が【水面走行】を仕込んでくれるなら、そちらから駆け込むのも有りっすね。
波間の隙間に潜み二連装副砲の射線に入らないよう、『蜘蛛薙』で這い寄るっす。
かく乱するように走り回って、攻撃は鋼糸や手裏剣で足元を狙うっす。
上体はガタイがいいし砲塔もたくさんあるっすけど、その分足回りが不十分だと予測するもんで。
敵さんが転んで水没したら水中弾を仕込んだ水陸両用ライフルを差し込んで撃ち抜くっす。
冥海機はもちろん、天魔武者にだってこの地は渡さないっすよ。
チェストーっす。
●真の守り手はいずれか
最初にその音を聞いた時、村人たちはこう思った――「ついに奴らが来た。もうおしまいだ、戦いが始まったのだ」と。
それは半分あっていて、だが核心的なところで間違っていた。
戦いが始まったのは事実だ。しかしその「敵」は、村人たちが思うモノとは違った。
……すなわち!
「バカスカ撃たれると土地に穴開いちゃうからさっ、動かないでね!」
杏・紅花(金蚕蠱・g00365)が網状に組んだワイヤーソーを投擲する。敵の動きを拘束し、戦闘による周辺被害を最小限に抑えようという試みだ。
「なんと、ディアボロスでありますか!? しかし誰が敵だろうと、我々は粉骨砕身の覚悟で戦うのであります!」
スラッグ級戦艦の砲撃が、ワイヤーソーを空中で撃ち落とす。バキン! と金属質な音を立てて網状の鉄が一部欠損するが、完全な相殺には至らない。むしろ砲撃を包み込むようにして流れ弾を防ぎ、紅花の狙い通り土地への被害を食い止めていた。
「海からも来るであります!」
「さすが、海戦に慣れてるだけはあるニャア。けどもう遅いニャ!」
シズ・ノウラ(深森の幻獣・g10049)である。【水面走行】のパラドクス効果で荒波を軽やかに跳び走り、高密度の弾幕を俊敏にかいくぐる。赤い瞳が血の涙となって溶け崩れたかのような、禍々しい赤黒い液体が波打つ。それは、シズの復讐心と怒りを凝り固めたものだ。
「ニャッ!」
曲芸的な動きで反撃を躱しながら、両腕を振るう。腕を伝い指先から放たれた液体は、空中で三日月型に変形して空気を切り裂いた。いわゆるダイヤモンドカッターのように、高密度に圧縮された水流は凄まじい切れ味を有するもの。苛烈な怒りを宿した超常の液体は、万物を両断する必殺の弧月となって敵をすり抜けた。
「バカな、この弾幕をかいくぐってくるなど
……!?」
愕然としたスラッグ級戦艦の身体に、袈裟懸けのラインが走り、ずるりと"ズレ"た。
「う、うおおおお! ディアボロスめぇ!」
崩れ落ちる同胞の亡骸を、新たな敵影の怒りの弾幕が吹き飛ばす! 海面が爆炎に照らされ、オレンジ色に燃える!
猛烈な反撃が局所的な嵐を生じさせた。爆風と炎で荒れ狂う波間は、まるで怒れる海神が顕現したかのようだ。
「奴ら、追い詰められて我を失ってるっすね。烏合の衆とはいえ油断できないっす」
ドウン! とひときわ高く上がった水柱の中から、人外・狐(ハグレモノの気まぐれ忍者・g08526)が飛び出した。予想外の位置からの奇襲に、怒りに目が眩んだスラッグ級戦艦の反応が遅れる。
「な」
ガギョン、と砲塔が動いた時には、もう彼女の姿はそこにはない。一瞬にしてかき消えてしまったのである。まさか、そういうパラドクスなのか? スラッグ級戦艦は、仲間に周囲への警戒を促そうとした。
その首が、するりと肩口を流れるように落ちていった。爆炎でオレンジと赤に染まった空間に、髪の毛よりも細い光の筋がきりりと白く煌めく。……強靭かつ鋭利な鋼糸だ。
「やっぱり、足回りが不十分っすね。これぞ忍法忍術、蜘蛛薙っす」
敵の予想と違い、狐はすぐ目の前にいた。ただし海面に黒い髪が浸りそうになるほど身を低く伏せ、視界外かつ射角限界に潜り込んでいたのである。いわゆるミスディレクションだ。
「こ、こいつら……戦い慣れているであります!」
別の敵が腰の副砲を狐に向けた。広範囲に展開した弾幕は、しかし生きているかのように割り込んだワイヤーソーでバラバラに切り裂かれ、空中で爆発!
「援護、感謝っす。その武装使いやすそうっすね」
「えっへへ、イイでしょ~。そっちの身軽さも、頼りにしてるよっ!」
紅花はぱちんとウィンクすると、再び波間に隠れた狐とは逆方向に飛び離れた。わざと目立つような大げさな動きをした紅花に、狙い通り敵の砲撃が集中する。ワイヤーソーを天女の羽衣のように巧みに操り、悉くを撃ち落とす紅花!
「シマヅにもディアボロスにも、この村は渡さないであります!」
「オキナワは、あんたらのものじゃないでしょーがあっ!!」
紅花の怒りの叫びが砲声を斬り裂き、そして網状の寸鉄が砲口を切り裂いた。サイコロ状にカットされた敵の残骸が、ぼちゃぼちゃと海中に没し、小規模の爆発を起こす。
「この土地は、この土地の人が、自分たちの力でまた耕していくのっ!」
「そうニャ、他人の領域を土足で踏みにじってるのは、お前たちも同じニャ!」
ばしゃあ! と、水飛沫を散らして紅花を飛び越える形で奇襲をかけるシズ。上からの急降下攻撃に、敵の反撃は一瞬遅れる――そしてその一瞬が明暗を分ける。
三又に開いた赤黒い水の軌跡は、巨大な獣が爪を振り下ろすさまを幻視させた。三筋の赤閃がそれぞれ別の敵を真っ二つに両断し、爆散せしめる。
「自分たちの悪どさを棚に上げる奴らは、絶対に許せないニャ。シマヅもお前たちもやっつけてやるニャ!」
「そーだそーだ!」
紅花が片手を振り回し同調した。
「そんでぇ、おいしいトウモロコシが育って、サトウキビが育って、豚ちゃんもたくさん増えて……あたしはオキナワの美味しいものを、食べ尽くすんだあっ!!」
「えっ、困ってる人たちを助けたいとかではないニャ!?」
まさかの食い意地に思わずびっくりするシズ。その隙に、敵が機銃を撃とうと両腕を突き出す!
「悪あがきはもう十分っすよ」
その時だ。手の甲を、横合いから飛来した手裏剣が串刺しにし、機銃掃射を防いだ!
「ぐ、ぐわあっ!?」
「冥海機にはもちろん、天魔武者にだってこの地は渡さないっす。まずはお前たちをチェストー、っすよ」
「お、おのれディアボロ……」
向きを変えようとしたスラッグ級戦艦は、がくんと体勢を崩した。ワイヤーソーが絡みつき、さらに時間差で擲たれた手裏剣が膝を貫いていたのだ。まるで沈みゆく戦艦のように、海中に没する冥海機。
「せめて海の藻屑に消えるといいっす」
狐は無表情で水陸両用ライフルを構え、沈みゆく最後の敵の顔面を撃ち抜いた。
銃声の直後、勝鬨の代わりに水柱が噴き上がる。怯え震えながら戦いを見守っていた村の人々も、確かにそれを見た。
「よっし、これで片付け完了っ。冥海機じゃ、おいしいもん作ってくんないもんねぇ~」
「……天魔武者が美味しい料理作ってくれたら、見逃してやるんすか?」
「え? いやぜんぶ倒すけど」
けろっとした紅花に、シズと狐は顔を見合わせた。動機はどうあれ、頼れる味方なのは確かである。
「と、とにかく村の人たちは無事みたいニャ。次は復興のお手伝いニャ!」
「美味しいオキナワ料理のために、頑張るぞ! お~っ!」
「不純な動機に純粋なぐらいまっしぐらっすね……」
まあ、多分大丈夫だろう。狐はいつものように楽観的に思考を切り替えた。戦いはまだ幕を開けたばかりなのだから。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
シズ・ノウラ
アドリブ、連携歓迎ニャ。
上陸して、島の人達に声をかけるニャ。
連中はやっつけたニャ。もう安心だニャ。
ディアボロスという立場を説明して、支援を受け入れて貰うニャ。
新宿から持ち込んだ支援物資を配るニャ。食料や衣料品、農作物の種とかニャ。
さしあたって、私は食料の自給のお手伝いをするニャ。私の魔術師としての専攻は植物だニャ。任せるニャ。
畑等があるなら【土壌改良】で生産力を上げるニャ。「植物知識」で更に育成環境を整えるニャ。
オキナワは私のいたアジア地域と気候が似た感じニャ。何とかなりそうニャ。
食べ物の炊き出しや建物の修理なんかも手伝うニャ。
みんなが安心して楽しく暮らせるのが一番ニャ。集落を快適に整えるニャよ。
手の空いた時は、子供達と遊んだりして和ませるニャ。
色々やることはあるけど、次の襲撃にも備えないとニャ。警戒は怠らないニャ。
シマヅ共が来たらすぐに皆には避難して貰うニャ。
アルラトゥ・クリム
冥海機との戦いには出遅れたけど…
集落の復興と整備は、多少なりと手伝えるかな?
とりあえず、自分達は集落の支援と復興
それと襲来する天魔武者シマヅの討伐の為に来訪した事を告げ
時間短縮の為にも、誰かが炊き出しの類を行うならまずそれを手伝う
自身は基本、農具や工具類の整備と建物の修復をメインに立ち回る
念の為に必要となりそうな農工具類を新宿島から持ち込みつつ
集落にある道具類をザッと掻き集め
整備や修理が必要なら、修復加速を併用して整備や修理を施して
必要な箇所に配布して活用して貰う
道具の整備が一段落したら、続けて修復加速を用い
家屋や建物類の修復や整備に取り掛かる
建材は新宿島から持ち込むには限界があるから
村落の周囲の森林の手頃な木々を伐採させて貰い、加工して建材にする
万一、建造物分解が持ち込まれているなら
残留効果で発生した建材も、有り難く使わせて貰う
森林に入るついでに、万一役に立てばラッキー程度の信用度と心積もりで
単純な構造の鳴子を幾つか仕掛けておく(罠使い)
アドリブ&絡み連携歓迎
赤上・イズル
■アドリブ・連携歓迎
集落の再建のお手伝いですね。張り切って頑張ります!
もきゅもきゅと鳴くモーラットのマリコさんと一緒に作業します
家屋の修繕は他の方がしてくれているようなので
俺はお食事の用意をいたしましょう!
マリコさんが大丈夫?って顔してますがお任せください!
俺だって料理くらいでます!少し!
ということで【アイテムポケット】から持ってきた食材で豚汁を作ります!
だって…食材鍋に入れて煮て味噌入れたらいいんでしょ?多分!
食材切るのも大丈夫…日本刀使えるのに包丁使えないなんてそんな…ないですから!
最終的には何方かに味見して貰いたいです…(小声)
そして出来上がりました!指の包帯?なんのことですか?
これをまず俺が【口福の伝道者】で頂きます!(美味しい!?感動!)
そしてたくさんのお料理にして集落の皆に食べて頂きます!
美味しいですか?良かったです!俺も嬉しいです!料理に目覚めちゃいそうです!
おにぎりもあります!マリコさんと一緒に握ったおにぎりです!
お米はたくさん持って来て乾燥させて備蓄しておきましょう!
●崩壊の瀬戸際から
冥海機は斃れた。
最初は天魔武者の襲撃かと思い恐怖していた人々も、ディアボロスの見た目と様子からどうやら違うらしいと察しつつあった。
「もしかして……助けにきてくだすったのか?」
「そうニャ。連中はやっつけたからもう安心だニャ」
と、シズ・ノウラ(深森の幻獣・g10049)が胸を張る。
自分たちの立場を、沖縄の人々でも理解できるようかいつまんで説明することも忘れない。
「……というわけで、事情はだいたい把握してるニャ。食べ物も含めて色々持ってきたから、支援させてほしいニャ」
住民は困惑した。冥海機は村を守ることこそあれど、窮乏に手を差し伸べはしてくれなかったのだ。
助けてやる、と頭ごなしに来るならまだ分かる――実際のところ、彼らも縋れるなら藁だろうが復讐者だろうがなんだって構わない瀬戸際だ。
だがどうだろう。シズは……いや復讐者たちは、あくまで自分たちの支援を「受け入れてもらう」という態度で臨んでいた。
「もちろん、まだ全部終わったわけじゃないんだけどね」
アルラトゥ・クリム(現代の魔法使い・g05088)がシズの説明に一言添えた。天魔武者の軍勢はいずれ来襲し、それを撃退することも含めて目的なのだと。
「でも、それは私たちがやりたいからやってること。恩に着せたりするつもりはないから、どうか気にしないで」
「俺たちは、皆さんが無事に生きていてくださればそれでいいんです」
赤上・イズル(赤き悪魔・g04960)が頷いて同意した。モーラット・コミュの『マリコさん』も、「もきゅ!」と片手を挙げてそれに倣う。
もちろん、打算の面はある。ディヴィジョンを攻略し最終人類史に大地を奪還する、それはつまりディアボロスの力が強めクロノヴェーダの支配を弱めること。人々の味わう恐怖や圧政といった、敵のエネルギー源が損なわれることだ。この作戦にはそういう面も現実としてある。しかしそれだけではない――集落の人々が、感謝と困惑を同時に見せたように。
「さあ、やることはたくさんありますよ。手分けして励みましょう!」
「合点ニャ! シマヅどもが来ないうちに、立派な集落に戻してみせるニャ!」
「のんびりはしてられないからね。けど無理はせずに、だね」
3人は頷きあい、おー! と腕を突き上げた(もちろんマリコさんも)
その姿が、人々には朝日よりも眩しく映った。
●
それからはパラドクス効果を活用した、効率的かつ的確な復興作業が始まった。
「まずは食べ物をお配りするニャ、農作物の種も持ってきてあるニャ~」
シズはただ食糧を配給するだけでなく、彼らが自給自足を取り戻せるように配慮することも忘れていない。
「お、おお……! 種籾がありゃ、また畑を耕せる!」
「ありがとう、ありがとう!」
村の若い男たちが涙を浮かべて頭を下げた。シズは「いいってことニャ」と鷹揚に接する。
自給自足の充実……それはディアボロスたちが去ってからの村の存続に大きく繋がる。が、この場合はそれだけではない……つまり、自尊心の問題だ。
「俺たちの村なんだ、一番大事なところは俺たちの手でやらねえとな!」
飢えと渇きで欠乏していた生きる活力が、みるみる湧いてきたようだった。人が人として生きるためには、ただ食事や環境を整えればいいものではない。精神面も重要である。俗に言うQoLというやつだ。
「けど、手入れも出来ねえで傷んじまった畑も少なくねえんだよなあ」
「それならおまかせにゃ。私の魔術師としての専攻は植物だニャ」
シズがぱちんと指を鳴らすと、潮風と手入れ不足で荒れ地となった畑に蔓状の植物がもりもり伸びて、滋養を取り戻していく。【土壌改良】の力である。
「うんうん、やっぱり私の地域と気候が似てるニャ。なんとかなりそうニャ」
「これなら村の皆さんも、安心して畑作りに励めますね。よかったです」
イズルはほっと胸をなで下ろした。
ところで、そんな彼はというと、【アイテムポケット】から取り出した調理道具と食材を並べ、なにやら料理中なのだが……。
「……ねえ、なんか妙に不安になるんだけど、大丈夫?」
家屋の修復に奔走していたアルラトゥは、思わず足を止めて怪訝な顔をしていた。イズルの相棒であるマリコさんも、おろおろもきゅもきゅしている。
「なあに、大丈夫ですよ! 豚汁ぐらい作れます! マリコさんもどうしてそんなに不安そうなんですか?」
「いやだって、包丁の持ち方とかさ、あと切った材料もこれ……」
まな板の上には、形もサイズもバラバラの野菜類が転がっていた。トループス級を蹴散らしたあとの戦場とか、こんな感じである。
「いやでも、食材鍋に入れて煮て味噌入れたらいいんですよね?」
「……ごめーん、手空いてる人来てくれるかなー! 手伝ってほしいんだけどー!」
「えっ、指摘すらなしでいきなり救援要請ですか!? おかしくないですか!?」
イズルは愕然とした。呼ばれて飛び出て駆けつけたシズは、まな板の上の惨状を見て「うわぁ」と素の声を漏らした。
「これはひどいニャ、切ったっていうか斬ってるニャね」
「……包丁って日本刀と同じ要領で振るったらダメなんですか?」
「まな板も斬っちゃう前に気付けてよかったニャ」
シズがあまりにも真顔なので、イズルはどうやら自分の料理スキルが相当アレらしいと察し落ち込んだ。マリコさんは「そらそうだろ」とでも言いたげな顔をしていた。
……出だしこそご覧のようにハチャメチャだったものの、シズや料理が得意な村人たちのサポートもあり、炊き出しのための料理作りはテンポよく進む。ただしイズルの指には包帯がぐるぐる巻になっていたが。
「うーん、大丈夫かなぁあっち、でもなぁこっちも手が足りないからなぁ……」
アルラトゥはイズルが「うわー!」とか「ぎゃー!」とか叫ぶたびにソワソワしていたが、だからといって家屋の修復作業をおろそかにするわけにはいかない。
大工作業に使えそうな道具類を(持ち込んだぶんも含め)集めて点検し、使えそうなものは整備し修理する。この工程だけでも、パラドクス効果をもってしても莫大な時間がかかる。
「いやあ、こんな風に手入れするなんていつぶりだろうなぁ」
「だな」
村の男衆も、配布されたそれらを試用したりといった形でサポートしていたが、すっかり精悍で頼もしい表情だ。
「まだまだやることはあるからね。建材が必要だから、森林があるなら場所を教えてほしいな」
「それなら穴場があるんだ。最近は危なっかしくて村から出られなかったけど、今なら安全なんだろう?」
「うん。じゃあ手入れが終わったら、次はそっちだね」
アルラトゥは木こりの男に微笑んだ。
ふと視線を向ければ、炊き出し作業が軌道に乗ったのか、シズは暇そうにしている子供たちの相手をしてやっている。
「おねーちゃんおねーちゃん、ぼくともあそんでー!」
「はいはい、順番だからもう少し待っててニャ」
とわんぱくな子供たちをあやす様子は、大人の女性らしい。
「よし、出来ました! これをあとは【口福の伝道者】で増やします……!」
なんか逆方向ではイズルが爆弾解体中の刑事みたいなシリアス顔で、恐る恐る豚汁を食べている。
「……美味しい!? 感動した……!」
「いやさっき味見してオッケー出したんだから当たり前ニャ。っていうかそれなら最初なんであんな自信満々だったニャ……?」
「反省してます……でもおかげで料理に目覚めそうですよ!」
(「開眼する前に手の傷をもっと減らす努力をしたほうがいいと思うんだけどなぁ……」)
アルラトゥはそれを遠目に見て苦笑する。
「あっ、もしかしてお出かけですか? 帰ってくる頃にはおにぎり用意しておきますね、おにぎり! マリコさんと一緒に握ったやつ!」
「おにぎりだけでこんなにドヤ顔する人初めて見たニャ」
シズは呆れきっていた。
「あははっ。うん、ありがと。それじゃ最後までみんな、頑張ろう!」
今度は村の人々も拳を突き上げ、声を上げた。そこには人々の生きようとする力強い意思が満ちていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
●襲来
ディアボロスたちの献身により、村は大きく活気を取り戻した。
衣食住を確保しただけではない、人間的な生活と自尊心を取り戻したことが大きく寄与したようだ。
そしてその活気は、まるで誘蛾灯のように奴らを呼ぶ。
ただ荒ぶるままに人々の生活圏を脅かす、蝗の如き無差別の猪武者どもを。
「「「チェストォオオオ
!!」」」
来た。あの腹に響く猿叫は紛れもない! 天魔武者シマヅの軍勢である!
復讐者たちの事前準備により、十分な余裕をもって対応と避難が可能だ。人々や集落が脅かされることはないだろう。
しかしそれは、あくまでディアボロスたちが最前線に繰り出し、奴らを迎撃してこそである。
叩き潰すべき暴虐はここにある。海原を、奴らの鉄屑で錆色に染め上げてしまえ!
赤上・イズル
■【水炎】
■アドリブ・連携歓迎
騒がしい方々が来ましたか。天魔武士・シゲン流剣士…!
自分も剣士の端くれ…、我が九字切流にてお相手いたします!
と言いつつも、食材を切るよりこっち切った方がいい!が
丸わかりの顔で輝いているので敵からしたらちょっと怖いかも
(そしてめっちゃいい顔で)
それに友達のツキが来てくれましたからね!
まずは手分けして村の人々には予め避難をしてもらましょう!
そして村の中で戦いにならないよう村の外にて迎え撃つ!
あなた方のお相手は我々です、そこを違いませんように
眼光鋭く、抜刀の構えを取りつつ相手に殺気を飛ばし敵の意識をこちらへと向ける
常に敵の動きに合わせ動き、背中を取られないようしながら相手の動きを読む
一の太刀を疑わず、二の太刀は負け…ですか、シゲン流…。
一撃必殺を狙っているようですね
ですが、それはこちらも同じ!いざ勝負です!
相手の動きのほんの先に、
【先行率アップ】にて先手を取りパラドクス【紅蓮雀】を放つ
ツキの方は…片付きましたか?
最後の敵を倒したら俺が作った豚汁食べて貰いますからね
ツキシロ・フェルドスパー
【水炎】
アドリブ歓迎
連携積極的に
SPDでイズル君(g04960)ディフェンス
ツキシロ・フェルドスパーいざ参戦!
イズル君に呼ばれてきたよー
相手はシマヅ?問題ないで。イズル君と皆と力合わせてレッツゴー!
まずは村の人避難してもらお。すいませんなあ。ちょっと避難しててー!
で、村の外で戦う感じやねんな。ま、中やと巻き込む可能性あるもんなー
その上で村の入り口に【防衛ライン】!
こっから先には立ち入らせへんで!と【霊銀の水羽衣】を構える。
一瞬で動きを詰めてくるならそこを見極めて、パラドクス発動!
嵐を巻き起こして吹っ飛べーー!!
後は敵の中に入って撹乱しつつパラドクスで吹っ飛べ―!するで!
少しずつ村から離すようにして攻撃する感じやね。
攻撃は致命傷を避けるように動く。死ななきゃやすい!ってね!
イズル君の方はどう?終わったー?
こっち終わったよー!
敵倒し終わったらご飯?やったーー!
アルラトゥ・クリム
馬鹿面下げて、こちらの担いだ神輿に乗ってきた…とも言い辛いか。
油断は無しで行こうか。集落の人達が怪我でもしたら笑えない。
天魔武者の襲撃を察知したら、集落の人達を戦場から極力遠ざけ
間違っても敵の襲撃対象にならぬ様
キッチリ前線を張って敵陣を撃退してみせる
へぇ。超軽装甲で機動力に優れるって?
さあ、ショータイムだ。それじゃひとつ、スピード勝負と洒落込もうか!
戦場全ての存在を感じ取り、全ての情報を収集し、把握したら
残像を帯びた超高速移動で敵陣に殴り込み
敵の挙動と太刀筋を精神集中して確と観察し、情報収集して看破
魔力刃を宿した剣形態ブレードガンで、敵の太刀を撃ち払い受け流して
ダメージを回避するか抑えたら
収集した情報が示すが如く、敵の泣き所を精確且つ精密に最大効率の太刀筋での斬撃にて薙ぎ払い
敵の数を確実に減らし、敵陣を掻き回していく
フィナーレだ。残念だけどその太刀筋では、魔法使いには追いつけないよ。
アドリブ&絡み連携歓迎・使用可能残留効果全使用
シズ・ノウラ
アドリブ、連携歓迎ニャ。
急いで村の人達に避難して貰うニャ。
同時に、村に近付けない様に出撃するニャ。
他人の領域に土足で踏み込む奴等は許せないニャ。思い知らせてやるニャ。
【トラップ生成】で敵の予想進路上に足止めのスネアトラップを仕掛けて迎撃するニャ。突進してくるなら足を引っ掛けて転ばせてやるニャ。
隙を見せたら攻撃を仕掛けるニャ。
【連なる刃の森】のパラドクスを使うニャ。魔術で、鋸歯状の葉を持つ蔓を無数に呼び出して操るニャ。
縛り上げて「捕縛」して、鎧の隙間や関節部に蔓を潜り込ませて鋸歯で切り裂いてやるニャ。
命懸けってのは人間がやるから怖いニャ。人形の捨て身なんて単なる鉄砲玉ニャ。
そのまま拘束して反撃の威力を抑えて耐えるニャ。
まともに当たったら危ないニャ。太刀筋を見極めて横っ飛びで回避ニャ。頑張って直撃だけは避けるニャ。
突破されて村に向かわれそうならトラップ生成で足止めして、パラドクス攻撃して反撃でこちらに向かわせるニャ。
●天魔武者、来たる!
「「「チェストォオオオ!」」」
まるで爆撃機のサイレンのように響いた雄叫びは、人々に恐怖を、そしてディアボロスに緊張をもたらした。
「騒がしい方々が来ましたか……!」
「急いで村の人たちに避難してもらうニャ、迎撃も忘れずにニャ!」
赤上・イズル(赤き悪魔・g04960)は敵のほうを睨みながら、シズ・ノウラ(深森の幻獣・g10049)の言葉に頷く。そのための時間は、彼ら自身のこれまでの働きにより十二分にあった。
「なら、みんなは避難誘導を優先して。キッチリ前線張って、敵を撃退してみせるから」
アルラトゥ・クリム(現代の魔法使い・g05088)は、人々を安心させる意味も含めて仲間たちに不敵に言い切る。一度は恐慌状態に陥りかけた人々も、頼もしい表情にほっと胸をなでおろした。
「助かります。それでは皆さん、急ぎましょう!」
だがうかうかしていては、せっかく準備してきたのも無駄になってしまう。ディアボロスたちは決して油断せず、1分1秒も無駄にせず最善最速の効率で動いた。
一方ジゲン流の剣士たちもまた、ミサイルかな? というぐらい一直線に村を目指して進む。息継ぎもなしに猿叫を上げ続け爆速で突き進むさまは、武者というよりもはや蝗害か何かだ。到達すればすべてを薙ぎ払うという意味では、イナゴも一緒くたにされるのは嫌がるであろうレベルの迷惑さだが。
「む!? あれは何奴か!?」
「気付くのが遅いよ、こっちは準備万端さ!」
その行く手を阻むのはアルラトゥだ! 姿を認めたジゲン流剣士が構えを変えるよりも先に、魔力刃を宿したブレードガンを構え、残像すら生じさせるスピードで間合いを詰める!
「なっ!? 疾い!」
「はあっ!」
ぎぃん! と甲高い金属音が鳴り響いた。反射的に振り下ろされた剣と魔力刃がぶつかりあい、火花を散らしたのである。
「……ッ!」
近づくということは相対的に衝突の威力も増すということ。本来であれば一撃必殺の域に達するジゲン流の太刀は、最大のインパクトを発揮しうるよりも前に打ち払われたとはいえ、何のデメリットもなしに受けられるものではない。アルラトゥは奥歯を噛み締め、全身を駆け抜ける衝撃に耐えた。眦を決し、己を強いて不敵なヒーローのごとき笑みを保つ。これは、護るための戦いなのだから。
「……このくらい、なんてことないね! さあ、ショータイムだッ!」
散った火花が衰滅して消えるよりも早く、ぶつかりあった双影はぐんとカーブし再び衝突する。無論相手は一体ではない、背後あるいは側面から次々に襲いかかる無数のジゲン流!
「シャアアアアアアッ!」
「死角を取ったつもりかな? 見えているよ!」
アルラトゥの言葉は強がりではなかった。超スピードでありながら極限の集中で敵の太刀筋を見切ったアルラトゥは、まるで後ろに目があるかのような見事な動きでブレードガンを振り回し、矢継ぎ早に襲来する太刀を打ち払う。受け流す、切り払う! 火花が散っては消え、鉄火場を照らす。さながら星空のように明るく、そして危険に……!
「おのれぇ、ディアボロス! たったひとりでいつまで足掻くゥ!」
「ひとり、と言いましたか? どうやら算数は苦手なようですね!」
「ハッ!?」
アルラトゥの奮戦は無駄ではなかった。敵は彼女一人に集中せざるを得ず、避難誘導を終えたイズルたちの奇襲を許してしまったのである。
「あなたがたのお相手は、我々です。そこを違いませんように」
「……!!」
斬られた。一瞬、そう錯覚してしまうほどの強烈な殺気だった。ぎらりと輝くイズルの双眸は、誇張抜きに刃を思わせるほどに剣呑。そして!
「くっ、ならば貴様から……うおおっ!?」
「ひっかかったニャ! 足元注意ニャよー?」
足元のトラップで体勢を崩した剣士に、シズクが小悪魔めいた笑みを浮かべていまさら注意した。もちろん、挑発も兼ねた皮肉である。トラップを仕掛けたのは他ならぬ彼女なのだ!
「小賢しい真似をしてくれる!」
「それはこっちの台詞ニャ。冥海機がいなくなって村が復興したところを襲うだなんて、漁夫の利狙いは御免だニャ!」
ビキビキと音を立てて、地面から繁茂したのは異形の蔓状植物である。それらは鋸の歯めいたカタチをしていて、触れるだけでも治療困難な裂傷を与える。植物は無数に生まれそして絡まり合い、『連なる刃の森(チェンソーガーデン)』の銘に相応しく戦場を覆う……!
「ええい、ディアボロスなど放っておけ! ようは村だ、あちらを抑えればいいのだ!」
「――なあんて、ちょっとは利口なこと言い出す輩もおるもんよなぁ」
「な
……!?」
戦場において敵から目を離すことほど愚かなことはない。それを、先走った剣士は己の身で思い知る。
【防衛ライン】を背負うように立ちはだかるのは、ツキシロ・フェルドスパー(非日常に迷い込んだ漂流者・g04892)だった。まさかの4人目の登場を予期していなかったがゆえに、その接近は隙だらけだ!
「それ以上近づけはせんで! 吹っ飛べぇっ!!」
ごうっ!! と、強烈な嵐が風を切り裂き吹き荒ぶ。大地をカミソリのように削り取る烈風を浴びて、軽装甲のジゲン流剣士が無傷でいられるはずはない。断末魔の悲鳴さえ嵐に呑まれ、バラバラになった残骸は嵐の中でミキサーのように粉砕、爆散!
「ツキ! 間に合いましたか!」
「またせたなイズル君、ツキシロ・フェルドスパーいざ参戦や!」
ツキシロはイズルにビシッとサムズアップし、アルラトゥとシズにも片目を瞑って笑いかける。
「ちゅうわけで後ろは任せとき、抜け駆けするような輩は全員吹っ飛ばしたる!」
「頼りになるね……! それじゃ、ここからは私たちのターンだ!」
「自分たちがどんだけヤバい相手に喧嘩売ったか、思い知らせてやるニャ!」
戦況は言葉通りに一変した。予想外の展開に敵が混乱し連携を乱した隙に、アルラトゥはそのスピードで敵陣ど真ん中に突入、対応しようとする剣士の動きをシズの群生植物が絡みついて妨害する。一糸乱れぬ連携には付け入る隙なし!
「こ、こいつら、手慣れている……いや、手慣れすぎているッ!」
「我らを上回るほどのスピードと連携を、なぜ両立できるのだ……!? ぐわあっ!」
困惑する剣士の胸部を、アルラトゥの魔力刃がざんっ! と逆袈裟に切り捨てた。切断面からバチバチとスパークを漏らし崩れ落ちる残骸を捨て置き、残心もそこそこに駆ける俊影!
「踏んできた場数の違い、とでもいっておこうか? この手のシチュエーションには慣れてるんでね!」
敵の関節を両断し、刺突で体勢を崩し、受け太刀から流れるように反撃へ。水銀めいた淀みなく流麗な動きは、変幻自在にして電光石火。スピードを頼みとする剣士たちが恐怖するほどに、疾く苛烈!
「俺たちも負けていられませんよ、ツキ!」
「わかっとるでイズル君、コンビネーションなら自分らが一番ちゅうとこ見せなな!」
「「「シャアアアアッ!」」」
肩を並べた二人は、弾かれるように斜め前方に疾走。敵の直線的な動きを二手に分かれることで分散させ、常に正面に捉えて機先を制する。二の太刀要らずのジゲン流とて、頼れる相棒がいれば恐れるに足らぬのだ。
「一撃必殺のジゲン流、相手にとって不足なし。いざ勝負です!」
「シィイイイ……死ねぇっ!!」
敵の姿が霞んだ。最後の踏み込みだ! イズルはその「起こり」を剣士の勘で見切り、腰だめに構えた太刀を抜き放つ!
「九字切流、奥義」
交錯は一瞬。
刃が纏った炎が、ぼっ、と音を立てて火花に散って消える。灼けた剣の軌跡は、不死鳥の羽ばたきを思わせた。
「……紅蓮雀」
「み、見事、なり……」
ガラガラと無数に切断された残骸が崩れ落ち、そして燃え上がり跡形もなく焼滅する。太刀筋さえ見切れぬ超神速の居合……!
「そらそら、こっちもおるでぇ! 全部まとめて、吹っ飛べーー!!」
「「「うわあああっ
!!」」」
一方ツキシロは、多少のダメージは顧みず派手に突撃して暴れ回った。その捨て鉢めいた攻めの姿勢は、決して闇雲ではなく仲間たちの連携を期待してのもの。彼自身を台風の目とした嵐が渦巻き、敵を文字通り空へ舞い上げる。そして吹き飛ばされた剣士が二度と地上を踏むことはない。槍のようにまっすぐ伸びた蔦状生物がビュルビュルと全身に絡みつき拘束、そして互いに絡み合って締め付けることで鋸の歯でずたずたにしてしまうからだ!
「な、なぜだぁ! 我らの命懸けのジゲン流剣法、なぜ通じぬっ!?」
「命懸けってのは、人間がやるから怖いニャ。人形の捨て身なんて単なる鉄砲玉ニャ!」
メキメキメキ! 締め付けに耐えられず、剣士の装甲が歪む! シズが空中に伸ばした手をぐわしと握りしめると、圧力が限界を迎え……剣士を四散させた!
「ギャアアアア!!」
「くっ……! な、なんて奴らだ……!」
じり、と退く者がいた。それが崩壊の兆しだった。
「フィナーレだ。残念だけどその太刀筋では、もう魔法使いには追いつけないよ!」
ジゲン流の恐ろしさは、命を省みぬ猪突猛進にこそある。恐怖で統率を欠き勢いを無くした剣法など、もはや烏合の衆。アルラトゥの斬撃は、死神の鎌じみて敵の命を収穫する。
「雑魚だなんて言いはせんけど、相手が悪かったなぁ!」
「「「ぎゃあああ
!!」」」
嵐の壁を押し出し、ツキシロは残った敵の体勢を崩す。足元にはシズの植物がしっかりと這い回っていて、逃げるも防ぐも許さない。奴らはすでに、詰んでいるのだ。
「終わらせます! 覚悟ッ!」
再び炎の斬撃が羽ばたいた。怪鳥の翼じみた大きな横薙ぎが、身動きの取れない敵を一刀両断……その残骸はトーチのように激しく燃え上がり、これを見ているであろう敵将に宣戦布告を届かせた。
「よし、ジゲン流剣士はこれで片付いたね。あとはアヴァタール級だけだよ」
周囲を見渡し安全を確認したアルラトゥの言葉に、仲間たちはこくりと頷く。
「こいつらの相手をしてると耳がキンキンするニャ、早くやっつけて終わらせたいニャ~」
「最後まで油断せずに協力してかからへんとな。イズル君もマリコさんも、気をつけなあかんで」
「もちろんです。そうそう、ツキにはあとで俺の作った豚汁食べてもらいますからね」
「え!? ご飯あるの!? やったー!!」
ツキシロが両手を上げて喜ぶと、イズルはドヤァと胸を張った。
「ええそうです、俺が作った豚汁ですよ! お・れ・が・つ・く・っ・た!」
「イズル君すごい! 神様仏様や! お腹ペコペコで来たんよ~!」
「ええご心配なく、俺が作りましたので、お・れ・が!」
「……あれどう思うニャ?」
ちゃっかり自分の手柄にしているイズル(間違ってはいないが)を呆れて指差すシズ。
「ま、まあ今はそっとしておいてあげようよ……」
「もきゅ……」
アルラトゥとモーラットの『マリコさん』は、思わず似た者同士の苦笑いを浮かべた。もはや誰のサーヴァントかわからなくなりつつある。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【完全視界】がLV2になった!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
【命中アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】LV1が発生!
「ヌウウウーッ!」
バキン! と音を立てて、足元の小石が割れて砕けた。『島津義弘』の発する恐ろしいまでの怒気に耐えられなかったのだ。
優れた剣士は、剣を抜かずして敵の心胆を折り勝利するという。ならばジゲン流を究めた天魔武者の怒りは、みしみしと地面を軋ませ石をも砕く。並の者では近づくだけで泡を吹いて卒倒しかねない重圧が満ちていた。
「おのれディアボロスども……! 我らシマヅに楯突いた愚を思い知らせてくれる!」
ズシン、ズシン! 一歩ごとに地面に燃える足跡を刻み罅割させ、憤怒に震える怒りの武者が来襲す。
その怒りは逆恨みも甚だしい筋違いのものだが、だからといって油断はできない。奴の剣の腕は紛れもなく「本物」なのだ!
「粉砕してくれるわァーッ!」
なお、持っているのが金棒だというのは言わぬが花である。ジゲン流に尋常の沙汰を求めてはならぬ!
赤上・イズル
■【水炎】
■アドリブ・連携歓迎
む、どうやら新たな敵の登場らしいですね
と、仲間達やマリコさんの呆れた視線には気づかず
それを飛び越え『ヌゥゥー!』とか聞こえた方へ顔を向ける
あなたがこの度の大将ですか、島津義弘。島津家の17代当主!
なるほど…流石に他のトループスの剣士らとは丈違いの気迫…
強敵である事は戦わずとしてもわかります
しかし、あなたを倒さねばこの地の者達に安泰が訪れないのでしたら…
なんとしてでもあなたを倒します!行きます…!
刀を構え注意深く相手の動きを読みつつ間合いを図るも
まさに二の太刀要らずの気迫に本能が踏み出す事を躊躇う
焦る気持ちに今はツキがいると思い至る
ツキに心配をかけるわけにはいかないと。
…ツキがいればなんでもできる気がします!
ツキの水の力、お借りしますね!
その時咄嗟に浮かんで来た技。それを敵に繰り出す
それは刀で斬る、ではなく…、刀からなんかビームみたいなのが出る技
名付けて…うーんと、えっと、水炎共鳴・残響散火です!くらえー!
マリコさん「(なん、だとーー!)」
ツキシロ・フェルドスパー
【水炎】
イズル君(g04960)と一緒!
アドリブ・連携歓迎
SPDでイズル君ディフェンス
いちゃいちゃ邪魔されたーー!むー……
まあいいや、とりあえず敵倒してもっかい遊ぼ!!
島津倒して、な!
イズル君の攻撃の隙作るのに、飛翔で速さに緩急つけて相手の周りでうろちょろして攻撃の隙を伺う。
二の太刀いらずってことは一発攻撃させたらそこにでかい隙が生まれるって事やしな。
攻撃の隙を観察して見切ったところに不意打ちで飛び込みつつ、「イズル君今やで!!」って呼びかけしつつ、パラドクス発動!
「精霊さん、妖精さん、力を貸してな。水流の一撃!」
ジンのアンちゃんにお願いして、生み出した水流を相手にぶつける。その中を通って水流の勢いも使ってキーック!!!!そして「霊銀の水羽衣」でその装甲を両断して薙ぎ払う!!
そのまま飛翔と一撃離脱で直ぐに下がる!
イズル君のビームにはわーすっごい!とか思う。あんなんやりたいなーやれるかな?ね、アンちゃん。何か色々コネコネしたら出来るやろか?
アルラトゥ・クリム
やれやれ。幾ら異名が鬼島津だからって、
得物まで金棒なんか選ばなくて良さそうだけどねー。
尤も、怒り心頭なのは此方も一緒でね。
この沖縄はこの島で生きる人達の物。
ましてやクロノヴェーダなんかが、陣取り合戦の舞台にするなんてね…!
さあ…ショータイムだ、鬼島津。この集落の人達の為にも、この勝利は譲らない!
アリアを絶唱して『力』を集めて、自身の心身とブレードガンをパラドクスの域に高め
更に全力魔法で、剣形態ブレードガンに纏わせる魔力刃の威力をブーストしつつ
精神集中して敵の挙動と金棒の振筋を確と観察して情報収集し、看破したら
巻き起こる旋風を剣舞が如き連続の斬撃で魔力刃で斬り裂いて
更に金棒を受け流してダメージを軽減しながら
強化した身体能力で一気に間合を詰めて敵の懐に飛び込み
突撃の運動エネルギーを乗算した全力の刺突を鎧の隙間へ精確に叩き込み
更に梵我一如の理の一端を示すが如く、正確無比且つ冷酷無比の斬撃を
看破した急所へ向け、一気に斬り上げて斬り裂き両断を試みる
アドリブ絡み連携歓迎・使用可能残留効果全使用
篠村・蓮十郎
知った事か。
例えその実力が本物であろうと、貴様らは名を騙る只の簒奪者に過ぎん。
……そんな輩を恐れる必要が何処にある?
前進しつつの腕部内蔵型軽機関銃による牽制射撃と
加減速で緩急を付けた突進を併用しフェイントを掛け
隙を突き肉薄する
金棒を振るうには難儀であろう懐へ跳び込み
至近距離で側面、背面へ回り込み攪乱を行う
皮鉄、壱號機械腕、試製鉄刀を身を守る備えとし
機械腕で地面を打ち砕き、飛礫での目眩ましも狙っておく
味方の攻撃もある、挟撃の形になるように立ち位置は逐次変えていこう
攪乱を続けながら敵の動きを観察
利き腕利き足、足運び、武器を振るう癖
死角を取るには上か?左右か?
致命打を撃ち込む機を看破するため、あらゆる挙動を逃さず目に焼き付ける
彼我の速度差を踏まえ、僅かでもこちらが速いと確信を持った時点で攻勢に出る
虚を突くべく刹那の残像を瞬かせた後、全力で突撃
最も守りが薄いであろう位置を狙い
試製鉄刀を振り翳し、剣法・七胴の一刀で両断する
シズ・ノウラ
そっちこそ、私の守る領域に踏み込んでおいて無事で帰れると思うニャよ!
その自信ごと叩きのめしてやるニャ!
とは言っても、真正面から素直にぶつかったらひとたまりもないニャ。
「荊の牢主」のパラドクスで、敵の足元から異界の荊を生やして絡み付かせるニャ。
締め上げながら棘を全身に食い込ませて「捕縛」するニャ。仲間の攻撃や防御とタイミングを合わせて拘束して援護するニャ。
すぐに引き千切られそうニャけど、一時でも動きを抑えられればいいニャ。
ミニドラゴンを召喚するニャ。来るニャ、ドマンス!
動きの止まった隙を狙って、渾身のドラゴンブレスを放つニャ。灼熱の火炎で、巻き付いた荊ごと火ダルマにして焼き払ってやるニャ。
反撃は、マジックシールドを展開した「結界術」で旋風を受け流しながら、猫の様な身ごなしで飛びすさって打撃を軽減して耐えるニャ。
●漁夫の利
『島津義弘』が怒りのままに金棒を地面に叩きつけると、バガンッ!! とすさまじい轟音が響き、まるで地雷が爆ぜたかのように地面が砕けた。舞い上がった粉塵は、想像以上のスピードで走る巨体に吹き飛ばされて散る!
「あれがこの度の大将ですか……島津家17代目当主、島津義弘!」
赤上・イズル(赤き悪魔・g04960)は瞠目した。その気迫のあまり、迫りくる巨体が倍以上に膨れ上がって見えたほどだ。トループス級とは文字通り比較にもならない!
「なるほど、強敵ですね……!」
「感心してる場合じゃない、来るよっ!」
警戒を促すアルラトゥ・クリム(現代の魔法使い・g05088)の声は、ぶおん!! という風鳴りにかき消された。島津義弘が力任せに振るった棍棒の唸りである。同時にその音は、巨大棍棒が振り抜かれてから発生した……つまり敵の攻撃は音を越えたのである。バックステップしたディアボロスたちを、見えない風の波濤が弄ぶ!
「くっ……! いくら異名が鬼島津だからって、獲物まで金棒なんか選ばなくてよさそうだけどね!」
「あれは、真正面から素直にぶつかったらひとたまりもないニャ。私が動きを止めて……」
シズ・ノウラ(深森の幻獣・g10049)は大きく距離を取って着地すると、両手を突き出して島津義弘の足元に意識を注いだ。荒野のように凸凹だらけになった地面をメリメリと割り、異界の危険な棘針植物が萌え出る。ゆらりと立ち上がった植物が、島津義弘の両足に絡みついてスパイクの役割を果たすのだ。
しかし!
「小賢しい!!」
「ニャ!?」
島津義弘は棘針が突き刺さるのも厭わず、力任せに拘束を脱した。そしてぐるんとシズの方に向きを変え、死刑執行人めいて棍棒を振り上げる。ギュイイイイ……明らかに危険な回転!
「させるか」
BRATATA! 横合いから篠村・蓮十郎(鋼剣・g09914)が腕部内蔵型軽機関銃による牽制射撃を浴びせる。
島津義弘は振り下ろそうとした巨大棍棒をぐるんと無造作に一回転させ、弾幕を横薙ぎに一蹴。背面に回り込もうとする蓮十郎の動きを読み、その場でぐるんぐるんと回転する。当然棍棒もその分勢いをつけることになる。遠心力を乗せた打撃は、もはや想像するだに恐ろしい!
「イズル君とのいちゃいちゃ邪魔しやがってー! このやろー!」
蓮十郎の対面に回り込んだツキシロ・フェルドスパー(非日常に迷い込んだ漂流者・g04892)が、回転する島津義弘に近づく素振りを見せる。島津義弘は必殺の一撃でもってツキシロを打ち砕こうと、遠心力を乗せた棍棒をぐんと大上段に振り上げた。ツキシロは棍棒が振り下ろされる一瞬前にその「起こり」を読み、両足でザザザ! とブレーキを踏んで横っ飛び回避!
「死ねィ!!」
「うおっと!」
KRAAASH!! 誰もいない場所に叩きつけられた棍棒が、地面を真っ二つに割いた。地割れが10メートル近くまでビキビキと走り、局所的な地震を起こす。ツキシロは両手足を使って受け身を取りながら、激しい鼓動を押し殺す。ディアボロスは復讐心ある限り死からも立ち戻ることができるとはいえ、あんなパワフルな攻撃を受けたら跡形もあるまい。
「やれやれ、協力して攻撃しないと埒が明かないね。タイミングを合わせよう」
「わかっとるで! さっさとあいつ倒して、豚汁食べなあかんし!」
「ええ、そうですね。勝利の味を堪能しましょう」
ツキシロはアルラトゥに頷きつつ、イズルにウィンクしてみせた。
「ビビって動きを止めたりしたら逆にヤバいニャ、注意ニャよ!」
「それも問題ない。たとえ奴の実力が本物だろうと、所詮その名を騙る簒奪者に過ぎん。恐れる理由がないからな」
シズの警告に、蓮十郎はにこりともせず不遜な言葉を返す。シズは「頼りになるけど逆効果な気がするニャ」と呟いた。
「我を侮っているか? ディアボロス……!」
島津義弘の怒気が強まり、両肩から湯気のようなオーラが立ち上る。棍棒の危険な回転が増し、風が悲鳴を上げた。
「ほらぁ、やっぱりキレてるニャ! いや、でも逆に隙が出来るかもしれんニャ……?」
「そのぐらい単純な奴だと嬉しいね。さあ……ショータイムだ!」
アルラトゥがブレードガンを構え、仲間と入れ替わりに突撃した!
「しょうたいむ、だと? 否!」
まっすぐな魔力刃の刺突を、島津義弘は棍棒を斜めに構えて受け止める。アルラトゥは棍棒の回転に刃を持っていかれるより早くブレードガンを引き戻し、衝突の反発力を利用して跳躍した!
「これより始まるは、愚かな貴様らの公開処刑なり!!」
「そうはいかないね、この集落の人たちのためにも!」
空中でくるくる回転するアルラトゥめがけ、棍棒が地面を抉りながら下から迫る。アルラトゥは棍棒の回転と逆の回転を乗せた横斬撃を空中で繰り出し、再び反発力に乗って上に跳ね上げられる。今度は前方ベクトルをかけて島津義弘の頭上を乗り越えた。そして背後を取りながらの袈裟懸け!
「この勝利は、譲らないッ!」
「ヌウ!」
島津義弘は防御を捨てた。アルラトゥの斬撃に合わせて、蓮十郎が正面から仕掛けていたからだ。試製鉄刀による刺突!
「貰ったぞ。簒奪者」
鋭い刺突だった。義弘をして、胴体を串刺しにされた己を幻視するほどの殺気が乗せられた捨て身の一撃だ。
「愚かなり、復讐者よ!」
アルラトゥの斬撃が分厚い装甲を引き裂いた瞬間、巨大棍棒が蓮十郎に振り下ろされた。この男を仕留められるならば刀傷ひとつは安いものと奴は考えたのだ。そして蓮十郎は、ぐしゃんと叩き潰され肉塊と……否!
「ぬうっ!?」
再び轟音が響き、地面が砕けた。義弘は手応えがないことを訝しむ。意識の集中によって主観時間がスローになり、舞い上がる粉塵の中を注意深く睨む……叩き潰されたはずの蓮十郎が、いない?
「かかったな」
至近! 蓮十郎が命懸けのフェイントをかけたことを、義弘は本能的な危険とともに理解する。蓮十郎は刺突を繰り出さず、勢いそのままに義弘の脇腹に体当たりをかけた。背後からのアルラトゥの斬撃が装甲を裂いて通り抜けると、義弘の主観時間が現実に追いつく――裂傷が爆発! その衝撃で前に体勢を崩した義弘では、蓮十郎の当身を受け止めることが出来ない。今度は後ろ側に仰け反らさせられ、蹈鞴を踏んでしまう。つまり防御ががら空きだ!
「今度こそ、動きを止めてやるニャ! ドマンス、準備ニャ!」
「ぎゅい!」
シズの指示に相棒のミニドラゴンが上空へ羽ばたく。再度生成された棘針植物が、不安定な両脚に完全に絡みついてぎちりと引き締まった。さっきよりも棘が深く突き刺さり、力任せに引きちぎるのを困難にさせる。
「ぐお……!」
義弘の頭脳が高速思考し、対処の優先順位を再計算する。
……今は拘束は二の次だ。自慢の鬼棍棒には、対遠距離戦の装備もある。ミキサーめいた棍棒の回転がさらに早まり、周囲の空気を引き寄せ旋風を起こした!
「棍棒の回転で風を……!? これでは踏み込めません!」
「なら任しとけや、イズル君!」
「ツキ!?」
ツキシロはどんと胸を叩き、不敵な笑みを浮かべて風の中に飛び込んだ。蓮十郎とアルラトゥは旋風に舞い上げられないよう、風の範囲から飛び退り再び挟撃を形成する。
「無茶をする……だが、こじ開けられるならそれがチャンスだな」
「私たちも、牽制を続けよう!」
という二人の声は、すぐ近くにいるはずのツキシロには届かない。タイフーンよりも強烈な風が、その唸りで音をかき消してしまっている。横殴りに吹く風は、前に出るどころか吹き飛ばされないように踏みとどまるだけでも一苦労だ。
「貴様から死ぬか、小僧
……!!」
「やってみろや! 精霊さん、妖精さん、力を貸してな!」
ツキシロは契約ジンを呼び出し、水の魔力を練り上げた。義弘は拘束された状況を逆に利用して、不動のまま高速回転する棍棒を構えている。どこから攻撃したとしても、最大の反撃を叩き込めるカウンターの構えだ。
(「二の太刀要らずってことは、一発攻撃させたらそこにでかい隙が生まれるはず……」)
ツキシロは風に逆らわず、跳んだ。空中で弄ばされそうになるのを微細な体重制御でなんとかコントロールし、義弘とにらみ合う。現実においては1秒にも満たない、だが永遠に感じられる緊張感。
(「さっき出来たんなら、今回も出来る……隙を見切るんや」)
(「……来るか!」)
風が流れを変えた。ツキシロは皮膚感覚でそれを捉えた!
「イズル君、みんな、今やで!」
「!」
風の壁の向こうから聞こえた声に、誰よりも早くイズルが反応した。
「ツキがいるなら、なんでもできる気がする……いいえ、やってみせます!」
そして、腰だめに構えた刀を抜き放ち居合! 横一文字の斬撃は、文字通り空を切り裂いて旋風を霧散させた!
「死ねェい!!」
義弘は満身の力を込めて棍棒を振り下ろした! ツキシロは……その射程の数センチ外だ! 破滅の棍棒が前髪を一房削り取るが、命中はしていない!
「見切ったで! 喰らえや、水流の一撃!」
練り上げた水の魔力を解き放つ。掌から膨大な量の水が溢れ出し、棍棒を振り下ろした直後の義弘を叩きのめした。巨大質量と瀑布の如き激流が激突し、空気を震わせる!
「ぬうううっ!?」
「もらった!」
アルラトゥが仕掛けた! 義弘は棍棒を振り上げ……いや遅い! アルラトゥはその動きを完全に読んでいる! 下から斜めに振り上げられた棍棒を足場に跳躍して角度を変え、死角に回り込んで斬撃!
「ぐっ!!」
「まだまだ!」
呼吸の合間に紡ぐアリアの絶唱が力を与える。アルラトゥはクレーターのような地面を蹴って即座に突撃し、全体重を乗せた刺突を胸部に抉り込む。人体でいえば肋骨の隙間に滑らせるように、横に寝かせた刃が装甲の隙間に命中!
「たっぷり味わえ、これがこの地の人々の怒りだよ……!」
「ぐ、があああっ!?」
アルラトゥは突き刺したブレードガンを両手で握りしめ、さらに体重をかけた。義弘は逃れようと身悶えするが、二重三重に絡みついた棘荊がそれを許さない。状況判断のミスか? いや違う、ディアボロスの連携がそれを上回ったのだ!
それでも恐るべきは鬼島津。もはや一人でも道連れにしてくれようと腹をくくり、両手で棍棒を振り上げたのである。得物は違えどジゲン流の構えであった。つまりは捨てがまりだ。
「……その技も、所詮は簒奪したものに過ぎまい」
蓮十郎は冷徹に斬って捨てた。彼の構えもまた大上段!
「……叩き斬るッ!」
蓮十郎の姿が霞んだ。棍棒を振り下ろすことさえ間に合わず、魔剣・七胴が逆側の脇腹を斬り裂く!
「ば、バカな……!? 我が、後の先をすら得られぬなど
……!?」
「付け焼き刃などより、俺の方が速い。それだけだ」
胴体の両側を貫かれ切り裂かれた義弘は、がくがくと弥次郎兵衛のように上半身を揺らした。切り裂かれ貫かれた傷口からはスパークがバチバチと漏れ出し、血液めいたなんらかの液体がしとどに溢れる。明らかな致命傷だ。
「な、ら、ばァアア
……!!」
義弘はすべての魔力を棍棒に籠めた。
本来ならその魔力を塊にして先端部から放つのが、奴のパラドクスだ。しかしあえて発射せず、エネルギーを貯めたまま棍棒を叩きつけようとしている!
「悪あがきは、もうおしまいニャ!」
「ええ、終わらせます……ツキ、水の力をお借りしますね!」
針荊が全身に絡みついて動きを拘束する。頭上に舞い上がったミニドラゴンが大きく空気を吸い込む……!
「ドマンス、全力で燃やしてやるニャー!」
「ぎゅーっ!!」
ごばあっ!! と、地獄の炉の如きブレスが義弘の全身を飲み込んだ!
「うごあああ!! まだだ、まだ我は……!」
そこへイズルが放つは、斬撃に非ず……己の炎と、ツキシロの水の力を合わせた遠間の一撃!
「水炎共鳴・残響散火――ッ!」
「……!!!!」
光線とも翔ぶ斬撃ともいえるその攻撃の本質は、音波である。水と炎の共鳴は魔力的な共振を発生させ、敵の内部に浸透し爆散せしめるのだ。
内部。然り、蓮十郎とアルラトゥの刻んだ傷跡が、音波を導く道となる。ズタズタのボディは水を吸い込むスポンジのように、共鳴音波を吸い込んだ……そして!
「バカな……バカなぁあああ!!」
外と内、両方から攻撃された義弘は、もはや存在限度を超えるダメージにより巨大な火柱と化して、爆発した……!
●
「よっしゃー! イズル君すごいやん今のビーム! 何あれ!?」
「いや、なんか即興でやってみたら出来ました」
「即興だったん!? アンちゃんこれ自分らも負けられんで!」
キャッキャと少女のように騒ぐツキシロとイズル。
「やれやれ、元気だね……ちょっとでもタイミングがズレたら巻き込まれかねなかったんだけど」
「でも、誰も巻き込まれてないニャ?」
アルラトゥはシズに苦笑して肩をすくめた。
「まあね。みんなで完璧にタイミングを合わせられたからこそ倒せたんだ」
「皆のおかげで、奴の動きは十二分に観察出来たからな」
蓮十郎はにこりともせず頷いた。
「あれだけ見れば、俺の方が速いと確信するには十分すぎる。博打というよりは、必然を積み重ねた結果の勝利だ」
「つまり、私たちのコンビネーションの勝利ってわけニャね!」
シズはドマンスといぇーい! とハイタッチした。
「あっ、あれ俺たちもやりましょうマリコさん! ……マリコさん? マリコさんってばー!」
「またモーラットに呆れられてるし……」
アルラトゥはイズルとモーラットの『マリコさん』の漫才に吹き出した。
「まあ、でもよかったよ。無事に勝てて」
「せやな! 豚汁が無事でよかったで!」
「いや、私が言ってるのは集落のことなんだけど」
「……あっ、せやった! 避難させた人たち迎えに行かな!」
「気付くのが遅すぎるだろう……」
慌てるイズルに蓮十郎は呆れた。そして何かに気付いて振り返る。
「……だが、どうやらその必要はなさそうだぞ」
「「「え?」」」
仲間たちも振り返った。向こうから、避難していた村民たちが手を振ってこちらへやってくるのが見える。
「あれだけ大きな火柱を上げればな。戦いが終わったのは厭でもわかる」
「……なるほど、たしかにニャ」
「じゃあ、皆さんで揃って豚汁パーティですね!」
「執拗に推すね、豚汁。……まあ、お腹空いたからいいけどさ」
アルラトゥの髪を、潮風がなびかせる。爆散した敵の残滓が運ばれていく先を、彼女はじっと見つめた。
「次はシマヅの頭領だ。必ず、届かせないとね」
水平線の向こう、見据えるは強敵。勝利を勝ち取った復讐者たちの戦意は、むしろさらに強まっていた。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【土壌改良】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ドレイン】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV6になった!