『死妖姫カーミラ』の食人儀式

 《七曜の戦》後、モスクワは、サンクトペテルブルクから移動してきた、ジェネラル級ヴァンパイアノーブル『死妖姫カーミラ』と、その取り巻きによって支配されたようです。
 更に、モスクワ中の若い美女達がクレムリンに連行され、カーミラの趣味の犠牲となり、食人儀式により、新たなノーブルヴァンパイアが生み出されようとしています。

 連れ去られた美女を救出し、食人儀式を阻止して、モスクワの人々を護ってください。

 モスクワでの食人儀式を阻止する事で、吸血ロマノフ王朝全土で食人儀式を行うというカーミラの目論見を潰すことが出来ます。


死妖姫カーミラ

死妖姫の狂宴(作者 秋月諒
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●妖姫の指先
 ほう、とひとつ、息が落ちる。それは呆れに似ていたか憂いに似ていたか。或いは、何一つ情というものを滲ませてはいなかっただろうか。艶やかな髪を揺らし、モスクワのクレムリンへとやってきた死妖姫カーミラはゆるりと視線を上げる。
「ディアボロスなどに簡単に殺されるなど、ココツェフ伯爵も、存外役に立たないこと」
 血を思わせる真紅の瞳を、一度、伏せる。二度目に落ちた息は、やはり、という言葉と共に響いた。
「人間を生かして使おうというのが甘いのですわ。まずは、このモスクワの人間全てを、ヴァンパイアノーブルを生み出す為の贄としましょう」
「——では」
 カーミラの言葉に、それまで口を開く事さえしなかった男が顔を上げる。影のようにその場にあり——だが、己が領分を弁えるように女主人の言の葉を遮ること無くいた存在に、カーミラが静かに告げた。
「さぁ、このモスクワで、食人儀式の大儀式を行いなさい。モスクワ中の美女を、捕らえ、儀式を行うのです」
「——仰せのままに。麗しの贄を集めましょう」
 全てはロマノフとカーミラ様の為に。

●教えは近く、願いは遠く
「——まずは、勝利を祝うと致しましょう。
 七曜の戦、皆様のお陰で、無事に乗り越えることが出来ました。ありがとうございます」
 セド・ファジュル(人間の風塵魔術師・g03577)はそう言って、集まったディアボロス達を見た。
「此度の戦で、最終人類史に多くの大地を奪還する事ができました。
 《七曜の戦》の後、各ディヴィジョンの状況は大きく変化しています。現状に合わせた動きが、作戦が必要となってきます」
 ことのつまり、祝いの時をゆったりと過ごすのでは無く——動くなら、今だ、ということだ。
「本来であれば、暫くはゆっくりと……とでも言えれば良かったのですが……、モスクワに動きがありました。
 《七曜の戦》の直前、モスクワで政治の中枢を担っていた、ココツェフ伯爵を討つことに成功した件、皆様もご存じかと」
 セドは一つ息を吸って、ディアボロス達を見た。
「七曜の戦、モスクワはサンクトペテルブルクから来たジェネラル級ヴァンパイアノーブル『死妖姫カーミラ』に制圧されました」
 カーミラが、ココツェフの後任に就いた、ということだ。
「カーミラには、ココツェフ伯爵のような仕事をする気は無いようです。彼女は、内政を行わず、大規模な食人儀式を行っています」
 狙われているのはモスクワ中の、見目の良い女性達だ。彼女立ちを狂気と恐怖に染め、食人儀式の贄としているのだ。
「カーミラの指示で動いているのは、切り裂き卿ペダチェンコ。狙いを定め、隠密で動くのに長けているようです」
 そう言って、セドは顔を上げた。
「皆様には急ぎモスクワに潜入していただきます。そして彼の地で食人儀式を阻止し、儀式を取り仕切る切り裂き卿ペダチェンコを撃破してください」

 現在のモスクワは、死妖姫カーミラの配下が徘徊している。まずは、食人儀式についての情報を集める必要があるだろう。
「モスクワを徘徊する敵は、カーミラの命令で儀式の贄となる美女を探していたり、儀式に必要な捕らえた美女の家族を探しているようです」
 ディアボロスに対する警戒はしていないようだが、だからこそ出来るだけ気が付かれないように行動した方が良いだろう。
「あちらに、我々が踏み込んできている、と知られぬ方が後の動きも行いやすいでしょうから。どうか、細心の注意を。
 食人儀式が行われている場所などの情報を得ることが出来れば、其方に向かってください」
 このタイミングで踏み込むことができれば——少なくとも、今宵の儀式は確実に阻止できるだろう。テーブルにつかされる娘も、その食材として切り刻まれる家族も助けることが出来るはずだ。
「しっかりと、儀式の邪魔をさせていただくことしましょう。あちらが何を用意しようとも」
 ペダチェンコの他、儀式の手伝いにはノーブルメイド達の姿もあるようだ。

「さて、話も随分と長くなってしまいましたね。そろそろ、向かう準備と致しましょう」
 話を聞いて頂き感謝を、そう言ってセドはディアボロス達を見た。
「七曜の戦での勝利は、クロノヴェーダに対してディアボロスという存在を知らしめることとなりました。彼らは、ディアボロスを大きな脅威として捉えているようです」
 故に、クロノヴェーダはディアボロスを警戒する。その動きを、行動を認識した上で。
「敵として、厄介な相手として認識されるようになった、ということでしょう。今までよりも。
 それと、TOKYOエゼキエル戦争から離散した『ヘルヴィム直属軍』について、耳にしている方もいるかと」
 直属軍は、一定の秩序を保ったまま、世界中のディヴィジョンに合流し、そして各世界のクロノヴェーダ政略に、対ディアボロス戦略を広めているようだ。
「情報が共有されている以上【飛翔】や【使い魔使役】の使用は、より慎重に行う必要があるでしょう」
 あちらも見極める目を持ち出した、ということだ。何を理由にこちらの動きを捉えられるかが解らない以上、慎重に動いた方がこちらも結果として動きやすくなるだろう。
「死妖姫カーミラの派閥は、ラスプーチンから主導権を奪い、随分と好きに動いているようですが、ここで確実に止めましょう」
 吸血ロマノフ王朝の全ての人間を、贄とするようなことなど許されない。
「誰もが、明日を生きる権利を持つものです。思うがままに生きれなくとも、利用し、贄とされる理由は無い」
 そう言うと、セドはディアボロス達を見た。
「では、参りましょうか。
 貴殿らに太陽の加護と風の導きがあるよう」

●狂宴、或いは訪れるかもしれない未来
「どういうことよ」
 その一角、シンプルな木の椅子に美しい娘が座らされていた。ほっそりとした白い腕、柔らかな金色の髪がふわり、と揺れる。
「貴方様が健康なのは既に分かっておりますが……ふふ、食事は席についてするもの。食器に使い方は分かりますか?」
 緩く首を傾げたメイドが、娘の頷きを待たずに軽く手を打った。
「では、前菜から。あのお方は美しい貴方に相応しい料理を用意してくださったのですよ」
「料理って……」
 何を、と娘が口を開く前に運ばれてきた白い皿の上には新鮮な野菜と、果実がもられていた。中央、ぽっかりと開いたその空間に娘が首を傾ぐ。
「なんで、何も……」
「それは。食材を目の前で調理するからです。新鮮な食材を新鮮なうちに。気になるならお見せしますわ。貴方様の今宵の食卓にのるのは……」
「……ぁ、あ……ッ」
 それが『なに』であるか、娘にはすぐに分かった。抱き上げるようにして連れてこられたもの。だらりとした腕が握りしめていたのは、家の鍵で、べっとりとした血でぬれた衣の下、下肢は、足りない。
「にいさ……兄さん!」
 無い。足りない。
 買い物に出かけた時にはあったものが。いっておいでと頭を撫でて、いつまでも子供扱いしてきた兄の腕もない。
「……ル、フィナ。ごめんな、兄さんが、もっとちゃんとしてたら……お前のこと、助けられたの、に」
「いやぁ素晴らしき兄妹愛。やはり食材として選んだのには間違いが無かったですね。この肉には、愛が溢れている」
 カツン、と足音を高く己が存在を告げて漸く男の姿は娘の目についた。血濡れの兄を抱き上げ、運んできた男を睨み付けた娘に男は微笑みを返しノーブルメイド達を見た。
「あまり健康では無いけれどね、料理には良いだろう
「料理って、なに、いって……」
「まぁ、不思議なことを。お夕食ですよ。彼は今日の食材となるのですから」
「何言って……ッ放して、放せ! 兄さん、兄さん起きて、逃げてお願い兄さん、ルスラン!」
 ガタガタと娘は椅子を揺らす。どれだけ暴れても、椅子が転がり強かに娘の身体が床を打っても拘束は外れることはなく、しとどに血を流す兄がこちらを見ることは無かった。ただ遠く、もう見えていない瞳で何処かを見ながら言う。
「……一緒に行けなくて、ごめ……」
「美しい心の交流だ。これは素晴らしい肉となる。それでは調理を間近でお見せしますよ。お嬢さん。食材には調理すべきタイミングというものがある。さぁ、お見せしましょう」
「やめ、やめて、お願い、お願い、いやぁあああ」
 男を刻むのは趣味ではないと、そんな台詞めいた言葉を口ずさみながら のナイフが男の皮膚に触れ——娘の悲鳴が響き渡った。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
1
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【光学迷彩】
1
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。

効果2

【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV4 / 【反撃アップ】LV1 / 【リザレクション】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

秋月諒
 秋月諒です。
 どうぞよろしくお願い致します。
 吸血ロマノフ王朝での戦い、どうぞよろしくお願い致します。

*シナリオの仕様上、人肉とかそんな話題が出ます。苦手な方はご注意ください。
 とはいえ、全年齢ですのであんまりにそっち方面に寄せたプレは一度お返しorマスタリングします。

●流れ
①→②→③→④
詳細は選択肢ルールもご確認ください。

▼各選択肢について
1〜2日置いてプレイング採用となります。先着順ではありません。
また、必要人数をぐわっと大きく越えた採用は無いので、そんな感じです。

*技能は、パラドクスを越えた効果は発揮しません。

●冒頭の被害者兄妹について
兄:ルスラン(食材にされる側)あまり体が丈夫ではない
妹:ルフィナ

双子の兄妹。OP時点で既に敵の拠点に捕らわれています。
食卓に兄が出される前となります。

1章:モスクワへの潜入
敵の目を掻い潜り市内に潜入、活動拠点となる場所を確保するぞー

2章:食人儀式を止めろ
食人儀式が行われている場所へ行くぞ、おー。
儀式が行われている場所では、食材となっている兄もいるようです。
妹の前に出される前なので、無事です。

3章:護衛するトループス級『ノーブルメイド』
ばとるぜ

4章:切り裂き卿ペダチェンコ
続ばとるぜ

戦闘時は、負傷時は負傷描写あり。

それでは皆様、御武運を。
74

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


アッシュ・アーヴィング
アドリブ歓迎。他者絡みも可。

それなりに思う事はあるが、とにかく仕事だ。
一から順にこなしてこうか。感情は今は殺しておいて。

現地人に融け込めれる様服は着替え、武器も隠しておけるものは携帯しないでおく。
【完全視界】を利用し視界をクリアにしクロノヴェーダの位置を確認。
ゆっくり、じっくり、観察をし相手の性格を含め吟味し拠点になる場所を見定める。

できるだけ決まったルーティンを持ってる奴が巡回している奴が好ましい。
加えて一般人がそれなりに多い方が紛れやすくていいかも。
一方的に観察できる今こそやりたい放題にできるんだ。
しっかりと準備し、その喉元にナイフを突き立ててやるさ。


●水際に潜む
 息を、殺すようにして境界を越えた。カツン、と、一歩足を踏み入れた先、男の瞳に映ったのは綺麗に整えられた街並みであった。
「……」
 その中に、男は足音を落とした。街中を歩く人々と変わらぬように通りを行く。冷えた風はこの地では珍しいものではないのだろう。
 ——綺麗な街だ、と思う。
 ひどく荒れていることもなく、狭く細い通り妙な連中が屯っていることも無い。綺麗で、活気があり——……。
(「だからこそ、異様だな」)
 アッシュ・アーヴィング(傭兵・g01540)は赤い瞳を細め、息を落とした。そう、異様なのだ。街中、歩く人々は常と変わらず——だがそこに『奴ら』の姿がある。
「今日は、良い香辛料は入っていますか?」
 聞こえた声は女のものだった。清潔なメイド服に身を包んだ女が通りの店に二言、三言と声をかける。
「は、はい」
「それは良いことです。皆、健康でいるのは良いことですから」
 一つ二つ、と世間話をしては、食材の仕入れを聞いて帰っていく。メイドとしての仕事と思えば然程不思議は無いが——問題は、あれがクロノヴェーダだということだ。
(「ノーブルメイドか。右の通りにも二人、左は……行ったな」)
 メイド達の不興を買わないためか。怯えながらも言葉を返し、姿を消せば当たり障りの無い会話に戻る。何を仕入れたかも結局口にしないまま——だが、あの会話を聞くにメイド達は頻繁に店に姿をみせるのだろう。
(「後は、何処をどう見て回ってるかだな」)
 それが分かれば、捜索範囲を絞ることができる。儀式が行われている場所も見定めることができる。
「……」
 食人儀式。捕らわれた兄妹。
(「それなりに思う事はあるが、とにかく仕事だ。一から順にこなしてこうか」)
 傭兵は己の心を殺す術を知っている。息を一つ吐いて、男は通りの影に身を隠す。
「まずは捜索の拠点捜しか。メイド達が動きを見て考えるとして……」
 一度伏せた瞳をゆっくりと開く。強化した瞳で捉えた『視界』は暗がりを散らす。住宅街に向かうメイドもいるようだ。
(「店を回って買い物もして……それで、住宅街の方にも向かう、か。どいつも人がいる方を通ってるな」)
 大通りを通って、右か左。店の多い方から区画のひとつ、ひとつを見て回るようにして街の人々に声をかけて回っている。
(「となりゃ……そうだな。行ってない通りにも目はある、か」)
 強化した瞳が細い通りにいたメイドの姿を捉える。ふ、と小さく笑ってアッシュは顔を上げた。
「ま、向こうには近づかないようにするとして……このあたりで拠点を探した方が良さそうだな」
 店を経由して回るメイド達は、どうやら決まったルーティンで動いているようだし——表の通り、店の2階で部屋を取るか、物置に使ってそうな部屋に忍び込ませて貰うのが良いだろう。
「カフェの上あたりか、肉屋の物置か。……と、また店の前にメイドか」
「皆様お変わりは無いですか?」
「え、えぇ。勿論です」
「ふふ、健康なのは良いことですね」
「……」
 また『健康』だ、とアッシュは思う。儀式に健康な生贄を求めているのだろうが——ノーブルメイドが「そう」聞けば、皆、健康だと応えるだろう。
「その場凌ぎでも嘘はつく。そんな分かりきったことを何で聞いて……、いや、動かす為か?」
 健康な体作りか。少しでも不調を感じたら医者にでも行くようにか。
「生贄に引き摺られていくより、親家族が勧めた先で、か」
 その手のやり方は、確かに存在する。
 は、と息を吐いてアッシュはあたりをつけた部屋を覚えながら通りから歩き出した。
 全ては、奴らを仕留めるため。
「しっかりと準備し、その喉元にナイフを突き立ててやるさ」
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!

——メイドは通りの店で買い物をして、住宅街を回っている。人の居る場所を通り、人々に世間話や健康か声をかけているようだ。<メイドの周回ルートについて①を入手〉<メイドの会話を入手>

——拠点には、カフェの2階か肉屋の二階の倉庫が良さそうだ。通りを移動するメイド達を見ることが出来る。
 倉庫は窓が開いている。2階から忍び込むことが出来るだろう。<活動拠点候補について①・②を入手>
アー・フーベート
ヴァンパイア・ノーブルの支配は
これまでも悪辣きわまるモノばかりでしたが……
遂にまつりごとをも放棄したのか
ここに住まう人びとは統治すべき臣民ですらないということか
……吐き気がする

目立たない色の服装、防寒着を着用
モスクワ市民に紛れられるかっこうで潜入
私は生贄候補にはならねェが
念のため【光学迷彩】を活用して敵の目を警戒しつつ
路地や物陰に身を潜めながら歩く
市民の会話に聞き耳を立て情報を得ましょう

カーミラの所業はまだ広く知れ渡ってないとしても
美女が攫われて、ときにその家族の消息まで途絶えるなんて事件
うわさになっててもおかしくない
……盗み聞きなんて趣味じゃねェが……悪ィな、許してくれ

関連する話題が耳に入ったら
私も「年頃の妹が心配で気落ちしてる兄」を装って会話に混ざり
さらに詳細を聞き出せないか試す
「そうは言っても街中だ、いったいいつ、どうやって……」とか
「どこへ連れてかれるんだか……」ってね

得た情報は仲間と共有して精度を上げていこう
これ以上の暴虐、断じて許してはならない
必ず食い止めなければ!


●錐は袋に隠せず
 ひゅう、と1度、強く吹いた風が空の雲を掠う。今日は随分と風が強いらしい。日差しが作った長い影を見送りながら、アー・フーベート(光輝なる義務・g01578)は荷箱の横に身を寄せる。積みあげられた荷箱は、表の店のものらしい。
(「メイド達の姿がある……か」)
 先に情報収集に出た仲間から、狭い通りにはノーブルメイドの姿がある、という情報は届いていた。メイド達は、表の通りから住宅街まで一定のルートで回っているらしい。
(「これまでも悪辣きわまるモノばかりでしたが……遂にまつりごとをも放棄したのか」)
 ここに住まう人びとは、最早、統治すべき臣民ですらないということか。
「……吐き気がする」
 きつく拳を握りしめるようにして、感情を、怒りを剣士は押し殺す。刃を抜くべき時は理解している。
「カーミラの所業はまだ広く知れ渡ってないとしても、美女が攫われて、ときにその家族の消息まで途絶えるなんて事件うわさになっててもおかしくない。話を聞くなら……表より、裏の通りか」
 ゆるり、とアーは周りを見渡す。表に店は集中しているが、カフェや食堂は一本入った通りにあるようだ。ひゅう、と冷えた空気が通りを抜ける頃——寂れた通りに、憔悴した声がひとつ、届いた。
「聞いていないか? アキムだよ。急に、いなくなって。あいつ店にも顔出してなくてな」
「アキムって婚約者に逃げられたやつだろう? キーラって花屋の看板娘の。花屋の店主も心配してたよ」
「彼女の家族も見当たらないし、キーラと仲良かった子もいなくてさ」
 アキム、という青年を探しているらしい男は息を吐いた。
「ほら、美人の。兄貴は体弱いから心配してたルフィナって子。何か聞いて無いか話し聞きたかったんだけど……」
「……、なぁ、目立つことはやめておけよ。最近多いだろう、知らぬ前に店畳んでいなくなっているやつ。俺の知り合いも、姉貴が帰ってこないって言って、探しに行ってそれっきりだ」
「——」
 婚約者がいなくなった男も、ルフィナという娘の方もどちらも同じく『美人の女性』がいなくなっている。
(「……盗み聞きなんて趣味じゃねェが……悪ィな、許してくれ」)
 彼らは確実に何かを知っている。そのまま、年嵩の男の方が話を止めようとする前に、アーは、少しばかり焦ったような足音を作って通りに踏み入った。
「……見なかったか? これくらいの背丈の、妹を」
「おいおい、あんた大丈夫か? その調子で、表の通りも歩いていたんじゃ無いよな?」
 年頃の妹が心配で、気落ちしている兄を装うようにしてアーは息を吐いた。
「妹が戻らなくて……、年頃の子とはいえ……」
 最近は、と言葉を濁したアーに、青年と男は顔を見合わせた。
「今は、心配だろうな。不躾なこと聞くが、妹さんは美人か? 年頃の娘だけかと思えば、嫁御も帰って来ないってやつが出てきててな」
 俺は、と男は息を吐いた。
「連れて行かれたんじゃないかって思う」
「サーヴァさん! あんた、なんか知ってんのか? アキムのことも」
「アキムのことは分からねぇが、多いんだよ。最近、この通りにその兄さんみたいに疲れた顔で家族や恋人を探しに来る奴が」
 だから、デカい声を出すなって言ったんだ、とサーヴァと呼ばれた男はアーを見た。
「領主様か、あのメイドかは分からねぇ。ただ、意味も無く外に出て稼いでいけるか? ってなるとな……」
「そうは言っても街中だ、いったいいつ、どうやって……」
 アーの言葉にサーヴァは首を振った。
「分からねぇ。不健康ってなら、まだな。表でメイド達が聞いてただろう? 健康かって。お陰で街じゃ、不健康な奴は間引かれるって話しでな」
「皆、健康に気を遣っている、か」
 健康、確かに表の通りでもメイド達はそう聞いていた。尤も、健康かとクロノヴェーダに問われれば、人々はそうだと答えるだろう。それこそ必死に。
「そういや、アキムも言ってたな。健康にしとかなきゃって。キーラも先生に診て貰おうって」
「——」
 診察所に行くって、と続いた話に、アーは小さく目を瞠った。
(「健康かとメイドに問われれば、皆、健康を意識する。診療所にかかるようになるだろう。だがそこから、美人の娘だけが連れ去られていたら……?」)
 家族は、恋人は、行くように勧めた先で大切な一人を失い、美しい娘は大切な家族や恋人を食材として儀式に使われる。
「——皆、診療所に向かっていた、か」
 彼らが会話の中で答えを得てしまう前に通りをアーは通りから引き上げていた。彼らが自ら動いてしまわないように、最後に話を変えて。
「これ以上の暴虐、断じて許してはならない
必ず食い止めなければ!」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!

——メイドは裏の通りには巡回に来ていないらしい。人気の少なく、メイドが訪れない場所では人を探しに来る者もいるそうだ。<メイドの周回ルートについて②を入手〉〈噂話をする場所〉を入手

——メイドが健康か、と問う為、人々の間では「不健康なものは間引かれる」という噂があり、健康に注意しているらしい。診療所に少なくはない人がかかっている〈街の噂について①〉を入手

——婚約者がいなくなった者、姉がいなくなった者がいる。探しに来ていた家族も、いつの間にか居なくなり店を畳んでいることが多い〈街の噂について②〉を入手

——居なくなった娘達は診療所にかかろうとしていたようだ。健康の為やちょっとした不調で、家族や恋人にすすめられてかかっている〈診療所について〉入手
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マスターより

ご参加頂きありがとうございます。
第一章の結果にあわせて、導入を追加致します。
導入追加まで、暫くお待ちください。

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●心に刺さった棘
「店の並んでいる表の通り、それと裏の狭い通りに数人ってところだな。表の通りに出ていたメイドは、そのまま住宅街の方まで回っている」
 そこでも、と集めた情報を並べながらディアボロスは言った。
「健康か聞いているな。クロノヴェーダが聞けば、健康だと答えると分かっているだろうに」
 そこも、仕掛けだろう、と息をついたひとりにディアボロスの青年は頷いた。
「あぁ。健康かと聞かれ続ければ、人々はちょっとしたことでも気にするようになる。連れて行こうと思えばできるだろうに。自分の足で、家族達の勧めで行かせるんだろう」
 診療所とやらに、と吐き捨てた息ひとつ、問題は噂の診療所の場所が簡単には分からないことだ。人々に聞くにしても、ノーブルメイド達の巡回がある。人の目もだ。
「不健康だと思われるのも、巻き込まれるのも困る、か。話を聞いてくれる相手か、誰か今向かおうとしている人が居れば良いんだが……」
 或いは、とディアボロスの男は息を吐く。
「美しい女性、だろうな」
 とりあえず、男二人では簡単に変身はできないとして。モスクワでのノーブルメイド達の動きの詳細も、人々の話も十分聞くことができた。敵の動きは、こちらの活動の拠点として確保した場所のお陰でつかめている。出し抜くことはできるだろう。
「人々の動きを見ながら、当たりをつけて乗り込むしかないな」
 さぁ、これからどう動く?

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
マスターより

ご参加ありがとうございます。
秋月諒です。

第二章・食人儀式を止めろ となります。

拠点は、1章で情報を入手した「カフェの2階」or「肉屋の二階の倉庫」で選択が可能です。
プレイングで拠点がばらけていた場合、多い方となります。同数の場合はプレ判定となります。

*どちらも問題無く店内に入れ、倉庫に忍び込めます。

*前章でそれぞれ手に入れた情報、導入の情報は共有している前提でOKです
(共有していない前提に為たい、という場合はそれもOKです)
*前章であった市民への接触は可能です。

✓食人儀式の場所に踏み込む所までとなります(戦闘は次章)
✓踏み込んだタイミングで、兄・ルスラン(食材にされる側)の確保が可能

それでは皆様、御武運を。
●プレイングについて
1〜2日置いてプレイング採用となります。先着順ではありません。
また、必要人数をぐわっと大きく越えた採用は無いので、そんな感じです。
レイラ・イグラーナ
連れ去られた方々の情報の収集、感謝いたします。心得ました。
裏通りに参りましょう。そこにも診療所へと繋がる手がかりはあるはずです。

拠点は肉屋の2階倉庫を使わせていただきます。
隠密して裏通りまで移動、一般的な人民の服を着て裏通りにメイドの巡回のないことを確認して情報収集を行います。

きょろきょろと誰かを探すようにうろうろと彷徨い、何往復かしたところで、【友達催眠】を使い、不安気な様子である程度大きな店の方に話を伺います。
すみません、妹を探しているのですが……見ておりませんか?私に似た銀の髪で赤い目の……
最近モスクワに来て妹と2人で表の通りで暮らし始めたのですが、最近妹が少し……ほんの少しですが体調を悪くして。
最近よく来られる従者の方々も健康状態を気にされておりますし、妹は誰かに場所を聞いたのか、「診療所に行く」と言って出かけて……戻らないのです。
診療所がどちらにあるか、ご存じないでしょうか?
妹が重い病気に罹っていて、苦しんでいるのではと思うと、いてもたってもいられず……


アッシュ・アーヴィング
アドリブ歓迎。他者絡みも可。

女装するわけにもいかんし…って困ってた所で心強い救援だな。
正直手詰まりだったしフォローに回らせてもらおう。

【光学迷彩】を利用し一般人から認識され難い状況で味方のサポートを行う。
メイドの巡回ルートは叩き込んであるが万が一近づく様子があればサインを送って「探りを入れている」ことをバレない様に立ち回る。

診療所の場所がわかったら突入できる近場で待機。
儀式を発見したor発見のサインをもらったら【怪力無双】を使用し最短距離で突入し場を荒らしに入る。
壁だろうが窓だろうが無視して突入しファーストアタックの主導権を取りに行く。


●暗殺者と傭兵
 肉屋の二階は、倉庫となっていた。積みあげられた荷箱の多くは軽く——元から、そう中身が詰まっていたものでもないのだろう。香辛料が目立つ倉庫に、二階の窓を開けて娘はするり、と滑り込む。慣れた様子で窓に一枚、紙を挟むようにして音を殺せば薄暗い倉庫から外の様子を見ることが出来た。
「あれが表通り、東に向かってメイド達が巡回しているのですね」
「あぁ。メイド達は情報の交換をしてる形跡は無い。小まめに連絡を取って、エリアを潰しているという訳でも無い」
 基本、と棚に背を預け、その身を影に置いていた男は言った。
「ターゲットとなる相手を探してるか、一般人にプレッシャーをかけてるんだろう」
 吐く息に滲みかけた感情を沈めると、男は——アッシュ・アーヴィング(傭兵・g01540)は、射し込む日差しの中に立つ仲間へと声をかけた。
「女装するわけにもいかんし……って困ってた所でな。救援、心強い」
 アッシュの言葉にカツン、とつま先で影に触れた娘は艶やかな髪を揺らした。
「連れ去られた方々の情報の収集、感謝いたします。心得ました」
 一礼と共にそう告げたレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は、二階にある小さな窓からもう一つの通りを見た。
「裏通りに参りましょう。そこにも診療所へと繋がる手がかりはあるはずです」
「俺はフォローに回らせてもらおう。メイドの巡回ルートは叩き込んであるが、万が一近づく様子があればサインを送る」
 指先でひとつ、形を作ってみせたアッシュにレイラは頷いた。
 ——さぁ、踏み込む時間だ。

●ポドフヴァート
 表の通りに比べ、裏の通りは随分と閑散としていた。人が疎らであるというよりは活気が無いのだろう。表を賑やかと評すのであれば、裏通りにあるのは押し黙ったような静かさだ。
「……」
 それでも、此処には人々の声があった。
 足音を響かせるようにして、レイラは通りに入り込む。右を見て、左を見て——そうして、裏の通りの奥に進み、見付けた店を、最初から「そう」と知っているようにそっと覗き込む。雑貨屋だろうか。食器の並べられた棚の向こうを一度見て、また外に視線をやる。それは店の中を伺っているというよりは『誰か』を探しているかのようだった。
「……お客さ……」
 だからこそ、店主も不審がるのではなく心配そうに声を上げたのだろう。だがその一度目を、レイラは置いていく。来た通りを戻って、次は右に曲がる。うろうろと彷徨いながら、通りを何往復かしたところで——足を、止めた。
「すみません」
 一歩、娘が足を踏み入れたのは食堂であった。酒も出しているのだろう。酒樽の並べられた店内は、他の店に較べれば幾分か大きい。
「妹を探しているのですが……見ておりませんか?」
「……妹? あんた——……」
 訝しげにこちらを視た店主が、一拍足を止める。レイラと、目があったのだ。二度、三度と瞬いた後に、店主は心配そうに眉を寄せた。
「あんたも……、いや、妹さんはどれくらいだい? まだ子供ならこんな裏の通りには」
「いえ。私より少し下で。私に似た銀の髪で赤い目の……最近モスクワに来て妹と2人で表の通りで暮らし始めたのですが、最近妹が少し……ほんの少しですが体調を悪くして」
「——」
 小さく目を瞠った後に、店主は息を吐いた。
「表……そうか、だからお嬢さんはこの辺りで探し回ってたのか。雑貨屋の婆さんも気にしてたが、人捜し、か」
 心配そうにこちらをみると、店主は声を潜めるようにレイラに言った。
「心配だろうが……悪目立ちするとあの方達に変に目をつけられるかもしれない。このあたりであれば、巡回も無いが……、何か行き先が分かるものは? 妹さんは体調を崩していたんだろう?」
 薬を扱う店であれば、この通りでは無いが、と言いながら店主は眉を寄せる。薬を扱うのはメイド達の巡回がある通りなのだという。
「薬屋に行くような話はなかったのですが、ただ、最近よく来られる従者の方々も健康状態を気にされておりますし、妹は誰かに場所を聞いたのか、「診療所に行く」と言って出かけて……戻らないのです」
「診療所に……? 妹さんは、診療所に行って戻ってきて無いのかい?」
 診療所に行くと言って、ではなく『行って』と返した店主に、レイラは頷いた。
「診療所がどちらにあるか、ご存じないでしょうか?」
「——……、それは」
 言い渋るというよりは、ひどく言いにくそうな顔で店主は僅かに視線を逸らした。友達催眠の効果が無ければ、恐らくもっと単純に話を逸らされただろう。
「妹が重い病気に罹っていて、苦しんでいるのではと思うと、いてもたってもいられず……」
 不安げなレイラのその様子に、店主は覚悟を決めたようにきつく結んでいた唇を解く。
「診療所に行くと言っていたんだな? あの方達に、従者の方々に連れて……、手を引かれていったわけではなく」
「はい」
 連れて、と言いかけたのは此処で既に少なくは無い市民が行方不明になっているからだろう。頷いて視線を返したレイラに、店主はきつく拳を結んだ。
「ここの所、お嬢さんみたいに誰かを探してるやつがよく居てな。仕舞いにそいつ自身もいなくなる。健康かって聞いて回るメイドがいて、不健康なやつが間引かれてんじゃ無いかって噂もあるが……、妹さんが診療所に行くって言ってたなら、まだ生きてる可能性はある」
 息を吸う。覚悟ひとつするように、店主は言った。
「西側……領主様の館の方にはなるが、途中に広場がある。随分と古ぼけてるが噴水だが、目印には調度良いもんだ。本当はもっと明るい場所に診療所もあったんだが……色々あって、移動してな」
 昔は裏門があっという場所に、寂れた場所に診療所はあるのだという。賑やかな街中からは外れ、裏の通りから見ても離れたその場所は向かう内に人目にもつかなくなるのだろう。
『なるべく、人目につかないように行った方が良い。妙な事を告げ口する奴がいないとも言えないからな』
 ここ最近、行方不明になるのは美しい娘ばかりだ。店主も気をつけるようにと言ってはいたが——これでは、人目につくことも難しいだろう。
「表の通りを経由すれば、或いはなのでしょう。向かった姿が目撃されていないのは、それも理由でしょうか」
 レイラは辿り着いた診療所を前に、合図を送る。正面、人の気配は無いが——僅かに、人の声がする場所がある。
「……」
 裏庭を経由して、診療所の敷地に滑り込んだ二人は窓越しにみえた姿に言い争うような声を聞く。
「……あそこです」
「——あぁ」
 場所が分かれば、後は踏み込むのみ。石像を足場に、た、と蹴り出すようにして二人は二階の窓を割るように儀式場へと飛び込んだ。
「……な……!?」
「ディアボロス!? 何故……!?」
 驚愕に目を見開いたノーブルメイド達を前に、レイラとアッシュが見付けたのはその身を血に濡らした——だが、確かにまだ生きている青年の姿だった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!

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ご参加ありがとうございます。秋月諒です。
前章の結果を踏まえた導入追加まで暫くお待ちください。
●クローシュ
 飛び込みと共に砕け散った窓硝子が、部屋の中に散らばっていた。日差しを急に取りこんだのだろう。きゃ、と驚いたように声を上げる娘と共に、青年の呻くような声が響く。そして——……。
「これはまた、礼儀のなっていないお客様のようですね。今日は、来客の予定は無かったのですが……」
「えぇ、本当に。困りましたわ」
 溜息ひとつディアボロス達へと視線を向けたのはノーブルメイド達であった。
「素敵なディナーを楽しむ予定でしたのに。いきなりいらっしゃっても、席はありません」
 ゆっくりとノーブルメイドはそう告げると、ディアボロス達を見た。
「ご存じかと」
「予約すれば入れたか?」
 ディアボロスの一人が声を投げる。落ちた硝子の破片を、軽く足で払う。地に倒れたままの青年がひとりいたからだ。
「……」
 青白い顔で、血は微かに流してはいるが——重傷はまだ、負ってはいない。あと一人、踏み込んできたディアボロス達に驚いたように声を上げた娘がテーブル越しにこちらを見ていた。
「貴方達……いったい……、ちがう、そんなことより、早く、早く逃げて! 兄さんを連れて、遠くに行けば、きっと……」
「きっと……? いや、少しばかりディナーが遅くなるだけですよ。お嬢さん。だが、そうして自分は残ろうとする君をみれば、お兄さんはもうこの診療所に戻ってくるだろう」
 床に落ちた硝子のひとつを拾いあげ、男はそう告げた。ディアボロス達がこの場に踏み込んだことも、儀式場が揺らいだ事実も気にする様子など無く——或いは、見せぬことに長けているのか。
「美しい貴方が涙に濡れようとも」
「……っ」
「ディアボロスの皆さんにもゲストになってもらおうじゃないか。この肉は愛に溢れ、彼らはきっと信念と覚悟を有した肉になるだろうね」
 素敵な食材だね、と笑うように告げると、男はディアボロス達を見た。
「私はペダチェンコ。切り裂き卿などと呼ばれたりしてはいるが、今日はこのディナーの主催のようなものさ。君たちも素晴らしい食材として、招こう」
「……貴方方の思うとおりになると、本当にそうお思いですか?」
 ディアボロスの言葉に切り裂き卿ペダチェンコは笑った。
「ならずとも、すれば良い。ここで何が起きているか知っているから、君たちは来たのでしょう。ならば、儀式は完遂しなくては」
 メイドの皆さん、と切り裂き卿は告げる。
「お願いしますね。ディアボロスの皆さんは、メインディッシュに添えましょう。お嬢さん、貴方を助けに来た方々ですよ」
「——ぁ、あ」
 ひゅ、と娘が息を飲む。絶望に飲まれる姿に、どうぞ涙を拭いて、とハンカチを置いた男は微笑んだ。
「楽しいディナーを始めましょうね」

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ご参加頂きありがとうございます。秋月諒です。
第三章ノーブルメイド戦となります。

▼リプレイについて
 戦闘開始からスタート
 戦闘中に、被害者の兄妹に敵が手を出してくることはありません
 ディアボロス達が戦闘に勝利すれば、気絶している青年を救うことができます。。
 四章にてボスを撃破すれば、妹も救出できます。

▼戦場について
 診療所の一角、それなりの広さのあるリビング。
 真ん中に大きなテーブルが置かれており、食事が並べられている。人肉料理はまだありません。
 妹が椅子に括り付けられたままでいますが、特別何かしなければ特に巻き込まれません。彼女にこの状況を見せて、儀式を成功させるつもりでいるので丁重に扱うようです。

▼プレイングについて
1〜2日置いてプレイング採用となります。先着順ではありません。
また、必要人数をぐわっと大きく越えた採用は無いので、そんな感じです。
 
それでは皆さま、御武運を。
レイラ・イグラーナ
お二人、ですか。
街の噂を聞く限り、過去にもっと多くの方がこの診療所に向かっていたはず。
……悔やむのは後ですね。まずはお二方を助けましょう。

妹君は攻撃に巻き込まないようにしているようですが、兄君の方は息があれば傷付けることに躊躇はしなそうです。
敵のパラドクス攻撃に巻き込まないよう、位置取りには気を付けましょう。

銀の針をかぎづめのように手に持ち【手製奉仕・爪】。戦場を駆けて敵に接近し、銀の針による斬撃でノーブルメイドたちを切り裂きます。
ペダチェンコはまだ儀式を行うつもりのようでしたね。配下もそれに沿うしかないでしょうが……私がそれに付き合う理由はございません。

椅子に縛られた妹君は戦闘に巻き込まないように気を付けつつも、必要ならばテーブルや椅子も足場にして戦います。
行儀の悪さは大目に見て頂けると幸いです。
醜悪な儀式を尊重し、足蹴にしないように敬意を払うような教育は受けておりませんので。

鞭による攻撃は銀の針のかぎづめで払い、縛られてもすぐに切断することで長時間拘束されないようにします。


アッシュ・アーヴィング
アドリブ歓迎。他者絡みも可。

速攻!考える暇は与えない!
間を開けず【傭兵式格闘術】での接近戦を仕掛ける。

銃器は少年に当たりかねないのでゼロ距離での使用以外は控える。
加えて接近格闘戦に持ち込むことで敵の意識と攻撃範囲を限定させるのが目的。
メイドの攻撃はある程度は必要経費として受け入れるが、
継戦不能になる危険は回避するよう心掛ける。
鞭にはナイフでの切り払い、心臓抉りにはガード、関節取っての回避等臨機応変に対処。
ホントはグレネードやショットガンをぶっ放したいがねぇ、保護対象が居る以上は仕方ない。

味方の射線上に入る時はメイドの後ろに回って挟撃することを頭には入れておく。

メイドさんは好きだしまだ踊っていたい気持ちもあるんだが、
仕事を優先させてもらおう。
主以外に刺されるのは屈辱かい?
隙を見せたらナイフが突き刺さるぜ。
せっかくの接近戦、耳元での煽りも使ってこっちのステージで少しでも優位に立たせてもらうぞ。


●或いはより深く遠いところまで
「——速攻、行くぜ」
 瞬発の加速。床を蹴るようにしてアッシュ・アーヴィング(傭兵・g01540)は前に出た。一歩、二歩、下ろす足で床を蹴って低く跳ぶ。身を前に倒すように低め、飛び散った破片を飛び越えれば、速攻の踏み込みにノーブルメイドが息を飲む音が耳に届く。流石に口に出して慌てては見せないか。だが——動揺ひとつ、見えたならば十分だ。
(「——それで良い」)
 この踏み込みは相手に考える暇を与えない為のもの。距離を詰めれば、相手の動きを制する。広いとは、結局は室内だ。後ろに退く選択肢など軽率にとれない。そうなった時、相手は何を選ぶのか。
「面倒な」
 前に、出る。踏み込んでくる。だが、その一歩をノーブルメイドが選択する前に、アッシュは既に二歩入れた。間合を制したのは——こちらだ。
「——悪いな」
 口の端、上げるようにしてそう告げる。た、と短く入れた最後の一歩、メイドの影を踏む。距離に、僅か身を引いた相手へとアッシュは拳を叩き込んだ。
「これには覚えがあるんだ」
「……ッぁ」
 傭兵式格闘術。それは傭兵としてのアッシュ・アーヴィング生かし、育てたものだ。
 一撃、叩き込んだ拳と共に目の端、光って見えた何かに空いた手で握ったナイフを振るう。ヒュン、と一撃、払うように切ったのは——鞭だ。
「面倒な」
 薙ぎ払うナイフと共に真横から来たメイドの腕を掴む。な、と漏れた声に、笑うようにアッシュは告げた。
「ダンスはどうだい?」
「——何をい、ッく、ぁあ!」
 手首を捻るように関節技を決める。鈍く、響いた音と共に、拳を握っていた手に銃を落とす。少年に当たりかねないから、使うならゼロ距離と決めていた。
 ——ガウン、と一撃、もう一体のメイドに銃弾が届く。ぐらり、とノーブルメイドが身を揺らした。
「この、無作法者が……!」
「お望みのテーブルマナーってやつじゃ、ないかもな」
 そちらさんの、とアッシュは身を沈める。ひゅん、と上を抜けていった鞭の代わりに足を払う。とん、と避けたノーブルメイドに肩を竦めれば、カツン、と鋭く仲間の足音が響く。
「作法で語らうのであれば、お客様を縛り付けるのも相当な無作法でしょう」
 メイドでなくとも、とレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は告げる。カツン、と落とす足音は、その時初めて響いた。暗殺を識り、革命を識る娘は赤い瞳をノーブルメイド達に向けた。
 部屋の中、見つけたのは二人、だ。街の噂を聞く限り、過去にはもっと多くの人々がこの診療所に向かっていた筈だ。
(「……悔やむのは後ですね。まずはお二方を助けましょう」)
 椅子に縛り付けられている妹の方は、巻き込まれる事は無いだろうが——浅く、息をしている兄については、ノーブルメイド達も傷つけることに躊躇はしないだろう。
「……」
 ならば——前に、出る。
「明月の龍、貪食の蛇」
 唇に小さくレイラは音を乗せる。囀りのように、されど、踏み込む一歩に音を合わせて——手の中に銀の針を落とす。
(「ペダチェンコはまだ儀式を行うつもりのようでしたね。配下もそれに沿うしかないでしょうが……」)
 短く息を吐く。鉤爪のように銀の針を手に持つのと、た、と短な足音を戦場に響かせたのは同時であった。低くレイラは前に跳ぶ。
「私がそれに付き合う理由はございません。」
 一歩、踏み込んだ娘にノーブルメイドが鞭を持つ手を振り上げた。
「ならば、マナーのお勉強と参りましょう」
「——」
 赤い血が如き魔力が鞭に宿る。鮮血に似た匂いに、弧を描くように構えられたそれにレイラは——だが、前に出た。
(「兄君を巻き込ませはしません」)
 カン、とヒールが床を叩く。軽く、蹴って前に出るとレイラは来客用の椅子に足をかけた。飛び越えるのではない、足場にして——跳ぶ。
「な……! 上、に」
 ひゅ、とノーブルメイドが息を飲む。振り上げた鞭では、影を落とすように跳んだレイラには届かずその意識が上に向いた以上、あの青年が巻き込まれることは——ない。
「忿怒の腕が虎狼を削ぐ」
 身を落とす、落下の勢いと共にレイラは針を持った手を振るった。ひゅん、と鉤爪のように振るう。虎狼がその腕を振り下ろすように。
「っく、この……ッ針程度、で……ッ」
 ザン、と針がノーブルメイドを『切った』銀の針は刃のように鋭くメイドの胴に沈む。核に届いたか。ぐらり、と倒れる一体を視界に、降りた足を軸に、真横に腕を振るう。相手を視界に収めるより先に、気配だけでレイラは腕を振るった。
「……ッぐ、ぁ」
 ザン、と鋒が踏み込んできたノーブルメイドの腕を払う。深く沈んだ一撃にメイドが倒れれば、目の端、何かが床を蹴った。
「これで、散りなさい。ディアボロ……」
「——まぁ、断っとくだろう」
 それは、と告げる言葉と共に、た、と踏み込んだアッシュの向けたナイフがノーブルメイドの背に触れていた。
「……!」
「メイドさんは好きだしまだ踊っていたい気持ちもあるんだが、仕事を優先させてもらおう」
 笑うようにアッシュは告げる。深く、突き刺さったナイフを引き抜けば、ぐらり、と倒れた一体を影とするように鞭が来た。
「躾の、時間です!」
「——」
 ひゅん、と振り下ろされた鞭に、ナイフを振り上げる。切り払うように一撃、勢いを殺す。鞭は強かに腕を打ち、裂けた皮膚から血が滲む。——だが、それだけだ。
「ここまでは必要経費だな」
 は、と吐いた息と共にナイフを構え直せば、たん、と短い足音と共に駆けたレイラがノーブルメイドの首を切り裂いていた。
「行儀の悪さは大目に見て頂けると幸いです」
 テーブルを飛び越えた先、切り裂いた針を持ち直す。椅子に縛られたままの彼女を巻き込まぬように、レイラとアッシュは射線をずらすようにして戦っていた。一体、また一体とノーブルメイド達が倒れ——だが、その事実さえ悠然とした笑みで受け止め、眺めているペダチェンコにレイラは冷えた視線を向けた。
「醜悪な儀式を尊重し、足蹴にしないように敬意を払うような教育は受けておりませんので」
「やぁ、これは。手厳しいな。ディアボロスは」
 だが、とペダチェンコは笑う。
「君たちを食材に、今日のディナーとしてお出しするのも良いと思うんだよ」
 彼女もきっと、と目の前で繰り広げられる戦いに戸惑いを隠しきれずにいた娘へとペダチェンコが視線を向けた。
「そうは思わな……」
「いや、趣味が悪いだろ」
 吐く息と共にアッシュが告げる。ペダチェンコの言葉を切る。
(「ホントはグレネードやショットガンをぶっ放したいがねぇ、保護対象が居る以上は仕方ない」)
 間合深く、影を踏めば鞭は振るえない。鞭を構えた腕を——関節を取りながら、空いた手に持ったナイフを向けた。
「主以外に刺されるのは屈辱かい?」
「——ッ貴様」
 深く、刃は沈む。驚愕より苛立ちを見せたノーブルメイドにアッシュは耳元で囁くように告げた。
「隙を見せたらナイフが突き刺さるぜ」
 煽る言葉と共に沈めたナイフを引き抜く。折角の接近戦だ。煽る言葉を唇に乗せ、戦場をこっちのステージに変えていく。苛立ちを隠しきれずに振るう鞭では——遅い。
「さて、ダンスも終わりだ」
「最後は、貴方ひとりです」
 アッシュのナイフと、レイラの銀の針がノーブルメイド達に沈む。最後の2体、崩れおちれば——残るはこの儀式の管理者・切り裂き卿ペダチェンコのみ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!

●狂宴の管理者
「——君たちは優秀なんだろうね。ディアボロス。私としては困りますが、こうして眺めている分には楽しいものですね」
 部屋の中、ぱち、ぱちぱち、と男の拍手が響いていた。戦うのに十分な広さがあるとはいえ、貴族の大広間のように広大な空間では無い。硝子の破片や、砕け散った椅子の破片が転がるその空間は儀式場というにはあまりに荒れていた。残されているものといえば、食卓に並べられた僅かな食器と、この空間を満たす妙な気配。
「いつの時も、優秀な若人を見るのは楽しいものですね」
 切り裂き卿ペダチェンコがそう言って、テーブルをとんとん、と叩く。何かが滲み出すように空間が——変わった。何かされたというわけでは無い。ただ隠されていたものが姿を見せたのだ。
 食人儀式。
 その場としての権能。
 甘ったるい血の匂いが漏れ、少しずつ薄れていく。儀式自体は成功していないからだ。
(「——だが、か」)
 真っ直ぐに、ディアボロス達は敵を——この儀式の管理者を見る。街中で聞いた話では、少なくは無い人々がこの診療所を訪れ、姿を消していた。黒衣に身に纏ったこの男が医者を装ったのか、或いは使い捨ての傀儡でもいたのか。どちらにしろ、この場にいま、生きているのは自分達とこの兄弟——そして、ペダチェンコだけだ。
「やはり、君たちを食材にしたいですね。きっと素晴らしいディナーになる」
 そう言ってペダチェンコがこちらを向く。暫くは、あの娘に声をかけるつもりは無いのか。
「全て、思惑通りに行くと思われているとは」
 静かにディアボロスの一人が告げる。冷えた視線は——こちらに、自分達に意識を向ける為だ。この場に残された兄妹にではなく。
「先ほどは面白い戦い方を見せていただきましたからね」
 ディアボロスの言葉にペダチェンコは微笑んで告げた。
「強者に相応しきものを。私も、相応のものをお返ししましょう。切り裂き卿などと呼ばれていますから、手数は多いのですよ」
 アヴァタール級切り裂き卿ペダチェンコはそう言ってディアボロス達を見た。
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ご参加頂きありがとうございます。秋月諒です。
第四章切り裂き卿ペダチェンコ戦となります。

▼リプレイについて
 戦闘開始からスタート
 戦闘中に、被害者の兄妹に敵が手を出してくることはありません。

 *兄→三章勝利で無事に保護しています。後ろの方に下がってるので大丈夫。
 *兄妹共にディアボロスに協力的です。戦闘にびっくりはしていますが、邪魔はしません。

▼戦場について
 診療所の一角、それなりの広さのあるリビング。
 真ん中に大きなテーブルがあり、周囲は戦闘で荒れていますが、戦いの邪魔になる(不利になる)ことはありません。

 妹が椅子に括り付けられたままでいますが、ディアボロスが敗北しない限り、特に巻き込まれません。

▼プレイングについて
1〜2日置いてプレイング採用となります。先着順ではありません。
また、必要人数をぐわっと大きく越えた採用は無いので、そんな感じです。
 
それでは皆さま、御武運を。
逆叉・オルカ (トレインチケット)



●使者は告げる
「やれやれ、俺を使っても良いディナーにはならないだろう」
 息を吐く。空のように澄んだ瞳は、惨劇の場にあってひどく落ちついていた。白い髪を揺らすようにして、この場の主へと逆叉・オルカ(オルキヌスの語り部・g00294)は視線をやった。
「切り裂き卿」
「何も得難い食材にばかり意味があるというわけではありませんよ」
 特に、とオルカの視線に切り裂き卿・ペダチェンコは微笑んだ。
 落とす息ひとつ、オルカは緩く手を握る。少しずつ空気が変換されていく。それは、冷気だ。這うように冷えたオルカの指先から零れ落ち——そして、ひとつの姿を見せる。
「……氷の中で」
 データ粒子化していたガジェットの具現化。作り出した特殊な銃弾を込めると、迷い無く撃鉄を引いた。
「眠れ」
 ガウン、と響く銃音と共に戦場を冷気が駆けた。た、と床を蹴り、ペダチェンコが身を逸らすが——届く銃弾の方が早い。キン、と払うように振り上げたナイフが弾丸に触れる。弾けたか。だがあれは——ただの弾丸ではない。
「——おや、これは」
「氷冥弾。ちょっと変わったもんでな」
 そいつは、とオルカは息を吐く。銃弾にナイフで触れた以上、ペダチェンコも分かっているだろう。弾いた筈の弾丸が砕けていないことも、その破片が己の胸に吸い込まれていることも。その場所が凍り付くように色彩を変じていることも。
「は、どうやら甘くみてしまったようで……」
 ですね、と続く言葉は紅の氷の華に閉じ込められる中、消えていく。ピシリ、とペダチェンコの核が軋む。流す赤さえ無いままに、だが、氷の華の中、ナイフを持つ手が——動いた。
「来るか」
 ふ、と小さく息を吐く。どう来る、と軽く身を引いた先で黒衣を纏う男が、氷の華を切り裂いた。
「——えぇ」
 ペダチェンコが笑い告げる。切り裂き卿の名に相応しき鋭さで。一歩、蹴るように聞こえた踏み込みと共に前に出た男の姿が、視界から消える。右か、身を振った先、影だけが動く。
「——こいつは」
 死角から来る。
 そう思ったからこそ、体が先に動いた。ひゅん、と来たナイフに致命を避けるように銃を持つ腕を向ける。首に一撃、狙ってきたペダチェンコの腕を受けとめるように片腕を使う。
「っと」
「おや、受けとめてしまいましたか」
「首を落いてく気はないんだ」
 身を軽く後ろに跳ばす。短くて良い。相手の核に氷冥弾は刻んだ。ならば、後は——削りきるまで。
善戦🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
完全視界を使用

常軌を逸した儀式だ……一刻も早く根絶しなければ
この状況がロマノフの暴走にしか見えないという点では、ラスプーチンとさえ意見が合ってしまう

……なんとも悪趣味だなあ
捕食者の余裕という訳か。吸血貴族らしいよ
兄妹お二方には今しばらくの辛抱を願う

なるべく部屋の角か壁際を背にして
室内の状況、敵味方の動きを偵察、観察し把握

味方への援護の動きし連携をとる
敵の動線を阻害するよう立ち回り、盾を持ち味方の死角をディフェンス

切り裂き卿との事、暗殺がお好きかな……

絵筆を走らせ、世界に描き出すPDの幻想はミラーハウス
味方の姿や罠を鏡写しに無数に増幅させ
馴染みのない場所に迷わせ、空間の認識を阻害
鏡に映った誰かを攻撃した瞬間に、砕け散り破片が襲いかかる攻撃

敵の魔力の霧には、完全視界しつつ視界に頼りきらない動きを
不意打ちに備え、魔力障壁で全方向を防御
壁に背を寄せ、Nazarの大盾で前方を護り死角を減らし、頭上側方を含め気配と物音を警戒

一つ言えるのは……
貴様が愛を語るな

戦闘後は兄妹を労り、保護を


●re-configuration
 冷気と共に撃ち込まれた弾丸が、切り裂き卿・ペダチェンコを染めていた。赤く滲むスーツに一度息を吐き、切り裂き卿と呼ばれたクロノヴェーダは笑みを見せた。
「やはり、君たちは屈強ですね。それでこそ楽しいディナーになると思わないかい?」
「……なんとも悪趣味だなあ」
 吐息ひとつ落とすようにしてエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は告げた。
「捕食者の余裕という訳か。吸血貴族らしいよ」
 柔らかに紡がれた言の葉と共に向けられた瞳は、冷えた色をしていた。
(「常軌を逸した儀式だ……一刻も早く根絶しなければ。
 この状況がロマノフの暴走にしか見えないという点では、ラスプーチンとさえ意見が合ってしまう」)
 椅子に縛られたままの娘が儀式の要であり、倒れたままの青年が「食材」とされるところだったのだろう。
「今しばらく、辛抱を」
 穏やかにそう兄妹へと告げ、部屋の壁を背にするように立つ。ゆるり、と切り裂き卿・ペダチェンコの瞳が弧を描いた。
「あぁ、警戒されてしまいましたか。ですが……」
 構いませんよ、と続く言葉を掠うようにエトヴァは指先を空に滑らせた。ほっそりとした白い指先で握るのは美しい絵筆。さらり、と振るう一筆に青水晶の柄が淡く輝き——その軌跡が色彩を帯びる。
「切り裂き卿との事、暗殺がお好きかな……」
 描き出されるのは光の軌跡。その色彩は、主の魂に共鳴し記憶より出る。
「世界よ、響き、彩と成せ」
 そうして描き出されたのはミラーハウス。幻想の中、展開した無数の鏡がエトヴァの姿を映していた。さっきまで確かにあった部屋の状況とはあまりに違う。兄妹達の姿さえ遠く、その異様にペダチェンコが踏み込む足を止めていた。
「これでは、確かに私の趣向には不向きですね」
 見知った部屋がこの状況では、と肩を竦めたペダチェンコが手の中にメスを落とす。
「幻想を切り刻む趣味は無いのですが——まずは、貴方から」
 メスが触れる瞬間、鏡は砕け散った。破片が一気にペダチェンコに襲いかかる。
「——っく、ぁ。はは、やはり映っていただけですか、あわよくば貴方を切れ味を確認してみたいと思っていたのですが……、直接確認した方が良さそうだ」
 告げる言葉と共に部屋の中に濃密な魔力の霧が満ちていく。視界を奪うように広がるそれを払うようにエトヴァは絵筆を振るった。
「そちらを満足させられるかは分からないが……」
 霧を、払うように。完全視界の力がもっと強ければ、ペダチェンコの霧を払いきることもできたかもしれないが、まずは、これで十分だ。元より、これに頼り切るつもりはない。
「……」
 た、と最初聞こえていた足音が、二歩目で途切れる。不意打ちに備えるように展開した魔力障壁が、チリ、と震えた。音が、聞こえる。
「そこか」
「——こんにちは」
 ギン、と振るう一撃が、真横から来た。正面、大盾を構えていれば、壁を背に預けていれば狙いは『そう』なる。だからこそ、魔力障壁は全方向に展開していたのだ。浅く肩を裂いていったメスにエトヴァは身を逸らす。片足だけを引き、即座に絵筆を握り直せばペダチェンコが息を吐く音が耳に届いた。
「——あぁ、首を落とすには足りませんでしたか……貴方から貰った痛み、お返しする機会でしたが」
 零す声と共に霧が散っていく。展開していた魔力が乱れたのだろう。ペダチェンコの体にはエトヴァが描いた鏡の破片が突き刺さっていた。核が軋んだのだろう。ゆらり、と一度身を揺らす男を視界にエトヴァは静かに言った。
「一つ言えるのは……貴様が愛を語るな」
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【液体錬成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!

レイラ・イグラーナ
それでは私どもからも相応のものをお返しいたしましょう。
自らの支配のために人民を虐げ、命すら奪う。
貴方たちに相応の報いを。

引き続き銀の針を手に戦闘を行います。兄君は後方に、妹君は未だ椅子に。それではこの技を使用しても巻き込むことはなさそうですね。【手製奉仕・罠】を使用し、リビングに銀の糸を張り巡らせます。
気配を断ち、視界の、そして意識の外から静かに接近し命を刈る。
私も同じ技術は身に着けております。
敵の動きを読み、銀の糸を仕掛けていきます。
あちらも易々と罠にかかってくれるような間の抜けたことはしないでしょうから、罠を仕掛ける側と突破する側の読みあいになる……もしこれが、1対1の戦いであればの話ですが。

仕掛けた罠が見つかることも考慮した上で敵の動きを制限し、他の方が戦いやすいように銀の糸を配置。また、敵がこちらの攻撃で吹き飛ばされそうなところには集中的に仕掛けておきます。

その醜悪な行い、紳士然の外面で繕うことは不可能です。
貴方たちと私たち、そして人民の皆様は相容れることはありません。


アッシュ・アーヴィング
アドリブ歓迎。他者絡みも可。

お互いナイフ使いだ。得意分野も被ってるようだし小細工マシマシで血みどろの斬り合いしましょね。
暗殺者の闘い方を見せてやるよ。

・行動範囲を限定させる。
間合いが詰めてナイフで応戦。
守り重視の考え方で急所への一撃だけは避けることを最優先。

・思考にストレスを。
【ブービートラップ】を使用し、目に見える存在感たっぷりのトラバサミを設置。
味方の罠と合わせて意識を下にも向かせて過剰な負荷を与えるのが目的。

・致命傷を与えるために。
トラップと立ち回り含め仕込みができたら、致命傷を与えるための段階と。
できるだけ敵の正面を位置取り相対する。
押し切られそうだったら最悪メイド戦で鞭で打たれた方の腕はくれてやっても間合いから逃がさない。

ほら、深々刺せばそれなりに隙はできるでしょ。
もう一人の暗殺者の。


●スヂェーラナ
 ガシャン、と派手な破砕音が戦場となった部屋に響き渡った。
「折角のディナーでしたが、儀式場が揺らいでしまっている。君たちが来てからですね」
 向けられた視線に、責めるような色は無かった。ただ笑う口元とは違う、冷えた視線にアッシュ・アーヴィング(傭兵・g01540)は軽く肩を竦めてみせた。
「そうか。そいつはどうも?」
「君たちという食材の素晴らしさは理解していますよ」
 遊ぶように変わった口調がゆっくりと整っていく。切り裂き卿の纏う空気が変わった。
「だからこそ存分に持て成しましょう」
 その言葉と共に、ペダチェンコが床を蹴った。とん、と軽く――だが、広くは無い部屋で間合を詰めてくる相手にレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は、とん、と軽く後ろに跳ぶ。
「それでは私どもからも相応のものをお返しいたしましょう」
 カツン、とヒールが音を上げた。真っ直ぐに瞳の赤が持てなしを告げたペダチェンコを見据える。
「自らの支配のために人民を虐げ、命すら奪う。
 貴方たちに相応の報いを」
 静かに告げたレイラの横、アッシュは身を前に倒す。
「お互いナイフ使いだ。得意分野も被ってるようだし小細工マシマシで血みどろの斬り合いしましょね」
 転がった椅子を飛び越えるようにして――言った。
「暗殺者の闘い方を見せてやるよ」
 二歩目、踏み込みの足音が消える。暗殺者達の戦いが、今、始まる。

●切り裂き卿の宴
 足を、下ろす。床を掴むようにつま先で軽く蹴る。跳ぶように前に出るのは素速く前に出る為だ。
「あぁ、君はそちらの方が得意なんですね」
「別に、特段好みがあるわけでもねぇよ」
 ただ、と四歩目、詰められる間合に対し真っ正面で迎え撃つ位置に身を置く。ふ、と笑うようにメスを構えた男に、パチン、とアッシュは指を鳴らした。
「おっと残念。そこには罠があるぜ」
 次の瞬間、ペダチェンコの踏み込む先に、トラバサミが生まれた。
「これはまた、室内には不向きですよ」
 大きく一歩、ペダチェンコが避けたのはその罠がひどく存在感のある品であったからだろう。
(「あぁ、それで良い」)
 その為の「見える」罠だ。身を振った相手に、アッシュは踏み込む。間合を詰めて見せる為に軽く跳ぶ。短い跳躍。ナイフを構えながら行ったのは――目の端、きら、と光る糸が僅かに見えたからだ。
(「据える眼光、照らす鉄条」)
 踏み込むアッシュの姿を視界に、レイラはゆっくりと手を開く。指先、絡まるようにしてあった銀の糸をリビングに張り巡らせていく。
(「兄君は後方に、妹君は未だ椅子に。それではこの技を使用しても巻き込むことはなさそうですね」)
 それは極めて視認しづらい銀の糸。踏み込む敵の動きを読むようにしてレイラは糸を滑らせていく。
「傀儡の狩人が混濁に潜む」
 小さく、そう呟いたのとアッシュがペダチェンコの影を踏んだのは同時であった。
「よぉ」
「おや、それが暗殺者の戦い方ですか?」
 敵の影を踏む。間合深く踏み込んだ先で、ペダチェンコが笑った。
「少し、授業と行きましょうか」
 瞬間、ペダチェンコの足元から滲むように魔力の霧が生まれた。一瞬にして濃く、深く展開する霧がアッシュの視界を奪っていく。
「……」
 だが、その程度で焦る気は無い。耳を澄ます。気配を辿る。足音程度殺してくるだろう。――だが、霧はどうだ?
「――」
 ひゅん、とアッシュはナイフを横に振るう。瞬間、ギン、と重い衝撃がナイフにぶつかる。
「来たな」
「おや、見つかってしまいましたか」
「言っただろう? 暗殺者の闘い方を見せてやるって」
 だから、とアッシュは一撃を払い上げる。そのまま突き出したナイフだけではペダチェンコを傷つける事が出来ないのは分かっている。だからこそ、体を奴と向き合うように動かす。この場を、掌握する為に。
「――これは」
 詰めた距離にペダチェンコが足を引いた。
「罠が、もうひとつ」
「その通りです」
 ピン、と切り裂き卿の足がレイラの張り巡らせた銀の糸に触れていた。次の瞬間、銀の針がペダチェンコに降り注いだ。
「……ッぁ、そうか。だから、そう動かれていたのですね」
 貴方達は、と告げると共にゆらり、と切り裂き卿は身を揺らす。滑るように身を横に振る。気配がひどく薄い。
「気配を断ち、視界の、そして意識の外から静かに接近し命を刈る」
 指先に絡めた糸を滑らせレイラは息を吸う。
「私も同じ技術は身に着けております」
 最後の一手は、こちらの間合。その深くである以上――張るべき糸は、此処にある。ぱた、ぱたと赤の滲む音は、次の足音と共に消えた。
 ――来る。
 そう思うより先に体が動いていた。ひゅん、と糸を仕掛ける。ここから先は読み合いだ。
「もしこれが、1対1の戦いであればの話ですが」
 小さくレイラが口元に笑みを浮かべたのと、糸の間を縫うように何かが来たのは同時であった。
「――やはり、下から」
「おや、ばれてしまったか」
 間合深く、踏み込んできたペダチェンコが身を沈める。切り上げるように、ひゅん、と振るわれたナイフがレイラの首筋に触れた。一筋、零れた赤を、更に深くする為に踏み込もうとしたペダチェンコが――止まる。
「――糸」
「こっちもいる訳よ」
 一撃に、その衝撃にゆるりと娘が身を後ろに倒したのは糸を張り巡らせるため。その仕掛けに切り裂き卿は気が付き――だが、踏み込むアッシュがいる以上、遅い。
「どうぞ?」
 突き出したナイフで首を狙う。傷はつけられずとも――鋒だ。踏み込めば距離は縮む。その距離で奴の足にぶつかるのはアッシュの罠だ。
「どうぞ?」
「――っは、これは、やってくれる。ですが……!」
 ガシャン、と派手に響いた音と共にトラバサミが跳ねた。ペダチェンコの足に食らいつき、だが、魔力の霧と共に切り裂き卿は逃れる。濃くなった血の匂いと共に、何かが――来た。
 ――早い。
「――っと」
「あぁ、もう少し深く……心の臓を貰い受けるつもりでしたが……」
 反射的に持ち上げた腕で、アッシュは突き出されたメスを受けとめていた。鈍い痛みと熱が一気にやってくる。だが、元々メイドと踊った時に痛めていた腕だ。
「こいつはくれてやるよ」
「片腕だけで、暗殺の仕事がこなせると?」
 笑うように――だが、ひどく楽しげに言ったペダチェンコに、アッシュは口の端を上げるようにして告げた。
「ほら、深々刺せばそれなりに隙はできるでしょ」
 露悪的な笑みは、だが同時にひどく美しくあった。
「もう一人の暗殺者の」
「しま……ッ」
 ひゅ、とペダチェンコが息を飲む。来ると分かっていようとも、一拍、動きが遅れる。その一瞬をレイラは逃さない。
「その醜悪な行い、紳士然の外面で繕うことは不可能です」
 ひゅん、と銀の糸がペダチェンコに触れた。足に、腕に。踏み込むアッシュと切り裂き卿の動きを視界に入れながら仕掛けた糸が――今、終わりを告げる。
「っく、ぁあああああ……ッ私が、敗北を。儀式、が……ッ」
 降り注ぐ銀の針が、切り裂き卿ペダチェンコを貫いた。ぐらり、と身を揺らし、核の砕けたクロノヴェーダが霧となって消えていった。
「貴方たちと私たち、そして人民の皆様は相容れることはありません」
 滲むようにあった甘い香りが消えていく。食人儀式としての場が完全に砕けたのだろう。漸く訪れた静寂には守り抜いた二人の命が確かにあった。
🎖️🎖️🎖️🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【書物解読】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【命中アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2023年10月22日