【《七曜の戦》エルサレム防衛】アンティオキア遭遇戦

 このシナリオは《七曜の戦》に関連して発生する特別シナリオ人類史防衛戦の一つです。
 このシナリオでは、ディアボロスが制圧した「エルサレム」に攻め込もうと集結している「蹂躙戦記イスカンダル」のクロノヴェーダへの「先制攻撃」により、敵戦力を減らす事が目的となります。

●特殊ルール:人類史防衛戦「先制攻撃」

《七曜の戦》での人類史防衛戦は、8/7に公開される第1弾 「先制攻撃」と8/14以降に公開される 第2弾「迎撃戦」に分かれています。

 この地域では、敵が襲来する前に「先制攻撃」を仕掛けることができます。
 成功した「先制攻撃」の本数だけ、同じ地域に関連する「迎撃戦」の必要成功数を減らせます。

「迎撃戦」を成功させれば「エルサレム」の制圧を維持し、最終人類史に奪還できます。
 もし「先制攻撃」が必要成功数を満たした場合は、襲来予定の敵全てを倒し切ったことになり、「迎撃戦」は発生せず、その地域を最終人類史に奪還できます。

試練の獅子は神像を纏う(作者 真魚
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#蹂躙戦記イスカンダル  #【《七曜の戦》エルサレム防衛】アンティオキア遭遇戦  #《七曜の戦》  #人類史防衛戦『エルサレム』 


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●試練の獅子は荒野を行く
 アンティオキアからエルサレムへと繋がる荒野。そこを、一体の亜人が進んでいた。
 獅子のような体を包むは、金色に輝く鎧。その手甲には金属の爪が備わっており、鈍い光を放っている。
「エニューオーの仇討ち……ハッ、これはチャンスだぜ」
 赤い瞳は獰猛に輝き、牙覗く口が吊り上がって。アヴァタール級『ネメアーの獅子』は、嗤いながら背中の箱を背負い直す。
「空いたジェネラル級の席に座るのは、この俺様だ。この神像も力もあるしなァ、ディアボロスなんざ蹴散らしてやるぜ!」
 潰してやる、引き裂いてやる、灼いてやる。これから行う戦闘を想像してか、獅子の顔には残忍な笑みが浮かんでいた。

●神像纏いし獅子を倒せ
「いよいよ《七曜の戦》が始まろうとしているわね……。準備はいいかしら?」
 新宿駅グランドターミナル。大きな戦いを前に多くのパラドクストレインが行き交うその場所で、アンナ・ローザ(ヴェンデッタの糸・g03283)はいつになく緊張した面持ちで切り出した。
「この戦いは、私達ディアボロスの、そして最終人類史の運命を決めるもの。……もちろん、負ける気なんてないでしょう?」
 敵の大勢力と戦う、歴史の奪還戦(ディアボロス・ウォー)の相談もすでに始まっている。けれどそれだけが《七曜の戦》ではないのだ。
「最終人類史に奪還済みの地域や、あなた達が制圧したディヴィジョンの地域。そこへ向けた敵の侵攻も予測されている。小規模でも見過ごすことはできない戦い……私が案内するのは、そんな戦場よ」
 そこまで語って、ため息を吐き出して。時先案内人の少女は、このパラドクストレインは蹂躙戦記イスカンダルへ行くのだと告げた。
「エルサレムの奪還を目論む、アヴァタール級の亜人の撃破をお願いするわ。敵は獅子のような姿の亜人、『ネメアーの獅子』。エルサレムで撃破したジェネラル級亜人『破壊者エニューオー』の精鋭部隊の一員で……エニューオーの仇討ちを目的としているようよ」
 仇討ちとは言っても、そこにエニューオーへ向けられる感情はないらしい。精鋭部隊の中でも一番多くのディアボロスを撃破すれば、エニューオーの後を継ぐ新たなジェネラル級になれる――そう考えての行動のようだ。

「精鋭部隊とは言っても、個人主義の集まりのようでね。エルサレムへ向かうのも一体一体別々……だから、目的地へ到達前に一体ずつ叩くのが確実ということよ」
 とは言え、一体だけでも強力だ。ネメアーの獅子が背負う箱、その中にはギリシャ神像が入っている。移動中は神像鎧を纏っていないが、戦闘となれば背負った神像を取り込むように、神像鎧を纏って戦うようだ。
「今までの神像鎧を纏う亜人は別の場所で神像を守っていたけれど、今回は『神像鎧と一体化する』ように装着するようよ。その姿を見れば鎧のどの部分にギリシャ神像が一体化しているかはすぐわかる。戦闘力の高い敵だけれど……工夫すれば、撃破の糸口がつかめるかもしれないわ」
 言葉を紡いだアンナは、薄紅色の瞳で集うディアボロス達をぐるり見る。さっそく戦い方を考える彼ら――その姿を頼もしく思いながら、彼女はパラドクストレインへと導く。
「獰猛で残忍、そして強力な亜人……厳しい戦いになるかもしれないけれど、あなた達なら勝てるはず」
 そして、《七曜の戦》でのより大きな成果へと繋げましょう。真剣な表情で語った時先案内人は、列車に乗り込むディアボロス達の無事を祈りながら深く一礼するのだった。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。

効果2

【命中アップ】LV1 / 【ダメージアップ】LV3 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

真魚
 こんにちは、真魚(まな)です。
 いよいよ《七曜の戦》、その先制攻撃のご案内です。

 このシナリオは、ボス戦一章のみの特別シナリオになります。
 大きな戦いに影響を及ぼすものとなりますので、敵との戦い方はもちろん、《七曜の戦》へ向けた心情もお聞かせいただければと思います。

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


南雲・葵
七曜の戦に向けての前哨戦だね
折角取り戻した日常をまた奪われない様に…
姉貴、力を借りるよ

群れずに来るのは助かるね
各個撃破なら、俺でも力になれるはず
多少の無茶は通すけど、戦争前だし撤退のタイミングは考えないとな…

んー、あの鎧に何か有りそうなんだよな
あの神像を壊せれば鎧と一体化解除とか、弱体化されないかな?

物は試し、姉貴ちょっと手伝って!

視界を遮るようにオラトリオフラワーを出現させて貰って
隙を見てバールのようなもので神像の破壊を試みる
あとはエルサレムに到着する前に撃破を目指すよ

余裕が有れば他に戦っているディアボロスに手を貸しに行くね
その時は連携をとって、共闘できるように立ち回るよ


アシュタル・アサース
アドリブ等歓迎

我らが聖地に
そう簡単に土足で踏み込まれてはな
犬の川を越えさせはしない

聞いたことがある
其の獅子にはいかなる刃も通じないと
俺に半神の如き力はないのでな。一つ伝承になぞらえるとしよう

一帯の砂を手繰り寄せた砂嵐で獅子を押し包み
じわりじわりと。貴殿の喉が枯れ、胸が叫ぶまで
呼吸の続くかぎり圧殺させてもらおう
その鎧は神像を傷つければ眠りにつくのだろう? 我が友の奮起を以て、いずれ蟻の一決とさせてもらおうか
このような荒野においてこそ我が友はよく奮ってくれるもの

どこか懐かしき母なる砂塵の声
ハビーブン・ナッジャルの頂き
遥か過去から変わらぬのだな
ならば猶更、この土地から退くわけにはいかんな


エイレーネ・エピケフィシア
かつてエルサレムの闘技場で対峙した神像鎧の力は、決して侮れないものでした
ですが、敵がどれほどに強いとしても、この足を止めるわけには参りません
大地の奪還を果たすために戦い抜きましょう!

《神護の長槍》と《神護の輝盾》を手に参戦
仲間の攻撃が敵の動きを止めている間に、神像に狙い済ました一撃を見舞いましょう
敵の鎧を良く観察して有効な部位を見定め、『流星が如く燃え立つ投槍』で一息に貫きます!
アテーナー様! どうかこの槍に、神々を冒涜する武具を砕く力をお与えください!

反撃には【トラップ生成】で作った網や転び石で敵の助走の勢いを弱め、盾を構えて防ぎます
神像が壊れた後は、頭部を狙って槍を投げて決着をつけます!


クロム・エリアル
……個体を大幅に強化する神像の鎧
厄介な装備であることを理解
困難なミッション程、経験となる
任務了解、クロムも参戦する

先ずは観察
敵が神像鎧を装備したら、敵の周囲を旋回し観察
神像の位置を探る
発見し、味方が居るのであれば位置を共有
弱点さえ分かれば、対処可能
クロムも双銃『Libra』を構え戦闘に移る

距離を詰め、零距離での格闘戦に
Ex.Bullet.Penetration装填
神像がまだ壊れていなければ、それを狙い射撃
壊れるまでは執拗に狙い『連射』していく
敵の爪はマズルスパイクで受け止め、此方の胴への直撃を避ける
動けなくなるのが一番困る

別にクロムが倒そうなんて思っていない
連携し、全員で倒せばそれでいい


クロエ・アルニティコス
笑わせますね。
空いた席に座る?その程度の考えと力しかない者が将になるつもりとは。
どうせここで死ぬお前には縁のない道です。

エルサレムで神像鎧を纏った亜人どもと戦ったことは幾度もあります。
その弱点も把握はしています、が。
こうして身に纏われると楽に狙えはしませんか。

神像を狙う他の復讐者と連携を取り、拘束役と神像を狙う役に別れます。
私の役目は拘束役。魔力の破壊光線の一撃を耐え、反撃の【言霊縛り】で動きを止め、その隙に他の復讐者に神像を狙う一撃を入れてもらいます。
魔術の女神ヘカテーよ。あなたを信じる者に目を掛けて頂けるなら、神々の名を汚す怪物を留める戒めを!


●獅子の纏いし白銀は
 蹂躙戦記イスカンダルの地へ降り立ったディアボロス達の身体を、強い日差しがじりじりと照り付ける。真夏の荒野。エルサレムとアンティオキアの間にあるその過酷な地を、南へと進む亜人――ネメアーの獅子の姿は、すぐに見つかった。
「我らが聖地に、そう簡単に土足で踏み込まれてはな」
 広がる蒼穹を瞳に映し、アシュタル・アサース(ハイサム・g10109)は小さく呟く。表情は一見変わらないが、戦いを前に彼の纏う空気は僅かに緊張を思わせた。
 五人のディアボロス達は無言で合図を送り合い、一斉に亜人へと近付いていく。取り囲もうかと思ったが、敵の反応も素早い。気配を察知してか後ろに跳んで距離取ったネメアーの獅子は、ディアボロス達の突然の登場に驚きの声を上げた。
「なんだァ!?」
「ネメアーの獅子。犬の川を越えさせはしない」
 凛とした声でアシュタルが告げれば、獅子の亜人の警戒が強まった。その一言で理解したのだ、彼らが敵であるということを。
「笑わせますね。空いた席に座る? その程度の考えと力しかない者が将になるつもりとは」
 とん、と手にした『三相の杖』を大地について、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)が言葉を紡ぐ。そのまま獅子へ杖を向ければ、先端に飾られた三色の宝石がきらりと輝いた。
「どうせここで死ぬお前には縁のない道です」
「死ぬ? この俺様が? ハッ、舐めてもらっちゃ困るぜ、ディアボロスども!」
 赤い瞳をギラギラと光らせて、ネメアーの獅子は吼えた。そして背負った箱を掴み取り、その鋭い爪で切り裂く。中から現れたのは、逞しい男性を模したギリシャ神像だ。
 瞬間、神像から光の矢が放たれた。その光は獅子の亜人の身体を覆い――胴体、頭部、脚部に集まった光が白銀の鎧へと変わっていく。最後は獅子の腕に、ぎらり輝く爪を邪魔しない形で装着される。元から身に着けていた鎧のその上に、白銀の豪奢な鎧――不自然な見た目にもかかわらず、亜人は高らかに笑った。
「ハハハハハッ! これ! この力! 俺様は無敵だ! 蹴散らしてやるぞォ!」
 猛る声は、自信に溢れて。神像鎧纏ったネメアーの獅子は、確かに気迫を感じさせた。手強い相手に身構えるディアボロス達の中、クロム・エリアル(近接銃士・g10214)は両手に大型拳銃を携えながら口を開く。
「……個体を大幅に強化する神像の鎧。厄介な装備であることを理解。任務了解、クロムも参戦する」
 淡々と言葉を紡ぐクロムは、そのままレガリアスシューズ『Ex.Boots』で滑るように地を移動する。困難なミッションほど、経験となるから――。
「来いよ! この爪で引き裂いて……」
 迎え撃とうと金属の爪を振り上げたネメアーの獅子、しかしその攻撃は空振りに終わった。クロムは敵の射程に入るより先に、速度を活かして跳んだのだ。上空で回転し、敵を飛び越えひらりと着地。それと同時、銀の瞳を細めて少女は仲間へ声をかける。
「神像発見、後頭部にギリシャ神像の意匠有り」
「なっ……!?」
 小柄なクロムの動きに翻弄され、獅子は思わず声を上げた。クロムが行おうとしていたのは、攻撃ではなく敵の観察だったのだ。少女のもたらした情報に、ディアボロス達の動きが変わる。
「クロムありがとう! 姉貴ちょっと手伝って!」
 初めに動いたのは南雲・葵(バールの人・g03227)だった。神像鎧に何か仕掛けがあるのではと予想していた彼は、ギリシャ神像狙って攻撃に出た。呼びかけに応えたオラトリオの『梓』が戦場にオンシジウムの花弁を散らす。黄色の花嵐に驚いたネメアーの獅子が僅かに後退する隙をつき、素早く背後へと回り込んで。
「場外まで吹っ飛びな!!」
 声と共に振り上げたのは、バールのようなもの。フルスイングの一撃は見事に獅子の後頭部を打ち、衝撃に敵の身体は浮き上がった。
「グオォ!?」
 そしてそのまま荒野へ倒れ込む。慌てて体勢を立て直そうとする亜人はいきなりの痛撃に驚いた様子だったが――仕掛けた葵の方もまた、茶色の瞳を見開いていた。
「あれ? 神像を壊せればと思ってたけど……壊さなくても、弱点なのかな?」
 先の神像鎧を使った戦いでは、ギリシャ神像を破壊すると神像鎧も失われ、敵の弱体化を狙うことができた。此度の戦いでも同じような手順を踏むべきかと思っていたのだが、どうやら破壊しなくとも敵にダメージを与えることができるようだ。
「くそっ……この俺様を地に伏せさせるだと!? ふざけるな!」
 起き上がったネメアーの獅子は、真っ赤な顔で怒りを露わにしていた。その迫力に梓がそっと寄り添ってきて、葵は小さな体を庇うように位置取る。
 慢心していた獅子の亜人も、今の一撃で神像狙いを警戒するようになった。次からの攻撃はこううまくはいかないだろう。
(「群れずに来たのは助かったな。各個撃破なら、俺でも力になれるはず」)
 胸中で呟く葵は、手にした武器をぎゅっと握り締めた。多少の無茶は通すけれど、大切な戦いの前だし退路は確保したい。そのためにも、仲間のディアボロス達と連携は必須――思い視線を巡らせれば、クロムも静かに頷いていて。
(「別にクロムが倒そうなんて思っていない。連携し、全員で倒せばそれでいい」)
 銀の瞳は、冷静に戦局を見ている。確実に敵の神像を狙うための一手を。目的を同じくしたディアボロス達は、次なる攻撃を通すために再び動き出すのだった。

●神像を狙って
「まずは小娘! 今度こそ引き裂いてやるぜェ!!」
 猛るネメアーの獅子は、声と共に地を蹴った。向かう先は、クロム。その驚異的な脚力で、彼女との距離を一瞬の内に詰めようとする。しかしそんな敵の動きを瞬時に理解した少女は、敢えて敵の着地点へと飛び込んでいく。
「リロード……近接モード」
 淡々と紡ぐ言葉、手にした双銃『Libra』へ装填するのは貫通力の高い弾丸。構えて、獅子を狙い――いや、敵の爪の方が早い。鋭い光を放つ爪が、クロムを上回るスピードで振り下ろされる。
 しかし――次の瞬間戦場に響いたのは、ガキンという金属音だった。
「っ!?」
 ネメアーの獅子が息を呑む。獅子の爪は、クロムの銃がその軌道を逸らしていた。彼女の銃は近接用、マズルスパイクで敵の攻撃を受け止めることだってできるのだ。
 ただ、今回は獅子の攻撃も鋭く、軌道を変えるにとどまってしまった。動けなくなるのが一番困る、そう思って胴は守ったのだが、止め損ねた爪はクロムの肩を掠めていく。
「……っ」
 無反応な彼女とて、痛みを感じぬわけではない。けれど敵が驚いているこの隙は逃せない。大地を転がり獅子の側面へと回り込んで、クロムは敵の後頭部目掛けて弾丸を発射した。一発、ギリシャ神像を撃ち抜く。照準を合わせたまま、二発目、三発目――冷静に連射するクロムの攻撃に、ネメアーの獅子が苦しそうに悶えた。
「ガアアアアアッ!?」
 それでも、彼女の射線から逃れるようにディアボロス達と距離を取る。驚異的な速度で接敵できるネメアーの獅子にとって、そのアドバンテージを活かせる距離感。そしてそこから再びディアボロス達へと襲い掛かろうとするが――その身を、砂が包み込む。
「聞いたことがある。其の獅子にはいかなる刃も通じないと」
 ネメアーの獅子。彼の名乗る名前は、ギリシャ神話に登場する獅子に由来していることは明らかだ。ヘラクレスが戦い打ち倒したという強靭な身体。俺に半神の如き力はないのでな――アシュタルはそう呟いて、伝承になぞらえてみようと友――砂嵐を操る。
 彼が手をかざせば、砂は亜人に巻き付く輪のように形を変えて。そのままぎゅううっと締め付ければ、獅子は息苦しさに声を漏らした。
「ぐっ、オォ……」
「その鎧は神像を傷つければ眠りにつくのだろう? 我が友の奮起を以て、いずれ蟻の一決とさせてもらおうか」
 このような荒野においてこそ我が友はよく奮ってくれるもの――。じわり、じわりと喉を絞め上げ、胸を圧し潰して。かつて神話のネメアーの獅子が三日間首を絞められ殺されたように、亜人の呼吸を奪っていく。もちろん、神像も一緒に。
「く、っそ、がァ……!」
 もがく獅子は、それでも両手を広げ魔力を溜めた。星のように眩い光が、彼の手の中に集まる。
 がむしゃらに放たれたのは、極太の破壊光線。瞬く間に襲い掛かるその光からは逃れる術なく――しかしその攻撃を受けながらも、アシュタルは決して砂操る手を下ろさなかった。

●穿つ時
 後頭部のギリシャ神像という弱点を早々に見抜いても、神像鎧纏う亜人との戦いは厳しいものだった。驚異的な速度、強力なパラドクス、そして攻撃を受けても怯まぬ精神力。ディアボロス達の攻撃はネメアーの獅子の体力を確実に削っていったけれど、その反撃を受けたディアボロス達も消耗していった。
 弱点を攻めた上で、なお互角――油断ならぬ戦況に、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)が琥珀色の瞳に力を篭める。
(「かつてエルサレムの闘技場で対峙した神像鎧の力は、決して侮れないものでした」)
 それと同じ力を、眼前の敵も揮うのだ。その脅威を理解しつつも、エイレーネは決して退かない。
「敵がどれほどに強いとしても、この足を止めるわけには参りません」
 固い決意を言葉にして、長槍と輝盾を構える。そんな親友の静かな闘志を感じながら、クロエは青の瞳を敵に向けた。
 彼女もまた、エルサレムで亜人達と幾度も戦い、神像鎧の力を知っている者。同時にギリシャ神像が弱点であることも把握しており、此度の戦いに臨んだのだ――だが。
「こうして身に纏われると楽に狙えはしませんか」
 ネメアーの獅子の後頭部は、ここを狙えと言わんばかりに一際豪華な装飾でもってギリシャ神像を一体化させている。弱点であるならば、隠すべきではないか……そんな感情を篭めた声に、獅子の亜人は白銀のヘルムを押さえながら反論した。
「うるせぇ! 場所がエルサレムの闘技場だったら、てめぇらなんざ敵じゃなかったんだよ!」
 怒りの声と共に、手に集めた光が放たれ、星の如き輝きの破壊光線がクロエを襲う。これもまた強力な一撃――しかし敵の言葉に『焦り』を感じとったクロエは、敢えてその場に留まり『三相の杖』を揮った。
 身を灼く光輝に耐えながら、獅子の紅い瞳を真っ直ぐに見つめて。唇から紡ぐは、力ある言葉。
「魔術の女神ヘカテーよ。あなたを信じる者に目を掛けて頂けるなら、神々の名を汚す怪物を留める戒めを!」
 信仰する女神の名を呼び、張り上げた声は言霊となる。その目に見えぬ力が届けば、ネメアーの獅子はその場に縫い付けられたように動きを止めた。
「くっ……! なんの、俺様はこの程度で止まらねェ!」
 咆哮と共に、力押しで動き出そうとする獅子の亜人。けれど抵抗している時間こそが隙だ。親友が作り出した好機に、エイレーネは『神護の長槍』を握り締め、凛と声を響かせた。
「アテーナー様! どうかこの槍に、神々を冒涜する武具を砕く力をお与えください!」
 女神への信仰が生み出す、加護の力。それは彼女の長槍を神々しく輝かせる。真摯な瞳で狙うは、神像鎧の後頭部。呼吸と共に投擲した槍は、抱く宝石と同じ赤色の炎を纏って標的へと飛んで――。
 神速の槍が、ギリシャ神像を刺し穿つ。瞬間、ネメアーの獅子が纏っていた白銀の鎧が弾け飛んだ。
「なにィ!? 俺様の神像鎧が!!」
 それは、獅子が力を失った証拠。そして槍はそれだけでは止まらず、亜人の頭を貫いていく。
「ウガアアアア!! おのれディアボロスどもめ、俺様が、こんなところで……!!」
 断末魔の叫びが、荒野に響き渡って。ついに倒れ込んだネメアーの獅子は、そのまま静かに消滅していったのだった。

●戦いは、まだ
「……戦闘終了。任務達成を確認」
 クロムが変わらず淡々とした声で告げると、周囲のディアボロス達はほっと息を漏らした。強敵であったが、ついにネメアーの獅子を倒したのだ。
「これで《七曜の戦》に向けた前哨戦かあ」
 握ったままのバールのようなもので肩をトントンと叩きながら、葵は思わず声を漏らす。そう、此度の戦いは、決戦のはじまりに過ぎないのだ。
 赤茶の髪をくしゃりと掻き上げ、彼は隣に寄り添う梓へと手を伸ばす。
「折角取り戻した日常をまた奪われない様に……姉貴、力を借りるよ」
 それは、《七曜の戦》への葵の決意だった。オラトリオの少女はにこりと微笑むと、彼の手を取りパラドクストレインへと歩き出した。
 帰還しようと荒野を行く中、アシュタルは吹き抜ける風に振り向いた。どこか懐かしき、母なる砂塵の声。ハビーブン・ナッジャルの頂き――時代は違えど見覚えのある景色を見つめて、彼は小さく言葉を紡ぐ。
「遥か過去から変わらぬのだな。ならば猶更、この土地から退くわけにはいかんな」
 聖地を想い、決意を固めて。歩き出すアシュタル、その傍に砂塵はいつものように在るのだった。
 新宿島へと帰還するディアボロス達、その想いは様々に――彼らの一つ一つ重ねてきた戦いは、ついに決戦の時へと繋がっていく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV3が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2023年08月13日