リプレイ
レイ・シャルダン
連携・アドリブ歓迎です。
ええっと、あれって方向転換どうやってやるのでしょう?
車両製造にかかわる者としては非常に興味が……
い……いえ、何でも無いです。
今はミウ・ウルの防衛に集中、そうですそうです。
『Boeotia』を起動してパラドクスを発動
『アクロヴァレリア』による推進力で低空【飛翔】を行い
煌剣『シュトライフリヒト』を構え敵の横っ腹を目掛けて高速突撃します。
フォトンで出来た蒼の刀身で地と空、そして生と死、
その境界線諸共分断するかの如き横薙ぎの蒼き一閃を放ちます。
敵の反撃には蛇行してるーーー!!!っとツッコミを入れつつ
空中機動による【一撃離脱】で回避
万が一収納されたら中からの攻撃で貫き脱出します。
ルーシド・アスィーム
アドリブ、連携歓迎
……何度見てもどうしてよりもよってコレが動き出してしまったんだ、という感じですよね。牛。付喪神みたいなものなのかな
とはいえミウ・ウルは僕達の謂わばもう一つの拠点とも言うべき重要なもの、気を引き締めて参りましょう
迫り来る先頭集団を狙い、舞うは【カルガの黎明】
懲罰の炎を翳すなら僕は大いなる神の化身、太陽の力で焼き払い、死者の無念にて凍てつかせます
死をも恐れぬ覚悟や良し、ならばその決意ごと無惨に踏みにじるのみ!……そういえば、彼等は何を以て思考しているんでしょう。脳……?
邪念は振り払い『氷雪使い』魔術に『フェイント』を織り交ぜ詠唱
雄牛らの進路を凍らせ、妨害出来ないかも試行しましょう
イロハ・アプリルシェルツ
【アドリブ&連携歓迎】
さぁ、七曜の戦の前哨戦だね。
ミウ・ウルは広大なイスカンダルの攻略には欠かせないんだけど
アレがファラリスの雄牛かー(遠い目)
ミウ・ウルの構造はイロハ達の方が良く知っているからね。
隠れられそうな構造物を【地形を利用】する様に活かして潜伏し
他の皆とタイミングを合わせて強襲するよ。
敵の数は多いし、妙な動きをしてるから包囲されない様に注意して
攻撃を捌きつつイロハの間合いに持ち込んで
主との【契約】がなされし『十戒』より力を引き出して
【ロンバルディアの聖王冠】を発動させようか。
『汝、殺すことなかれ』なんだよ。
真に罪人と呼ぶべきはキミ達の方
今こそ犯してきたその罪を償うと良いよ。
アリア・パーハーツ
※アドリブ・連携歓迎
でた、牛!待てファラリス!壊させろ!
(ちょっと楽しそうに武器を持って追い立てる)
……って、近くに来るとうるせぇな!?
大事なミウ・ウル
壊そうだなんて、そんな企みは潰してやるのだぜ
せっかく使えるようにしたのに、皆の努力も無駄になっちゃう
なんだ、闘牛の真似事?
よーし、蹂躙出来るもんならやってみな
赤い髪を翻して武器を振るう
突撃に恐れるものはない
避けるか、――出来なければ正面から両断するのみ
【シャークカッター】で真っ二つに両断してやろう
止まれないのならば、サメの餌食にするだけだ
いやていうかボク様の髪はマントじゃねぇぞ!?
ネリリ・ラヴラン
なにかしら、あれは
それ以外に感想が出なかったわ
おかしなクロノヴェーダさんも多いけれど
そもあれは生き物なのかも謎だよ
ただ、来るものは倒さなくちゃ大事なお船が壊されちゃうからね
”星なき夜の交響曲”で呼び出した蝙蝠爆弾達を車輪の所目掛けて飛び込ませて起爆するわ
派手に横転しそう
あと攻撃する時は【飛翔】で孤立しておくね
捨てられた玩具みたいに倒れてようと反撃は飛んでくるから
周りに被害が出ないように注意しておくよ
こっちもあっちも最後は爆発だからとても五月蠅い気がするわ
アドリブや連携は歓迎だよ
ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に
なぁにあれぇ
ヘンなクロノヴェーダは偶に見掛けるけど、イスカンダルにも居るんだね
色々と気になるけど、戦えばどうなってるのか分かるかな
ほら皆さん、戦闘に集中集中ー
やることは一つ、ミウ・ウル防衛。そのためには
静かに呼吸を整え、【精神集中】
Moon-Childを両脚に這わせ脚力を活性化
“比翼連理”より一振を抜き、残り三振を宙に浮かべ従えて
目を見開き決断的に疾駆
斬って、斬って、斬りまくる。いじょ!
体力に余裕のある敵を狙い、斬り捨てる!
解体なら得意でねっ!
反撃に際しては宙の三振を稼働させ鎖の切り払いを試みる
捕えられた場合は
髪のセット、大変なんだからやめてよね!
四振フル稼働で斬り破るよ
ライカ・ネイバー
アドリブ連携大歓迎
はああーーーん!?
な〜〜にがファラリスじゃ!こちとらカニやぞ!!
目にもの見せてくれるわ!!
真の王者は迎え撃つもんなんですよ
ってわけで召喚!出ませいカニちゃん〜
ミウ・ウルを守るような感じでずずいと鎮座させときますね
あとは待ちの時間なんでシアン・ホエールを地面へガンガン撃ち込んで進路妨害でもしときますか
捕捉されないようにちょこまか走り抜けつつ撹乱しましょ
さあさ溜め時間が終わればショータイムでございますわ
天地を揺るがす超絶大爆発でカニエナジーの恐ろしさを叩き込んでやりましょうぞ
ふははーん!
そんな線香花火じゃカニは燃えませんわよ〜!
マジモンの花火ってのを見せて差し上げますわ〜!!
●オーバーテクノロジーなんてものではないのでは
――ブォォォォンッ!
――ブォォォォンッ!
牛の声――の様にも聞こえる音が、アラビアの荒野に響いている。
「なにかしら、あれは」
「なぁにあれぇ」
その音を響かせているモノに、ネリリ・ラヴラン(★クソザコちゃーむ★・g04086)とロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)が背景が宇宙になってそうな顔で固まっていた。
「でた、牛! 待てファラリス! 壊させろ!」
一人嬉々として音の方へ駆け出して行ったアリア・パーハーツ(狂酔・g00278)の残した言葉が、大体答えなのだけれど。
「アレがファラリスの雄牛かー」
「はああーーーん!? な~~にがファラリスじゃ! 目にもの見せてくれるわ!!」
宇宙背負ってまではいないけれど遠い目になってるイロハ・アプリルシェルツ(神聖ならざる銀・g05555)の横で、何やら対抗心が燃えているライカ・ネイバー(ハイパーエクストリームお手伝い・g06433)が声を張り上げる。
2人が口にしたファラリスとは、古代ギリシャの僭主の名だ。
最終人類史の記録では、その者が作らせたと謂われている処刑道具に車輪がついて排気筒の様なものも生えているのが、様々な地で、様々な敵と戦ってきたであろうディアボロス達を混乱やら唖然とさせている。
――ブォォォォンッ!
――ブォォォォンッ!
けたたましく排気音を響かせる、自走式ファラリスの雄牛である。
「……何度見ても、どうしてよりもよってコレが動き出してしまったんだ、という感じですよね。牛」
あれが塔の壁面を駆け下りて来るのを見ているからか、ルーシド・アスィーム(星轍・g01854)は他の面々より冷静でいられていた。
「付喪神みたいなものなのかな」
「ああ……なるほど」
ルーシドの呟いた言葉に、ロキシアが宇宙から戻って来た。
付喪神。
長く使った道具に霊や魂が宿り意志を持つようになった妖の類である。
「確かに妖の類と思っておけば……」
「おかしなクロノヴェーダさんも多いけれど、そもあれは生き物なのかも謎だよね」
少し遅れてネリリも宇宙から戻って来て、ロキシアとどちらからともなく顔を見合わせ頷いた。
生き物なのかなんなのか。
ネリリが口にしたその謎の答えは、おそらく時先案内人もわかっていなかったのだろう。
「ヘンなクロノヴェーダは偶に見掛けるけど、イスカンダルにも居るんだね」
ロキシアの様に、アレはああいうヘンなものなんだ――という事で片づけてしまうしかないのかもしれない。
そうこうしてる間に、その『結局なんだかよくわからないヘンな金牛』は新たな動きを見せていた。
「何やら妙な動きを……」
「ん? え? ……あれ?」
気づいたイロハが眉を顰める一方で、レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)の中に別種の疑問が湧き上がった。
その動きと言うのは、金牛の群れがアリアの周囲をぐるぐると走り回っているのだ。
つまり曲がっているわけである。
「ええっと、あれって方向転換どうやっているのでしょう?」
レイが言わんとしているのは、ステアリング機構の様な車軸が動く仕組みがなさそう、という事だろう。
ステアリングなぞなかった時代の馬車は、車軸は車輪に通してるだけで左右の車輪を固定せず、車輪は左右それぞれ独立して回転する構造になっていたらしいが、それに近いのだろうか。
「それでも何故あんなにスムーズに曲がれるものでしょう……?」
ぐるぐると回り出している金牛に、レイが頭上に『?』が浮かんでそうな顔になっている。
「と言いますか……、彼等は何を以て思考しているんでしょう。脳……?」
明らかにアリアを狙って取り囲もうとしている動きに、ルーシドもふと疑問を感じる。
「――まさか単なる自動操縦ではない? 思考する車両?」
それがまた、レイの中に更なる疑問を湧かせる。
「車両製造にかかわる者としては非常に興味が……い……いえ、何でも無いです」
最終人類史のドイツの車両開発メーカー責任者の娘――その顔に戻っていた事に注がれる視線で気づいたレイは、疑問を振り払うようにかぶりを振る。
「あれ、考えたら負けな類ですよきっと」
「色々と気になるけど、戦えばどうなってるのか分かるかもだし」
「そ、そうです、そうです。今はミウ・ウルの防衛に集中!」
ライカとロキシアの言葉にコクコクと頷き、レイは視線を前に戻す。
――ブオォォォンッ!
――ブオォォォンッ!
荒野には変わらず、牛の声の様な音が響き続けている。
●鮫刃と神舞
――ブオォオォンッ!
――ブォオォオォンッ!
「……うん、近くに来るとうるせぇな!?」
ひとり先行した代償として、アリアは四方八方から重なって響く爆音に囲まれていた。
ぐるぐる走るファラリスの雄牛の群れに囲まれているせいで、物凄く喧しい。
――ブオンッ!
「なんだ、闘牛の真似事?」
しかしその中の1機が突っ込んできても、アリアはひらりと躱してみせた。
「よーし、蹂躙出来るもんならやってみな」
次々と突っ込んで来るファラリスの雄牛を、アリアはその赤い髪を翻しひらりと避け続ける。
「そろそろ、こっちの番だね」
続いた突進が止んだタイミングで、アリアはぐんと身を沈めた。
――ブオンッ!
「避けるか、――出来なければ、正面から両断するのみ」
またすぐに始まった突進に合わせて、アリアは身を起こしながらサメ型の小さなナイフを振り上げる。
――シャークカッター。
振るったその軌跡が、サメのヒレの様な形の刃となって地を奔り――正面から突っ込んだ金牛が真っ二つになった。
それでもリアの周りにいる他の金牛は、走る速度を落とそうとすらしなかった。
すぐに別の金牛が突っ込んで来る。
「来るなら来いよ。真っ二つに両断してやる」
不敵な笑みを浮かべて、アリアはまた次々と突っ込んで来る金牛を舞うように避けて、避けて、避けて――。
「いやていうか、ボク様の髪はマントじゃねぇぞ!?」
「苦労してますね」
中々反撃に移れずにいるアリアの元に、ルーシドが金牛の隙間を縫って滑り込んできた。
「待ってた!」
「一人で突っ込むからです」
ぱっと表情を明るくしたアリアに、背中合わせに立ったルーシドが苦笑を返す。
「とは言え、ミウ・ウルは僕達の謂わばもう一つの拠点とも言うべき重要なものですからね」
「そうそう、せっかく使えるようにしたのに、皆の努力も無駄になっちゃうから」
ルーシドの言葉に、アリアが頷いた。
ミウ・ウルに金牛を近づけさせない。その為には、接敵は少しでも早い方がいい。アリアが先走った理由はそこにあると、ルーシドは気づいていたのだ。
「大事なミウ・ウル。壊そうだなんて、そんな企みは潰してやるのだぜ」
「ええ、気を引き締めて参りましょう」
サメ型ナイフを構えるアリアの背後で、ルーシドが片手を前に伸ばす。
「――時よ」
ラバーブの音に合わせて、ゆっくりと腕を回し砂に足裏をこすらせる。
「我が主の下に翻れ。無辜の涙は灼熱にて浄められ給う」
時空神と無辜の魂を慰撫する神舞が、ルーシドの周囲に在りし日のエジプトの都市カルガの街の幻を呼び起こす。
舞官としてルーシドが高めた技のさらに先。敵対者を凍て付かせ、祝炎にて灼き尽くす御業。
――カルガの黎明。
カルガは奴隷貿易の拠点であった。その砂下に、無辜なる奴隷達の魂が埋もれているという。
身魂をも凍らせる死者の悲嘆、無念が、ルーシドの舞によって凍てつく冷気となって、金牛の群れへと吹き荒れる。
キィィィッ!
『!?』
その足元の荒野が凍り付き、車輪がスリップした金牛が隣の個体を巻き込んでコースアウトしていった。
『温度テイカ……キケン、キケン、燃焼機関最大ニセヨ』
状況の変化に気づいた個体が、機械めいた声を発して行動の変化を促す。
「懲罰の炎を翳すなら、僕は太陽の力で焼き払い、死者の無念にて凍てつかせます」
金牛の鼻から放たれた炎を、ルーシドは炎舞で呼んだ祝炎をぶつけ、吹き散らしてみせた。
『!?』
表情がないので判り難いが驚いたらしい金牛を、再び冷気が襲う。
「やるぅ――ってか、スピード緩めるのは悪手だぜ」
ルーシドへの称賛の後に金牛に言い放ち、アリアが刃を振るう。地を奔った鮫鰭の刃が、金牛の首を横からスパッと断ち切った。
内部の燃焼機関を炎を放つ方に回せば、その分、スピードは落ちるというもの。アリアの餌食だ。さりとて、舞で神の化身となったルーシドの操る冷気と炎の前では、突進も途端に通じにくくなる。
――ブオォオォンッ!
――ブォオォオォンッ!
それでも排気音は止まらなかった。
「死をも恐れぬ覚悟や良し、ならばその決意ごと無惨に踏みにじるのみ!」
「サメの餌食にしてやるよ」
退くことを知らない金牛の群れを、ルーシドとアリアは駆逐していく。
●双刃疾駆
(「――やることは一つ、ミウ・ウル防衛」)
自分に言い聞かせるように胸中で呟きながら、ロキシアは深く静かに呼吸を繰り返し精神を集中させる。
ナノマシン流動体『Moon-Child』を外骨格代わりとして両脚に這わせる。
「妖怪の類と仮定するなら……これか」
三明の剣と対をなすソハヤノツルギ――伝承の剣の機能を模した四振を納めた刀型決戦兵器『比翼連理』の中から、ロキシアは大明連を抜き放った。伝承では鬼が振るったとされる刃だ。妖だろうがヘンなものだろうが、斬れるだろう。
「準備は?」
「――接続完了。いつでも行けます」
刀を手にしたロキシアの問いに、ゴーグル型デバイス『Boeotia』を装着したレイが答える。その背中にフライトデバイス『アクロヴァレリア』を広げて。
「それじゃ――行くよ」
「はい。これより攻勢に出ます」
そして2人は、金牛の群れに向かって飛び出した。
やや先行したのはレイだ。
自身の神経と接続した『Boeotia』の超視覚と超高速演算によって導き出された情報を、リンクさせた『アクロヴァレリア』に伝達することで実現する超加速の低空飛行。
それに合わせるは、煌剣『シュトライフリヒト』の光子の刃。
人機一体:瞬断撃――ホライゾンディバイド。
地と空の境界諸共斬り裂く勢いで、蒼光の刃を横薙ぎに振るう。その軌跡すら置き去りにしてレイが飛び去ってから、腹部で両断された金牛の上半分が荒野に落ちて、炎が上がった。
赤い両の瞳を意識して見開いて、ロキシアは疾ぶように地を駆ける。
ぶつかることを恐れずに、強化した脚力で地を蹴って、走る金牛の前に飛び込んだ。
――斬妖閃。
「ずんばらり、ってね」
振るうは、妖怪変化をまやかしごと斬る刃。
妖だろうがそうでなかろうが、金牛もクロノヴェーダであることは間違いないのだ。ならば斬れない筈がない。
ロキシアが刃を振りぬけば、金牛の首がポロリと落ちる。
「さあ、斬って、斬って、斬りまくるよ!」
動かなくなった金牛には目もくれず、ロキシアは次の金牛へと駆け出した。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。
斬妖の刃と蒼光の刃が閃く度に、金牛が斬られて動かなくなる。
「解体なら得意でねっ!」
「このまま駆逐していけば……」
金牛以上の速度を武器に、荒野を飛び、或いは駆け、ロキシアとレイは金牛を1体ずつ斬り捨てていく。
だが金牛も黙って斬られ続けるばかりではない。
『罪人ハッケン』
『火炙リノ刑ニ処ス』
――ブォォブォォンッ!
そんな機械めいた音声の後に金牛の排気音が変わり、その走り方が変わった。
「蛇行してるーーー!!!」
速度を落とす事無く蛇行を始めた金牛たちに、レイが驚きながらも思わずツッコミの声を上げてしまう。
「言ってる場合じゃ……」
と言いつつも、ロキシアもちょっと目を奪われている。
レイの様に車両製造に関わるというバックが無くても、何であの車輪であんな走り方出来るんだ、と思わずにはいられない。
いや本当に、何でだろうね?
ジャララララッ!
そこに響いた金属がこすれる音。
パカッと開いた金牛の腹部から、内臓されていた鎖が2人に向かって射出される。
「ちょっ――」
「ちぃっ!」
2人ともちょっと気を取られていたとはいえ、速度は落ちていなかった筈だ。だが、鎖は2人に絡みついて引っ張り込もうとする。
しかも金牛自体は蛇行してるものだから、鎖も揺れて斬り難い。
「髪のセット、大変なんだからやめてよね!」
ロキシアは『比翼連理』の残る三振りを自身と金牛の間に突き立て、鎖の揺れを抑えた所を断ち切り逃れた。
一方、レイは――。
「それしかないですか――仕方ないですね!」
『Boeotia』の出した最適解に従って、速度を上げた。金牛に向かって。
収納されるより僅かに早く、その開いた腹部に蒼光の剣を貫き通す。
燃焼機関も貫いたのか、レイの目の前で金牛が爆発し――。
「危ない所でした……」
少し煤けたレイが、爆炎の中から飛び出して来た。
●役割分担
ロキシアとレイの様に高速で移動し各個撃破していると、多数の敵相手ではどうしても取り零しが出る。
けれど2人の間を駆け抜けた金牛も、それ以上進む事は叶わない。
ある種の後詰がいるからこそ、2人も前だけ見て吶喊しているのだから。
「来るものは倒さなくちゃ、大事なお船が壊されちゃうからね」
「ああ。ミウ・ウルは広大なイスカンダルの攻略には欠かせないからね」
ネリリの言葉に、イロハが頷く。
ミウ・ウルの重要性は今回ここに来た誰もが判っている。今後の事を考えれば、傷ひとつ付けたくない所だ。
「それに、真の王者は迎え撃つもんなんですよ」
ライカの自信は、どこから来るのだろう。
(「王者はさておき、迎え撃つ方がイロハの間合いに持ち込み易そうだからね」)
周囲には、イロハが身を隠せそうなものは何もなかった。
利用できる地形が無いのなら、待って迎え撃つ方が、イロハの戦闘スタイルだとやり易い。
「来るよ!」
数mほどの高さに浮かんだネリリが、金牛の接近に気づいて声を上げる。
「りょ! 召喚! 出ませいカニちゃん~」
頷いて、ライカは何かを呼ぶように開いた掌を空に掲げる。
どこからともなく降って来た大きな蟹が、ライカの後ろにドスンッと鎮座した。
●信仰の重さ
「更に妙な動きしてるし」
すぐに見えた金牛が何やら蛇行しているのを見て、イロハが嘆息交じりに独り言ちる。
「包囲されないようにしないといけないね」
色々とツッコミどころの多い敵ではあるが、侮れない。
改めて気を引き締めたイロハは、拳を握り軽く身構える。
『罪人ハッケン』
『火炙リノ刑ニ処ス』
イロハに気づいた金牛の腹部が開いて、鎖が射出される。
「この程度なら――」
鎖を弾こうと、イロハが拳を突き出し――ジャララララッと鎖が動いて、腕に絡みついた。
「へえ。道理で」
先行した2人も捕まりかけたのもわかると、イロハは胸中で頷く。
だが――。
「――キミ達が、ボクを、罪人と呼ぶのかい?」
鎖が引かれても、イロハは動かなかった。巻き付いた鎖を逆に掴んで、引かれまいと耐えている。
「それは、聞き捨てならないよ」
教皇庁典礼秘跡省準一級調査官。
聖遺物の預かり手。
それが、ディアボロスである以外にイロハが持つ顔だ。その根底にあるのは、人類史が壊れても揺るがぬ信仰。天よりその身に授かりし加護を、聖都が如き堅牢さへと至らせるほどの。
なんだか良くわからない古代の処刑道具などに、罪人呼ばわりされる謂われはない。
「真に罪人と呼ぶべきはキミ達の方。今こそ犯してきたその罪を償うと良いよ」
鎖が引かれる力に耐えながら、イロハは大きく息を吸い込んだ。
「聖なるかな。御慈しみが満ち足れる、神の栄光は比類なきものです」
唱えるは聖なる神言。
主との契約の証である聖遺物に秘められた力を引き出し、解放する為の言葉。
――ロンバルディアの聖王冠。
周囲の大地までも聖別し邪悪を退ける光がイロハを起点に膨れ上がり、鎖を砕き、金牛を飲み込んでいく。
「『汝、殺すことなかれ』なんだよ」
告げたイロハの後ろで、動かなくなった金牛がさらさらと砂の様に崩れていった。
●選んだ空
空中に浮かんだまま、ネリリは両手を広げ、空中に何かを描くように指を走らせる。
ほどなく、ネリリの指先に左右1つずつの魔法陣が現れた。
指先が届く範囲に描かれた小さな魔法陣だが、書き込まれた紋様は実に複雑だ。
「おいで」
ネリリの声に反応し、魔法陣が光を放つ。その中から小さな蝙蝠が1体ずつ現れた。
星なき夜の交響曲――ルナティック・シェル。
「目標は車輪だよ。狙いはしっかり……ねっ」
ネリリの指先から飛び立った2体の蝙蝠が、弧を描いて金牛達の方へと飛んでいく。
構わず走り続ける金牛の車輪に向かって飛んでいき――ドォンッ!
轢かれた様に見えた直後、蝙蝠が爆発した。右か左、どちらかだけの片輪走行が金牛の構造で続く筈もなく、2体の金牛が数mも持たずに敢え無く横転する。
「やった♪」
計算通りと、ネリリが空で声を弾ませる。あとはトドメの蝙蝠を――。
――ブオォオォンッ!
と思った所に近づいてくる、別の金牛。
ところで金牛にブレーキ、なさそうですよね。
「あ」
後ろから走って来た金牛が、倒れた金牛に衝突して、ひっくり返った。
――ブゴオォォォォッ!
後続の金牛が、鼻から炎を放って来る。
ネリリに対する反撃と、減速の為の逆噴射を兼ねているのかもしれない。
「そこからなの!?」
鼻息の様な豪炎に、ネリリは驚きと少しの嫌悪を抱えて空を飛び回る。
空中だろうが地上だろうが捨てられた玩具みたいに倒れてようが、こちらが攻撃すれば敵の反撃はどこに至って届き得る。
ならば敢えて、避けきれなくても他のディアボロスを巻き込む事は無い空を、ネリリは自分の戦場と選んだ。
「狙いはしっかり……とは言えないけれど!」
炎を避け続けながら魔法陣を描き、蝙蝠を飛ばす。
同じように車輪の下に潜り込ませて、ドォンッと爆発させれば、金牛は横転した。倒れてもなお鼻から放ち続けている炎が、荒野を空しく焦がしていく。倒れたままの金牛の腹が、熱を帯びて赤くなっていく。
「あ、やっぱりこうなるのね」
限界が近そうだと察したネリリは耳を塞ぎ――金牛の大爆発が、空気を震わせた。
●次は6代目になる
「さあさ、どんどん脱皮しちゃって美味しくなってくださいね~」
ライカの声に急かされるように、巨大な蟹はモゾモゾと動いで脱皮する。
その度に、蟹は少しずつ少し大きくなっていた。
そんな目立つもの、金牛に見つからない筈がない。
『ナンダアレ』
『ワカラン』
『排除シヨウ』
――ブゴオォォォォッ!
――ブゴオォォォォッ!
なんだかわからない牛にナンダアレ扱いされた蟹に、金牛達の鼻から放たれる炎が浴びせられる。
「――牛がなんぼのもんじゃい、こちとらカニやぞ!!」
スルーされたライカは、ロケットランチャー『シアン・ホエール』を構えて砲口を向ける。
「そんな線香花火じゃカニは燃えませんわよ~!」
そう言いながら、ライカは砲弾をぶっ放す。
自分が狙われないように、ちょこまか走りながらもどんどん撃ち続ける。
爆音が響き、着弾の爆発が荒野を抉っていく。
金牛にはほとんど当たっていない。と言うか、ライカは別に当てようとはしていなかった。ただの時間稼ぎだ。
ライカの後ろの蟹がモゾモゾとも動かなくなって、脱皮が終わるまでの。
「来た! 来ました! ショータイムでございますわ!」
それに気づいたライカはロケットランチャーを外し、ちょっとした家よりも大きそうな蟹の背後に回り込む。
――ブゴオォォォォッ!
――ブゴオォォォォッ!
ライカを追ってか、蟹の巨大さを脅威と見たか。金牛たちが蟹に炎を浴びせていく。
「ふははーん! マジモンの花火ってのを見せて差し上げますわ~!!」
けれども、蟹は微動だにせず、後ろからライカが勝ち誇った声を響かせる。
「さあ、5代目! カニエナジーの恐ろしさを叩き込んでやりましょうぞ」
召喚:爆蟹――サモン・クラブラスト。
ライカが召喚した巨大蟹は、脱皮する度に巨大化していた。その度に、カニエナジーなる力をその身に溜め込んでいたのだ。旨味が変換されたものなのか何なのか良くわからないが、溜まったカニエナジーは蟹の体内で膨大な熱となっていた。
今、それが蟹の甲羅を内から破って溢れ出さんとしている。
「こっちもあっちも爆発だから五月蠅くなる気はしてたけど、そっちもなの!?」
「いやもう……今回はどういう戦いなのかな?」
蟹の身体の中から溢れ出す光を見たネリリとイロハは、取り敢えず耳を塞いで可能な限り距離をとる。
そして――大爆発が起きた。
ホカホカの蟹肉とか甲羅とか蟹みそとかで金牛をあらかた吹っ飛ばして――ライカも蟹みそまみれになっていた。
ともあれ、自走式ファラリスの雄牛は1体もミウ・ウルを拝むことなく荒野に散ったのである。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV2が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【おいしくなあれ】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!