運命は狐を逃さない(作者 西灰三)
#蹂躙戦記イスカンダル
#【《七曜の戦》エルサレム防衛】アンティオキア遭遇戦
#《七曜の戦》
#人類史防衛戦『エルサレム』
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●神像と共に
「まさかこのオレがわざわざ敵地に踏み込む事になるとはな……」
アヴァタール級亜人『テウメッサの狐』は皮肉げに笑みを浮かべながら背中に背負うものの重さを感じつつ進んでいた。エニューオーの配下であり貴重な神像を預かりつつもなんとか生き延びてきた彼だが、どうやらついに自分の番が回ってきたらしい。
「仕方ないよな、エニューオー様がやられちまったんだからさ。少しくらいは恩返しをしないとなんねえ」
一応多くのディアボロスを討てれば彼女の代わりに新しいジェネラル級になれる……はずだ。正直な所そこに余り気乗りはしないのがこのアヴァタール級だった。
「……全く、忠義なんてのはガラでもないが……義理くらいは果たさねえとな。できれば生きて残りたいが」
それがほぼ不可能なのは彼もまた理解している。それでも逃げられないのは《七曜の戦》は全ての大地の全ての存在が巻き込まれる戦いだからだ。今更どこにも逃げ場所なんかは無い、無いならばできることをするしか無い。
「やれやれ、ディアボロスがオレと同じくらい不真面目だったらいいのによお」
独り言を友とするのは聞かせるものもいないから。かくて彼は闘技場のあるエルサレムへの道行を進む。
●《七曜の戦》人類史防衛戦「先制攻撃」
「《七曜の戦》が、始まる」
アスアド・ガーメディー(人間のオークスレイヤー・g08920)は静かに呟いた。ある意味いつも通りだが、随分とその精神は鋭くなっている様に見える。
「この戦いの帰趨によって俺達ディアボロスの、そして最終人類史の運命が決まっていくだろう」
それは単なる事実の羅列。同時に他のディヴィジョンのクロノヴェーダも同じ様に考えているはずだ。
「敵の大戦力と戦う……歴史の奪還戦と同規模の準備も進んでいるが《七曜の戦》はそれだけではない。最終人類史に奪還した地域や、ディアボロスが制圧したディヴィジョンの地域に向けた、敵の侵攻が予測されている。これから案内するエルサレムもそうだ」
エルサレムは蹂躙戦記イスカンダルの中でも重要な地点だ。ここは亜人たちにとっても取り返すべき土地なのだろう。
「エルサレム奪回を求める神像鎧を装備したアヴァタール級亜人を撃破してほしい。奴らは元はエルサレムで撃破したジェネラル級亜人『破壊者エニューオー』の精鋭部隊の一員であるようだ。移動中は神像鎧を装備していないが戦闘になると自動的に装備する事になるようだ。ただ急に襲われるせいか弱点である杯を持った男の像が背中に現れる。ここを上手く狙えれば優位に戦えるはずだ」
逃げ足の早いという情報もあるアヴァタール級の背中に弱点が現れるというのも皮肉な話だが、狙わない理由は無い。狙わなければかなり強い相手となるだろう。
「個人戦闘力は高いが勝利王セレウコス配下ではないため、トループス級も伴っていない。その上移動中の襲撃となるのでこの機を逃すのは惜しい。闘技場のあるエルサレムでは神像鎧を纏った亜人達は有利に戦えるらしいので、そうなる前に一体でも多く撃破して欲しい。それではよろしく頼んだ」
七曜の戦の前の戦い、どれだけの事を短い間に為せるのか。ディアボロス達の力が試される。
リプレイ
光道・翔一
連携、アドリブ歓迎
…いよいよ七曜の戦。先だって人類史防衛戦が始まったみたいだな。
…といってもこうして小分けに見ると、敵も全員が全員やる気に満ち溢れてるって訳でも無いみたいだが。
…まぁそれはそれで好都合。不安要素を早い内に潰しとくには絶好の相手だからな。
戦闘開始次第、速攻を仕掛ける勢いでパラドクスによる蹴りを放つ
実際は敢えて分かり易く隙を晒すように攻撃を仕掛け、敵の反撃の方向性を誘導して対処し易くする
攻撃の応酬を暫く続けた後、機を見て敵の反撃のさらに不意を突き瞬間的に背後に回り込み、『早業』で間髪入れず蹴りの一撃を像に全力で叩き込み『破壊』する
…激戦を前に、少しばかり不真面目が過ぎたみてーだな。
●
荒野の中、テウメッサの狐は神像の入った箱を背負い静かにエルサレムまでの道を行く。砂埃舞い上がる中、ふと亜人は足を止める。
「……そうだな、狙えるのならこの道を歩いている所をやるのが一番だよな」
テウメッサの狐の前にはどこか彼に似たような気配を持った光道・翔一(意気薄弱なりし復讐者・g01646)が立っていた。
「七曜の戦に向けてな、お前もそうなんだろう。といってもお前はやる気に満ち溢れてるってわけでもなさそうだが」
「まあな、俺としてはお前も同じくらいの気分でいてもらえると助かるんだが……」
「わざわざこうしてお前の前に来てるんだ、その意味くらいわかるだろう?」
「……そうだな」
瞬間、翔一が一歩踏み込み鋭い蹴りを放つ、しかしその一撃をテウメッサの狐は神像鎧の小手で滑らせて防ぎ鋭い爪でのカウンターで翔一の衣服と薄皮一枚を裂く。
「やる気がない、って割には鋭いな」
「やる気があれば何でもできるってわけでも無いだろう?」
そして再度双方ともに攻防を繰り返す、がこの戦いは神像鎧を纏ったテウメッサの狐の方が分がある。それほどに強力なクロノオブジェクトなのだ。
「厳しそうだな? 無理そうなら帰ってくれて構わんぜ」
「さて、どうかな?」
傷だらけになりながらも戦う意志を崩さない翔一、攻撃が見切られる機会も多くだからこそ彼は勝機を見出す。
「その攻撃は何度も見たぜ」
「そりゃそうだ、見せていたんだから」
テウメッサの狐のカウンターに合わせてあえて踏み込み深手を覚悟で敵の側面に入り込んだ翔一が背中にあった神像部分に蹴りを加えると、亜人の体が大きくよろめいた。
「……激戦を前に、少しばかり不真面目が過ぎたみてーだな」
とは言うもののダメージが大きいのも翔一も同じ、彼はテウメッサの狐のが怯んでいる間に撤退するのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【浮遊】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
ジャンヌ・デスペラーダ
※アドリブ連携OK
逃げ切られる前にやらねばならぬとはまた厄介な敵ですね
しかし弱点がわかってるとなれば話は別です
戦闘が始まったらジェヴォーダンをけしかけ【グラップル】による【拘束】を試みます
完全に捉えきれずとも動きを鈍らせれば十分です
続け様に鉄鎖鞭の初撃を背中の男の像に直撃するように打ち込み像を破壊、続けて【連撃】で打ち据え確実にダメージを与えていきましょう。
私達ディアボロスという狩人に目をつけられた時点であなたの運命は決まっていたのです
大人しく滅びなさい
●
「逃げ切られる前にやらねばならぬとはまた厄介な敵ですね」
「だったらどうする?」
テウメッサの狐に問われたジャンヌ・デスペラーダ(鉄槌の騎士・g05561)は即座に言葉を返す。
「弱点が分かっているのです、それを狙わない手はないでしょう」
「だろうな」
テウメッサの狐が答えた瞬間ジェヴォーダンという名前の自動人形を彼女はけしかける。直接触れればそれ自体が攻撃として扱われこの後彼女が放つであろうパラドクスと合わせて二回の反撃を受けてしまうだろうから。
「こんなもの不意打ちにもならん」
軽く身を翻し人形を躱したテウメッサの狐はその牙を剥き出しにしてジャンヌの肉体を噛み砕く。ニヤリと笑った敵だが、急に顔を歪めると慌てて距離を取る。
「……なんつう獲物を持ってやがる」
テウメッサの狐が指摘したジャンヌの手には重そうな鉄の鎖が握られていた。これを振り回し人形の影から亜人の背中を狙ったようだ。怯んだ敵に対してジャンヌは薄笑いを浮かべる。
「私達ディアボロスという狩人に目をつけられた時点であなたの運命は決まっていたのです。大人しく滅びなさい」
「は、狩人から逃げ延びるのは得意分野なんでね」
やはり笑みを浮かべ返すテウメッサの狐。エルサレムを巡る戦いは未だ予断を許さない。
成功🔵🔵🔴
効果1【建物復元】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
龍園寺・トウヤ
おう。復讐者サマのお出ましだぜ。
ケンカの時間といこうじゃねェか。なァ?
そういうわけで、移動中の敵の前に飛び出して真正面からケンカを吹っ掛ける。
正々堂々、一戦交えようじゃねェかよ。
【グラップル】の腕前で真っ向勝負だ。俺の龍拳が唸るぜ。
とはいえ相手はアヴァタール級。回避能力のパラドクスもあることだ。苦戦は免れねえな。
龍撃砲で牽制して一旦間合いを取り、【復讐の刃】で武器を生成する。作るのは鎖分銅だ。
コイツをビュッと【投擲】して……躱されるだろうな。
だが、『避けた』と思った瞬間が一番の隙だ。
【操作会得】と【念動力】が鎖分銅の軌道を変え、奴の弱点、背中の像を【粉砕】しにいく!
隙が見えたぜ、とどめだッ!
●
「おう、復讐者サマのお出ましだぜ。ケンカの時間といこうじゃねェか。なァ?」
「道を急いでいる途中で相手をする程暇じゃないんだが?」
ディアボロス達を振り切りながらの逃避行を続けるテウメッサの狐の前に続けて現れたのは龍園寺・トウヤ(Hopeless・g00207)。
「何言ってる? 正々堂々一対一だぜ?」
「わざわざこっちが不利な状況に攻め込んできて、どの口が正々堂々とか言えるんだよ」
ため息を吐きながらテウメッサの狐は神像鎧を身に着け、その隙にとトウヤは敵へと飛びかかろうとする、がそれは見せ技。直接敵に組み付けばパラドクスを伴わない攻撃となり無効化された上にパラドクスでの手痛い反撃を受けるだけだ。
「どうした? 踏み込まないのか?」
「少し気が変わった」
トウヤの組付がパラドクスでない事を見抜いていたのか或いはそういう騙し合いに慣れているのか。テウメッサの狐から距離を取ったトウヤは龍撃砲を迫ってくる敵の横ギリギリを狙って放つ。これもまた牽制の一つであり、直接狙えば不利になるだけだ、なぜならば彼の真の狙いはパラドクスで生み出す武器の方だからだ。
(「やれやれ、厄介な奴だ」)
普通に攻撃しても致命打を与えるのは難しいだろう、ギリギリまで間合いをとり龍撃砲の間を走りながら迫ってくる相手を見極め、そして投げる。
「隙が見えたぜ、とどめだッ!」
「こんな見え透いたハッタリが通じるわけ
……!?」
放たれたのは鎖分銅、その軌跡を察知してテウメッサの狐がかわしたのも確か。しかし空中で誘導弾のように軌道を変えたそれが背中を打つのまでは敵の予想外。
「てめえ最後だけ正直になるなよ?」
「クズに説教しても無意味なことくらい分かるだろ?」
どこか似ている二人は互いに罵り合いながら攻撃を交わすのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【操作会得】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
カイ・オーベルト
アドリブ、連携歓迎
任務了解、だ。アヴァタール級の撃破に向かう
この機を逃すには惜しい強敵だ。確実に仕留める
左手にコンバットナイフを構えつつ右腕に仕込んだアームカノンを起動。「砲撃」戦用意
仲間との連携で攻める。近接戦を挑む仲間と敵を中心に、円を描く様に敵背後に回り込もうとする
警戒はしているだろうが、牽制になればいい。背後の神像を視界に捉えるまでは迂闊に攻撃はせず敵からの攻撃に警戒
回り込み続け、一瞬でも背後を捉えたら神像の位置を記憶
【士魂砲】を放つ。精神力を物理エネルギーに変えた砲弾を「誘導弾」【命中アップ】で曲射させ、死角だろうと神像に命中させる
反撃の蔓をナイフで切り払い強引に脱出、抵抗する
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
他に逃げ道もないとはいえ
我欲より義理を果たそうとする辺り
どこが不真面目なんだかね
背中の神像も、敵に背中は見せぬとの意思表示にも感じられて
正直嫌いではないのだけれど…
それでも、戦うのもまた運命か
奪還すべきものがある
それは何方にとっても同じなのだから
『管狐影縛法・閃』使用
密かにクダ吉を放っておき、刀を構えて対峙する
油断なく観察し、敵の動きを見極める
回避力に優れた相手、易々と神像に刃は届くまい
故に刀を囮とし、クダ吉が死角から攻撃を仕掛ける
神像が狙われたと見せかければ回避行動を取るだろう
だが狙いは影、牙を突き立て敵の動きを縛った上で
パラドクスの力宿した斬撃で神像を破壊
撃破へと繋げたい
●
「……今度は二人がかりかよ」
心底うんざりするような表情を浮かべたテウメッサの狐は立ちふさがるカイ・オーベルト(アイゼンフント・g05787)と文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)を前に神像鎧を装着する。
「勿論だ、お前はこの機に逃すには惜しい強敵だ」
「過大評価だぜ? 俺はそんな大したタマじゃない。もっとやる気のある相手に当たってくれよ」
テウメッサの狐はナイフを構えて全く逃すつもりのなさそうなカイの様子を見て呟く。カイのようなタイプは冗談が通じずいつも本気だというのは分かっているのだろうが愚痴も兼ねてか言葉で揺さぶってくる。
「いやいやそんな事はないだろう? 他に逃げ道も無いとはいえ我欲よりも義理を果たそうとする辺りどこが不真面目なんだい?」
「お前みたいに笑顔で言われたくない事を言ってくるのとか、実は裏で嫌われてるんじゃないか?」
テウメッサの狐は雪人の人物評には答えずに間合いを取る。口ではあれこれ言い合っているものの互いの出方を見るまでの雑談に過ぎない。大体二人がかりで来るということは全力で狩りに来ているということだ。
「逃げないのかい?」
「お前分かってて言ってるだろう?」
「そりゃ背中に弱点があるのは知ってる。でも最初から見せる気は無いんだろう、その意思の通し方は正直嫌いではないのだけれど」
「だからといって見逃しはしないだろう」
「そうだ、上官を無くしてなお義理で行動を決める存在は敵からすれば随分な強敵となりうるからだ」
口数の多くないカイが珍しく静かに返す、或いはドイツ奪還にまで至った自身を顧みて言っているのかも知れない。
「いずれにしても戦うのは運命さ。奪還すべきものがある、それはどちらにとっても同じだから」
「……こんだけ時間稼ぎしても突破口は見つからねえか。いいぜ、仕方ない」
雪人とカイはテウメッサの狐を中心として円を描くように二手に分かれる。左手側に動いたカイに蔦を伸ばし動きを止め。迫る雪人からの対応を優先する。
「クソ、面倒な」
「面倒でも付き合ってもらうよ」
雪人の振るう刀を冷静に回避しながらもカイの方へも意識を割かねばならないテウメッサの狐。ただそれでも神像鎧の力は強く簡単には崩せない、だがそんな糸のような隙間に雪人は刀の切っ先を通す。
「神像……もらった!」
「甘いんだよ!」
しかしそれはテウメッサの狐とっては見えていたもの、だが刃は見えても足元は見えていなかった。
「クダ吉!」
「しまっ……!」
隠れて動いていた管狐がテウメッサの狐の影に食らいつき数瞬の時間を作る。そしてそれだけの時間があれば蔦を切って逃れたカイが狙いを定め士魂砲を撃つまでに充分だ。
「墜ちろ!」
腕と一体化された銃砲から精神力を破壊エネルギーへと変換した砲弾が、ネジ曲がりなが背中の神像部分を激しく打つ。吹き飛ばされたテウメッサの狐はダメージを受けて転がりながらも二人から這々の体で離れていく。しかしカイもまた攻撃と脱出に力を使いすぎ追えず、雪人がそんな彼に肩を貸す。
「……手応えは、あった」
そう呟いたカイはされど深追いはせず他のディアボロスに任せるべきと雪人と共に帰りのパラドクストレインへと向かう。決着はあと少しだろう。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【寒冷適応】LV1が発生!
【傀儡】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
真面目だと不真面目だとか。
忠義だとか義理だとか恩だとか。
どうでもいいんですよ。
私がお前を殺すのに、そんなものは何の関係もありません。
関係があるとすれば、お前の姿くらいです。
【タロース・オフリス】を使用し、タロースを象った怪物を作り出します。
敵の発生させた蔓状の植物はタロースに焼き切らせて長時間拘束をされないようにし、テウメッサの狐を狙わせます。
素早い相手、さらに背中が弱点となると狙うのは困難ですが、交戦中、敵がギリギリで回避できるかどうかというタイミングで【泥濘の地】を。
感覚を狂わせ、生まれた隙に背中の像ごとタロースの灼熱の腕で掴み、焼き尽くします。
私は狐が嫌いなんです。お前は確実に殺します。
●運命は狐を逃さない
次々と現れるディアボロスの追手を振り切りながら走るテウメッサの狐、最早悠長に歩いている場合でも無いというように。その彼を包むような砂塵を孕んだ風が吹き、たまらず彼が目を瞑り立ち止まる。そして風が止み瞼を開いた時、ローブに身を包んだ獣相を持つ女、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)が佇んでいた。その女は杖をテウメッサの狐に突きつけて言葉を言い捨てた。
「――真面目だと不真面目だとか。忠義だとか義理だとか恩だとか。どうでもいいんですよ」
同感だ、とは狐も考えるがこれまでのディアボロスに無いものを女――クロエからは感じ取れる。軽口にも世間話にすらも付き合わない気配。
「私がお前を殺すのに、そんなものは何の関係もありません。関係があるとすれば、お前の姿くらいです」
殺意。冷水で満たされた壺の中に押し込められればこのような感覚を得るのだろうか。
「……そうか、『最初の俺』か」
返事はあるわけ無いが狐は確信した、ならば女は全力で俺を殺しに来るだろうと。そこから互いの魔術が発動したのは瞬きさえ許さない間を置いてからだった。
「葡萄の蔓よ!」
「『タロース・オフリス』」
伸びる葡萄の枝がクロエを捉え、枝を踏みながら蜂のような様相の植物の巨人が狐を捕まえる。足元が泥になった程度は移動速度が落ちる程度で戦闘力が落ちたりはしない、にも関わらず狐が巨人から逃れられなかったのは、一瞬でも殺意に縮こまってしまったからか。
「私は狐が嫌いなんです。お前は確実に殺します」
「ハッ……」
言い放つクロエの意図を受け取ったのか巨人が力を込め背中の神像に罅を入れる、それだけでなく高熱を発し狐を炭へと変えていく。
「……『俺達』に宜しくな」
舌が炭になる前に発された言葉にクロエは何も返すこと無く去る。炭となった狐の死体は再び吹き抜けた砂風に飲まれ、後には何も残らない。ただ行く者のいなくなった道がただ残るだけ。
成功🔵🔵🔴
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!