東ポーランド及びモルドバ地域攻略作戦

 攻略旅団の作戦に従い、ドイツとの国境に近い『モルドバ、東ポーランド』地域の吸血ロマノフ王朝のクロノヴェーダへの攻撃を行います。
 モルドバ、東ポーランドは、吸血ロマノフ王朝の版図の中では、比較的気候が穏やかな地域で、降雪量も少なく、農業生産力なども、吸血ロマノフ王朝の中では高いようです。
 こういった都市周辺にはヴァンパイアノーブルによる警備部隊などが置かれているようなので、この警備部隊を撃破していきましょう。
 この地域の敵を撃破しておけば、《七曜の戦》で、吸血ロマノフ王朝の軍勢が、機械化ドイツ帝国の領域に攻め込む事を阻止出来るかもしれません。

いっそこの雪を食んだなら(作者 音切
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#吸血ロマノフ王朝  #東ポーランド及びモルドバ地域攻略作戦  #モルドバ  #ポーランド 


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「あら。よかったじゃない」

 あっけらかんと、少女は言った。
 あまりに自然に、あまりに当然のように言うものだから。言葉の意味を理解できずに。
 少女の前に跪く女は、ぽかんとしてしまう。

「お前の夫とやらが壊れかけているのなら、そいつの餌はもう必要ないでしょう?」
 そんな女の様子など、歯牙にもかけず。
「モスクワの方で食糧が不足してるって言ってたから、丁度良かったわ」
 寒風に艶やかな髪を揺らし、少女はクスクスと笑って。
「次はもっとたーくさん、食糧を送っておいてね」
 そう言い捨てると、外套を翻し遠ざかってゆく。

「な、にを……言って……」
 愕然と。
 座り込んだまま、女は動けない。
 自分の分まで必死で働き、倒れてしまった夫に少しでも食糧を……。
 女の願いは、ただそれだけだった。
 それだけの願いが、あの少女には通じない。何一つ伝わらない。
 夫という大きな働き手を欠いて、更に食糧の徴収まで増やされて……。
 ……もう、どうしたらいいのか分からない。

 じわりと。
 手に染み込んでくる冷たさに、無意識に雪を握りしめていた事に気付く。
 土で汚れた、茶色い雪……。
 飢餓と寒さで朦朧とする意識の中、女はふと思う。

 いっそ、腹が膨れるまでこの雪を食んだなら。
 この絶望も、苦しみも。全て消えるだろうか……と。


「新宿島が夏になっても、このディビジョンは寒いんだよね……」
 独り言のように、ぼそりと呟いて。綴・稀夜(妖狐の魔導忍者・g08573)は説明を始める。

「このパラドクストレインが向かうのは、吸血ロマノフ王朝の南西……東ポーランド及びモルドバ地域だよ」
 攻略旅団の方針により、該当地域の攻略を行う事になったのだと稀夜は言う。
 東ポーランド及びモルドバ地域は、1年中雪に覆われた吸血ロマノフ王朝の中では、比較的温暖で、農奴による食糧生産拠点とされているようだ。
「皆には、農奴の村の一つに向かって欲しいんだ。そこを管理してるクロノヴェーダを倒しておけば、七曜の戦で有利になるかもしれないからね」
 この作戦は、最終人類史に奪還した機械化ドイツ帝国領を守る上で大きな効果が期待できる。
 七曜の戦までにしっかりと成功させておきたい所だ。

「だから、クロノヴェーダをしっかり倒してきて……欲しいんだけど、実はもう一つお願いしたい事があってさ」
 これから向かう農奴の村は、クロノヴェーダの理不尽なまでの圧制によって餓死者が出るほどに過酷な状況のようだ。
 可能ならば、この農奴たちへの食糧支援も行って欲しいのだと稀夜は言う。

「今にも死んじゃいそうな人が居るくらい酷い状況だから、すぐに支援してあげて欲しいんだけど……トループス級のクロノヴェーダが村を巡回してるから、よそ者が居るとすぐバレちゃうんだよ」
 その場合、よそ者を引き入れたとして農奴達に被害が及ぶ可能性がある。
 それを避ける為にも、農奴達への支援とトループス級への対処は、同時に進めるのがよいだろう。

 トループス級クロノヴェーダ『国境警備吸血隊』の巡回経路は、パラドクストレインの情報で既に判明している。
 幸い一塊のグループで行動しているため、待ち伏せして戦闘に持ち込めば、村の異変に気付かれる事はないだろう。
 雪上という地の利を生かした立ち回りの出来る厄介な相手だが、待ち伏せの利点をしっかりと活かす事ができれば、戦闘を優位に進める事が出来る。
「アヴァタール級が気付く前に、しっかり全部倒してきてね」

 国境警備吸血隊が巡回から戻って来ないとなれば、アヴァタール級『深窓の令嬢フランツィースカ』が姿を見せるだろう。
 あどけない少女の姿をしたヴァンパイアノーブルは、その可愛らしい見た目とは裏腹に。アヴァタール級としての確かな実力を有している。
「箱入り娘……って言うのかな、こういうの。価値観がぶっ飛んでるし。小動物とか『かわいぃ~』って言いながら、力の加減が出来ずに握りつぶすタイプだよ。たぶん」
 その為、見た目で油断せずに対応してきて欲しい。

「七曜の戦はもちろん大事だし、絶対に負けられないけど。今苦しんでる人たちの事も、どうかお願いね」
 最後にそう言い添えて。
 稀夜は、パラドクストレインへと向かうディアボロス達を送り出すのだった。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【書物解読】
2
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【おいしくなあれ】
1
周囲の食べ物の味が向上する。栄養などはそのまま。効果LVが高いほど美味しくなる。
【クリーニング】
1
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【寒冷適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、摂氏マイナス80度までの寒さならば快適に過ごせる世界に変わる。
【アイスクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が3mの「氷の立方体」を最大「効果LV×3個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。出現させた氷は通常の氷と同様に溶ける。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【命中アップ】LV1 / 【凌駕率アップ】LV1 / 【リザレクション】LV1 / 【先行率アップ】LV2 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV3

●マスターより

音切
 音切と申します。
 吸血ロマノフ王朝の依頼をお届けにあがりました。
 時系列は、①②(同時進行)→③です。

『①一般人への食糧支援』
 農奴達へ食糧支援を行います。
 飢餓状態の人が多いので、消化の良いものをご用意ください。
 皆様が立ち去ると排斥力が働きますので、保存食を渡す場合はその点にもご注意くださいませ。
 時系列としては②と同時進行です。
 ②に向かう人が居ないまま①をクリアした場合、
 村のど真ん中での戦闘となり、農奴達が巻き込まれる危険性が跳ね上がります。
 攻略上必須ではないので、一応スルー可能な選択肢です。

『②トループス級:国境警備吸血隊』
 トループス級との戦闘です。巡回ルートが判明しているため、待ち伏せが可能です。
 時系列としては①と同時進行になります。

『③アヴァタール級:深窓の令嬢フランツィースカ』
 この村を管理しているアヴァタール級です。
 彼女の討伐が、本シナリオの最終目標となります。

『その他』
 筆はとても遅い方ですが、期限は意識して進めてまいります。
 よろしくお願いいたします。
20

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


アイリーク・ビフロスト
仲間が食糧支援を行っている間、俺はトループスの対処にまわろう。
俺独りはたかが知れているけれど、時間稼ぎくらいにはなるだろ。何よりこれ以上彼らに非が及ぶのは、立場上見過ごせないから。

村の仲間に気づく前に巡回経路を先回りし、不意を打って魔術を展開してダークネスコフィンを発動。敵を1体、闇魔術の棺に閉じ込め圧縮し潰していく。
雪中の戦いになれてるみたいだけど、それはお互い様だ。氷には慣れてるからね。棺や氷輪を召喚して盾にしながら回避、続けざまに敵に凍るほど冷酷な棺をけしかけて追い立てていくよ。

できる限り村に注意がいかないようひきつけて、支援が上手くいくよう援護をしよう。
ほら、しっかり俺の相手してよ。


イリヤ・レダ
※アドリブ・共闘OKです

クロノヴェーダの支配地で過ごす人々のなんと過酷なことか…
彼らは人類と相容れないのだと、作戦に参加する毎に実感するね

トループスの巡回経路がわかっているのは有難いよね
食料支援組や村人が被害に合わないように、足止めして確実に殲滅する必要があるね 物陰を利用するか塹壕に隠れる等の手段を取って確実に不意を打ちたい

共に出陣したディアボロスと連携をとれば、退路は更に阻みやすくなるだろうね 声や仕草で連携を取りつつ不意打ちの優位を譲らないまま片付けよう

パラドクスは「緋封 解放」を
お得意の吹雪ごと、緋色の嵐が圧搾するだろうね
悲鳴さえも飲み込んで、逃れられない


タラス・ジュラヴリョフ
ロマノフは相変わらず寒いね。新宿島の日差しにうんざりしてたから丁度いいけど
ここでずっと暮らさなきゃいけない皆には辛いだろうな、ヴァンパイアノーブルの搾取も重なれば余計にさ

防寒着を着込んで巡回経路に待ち伏せするよ
【寒冷適応】で雪中へ潜伏。通りがかったところに奇襲を仕掛けるよ
村に向かったみんなが動きやすいように派手に喧嘩を売って気を引こうね

口さえ動けば戦えるけど、ずっと雪の中にいるのも疲れるしみんなと連携して早めに決着を付けようね
パラドクスで言霊を発し凍える闇を生み出す。敵の生み出した吹雪に紛れ込ませて死角から襲い掛からせるよ
「搾取に搾取を重ねるろくでなし、魂ごと凍えるのはお前達の方が相応しい」


 パラドクストレインから降り立った瞬間に、ひやりと。
 冷たい空気がディアボロス達を包む。
 車内に残っていたお日様の匂い。暖かな夏の気配も、瞬く間に寒風に消え失せて。

「……ロマノフは、相変わらず寒いね」
 零れた吐息の白さに、タラス・ジュラヴリョフ(大衆の聲・g07789)が呟く。
 この染み入るような寒さは、タラスにとっては馴染んだもの。
 夏を迎えた新宿島の日差しは、あまりに眩し過ぎて。熱すぎて。
 じりじりと肌に焼き付くようであった熱が、寒風に拭い去られていく感覚が、ほんのりと心地よい。
 だがそれは、季節の廻りを知るからこそ感じられるものだ。
「ここでずっと暮らさなきゃいけない皆には辛いだろうな、ヴァンパイアノーブルの搾取も重なれば余計にさ」
 丸いレンズ越しに見据える先……これから向かう農奴達の村に、夏の熱い日差しが降り注ぐ事は決してない。

「彼らは人類と相容れないのだと、作戦に参加する毎に実感するね」
 雪に溶け込む白い髪を、寒風に揺らして。イリヤ・レダ(『緋』を封ずるモノ・g02308)が、こくりと頷く。
 すらりと伸びた手足の、その指先から。あっという間に体温が奪われて、体が凍えてゆく。
 こんな寒さが途切れる事なく、一年中続く……それだけでも、人々が生きてゆくには厳しい状況だろうに。クロノヴェーダによる理不尽な支配が、人々を更に追い込んでいるのが実情。
 飢え、苦しみ。しかし逃げる事も叶わない……そんな農奴達の境遇を想えば、イリヤの表情も悲しみに曇る。

「これ以上村人達に非が及ぶのは、立場上見過ごせない」
 此処に集った者達の中で、最も小柄な体格のディアボロス……アイリーク・ビフロスト(ヒルコのスノウメイジ・g08954)から発せられた声は、その子供にしか見えない容姿とは裏腹に、とても落ち着いていた。
 種族柄、容姿は幼く見えても。とうに成人を迎えている実年齢が、アイリークの大人びた表情と所作に表れている。

 アイリークもまた、この地の冷たさには馴染みのある身。
 背負う筈であった役目を、刻の狭間に失おうとも。統治のなんたるかも分かっていない、管理者とは名ばかりの者達が民を苦しめているとなれば。それを黙って見ている訳にはいかない。
「俺達はトループスの対処にまわろう」
 例え自分一人であったとしても、せめて仲間達が食糧支援をする時間は稼いでみせると。
 静かな表情の下に覚悟を秘めて、パラドクストレインへと乗車したアイリークであったが。
 彼の呼びかけに応える声は、頼もしい事に二つあった。

「トループスの巡回経路がわかっているのは有難いよね」
 食糧支援のため、先行して村へと入ってゆく仲間の背中を見送りながら。
 イリヤはその紅玉の目に映る実際の地形と、事前の情報とを照らし合わせてゆく。
「先回りして、敵の不意を突きたいところだな」
「物陰に隠れるか……少し雪を掘れば、簡単な塹壕になるかな」
 アイリークに言葉に頷きながらも、雪を掘るのはちょっと寒そうだとイリヤが困った笑みを零せば。
「派手に喧嘩を売って気を引こうね」
 釣られてほんのり表情の緩んだタラスが、寒冷適応の力で仲間達を包んでゆく。

 寒さに縮こまっていた体が、ゆったりと解れてゆくのを感じながら。
 戦場を定めたディアボロス達は、行動を開始するのだった。


 ざく、ざく……と。
 雪を踏みしめる多数の足音が、近づいてくる。

「この辺りは異常なし、だな」
「油断するな。先日も、フランツィースカ様に直訴した愚か者が出たばかりだ……あの後、私が叱られたんだぞ」
「それはご愁傷様。あの方はその……気分屋でいらっしゃるから」

 トループス級クロノヴェーダ……『国境警備吸血隊』の声が近づき。そして、遠ざかり始めたのを感じて。
 雪に身を伏せていたディアボロス達は、一気に動き出した。

 雪中を跳ねる兎のように。飛び出したアイリークが、『国境警備吸血隊』との距離を詰める。
(「雪中の戦いになれてるみたいだけど……」)
 それはお互い様だと。
 小柄な体は、重心を低く保ったまま。その足でしっかりと雪を捉えて。
 紫の瞳が敵を映すのと、唇が詠唱を紡ぐのは同時。
 現れた漆黒の棺が、顎を開く大蛇のごとく。その扉を大きく開いて、国境警備吸血隊へと迫る。

「何者だ!」
 国境警備吸血隊の反応は、アイリークが思う以上に早かった。
 彼女たちが、それだけ真面目に周囲を警戒し、巡回任務をこなしていたと言う事なのだろう。
 棺が、国境警備吸血隊を飲み込む寸前。その目と鼻の先に現れた雪と嵐の防壁が、ギリギリの所で棺を押し留める。

「ディアボロス、だと」
 アイリークと吸血隊の間で、黒い棺と風雪の防壁がせめぎ合う。
 彼らの周囲で常識は目まぐるしく書き換わり、風雪の余波がアイリークの髪を揺らして。その体力をじわじわと削り取ってゆく。
 だが、この程度の寒さなど……。

「ほら、しっかり俺の相手してよ」
 吸血隊の視線を、己へと縫い留める挑発的な言葉と共に。
 いっそう高めた、パラドクスの力が。漆黒の棺が、防壁ごと吸血隊を圧し潰す。

「よくもやってくれたな……!」
 雪へと沈んだ仲間の姿に、残る国境警備吸血隊が目の色を変える。
 呼び起こされる風雪は、今度は防壁等という規模では収まらず、戦場全体に吹き荒れて。
 寒冷適応の効果さえも塗り潰し、ディアボロス達の魂さえ凍えさせてゆく。その中で……。

「搾取に搾取を重ねるろくでなし……」
 大気をかき乱す暴風にも負けず、声が響く。
 纏う防寒着は、吹き付ける雪で白く染まって。奪われてゆく体温に、指先が凍えても。唇さえ動けば戦う事は出来るのだと。
 拡声器を手に、タラスは雪上に立つ。

 一層強まる風に、帽子を飛ばされぬよう抑えながら。
 白く霞む視界の中、敵の影を見落とさないように。紫の目を細め、紡ぐ……。

「魂ごと凍えるのはお前達の方が相応しい」
 自身の体が、魂が。凍え行く感覚をそのまま乗せて。
 吹雪の温度を体現する波長で、空気を揺らせば。
 タラスの言葉は、闇という姿で具現する。

 雪上を素早く駆ける、吸血隊の素早さなど無関係に。
 語る言葉がその耳に届いた瞬間に、生じた闇はその腕に、足に絡みつき。
 冷気に強いはずの吸血隊の体を蝕んでゆく。

「このままでは……」
 吸血隊員が、また一人膝を折り。動かなくなる様を目にして。
 自分たちが追い込まれているのだと、認めざるを得なくなった吸血隊の視線が、ディアボロス達から逸れた。
「っ、フランツィースカ様に報告を!」
 巡回路を引き返さんとする吸血隊の前には、しかし既にアイリークとタラスという二人のディアボロスが立ちはだかっている。

 逃がすつもりはないと。
 態度で語るディアボロスを前にして、他の道はないかと。
 振り向いた吸血隊の視界は、唐突に緋色に染まった。

「今更、何処に行くんです?」
 その身に封じた、その名を呼んだ瞬間に。
 イリヤの身が、緋色へと染まってゆく。
 雪原に馴染む真白の髪も、緋色へ変じて。その変化は、イリヤの身だけでは納まらずに。
 雪の嵐さえも飲み込んで、吹き荒れた。

 そもそも吸血隊に、初めから退路など無かったのだ。
 待ち伏せの配置も、戦いでの位置取りも。互いに意識しあい、連携していたディアボロスに死角は無かったのだから。

 イリヤの緋色の目に、吸血隊の最後の一体が映り込む。
 驚愕に、目を見開き。何かを叫ぼうと、口を開いた瞬間に。
 緋色の嵐は、上げるはずだった悲鳴諸共に、吸血隊のその身を飲み込んでいった……。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【書物解読】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV2が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!

レイア・パーガトリー
限界まで働かせるなんて、酷いことをするわね
少しでも元気になって欲しいから、食糧支援に向かうわね
【アイテムポケット】を活かして、綺麗な食器や調理器具と食材のほかに
入りそうなら保存食や、排斥力を受けない対策のされた予備調味料も詰めていくわ

色々なフレーバーで小瓶のジャムやライ麦パン、紅茶葉、スープの材料を使って
現地風の味付けでスープを作って、暖かいお茶を淹れて食事を作るわ
飢餓状態の症状によっては、林檎をすりおろしたり
ジャムを薄めに入れた紅茶にしてみたり
口の中でほぐれる位くたくたに煮込んだお肉のスープにしてみたりして
食べる気持ちが湧いてくるように、見た目や香りにも気をつけましょ


エルマー・クライネルト
このディヴィジョンは本当に…何処に行っても圧政、まともに生かされている人を見ないな
いくら手を貸しても終わりが見えない。モスクワでのココツェフの言葉を思い出す
……それでも見捨てることはしないとも

巡回に見つかる前に速やかに村へ
新宿島から持ち込んだ料理道具と食材を使用し食べやすいスープを作ろう
消化しやすいように具は細かくして…味は不味くはない、食べられるはずだ
【口福の伝道者】で多くの人平気渡るよう数を増やして自力で口へ運べない者には手助けを行う

苦しみに耐えてくれと、随分と自分勝手なことを言っているのは分かっている
だが、死が救いだとは思いたくない。どうか生きてくれ…我らが必ず奴らを退けてみせる


 ことこと、と。
 美味しい音を立てる鍋の蓋を取ったなら。
 乾いた冬の空気に、白い湯気が上る。
 くるり、くるりと、鍋をかき混ぜる程に。鼻をくすぐるスープの香りに、レイア・パーガトリー(竜胆・g01200)は小さく頷いた。

 新宿島から持ち込んだ材料で拵えた、トマトの風味豊かなスープは、我ながら美味しそうな仕上がり。
 けれど、村の人たちの事を考えれば、もう少し煮込んだ方がいいかしら……と。
 アイテムポケットから、次の材料を取り出しながら。レイアは思案する。

 村の中を見回してもクロノヴェーダの姿が見えないのは、対応に向かった仲間達が頑張ってくれているからだろう。
 だが同時に、村人達までもがそれぞれの家に閉じこもり、姿を隠してしまっている状況だった。

「……酷いことをするわね」
 調理中もあらゆる方向から、視線を感じてはいるのだけれど。
 興味を示しながらも村人達が話しかけて来ないのは、余所者に構えばクロノヴェーダの機嫌を損なうかもしれないという心理が働いているのだろう。
 肉体的にも、精神的にも追い込まれている村人達の事を思えば。怒りにも似たもやもやが、胸の中で渦を巻く。

「このディヴィジョンは本当に……」
 まともに生かされている人を見ないな、と。
 レイアと共に、スープ作りを進めていたエルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)も、閑散たる村の様子にその心情を零した。

 この吸血ロマノフ王朝というディヴィジョンでは、ディアボロス達の向かう先々で人々が苦しんでいる。
 その都度、支援の手を差し伸べても。根本的な解決の道は、未だ見えないのが現状。
 長らく栄養を取れていない者にも配慮した、具が細かく刻まれたスープをかき混ぜながら。
 モスクワで聞いた声が、エルマーの耳に蘇る。

『それで得られるのは一般人の生命が失われたという事実のみだ』
 このディヴィジョンの内政を担うココツェフを倒す……そのパラドクストレインに乗り込む時に、既に覚悟は決めていた。
 だが実際に、彼を倒した影響の一端を目にして、何も感じていない訳ではない。

(「……それでも見捨てることはしないとも」)
 決めたのは、見捨てる覚悟ではなく、背負う覚悟。
 エルマーの高まる感情に応えるように。広がるパラドクスの力が、その場に口福の伝道者の力を刻み込む。

「あ……あのっ」
 震える声が響いたのは、その時。
 恐る恐る、ゆっくりと。一人の女がレイアとエルマーの元へと近づいてくる。

「わ、私っ……その。夫が倒れてしまって……食べ物が……」
 何も無いのだと。
 詰まる声で、必死に訴える女に。
「はい。どうぞ」
 レイアが素早く、スープを差し出した。

「あ、の……」
 見開く目で、受け取って良いのかと問う女を、安心させるように。
「怖い管理者たちは、しばらく来ないから」
 もう大丈夫だと言い聞かせるように、レイアが笑いかければ。
「……あり、がとう……」
 緊張の糸が切れたのか、へたり込んだ女の目から涙が零れた。

「家族は起き上がれない状態なのか?」
 片膝を付き。目線を合わせて問うたエルマーに、女はこくこくと頷く。
「それなら私、林檎をすりおろしてくるわ」
 固形物が喉を通りづらい人でも、食べやすいようにと。アイテムポケットには様々な状況を想定して用意した食材が、まだまだ沢山詰め込まれている。
 それから、体を温められるようにお茶も淹れないと……と。
 結い上げた紫の髪を元気に揺らしながら。
 レイアは慌ただしくあっちに行ったり、こっちに来たり。
 あの女性が勇気を出してくれたから、きっと他の村人たちも続いてくれるはずだと。やるべき事が一気に増えて大忙し。

 だが、それだけ沢山やれる事があるのなら、やりきって見せると。
 ほんのり勝気な表情に、やる気を漲らせて。レイアはテキパキと準備を進めてゆく。
 人々の気持ちが和らぐように、食べる気持ちが湧く様に。
 レイアの手元から、村中に。白い湯気と美味しい香りが広がってゆく……。

「私たちは貴方達全員に行き渡るくらいの十分な食糧を用意している。動けるものに配膳を手伝って貰えるとありがたいのだが……」
 他の村人達にも、伝えて貰えるだろうかと。
 エルマーが言づけた女は、何度も礼の言葉を口にして。村の中へと駆けていった。
 これで、食糧配給の為の動線も確保出来た訳だが……エルマーの表情は硬い。

(「苦しみに耐えてくれと、随分と自分勝手なことを言っているのは分かっている」)
 村の困窮には、ディアボロス達の活動も少なからず影響している事は確かだ。
 それを考えると、村人からの「ありがとう」の言葉は、どうにも受け取る気にはなれないが、それでも。
(「死が救いだとは思いたくない」)
 それが、我儘やエゴイズムであったとしても。どうか生きてくれ……と。
 そう願わずにはいられない。

 村の中に、人々の騒めきが聞こえ始める中で。
 エルマーの目は、白い景色の向こうへ……退けるべき敵の方へと向けられていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!


 息を整える程度の僅かな休憩の後、ディアボロス達は次の行動を開始する。
 目指すのは、『国境警備吸血隊』が巡回していた経路の出発点にして、終着点。
 村の管理者である、アヴァタール級が控えるその場所。

「ふーん。あの子達、中々帰って来ないと思ったら……」
 そういう事、と。

 今まさに、村へ向かわんとしていたアヴァタール級クロノヴェーダ……『深窓の令嬢フランツィースカ』は、対峙したディアボロス達を見回して。嬉しそうに目を細めた。

「でも、丁度良かったわ。人間で遊び過ぎるなって言われて、退屈してたところだから」
 まるで、新しい玩具を与えられた子供のように。
 期待と高揚に、目を輝かせて。
「貴方達なら、壊しちゃっても問題ないものね?」
 無邪気に、残酷に。
 白い牙を覗かせて、くすりと笑った。
エルマー・クライネルト
……考えるのは後だ、今は目的を果たすのみ
村の外へ出て仲間達と合流し戦闘へ参加

操り人形を手繰り、雪を吹き飛ばしながら存在を誇示して接敵
敵の出すコウモリの群れに無策で突っ込んだように見せかけて油断を誘い、その隙にオラトリオを死角へ回り込ませる

村は酷い有様だったぞ…と言っても何も感じないのだろう
やはり貴様等の居る場所には碌なことが起きない
我儘はお互い様の様だ、故に私もエゴを貫くとしよう

ここで辛くとも生き続ける者の為
かの者へ切った啖呵への責務の為
そして何よりも私自身の怒りの為だ

オラトリオに命じて死角からパラドクスの捨て身の一撃
奪い返せるだけ奪い取れ、村人達が二度と大地の雪に口を付けなくて済むように


アイリーク・ビフロスト
仲間がいてくれて助かった。
支援も無事に進んだようだし、やるべきことはひとつ。統治を支配と勘違いしているらしいやつをこの土地から追放するのみだ。

is--氷と闇の魔法を扱う詠唱から氷結輪を出現させて、発動したパラドクスと合わせ敵の動きを妨害。
俺の氷魔法は炎との相性は決して良くない。だけど数舜の阻害ができれば俺の役割は果たせる。
剣は氷の破片や滑りを利用してできる限りかわして、仲間が攻撃する隙をつくりつつ連携するよ。

どんなに力に優れた統治者も独りでは何も為せない。もっとも、君は統治者にもなりえていなかったし、雪の味すら想像する力もなかったようだけれど。
倒れゆく敵を一瞥したら、民の行く末をただ祈ろう。


「せいぜい足掻いて、楽しませてちょうだい」

 対峙した少女……『深窓の令嬢フランツィースカ』の笑い声が、アイリーク・ビフロスト(ヒルコのスノウメイジ・g08954)の耳朶を打つ。
(「速い……!」)
 頭部を庇わんと咄嗟に出した腕に、焼き付くような熱。
 次いで、アイリークの目は、その視界一杯に赤く輝く炎を映した。

「簡単に壊れないでよね」
 一瞬のうちに距離を詰めて来たフランツィースカの握る炎剣が、アイリークへと振り下ろされる。
 常識や道理では、交わす事の出来ない。世界の法則を書き換えながら迫るその一撃に。
 すんでの所で完成した魔術が、呼び出された氷像が。フランツィースカの体を僅かに押し返す。

 炎熱が、紫の髪を揺らして。
 赤く輝く刀身は、氷像を豆腐のように切り裂きながら。アイリークの体に傷を刻んでゆく。
 切っ先は、僅かに急所を外して。脇腹へと逸れた。
 焼き付く痛みに、後方に傾ぐ体を。
 しかしこれ以上、村の方に踏み込ませはしないと。雪に足を埋めながら、アイリークは堪える。
(「このままにはしておけない……」)
 管理者と言う立場にありながら、フランツィースカの言動は世間の事を何も知らない子供そのもの。
 この地の人間は遠からず、消耗品のように使い潰されるだろう。
 ならば、やるべき事は唯一つ。

 一人では、一時ここに留めるのが精一杯の相手でも。仲間達と力を束ねれば、それが出来ると。
 炎を払い退けたアイリークの視界で、白い雪が散る。

 エルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)の操る機械人形が、さながらブルドーザーのごとく。
 咆哮の代わりに回転式の機械刃を唸らせながら。雪をかき分け、跳ね散らかしてフランツィースカへと吶喊してゆく。

 その馬鹿正直に過ぎる姿は、戦場の視線を集めるには十分。
「村は酷い有様だったぞ……」
 指先の糸を手繰りながら発したエルマーの言葉は、静かに響きの中に怒気が滲んでいた。

「あら。人間の村なんだもの、仕方ないじゃない」
 だってあいつら、泥と雪に塗れるくらいしか能がないでしょう……と。くすくすと笑いながら。
 フランツィースカが呼び出すのは蝙蝠の群れ。
 唐突に夜が訪れたのかと錯覚するほどに。高密度の黒い塊と化した蝙蝠が、エルマーと機械人形を飲み込んでゆく。

(「やはり、貴様等の居る場所には碌なことが起きない」)
 キィキィと。
 蝙蝠たちの喧しい声に包まれながらも。
 緑の瞳は、フランツィースカを捉えたまま。エルマー指は糸を手繰る。
 雪を跳ね上げながら暴れる機械人形の姿が、フランツィースカの目に蝙蝠を振り払っていると映っている間に。エルマーの背に隠れて、高まるパラドクスの力に呼応して現れたオラトリオ……『フルーフ』が、密かに蝙蝠の群れを抜けていた。

 ……初めから、言葉が届くとは思っていない。
 元より価値観が違う。人々の苦しみに寄り添う心など、フランツィースカは持ち合わせていないのだ。
(「故に私も、エゴを貫くとしよう」)
 フランツィースカには届かぬと分かっている言葉でも、あえて発したのは、この場に集う仲間達には届くものがあるから……。

「どんなに力に優れた統治者も独りでは何も為せない」
 村に向かった者が合流したと言う事は、食糧支援が無事に済んだと言う事。
 ならば、やるべき事を為す時だと。アイリークは声を張り上げた。
 視界の端にちらりと、オラトリオが動くのを認めながら。
 あえて逆方向へと回り込み、氷結輪を起動する。

 統治を支配と勘違いしているらしい少女を、この土地から排除する為に。
「もっとも、君は統治者にもなりえていなかったし、雪の味すら想像する力もなかったようだけれど」
 紫の目に侮蔑の色を宿して。だから教えてあげるよ、と。
 再び呼び出した氷像が氷結輪を伴って、フランツィースカへと突進してゆく。

「またそれ?」
 言動はどうあれ、フランツィースカの実力は確かなもの。正面から氷像をぶつけたのでは、必ず押し負けると分かっている。
 だが、彼女の目に、アイリークだけが映るその瞬間。
 あのオラトリオに、背を向ける数舜さえあれば……。

(「俺の役割は果たせる」)
「あれからは奪っても構わない」

 エルマーと同じ色の髪を、ふわりと揺らして。
 オラトリオ『フルール』は、指し示す。

 この地で懸命に生きようとした人々を、踏みにじる存在を。
 エルマーの背負ったものの形を。
 その怒りの矛先を。
 示した。その仕草で。

「なに、これ」
 フランツィースカの胸に、植物が芽吹く。
 村人達が、二度と大地の雪に口を付けなくて済むようにという祈りに。
 あるいは、その苦しみを知れという怒りに応えるように。
 植物は急速に成長し、黒い蕾が膨らんでゆく。

「奪い返せるだけ奪い取れ」
 怒りを押し殺すような、エルマーの静かな言葉と共に。
 フランツィースカの胸に、呪いと復讐の言葉を持つ黒い花が咲いた……。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【植物活性】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!

レイア・パーガトリー
外の喧騒は…きっとみんなが奴らを抑えてくれたのね
あとは、一旦村の人たちにお任せして敵の首魁を討ちに行くわ
もし不安そうなら、リンバスを残してくわね
この子は賢いし強いから、怖い奴らは蹴散らしちゃうんだから
大丈夫、そんなに待たせないし
必ず戻ってくるわ

この村を解放するために…火炎の対決よ!
もちろん、私は遊びのつもりはないし負けてやるつもりもないわ
遠くが暖かくなってちょうどいいぐらいに
火力を高めて正面からぶつかり合うの

配下なら来ないわよ
あなたが油断してる間に、私たちの仲間が全部片づけちゃったわ!


タラス・ジュラヴリョフ
村への支援は済んだみたいだね
それじゃあ最後に親玉を倒してみんなを安心させてあげよう

仲間と合流してみんなで連携
村への干渉は避けたいね。演説で気を引いて戦闘に集中してもらうよ

パラドクスを発動し戦場の環境を改変、ロマノフの雪よ僕に賛同せよ
吹雪は敵の視界を妨害し積雪は足取りを鈍らせ、炎を冷気で抑えつける
思い通りに行かない状況で揺さぶられた心へ、精神攻撃の言霊を叩きつけるよ
「僕と世界はお前を否定する。お前が何を望もうと、全てはお前の終わりを望んでいる」

モスクワの騒ぎでこの国は良くも悪くも変わるだろうね
僕達がやることは沢山ある。だからこんな所でお前と遊んでる暇はないよ
あの世で先に行った部下達と仲良くどうぞ


「配下なら来ないわよ」

 胸に咲く花に生命力を吸われて、よろめく『深窓の令嬢フランツィースカ』へ。レイア・パーガトリー(竜胆・g01200)は凛然と言い放つ。
「あなたが油断してる間に、私たちの仲間が全部片づけちゃったわ!」
 白く色づくその吐息が弾んでいるのは、この戦場まで己の足で駆けて来たから。
 いつも傍に控えてくれている無双馬……『リンバス』には、村に残ってもらって。村人達に安心と安全を与えてくれるよう頼んである。
 青色の目に知性的な光を宿すあの相棒ならば、村の人たちを任せてもきっと大丈夫だと信じているから。
 自信を持って、胸を張って戦場に立つレイアの姿に。

(「村への支援は済んだみたいだね」)
 タラス・ジュラヴリョフ(大衆の聲・g07789)は、胸の内でひっそりと安堵した。
 トループス級はしっかりと倒しておいたし、問題無いだろうと思ってはいたけれど。村は相当酷い状況だと聞いていた手前、楽観的に構える事も出来なくて。
 頭の隅に、不安が引っかかっているような。少し落ち着かないような……そんな感覚が、合流してきた仲間達の姿を前にして、すっと凪いでゆく。

(「それじゃあ最後に、親玉を倒してみんなを安心させてあげよう」)
 先にモスクワで起きた騒ぎの事は、タラスも知っている。
 内政を担っていた者が消えたこの国は、更に大きく変わっていくだろう。
 それを良い変化と言えるか、悪い変化と言わざるを得えなくなるかは、ディアボロス達の動き次第。
 七曜の戦も近づき、やれる事は山ほどあるのだ。

「だからこんな所でお前と遊んでる暇はないよ」
 拡声器型のハッキングツール……『Proof of existence』を握り直せば。タラスの周囲で、世界の法則が歪んでゆく。
 高まるパラドクスの力は、意志を持たぬ筈の大気に、雪に、問いかけた。

 人を、この地を。踏みにじるものを、許せるか?
 キミ達は、踏みにじられる為に存在するのか?
 応じる言葉を持たないのなら、代わりに言おう。
 それは、断じて違うと。

 不当を許すな。
 理不尽を許すな。
 それを為すものを、決して許すな。

「大衆よ、賛同せよ」
 今こそ、あれを排除せよ……と。
 世界へ語るタラスの言葉で、戦場に雪が舞い上がる。

「やだっ、きたない!」
 衣服に纏わりつく土混じりの雪に、何でこんな事するのと。
 フランツィースカが上げた抗議の声に、タラスは目を細める。
 その汚い雪を口にする所まで、民を追い詰めておきながら……と。紫色の虹彩に、冷たい光を宿して。
(「あの世で先に行った部下達と仲良くどうぞ」)
 嫌悪の感情をそのままに。冷え切った声色で、フランツィースカの精神へ直接告げた。

「僕と世界はお前を否定する。お前が何を望もうと、全てはお前の終わりを望んでいる」

「もう、さっきから何なのよ。こんなの全然楽しくないわ!」
 目には映らぬ、精神への傷を示すように。
 これまで危機感の無かったフランツィースカの声に、苛立ちが滲む。
 手に現れた炎の剣が、彼女の怒りを表すように炎熱を放って。周囲の雪が見る間に溶けてゆく……。

 その炎熱に煽られて、長い紫の髪が揺れる。
 一歩。また一歩。フランツィースカへと近づく程に、空気は乾いて。
 冷えていた筈のレイアの手足に、じりじりと熱が焼き付いてゆくけれど。

(「でも、負けない……!」)
 あの村の人たちは、凍えていた。
 飢えていた。
 差し出したたった一杯のスープに涙をこぼす程、助けを求めていたのに……。
 フランツィースカの放つこの炎熱は、あの村の人たちを温めてはくれない。

 ただ、破壊と苦しみだけを齎す。そんな炎に負けてやるつもりはないと。
 熱い空気を、大きく胸に吸い込めば。
 レイアの顔に、年齢よりも大人びた表情が浮かぶ。

 『リンバス』にも、そんなに待たせないと。
 必ず戻ると伝えているから、今日ばかりは細やかな加減は必要ない。
「栄えある贄に幸あれ」
 突き放すように。冷たく響いた言葉とは裏腹に。
 その息吹は、灼熱の炎となってフランツィースカへと迫る。

「もう、さっさと壊れてよ!」
 ぶつかり合う炎は、戦場に飛び散って。
 熱風が両者の髪を乱す中、フランツィースカが語気を荒げるけれど。
 レイアの表情は揺らがない。

 熱く。より熱く。
 村の民が、体を温められるようにと。
 贄の仕上げは、舌が火傷しそうな程に熱々に。

 女王の息吹は、更にその熱を増して。
 炎剣の炎も、フランツィースカの悲鳴さえも。全てを包んで、焼き尽くすのだった……。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【おいしくなあれ】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV2になった!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
寒冷適応、効果を活用

……良かった
今は一時の安堵でも
吸血貴族の支配は永らえさせない
ただ人らしく生きることを奪われぬ世界のために……
今為せる事を

救援機動力で参戦
できるだけ村から離れた場所で戦闘を
気づかれていなければ、雪中迷彩服に身を包み、地形の利用し樹々や岩などの遮蔽物や起伏の影から不意打ち
令嬢が村に近ければ、村に視線が行かないよう接敵
【防衛ライン】を敷く
味方と連携して機を合わせ、仕掛けよう

偵察、観察し戦況把握
味方と包囲の位置取りを心がけ
隙を看破し、クロスボウで狙い澄ました一射を穿つ

反撃には魔力障壁を展開し防御
剣の軌道を観察しつつ、盾を構え炎ごと防ぐ

歩みを止めぬ事が
希望となるように


イリヤ・レダ
※アドリブ・共闘OKです

各自の連携が、活きている
後は将を討つだけだね

ああ、よかったじゃないか? 
貴方の無能さ故部下は全滅したが、部下の面倒見なくて済むようになったね
そして貴方は此処で狩られるから、食料の輸送に頭を悩ます必要も無い

今までの行動の対価を噛み締めて逝くといい

外見が同世代でも、中身は奴隷頭の様なモノだ
討つのに躊躇いも無い

逃さない様に、他のディアボロスと連携して退路を断とう
突出せず、投擲した飛刀と刺突剣での虚実絡めた攻勢を仕掛ける

パラドクスは「緋翼の煉獄」を
好機と見たら決めるつもりで飛刀の操作と自身の攻勢を合わせる
他のディアボロスの動きもしっかりと意識しておこう


 戦場が燃える。
 アヴァタール級クロノヴェーダ『深窓の令嬢フランツィースカ』の振るう炎の剣と、仲間の放つ炎熱のブレスがぶつかり合い。
 飛び散る火の粉は落陽のごとく、雪を赤々と照らしていた。

 そんな景色を目にして、良かった……と。
 静かな表情の下で、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は安堵を零す。
 村の方向から仲間が合流して来たという事は、食糧支援が無事完了したと言う事。
 あくまでも一時しのぎの対処ではあるが、それでも。人々の不安と苦しみを少しでも和らげる事が出来たのならば、それに越した事は無い。

(「ただ、人らしく生きることを奪われぬ世界のために……」)
 その為の一助をと、エトヴァの足が力強く雪を蹴る。
 高まる感情に呼応して広がるパラドクスの力は、村と戦場を分かつ白い線を引いた。

 視界の端に、その白い線を捉えて。イリヤ・レダ(『緋』を封ずるモノ・g02308)も動き出す。
 他の仲間達よりも、数メートル後方。
 あえて、フランツィースカとは少し距離を開ける形で対峙していたイリヤは、戦場を広く見渡しながら。彼女の退路となりうる場所を、自身の体で埋めるべく雪を蹴る。

 村の方向は、出現した防衛ラインと併せて、仲間達が重点的に固めてくれている……ならばこっちだと。
 緋色の翼を羽ばたかせ、真逆の方向へと回りこんだイリヤが声を張り上げる。

「その子の言う通り。貴方の配下はオレ達がやっつけたよ」
 よかったじゃないか、と。人々の悲痛に寄せる心を、怒りへと変えて。
「貴方の無能さ故部下は全滅したが、部下の面倒見なくて済むようになったね」
 皮肉を込めた言葉に、フランツィースカは子供のように頬を膨らませる。
「それは、あの子たちが使えないだけじゃない」
 あたしのせいにしないでよ、と。
 どうにも皮肉は通じないらしいフランツィースカの言動が、イリヤの神経を益々逆撫でしてゆく。

 命を軽んじ、心を踏みにじり。何の罪悪感も抱かないその様に。
 念隔式飛刀……『緋刃』を構えながら、良かったと。なんとも皮肉な安堵を覚えていた。

 姿形だけならば、ディアボロス達とそう変わらない。背格好は同年代の少女でも。
(「中身は奴隷頭の様なモノだ……」)
 そう断じてしまえば。イリヤの真紅の瞳に、あれは唯の敵将として映る。
 緋刃を放つ手に迷いは無く。刃が手を離れるのと同時。
 手元に残した刺刃を握り、フランツィースカとの距離を詰めてゆく。

「そして貴方は此処で狩られるから、食料の輸送に頭を悩ます必要も無い」
 先に放った刃が、フランツィースカの炎剣に。その炎に飲み込まれてゆく中で、少しでも炎の薄い箇所をと。
 踏み込み、繰り出す刺突の一撃が。フランツィースカの肩を穿つ。

「っ、酷いわ! 痛いじゃない!!」
 フランツィースカの上げる悲鳴じみた声も、今はただ虚しいだけ。
 切り返された炎剣に、刺刃を弾かれて。その勢いにイリヤの足が地を離れる瞬間さえも。
 この少女に、同情の気持ちは湧かなかった。
 誰の心にも寄り添わなかった者に、それが与えられる事はないのだから。 

(「今までの行動の対価を噛み締めて逝くといい」)

 ブレるイリヤの視界の中で、青い髪が靡く。
 必ずここで終わりにすると。
 決して此処から逃がさないという、イリヤとエトヴァに共通する意識が『今が好機』と告げている。

 広げた青い翼から舞い散るオーラは、この地の冷たい空気の中でダイヤモンドダストのように。
 細やかな光を放ちフランツィースカを包み込む。
(「吸血貴族の支配は永らえさせない」)
 その青い瞳にフランツィースカを捉えながらも。エトヴァが見据えているのは、更にその先。
 圧制を敷く者達を討ち取り、あるべき時を奪い返すのだと。
 その手に構えたクロスボウが、フランツィースカの背中へと狙いを定めた。

 パラドクスの高まりに気付いたか、フランツィースカが振り返る素振りを見せるが……もう遅い。
 フランツィースカの視線が、エトヴァを射止めるより早く。放たれた矢は、その小さな体を貫いた。

「あ、れ……?」
 かくりと、膝を折った。
 力の抜けた自身の体に困惑した声が、最後の言葉となって。
 無邪気で無慈悲な支配者は、そのまま地に伏せ、永遠に呼吸を止めるのだった……。


「無事、終わりましたね」
 ディアボロス達の間に、数秒の沈黙が降りた後。
 イリヤの言葉を切っ掛けに、緊迫した空気が解けてゆくのを感じながら。エトヴァも大きく息を吐く。

 クロノヴェーダの支配を終らせる事。
 それは容易な事では無い事は、嫌という程分かっている。
 更に大きな戦いを控え、この先どんな道が続いているのかも今はまだ分からないけれど……。
 まずは今日、ここに一歩。
 小さな歩みでも、積み重ねてゆけば。いつか必ず、その道に続くと信じている。

 ディアボロス達が各々に帰還の準備を始める中、彼らが守り抜いた村には。
 この地には珍しく、青空と眩しい陽光が降り注いでいた……。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【書物解読】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2023年07月27日